説明

caveolin−1−Fcγ1融合タンパク質及びその使用

【課題】CD26を介したT細胞共刺激の内因性リガンドの提供。
【解決手段】本発明により、caveolin-1がCD26を介したT細胞共刺激の内因性リガンドであることが示された。Caveolin-1−Fcγ1融合タンパク質は、caveolin-1によるCD26を介したT細胞共刺激を阻害するため、当該融合タンパク質を含有する医薬組成物は、免疫抑制剤などに使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、caveolin-1−Fcγ1融合タンパク質及び前記融合タンパク質の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体に備わる免疫系機能は、生命現象を維持する上で最も重要な機能の1つである。免疫系は、元来自己と非自己とを識別することによって、異物からの生体防御を担当している。また、免疫系は臓器構造をとらず、1兆個にもおよぶ細胞が関与する複雑かつダイナミックなプロセスによって生体の維持を制御している。免疫系は最終的に炎症反応により、非自己から自己を守っている。そのため、例えば、感染症における炎症反応、自己免疫疾患における臓器破壊を伴う炎症反応、及び臓器置換による臓器機能の回復を目指して行われる移植治療における免疫反応やその最終局面である炎症反応を理解することは、目的の治療効果を最大限に発揮するためにも非常に重要である。
【0003】
炎症の第一段階における細胞内への抗原の進入は、非特異的に、又は抗体や補体の受容体を介して生じる。細胞に取り込まれた抗原は、抗原提示細胞(APC, antigen presenting cell)内でプロセシングを受けてペプチド断片となり、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスII分子との複合体としてT細胞に提示される。APCには、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、ランゲルハンス細胞、interdigitating細胞、末梢血の単球など(いわゆるプロフェッショナルAPC)がある。T細胞への抗原提示と同時に、補助シグナルである共刺激と呼ばれる受容体刺激が、T細胞の活性化を惹起し、増強する。T細胞を活性化するには、MHCペプチド複合体によってもたらされる抗原特異的な刺激と共刺激との両方の刺激が必要である。
【0004】
APC上に発現する補助シグナル受容体分子CD80及びCD86の発現レベルの違い、又は産生するサイトカインの種類の違いによって、ヘルパーT細胞(TH細胞)のその後の分化に偏りが生じる。例えば、インターロイキン-12(IL-12)の影響下では細胞性免疫に関与するTH1タイプへの分化が優勢であるのに対し、IL-4の影響下では液性免疫に関与するTH2タイプへの分化が優勢となる。このように、一次エフェクター細胞が活性化されるか、又は抗体産生が誘導されるかして感作が確立される。同時に、メモリーT細胞やメモリーB細胞が生じる。一次エフェクター細胞としては、例えば、TH1細胞、細胞傷害性T細胞(CTL)、マスト細胞、単球、マクロファージ、好塩基球、好中球、NK細胞、血小板などがある。
【0005】
次に、一次エフェクター細胞の活性化により生じたサイトカイン、ケモカイン、ケミカルメディエーターなどの働きにより、炎症局所の血管内皮細胞が活性化され、単球、マクロファージ、好中球、好酸球などの二次エフェクター細胞の活性化が惹起されて炎症が生じる。炎症反応は、炎症局所での起因物質の貪食、Fas/Fas-Lによるエフェクター細胞のアポトーシス、CTLA 4(cytotoxic T-lymphocyte-associated antigen 4)やFcγRIIBなどによる免疫受容体チロシンベース阻害モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based inhibitory motif)の抑制性シグナルの伝達により最終的に抑制される。
【0006】
自己免疫疾患又は拒絶反応、移植片対宿主病(GVHD)などの免疫異常症は、臓器破壊を伴う炎症反応を示し、上記の多彩なエフェクター機構が関与していることが明らかにされている。それにもかからわず、上記疾患の詳しい免疫病態の理解は依然として十分でなく、こうした疾患を完全に制御することは未だ達成されていない。
【0007】
自己免疫疾患や移植合併症の治療において、上述した炎症のエフェクター機構を制御するために、さまざまな免疫抑制療法が試みられている。免疫異常症を制御するためのポイントはエフェクターT細胞の抑制であると考えられている。実際に、主要な免疫抑制剤の多くは、T細胞をターゲットにしている。したがって、炎症のエフェクター細胞としてのT細胞を研究することは、免疫異常症の克服に向けて非常に重要であると言える。
【0008】
このような経緯から、本発明者らは、エフェクターT細胞に関する研究を行い、特にT細胞活性化抗原であるCD26分子を発見し、その機能解析を行っている。CD26分子はCD4陽性T細胞がエフェクター機能を発揮するために重要な分子であり、T細胞の活性化に伴い、その発現が上昇し、CD3・TCR(T cell receptor complex)からの活性化刺激を増強する共刺激分子であることが、CD26の特異的抗体を用いた実験系により明らかにされている。さらに、CD26陽性T細胞は、炎症部位に極めて容易に移動するサブセットであるTH1型の細胞であり、関節リウマチなどの自己免疫疾患、及び拒絶やGVHDなどの免疫異常症に寄与し、また患部に蓄積することが知られている。したがって、CD26陽性T細胞に関する理解を深めることで、より病態特異的な治療法の確立が可能となると考えられる。
【0009】
CD26分子は、Ta1と命名されたマウスモノクローナル抗体と反応するヒト末梢血T細胞表面抗原として報告され、その後、活性化T細胞に強く発現することから、T細胞活性化抗原として確立された。一方、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)は、肝臓、腸管粘膜細胞の表面に存在するペプチダーゼ酵素として知られていた。最近の遺伝子クローニングにより、DPPIVとCD26とが同一のものであることが示された。
つまり、CD26はリンパ球のみならず、腎臓、胆管、膵管、腸管、前立腺などの上皮の他、血管内皮細胞、子宮内膜などにも発現していることが明らかとなった。
【0010】
ヒトCD26遺伝子は、766個のアミノ酸からなる110kDaの膜タンパク質をコードする遺伝子である。cDNAから推測されるCD26はII型膜糖タンパク質であり、その構造はN末端側が細胞質内に存在し、C末端側が細胞外に存在する。CD26の細胞内領域のアミノ酸は6残基のみであり、膜通過部分が22残基、細胞外部分が738残基であり、そのほとんどの部分が細胞外に存在しているといえる。細胞外領域には、C末端側に近い部分に630番目のセリン残基を活性中心としたセリンプロテアーゼの共通配列が含まれている。そのすぐN末端側にはシステインリッチドメインが存在し、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、フィブロネクチン、コラーゲンなどとの結合部位も存在する。また、ヒトCD26と、ラットDPPIV及びマウスCD26との相同性はそれぞれ85.5%及び89%である。
【0011】
CD26分子は、末梢血リンパ球ではメモリーT細胞上に発現している。静止期T細胞上におけるCD26の発現をフローサイトメトリーで検討すると、その発現強度は3相性のパターンを示し、この中、CD26high集団が免疫系で重要な役割を果たしていることが知られている。CD26high集団は、CD45ROを発現するメモリーT細胞に属し、破傷風トキソイドのようなメモリー抗原に反応するほか、B細胞の抗体産生を誘導し、MHCクラスI特異的なキラーT細胞を誘導することもできる。
また、前述のように、このCD26陽性T細胞集団は、IL-2、IFN(インターフェロン)-γなどのサイトカインを分泌するTH1型の細胞である。さらに、この細胞集団は、血管内皮細胞間の遊走能を有し、炎症部位へ移動、集積し、炎症局所で重要な役割を果たしていると考えられる。
【0012】
前述したように、CD26分子はいわゆる共刺激分子であり、TCRからの抗原特異的な一次シグナルと同時にCD26特異的抗体で刺激することによって、抗原非特異的な二次シグナルをT細胞に伝え、T細胞活性化を誘導する。
また、末梢血T細胞やCD26遺伝子導入Jurkat細胞を抗CD26抗体で単独刺激することにより、CD3ζ鎖、p56lck、p59fyn、ZAP-70、Mitogen activated protein kinase(MAP kinase)、c-Cbl、Phospholipase Cγなどのシグナル伝達タンパク質がチロシンリン酸化されること、さらに、CD3とCD26とのco-crosslinkingにより、CD3単独刺激で生じるチロシンリン酸化が増強し、延長することも示されている。
【0013】
このように、CD26は、T細胞の活性化シグナル伝達機構に直接関与している。本発明者は、破傷風トキソイド処理した単球上のcaveolin-1がCD26と結合することを見出している(特許文献1)。また、CD26によって刺激されたcaveolin-1がリン酸化を受けた後、NF-κBを活性化し、最終的にAPC上のCD86の発現を増強することを明らかにした。これらの研究により、CD26陽性T細胞が破傷風トキソイドなどのメモリー抗原に反応して活性化する機構の一面が明らかにされている。
【0014】
しかし、caveolin-1を介したAPCとT細胞との相互作用が、CD26によるT細胞共刺激活性をもたらすかどうかについては、未だ明らかにされておらず、CD26を介したT細胞共刺激の内因性リガンドは不明であった。
【特許文献1】国際公開第2005/063170号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述のように、従来、CD26を介したT細胞の活性化は、CD26特異的抗体を用いた場合に限って知られており、いわゆるCD26分子に対応する内因性の共刺激リガンドの同定には至っていなかった。
したがって、本発明は、CD26を介したT細胞共刺激に対するリガンドを同定し、提供することを目的とする。
また、本発明の別の目的は、同定したCD26内因性リガンドの使用方法などを提供することである。
また、本発明の別の目的は、T細胞を介する免疫反応を制御するための医薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意研究を行い、CD26を介したT細胞共刺激に対する内因性リガンドとしてcaveolin-1を同定した。詳しくは、免疫グロブリンタンパク質との融合タンパク質として発現させたcaveolin-1はCD26と結合し、抗CD3抗体の存在下でT細胞を活性化することを見出した。また、本発明者は、caveolin-1と免疫グロブリンタンパク質との融合タンパク質(caveolin-1−Fcγ1融合タンパク質)は、CD26とcaveolin-1との結合を阻害し、T細胞共刺激を阻害することを見出した。以上より、本発明者は本発明を完成させた。
【0017】
すなわち、本発明は以下に関する。
(1)caveolin-1の骨格領域の全部又は一部からなる第1領域、並びに免疫グロブリン分子のヒンジ、CH2及びCH3領域からなる第2領域を含有し、CD26への結合活性を有する、caveolin-1−Fcγ1融合タンパク質。
上記のcaveolin-1の骨格領域には、以下の(a)又は(b)のポリペプチドが挙げられる。
(a) 配列番号2で示されるアミノ酸配列のうち第82番目から第101番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b) 配列番号2で示されるアミノ酸配列のうち第82番目から第101番のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、CD26への結合活性を有するポリペプチド
(2)上記(1)記載の融合タンパク質をコードするDNA。
(3)上記(2)記載のDNAを含有する、caveolin-1−Fcγ1融合タンパク質発現ベクター。
(4)上記(1)記載の融合タンパク質を含有する医薬組成物。
上記医薬組成物は、自己免疫疾患、拒絶反応、移植片対宿主病、関節リウマチ、血管炎症候群、悪性腫瘍、悪性中皮腫、急性若しくは慢性移植片対宿主病、拒絶反応、閉塞性動脈硬化症、心筋梗塞又は脳梗塞の治療に用いることができる。
(5)caveolin-1の骨格領域の全部又は一部を含有する、CD26を介したT細胞共刺激リガンド。
(6)caveolin-1の骨格領域の全部又は一部からなる第1領域、並びに免疫グロブリン分子のヒンジ、CH2及びCH3領域からなる第2領域を含有する、CD26を介したT細胞共刺激リガンド。
(7)上記(1)記載の融合タンパク質を、抗CD3抗体の存在下で単離T細胞に接触させることを特徴とする、T細胞の共刺激方法。
(8)caveolin-1によるCD26を介したT細胞共刺激活性を制御する物質のスクリーニング方法であって、
(i) 上記(1)記載の融合タンパク質とCD26とを接触させた場合、及び(ii) 上記(1)記載の融合タンパク質及び被験物質とCD26とを接触させた場合における、CD26と融合タンパク質との結合量又はT細胞共刺激活性を測定することを含有する、前記方法。
本スクリーニング方法において、T細胞共刺激活性の測定には、例えば、T細胞からのIL-2の産生量の測定又はT細胞の増殖活性の測定が挙げられる。
(9)評価対象物質の有するCD26を介したT細胞共刺激活性を評価する方法であって、
(i) 上記(1)記載の融合タンパク質とCD26とを接触させた場合、及び(ii) 上記(1)記載の融合タンパク質及び被験物質とCD26とを接触させた場合における、CD26と融合タンパク質との結合量又はT細胞共刺激活性を測定することを含有する、前記方法。
本評価方法において、評価対象物質には、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害活性を有する物質が挙げられる。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、可溶性のcaveolin-1−Fcγ1融合タンパク質、当該タンパク質をコードするDNA及び当該タンパク質の発現ベクターが提供される。本発明の融合タンパク質はCD26を介したT細胞共刺激リガンドとして機能するため、本融合タンパク質は単離したT細胞を抗CD3抗体の存在下でCD26を介して共刺激することができる。
【0019】
また、本発明の別の態様によれば、caveolin-1−Fcγ1融合タンパク質を含有する医薬組成物が提供される。本発明の医薬組成物は、例えば、自己免疫疾患、拒絶反応、移植片対宿主病、関節リウマチ、血管炎症候群、悪性腫瘍、悪性中皮腫、急性若しくは慢性移植片対宿主病、拒絶反応、閉塞性動脈硬化症、心筋梗塞又は脳梗塞の治療に有用である。
【0020】
また、本発明の別の態様によれば、本発明の融合タンパク質を用いてCD26を介したT細胞共刺激活性を制御する物質をスクリーニングすることができる。本発明のスクリーニング方法により同定される物質は、T細胞共刺激活性を制御し得るために、免疫活性を制御する薬剤として有用である。
【0021】
また、本発明の別の態様によれば、本発明の融合タンパク質を用いて評価対象物質の有するT細胞共刺激活性を評価することができる。本発明の評価方法によって、例えば、DPPIV阻害活性を有する物質が有する免疫抑制作用を評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
T細胞受容体(TCR)はT細胞に発現しており、抗原提示細胞(APC)上の主要組織適合抗原複合体(MHC)で提示された抗原ペプチドを認識する。T細胞の活性化には、T細胞受容体の抗原認識によるシグナルだけではなく、同時に共刺激シグナルを受けることが必要であることが明らかにされている。
T細胞表面に発現するCD26は、抗CD26抗体を用いた研究からT細胞の共刺激分子として機能することが示されているが、CD26を介した共刺激の内因性リガンドは不明であった。
そこで、本発明者は、CD26を介したT細胞共刺激の内因性リガンドを以下のように同定した。まず、APC上に発現するcaveolin-1に注目した。膜タンパク質であるcaveolin-1を安定に生成するために、caveolin-1に免疫グロブリンG(IgG)の重鎖定常領域(Fc)を融合させた可溶性のタンパク質(caveolin-1−Fcγ1融合タンパク質)を作製した。次に、caveolin-1−Fcγ1融合タンパク質がCD26と結合し、T細胞を活性化し得るかどうか、そして共刺激リガンドとして機能するかどうかを検討した。その結果、caveolin-1はCD26を介したT細胞共刺激の内因性リガンドであることが明らかとなった。
【0023】
また、caveolin-1−Fcγ1融合タンパク質は、TCRを刺激する抗CD3抗体の存在下において、単離T細胞を共刺激する共刺激リガンドとして機能することが明らかとなった。
一方、図12に示すように、caveolin-1−Fcγ1融合タンパク質は、caveolin-1によるCD26を介したT細胞の共刺激を阻害し、T細胞の活性化を阻害することが明らかとなった。
本発明者は、以上のような新たな知見をもとに、本発明を完成させた。
以下、詳細に本発明を説明する。
【0024】
1.融合タンパク質
(1)caveolin-1
本発明において、caveolin-1は、カベオラの骨格を形成する膜タンパク質であり、シグナル伝達分子としての機能や、細胞内での脂質輸送機能を有することが知られている。
本発明において、caveolin-1は、哺乳動物の組織、細胞又は体液(血液、消化液、髄液など)に由来するタンパク質であってもよく、合成タンパク質であってもよい。哺乳動物には、例えば、ヒト、モルモット、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ヤギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ、サルなどが挙げられる。
【0025】
本発明におけるcaveolin-1は、例えば、配列番号2で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質であり、好ましくは、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質である。配列番号2は、ヒト由来のcaveolin-1のアミノ酸配列を表す。
配列番号2で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質は、例えば、配列番号1で示される塩基配列を含むDNAによってコードされる。配列番号1で示される塩基配列は、GenBank accession number:NM_001753に記載されており、また、配列番号2で示されるアミノ酸配列は、GenBank accession number:NP_001744に記載されている。
【0026】
(2)caveolin-1の骨格領域
caveolin-1は、分子の中心部分に約20アミノ酸長の骨格領域(SCD: scaffolding domain)を有している。
本発明のcaveolin-1骨格領域の全部又は一部は、本発明の融合タンパク質の構成部分としても用いることができる。また、本発明のcaveolin-1骨格領域の全部又は一部は、CD26への結合活性を有しており、さらに、CD26を介してT細胞を共刺激することができる。
【0027】
本発明におけるcaveolin-1の骨格領域としては、配列番号2で示されるアミノ酸配列のうち第82番目から第101番目のアミノ酸配列(以下、「配列番号2(82〜101)で示されるアミノ酸配列」とも称する)からなるポリペプチドを挙げることができる。
【0028】
本発明におけるcaveolin-1の骨格領域には、配列番号2(82〜101)で示されるアミノ酸配列に対して90%以上、好ましくは約95%以上、より好ましくは約98%以上の同一性(相同性)を有するアミノ酸配列からなり、かつ、CD26への結合活性を有するタンパク質も含まれる。
ここで、「CD26への結合活性」とは、CD26の細胞外領域に結合する活性を意味する。タンパク質の有するCD26への結合活性の強さ(結合親和性)は、特に限定されないが、例えば、配列番号2(82〜101)で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質の有する結合親和性の約10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上であればよい。
タンパク質の有するCD26への結合活性は、公知の結合アッセイにより測定することができる。例えば、免疫沈降法、BIAcoreを用いた解析方法、及びELISA(enzyme linked immuno solvent assay)、ウェスタンブロットなどの免疫化学的方法などを挙げることができる。
【0029】
また、本発明において、caveolin-1の骨格領域には、配列番号2(82〜101)で示されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、若しくは付加され、又はそれらの組合せにより変異されたアミノ酸配列からなり、かつ、CD26への結合活性を有するタンパク質も含まれる。
配列番号2(82〜101)で示されるアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、若しくは付加され、又はそれらの組合せにより変異されたアミノ酸配列としては、例えば、(i) 配列番号2(82〜101)で示されるアミノ酸配列中の1〜9個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(ii) 配列番号2(82〜101)で示されるアミノ酸配列中の1〜9個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、(iii) 配列番号2(82〜101)で示されたアミノ酸配列に1〜9個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、(iv) 上記(i)〜(iii)の組合せにより変異されたアミノ酸配列などが挙げられる。
【0030】
配列番号2(82〜101)で示されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が置換される場合、置換前のアミノ酸の性質に似た性質のアミノ酸に置換することが望ましい。
アミノ酸の性質は、例えば、酸性アミノ酸(Asp, Glu)、塩基性アミノ酸(Lys, Arg, His)、中性アミノ酸(Gly, Ala, Val, Leu, Ile, Ser, Thr, Cys, Met, Asn, Gln, Pro, Phe, Tyr, Trp)、脂肪族アミノ酸(Gly, Ala, Val, Leu, Ile, Ser, Thr, Cys, Met, Asn, Gln)、芳香族アミノ酸(Phe, Tyr, Trp)、分枝アミノ酸(Val, Leu, Ile)、含硫アミノ酸(Cys, Met)、酸アミドアミノ酸(Asn, Gln)等に分類することができる。
したがって、例えば、酸性アミノ酸同士、塩基性アミノ酸同士など、性質の似たアミノ酸間の置換は、タンパク質の性質を保持する置換として好ましい。置換されるアミノ酸の数及び部位は特に限定されない。
【0031】
配列番号2(82〜101)で示されるアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸に欠失、置換又は付加などの変異の生じたアミノ酸配列をコードするDNAは、「Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.」(Cold Spring Harbor Press(1989))、「Current Protocols in Molecular Biology」(John Wiley & Sons(1987-1997))、Kunkel(1985)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 488-92、Kunkel(1988)Method. Enzymol. 85: 2763-6等に記載の部位特異的変異誘発法等の方法に従って調製することができる。
【0032】
また、上記のように変異を有するタンパク質を調製するためにDNAに変異を導入するには、Kunkel法やGapped duplex法等の部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット、例えばQuikChangeTM Site-Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社製)、GeneTailorTM Site-Directed Mutagenesis System(インビトロジェン社製)、TaKaRa Site-Directed Mutagenesis System(Mutan-K、Mutan-Super Express Km等:タカラバイオ社製)等を用いて行うことができる。
【0033】
また、本発明において、caveolin-1の骨格領域は、CD26への結合活性を有する限り、caveolin-1の骨格領域よりN末端側及び/又はC末端側に続く部分を含有させてもよい。caveolin-1の骨格領域に含有させるN末端側及び/又はC末端側部分の長さは特に限定されない。そのようなタンパク質として、例えば、配列番号2で示されるアミノ酸配列において第75番から第101番までのアミノ酸配列からなるタンパク質、又は第2番から第101番までのアミノ酸配列からなるタンパク質を用いることができる。
【0034】
さらに、本発明において、caveolin-1の骨格領域は、他のペプチド配列により付加された融合タンパク質であってもよい。Caveolin-1の骨格領域に付加させるペプチド配列としては、インフルエンザ凝集素(HA)、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、多重ヒスチジンタグ(6×His、10×His等)、マルトース結合タンパク質(MBP)、c-myc断片、V5タグ、FLAG等のタンパク質の識別を容易にする配列等を選択することができる。また、本発明におけるcaveolin-1の骨格領域には、ヒトE-cadherinのシグナルペプチド(hu-ECDSP)を含有させてもよい。
【0035】
本発明のcaveolin-1の骨格領域は、前述した哺乳動物の組織又は細胞から標準的な精製方法によって製造することができる。また、本発明のcaveolin-1の骨格領域をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによっても製造することができる。哺乳動物の組織又は細胞から製造する場合は、哺乳動物の組織又は細胞をホモジナイズした後、クロマトグラフィーなどの公知の方法により単離することができる。
【0036】
また、本発明において、caveolin-1の骨格領域には、配列番号1で示される塩基配列の第244番目から第303番までの塩基配列(以下、「配列番号1(244〜303)で示される塩基配列」とも称する)を含むDNAによりコードされるタンパク質が挙げられる。また、caveolin-1の骨格領域には、配列番号1(244〜303)で示される塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるタンパク質であって、CD26への結合活性を有するタンパク質も含まれる。
このようなDNAは、配列番号1(244〜303)で示される塩基配列からなるDNA又はその断片をプローブとしてコロニーハイブリダイゼーション、プラークハイブリダイゼーション、サザンブロット等の公知のハイブリダイゼーション法により、cDNAライブラリー及びゲノムライブラリーなどから得ることができる。ライブラリーの作製方法については、「Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.」(Cold Spring Harbor Press(1989))等を参照することができる。また、市販のcDNAライブラリー及びゲノムライブラリーを用いてもよい。
【0037】
本明細書において、ストリンジェントな条件は、ハイブリダイゼーション後の洗浄条件として、例えば、「2×SSC、0.1%SDS、42℃」、「1×SSC、0.1%SDS、37℃」、よりストリンジェントな条件としては、例えば、「1×SSC、0.1%SDS、65℃」、「0.5×SSC、0.1%SDS、50℃」等の条件を挙げることができる。
ハイブリダイゼーションは、公知の方法によって行うことができる。ハイブリダイゼーションの方法は、例えば、「Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.」(Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989))、「Current Protocols in Molecular Biology」(John Wiley & Sons(1987-1997))等を参照することができる。
【0038】
また、本明細書において、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAには、例えば、配列番号1で示される塩基配列と少なくとも80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上の同一性(相同性)を有する塩基配列を含むDNAが含まれる。同一性を示す値は、BLASTなどの公知のプログラムを利用することにより算出することができる。
【0039】
また、配列番号1(244〜303)で示される塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAは、例えば、配列番号1で示される塩基配列において1又は数個の核酸に欠失、置換又は付加などの変異の生じた塩基配列を含むDNAが挙げられる。
ここで、配列番号1(244〜303)で示される塩基配列において1又は数個の核酸に欠失、置換又は付加などの変異の生じた塩基配列としては、例えば、(a) 配列番号1(244〜303)で示される塩基配列中の1〜10個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個)の核酸が欠失した塩基配列、(b) 配列番号1(244〜303)で示される塩基配列中の1〜10個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個)の核酸が他の核酸で置換された塩基配列、(c) 配列番号1(244〜303)で示される塩基配列に1〜10個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個)の核酸が付加した塩基配列、(d) 上記(a)〜(c)の組み合わせにより変異された塩基配列などが挙げられる。
【0040】
本発明において、caveolin-1の骨格領域をコードするDNAは、例えば、配列番号1で示される塩基配列を基にプライマー又はプローブを設計し、cDNAライブラリー及びゲノムライブラリーからPCR等の遺伝子増幅技術(Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons(1987)Section 6.1-6.4)又はハイブリダイゼーション法により得ることができる。
【0041】
本発明において、塩基配列の確認は、慣用の方法で配列決定することにより行うことができる。例えば、ジデオキシヌクレオチドチェーンターミネーション法(Sanger et al.(1977)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74: 5463)等により行うことができる。また、適当なDNAシークエンサーを利用して配列を解析することも可能である。
【0042】
本発明のcaveolin-1の骨格領域の一部は、前記したcaveolin-1の骨格領域の部分ペプチドであって、かつ、CD26への結合活性を有していれば、いずれのものでもよい。例えば、caveolin-1の骨格領域のアミノ酸配列のうち、例えば19アミノ酸又は18アミノ酸からなるタンパク質を使用することができる。
【0043】
(3)Fcγ1
本発明において、Fcγ1は、免疫グロブリン分子のヒンジ領域、CH2領域及びCH3領域からなる領域を意味する。
Fcγ1を所定のタンパク質のカルボキシル末端に融合させると、融合タンパク質は可溶性のタンパク質として発現されることが知られている。つまり、Fcγ1は、タンパク質を可溶性タンパク質として発現させる性質を有している。本明細書において、このFcγ1の性質を「可溶性タンパク質発現作用」と称する場合がある。
【0044】
本発明においてFcγ1は、哺乳動物の組織、細胞又は体液(血液、消化液、髄液など)に由来するタンパク質であってもよく、合成タンパク質であってもよい。
【0045】
本発明において、Fcγ1は、例えば、配列番号4で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質であり、好ましくは、配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質である。配列番号4は、ヒト由来のFcγ1のアミノ酸配列を表す。
配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質は、例えば、配列番号3で示される塩基配列を含むDNAによってコードされる。
【0046】
本発明におけるFcγ1には、配列番号4で示されるアミノ酸配列に対して90%、好ましくは約95%以上、より好ましくは約98%以上の同一性(相同性)を有するアミノ酸配列からなり、かつ、可溶性タンパク質発現作用を有するタンパク質も含まれる。
【0047】
ここで、「可溶性タンパク質発現作用」は、所定のタンパク質のカルボキシル末端側にFcγ1を融合させた融合タンパク質をコードするDNAを含む形質転換体を培養し、可溶性画分又は培養上清における目的タンパク質の発現を検出することで確認できる。例えば、前記DNAを含む動物細胞の可溶性画分(例えば、細胞質画分)又は培養上清において目的の融合タンパク質が発現しているときは、Fcγ1は可溶性タンパク質発現作用を有しているといえる。また、形質転換体が大腸菌である場合も同様に、可溶性画分又は培養上清において融合タンパク質が発現している場合にFcγ1は可溶性タンパク質発現作用を有しているといえる。可溶性画分は、例えば、培養した形質転換体を公知の方法、例えば、超音波破砕、細胞溶解液による破砕、ホモゲナイザーによる破砕などの方法によって破砕し、破砕溶液を遠心した上清画分として得ることができる。
タンパク質の発現量は、SDS-PAGE、タンパク質定量法、及びELISA法、ウェスタンブロット法などの免疫化学的方法などの公知の方法により測定することができる。
【0048】
また、本発明におけるFcγ1には、配列番号4で示されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、若しくは付加され、又はそれらの組合せにより変異されたアミノ酸配列からなり、かつ、可溶性タンパク質発現作用を有するタンパク質も含まれる。
アミノ酸配列における欠失、置換又は付加等の変異の態様は、前述のとおりである。
【0049】
配列番号4で示されるアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が置換される場合、置換前のアミノ酸の性質に似た性質のアミノ酸に置換することが望ましい。置換の態様は前述のとおりである。また、置換されるアミノ酸の数及び部位は特に限定されない。
【0050】
配列番号4で示されるアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸に欠失、置換又は付加などの変異の生じたアミノ酸配列をコードするDNAは、前述のように調製することができる。
【0051】
さらに、本発明において、Fcγ1は、他のペプチド配列により付加された融合タンパク質であってもよい。Fcγ1に付加させるペプチド配列としては、インフルエンザ凝集素(HA)、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、多重ヒスチジンタグ(6×His、10×His等)、マルトース結合タンパク質(MBP)、V5タグ、c-myc断片、FLAG等のタンパク質の識別を容易にする配列等を選択することができる。
【0052】
本発明のFcγ1は、前述した哺乳動物の組織又は細胞から標準的な精製方法によって製造することができる。また、本発明のFcγ1をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによっても製造することができる。哺乳動物の組織又は細胞から製造する場合は、哺乳動物の組織又は細胞をホモジナイズした後、クロマトグラフィーなどの公知の方法により単離することができる。
【0053】
また、本発明において、Fcγ1には、配列番号3で示される塩基配列を含むDNAによりコードされるタンパク質が挙げられる。また、Fcγ1には、配列番号3で示される塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるタンパク質であって、可溶性タンパク質発現作用を有するタンパク質も含まれる。
このようなDNAは、前述のcaveolin-1骨格領域をコードするDNAの取得方法と同様に取得できる。また、ストリンジェントな条件も前述と同様である。
【0054】
また、本明細書において、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAには、例えば、配列番号3で示される塩基配列と少なくとも80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上の同一性(相同性)を有する塩基配列を含むDNAが含まれる。
【0055】
また、配列番号3で示される塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAは、例えば、配列番号3で示される塩基配列において1又は数個の核酸に欠失、置換又は付加などの変異の生じた塩基配列を含むDNAが挙げられる。
塩基配列における欠失、置換、又は付加などの変異の態様は、前述のとおりである。
【0056】
本発明において、Fcγ1をコードするDNAは、例えば、配列番号3で示される塩基配列を基にプライマー又はプローブを設計し、cDNAライブラリー及びゲノムライブラリーからPCR等の遺伝子増幅技術(Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons(1987)Section 6.1-6.4)又はハイブリダイゼーション法により得ることができる。
【0057】
(4)融合タンパク質
本発明は、caveolin-1の骨格領域の全部又は一部からなる第1領域、並びにFcγ1からなる第2領域を含有する融合タンパク質を提供する。
本発明の融合タンパク質としては、例えば、配列番号5で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質(以下、「NT-Fc」又は「NT-Fcγ1」とも称する)、又は配列番号6で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質(以下、「SCD-Fc」又は「SCD-Fcγ1」とも称する)を挙げることができる。
【0058】
本発明の融合タンパク質は、可溶性タンパク質として発現し、また、CD26への結合活性を有する。また、単離T細胞に対して、CD26を介したT細胞共刺激リガンドとして機能する。
さらに、本発明の融合タンパク質は、後述するように、T細胞の活性抑制作用を有するために、医薬組成物の有効成分としても有用である。
【0059】
本発明の融合タンパク質は、融合タンパク質をコードするDNAを含む組換えベクター(以下、「本発明の融合タンパク質の発現ベクター」とも称する)を用いて発現させることができる。本発明の融合タンパク質の発現ベクターは、例えば、第1領域又は第2領域をコードするDNAから目的とするDNA断片を切り出し、得られたDNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
【0060】
本発明の融合タンパク質の発現ベクターを作製するには、第1領域をコードするDNAが組み込まれたベクターに、第2領域をコードするDNAを第1領域の読み枠を考慮して挿入すればよい。または、第2領域をコードするDNAが組み込まれたベクターに、第1領域をコードするDNAを第2領域の読み枠を考慮して挿入すればよい。あるいは、第1領域をコードするDNAと第2領域をコードするDNAとを、同時にベクターに挿入すればよい。ここで、読み枠を考慮するとは、フレームシフトされることなく第1領域と第2領域とが融合タンパク質として発現するように、ベクターに挿入するDNAの位置及び長さを調整することを意味する。
【0061】
ベクターへのDNAの挿入は、リガーゼ反応、トポイソメラーゼ反応等を利用することができる。例えば、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、得られた断片をベクター中の適当な制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入することでベクターに連結する方法などが採用される。
【0062】
本発明の融合タンパク質の発現ベクターは、融合タンパク質を発現し得る限り、その基本となるベクターの由来には限定されず、例えば、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミド、酵母由来のプラスミド、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルスもしくはバキュロウイルスなどの無毒化した動物又は昆虫ウイルスを使用することができる。また、例えば、pEB-CAGベクターなどの市販のベクターを使用することもできる。
【0063】
本発明の融合タンパク質の発現ベクターは、融合タンパク質を発現させ得る限り、マルチクローニングサイト、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、シグナルペプチドカセット、選択マーカーカセットなどを含んでいてもよい。また、DNAを挿入する際に必要であれば、適宜リンカーを付加してもよい。
【0064】
プロモーターは、融合タンパク質をコードするDNAの上流に組み込むことができる。プロモーターは、宿主において本発明の融合タンパク質を適切に発現できるものであれば、特に限定されないが、例えば、trpプロモーター、lacプロモーター、CMVプロモーター、EF1αプロモーター、SRαプロモーター、SV40プロモーター、CAGプロモーター等を使用することができる。
ターミネーターは、融合タンパク質をコードするDNAの下流に組み込むことができる。
【0065】
本発明の融合タンパク質に含有させるシグナルペプチドとしては、例えば、ヒトE-cadherinのシグナルペプチド(hu-ECDSP)(配列番号:7)を用いることができる。
hu-ECDSP(配列番号7):MGPWSRSLSALLLLLQVSSWLCQEPKL
【0066】
選択マーカーカセットとしては、アンピシリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子などの薬剤耐性遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、又は蛍光タンパク質及びmycなどのタグタンパク質をコードする遺伝子などを挙げることができる。
また、本発明の融合タンパク質の発現ベクターには、SD配列、Kozak配列を含有させることができる。これらの配列は、本発明の融合タンパク質をコードするDNAの5’末端に挿入してベクターに組み込んでもよいし、PCR法で前記DNAに付加してベクターに組み込んでもよい。
【0067】
(6)形質転換体
本発明の融合タンパク質の発現ベクターを宿主に導入することで、形質転換体を作製することができる。このような形質転換体も本発明の範囲に含まれる。
本発明において使用される宿主は、本発明のベクターが導入された後、目的の融合タンパク質を発現することができる限り特に限定されるものではないが、例えば、大腸菌、枯草菌、酵母、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞などが挙げられる。当業者であれば、本発明の融合タンパク質の発現ベクターに適した宿主を選択することができる。
本発明のスクリーニング方法及び本発明の評価方法(後述)には、宿主細胞として動物細胞を用いることが好ましい。
【0068】
大腸菌としては、例えば、K12株、JM109株、XL1-Blue株などを挙げることができる。これら菌株は、例えば、アメリカン・タイプカルチャー・コレクション(ATCC)などから容易に入手することができる。枯草菌としては、例えば、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)などが挙げられる。酵母としては、例えば、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ピヒア・パストリス(Pichia pastoris)等が用いられる。動物細胞としては、COS-7、CHO細胞、Hela細胞、293細胞、HEK293FT細胞、Jurkat T細胞、300-19マウス前駆B細胞等が用いられる。昆虫細胞としては、Sf9細胞、Sf21細胞等が用いられる。
【0069】
宿主へのベクターの導入方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、DEAE デキストラン法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法等の公知の方法が挙げられる。また、ベクターがウイルスベクターの場合は、宿主細胞を培養し、培養液にウイルスベクターを添加し、さらに培養することで遺伝子を導入することができる。
例えば、宿主細胞に動物細胞を用いる場合は、リポフェクション法で遺伝子を導入することが好ましい。
【0070】
以上の方法により、本発明の融合タンパク質をコードするDNAを含有する発現ベクターで形質転換された形質転換体を得ることができる。
【0071】
本発明の形質転換体を培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法にしたがって行うことができる。培養培地は、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地が望ましく、当業者であれば公知の培地から適宜選択することができる。
例えば、宿主が動物細胞の場合は、DMEM、MEM、RPMI、F12等の培地を用いて、必要であれば血清、アミノ酸、グルコース、抗生物質などを添加することができる。特に、動物細胞がHEK293FT細胞の場合は、培養培地としてFreeStyleTM293Expression Mediumを用いることが好ましい。
形質転換体の培養条件は、特に限定されないが、10℃〜45℃、好ましくは、10℃〜40℃の温度下で、5〜120時間、好ましくは5〜100時間程度行う。また、必要に応じて、培地の交換、通気、撹拌を行うこともできる。特に、浮遊動物細胞を培養する場合は、振盪培養を行ってもよい。
【0072】
以上のようにして、形質転換体の細胞内又は細胞外に本発明の融合タンパク質を生成させることができる。本発明の融合タンパク質は、本発明の形質転換体の培養物から取得することができる。本発明の融合タンパク質は、可溶性タンパク質として発現するため、培養物に由来する可溶性画分又は培養上清から取得することができる。
【0073】
例えば、本発明の融合タンパク質を培養菌体又は細胞から抽出する場合は、培養後、公知の方法で菌体又は細胞を集め、適当な緩衝液に懸濁した後、超音波、凍結破砕などによって菌体又は細胞を破壊し、遠心分離、ろ過などの方法により可溶性画分を取得することができる。そして、得られた可溶性画分から、公知のタンパク質精製方法を適宜組み合わせて本発明の融合タンパク質を精製することができる。公知のタンパク質精製方法としては、例えば、透析法、硫酸アンモニア沈殿法、限外ろ過法、ゲルろ過法、SDS-PAGE、又はイオンクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー若しくは逆相クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを利用した方法などが挙げられる。
また、例えば、本発明の融合タンパク質を培養上清から取得する場合も、上記のタンパク質精製方法により精製することができる。
【0074】
2.CD26を介したT細胞共刺激活性
本発明者は、caveolin-1がCD26を介したT細胞共刺激の内因性リガンドであることを明らかにした。具体的には、本発明の融合タンパク質を抗CD3抗体の存在下に単離T細胞に接触させることにより、T細胞が共刺激されることを見出した。つまり、caveolin-1の骨格領域の全部又は一部あるいは本発明の融合タンパク質は、単離T細胞に対する、CD26を介したT細胞共刺激リガンドとして有用である。
したがって、本発明はcaveolin-1の骨格領域の全部又は一部、あるいは本発明の融合タンパク質を含有するCD26を介したT細胞共刺激リガンドを提供する。また、本発明は、本発明の融合タンパク質を、抗CD3抗体の存在下で単離T細胞に接触させることを特徴とする、T細胞の共刺激方法も提供する。
本発明の融合タンパク質は、単離T細胞に対してはAPC上のcaveolin-1に代わってCD26を介して共刺激する一方、APC存在下でのT細胞共刺激に対しては抑制的に機能する(実施例6)。したがって、本発明の融合タンパク質は、APCの非存在化又は活性化されたAPCの非存在下においてT細胞を共刺激することが可能であり、共刺激リガンドとして機能する。
【0075】
本発明のT細胞共刺激リガンドには、caveolin-1の骨格領域の全部又は一部あるいは本発明の融合タンパク質をそのまま使用してもよいし、形質転換体に発現させた状態で使用してもよい。また、適当な添加剤により製剤化したものを使用することもできる(後述の医薬組成物の項を参照)。
【0076】
本発明で使用される単離T細胞は、CD26陽性のT細胞である。CD26陽性T細胞は、例えば、生体から採取した末梢血からCD3及びCD26をマーカーに用いたフローサイトメトリーにより単離することができる。また、生体から採取した末梢血から単球細胞を回収し、MACS Pan T細胞単離キットIIなどの市販のキットを用いて末梢血T細胞を単離することもできる。
【0077】
単離T細胞を刺激する抗CD3抗体は、TCRへの抗原特異的な一次シグナルを模倣するものである。本発明で使用される抗CD3抗体は、TCR/CD3複合体に結合できるものであれば特に限定されないが、例えば、抗CD3モノクローナル抗体であるOKT3を用いることができる。また、アルカリフォスファターゼなどのタグを結合させた抗CD3抗体を使用することもできる。
【0078】
T細胞の共刺激は、例えば、抗CD3抗体を固定化した固相に単離T細胞と本発明の融合タンパク質を添加することにより行うことができる。抗CD3抗体と本発明の融合タンパク質とを固定化した固相に単離T細胞を添加することにより行うこともできる。あるいは、単離T細胞を抗CD3抗体及び本発明の融合タンパク質と共に培養することにより行うことができる。例えば、CHO細胞に本発明の融合タンパク質を発現させる場合は、抗CD3抗体の存在下に単離T細胞とCHO細胞とを共培養させることによりT細胞を共刺激することができる。
【0079】
CD26を介してT細胞を共刺激すると、IL-2(インターロイキン2)の産生やT細胞の増殖が引き起こされる。したがって、caveolin-1の骨格領域の全部又は一部あるいは本発明の融合タンパク質の有するT細胞共刺激活性は、IL-2の産生活性又はT細胞の増殖活性により測定することができる。
IL-2の産生活性は、T細胞から培養上清に分泌されたIL-2の量をELISA法、ウェスタンブロット法、MSスペクトル法などによって測定することにより確認することができる。
T細胞の増殖活性は、放射ラベルしたチミジン(例えば、[3H]-TdR)の取り込み量をシンチレーションカウンターで測定することにより確認することができる。
【0080】
3.医薬組成物
本発明の融合タンパク質は、実施例6又は図12で示すように、破傷風トキソイドでAPC及びCD4陽性T細胞を刺激した場合のT細胞共刺激を抑制する。すなわち、本発明の融合タンパク質は、caveolin-1によるCD26を介したT細胞共刺激を阻害する作用を有する。したがって、本発明の融合タンパク質は、T細胞を介した免疫反応を抑制するのに有用である。CD26陽性T細胞はTH1タイプの細胞であるため、本発明の融合タンパク質は、好ましくはTH1タイプのT細胞を介した免疫反応を抑制するのに有用である。
本発明は、本発明の融合タンパク質を含有する医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、T細胞、好ましくはTH1タイプのT細胞を介した免疫反応を抑制することができるため、T細胞、好ましくはTH1タイプのT細胞を介する疾患、例えば、自己免疫疾患、拒絶反応、移植片対宿主病、関節リウマチ、血管炎症候群、悪性腫瘍、悪性中皮腫、急性若しくは慢性移植片対宿主病、拒絶反応、閉塞性動脈硬化症、心筋梗塞又は脳梗塞などの疾患の治療又は予防に有用である。
本発明の医薬組成物は、哺乳動物に対して投与することができる。
【0081】
本発明の医薬組成物に含まれる融合タンパク質の投与量は、患者の年齢、性別若しくは体重、投与方法、投与期間又は調剤の種類などにより異なるが、当業者であれば、適宜設定することができる。例えば、成人(体重60kg)に一日あたり、1〜1000mg、好ましくは10〜500mg、より好ましくは50〜100mg投与することができるがこれに限定されるわけではない。一日あたり1〜3回に分けて投与してもよい。
【0082】
また、本発明の融合タンパク質を有効成分として含む医薬組成物には、融合タンパク質をそのまま用いてもよいし、製剤化したものを使用してもよい。
製剤化に用いる添加剤としては、賦形剤、結合剤、湿潤剤、潤滑剤、乳化剤、崩壊剤、矯味矯臭剤、界面活性剤、緩衝剤、安定化剤、防腐剤、保存剤、溶解補助剤、等張化剤等などが挙げられる。これらを単独又は適宜組み合わせ、定法により製剤を製造することができる。
製剤としては、錠剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、カプセル剤、シロップ剤、トローチ剤等の経口製剤、坐剤、軟膏剤、点眼剤、点鼻剤、パップ剤等の外用製剤、又は注射剤(静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、皮内注射、点滴など)を挙げることができる。
【0083】
また、本発明は、本発明の融合タンパク質の有効量を患者に投与することを特徴とする、T細胞、好ましくはTH1タイプのT細胞を介する疾患、例えば、自己免疫疾患、拒絶反応、移植片対宿主病、関節リウマチ、血管炎症候群、悪性腫瘍、悪性中皮腫、急性若しくは慢性移植片対宿主病、拒絶反応、閉塞性動脈硬化症、心筋梗塞又は脳梗塞の治療方法又は予防方法を提供する。
さらに、本発明は、T細胞、好ましくはTH1タイプのT細胞を介する疾患、例えば、自己免疫疾患、拒絶反応、移植片対宿主病、関節リウマチ、血管炎症候群、悪性腫瘍、悪性中皮腫、急性若しくは慢性移植片対宿主病、拒絶反応、閉塞性動脈硬化症、心筋梗塞又は脳梗塞の治療に用いる医薬組成物を製造するための本発明の融合タンパク質の使用にも関する。
【0084】
4.スクリーニング方法
本発明は、caveolin-1によるCD26を介したT細胞共刺激活性を制御する物質のスクリーニング方法を提供する。
CD26と本発明の融合タンパク質との結合アッセイを行うことにより、CD26とcaveolin-1との結合を変化させ、その結果、caveolin-1によるCD26を介したT細胞共刺激活性を制御する物質をスクリーニングすることができる。
【0085】
本発明のスクリーニングは、(i) 本発明の融合タンパク質とCD26とを接触させた場合と、(ii) 本発明の融合タンパク質及び被験物質とCD26とを接触させた場合の、CD26と融合タンパク質との結合量又はT細胞共刺激活性を比較することにより行う。
ここで、CD26としては、CD26を安定または一過性に発現させた細胞(例えば、Jurkat T細胞、300-19マウス前駆B細胞等)、CD26陽性T細胞又はそれらの膜画分を使用することができる。
また、本発明の融合タンパク質は、融合タンパク質そのものを使用してもよいし、本発明の形質転換体に発現されたものを使用してもよい。
【0086】
本発明のスクリーニング方法において、結合量は、免疫沈殿法、表面プラズモンセンサー法、ELISA及びウェスタンブロットなどの免疫化学法などによって定量することができる。
結合量の測定によるスクリーニング方法は、例えば以下のように行うことができる。まず、本発明の融合タンパク質を固定化した培養プレートに、CD26を発現させた細胞の懸濁液を添加する。次に、被験物質の存在下又は非存在下に、細胞を所定の時間培養した後、プレートを洗浄して融合タンパク質に結合しなかった細胞を除去する。次に、プレート中のCD26を検出することにより、CD26と融合タンパク質との結合量を抗CD26抗体を用いて測定する。
【0087】
T細胞共刺激活性の測定によるスクリーニングは、例えば以下のように行うことができる。まず、本発明の融合タンパク質を固定化した培養プレートに、CD26を発現するT細胞の懸濁液を添加する。次に、被験物質の存在下又は非存在下に、T細胞を所定の時間培養した後、細胞を回収し、細胞溶解液を調製する。本細胞の溶解液におけるT細胞共刺激活性を測定する。
前述のとおり、CD26陽性T細胞が共刺激されると、T細胞はIL-2を分泌する。したがって、T細胞共刺激活性は、分泌されたIL-2産生量を測定することにより確認することができる。IL-2産生量の測定は、CD26を発現するT細胞(例えば、CD26陽性T細胞又はCD26を強制的に発現させたT細胞)を使用したスクリーニングにおいて好ましく用いられる。
さらに、CD26陽性T細胞が共刺激されると、T細胞は活性化し、増殖速度が上昇する。したがって、T細胞共刺激活性は、T細胞増殖活性を測定することにより確認することができる。T細胞増殖活性の測定は、CD26を発現するT細胞(例えば、CD26陽性T細胞又はCD26を強制的に発現させたT細胞)を使用したスクリーニングにおいて好ましく用いられる。
IL-2の産生活性及びT細胞の増殖活性は、前述のように測定することができる。
【0088】
本発明のスクリーニング方法において、被験物質非存在下に比べてCD26と本発明の融合タンパク質との結合を促進する物質又はT細胞共刺激活性を亢進する物質は、T細胞の共刺激シグナルを増強する物質として有用である。そして、この物質は、TH1タイプのT細胞を介した免疫応答を活性化するために、免疫賦活剤の有効成分として使用することができる。
一方、本発明のスクリーニング方法において、被験物質非存在下に比べてCD26と本発明の融合タンパク質との結合を阻害する物質又はT細胞共刺激活性を抑制する物質は、TH1タイプのT細胞を介した免疫応答を抑制するために、免疫抑制剤の有効成分として使用することができる。
【0089】
5.評価方法
CD26は、セリンプロテアーゼであるDPPIVと同一のタンパク質であることが知られており、このセリンプロテアーゼ活性の活性中心は、630番目のセリンであることが明らかにされている。また、DPPIVは、インスリン分泌を増強するホルモンであるGLP-1(glucagon-like peptide-1)の分解酵素であり、DPPIVの阻害剤は血糖降下作用を有するため、糖尿病治療薬などの治療薬として開発が進められている。
caveolin-1の骨格領域との結合に必要なCD26の領域(カベオリン結合ドメイン)には、DPPIVの酵素活性に必要な630番目のセリンが含まれている(国際公開第2005/063170号パンフレット)。つまり、CD26におけるcaveolin-1との結合領域と、DPPIV酵素活性領域は一部共通している。さらに、実施例7において、CD26に結合するcaveolin-1の骨格領域は、DPPIV酵素活性を阻害することが示されている。
したがって、DPPIV阻害剤は、DPPIV酵素活性に対する阻害活性だけでなく、CD26(DPPIV)とcaveolin-1との結合を阻害し、CD26を介したT細胞の共刺激を阻害する可能性を潜在的に有しているといえる。
【0090】
そこで、本発明は、評価対象物質(例えば、DPPIV阻害剤)の有する、CD26を介したT細胞共刺激活性を評価する方法を提供する。
CD26と本発明の融合タンパク質との結合アッセイを用いることにより、物質がCD26とcaveolin-1との結合を阻害するかを検討することができるため、物質の有するCD26を介したT細胞共刺激阻害活性の程度を評価することができる。
例えば、DPPIV阻害剤がT細胞共刺激阻害活性を有していると評価された場合は、当該物質はDPPIVを阻害することによる血糖降下作用の他、免疫抑制作用も有している可能性が高いと判断することができる。
【0091】
物質の評価は、(i) 本発明の融合タンパク質とCD26とを接触させた場合と、(ii) 本発明の融合タンパク質及び被験物質とCD26とを接触させた場合の、CD26と融合タンパク質との結合量又はT細胞共刺激活性を比較することにより行う。
本発明の評価方法で使用されるCD26、本発明の融合タンパク質、測定方法は、本発明のスクリーニング方法で使用されるものと同様である。
【0092】
以下に、具体的な例により本発明を示すが、本発明はこれに限られるものではない。
【実施例1】
【0093】
1.使用した細胞、抗体及び試薬
(1)細胞
HEK293FT(human embryonal kidney)、Jurkat T細胞株(JKTwt)、及びヒトCD26で安定的にトランスフェクトしたJurkat T細胞(J.CD26wt)又は300-19マウス前駆B細胞(300-19-CD26wt)は、Ohnuma et al.,2004; Tanaka et al., 1992; Tanaka et al., 1993に記載された方法で培養した。
ヒト末梢血T細胞は、健常人のボランティアから回収し、培養した末梢血単球細胞(PBMC)からMACS Pan T細胞単離キットII(Miltenyi, Auburn, CA)を用いて精製したものである。インフォームドコンセントは健常人ボランティアから得た。
【0094】
(2)抗体
抗CD26モノクローナル抗体(mAb)であるIF7及び抗CD3mAbであるOKT3はKung et al 1979、Morimoto et al., 1989に記載されたものを使用した。抗CD28mAbである4B10は、ATCCから入手した。APC結合抗CD3mAb、PE(phycoerythrin)結合抗CD26mAb及びFITC結合ストレプトアビジンは、BDバイオサイエンス(San Jose, CA)から購入した。HRP(horseradish peroxidase)結合抗ヤギIgGはAbcam(Cambridge, UK)から購入した。HRP結合抗ヒトIgGはアマシャムバイオサイエンス(Piscataway, NJ)から購入し、抗Xpress mAb、HRP結合抗Xpress mAbは、Invitrogen(Carlsbad, CA)から購入した。
【0095】
(3)試薬
再構成したタンパク質又は抗体のビオチン化は、EZ-LinkTMSulfo-NHS-LC-Biotin試薬(PIERCE, Rockford, IL)を用いて、取扱い説明書にしたがって行った。
プロテアーゼインヒビターカクテル、フォスファターゼインヒビターカクテル及びポリ-L-リジンは、Sigma-Aldrich(St. Louis, MO)から購入した。
【0096】
2.フローサイトメトリー(FCM)
ビオチン化NT-Fc又はNTΔSCD-Fcに結合するJ. CD26wt又は300-19-CD26wtの解析では、1×106個の細胞を氷冷したPBS(phosphate buffered saline)で洗浄し、Fcγ1及びマウスIgアイソタイプ(1μg/ml)とインキュベートし、非特異的結合を阻害した。続いて、ビオチン化NT-Fc又はNTΔSCD-Fc(1μg/ml)と反応させ、FITC結合ストレプトアビジン(1:500)で染色した。
【0097】
阻害実験においては、非標識マウスIgG(20μg/ml)又は非標識抗CD26mAb(20μg/ml)を細胞とインキュベートし、その後ビオチン化NT-Fc又はNTΔSCD-Fcと反応させた。
【0098】
サイトカイン産生解析実験では、まず、プレートに結合させた抗CD3(0.05μg/ml)とNT-Fc(5μg/ml)又はNTΔSCD-Fc(5μg/ml)との存在下又は非存在下において、精製したT細胞(1×106個/ウェル)をAIM-V培養液(GIBCO, Grand Island, NY)中で72時間刺激した。
【0099】
10,000個の可視化細胞のフローサイトメトリー解析は、FACS caliburTM(Becton-Dickinson, La Jolla, CA)で行った。各々の実験は、少なくとも3回繰り返し、結果はヒストグラムの形式、又は代表的な実験例のドットプロットで表した。
【0100】
3.T細胞の増殖アッセイ及びIL-2産生アッセイ
1×105個の精製したT細胞は、96ウェル平底プレート(COSTAR, Corning, NY)で200μLのAIM-V培地(GIBCO, Grand Island, NY)中で培養した。
固相刺激では、抗CD3mAb(OKT3, 0.05μg/ml)及び/又は抗CD26mAb(5μg/ml)、抗CD28mAb(4B10, 5μg/ml)又はFc融合タンパク質(5μg/ml)をプレートに結合した。
Caveolin-1をトランスフェクトしたCHO細胞を用いた刺激では、精製したT細胞(1×105個/ウェル)を、可溶性抗CD3mAb(OKT3, 0.05μg/ml)の存在下に、様々な量のCHO細胞形質転換体(T細胞:CHO細胞=800, 400, 200, 100, 50, 25:1、又はCHO細胞無し)と培養した。T細胞を共刺激する前に、CHO形質転換体は、0.05%グルタルアルデヒドにより室温で30秒間固定化し、その後PBSで3回洗浄した。
T細胞の増殖は、[3H]-TdR(ICN Radiochemical, Irvin, CA)の取り込みにより測定した。細胞は、96時間インキュベートし、1μCi/wellの[3H]-TdRを16時間パルスし、グラスファイバーフィルターでハーベストした。そして、取り込まれた放射活性を液体シンチレーションカウンターで定量した。
【0101】
IL-2の産生アッセイには、5×105個のネイティブJurkat細胞(JKTwt)又はJ.CD26細胞をプレートに結合させた抗CD3mAb(1.0μg/ml)及び/又は抗CD26mAb(10μg/ml)、抗CD28mAb(10μg/ml)又はFc融合タンパク質(10μg/ml)の存在下で培養した。48時間のインキュベーション後、培養上清を3つのウェルから集め、IL-2の含有量をBiotrack ELISA Kit(Amersham Biosciences)を用いて、取扱説明書に従って測定した。
【0102】
阻害実験では、細胞を可溶性の抗CD26mAb(IF7)、抗CD28mAb(4B10)又はコントロールであるマウスIg(各々20μg/ml)で処置し、刺激性の抗体及び/又はFcタンパク質でコートしたプレート中で培養した。
【0103】
4.細胞溶解液の調製、免疫沈降及びウェスタンブロット
刺激した細胞(1×108個の)をペレットにし、TBSDバッファー(50 mM Tris-HCl(pH7.6)、150 mM NaCl、2 mM EDTA、0.1 %ジギトニン、102倍希釈したプロテアーゼインヒビターカクテル(Sigma)、102倍希釈したフォスファターゼインヒビターカクテル(Sigma))で溶解し、免疫沈降した。その後、SDS-PAGE及びウェスタンブロット解析した。
【0104】
5.統計
Studentのtテストを、対照及びサンプル間の差異の有意性検定に使用した。P<0.005を有意とした。
【実施例2】
【0105】
caveolin-1−Fcγ1融合タンパク質の作製
本実施例は、caveolin-1の骨格領域を含む細胞外領域とFcγ1領域との可溶性融合タンパク質を作製することを目的とする。詳しくは、ヒトcaveolin-1のN末端領域とヒトIgG1のFcγ1とからなる可溶性の融合タンパク質(NT-Fc)、又はcaveolin-1の骨格領域(SCD)を除いたN末端領域とヒトIgG1のFcγ1とからなる可溶性の融合タンパク質(NTΔSCD-Fc)を作製することを目的とする(図1)。また、caveolin-1の骨格領域とFcγ1とからなる可溶性の融合タンパク質(SCD-Fc)を作製することを目的とする。
【0106】
(1)caveolin-1−Fcγ1融合タンパク質の発現プラスミドの構築
caveolin-1−Fcγ1融合タンパク質発現プラスミドを構築するにあたり、まず、caveolin-1を融合していないFcγ1部分だけを発現するFcγ1融合タンパク質発現用のカセットベクターの構築を行った(図2)。すなわち、pEB-CAGベクターのマルチクローニングサイトに、ヒトE-cadherinのシグナルペプチド(huECDSP)及びヒトIgG重鎖のヒンジ、CH2及びCH3部分(Fcγ1)の発現カセットを挿入した(pEB6-CAG-huECDSP-Fcγ1)。
【0107】
次に、caveolin-1の細胞外部分をFcγ1タンパク質に融合させたcaveolin-1−Fcγ1融合タンパク質の発現プラスミドを以下のように作製した。
まず、作製したFcγ1タンパク質発現カセットベクター(pEB6-CAG-huECDSP-Fcγ1)のhuECDSP−Fcγ1間に、caveolin-1の細胞外領域をクローニングした。すなわち、caveolin-1のN末端側2〜101番目のアミノ酸をコードする遺伝子を遺伝子組換えによりpEB6-CAG-huECDSP-Fcγ1ベクターにクローニングした(Cav-1-NT-Fcγ1)。また、N末端側2〜80番目のアミノ酸をコードする遺伝子を組み込んだベクター(Cav-1-NT-ΔSCD-Fcγ1)も同様に作製した(図1)。また、骨格領域としてcaveolin-1の75〜101番目のアミノ酸をコードする遺伝子を組み込んだベクターも同様に作製した。
【0108】
(2)caveolin-1−Fcγ1融合タンパク質の発現
Caveolin-1-Fc融合タンパク質は、まず、HEK293Tにプラスミドを導入して発現させた。つまり、Lipofectamine 2000試薬 (Invitrogen)を用いて、6 wellプレートに播種した1.0×106 のHEK293Tに5μgのプラスミドコンストラクトを導入、48時間後に培養上清を回収した。
また、大量精製は、浮遊系293細胞FreeStyleTM293-F細胞に構築したベクターを遺伝子導入し、振盪培養を行って、培養上清に十分量のCaveolin-1-Fc融合タンパクが分泌されるか検討を行った。125ml容Erlenmyere flaskに30mlの無血清培地で1×107個の293-F細胞を振盪培養し、20μgのpEB6-CAG-hu ECDSP-Caveolin-1-Fcγ1ベクターを293fectinTM試薬にて遺伝子導入した。48時間後に20mlの培地を添加して250ml容のErlenmyere flaskに移し替え、さらに24時間培養したのち、50mlの培養上清を回収した。以降、72時間毎に上清を回収し、同時に、細胞濃度が1.0×106 /mlになるように継代し、プラスミド導入から1ヶ月にわたり、上清を回収し、凍結保存した。
回収した上清からのCaveolin-1-Fc融合タンパクの精製は、Protein Aカラム(Pierce)を用いてアフィニティー精製を行った。
培養上清中のFcタンパク質濃度の定量は、ヒトIgGに対する酵素結合免疫吸着測定法(ELISA;enzyme-linked immunosorbent assay)(BETHYL LABORATORIES Inc.)で測定した。
【0109】
ヒトELISAによるヒトIgG濃度を測定したところ、ベクターコントロール導入細胞の培養上清は検出感度以下であるのに対し、pEB6-CAG-hu ECDSP-Caveolin-1-Fcγ1ベクター導入細胞上清には、NT-Fcが約10μg/ml、NTΔSCD-Fcが約15μg/ml、SCD-Fc約20μg/mlのヒトIgG成分が含まれていることがわかった(図3A)。そこで、Protein Aカラムを用いて培養上清50mlからFc融合タンパクの精製を行ったところ、NT-Fcが500μg、NTΔSCD-Fcが900μg、SCD-Fcが500μgのFcタンパクが精製された。
【0110】
精製したタンパク質をSDS-PAGE後、抗ヒトIgGでウェスタンブロットした結果を図3Bに示す。泳動サンプルは非還元条件下(-2ME:レーン1-5)と還元条件下(+2ME:レーン6-9)で調製した。また、精製したタンパク質をSDS-PAGE後、ゲルをCBB染色した結果を図3Cに示す。レーン1、6のIgGは精製したマウスIgGで、泳動サンプルは還元条件下(+2ME:レーン6-9)及び非還元条件下(-2ME:レーン6-10)で調製した。
【実施例3】
【0111】
CD26へのcaveolin-1-Fc融合タンパク質の結合活性
(1)本実施例では、CD26が実施例2で作製したNT-Fc融合タンパク質に結合するかどうかについて検討した。
検討には、全長ヒトCD26を安定発現させたJurkat T細胞株(J.CD26wt)及びマウス前駆B細胞株300-19(300-19-CD26wt)を用いた。
J.CD26wtの細胞溶解液を用いた場合、図4に示すように、CD26はNT-Fc(レーン2)と共沈殿したが、Fcγ1(レーン1)ともNTΔSCD-Fc(レーン3)とも共沈殿しなかった。
【0112】
次に、細胞表面のCD26に対するNT-Fcの結合を、フローサイトメトリーを用いて検討した。
図5Aに示すように、細胞表面にCD26を発現するJ.CD26wtは、抗CD26-FITC mAbにより染色された(パネルbの(2))。この抗CD26-FITC mAbによる染色は、非標識抗CD26mAbにより阻害されたが(パネルbの(3))、コントロールIgGによっては阻害されなかった(パネルbの(4))。
また、J.CD26wtは、ビオチン化NT-Fcとそれに続くストレプトアビジン結合FITCによっても染色された(図5Aパネルcの(2))。このNT-Fcによる染色は、非標識抗CD26mAbにより阻害されたが(図5Aパネルcの(3))、コントロールIgGでは阻害されなかった(図5Aパネルcの(4))。一方、J.CD26wtは、NTΔSCD-Fcによっては染色されなかった(図5Aパネルd)。
【0113】
細胞表面に発現するCD26とNT-Fcとの結合をさらに確認するために、300-19-CD26wtを用いてフローサイトメトリー解析を行った。
図5Bパネルbに示すように、CD26を細胞表面に発現する300-19-CD26wtは、抗CD26-FITCmAbにより染色された(パネルbの(2))。この、抗CD26-FITCmAbによる染色は、非標識抗CD26mAbにより阻害されたが(パネルbの(3))、コントロールIgGによっては阻害されなかった(パネルbの(4))。
また、300-19-CD26wtは、ビオチン化NT-Fcとそれに続くストレプトアビジン結合FITCによっても染色された(図5Bパネルcの(2))。このNT-Fcによる染色は、非標識抗CD26mAbにより阻害されたが(図5Bパネルcの(3))、コントロールIgGでは阻害されなかった(図5Bパネルcの(4))。一方、300-19-CD26wtは、NTΔSCD-Fcによっては染色されなかった(図5Bパネルd)。
【0114】
なお、ネイティブな300-19細胞又はJurkat T細胞は、抗CD26mAbによっても、NT-Fcによっても染色されなかった。
【0115】
以上により、caveolin-1の可溶性のN末端側領域は、細胞表面に発現するCD26と結合することが示された。そして、caveolin-1の骨格領域(SCD)がCD26との結合に必要であることも示された。
【0116】
(2)次に、NT-FcとCD26との結合特性を検討するために、BIAcoreを用いて結合親和性を測定した。
測定は、Biacore AB(Uppsala, Sweden)から入手したHBSバッファー(25mM HEPES(pH7.4)、150 mM NaCl、3.4 mM EDTA、0.005% surfactant P20)を用いてBIAcoreTMJ(Biacore JAPAN, Tokyo, Japan)で行った。
Fcγ1(図6(a))、NT-Fc(図6(b))又はNTΔSCD-Fc(図6(c))は10 mM酢酸ナトリウム(pH5.0)中、Amine Coupling Kit(Biacore AB)を用いて、5分間反応させることにより研究グレードのCM5センサーチップ(Biacore AB)に結合させた。これにより、約5,000から約6,000反応単位(RU)の固定化チップが得られた。
結合後、5mM NaOHによりチップ表面を洗浄した。なお、この5mM NaOHは、Fcγ1、NT-Fc又はNTΔSCD-Fc固定化チップを再生する際にも使用した。
【0117】
再構成可溶性CD26(rsCD26)は、ヒトCD26の細胞外領域を含有している(ohnuma et al., 2001; Tanaka et al., 1994)。種々の濃度のrsCD26(50 nM、25 nM、12.5 nM、6.3 nM、3.2 nM又は1.6 nM)を、Fcγ1、NT-Fc又はNTΔSCD-Fc固定化チップ上に120秒間注入した。
平衡結合解析は、BIA evaluation software version 2.1(BIAcore AB)を用いて行った。
【0118】
その結果、各濃度のrsCD26における平衡結合解析により、NT-FcとrsCD26とのKd値は〜2×10-5Mであった(図6(b))。
この結果は、caveolin-1のN末端領域はCD26に直接結合することを明確に示している。
【0119】
(3)次に、CD26を介したT細胞共刺激において、NT-Fcは抗CD-26mAbと同様の共刺激効果を有するかについて検討した。
本発明者らは、これまでにJ.CD26wt細胞において、CD26に抗体を結合させると、TCR/CD3に依存的にT細胞を共刺激し、IL-2産生が増強することを示している(Tanaka et al., 1992)。
図7Aに示すように、J.CD26wt細胞において、IL-2産生はプレートに結合した抗CD3mAbとNT-Fcにより誘導された。そしてこの誘導は、抗CD3mAbと抗CD28mAb、又は抗CD3mAbと抗CD26mAbによる誘導と同レベルであった。CD28、CD26は、CD26と同じT細胞の共刺激分子である。
一方、IL-2の産生は、CD26を発現させていないJKTwt細胞を抗CD3mAbと抗CD26mAb、抗CD3mAbとNT-Fcで刺激しても観察されなかった。また、J.CD26wt又はJKTwt細胞におけるIL-2の産生は、コントロールであるFcγ1又はNTΔSCD-Fcを用いても観察されなかった。
【0120】
さらに、NT-FcによるT細胞の共刺激活性がCD26を介したものであることを検討するために、NT-FcとCD26との結合を阻害するCD26に特異的なmAbを用いて、阻害実験を行った。
図7Bに示すように、プレートに結合した抗CD3mAbとNT-FcによるIL-2の産生は、可溶性の抗CD26mAbにより阻害されたが、可溶性の抗CD28mAbでは阻害されなかった。また、コンロトールであるFcγ1又はNTΔSCD-Fcは、T細胞共刺激活性を示さなかった。
【0121】
実施例1及び実施例2の結果(図4〜7)から、caveolin-1はCD26に直接結合し、かつ、CD26を介したT細胞共刺激を誘導することが示された。
【実施例4】
【0122】
CD26を介した共刺激によるcaveolin-1によるT細胞の増殖
本実施例では、CD26を介したT細胞共刺激において抗CD26抗体が示す作用をNT-Fcが再現し得ることを確認することを目的とした。
(1)まず、健常人から提供された血液から単離した末梢血T細胞を用いて固相刺激を行った。
図8Aに示すように、T細胞の増殖は固相に固定化した抗CD3mAbとNT-Fcとにより誘導され、その誘導の程度は、抗CD3mAbと抗CD28mAbとによる誘導、又は抗CD3mAbと抗CD26mAbとによる誘導と同レベルであった。一方、コントロールであるFcγ1又はNTΔSCD-Fcを用いた場合は、T細胞の増殖は認められなかった。
【0123】
また、図8Bに示すように、NT-Fcは、濃度依存的にT細胞の共刺激を誘導した。
J.CD26wtでは、末梢血T細胞の結果と同様に、抗CD3mAbとNT-Fcとによる刺激により増殖が誘導された。一方、CD26を発現させていないJurkat細胞では増殖は誘導されなかった。
【0124】
以上のことは、NT-Fcは、CD26と機能的に結合し、CD26に対して特異的に結合するタンパク質であることを示している。
【0125】
(2)さらに、caveolin-1の共刺激活性を調べるために、本発明者はヒトcaveolin-1を安定に発現するCHO細胞を作製した。
まず、全長ヒトcaveolin-1のGFP融合タンパク質を発現するベクター(Cav-wt+ CHO)、ヒトcaveolin-1からSCDを除いたものとのGFP融合タンパク質を発現するベクター(Cav-ΔSCD+CHO)又はインサートを挿入していないベクター(mock+CHO)をそれぞれ作製した。作製した各ベクターを用いて、CHO細胞をトランスフェクトした。
図8Cに示すように、Cav-wt+ CHO細胞は抗CD3mAbの存在下にT細胞共刺激活性を発現した。しかしながら、Cav-ΔSCD+CHO細胞又はmock+CHO細胞ではこのような共刺激活性は認められなかった。
【0126】
以上より、caveolin-1はTCR/CD3経路を介するT細胞の共刺激活性を有し、T細胞を増殖させ得ることが示された。
【実施例5】
【0127】
caveolin-1によるT細胞共刺激の阻害
NT-FcのT細胞共刺激活性は、CD26を介したものであるのかをさらに調べるために、NT-FcとJ.CD26又は300-19-CD26wtとの結合を阻害するCD26特異的mAb(図5A及びBで使用した抗体)を用いた阻害実験を行った。
まず、図9Aに示すように、プレートに結合した抗CD3mAbと抗CD26mAbによるT細胞の増殖は、可溶性の抗CD26mAbにより阻害されたが、可溶性の抗CD28mAbによっては阻害されなかった。一方、プレートに結合した抗CD3mAbと抗CD28mAbによるT細胞の増殖は、可溶性の抗CD28mAbにより阻害されたが、可溶性の抗CD26mAbによっては阻害されなかった。
【0128】
このような実験条件において、プレートに結合した抗CD3mAbとNT-FcによるT細胞の増殖は、可溶性の抗CD26mAbによって阻害されたが、可溶性の抗CD28mAbでは阻害されなかった(図9A)。
さらに、NT-Fcによる共刺激は、CD26特異的mAbにより濃度依存的に阻害された(図9B)。また、コントロールであるIgG又は抗CD28mAbは、0〜50μg/mlの濃度において、NT-Fcの共刺激活性を阻害しなかった。
【0129】
図4〜9に示す結果から、caveolin-1はCD26に直接結合し、CD26を介するT細胞の共刺激を誘導することが明確に示された。
【実施例6】
【0130】
Caveolin-1−Fcγ1融合タンパク質によるCD26を介したT細胞共刺激の阻害
CD26陽性細胞は、破傷風トキソイドなどのメモリー抗原に反応し、活性化することが知られている。そこで、破傷風トキソイド(TT)刺激によるAPC・CD4+T細胞の再混合実験を以下のように行った(図10A)。すなわち、PBMCから純化した単球(0.5×103)を0.5μg/mlの破傷風トキソイド(Calbiochem)を添加したMacrophage-SFM培地にて培養、24時間後に、同一ドナー由来の純化CD4+T細胞(1×104)と混合して96 well-round bottom multiplate(Costar)に播種、AIM-V無血清培地にて96時間培養した。
【0131】
阻害実験では、混合直前の単球を1、5、10、20μg/mlのCD86抗体(クローンIT2.2, BD PharMingen)あるいはCTLA4-Ig(Ancell)、コントロールIg(Ancell)で処理した。同様に、CD4+T細胞も混合直前に抗CD26抗体(1F7)、抗CD28抗体(4B10)で処理して、阻害実験を行った。
ここで、CTLA4とは、CD152とも呼ばれ、T細胞の活性化によってT細胞上に出現し、リガンドであるAPC上のCD80やCD86と結合するタンパク質である。CTLA4とそのリガンドとの相互作用は、T細胞免疫反応を抑制すると考えられている。
培養最後の16時間に1μCi/wellの3H-thymidineを添加し、細胞をハーベスターでグラスフィルターに回収し、液体シンチレーションカウンターにて放射活性を計測した。
図10Aに再構成実験のプロトコールを模式的に示した。
【0132】
純化したCD4+細胞のCD3, CD4, CD26, CD28の発現パターンを図10Bに示した。CD4の純度は98%以上である。
【0133】
まず、破傷風トキソイドを添加したところ、CD4+T細胞は強く増殖反応を示した(図10Cの*)。
ついで、再混合直前にCD4+T細胞をCD26抗体(1F7)で処理すると、増殖は抑制された(図10Cの棒グラフ3)。1F7の液層におけるT細胞増殖抑制効果は既報で示されており、本実施例の結果はこれと同等の結果である(Ohnuma, et al., 2002)。
一方、CD28抗体(4B10)で処理した場合、破傷風トキソイドによる増殖反応は増強された(図10Cの棒グラフ2)。これは、CD28抗体(4B10)がAPC存在下においても、CD26抗体1F7とは異なり、agonistic antibodyとして働いていると解釈される(Gimmi, et al., 1991)。
また、破傷風トキソイドをパルスした単球を再混合直前にCTLA4-IgあるいはCD86抗体(IT2.2)で処理して再構成実験を行うと、T細胞の増殖は抑制された(図10Cの棒グラフ5,6)。
さらに、再混合直前のCD4+T細胞をFc融合タンパクで処理し再構成実験を行ったところ、NT-FcおよびSCD-Fcによって、T細胞増殖反応は抑制された(図10Cの棒グラフ8,10)が、NTΔSCD-Fcでは変化を認めなかった(図10Cの棒グラフ9)。
【0134】
上記の抑制効果を確認するため、濃度依存性に抑制効果があるか検討した。図10Dに示したように、CTLA4-Igによって、破傷風トキソイド反応性CD4+T細胞増殖は濃度依存的に抑制され(図10Dの*)、既報と同等の結果が認められた(Ohnuma, et al., 2001)。
さらに、NT-FcおよびSCD-Fcにおいても濃度依存的に抑制効果が認められた(図10Dの**、***)。
一方、NTΔSCD-Fc処理では、1-20μg/mlまで添加しても抑制効果は認められなかった(図10Dの#)。
【0135】
本実施例から、caveolin-1−Fcγ1融合タンパク質が、T細胞の増殖反応を抑制することが示された。したがって、caveolin-1−Fcγ1融合タンパク質が、抗原特異的免疫応答におけるCD26-caveolin-1の相互作用をブロックし、T細胞抑制作用又はがん抑制作用などを有する可能性が示された。
【実施例7】
【0136】
caveolin-1−Fcγ1融合タンパク質によるDPPIV酵素活性に対する阻害効果
可溶性CD26(rsCD26)の産生、精製は発明者らが確立した方法にしたがって行った(Ohnuma et al., 2001, Tanaka et al., 1994)。1μMのrsCD26に対し、各濃度のDPPIV阻害剤Valine-pyrrolidide(Val-pyr、1mM stock solution in DMSO)、あるいは、Fc融合タンパクを、最終液量が1サンプルにつき50μlになるように添加し、25℃、5分間混和した後、DPPIV酵素活性を計測した。DPPIV酵素活性の定量はDPPIV-GloTMProtease Assay(Promega)を用い、酵素活性は、DPPIVの活性によりGly-Pro-aminoluciferinから産生されるルミノール発光をルミノメーターで計測し、相対的発光強度(RLU)で表した。計測結果はtriplicateの平均値(RLU)と標準誤差で示した。
【0137】
可溶性CD26に対し、DPPIV阻害剤Valine-pyrrolidide(Val-Pyr)を添加しDPPIV酵素活性を計測したところ、図11Aに示したように、Val-Pyrの濃度依存性にDPPIV酵素活性が阻害された(▲)。このとき、50%抑制濃度IC50を計算すると約3μMで、従来の報告(2.4μM)とほぼ同程度であることが示された(Senten et al., 2002)。
【0138】
次に、可溶性CD26にNT-Fcを添加してDPPIV酵素活性を検討したところ、Val-Pyrと同様に、NT-Fcの濃度依存的にDPPIV酵素活性が抑制されIC50は、15μMと計算された(図11Bの○)。同様に、SCD-Fcによっても可溶性CD26のDPPIV酵素活性が抑制されたが(図11Bの×)、NTΔSCD-Fcでは、抑制されなかった(図11Bの▲)。
【0139】
以上の結果より,NT-FcとSCD-FcはCD26と結合し、さらに、CD26のDPPIV酵素活性を抑制することが示された。したがって、caveolin-1とCD26との結合部位と、DPPIV酵素阻害部位は一部共通していると予想され、DPPIV阻害剤は、潜在的にT細胞免疫応答に対する抑制作用を有する可能性が示された。また、caveolin-1−Fcγ1融合タンパク質は、DPPIVを阻害することにより糖尿病の治療薬として使用できる可能性も示された。
【0140】
以上の実施例により、caveolin-1はCD26の共刺激リガンドであることが示された。また、caveolin-1がCD26に連結することにより、TCR/CD3の共刺激と共にT細胞の増殖及びNF-κBの活性化が誘導されることも示された。
【0141】
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【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】caveolin-1−Fcγ1融合タンパク質を示す図である。
【図2】pEB6-CAG-hu ECDSP-Fcγ1ベクターの概略図である。
【図3】caveolin-1−Fcγ1融合タンパク質を発現させた細胞を用いたSDS-PAGE及びウェスタンブロットの結果を示す図である。
【図4】NT-FcのCD26への結合を免疫沈降実験により示す図である。 500μgのJ.CDwt細胞溶解液をFcγ1とプロテインAセファロースビーズで前もって吸収し、2μgのFcγ1(レーン1)、NT-Fc(レーン2)又はNTΔSCD(レーン3)で免疫沈降(IP)した。次に、免疫沈降複合体を5-20%のSDS-PAGEを用いて分離し、ウェスタンブロットを行い、抗CD26mAbでイムノブロットした(上パネル)。用いた50μgの細胞溶解液についても解析した(レーン4)。メンブレンから抗CD26mAbをはがし、HRP結合抗ヒトIgGを結合させた(下パネル)。図4に示す結果と同様の結果が、独立した3回の実験で得られた。
【図5】NT-FcのCD26への結合をフローサイトメトリーにより示す図である。 (A):J.CD26wt細胞を、Fc融合タンパク質の結合活性に使用した。パネル(a):解析した細胞の前方及び横散乱図を示す。黒丸は解析されたゲート領域を示す。パネル(b):細胞をFITC結合コントロールマウスIgG(1)、又はFITC結合抗CD26mAb(2)で染色した。阻害アッセイでは、細胞をまず非標識抗CD26mAb(3)又は非標識コントロールマウスIgG(4)と反応させ、次に、(2)のように染色した。パネル(c):細胞をビオチン化Fcγ1(コントロール)(1)又はビオチン化NT-Fc(2)で染色し、FITC結合ストレプトアビジンと反応させた。阻害アッセイでは、細胞をまず、非標識抗CD26mAb(3)又は非標識コントロールIgG(4)と反応させ、次に、(2)のように染色した。パネル(d):細胞をビオチン化Fcγ1(コントロール)(1)又はビオチン化NTΔSCD-Fc(2)で染色し、FITC結合ストレプトアビジンと反応させた。阻害アッセイでは、細胞をまず、非標識抗CD26mAb(3)又は非標識コントロールIgG(4)と反応させ、次に、(2)のように染色した。パネル(d)に示す4つのグラフは、全て同じ位置に重なった。 (B):300-19-CD26wt細胞を用いて、(A)と同様のFc融合タンパク質の結合アッセイを行った。
【図6】NT-FcのCD26への結合をBiacoreを用いた実験により示す図である。 可溶性CD26(rsCD26)に対するFc融合タンパク質の親和性を、平衡状態の結合により測定した。rsCD26は、25℃において、50 nMから2倍希釈(50 nM、25 nM、12.5 nM、6.3 nM、3.2 nM及び1.6 nM)で、Fcγ1上(a)、NT-Fc上(b)又はNTΔSCD-Fc上(c)に流した。これらのタンパク質は、それぞれ6032 RU(response unit)、4996 RU又は4852 RUで固定化されている。図5に示す曲線は、コントロール細胞で観察されたバックグラウンド反応を差し引いた後の特異的結合を表す。
【図7】NT-FcのIL-2の産生活性を示す図である。 (A):ネイティブなJurkat(JKTwt)又はJ.CD26wt(5×105/well)を96ウェル平底プレートで培養し、グラフ下に示された抗体及び/又はFc融合タンパク質(抗CD3抗体、10μg/ml; 抗CD28抗体、抗CD26抗体、Fcγ1、NT-Fc、NTΔSCD-Fc、各10μg/ml)で固定化した。48時間培養した後、培養上清を3つのウェルから集め、IL-2含有量を測定した。グラフの値は、3回の独立した実験の3培養から求めた平均値±S.E.を示す。「*」及び「***」は有意な増加(p<0.05)を示し、また、「**」及び「#」は、対照と比べて有意な変化の無いことを示す。 (B):抗CD26抗体、抗CD28抗体又はコントロールマウスIgGで阻害した後、J.CD26wt細胞を(A)で記載したように刺激し、IL2を測定した。グラフの値は、3回の独立した実験の3培養から求めた平均値±S.E.を示す。「*」及び「**」は、抗CD26mAbでの阻害により得られた有意な阻害結果を示す(p<0.05)。また、「#」及び「##」は、抗CD28mAbでの阻害により得られた有意な阻害結果を示す(p<0.05)。
【図8】NT-Fc及び抗CD3mAbの共刺激により、末梢血T細胞が増殖することを示す図である。 (A):1×105/wellのT細胞を、グラフ下に記載された抗体及び/又はFc融合タンパク質(抗CD3抗体、0.05μg/ml;抗CD28抗体、抗CD26抗体、Fcγ1、NT-Fc、NTΔSCD-Fc、各5μg/ml)を固定化した96ウェル平底プレートで培養した。96時間培養した後、16時間の[3H]-チミジン(TdR)の取り込みにより、増殖を測定した。グラフの値は、5人のドナーの3培養から求めた平均値±S.E.を示す。「*」は有意な増加を示し(p<0.05)、また、「**」は対照に比べて有意な変化の無いことを示す。 (B):1×105/wellのT細胞を、抗CD3抗体の存在下(0.05μg/ml)、グラフ下に記載された濃度のFc融合タンパク質を固定化した96ウェル平底プレートで培養した。増殖は、(A)に示すように測定した。グラフの値は、5人のドナーの3培養から求めた平均値±S.E.を示す。「*」は、対照と比べて有意な増加を示す(p<0.05)。 (C):1×105/wellのT細胞を、抗CD3抗体の存在下(0.05μg/ml)、0.05%グルタルアルデヒドで固定化した様々な量のCHO形質転換体と溶液中で培養した。「Cav-wt+CHO」、「Cav-ΔSCD+CHO」又は「mock+CHO」は、それぞれ、GFP-全長caveolin-1、GFP-骨格領域を除いたcaveolin-1又はGFP発現ベクターでトランスフェクトしたCHO細胞を意味する。増殖は、(A)に示すように測定した。グラフの値は、5人のドナーの3培養から求めた平均値±S.E.を示す。「*」は、対照と比べて有意な増加を示す(p<0.05)。
【図9】NT-Fcにより誘導されるT細胞の増殖が、抗CD26mAbにより阻害されることを示す図である。 (A):可溶性の抗CD26抗体、抗CD28抗体又はコントロールマウスIgGでT細胞をブロックした後、図8Aと同様の方法でT細胞を刺激し、増殖を測定した。グラフの値は、5人のドナーの3培養から求めた平均値±S.E.を示す。「*」又は「***」は、抗CD26mAb又はNT-Fcでの阻害により得られた有意な阻害結果を示す(p<0.05)。また、「**」は、抗CD28mAbでの阻害により得られた有意な阻害結果を示す(p<0.05)。 (B):可溶性の抗CD26mAb、抗CD28mAb又はコントロールマウスIgG(0, 0.5, 5.0, 10.0, 20.0及び50μg/ml)とT細胞をインキュベーションすることでブロックした後、図8Aと同様の方法でT細胞をプレートに結合した抗CD3抗体(0.05μg/ml)及びNT-Fc(5μg/ml)で刺激し、図8Aと同様の方法で増殖を測定した。グラフの値は、5人のドナーの3培養から求めた平均値±S.E.を示す。「*」は、対照に比べて有意な増加を示す(p<0.05)。
【図10】破傷風トキソイド刺激によるCD4+T細胞の増殖反応に対するcaveolin-1−Fcγ1融合タンパク質の抑制効果を示す図である。
【図11】DPPIV酵素活性の阻害実験の結果を示す図である。
【図12】抗原特異的T細胞活性化におけるcaveolin-1−Fcγ1融合タンパク質によるCD26の阻害効果を示す模式図である。
【配列表フリーテキスト】
【0143】
配列番号1:配列番号2で示されるヒトcaveolin-1をコードするDNAの塩基配列を示す。
配列番号2:ヒトcaveolin-1のアミノ酸配列を示す。
配列番号3:配列番号4で示されるFcγ1をコードするDNAの塩基配列を示す。
配列番号4:Fcγのアミノ酸配列を示す。
配列番号5:NT-Fcγ1のアミノ酸配列を示す。
配列番号6:SCD-Fcγ1のアミノ酸配列を示す。
配列番号7:hu-ECDSPのアミノ酸配列を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
caveolin-1の骨格領域の全部又は一部からなる第1領域、並びに免疫グロブリン分子のヒンジ、CH2及びCH3領域からなる第2領域を含有し、CD26への結合活性を有する、caveolin-1−Fcγ1融合タンパク質。
【請求項2】
caveolin-1の骨格領域が、以下の(a)又は(b)のポリペプチドである、請求項1に記載の融合タンパク質。
(a) 配列番号2で示されるアミノ酸配列のうち第82番目から第101番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b) 配列番号2で示されるアミノ酸配列のうち第82番目から第101番のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、CD26への結合活性を有するポリペプチド
【請求項3】
請求項1又は2記載の融合タンパク質をコードするDNA。
【請求項4】
請求項3記載のDNAを含有する、caveolin-1−Fcγ1融合タンパク質発現ベクター。
【請求項5】
請求項1又は2記載の融合タンパク質を含有する医薬組成物。
【請求項6】
自己免疫疾患、拒絶反応、移植片対宿主病、関節リウマチ、血管炎症候群、悪性腫瘍、悪性中皮腫、急性若しくは慢性移植片対宿主病、拒絶反応、閉塞性動脈硬化症、心筋梗塞又は脳梗塞を治療するための請求項5記載の医薬組成物。
【請求項7】
caveolin-1の骨格領域の全部又は一部を含有する、CD26を介したT細胞共刺激リガンド。
【請求項8】
caveolin-1の骨格領域の全部又は一部からなる第1領域、並びに免疫グロブリン分子のヒンジ、CH2及びCH3領域からなる第2領域を含有する、CD26を介したT細胞共刺激リガンド。
【請求項9】
請求項1又は2記載の融合タンパク質を、抗CD3抗体の存在下で単離T細胞に接触させることを特徴とする、T細胞の共刺激方法。
【請求項10】
caveolin-1によるCD26を介したT細胞共刺激活性を制御する物質のスクリーニング方法であって、
(i) 請求項1又は2記載の融合タンパク質とCD26とを接触させた場合、及び(ii) 請求項1又は2記載の融合タンパク質及び被験物質とCD26とを接触させた場合における、CD26と融合タンパク質との結合量又はT細胞共刺激活性を測定することを含有する、前記方法。
【請求項11】
T細胞共刺激活性の測定が、T細胞からのIL-2の産生量の測定又はT細胞の増殖活性の測定である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
評価対象物質の有するCD26を介したT細胞共刺激活性を評価する方法であって、
(i) 請求項1又は2記載の融合タンパク質とCD26とを接触させた場合、及び(ii) 請求項1又は2記載の融合タンパク質及び被験物質とCD26とを接触させた場合における、CD26と融合タンパク質との結合量又はT細胞共刺激活性を測定することを含有する、前記方法。
【請求項13】
評価対象物質がジペプチジルペプチダーゼIV阻害活性を有する物質である、請求項12記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−161074(P2008−161074A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−351154(P2006−351154)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】