X線CT装置
【課題】X線CT装置を用いて得られた画像情報を基に測定したCT値から、関心領域の含有脂肪率を客観的に定量化して表示すること。
【解決手段】X線CT装置は、複数の異なるCT値の比の値に対して、それぞれ含有脂肪率を関連づけた第1のテーブルを記憶するHD44と、被検体に対して複数の異なる照射条件でX線を曝射し、照射条件毎に実測CT値を測定するCT値測定部62と、照射条件間毎の実測CT値の比を算出し、第1のテーブルを参照して、実測CT値の比に対応する含有脂肪率を抽出する含有脂肪率抽出部65とを有する。
【解決手段】X線CT装置は、複数の異なるCT値の比の値に対して、それぞれ含有脂肪率を関連づけた第1のテーブルを記憶するHD44と、被検体に対して複数の異なる照射条件でX線を曝射し、照射条件毎に実測CT値を測定するCT値測定部62と、照射条件間毎の実測CT値の比を算出し、第1のテーブルを参照して、実測CT値の比に対応する含有脂肪率を抽出する含有脂肪率抽出部65とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体にX線を曝射して得られた投影データに基づいて被検体内部の画像を生成する技術に係り、当該画像から所定領域における含有脂肪率を定量化するX線CT装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のX線CT(Computed Tomography)装置の進歩は目覚しい。より高精細(高解像度)且つ広範囲に撮影したいという医療現場からの強い要望に応えて、マルチスライスX線CT装置が開発され、これがかなり普及してきている。マルチスライスX線CT装置は、スライス方向(寝台天板の長手方向)に広がり幅を有するコーンビームX線を曝射するX線源と、複数列の検出素子列をスライス方向に並べた構造の2次元検出器とを備え、これによりヘリカルスキャンを行なうことができるように構成されている。これにより、シングルスライスX線CT装置に比べて、被検体内部の広範囲にわたるボリュームデータを高精度、且つ、短時間で得ることができる。
【0003】
このようなX線CT装置は、例えば以下の特許文献1等に開示されている。
【特許文献1】特開2004−305527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来のX線CT装置においては、例えば、被検体の肝臓部分を撮影した場合、得られた画像に対する検者の視覚的な印象や、関心領域(ROI:Region Of Interest)によるCT値測定等から脂肪肝の進行程度を判断することがある。しかし、脂肪肝の進行程度の判断は、検者の主観に依るところが大きい。
【0005】
また、測定されたCT値についても、被検者の体格の違いによってサイズ依存が生じる傾向にある。よって、被検者の体格を考慮に入れることなく測定したCT値によって脂肪肝の進行程度を判断することは必ずしも適正な診断とはいえなかった。
【0006】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、X線CT装置を用いて得られた画像情報を基に測定したCT値から、所定領域における含有脂肪率を客観的に定量化して表示することができるX線CT装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るX線CT装置は、上述した課題を解決するために、複数の異なるCT値の比の値に対して、それぞれ含有脂肪率を関連づけた第1のテーブルを記憶する記憶装置と、被検体に対して前記複数の異なる照射条件でX線を曝射し、照射条件毎に実測CT値を測定するCT値測定部と、前記照射条件間毎の実測CT値の比を算出し、前記第1のテーブルを参照して、前記実測CT値の比に対応する含有脂肪率を抽出する含有脂肪率抽出部とを有する。
【0008】
本発明に係るX線CT装置は、上述した課題を解決するために、所定量の脂肪を含有させた所望の水ファントムに対して複数の異なる照射条件でX線を曝射することによって得られた前記水ファントムの照射条件間のサンプルCT値の比と含有脂肪率とを関連づけた第1のテーブルを予め記憶する第1の記憶装置と、サイズの異なる水ファントムのそれぞれの水等価厚でのサンプルCT値を前記複数の異なる照射条件毎に記憶した第2のテーブルを予め記憶する第2の記憶装置と、被検体に対して前記複数の異なる照射条件でX線を曝射し、照射条件毎に実測CT値を測定するCT値測定部と、前記被検体の水等価厚を測定する被検体サイズ測定部と、前記第2のテーブルを参照して、前記所望の水ファントムのサイズと前記被検体サイズ測定部で測定した被検体のサイズとに基づくサイズ依存補正係数を算出し、前記実測CT値に対して同一の照射条件のサイズ依存補正係数を乗じて前記実測CT値を補正するサイズ依存補正部と、前記サイズ依存補正部で補正された実測CT値の比を脂肪係数として算出する脂肪係数算出部と、前記第1のテーブルを参照して、前記脂肪係数に対応する含有脂肪率を抽出する含有脂肪率抽出部とを有する。
【0009】
本発明に係るX線CT装置は、上述した課題を解決するために、複数の異なるCT値の差の値に対して、それぞれ含有脂肪率を関連づけた第1のテーブルを記憶する記憶装置と、被検体に対して前記複数の異なる照射条件でX線を曝射し、照射条件毎に実測CT値を測定するCT値測定部と、前記照射条件間毎の実測CT値の差を算出し、前記第1のテーブルを参照して、前記実測CT値の差に対応する含有脂肪率を抽出する含有脂肪率抽出部とを有する。
【0010】
本発明に係るX線CT装置は、上述した課題を解決するために、所定量の脂肪を含有させた所望の水ファントムに対して複数の異なる照射条件でX線を曝射することによって得られた前記水ファントムの照射条件間のサンプルCT値の差と含有脂肪率とを関連づけた第1のテーブルを予め記憶する第1の記憶装置と、サイズの異なる水ファントムのそれぞれの水等価厚でのサンプルCT値を前記複数の異なる照射条件毎に記憶した第2のテーブルを予め記憶する第2の記憶装置と、被検体に対して前記複数の異なる照射条件でX線を曝射し、照射条件毎に実測CT値を測定するCT値測定部と、前記被検体の水等価厚を測定する被検体サイズ測定部と、前記第2のテーブルを参照して、前記所望の水ファントムのサイズと前記被検体サイズ測定部で測定した被検体のサイズとに基づくサイズ依存補正係数を算出し、前記実測CT値に対して同一の照射条件のサイズ依存補正係数を乗じて前記実測CT値を補正するサイズ依存補正部と、前記サイズ依存補正部で補正された実測CT値の差を脂肪係数として算出する脂肪係数算出部と、前記第1のテーブルを参照して、前記脂肪係数に対応する含有脂肪率を抽出する含有脂肪率抽出部とを有する。
【0011】
本発明に係るX線CT装置は、上述した課題を解決するために、複数の異なるCT値の差の値に対する含有脂肪率を基に算出した換算式を記憶する記憶装置と、被検体に対して前記複数の異なる照射条件でX線を曝射し、照射条件毎に実測CT値を測定するCT値測定部と、前記照射条件間毎の実測CT値の差を算出し、前記換算式を参照して、前記実測CT値の差を含有脂肪率に換算する含有脂肪率換算部とを有する。
【0012】
本発明に係るX線CT装置は、上述した課題を解決するために、複数の異なるCT値の比較値に対する含有脂肪率を関連づけた第1のテーブルを記憶する記憶装置と、被検体に対して前記複数の異なる照射条件でX線を曝射し、照射条件毎に実測CT値を測定するCT値測定部と、前記照射条件間毎の実測CT値の比較値を算出し、前記第1のテーブルを参照して、前記実測CT値の比較値に対応する含有脂肪率を抽出する含有脂肪率抽出部とを有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るX線CT装置によると、X線CT装置を用いて得られた画像情報を基に測定したCT値から、所定領域における含有脂肪率を客観的に定量化して表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係るX線CT装置の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、X線CT装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0016】
図1は、X線CT装置1を示し、そのX線CT装置1には、被検体(人体)Pに関するデータを収集するために構成された架台装置2と、被検体Pを載せて移動させるための寝台装置3と、X線CT装置1を操作するために、入力及び画像表示を行なう操作コンソール4とが備えられる。
【0017】
X線CT装置1の架台装置2には、X線管12、X線検出器13、絞り14、データ収集装置15、高電圧発生装置16、絞り駆動装置17、回転駆動装置18、メインコントローラ19及びIF(InterFace)20a,20bが設けられる。
【0018】
また、X線管12、X線検出器13、絞り14及びデータ収集装置15は架台装置2の回転部21に設置される。回転部21は、X線管12とX線検出器13とを対向させた状態でX線管12とX線検出器13とを被検体Pの周りを回転できるように構成されている。
【0019】
X線管12は、高電圧発生装置16から供給された管電圧に応じてX線を発生する。
【0020】
X線検出器13は、2次元アレイ型検出器(マルチスライス型検出器ともいう。)である。X線検出素子は例えば0.5mm×0.5mmの正方の検出面を有する。X線検出器13には、例えば916個のX線検出素子がチャンネル方向に配列され、この列がスライス方向(検出器の列方向)に沿って例えば64列以上並設されている。
【0021】
絞り14は、絞り駆動装置17による制御によって、被検体Pに曝射するX線のスライス方向の曝射範囲を調整する。すなわち、絞り駆動装置17によって絞り14の開口を調整することによって、スライス方向のX線曝射範囲を変更できる。
【0022】
データ収集装置15は、一般的にDAS(Data Acquisition System)と呼ばれ、X線検出器13からチャンネル毎に出力される信号を増幅し、さらにディジタル信号に変換する。変換後のデータ(生データ)は架台装置2のIF20bを介して外部の操作コンソール4に供給される。
【0023】
メインコントローラ19は、操作コンソール4からIF20aを介して入力した制御信号に基づいて、高電圧発生装置16、絞り駆動装置17、回転駆動装置18及びデータ収集装置15等の制御を行なう。
【0024】
X線CT装置1の寝台装置3には、被検体Pを載せる天板31と、その天板31をスライス方向に沿って移動させる天板駆動装置32とが設けられる。回転部21の中央部分は開口を有し、その開口部の天板31に載置された被検体Pが挿入される。なお、回転部21の回転中心軸と平行な方向をZ軸方向(スライス方向)、Z軸方向に直交する平面をX軸方向、Y軸方向で定義する。
【0025】
X線CT装置1の操作コンソール4は、コンピュータをベースとして構成されている、いわゆるワークステーションであり、病院基幹のLAN(Local Area Network)等のネットワークNと相互通信可能である。操作コンソール4は、大きくは、CPU(Central Processing Unit)41、メモリ42、HD(Hard Disc)44、IF45a,45b,45c、入力装置46及び表示装置47等の基本的なハードウェアから構成される。CPU41は、共通信号伝送路としてのバスを介して、操作コンソール4を構成する各ハードウェア構成要素に相互接続されている。なお、操作コンソール4は、記録媒体ドライブ48を具備する場合もある。
【0026】
CPU41は、医師等の検者によって入力装置46が操作等されることにより指令が入力されると、メモリ42に記憶しているプログラムを実行する。又は、CPU41は、HD44に記憶しているプログラム、ネットワークNから転送されIF45cで受信されてHD44にインストールされたプログラム、又は記録媒体ドライブ48に装着された記録媒体から読み出されてHD44にインストールされたプログラムを、メモリ42にロードして実行する。
【0027】
メモリ42は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等の要素を兼ね備え、IPL(Initial Program Loading)、BIOS(Basic Input/Output System)及びデータを記憶したり、CPU41のワークメモリやデータの一時的な記憶に用いたりする記憶装置である。
【0028】
HD44は、不揮発性の半導体メモリ等によって構成される。HD44は、操作コンソール4にインストールされたプログラム(アプリケーションプログラムの他、OS(Operating System)等も含まれる)や、データを記憶する記憶装置である。また、OSに、検者に対する情報の表示にグラフィックを多用し、基礎的な操作を入力装置46によって行なうことができるGUI(Graphical User Interface)を提供させることもできる。
【0029】
IF45a,45b,45cは、各規格に応じた通信制御を行なう。IF45a,45bは架台装置2と通信を行なうものであり、架台装置2のIF20a,20bにそれぞれ接続される。また、IF45cは、電話回線を通じてネットワークNに接続することができる機能を有しており、これにより、操作コンソール4は、IF45cからネットワークN網に接続することができる。
【0030】
入力装置46は、検者によって操作が可能なポインティングデバイスであり、操作に従った入力信号がCPU41に送られる。
【0031】
表示装置47としては、モニタ等が挙げられる。表示しようとするイメージデータを展開するVRAM(Video Random Access Memory、図示しない)等のメモリにイメージデータ等を展開することで、画像を表示装置47に表示する。
【0032】
記録媒体ドライブ48は、記録媒体の着脱が可能となっており、記録媒体に記録されたデータ(プログラムを含む)を読み出して、バス上に出力し、また、バスを介して供給されるデータを記録媒体に書き込む。このような記録媒体は、いわゆるパッケージソフトウエアとして提供することができる。
【0033】
図2は、本発明に係るX線CT装置の第1実施形態を示すブロック図である。
【0034】
図1に示したハードウェア構成において、X線CT装置1の操作コンソール4のCPU41がプログラムを実行することによって、操作コンソール4は、前処理部51、散乱線補正部52、再構成処理部53及び画像処理部54として機能する。なお、各部51乃至54は、CPU41がプログラムを実行することによって機能するものとするが、その場合に限定されるものではない。各部51乃至54をハードウェアとして操作コンソール4に設けるものであってもよい。
【0035】
前処理部51は、図1に示したIF45bを介して架台装置2の装置データ収集装置15から入力する生データに対して対数変換処理や、感度補正等の補正処理を行なって投影データを生成する。
【0036】
散乱線補正部52は、前処理部51から入力する投影データに対して散乱線の除去処理を行なう。散乱線補正部52は、X線曝射範囲内の投影データの値に基づいて散乱線の除去を行なうものであり、散乱線補正を行なう対象の投影データ又はその隣接投影データの値の大きさから推定された散乱線を、対象となる投影データから減じて散乱線補正を行なう。この散乱X線除去後の投影データは再構成処理部53に送られる。
【0037】
画像再構成処理部53は、スライス方向におけるX線パスが平行であると仮定したファンビーム再構成、スライス方向におけるX線曝射角度(コーン角)を考慮したコーンビーム再構成等の再構成方法を用いて、被検体P内部の生体情報の画像を再構成する。
【0038】
画像処理部54は、HD44等の記憶装置に記憶した画像データに対して各種画像処理を行なって表示画像を生成する。画像処理部54は表示画像を生成するために、被検体サイズ測定部61、CT値測定部62、サイズ依存補正部63、脂肪係数算出部64及び含有脂肪率抽出部65を有している。
【0039】
ここで、記憶装置には第1のテーブル及び第2のテーブルが予め記憶されている。第1のテーブルは、含有脂肪率に対して複数の異なる照射条件におけるCT値をサンプルCT値として測定し、含有脂肪率と、各照射条件で測定した各サンプルCT値の比との関係を示すものである。一方、第2のテーブルは、被検体Pのサイズによって実測CT値を補正するためのものである。なお、第1のテーブル及び第2のテーブルは、別々の記憶装置に記憶されていてもよい。
【0040】
図3は、第1のテーブルを取得するための概略を示す図である。
【0041】
検査前の準備段階で第1のテーブルを取得するために、まず、各種含有脂肪率のサンプルをそれぞれ調製する。例えば、定量の水ファントムに対して10%、20%、30%、40%、50%及び60%の重量%の脂肪を混入したサンプルをそれぞれ調製する。図3は、各種含有脂肪率のサンプルに対してX線CT装置1を用いて通常の被検体Pと同様に撮影して取得した画像である。
【0042】
図4は、第1のテーブルの一例を示す図である。
【0043】
図4に示した第1のテーブルは、各種含有脂肪率のサンプルに対して異なる照射条件、例えば管電圧で測定したCT値をサンプルCT値として示している。例えば、含有脂肪率が10%のサンプルを管電圧120kVで照射して測定したサンプルCT値を120C10%と、同サンプルを管電圧100kVで照射して測定したサンプルCT値を100C10%と、含有脂肪率が20%のサンプルを管電圧120kVで照射して測定したサンプルCT値を120C20%と、同サンプルを管電圧100kVで照射して測定したサンプルCT値を100C20%と、含有脂肪率が30%のサンプルを管電圧120kVで照射して測定したサンプルCT値を120C30%と、同サンプルを管電圧100kVで照射して測定したサンプルCT値を100C30%と、含有脂肪率が40%のサンプルを管電圧120kVで照射して測定したサンプルCT値を120C40%と、同サンプルを管電圧100kVで照射して測定したサンプルCT値を100C40%と、含有脂肪率が50%のサンプルを管電圧120kVで照射して測定したサンプルCT値を120C50%と、同サンプルを管電圧100kVで照射して測定したサンプルCT値を100C50%と、含有脂肪率が60%のサンプルを管電圧120kVで照射して測定したサンプルCT値を120C60%と、同サンプルを管電圧100kVで照射して測定したサンプルCT値を100C60%とそれぞれ定義する。なお、以下、照射条件を管電圧とした場合について説明するが、照射条件は管電圧に限定されるものではなく、例えば、管電流(mA)であってもよい。
【0044】
また、図4に示した第1のテーブルは、含有脂肪率と、複数の異なる管電圧で測定したサンプルCT値の比較値とをそれぞれ関連づけている。例えば、含有脂肪率と、複数の異なる管電圧で測定したサンプルCT値の比の値とをそれぞれ関連づけている。具体的には、含有脂肪率10%のサンプルには(120C10%/100C10%)から算出するサンプルCT値の比の値αを、含有脂肪率20%のサンプルには(120C20%/100C20%)から算出するサンプルCT値の比の値βを、含有脂肪率30%のサンプルには(120C30%/100C30%)から算出するサンプルCT値の比の値γを、含有脂肪率40%のサンプルには(120C40%/100C40%)から算出するサンプルCT値の比の値δを、含有脂肪率50%のサンプルには(120C50%/100C50%)から算出するサンプルCT値の比の値εを、含有脂肪率60%サンプルには(120C60%/100C60%)から算出するサンプルCT値の比の値ζをそれぞれ関連づけている。なお、本実施形態では、代表的な例として、異なる管電圧を120kVと100kVとした(管電流はそれぞれ一定)。
【0045】
そして、図4に示すように、本実施形態では、各含有脂肪率のサンプル毎のサンプルCT値の比を「脂肪係数」としている。すなわち、本実施形態では異なる照射条件として、管電圧を120kVと100kVとに異ならせているので、管電圧が120kVのときのサンプルCT値と、管電圧が100kVのときのサンプルCT値との比を算出し、この結果に対して、含有脂肪率を対応させている。
【0046】
図5は、第2のテーブルの一例を示す図である。
【0047】
図5に示すように第2のテーブルは、通常の水ファントムに対してX線を曝射し、所定のFOV(Field Of View;有効視野、例えば、400mm)として異なる水等価厚に対応するサンプルCT値を異なる照射条件毎(例えば、異なる管電圧120kVと100kV)で得たテーブルである。これは、同様の照射条件下で、かつ同様のFOVであっても、被検体Pのサイズによって生ずるCT値の誤差を補正するためのテーブルである。
【0048】
例えば、図5に示すように、FOV=400mmの下で、水ファントムの水等価厚が180mm、240mm、320mm及び400mmの場合において、管電圧が120kVのときと100kVのときとでサンプルCT値を測定する。ここでは、管電圧が120kVで水等価厚が180mmのサンプルCT値を120C180と、同管電圧で水等価厚が240mmのサンプルCT値を120C240と、同管電圧で水等価厚が320mmのサンプルCT値を120C320と、同管電圧で水等価厚が400mmのサンプルCT値を120C400と、管電圧100kVで水等価厚が180mmのサンプルCT値を100C180と、同管電圧で水等価厚が240mmのサンプルCT値を100C240と、同管電圧で水等価厚が320mmのサンプルCT値を100C320と、同管電圧で水等価厚が400mmのサンプルCT値を100C400とそれぞれ定義する。
【0049】
また、図2に示した被検体サイズ測定部61は、検査の段階で被検体Pに対してX線を曝射後、記憶装置に記憶された被検者Pのスキャノデータを基に被検体Pのサイズを測定する。
【0050】
CT値測定部62は、被検体Pに対してX線を曝射後、被検体Pにおける照射条件毎の複数のCT画像を記憶装置から読み出す。また、CT値測定部62は、被検者Pのスキャノデータに対して検者が入力装置46を用いて入力した関心領域を基に、記憶装置から読み出したCT画像のCT値を平均した実測CT値を照射条件毎に測定する。
【0051】
サイズ依存補正部63は、CT値測定部62で測定した各実測CT値に対して、第2のテーブルを参照して被検体Pのサイズによって生じるCT値の誤差を補正する。
【0052】
例えば、第1のテーブルを作成する際の水ファントムの水等価厚が、FOV=400mmの下で240mmであり、関心領域について被検体サイズ測定部61で測定した被検体Pの水等価厚が、FOV=400mmの下で320mmであった場合を考える。サイズ依存補正部63は、管電圧120kVの条件下にてCT値測定部62で測定した被検体Pの実測CT値に、第2のテーブルから得る水等価厚の比(120C240/120C320)の値を乗じて「管電圧120kVでの補正された実測CT値」を求める。一方、サイズ依存補正部63は、管電圧100kVの条件下にてCT値測定部62で測定した被検体Pの実測CT値に、第2のテーブルから得る水等価厚の比(100C240/100C320)の値を乗じて「管電圧100kVでの補正された実測CT値」を求める。
【0053】
なお、本実施形態では、(120C240/120C320)や(100C240/120C320)のように示される水等価厚の比をそれぞれのサイズ依存補正係数として定義する。すなわち、上記の例では、管電圧120kVにおけるサイズ依存補正係数120kは(120C240/120C320)であり、管電圧100kVにおけるサイズ依存補正係数100kは(100C240/100C320)である。
【0054】
図2に示した脂肪係数算出部64は、CT値測定部62で測定した、異なる照射条件における実測CT値の比を算出する。その比は例えば、(管電圧120kVでの実測CT値)/(管電圧100kVでの実測CT値)であるが、サイズ依存補正部63による補正が行なわれた場合には、(管電圧120kVでの補正された実測CT値)/(管電圧100kVでの補正された実測CT値)となる。
【0055】
含有脂肪率抽出部65は、記憶装置に記憶された第1のテーブルを参照して、脂肪係数算出部64で求めた実測CT値の比の値、又は、補正された実測CT値の比の値、すなわち、脂肪係数に該当する数値に対応する含有脂肪率を抽出する。そして、含有脂肪率抽出部65で抽出した含有脂肪率は表示装置47によって表示されることとなり、スキャノ像における所定領域の客観的な含有脂肪率として定量化表示されることとなる。
【0056】
次に、本発明に係るX線CT装置の第1実施形態における画像処理部54の動作を、図6に示すフローチャートを参照して説明する。
【0057】
まず、図2に示した再構成処理部53によって再構成処理が終了した後、画像処理部54は、HD44等の記憶装置からスキャノデータを取得し(ステップS1)、表示装置47に対してスキャノデータをスキャノ像として表示させる。
【0058】
次に、表示装置47に表示されたスキャノ像に対して検者が所定領域を指定することで、関心領域が設定される(ステップS2)。
【0059】
図7は、所定領域の指定を行なうときのスキャノ像を含む表示画面の一例を示す図である。
【0060】
図7に示した表示画面上における所定領域の指定は、ポインティングデバイス等の入力装置46によって特定されたスキャノデータ上の座標を処理することによって行なわれる。
【0061】
次に、図2に示したCT値測定部62は、ステップS2で設定した関心領域につき、異なる照射条件毎に平均した実測CT値を測定し(ステップS3)、CT画像を表示装置47に表示させる。
【0062】
図8は、管電圧が120kVの場合のCT画像を含む表示画面の一例を示す図である。一方、図9は、管電圧を100kVの場合のCT画像を含む表示画面の一例を示す図である。
【0063】
次に、図2に示したサイズ依存補正部63は、スキャノデータに対してステップS2で設定した関心領域内の水等価厚を算出し、第2のテーブルを参照してサイズ依存補正係数を算出する(ステップS4)。
【0064】
その後、サイズ依存補正部63は、各照射条件について算出したサイズ依存補正係数を、該当する照射条件の実測CT値にそれぞれ乗じて被検体Pのサイズによって生じる実測CT値の誤差を補正する(ステップS5)。例えば、管電圧120kVのときの関心領域内のCT実測値をC120とし、管電圧100kVのときの関心領域内の平均CT実測値をC100とした場合、「管電圧120kVでの補正された実測CT値」は、C120×120kと求められ、「管電圧100kVでの補正された実測CT値」は、C100×100k240と求められる(120k及び100kについては、前述参照。)。
【0065】
次に、脂肪係数算出部64は、サイズ依存補正部63で求めた「管電圧120kVでの補正された実測CT値」と「管電圧100kVでの補正された実測CT値」とを用いて、それらの比((C120×120k)/(C100×100k))を脂肪係数(実測値)として算出する(ステップS6)。
【0066】
そして、このようにして求められた脂肪係数(実測値)について、含有脂肪率抽出部65は、記憶装置に記憶された第1のテーブルを参照して、ほぼ合致する数値を示す脂肪係数(サンプル値)に関連づけられた含有脂肪率を抽出する(ステップS7)。例えば、脂肪係数算出部64で算出した脂肪係数(実測値)である((C120×120k)/(C100×100k))が第1のテーブルに示す脂肪係数γに近い場合、第1のテーブルから含有脂肪率「30%」が抽出される。なお、脂肪係数γは、第1のテーブルを参照すると、(120C30%/100C30%)によって算出された数値である。
【0067】
また、実測の脂肪係数が図4に示すサンプル値としての脂肪係数(α〜ζ)のいずれにも近いものがない場合は、補完して求めてもよい。
【0068】
含有脂肪率抽出部65で抽出した含有脂肪率は、表示装置47によって検者が視認できるように表示される(ステップS8)。例えば、「該当領域の含有脂肪率は〜%です」という文字列が、CT画像を表示したディスプレイに重ね合わされるなどして表示される。
【0069】
なお、本実施形態は、本発明の一例であり、本発明は本実施形態で説明した構成及び動作に限定されることはない。本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。例えば、第1のテーブルに示した脂肪係数を、管電圧120kVで測定したサンプルCT値と管電圧100kVで測定したサンプルCT値との差の値としてもよい。その場合、サイズ依存補正部63は、120kV及び100kVの管電圧で測定した被検体Pの実測CT値に、第2のテーブルから得られる水等価厚の差の値を乗じて、所定の管電圧で補正された実測CT値を求める。
【0070】
本発明に係るX線CT装置1の画像処理部54によると、X線CT装置1を用いて得られた画像情報を基に測定したCT値から、関心領域の含有脂肪率を客観的に定量化して表示することができる。
【0071】
図10は、本発明に係るX線CT装置の第2実施形態を示すブロック図である。
【0072】
図1に示したハードウェア構成において、X線CT装置1の操作コンソール4のCPU41がプログラムを実行することによって、操作コンソール4は、前処理部51、散乱線補正部52、再構成処理部53及び画像処理部54Aとして機能する。
【0073】
画像処理部54Aは、HD44等の記憶装置に記憶した画像データに対して各種画像処理を施して表示画像を生成する。画像処理部54Aは表示画像を生成するために、CT値測定部62及び含有脂肪率換算部66を有している。なお、図10において、図2に付される部材と同一の部材には同一の符号を付して説明を省略する。
【0074】
ここで、HD44等の記憶装置には含有脂肪率換算式が予め記憶されている。含有脂肪率換算式は、含有脂肪率に対して複数の異なる照射条件におけるCT値をサンプルCT値として測定し、含有脂肪率と、異なる照射条件で測定した各サンプルCT値間の差との関係を示すものである。
【0075】
図11は、含有脂肪率換算式を取得するための概略を示す図であり、異なる照射条件で測定したサンプルCT値と、異なる照射条件で測定した各サンプルCT値間の差との関係の一例をテーブルとして示す図である。
【0076】
検査前の準備段階で含有脂肪率換算式を取得するために、まず、各種含有脂肪率のサンプルをそれぞれ調製する。例えば、定量の水ファントムに対して2%、5%、8%、10%、15%及び20%の重量%の脂肪を混入したサンプルをそれぞれ調製する。図11に示したテーブルは、各種含有脂肪率のサンプルに対して異なる照射条件、例えば管電圧で測定したCT値をサンプルCT値として示している。例えば、含有脂肪率が2%のサンプルを管電圧120kVで照射して測定したサンプルCT値を120C2%と、同サンプルを管電圧80kVで照射して測定したサンプルCT値を80C2%と、含有脂肪率が5%のサンプルを管電圧120kVで照射して測定したサンプルCT値を120C5%と、同サンプルを管電圧80kVで照射して測定したサンプルCT値を80C5%と、含有脂肪率が8%のサンプルを管電圧120kVで照射して測定したサンプルCT値を120C8%と、同サンプルを管電圧80kVで照射して測定したサンプルCT値を80C8%と、含有脂肪率が10%のサンプルを管電圧120kVで照射して測定したサンプルCT値を120C10%と、同サンプルを管電圧80kVで照射して測定したサンプルCT値を80C10%と、含有脂肪率が15%のサンプルを管電圧120kVで照射して測定したサンプルCT値を120C15%と、同サンプルを管電圧80kVで照射して測定したサンプルCT値を80C15%と、含有脂肪率が20%のサンプルを管電圧120kVで照射して測定したサンプルCT値を120C20%と、同サンプルを管電圧80kVで照射して測定したサンプルCT値を80C20%とそれぞれ定義する。なお、以下、照射条件を管電圧とした場合について説明するが、照射条件は管電圧に限定されるものではなく、例えば、管電流(mA)であってもよい。
【0077】
また、図11に示したテーブルは、含有脂肪率と、異なる管電圧で測定したサンプルCT値間の差の値とをそれぞれ関連づけている。例えば、含有脂肪率2%のサンプルには(120C2%−80C2%)から算出するサンプルCT値の差の値ηを、含有脂肪率5%のサンプルには(120C5%−80C5%)から算出するサンプルCT値の差の値θを、含有脂肪率8%のサンプルには(120C8%−80C8%)から算出するサンプルCT値の差の値ιを、含有脂肪率10%のサンプルには(120C10%−80C10%)から算出するサンプルCT値の差の値κを、含有脂肪率15%のサンプルには(120C15%−80C15%)から算出するサンプルCT値の差の値λを、含有脂肪率20%サンプルには(120C20%−80C20%)から算出するサンプルCT値の差の値μをそれぞれ関連づけている。なお、本実施形態では、代表的な例として、異なる管電圧を120kVと80kVとした(管電流はそれぞれ一定)。
【0078】
また、含有脂肪率換算式を取得するために、図11に示したテーブルを基に、含有脂肪率と、異なる管電圧で得た各サンプルCT値の差との関係を求める。
【0079】
図12は、含有脂肪率換算式の一例をグラフとして示す図である。
【0080】
図12は、被検体Pの水等価厚とFOVとの組み合わせ毎に含有脂肪率(x)とサンプルCT値の差(y)との関係をプロットし、そのプロットを基にした回帰線を示している。なお、被検体Pの水等価厚とFOVと拡大率を考慮した表示FOVとの組み合わせ毎に含有脂肪率とサンプルCT値の差との関係を求めることも行なったが、その関係は、おおよそ表示FOVに関わらないことが確認できている。
【0081】
例えば、被検体Pの水等価厚とFOVとの組み合わせ(被検体Pの水等価厚/FOV)を、240mm/400mm、240mm/320mm、320mm/400mm、320mm/320mmとして、含有脂肪率とサンプルCT値の差との関係をプロットし、そのプロットを基にした回帰線をグラフとしてそれぞれ示している。このように、いずれの組み合わせの場合も、含有脂肪率とサンプルCT値の差とは正の相関関係となる。なお、各回帰線の相関係数は0.99以上を示した。
【0082】
また、測定誤差等を考慮すると、各組み合わせ間の傾きには差異があるとは言えず、組み合わせに因らず傾きはほぼ一致した。よって、各回帰線のうちいずれかの傾き、又は各回帰線の傾きの平均を傾きとするy切片「0」の直線を含有脂肪率換算式とする。なお、ここでは各回帰線の傾きの平均(40.597)を傾きとするy切片「0」の直線を含有脂肪率換算式とし、その含有脂肪率換算式を散布図上に示している。
【0083】
図10に示した含有脂肪率換算部66は、CT値測定部62で測定した照射条件毎の実測CT値を基に、異なる照射条件における実測CT値間の差の値を算出する。その差は例えば、(管電圧120kVでの実測CT値)−(管電圧80kVでの実測CT値)である。また、含有脂肪率換算部66は、記憶装置に記憶された含有脂肪率換算式を参照して、実測CT値間の差の値を含有脂肪率に換算する。そして、含有脂肪率換算部66で換算した含有脂肪率は表示装置47によって表示されることとなり、スキャノ像における所定領域の客観的な含有脂肪率として定量化表示されることとなる。
【0084】
次に、本発明に係るX線CT装置の第2実施形態における画像処理部54Aの動作を、図13に示すフローチャートを参照して説明する。
【0085】
まず、図10に示した再構成処理部53によって再構成処理が終了した後、画像処理部54Aは、記憶装置からスキャノデータを取得し(ステップS1)、表示装置47に対してスキャノデータをスキャノ像として表示させる。
【0086】
次に、図7で説明したように、表示装置47に表示されたスキャノ像に対して検者が所定領域を指定することで、関心領域が設定される(ステップS2)。
【0087】
次に、CT値測定部62は、ステップS2で設定した関心領域につき、異なる照射条件毎に平均した実測CT値を測定し(ステップS3)、図8及び図9に示したように、CT画像を表示装置47に表示させる。
【0088】
次に、含有脂肪率換算部66は、記憶装置に記憶された含有脂肪率換算式を参照して、CT値測定部62で測定した実測CT値を含有脂肪率に換算する(ステップS10)。
【0089】
含有脂肪率換算部66で換算した含有脂肪率は、表示装置47によって検者が視認できるように表示される(ステップS11)。例えば、「該当領域の含有脂肪率は〜%です」という文字列が、CT画像を表示したディスプレイに重ね合わされるなどして表示される。
【0090】
なお、図1に示したX線CT装置1では1つのX線管12による単管球型の装置として示すが、X線CT装置1は、多管球型の装置であってもよい。その場合、各X線管を異なる照射条件に設定することで、1度のスキャンによって異なる照射条件でCT値(サンプルCT値)を取得することができる。
【0091】
なお、本実施形態は、本発明の一例であり、本発明は本実施形態で説明した構成及び動作に限定されることはない。本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0092】
本発明に係るX線CT装置1の画像処理部54Aによると、X線CT装置1を用いて得られた画像情報を基に測定したCT値から、関心領域の含有脂肪率を客観的に定量化して表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】X線CT装置のハードウェア構成を示すブロック図。
【図2】本発明に係るX線CT装置の第1実施形態を示すブロック図。
【図3】第1のテーブルを取得するための概略を示す図。
【図4】第1のテーブルの一例を示す図。
【図5】第2のテーブルの一例を示す図。
【図6】本発明に係るX線CT装置の第1実施形態において画像処理部の動作を示すフローチャート。
【図7】所定領域の指定を行なうときのスキャノ像を含む表示画面の一例を示す図。
【図8】管電圧を120kVとしたときのCT画像を含む表示画面の一例を示す図。
【図9】管電圧を100kVとしたときのCT画像を含む表示画面の一例を示す図。
【図10】本発明に係るX線CT装置の第2実施形態を示すブロック図。
【図11】含有脂肪率換算式を取得するための概略を示す図。
【図12】含有脂肪率換算式の一例をグラフとして示す図。
【図13】本発明に係るX線CT装置の第2実施形態において画像処理部の動作を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0094】
1 X線CT装置
2 架台装置
3 寝台装置
4 操作コンソール
44 HD
46 入力装置
47 表示装置
51 前処理部
52 散乱線補正部
53 再構成処理部
54,54A 画像処理部
61 被検体サイズ測定部
62 CT値測定部
63 サイズ依存補正部
64 脂肪係数算出部
65 含有脂肪率抽出部
66 含有脂肪率換算部
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体にX線を曝射して得られた投影データに基づいて被検体内部の画像を生成する技術に係り、当該画像から所定領域における含有脂肪率を定量化するX線CT装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のX線CT(Computed Tomography)装置の進歩は目覚しい。より高精細(高解像度)且つ広範囲に撮影したいという医療現場からの強い要望に応えて、マルチスライスX線CT装置が開発され、これがかなり普及してきている。マルチスライスX線CT装置は、スライス方向(寝台天板の長手方向)に広がり幅を有するコーンビームX線を曝射するX線源と、複数列の検出素子列をスライス方向に並べた構造の2次元検出器とを備え、これによりヘリカルスキャンを行なうことができるように構成されている。これにより、シングルスライスX線CT装置に比べて、被検体内部の広範囲にわたるボリュームデータを高精度、且つ、短時間で得ることができる。
【0003】
このようなX線CT装置は、例えば以下の特許文献1等に開示されている。
【特許文献1】特開2004−305527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来のX線CT装置においては、例えば、被検体の肝臓部分を撮影した場合、得られた画像に対する検者の視覚的な印象や、関心領域(ROI:Region Of Interest)によるCT値測定等から脂肪肝の進行程度を判断することがある。しかし、脂肪肝の進行程度の判断は、検者の主観に依るところが大きい。
【0005】
また、測定されたCT値についても、被検者の体格の違いによってサイズ依存が生じる傾向にある。よって、被検者の体格を考慮に入れることなく測定したCT値によって脂肪肝の進行程度を判断することは必ずしも適正な診断とはいえなかった。
【0006】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、X線CT装置を用いて得られた画像情報を基に測定したCT値から、所定領域における含有脂肪率を客観的に定量化して表示することができるX線CT装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るX線CT装置は、上述した課題を解決するために、複数の異なるCT値の比の値に対して、それぞれ含有脂肪率を関連づけた第1のテーブルを記憶する記憶装置と、被検体に対して前記複数の異なる照射条件でX線を曝射し、照射条件毎に実測CT値を測定するCT値測定部と、前記照射条件間毎の実測CT値の比を算出し、前記第1のテーブルを参照して、前記実測CT値の比に対応する含有脂肪率を抽出する含有脂肪率抽出部とを有する。
【0008】
本発明に係るX線CT装置は、上述した課題を解決するために、所定量の脂肪を含有させた所望の水ファントムに対して複数の異なる照射条件でX線を曝射することによって得られた前記水ファントムの照射条件間のサンプルCT値の比と含有脂肪率とを関連づけた第1のテーブルを予め記憶する第1の記憶装置と、サイズの異なる水ファントムのそれぞれの水等価厚でのサンプルCT値を前記複数の異なる照射条件毎に記憶した第2のテーブルを予め記憶する第2の記憶装置と、被検体に対して前記複数の異なる照射条件でX線を曝射し、照射条件毎に実測CT値を測定するCT値測定部と、前記被検体の水等価厚を測定する被検体サイズ測定部と、前記第2のテーブルを参照して、前記所望の水ファントムのサイズと前記被検体サイズ測定部で測定した被検体のサイズとに基づくサイズ依存補正係数を算出し、前記実測CT値に対して同一の照射条件のサイズ依存補正係数を乗じて前記実測CT値を補正するサイズ依存補正部と、前記サイズ依存補正部で補正された実測CT値の比を脂肪係数として算出する脂肪係数算出部と、前記第1のテーブルを参照して、前記脂肪係数に対応する含有脂肪率を抽出する含有脂肪率抽出部とを有する。
【0009】
本発明に係るX線CT装置は、上述した課題を解決するために、複数の異なるCT値の差の値に対して、それぞれ含有脂肪率を関連づけた第1のテーブルを記憶する記憶装置と、被検体に対して前記複数の異なる照射条件でX線を曝射し、照射条件毎に実測CT値を測定するCT値測定部と、前記照射条件間毎の実測CT値の差を算出し、前記第1のテーブルを参照して、前記実測CT値の差に対応する含有脂肪率を抽出する含有脂肪率抽出部とを有する。
【0010】
本発明に係るX線CT装置は、上述した課題を解決するために、所定量の脂肪を含有させた所望の水ファントムに対して複数の異なる照射条件でX線を曝射することによって得られた前記水ファントムの照射条件間のサンプルCT値の差と含有脂肪率とを関連づけた第1のテーブルを予め記憶する第1の記憶装置と、サイズの異なる水ファントムのそれぞれの水等価厚でのサンプルCT値を前記複数の異なる照射条件毎に記憶した第2のテーブルを予め記憶する第2の記憶装置と、被検体に対して前記複数の異なる照射条件でX線を曝射し、照射条件毎に実測CT値を測定するCT値測定部と、前記被検体の水等価厚を測定する被検体サイズ測定部と、前記第2のテーブルを参照して、前記所望の水ファントムのサイズと前記被検体サイズ測定部で測定した被検体のサイズとに基づくサイズ依存補正係数を算出し、前記実測CT値に対して同一の照射条件のサイズ依存補正係数を乗じて前記実測CT値を補正するサイズ依存補正部と、前記サイズ依存補正部で補正された実測CT値の差を脂肪係数として算出する脂肪係数算出部と、前記第1のテーブルを参照して、前記脂肪係数に対応する含有脂肪率を抽出する含有脂肪率抽出部とを有する。
【0011】
本発明に係るX線CT装置は、上述した課題を解決するために、複数の異なるCT値の差の値に対する含有脂肪率を基に算出した換算式を記憶する記憶装置と、被検体に対して前記複数の異なる照射条件でX線を曝射し、照射条件毎に実測CT値を測定するCT値測定部と、前記照射条件間毎の実測CT値の差を算出し、前記換算式を参照して、前記実測CT値の差を含有脂肪率に換算する含有脂肪率換算部とを有する。
【0012】
本発明に係るX線CT装置は、上述した課題を解決するために、複数の異なるCT値の比較値に対する含有脂肪率を関連づけた第1のテーブルを記憶する記憶装置と、被検体に対して前記複数の異なる照射条件でX線を曝射し、照射条件毎に実測CT値を測定するCT値測定部と、前記照射条件間毎の実測CT値の比較値を算出し、前記第1のテーブルを参照して、前記実測CT値の比較値に対応する含有脂肪率を抽出する含有脂肪率抽出部とを有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るX線CT装置によると、X線CT装置を用いて得られた画像情報を基に測定したCT値から、所定領域における含有脂肪率を客観的に定量化して表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係るX線CT装置の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、X線CT装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0016】
図1は、X線CT装置1を示し、そのX線CT装置1には、被検体(人体)Pに関するデータを収集するために構成された架台装置2と、被検体Pを載せて移動させるための寝台装置3と、X線CT装置1を操作するために、入力及び画像表示を行なう操作コンソール4とが備えられる。
【0017】
X線CT装置1の架台装置2には、X線管12、X線検出器13、絞り14、データ収集装置15、高電圧発生装置16、絞り駆動装置17、回転駆動装置18、メインコントローラ19及びIF(InterFace)20a,20bが設けられる。
【0018】
また、X線管12、X線検出器13、絞り14及びデータ収集装置15は架台装置2の回転部21に設置される。回転部21は、X線管12とX線検出器13とを対向させた状態でX線管12とX線検出器13とを被検体Pの周りを回転できるように構成されている。
【0019】
X線管12は、高電圧発生装置16から供給された管電圧に応じてX線を発生する。
【0020】
X線検出器13は、2次元アレイ型検出器(マルチスライス型検出器ともいう。)である。X線検出素子は例えば0.5mm×0.5mmの正方の検出面を有する。X線検出器13には、例えば916個のX線検出素子がチャンネル方向に配列され、この列がスライス方向(検出器の列方向)に沿って例えば64列以上並設されている。
【0021】
絞り14は、絞り駆動装置17による制御によって、被検体Pに曝射するX線のスライス方向の曝射範囲を調整する。すなわち、絞り駆動装置17によって絞り14の開口を調整することによって、スライス方向のX線曝射範囲を変更できる。
【0022】
データ収集装置15は、一般的にDAS(Data Acquisition System)と呼ばれ、X線検出器13からチャンネル毎に出力される信号を増幅し、さらにディジタル信号に変換する。変換後のデータ(生データ)は架台装置2のIF20bを介して外部の操作コンソール4に供給される。
【0023】
メインコントローラ19は、操作コンソール4からIF20aを介して入力した制御信号に基づいて、高電圧発生装置16、絞り駆動装置17、回転駆動装置18及びデータ収集装置15等の制御を行なう。
【0024】
X線CT装置1の寝台装置3には、被検体Pを載せる天板31と、その天板31をスライス方向に沿って移動させる天板駆動装置32とが設けられる。回転部21の中央部分は開口を有し、その開口部の天板31に載置された被検体Pが挿入される。なお、回転部21の回転中心軸と平行な方向をZ軸方向(スライス方向)、Z軸方向に直交する平面をX軸方向、Y軸方向で定義する。
【0025】
X線CT装置1の操作コンソール4は、コンピュータをベースとして構成されている、いわゆるワークステーションであり、病院基幹のLAN(Local Area Network)等のネットワークNと相互通信可能である。操作コンソール4は、大きくは、CPU(Central Processing Unit)41、メモリ42、HD(Hard Disc)44、IF45a,45b,45c、入力装置46及び表示装置47等の基本的なハードウェアから構成される。CPU41は、共通信号伝送路としてのバスを介して、操作コンソール4を構成する各ハードウェア構成要素に相互接続されている。なお、操作コンソール4は、記録媒体ドライブ48を具備する場合もある。
【0026】
CPU41は、医師等の検者によって入力装置46が操作等されることにより指令が入力されると、メモリ42に記憶しているプログラムを実行する。又は、CPU41は、HD44に記憶しているプログラム、ネットワークNから転送されIF45cで受信されてHD44にインストールされたプログラム、又は記録媒体ドライブ48に装着された記録媒体から読み出されてHD44にインストールされたプログラムを、メモリ42にロードして実行する。
【0027】
メモリ42は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等の要素を兼ね備え、IPL(Initial Program Loading)、BIOS(Basic Input/Output System)及びデータを記憶したり、CPU41のワークメモリやデータの一時的な記憶に用いたりする記憶装置である。
【0028】
HD44は、不揮発性の半導体メモリ等によって構成される。HD44は、操作コンソール4にインストールされたプログラム(アプリケーションプログラムの他、OS(Operating System)等も含まれる)や、データを記憶する記憶装置である。また、OSに、検者に対する情報の表示にグラフィックを多用し、基礎的な操作を入力装置46によって行なうことができるGUI(Graphical User Interface)を提供させることもできる。
【0029】
IF45a,45b,45cは、各規格に応じた通信制御を行なう。IF45a,45bは架台装置2と通信を行なうものであり、架台装置2のIF20a,20bにそれぞれ接続される。また、IF45cは、電話回線を通じてネットワークNに接続することができる機能を有しており、これにより、操作コンソール4は、IF45cからネットワークN網に接続することができる。
【0030】
入力装置46は、検者によって操作が可能なポインティングデバイスであり、操作に従った入力信号がCPU41に送られる。
【0031】
表示装置47としては、モニタ等が挙げられる。表示しようとするイメージデータを展開するVRAM(Video Random Access Memory、図示しない)等のメモリにイメージデータ等を展開することで、画像を表示装置47に表示する。
【0032】
記録媒体ドライブ48は、記録媒体の着脱が可能となっており、記録媒体に記録されたデータ(プログラムを含む)を読み出して、バス上に出力し、また、バスを介して供給されるデータを記録媒体に書き込む。このような記録媒体は、いわゆるパッケージソフトウエアとして提供することができる。
【0033】
図2は、本発明に係るX線CT装置の第1実施形態を示すブロック図である。
【0034】
図1に示したハードウェア構成において、X線CT装置1の操作コンソール4のCPU41がプログラムを実行することによって、操作コンソール4は、前処理部51、散乱線補正部52、再構成処理部53及び画像処理部54として機能する。なお、各部51乃至54は、CPU41がプログラムを実行することによって機能するものとするが、その場合に限定されるものではない。各部51乃至54をハードウェアとして操作コンソール4に設けるものであってもよい。
【0035】
前処理部51は、図1に示したIF45bを介して架台装置2の装置データ収集装置15から入力する生データに対して対数変換処理や、感度補正等の補正処理を行なって投影データを生成する。
【0036】
散乱線補正部52は、前処理部51から入力する投影データに対して散乱線の除去処理を行なう。散乱線補正部52は、X線曝射範囲内の投影データの値に基づいて散乱線の除去を行なうものであり、散乱線補正を行なう対象の投影データ又はその隣接投影データの値の大きさから推定された散乱線を、対象となる投影データから減じて散乱線補正を行なう。この散乱X線除去後の投影データは再構成処理部53に送られる。
【0037】
画像再構成処理部53は、スライス方向におけるX線パスが平行であると仮定したファンビーム再構成、スライス方向におけるX線曝射角度(コーン角)を考慮したコーンビーム再構成等の再構成方法を用いて、被検体P内部の生体情報の画像を再構成する。
【0038】
画像処理部54は、HD44等の記憶装置に記憶した画像データに対して各種画像処理を行なって表示画像を生成する。画像処理部54は表示画像を生成するために、被検体サイズ測定部61、CT値測定部62、サイズ依存補正部63、脂肪係数算出部64及び含有脂肪率抽出部65を有している。
【0039】
ここで、記憶装置には第1のテーブル及び第2のテーブルが予め記憶されている。第1のテーブルは、含有脂肪率に対して複数の異なる照射条件におけるCT値をサンプルCT値として測定し、含有脂肪率と、各照射条件で測定した各サンプルCT値の比との関係を示すものである。一方、第2のテーブルは、被検体Pのサイズによって実測CT値を補正するためのものである。なお、第1のテーブル及び第2のテーブルは、別々の記憶装置に記憶されていてもよい。
【0040】
図3は、第1のテーブルを取得するための概略を示す図である。
【0041】
検査前の準備段階で第1のテーブルを取得するために、まず、各種含有脂肪率のサンプルをそれぞれ調製する。例えば、定量の水ファントムに対して10%、20%、30%、40%、50%及び60%の重量%の脂肪を混入したサンプルをそれぞれ調製する。図3は、各種含有脂肪率のサンプルに対してX線CT装置1を用いて通常の被検体Pと同様に撮影して取得した画像である。
【0042】
図4は、第1のテーブルの一例を示す図である。
【0043】
図4に示した第1のテーブルは、各種含有脂肪率のサンプルに対して異なる照射条件、例えば管電圧で測定したCT値をサンプルCT値として示している。例えば、含有脂肪率が10%のサンプルを管電圧120kVで照射して測定したサンプルCT値を120C10%と、同サンプルを管電圧100kVで照射して測定したサンプルCT値を100C10%と、含有脂肪率が20%のサンプルを管電圧120kVで照射して測定したサンプルCT値を120C20%と、同サンプルを管電圧100kVで照射して測定したサンプルCT値を100C20%と、含有脂肪率が30%のサンプルを管電圧120kVで照射して測定したサンプルCT値を120C30%と、同サンプルを管電圧100kVで照射して測定したサンプルCT値を100C30%と、含有脂肪率が40%のサンプルを管電圧120kVで照射して測定したサンプルCT値を120C40%と、同サンプルを管電圧100kVで照射して測定したサンプルCT値を100C40%と、含有脂肪率が50%のサンプルを管電圧120kVで照射して測定したサンプルCT値を120C50%と、同サンプルを管電圧100kVで照射して測定したサンプルCT値を100C50%と、含有脂肪率が60%のサンプルを管電圧120kVで照射して測定したサンプルCT値を120C60%と、同サンプルを管電圧100kVで照射して測定したサンプルCT値を100C60%とそれぞれ定義する。なお、以下、照射条件を管電圧とした場合について説明するが、照射条件は管電圧に限定されるものではなく、例えば、管電流(mA)であってもよい。
【0044】
また、図4に示した第1のテーブルは、含有脂肪率と、複数の異なる管電圧で測定したサンプルCT値の比較値とをそれぞれ関連づけている。例えば、含有脂肪率と、複数の異なる管電圧で測定したサンプルCT値の比の値とをそれぞれ関連づけている。具体的には、含有脂肪率10%のサンプルには(120C10%/100C10%)から算出するサンプルCT値の比の値αを、含有脂肪率20%のサンプルには(120C20%/100C20%)から算出するサンプルCT値の比の値βを、含有脂肪率30%のサンプルには(120C30%/100C30%)から算出するサンプルCT値の比の値γを、含有脂肪率40%のサンプルには(120C40%/100C40%)から算出するサンプルCT値の比の値δを、含有脂肪率50%のサンプルには(120C50%/100C50%)から算出するサンプルCT値の比の値εを、含有脂肪率60%サンプルには(120C60%/100C60%)から算出するサンプルCT値の比の値ζをそれぞれ関連づけている。なお、本実施形態では、代表的な例として、異なる管電圧を120kVと100kVとした(管電流はそれぞれ一定)。
【0045】
そして、図4に示すように、本実施形態では、各含有脂肪率のサンプル毎のサンプルCT値の比を「脂肪係数」としている。すなわち、本実施形態では異なる照射条件として、管電圧を120kVと100kVとに異ならせているので、管電圧が120kVのときのサンプルCT値と、管電圧が100kVのときのサンプルCT値との比を算出し、この結果に対して、含有脂肪率を対応させている。
【0046】
図5は、第2のテーブルの一例を示す図である。
【0047】
図5に示すように第2のテーブルは、通常の水ファントムに対してX線を曝射し、所定のFOV(Field Of View;有効視野、例えば、400mm)として異なる水等価厚に対応するサンプルCT値を異なる照射条件毎(例えば、異なる管電圧120kVと100kV)で得たテーブルである。これは、同様の照射条件下で、かつ同様のFOVであっても、被検体Pのサイズによって生ずるCT値の誤差を補正するためのテーブルである。
【0048】
例えば、図5に示すように、FOV=400mmの下で、水ファントムの水等価厚が180mm、240mm、320mm及び400mmの場合において、管電圧が120kVのときと100kVのときとでサンプルCT値を測定する。ここでは、管電圧が120kVで水等価厚が180mmのサンプルCT値を120C180と、同管電圧で水等価厚が240mmのサンプルCT値を120C240と、同管電圧で水等価厚が320mmのサンプルCT値を120C320と、同管電圧で水等価厚が400mmのサンプルCT値を120C400と、管電圧100kVで水等価厚が180mmのサンプルCT値を100C180と、同管電圧で水等価厚が240mmのサンプルCT値を100C240と、同管電圧で水等価厚が320mmのサンプルCT値を100C320と、同管電圧で水等価厚が400mmのサンプルCT値を100C400とそれぞれ定義する。
【0049】
また、図2に示した被検体サイズ測定部61は、検査の段階で被検体Pに対してX線を曝射後、記憶装置に記憶された被検者Pのスキャノデータを基に被検体Pのサイズを測定する。
【0050】
CT値測定部62は、被検体Pに対してX線を曝射後、被検体Pにおける照射条件毎の複数のCT画像を記憶装置から読み出す。また、CT値測定部62は、被検者Pのスキャノデータに対して検者が入力装置46を用いて入力した関心領域を基に、記憶装置から読み出したCT画像のCT値を平均した実測CT値を照射条件毎に測定する。
【0051】
サイズ依存補正部63は、CT値測定部62で測定した各実測CT値に対して、第2のテーブルを参照して被検体Pのサイズによって生じるCT値の誤差を補正する。
【0052】
例えば、第1のテーブルを作成する際の水ファントムの水等価厚が、FOV=400mmの下で240mmであり、関心領域について被検体サイズ測定部61で測定した被検体Pの水等価厚が、FOV=400mmの下で320mmであった場合を考える。サイズ依存補正部63は、管電圧120kVの条件下にてCT値測定部62で測定した被検体Pの実測CT値に、第2のテーブルから得る水等価厚の比(120C240/120C320)の値を乗じて「管電圧120kVでの補正された実測CT値」を求める。一方、サイズ依存補正部63は、管電圧100kVの条件下にてCT値測定部62で測定した被検体Pの実測CT値に、第2のテーブルから得る水等価厚の比(100C240/100C320)の値を乗じて「管電圧100kVでの補正された実測CT値」を求める。
【0053】
なお、本実施形態では、(120C240/120C320)や(100C240/120C320)のように示される水等価厚の比をそれぞれのサイズ依存補正係数として定義する。すなわち、上記の例では、管電圧120kVにおけるサイズ依存補正係数120kは(120C240/120C320)であり、管電圧100kVにおけるサイズ依存補正係数100kは(100C240/100C320)である。
【0054】
図2に示した脂肪係数算出部64は、CT値測定部62で測定した、異なる照射条件における実測CT値の比を算出する。その比は例えば、(管電圧120kVでの実測CT値)/(管電圧100kVでの実測CT値)であるが、サイズ依存補正部63による補正が行なわれた場合には、(管電圧120kVでの補正された実測CT値)/(管電圧100kVでの補正された実測CT値)となる。
【0055】
含有脂肪率抽出部65は、記憶装置に記憶された第1のテーブルを参照して、脂肪係数算出部64で求めた実測CT値の比の値、又は、補正された実測CT値の比の値、すなわち、脂肪係数に該当する数値に対応する含有脂肪率を抽出する。そして、含有脂肪率抽出部65で抽出した含有脂肪率は表示装置47によって表示されることとなり、スキャノ像における所定領域の客観的な含有脂肪率として定量化表示されることとなる。
【0056】
次に、本発明に係るX線CT装置の第1実施形態における画像処理部54の動作を、図6に示すフローチャートを参照して説明する。
【0057】
まず、図2に示した再構成処理部53によって再構成処理が終了した後、画像処理部54は、HD44等の記憶装置からスキャノデータを取得し(ステップS1)、表示装置47に対してスキャノデータをスキャノ像として表示させる。
【0058】
次に、表示装置47に表示されたスキャノ像に対して検者が所定領域を指定することで、関心領域が設定される(ステップS2)。
【0059】
図7は、所定領域の指定を行なうときのスキャノ像を含む表示画面の一例を示す図である。
【0060】
図7に示した表示画面上における所定領域の指定は、ポインティングデバイス等の入力装置46によって特定されたスキャノデータ上の座標を処理することによって行なわれる。
【0061】
次に、図2に示したCT値測定部62は、ステップS2で設定した関心領域につき、異なる照射条件毎に平均した実測CT値を測定し(ステップS3)、CT画像を表示装置47に表示させる。
【0062】
図8は、管電圧が120kVの場合のCT画像を含む表示画面の一例を示す図である。一方、図9は、管電圧を100kVの場合のCT画像を含む表示画面の一例を示す図である。
【0063】
次に、図2に示したサイズ依存補正部63は、スキャノデータに対してステップS2で設定した関心領域内の水等価厚を算出し、第2のテーブルを参照してサイズ依存補正係数を算出する(ステップS4)。
【0064】
その後、サイズ依存補正部63は、各照射条件について算出したサイズ依存補正係数を、該当する照射条件の実測CT値にそれぞれ乗じて被検体Pのサイズによって生じる実測CT値の誤差を補正する(ステップS5)。例えば、管電圧120kVのときの関心領域内のCT実測値をC120とし、管電圧100kVのときの関心領域内の平均CT実測値をC100とした場合、「管電圧120kVでの補正された実測CT値」は、C120×120kと求められ、「管電圧100kVでの補正された実測CT値」は、C100×100k240と求められる(120k及び100kについては、前述参照。)。
【0065】
次に、脂肪係数算出部64は、サイズ依存補正部63で求めた「管電圧120kVでの補正された実測CT値」と「管電圧100kVでの補正された実測CT値」とを用いて、それらの比((C120×120k)/(C100×100k))を脂肪係数(実測値)として算出する(ステップS6)。
【0066】
そして、このようにして求められた脂肪係数(実測値)について、含有脂肪率抽出部65は、記憶装置に記憶された第1のテーブルを参照して、ほぼ合致する数値を示す脂肪係数(サンプル値)に関連づけられた含有脂肪率を抽出する(ステップS7)。例えば、脂肪係数算出部64で算出した脂肪係数(実測値)である((C120×120k)/(C100×100k))が第1のテーブルに示す脂肪係数γに近い場合、第1のテーブルから含有脂肪率「30%」が抽出される。なお、脂肪係数γは、第1のテーブルを参照すると、(120C30%/100C30%)によって算出された数値である。
【0067】
また、実測の脂肪係数が図4に示すサンプル値としての脂肪係数(α〜ζ)のいずれにも近いものがない場合は、補完して求めてもよい。
【0068】
含有脂肪率抽出部65で抽出した含有脂肪率は、表示装置47によって検者が視認できるように表示される(ステップS8)。例えば、「該当領域の含有脂肪率は〜%です」という文字列が、CT画像を表示したディスプレイに重ね合わされるなどして表示される。
【0069】
なお、本実施形態は、本発明の一例であり、本発明は本実施形態で説明した構成及び動作に限定されることはない。本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。例えば、第1のテーブルに示した脂肪係数を、管電圧120kVで測定したサンプルCT値と管電圧100kVで測定したサンプルCT値との差の値としてもよい。その場合、サイズ依存補正部63は、120kV及び100kVの管電圧で測定した被検体Pの実測CT値に、第2のテーブルから得られる水等価厚の差の値を乗じて、所定の管電圧で補正された実測CT値を求める。
【0070】
本発明に係るX線CT装置1の画像処理部54によると、X線CT装置1を用いて得られた画像情報を基に測定したCT値から、関心領域の含有脂肪率を客観的に定量化して表示することができる。
【0071】
図10は、本発明に係るX線CT装置の第2実施形態を示すブロック図である。
【0072】
図1に示したハードウェア構成において、X線CT装置1の操作コンソール4のCPU41がプログラムを実行することによって、操作コンソール4は、前処理部51、散乱線補正部52、再構成処理部53及び画像処理部54Aとして機能する。
【0073】
画像処理部54Aは、HD44等の記憶装置に記憶した画像データに対して各種画像処理を施して表示画像を生成する。画像処理部54Aは表示画像を生成するために、CT値測定部62及び含有脂肪率換算部66を有している。なお、図10において、図2に付される部材と同一の部材には同一の符号を付して説明を省略する。
【0074】
ここで、HD44等の記憶装置には含有脂肪率換算式が予め記憶されている。含有脂肪率換算式は、含有脂肪率に対して複数の異なる照射条件におけるCT値をサンプルCT値として測定し、含有脂肪率と、異なる照射条件で測定した各サンプルCT値間の差との関係を示すものである。
【0075】
図11は、含有脂肪率換算式を取得するための概略を示す図であり、異なる照射条件で測定したサンプルCT値と、異なる照射条件で測定した各サンプルCT値間の差との関係の一例をテーブルとして示す図である。
【0076】
検査前の準備段階で含有脂肪率換算式を取得するために、まず、各種含有脂肪率のサンプルをそれぞれ調製する。例えば、定量の水ファントムに対して2%、5%、8%、10%、15%及び20%の重量%の脂肪を混入したサンプルをそれぞれ調製する。図11に示したテーブルは、各種含有脂肪率のサンプルに対して異なる照射条件、例えば管電圧で測定したCT値をサンプルCT値として示している。例えば、含有脂肪率が2%のサンプルを管電圧120kVで照射して測定したサンプルCT値を120C2%と、同サンプルを管電圧80kVで照射して測定したサンプルCT値を80C2%と、含有脂肪率が5%のサンプルを管電圧120kVで照射して測定したサンプルCT値を120C5%と、同サンプルを管電圧80kVで照射して測定したサンプルCT値を80C5%と、含有脂肪率が8%のサンプルを管電圧120kVで照射して測定したサンプルCT値を120C8%と、同サンプルを管電圧80kVで照射して測定したサンプルCT値を80C8%と、含有脂肪率が10%のサンプルを管電圧120kVで照射して測定したサンプルCT値を120C10%と、同サンプルを管電圧80kVで照射して測定したサンプルCT値を80C10%と、含有脂肪率が15%のサンプルを管電圧120kVで照射して測定したサンプルCT値を120C15%と、同サンプルを管電圧80kVで照射して測定したサンプルCT値を80C15%と、含有脂肪率が20%のサンプルを管電圧120kVで照射して測定したサンプルCT値を120C20%と、同サンプルを管電圧80kVで照射して測定したサンプルCT値を80C20%とそれぞれ定義する。なお、以下、照射条件を管電圧とした場合について説明するが、照射条件は管電圧に限定されるものではなく、例えば、管電流(mA)であってもよい。
【0077】
また、図11に示したテーブルは、含有脂肪率と、異なる管電圧で測定したサンプルCT値間の差の値とをそれぞれ関連づけている。例えば、含有脂肪率2%のサンプルには(120C2%−80C2%)から算出するサンプルCT値の差の値ηを、含有脂肪率5%のサンプルには(120C5%−80C5%)から算出するサンプルCT値の差の値θを、含有脂肪率8%のサンプルには(120C8%−80C8%)から算出するサンプルCT値の差の値ιを、含有脂肪率10%のサンプルには(120C10%−80C10%)から算出するサンプルCT値の差の値κを、含有脂肪率15%のサンプルには(120C15%−80C15%)から算出するサンプルCT値の差の値λを、含有脂肪率20%サンプルには(120C20%−80C20%)から算出するサンプルCT値の差の値μをそれぞれ関連づけている。なお、本実施形態では、代表的な例として、異なる管電圧を120kVと80kVとした(管電流はそれぞれ一定)。
【0078】
また、含有脂肪率換算式を取得するために、図11に示したテーブルを基に、含有脂肪率と、異なる管電圧で得た各サンプルCT値の差との関係を求める。
【0079】
図12は、含有脂肪率換算式の一例をグラフとして示す図である。
【0080】
図12は、被検体Pの水等価厚とFOVとの組み合わせ毎に含有脂肪率(x)とサンプルCT値の差(y)との関係をプロットし、そのプロットを基にした回帰線を示している。なお、被検体Pの水等価厚とFOVと拡大率を考慮した表示FOVとの組み合わせ毎に含有脂肪率とサンプルCT値の差との関係を求めることも行なったが、その関係は、おおよそ表示FOVに関わらないことが確認できている。
【0081】
例えば、被検体Pの水等価厚とFOVとの組み合わせ(被検体Pの水等価厚/FOV)を、240mm/400mm、240mm/320mm、320mm/400mm、320mm/320mmとして、含有脂肪率とサンプルCT値の差との関係をプロットし、そのプロットを基にした回帰線をグラフとしてそれぞれ示している。このように、いずれの組み合わせの場合も、含有脂肪率とサンプルCT値の差とは正の相関関係となる。なお、各回帰線の相関係数は0.99以上を示した。
【0082】
また、測定誤差等を考慮すると、各組み合わせ間の傾きには差異があるとは言えず、組み合わせに因らず傾きはほぼ一致した。よって、各回帰線のうちいずれかの傾き、又は各回帰線の傾きの平均を傾きとするy切片「0」の直線を含有脂肪率換算式とする。なお、ここでは各回帰線の傾きの平均(40.597)を傾きとするy切片「0」の直線を含有脂肪率換算式とし、その含有脂肪率換算式を散布図上に示している。
【0083】
図10に示した含有脂肪率換算部66は、CT値測定部62で測定した照射条件毎の実測CT値を基に、異なる照射条件における実測CT値間の差の値を算出する。その差は例えば、(管電圧120kVでの実測CT値)−(管電圧80kVでの実測CT値)である。また、含有脂肪率換算部66は、記憶装置に記憶された含有脂肪率換算式を参照して、実測CT値間の差の値を含有脂肪率に換算する。そして、含有脂肪率換算部66で換算した含有脂肪率は表示装置47によって表示されることとなり、スキャノ像における所定領域の客観的な含有脂肪率として定量化表示されることとなる。
【0084】
次に、本発明に係るX線CT装置の第2実施形態における画像処理部54Aの動作を、図13に示すフローチャートを参照して説明する。
【0085】
まず、図10に示した再構成処理部53によって再構成処理が終了した後、画像処理部54Aは、記憶装置からスキャノデータを取得し(ステップS1)、表示装置47に対してスキャノデータをスキャノ像として表示させる。
【0086】
次に、図7で説明したように、表示装置47に表示されたスキャノ像に対して検者が所定領域を指定することで、関心領域が設定される(ステップS2)。
【0087】
次に、CT値測定部62は、ステップS2で設定した関心領域につき、異なる照射条件毎に平均した実測CT値を測定し(ステップS3)、図8及び図9に示したように、CT画像を表示装置47に表示させる。
【0088】
次に、含有脂肪率換算部66は、記憶装置に記憶された含有脂肪率換算式を参照して、CT値測定部62で測定した実測CT値を含有脂肪率に換算する(ステップS10)。
【0089】
含有脂肪率換算部66で換算した含有脂肪率は、表示装置47によって検者が視認できるように表示される(ステップS11)。例えば、「該当領域の含有脂肪率は〜%です」という文字列が、CT画像を表示したディスプレイに重ね合わされるなどして表示される。
【0090】
なお、図1に示したX線CT装置1では1つのX線管12による単管球型の装置として示すが、X線CT装置1は、多管球型の装置であってもよい。その場合、各X線管を異なる照射条件に設定することで、1度のスキャンによって異なる照射条件でCT値(サンプルCT値)を取得することができる。
【0091】
なお、本実施形態は、本発明の一例であり、本発明は本実施形態で説明した構成及び動作に限定されることはない。本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0092】
本発明に係るX線CT装置1の画像処理部54Aによると、X線CT装置1を用いて得られた画像情報を基に測定したCT値から、関心領域の含有脂肪率を客観的に定量化して表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】X線CT装置のハードウェア構成を示すブロック図。
【図2】本発明に係るX線CT装置の第1実施形態を示すブロック図。
【図3】第1のテーブルを取得するための概略を示す図。
【図4】第1のテーブルの一例を示す図。
【図5】第2のテーブルの一例を示す図。
【図6】本発明に係るX線CT装置の第1実施形態において画像処理部の動作を示すフローチャート。
【図7】所定領域の指定を行なうときのスキャノ像を含む表示画面の一例を示す図。
【図8】管電圧を120kVとしたときのCT画像を含む表示画面の一例を示す図。
【図9】管電圧を100kVとしたときのCT画像を含む表示画面の一例を示す図。
【図10】本発明に係るX線CT装置の第2実施形態を示すブロック図。
【図11】含有脂肪率換算式を取得するための概略を示す図。
【図12】含有脂肪率換算式の一例をグラフとして示す図。
【図13】本発明に係るX線CT装置の第2実施形態において画像処理部の動作を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0094】
1 X線CT装置
2 架台装置
3 寝台装置
4 操作コンソール
44 HD
46 入力装置
47 表示装置
51 前処理部
52 散乱線補正部
53 再構成処理部
54,54A 画像処理部
61 被検体サイズ測定部
62 CT値測定部
63 サイズ依存補正部
64 脂肪係数算出部
65 含有脂肪率抽出部
66 含有脂肪率換算部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の異なるCT値の比の値に対して、それぞれ含有脂肪率を関連づけた第1のテーブルを記憶する記憶装置と、
被検体に対して前記複数の異なる照射条件でX線を曝射し、照射条件毎に実測CT値を測定するCT値測定部と、
前記照射条件間毎の実測CT値の比を算出し、前記第1のテーブルを参照して、前記実測CT値の比に対応する含有脂肪率を抽出する含有脂肪率抽出部とを有することを特徴とするX線CT装置。
【請求項2】
所定量の脂肪を含有させた所望の水ファントムに対して複数の異なる照射条件でX線を曝射することによって得られた前記水ファントムの照射条件間のサンプルCT値の比と含有脂肪率とを関連づけた第1のテーブルを予め記憶する第1の記憶装置と、
サイズの異なる水ファントムのそれぞれの水等価厚でのサンプルCT値を前記複数の異なる照射条件毎に記憶した第2のテーブルを予め記憶する第2の記憶装置と、
被検体に対して前記複数の異なる照射条件でX線を曝射し、照射条件毎に実測CT値を測定するCT値測定部と、
前記被検体の水等価厚を測定する被検体サイズ測定部と、
前記第2のテーブルを参照して、前記所望の水ファントムのサイズと前記被検体サイズ測定部で測定した被検体のサイズとに基づくサイズ依存補正係数を算出し、前記実測CT値に対して同一の照射条件のサイズ依存補正係数を乗じて前記実測CT値を補正するサイズ依存補正部と、
前記サイズ依存補正部で補正された実測CT値の比を脂肪係数として算出する脂肪係数算出部と、
前記第1のテーブルを参照して、前記脂肪係数に対応する含有脂肪率を抽出する含有脂肪率抽出部とを有することを特徴とするX線CT装置。
【請求項3】
前記サイズ依存補正係数は、同一の照射条件におけるサンプルCT値と実測CT値との比で求められることを特徴とする請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項4】
複数の異なるCT値の差の値に対して、それぞれ含有脂肪率を関連づけた第1のテーブルを記憶する記憶装置と、
被検体に対して前記複数の異なる照射条件でX線を曝射し、照射条件毎に実測CT値を測定するCT値測定部と、
前記照射条件間毎の実測CT値の差を算出し、前記第1のテーブルを参照して、前記実測CT値の差に対応する含有脂肪率を抽出する含有脂肪率抽出部とを有することを特徴とするX線CT装置。
【請求項5】
所定量の脂肪を含有させた所望の水ファントムに対して複数の異なる照射条件でX線を曝射することによって得られた前記水ファントムの照射条件間のサンプルCT値の差と含有脂肪率とを関連づけた第1のテーブルを予め記憶する第1の記憶装置と、
サイズの異なる水ファントムのそれぞれの水等価厚でのサンプルCT値を前記複数の異なる照射条件毎に記憶した第2のテーブルを予め記憶する第2の記憶装置と、
被検体に対して前記複数の異なる照射条件でX線を曝射し、照射条件毎に実測CT値を測定するCT値測定部と、
前記被検体の水等価厚を測定する被検体サイズ測定部と、
前記第2のテーブルを参照して、前記所望の水ファントムのサイズと前記被検体サイズ測定部で測定した被検体のサイズとに基づくサイズ依存補正係数を算出し、前記実測CT値に対して同一の照射条件のサイズ依存補正係数を乗じて前記実測CT値を補正するサイズ依存補正部と、
前記サイズ依存補正部で補正された実測CT値の差を脂肪係数として算出する脂肪係数算出部と、
前記第1のテーブルを参照して、前記脂肪係数に対応する含有脂肪率を抽出する含有脂肪率抽出部とを有することを特徴とするX線CT装置。
【請求項6】
前記サイズ依存補正係数は、同一の照射条件におけるサンプルCT値と実測CT値との差で求められることを特徴とする請求項5に記載のX線CT装置。
【請求項7】
複数の異なるCT値の差の値に対する含有脂肪率を基に算出した換算式を記憶する記憶装置と、
被検体に対して前記複数の異なる照射条件でX線を曝射し、照射条件毎に実測CT値を測定するCT値測定部と、
前記照射条件間毎の実測CT値の差を算出し、前記換算式を参照して、前記実測CT値の差を含有脂肪率に換算する含有脂肪率換算部とを有することを特徴とするX線CT装置。
【請求項8】
前記被検体の水等価厚と有効視野との組み合わせ毎に、所定量の脂肪を含有させた所望の水ファントムに対して複数の異なる照射条件でX線を曝射することによって得られた前記水ファントムの照射条件間のサンプルCT値の差と含有脂肪率との関係をプロットし、そのプロットを基にした前記組み合わせ毎の回帰線を前記換算式とすることを特徴とする請求項7に記載のX線CT装置。
【請求項9】
複数の異なるCT値の比較値に対する含有脂肪率を関連づけた第1のテーブルを記憶する記憶装置と、
被検体に対して前記複数の異なる照射条件でX線を曝射し、照射条件毎に実測CT値を測定するCT値測定部と、
前記照射条件間毎の実測CT値の比較値を算出し、前記第1のテーブルを参照して、前記実測CT値の比較値に対応する含有脂肪率を抽出する含有脂肪率抽出部とを有することを特徴とするX線CT装置。
【請求項10】
前記照射条件をX線管の管電圧とすることを特徴とする請求項1,2,4,5,7及び9のうちいずれか一項に記載のX線CT装置。
【請求項1】
複数の異なるCT値の比の値に対して、それぞれ含有脂肪率を関連づけた第1のテーブルを記憶する記憶装置と、
被検体に対して前記複数の異なる照射条件でX線を曝射し、照射条件毎に実測CT値を測定するCT値測定部と、
前記照射条件間毎の実測CT値の比を算出し、前記第1のテーブルを参照して、前記実測CT値の比に対応する含有脂肪率を抽出する含有脂肪率抽出部とを有することを特徴とするX線CT装置。
【請求項2】
所定量の脂肪を含有させた所望の水ファントムに対して複数の異なる照射条件でX線を曝射することによって得られた前記水ファントムの照射条件間のサンプルCT値の比と含有脂肪率とを関連づけた第1のテーブルを予め記憶する第1の記憶装置と、
サイズの異なる水ファントムのそれぞれの水等価厚でのサンプルCT値を前記複数の異なる照射条件毎に記憶した第2のテーブルを予め記憶する第2の記憶装置と、
被検体に対して前記複数の異なる照射条件でX線を曝射し、照射条件毎に実測CT値を測定するCT値測定部と、
前記被検体の水等価厚を測定する被検体サイズ測定部と、
前記第2のテーブルを参照して、前記所望の水ファントムのサイズと前記被検体サイズ測定部で測定した被検体のサイズとに基づくサイズ依存補正係数を算出し、前記実測CT値に対して同一の照射条件のサイズ依存補正係数を乗じて前記実測CT値を補正するサイズ依存補正部と、
前記サイズ依存補正部で補正された実測CT値の比を脂肪係数として算出する脂肪係数算出部と、
前記第1のテーブルを参照して、前記脂肪係数に対応する含有脂肪率を抽出する含有脂肪率抽出部とを有することを特徴とするX線CT装置。
【請求項3】
前記サイズ依存補正係数は、同一の照射条件におけるサンプルCT値と実測CT値との比で求められることを特徴とする請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項4】
複数の異なるCT値の差の値に対して、それぞれ含有脂肪率を関連づけた第1のテーブルを記憶する記憶装置と、
被検体に対して前記複数の異なる照射条件でX線を曝射し、照射条件毎に実測CT値を測定するCT値測定部と、
前記照射条件間毎の実測CT値の差を算出し、前記第1のテーブルを参照して、前記実測CT値の差に対応する含有脂肪率を抽出する含有脂肪率抽出部とを有することを特徴とするX線CT装置。
【請求項5】
所定量の脂肪を含有させた所望の水ファントムに対して複数の異なる照射条件でX線を曝射することによって得られた前記水ファントムの照射条件間のサンプルCT値の差と含有脂肪率とを関連づけた第1のテーブルを予め記憶する第1の記憶装置と、
サイズの異なる水ファントムのそれぞれの水等価厚でのサンプルCT値を前記複数の異なる照射条件毎に記憶した第2のテーブルを予め記憶する第2の記憶装置と、
被検体に対して前記複数の異なる照射条件でX線を曝射し、照射条件毎に実測CT値を測定するCT値測定部と、
前記被検体の水等価厚を測定する被検体サイズ測定部と、
前記第2のテーブルを参照して、前記所望の水ファントムのサイズと前記被検体サイズ測定部で測定した被検体のサイズとに基づくサイズ依存補正係数を算出し、前記実測CT値に対して同一の照射条件のサイズ依存補正係数を乗じて前記実測CT値を補正するサイズ依存補正部と、
前記サイズ依存補正部で補正された実測CT値の差を脂肪係数として算出する脂肪係数算出部と、
前記第1のテーブルを参照して、前記脂肪係数に対応する含有脂肪率を抽出する含有脂肪率抽出部とを有することを特徴とするX線CT装置。
【請求項6】
前記サイズ依存補正係数は、同一の照射条件におけるサンプルCT値と実測CT値との差で求められることを特徴とする請求項5に記載のX線CT装置。
【請求項7】
複数の異なるCT値の差の値に対する含有脂肪率を基に算出した換算式を記憶する記憶装置と、
被検体に対して前記複数の異なる照射条件でX線を曝射し、照射条件毎に実測CT値を測定するCT値測定部と、
前記照射条件間毎の実測CT値の差を算出し、前記換算式を参照して、前記実測CT値の差を含有脂肪率に換算する含有脂肪率換算部とを有することを特徴とするX線CT装置。
【請求項8】
前記被検体の水等価厚と有効視野との組み合わせ毎に、所定量の脂肪を含有させた所望の水ファントムに対して複数の異なる照射条件でX線を曝射することによって得られた前記水ファントムの照射条件間のサンプルCT値の差と含有脂肪率との関係をプロットし、そのプロットを基にした前記組み合わせ毎の回帰線を前記換算式とすることを特徴とする請求項7に記載のX線CT装置。
【請求項9】
複数の異なるCT値の比較値に対する含有脂肪率を関連づけた第1のテーブルを記憶する記憶装置と、
被検体に対して前記複数の異なる照射条件でX線を曝射し、照射条件毎に実測CT値を測定するCT値測定部と、
前記照射条件間毎の実測CT値の比較値を算出し、前記第1のテーブルを参照して、前記実測CT値の比較値に対応する含有脂肪率を抽出する含有脂肪率抽出部とを有することを特徴とするX線CT装置。
【請求項10】
前記照射条件をX線管の管電圧とすることを特徴とする請求項1,2,4,5,7及び9のうちいずれか一項に記載のX線CT装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−312030(P2006−312030A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−102358(P2006−102358)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】
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