説明

X線造影材料及び医療器具

【課題】全方向からの可視光透過性を有するX線造影材料を提供する。
【解決手段】本発明のX線造影材料1は、1種類以上の高分子材料を含んで形成され、可視光を透過可能な透明性を有する可視光透過部2と、可視光透過部2に分散されて配置され、平均粒子径が1ナノメートル以上400ナノメートル以下のX線不透過性を有するX線造影粒子3とを備え、可視光透過部2に分散されて配置されたX線造影粒子3の平均壁間距離が、1ナノメートル以上10マイクロメートル以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線造影材料、より詳しくは、透明性を有するX線造影材料、及びこれを用いた医療器具に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡やカテーテル等の体腔内で観察や処置を行うための医療器具においては、内腔を通して処置等に用いる処置具や薬剤等の液体を先端に供給することがある。これら処置具や液体等の内腔における位置を、医療器具の外側から目視で確認できることは、医療器具を適切に操作する上で重要である。そのため、透明性は医療器具に用いられる材料において求められる重要な特性の一つである。
また、上述の医療器具は、X線透視下において体腔内における位置を確認しながら使用されることも多く、X線造影性も、医療器具に用いられる材料において求められる重要な特性の一つである。
【0003】
これら両方の特性を兼ね備えた医療器具として、例えば、特許文献1に記載の医療器具が挙げられる。この医療器具では、透明樹脂等からなるチューブの壁面にX線造影性を有する部材を組み込んで、例えば透明部と造影部との配置をストライプ状にする等によって、透明性及びX線造影性が付与されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−229812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にも記載の通り、一般にX線造影性を有する部材は不透明である。そのため、特許文献1に記載の医療器具では、造影部が配置された部分は不透明であって、造影部を通して内腔に存在するものを視認することはできない。すなわち、全方向からの可視光透過性を有するものではない。そのため、使用時には視認可能となるように軸線回りに回転する等の操作が必要となる場合があり、正確性が求められる医療行為に対して負荷となる等の問題がある。
また、透明部と造影部とでは材料そのものが異なるため、医療行為での操作にあたり、例えば、可撓性が曲げる方向によって異なるなど、医療器具としての操作性に影響を及ぼす等の問題がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、X線造影性と可視光透過性とを兼ね備えたX線造影材料を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、より内部の視認性が良好で、操作性のよい医療器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様であるX線造影材料は、1種類以上の高分子材料を含んで形成され、可視光を透過可能な透明性を有する可視光透過部と、前記可視光透過部に分散されて配置され、平均粒子径が1ナノメートル以上400ナノメートル以下のX線不透過性を有するX線造影粒子とを備え、前記可視光透過部に分散されて配置された前記X線造影粒子の平均壁間距離が、1ナノメートル以上10マイクロメートル以下であることを特徴とする。
【0008】
本発明の第二の態様である医療器具は、本発明のX線造影材料が用いられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のX線造影材料によれば、X線造影性と可視光透過性とを兼ね備えた材料を提供することができる。
本発明の医療器具によれば、内部の視認性が良好で、操作性のよい医療器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態のX線造影材料を示す拡大図である。
【図2】同X線造影材料からなるチューブを示す図である。
【図3】同チューブが適用された医療器具の一例である処置具を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態のX線造影材料1を示す拡大図である。図1に示すように、X線造影材料1は、可視光を透過させる透明性を有する可視光透過部2中に、X線不透過性を有するX線造影粒子(以下、単に「造影粒子」と称する。)3が分散されて形成されている。
【0012】
可視光透過部2は、透明性を有する1種類以上の高分子材料を含んで形成されている。可視光透過部2を形成するための高分子材料としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、シクロオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、フッ素樹脂、塩化ビニル樹脂あるいはこれらの共重合体のいずれかを含む樹脂材料や、ポリウレタンエラストマー等のエラストマー系材料、天然ゴム、シリコーンゴム等のゴム系材料等を好適に採用することができる。必要に応じてこれらの材料が複数種類組み合わされて使用されてもよい。
【0013】
可視光透過部2は、可視光を透過するが、X線も透過するため、単体ではX線造影性を得ることはできない。そこで、造影粒子3を可視光透過部2に分散させることによって、可視光透過部2にX線造影性を付与している。造影粒子3を可視光透過部2に分散させる方法としては、溶融混練法等を好適に採用することができる。また、溶融混練法を採用する場合には、循環型二軸混練機など公知の各種装置を適宜選択することができる。
【0014】
造影粒子3の材料としては、人体や高分子を構成する主な元素である炭素、窒素、酸素以上の原子量を示す元素、或いはそれを含んだ化合物を用いることができる。より好ましくはイッテルビウム、バリウム、タンタル、タングステンなどの元素を含んだ化合物であると強いX線造影性を得ることが出来る。必要に応じてこれらの材料が複数組み合わされて使用されても良い。
【0015】
これらの材料からなる造影粒子3の直径D1の平均値である平均粒子径は、400ナノメートル(nm)以下に設定されている。造影粒子3の平均粒子径が400nmより大きいと、可視光透過部2中に分散させた際に、光の波長との関係で造影粒子3による可視光の反射・屈折が生じ急激に可視光の透過を妨げてしまうため可視光透過性が得られない。しかし、発明者らは、造影粒子3の平均粒子径が400nm以下となると、可視光が造影粒子3によって反射・屈折されることなく可視光透過部2を透過するため、分散媒である可視光透過部2の可視光透過性、すなわち透明性を損なわないことを見出した。
【0016】
一方、X線の波長は可視光に比べて十分に短いため、造影粒子3が分散されたX線造影材料1はX線を透過しない。したがって、X線造影材料1は可視光を透過する透明性と、X線透視下で容易に視認可能となるX線造影性との両方を兼ね備えた材料となる。
【0017】
X線造影材料1の可視光透過性は、造影粒子3の平均粒子径が小さくなるほど良好となり、可視光波長の1/4以下、例えば100nm以下の平均粒子径が好ましく、可視光波長の1/10以下、例えば40nm以下の平均粒子径がさらに好ましい。
ただし、造影粒子3の平均粒子径が1nmより小さくなると、造影粒子3の表面活性が大きくなりすぎる結果、安定化しようとして急激に造影粒子3が凝集する現象が発生することがある。これはX線造影材料1内における粒子分散性や、後述する平均粒子壁間距離を変化させて可視光透過性に影響を与えることがあるため、造影剤3の平均粒子径としては、3nm以上に設定されるのが好ましく、5nm以上に設定されるのがより好ましい。
【0018】
本発明のX線造影材料1は、上記のように構成されることで一定のX線造影性を確保することができるが、分散される造影材料3の平均粒子壁間距離を一定の範囲とすることで、さらにX線造影性を良好にすることが可能である。
なお、本発明における平均粒子壁間距離としては、加算平均粒子壁間距離を用いる。TEM画像より、粒子Aと粒子Bの粒子径a、b、及び粒子Aと粒子Bの重心間距離cを求め、これらに基づいて粒子間距離(c−a−b)を算出する。これを隣接するすべての粒子について行い、加算平均を求めることにより平均粒子壁間距離とする。
【0019】
平均粒子壁間距離が1nmより小さくなると、各造影粒子3間の距離が狭くなりすぎる結果、可視光が反射や屈折を起こしてその透過性が低下する。一方、平均粒子壁間距離が10マイクロメートル(μm)よりも大きくなると、各造影粒子3間の距離が大きすぎる結果、使用目的等によっては十分なX線造影性が得られない場合がある。平均粒子壁間距離は3nm以上あれば良好な可視光透過性が得られる。したがって、造影粒子3の平均粒子壁間距離は、好ましくは1nm以上10μm以下、より好ましくは3nm以上100nm以下に設定されるのがよい。造影粒子3の平均粒子壁間距離は、分散させる造影粒子3の種類や比率を変更することによって調節可能である。
【0020】
図2は、以上のように構成されたX線造影材料1を用いて形成されたチューブ10を示す図である。このようなチューブ10は、X線造影材料1を用いた押し出し成形等によって容易に製造することができる。このチューブ10は、可視光を透過する透明性を有するため、内腔に存在する物体を容易に視認することができる。一方、X線透視下では、チューブ10全体がX線を透過しないため、体腔内等における位置や向き等に関係なく、容易にその位置を確認することができる。
【0021】
なお、チューブ10全体をX線造影材料1で形成するのに代えて、X線を透過する通常の樹脂材料でチューブ10の一部を形成し、X線造影材料1で形成された部位と一体に接合することによって、X線造影材料1で形成された部分及び通常の樹脂材料で形成された部分のいずれか一方を、チューブ10の特定位置を示すマーカーとして機能するように形成してもよい。このようにすると、可視光下ではマーカーと他の部位との区別はないため、内腔に存在する物体の視認性を低下させない一方、X線透視下では、チューブ10の特定位置を正確に把握することができる。
【0022】
上述したようなチューブ10は、様々な用途の医療器具に適用することができる。特に、胆管に挿入して使用するカテーテルのように、可視光下及びX線透視下の両方で操作されるような医療器具においては、操作性を著しく向上させることができる。また、チューブ10全体が、単一のX線造影材料1で形成されているため、部位の違いによる可撓性の違い等がなく、医療器具等に適用した際に、良好な操作感を実現することができる。
【0023】
以上説明した本実施形態のX線造影材料1及びチューブ10について、実施例を用いてさらに説明する。
(造影粒子の平均粒子径の検討)
上述した造影粒子3の平均粒子径がX線造影材料1の可視光透過性に与える影響について、実施例1、2、及び比較例1、2を用いて検討した。
【0024】
(実施例1、2の作製)
可視光透過部2に用いる高分子材料として、ポリカーボネート(商品名:ユーピロンH−4000、三菱エンジニアリングプラスチック(株)製)を使用し、造影粒子3として、平均粒子径10nmの硫酸バリウム(堺化学工業(株)製)を使用した。上記ポリカーボネートの比重は1.2g/cm、硫酸バリウムの比重は4.5g/cmである。
上述の高分子材料100重量部に対して、造影材料3を30重量部添加し、循環型二軸樹脂混練装置(DSM Xplore社製)を用いて、240℃、シェアレート2200sec−1の条件で5分間溶融混練を行い実施例1のX線造影材料を得た。
また、造影粒子3として平均粒子径400nmの硫酸バリウム(堺化学工業(株)製)を使用し、それ以外は実施例1と同様の条件で製造することによって実施例2のX線造影材料を得た。
【0025】
(比較例1、2の作製)
造影粒子として平均粒子径1.0μmの硫酸バリウム(堺化学工業(株)製)を使用し、それ以外は実施例1と同様の条件で製造することによって比較例1の材料を得た。さらに、造影粒子として平均粒子径550nmの硫酸バリウム(シーアイ化成(株)製)を使用し、それ以外は実施例1と同様の条件で製造することによって比較例2の材料を得た。
なお、上述した各材料における造影粒子の平均粒子径は、半導体レーザ式の粒径測定器にて実測した値を用いている。
【0026】
得られた各実施例1、2、及び各比較例1、2の材料を、いずれも厚さ0.5ミリメートル(mm)の板状に熱プレス加工し、各材料に可視光領域に属する波長400〜800nmの光を照射してその光透過率(板状の材料を通過した光量/板を介在させずに照射したときの光量)を測定し、その平均を百分率で表記した。結果を表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
表1に示す通り、実施例1及び2では、いずれも75%以上と良好な光透過率を示した。一方、比較例1及び2はいずれも光透過率が25%以下と低かった。このように、造影粒子3の平均粒子径が可視光の波長と同等以下(ここでは400nm)に設定されることで、急激に光透過率が向上されることが示された。
【0029】
(造影粒子の平均粒子壁間距離の検討)
上述した造影粒子3の平均粒子壁間距離がX線造影材料1のX線造影性(X線不透過性)に与える影響について、実施例3、4、及び比較例3を用いて検討した。
【0030】
(実施例3の作製)
可視光透過部2に用いる高分子材料として、実施例1と同様のポリカーボネートを使用し、造影粒子3として、平均粒子径14nmの硫酸バリウム(堺化学工業(株)製)を使用した。上述の高分子材料100重量部に対して、造影材料3を20重量部添加し、実施例1と同様の条件で溶融混練を行って、実施例3のX線造影材料を得た。
【0031】
(実施例4の作製)
造影粒子3として、平均粒子径40nmの硫酸バリウム(堺化学工業(株)製)を使用し、高分子材料100重量部に対して造影材料3を10重量部添加する点を除き、実施例3と同様に製造することによって、実施例4のX線造影材料を得た。
【0032】
(比較例3の作製)
造影粒子として、平均粒子径400nmの硫酸バリウム(堺化学工業(株)製)を使用し、高分子材料100重量部に対して造影材料を1重量部添加する点を除き、実施例3と同様に製造することによって、比較例3の材料を得た。
【0033】
上記のようにして得られた実施例3、4、及び比較例3の各材料の一部を切り出し、薄片に加工した後、透過型電子顕微鏡にて撮影した観察画像を用いて、分散度測定装置(LUZEX−AP:株式会社ニレコ製)により各材料における造影粒子の平均粒子壁間距離を求めた。
また、各材料についてX線照射下における材料視認性の評価を行った。材料視認性の評価は、厚さ0.1mmのアルミ板を基準とし、アルミ板より明確に認識できる:◎、アルミ板と同等に認識できる:○、アルミ板より劣るものの認識可能:△、アルミ板より劣り、認識自体が非常に困難:×の4段階で行った。以上の結果を表2に示す。なお、光透過率は上述の方法で測定した。
【0034】
【表2】

【0035】
表2に示すように、いずれの材料も良好な光透過率を示した。実施例3のX線造影材料については、X線写真に鮮明に写っており、容易に視認することができた。実施例4のX線造影材料については、実施例3に比べると写り方がかなり薄いが、X線写真内における位置を問題なく視認することができた。一方、平均粒子壁間距離が10μmを超える比較例3においては、X線写真内において材料を視認することができなかった。
以上より、平均粒子壁間距離が10μm以内に設定されることによって、一定のX線造影性が確保されることが確認された。
【0036】
(チューブの作成)
次に、本実施形態のX線造影材料1を用いて作製したチューブ10について、比較例を用いて検討した。
(実施例、5、6、7、8の作製)
実施例5、6、7、及び8のチューブは、下記のようにして得られたX線造影材料を用いて作製した。造影粒子3の平均粒子径及び平均粒子壁間距離は、下記表3に示すとおりであり、実施例1と同様の装置及び条件にて混練した。
実施例5:可視光透過部2に用いる高分子材料として実施例1と同様のポリカーボネートを使用し、造影粒子3としてタングステン(アライドマテリアル(株)製)を使用した。上述の高分子材料100重量部に対して、造影粒子3を30重量部添加して溶融混練を行った。
実施例6:高分子材料としてポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製)を使用し、造影粒子3として硫酸バリウム(堺化学工業(株)製)を使用した。高分子材料100重量部に対して、造影粒子3を30重量部添加して溶融混練を行った。
実施例7:高分子材料として酢酸ビニル(三井デュポンケミカル(株)製)を使用し、造影粒子3として硫酸バリウム(堺化学工業(株)製)を使用した。高分子材料100重量部に対して、造影粒子3を30重量部添加して溶融混練を行った。
実施例8:高分子材料としてポリウレタン(日本ポリウレタン工業(株)製)を使用し、造影粒子3として硫酸バリウム(堺化学工業(株)製)を使用した。高分子材料100重量部に対して、造影粒子3を30重量部添加して溶融混練を行った。
上述したX線造影材料を原料として、単軸押出機(IKG株式会社製)によるチューブ成形を行い、各実施例のチューブを得た。チューブの寸法はいずれも、外径2.3mm、内径1.7mm、肉厚0.3mmとした。
【0037】
(比較例4、5の作製)
比較例4、5のチューブは、下記のようにして得られた材料を用いて作製した。造影粒子3の平均粒子径及び平均粒子壁間距離は、表3に示すとおりであり、実施例1と同様の装置及び条件にて混練した。
比較例4:高分子材料として実施例1と同様のポリカーボネートを使用し、造影粒子として酸化タングステン(アライドマテリアル(株)製)を使用した。高分子材料2を100重量部に対して、造影粒子を30重量部添加して溶融混練を行った。
比較例5:高分子材料として酢酸ビニル(三井デュポンケミカル(株)製)を使用し、造影粒子として硫酸バリウム(堺化学工業(株)製)を使用した。高分子材料100重量部に対して、造影粒子を30重量部添加して溶融混練を行った。
上述した材料を原料として、実施例5ないし8と同様のチューブ成形を行い、実施例5等と同一寸法の比較例4及び5に係るチューブを得た。
【0038】
各実施例及び比較例のチューブに対して、上述した方法でX線造影性の評価を行った。また、可視光下において、各チューブに水を流して内腔を通過させ、それを目視で確認することにより内腔視認性の評価を行った。内腔視認性の評価は、水の通過を十分に確認できる:○、水の通過をわずかに確認できる:△、水の通過が全く確認できない:×の3段階で行った。結果を表3に示す。
【0039】
【表3】

【0040】
表3に示すように、比較例4を除くすべてのチューブで良好な内腔視認性が確保された。一方、X線造影性は、実施例6、7、8において良好であり、実施例5においては一定のX線造影性が確保されていたが、比較例4、5のチューブはいずれも十分なX線造影性を有していなかった。
以上より、本実施形態のX線材料を用いて、内腔視認性が良好かつ一定のX線造影性を有するチューブが製造可能であることが示された。
【0041】
(医療器具への適用)
図3に示すように、本発明のX線造影材料で形成されたチューブ10を、体腔内に挿入されるシース20として処置具(医療器具)30に組み込んだ。シース20は、チャンネル21及び22の2つのチャンネルを有するように形成されている。シース20に設けられたサイドポート23からガイドワイヤ40等をチャンネル21に挿入し、シース20の先端から突出させることができる。シース20の基端に設けられた第2ポート24には、シリンジ50等が接続可能であり、チャンネル22を介して送気、送水、吸引等の各種作業を行うことができる。
なお、この処置具30は本発明のチューブ10が適用可能な医療器具の一例であり、医療器具の種類はこれには限定されない。
【0042】
処置具30に組み込まれたシース20について、各種の評価を行った。
まず、シース20を軸線回りに30度ずつ回転させて同一方向に曲げることによってシース20の柔軟性を評価した。その結果、軸線回りの回転角にかかわらず一定の柔軟性を有することが確認された。
次に、この処置具30を体腔内に挿入してX線透視下で観察したところ、処置具30の向きや位置にかかわらず、シース20は常に良好な視認性を有し、シース20を軸線回りに回転させても視認性は変化しないことが確認された。
さらに、シース20内に径0.8mmのガイドワイヤ40を挿通したところ、シース20内におけるガイドワイヤ40の位置及びその動きを問題なく視認することができた。
【0043】
以上説明したように、本実施形態のX線造影材料によれば、可視光を透過する透明性を確保しつつ、X線を透過しないことによるX線造影性を併せて確保することができる。また、これを医療器具に適用することによって、内腔に存在する物体を容易に視認可能でありながら、X線透視下において、その位置や向きを良好に確認可能な医療器具を構成することができる。
【0044】
なお、上述の実施形態においては、X線造影材料がチューブとして適用された医療器具の例を説明したが、医療器具に適用される際のX線造影材料の形状はこれには限定されない。例えば、X線防護用含鉛アクリル樹脂の代替製品として本発明のX線造影材料を使用することも可能である。この場合、鉛を含まないため安全性が高く、また必要に応じて容易にX線遮断量を調節可能であるという利点もある。
【符号の説明】
【0045】
1 X線造影材料
2 可視光透過部
3 X線造影粒子
10 チューブ
30 処置具(医療器具)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種類以上の高分子材料を含んで形成され、可視光を透過可能な透明性を有する可視光透過部と、
前記可視光透過部に分散されて配置され、平均粒子径が1ナノメートル以上400ナノメートル以下のX線不透過性を有するX線造影粒子と、
を備え、
前記可視光透過部に分散されて配置された前記X線造影粒子の平均壁間距離が、1ナノメートル以上10マイクロメートル以下であることを特徴とするX線造影材料。
【請求項2】
請求項1に記載のX線造影材料が用いられていることを特徴とする医療器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−329(P2011−329A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146923(P2009−146923)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】