説明

X線透視撮影装置

【課題】コリメータの前面の線量計で測定したX線被曝量は被検者がどの部位にどれだけ被曝しているかは判断できない。また、被検者に直接貼り付ける線量計はその大きさに限度があるため、すべてのX線被曝領域を測定できず、また線量計自身やその付属品であるケーブルがX線透視/撮影像に写りこんでしまうという欠点があった。
【解決手段】被検者9の下に敷く、マトリックス状に小型のプラスチックシンチレータ線量計を埋め込んだ敷物形線量計12を被検者9のX線入射側の直前に配設して被検者9のX線被曝量を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体等に対するX線被曝量を測定する線量計を備えた医療用のX線透視撮影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医用診断装置としてのX線透視撮影装置は、被検者を載置する天板の上下駆動を行う天板駆動部やそれを制御する天板駆動制御部からなる天板駆動系と、X線管やX線検出器などの撮像系の駆動を行う撮像系駆動部やそれを制御する撮像系駆動制御部からなる撮像駆動系と、X線発生部やそれを制御するX線発生制御部からなるX線発生系と、画像処理部やそれを制御する画像処理制御部からなる画像処理系などで構成されている。
【0003】
被検者をX線で撮影できる原理は、X線が被検者を透過する際にその内部構造に応じて吸収されて減衰し、受像器上に濃淡を描くということに基づいている。いま、X線透視撮影装置のX線管から発生したX線を使用して被検者を診断する場合、被検者が被曝するX線量を知ることは放射線障害を防止する観点のみならず医療行為上重要である。
【0004】
近年X線透視下で診断のみならず治療も行うというIVR法が急速に普及しており、診断および治療時間が長くなる傾向にある。それは同時にX線被曝量が増加することであり、被検者のX線被曝量をさらに正確に検知することが求められている。そのために、X線管に取り付けたコリメータの前面に線量計を取り付け、被検者のX線被曝量を常に監視している。
【0005】
X線被曝量を測定する方法として、放射線治療の分野では一般的に電離箱が用いられている。電離箱は、微小体積に含まれる空気が放射線によって電離された際の電荷を数百ボルトの高電圧によって収集する測定装置であり、収集した電荷量によってX線被曝量を評価している。この方式の線量計で従来から使用されているものとして面積線量計が知られており、特許文献1に開示されている。
【0006】
一方、X線被曝量を測定する手段として、固体検出器を用いた方法も行われており、例えば、特許文献2には、シンチレータと光ファイバを組み合わせた検出器が開示されている。この検出器では、シンチレータが放射線の電離作用によって発光し、かつ、発光量が電離量(X線被曝量)と比例関係にあることを利用して、発光量を測定することによりX線被曝量を評価している。なお、発光量の測定には光電子増倍管を用い、発光量を電流量に変換している。
【0007】
特許文献2では、発光量を電流量に変換した際の電流量が極微小である場合には、
(1)発光量を増やす、(2)電流変換後の増幅率を大きくする、(3)高精度の電流計を用いる、などの対策が必要であった。
(1)の発光量を増やすという対策は、シンチレータを大きくすることによって実現するが、シンチレータを大きくすると極微小領域の測定は不利となる。また、(2)(3)の対策では、それぞれ高額な電気機器が必要となる。
【0008】
前記対策の問題点を解決する方法と新しい線量計が特許文献3に開示されている。シンチレータからの入射X線被曝量に対応して発生した光は、光ファイバを介して光電子増倍管に供給され、電気信号に変換される。この電気信号は増幅され、さらに所定のしきい値以上の強度の発光イベントが弁別され、このイベント数がカウントされ、このカウント値がコンピュータに供給される。コンピュータは、発光強度と発光イベントの回数に指数関数的関係があることに基づき、カウント値をX線被曝量に変換し、X線被曝量を検出する。このデータ処理方法により、体積が約1立方mm以下の小型のプラスチックシンチレータ線量計が実現可能となった。
【0009】
図5にX線透視撮影装置の構成の概略を示す。X線透視撮影装置はアーム支持台34に支持されたC型の保持アーム33の両端に対向保持した前面にコリメータ35および線量計38を設置したX線管31およびX線検出部32と、検診台40に支持された被検者39が横臥する天板41と、X線透視撮影装置全体を操作する操作部37より構成されている。被検者39はマットレス36を敷いた天板41の上に横臥し、術者(図示せず)が操作部37を操作して透視および撮影を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−178443号公報
【特許文献2】特表2004−526155号公報
【特許文献3】特再WO2008/038662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、コリメータの前面に設置された線量計でX線被曝量を測定した場合は被検者のどの部位にどれだけX線を被曝しているかは判断できない。また、線量計から被検者に至るまでの間のX線量の減衰(距離による減衰や検診台の天板によるX線の吸収)は計算で推定するしかなく正確なX線被曝量を知ることができない。
【0012】
それらを解決するために被検者に直接貼り付けて測定する線量計も市販されているが、それを使用した場合は線量計の大きさに限度があるため、すべてのX線照射領域を測定することがむつかしく、また線量計自身やその付属品であるケーブルがX線透視/撮影像に写りこんでしまうという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
X線を発生するX線管と、前記X線管と対向して配設され被検者を透過したX線を受像するX線検出器と、前記X線管の前面に設置された前記被検者に照射するX線量を調整するコリメータと、前記コリメータと被検者間に配設されたX線線量計と、前記X線管およびX線検出器を保持する保持装置を備えるX線透視撮影装置において、前記X線線量計として、複数のプラスチックシンチレータ線量計をマトリックス状に埋め込んだ敷物を、被検者のX線入射側直前に配設したことを特徴とする。
【0014】
また、前記X線線量計によって検出された個々のプラスチックシンチレータ線量計のX線量情報を出力する出力装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
人体の投影面積を十分にカバーする敷物全面に、マトリックス状に埋め込んだ所番地の明確な複数の小型のプラスチックシンチレータ線量計によってX線被曝量が測定されるので、個々のプラスチックシンチレータ線量計に対応する被検者の部位のX線被曝量が計測できる。
【0016】
また、被検者はX線線量計である敷物にほぼ密着して横臥するため、距離によるX線の減衰および他の介在物がある場合のX線の吸収による減衰もほとんど発生しないので正しいX線被曝量が測定できる。
【0017】
小型のプラスチックシンチレータ線量計はプラスチック製のシンチレータと光ファイバ製のケーブルから構成されているためX線透視撮影像に写りこむことはない。また、敷物に小型のプラスチックシンチレータ線量計を埋め込んでいるので取り扱いも容易である。
【0018】
X線線量計の各プラスチックシンチレータのX線被曝量データが出力されるので術者にとって利用しやすいデータ処理方法が可能である。例えば部位ごとにX線被曝量の数値表示をしたり、または人体像にX線被曝量に応じた濃淡の色表示などが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1におけるX線透視撮影装置の概略的な構成図である。
【図2】本発明の実施例1における敷物形線量計の説明図である。
【図3】本発明の実施例2における立形X線透視撮影装置の概略的な構成図である。
【図4】本発明の実施例2における吊形線量計の説明図である。
【図5】従来のX線透視撮影装置の概略的な構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に実施例1のX線透視撮影装置の構成の概略を示す。X線透視撮影装置はアーム支持台4に支持されたC型の保持アーム3の両端に対向保持した前面にコリメータ5を付設したX線管1およびX線検出部2と、検診台10に支持された被検者9が横臥する天板11と、X線透視撮影装置全体を操作する操作部7より構成されている。被検者9は敷物形線量計12を敷いた天板11の上に横臥し、術者(図示せず)が操作部7を操作して透視および撮影を行う。前記敷物形線量計12に取り込まれたX線量情報は前記操作部7を経て表示部8にて表示される。
【0021】
図2に実施例1を構成する前記敷物形線量計12の説明図を示す。前記敷物形線量計12の平面図を(a)、側面図を(b)、小型のプラスチックシンチレータ14を(c)に示す。マットレス13に光ファイバ製リード線も一緒にプラスチックシンチレータ14をマトリックス状に埋め込み、固定する。前記光ファイバ製リード線は前記マットレス13の端部からケーブル15として引き出す。
【0022】
図2に示す敷物形線量計12は、従来、被検者9が天板11の上に横臥するとき敷物として使用していたマットレス13にプラスチックシンチレータ14を埋め込んだものである。なお、敷物形線量計12として、マットレス13の代りにプラスチックプレートを使用してもよい。
【0023】
また、敷物形線量計の変形例(図示せず)として、天板11の上に敷く敷物にプラスチックシンチレータ14を埋め込む代わりに、天板自身にプラスチックシンチレータ14を埋め込んで線量計を構成することもできる。
【0024】
図3に実施例2の立形X線透視撮影装置の概略的な構成図を示す。立形X線透視撮影装置はフレーム23に対向保持したX線検出部21と前面にコリメータ22を付設したX線管20と、X線透視撮影装置全体を操作する操作部26および表示部27より構成されている。被検者6はX線検出部21の前面に立ち、その背後に近接して吊り具25によって吊形線量計24が吊設された状態で術者(図示せず)が操作部26を操作して透視および撮影を行う。前記吊形線量計24に取り込まれたX線量情報は前記操作部26を経て表示部27にて表示される。
【0025】
図4に実施例2を構成する前記吊形線量計24の説明図を示す。本図に示す吊形線量計24は、被検者6の脚部を除く上半身をカバーする大きさのプラスチックプレート17に光ファイバ製リード線も一緒にプラスチックシンチレータ18をほぼ人体にかたどって埋め込んだものである。前記光ファイバ製リード線は前記プラスチックプレート17の端部からケーブル19として引き出す。前記吊形線量計24を被検者6の背後に近接して、吊り具25によって吊穴28に吊設する。
【0026】
X線照射時にX線線量計の各プラスチックシンチレータが得たX線量の情報を、術者に被検者の部位ごとのX線被曝量として表示部に表示して通知する。通知する手段としては、例えば、モニタに部位別に一覧表にした数値で表示しても良いし、X線被曝量に応じて色を変えた人体像(例えば、X線被曝量が増えてくると赤色になるなど)を表示しても良いし、あるX線被曝量に達した時に音声にて通知しても良い。
【符号の説明】
【0027】
1、20、31 X線管
2、21、32 X線検出部
3、33 保持アーム
4、34 アーム支持台
5、22、35 コリメータ
6、9、39 被検者
7、26、37 操作部
8、27 表示部
10、40 検診台
11、41 天板
12 敷物形線量計
13 マットレス
14、18 プラスチックシンチレータ
15、19 ケーブル
17 プラスチックプレート
23 フレーム
24 吊形線量計
25 吊り具
28 吊穴
36 マットレス
38 線量計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を発生するX線管と、前記X線管と対向して配設され被検者を透過したX線を受像するX線検出器と、前記X線管の前面に配設された前記被検者に照射するX線量を調整するコリメータと、前記コリメータと被検者間に配設されたX線線量計と、前記X線管およびX線検出器を保持する保持装置を備えるX線透視撮影装置において、前記X線線量計として、複数のプラスチックシンチレータ線量計をマトリックス状に埋め込んだ敷物を、被検者のX線入射側直前に配設したことを特徴とするX線透視撮影装置。
【請求項2】
前記X線線量計によって検出された個々のプラスチックシンチレータ線量計のX線量情報を出力する出力装置を備えることを特徴とする請求項1記載のX線透視撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−75666(P2012−75666A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223348(P2010−223348)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】