説明

X線CTシステム

【課題】高周波域成分を強調する再構成関数を用いて画像再構成された断層像に対して局所領域毎に画像特徴量依存型の画像フィルタが適用され、画質が読影用に最適化された断層像を表示可能としつつ、高周波域成分が欠落していない、画像フィルタ適用前の断層像の表示や調整にも対応可能とする。
【解決手段】高周波域成分が強調された断層像に対して画像フィルタを適用する画像処理を、断層像の画像再構成時に行うのではなく、断層像の表示時に行うようにし、断層像保存時は、画像フィルタ適用前の断層像を保存する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線CT(computed tomography)システム(system)に関し、さらに詳しくは、X線CT撮影によって得られた被検体の断層像を、画質改善して表示するX線CTシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、X線CT撮影によって得られた被検体の断層像を表示するX線CTシステムとして、次のような処理を行うシステムが知られている。
【0003】
まず、走査ガントリ(gantry)により被検体を走査して収集されたX線投影データ(data)に基づいて、被検体の断層像の高周波域成分を強調する再構成関数を用いて被検体の断層像を画像再構成する。このとき、画像再構成される断層像が表す被検体の部位に応じて、画像再構成に用いる再構成関数を切り換える。例えば、断層像が表す部位によっては読影で注目すべき組織の種類が異なる場合があるので、その部位が頭部、胸部、腹部等のいずれであるか等によって、軟部用標準再構成関数、骨部用再構成関数、高周波域成分強調用再構成関数等を使い分ける。断層像が表す部位の判定には、例えば、断層像全体の画像特徴量や操作者によって入力された情報に基づいて行う。なお、このような高周波域成分を強調する処理は断層像の画質向上のために行われるものであるが、画像再構成という画像生成上最も早い段階で断層像の高周波域成分を強調するのは、一旦、高周波域成分の情報が失われると、その成分の情報を復元することが困難になるためである。
【0004】
次に、その断層像に対して画像フィルタ(filter)を適用し、その断層像を読影に適した画質に調整する。具体的には、断層像の各局所領域に対して、当該局所領域の画像特徴量に応じて画像の高周波域成分の強調度が変化する画像フィルタであって画像特徴量と強調度との対応関係がそれぞれ異なる複数の画像フィルタを、局所領域が表す解剖学的な部位の種類に応じて切り換えて適用する。例えば、断層像の局所領域を構成する画素のCT値の平均値とその局所領域の高周波域成分の強調度との関係を規定するゲイン(gain)曲線を予め複数種類用意しておき、断層像上で注目する局所領域を走査しながら順次設定し、その注目する局所領域が、予め決められた複数の解剖学的な部位の種類、例えば、肺野部、軟部、骨部のうちいずれに該当するかを判定し、上記複数のゲイン曲線の中からその判定された部位の種類に対応したゲイン曲線を選択し、注目する局所領域に対してその選択したゲイン曲線で定義された画像フィルタを適用するという画像処理を実行する。例えば、上記判定において、局所領域が軟部であると判定された場合には、高周波域成分の強調度が軟部組織に相当するCT値の範囲において比較的小さくなるようなゲイン曲線が選択され、また、局所領域が肺野部であると判定された場合には、高周波域成分の強調度が肺野に相当するCT値の範囲において比較的大きくなるようなゲイン曲線が選択される。
【0005】
このようにして、局所領域毎に当該局所領域の解剖学的な部位の種類に対応したゲイン曲線の画像フィルタが適用され、画質が読影用に最適化された処理済断層像が得られる。
【0006】
その後、その処理済断層像は表示処理部に送られ、モニタ(monitor)画面に表示される。また、処理済断層像は、操作者の要求によりもしくは自動で保存処理部に送られ、その処理済断層像がハードディスク(hard disk)等の記憶装置やDVD−ROM等の記憶媒体に画像データとして保存される。
【0007】
なお、上記の如く画像再構成して得られた直後の断層像は、上述の通り、高周波域成分が強調された断層像であるため、そのままでは読影に不適な画像である。したがって、上記X線CTシステムにおいては、高周波域成分を強調する画像再構成と、その画像再構成によって得られた断層像の画質を最適化するための、断層像に対する画像フィルタの適用とは、常に同時に行われる。
【0008】
このようなX線CTシステムによれば、断層像が表す被検体の部位に応じて、また、その個々の局所領域の解剖学的な部位の種類に応じて、適当な再構成関数や画像フィルタが適用され、画質が読影用に最適化された断層像を表示したり、保存したりすることができるため、操作者が、断層像に適用する再構成関数および画像フィルタのゲイン曲線を種々切り換えながら、断層像を読影に適した画質に調整するという煩雑な作業が不要であり、診断効率を向上させることができるという利点がある。
【0009】
なお、断層像に対して画像特徴量に応じて画像フィルタを切り換えながら適用することにより、断層像の画質を最適化する手法に関する技術は、例えば、特許文献1,2等に開示されている。
【0010】
【特許文献1】特開平9−164134号公報
【特許文献2】特開平10−234725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記X線CTシステムは、上述の通り、被検体の断層像を、高周波域成分を強調して再構成する処理と、その断層像に画像フィルタを適用する処理とを行って、読影用に画質が最適化された断層像を得、その後、当該断層像を表示したり保存したりしている。
【0012】
しかしながら、このようなX線CTシステムでは、断層像に画像フィルタを適用する際に、場合によっては少なくともその一部が平滑化されるため、高周波域成分の一部の情報が失われ復元が困難になった断層像を保存することになり、後から画像フィルタ適用前の断層像を表示させたい場合や画像フィルタ適用前の断層像に別の画像処理を施して加工したい場合などに対応できないという問題がある。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑み、高周波域成分を強調する画像再構成によって得られた断層像に対して、局所領域毎に、当該領域の解剖学的な部位の種類に応じて、画像特徴量に依存した画像フィルタを切り換えながら適用することにより画質が読影用に最適化された断層像を表示可能としつつ、高周波域成分が欠落していない画像フィルタ適用前の断層像を表示させたい場合や当該断層像に別の画像処理を施して加工したい場合などに対応できるX線CTシステムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の観点では、本発明は、被検体を走査して収集されたX線投影データに基づいて、前記被検体の断層像の高周波域成分を強調する再構成関数を用いて、前記被検体の断層像を画像再構成する画像再構成手段と、前記画像再構成された断層像を記憶装置または記憶媒体に保存する保存処理手段と、前記保存手処理段により保存された断層像を読み出す画像読出手段と、前記読み出された断層像の少なくとも一部における各局所領域に対して、該局所領域の画像特徴量に応じて画像の高周波域成分の強調度が変化する画像フィルタを適用する画像処理であって、前記画像特徴量と前記強調度との対応関係を表すゲイン曲線を、該局所領域が表す解剖学的な部位の種類に応じて切り換える画像処理を施すことにより処理済断層像を得る画像処理手段、および、該処理済断層像を表示する表示処理手段を有する画像表示手段とを備えたことを特徴とするX線CTシステムを提供する。
【0015】
第2の観点では、本発明は、被検体を走査して収集されたX線投影データに基づいて、前記被検体の断層像の高周波域成分を強調する再構成関数を用いて、前記被検体の断層像を画像再構成し、前記画像再構成された断層像を記憶装置または記憶媒体に保存し、前記画像保存手段により保存された断層像を読み出し、前記読み出された断層像のうち少なくとも一部における各局所領域に対して、該局所領域の画像特徴量に応じて画像の高周波域成分の強調度が変化する画像フィルタを適用する画像処理であって、前記画像特徴量と前記強調度との対応関係を表すゲイン曲線を、該局所領域が表す解剖学的な部位の種類に応じて切り換える画像処理を施すことにより処理済断層像を得、該処理済断層像を表示することを特徴とするX線CT画像表示方法を提供する。
【0016】
第3の観点では、本発明は、前記保存処理手段が、前記画像再構成された断層像とともに、コンピュータを前記画像表示手段として機能させるためのプログラム(program)を該断層像と関連付けて保存するものであり、前記画像表示手段が、前記断層像とともに前記プログラムを読み出して該プログラムを実行するコンピュータであることを特徴とする上記第1の観点のX線CTシステムを提供する。
【0017】
ここで、高周波域成分とは、断層像を表す画像における高周波域に属する成分を意味するものであり、例えば、空間周波数が、10〜15(line pair/cm)程度の成分を考えることができる。
【0018】
また、断層像を保存するとは、その断層像のデータをデータ処理のために暫定的に記憶するような形態ではなく、その断層像のデータを利用可能に残すことを目的として保存することを意味するものである。例えば、操作者の操作に応じて、断層像のデータのタイトル(title)や保存場所を特定する情報を表示させたり、他の記憶装置や記憶媒体へコピー(copy)したりすることができるように保存することが考えられる。
【0019】
また、局所領域とは、1つの断層像または複数の連続する断層像で構成される3次元像の中の部分的な領域を意味するものであり、例えば、1または互いに隣接する2次元または3次元の複数画素で構成される領域を考えることができる。
【0020】
また、画像特徴量とは、画像上の特徴を表す物理量を意味するものであり、例えば、画像を構成する各画素のCT値の平均値やCT値のヒストグラム(histogram)等を考えることができる。
【0021】
また、解剖学的な部位の種類としては、例えば、心臓、肝臓、脳等の軟部、肋骨、背骨、頭骨等の骨部、肺に対応する肺野、血管や器官に注入される造影剤等を考えることができる。
【0022】
なお、画像再構成としては、従来の2次元画像再構成の他、3次元画像再構成と称される、X線ビームの厚み成分すなわちコーンビーム(corn beam)X線のコーン角を考慮した画像再構成であり、フェルドカンプ・アルゴリズム(feldkamp algorithm)で代表されるコーンビーム画像再構成アルゴリズムを用いた画像再構成を考えることができる。
【0023】
また、画像フィルタとしては、例えば、局所領域の略中央に位置する注目画素の値を、その局所領域を構成する各画素のCT値にそれぞれ所定の係数を掛けて積和演算した値に置換する空間フィルタ、sobelフィルタ等を考えることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のX線CTシステムでは、高周波域成分を強調して画像再構成された断層像に対して、局所領域毎に、当該領域の解剖学的な部位の種類に応じて、当該領域の画像特徴量と高周波域成分の強調度との対応関係を表すゲイン曲線が異なる画像フィルタを切り換えて適用する画像処理手段を、画像再構成手段ではなく画像表示手段が具備し、断層像を保存する手段は、画像フィルタ適用前の断層像を保存するようにしている。すなわち、本発明のX線CTシステムでは、高周波域成分が強調された断層像に対して画像特徴量依存型の画像フィルタを適用する画像処理を、断層像の画像再構成と切り離して、断層像を表示する際に行い、断層像の保存は、断層像の画像再構成と切り離さずに行うようにしている。
【0025】
これにより、断層像を保存する際に画像フィルタ適用前の断層像を保存し、断層像を表示する際に断層像に画像フィルタを適用して画像フィルタ適用後の断層像を表示することができ、高周波域成分強調する画像再構成によって得られた断層像に対して、局所領域毎に、当該領域の解剖学的な部位の種類に応じて、画像特徴量に依存した画像フィルタを切り換えながら適用することにより画質が読影用に最適化された断層像を表示可能としつつ、高周波域成分が欠落していない画像フィルタ適用前の断層像を表示させたい場合や当該断層像に別の画像処理を施して加工したい場合などに対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0027】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について説明する。
【0028】
図1は、本発明の第1の実施形態によるX線CTシステム1の構成ブロック(block)図である。図1に示すように、X線CTシステム1は、X線CT装置2と画像解析用ワークステーション(work station)6とを備え、X線CT装置2は、走査ガントリ3、撮影テーブル(table)4および操作コンソール(console)5により構成される。
【0029】
走査ガントリ3は、撮影対象である被検体を走査(以下、スキャン(scan)ともいう)して被検体の各ビュー(view)のX線検出器データを収集するものである。この走査ガントリ3は、後述の制御インターフェース(interface)51を通じて制御され、被検体のスキャンが行われる。走査ガントリ3は、被検体にX線を照射するX線照射装置31、被検体を透過したX線の強度分布を検出するX線検出装置32、および、X線検出装置32で検出されたX線の強度分布に基づいてX線検出器データを収集するデータ収集部33を有する。なお、走査ガントリ3と制御インターフェース51との接続については図示を省略する。
【0030】
撮影テーブル4は、被検体を載置し、被検体を走査ガントリ3のX線照射装置31とX線検出装置32との間の空間に搬入するものである。この撮影テーブル4は、後述の制御インターフェース51を通じて制御され、被検体の搬入が行われる。なお、撮影テーブル4と制御インターフェース51との接続については図示を省略する。
【0031】
操作コンソール5は、制御インターフェース51、データ収集バッファ(buffer)52、記憶装置53、データ処理装置(画像再構成手段)54、データ保存装置(保存処理手段)55、表示装置56および操作装置57を有する。
【0032】
制御インターフェース51は、被検体の断層像が画像再構成されるように、操作者による操作装置57の操作に応じて、走査ガントリ3、撮影テーブル4、データ処理装置54等を制御するものである。
【0033】
データ収集バッファ52は、制御インターフェース51からの制御により、走査ガントリ3のデータ収集部33で収集されたX線検出器データを受け取って記憶装置53に入力するものである。
【0034】
記憶装置53は、データ収集バッファ52からX線検出器データを入力され記憶するものである。
【0035】
データ処理装置54は、走査ガントリ3により被検体を走査して得られた複数ビューのX線検出器データ(X線投影データ)に基づいて、画像再構成したときに得られる断層像の高周波域成分が強調されるような再構成関数を用いて、被検体の断層像を画像再構成するものである。具体的には、データ処理装置54は、データ収集バッファ52を通じて記憶装置53に記憶されたX線検出器データを基に、前処理、ビームハードニング(beamhardening)補正処理、zフィルタ重畳処理、再構成関数重畳処理、3次元逆投影処理および後処理を行って、被検体の断層像を画像再構成する。データ処理装置54は、例えば、コンピュータ(computer)等によって構成される。
【0036】
前処理は、X線検出器データを投影データに変換する処理であり、具体的には、X線検出器データに対して、オフセット(offset)補正、対数変換、X線線量補正、感度補正を行う処理である。
【0037】
ビームハードニング補正処理は、ビームハードニング現象の影響で、収集したデータに現れた非線形性を補正する処理であり、本実施形態では、前処理で得られた投影データに対して、その非線形性を補正する処理となる。ビームハードニング補正処理は、例えば、数式(1)にしたがって行われる。
【0038】
【数1】

【0039】
ここで、D11(view,j,i)はビームハードニング補正された投影データ、D1(view,j,i)は前処理で得られた投影データ、B0(j,i),B1(j,i),・・・は係数、“●(ドット(dot))”は乗算演算子を表す。また、View=1〜Nview(ビューの数),j=1〜Nrow,(検出器の列の数),i=1〜Nch(検出器のチャネルの数)である。
【0040】
zフィルタ重畳処理は、断層像において再構成の中心部と周辺部とでスライス厚を略一様にするための補正処理である。一般に、断層像では、再構成中心部に比べ周辺部の方が、スライス厚が厚くなる。一方、X線検出装置32は、被検体の搬送方向と垂直な方向に並んだX線検出器アレイが被検体の搬送方向(以下、z方向ともいう)に列配された多列X線検出器である。そこで、各ビュー角度の投影データについて、再構成中心部付近に対応したチャネルのデータに対しては、z方向のデータのうち断層像の再構成に寄与するデータの範囲が狭くなるような係数のフィルタを重畳し、再構成周辺部付近に対応したチャネルのデータに対しては、z方向のデータのうち断層像の再構成に寄与するデータの範囲が広くなるような係数のフィルタを重畳する。zフィルタ重畳処理は、例えば、数式(2)で表すような列方向フィルタサイズが5列のフィルタを用いて、数式(3)にしたがって行われる。
【0041】
【数2】

【0042】
ここで、D12(view,j,i)は補正されたX線検出器データを表す。
【0043】
再構成関数重畳処理は、ビームハードニング補正処理およびzフィルタ重畳処理が施された投影データをフーリエ(fourier)変換により周波数領域に変換し、その周波数領域に対して再構成関数を掛けた後、さらに逆フーリエ変換を行う処理である。使用する再構成関数は、断層像が表す被検体の部位に応じて切り換えられ。例えば、断層像が表す部位によっては読影で注目すべき組織の種類が異なる場合があるので、その部位が頭部、胸部、腹部等のいずれであるか等によって、軟部用標準再構成関数、骨部用再構成関数、高周波域成分強調用再構成関数等を使い分ける。なお、いずれの再構成関数も断層像の高周波域成分が強調されるような関数である。
【0044】
図2は、再構成関数重畳処理で使用する再構成関数の一例である、軟部用標準再構成関数k1、骨部用再構成関数k2および高周波域成分強調用再構成関数k3の各々のついて、空間周波数と高周波域成分強調度との関係を示した図である。
【0045】
再構成関数重畳処理は、例えば、数式(4)にしたがって行われる。
【0046】
【数3】

【0047】
ここで、D12はzフィルタ重畳処理後の投影データ、D13は再構成関数重畳処理後の投影データ、Kernel(j)は再構成関数、“*”は重畳(コンボリューション(convolution))演算子を表す。
【0048】
3次元逆投影処理は、再構成関数重畳処理が施された投影データに対して3次元逆投影を行い、逆投影データを求める処理である。
【0049】
後処理は、逆投影データに対してCT値変換等を行い、規格化された、被検体の断層像に変換する処理である。
【0050】
表示装置56は、データ処理装置54から出力される被検体の断層像やその他の情報を表示するものである。表示装置56は、例えば、液晶モニタ等で構成される。
【0051】
データ保存装置55は、データ処理装置54から出力される被検体の断層像を、操作者の要求により、または、自動で、記憶装置53あるいはDVD−ROM等の記憶媒体53mに画像データとして、操作者による処理が可能な形態で保存するものである。
【0052】
操作装置57は、ポインティングデバイス(pointing device)、キーボード(keyboard)等で構成される。操作装置57は、操作者によって操作され、各種の指示や情報等をデータ処理装置54に入力する。操作者は表示装置56、データ保存装置55および操作装置57を使用してインタラクティブ(interactive)にX線CT装置2を操作する。
【0053】
画像解析用ワークステーション6は、操作コンソール5により保存された断層像を読み出して断層像の画質を最適化して表示するものである。画像解析用ワークステーション6は、データ読出部(画像読出手段)61、画像処理部(画像処理手段)62、表示処理部(表示処理手段)63および記憶部64を有する。なお、画像処理部62および表示処理部63は、本発明における画像表示手段として機能するものである。
【0054】
データ読出部61は、操作コンソール5のデータ保存装置55により保存された断層像を、記憶装置53あるいは記憶媒体53mから読み出し、記憶部64に記憶させるものである。
【0055】
画像処理部62は、データ読出部61により読み出され記憶部64に記憶された断層像(以下、読出断層像という)のうち少なくとも一部における各局所領域に対して、その局所領域の画像特徴量に応じて画像の高周波域成分の強調度が変化する画像フィルタを適用する画像処理であって、その画像特徴量と強調度との対応関係を表すゲイン曲線を、その局所領域が表す解剖学的な部位の種類に応じて切り換えながら画像フィルタを適用することにより処理済断層像を得るものである。なお、局所領域毎にその領域が表す部位に適した画像フィルタを適用する手法については、例えば、特願2006−023504に詳しく記載されている。
【0056】
画像処理部62は、画像フィルタ制御部621、部位判定部622、ゲイン曲線選択部623および画像フィルタ適用部624を有する。
【0057】
画像フィルタ制御部621は、読出断層像のうち少なくとも一部である、画像処理の対象領域上で所定の仮想枠を走査しながら、画像フィルタを適用する局所領域を注目領域として順次設定するものである。
【0058】
部位判定部622は、画像フィルタ制御部621により設定された注目領域の画像特徴量、すなわち、注目領域の画像を構成する画素の画素値であるCT値に基づいて、当該注目領域の画像が表す解剖学的な部位の種類が、予め設定された複数の種類のうちいずれに該当するかを判定するものである。本実施形態では、注目領域を、肺野部、軟部および骨部のうちいずれに該当するかを判定する。例えば、局所領域の画像を構成する画素のCT値の平均値(以下、平均CT値という)が−200以下であれば肺野部、−200〜+200の範囲内であれば軟部(縦隔)、+200以上であれば骨部と判定する。
【0059】
ゲイン曲線選択部623は、予め設定された複数のゲイン曲線の中から、部位判定部622により判定された部位の種類に対応したゲイン曲線を選択するものである。具体的には、注目領域の画像が表す解剖学的な部位の種類が軟部であると判定された場合には、高周波域成分の強調度が、軟組織に相当するCT値の範囲において比較的小さくなるようなゲイン曲線を選択し、また、注目領域の画像が表す解剖学的な部位の種類が、肺野部あるいは骨部であると判定された場合には、高周波域成分の強調度が、その判定された肺野あるいは骨のいずれかに相当するCT値の範囲において比較的大きくなるようなゲイン曲線を選択する。なお、これら複数のゲイン曲線を特定する情報は、上記の記憶部63に記憶されている。
【0060】
図3は、ゲイン曲線の一例を示した図である。図示のゲイン曲線では、肺野および骨に相当するCT値の範囲では高周波域成分の強調度を比較的大きくし、軟組織に相当するCT値の範囲では高周波域成分の強調度を比較的小さくするように規定されている。このようなゲイン曲線で定義された画像フィルタを画像に適用すると、肺野および骨の領域では高周波域成分が保持されるか、より強調され、縦隔または軟組織の領域では高周波域成分が抑制され平滑化された画像が得られることになる。
【0061】
図4は、画像フィルタの一例を示した図である。図示の画像フィルタは、3×3画素の領域を局所領域として、この局所領域の画像を構成する各画素に対応したフィルタ係数を、εを用いた所定の係数とする画像フィルタを示している。この画像フィルタは、ε<0とすれば、高周波域成分強調フィルタとなり、ε>0とすれば、平滑化フィルタとなる。例えば、ε=1/9とすれば、この画像フィルタは平滑化フィルタとなり、当該画像フィルタを適用した画像は、数式(5)にしたがって導出される。
【0062】
【数4】

【0063】
ここで、g1(x,y)は画像フィルタ適用後の画像における座標(x,y)に位置する画素の値(CT値)、g(x,y)は画像フィルタ適用前の画像における座標(x,y)に位置する画素の値(CT値)を表す。なお、画像フィルタは図4に示すものの他、例えば、図5に示すようなものであってもよい。図5に示す画像フィルタは、5×5画素の領域を局所領域として、この局所領域の画像を構成する各画素に対応したフィルタ係数を、ε1,ε2およびε3を用いた所定の係数とするものである。
【0064】
画像フィルタ適用部624は、ゲイン曲線選択部622により選択されたゲイン曲線で定義された画像フィルタを注目領域の画像に適用するものである。
【0065】
画像フィルタ制御部621は、読取断層像のうち画像処理の対象領域すべてについて画像フィルタが適用されて、画像処理が施された処理済断層像が得られるように、組織判定部622、ゲイン曲線選択部623および画像フィルタ適用部624を制御するものである。
【0066】
表示処理部63は、液晶モニタ等で構成される不図示の表示部を有し、上述のようにして得られた処理済断層像を表示部の画面に表示させるものである。
【0067】
次に、第1の実施形態に係るX線CTシステム1の動作について説明する。
【0068】
図6は、第1の実施形態に係るX線CTシステム1における処理の流れを説明するフローチャート(flow chart)である。
【0069】
操作者による操作コンソール5の操作装置57の操作に応答して、撮影対象である被検体が載置された撮影テーブル4が移動し、被検体が走査ガントリ3のX線照射空間に搬入される。そして、いわゆるスキャンが行われる。例えば、撮影テーブル4を停止させた状態でX線照射装置およびX線検出装置を回転させることにより、コンベンショナルスキャン(conventional scan)、別名、アキシャルスキャン(axial scan)が行われる。あるいは、X線照射装置およびX線検出装置の回転に並行して、撮影テーブル4を被検体の体軸方向に連続的に移動させることにより、X線照射装置31およびX線検出装置32は、被検体に関して相対的に、被検体を包囲する螺旋状の軌道に沿って旋回することになり、いわゆるヘリカルスキャン(helical scan)が行われる。
【0070】
ここで、スキャン1回転当たりに複数(例えば1000程度)のビューのX線検出器データが、X線検出装置32−データ収集部33−データ収集バッファ52の系列によって収集され、記憶装置53に記憶される(ステップ(step)S1)。
【0071】
次に、データ処理装置54は、記憶装置53に記憶されたX線検出器データを基に、前処理、ビームハードニング補正処理、zフィルタ重畳処理、再構成関数重畳処理、3次元逆投影処理および後処理を行って、高周波域成分が強調された被検体の断層像を生成し、その画像データをデータ保存装置55および表示装置56に出力する(ステップS2)。
【0072】
被検体の断層像が生成されると、表示装置56はデータ処理装置54から出力された画像データに基づいて被検体の断層像を表示し、データ保存装置55は同画像データを記憶装置53に保存する(ステップS3)。このとき、画像データは、被検体を特定する情報が付帯され、操作者が処理可能な態様で保存される。
【0073】
画像解析用ワークステーション6は、データ読出部61により操作コンソール5の記憶装置53に保存された被検体の断層像の画像データを読み出し、記憶部64に記憶させる(ステップS4)。
【0074】
画像処理部62の画像フィルタ制御部621は、データ読出部61により読み出された読出断層像のうち画像処理の対象領域において、局所領域である注目領域を設定する(ステップS5)。次に、部位判定部622が、その注目領域における平均CT値に基づいて、その注目領域の画像が表す解剖学的な部位の種類が、「軟部」であるか否かを判定する(ステップS6)。ここで、注目領域の画像が表す部位が「軟部」であると判定された場合には、ゲイン曲線選択部623は、記憶部64に記憶されている、複数のゲイン曲線を特定する情報の中から、「軟部用ゲイン曲線」の情報を読み込んで取得し、画像フィルタ適用部624が、この「軟部用ゲイン曲線」で定義された画像フィルタを注目領域の画像に適用する(ステップS7)。
【0075】
ステップS6において、注目領域の画像が表す部位が「軟部」でないと判定された場合には、部位判定部622は注目領域の画像が表す部位が「肺野部」であるか否かを判定する(ステップS8)。ここで、注目領域の画像が表す部位が「肺野部」であると判定された場合には、ゲイン曲線選択部623が記憶部64に記憶されている、複数のゲイン曲線を特定する情報の中から、「肺野部用ゲイン曲線」を読み込んで取得し、画像フィルタ適用部624が、この「肺野部用ゲイン曲線」で定義された画像フィルタを注目領域の画像に適用する(ステップS9)。
【0076】
ステップS8において、注目領域の画像が表す部位が「肺野部」でないと判定された場合には、注目領域の画像が表す部位は「骨部」であるとみなし、ゲイン曲線選択部623が記憶部64に記憶されている複数のゲイン曲線を特定する情報の中から、「骨部用ゲイン曲線」を読み込んで取得し、画像フィルタ適用部624が、この「骨部用ゲイン曲線」で定義された画像フィルタを注目領域の画像に適用する(ステップS10)。
【0077】
注目領域の画像に対して画像フィルタが適用されると、画像フィルタ制御部621が、読取断層像における画像処理の対象領域上で、次の注目領域として設定すべき局所領域が残っているか否かを判定する(ステップS11)。次の注目領域として設定すべき局所領域が残っている場合にはステップ5に戻り、新たな注目領域を設定する。一方、次の注目領域として設定すべき局所領域が残っていない場合には、画像処理を終了する。
【0078】
このようにして処理済断層像が得られると、表示処理部63は、その処理済断層像を表示部の画面に表示する(ステップS12)。そして、読影者は、画像解析用ワークステーション6の表示部に表示された処理済断層像を見て読影することになる。
【0079】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0080】
本発明の第2の実施形態によるX線CTシステムは、図1に示すような、第1の実施形態によるX線CTシステムと略同様の構成であるが、部位判定部622の動作が、第1の実施形態とは異なるものである。部位判定部622は、第1の実施形態においては、注目領域の画像が表す部位を、肺野部、軟部および骨部の3種類のうちいずれに該当するか判定していたが、この第2の実施形態では、注目領域の画像が表す部位を、肺野部、軟部、骨部および造影剤の4種類のうちいずれに該当するか判定するものである。
【0081】
X線CT撮影では、被検体の血管に造影剤を注入して撮影する場合があるが、この造影剤を表す画像に対しては、造影剤に適した画像フィルタが適用されたり、あるいは、画像フィルタが適用されないようにしたりすることが望ましい場合がある。ところが、造影剤に対応するCT値は、骨に対応するCT値と近接しており、CT値が約+200〜+500の範囲において区別が難しく、単純な平均CT値の閾値判定では両者を正確に判別することが難しい。
【0082】
その一方で、骨と造影剤とでは、内部構造や物質の均一性に違いがあり、その違いがCT値の空間的な分布の違いとして現れる。
【0083】
図7(a)は、血管(大動脈)に注入された造影剤を表す画像におけるCT値の空間的な変化を示した図であり、図7(b)は、骨を表す画像におけるCT値の空間的な変化を示した図である。例えば、大動脈が造影剤で造影された場合には、図7(a)に示すように、平均CT値が+500程度であるとすると、その大動脈の断面におけるCT値のばらつきは、CT値の変化幅として20〜30程度である。このCT値のばらつきは、造影剤の均一性やビームハードニング等による影響が考えられる。また、骨の場合には、図7(b)に示すように、一般的に、表面が骨膜で覆われ、内部には緻密質、更に中心部には海綿質が存在しており、CT値は、緻密質では比較的高くなり、海綿質では比較的低くなる。
【0084】
そこで、本実施形態では、部位判定部622は、注目領域における平均CT値の閾値判定だけでなく、上記のような骨と造影剤のCT値の空間的な分布に関する特徴の違いを利用して、注目領域の画像が表す組織を肺野部、軟部、骨部および造影剤の4種類のうちいずれに該当するか判定する。以下、その判定手法の一例を説明する。
【0085】
まず、読出断層像における各画素に対してCT値の閾値判定を行い、所定値以上のCT値を有する画素領域、すなわち、骨または造影剤に相当するCT値を有する画素領域が抽出された画像P0を得る。そして、この画像P0において、2次元的に連続した領域(以下、2次元連続領域という)毎に番号z(z=1,2,・・・)を付与するラベリング処理を行う。次に、画像P0に対して、各2次元連続領域Rzを所定画素幅分だけ収縮させる収縮用論理フィルタを、すべての2次元連続領域がなくなるまで段階的に適用し、各段階における画像を、P1,P2,・・・として得る。そして、隣接する2画像の組合せ毎に2画像間で減算処理を行い、差分画像P01,P12,・・・を得る。すなわち、画像P0から画像P1を減算して差分画像P01を得、画像P1から画像P2を減算して差分画像P12を得るといった減算処理を繰り返す。このようにして得られた複数の差分画像P01,P12,・・・に基づいて、図8に示すように、各2次元連続領域Rz毎に、所定画素幅で層状になった殻状領域Rz1,Rz2,・・・を認識する。そして、各2次元連続領域Rz毎に、この層状になった各殻状領域Rzi(i=1,2,・・・)に対して、殻状領域を構成する画素のCT値の平均値Mziおよび標準偏差Sziを求め、さらに、これらCT値の平均値Mziおよび標準偏差Sziの標準偏差SMz,SSzを算出し、これらの値が所定の閾値Th以上である場合、例えば、SMz+SSz≧Thを満たす場合には、その2次元連続領域Rzを骨領域と判別し、上記式を満たさない場合には、その2次元連続領域Rzを造影剤領域と判別する。
【0086】
このようにして、読出断層像における骨領域と造影剤領域とを区別して抽出し、その位置を把握しておく。後は、設定された注目領域における平均CT値に基づいて、骨部または造影剤のいずれかであると判定された場合に、その注目領域の位置に基づいて、骨部であるか造影剤であるかを判定するようにすればよい。
【0087】
次に、第2の実施形態によるX線CTシステム1の動作について説明する。
【0088】
図9は、第2の実施形態によるX線CTシステム1における処理の流れを示すフローチャートである。なお、ステップS21〜S24は、第1の実施形態におけるステップS1〜S4と同様の処理になるので、ここでは説明を省略する。
【0089】
データ読出部61により断層像が読み出されると、画像処理部62の部位判定部622が、上述の判定手法により、読出断層像における骨領域と造影剤領域を区別して抽出し、それぞれの位置を予め把握する(ステップS25)。次に、画像フィルタ制御部621は、その読出断層像のうち画像処理の対象領域において、局所領域である注目領域を設定する(ステップS26)。部位判定部622は、その注目領域における平均CT値に基づいて、その注目領域の画像が表す解剖学的な部位の種類が、「軟部」であるか否かを判定する(ステップSS27)。ここで、注目領域の画像が表す部位が「軟部」であると判定された場合には、ゲイン曲線選択部623は、記憶部64に記憶されている、複数のゲイン曲線を特定する情報の中から、「軟部用ゲイン曲線」の情報を読み込んで取得し、画像フィルタ適用部624が、この「軟部用ゲイン曲線」で定義された画像フィルタを注目領域の画像に適用する(ステップS28)。
【0090】
ステップS27において、注目領域の画像が表す部位が「軟部」でないと判定された場合には、部位判定部622は注目領域の画像が表す部位が「肺野部」であるか否かを判定する(ステップS29)。ここで、注目領域の画像が表す部位が「肺野部」であると判定された場合には、ゲイン曲線選択部623が記憶部64に記憶されている、複数のゲイン曲線を特定する情報の中から、「肺野部用ゲイン曲線」を読み込んで取得し、画像フィルタ適用部624が、この「肺野部用ゲイン曲線」で定義された画像フィルタを注目領域の画像に適用する(ステップS30)。
【0091】
ステップS29において、注目領域の画像が表す部位が「肺野部」でないと判定された場合には、注目領域の画像が表す部位は「骨部または造影剤」であるとみなし、さらに、その注目領域の位置に基づいて注目領域が先に求めた骨領域上にあるか否かを判定し(ステップS31)、肯定される場合には、注目領域を「骨部」とみなして、ゲイン曲線選択部623が記憶部64に記憶されている複数のゲイン曲線を特定する情報の中から、「骨部用ゲイン曲線」を読み込んで取得し、画像フィルタ適用部624が、この「骨部用ゲイン曲線」で定義された画像フィルタを注目領域の画像に適用する(ステップS32)。一方、ステップS31において否定される場合には、注目領域を「造影剤」とみなして、ゲイン曲線選択部623が記憶部64に記憶されている複数のゲイン曲線を特定する情報の中から、「造影剤用ゲイン曲線」を読み込んで取得し、画像フィルタ適用部624が、この「造影剤用ゲイン曲線」で定義された画像フィルタを注目領域の画像に適用する(ステップS33)。
【0092】
注目領域の画像に対して画像フィルタが適用されると、画像フィルタ制御部621が、読取断層像における画像処理の対象領域上で、次の注目領域として設定すべき局所領域が残っているか否かを判定する(ステップS34)。次の注目領域として設定すべき局所領域が残っている場合にはステップ26に戻り、新たな注目領域を設定する。一方、次の注目領域として設定すべき局所領域が残っていない場合には、画像処理を終了する。
【0093】
このようにして処理済断層像が得られると、表示処理部63は、その処理済断層像を表示部の画面に表示する(ステップS35)。
【0094】
このように、上記第1および第2の実施形態によるX線CTシステムでは、高周波域成分を強調して画像再構成された断層像に対して、局所領域毎に、当該領域の解剖学的な部位の種類に応じて、当該領域の画像特徴量と高周波域成分の強調度との対応関係を表すゲイン曲線が異なる画像フィルタを切り換えて適用する画像処理手段を、画像再構成手段(例えば、操作コンソール)ではなく画像表示手段(例えば、画像解析用ワークステーション)が具備し、断層像を保存する手段は、画像フィルタ適用前の断層像を保存するようにしている。すなわち、本発明のX線CTシステムでは、高周波域成分が強調された断層像に対して画像特徴量依存型の画像フィルタを適用する画像処理を、断層像の画像再構成と切り離して、断層像を表示する際に行い、断層像の保存は、断層像の画像再構成と切り離さずに行うようにしている。
【0095】
これにより、断層像を保存する際に画像フィルタ適用前の断層像を保存し、断層像を表示する際に断層像に画像フィルタを適用して画像フィルタ適用後の断層像を表示することができ、高周波域成分を強調する画像再構成によって得られた断層像に対して、局所領域毎に、当該領域の解剖学的な部位の種類に応じて、画像特徴量に依存した画像フィルタを切り換えながら適用することにより画質が読影用に最適化された断層像を表示可能としつつ、高周波域成分が欠落していない画像フィルタ適用前の断層像を表示させたい場合や当該断層像に別の画像処理を施して加工したい場合などに対応できる。
【0096】
なお、上記の実施形態では、被検体の断層像を画像再構成する手段と、画像再構成によって得られた断層像に画像フィルタを適用して処理済断層像を得る手段とを、X線CT装置2の操作コンソール5と画像解析用ワークステーション6とに分離して設けているが、例えば、これら両手段を分離せず、操作コンソール5に1つにまとめて設けるようにしてもよい。
【0097】
また、上記の実施形態では、画像解析用ワークステーション6が、断層像に画像フィルタを適用して処理済断層像を得る画像処理部62、および、処理済断層像を表示する表示処理部63を予め有しているが、例えば、図10に示すように、操作コンソール5の画像保存部X線CT装置2が、上記のような画像処理部62および表示処理部63を有しない、画像解析用ワークステーション等のコンピュータに対して、断層像の画像データと、コンピュータをこのような画像処理部および表示処理部として機能させるための画像表示ツール(tool)であるプログラム(program)とを共に転送し、コンピュータ側でそのプログラムを実行するようにしてもよい。このようにすれば、断層像に画像フィルタを適用して処理済断層像を得る画像処理部およびその処理済断層像を表示する表示処理部とを有しない、画像解析用ワークステーション等のコンピュータであっても、同様の画像処理を行うことができる。
【0098】
また、上記の実施形態では、断層像に適用する画像フィルタとして2次元の画像空間フィルタを用いているが、例えば、被検体の搬送方向すなわち被検体の体軸方向に連続して並ぶ複数の断層像における当該体軸方向の画素を考慮した、3次元の画像空間フィルタを用いるようにしてもよい。近年、X線検出器として、多列X線検出器やフラットパネルX線検出器に代表されるマトリクス構造の2次元X線検出器が用いられるようになり、被検体の体軸方向に連続した複数の断層像からなる3次元画像において、被検体の搬送方向のスライス厚を充分薄くすることができ、被検体の断層面方向であるx,y軸および被検体の体軸方向であるz軸の各方向に対して画素の分解能が均一な3次元画像を生成することが可能になっている。換言すると、3次元画像の画素分解能の等方性、すなわち、アイソトロピック(isotropic)が実現されている。したがって、スライス(slice)厚が充分に薄い3次元画像については、3次元の画像空間フィルタを用いた方が画質の最適化には高い効果を奏する場合がある。特に、画像ノイズ(noise)改善という観点では、より多くの画素を用いた方が、よい結果が得られるので、2次元の画像空間フィルタよりも、より多くの画素を用いる3次元の画像空間フィルタを用いる方が、効果が大きい。
【0099】
また、上記の実施形態では、断層像に適用する画像フィルタとして、CT値に依存した画像フィルタを用いているが、さらに、断層像のスライス厚に依存した画像フィルタを用いる場合も考えられる。
【0100】
上記の実施形態は、本発明を実施するための最良の形態の一例であり、本発明はこれらの実施形態に限定されない。すなわち、本発明は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、あらゆる変更・追加が可能である。
【0101】
また、コンピュータを本発明のX線CTシステムあるいはその各手段として機能させるためのプログラムおよびそのプログラムが記録された記録媒体も、本発明の実施形態の一例である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】発明を実施するための最良の形態例である医用画像表示システムのブロック図
【図2】各種再構成関数による空間周波数と高域強調度との関係を示す図
【図3】CT値と高周波域成分の強調または抑制の程度を規定する画像フィルタ曲線の一例を示す図
【図4】断層像に適用する画像フィルタの一例を示す図
【図5】断層像に適用する他の画像フィルタの一例を示す図
【図6】第1の実施形態によるX線CTシステムにおける処理の流れを示すフローチャート
【図7】骨の画像および造影剤の画像におけるCT値の空間的な変化を示す図
【図8】骨の画像および造影剤の画像において分割された層状の殻状領域を示す図
【図9】第2の実施形態によるX線CTシステムにおける処理の流れを示すフローチャート
【図10】X線CT装置から断層像と画像表示ツールとを共にコンピュータに転送する実施形態の概念を示す図
【符号の説明】
【0103】
1 X線CTシステム
2 X線CT装置
3 走査ガントリ
4 撮影テーブル
5 操作コンソール
6 画像解析用ワークステーション
31 X線照射装置
32 X線検出装置
33 データ収集部
51 制御インターフェース
52 データ収集バッファ
53 記憶装置
54 データ処理装置(画像再構成手段)
55 データ保存装置(保存処理手段)
56 表示装置
57 操作装置
61 データ読出部(画像読出手段)
62 画像処理部(画像処理手段)
63 表示処理部(表示処理手段)
64 記憶部
621 画像フィルタ制御部
622 部位判定部
623 ゲイン曲線選択部
624 画像フィルタ適用部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を走査して収集されたX線投影データに基づいて、前記被検体の断層像の高周波域成分を強調する再構成関数を用いて、前記被検体の断層像を画像再構成する画像再構成手段と、
前記画像再構成された断層像を記憶装置または記憶媒体に保存する保存処理手段と、
前記保存処理手段により保存された断層像を読み出す画像読出手段と、
前記読み出された断層像の少なくとも一部における各局所領域に対して、該局所領域の画像特徴量に応じて画像の高周波域成分の強調度が変化する画像フィルタを適用する画像処理であって、前記画像特徴量と前記強調度との対応関係を表すゲイン曲線を、該局所領域が表す解剖学的な部位の種類に応じて切り換える画像処理を施すことにより処理済断層像を得る画像処理手段、および、該処理済断層像を表示する表示処理手段を有する画像表示手段とを備えたことを特徴とするX線CTシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−148970(P2008−148970A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−340795(P2006−340795)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】