説明

ZSM−5添加剤

流動接触分解(FCC)中におけるような、炭化水素を反応させるのに適する触媒組成物は少なくとも30%の中程度の孔径のゼオライト、カオリン、リン化合物及び高密度の非反応性成分を有する摩耗抵抗性粒状物を含んでなる。非反応性成分の例はアルファ−アルミナである。該触媒はまた高表面積の反応性アルミナを含有することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はZSM−5を含有するカオリンスラリーを噴霧乾燥し、そして生成物を焼成して、摩耗抵抗性微粒子を形成することにより生成される改善されたZSM−5含有微粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
カオリンは単独で、又はゼオライトの分子ふるいの粒子のような他の成分とともに粒子に形成され、焼成されると更に硬化されて微粒子のような凝集性(coherent)物体を形成することができることは周知である。例えば、選択的気化法中で使用され又は活性ゼオライト粒子と混合されるようになっている本質的に触媒として不活性な微粒子は含水(未焼成)カオリンのスラリーを噴霧乾燥し、そして生成される微粒子を焼成することにより生成される(特許文献1参照)。焼成カオリンからなり、そして貴金属で含浸された微粒子は流動接触分解装置中のCO燃焼を促進するために商業的に使用されてきた(特許文献2参照)。場合により、促進剤粒子が活性分解触媒成分(通常ゼオライトY)を含有する粒子と前以て混合される。他の適用においては、促進剤粒子は分解触媒の粒子から切り離して、FCC装置の再生器中に適当なレベルで導入される。焼成カオリンからなる微粒子の更にもう1つの使用はいわゆるインサイチューの経路によりゼオライトの分解触媒を形成するための苛性溶液又はナトリウムシリケート溶液との反応物としてである(特許文献3参照)。多数の分解触媒はシリカゾル又はシリカアルミナゾル及びカオリンと、適当なイオン−交換形態の前以て形成されたゼオライトYの結晶のスラリーを混合し、次に噴霧乾燥することにより調製される。焼成粘土の噴霧乾燥微粒子はまたFCC装置における流動化添加剤として使用することができる。
【0003】
カオリンの水性スラリーが噴霧乾燥される種々の方法を実施する際に、噴霧乾燥されるのに十分に流体である高固形分スラリーの形成を許すために噴霧乾燥の前にスラリー中にカオリンを分散させることが慣行である。高固形分は経済的理由で好まれる。更に、高固形分はより強力に結合された粒子の形成に役に立つ。水中にカオリンを分散するためには、ナトリウム縮合(condensed)リン酸塩、ナトリウムシリケート、ソーダ灰、ナトリウムポリアクリレート及びそれらの混合物のような通常のアニオン性粘土分散物を使用する。典型的には、カオリンの濃縮分散スラリーのpHはわずかにアルカリ性から中性、例えば、6.0〜8.0であり、そこでpH7が最適である。
【0004】
FCC法のような多数の接触方法において、粒子は摩耗抵抗性であり並びに十分に多孔質でなければならない。概括的にこれらの性質の一方は他方の性質を犠牲にして達成される。例えば、ある化学組成の粒子が著しく多孔性に調製される時は、その硬度は通常減少する。
【0005】
特許文献4は、その後に焼成される噴霧乾燥した微粒子を生成するために、噴霧乾燥工程中にカオリンとともにリン酸(又は他のリン酸塩化合物)の添加を利用する。幾つかの調製物中にはゼオライト粒子が噴霧乾燥機の供給物中に存在する。その工程は2種の基礎的方法の1つにおいて実施される。一方において、粘土粒子のスラリーをリン原料と混合する前に低pH、例えば、1.0〜3.0にもたらし、次に噴霧乾燥する。他方においては粘土スラリーをリン酸塩含有化合物と混合する前に高pHレベル(例えば、14.0〜10.0)にもたらす。この特許の教示に従うと、これらのpH範囲の使用が優れた摩耗抵抗性をもつ粒子の生成のために必要である。焼成粘土微粒子を生成する工程に対するこれらの先行技術のアプローチによる重大な問題は、どちらのpH範囲も、カオリンの濃縮スラリーが流体であり、そして高固形分のスラリーを使用する商業的噴霧乾燥を受け易い
、僅かにアルカリ性から中性のpH範囲にはないことである。従って、特許権者は、明らかにアルミニウムホスフェート結合剤の形成に伴う粘度増加のために、pH調整の前に当初70%固形分のスラリーを40%に希釈した。
【0006】
同様に、特許文献5及び6は3未満のpHでリン源で処理した粘土のスラリーとともにゼオライトのスラリーを噴霧乾燥することによる分解触媒の形成につき記載している(特許文献5及び6参照)。合わせたスラリーを約25%の低い固形分含量にもたらすために十分な水を添加する。
【0007】
結合剤及び硬化剤としてのリン酸アルミニウムの使用はセラミック産業では周知である(非特許文献1参照)。これは通常、セラミック混合物に対するアルミナの添加、次にリン酸による処理、硬化及び焼成を伴う。同様に、リン酸の取り込み、次に熱処理によるボーキサイト又はカオリンからなるもののようなアルミニウムの塊の硬化も知られている。この処理の生成物は明らかに、結合剤として働くことができるリン酸アルミニウムである。アルミニウム塩溶液とのリン酸溶液の相互反応により形成されるリン酸アルミニウムは分解触媒組成物中でゼオライトと粘土を結合させるために使用されてきた(特許文献7参照)。
【0008】
共同譲渡された特許文献8は噴霧乾燥した焼成カオリンを基剤にした改善された多孔質微粒子を形成する工程を開示している(特許文献8参照)。リン酸及びカオリンを別のスタリーム中で噴霧乾燥機のアトマイザーに隣接した静止(static)ミキサーにポンブで押し出される。リン酸を、分散された高固形分のカオリンのスラリー中に注入し、スラリーを実質的に瞬時に噴霧乾燥機中で液滴に噴霧する。本明細書で使用される用語の「実質的に瞬時に」は約20秒未満、好ましくは約10秒未満の時間を表わす。この噴霧乾燥法は噴霧乾燥機の前の望ましくないカオリンの凝集及び塊状化を排除する。
【0009】
噴霧乾燥機の前のカオリンの凝集及び塊状化は噴霧乾燥機の供給物中に比較的大きい粘土粒子の塊状物をもたらすと考えられる。これらの大きい塊状物の存在は、噴霧乾燥工程からもたらされる微粒子中のカオリン粒子の低い、不均一な充填を惹起する。微粒子中のカオリン粒子の低い、不均一な充填は微粒子内の粒子の不充分な粒子間結合をもたらす。これが低い摩耗抵抗性を包含する低い物理的特性をもたらす。
【0010】
それに対し、特許文献8の工程は高いカオリンの粒子間結合並びに優れた物理的及び化合物特性を有する微粒子を提供する(特許文献8参照)。例えば、特許された方法により生成される微粒子は高い摩耗抵抗性を有する。更に、該微粒子は、リン酸結合剤を伴わずに噴霧乾燥され、同一温度で焼成される同一カオリンからの微粒子より高い多孔性を保持する。概括的に多孔性の増加は摩耗抵抗性の減少をもたらすので、より高い摩耗抵抗性と組み合わさったこの多孔性の増加は驚くべきことであった。微粒子の物理的特性は活性なゼオライトの触媒成分を含有する微粒子の特性に匹敵しなければならないために、十分な多孔性もまた重要である、すなわち非常に低い又は非常に高い密度は望ましくない。
【0011】
特許文献8の原理を使用することにより調製される微粒子は、高い摩耗抵抗性を有する触媒として不活性な微粒子、活性な分解成分(粘土スラリーにゼオライトを添加することにより)、汚染物のバナジウムと優先的に反応する微粒子(MgOのような添加成分を伴い又は伴わず)、インサイチューでのゼオライトの成長のための微粒子(例えば、特許文献3参照)、流動化添加剤及び一酸化炭素燃焼添加剤のための触媒支持体、を包含するFCC中の幾つかの用途を有する。
【0012】
カオリン及び10〜25重量%のZSM−5を含有するFCC添加剤はガソリンのオクタンを改善し、そしてLPG収率を高めるために使用されてきた。希釈によるユニットの
活性のロスを最小にしながらLPGを更に増加するために、25%を超えるZSM−5レベルをもつ添加剤が必要である。不幸なことには、25%より高いZSM−5レベルを含有する微粒子添加剤中では微粒子の摩耗抵抗性が問題になる。本発明の目的は、25%以下のZSM−5を含有する添加剤よりも単位ZSM−5当たりについて比較して、同程度の又はより良好な摩耗抵抗性及び活性をもつ、少なくとも40重量%ZSM−5を含有するFCC添加剤を調製することである。
【0013】
W.R.Graceは良好な摩耗抵抗性をもつ、40〜80%のZSM−5を含有する添加剤を調製するための特許文献9を有する(特許文献9参照)。その中に記載されるように、微粒子調製物中の添加アルミナの量は10%未満である必要があり、総アルミナ(添加アルミナプラス、粘土及びゼオライト中のアルミナ)は30%未満である。添加アルミナは50m/gを超える、好ましくは140m/gを超えるBET表面積を有する。彼らの方法において、粘土、ゼオライト、アルミナ及び、リン酸及びアルミニウムクロロヒドロールのような結合剤はすべて、噴霧乾燥の前に一緒に混合されて均一なスラリーを形成する。
【特許文献1】米国特許第4,781,818号明細書,Reagan,et al.
【特許文献2】米国特許第4,171,286号明細書,Dight,et al.
【特許文献3】米国特許第4,493,902号明細書,Brown,et al.
【特許文献4】米国特許第5,190,902号明細書,Demmel
【特許文献5】米国特許第5,231,064号明細書,Absil,et al.
【特許文献6】米国特許第5,348,643号明細書,Absil,et al.
【特許文献7】米国特許第5,194,412号明細書
【特許文献8】米国特許第5,521,133号明細書
【特許文献9】米国公開特許出願第2003/0047487号明細書
【非特許文献1】F.J.Gonzalez and J.W.Halloran,Ceram.Bull 59(7),727(1980)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明者は、微粒子の少なくとも一部が高密度の低表面積の不活性種の粒子を含有する時は、30%以上のZSM−5を含有する微粒子はそのような低表面積の非反応性物質を含まない微粒子に比較して、単位ZSM−5当たり高い活性及び優れた摩耗抵抗性を有することを見いだした。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に従うと、少なくとも30%のZSM−5を含有し、良好な摩耗抵抗性を有するFCC添加剤が、共同譲渡された米国特許第5,521,133号明細書に開示された方法を改善することにより提供される。本発明の方法に従うと、高固形分のカオリンスラリーをZSM−5、低表面積のアルミナ又は類似の高密度の非反応性の無機物質を含有するスラリーと混合する。混合スラリー及びリン酸を別のストリーム中で、噴霧乾燥機のアトマイザーに隣接した静止ミキサーにポンプで送る。このように、リン酸を、分散した高固形分の混合カオリンスラリー中に注入し、そして酸注入されたスラリーを噴霧乾燥機中で液滴に噴霧する。該方法は良好なカオリンの粒子間結合及び優れた物理的及び化学的特性を有する微粒子を提供する。更に、該微粒子は少なくとも30重量%のZSM−5を含有し、そして非反応性アルミナ又は他の高密度の非反応性無機物質の添加により高い摩耗抵抗性を有することができる。
【0016】
好ましい態様
FCC触媒はしばしば、触媒として活性な成分(ゼオライトYを含有する微粒子)及び添加剤(ゼオライトを伴う又は伴わない、低表面積をもつ高度に焼成されたカオリンから
なる微粒子)を含有する微粒子の混合物である。流動分解の工程中に、触媒成分は摩耗して、微塵を形成する。微塵の形成は概括的に望ましくないと考えられるが、2ミクロン未満の微塵が堆積物の不透明の問題の重要な原因である可能性があるが、これらが幾つかのFCC装置において操作の問題をもたらす可能性があるので、2.6ミクロン未満の粒子(ミクロ微塵)の形成は、特に望ましくないと考えられる。
【0017】
活性触媒粒子及び不活性触媒粒子の双方が摩耗する。しかし、不十分に結合された添加剤からの微塵生成物は活性成分からのものより著しく(2〜5倍)苛酷である可能性がある。
【0018】
FCC触媒又は添加剤の摩耗抵抗性は、引用によりその全体が本明細書に取り込まれている、米国特許第5.082,814号明細書に記載された実験室試験(時々、ローラー(Roller)摩耗試験と呼ばれる)により測定することができる。FCC触媒添加剤の好ましい値は15%未満の微塵生成である。
【0019】
本発明の実施において、カオリンスラリーの固形分は工程が経済的であることを確保するために50重量%を超えて維持しなければならない。更に低固形分の乾燥は最終生成物の摩耗抵抗性を損なう可能性がある多孔性の増加をもたらす。カオリンが流体(ポンブ押し出し可能な)である場合は、任意の分散剤を使用することができる。種々の比率、例えば、20:80〜80:20(重量に基づき)のソーダ灰及びナトリウムポリアクリレートの混合物が好ましい。カオリンの固形分の含量及びスラリーの重量は約15〜50重量%、より典型的には25〜40重量%の範囲内の形成微粒子中の水和カオリン含量をもたらすように提供される。
【0020】
ZSM−5のような活性な触媒ゼオライトはゼオライト触媒の水性スラリーをそれと混合することによりカオリンスラリー中に取り入れることができる。ZSM−5が好ましいが、FCCに有用な他の知られた形状選択的ゼオライトが知られており、中間の孔経(例えば約4〜約7オングストロームの孔径)を特徴として有する。ZSM−5以外に、ZSM−11も使用することができる。中間の孔径のZSMゼオライト触媒の製法もまた当該技術分野で周知である。ZSM−5触媒は好ましくは、10〜40重量%の固形分を含有する水性スラリー中で調製される。十分なZSM−5が提供されて、少なくとも30重量%の触媒として活性な成分を含有する微粒子を生成する。少なくとも40重量%の量が好ましい。
【0021】
ZSM−5スラリーをカオリンスラリーと混合する前に、触媒のスラリー中にアルミナ又は他の無機成分を添加することが好ましい。アルミナ又は類似の無機成分は不活性成分として特徴付けることができ、低BET表面積及び高密度を有する。典型的には、触媒のスラリーに添加されるアルミナ又は無機成分は50m/g未満のBET表面積及び2.8g/ccを超える密度を有するであろう。高密度の非反応性成分は好ましくは、25m/g未満のBET表面積及び3.0g/ccを超える密度を有するであろう。最も好ましくは、高密度の非反応性成分は25m/g未満のBET表面積及び3.5g/ccを超える密度を有するであろう。密度により、20オングストロームを超える粒径を有する孔を除く、固体物質の固形密度又は結晶密度を意味する。不活性成分の例はアルファ−アルミナ及び、ジルコニア、チタニア、ジルコニウムシリケート、ムライトのような無機酸化物又はシリケート、シリコンカーバイドのような金属カーバイド、シリコンナイトライドのような金属ナイトライド並びに所望の低表面積及び高密度を有する他の無機材料を包含する。典型的にはこれらの材料はZSM−5含有触媒のスラリー中に固体形で添加することができる。不活性成分のレベルは3〜25重量%、より典型的には約4〜10重量%の範囲内の量で微粒子中の非反応性アルミナ又は他の非反応性成分の最終レベルを提供するようなものである。
【0022】
反応性アルミナの種を場合により本発明の微粒子に添加することができる。これらの反応性アルミナの種は典型的にはZSM−5触媒のスラリーに添加されることができ、そして50m/gを超える総表面積(BET)を有することを特徴とする。好ましくは、約140〜400m/gのはるかに高い表面積の反応性アルミナを使用することができる。これらの反応性アルミナは典型的には、分散性ベーマイトを包含するベーマイト(時々疑似ベーマイトと呼ばれる)、ギブサイト及び他の遷移アルミナを包含することができる。特に有用なものは、ギ酸のような酸中で微細粒子を形成する分散性ベーマイトである。従って、分散性ベーマイトは最初に酸水溶液中に分散され、次にZSM−5触媒スラリーに添加されることができる。添加することができる反応性の高表面積のアルミナのレベルは、最終微粒子中に約2〜20重量%の反応性アルミナを提供するであろうレベルを包含する。反応性アルミナの典型的な量は4〜8重量%の範囲であろう。活性であろうと不活性であろうと、本発明の微粒子に添加され、そしてその一部を形成することができるアルミナの総重量は少なくとも5重量%の範囲内にあることができ、そして典型的には約8〜25重量%の範囲内にあるであろう。約12〜20重量%の量を包含する、10%を超える量の、カオリン又はゼオライトのアルミナを包含しない総アルミナ含量、すなわち添加された非反応性及び反応性アルミナの形態のアルミナの量が最も有用であることが見いだされた。
【0023】
リン酸は好ましくは、濃縮溶液として添加され、従って分散カオリンスラリーの最小希釈は酸が注入される時に起る。従って、リン酸濃度は5〜80重量%であることができ、50〜80%濃度が好ましい。添加されるPの量はカオリンの粒径及び所望される硬度に応じて広範に変わり得る。経費の理由で、概括的に所望される物理的及び化学的特性と呼応してリン酸含量を最小にすることが好ましい。満足な結果は揮発物を含まない重量に基づいて表わされた3〜15%のPを含有する生成物を生成するのに十分なリン酸を使用して達成された。7〜15%のPを含有する微粒子生成物が典型的である。
【0024】
焼成は標準の実験室の高温オーブン中で実施することができる。あるいはまた、焼成は回転炉又は他の商業的規模の焼結装置で大規模に実施することができる。
【0025】
物質が焼成される温度は順次、意図される最終的用途、カオリンの粒径及び使用されるリン酸塩結合剤の%に左右されるであろう、摩耗抵抗性及び多孔性の所望レベルに左右される。例えば、カオリンが微細粘土(95%<2ミクロン)であり、結合剤レベルが約7%(Pとして)である場合は、少なくとも約1800°F(982℃)の焼結温度が必要である。より粗い粘土(80%<2ミクロン)及び同レベルの結合剤に対して同レベルの摩耗抵抗性を達成するためには約2100°F(1149℃)の温度が必要である。全体として約1200°〜2200°F(649〜1204℃)の温度範囲が適当であり、1500°〜2100°F(816〜1149℃)の範囲が好ましい。温度における時間は、所望の焼結温度に到達するために焼結されている全体の塊に十分な時間を提供しなければならない範囲でのみ重要である。従って、サンプルが小さい場合に、適当な加熱は比較的短時間に達成することができる。反対に、選択された温度が低すぎると、焼結時間を延長しても有益な効果を与えない。
【0026】
カオリンの粒経分布は適当な微粒子の調製に重要な考慮要素である。カオリン粒経が微粒子の粒径に比較して大きすぎると、微粒子内への粒子の充填が不均一であり、カオリン粒子間の粒子間結合が不十分なので、摩耗抵抗性のような所望の物理的特性を達成することができない。主として微粒子からなるカオリンを使用すると微粒子内の粒子のより均一な充填及び粒子間結合のより良い機会を与えるであろう。実施例に使用されるカオリンの種類は微細性の通常の指標、重量%<2ミクロンに従って以下に挙げる。
【0027】
商品名 重量%<2ミクロン
ASP(R)600 80
ASP(R)400 35
ASP(R)200 90
ASP(R)072 98
(R)Engelhard Corp.,Iselin,N.J.の登録商標
【0028】
本発明の添加剤は反応を容易にするために触媒を必要とする炭化水素供給物を伴ういかなる化学反応にも適する。このような反応は炭化水素の分子量低下を伴う炭化水素転化工程、例えば、分解を包含する。本発明は更に異性化、二量体化、重合、水和及び芳香族化に使用することができる。このような工程の条件は当該技術分野で知られている。本明細書に引用により取り入れられている米国特許第4,418,235号明細書を参照されたい。他の適用可能な方法は改質ガソリンの改良、芳香族炭化水素のトランスアルキル化、芳香族のアルキル化及び燃料油の流動点(pour point)の低下を包含する。本発明の目的のための「炭化水素原料油」は炭素及び水素原子を含有する有機化合物を包含するのみならずまた、酸素、窒素及び硫黄のヘテロ原子を含んでなる炭化水素を包含する。原料油は広範な沸点を有するもの、例えば、ナフサ、留出油、真空ガス油及び残留オイルであることができる。このような原料油はまた、ピリジンのような複素環式化合物を調製するためのものを包含する。
【0029】
本発明は例えば、触媒の摩耗が要因である流動法に特に適する。本発明は接触分解条件下で通常の分解触媒の存在下でガソリン、アルキレート、潜在的アルキレート及び低級オレフィンを含んでなる生成物の混合物に対する炭化水素供給物の流動接触分解に特に適する。
【0030】
このような工程に対する典型的な炭化水素、すなわち原料油は全体として又は一部として、約204℃を超える初留点、少なくとも約260℃の50%点及び少なくとも約315℃の終点を有するガス油(例えば、軽油、ミディアムオイル又は重ガス油)を包含することができる。原料油はまた、ディープカットガス油、真空ガス油、熱媒油、残留油、サイクルストック、ホールトップ原油、タールサンド油、シェール油、合成燃料、石炭の破壊的水素化から誘導される重炭化水素画分、タール、ピッチ、アスファルト、任意の前記の物質から誘導される水素化処理原料油、等を包含することができる。認められるように、約400℃を超えるより高い沸点の石油画分の蒸留は熱分解を回避するために真空下で実施しなければならない。本明細書で使用される沸点は、便宜上大気圧に補正された沸点により表わされる。高金属量を含有しても約700℃までのエンドポイントを有する残留油又はディープカットガス油もまた本発明を使用して分解することができる。
【0031】
接触分解装置は概括的に約400℃から約650℃、通常は約450℃〜約600℃の温度で、減圧下、大気圧又は加圧下において、通常約1気圧〜約5気圧で操作される。
【0032】
FCC触媒(一次又は添加剤)は粉末(20〜200ミクロン)としてFCC法に添加され、概括的に供給物中に懸濁され、反応区域中で上方に噴射される。比較的重い炭化水素の原料油、例えば、ガス油は触媒と混合されて、流動懸濁物を提供し、高温で細長い反応容器又はライザー中で分解されて、より軽い炭化水素生成物の混合物を提供する。ガス状反応生成物及び消費触媒は包含されたストリッピング容器又はストリッパーの上方部分内に配置された分離装置、例えば、サイクロンユニット中にライザーから放出され、そこで反応生成物は生成物回収区域に運ばれ、そして消費触媒はストリッパーの下方区域内の濃厚触媒床に侵入する。ストリッピングが消費触媒から炭化水素を同伴した後、触媒は触媒再生ユニットに運ばれる。流動化可能な触媒はライザーと再生装置間を連続的に循環し、後者から前者へ、熱を運ぶ働きをし、それにより吸熱性の分解反応の熱の需要を供給する。
【0033】
FCC主要カラムの頭上受容器からのガスは圧縮されて、更なる処理そしてガソリンと軽オレフィンへの分離に向けられ、そこでC及びC生成物のオレフィンが石油化学装置に又はアルキル化装置に送られて、1種又は複数の低分子量オレフィン(通常プロピレン及びブチレン)とイソパラフィン(通常イソ−ブタン)の反応によりハイオクタンガソリンを生成する。エチレンは同様な方法で回収され、更なる石油化学装置に対して処理される(processed)と考えられる。
【0034】
FCC転化条件は約500℃〜約595℃、好ましくは約520℃〜約565℃、そして最も好ましくは約530℃〜約550℃のライザー上部の温度、約3〜約12、好ましくは約4〜約11、そして最も好ましくは約5〜約10の触媒/油の重量比並びに約0.5〜約15秒、好ましくは約1〜約10秒の触媒滞留時間を包含する。
【0035】
本発明の触媒は触媒単独として、又は通常の大孔径分子ふるい成分を使用する分解工程に対する添加剤として適する。同様なことが分解工程以外の工程にも適用される。添加剤として使用される時は、本発明の触媒は典型的には、総触媒量の約0.1重量%〜30重量%の量で、そしてより典型的には、総量の約1重量%〜15重量%の量で存在する。分解触媒は有効粒径中、約7オングストロームを超える孔径を有する大孔径をもつ物質である。通常の大孔径分子ふるいはゼオライトX(米国特許第2,882,442号明細書)、REX、ゼオライトY(米国特許第3,130,007号明細書)、Ultrastable Y(USY)(米国特許第3,449,070号明細書)、Rare Earth exchanged Y(REY)(米国特許第4,415,438号明細書)、Rare Earth exchanged USY(REUSY)、Dealuminated Y(DeAl Y)(米国特許第3,442,792号及び第4,331,694号明細書)、Ultrahydrophobic Y(UHPY)(米国特許第4,401,556号明細書)及び/又は脱アルミン酸塩シリコン−添加ゼオライト、例えば、LZ−210(米国特許第4,678,765号明細書)を包含する。好ましいものはゼオライトYのより高いシリカ形態である。ZSM−20(米国特許第3,972,983号明細書)、ゼオライトBeta(米国特許第3,308,069号明細書),ゼオライトL(米国特許第3,216,789号及び4,701,315号明細書)及び、フォージャサイト、モルデナイト等のような天然に存在するゼオライトもまた、使用することができる(括弧内の前記の特許はすべて引用により本明細書に取り入れられている)。これらの物質は安定性を増加させるために希土類を含浸又はイオン交換のような通常の処理を受けることができる。近年の商業的慣行においては、大部分の分解触媒はこれらの大孔径分子ふるいを含有する。これら前記のリストのうちで好ましい分子ふるいはゼオライトY、より好ましくはREY、USY又はREUSYである。Engelhard Corp.からのNapthaMax(R)触媒は特に適した大孔径触媒である。これらのゼオライトの製法は当該技術分野で知られている。
【0036】
他の大孔径結晶分子ふるいは柱状シリケート及び/又は粘土、アルミノホスフェート(例えばALPO4−5、ALPO4−8、VPI−5)、シリコアルミノホスフェート(例えばSAPO−5、SAPO−37、SAPO−40、MCM−9)及び他の金属のアルミノホスフェートを包含する。分子ふるいとしての使用のためのメソ細孔(mesoporous)結晶物質はMCM−41を包含する。これらはそれぞれ、引用により本明細書に取り込まれている、米国特許第4,310,440号、第4,440,871号、第4,554,143号、第4,567,029号、第4,666,875号、第4,742,033号、第4,880,611号、第4,859,314号、第4,791,083号、第5,102,643号及び第5,098,684号明細書に様々に記載されている。
【0037】
大孔径分子ふるい触媒成分はまた、例えば摩耗抵抗性、安定性、金属不動態化及びコークス生成減少のような概括的にそれらに起因される任意の機能のためにリン又はリン化合物を包含することができる。
【実施例1】
【0038】
本発明に従うZSM−5添加剤の調製は以下のようであった:
26のSiO:Alを有するZSM−5を脱イオン水に添加して、25(重量)%の固形分含有スラリーを得て、90%<3ミクロンの粒度に粉砕した。Premier Millによる粉砕後に得られたスラリーの固形分は17%であった。
【0039】
もう1種のスラリーを、脱イオン水にSasol CatapalTM Bブランドのベーマイトタイプのアルミナを添加することにより調製して、20重量%の固形分を得た。撹拌しながら硝酸を使用してスラリーのpHを4.0に調整することにより、アルミナを分散させた。17%ZSM−5のスラリー5.63kgに、生成された(20.6%固形分)CatapalTM Bスラリー993グラムを添加し、混合した。
【0040】
生成されたZSM−5/アルミナのスラリーに、Nabaltec NabaloxTM 313アルファアルミナ粉末193グラムを撹拌しながら添加した。
【0041】
EngelhardのASP(R)−200カオリンを水中で50%固形分にスラリー化させ、TSPPで分散させた。カオリンのスラリーの一部(1743グラム)を高剪断ミキサーを使用して、混合ZSM−5/アルミナのスラリーに添加した。
【0042】
ZSM−5/アルミナ/カオリンのスラリーを、最終生成物上に12%Pを目標とするために、0.169の酸/スラリー比でインラインのミキサーにより28%オルソリン酸溶液の計量添加により圧力ノズル噴霧乾燥機を使用して微粒子に噴霧乾燥させた。
【0043】
噴霧乾燥した生成物を1.5〜2インチ(3.81〜5.08cm)の床深度で30分間1250°F(677℃)でマッフル焼結した。微粒子の組成は下記の表1に示す。
【比較例1】
【0044】
調製:
上記の実施例1中で使用され、そして26のSiO:Alを有するZSM−5を脱イオン水に添加して、25%(重量)固形分のスラリーを得て、90%<3ミクロンの粒度に粉砕した。Premiere Millによる粉砕後、生成されたスラリーの固形分含量は19.9%であった。
【0045】
もう1種のスラリーを、脱イオン水にSasol CatapalTM Bブランドのベーマイトタイプのアルミナを添加することにより調製して、22重量%の固形分を得た。混合しながら硝酸を使用してスラリーのpHを4.0に調整することにより、アルミナを分散させた。19.9%ZSM−5のスラリー4.86kgに、生成された(22.3%固形分)CatapalTM Bスラリー920グラムを添加し、混合した。
【0046】
EngelhardのASP(R)−200カオリンを54%固形分まで水中でスラリー化させ、TSPPで分散させた。カオリンのスラリーの一部(2043グラム)を高剪断ミキサーを使用して、混合ZSM−5/アルミナのスラリーに添加した。
【0047】
ZSM−5/アルミナ/カオリンのスラリーを、最終生成物上に12%Pを目標とするために、0.162の酸/スラリー比でインラインのミキサーにより28%オルソ
リン酸溶液の計量添加により圧力ノズル噴霧乾燥機を使用して微粒子に噴霧乾燥させた。
【0048】
噴霧乾燥した生成物を1.5〜2インチ(3.81〜5.08cm)の床深度で30分間1250°F(677℃)でマッフル焼結した。微粒子の組成は下記の表1に示す。
【比較例2】
【0049】
25重量%のZSM−5を含有する市販のEngelhard FCC触媒添加剤を用意した。市販の微粒子の組成は以下の表1に示す。
【0050】
【表1】

【実施例2】
【0051】
前記の噴霧乾燥ZSM−5添加剤の化学的特性及びプロピレン形成のためのそれらの活性を表2に示す。
【0052】
【表2】

【0053】
有意に高いレベルのZSM−5が提供されたが、アルファ−アルミナを伴わない比較例1に対して、アルファ−アルミナを含有する実施例1の微粒子は改善したローラー摩耗を有し、そして比較例2と同等な摩耗抵抗性を有したことを認めることができる。
【0054】
プロピレン収率はガス油供給物を使用してACE流動床炭化水素分解装置上で測定した。使用された触媒は90%FCC触媒(ゼオライトYを含有)、実施例1及び比較例1の3%添加剤又は比較例2の添加剤4.8%(他の実施例に比較してブレンド中の等しいZSM−5含量を達成するため)並びに残りの不活性カオリン微粒子からなった。すべての触媒成分及び添加剤を試験前に4時間/100%蒸気で、1500°F(816℃)で蒸気をあてた。75重量%転化率におけるベースラインのプロピレン(添加剤を含まない)の収率は5.0重量%のプロピレン収率を与えた。Propylen Deltaを実施例の触媒のプロピレン収率からベースラインのプロピレンの収率(5%)を差し引くことにより計算した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)中程度の孔径のゼオライトを少なくとも約30重量%、(b)Pとして測定された約3〜15重量%のリン、(c)約15〜45重量%のカオリン、(d)50m/g未満のBET表面積及び2.8g/ccを超える密度を有する非反応性成分並びに(e)場合により反応性アルミナ、を含んでなる触媒。
【請求項2】
ゼオライト(a)が少なくとも約40重量%の量で存在するZSM−5である請求項1記載の触媒。
【請求項3】
非反応性成分(d)がアルファ−アルミナである請求項1記載の触媒。
【請求項4】
添加されたアルミナ(d)及び(e)が10重量%を超える量で存在する請求項3記載の触媒。
【請求項5】
(a)中程度の孔径のゼオライト、50m/g未満のBET表面積及び2.8g/ccを超える密度を有する非反応性成分並びに場合により反応性アルミナ、を含んでなる水性スラリーを調製する工程、(b)該スラリー(a)を少なくとも50重量%の固体を含有する含水カオリン水性スラリーと混合する工程、(c)噴霧乾燥機の近位で又はそこで混合スラリー(b)中にリン酸を注入する工程並びに(d)生成されるスラリーを噴霧乾燥し、焼成して、該ゼオライトを少なくとも30重量%含有する粒状物を生成する工程、を含んでなる、触媒を調製する方法。
【請求項6】
工程(a)の非反応性成分がアルファ−アルミナである請求項5記載の方法。
【請求項7】
ゼオライトがZSM−5であり、そして粒状物の総重量の少なくとも約40%の量で存在する請求項5記載の方法。
【請求項8】
(a)少なくとも約30重量%の中程度の孔径のゼオライト、(b)Pとして測定された約3〜15重量%のリン、(c)約15〜45重量%のカオリン、(d)50m/g未満のBET表面積及び2.8g/ccを超える密度を有する非反応性成分並びに(e)場合により反応性アルミナ、を含んでなる触媒と、接触反応条件下で供給物を接触させる工程を含んでなる、炭化水素供給物を化学的にそして接触的に反応させる方法。
【請求項9】
(d)がアルファ−アルミナであり、そして添加されたアルミナ(d)及び(e)が10重量%を超える量で該触媒中に存在する請求項8記載の方法。
【請求項10】
該方法からエチレン及び/又はプロピレンを回収する工程を更に含んでなる請求項8記載の方法。

【公表番号】特表2007−534485(P2007−534485A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−510800(P2007−510800)
【出願日】平成17年4月19日(2005.4.19)
【国際出願番号】PCT/US2005/013516
【国際公開番号】WO2005/110597
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(591044371)エンゲルハード・コーポレーシヨン (43)
【氏名又は名称原語表記】ENGELHARD CORPORATION
【Fターム(参考)】