説明

X線CT装置

【課題】意識的に深い呼吸を行ったときのような再現性の無い呼吸を行っても、この深い呼吸運動による被検体の動きでの任意の呼吸位相におけるボリュームデータを得ること。
【解決手段】呼吸促進機21によって被検体2に対して例えば「楽にしてください」、「思い切り息を吸ってください」「思い切り息を吐いてください」「もう一度思い切り息を吸ってください」「楽にしてください」を音声により発して意識的に異なる深さの呼吸を促し、このときにX線球管4と2次元検出器システム7とを被検体2を略中心として連続的に回転移動させて本スキャンを行って投影データを収集する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば患者等の被検体の呼吸動作に同期して被検体の断層面の画像データを取得するX線CT装置に関し、特に被検体の体軸方向に広がりを持ちX線源から放射された角錐状のX線ビームを検出する2次元検出器を備えたX線CT装置(コーンビームCT)に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置には、例えばファンビーム(シングルスライス)X線CTと、マルチスライスX線CTと、コーンビームX線CTスキャナとがある。X線CT装置におけるスキャンの方式には、例えばヘリカルスキャンと、呼吸同期スキャン(Prospective-Gating)とがある。このうちヘリカルスキャンにより取得された投影データの再構成には、呼吸同期再構成(Retrospective-Gating)がある。
【0003】
ファンビームX線CTは、X線源からファン状にX線ビームを照射し、扇状に例えば1000チャンネル近く1列に配列した複数の検出器により被検体を透過したX線を検出してそのデータ収集し、X線源と複数の検出器とを被検体の周囲に回転させながら1回転で1000回程度データ収集し、この収集データに基づいて画像を再構成する。
マルチスライスX線CTは、円錐状のX線ビームを放射するX線源と、複数個Mのファンビーム用検出列をZ軸方向(被検体の体軸方向)にN列積み重ねたように円筒面上に複数の検出素子を配列した2次元検出器とを備える。なお、2次元検出器は、チャンネル数がM、セグメント数がNで、焦点−回転中心間距離をFCD、有効視野直径をFOVとする。
【0004】
コーンビームX線CTスキャナは、X線源から被検体の体軸方向にさらに広いX線ビームを照射し、2次元検出器によって検出される1方向からの収集データが2次元投影データになる。このコーンビームX線CTスキャナは、多方向からの2次元投影データに基づいて3次元画像再構成を行い、X線源と2次元検出器とを1回転するだけである程度のボリュームに対するボクセルデータを取得する。
このコーンビームX線CTスキャナは、2次元検出器としてイメージインテンシファイア(以下、I.I.と称する)を用いたシステムをメインとして1980年代の後半から研究開発が進められている。例えば非特許文献1には、ターンテーブルとI.I.とを組み合わせた実験システムによる胸部ファントムのスキャン結果についての論議が記載されている。I.I.を用いたコーンビームX線CTスキャナは、例えば骨や造影された血管等の高コントラストの物体の形状を捉えるものとして一部実用化されつつある。
コーンビームX線CTスキャナは、マルチスライスCTと同様なシンチレータ、フォトダイオードを検出素子とする2次元検出器を備え、連続回転可能なスリップリング架台とを組み合わせたものについても提案されている。かかるコーンビームX線CTスキャナは、例えば非特許文献2等に開示されている。
【0005】
ヘリカルスキャンを用いるX線CTスキャナは、X線管球及び検出器を被検体の周りに連続回転させると共に、被検体を載せた寝台天板を被検体の体軸方向に移動させる。これにより、X線管球の被検体に対する相対的な軌跡は螺旋形状となる。画像を再構成する場合、X線CTスキャナは、例えばX線管球の軌跡中のある部分に対するデータを、被検体の呼吸動作をモニタする装置で得られた呼吸の動きに対して予め設定した位相のタイミングでスキャンを行う。被検体の呼吸動作をモニタするモニタ装置は、例えば、胸部に取り付ける圧力センサ、呼吸の流量を測定するエアフローセンサ、或いはカメラにより撮影した被検体の動きをソフトウェアで解析して呼吸の動きを求めるものなどがある。X線CTスキャナは、成スライス面の両側180°分、合計360°分のデータを用いる360°補間法、対向ビームを用いてスライス面を挟んだ合計180°分のデータを用いる180°補間法が用いられる。
【0006】
呼吸同期スキャンは、スキャン中に、被検体の呼吸に合わせてスキャンタイミングを調整する。被検体の呼吸動作をモニタするモニタ装置は、例えば上記同様に、胸部に取り付ける圧力センサ、呼吸の流量を測定するエアフローセンサ、或いはカメラにより撮影した被検体の動きをソフトウェアで解析して呼吸の動きを求めるものなどがある。呼吸同期スキャンは、モニタ装置によりモニタされた被検体の呼吸の動きに対して予め設定した位相のタイミングでスキャンを行う。
被検体の体軸方向の広い範囲に対して同じ呼吸位相の画像を取得するには、被検体を移動させない状態でX線管球及び検出器を1回転させるスキャンと、被検体の移動とを繰り返す。すなわち、被検体で必要とするスライス位置の画像を取得するために被検体を移動する。この状態で予め設定された呼吸位相のタイミングでスキャンを行う。次に、被検体で必要とする次のスライス位置の画像を取得するために被検体を移動する。そして、予め設定された呼吸位相のタイミングでスキャンを行うのを待つ。このようなスキャンで互いに異なる呼吸位相でボリュームデータを取得する場合には、上記一連の動作を互いに異なる呼吸位相で繰り返す。
【0007】
呼吸同期再構成は、ヘリカルスキャンにより取得された時間方向、体軸方向に連続した投影データを用いて任意の呼吸位相のボリュームデータを後処理(再構成)で得る。被検体の呼吸動作をモニタするモニタ装置は、例えば上記同様に、胸部に取り付ける圧力センサ、呼吸の流量を測定するエアフローセンサ、或いはカメラにより撮影した被検体の動きをソフトウェアで解析して呼吸の動きを求めるものなどがある。かかる被検体の呼吸動作をモニタするモニタ装置は、被検体の呼吸動作をモニタしてその呼吸モニタ信号、例えばゲートパルス又は波形を出力する。
呼吸同期再構成を行うには、モニタ装置から出力される呼吸モニタ信号を投影データと共に記憶する。この呼吸同期再構成では、呼吸モニタ信号に基づいて指定した呼吸位相の再構成に必要なデータを投影データから抽出し、指定された範囲の画像を再構成する。任意の位置で任意の呼吸位相の画像を再構成するためには、1周期の呼吸間隔の時間だけ同じスライス位置のデータを収集する必要がある。このため、呼吸周期、検出器の列数等からヘリカルピッチの範囲が限定される。
【0008】
しかしながら、1回の呼吸同期スキャンでは、特定の1種類の呼吸位相でのボリュームデータを得るだけで、呼吸運動による被検体の動きでの画像を観察することができない。指定する呼吸位相を変えてスキャンを繰り返せば、幾つかの呼吸位相での各ボリュームデータを得ることが可能になる。それでも呼吸運動による被検体の連続的な動きを観察するには不十分である。
呼吸同期再構成は、同じ呼吸を繰り返すことを前提に、被検体の動きを観察することが可能である。しかしながら、この呼吸同期再構成は、同じ呼吸を繰り返すことを前提にしているために安静時の呼吸に限られる。このため、呼吸同期再構成では、意識的に深い呼吸を行った時の動き、例えば最大呼気から最大吸気との間の動きによる診断機能解析などが不可能である。被検体が例えば最大呼気又は最大吸気をしたときには、例えば安静時の呼吸レベルでは観察できなかった部位、例えば腫瘍部位等の画像が観察可能になることがある。しかしながら、呼吸同期再構成は、安静時の呼吸に限られるため、被検体が例えば最大呼気又は最大吸気をしたときの画像を取得するのは困難である。
なお、かかるコーンビームX線CTスキャナは、例えば特願平11−366189号や特願平11−368273号に記載されている。
【非特許文献1】Volume CT of anthropomorphic phantoms using a radiation therapy simulator Mihael D.Silver,Yasuo Saito他;SPIE 1651 197−211 1992
【非特許文献2】Large are 2−dimensional detector for real-time 3-dimensional CT(4D−CT)“Yasuo Saito 他;SPIE 4320 775−782 2001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、意識的に深い呼吸を行ったときのような再現性の無い呼吸を行っても、この深い呼吸運動による被検体の動きでの任意の呼吸位相におけるボリュームデータを得ることができるX線CT装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に記載のX線CT装置は、X線源から放射された角錐状のX線ビームを被検体に対してスキャンし、被検体を透過したX線ビームを2次元平面状に形成された2次元検出器により検出し、2次元検出器からデータ収集して被検体のボリュームデータを取得するX線CT装置において、被検体に対して少なくとも異なる深さの呼吸を行うように促す呼吸促進機と、被検体の呼吸による動きを捉える呼吸モニタと、呼吸モニタにより捉えられた被検体の呼吸による動きに応じてXビームの被検体に対するスキャンのタイミングを制御するスキャン制御部とを具備する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、意識的に深い呼吸を行ったときのような再現性の無い呼吸を行っても、この深い呼吸運動による被検体の動きでの任意の呼吸位相におけるボリュームデータを得ることができるX線CT装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の第1の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1はコーンビームX線CT装置の構成図を示す。このコーンビームX線CT装置は、ガントリ1を備える。このガントリ1には、被検体2を載置する寝台が設けられている。このガントリ1は、回転中心軸RAを中心として回転自在に保持されたリング状の回転フレーム3を備える。この回転フレーム3には、X線管球4が回転中心軸RAに正対する向きで取り付けられている。このX線管球4には、スリップリング5を介して高電圧発生装置6が接続されている。この高電圧発生装置6は、スリップリング5を介してX線管球4に高電圧を印加する。X線管球4は、高電圧の印加により角錐状のX線ビーム(コーンビーム)を放射する。
【0013】
2次元検出器システム7が回転フレーム3上に取り付けられている。この2次元検出器システム7は、2次元平面状に形成され、X線管球4から放射されて被検体2を透過したX線ビームを検出する。この2次元検出器システム7は、回転中心軸RAを挟んでX線管球4に対向する。この2次元検出器システム7は、マルチスライス仕様であって、回転中心軸RAと平行な方向すなわち体軸方向(スライス方向)に沿って併設された多数列の検出素子を有し、被検体2の体軸方向(Z軸方向)に広い検出範囲を有する。これら検出素子は、例えばシンチレータとフォトダイオードとにより構成される。検出素子列は、例えば64列である。これら検出素子列は、チャンネル方向に沿って配列された複数の検出素子を有する。
【0014】
なお、回転中心軸RAをZ軸として、このZ軸を中心とした回転座標系をXY座標系で規定する。この場合、X線管球4の焦点と2次元検出器システム7の中心とを結ぶいわゆるX線中心軸をY軸、ZY軸に直交する軸をX軸と定義する。このXYZ軸を以下適宜使用する。
架台駆動部8は、ガントリ1内に回転フレーム3を回転させることによりX線管球4と2次元検出器システム7とを対向させて状態で被検体2の周りに回転させる。
【0015】
データ収集回路9が2次元検出器システム7に接続されている。このデータ収集回路9は、一般的にDAS(Data Acquisition System)と呼ばれる。このDAS9は、2次元検出器システム7の各チャンネルの出力(電流信号)を電圧信号に変換して増幅し、デジタル信号に変換する。このDAS9には、光や磁気を媒体とした非接触データ伝送装置10を介して前処理装置11が接続されている。この前処理装置11は、DAS9の出力のチャンネル間非均一性等を補正し、投影データとして出力する。この前処理装置11から出力された投影データは、記録装置12に記憶される。
【0016】
一方、ホストコントローラ13には、データ/制御バス14を介して高電圧発生装置6と、架台駆動部8と、前処理部11と、記憶装置12と、表示装置15と、入力装置16と、再構成装置17と、補助記憶装置18と、データ処理装置19と、呼吸促進機20と、スキャン制御部21と、スキャン条件設定部22とが接続されている。このホストコントローラ13は、データ/制御バス14を介して高電圧発生装置6と、架台駆動部8と、前処理部11と、記憶装置12と、表示装置15と、入力装置16と、再構成装置17と、補助記憶装置18と、データ処理装置19と、呼吸モニタ20と、呼吸促進機21と、スキャン制御部22と、スキャン条件設定部23との各動作を制御する。
【0017】
ホストコントローラ13は、回転フレーム3を回転させてX線管球4と2次元検出器システム7とを回転移動させると共に、高電圧発生装置6と、DAS9とをそれぞれ制御して例えばプリコンベンショナルスキャン、プリスキャン(ダイナミックスキャン)又は本スキャン(ダイナミックスキャン)を行う。プリスキャンは、モニタリングスキャンとも称する。
入力装置16は、マウス等のポインティングデバイスやキーボード等であって、オペレータの手動による操作を受ける。
【0018】
再構成装置17は、例えばコンベンショナルスキャン、プリスキャン又は本スキャン中に、前処理装置11により前処理された投影データから被検体2の例えば3D画像データや4D画像データ等のCT画像を再構成する。
記憶装置12には、例えば前処理装置11により前処理を受けた投影データや、コンベンショナルスキャン時に取得された3D画像データ、MPRによる例えばアキシャル、コロナル、サジタル等の3方位断面の各断面画像データ、MIP像の画像データ、プリスキャンや本スキャン時に取得された4Dの造影CT画像データ等が記憶される。
データ処理装置19は、例えば3D画像データからMPRによる例えばアキシャル、コロナル、サジタル等の3方位断面の各断面画像データの生成、3D画像データからMIP像の生成などの画像処理を行う。
【0019】
呼吸モニタ20は、被検体2の呼吸による動きを捉え、その呼吸モニタ信号を出力する。この呼吸モニタ20は、例えば被検体2の胸部に取り付ける圧力センサ、被検体2の呼吸の流量を測定するエアフローセンサ、或いはカメラ等により撮影した被検体2の動きをソフトウェアで解析して呼吸の動きを求めるものなどである。
【0020】
呼吸促進機21は、被検体2に対して異なる深さの呼吸を行うように促すもので、例えば通常の呼吸(安静時の呼吸)や深呼吸等の異なる深さの呼吸を音声により意識的に促す。具体的に呼吸促進機21は、X線ビームのスキャン前とスキャン中とに、それぞれ被検体2に対して異なる深さの呼吸として例えば「楽にしてください」、「思い切り息を吸ってください」「思い切り息を吐いてください」「もう一度思い切り息を吸ってください」「楽にしてください」を音声により発して促す。
【0021】
図2は音声のよる呼吸の指示と呼吸モニタ20によりモニタされた被検体2の呼吸波形との関係の一例を示す。同図の上半分に被検体2の呼吸を促すための音声指示を示し、下半分に音声指示に対応する被検体2の呼吸波形を示す。被検体2の呼吸波形は、横軸が時間、縦軸が呼吸レベルすなわち呼吸深さを示し、上方向が吸気の向き、下方向が呼気の向きを示す。なお、呼吸モニタ20によりモニタされた被検体2の呼吸波形は、例えば表示装置15に表示される。
すなわち、被検体2に対する呼吸指示のパターンの一例を示すと、呼吸促進機21は、先ず、「楽にしてください」の音声を発する。これにより、被検体2は、通常の呼吸(安静時の呼吸)を続ける。
次に、呼吸促進機21は、「思い切り息を吸ってください」の音声を発する。これにより、被検体2は、深呼吸を行うようになり、最大吸気状態になる。
次に、呼吸促進機21は、「思い切り息を吐いてください」の音声を発する。これにより、被検体2は、息を思いっきり吐くようになり、最大呼気状態になる。
次に、呼吸促進機21は、「もう一度思い切り息を吸ってください」の音声を発する。これにより、被検体2は、再度、深呼吸を行うようになり、再び最大吸気状態になる。
次に、呼吸促進機21は、「楽にしてください」の音声を発する。これにより、被検体2は、通常の呼吸(安静時の呼吸)に戻る。
【0022】
呼吸促進機21は、音声指示の「楽にしてください」、「思い切り息を吸ってください」「思い切り息を吐いてください」「もう一度思い切り息を吸ってください」「楽にしてください」等を予め設定しておき、自動的に発生するようにしてもよいし、又はオペレータが表示装置15に表示される呼吸モニタ20によりモニタされた被検体2の呼吸波形を観察しながらオペレータによるマニュアル操作によって順次発生するようにしてもよい。
呼吸促進機21は、被検体2に対する呼吸指示パターンを予め複数登録しておき、これら呼吸指示パターンの中から例えば1つの呼吸指示パターンをオペレータの選択によって選択してもよい。
【0023】
スキャン制御部22は、呼吸モニタ20により捉えられた被検体2の呼吸による動きに応じてX線ビームの被検体2に対するスキャンのタイミングを制御するもので、被検体2の呼吸位相又は呼吸レベルに応じてスキャンの開始や終了の各タイミングを制御する。このうち被検体2に対するX線ビームのスキャンの開始タイミングは、時間経過を指標とするものとして被検体2の呼吸位相を指定する方法と、呼吸の深さを指標とするものとして被検体2の呼吸レベルを指定する方法とがある。
【0024】
図3は被検体2に対するX線ビームのスキャンの開始タイミングとして被検体2の呼吸位相を指定する方法の一例を示す。スキャン制御部22は、呼吸モニタ20による捉えられた被検体2の呼吸位相により最大吸気を示す時刻t1から所定の遅延時間dの経過後の時刻t2にスキャンを開始する。ここでは、最大吸気の呼吸位相を基準にスキャン開始の時刻を設定しているが、これに限らず、スキャン開始時刻は、最大呼気の呼吸位相を基準に設定してもよい。遅延時間dは、絶対的時間を設定してもよいし、最大吸気と最大呼気との間隔を例えば100%とし、このうちの最大吸気から例えば10%等の相対的な時点に設定してもよい。
【0025】
図4は被検体2に対するX線ビームのスキャンの開始タイミングとして呼吸の深さを指定する方法の一例を示す。スキャン制御部22は、呼吸モニタ20による捉えられた被検体2の呼吸位相により最大吸気を示す吸気レベルrmから所定の割合、例えば10%だけ低下した吸気レベルr1を示す時刻t10からスキャンを開始する。この場合、最大吸気を100%とし、最大呼気を0%として定義している。なお、最大吸気を+100%とし、最大呼気を−100%として定義してもよい。
なお、呼吸の深さを基準としてスキャンの開始タイミングを設定する場合、被検体2の呼吸波形が同一吸気レベルを複数回通過するので、スキャンの開始タイミングは、被検体2の呼吸位相と呼吸の深さとを組み合わせて設定するようにしてもよい。例えばスキャンの開始タイミングは、深い呼吸を指示した後、呼気のピークを過ぎた後で最初に90%を過ぎた時点に設定してもよい。
【0026】
一方、被検体2に対するX線ビームのスキャンの終了タイミングは、スキャン開始と同様に、被検体2の呼吸位相を指定する方法と、被検体2の呼吸レベルを指定する方法と、さらに投影データの収集を行う呼吸サイクルを指定する方法とがある。
図5及び図6は呼吸サイクルによりスキャンの終了タイミングを指定する方法の一例を示し、このうち図5は被検体2の呼吸位相の1周期後の同一呼吸位相でスキャンを終了することを示し、図6は被検体2の最大呼気から最大吸気までの呼吸位相の半周期(0.5周期)だけ投影データの収集を行うことを示す。しかるに、スキャン制御部22は、スキャンを開始してから例えば呼吸位相の1周期後又は半周期後にスキャンを終了する。
【0027】
被検体2の吸気中及び呼気中の両方で投影データを収集する必要がある場合は、呼吸位相の最低1周期間における投影データの収集が必要である。このような場合、図5に示すような被検体2の呼吸位相の1周期後の同一呼吸位相でスキャンを終了する方法が最短のスキャン時間になる。又、被検体2の吸気中又は呼気中のいずれか一方投影データを収集する必要がある場合は、被検体2の呼吸波形のピークからピーク、すなわち最大吸気から最大呼気、又は最大呼気から最大吸気までの半周期が最短のスキャン時間になる。
【0028】
スキャン条件設定部23は、表示装置15に表示された被検体2の呼吸波形に基づいて被検体2の呼吸位相又は呼吸レベルに応じてスキャンの開始と終了とを設定する。すなわち、スキャン条件設定部23は、上記の如くスキャン開始のタイミングを、図3に示すように呼吸モニタ20による捉えられた被検体2の呼吸位相に基づいて最大吸気を示す時刻t1から所定の遅延時間dの経過後の時刻t2に設定したり、又は図4に示すように呼吸モニタ20による捉えられた被検体2の呼吸位相に基づいて最大吸気を示す吸気レベルrmから所定の割合、例えば10%だけ低下した吸気レベルr1を示す時刻t10に設定する。
【0029】
スキャン条件設定部23は、上記の如くスキャン終了のタイミングを、図5に示すように被検体2の呼吸位相の1周期後の同一呼吸位相に設定したり、又は図6に示すように被検体2の最大呼気から最大吸気までの呼吸位相の半周期後に設定する。このスキャン条件設定部23は、スキャンの開始と終了とを設定を被検体2の呼吸波形に基づいて自動的に設定するようにしてもよいし、又は表示装置15に表示された被検体2の呼吸波形を観察するオペレータのマニュアル操作によって設定してもよい。
【0030】
次に、上記の如く構成された装置の動作について図7に示す動作フローチャートに従って説明する。ここでは、連続ダイナミックスキャンを例に説明する。
患者等の被検体2の登録や本装置のセッティングがステップ#1において行われる。ここで、被検体2がガントリ1内の寝台上に載置される。
次に、本装置は、ステップ#2において、被検体2のCT画像を取得する前に、本スキャンの開始位置及びCT画像を取得するときの撮影条件等を決定するための被検体2の2次元のスキャノ画像を取得する。すなわち、被検体2のスキャノ画像は、X線管球4の位置を所定の回転角度に固定し、寝台をZ方向に移動させる。このとき、X線管球4は、X線ビームを被検体2に曝射する。2次元検出器システム7は、被検体2を透過したX線ビームを受光し、このX線ビームの受光量に応じたX線ビーム検出信号を各受光素子毎に出力する。
【0031】
DAS9は、2次元検出器システム7から出力される各受光素子毎の各X線ビーム検出信号を電圧信号に変換し、増幅し、さらにデジタル信号に変換する。前処理装置11は、DAS9の出力のチャンネル間非均一性等を補正し、投影データとして出力する。この前処理装置11から出力された投影データは、記録装置12に記憶される。しかるに、ホストコントローラ13によって例えばスキャノ画像取得部が動作し、DAS9からの各デジタルX線ビーム検出信号から被検体4の2次元のスキャノ画像が取得される。
【0032】
この被検体4の2次元のスキャノ画像は、ホストコントローラ13によって表示装置15に表示される。オペレータは、表示装置15に表示された被検体4の2次元のスキャノ画像を観察し、例えば入力装置16をマニュアル操作して撮影範囲を入力する。これと共にオペレータは、例えば入力装置16をマニュアル操作して被検体2に対する呼吸指示のパターンを選択する。これにより、ホストコントローラ13は、ステップ#3において、被検体4に対する撮影範囲を設定し、次のステップ#4において、被検体2に対する呼吸指示のパターンを設定する。これにより、呼吸促進機21は、予め複数登録されている呼吸指示パターンの中から例えば1つの呼吸指示パターンを選択する。
【0033】
次に、実際の本スキャンの前に、被検体2に対して音声指示による意識的な呼吸の練習が行われる。すなわち、呼吸促進機21は、ステップ#5において、先ず、「楽にしてください」の音声を発する。これにより、被検体2は、通常の呼吸(安静時の呼吸)を続ける。
次に、呼吸促進機21は、「思い切り息を吸ってください」の音声を発する。これにより、被検体2は、深呼吸を行うようになり、最大吸気状態になる。
次に、呼吸促進機21は、「思い切り息を吐いてください」の音声を発する。これにより、被検体2は、息を思いっきり吐くようになり、最大呼気状態になる。
次に、呼吸促進機21は、「もう一度思い切り息を吸ってください」の音声を発する。これにより、被検体2は、再度、深呼吸を行うようになり、再び最大吸気状態になる。
次に、呼吸促進機21は、「楽にしてください」の音声を発する。これにより、被検体2は、通常の呼吸(安静時の呼吸)に戻る。
【0034】
これと共に、呼吸モニタ20は、ステップ#5において、呼吸促進機21から発せられる音声による呼吸指示によって呼吸を行ったときの被検体2の呼吸による動きを捉え、その呼吸モニタ信号を出力する。この呼吸モニタ20から出力された呼吸モニタ信号は、例えば記憶装置12に記憶されると共に、表示装置15に送られて例えば図2に示すような呼吸波形として表示される。
【0035】
次に、スキャン条件設定部23は、ステップ#6において、表示装置15に表示された被検体2の呼吸波形に基づいて被検体2の呼吸位相又は呼吸レベルに応じて本スキャンの開始と終了とを設定する。すなわち、スキャン条件設定部23は、上記の如く本スキャン開始のタイミングを、図3に示すように呼吸モニタ20による捉えられた被検体2の呼吸位相に基づいて最大吸気を示す時刻t1から所定の遅延時間dの経過後の時刻t2に設定したり、又は図4に示すように呼吸モニタ20による捉えられた被検体2の呼吸位相に基づいて最大吸気を示す吸気レベルrmから所定の割合、例えば10%だけ低下した吸気レベルr1を示す時刻t10に設定する。
【0036】
又、スキャン条件設定部23は、上記の如く本スキャン終了のタイミングを、図5に示すようにスキャン開始から被検体2の呼吸位相の1周期後の同一呼吸位相に設定したり、又は図6に示すように被検体2の最大呼気から最大吸気までの呼吸位相の半周期後に設定する。
なお、これら本スキャンの開始と終了との設定は、スキャン条件設定部23により自動的に行うようにしてもよいし、又は表示装置15に表示された被検体2の呼吸波形を観察するオペレータのマニュアル操作によって設定してもよい。又、本スキャンの開始と終了との各タイミングの設定は、それぞれ互いに異なるタイミングで複数設定してもよい。
【0037】
又、再構成装置17は、スキャン条件設定部23により設定された本スキャン開始のタイミングと終了タイミングとに従ってスキャン制御部22により被検体2の呼吸による動きに応じて本スキャンのタイミングが制御されたときに取得された被検体2のボリュームデータを再構成して所望の呼吸位相の3次元画像を取得するように設定される。
【0038】
次に、ホストコンピュータ13は、ステップ#7において、被検体2に対して意識的な呼吸の練習と同一の呼吸指示パターンの音声指示を再度発する指令を呼吸促進機21に発し、かつ呼吸モニタ20から出力される呼吸モニタ信号を表示装置15に表示させる。
【0039】
これにより、呼吸促進機21は、本スキャン中に、先ず、「楽にしてください」の音声を発する。これにより、被検体2は、通常の呼吸(安静時の呼吸)を続ける。
次に、呼吸促進機21は、「思い切り息を吸ってください」の音声を発する。これにより、被検体2は、深呼吸を行うようになり、最大吸気状態になる。
次に、呼吸促進機21は、「思い切り息を吐いてください」の音声を発する。これにより、被検体2は、息を思いっきり吐くようになり、最大呼気状態になる。
次に、呼吸促進機21は、「もう一度思い切り息を吸ってください」の音声を発する。これにより、被検体2は、再度、深呼吸を行うようになり、再び最大吸気状態になる。
次に、呼吸促進機21は、「楽にしてください」の音声を発する。これにより、被検体2は、通常の呼吸(安静時の呼吸)に戻る。
【0040】
これと共に、呼吸モニタ20は、呼吸促進機21から発せられる音声による呼吸指示によって呼吸を行ったときの被検体2の呼吸による動きを捉え、その呼吸モニタ信号を出力する。この呼吸モニタ20から出力された呼吸モニタ信号は、例えば記憶装置12に記憶されると共に、表示装置15に送られて例えば図2に示すような呼吸波形として表示される。
【0041】
これと共に、ホストコンピュータ13は、同ステップ#7において、例えば図3に示すように呼吸モニタ20による捉えられた被検体2の呼吸位相に基づいて最大吸気を示す時刻t1から所定の遅延時間dの経過後の時刻t2、又は図4に示すように呼吸モニタ20による捉えられた被検体2の呼吸位相に基づいて最大吸気を示す吸気レベルrmから所定の割合、例えば10%だけ低下した吸気レベルr1を示す時刻t10から本スキャンを開始するようにデータ/制御バス14を介して高電圧発生装置6と、架台駆動部8となどに本スキャン実行の指令を発する。
【0042】
しかるに、被検体2が呼吸指示パターンの音声指示に従って意識的に呼吸をしている状態に、X線球管4と2次元検出器システム7とは、例えば図3に示す時刻t2又は図4に示す時刻t10から被検体2を略中心として連続的に回転移動する。本スキャン中、X線球管4から放射されたX線ビームは、被検体2を透過して2次元検出器システム7により検出される。DAS9は、上記同様に、2次元検出器システム7の各チャンネルの出力を電圧信号に変換して増幅し、デジタル信号に変換する。前処理装置11は、DAS9の出力のチャンネル間非均一性等を補正する。この前処理装置11により前処理された投影データは、記憶装置12に記憶される。
【0043】
このように本スキャンを実行して例えば図5に示す被検体2の呼吸位相の1周期後の同一呼吸位相、又は図6に示す被検体2の最大呼気から最大吸気までの呼吸位相の半周期後になると、ホストコンピュータ13は、本スキャンを終了するようにデータ/制御バス14を介して高電圧発生装置6と、架台駆動部8となどに本スキャン終了の指令を発する。
【0044】
次に、再構成装置17は、ステップ#8において、例えば本スキャン中に、前処理装置11により前処理された投影データから被検体2の例えば3D画像データや4D画像データ等のCT画像を再構成する。この場合、再構成装置17は、スキャン条件設定部23により設定された本スキャン開始のタイミングと終了タイミング、例えば図5に示すように被検体2の最大吸気を示す時刻t1から所定の遅延時間dの経過後の時刻t2から本スキャンを開始し、このスキャン開始時刻t2から被検体2の呼吸位相の1周期後の同一呼吸位相になったときまでに収集された投影データを再構成して所望の呼吸位相の3次元画像を取得する。
【0045】
次に、ホストコンピュータ13は、ステップ#9において、再構成装置17により取得された被検体2の所望の呼吸位相における3次元画像を表示装置15に表示する。
次に、ホストコンピュータ13は、ステップ#10において、再構成のリトライの選択があるか否かを判断し、再構成のリトライの選択があれば、ステップ#11に移って画像再構成のタイミングを追加し、ステップ#8に戻って再度再構成装置17により画像再構成を実行する。再構成のリトライの選択がなければ、ホストコンピュータ13は、検査を終了する。
【0046】
このように上記第1の実施の形態によれば、呼吸促進機21によって被検体2に対して例えば「楽にしてください」、「思い切り息を吸ってください」「思い切り息を吐いてください」「もう一度思い切り息を吸ってください」「楽にしてください」を音声により発して意識的に異なる深さの呼吸を促し、このときにX線球管4と2次元検出器システム7とを被検体2を略中心として連続的に回転移動させて連続ダイナミックスキャンを行って投影データを収集する。
【0047】
これにより、被検体2の安静時の呼吸に限らず、被検体2が例えば最大呼気から最大吸気までの範囲の呼吸をしたときの投影データを収集することができ、この投影データを再構成することによって例えば安静時の呼吸レベルでは他の部位で隠れて観察できなかった部位、例えば腫瘍部位等が最大呼気又は最大吸気をしたときに現れて、その部位のCT画像の観察が可能になる。
従って、被検体2が意識的に深い呼吸を行った時の動き、例えば最大呼気から最大吸気との間の動きによる診断機能解析などが可能になる。これにより、再現性の無い呼吸に対しても任意の呼吸位相で投影データを収集することができ、この投影データを再構成することによってCT画像を取得できる。
【0048】
次に、本発明の第2の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本実施の形態においてコーンビームX線CT装置の構成は、図1と同一なので、その詳しい説明は省略する。
本実施の形態は、コーンビームX線CT装置によりシングルスキャンを繰り返す場合について説明する。上記第1の実施の形態の連続ダイナミックスキャンでは、被検体2の呼吸レートが低く、かつ多くの呼吸位相でCT画像の必要が無い場合、必要以上に本スキャンを行い、被検体2に対するX線ビームの被爆量を多くしてしまう。
従って、本実施の形態は、呼吸位相を変えてコーンビームX線CT装置によりシングルスキャンを繰り返す場合について説明する。
【0049】
本実施の形態でも、上記第1の実施の形態と同様に、呼吸促進機21は、X線ビームのスキャン前とスキャン中とに、それぞれ被検体2に対して異なる深さの呼吸として例えば「楽にしてください」、「思い切り息を吸ってください」「思い切り息を吐いてください」「もう一度思い切り息を吸ってください」「楽にしてください」を音声により発して促す。
スキャン条件設定部23は、表示装置15に表示された被検体2の呼吸波形に基づいて被検体2の呼吸位相又は呼吸レベルに応じてスキャン時間とスキャン開始時刻とを設定する。このスキャン条件設定部23は、スキャン時間とスキャン開始時刻とを被検体2の呼吸波形に基づいて自動的に設定するようにしてもよいし、又は表示装置15に表示された被検体2の呼吸波形を観察するオペレータのマニュアル操作によって設定してもよい。このうちスキャン時間は、ハーフスキャンとフルスキャンとから選択可能である。
【0050】
被検体2に対するX線ビームのスキャンの開始タイミングは、上記第1の実施の形態と同様に、時間経過を指標とするものとして被検体2の呼吸位相を指定する方法と、呼吸の深さを指標とするものとして被検体2の呼吸レベルを指定する方法とがあり、複数のタイミングを設定可能である。このうち被検体2の呼吸位相を指定する方法は、上記図3に示すように呼吸モニタ20による捉えられた被検体2の呼吸位相に基づいて最大吸気を示す時刻t1から所定の遅延時間dの経過後の時刻t2に設定する。
呼吸の深さを指標とするものとして被検体2の呼吸レベルを指定する方法は、上記図4に示すように呼吸モニタ20による捉えられた被検体2の呼吸位相に基づいて最大吸気を示す吸気レベルrmから所定の割合、例えば10%だけ低下した吸気レベルr1を示す時刻t10に設定する。
【0051】
図8及び図9は被検体2の最大吸気と、最大呼気と、これら最大吸気と最大呼気との中間における呼吸波形の上がりと下がりとの4つのタイミングで投影データを収集する一例を示す。このうち図8はスキャン時間に対して呼吸周期が長いときの投影データの収集タイミングを示し、呼吸波形の1周期中に例えば4つの呼吸位相の投影データを収集できることを示す。図9はスキャン時間に対して呼吸周期が短いときの投影データの収集タイミングを示し、複数周期の呼吸に亘って目的とする位相の投影データを収集できる。
【0052】
次に、上記の如く構成された装置の動作について図10に示す動作フローチャートに従って説明する。ここでは、シングルスキャンの例である。
患者等の被検体2の登録や本装置のセッティングがステップ#1において行われ、ここで、被検体2がガントリ1内の寝台上に載置される。
次に、本装置は、ステップ#12において、上記同様に、被検体2のCT画像を取得する前に、本スキャンの開始位置及びCT画像を取得するときの撮影条件等を決定するための被検体2の2次元のスキャノ画像を取得する。この被検体4の2次元のスキャノ画像は、ホストコントローラ13によって表示装置15に表示される。オペレータは、表示装置15に表示された被検体4の2次元のスキャノ画像を観察し、例えば入力装置16をマニュアル操作して撮影範囲を入力し、これと共に例えば入力装置16をマニュアル操作して被検体2に対する呼吸指示のパターンを選択するので、ホストコントローラ13は、ステップ#13において、被検体4に対する撮影範囲を設定し、次のステップ#14において、被検体2に対する呼吸指示のパターンを設定する。
【0053】
次に、実際の本スキャンの前に、被検体2に対して音声指示による意識的な呼吸の練習が行われる。すなわち、呼吸促進機21は、ステップ#15において、先ず、「楽にしてください」の音声を発する。これにより、被検体2は、通常の呼吸(安静時の呼吸)を続ける。
次に、呼吸促進機21は、「思い切り息を吸ってください」の音声を発する。これにより、被検体2は、深呼吸を行うようになり、最大吸気状態になる。
次に、呼吸促進機21は、「思い切り息を吐いてください」の音声を発する。これにより、被検体2は、息を思いっきり吐くようになり、最大呼気状態になる。
次に、呼吸促進機21は、「もう一度思い切り息を吸ってください」の音声を発する。これにより、被検体2は、再度、深呼吸を行うようになり、再び最大吸気状態になる。
次に、呼吸促進機21は、「楽にしてください」の音声を発する。これにより、被検体2は、通常の呼吸(安静時の呼吸)に戻る。
【0054】
これと共に、呼吸モニタ20は、同ステップ#15において、呼吸促進機21から発せられる音声による呼吸指示によって呼吸を行ったときの被検体2の呼吸による動きを捉え、その呼吸モニタ信号を出力する。この呼吸モニタ20から出力された呼吸モニタ信号は、例えば記憶装置12に記憶されると共に、表示装置15に送られて例えば図2に示すような呼吸波形として表示される。
【0055】
次に、スキャン条件設定部23は、ステップ#16において、表示装置15に表示された被検体2の呼吸波形に基づいて被検体2の呼吸位相又は呼吸レベルに応じて本スキャンのスキャン時間とスキャン開始時刻とを設定する。なお、本スキャンのスキャン時間とスキャン開始時刻との設定は、スキャン条件設定部23により自動的に行うようにしてもよいし、又は表示装置15に表示された被検体2の呼吸波形を観察するオペレータのマニュアル操作によって設定してもよい。
又、再構成装置17は、スキャン条件設定部23により設定された本スキャンのスキャン時間とスキャン開始時刻とに従ってスキャン制御部22により被検体2の呼吸による動きに応じて本スキャンのタイミングが制御されたときに取得された被検体2のボリュームデータを再構成して所望の呼吸位相の3次元画像を取得するように設定される。
【0056】
次に、ホストコンピュータ13は、ステップ#17において、被検体2に対して意識的な呼吸の練習と同一の呼吸指示パターンの音声指示を再度発する指令を呼吸促進機21に発し、かつ呼吸モニタ20から出力される呼吸モニタ信号を表示装置15に表示させる。しかるに、呼吸促進機21は、本スキャン中に、先ず、「楽にしてください」の音声を発する。これにより、被検体2は、通常の呼吸(安静時の呼吸)を続ける。
次に、呼吸促進機21は、「思い切り息を吸ってください」の音声を発する。これにより、被検体2は、深呼吸を行うようになり、最大吸気状態になる。
次に、呼吸促進機21は、「思い切り息を吐いてください」の音声を発する。これにより、被検体2は、息を思いっきり吐くようになり、最大呼気状態になる。
次に、呼吸促進機21は、「もう一度思い切り息を吸ってください」の音声を発する。これにより、被検体2は、再度、深呼吸を行うようになり、再び最大吸気状態になる。
次に、呼吸促進機21は、「楽にしてください」の音声を発する。これにより、被検体2は、通常の呼吸(安静時の呼吸)に戻る。
【0057】
これと共に、呼吸モニタ20は、呼吸促進機21から発せられる音声による呼吸指示によって呼吸を行ったときの被検体2の呼吸による動きを捉え、その呼吸モニタ信号を出力する。この呼吸モニタ20から出力された呼吸モニタ信号は、例えば記憶装置12に記憶されると共に、表示装置15に送られて例えば図2に示すような呼吸波形として表示される。
【0058】
これと共に、ホストコンピュータ13は、同ステップ#17において、スキャン条件設定部23に設定された被検体2の呼吸位相又は呼吸レベルに応じた本スキャンのスキャン時間とスキャン開始時刻とに従って本スキャンを開始するようにデータ/制御バス14を介して高電圧発生装置6と、架台駆動部8となどに本スキャン実行の指令を発する。
【0059】
しかるに、被検体2が呼吸指示パターンの音声指示に従って意識的に呼吸をしている状態に、X線球管4と2次元検出器システム7とは、被検体2を略中心として連続的に回転移動する。シングルスキャン中、X線球管4から放射されたX線ビームは、被検体2を透過して2次元検出器システム7により検出される。
DAS9は、上記同様に、2次元検出器システム7の各チャンネルの出力を電圧信号に変換して増幅し、デジタル信号に変換する。前処理装置11は、DAS9の出力のチャンネル間非均一性等を補正する。この前処理装置11により前処理された投影データは、記憶装置12に記憶される。これにより、例えば図8に示すようにスキャン時間に対して呼吸周期が長い場合、呼吸波形の1周期中に例えば4つの呼吸位相の投影データが収集されて記憶装置12に記憶される。又、図9に示すようにスキャン時間に対して呼吸周期が短い場合、複数周期の呼吸に亘って目的とする位相の投影データを収集されて記憶装置12に記憶される。
【0060】
次に、再構成装置17は、ステップ#18において、例えばシングルスキャン中に、前処理装置11により前処理された投影データから被検体2の1断面の3D画像データや4D画像データ等のCT画像を再構成する。この場合、再構成装置17は、スキャン条件設定部23により設定されたシングルスキャン中に収集された投影データを再構成して所望の呼吸位相の3次元画像を取得する。
次に、ホストコンピュータ13は、ステップ#19において、再構成装置17により取得された被検体2の所望の呼吸位相における3次元画像を表示装置15に表示する。
【0061】
次に、ホストコンピュータ13は、ステップ#20において、追加のスキャンの選択があるか否かを判断し、追加のスキャンの選択があれば、ステップ#21に移ってスキャンタイミングの追加を行ってステップ#18に戻る。追加のスキャンの選択がなければ、ホストコンピュータ13は、検査を終了する。
【0062】
このように上記第2の実施の形態によれば、呼吸促進機21によって被検体2に対して例えば「楽にしてください」、「思い切り息を吸ってください」「思い切り息を吐いてください」「もう一度思い切り息を吸ってください」「楽にしてください」を音声により発して意識的に異なる深さの呼吸を促し、このときにX線球管4と2次元検出器システム7とを被検体2を略中心として回転移動させてシングルスキャンを行って投影データを収集する。
【0063】
これにより、被検体2の安静時の呼吸に限らず、被検体2が例えば最大呼気から最大吸気までの範囲の呼吸をしたときの投影データを収集することができ、この投影データを再構成することによって例えば安静時の呼吸レベルでは他の部位で隠れて観察できなかった部位が最大呼気又は最大吸気をしたときに現れて、その部位のCT画像の観察が可能になる。従って、被検体2が意識的に深い呼吸を行った時の動き、例えば最大呼気から最大吸気との間の動きによる診断機能解析などが可能になる。これにより、再現性の無い呼吸に対しても任意の呼吸位相で投影データを収集することができ、この投影データを再構成することによってCT画像を取得できる。
【0064】
又、例えばスキャン時間に対して呼吸周期が長い場合、図8に示すように呼吸波形の1周期中に例えば4つの呼吸位相の投影データが収集されて記憶装置12に記憶し、又、スキャン時間に対して呼吸周期が短い場合、図9に示すように複数周期の呼吸に亘って目的とする位相の投影データを収集されて記憶装置12に記憶するので、被検体2の呼吸波形の1周期中に互いに異なる複数の呼吸位相の投影データを収集することができる。これにより、スキャン時間及びスキャン開始時刻を選定して設定すれば、任意の呼吸位相で投影データを収集することができる。
【0065】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0066】
上記第1の実施の形態は、連続ダイナミックスキャンに適用した場合、上記第2の実施の形態は、シングルスキャンに適用した場合について説明したが、連続ダイナミックスキャン又はシングルスキャンのいずれか一方を選択する判断機能をホストコントローラ13に持たせてもよい。すなわち、ホストコントローラ13は、例えば図11に示すようにステップ#30において、連続ダイナミックスキャン又はシングルスキャンのいずれか一方のスキャンモードを選択する。
【0067】
連続ダイナミックスキャン又はシングルスキャンのいずれかの設定は、例えばスキャンモードスイッチを設け、このスキャンモードスイッチが例えばオペレータのマニュアル操作によって連続ダイナミックスキャン又はシングルスキャンのいずれかに設定される。ホストコントローラ13は、スキャンモードスイッチが連続ダイナミックスキャン又はシングルスキャンのいずれかに設定されているかを判断する。なお、連続ダイナミックスキャン側の動作フローチャートは図7に示す動作フローチャートと同一であり、シングルスキャン側の動作フローチャートは図10に示す動作フローチャートと同一である。
【0068】
角錐状のX線ビームを放射するコーンビームX線CT装置に限らず、マルチスライスX線CTにも適用可能である。このマルチスライスX線CTは、円錐状のX線ビームを放射するX線源と、複数個Mのファンビーム用検出列をZ軸方向にN列積み重ねたように円筒面上に複数の検出素子を配列した2次元検出器とを備える。
【0069】
音声による呼吸指示は、「楽にしてください」、「思い切り息を吸ってください」「思い切り息を吐いてください」「もう一度思い切り息を吸ってください」「楽にしてください」に限らず、他の呼吸指示、例えば「呼吸を止めてください」等を含めてもよい。さらに音声による呼吸指示は、例えば「少し息を吸ってください」とか「少し息を吐いてください」のような呼吸の深さの程度を表すような内容にすることも可能である。
【0070】
本スキャン開始のタイミングは、例えば図12に示すように呼吸モニタ20による捉えられた被検体2の呼吸波形の変化を検出し、被検体2の呼吸波形が例えば上向への変化から下向きへの変化に変わった時点t20を最大吸気として判定し、この時点t20から所定の遅延時間dの経過後の時刻t21にスキャン開始する。又、本スキャン開始のタイミングは、例えば呼吸モニタ20による捉えられた被検体2の呼吸波形の変化を検出し、被検体2の呼吸波形が例えば下向への変化から上向きへの変化に変わった時点を最大呼気として判定し、この時点から所定の遅延時間dの経過後にスキャン開始するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係るコーンビームX線CT装置の第1の実施の形態を示す構成図。
【図2】同装置における音声のよる呼吸の指示と呼吸モニタによりモニタされた被検体の呼吸波形の一例を示す図。
【図3】同装置における被検体に対するX線ビームのスキャンの開始タイミングとして被検体の呼吸位相を指定する方法の一例を示す図。
【図4】同装置における被検体に対するX線ビームのスキャンの開始タイミングとして呼吸の深さを指定する方法の一例を示す図。
【図5】同装置により被検体の呼吸位相の1周期後の同一呼吸位相でスキャンを終了することを示す図。
【図6】同装置により被検体の最大呼気から最大吸気までの呼吸位相の半周期でスキャンを終了することを示す図。
【図7】同装置における連続ダイナミックスキャンでの動作フローチャート。
【図8】同装置におけるスキャン時間に対して呼吸周期が長いときの投影データの収集タイミングを示す図。
【図9】同装置におけるスキャン時間に対して呼吸周期が短いときの投影データの収集タイミングを示す図。
【図10】同装置におけるシングルスキャンでの動作フローチャート。
【図11】同装置における連続ダイナミックスキャン又はシングルスキャンを選択可能とする動作フローチャート。
【図12】同装置における本スキャン開始のタイミングの変形例を示す図。
【符号の説明】
【0072】
1:ガントリ、2:被検体、3:回転フレーム、4:X線管、5:スリップリング、6:高電圧発生装置、7:2次元検出器システム、8:架台駆動部、9:データ収集回路、10:非接触データ伝送装置、11:前処理装置、12:記録装置、13:ホストコントローラ、14:データ/制御バス、15:表示装置、16:入力装置、17:再構成装置、18:補助記憶装置、19:データ処理装置、20:呼吸モニタ、21:呼吸促進機、22:スキャン制御部、23:スキャン条件設定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線源から放射された角錐状のX線ビームを被検体に対してスキャンし、前記被検体を透過した前記X線ビームを2次元平面状に形成された2次元検出器により検出し、前記2次元検出器からデータ収集して前記被検体のボリュームデータを取得するX線CT装置において、
前記被検体に対して少なくとも異なる深さの呼吸を行うように促す呼吸促進機と、
前記被検体の呼吸による動きを捉える呼吸モニタと、
前記呼吸モニタにより捉えられた前記被検体の呼吸による動きに応じて前記Xビームの前記被検体に対する前記スキャンのタイミングを制御するスキャン制御部と、
を具備することを特徴とするX線CT装置。
【請求項2】
前記呼吸促進機は、前記少なくとも異なる深さの呼吸を音声により促すことを特徴とする請求項1記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記呼吸促進機は、前記少なくとも深呼吸を音声により促すことを特徴とする請求項1記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記呼吸促進機は、少なくとも楽にすること、思い切り息を吸うこと、思い切り息を吐くことを音声により促すことを特徴とする請求項1記載のX線CT装置。
【請求項5】
前記呼吸促進機は、前記X線ビームの前記スキャン前と前記スキャン中とに、それぞれ前記少なくとも異なる深さの呼吸を行うように促すことを特徴とする請求項1記載のX線CT装置。
【請求項6】
前記スキャン制御部は、前記呼吸モニタによる捉えられた前記被検体の呼吸位相又は呼吸レベルに応じて前記スキャンの開始と終了との各タイミングを制御することを特徴とする請求項1記載のX線CT装置。
【請求項7】
前記スキャン制御部は、前記呼吸モニタによる捉えられた前記被検体の前記呼吸位相により少なくとも最大吸気を示す時点から所定時間後に前記スキャンを開始することを特徴とする請求項6記載のX線CT装置。
【請求項8】
前記スキャン制御部は、前記呼吸モニタによる捉えられた前記被検体の前記呼吸位相により少なくとも最大吸気を示す吸気レベルから所定の割合だけ低下した前記吸気レベルを示す時点から前記スキャンを開始することを特徴とする請求項6記載のX線CT装置。
【請求項9】
前記スキャン制御部は、前記スキャンを開始してから少なくとも前記呼吸位相の半周期、1周期後に前記スキャンを終了することを特徴とする請求項7又は8記載のX線CT装置。
【請求項10】
前記呼吸モニタにより捉えられた前記被検体の呼吸による動きを呼吸波形として表示する表示部と、
前記表示部に表示された前記被検体の呼吸波形に基づいて前記被検体の呼吸位相又は呼吸レベルに応じて前記スキャンの開始と終了とを設定するスキャン条件設定部と、
を有し、
前記スキャン制御部は、前記スキャン条件設定部に設定された前記被検体の呼吸位相又は呼吸レベルに応じて前記スキャンの開始と終了との各タイミングを制御する、
ことを特徴とする請求項1記載のX線CT装置。
【請求項11】
前記被検体に対する前記X線ビームのスキャンがシングルスキャンを繰り返す場合、
前記スキャン制御部は、前記呼吸モニタによる捉えられた前記被検体の呼吸位相又は呼吸レベルに応じて前記シングルスキャンを行い、
前記2次元検出器からデータ収集して前記被検体における所望の呼吸位相の前記ボリュームデータを取得する、
ことを特徴とする請求項6記載のX線CT装置。
【請求項12】
前記2次元検出器からデータ収集して取得された前記被検体のボリュームデータを再構成して前記被検体の3次元画像を取得する再構成部を有し、
前記再構成部は、前記スキャン制御部により前記被検体の呼吸による動きに応じて前記スキャンのタイミングが制御されたときに取得された前記被検体のボリュームデータを再構成して所望の呼吸位相の3次元画像を取得する、
ことを特徴とする請求項1記載のX線CT装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2010−46212(P2010−46212A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−211888(P2008−211888)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】