説明

X線CT装置及び画像再構成方法

【課題】 寝台天板等の振動が原因で画像に発生するぶれ等を防止し、高精度で高分解能の画像を得ることが可能なX線CT装置を提供する。
【解決手段】 X線源15、X線検出器17又は寝台天板29の位置を位置検出器47で検出し、実際に検出した各位置情報からX線源15、X線検出器17及び寝台天板29の相対的な位置情報を求め、その相対的な位置情報に応じてX線投影データを補正して画像データを再構成するものである。例えば、振動等により寝台天板29が変位した場合は、その変位量に相当する分だけずれた位置にあるX線検出素子により検出されるX線投影データを用いて画像データを再構成する。このように、変位量に応じてX線投影データを補正して画像データを再構成することにより、寝台天板29の変位を相殺することができ、その結果、高精度で高分解能の画像を得ることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、X線CT装置に関し、特にX線源、X線検出器又は寝台天板等の位置を検出し、その位置情報を用いて画像データを再構成するX線CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置は、回転架台(ガントリ)と、回転架台の近傍に配置された寝台(ベッド)とを備えている。回転架台には被検体を挿抜するための開口部が設けられ、また、この開口部の中心軸回りに対向状態を維持しつつ連続回転可能にX線源とX線検出器とが回転架台に内設されている。寝台は、昇降可能な寝台基台の上部に水平移動可能に被検体搭載用の寝台天板が支持されている。
【0003】
このX線CT装置による所定部位の断層像の撮像は、被検体を載置した寝台天板を水平移動させて被検体を回転架台開口部内に挿入し、X線源とX線検出器とを結ぶ撮像位置に被検体の撮像部位を位置させる。そして、X線源とX線検出器とを被検体の回りで回転させ、この回転中にX線源から被検体に向けてX線を照射し、X線検出器が被検体を透過した透過X線データを検出する。
【0004】
なお、X線検出器には、X線検出器とともに回転されるデータ収集エレクトロニクス(DAS)が接続されており、このDASが、所定タイミングごとにX線検出器で検出されるX線投影データ(アナログな電気信号)をデジタルデータに変換して収集する。DASによるデータ収集タイミングは、X線源などが所定角度回転されるごとであり、X線源などが被検体の回りで1周回転される間にDASは所定回数だけデータを収集する。DASで収集された、被検体の周回からの1周分の収集データは再構成処理部に送られ、再構成処理部は与えられたX線投影データに基づき上記撮像部位の画像データを周知の計算方法で再構成する。
【0005】
また、らせん状のスキャン(ヘリカルスキャン)を行い、連続した部位からなる撮像領域(例えば、胸部から上腹部にかけての領域)を連続して撮像し、この領域内の任意の部位の画像を得るように構成されたX線CT装置が提案実施されている(例えば、特許文献1)。このヘリカルスキャンを行なえるX線CT装置は、従来、以下のように構成されている。
【0006】
例えば、設定された撮像領域の撮像開始部位(例えば、胸部)を回転架台開口部内の撮像位置に位置させ、X線を照射させながらX線源とX線検出器とを一定の回転速度で連続回転させ、この回転に同期して、撮像位置に位置される部位を撮像領域の撮像終了部位(例えば、上腹部)方向に変位させるように寝台天板を一定速度で水平移動させ、X線源とX線検出器との回転軌跡が被検体に対してらせん状になるようにスキャンして、上記設定された撮像領域を連続して撮像する。
【0007】
X線源とX線検出器の回転速度は、制御装置により制御される。これにより、例えば、X線源が被検体の真上に位置(X線検出器は被検体の真下に位置)する状態から次にX線源が被検体の真上に位置する状態までの間に、X線源などは被検体に対して相対的にらせん状に移動するが、DASは所定回数分のデータを収集する。
【0008】
また、寝台天板の水平移動はX線源などの回転速度に応じた速度で行われる。このX線源などの回転速度と寝台天板の移動速度とが、一定の比率になるように制御装置により制御される。制御装置は設定されたX線源などの回転速度に応じた寝台天板の移動速度を計算で算出し、この計算によって得られた移動速度で寝台天板が水平移動するように制御する。
【0009】
また、撮像領域内の任意の部位の画像データを再構成するためには、DASで収集したX線投影データに対する寝台天板の位置情報が必要になるが、この位置情報は、制御装置により求められている。制御装置は、例えば、X線源等の回転速度と寝台天板の移動速度とに基づき位置情報を算出している。ヘリカルスキャンの間、X線源等の回転速度と天板の移動速度とはそれぞれ一定であるので、各X線投影データに対する寝台天板の位置情報を一義的に求めている。つまり、X線源、X線検出器及び寝台天板の実際の位置を検出してX線投影データに対する寝台天板の位置情報を求めるのではなく、理想的なモデル(理論的なモデル)に基づいてX線源、X線検出器及び寝台天板の位置を求めている。そして、理想的なモデル(理論的なモデル)に基づいて算出された位置情報を用いて画像データを再構成している。
【0010】
再構成処理部では、この寝台天板の位置情報とその位置に対するX線投影データとを特定し、所望の部位の周回収集データ(1周分の収集データ)やその前後1周分の収集データなどに基づき、周知の計算方法でその部位の画像データを再構成する。
【0011】
このように従来のX線CT装置においては、X線源及びX線検出器からなる測定系と被検体を載置した寝台天板との相対的な位置関係は、測定系及び寝台天板を制御している制御装置により計算して求められ、再構成処理部はその計算により求められた相対的な位置関係に基づき画像データを再構成している。
【0012】
【特許文献1】特開2004−181069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来のX線CT装置においては、X線源、X線検出器及び寝台天板の位置を実際に測定して求めるのではなく、理想的なモデル(理論的なモデル)に基づいて制御装置が計算して求めている。このような計算によれば、簡単に位置情報を求めることができるが、特にヘリカルスキャンの場合、回転架台及び寝台の振動等が原因となって検出されたX線投影データに微細なぶれが発生し、X線投影データに基づき再構成される画像がぼやけたものになってしまう場合がある。
【0014】
X線CT装置は高分解能化されつつあり、最近のX線CT装置の分解能は、例えば、0.5[mm]以下が要求される。上述した回転架台及び寝台の振動等が大きい場合は、高分解能化の要求を満たすことが困難となる。
【0015】
上述したように、従来のX線CT装置においては、X線源及びX線検出器は制御装置による制御により正確な円周上を滑らかに動くという理想的なモデル(理論的なモデル)を想定しており、制御装置はその理想的なモデルに基づいてX線源及びX線検出器の位置を計算していた。これと同様に、寝台天板も制御装置の制御により正確に動くという理想的なモデルを想定しており、制御装置はその理想的なモデルに基づいて寝台天板の位置を計算していた。このようにX線源、X線検出器及び寝台天板の動作の理想的なモデルを想定し、その理想的なモデルに基づいて、上述した、X線源及びX線検出器からなる測定系と寝台天板との相対的な位置関係を求めていた。
【0016】
ところが、回転架台及び寝台天板は別々の制御に基づいて動作しており、更に、上述したように回転架台等には振動等が発生するため、実際の動作は理想的なモデルからずれてしまい、X線源及びX線検出器からなる測定系と寝台天板との相対的な位置関係を正確に求めることは困難となる。回転架台等に振動等が発生した場合であっても、相対的な位置関係を正確に求めることが困難であるため、その振動等による影響を考慮せずに理想的なモデルに従って相対的な位置関係を求めてしまい、その結果、再構成される画像はぼやけたものになってしまう。
【0017】
X線源、X線検出器及び寝台天板の振動による画像再構成への影響について、図6を参照して説明する。図6はX線CT装置の回転架台を正面からみた図であり、X線源、X線検出器及び寝台天板が示され、回転架台等は省略されている。図6において、X線源及びX線検出器は矢印Aの方向に回転させられ、寝台天板は図面に垂直な方向に移動可能となっている。
【0018】
例えば、ヘリカルスキャンにより被検体の画像データを収集する場合、制御装置の制御により、寝台天板29は図面に垂直な方向に移動し、それと同時にX線源15及びX線検出器17が被検体の周囲を回転する。このよう状態でX線源15からX線ビームが曝射され、被検体を透過したX線ビームがX線検出器17にて検出される。
【0019】
まず、図6(a)を参照しつつ寝台天板29が振動する場合について説明する。寝台天板29に振動等が発生しない場合においては、制御装置(図示しない)の制御により寝台天板29は破線で表された高さに維持されて図面に垂直な方向に移動させられているものとする。X線源15及びX線検出器17が寝台天板29(被検体)の周囲を矢印Aの方向に回転しながらスキャンを行ない、連続的なX線投影データを収集する。そして、再構成処理部(図示しない)は寝台天板29が理想的なモデルを反映して移動しているものとし、その理想モデルから得られるX線源15、X線検出器17及び寝台天板29の相対的な位置情報とX線投影データとから画像データを再構成する。この場合、破線で表された寝台天板29は理想モデルを反映した位置に維持されているため、再構成された画像にぶれ等は発生せず、所望の画像を得られる。
【0020】
ところが、寝台天板29に上下方向(矢印Bの方向)の振動が発生した場合、寝台天板29は、制御装置による制御により理想的なモデルを反映した本来の高さ(破線で表された位置)から、矢印Bの方向(実線で表される高さ)にずれ、そのずれた位置においてスキャンが行なわれてX線投影データが収集される。このように寝台天板29が上下方向にずれた状態においても、再構成処理部は寝台天板29が理想的なモデルを反映して移動しているものとして、その理想的なモデルから得られるX線源15、X線検出器17及び寝台天板29の相対的な位置情報とX線投影データとから画像データを再構成する。このように、本来の位置から上下方向にずれた状態の相対的な位置情報に基づいて画像データを再構成するため、再構成された画像は上下方向にぼやけたものになってしまう。
【0021】
また、図6(b)を参照しつつ、X線源及びX線検出器に振動が発生する場合について説明する。このX線源15等に振動が発生する場合も、寝台天板29の場合と同じである。X線源15及びX線検出器17に振動等が発生しない場合においては、制御装置の制御によりX線源15等は破線で表された位置に維持され、寝台天板29(被検体)の周囲を回転しながらスキャンを行ない、連続的なX線投影データを収集する。そして、再構成処理部はX線源15及びX線検出器17が理想的なモデル(理想的な回転軌道)を反映して回転しているものとし、その理想モデルから得られるX線源15、X線検出器17及び寝台天板29の相対的な位置情報とX線投影データとから画像データを再構成する。この場合、破線で表されたX線源15及びX線検出器17は理想モデルを反映して回転しているため、再構成された画像にぶれ等は発生せず、所望の画像が得られる。
【0022】
ところが、X線源15及びX線検出器17に左右方向の振動が発生した場合、X線源15及びX線検出器17は、制御装置による制御により理想的なモデルを反映した本来の回転軌道(破線で表される位置)から、矢印C1又は矢印C2の方向(実線で表される位置)にずれ、そのずれた位置においてスキャンが行なわれてX線投影データが収集される。このようにX線源15及びX線検出器17が左右方向にずれた状態で回転している場合においても、再構成処理部はX線源15及びX線検出器17が理想的なモデル(回転軌道)を反映して回転しているものとして、その理想モデルから得られるX線源15、X線検出器17及び寝台天板29の相対的な位置情報とX線投影データとから画像データを再構成する。このように、本来の回転軌道から左右方向ずれた状態の相対的な位置情報に基づいて画像データを再構成するため、再構成された画像は左右方向にぼやけたものになってしまう。
【0023】
以上のように、従来のX線CT装置においては、X線源、X線検出器又は寝台天板が振動等により本来の理想的な軌道からずれてしまった場合に、画像再構成時にそのずれが考慮されずに画像データが再構成されてしまう。そのことにより、再構成された画像は本来の理想的な軌道からがずれた分、ぼやけたり、ずれたりしたものになってしまい、高精度で高分解能な画像を得ることができない。
【0024】
この発明は上記の問題を解決するものであり、X線源、X線検出器及び寝台天板の位置を検出してそれらの相対的な位置関係を求め、その相対的な位置関係に基づいて画像データを再構成することにより、画像に発生するぶれ等を相殺して高分解能の画像を得ることが可能なX線CT装置及び画像再構成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
請求項1に記載の発明は、X線ビームを被検体に曝射するX線源と、前記X線源に対して前記被検体が配置される空間を隔てて対向配置されたX線検出器と、前記被検体を載置した寝台天板と、前記X線源及び前記X線検出器を前記被検体の周囲を回転させることにより前記被検体に対してスキャンを行なうスキャン手段と、前記寝台天板の位置を検出する第1の検出器と、前記第1の検出器により検出された位置情報に基づいて、前記X線源、前記X線検出器及び前記寝台天板の位置関係を算出する演算手段と、前記演算手段により算出された位置関係に基づいて、前記X線検出器により得られたX線投影データから画像データを再構成する再構成手段と、を有することを特徴とするX線CT装置である。
【0026】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のX線CT装置であって、前記X線源及び前記X線検出器の位置を検出する第2の検出器を更に有し、前記演算手段は、前記第1の検出器及び前記第2の検出器により検出された位置情報に基づいて、前記X線源、前記X線検出器及び前記寝台天板の相対的な位置を算出し、前記再構成手段は、前記演算手段により算出された相対的な位置に基づいて、前記X線投影データから画像データを再構成することを特徴とするものである。
【0027】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のX線CT装置であって、前記演算手段は、前記第1の検出器及び前記第2の検出器により検出された位置情報に基づいて、前記X線源、前記X線検出器及び前記寝台天板の間の相対的な変位を算出し、前記再構成手段は、前記演算手段により算出された相対的な変位量に応じて、前記X線投影データを補正して画像データを再構成することを特徴とするものである。
【0028】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のX線CT装置であって、前記X線検出器は複数のX線検出素子が配列してなり、前記再構成手段は、前記相対的な変位量分だけずれた位置にあるX線検出素子により検出されたX線投影データを用いて画像データを再構成することを特徴とするものである。
【0029】
請求項5に記載の発明は、X線ビームを被検体に曝射するX線源と、前記X線源に対して前記被検体が配置される空間を隔てて対向配置されたX線検出器と、前記被検体を載置し、その内部に指標材が埋め込まれた寝台天板と、前記X線源及び前記X線検出器を前記被検体の周囲を回転させることにより前記被検体に対してスキャンを行なうスキャン手段と、前記X線検出器により得られたX線投影データに基づいて画像データを再構成する再構成手段と、前記再構成手段により再構成された画像データから前記指標材の変位量を算出する演算手段と、を有し、前記再構成手段は、前記指標材の変位量に応じて前記X線投影データを補正して新たな画像データを再構成することを特徴とするX線CT装置である。
【0030】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のX線CT装置であって、前記X線検出器は複数のX線検出素子が配列してなり、前記再構成手段は、前記指標材の変位量分だけずれた位置にあるX線検出素子により検出されたX線投影データを用いて画像データを再構成することを特徴とするものである。
【0031】
請求項7に記載の発明は、X線ビームを前記被検体に曝射するX線源及び前記X線源に対して前記被検体が配置される空間を隔てて対向配置されたX線検出器を、被検体が載置された寝台天板の周囲を回転させることにより前記被検体に対してスキャンを行なうスキャンステップと、前記寝台天板の位置を検出する位置検出ステップと、前記検出された位置情報に基づいて、前記X線源、前記X線検出器及び前記寝台天板の位置関係を算出する演算ステップと、前記演算ステップにて算出された位置関係に基づいて、前記X線検出器により得られたX線投影データから画像データを再構成する再構成ステップと、を含むことを特徴とする画像再構成方法である。
【0032】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の画像再構成方法であって、前記位置検出ステップでは、前記X線源及び前記X線検出器の位置を更に検出し、前記演算ステップでは、前記検出された位置情報に基づいて、前記X線源、前記X線検出器及び前記寝台天板の相対的な位置を算出し、前記再構成ステップでは、前記演算ステップにて算出された相対的な位置に基づいて、前記X線投影データから画像データを再構成することを特徴とするものである。
【0033】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の画像再構成方法であって、前記演算ステップでは、前記位置検出ステップにて検出された位置情報に基づいて、前記X線源、前記X線検出器及び前記寝台天板の間の相対的な変位を算出し、前記再構成ステップでは、前記演算ステップにより算出された相対的な変位量に応じて前記X線投影データを補正して画像データを再構成することを特徴とするものである。
【0034】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の画像再構成方法であって、前記X線検出器は複数のX線検出素子が配列してなり、前記再構成ステップでは、前記相対的な変位量分だけずれた位置にあるX線検出素子により検出されたX線投影データを用いて画像データを再構成することを特徴とするものである。
【0035】
請求項11に記載の発明は、X線ビームを前記被検体に曝射するX線源及び前記X線源に対して前記被検体が配置される空間を隔てて対向配置されたX線検出器を、被検体が載置され、内部に指標材が埋め込まれた寝台天板の周囲を回転させることにより前記被検体に対してスキャンを行なうスキャンステップと、前記X線検出器により得られたX線投影データに基づいて画像データを再構成する第1の再構成ステップと、前記第1の再構成ステップにて再構成された画像データから前記指標材の変位量を算出する演算ステップと、前記指標材の変位量に応じて前記X線投影データを補正して新たな画像データを再構成する第2の再構成ステップと、を含むことを特徴とする画像再構成方法である。
【0036】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の画像形成方法であって、前記X線検出器は複数のX線検出素子が配列してなり、前記再構成ステップでは、前記指標材の変位量分だけずれた位置にあるX線検出素子により検出されたX線投影データを用いて画像データを再構成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0037】
請求項1及び請求項7に記載の発明によると、被検体を載置した寝台天板の位置を実際に検出して、X線源、X線検出器及び寝台天板の位置関係を求め、その位置関係に基づいてX線投影データから画像データを再構成することにより、寝台天板等に発生する振動等が原因で画像に発生するぶれ等を相殺して高精度で高分解能の画像を得ることが可能となる。
【0038】
請求項2及び請求項8に記載の発明によると、X線源及びX線検出器の位置を実際に検出して、X線源、X線検出器及び寝台天板との相対的な位置を求め、その相対的な位置に基づいてX線投影データを補正して画像データを再構成することにより、寝台天板等に発生する振動等が原因で画像に発生するぶれ等を相殺して高分解能の画像を得ることが可能となる。
【0039】
請求項3及び請求項9に記載の発明によると、X線源、X線検出器及び寝台天板の間の相対的な変位を求め、その相対的な変位量に応じてX線投影データを補正して画像データを再構成することにより、その位置ずれにより画像に発生するぶれ等を相殺して高精度で高分解能の画像を得ることが可能となる。
【0040】
請求項4及び請求項10に記載の発明によると、X線源、X線検出器及び寝台天板の間の相対的な変位量分だけずれた位置にあるX線検出素子により検出されたX線投影データを用いて画像データを再構成することにより、その変位により画像に発生するぶれ等を相殺して高精度で高分解能の画像を得ることが可能となる。
【0041】
請求項5及び請求項11に記載の発明によると、寝台天板の内部に指標材を埋め込み、その状態で撮影を行って断層像を再構成すると画像データにその指標材が写される。再構成画像の中の指標材の理想的なモデル(本来の位置)からの変位量を求め、その変位量に応じてX線投影データを補正して新たな画像データを再構成する。その変位量は寝台天板の理想的なモデル(本来の位置)からの変位(ずれ)を反映しているため、その変位量に応じてX線投影データを補正して画像データを再構成することにより、寝台天板の位置ずれにより画像に発生するぶれ等を相殺して高精度で高分解能の画像を得ることが可能となる。
【0042】
請求項6及び請求項12に記載の発明によると、指標材の変位量分だけずれた位置にあるX線検出素子により検出されたX線投影データを用いて画像データを再構成することにより、その変位により画像に発生するぶれ等を相殺して高精度で高分解能の画像を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、この発明の実施形態に係るX線CT装置及び画像再構成方法について、図1乃至図5を参照しつつ説明する。
【0044】
(構成)
この発明の実施形態に係るX線CT装置の構成について図1乃至図3を参照しつつ説明する。図1は、この発明の実施形態に係るX線CT装置の概略構成を示すブロック図である。図2は、この発明の実施形態に係るX線CT装置の概略構成を示す図であり、回転架台を正面からみた正面図と、X線CT装置の側面からみた側面図である。図3は、この発明の実施形態に係るX線CT装置に備えられているX線源とX線検出器とを示す図である。
【0045】
図1に示すように、この実施形態に係るX線CT装置は、架台装置と寝台装置と操作コンソール部とを備えて構成されている。架台装置は、高電圧発生装置13と、X線源15と、X線検出器17と、回転架台19と、データ収集装置21(DAS)と、架台駆動装置23と、を備えて構成されている。寝台装置は、寝台駆動部25と、寝台基台27と、寝台天板29とを備えて構成されている。操作コンソール部は、スキャン制御部11と、前処理部31と、X線投影データ記憶部33と、再構成処理部35と、画像記憶部37と、画像処理部39と、入力装置41と、表示装置43と、位置情報記憶部45とを備えて構成されている。
【0046】
ヘリカルスキャンによりスキャンを行なう場合、スキャン制御部11は、入力装置41を用いて入力されたスライス厚、回転速度等のヘリカルスキャン条件のうち、回転速度、スライス厚、及びファン角度等を架台・寝台制御信号として架台駆動装置23及び寝台駆動部24に対して出力する。また、スキャン制御部11は、X線ビーム発生を制御するX線ビーム発生制御信号を高電圧発生装置13に対して出力する。さらに、スキャン制御部11は、X線ビームの検出のタイミングを示す検出制御信号をデータ収集装置21に対して出力する。
【0047】
高電圧発生装置13は、X線源15からX線ビームを曝射させるための高電圧をスキャン制御部11からの制御信号に従ってX線源15に供給する。
【0048】
X線源15は、高電圧発生装置13から供給された高電圧によってX線ビームを曝射する。X線源15から曝射されるX線ビームは、ファン状やコーン状のビームとなる。このX線源15がこの発明の「X線源」に相当する。
【0049】
X線検出器17は、X線源15から曝射され、被検体を透過したX線ビームを検出する。シングルスライスCT装置の場合、X線検出器17は、ファン状又は直線状に例えば1000チャンネルのX線検出素子を1列に並べて構成されている。また、マルチスライスCT装置の場合、X線検出器17は、X線検出素子を互いに直交する2方向(スライス方向及びチャンネル方向を成す)それぞれにアレイ状に複数個配列され、これにより2次元のX線検出器を成している。マルチスライスCTの場合、例えば図7(a)、(b)、(c)に示すように、X線検出素子17aはチャンネル方向とともにスライス方向にも複数個配列されている。このX線検出器17がこの発明の「X線検出器」に相当する。
【0050】
回転架台19(ガントリ)は、X線源15とX線検出器17とを内部に保持する。また、回転架台19は、架台駆動部23により、X線源15とX線検出器17との中間点を通る回転軸を中心にして回転させられる。
【0051】
データ収集部21(DAS)は、X線検出器17の各X線検出素子17aと同様にアレイ状に配列されたデータ収集素子を有し、X線検出器17により検出されたX線ビーム(実際には検出信号)を、スキャン制御部11により出力されたデータ収集制御信号に対応させて収集する。この収集されたデータがX線投影データとなる。
【0052】
回転架台19が1回転するときに、例えば1000回X線投影データを収集し、このX線投影データを基に後述の方法で画像再構成する。尚、1回のデータ収集を1ビュー、1ビューにおける1X線検出素子17aのデータを1ビーム、1ビューにおける全ビーム(全検出素子17aのデータ)をまとめて実データと称する。
【0053】
架台駆動装置23は、スキャン制御部11により出力された架台制御信号に基づいて、回転架台19を回転させる。
【0054】
寝台駆動部25は、スキャン制御部11から出力された寝台移動信号に基づいて、回転架台19の1回転当たりの寝台天板29の移動量を求め、この移動量で寝台天板29を移動させる。寝台基台27は、寝台駆動部25により寝台天板29を上下方向に移動させる。寝台天板29は被検体を載せ、被検体の体軸方向(Z軸方向:スライス方向)に移動可能となっている。
【0055】
前処理部31は、データ収集装置21から出力されたX線投影データに感度補正やX線強度補正等を施す。前処理部31にて感度補正等の処理が施されたX線投影データは、X線投影データ記憶部33に一旦記憶される。
【0056】
再構成処理部33は、X線投影データ記憶部33に記憶されたX線投影データを逆投影処理することにより、画像データを再構成する。この逆投影の方法は公知の方法と同じである。また、X線投影データに対して補間処理を行う場合は、360度補間法又は180度補間法(対向データ補間法)等の公知の補間法により、目的のスライス位置におけるX線投影データを求める。
【0057】
さらに、再構成処理部33は、後述する位置検出器47により実際に検出されたX線源15、X線検出器17及び寝台天板29の位置情報を用いてX線投影データに対して補正処理を行い、寝台天板29等の変位(位置ずれ)を補正して画像データを再構成する。なお、この再構成処理部33がこの発明の「再構成手段」及び「演算手段」に相当する。
【0058】
再構成された画像データは、画像記憶部37に一旦記憶された後、画像処理部39に送られる。画像処理部39は、入力装置41にて入力された操作者の指示に基づき、画像データを公知の方法により、任意断面の断層像、任意方向からの投影像、又はレンダリング処理による3次元画像等の画像データに変換して表示装置43に出力する。表示装置43は、画像処理部39から出力された断層像等をモニタ上に表示する。
【0059】
また、図2及び図3に示すように、この実施形態に係るX線CT装置には位置検出器47が設置されている。この位置検出器47は、例えば、レーザ、超音波、渦電流等を利用した非接触センサからなり、位置検出器47との間の距離を測定することにより、X線源15、X線検出器17及び寝台天板29の位置を検出する。また、位置検出器47として加速度センサを用いてX線源15、X線検出器17及び寝台天板29の加速度を測定することにより、X線源15、X線検出器17及び寝台天板29の位置を検出する。この位置を検出することにより、振動等による寝台天板29等の変位を検出することが可能となる。この位置検出器47がこの発明の「第1の検出器」及び「第2の検出器」に相当する。
【0060】
位置検出器47から出力された位置情報(振動を示す情報)は、各ビュー(各データ収集)のX線投影データに対応付けられて位置情報記憶部45に記憶される。位置情報記憶部45は、例えば、検出のタイミング(時間)に基づいて対応付けを行う。具体的には、X線投影データが検出されたタイミング(時間)と同じタイミングで検出された位置情報を、そのX線投影データに対応付けて記憶する。この位置情報(振動を示す情報)は再構成処理部35に出力され、X線投影データから画像データを再構成する際の位置情報として用いられる。
【0061】
(動作)
次に、この発明の実施形態に係るX線CT装置の動作(画像再構成方法)について説明する。この実施形態においては、ヘリカルスキャンを実行する場合について説明する。
【0062】
ヘリカルスキャンを行なう場合、まず、操作者は入力装置41を用いてヘリカルスキャン条件を入力する。このヘリカルスキャン条件には、被検体に対して断層像を得たい撮影領域の範囲の情報が含まれる。この撮影領域が設定されると、この撮影領域のスキャン開始側端部がスキャン開始位置になるように、被検体を寝台天板29に載置する。
【0063】
ヘリカルスキャン条件が入力されるとスキャン制御部11は、このヘリカルスキャン条件のうち、回転速度、スライス厚、及びファン角等を架台・寝台制御信号として架台駆動装置23及び寝台駆動部25に出力する。そして、架台駆動部23は、スキャン制御部11から出力された制御信号に基づいて回転架台19を所定の回転速度で回転させる。寝台駆動部25はスキャン制御部11から出力された制御信号に基づいて回転架台19の1回転あたりの寝台天板29の移動量を求め、この移動量で寝台天板29を移動させる。
【0064】
この状態で操作者により診断開始命令が入力装置41から入力されると、スキャン制御部11は、架台駆動装置23及び寝台駆動部25に対して診断開始を指示するとともに、X線ビーム発生を制御するX線ビーム発生制御信号を高電圧発生装置13に対して出力する。そして、X線ビーム発生制御信号に対応させて、高電圧発生装置13は高電圧を発生する。
【0065】
これにより、X線源15からX線ビームが曝射されるとともに、寝台天板29が寝台駆動部25により移動させられ、X線源15の被検体に対する相対的な軌跡がらせん状となるようないわゆるヘリカルスキャンによる診断が開始される。そして、データ収集制御信号がスキャン制御部11により出力されると、データ収集装置21は、このデータ収集制御信号に対応させてX線検出器17からX線ビームを検出し、この検出したX線ビーム(実際にはX線投影データ)を前処理部31に供給する。
【0066】
そして、位置検出器47がX線源15、X線検出器17及び寝台天板29の位置を検出し、その位置情報を位置情報記憶部45に出力する。位置情報記憶部45では、検出のタイミング(時間)に基づいて各ビューのX線投影データに対応付けて、1ビューごとに位置情報を記憶する。例えば、位置検出器47は寝台天板29等の振動を検出し、その振動波形を位置情報記憶部45に出力する。
【0067】
再構成処理部35は、スキャンにより収集されたX線投影データを用いて画像データを再構成する。このとき、再構成処理部35は、位置検出器47にて検出されたX線源15、X線検出器17及び寝台天板29の相対的な位置情報を用いて画像データを再構成する。再構成処理部35は、位置情報記憶装置45から各ビューのX線投影データに対応付けられたX線源15、X線検出器17及び寝台天板29の位置情報を読み込み、X線源15、X線検出器及び寝台天板29の理想的なモデルの軌道(本来の軌道)からの変位量(位置ずれの量)を算出する。
【0068】
そして、その変位量(位置ずれの量)分だけ、X線検出器17におけるチャンネルをシフトし、シフト先のチャンネルにあるX線検出素子にて検出されたX線投影データ(chデータ)を用いて補正されたデータを作成する。その補正されたデータを、変位がなかった場合(位置ずれがなかった場合)の位置(理想モデルの位置)におけるX線投影データとして画像データを再構成する。
【0069】
この実施形態においては、寝台天板29の高さが、スキャン制御部11から出力される制御信号を反映した理想的なモデルの軌道(本来の軌道)からずれる場合について、図5を参照しつつ説明する。図5は、回転架台19の正面からみた正面図であり、X線検出器17及び寝台天板29の位置関係を示す図である。
【0070】
図5において、寝台天板29が本来の軌道(高さ)にある状態を破線で表し、振動等により本来の軌道(高さ)からずれた状態(変位した状態)を実線で表す。位置検出器47は寝台天板29が本来の位置(高さ)にあるときの位置(破線で表される位置)を検出し、その位置情報を位置情報記憶装置45に出力する。そして、振動等により寝台天板29が上下方向(矢印Bの方向)に変位した場合、位置検出器47は寝台天板29が変位したときの位置(実線で表される位置)を検出し、その位置情報を位置情報記憶装置45に出力する。このように、位置検出器47は変位前後(ずれ前後)の寝台天板29の位置を検出する。
【0071】
位置検出器47により検出された寝台天板29の位置情報は、各ビューのX線投影データに対応付けられて位置情報記憶装置45に記憶される。
【0072】
そして、再構成処理部35は、スキャンにより収集されたX線投影データを用いて画像データを再構成する。このとき、再構成処理部35は、位置検出器47にて検出された変位前後(ずれ前後)の寝台天板29の位置情報を用いて画像データを再構成する。再構成処理部35は、位置情報記憶装置45から各ビューのX線投影データに対応付けられた寝台天板29の位置情報を読み込み、寝台天板29の変位量(位置ずれの量)を算出する。
そして、その変位量(位置ずれの量)だけ、X線検出器17におけるチャンネルをシフトし、シフト先のチャンネルにあるX線検出素子にて検出されたX線投影データ(chデータ)を用いて補正データを作成する。その補正データを、変位がなかった場合(位置ずれがなかった場合)の位置(理想モデルの位置)におけるX線投影データとして画像データを再構成する。
【0073】
再構成処理部35による処理について具体的に説明する。従来においては、再構成処理部35は、寝台天板29が破線の位置にあるものとし、その位置情報に基づいて画像データを再構成する。破線の位置に対応するチャンネルのX線検出素子は、X線検出素子17aとなり、再構成処理部35は、このX線検出素子17aにて検出されるX線投影データ(chデータaとする)を、被検体Pの撮影部位P1におけるX線投影データとして画像データを再構成する。ところが、実際は、寝台天板29は実線の位置に変位しているため、chデータaは被検体Pの撮影部位P1を反映したX線投影データにはならない。その結果、再構成された画像は上下方向にぼやけたものになってしまう。
【0074】
この実施形態においては、位置検出器47が変位前後(ずれ前後)の寝台天板29の位置を検出し、再構成処理部35が変位量(位置ずれの量)を算出しているため、その変位量(位置ずれの量)だけchデータをシフトして画像データを再構成する。実線の位置に対応するチャンネルのX線検出素子は、X線検出素子17bとなり、再構成処理部35は、シフト先のX線検出素子17bにて検出されるX線投影データ(chデータbとする)を、被検体Pの撮影部位P1におけるX線投影データとして画像データを再構成する。シフト先のX線検出素子17bは、実際に被検体Pの撮影部位P1を透過したX線ビームを検出するため、chデータbは被検体Pの撮影部位P1を反映したX線投影データとなる。従って、このchデータbを用いて再構成することにより、振動等による画像のぶれを相殺することができ、高精度の画像を得ることが可能となる。
【0075】
なお、X線検出素子17a(b)の配列の細かさによって、相殺できる振動の振幅の大きさが変わる。X線検出器17a(b)の配列を細かくするほど、振幅が小さい振動に対応して振動を相殺することが可能となる。また、画像データの再構成に影響がない振幅の大きさを閾値として、その閾値以上の振幅の振動を検出したときに、変位量分だけずれた位置のX線検出器17aにより検出されたX線投影データを用いて画像データを再構成しても良い。
【0076】
この実施形態においては、1ビームに対する補正について説明したが、全ての角度(360度)におけるビームに対しても同じ処理を施し、1ビューにおける全ビームをまとめて画像データを再構成する。
【0077】
以上のように、位置検出器47により寝台天板29の実際の位置を検出し、その位置から振動等による変位量を算出し、その変位量から再構成に必要なX線投影データを検出するX線検出素子を選択し、選択されたX線検出素子にて検出されたX線投影データを用いて画像データを再構成することにより、振動等による変位を相殺することが可能となり、高精度で高分解能の画像を得ることが可能となる。
【0078】
なお、本実施形態においては、寝台天板29が上下方向に変位する場合について説明したが、マルチスライスCT装置において寝台天板29がスライス方向(Z軸方向)に変位する場合においても、同様の処理によりX線投影データを補正して高精度で高分解能の画像を得ることができる。つまり、寝台天板29がスライス方向(Z軸方向)にも変位した場合、その変位量だけスライス方向(Z軸方向)にずれた位置にあるX線検出素子で検出されたX線投影データを用いて画像データを再構成する。そのことにより、スライス方向(Z軸方向)の変位が相殺され、高精度で高分解能の画像を得ることが可能となる。
【0079】
また、通常、画像の分解能を向上させるためにはX線源15から出力するX線量を増大させる必要がある。しかしながら、X線量を増加すると、被検体の被爆量が増大する問題がある。この実施形態に係るX線CT装置であれば、寝台天板29等の変位量からX線投影データを補正することにより、高精度で高分解能の画像を得ることができるため、X線量を増大させる必要がない。そのことにより、被検体の被爆量を少なくしつつ高精度で高分解能の画像を得ることが可能となる。
【0080】
さらに、X線源15、X線検出器17及び寝台天板29の位置を検出することで、被検体とX線CT装置との相対的な位置関係を計測することができるため、予め危険を予測することもできる。例えば、回転架台19と寝台天板29との間に被検体が挟まれそうになっても、寝台天板29等の位置を検出していることにより、予め危険を予測して寝台天板29等の駆動を停止させて、被検体が挟まれるのを防止することができる。
【0081】
なお、X線CT装置とPET装置等の核医学診断装置を組み合わせた、PET/CT装置等にこの実施形態に係るX線CT装置を搭載しても良い。そのことにより、PET装置等の他の撮像装置の画像データとの位置比較も正確に行うことが可能となる。
【0082】
また、上述した実施形態においては、寝台天板29が振動し、振動天板29の変位からX線投影データを補正して、振動等が相殺された画像データを再構成したが、この他、X線検出器17又はX線源15等が振動する場合においても、同じ処理を施してX線投影データを補正することで、振動等によるX線検出器17等の変位を相殺することが可能となり、高精度で高分解能の画像を得ることが可能となる。
【0083】
さらに、X線源15、X線検出器17及び寝台天板29が同時に振動している場合であっても、位置検出器47によりそれぞれの位置を検出することで、相対的な位置(変位)を算出することができる。その相対的な位置から再構成に必要なX線投影データを検出するX線検出素子を選択し、その選択されたX線検出素子にて検出されたX線投影データを用いて画像データを再構成することにより、振動等による変位が相殺され、高精度で高分解能の画像を得ることが可能となる。
【0084】
また、例えば、寝台天板29にマットレスが使用されている場合において、そのマットレスの振動を検出している場合は、位置検出器47が実際に検出された値から、マットレス固有の振動吸収量を差分することにより、振動(変位)を求めても良い。例えば、マットレスにより振動が吸収され、マットレスが振動していても被検体は振動していない場合がある。この場合、実際に検出された値からマットレス固有の振動吸収量を差分することで、被検体の相対的な変位(振動)を求めることができる。このようにして求められた変位量からX線投影データを補正して画像データを再構成することにより、高精度で高分解能の画像を得ることが可能となる。
【0085】
また、X線源15又はX線検出器17の変位量を求める場合、位置検出器47としてジャイロスコープを用いても良い。この場合、回転架台19内にジャイロスコープを搭載し、そのジャイロスコープにより検出された回転角速度から回転による遠心力を差分することで、X線源15又はX線検出器17の振動(変位)を求める。変位量が求められると、上述した処理内容と同様に、変位量分だけずらした位置にあるX線検出素子により検出されたX線投影データを用いて画像データを再構成することにより、高精度で高分解能の画像を得ることが可能となる。
【0086】
さらに、寝台天板29内に気泡又は金属網等の指標材を埋め込み、それを目印にしてX線投影データを補正して画像データを再構成しても良い。図4に示す寝台天板29の斜視図のように、寝台天板29内に気泡又は金属網等からなる指標材29aを埋め込み、その状態でX線ビームを曝射して撮影を行う。指標材29aとしては、X線ビームを曝射して再構成される画像に写されるものであれば何であっても良い。再構成データには、その金属網等の指標材29aが表されるため、再構成処理部35が、スキャン制御部11からの制御信号に基づく理想的な位置からの指標材29aの変位量(位置ずれの量)を算出する。そして、再構成処理部35は、その変位量分だけずらした位置にあるX線検出素子で検出されたX線投影データを用いて画像データを再構成する。このように画像データを再構成することにより、画像における変位を相殺することが可能となるため、高精度で高分解能の画像を得ることが可能となる。
【0087】
また、ジャイロスコープを用いる場合や、指標材を用いる場合等においても、全ての角度におけるビームに対してのX線源15、X線検出器17及び寝台天板29の変位量を求め、1ビューにおける全ビームをまとめて画像データを再構成する。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】この発明の実施形態に係るX線CT装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施形態に係るX線CT装置の概略構成を示す図であり、回転架台を正面からみた正面図と、X線CT装置の側面からみた側面図である。
【図3】この発明の実施形態に係るX線CT装置に備えられているX線源とX線検出器とを示す図である。
【図4】この発明の実施形態に係るX線CT装置に備えられる寝台天板の斜視図である。
【図5】この発明の実施形態に係るX線CT装置の動作を説明するための正面図であり、X線検出器と寝台天板とを示す図である。
【図6】X線CT装置に発生する振動による画像再構成への影響を説明するための図である。
【図7】X線検出器(X線検出素子)の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0089】
11 スキャン制御部
13 高電圧発生装置
15 X線源
17 X線検出器
17a X線検出素子
19 回転架台(ガントリ)
21 データ収集装置(DAS)
23 架台駆動装置
25 寝台駆動部
27 寝台基台
29 寝台天板
29a 指標材
31 前処理部
33 X線投影データ記憶部
35 再構成処理部
37 画像記憶部
39 画像処理部
41 入力装置
43 表示装置
45 位置情報記憶部
47 位置検出器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線ビームを被検体に曝射するX線源と、
前記X線源に対して前記被検体が配置される空間を隔てて対向配置されたX線検出器と、
前記被検体を載置した寝台天板と、
前記X線源及び前記X線検出器を前記被検体の周囲を回転させることにより前記被検体に対してスキャンを行なうスキャン手段と、
前記寝台天板の位置を検出する第1の検出器と、
前記第1の検出器により検出された位置情報に基づいて、前記X線源、前記X線検出器及び前記寝台天板の位置関係を算出する演算手段と、
前記演算手段により算出された位置関係に基づいて、前記X線検出器により得られたX線投影データから画像データを再構成する再構成手段と、
を有することを特徴とするX線CT装置。
【請求項2】
前記X線源及び前記X線検出器の位置を検出する第2の検出器を更に有し、
前記演算手段は、前記第1の検出器及び前記第2の検出器により検出された位置情報に基づいて、前記X線源、前記X線検出器及び前記寝台天板の相対的な位置を算出し、
前記再構成手段は、前記演算手段により算出された相対的な位置に基づいて、前記X線投影データから画像データを再構成することを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記演算手段は、前記第1の検出器及び前記第2の検出器により検出された位置情報に基づいて、前記X線源、前記X線検出器及び前記寝台天板の間の相対的な変位を算出し、
前記再構成手段は、前記演算手段により算出された相対的な変位量に応じて、前記X線投影データを補正して画像データを再構成することを特徴とする請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記X線検出器は複数のX線検出素子が配列してなり、
前記再構成手段は、前記相対的な変位量分だけずれた位置にあるX線検出素子により検出されたX線投影データを用いて画像データを再構成することを特徴とする請求項3に記載のX線CT装置。
【請求項5】
X線ビームを被検体に曝射するX線源と、
前記X線源に対して前記被検体が配置される空間を隔てて対向配置されたX線検出器と、
前記被検体を載置し、その内部に指標材が埋め込まれた寝台天板と、
前記X線源及び前記X線検出器を前記被検体の周囲を回転させることにより前記被検体に対してスキャンを行なうスキャン手段と、
前記X線検出器により得られたX線投影データに基づいて画像データを再構成する再構成手段と、
前記再構成手段により再構成された画像データから前記指標材の変位量を算出する演算手段と、を有し、
前記再構成手段は、前記指標材の変位量に応じて前記X線投影データを補正して新たな画像データを再構成することを特徴とするX線CT装置。
【請求項6】
前記X線検出器は複数のX線検出素子が配列してなり、
前記再構成手段は、前記指標材の変位量分だけずれた位置にあるX線検出素子により検出されたX線投影データを用いて画像データを再構成することを特徴とする請求項5に記載のX線CT装置。
【請求項7】
X線ビームを前記被検体に曝射するX線源及び前記X線源に対して前記被検体が配置される空間を隔てて対向配置されたX線検出器を、被検体が載置された寝台天板の周囲を回転させることにより前記被検体に対してスキャンを行なうスキャンステップと、
前記寝台天板の位置を検出する位置検出ステップと、
前記検出された位置情報に基づいて、前記X線源、前記X線検出器及び前記寝台天板の位置関係を算出する演算ステップと、
前記演算ステップにて算出された位置関係に基づいて、前記X線検出器により得られたX線投影データから画像データを再構成する再構成ステップと、
を含むことを特徴とする画像再構成方法。
【請求項8】
前記位置検出ステップでは、前記X線源及び前記X線検出器の位置を更に検出し、
前記演算ステップでは、前記検出された位置情報に基づいて、前記X線源、前記X線検出器及び前記寝台天板の相対的な位置を算出し、
前記再構成ステップでは、前記演算ステップにて算出された相対的な位置に基づいて、前記X線投影データから画像データを再構成することを特徴とする請求項7に記載の画像再構成方法。
【請求項9】
前記演算ステップでは、前記位置検出ステップにて検出された位置情報に基づいて、前記X線源、前記X線検出器及び前記寝台天板の間の相対的な変位を算出し、
前記再構成ステップでは、前記演算ステップにより算出された相対的な変位量に応じて前記X線投影データを補正して画像データを再構成することを特徴とする請求項8に記載の画像再構成方法。
【請求項10】
前記X線検出器は複数のX線検出素子が配列してなり、
前記再構成ステップでは、前記相対的な変位量分だけずれた位置にあるX線検出素子により検出されたX線投影データを用いて画像データを再構成することを特徴とする請求項9に記載の画像再構成方法。
【請求項11】
X線ビームを前記被検体に曝射するX線源及び前記X線源に対して前記被検体が配置される空間を隔てて対向配置されたX線検出器を、被検体が載置され、内部に指標材が埋め込まれた寝台天板の周囲を回転させることにより前記被検体に対してスキャンを行なうスキャンステップと、
前記X線検出器により得られたX線投影データに基づいて画像データを再構成する第1の再構成ステップと、
前記第1の再構成ステップにて再構成された画像データから前記指標材の変位量を算出する演算ステップと、
前記指標材の変位量に応じて前記X線投影データを補正して新たな画像データを再構成する第2の再構成ステップと、
を含むことを特徴とする画像再構成方法。
【請求項12】
前記X線検出器は複数のX線検出素子が配列してなり、
前記再構成ステップでは、前記指標材の変位量分だけずれた位置にあるX線検出素子により検出されたX線投影データを用いて画像データを再構成することを特徴とする請求項11に記載の画像再構成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−288472(P2006−288472A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−109867(P2005−109867)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】