ZnPd系微粒子およびその製造方法
【課題】ZnPd合金はメタノール水蒸気改質触媒として期待されている。そこで、さらに触媒能を高くするためにZnPdの微粒子が望ましい。しかし、ZnPdの微粒子はZn2+イオンの還元が難しいことから技術的に実現することが困難であった。
【解決手段】有機配位子存在下にて亜鉛または亜鉛錯体とパラジウム錯体との混合物を還元することによりパラジウムと亜鉛とを含有する長径1nmから100nmである亜鉛パラジウム微粒子を実現した。
【解決手段】有機配位子存在下にて亜鉛または亜鉛錯体とパラジウム錯体との混合物を還元することによりパラジウムと亜鉛とを含有する長径1nmから100nmである亜鉛パラジウム微粒子を実現した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ZnPd系微粒子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代のクリーンエネルギーとして世界的に期待されている燃料に水素ガスがある。水素ガスを大規模に発生させ需要先に配管して供給するシステムも考えられるが、巨額の設備投資を要するという問題がある。そこで、配送に適するメタノールを原料として固体高分子形燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cells 以下「PEFC」という。)に燃料となる水素ガスH2を効率よく供給する方法として、メタノールの水蒸気改質(CH3OH+H2O→3H2+CO2)による方法が知られている。
【0003】
従来のメタノールの水蒸気改質用触媒としては、Cu/ZnOが紹介されている(例えば、非特許文献1参照)。また、銅とマンガンとを含有する触媒も提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、銅の酸化による触媒活性の低下に問題がある。
【0004】
一方、Pd/ZnO系触媒が高い触媒能と熱安定性を示すことが知られており、その高い触媒効果は反応の還元雰囲気下で生成したZnPd合金であるとの報告がある(例えば、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−188298号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】John P.Breen、他1名「Methanol reforming for fuel−cell applications:development of zirconia−containing Cu−Zn−Al catalysts」Catalysis Today 51(1999)521−533
【非特許文献2】N.Iwasa、他3名「Steam reforming of methanol over Pd/ZnO:Effect of the formation of PdZn alloys upon the reaction」Applied Catalysis A:General 125(1995)145−157
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようにZnPd合金はメタノール水蒸気改質触媒として期待されている。さらに触媒能を高くするためにZnPdの微粒子が望ましい。しかし、ZnPdの微粒子はZn2+イオンの還元が難しいことから技術的に実現することが困難であった。本発明は、ZnPd系微粒子およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果有機配位子存在下にて亜鉛または亜鉛錯体とパラジウム錯体との混合物を還元することにより微粒子を製造することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
この製造方法によれば、有機配位子存在下にて亜鉛または亜鉛錯体とパラジウム錯体との混合物を還元するので、亜鉛または亜鉛錯体とパラジウム錯体が混合によりそれぞれが分散してよく混ざり合う。その結果、亜鉛原子または亜鉛イオンとパラジウムイオンが近接し、これを還元することにより結合して亜鉛パラジウム微粒子が生成される。生成された亜鉛パラジウム微粒子は、付着した有機配位子に隔てられて粒子が大きくなるのを抑制することができる。また、亜鉛または亜鉛錯体とパラジウム錯体と有機配位子のモル比を適切に選定することにより、所定の大きさの亜鉛パラジウム微粒子を製造することができる。
【0010】
ここで、有機配位子とは、金属に結合する有機化合物であり、例えば、オレイン酸、オレイルアミンが望ましい。パラジウム錯体には、例えば、パラジウムアセチルアセトナト錯体Pd(acac)2を使うことができる。亜鉛には、例えば、亜鉛粉末を使用することができ、亜鉛錯体には、例えば、酢酸亜鉛を用いることができる。
【0011】
この発明の製造方法で得られた亜鉛パラジウム微粒子は、パラジウムと亜鉛とを含有する長径1nmから100nmである亜鉛パラジウム微粒子であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来は、Zn2+イオンの還元が難しいことから技術的に実現することが困難であるとされた亜鉛パラジウム微粒子を実現することができる。また、原材料のモル比、加熱温度、加熱時間をコントロールすることにより、各種のモル比率が異なり、大きさも異なる亜鉛パラジウム微粒子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る亜鉛パラジウム微粒子の製造方法を示すフローチャートである。
【図2】本発明の別の実施形態に係るインジェクション方式の亜鉛パラジウム微粒子の製造方法を示すフローチャートである。
【図3】本発明に係る亜鉛パラジウム微粒子の製造方法を示す概念図である。
【図4】本発明の亜鉛パラジウム微粒子の製造法を用いて材料のモル比、加熱温度を変えて製造した試料の試料番号と生成した亜鉛パラジウム微粒子の測定データを示す図である。
【図5】本発明に係る亜鉛パラジウム微粒子(試料番号8)の1例を透過型電子顕微鏡で撮像した写真である。
【図6】本発明に係る亜鉛パラジウム微粒子(試料番号8)をX線回折装置で測定したパターン図である。
【図7】本発明に係る亜鉛パラジウム微粒子(試料番号1)を透過型電子顕微鏡で撮像した写真である。
【図8】本発明に係る亜鉛パラジウム微粒子(試料番号2)を透過型電子顕微鏡で撮像した写真である。
【図9】本発明に係る亜鉛パラジウム微粒子(試料番号3)を透過型電子顕微鏡で撮像した写真である。
【図10】本発明に係る亜鉛パラジウム微粒子(試料番号11)を透過型電子顕微鏡で撮像した写真である。
【図11】本発明に係る亜鉛パラジウム微粒子(試料番号1、2、3、11)をX線回折装置で測定したパターン図である。
【図12】本発明に係る亜鉛パラジウム微粒子の別の製造方法を示す概念図である。
【図13】本発明の別の製造方法による亜鉛パラジウム微粒子(試料番号I1)を透過型電子顕微鏡で撮像した写真である。
【図14】本発明の別の製造方法による亜鉛パラジウム微粒子(試料番号I2)を透過型電子顕微鏡で撮像した写真である。
【図15】本発明の別の製造方法による亜鉛パラジウム微粒子(試料番号I1、試料番号I2)をX線回折装置で測定したパターン図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明をする。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る亜鉛パラジウム微粒子の製造方法を示すフローチャートである。本実施形態では、まず、亜鉛の原料となる亜鉛粉末と、パラジウムの原料となるパラジウム錯体と、生成後の亜鉛パラジウム微粒子の粒子が肥大になるのを防ぐ有機配位子と、を所定のモル比で混合する(混合工程)。混合後、有機配位子の融点以上かつ沸点未満の温度で加熱・攪拌して混合液を調製する(調製工程)。調製後、その混合液を320℃以上かつ350℃以下の温度で所定時間加熱・攪拌して混合液中に亜鉛パラジウム微粒子を生成させる(亜鉛パラジウム微粒子生成工程)。生成された亜鉛パラジウム微粒子を精製する(精製工程)ことにより、亜鉛パラジウム微粒子を得る。
【0016】
以下それぞれの工程に分けて説明する。
【0017】
[混合工程]
本実施形態に係る混合工程は、まず亜鉛とパラジウム錯体と有機配位子とを所定のモル比で準備し容器に入れた後混合する。亜鉛は亜鉛粉末によることが望ましい。粉末粒子の大きさは通常亜鉛粉末として市販されているものを使用することができる。また、亜鉛の粒上の粒子でもよい。パラジウム錯体は、パラジウムアセチルアセトナト錯体(Pd(acac)2)が望ましいが、他のパラジウム錯体であってもよい。例えば、塩化パラジウム、酢酸パラジウムなどを使用することができる。有機配位子とは有機化合物で金属に結合する物であり、オレイン酸、オレイルアミンが望ましい。他の有機配位子として、ステアリン酸、パルチミン酸、ミリスチン酸、ステアリルアミン、ミリスチルアミン、アダマンチルアミンを使用することもできる。
【0018】
これらの発明を実施するための形態では、亜鉛または亜鉛錯体における亜鉛原子とパラジウム錯体におけるパラジウム原子とのモル比を15対1から40対1とするのが望ましい。
【0019】
この発明を実施するための望ましい形態では、材料の亜鉛原子とパラジウム原子のモル比を15対1から40対1とすることにより、亜鉛のモル比率の異なる各種の亜鉛パラジウム微粒子を製造することができる。
【0020】
[調製工程]
その後、容器を外気と遮断して、窒素ガス(N2)または不活性ガスで(以下「窒素ガス等」という。)置換する。不活性ガスとしてはヘリウム、アルゴン、キセノン等を使用することができる。窒素ガス等に置換後減圧して、使用した有機配位子が液化して混合しやすくなる温度に加熱し攪拌して混合液を調製する。
【0021】
[亜鉛パラジウム微粒子生成工程]
調製された混合液の入っている容器の内部を窒素ガス等で再度置換する。再度置換後素早く320℃以上かつ350℃以下の温度に上げる。その後、320℃以上かつ350℃以下の温度で所定時間加熱・攪拌して混合液中に亜鉛パラジウム微粒子を生成させる。所定の時間は30分から120分の間が亜鉛パラジウムナノ粒子を製造する点で望ましい。
【0022】
[精製工程]
精製工程は、混合液に含まれる生成された亜鉛パラジウム微粒子を取り出す工程である。具体的な一例としては、亜鉛パラジウム微粒子生成工程を終了した混合液を冷却し、溶媒を容器に注入して生成された亜鉛パラジウム微粒子に分散させる。溶媒はヘキサンによることが望ましいが、他の溶媒でもよい。その後、炭素数1から6のアルコールを亜鉛パラジウム微粒子の溶液に加えて沈殿させる。アルコールはエタノールによるのが望ましい。その沈殿物を再度溶媒(例えば、ヘキサン)に分散させる。分散させた液をフィルターでろ過して亜鉛パラジウム微粒子を得る。フィルターでろ過する代わりに遠心分離機を用いてもよい。
【0023】
上記の製造方法によりパラジウムと亜鉛とを含有する長径1nmから100nmである亜鉛パラジウム微粒子が得られる。
【0024】
上記の亜鉛パラジウム微粒子は亜鉛のモル比率が10%から90%である。さらに、これらの亜鉛パラジウム微粒子は主に亜鉛パラジウム合金微粒子であり、上記のようにメタノール改質触媒として使用した場合に触媒能の高い亜鉛パラジウム合金ナノ粒子を得ることができる。亜鉛パラジウム合金ナノ粒子をメタノール改質触媒として用いた場合は長径100nmから1nmが望ましく、さらに望ましくは長径10nmから1nmである。
【0025】
以下、本発明の別の実施形態について、図面を参照しながら説明をする。
【0026】
図2は、本発明の別の実施形態に係るインジェクション方式の亜鉛パラジウム微粒子の製造方法を示すフローチャートである。
【0027】
この発明を実施するための別の実施形態は、あらかじめ、亜鉛錯体と有機配位子と還元剤とを混合した亜鉛混合液(亜鉛混合液調製工程)に、パラジウム錯体と有機配位子と還元剤とを混合したパラジウム錯体混合液(パラジウム錯体混合液調製工程)を添加し(インジェクション工程)、320℃以上かつ350℃以下の温度で所定時間加熱・攪拌して亜鉛パラジウム微粒子を生成させる(亜鉛パラジウム微粒子生成工程)。生成された亜鉛パラジウム微粒子を精製する(精製工程)ことにより、亜鉛パラジウム微粒子を得る。
【0028】
これは、亜鉛錯体とパラジウム錯体と有機配位子とを同時に混合して加熱すると、これらが沈殿して亜鉛パラジウム微粒子ができないためである。これは、パラジウム錯体が有機配位子中において200℃以下で還元されてしまうのに対して、亜鉛パラジウム合金が240℃から生成されるからである。そこで、別々に溶液を調製して添加して320℃以上かつ350℃以下の温度で所定時間加熱・攪拌して亜鉛パラジウム微粒子を生成させることにより亜鉛パラジウム微粒子を製造する。
【0029】
以下それぞれの工程に分けて説明する。
【0030】
[亜鉛混合液調製工程]
本発明の別の実施形態に係る亜鉛混合液調製工程は、まず亜鉛錯体と有機配位子と還元剤とを所定のモル比準備し容器に入れた後混合する。亜鉛錯体は酢酸亜鉛が望ましいが、塩化亜鉛、ステアリン酸亜鉛等も使用することができる。有機配位子とは有機化合物で金属に結合する物であり、オレイン酸、オレイルアミンが望ましいが、ステアリン酸、パルチミン酸、ミリスチン酸、ステアリルアミン、ミリスチルアミン、アダマンチルアミンを使用することができる。還元剤はジオールによるのが望ましい。さらに望ましくは、1,2−ヘキサデカンジオールであるが、エチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−オクタンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,2−テトラデカンジオールであってもよい。
【0031】
混合した後、外気と遮断できる容器に入れる。窒素ガス等で置換する。窒素ガス等に置換後減圧して、使用した有機配位子が液化して混合しやすくなる温度に加熱し攪拌して亜鉛混合液を調製する。
【0032】
[パラジウム錯体混合液調製工程]
また、パラジウム錯体混合液調製工程は、まずパラジウム錯体と有機配位子と還元剤とを所定のモル比で準備し容器に入れた後、混合する。パラジウム錯体は、パラジウムアセチルアセトナト錯体(Pd(acac)2)が望ましいが、塩化パラジウム、酢酸パラジウム等の他のパラジウム錯体であってもよい。有機配位子は、オレイン酸、オレイルアミンが望ましい。還元剤はジオールによるのが望ましい。さらに望ましくは、1,2−ヘキサデカンジオールであるが、エチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−オクタンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,2−テトラデカンジオールであってもよい。
【0033】
混合した後、混合物を外気と遮断できる容器に入れる。窒素ガス等で置換する。窒素ガス等に置換後減圧して、使用した有機配位子が液化して混合しやすくなる温度に加熱し攪拌してパラジウム錯体混合液を調製する。
【0034】
[インジェクション工程]
調製された亜鉛混合液の入っている容器の内部を窒素ガス等で再度置換する。その後、270℃から320℃まで加熱する。一方、調製されたパラジウム錯体混合液の入っている容器の内部を窒素ガス等で再度置換する。その後、80℃から120℃まで加熱する。加熱されたパラジウム錯体混合液を亜鉛混合液の入っている容器に添加する。
【0035】
[亜鉛パラジウム微粒子生成工程]
添加後混合液を320℃以上かつ350℃以下の温度に上げる。その後、320℃以上かつ350℃以下の温度で所定時間加熱・攪拌して混合液中に亜鉛パラジウム微粒子を生成させる。所定の時間は30分から120分の間が亜鉛パラジウムナノ粒子製造する点で望ましい。
【0036】
[精製工程]
精製工程は、上記で説明したのと同様であるので説明を省略する。
【0037】
以上の様にして別の実施形態にても、上記で説明したのと同様な亜鉛パラジウム微粒子を生成することができる。なお、還元剤は亜鉛混合液かパラジウム錯体混合液のどちらか一方にのみ入れることでも亜鉛パラジウム微粒子を製造することができる。
【0038】
上記のように亜鉛パラジウム合金がメタノールの水蒸気改質に用いられる触媒として有望である。一般的に触媒は表面積が大きくなるほど化学反応の速度が向上し触媒効果を大きくすることが期待できる。従来、亜鉛パラジウム合金から微粒子を製造する方法として、粉砕機を用いる方法がある。亜鉛パラジウム合金の固体から機械的に粉砕するという方法で、硬いボールで粉砕するボールミル粉砕機や高圧空気や液体で粉砕するジェットミルなどが知られている。しかし、これらは粉砕の限界が通常長径1000nm程度であり、しかも粒の大きさが不ぞろいであり、鉄などの不純物も混じるという問題があった。
【0039】
一方、触媒として用いる場合は、対象となる有機化合物の衝突断面積が0.64nm2から0.88nm2程度(例えば、アトキンス物理化学(上)A16表1−3参照)であるので、長径1nm程度であると考えられる。
【0040】
長径1nmから100nmの亜鉛パラジウム微粒子は、上記で述べた製造方法により初めて実現することができた。触媒としては長径1nmから40nmが望ましく、さらに望ましくは、長径1nmから10nmである。
【0041】
また、亜鉛パラジウム微粒子は、触媒としては亜鉛パラジウム合金が望ましい。これは、触媒として亜鉛に付着する分子とパラジウムに付着する分子とが反応しやすいからである。なお、合金でなく、例えば亜鉛パラジウム合金化が不十分であっても、合金より若干劣るが同様な効果を発すると考えられる。
【0042】
以下、本発明の実施例について図を参照しながら説明する。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
【実施例】
【0043】
<実施例1>
図3は、本発明に係る亜鉛パラジウム微粒子の製造方法を示す概念図である。図4は、本発明の亜鉛パラジウム微粒子の製造法を用いて材料のモル比、加熱温度を変えて製造した試料の試料番号と生成した亜鉛パラジウム微粒子の測定データを示す図である。図5は、本発明に係る亜鉛パラジウム微粒子(試料番号8)の1例を透過型電子顕微鏡で撮像した写真である。図6は、本発明に係る亜鉛パラジウム微粒子(試料番号8)をX線回折装置で測定したパターン図である。図7から図10は、本発明に係る亜鉛パラジウム微粒子(試料番号1、2、3、11)を透過型電子顕微鏡で撮像した写真である。図11は、本発明に係る亜鉛パラジウム微粒子(試料番号1、2、5、13)をX線回折装置で測定したパターン図である。
【0044】
試料番号8の亜鉛パラジウム微粒子は、図3に示す製造方法で、図4の試料番号8に示す材料と条件により製造された。図3ならびに図4に示すように、調製工程において、亜鉛粉末7.5mmolとパラジウム錯体であるパラジウムアセチルアセトナ錯体(Pd(acac)2)0.5mmolと有機配位子であるオレイルアミン(Oleylamine)5mmolとオレイン酸(Oleic acid)5mmolとを混合する。
【0045】
混合した後、窒素下の80℃で10分加熱と攪拌をする。その後330℃まですばやく昇温し、温度を330℃に60分間保ちつつ攪拌により、混合液中に亜鉛パラジウム微粒子を生成させる。生成された亜鉛パラジウム微粒子を含む混合液を60分間冷却後、ヘキサンを容器に注入して生成された亜鉛パラジウム微粒子をヘキサンの上澄み液に分散させる。図3に示すように、エタノールにその上澄み液を加えると生成した亜鉛パラジウム微粒子が沈殿する。その沈殿物を再度溶媒(例えば、ヘキサン)に分散させる。分散させた液をフィルターでろ過して亜鉛パラジウム微粒子を得る。
【0046】
このようにして図5に示すような、単分散で粒子の大きさがそろいアスペクト比が一定な亜鉛パラジウム合金微粒子を製造することができる。
【0047】
図5に見られるように、形状は四角く整っていた。粒子の形状もほぼ均一なものが得られた。100粒の形状を測定したところ、横が6.2±0.8nmであり、縦が5.6±0.6nmであった。また、縦横のアスペクト比(Aspect ratio)も1.1±0.1とそろっていた。
【0048】
試料番号8の粒子は、図6に示すように、X線回折装置で測定したところ、亜鉛パラジウム合金のところにピークが出ていることが分かった。したがって、亜鉛パラジウム合金微粒子が形成されていた。また、図4に示すように、蛍光X線分析装置(X−Ray Fluorescence Analysis)により測定したところ亜鉛(Zn)とパラジウム(Pd)のモル比は23対77であった。
【0049】
このようにして生成された亜鉛パラジウム合金微粒子は、10mm角程度の合金に比して表面積が約百万倍大きくなるので、例えばメタノールの水蒸気改質による水素ガスを得るための触媒として使用した場合には、反応速度を著しく向上できる。また、小型で化学反応をする機器を製作することにも貢献する。
【0050】
図3に示す亜鉛パラジウム微粒子の製造方法にて、図4に示すように材料のモル比を変えることと加熱時間を変えることにより各種の亜鉛パラジウム微粒子を生成することができる。図4に示すように、試料番号3の粒子が一番小さく、次に試料番号1が小さかった。これらの透過型電子顕微鏡で撮像した写真を図7と図9に示す。これらの図から明らかなように単分散で粒子の大きさもそろっている。
【0051】
粒子の大きなものは、試料番号2と試料番号11である。これらの透過型電子顕微鏡で撮像した写真を図8と図10に示す。試料番号2の生成された粒子は大きさが比較的そろっている。試料番号11では、粒子の大きさがばらついているが、長径が43.5nmの亜鉛パラジウム微粒子も含まれている。触媒として使用する場合に他の構造物との関係で大きな粒子が都合のよい場合には適用することができる。
【0052】
また、試料番号11のような粒子の大きさがばらついている試料から目的とする大きさの粒子を取り出すには精製工程でサイズ選択沈殿(Size Selective Precipitation)を採用すればよい。すなわち、亜鉛パラジウム微粒子をヘキサンに分散させる。一方分散しない亜鉛パラジウム微粒子はエタノールを入れて沈殿精製する。ここでエタノールの量を調節することにより、大きさの異なる亜鉛パラジウム微粒子を別々に取り出すことができる。したがって、試料番号11からは、大きな長径43.5nmの亜鉛パラジウム微粒子を取り出すことができる。
【0053】
図11は、これらの試料をX線回折装置で測定したパターン図である。図11に示すように、いずれの試料もX線回折装置で測定したところ、亜鉛パラジウム合金のところにピークが出ていることが分かった。
【0054】
また、図4に示すように、蛍光X線分析装置(XRF)により測定したところ亜鉛(Zn)とパラジウム(Pd)のモル比は、一番小さいのが試料番号3の11対86であり、一番大きいのが試料番号2の83対17であった。この事実より、亜鉛原子のモル比率が10%から90%まで粒子を製造できると考えられる。
【0055】
亜鉛パラジウム微粒子の亜鉛とパラジウムのモル比率については、図4の試料番号5から試料番号7に示すように、有機配位子であるオレイルアミンおよびオレイン酸の当量が少ないほど生成された亜鉛パラジウム微粒子の亜鉛のモル百分率が増加傾向にある。
【0056】
また、亜鉛パラジウム微粒子の粒子の大きさについては、図4の試料番号5から試料番号7に示すように、有機配位子であるオレイルアミンおよびオレイン酸の当量が少ないほど生成された亜鉛パラジウム微粒子の平均粒子寸法が5.7nmから6.2nmと大きくなる傾向にある。また、亜鉛とパラジウム錯体と有機配位子とのモル比を一定にして、亜鉛パラジウム微粒子を生成させる工程での加熱時間を30分から120分に変化させることにより亜鉛パラジウム微粒子の平均粒子寸法が6.0nmから10.0nmと大きくなる傾向にある(図4の試料番号7から試料番号10参照)。
【0057】
このようにして、有機配位子の当量を適切に選択し、加熱時間を調製することにより、粒子の大きさについてコントロールすることができ、アスペクト比と粒子の大きさとのばらつきが少ない亜鉛パラジウム微粒子を製作することができる。
【0058】
〈実施例2〉
実施例2は、あらかじめ、亜鉛錯体を有機配位子と還元剤とを所定のモル比で混合した亜鉛混合液に、パラジウム錯体と有機配位子と還元剤とを所定のモル比で混合したパラジウム錯体混合液を添加し、320℃以上かつ350℃以下の温度で所定時間加熱・攪拌して亜鉛パラジウム微粒子を生成させることによる亜鉛パラジウム微粒子の製造方法である。
【0059】
図12は、本発明に係る亜鉛パラジウム微粒子の別の製造方法を示す概念図である。図13と図14は、本発明の別の製造方法による亜鉛パラジウム微粒子(試料番号I1、試料番号I2)を透過型電子顕微鏡で撮像した写真である。図15は、本発明の別の製造方法による亜鉛パラジウム微粒子(試料番号I1、試料番号I2)をX線回折装置で測定したパターン図である。
【0060】
図12に示すように、亜鉛錯体である酢酸亜鉛を有機配位子であるオレイルアミンとオレイン酸と還元剤である1,2−ヘキサデカンジオールを所定のモル比で混合する。その後窒素ガス等で置換下の80℃で10分以上加熱してよく混ぜ合わせ、300℃まで加熱・攪拌して亜鉛混合液を調製する。
【0061】
一方、パラジウム錯体であるパラジウムアセチルアセトナト錯体と有機配位子であるオレイルアミンとオレイン酸と還元剤還元剤である1,2−ヘキサデカンジオールを所定のモル比で準備し容器に入れて混合する。その後、容器を外気と遮断した後、窒素ガス等で置換する。窒素ガス等に置換後減圧して、80℃で10分以上加熱・攪拌してパラジウム錯体混合液を調製する。
【0062】
調製された亜鉛混合液の入っている容器の内部を窒素ガス等で再度置換する。その後、300℃まで加熱する。一方、調製されたパラジウム錯体混合液の入っている容器の内部を窒素ガス等で再度置換する。その後、100℃まで加熱する。加熱されたパラジウム錯体混合液を亜鉛混合液の入っている容器に添加する。
【0063】
添加後混合液を330℃温度に上げ所定時間加熱・攪拌して混合液中に亜鉛パラジウム微粒子を生成させる。生成された亜鉛パラジウム微粒子を実施例1と同様な精製工程により精製する。
【0064】
試料番号I1では、亜鉛混合液には、亜鉛錯体である酢酸亜鉛を0.1mmolと、有機配位子であるオレイルアミン5.0mmolと、オレイン酸5.0mmolと還元剤である1,2−ヘキサデカンジオール2.0mmolと、を使用した。また、パラジウム錯体混合液にはパラジウム錯体であるパラジウムアセチルアセトナト錯体0.5mmolと、と有機配位子であるオレイルアミン5.0mmolと、オレイン酸5.0mmolと、を使用し、還元剤は使用しなかった。
【0065】
試料番号I2では、亜鉛混合液には、亜鉛錯体である酢酸亜鉛を0.1mmolと、有機配位子であるオレイルアミン5.0mmolと、オレイン酸5.0mmolとを使用し、還元剤は使用しなかった。また、パラジウム錯体混合液にはパラジウム錯体であるパラジウムアセチルアセトナト錯体0.5mmolと、と有機配位子であるオレイルアミン5.0mmolと、オレイン酸5.0mmolと、還元剤である1,2−ヘキサデカンジオール2.0mmolと、を使用した。
【0066】
この試料番号の透過型電子顕微鏡で撮像した写真を図13と図14に示す。図13と図14に示すように、実施例1と同様な、単分散で粒子の大きさがそろいアスペクト比が一定な亜鉛パラジウム微粒子を製造することができた。
【0067】
図15は、これらの試料をX線回折装置で測定したパターン図である。図15に示すように、いずれの試料もX線回折装置で測定したところ、亜鉛パラジウム合金のところにピークが出ており、亜鉛パラジウム合金微粒子であることが分かった。したがって、この製造方法によっても亜鉛パラジウム合金微粒子を製造することができた。
【0068】
以上、本発明の実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることができる。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。例えば、亜鉛パラジウム合金微粒子について主に説明をしたが、合金のみならずその他の亜鉛とパラジウムを含有する微粒子にも同様に対応することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ZnPd系微粒子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代のクリーンエネルギーとして世界的に期待されている燃料に水素ガスがある。水素ガスを大規模に発生させ需要先に配管して供給するシステムも考えられるが、巨額の設備投資を要するという問題がある。そこで、配送に適するメタノールを原料として固体高分子形燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cells 以下「PEFC」という。)に燃料となる水素ガスH2を効率よく供給する方法として、メタノールの水蒸気改質(CH3OH+H2O→3H2+CO2)による方法が知られている。
【0003】
従来のメタノールの水蒸気改質用触媒としては、Cu/ZnOが紹介されている(例えば、非特許文献1参照)。また、銅とマンガンとを含有する触媒も提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、銅の酸化による触媒活性の低下に問題がある。
【0004】
一方、Pd/ZnO系触媒が高い触媒能と熱安定性を示すことが知られており、その高い触媒効果は反応の還元雰囲気下で生成したZnPd合金であるとの報告がある(例えば、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−188298号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】John P.Breen、他1名「Methanol reforming for fuel−cell applications:development of zirconia−containing Cu−Zn−Al catalysts」Catalysis Today 51(1999)521−533
【非特許文献2】N.Iwasa、他3名「Steam reforming of methanol over Pd/ZnO:Effect of the formation of PdZn alloys upon the reaction」Applied Catalysis A:General 125(1995)145−157
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようにZnPd合金はメタノール水蒸気改質触媒として期待されている。さらに触媒能を高くするためにZnPdの微粒子が望ましい。しかし、ZnPdの微粒子はZn2+イオンの還元が難しいことから技術的に実現することが困難であった。本発明は、ZnPd系微粒子およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果有機配位子存在下にて亜鉛または亜鉛錯体とパラジウム錯体との混合物を還元することにより微粒子を製造することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
この製造方法によれば、有機配位子存在下にて亜鉛または亜鉛錯体とパラジウム錯体との混合物を還元するので、亜鉛または亜鉛錯体とパラジウム錯体が混合によりそれぞれが分散してよく混ざり合う。その結果、亜鉛原子または亜鉛イオンとパラジウムイオンが近接し、これを還元することにより結合して亜鉛パラジウム微粒子が生成される。生成された亜鉛パラジウム微粒子は、付着した有機配位子に隔てられて粒子が大きくなるのを抑制することができる。また、亜鉛または亜鉛錯体とパラジウム錯体と有機配位子のモル比を適切に選定することにより、所定の大きさの亜鉛パラジウム微粒子を製造することができる。
【0010】
ここで、有機配位子とは、金属に結合する有機化合物であり、例えば、オレイン酸、オレイルアミンが望ましい。パラジウム錯体には、例えば、パラジウムアセチルアセトナト錯体Pd(acac)2を使うことができる。亜鉛には、例えば、亜鉛粉末を使用することができ、亜鉛錯体には、例えば、酢酸亜鉛を用いることができる。
【0011】
この発明の製造方法で得られた亜鉛パラジウム微粒子は、パラジウムと亜鉛とを含有する長径1nmから100nmである亜鉛パラジウム微粒子であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来は、Zn2+イオンの還元が難しいことから技術的に実現することが困難であるとされた亜鉛パラジウム微粒子を実現することができる。また、原材料のモル比、加熱温度、加熱時間をコントロールすることにより、各種のモル比率が異なり、大きさも異なる亜鉛パラジウム微粒子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る亜鉛パラジウム微粒子の製造方法を示すフローチャートである。
【図2】本発明の別の実施形態に係るインジェクション方式の亜鉛パラジウム微粒子の製造方法を示すフローチャートである。
【図3】本発明に係る亜鉛パラジウム微粒子の製造方法を示す概念図である。
【図4】本発明の亜鉛パラジウム微粒子の製造法を用いて材料のモル比、加熱温度を変えて製造した試料の試料番号と生成した亜鉛パラジウム微粒子の測定データを示す図である。
【図5】本発明に係る亜鉛パラジウム微粒子(試料番号8)の1例を透過型電子顕微鏡で撮像した写真である。
【図6】本発明に係る亜鉛パラジウム微粒子(試料番号8)をX線回折装置で測定したパターン図である。
【図7】本発明に係る亜鉛パラジウム微粒子(試料番号1)を透過型電子顕微鏡で撮像した写真である。
【図8】本発明に係る亜鉛パラジウム微粒子(試料番号2)を透過型電子顕微鏡で撮像した写真である。
【図9】本発明に係る亜鉛パラジウム微粒子(試料番号3)を透過型電子顕微鏡で撮像した写真である。
【図10】本発明に係る亜鉛パラジウム微粒子(試料番号11)を透過型電子顕微鏡で撮像した写真である。
【図11】本発明に係る亜鉛パラジウム微粒子(試料番号1、2、3、11)をX線回折装置で測定したパターン図である。
【図12】本発明に係る亜鉛パラジウム微粒子の別の製造方法を示す概念図である。
【図13】本発明の別の製造方法による亜鉛パラジウム微粒子(試料番号I1)を透過型電子顕微鏡で撮像した写真である。
【図14】本発明の別の製造方法による亜鉛パラジウム微粒子(試料番号I2)を透過型電子顕微鏡で撮像した写真である。
【図15】本発明の別の製造方法による亜鉛パラジウム微粒子(試料番号I1、試料番号I2)をX線回折装置で測定したパターン図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明をする。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る亜鉛パラジウム微粒子の製造方法を示すフローチャートである。本実施形態では、まず、亜鉛の原料となる亜鉛粉末と、パラジウムの原料となるパラジウム錯体と、生成後の亜鉛パラジウム微粒子の粒子が肥大になるのを防ぐ有機配位子と、を所定のモル比で混合する(混合工程)。混合後、有機配位子の融点以上かつ沸点未満の温度で加熱・攪拌して混合液を調製する(調製工程)。調製後、その混合液を320℃以上かつ350℃以下の温度で所定時間加熱・攪拌して混合液中に亜鉛パラジウム微粒子を生成させる(亜鉛パラジウム微粒子生成工程)。生成された亜鉛パラジウム微粒子を精製する(精製工程)ことにより、亜鉛パラジウム微粒子を得る。
【0016】
以下それぞれの工程に分けて説明する。
【0017】
[混合工程]
本実施形態に係る混合工程は、まず亜鉛とパラジウム錯体と有機配位子とを所定のモル比で準備し容器に入れた後混合する。亜鉛は亜鉛粉末によることが望ましい。粉末粒子の大きさは通常亜鉛粉末として市販されているものを使用することができる。また、亜鉛の粒上の粒子でもよい。パラジウム錯体は、パラジウムアセチルアセトナト錯体(Pd(acac)2)が望ましいが、他のパラジウム錯体であってもよい。例えば、塩化パラジウム、酢酸パラジウムなどを使用することができる。有機配位子とは有機化合物で金属に結合する物であり、オレイン酸、オレイルアミンが望ましい。他の有機配位子として、ステアリン酸、パルチミン酸、ミリスチン酸、ステアリルアミン、ミリスチルアミン、アダマンチルアミンを使用することもできる。
【0018】
これらの発明を実施するための形態では、亜鉛または亜鉛錯体における亜鉛原子とパラジウム錯体におけるパラジウム原子とのモル比を15対1から40対1とするのが望ましい。
【0019】
この発明を実施するための望ましい形態では、材料の亜鉛原子とパラジウム原子のモル比を15対1から40対1とすることにより、亜鉛のモル比率の異なる各種の亜鉛パラジウム微粒子を製造することができる。
【0020】
[調製工程]
その後、容器を外気と遮断して、窒素ガス(N2)または不活性ガスで(以下「窒素ガス等」という。)置換する。不活性ガスとしてはヘリウム、アルゴン、キセノン等を使用することができる。窒素ガス等に置換後減圧して、使用した有機配位子が液化して混合しやすくなる温度に加熱し攪拌して混合液を調製する。
【0021】
[亜鉛パラジウム微粒子生成工程]
調製された混合液の入っている容器の内部を窒素ガス等で再度置換する。再度置換後素早く320℃以上かつ350℃以下の温度に上げる。その後、320℃以上かつ350℃以下の温度で所定時間加熱・攪拌して混合液中に亜鉛パラジウム微粒子を生成させる。所定の時間は30分から120分の間が亜鉛パラジウムナノ粒子を製造する点で望ましい。
【0022】
[精製工程]
精製工程は、混合液に含まれる生成された亜鉛パラジウム微粒子を取り出す工程である。具体的な一例としては、亜鉛パラジウム微粒子生成工程を終了した混合液を冷却し、溶媒を容器に注入して生成された亜鉛パラジウム微粒子に分散させる。溶媒はヘキサンによることが望ましいが、他の溶媒でもよい。その後、炭素数1から6のアルコールを亜鉛パラジウム微粒子の溶液に加えて沈殿させる。アルコールはエタノールによるのが望ましい。その沈殿物を再度溶媒(例えば、ヘキサン)に分散させる。分散させた液をフィルターでろ過して亜鉛パラジウム微粒子を得る。フィルターでろ過する代わりに遠心分離機を用いてもよい。
【0023】
上記の製造方法によりパラジウムと亜鉛とを含有する長径1nmから100nmである亜鉛パラジウム微粒子が得られる。
【0024】
上記の亜鉛パラジウム微粒子は亜鉛のモル比率が10%から90%である。さらに、これらの亜鉛パラジウム微粒子は主に亜鉛パラジウム合金微粒子であり、上記のようにメタノール改質触媒として使用した場合に触媒能の高い亜鉛パラジウム合金ナノ粒子を得ることができる。亜鉛パラジウム合金ナノ粒子をメタノール改質触媒として用いた場合は長径100nmから1nmが望ましく、さらに望ましくは長径10nmから1nmである。
【0025】
以下、本発明の別の実施形態について、図面を参照しながら説明をする。
【0026】
図2は、本発明の別の実施形態に係るインジェクション方式の亜鉛パラジウム微粒子の製造方法を示すフローチャートである。
【0027】
この発明を実施するための別の実施形態は、あらかじめ、亜鉛錯体と有機配位子と還元剤とを混合した亜鉛混合液(亜鉛混合液調製工程)に、パラジウム錯体と有機配位子と還元剤とを混合したパラジウム錯体混合液(パラジウム錯体混合液調製工程)を添加し(インジェクション工程)、320℃以上かつ350℃以下の温度で所定時間加熱・攪拌して亜鉛パラジウム微粒子を生成させる(亜鉛パラジウム微粒子生成工程)。生成された亜鉛パラジウム微粒子を精製する(精製工程)ことにより、亜鉛パラジウム微粒子を得る。
【0028】
これは、亜鉛錯体とパラジウム錯体と有機配位子とを同時に混合して加熱すると、これらが沈殿して亜鉛パラジウム微粒子ができないためである。これは、パラジウム錯体が有機配位子中において200℃以下で還元されてしまうのに対して、亜鉛パラジウム合金が240℃から生成されるからである。そこで、別々に溶液を調製して添加して320℃以上かつ350℃以下の温度で所定時間加熱・攪拌して亜鉛パラジウム微粒子を生成させることにより亜鉛パラジウム微粒子を製造する。
【0029】
以下それぞれの工程に分けて説明する。
【0030】
[亜鉛混合液調製工程]
本発明の別の実施形態に係る亜鉛混合液調製工程は、まず亜鉛錯体と有機配位子と還元剤とを所定のモル比準備し容器に入れた後混合する。亜鉛錯体は酢酸亜鉛が望ましいが、塩化亜鉛、ステアリン酸亜鉛等も使用することができる。有機配位子とは有機化合物で金属に結合する物であり、オレイン酸、オレイルアミンが望ましいが、ステアリン酸、パルチミン酸、ミリスチン酸、ステアリルアミン、ミリスチルアミン、アダマンチルアミンを使用することができる。還元剤はジオールによるのが望ましい。さらに望ましくは、1,2−ヘキサデカンジオールであるが、エチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−オクタンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,2−テトラデカンジオールであってもよい。
【0031】
混合した後、外気と遮断できる容器に入れる。窒素ガス等で置換する。窒素ガス等に置換後減圧して、使用した有機配位子が液化して混合しやすくなる温度に加熱し攪拌して亜鉛混合液を調製する。
【0032】
[パラジウム錯体混合液調製工程]
また、パラジウム錯体混合液調製工程は、まずパラジウム錯体と有機配位子と還元剤とを所定のモル比で準備し容器に入れた後、混合する。パラジウム錯体は、パラジウムアセチルアセトナト錯体(Pd(acac)2)が望ましいが、塩化パラジウム、酢酸パラジウム等の他のパラジウム錯体であってもよい。有機配位子は、オレイン酸、オレイルアミンが望ましい。還元剤はジオールによるのが望ましい。さらに望ましくは、1,2−ヘキサデカンジオールであるが、エチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−オクタンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,2−テトラデカンジオールであってもよい。
【0033】
混合した後、混合物を外気と遮断できる容器に入れる。窒素ガス等で置換する。窒素ガス等に置換後減圧して、使用した有機配位子が液化して混合しやすくなる温度に加熱し攪拌してパラジウム錯体混合液を調製する。
【0034】
[インジェクション工程]
調製された亜鉛混合液の入っている容器の内部を窒素ガス等で再度置換する。その後、270℃から320℃まで加熱する。一方、調製されたパラジウム錯体混合液の入っている容器の内部を窒素ガス等で再度置換する。その後、80℃から120℃まで加熱する。加熱されたパラジウム錯体混合液を亜鉛混合液の入っている容器に添加する。
【0035】
[亜鉛パラジウム微粒子生成工程]
添加後混合液を320℃以上かつ350℃以下の温度に上げる。その後、320℃以上かつ350℃以下の温度で所定時間加熱・攪拌して混合液中に亜鉛パラジウム微粒子を生成させる。所定の時間は30分から120分の間が亜鉛パラジウムナノ粒子製造する点で望ましい。
【0036】
[精製工程]
精製工程は、上記で説明したのと同様であるので説明を省略する。
【0037】
以上の様にして別の実施形態にても、上記で説明したのと同様な亜鉛パラジウム微粒子を生成することができる。なお、還元剤は亜鉛混合液かパラジウム錯体混合液のどちらか一方にのみ入れることでも亜鉛パラジウム微粒子を製造することができる。
【0038】
上記のように亜鉛パラジウム合金がメタノールの水蒸気改質に用いられる触媒として有望である。一般的に触媒は表面積が大きくなるほど化学反応の速度が向上し触媒効果を大きくすることが期待できる。従来、亜鉛パラジウム合金から微粒子を製造する方法として、粉砕機を用いる方法がある。亜鉛パラジウム合金の固体から機械的に粉砕するという方法で、硬いボールで粉砕するボールミル粉砕機や高圧空気や液体で粉砕するジェットミルなどが知られている。しかし、これらは粉砕の限界が通常長径1000nm程度であり、しかも粒の大きさが不ぞろいであり、鉄などの不純物も混じるという問題があった。
【0039】
一方、触媒として用いる場合は、対象となる有機化合物の衝突断面積が0.64nm2から0.88nm2程度(例えば、アトキンス物理化学(上)A16表1−3参照)であるので、長径1nm程度であると考えられる。
【0040】
長径1nmから100nmの亜鉛パラジウム微粒子は、上記で述べた製造方法により初めて実現することができた。触媒としては長径1nmから40nmが望ましく、さらに望ましくは、長径1nmから10nmである。
【0041】
また、亜鉛パラジウム微粒子は、触媒としては亜鉛パラジウム合金が望ましい。これは、触媒として亜鉛に付着する分子とパラジウムに付着する分子とが反応しやすいからである。なお、合金でなく、例えば亜鉛パラジウム合金化が不十分であっても、合金より若干劣るが同様な効果を発すると考えられる。
【0042】
以下、本発明の実施例について図を参照しながら説明する。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
【実施例】
【0043】
<実施例1>
図3は、本発明に係る亜鉛パラジウム微粒子の製造方法を示す概念図である。図4は、本発明の亜鉛パラジウム微粒子の製造法を用いて材料のモル比、加熱温度を変えて製造した試料の試料番号と生成した亜鉛パラジウム微粒子の測定データを示す図である。図5は、本発明に係る亜鉛パラジウム微粒子(試料番号8)の1例を透過型電子顕微鏡で撮像した写真である。図6は、本発明に係る亜鉛パラジウム微粒子(試料番号8)をX線回折装置で測定したパターン図である。図7から図10は、本発明に係る亜鉛パラジウム微粒子(試料番号1、2、3、11)を透過型電子顕微鏡で撮像した写真である。図11は、本発明に係る亜鉛パラジウム微粒子(試料番号1、2、5、13)をX線回折装置で測定したパターン図である。
【0044】
試料番号8の亜鉛パラジウム微粒子は、図3に示す製造方法で、図4の試料番号8に示す材料と条件により製造された。図3ならびに図4に示すように、調製工程において、亜鉛粉末7.5mmolとパラジウム錯体であるパラジウムアセチルアセトナ錯体(Pd(acac)2)0.5mmolと有機配位子であるオレイルアミン(Oleylamine)5mmolとオレイン酸(Oleic acid)5mmolとを混合する。
【0045】
混合した後、窒素下の80℃で10分加熱と攪拌をする。その後330℃まですばやく昇温し、温度を330℃に60分間保ちつつ攪拌により、混合液中に亜鉛パラジウム微粒子を生成させる。生成された亜鉛パラジウム微粒子を含む混合液を60分間冷却後、ヘキサンを容器に注入して生成された亜鉛パラジウム微粒子をヘキサンの上澄み液に分散させる。図3に示すように、エタノールにその上澄み液を加えると生成した亜鉛パラジウム微粒子が沈殿する。その沈殿物を再度溶媒(例えば、ヘキサン)に分散させる。分散させた液をフィルターでろ過して亜鉛パラジウム微粒子を得る。
【0046】
このようにして図5に示すような、単分散で粒子の大きさがそろいアスペクト比が一定な亜鉛パラジウム合金微粒子を製造することができる。
【0047】
図5に見られるように、形状は四角く整っていた。粒子の形状もほぼ均一なものが得られた。100粒の形状を測定したところ、横が6.2±0.8nmであり、縦が5.6±0.6nmであった。また、縦横のアスペクト比(Aspect ratio)も1.1±0.1とそろっていた。
【0048】
試料番号8の粒子は、図6に示すように、X線回折装置で測定したところ、亜鉛パラジウム合金のところにピークが出ていることが分かった。したがって、亜鉛パラジウム合金微粒子が形成されていた。また、図4に示すように、蛍光X線分析装置(X−Ray Fluorescence Analysis)により測定したところ亜鉛(Zn)とパラジウム(Pd)のモル比は23対77であった。
【0049】
このようにして生成された亜鉛パラジウム合金微粒子は、10mm角程度の合金に比して表面積が約百万倍大きくなるので、例えばメタノールの水蒸気改質による水素ガスを得るための触媒として使用した場合には、反応速度を著しく向上できる。また、小型で化学反応をする機器を製作することにも貢献する。
【0050】
図3に示す亜鉛パラジウム微粒子の製造方法にて、図4に示すように材料のモル比を変えることと加熱時間を変えることにより各種の亜鉛パラジウム微粒子を生成することができる。図4に示すように、試料番号3の粒子が一番小さく、次に試料番号1が小さかった。これらの透過型電子顕微鏡で撮像した写真を図7と図9に示す。これらの図から明らかなように単分散で粒子の大きさもそろっている。
【0051】
粒子の大きなものは、試料番号2と試料番号11である。これらの透過型電子顕微鏡で撮像した写真を図8と図10に示す。試料番号2の生成された粒子は大きさが比較的そろっている。試料番号11では、粒子の大きさがばらついているが、長径が43.5nmの亜鉛パラジウム微粒子も含まれている。触媒として使用する場合に他の構造物との関係で大きな粒子が都合のよい場合には適用することができる。
【0052】
また、試料番号11のような粒子の大きさがばらついている試料から目的とする大きさの粒子を取り出すには精製工程でサイズ選択沈殿(Size Selective Precipitation)を採用すればよい。すなわち、亜鉛パラジウム微粒子をヘキサンに分散させる。一方分散しない亜鉛パラジウム微粒子はエタノールを入れて沈殿精製する。ここでエタノールの量を調節することにより、大きさの異なる亜鉛パラジウム微粒子を別々に取り出すことができる。したがって、試料番号11からは、大きな長径43.5nmの亜鉛パラジウム微粒子を取り出すことができる。
【0053】
図11は、これらの試料をX線回折装置で測定したパターン図である。図11に示すように、いずれの試料もX線回折装置で測定したところ、亜鉛パラジウム合金のところにピークが出ていることが分かった。
【0054】
また、図4に示すように、蛍光X線分析装置(XRF)により測定したところ亜鉛(Zn)とパラジウム(Pd)のモル比は、一番小さいのが試料番号3の11対86であり、一番大きいのが試料番号2の83対17であった。この事実より、亜鉛原子のモル比率が10%から90%まで粒子を製造できると考えられる。
【0055】
亜鉛パラジウム微粒子の亜鉛とパラジウムのモル比率については、図4の試料番号5から試料番号7に示すように、有機配位子であるオレイルアミンおよびオレイン酸の当量が少ないほど生成された亜鉛パラジウム微粒子の亜鉛のモル百分率が増加傾向にある。
【0056】
また、亜鉛パラジウム微粒子の粒子の大きさについては、図4の試料番号5から試料番号7に示すように、有機配位子であるオレイルアミンおよびオレイン酸の当量が少ないほど生成された亜鉛パラジウム微粒子の平均粒子寸法が5.7nmから6.2nmと大きくなる傾向にある。また、亜鉛とパラジウム錯体と有機配位子とのモル比を一定にして、亜鉛パラジウム微粒子を生成させる工程での加熱時間を30分から120分に変化させることにより亜鉛パラジウム微粒子の平均粒子寸法が6.0nmから10.0nmと大きくなる傾向にある(図4の試料番号7から試料番号10参照)。
【0057】
このようにして、有機配位子の当量を適切に選択し、加熱時間を調製することにより、粒子の大きさについてコントロールすることができ、アスペクト比と粒子の大きさとのばらつきが少ない亜鉛パラジウム微粒子を製作することができる。
【0058】
〈実施例2〉
実施例2は、あらかじめ、亜鉛錯体を有機配位子と還元剤とを所定のモル比で混合した亜鉛混合液に、パラジウム錯体と有機配位子と還元剤とを所定のモル比で混合したパラジウム錯体混合液を添加し、320℃以上かつ350℃以下の温度で所定時間加熱・攪拌して亜鉛パラジウム微粒子を生成させることによる亜鉛パラジウム微粒子の製造方法である。
【0059】
図12は、本発明に係る亜鉛パラジウム微粒子の別の製造方法を示す概念図である。図13と図14は、本発明の別の製造方法による亜鉛パラジウム微粒子(試料番号I1、試料番号I2)を透過型電子顕微鏡で撮像した写真である。図15は、本発明の別の製造方法による亜鉛パラジウム微粒子(試料番号I1、試料番号I2)をX線回折装置で測定したパターン図である。
【0060】
図12に示すように、亜鉛錯体である酢酸亜鉛を有機配位子であるオレイルアミンとオレイン酸と還元剤である1,2−ヘキサデカンジオールを所定のモル比で混合する。その後窒素ガス等で置換下の80℃で10分以上加熱してよく混ぜ合わせ、300℃まで加熱・攪拌して亜鉛混合液を調製する。
【0061】
一方、パラジウム錯体であるパラジウムアセチルアセトナト錯体と有機配位子であるオレイルアミンとオレイン酸と還元剤還元剤である1,2−ヘキサデカンジオールを所定のモル比で準備し容器に入れて混合する。その後、容器を外気と遮断した後、窒素ガス等で置換する。窒素ガス等に置換後減圧して、80℃で10分以上加熱・攪拌してパラジウム錯体混合液を調製する。
【0062】
調製された亜鉛混合液の入っている容器の内部を窒素ガス等で再度置換する。その後、300℃まで加熱する。一方、調製されたパラジウム錯体混合液の入っている容器の内部を窒素ガス等で再度置換する。その後、100℃まで加熱する。加熱されたパラジウム錯体混合液を亜鉛混合液の入っている容器に添加する。
【0063】
添加後混合液を330℃温度に上げ所定時間加熱・攪拌して混合液中に亜鉛パラジウム微粒子を生成させる。生成された亜鉛パラジウム微粒子を実施例1と同様な精製工程により精製する。
【0064】
試料番号I1では、亜鉛混合液には、亜鉛錯体である酢酸亜鉛を0.1mmolと、有機配位子であるオレイルアミン5.0mmolと、オレイン酸5.0mmolと還元剤である1,2−ヘキサデカンジオール2.0mmolと、を使用した。また、パラジウム錯体混合液にはパラジウム錯体であるパラジウムアセチルアセトナト錯体0.5mmolと、と有機配位子であるオレイルアミン5.0mmolと、オレイン酸5.0mmolと、を使用し、還元剤は使用しなかった。
【0065】
試料番号I2では、亜鉛混合液には、亜鉛錯体である酢酸亜鉛を0.1mmolと、有機配位子であるオレイルアミン5.0mmolと、オレイン酸5.0mmolとを使用し、還元剤は使用しなかった。また、パラジウム錯体混合液にはパラジウム錯体であるパラジウムアセチルアセトナト錯体0.5mmolと、と有機配位子であるオレイルアミン5.0mmolと、オレイン酸5.0mmolと、還元剤である1,2−ヘキサデカンジオール2.0mmolと、を使用した。
【0066】
この試料番号の透過型電子顕微鏡で撮像した写真を図13と図14に示す。図13と図14に示すように、実施例1と同様な、単分散で粒子の大きさがそろいアスペクト比が一定な亜鉛パラジウム微粒子を製造することができた。
【0067】
図15は、これらの試料をX線回折装置で測定したパターン図である。図15に示すように、いずれの試料もX線回折装置で測定したところ、亜鉛パラジウム合金のところにピークが出ており、亜鉛パラジウム合金微粒子であることが分かった。したがって、この製造方法によっても亜鉛パラジウム合金微粒子を製造することができた。
【0068】
以上、本発明の実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることができる。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。例えば、亜鉛パラジウム合金微粒子について主に説明をしたが、合金のみならずその他の亜鉛とパラジウムを含有する微粒子にも同様に対応することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛錯体と有機配位子とを所定のモル比で混合して、前記有機配位子の融点以上かつ沸点未満の温度で加熱・攪拌して亜鉛混合液を調製する工程と、
パラジウム錯体と有機配位子とを所定のモル比で混合して、前記有機配位子の融点以上かつ100℃未満の温度で加熱・攪拌してパラジウム錯体混合液を調製する工程と、
前記亜鉛混合液を300℃まで加熱した後、当該亜鉛混合液に前記パラジウム錯体混合液を添加して320℃以上かつ350℃未満の温度で所定時間加熱・攪拌して亜鉛パラジウム微粒子を生成させる工程と、
生成された亜鉛パラジウム微粒子を精製する精製工程と、
を有する亜鉛パラジウム微粒子の製造方法。
【請求項2】
前記亜鉛錯体が酢酸亜鉛である請求項1に記載の亜鉛パラジウム微粒子の製造方法。
【請求項3】
亜鉛または亜鉛錯体における亜鉛原子とパラジウム錯体におけるパラジウム原子とのモル比を15対1から40対1とする請求項1又は2のいずれかに記載の亜鉛パラジウム微粒子の製造方法。
【請求項1】
亜鉛錯体と有機配位子とを所定のモル比で混合して、前記有機配位子の融点以上かつ沸点未満の温度で加熱・攪拌して亜鉛混合液を調製する工程と、
パラジウム錯体と有機配位子とを所定のモル比で混合して、前記有機配位子の融点以上かつ100℃未満の温度で加熱・攪拌してパラジウム錯体混合液を調製する工程と、
前記亜鉛混合液を300℃まで加熱した後、当該亜鉛混合液に前記パラジウム錯体混合液を添加して320℃以上かつ350℃未満の温度で所定時間加熱・攪拌して亜鉛パラジウム微粒子を生成させる工程と、
生成された亜鉛パラジウム微粒子を精製する精製工程と、
を有する亜鉛パラジウム微粒子の製造方法。
【請求項2】
前記亜鉛錯体が酢酸亜鉛である請求項1に記載の亜鉛パラジウム微粒子の製造方法。
【請求項3】
亜鉛または亜鉛錯体における亜鉛原子とパラジウム錯体におけるパラジウム原子とのモル比を15対1から40対1とする請求項1又は2のいずれかに記載の亜鉛パラジウム微粒子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−144255(P2010−144255A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39464(P2010−39464)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【分割の表示】特願2007−27887(P2007−27887)の分割
【原出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、経済産業省、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究(産業技術研究助成事業)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【分割の表示】特願2007−27887(P2007−27887)の分割
【原出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、経済産業省、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究(産業技術研究助成事業)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【Fターム(参考)】
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