説明

fugetacticタンパク質、組成物および使用方法

本発明は、遊走能力を有する細胞の運動を調節する組成物および方法に関する。より具体的には、本発明は、対象中の特定部位から遠ざかる細胞の遊走運動(fugetaxis)を促進するための組成物および方法に関する。上記は、対象中の特定部位から遠ざかる遊走細胞運動を促進する必要性によって特徴づけられる症状の治療において特に有用である。特定部位は、炎症、感染、自己免疫反応、腫瘍、および移植臓器または組織の部位を含む。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
公的支援
本発明の態様は米国国立衛生研究所グラントMGH2238:RO1A149757-02およびR21A14589801からの資金提供を用いて開発された。したがって、米国政府は本発明に権利を有する。
【0002】
関連出願/特許および参考文献
本出願は2003年7月7日出願の米国特許出願公開第60/485,550号に基づく優先権を主張する。
【0003】
本文中に引用された各出願および特許、および各出願および特許で引用された文書または参考文献(各発行済み特許の手続中を含む;「出願引用文書」)、およびこれらの出願および特許のいずれかに対応するおよび/またはいずれかに基づき優先権を主張する各PCTおよび外国出願または特許、および出願引用文書のそれぞれで引用または参照された各文書は、ここに明示的に参照により本開示に含まれる。より一般的に、参考文献一覧にまたは本文自体において、文書または参考文献が本文に引用される;および、これらの文書または参考文献のそれぞれ(「引用文献」)、および各引用文献中で引用された各文書または参考文献(仕様書、取扱説明書などを含む)はここに明示的に参照により本開示に含まれる。
【0004】
発明分野
本発明は、遊走能力を有する細胞の運動を調節する組成物および方法に関する。より具体的には、本発明は、対象中の特定部位から遠ざかる細胞の遊走運動(すなわち、fugetaxis)を促進するかまたはそのような運動を阻害するための組成物および方法に関する。上記は、そのような遊走細胞運動(migratory cell movement)から利益を得る症状の治療において特に有用である。
【背景技術】
【0005】
特定の刺激に応答した細胞運動が原核生物および真核生物で起こることが知られている(Doetsch RN および Seymour WF., 1970; Bailey GB et al. , 1985)。これらの生物で見られる細胞運動は、従来は三つの種類に分類されている;走化性(chemotaxis)すなわち化学物質の漸増する濃度へ向かう勾配に沿った細胞の運動;化学的刺激の勾配を下る運動として説明されている負の走化性(すなわち「忌避走性(fugetaxis)」)、およびケモキネシス(chemokinesis)すなわち化学物質によって誘導される細胞のランダムな運動の増大である。特定の走化性活性化合物の作用に関する受容体およびシグナル伝達経路は原核細胞で広く明らかにされている。E. coli走化性の研究は、本細菌をある濃度および条件で誘引する化学物質はまた、負の走化性すなわち「fugetaxis」を別の濃度および条件で誘導しうることを明らかにしている(Tsang N et al. , 1973; Repaske D および Adler J. 1981 ; Tisa LS および Adler J. , 1995; Taylor BL および Johnson MS., 1998)。
真核fugetacticポリペプチド,およびその阻害剤の同定および特徴づけは、遊走細胞運動を調節するために有用な特有の活性を有する治療剤の開発に繋がりうる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで示す通り、fugetactic物質は特定部位から遊走細胞を追い払う機能を有することが発見されている。本発明の一部の態様ではこれらのfugetactic物質およびその組成物が提供される。一部の実施形態では、組成物はfugetaxisを促進するのに有効な量で提供される。本発明の別の態様では、抗fugetactic物質(anti-fugetactic agent)が提供され、これらの抗fugetactic物質を含む組成物はまた、fugetaxisを阻害するのに有効な量で提供される。本発明の別の態様では、そのような組成物の使用方法を提供する。
【0007】
一部の場合には、提供されるfugetactic物質は熱ショックタンパク質(HSP)である。別の場合には、これらのfugetactic物質は熱ショックタンパク質様タンパク質(HSPLP)である。本発明の一部の態様では、HSPまたはHSPLPを、医薬品として許容されるキャリヤーと組み合わせる。一部の態様では、HSPまたはHSPLPはfugetactic活性を促進するのに有効な量で提供される。一部の実施形態では、HSPまたはHSPLPは、約84kDaの分子量を有する。別の実施形態では、HSPまたはHSPLPは、約86kDaの分子量を有する。さらに別の実施形態では、HSPまたはHSPLPは、約94kDaの分子量を有する。
【0008】
さらに別の実施形態では、提供されるHSPまたはHSPLPは、HSP60(シャペロニン)、HSP70、またはHSP90ファミリーといったHSPファミリーのメンバーである。特定の実施形態では、HSPまたはHSPLPはhsp90ファミリーのメンバーである。一部の実施形態では、HSPまたはHSPLPはHSP90aであるかまたはHSP90βまたはその変異体である。ここで提供されるHSPまたはHSPLPタンパク質はしたがって、配列番号1〜8として示されるアミノ酸配列によってコードされるタンパク質、およびその断片および変異体(図1)を包含する。
【0009】
ここで提供されるHSPまたはHSPLPタンパク質はまた、ここで提供されるアミノ酸配列のいずれかまたはその組み合わせを含むタンパク質を包含する。一部の実施形態では、アミノ酸配列は図12および13(表1)に示される。一部の実施形態では、アミノ酸配列は図12および13(表1)に示されるものであるが、しかし各末端位置にあるアミノ酸残基のどちらかまたは両方を有さない。
【0010】
さらに別の実施形態では、HSPまたはHSPLPは分泌型である。これらの実施形態では、分泌型のHSPまたはHSPLPはシグナル配列または分泌配列を含んでいてよい。さらに別の実施形態では、HSPまたはHSPLPは分泌型でない。さらに別の実施形態では、HSPまたはHSPLPは保持シグナルを含む。
【0011】
HSPまたはHSPLPは、ここに記載のHSPまたはHSPLPを産生するかまたは産生するように作ることができる任意の細胞から得ることができる。たとえば、一部の実施形態では、HSPまたはHSPLPはストレスを受けたかまたはストレスを受けていない細胞に由来する。別の実施形態では、細胞は間質細胞である。さらに別の実施形態では、細胞は胸腺間質細胞である。さらに別の実施形態では、HSPまたはHSPLPは腫瘍細胞または腫瘍細胞株に由来する。腫瘍または腫瘍細胞株は、任意の種類の腫瘍に由来しうる。一部の実施形態では、腫瘍または腫瘍細胞株は血液腫瘍または血液腫瘍細胞株である。さらに別の実施形態では、血液腫瘍または血液腫瘍細胞株は白血病またはリンパ腫である。別の実施形態では、血液腫瘍または血液腫瘍細胞株は胸腺腫細胞または胸腺腫細胞株である。これらの実施形態の一部では、胸腺腫細胞株はEL4である。
【0012】
fugetactic活性が有ることが現在見出されているHSPおよびHSPLPに加えて、L-プラスチンもまた同様の機能を示すことが見出されている。したがって、本発明の一部の態様では、fugetactic活性を有するL-プラスチンの組成物が提供される。本発明のさらに別の態様では、fugetactic活性を有するL-プラスチン様タンパク質(LPLP)が提供される。したがって、一態様では、fugetaxisを促進するのに有効な量の単離されたL-プラスチンまたはL-プラスチン様タンパク質と、医薬品として許容されるキャリヤーとを含む医薬組成物が提供される。一部の実施形態では、L-プラスチンまたはLPLPは、約65kDaの分子量を有する。さらに別の実施形態では、L-プラスチンまたはLPLPは、配列番号8(図1)といったアミノ酸配列を含む。ここで提供されるL-プラスチンまたはLPLPタンパク質はまた、ここで提供されるアミノ酸配列のいずれかまたはその組み合わせを含むタンパク質を包含する。一部の実施形態では、アミノ酸配列は図14(表1)に示される。一部の実施形態では、アミノ酸配列は図14に示されるものであるが、しかし各末端位置にあるアミノ酸残基のどちらかまたは両方を有さない。
【0013】
一部の実施形態では、ここで提供されるL-プラスチンまたはLPLPは分泌型である。一部の実施形態では、分泌型のL-プラスチンまたはLPLPはシグナル配列または分泌配列を含む。さらに別の実施形態では、L-プラスチンまたはLPLPはリン酸化または非リン酸化型であってよい。
【0014】
L-プラスチンまたはLPLPは、そのタンパク質を産生するかまたは産生するように作られた任意の細胞から得ることができる。これらの細胞は、一部の実施形態では胸腺間質細胞といった間質細胞を含む。これらの細胞は、別の実施形態では腫瘍細胞または腫瘍細胞株である。別の実施形態では、腫瘍または腫瘍細胞株は血液腫瘍または血液腫瘍細胞株である。さらに別の実施形態では、血液腫瘍または血液腫瘍細胞株は白血病またはリンパ腫である。これらの実施形態の一部では、リンパ腫は胸腺腫である。さらに別の実施形態では、腫瘍細胞株はEL4である。
【0015】
ここで提供されるfugetactic物質はまた、細胞単離物を含む。したがって、本発明の一態様では、細胞のfugetaxisを刺激するのに有効な量のここに記載の単離物と、医薬品として許容されるキャリヤーとを含む医薬組成物が提供される。細胞単離物は、胸腺間質、腫瘍または腫瘍細胞株といった任意の細胞に由来しうる。一部の実施形態では、腫瘍細胞株は胸腺腫細胞株でありうる。これらの実施形態の一部では、胸腺腫細胞株はEL4である。ここで提供される細胞単離物は、fugetactic活性を示すことができる、細胞から得られた任意の物質または細胞を含む。細胞単離物はしたがって、上清、画分、希釈上清および画分および分子(たとえばポリペプチド)を含む。一部の実施形態では、単離物は実質的に純粋なポリペプチドである。さらに別の実施形態では、単離物はEL4胸腺腫細胞の上清である。さらに別の実施形態では、単離物は希釈上清である。これらの実施形態の一部では、上清は10倍希釈される。
一態様では、細胞単離物は、百日咳毒素で阻害可能なfugetactic活性を有し、プロテアーゼ分解性であり、約5kDaより大きな分子量を有し、さらに熱不活性化可能であることを特徴とする胸腺腫細胞株由来の単離物である。一部の実施形態では、単離物のfugetactic活性は56℃で一時間の熱不活性化によって阻害されうる。別の実施形態では、単離物のfugetactic活性は37℃で一時間のプロテイナーゼK消化によって阻害することができる。さらに別の実施形態では、単離物はヘパリンに有意に結合しない。さらに別の実施形態では、単離物は20mMトリエタノールアミン緩衝液および0.25〜0.5M未満の濃度のNaClの存在下でDEAEカラムに有意に結合する。さらに別の実施形態では、単離物はpH7.5で負に荷電している。さらに別の実施形態では、単離物のfugetactic活性はラジシコールによって阻害されうる。さらに別の実施形態では単離物のfugetactic活性はゲルダナマイシンによって阻害される。さらに別の実施形態では、胸腺腫細胞による単離物の産生は、ブレフェルジンAによって阻害されうる。さらに別の実施形態では、単離物の活性は42℃で一時間の熱ショックによって有意にアップレギュレートされない。一部の実施形態では、単離物は、顕著なアポトーシスまたは壊死が生じていない細胞から得られる。一部の実施形態では、単離物は95%より多くが生存している細胞(たとえばEL4といった胸腺腫細胞株)から得られる。
【0016】
単離物は一部の実施形態では、単離物は約65kDaより大きな分子量を有する。別の実施形態では、約80kDaより大きな分子量を有する。さらに別の実施形態では、約90kDaより大きな分子量を有する。
【0017】
本発明の別の一態様では、対象中で遊走細胞のfugetaxisを促進する方法が提供される。この方法は、そのような処置を必要とする対象へ、ここで提供されるHSP、HSPLP、L-プラスチンまたはLPLPを、対象中の特定部位から遠ざかる遊走細胞のfugetaxisを促進するのに有効な量で投与することを含む。一部の実施形態では、本方法はさらに、非fugetactic治療剤(non-fugetactic therapeutic agent)を同時投与することを含む。一部の実施形態では、非fugetactic物質は抗炎症剤または抗アレルギー剤である。
【0018】
ここで教示する遊走細胞は、遊走能力を有する任意の細胞でありうる。一部の実施形態では、遊走細胞は造血細胞である。これらの実施形態の一部では、造血細胞は免疫細胞である。さらに別の実施形態では、免疫細胞はT細胞である。さらに別の実施形態では、遊走細胞は細胞傷害性Tリンパ球(CTL)である。
【0019】
本方法の特定部位は、遊走細胞の運動が必要である任意の部位でありうる。たとえば、一部の実施形態では、特定部位とは炎症部位である。一部の実施形態では、特定部位とは自己免疫反応の部位である。これらの実施形態の一部では、自己免疫反応の部位は関節にあるかまたはその付近にある。さらに別の実施形態では、特定部位とはアレルギー反応の部位である。さらに別の実施形態では、特定部位とは医療機器、人工補綴具または移植臓器または組織である。これらの実施形態の一部では、医療機器、人工補綴具または移植臓器または組織は、異種、幹細胞由来、合成または同種異系移植片である。別の実施形態では、医療機器、人工補綴具または移植臓器または組織はステントである。
【0020】
ここで提供される組成物は、有効である任意の方法で投与されうる。一部の実施形態では、組成物は局所投与される。別の実施形態では、組成物は全身投与される。ここで提供される組成物は、したがって、局所症状または全身症状を治療するために投与することができる。さらに別の実施形態では、組成物は特定部位にターゲッティングすることができる。たとえば、一部の実施形態では、ここで提供されるHSP、HSPLP、L-プラスチンまたはLPLPはターゲッティング分子に結合している。
【0021】
fugetactic物質に加えて、抗fugetactic物質もまた提供される。本発明の一態様では、fugetactic活性を阻害するのに有効な量の、ここで提供されるHSP、HSPLP、L-プラスチンまたはLPLPのいずれかと選択的に結合する抗fugetactic物質と、医薬品として許容されるキャリヤーとを含む医薬組成物が提供される。抗fugetactic物質は、ここで提供されるアミノ酸配列またはその一部のいずれかと結合できる;さらにしたがって、一部の態様では、これらのアミノ酸配列を含むタンパク質と結合できる。
【0022】
提供される抗fugetactic物質は、提供されるfugetactic物質と選択的に結合しおよび/またはfugetaxisを阻害できる多数の分子のいずれであってもよい。一部の実施形態では、抗fugetactic物質は単離されたペプチドである。さらに別の実施形態では、抗fugetactic物質は抗体またはその抗原結合断片である。さらに別の実施形態では、抗fugetactic物質は低分子である。
【0023】
一態様では対象において免疫反応を誘導するかまたは促進する方法が含まれる。この方法は、そのような処置を必要とする対象に、ここで提供される抗fugetactic物質を、対象中の特定部位で免疫細胞特異的fugetactic活性を阻害するのに有効な量で投与することを含む。本方法は、fugetaxisの阻害が有益である任意の部位を対象とする。一部の実施形態では、特定部位とは感染部位である。別の実施形態では、特定部位とは腫瘍である。
【0024】
ここで提供される方法はさらに、任意の抗fugetactic物質の使用を含む。一部の実施形態では、抗fugetactic物質は、ゲルダナマイシン、17-A-GA、ハービマイシンA、PU3、ノボビオシンまたはラジシコールである。別の実施形態では、抗fugetactic物質はベンゾキノイドであるアンサマイシン以外の物質である。さらに別の実施形態では、抗fugetactic物質はゲルダナマイシン、17-A-GA、ハービマイシンA、PU3、ノボビオシンまたはラジシコール以外の物質である。
【0025】
本発明の別の一態様では、fugetaxisを調節する抗fugetactic物質をスクリーニングする方法が提供される。この方法は、遊走細胞をHSP、HSPLP、L-プラスチンまたはLPLPと混合することによってfugetactic活性の対照レベルを特定する工程、遊走細胞をHSP、HSPLP、L-プラスチンまたはLPLPおよび候補化合物と混合することによってfugetactic活性の試験レベルを特定する工程、およびfugetactic活性の対照レベルと試験レベルとを比較する工程を含み、ここで、試験レベルが対照レベルより低い場合に、候補化合物が抗fugetactic物質であることが示唆される。本スクリーニング法に用いられるfugetactic物質は、ここに記載されるfugetactic物質の任意のものでありうる。
【0026】
本発明の別の一態様では、細胞を105〜106細胞/mLの密度でハイブリドーマ無血清培地中において培養し、上清を細胞から採取し、採取した上清を0.2ミクロンフィルターでろ過し、ろ過した上清を分画し、さらにfugetactic活性について画分を分析することによって、細胞(たとえばEL4腫瘍細胞といった胸腺腫細胞)からfugetactic活性を有するポリペプチドを製造する方法が提供される。一部の実施形態では、培養された細胞は95%より多くが生存している。
【0027】
別の態様では、その方法にしたがって製造されたfugetactic活性を有するポリペプチドもまた提供される。一部の実施形態では、ポリペプチドは約84kDaの分子量を有する。さらに別の実施形態では、ポリペプチドは約86kDaの分子量を有する。さらに別の実施形態では、ポリペプチドは約94kDaの分子量を有する。さらに別の実施形態では、ポリペプチドは約65kDaの分子量を有する。
【0028】
本発明のさらに別の態様では、細胞のfugetaxisを刺激するのに有効な量の産生されたポリペプチドと、医薬品として許容されるキャリヤーとを含む医薬組成物が提供される。
【0029】
本発明のさらに別の一態様では、遊走細胞をここで提供される任意の単離物またはポリペプチドと混合することによってfugetactic活性の対照レベルを特定する工程;遊走細胞をその単離物またはそのポリペプチド、および候補化合物と混合することによってfugetactic活性の試験レベルを特定する工程;およびfugetactic活性の対照レベルと試験レベルとを比較する工程を含み、ここで、試験レベルが対照レベルより低い場合に、候補化合物が抗fugetactic物質であることが示唆される、fugetaxisを調節する抗fugetactic物質をスクリーニングする方法が提供される。
【0030】
本発明の別の一態様は、対象中で細胞のfugetaxisを促進する方法であって、そのような処置を必要とする対象に、対象中の特定部位から遠ざかる細胞のfugetaxisを促進するのに有効な量で、ここで提供される単離物またはポリペプチドを投与する工程を含む。一部の実施形態では、特定部位とは炎症部位である。さらに別の実施形態では、特定部位とは医療機器、人工補綴具または移植臓器または組織である。さらに別の実施形態では、特定部位とは自己免疫反応部位である。さらに別の実施形態では、特定部位とはアレルギー反応部位である。
【0031】
ここで提供される方法はさらに、一部の実施形態では、非fugetactic治療剤を同時投与することを含みうる。一部の実施形態では、非fugetactic治療剤は抗炎症剤または抗アレルギー剤である。他の非fugetactic治療剤は抗癌剤である。一部の他の実施形態では、第二のfugetacticまたは抗fugetactic物質の投与をさらに含みうる方法が提供される。
【0032】
本発明の各制限は、本発明のさまざまな実施形態を包含しうる。したがって、任意の一つの要素または要素の組み合わせを含む本発明の各制限は、本発明の各態様に含まれうると考えられる。
【0033】
本発明のこれらおよび別の態様、およびさまざまな長所および有用性は、好ましい実施形態の詳細な説明を参照してより明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明によると、腫瘍細胞は免疫細胞からのfugetaxisすなわち化学的忌避反応(chemical repellent response)を引き起こすケモカインおよび他のケモカイン活性である物質の両方を合成し、それによって腫瘍性細胞が宿主免疫系による認識および破壊を回避することを可能にすることが現在見出されている。in vitroおよびin vivo検定を用いて、EL4細胞株由来の培養上清(すなわち、条件培地)がリンパ球を追い払う(すなわち、fugetaxisを誘導する)能力を有することが現在実証されている。EL4 24時間条件培地(EL4CM24)から遠ざかるリンパ球の遊走が、条件培地の熱不活性化およびプロテイナーゼ消化、および特異的阻害剤(百日咳毒素およびラジシコール)の使用によって減少したことがさらに示されている。分画および続いての条件培地画分に関する試験によって、fugetaxisを誘導する物質の同定が結果として得られた。これらの物質の一部は、熱ショックタンパク質(HSP)およびL-プラスチンとホモロジーを示す。
【0035】
本開示はしたがって、一つには、遊走細胞忌避活性(migratory cell repellent activity)(以下「fugetactic物質」および「fugetactic活性」または「fugetaxis」という)を有する物質を提供する。そのような物質は、fugetactic活性を有することが現在発見されている、腫瘍細胞単離物、熱ショックタンパク質およびL-プラスチンを含む。
【0036】
HSPは、単一対立遺伝子でありおよび事実上細胞内であることが見出されているタンパク質である(Srivastava, P. , Interaction of heat shock proteins with peptides and antigen presenting cells: chaperoning of the innate and adaptive immune responses. Annu. Rev. Immunol. 2002.20 : 395-425)。驚くべきことに、これはHSPが細胞外に存在すること、およびより重要なことに、HSPがfugetactic活性を有することの最初の実証である。本開示以前には、HSPは壊死の結果として細胞外にのみ見出されると考えられていた。HSPは、ストレス応答、タンパク質折りたたみ、タンパク質分解、突然変異発現の調節、転写、分化、細胞死の調節、および、抗原性ペプチドといった幅広いペプチドのシャペロニングに関与する。HSPはさらに、炎症性サイトカイン分泌の刺激、MHCIおよびII経路への関与、および免疫細胞成熟の媒介を通じて免疫反応に関与すると考えられている(Srivastava, P. , et al. , Heat shock proteins: the'Swiss Army Knife'vaccines against cancers and infectious agents. Vaccine. 19 (2001) 2590-2597)。HSPのfugetactic活性はまだ記載されていない。いずれかの特定の理論に縛られず、HSPのfugetactic活性は、これらのタンパク質の直接のfugetactic活性、または、fugetacticサイトカインまたはケモカインの提示または隔離を通じたそれらの間接的作用のためであると考えられている。
【0037】
HSPは熱ショックを受けた細胞で最初に認められたがしかし、HSPはまた通常の条件下の細胞でも発現されている。しかしストレス条件下(たとえば、熱曝露、毒素曝露、グルコース欠乏など)では、HSPレベルが高度に誘導されうることが一般に観察される(Srivastava, P. , Interaction of heat shock proteins with peptides and antigen presenting cells: chaperoning of the innate and adaptive immune responses. Annu. Rev. Immunol. 2002.20 : 395-425)。単にいくつかを挙げると、これらのタンパク質の例は、HSP27kDaタンパク質(登録番号NP001532)、HSP70kDaタンパク質(登録番号P08107)、HSP60kDaタンパク質(シャペロニン)(登録番号NP_002147)、心臓血管HSP(登録番号CAB86671)、HSPapg-1(登録番号AAp44471)およびHSP(110ファミリー)(登録番号NP_055093)を含む。他の熱ショックタンパク質は本分野でよく知られているかまたは容易に発見されうる。HSPファミリー内のHSPメンバーが非常に相同であるだけでなく、種間のHSPもまた顕著なホモロジーを示すことが見出されている。たとえば、ラット虚血応答タンパク質94kDa(irp94)、は、HSP110ファミリーのメンバーであるが、マウス熱ショックタンパク質4、apg-2(登録番号AAH03770)およびヒトHSP70RY(登録番号NP-705893)と90%より高い同一性を有することが見出された(Yagita, Y. , et al. , Molecular cloning of a novel member of the HSP 110 family of genes, ischemia-responsive protein 94 kDa (irp94), expressed in rat brain after transient forebrain ischemia. J. Neurochem. 1999.72 (4): 1544-51)。加えて、irp94は他のHSP110ファミリーメンバーと60%より高い同一性を有することが見出された。図15に示すホモロジー研究は、ヒトHSP90βおよびマウスHSP84が約85%同一であることを示す。マウスHSP84および86もまた顕著なホモロジーを示している(図16)。これらの配列の解析は、それらが約76%同一であることを示した。
【0038】
HSPは、任意のHSPファミリーに属するタンパク質を包含することが意図される。HSPファミリーの例は、HSP60(シャペロニン)、HSP70、およびHSP90ファミリーを含むがそれらに限定されない。特定の実施形態では、本発明のHSPは配列番号1〜7(図1)を含む。HSPはまた単に、細胞外の分泌を促進する分泌配列またはシグナル配列を含むHSPの変異体でありうる。特定の一実施形態では、HSPはHSP90βの分泌型変異体である。HSPはまた、保持シグナルを有するHSPを包含する。
【0039】
ここで提供されるfugetactic物質はまた、熱ショックタンパク質様タンパク質(HSPLP)でありうる。HSPLPとは、熱ショックタンパク質(HSP)とホモロジーを有するタンパク質、または、熱ショックタンパク質と類似の構造特性および機能を示すタンパク質である。これらの機能は、従来HSPと関連づけられる機能を含むが、ここで提供されるfugetactic活性といった機能もまた含む。これらのタンパク質は、腫瘍または他の細胞から分泌されうる。
【0040】
ここで提供されるfugetactic物質はまた、L-プラスチンタンパク質を含む。fugetactic活性を示すことが現在確認されているタンパク質の一つは、約65kDaでありおよびL-プラスチンとホモロジーを示すタンパク質である。L-プラスチンは造血系の細胞に見出されるポリペプチドである(Shinomiya, H., et al., Complete primary structure and phosphorylation site of the 65-kDa macrophage protein phosphorylated by stimulation with bacterial lipopolysaccharide. The Jouzmal of Immunology. 1995.154 : 3471-3478)。L-プラスチンの機能はリン酸化によって調節されうるため、ここに記載されるL-プラスチンはリン酸化型または非リン酸化型でありうる。L-プラスチンタンパク質は、HSPのように、非常に相同である。L-プラスチンのマウスおよびヒト型は95%より高い同一性を有することが見出されている(Shinomiya, H. , et al., Complete primary structure and phosphorylation site of the 65-kDa macrophage protein phosphorylated by stimulation with bacterial lipopolysaccharide. The Journal of Immunology. 1995. 154: 3471-3478。また、L-プラスチンはCa2+結合部位およびアクチン結合ドメインを有することが見出されている。実際、L-プラスチンはまた、β-アクチンに対してCa2+依存性の方法で作用することが見出されている。L-プラスチンはまた、カルモジュリン結合部位を持つと考えられている。
【0041】
fugetactic物質はまた、L-プラスチン様タンパク質(LPLP)を含む。そのようなタンパク質は、(図1、配列番号8)とホモロジーを示すタンパク質、またはL-プラスチンと同様の構造的および機能的特徴を示すタンパク質である。
【0042】
タンパク質間のホモロジーは、タンパク質のアミノ酸配列または核酸配列について決定することができる。一部の実施形態では、相同なタンパク質のアミノ酸配列は約30%より高い同一性を有する。別の実施形態では、相同なタンパク質は、約40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%以上同一であるアミノ酸配列を有する。さらに別の実施形態では、相同なタンパク質は、少なくとも約10%同一である核酸分子によってコードされる。さらに別の実施形態では、核酸分子は少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%同一である。さらに別の実施形態では、核酸分子は少なくとも約95%または99%同一である。ホモロジーは、当業者によく知られたさまざまな公開の入手可能なソフトウェアツールを用いて計算することができる。典型的なツールは、米国国立衛生研究所の米国バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のウェブサイトから入手可能なBLASTシステムを含む。
【0043】
相同なヌクレオチド配列を特定するための別の方法は核酸ハイブリダイゼーションによる。一部の実施形態では、核酸ハイブリダイゼーションは高厳密性条件下で実施される。アナログ配列の同定はまた、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびアナログの核酸配列をクローニングするのに適した他の増幅方法を用いて達成できる。
【0044】
「高厳密性条件」の語はここでは、本分野でよく知られたパラメーターをいう。核酸ハイブリダイゼーションパラメーターは、そのような方法を集めた参考文献、たとえばMolecular Cloning : A Laboratory Manual, J. Sambrook, et al. , eds. , Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1989, またはCurrent Protocols in Molecular Biology, F. M. Ausubel, et al., eds. , John Wiley & Sons, Inc. , New Yorkに見出すことができる。高厳密性条件の一例は、65℃でハイブリダイゼーション緩衝液(3.5X SSC、0.02%フィコール、0.02%ポリビニルピロリドン、0.02%ウシ血清アルブミン、2.5mM NaH2PO4(pH7)、0.5% SDS、2mM EDTA)中でのハイブリダイゼーションである。 SSCは0.15M塩化ナトリウム/0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7である;SDSはドデシル硫酸ナトリウムである;およびEDTAはエチレンジアミンテトラ酢酸である。ハイブリダイゼーション後、核酸が転写された膜を、たとえば、2X SSCで室温にて、および次いで0.1〜0.5X SSC/0.1X SDSで最大68℃までの温度にて洗浄する。
提供されるfugetactic物質はまた、腫瘍細胞または細胞株に、またはそのような細胞が増殖している培養上清に由来しうる、腫瘍細胞単離物を含む。fugetaxisを促進する腫瘍細胞単離物は、任意の腫瘍細胞または細胞株に由来しうる。「腫瘍細胞単離物」とは、腫瘍細胞または細胞株を含むかまたはそれらに由来する任意の物質をいう。腫瘍細胞単離物は、したがって、腫瘍細胞または細胞株に由来する上清、上清の画分、希釈上清および画分および単離された分子(たとえばポリペプチド)を含む。腫瘍細胞単離物は、EL4胸腺腫細胞といった胸腺腫細胞に由来しうるが、それに限定されない。腫瘍細胞単離物は任意の胸腺腫細胞株に由来しうる。そのような胸腺腫細胞株は、BW5147.3(ATCC番号TIB-47)、BW5147.G.1.4(ATCC番号TIB-48)、WEHI7.1(ATCC番号TIB-53)、WEHI22.1(ATCC番号TIB-54)を含む。腫瘍細胞単離物はまた、任意の腫瘍細胞または腫瘍細胞株に由来しうる。たとえば、それらは、黒色腫、リンパ腫、T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、肝臓癌、肉腫、線維肉腫または肥満細胞腫の細胞を含む。腫瘍細胞の他の例は本明細書の下記に示す。一部の実施形態では、これらの腫瘍または腫瘍細胞株はHSPおよびL-プラスチンを発現することが見出されている。別の場合には、腫瘍細胞はストレスを受けていないかストレスを受けている細胞である。さらに別の場合には、fugetactic物質が得られる細胞は顕著なアポトーシスまたは壊死が生じていない。さらに別の実施形態では、これらの細胞は95%より多くが生存している。
【0045】
提供されるfugetactic物質はまた、間質細胞または間質細胞株単離物を含む。間質細胞は、疎性結合組織に見出される。間質細胞は、皮膚、肝臓、膵臓、骨髄、リンパ節、胸腺、腎臓、CNS、脳、などを含むがそれらに限定されない臓器から、上記で考察したものを含む本分野で公知の方法を用いて容易に得ることができる。そのような細胞は、内皮細胞、周皮細胞、マクロファージ、単球、形質細胞、肥満細胞、脂肪細胞、などを含むがそれらに限定されない。一例では、線維芽細胞、内皮細胞、マクロファージ/単球、脂肪細胞および細網細胞を含むがそれらに限定されない、造血組織の間質細胞を、組織培養皿および/または三次元マトリクスに接種するのに用いることができる。一部の実施形態では、単離物は、胸腺間質細胞または胸腺間質細胞株に由来する胸腺間質細胞単離物である。
【0046】
このように、本発明は腫瘍細胞または細胞株に由来するfugetactic物質を提供する。好ましくは、これらのfugetactic物質は腫瘍細胞または細胞株から分泌され、およびしたがってこれらの細胞の培養上清から得ることができる。代替的に、fugetactic物質はまた、おそらく膜結合型または細胞内型として、細胞自体から得ることができる。
【0047】
本発明はさらに、これらのfugetactic物質(たとえば、腫瘍細胞単離物、HSP、HSPLP、L-プラスチンおよびLPLP)について医薬組成物および使用の方法を提供する。これらのfugetactic物質の阻害剤についての医薬組成物および使用の方法もまた本発明によって提供される。前記は、特に、対象中の特定部位からの不適当な遊走細胞運動によって特徴づけられる症状の治療に用いることができる。
【0048】
「fugetactic活性」または「fugetaxis」とは、物質が、遊走能力を有する真核細胞(すなわち、刺激から遠ざかるかまたは刺激へ近づくことができる細胞)を追い払う(すなわち化学的に反発させる)能力をいう。それに合わせて、fugetactic活性を有する物質が「fugetactic物質」である。そのような活性は、本明細書に記載するトランスマイグレーションシステム(実施例を参照)または本分野で公知であるさまざまな他の系(たとえば1996年5月7日Springer, TA, et al.へ発行の米国特許第5,514, 555号明細書、表題は"Assays and Therapeutic Methods Based on Lymphocyte Chemoattractants"を参照)のいずれかを用いて検出および特定できる。
【0049】
本発明のfugetactic物質は、遊走能力を有する細胞、および特に造血細胞、たとえば免疫細胞を、追い払うことができる。さらにより具体的には、遊走細胞はT細胞である。本発明のfugetactic物質は、特定部位への免疫細胞の遊走の阻害が望ましい症状に有用である。これらの条件の多くは、炎症反応に関連している。本発明のfugetactic物質の阻害剤は、逆に、特定部位への免疫細胞の遊走の促進が望ましい症状で有用である。これらの後者の症状は、腫瘍および感染を含むがそれらに限定されない。好ましくは、本発明のfugetactic物質はペプチドまたはタンパク質である。
【0050】
本発明のfugetactic物質は、約50kDa、55kDa、60kDa、65kDa、70kDa、75kDa、80kDa、85kDa、90kDa、95kDa、100kDa、105kDa、110kDa、115kDa、120kDa、125kDa、130kDa、135kDa、140kDa、145kDaまたは150kDa、などの分子量を有しうる。一部の場合には、fugetactic物質は、約65kDa、84kDa、または約86kDaまたは約94kDaの分子量を有する。
【0051】
本発明のタンパク質またはポリペプチドは、必要に応じて、タンパク質全体、タンパク質の一部(たとえば、ドメイン)およびペプチド断片を含む、組換え体である。ポリペプチドの断片は、好ましくは、その特定のタンパク質の明らかな機能的能力を保持する断片であり、その能力とはこの場合にはfugetactic活性である。そのようなポリペプチドはまた、たとえば、融合タンパク質およびキメラタンパク質を含みうる。短いポリペプチドは、ペプチド合成のよく確立された方法を用いて化学的に合成できる。
【0052】
本発明はまた、HSP、HSPLP、L-プラスチンおよびLPLP変異体の使用について検討する。ここでは、ポリペプチドの「変異体」とは、一次アミノ酸配列に切断および欠失を含む一つ以上の修飾を含むポリペプチドである。変異体は、保存された機能を有する対立遺伝子変異体および多型変異体を含む。ポリペプチド変異体を生じる修飾はまた、1)発現系におけるタンパク質安定性、またはタンパク質-タンパク質結合の安定性といった、ポリペプチドの性質を高める;または2)検出可能な部分の付加のように、ポリペプチドに新しい活性または性質を与えるように行うことができる。ポリペプチドへの修飾は、そのポリペプチドをコードする核酸によって導入することができ、および、欠失、点突然変異、切断、アミノ酸置換、およびアミノ酸または非アミノ酸部分の付加を含みうる。代替的に、切断、リンカー分子の付加、ビオチンのような検出可能な部分の付加、脂肪酸の付加、などといった修飾をポリペプチドに直接行うことができる。修飾はまた、アミノ酸配列の全部または一部を含む融合タンパク質を包含する。
【0053】
前記のポリペプチドの機能的に等価な変異体、すなわち機能的能力を保持した変異体を与えるために、保存的アミノ酸置換を上述の神経分化因子に行うことができることを当業者は理解する。ここでは、「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸置換が行われるタンパク質の相対的な電荷または大きさの特性を変化させないアミノ酸置換をいう。変異体は、ポリペプチド配列を変化させるための、たとえばMolecular Cloning : A Laboratory Manual, J. Sambrook, et al., eds., Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1989, または Current Protocols in Molecular Biology, F. M. Ausubel, et al. , eds. , John Wiley & Sons, Inc. , New Yorkといった、そのような方法をまとめた参考文献に見出されるような、当業者に公知である方法にしたがって調製することができる。
【0054】
アミノ酸配列における保存的アミノ酸置換は、典型的には、コードするコード核酸の変更によって行われる。そのような置換は、当業者に公知のさまざまな方法によって行いうる。たとえば、アミノ酸置換は、PCR特異的突然変異、Kunkelの方法にしたがった部位特異的突然変異(Kunkel, Proc. Nat. Acad. Sci. U. S. A. 82: 488-492, 1985)、またはコード遺伝子の化学合成によって行うことができる。アミノ酸置換が小さなペプチド断片に行われる場合は、置換はそのペプチドを直接に合成することによって行うことができる。ポリペプチドの機能的等価断片の活性は、その変化したポリペプチドをコードする遺伝子を細菌または哺乳類の発現ベクターにクローニングし、そのベクターを適当な宿主細胞に導入し、そのポリペプチドを発現させ、さらに機能的能力について評価することによって試験できる。化学合成されたペプチドは、機能について直接に試験することができる。
【0055】
上述の通り、fugetactic物質は、fugetactic活性を有する腫瘍細胞単離物、たとえば胸腺腫細胞単離物を含む。腫瘍細胞単離物は任意の腫瘍型に由来しうる。一実施形態では、単離物はEL4胸腺腫細胞株といった胸腺腫細胞の培養上清に由来する。腫瘍細胞単離物は、好ましくはプロテアーゼ感受性でありおよび熱不活性化可能である。別の実施形態では、単離物のfugetactic活性は、56℃で一時間の熱不活性化によって阻害されうる。さらに別の実施形態では、単離物のfugetactic活性は、37℃で一時間のプロテイナーゼK消化によって阻害されうる。さらに別の実施形態では、単離物のfugetactic活性は百日咳毒素処理によって阻害されうる。さらに別の実施形態では、単離物のfugetactic活性はラジシコールによって阻害されうる。さらに別の実施形態では、単離物のfugetactic活性はゲルダナマイシンによって阻害されうる。さらに一部の場合には、単離物はヘパリンと有意に結合しない。さらに別の場合には、単離物は20mMトリエタノールアミン緩衝液および0.25〜0.5M未満の濃度のNaClの存在下でDEAEカラムに有意に結合する。さらに別の実施形態では、単離物はpH7.5で負に荷電している。別の実施形態では、胸腺腫細胞による単離物の産生は、ブレフェルジンAによって阻害されうる。さらに別の実施形態では、ブレフェルジンAによる阻害は終濃度10μg/mLでのブレフェルジンA処理によって生じる。別の一実施形態では、単離物の活性は42℃で一時間の熱ショックによって有意にアップレギュレートされない。別の特定の実施形態では、EL4細胞株に由来する細胞単離物は約5kDaより大きな分子量を有する。細胞単離物はまた、約20kDa、30kDa、40kDa、50kDa、60kDa、70kDa、80kDa、90kDa、100kDa、110kDa、120kDa、130kDa、などより大きな分子量を有しうる。より具体的には、細胞単離物は、約60kDa、65kDa、70kDa、75kDa、80kDa、85kDa、90kDa、95kDa、100kDa、105kDa、110kDa、115kDa、120kDa、125kDa、130kDa、135kDa、140kDa、145kDaまたは150kDa、などの分子量を有し
うる。さらにより具体的には、細胞単離物は約65kDa、84kDa、86kDaまたは94kDaの分子量を有する。好ましい実施形態では、細胞単離物はポリペプチドを含み、および免疫細胞を追い払うのはこのポリペプチドである。一部の場合には、このポリペプチドはHSP、HSPLP、L-プラスチンまたはLPLPであり、および免疫細胞を追い払うのはこのHSP、HSPLP、L-プラスチンまたはLPLPである。
【0056】
ここでは、腫瘍細胞単離物に関して、「単離物(すなわち単離された)」とは、その自然の環境から分離されおよびその同定または使用を可能にするのに十分な量で存在することを意味する。タンパク質またはポリペプチドについていう場合、単離されたとは、たとえば:(i)発現クローニングによって選択的に産生されたかまたは(ii)クロマトグラフィーまたは電気泳動によって部分精製されたことを意味する。単離されたタンパク質またはポリペプチドは、実質的に純粋でありうるが、しかしそうである必要は無い。本発明の一部の実施形態では、胸腺腫細胞単離物は実質的に純粋なポリペプチドである。「実質的に純粋な」の語は、タンパク質またはポリペプチドが、天然またはin vitro系で共存しているのが見出されうる他の物質を、目的の用途について実際的および適当である程度に、本質的に含まないことを意味する。実質的に純粋なポリペプチドは、本分野でよく知られた技術によって製造されうる。単離されたタンパク質は医薬調製物中で、医薬品として許容されるキャリヤーと混合されるため、そのタンパク質は調製物の質量に対して小さな割合のみを構成するものであってよい。そのタンパク質はそれにもかかわらず、生物系で共存しうる多数の物質から分離されており、すなわち他のある種のタンパク質から単離されているという点で、単離されている。
【0057】
上述の通り、fugetactic物質はHSPおよびL-プラスチンを含む。これらのタンパク質は、本発明によると、fugetactic活性を有することが見出されている。EL4 24時間条件培地(EL4CM24)の溶出画分は、HSPおよびL-プラスチンと共通するアミノ酸配列を有するタンパク質を含むことが見出されている。これらのアミノ酸配列は図12〜14に提供される。したがって、ここで提供されるfugetactic物質は、図12〜14(配列番号9〜118として示され、両方の末端残基を含んでもあるいは含まなくてもよい)に表されるアミノ酸配列を含むタンパク質を包含する。fugetactic物質はまた、これらの配列の一部を含むタンパク質を包含する。本発明のfugetactic物質は、したがって、配列番号1〜8のいずれか一つであるアミノ酸配列を含みうる。本発明のfugetactic物質は、HSP90α(図1、配列番号3)、HSP90β(図1、配列番号1および2)またはL-プラスチン(図1、配列番号8)でありうる。
【表1−1】

【表1−2】

fugetacticタンパク質は、分泌型または非分泌型でありうる。すなわち、ここで提供されるin vitro または in vivo法では、タンパク質の非分泌型または分泌型を用いることができる。分泌型タンパク質は、シグナルまたは分泌配列を含みうる。これらの配列は本分野で公知である。分泌型タンパク質は能動的にまたは受動的に分泌されうる。したがって、当業者はタンパク質の非分泌型の配列を変化させることによって分泌型タンパク質を構築することができる。たとえば、非分泌型熱ショックタンパク質の小胞体保持シグナルを除去または変化させて、HSPの分泌を促進しうる(Strbo, et al. , Heat shock fusion protein gp96-Ig mediates strong CD8 CTL expansion in vivo, Am. J. of Reproductive Immunol. 2002, 48 : 220-225を参照)。非分泌型HSPの配列はまた、シグナルまたは分泌配列を与えることによって変化させうる。しかし、保持シグナルを有する未変化のタンパク質もまた用いることができ、および必ずしも変化させる必要は無い。
【0058】
fugetacticポリペプチドといった、実質的に純粋なfugetactic物質を製造する方法が提供される。fugetactic物質、たとえばfugetacticポリペプチドは、細胞培養上清または細胞ホモジネートといった不均一なタンパク質性の溶液から単離されうる。胸腺腫細胞といった腫瘍細胞は、腫瘍組織の一片の解離、および細胞懸濁液の作製によって、対象から単離できる。代替的に、腫瘍細胞は腫瘍細胞株であってよい。組織または細胞集団の解離は、当業者に公知である技術を用いて容易に達成できる。たとえば、組織または臓器は機械的に解離させることができ、および/または、消化酵素および/またはキレート剤で処理して近傍の細胞間の結合を弱め、明らかな細胞の破損無しに組織が個々の細胞の懸濁液へ分散するのを可能にすることができる。酵素的解離は、組織をすりつぶし、およびすりつぶした組織を、いくつかの消化酵素のいずれかを単独でまたは組み合わせて用いて処理することによって達成できる。これらは、トリプシン、キモトリプシン、コラゲナーゼ、エラスターゼ、および/またはヒアルロニダーゼ、DNアーゼ、プロナーゼ、ディスパーゼ、などを含むがそれらに限定されない。機械的破壊もまた、ほんの数例を挙げると、磨砕機、ブレンダー、ふるい、ホモジナイザー、圧力セル、または超音波破砕機を含むがそれらに限定されない。組織解離技術の総説については、Freshney, Culture of Animal Cells, A Manual of Basic Techniques, 2d Ed. , A. R. Liss, Inc. , New York, 1987, Ch. 9, pp. 107-126を参照。
組織が一旦、個々の細胞の懸濁液にされると、懸濁液を必要に応じて部分集団に分画することができ、そこから目的の細胞 および/または 要素を得ることができる。これはまた、特定の細胞型のクローニングおよび選択、不要な細胞の選択的破壊(ネガティブ選択)、混合集団中の細胞の凝集力の差に基づく分離、凍結融解手順、混合集団中の細胞の異なる接着性、ろ過、従来型遠心分離およびゾーン遠心分離、遠心エルトリエーション(対向流遠心分離)、比重分離、向流分配、電気泳動および蛍光標示式細胞分取を含むがそれらに限定されない、細胞分離のための標準的な技術を用いて達成できる。クローン選択および細胞分離技術の総説については、Freshney, Culture ouf minimal Cells, A Manual of Basic Techniques, 2d Ed. , A. R. Liss, Inc. , New York, 1987, Ch. 11 and 12, pp. 137-168を参照。
【0059】
細胞はまた、fugetactic物質を含む培養上清を調製するために培養することができる。細胞は、適当な培地中で、細胞の増殖に代謝的に有利な条件下で培養できる。ここでは、「代謝的に有利な条件」の語句は、細胞の生存率を維持しおよび培地中への因子の分泌を促進する条件をいう。そのような条件は、栄養培地中37℃で5%CO2インキュベーター中において90%より高い湿度での増殖を含む。RPMI1640、フィッシャー、イスコフ、マッコイ、ダルベッコ改変イーグル培地など、および同様のものといった、血清を添加してあってもなくてもよい、多数の市販の培地が栄養培地としての使用に適するであろう。ペニシリンおよびストレプトマイシンといった抗生物質もまた含めることができる。好ましい実施形態では、腫瘍細胞はまず、短期間10%血清の存在下で培養される。培地はその後、連続培養下で培地中に存在しうる外来の(たとえば非腫瘍細胞由来)物質の数を最小化するために、無血清培地へ交換される。無血清細胞培地は、細胞の増殖に際して、細胞条件培地(上清)となる。一般的に、これらの細胞懸濁液は、標準的な細胞培養技術にしたがって培養できる。小スケールでは、培養は培養プレート、フラスコ、および培養皿に入れることができる。より大きいスケールでは、培養は回転ボトル、スピナーフラスコ、および発酵槽のような他の大スケール培養容器に入れることができる。三次元の多孔性の固体マトリクスでの培養もまた用いることができる。好ましくは、細胞はコンフルエントになるまで培養される(たとえば、懸濁液中で106細胞/mL培地の濃度で)。
【0060】
次いで、細胞培養由来の上清を単離する。上清は吸引によって、または細胞を除去するために細胞培養の遠心分離によって、採取できる。培養はまた、ろ過して細胞および細胞片を除去することができる。上清を次いで分画し、および各画分を、遊走能力を有する細胞と接触させる。「遊走能力を有する細胞」または「遊走細胞」とは、刺激へ向かうかまたは刺激から遠ざかることができる細胞である。遊走能力を有する細胞は、化学誘引性および化学反発性(chemorepulsive)(fugetactic)シグナルを含むさまざまな走化性シグナルに反応しうる。
【0061】
「遊走能力を有する細胞」は、造血起源の細胞、神経起源の細胞、上皮起源の細胞、血管新生に関与する細胞、間葉起源の細胞、胚性幹細胞, または生殖細胞を含むがそれらに限定されない真核細胞である。遊走能力を有するそのような細胞は、化学誘引性および化学反発性(fugetactic)シグナルを含むさまざまな走化性シグナルに反応しうる。その反応は典型的にはアクチン細胞骨格における変化を含む。
【0062】
「造血起源」の細胞は、多能性幹細胞、多分化能前駆細胞および/または特定の造血系統に指定された前駆細胞を含むがそれらに限定されない。特定の造血系統に指定された前駆細胞は、T細胞系統、B細胞系統、樹状細胞系統、ランゲルハンス細胞系統および/またはリンパ組織特異的マクロファージ細胞系統でありうる。造血細胞は、骨髄、末梢血(動員末梢血を含む)、臍帯血、胎盤血、胎児肝臓、胚細胞(胚性幹細胞を含む)、大動脈性腺中腎由来細胞、およびリンパ系軟組織といった組織に由来しうる。リンパ系軟組織は、胸腺、脾臓、肝臓、リンパ節、皮膚、扁桃およびパイエル板を含む。別の実施形態では、「造血起源」細胞は、前記の細胞のいずれかのin vitro培養、および特に前駆細胞のin vitro培養に由来しうる。
「免疫細胞」はここでは、抗原の特異的認識に関与する造血起源の細胞である。免疫細胞は、樹状細胞またはマクロファージといった抗原提示細胞(APC)、B細胞、T細胞、などを含む。「T細胞」はここでは、CD4loCD8hiCD69+TCR+、CD4hiCD8loCD69+TCR+、CD4+CD3+RO+および/またはCD8+CD3+RO+表現型のT細胞を含む。T細胞は細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を含む。
【0063】
神経起源の細胞は、神経細胞および膠細胞、および/またはRR/Bを発現する中枢神経組織および末梢神経組織の両方の細胞を含む(Avrahamらの1999年1月26日発行の米国特許第5, 863, 744号明細書、表題"Neural cell protein marker RR/B and DNA encoding same"を参照)。
上皮起源の細胞は、体の自由表面を覆うおよび裏打ちする組織の細胞を含む。そのような上皮組織は、皮膚および感覚器の細胞、および血管、消化管、気道、腎臓および内分泌器官の管を裏打ちする特化した細胞を含む。
【0064】
間葉起源の細胞は、コラーゲン、ビメンチンおよびフィブロネクチンといった、典型的な線維芽細胞マーカーを発現する細胞を含む。
【0065】
血管新生に関与する細胞は、血管の形成に関与する細胞であり、および上皮起源の細胞および間葉起源の細胞を含む。
胚性幹細胞は、すべての系統の細胞を生じることができる細胞である;胚性幹細胞はまた自己再生する能力を有する。
【0066】
生殖細胞は、半数性配偶子を生じることに特化した細胞である。生殖細胞は、幹細胞よりも分化した細胞であり、より分化した生殖系列細胞をさらに生じることができる。
【0067】
腫瘍細胞は、癌または免疫認識を逃れることが実証されている腫瘍型のものでありうる。そのような癌または腫瘍は、胸腺の癌、および胆管癌;膠芽細胞腫および髄芽細胞腫を含む脳癌;乳癌;子宮頸癌;絨毛癌;大腸癌;結腸直腸癌;子宮内膜癌;食道癌;胃癌;神経膠腫;急性リンパ性、リンパ細胞由来白血病および骨髄性白血病を含む血液腫瘍;多発性骨髄腫;AIDS関連白血病および成人T細胞白血病およびリンパ腫;ボウエン病およびパジェット病を含む上皮内腫瘍;肝臓癌(肝癌);肺癌(たとえばルイス肺癌);ホジキン病およびリンパ球性リンパ腫を含むリンパ腫;神経芽細胞腫;扁平上皮細胞癌を含む口腔癌;上皮細胞、間質細胞、生殖細胞および間葉性細胞から生じるものを含む卵巣癌;膵臓癌;前立腺癌;直腸癌;平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫および骨肉腫を含む肉腫;黒色腫、カポジ肉腫、基底細胞癌および扁平上皮細胞癌を含む皮膚癌;胚腫瘍(精上皮腫および非精上皮腫(たとえば、奇形腫または絨毛癌))、間質腫瘍および生殖細胞腫瘍を含む精巣癌;甲状腺腺癌および髄質癌を含む甲状腺癌;および腺癌およびウィルムス腫瘍を含む腎癌を含む。
【0068】
腫瘍細胞単離物は、上述の細胞培養の上清から単離されうる。fugetacticポリペプチドといったfugetactic物質の単離のために、培養全体をホモジナイズおよびここに記載の工程に供しうる。さらに別の実施形態では、fugetactic物質は、これらの腫瘍細胞に由来する希釈上清の形を取る。上清は、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、125、150または200倍、などに希釈されうる。
【0069】
腫瘍細胞上清を含むfugetactic物質は、fugetactic物質の単離を円滑にするために、標準的なクロマトグラフィー手順にしたがって分画できる。当業者は、サイズ排除クロマトグラフィー、FPLC、HPLC、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、免疫アフィニティクロマトグラフィー、などを含むがそれらに限定されない、そのような手順に精通している。
【0070】
fugetactic物質に対するT細胞のfugetactic反応は、ここに記載の通り、または実施例でより詳細に説明されるトランスマイグレーションアッセイ(transmigration assay)にしたがって特定できる。他の適当な方法は当業者に知られるようになり、および通常の実験のみを用いて使用できる。
【0071】
fugetactic活性について陽性である画分を、前記の方法を用いて、スクリーニングの追加の回に供しうる。画分の純度は、各回の培養刺激の後に、画分をSDS-PAGEまたは画分中の構成成分の混合物を視覚化するための他の分析方法に供することによって評価できる。fugetactic物質の種類(たとえば、タンパク質、核酸、脂質、糖質など)は、前記の種類の分子用の非特異的分解酵素でポジティブ画分の部分標本を処理し、および処理した画分を上記に詳述したのと同じ検定で試験することによっていつでも確認できる。
【0072】
fugetactic物質は、次いで必要に応じて免疫学的方法および分子生物学的方法を用いてさらに単離できる(たとえばMolecular Cloning : A Laboratory Manual, J. Sambrook, et al. , eds. , Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1989, または Current Protocols in Molecular Biology, F. M. Ausubel, et al. , eds. , John Wiley & Sons, Inc. , New Yorkを参照)。たとえば、十分に精製された、腫瘍細胞単離物について陽性である画分を、標準的方法にしたがってタンパク質配列決定に供しうる。たとえば、画分をSDS-PAGEに供し、エレクトロブロッティングによってフッ化ポリビニリデンといった膜に転写し、およびN末端アミノ配列をエドマン分解によって決定することができる。既存のタンパク質とのホモロジーについてデータベースをスクリーニングするため、およびまた、コロニーハイブリダイゼーションまたはポリメラーゼ連鎖反応といった標準的方法によってcDNAライブラリをスクリーニングするために有用な縮重核酸を生成するために、任意の配列情報を用いることができる。
【0073】
代替的に、fugetactic物質に特異的な抗体を生じるために、陽性画分を用いることができる。そのような抗体を次いで、発現クローニング手順、ウェスタンブロット、およびfugetactic物質の単離に有用である他の技術に用いることができる。前記の方法では、任意のcDNAライブラリ、発現ライブラリ、などが、腫瘍細胞、好ましくは胸腺腫細胞、およびさらにより好ましくはEL4胸腺腫細胞から作製される。
【0074】
本発明はまた、ここで提供されるfugetactic物質と選択的に結合する、および好ましくはfugetactic物質の活性を阻害する物質が提供される(すなわち、「抗fugetactic物質」)。抗fugetactic物質は、単離されたペプチド、抗体またはその抗原結合断片、または他の阻害剤、たとえば低分子でありうる。これらの物質は、ラジシコール、ゲルダナマイシン、17-A-GA、ハービマイシンA、PU3、ノボビオシンおよびG結合百日咳毒素といったHSP阻害剤を含む。他のHSP阻害剤が本分野で公知である。一部の実施形態では、抗fugetactic物質はベンゾキノイドのアンサマイシンではない。さらに別の実施形態では、抗fugetactic物質はラジシコールではない。さらに別の実施形態では、抗fugetactic物質はゲルダナマイシンまたは17-A-GAではない。さらに別の実施形態では、抗fugetactic物質はハービマイシンAではない。さらに別の実施形態では、抗fugetactic物質はPU3ではない。さらに別の場合には、抗fugetactic物質はノボビオシンではない。別の場合には、抗fugetactic物質は百日咳毒素ではない。抗fugetactic物質はまた、ここで提供されるfugetacticタンパク質の受容体と競合的にまたは非競合的に結合する分子でありうる。たとえば、HSPについて受容体であるとみなされているのは、たとえば、CD91、CD36およびtlr4である。
【0075】
本発明の抗fugetactic物質は、通常のスクリーニング法を用いて発見できる。本発明はしたがって抗fugetactic物質についてのスクリーニングの方法を提供する。抗fugetactic物質についてのスクリーニングは、免疫細胞といった遊走細胞をfugetactic物質と混合し、およびfugetactic活性の対照レベルを特定することを含む。fugetactic物質、遊走細胞および候補抗fugetactic物質を混合することが、活性の試験レベルを与え、これを次いで対照レベルと比較して、候補抗fugetactic物質が目的の活性を示すかどうかを判定することができる。
【0076】
さらに、抗体、およびたとえば受容体といったfugetactic物質の他の結合相手を含む、ここに開示されるfugetactic物質と結合するタンパク質を単離することが可能である。fugetactic物質と結合するタンパク質は、たとえば、fugetactic物質の存在または非存在を検出するためのスクリーニング検定法に、およびfugetactic物質を単離するための精製手順に使用することができる。その結合タンパク質はまた、fugetactic物質の作用を阻害するために用いることができる。そのような検定法は、結合の特異性を確認するために用いることができる。
【0077】
本発明は、したがって、たとえばfugetactic物質と選択的に結合する能力を有する抗体または抗体の断片でありうる結合物質を包含する。これらの抗体はまた、上述の物質のfugetaxisを阻害できる。重要な実施形態では、結合物質はfugetactic物質と選択的に結合する。別の重要な実施形態では、結合物質はHSP、HSPLP、L-プラスチンまたはLPLPと選択的に結合する。これらの結合物質は、免疫細胞の反発を阻害しうる。抗体は、従来の方法にしたがって調製されたポリクローナルおよびモノクローナル抗体を含む。
【0078】
注目すべきことに、本分野でよく知られている通り、抗体のエピトープへの結合には抗体分子の小さな一部分であるパラトープだけが関与する(一般的に、Clark, W. R. (1986) The Experimental Foundations of Modern Immunology Wiley & Sons, Inc. , New York; Roitt, I. (1991) Essential Immunology. 7th Ed. , Blackwell Scientific Publications, Oxfordを参照)。pFc'およびFc領域は、たとえば、補体カスケードのエフェクターであるが抗原結合には関与しない。pFc'領域が酵素的に切断されているかまたはpFc'領域無しで作製されている抗体は、F(ab')2断片と表され、完全な抗体の抗原結合部位の両方を保持する。同様に、Fc領域が酵素的に切断されたかまたはFc領域無しで作製されている抗体は、Fab断片と表され、完全な抗体の抗原結合部位のうち一つを保持する。さらに進んで、Fab断片は共有結合した抗体軽鎖およびFdで表示される抗体重鎖の一部から成る。Fd断片は抗体特異性の主要な決定因であり(一つのFd断片は、抗体特異性を変化させることなく、10個までの異なる軽鎖と結合しうる)、およびFd断片は単独でエピトープ結合能力を保持する。
【0079】
抗体の抗原結合部分の中に、本分野でよく知られている通り、抗原のエピトープと直接に相互作用する相補性決定領域(CDR)、およびパラトープの三次構造を維持するフレームワーク領域(FR)が存在する(一般的に、Clark, 1986; Roitt, 1991を参照)。IgG免疫グロブリンの重鎖Fd断片および軽鎖の両方の中に、4つのフレームワーク領域(FR1〜FR4)が存在し、それぞれ3つの相補性決定領域(CDR1〜CDR3)によって分けられる。CDR、および特にCDR3領域、およびより具体的には重鎖CDR3が、抗体特異性を主として担う。
【0080】
哺乳類抗体の非CDR領域を、元の抗体のエピトープ特異性を保持する一方で、同種特異性抗体または異種特異性抗体の類似の領域で置換しうることが本分野で現在よく確立されている。これは、非ヒトCDRがヒトFRおよび/またはFc/pFc'領域と共有結合して機能性抗体を生じる「ヒト化」抗体の開発および使用に非常に明らかに示される。このように、たとえば、PCT国際公開第92/04381号パンフレットは、マウスFR領域の少なくとも一部がヒト起源のFR領域によって置換されているヒト化マウスRSV抗体の製造および使用を教示する。そのような抗体は、抗原結合能を有する完全な抗体の断片を含めて、しばしば「キメラ」抗体と呼ばれる。
【0081】
したがって、当業者に明らかとなるように、本発明はまた、F(ab')2、Fab、FvおよびFd断片;Fcおよび/またはFRおよび/またはCDR1および/またはCDR2および/または軽鎖CDR3領域が、相同なヒトまたは非ヒト配列によって置換されているキメラ抗体;FRおよび/またはCDR1および/またはCDR2および/または軽鎖CDR3領域が、相同なヒトまたは非ヒト配列によって置換されているキメラF(ab')2断片抗体;FRおよび/またはCDR1および/またはCDR2および/または軽鎖CDR3領域が、相同なヒトまたは非ヒト配列によって置換されているキメラFab断片抗体;および、FRおよび/またはCDR1および/またはCDR2領域が、相同なヒトまたは非ヒト配列によって置換されているキメラFd断片抗体を提供する。本発明はまた、いわゆる1本鎖抗体を含む。
【0082】
このように、本発明は、ここで提供されるfugetactic物質、またはfugetactic物質およびその結合相手の複合体と、特異的に結合する多数のサイズおよび種類の他のペプチドまたはポリペプチドを提供する。これらのポリペプチドは、抗体技術以外の起源からも由来しうる。たとえば、そのようなポリペプチド結合物質は、溶液中に、固定化した形で、またはファージディスプレイライブラリとして容易に調製できる、縮重ペプチドライブラリによって提供されうる。組み合わせライブラリもまた、一つ以上のアミノ酸を含むペプチドから合成できる。ライブラリは、ペプトイドおよび非ペプチド合成部分からさらに合成できる。
【0083】
ここで詳説するように、前記の抗体および他の結合分子は、たとえばタンパク質を発現している組織を特定するために、またはタンパク質を精製するために使用することができる。抗体はまた、ここで提供される通り、fugetactic物質を発現する細胞および組織の画像処理のための特異的な診断用標識物質と結合させてもよい。
【0084】
抗fugetactic物質はまた、本発明のfugetactic物質の発現レベルおよび/または機能レベルを低下させる分子を含む。そのような分子は、アンチセンス分子およびRNAi分子を含む。RNA干渉すなわち「RNAi」の使用は、遺伝子発現を阻害するための二本鎖RNA(dsRNA)の使用を含む。(Sui, G, et al, Proc Natl. Acad. Sci U. S. A. 99: 5515-5520,2002を参照)。本発明の実施形態にアンチセンスおよびRNAi戦略を適用する方法は、当業者に理解される。
【0085】
本発明のfugetactic物質は、対象中の特定部位から遠ざけるように細胞遊走を調節するのに有用である。したがって、一態様では, 本発明 は、ここで提供されるfugetactic物質 を、その部位でのfugetaxisを促進するのに有効な量で投与することによって、特定部位でのfugetaxisを促進する方法を含む。
【0086】
ここでは、対象は、ヒト対象、非ヒト霊長類、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ニワトリといった鳥類、イヌ、ネコ、魚類などである。好ましい実施形態では、対象はヒトである。
【0087】
「部位」は、fugetaxisの促進または阻害が必要である、対象中の任意の場所でありうる。たとえば、そのような部位は、炎症、感染、自己免疫反応、アレルギー反応、移植(たとえば移植臓器または組織)、インプラント(たとえば医療用または人工補綴具またはステント)および腫瘍の部位を含む。当業者は、どの部位でfugetaxisの促進または阻害が有益であるかを容易に決定しうる。これらの部位は、炎症の部位、自己免疫反応の部位および移植臓器または組織の部位を含むがそれらに限定されない。「炎症」はここでは、外来(非自己)抗原によって、および/または組織の傷害または破壊によって導かれ、外来抗原、有害物質、および/または傷害された組織を破壊、希釈または隔離する役割を果たす局所的保護反応である。炎症は、組織がウイルス、細菌、外傷、化学物質、熱、寒冷、またはその他の有害刺激によって傷害される際に起こる。そのような場合には、免疫系の古典的武器(T細胞、B細胞、マクロファージ)が、炎症反応の媒介物である細胞および可溶性産物(好中球、好酸球、好塩基球、キニン系および凝固系、および補体カスケード)の仲介を行う。
【0088】
典型的な炎症反応は、(i)抗原(傷害)局在の部位での白血球の遊走;(ii)BおよびTリンパ球、マクロファージおよび補体第二経路によって媒介される、「外来」および他の(壊死/傷害組織)抗原の特異的および非特異的認識;(iii)補体成分、リンフォカインおよびモノカイン、キニン、アラキドン酸代謝産物、および肥満細胞/好塩基球産物による特異的および非特異的エフェクター細胞の動員を伴う炎症反応の増幅;および(iv)食作用による抗原粒子(傷害組織)の最終的な除去を伴う、抗原破壊へのマクロファージ、好中球およびリンパ球の参加によって特徴づけられる。免疫系が「自己」と「非自己」(外来)抗原を識別する能力は、したがって、「非自己」抗原に対する特異的防御としての免疫系の機能に不可欠である。
【0089】
「非自己」抗原は、対象に入ってくる物質上の抗原、あるいは対象中に存在するが対象自身の構成成分とは検出可能に異なるまたは異質な抗原であり、一方、「自己」抗原は健康な対象においては対象自身の構成成分と検出可能に異なるまたは異質なものではない抗原である。しかし、ある種の疾患状態を含むある種の条件下では、個体の免疫系はそれ自身の構成成分を「非自己」と認識し、および「自己抗原」に対する免疫反応を開始し、時にはたとえば侵入する微生物または外来物質からよりも大きい損傷または不快を引き起こし、およびしばしば対象において重度の疾患を生じる。
【0090】
別の重要な一実施形態では、炎症は「自己抗原」に対する免疫反応によって引き起こされ、および本発明に記載の処置を必要とする対象は自己免疫疾患を有する。「自己免疫疾患」はここでは、慢性関節リウマチ、ブドウ膜炎、インシュリン依存性糖尿病、溶血性貧血、リウマチ熱、クローン病、ギラン−バレー症候群、乾癬、甲状腺炎、グレーブス病、重症筋無力症、糸球体腎炎、自己免疫性肝炎、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、などといった疾患が例となるように、対象の免疫系が自身の臓器または組織を攻撃する際の結果として起こり、その組織の破壊を伴う臨床症状を生じる。
【0091】
自己免疫疾患は、遺伝的素因単独によって、何らかの外来物質(たとえば、ウイルス、細菌、化学物質など)によって、または両方によって生じうる。ある種類の自己免疫は、神経組織または眼のレンズといった、通常はリンパ球に曝露されない部分の外傷の結果として生じる。これらの部分にある組織がリンパ球に露出されるようになった場合、その表面タンパク質は抗原として作用しおよび抗体の産生および細胞性免疫反応を引き起こす可能性があり、このことは次いでこれらの組織を破壊し始める。他の自己免疫疾患は、対象自身の組織と抗原性が類似している、すなわち交差反応する抗原への対象の曝露の後に発症する。リウマチ熱では、たとえば、リウマチ熱の原因となる連鎖球菌の抗原は、ヒト心臓の部分と交差反応性である。その抗体は細菌抗原と心筋抗原を識別できず、結果としてそれらの抗原のどちらかを持つ細胞が破壊されうる。
【0092】
他の自己免疫疾患、たとえば、インシュリン依存性糖尿病(ランゲルハンス島のインシュリン産生ベータ細胞の破壊を含む)、多発性硬化症(神経系の伝達繊維の破壊を含む)および慢性関節リウマチ(関節被覆組織の破壊を含む)は、主に細胞媒介性自己免疫反応の結果であるとして特徴づけられ、およびT細胞の作用が主な原因であるように見える(Sinha et al., Science, 1990,248 : 1380を参照)。さらにそれ以外、たとえば重症筋無力症および全身性エリテマトーデスは、主に体液性自己免疫反応の結果であるとして特徴づけられる。にもかかわらず、本発明に記載の前記の症状のいずれかに関与する炎症の特定部位への、免疫反応の遊走の阻害は、炎症反応の拡大を阻害し、関与する特定部位(たとえば、組織)を「自己損傷」から保護するため、対象にとって有益である。
【0093】
別の重要な一実施形態では、炎症は「非自己抗原」(壊死性自己物質の抗原を含む)に対する免疫反応によって起こり、および本発明に記載の処置を必要とする対象は、移植患者であるか、アテローム性動脈硬化症を有するか、心筋梗塞および/または虚血性脳卒中の既往があるか、膿瘍を有するか、および/または心筋炎を有する。これは、細胞(または臓器)移植後、または心筋梗塞または虚血性脳卒中の後に、移植された細胞(臓器)に由来するある種の抗原、または心臓または脳に由来する壊死細胞が、免疫リンパ球および/または自己抗体の産生を刺激する可能性があり、これらは後に炎症/拒絶(移植片の場合)に関与し、または心臓または脳の標的細胞を攻撃して、炎症を生じおよび症状を悪化させるためである(Johnson et al., Sem. Nuc. Med. 1989,19 : 238; Leinonen et al. , Microbiol. Path., 1990, 9: 67; Montalban et al., Stroke, 1991,22 : 750)。
ここでは、「アレルギー反応部位」は、アレルゲンに対するアレルギー反応が存在する局所または全身的な任意の場所である。ヒトおよび動物におけるアレルギー反応は広く研究されており、および関与する基礎的な免疫機構はよく知られている。ヒトにおけるアレルギー症状または疾患は、湿疹、アレルギー性鼻炎または鼻感冒、枯草熱、結膜炎、気管支喘息またはアレルギー性喘息、蕁麻疹(じんましん)および食品アレルギー;アトピー性皮膚炎アナフィラキシー;薬物アレルギー;血管性浮腫;およびアレルギー性結膜炎を含むがそれらに限定されない。アレルギー反応は、局所性または全身性アナフィラキシーでありうる。
【0094】
アレルギー反応の原因となる分子の一般名がアレルゲンである。アレルゲンの多数の種類が存在する。アレルギー反応は、IgE型の組織感作免疫グロブリンが外来アレルゲンと反応する際に起こる。IgE抗体は肥満細胞および/または好塩基球と結合し、およびこれらの特化した細胞は、抗体分子の末端を結合するアレルゲンによってそうするよう刺激された場合に、アレルギー反応の化学媒介物質(血管作用性アミン)を放出する。ヒトにおけるアレルギー反応の最もよく知られた媒介物質には、ヒスタミン、血小板活性化因子、アラキドン酸代謝産物、およびセロトニンがある。ヒスタミンおよびそれ以外の血管作用性アミンは、通常は肥満細胞および好塩基性白血球に貯蔵されている。肥満細胞は動物組織全体に分散しており、および好塩基球は血管系の中を循環する。これらの細胞は、IgE結合を含む特化された一連の現象が起こってヒスタミンの放出を起こさせない限り、細胞内でヒスタミンを製造および貯蔵する。
【0095】
免疫細胞を材料表面から追い払う方法もまた提供される。「材料表面」はここでは、医療機器、歯科用および整形外科用補綴インプラント、人工弁、および、ステント、同種および/または異種組織、臓器および/または脈管構造といった有機性の移植可能な組織を含むがそれらに限定されない。材料表面はまた、組織工学技術によって作製された組織を包含する。
【0096】
移植可能な人工補綴具は、長年にわたって内部組織の外科的修復または置換に用いられている。整形外科用インプラントは、それぞれ特定の医学的必要を満たすのに適した幅広い器具を含む。そのような器具の例は、人工股関節、人工膝関節、人工肩関節、および、折れた骨を固定するのに用いられるピン、ブレースおよびプレートである。一部の現在の整形外科用および歯科用インプラントは、高強度を達成するためにコバルト−クロムおよびチタン合金といった高性能金属を用いる。これらの材料は、鋳造および機械加工を含む成熟した金属加工技術を用いて、これらの器具に典型的な複雑な形に容易に作成することができる。
【0097】
金属表面は、免疫細胞を追い払うのに有効である量の本発明のfugetactic物質で被覆される。重要な実施形態では、材料表面はインプラントの一部である。重要な実施形態では、fugetactic物質に加えて、材料表面はまた細胞増殖促進物質、抗感染症薬、および/または抗炎症剤で被覆されうる。
【0098】
本発明の別の一態様によると、不妊症ならびに未熟分娩および切迫流産を含む早産を治療する方法が提供される。その方法は、そのような処置を必要とする対象に、fugetactic物質を、免疫細胞が対象中で生殖細胞(卵子、精子、受精卵、または移植胚)の付近へ遊走することを阻害するのに有効な量で投与することを含む。別の実施形態では、投与は対象の生殖細胞を含む部位への局所的投与である。
【0099】
本発明の別の一態様によると、対象における避妊の方法が提供される。その方法は、そのような処置を必要とする対象に、抗fugetactic物質を、対象において生殖細胞の遊走を阻害するのに有効な量で投与することを含む。別の実施形態では、投与は対象の生殖細胞を含む部位への局所的投与である。
【0100】
本発明の別の一態様によると、対象における腫瘍細胞転移を阻害する方法が提供される。その方法は、そのような処置を必要とする対象中の腫瘍部位に、抗fugetactic物質を、対象において腫瘍部位からの腫瘍細胞の転移を阻害するのに有効な量で局所投与することを含む。
【0101】
本発明の別の一態様によると、対象中の腫瘍部位への内皮細胞遊走を阻害する方法が提供される。その方法は、そのような処置を必要とする対象中の腫瘍部位の周囲の部分へ、fugetactic物質を、対象中の腫瘍部位への内皮細胞遊走を阻害するのに有効な量で局所投与することを含む。一部の実施形態では、腫瘍部位の周囲の部分は、腫瘍部位に直接接していない。重要なfugetactic物質は、本明細書に記載の通りである。
【0102】
本発明の方法はまた、本発明の抗fugetactic物質を、対象中の特定部位にて免疫細胞特異的fugetactic活性を阻害するのに有効な量で投与し、それによって局所免疫反応を促進する、局所免疫反応を誘導または促進する方法を含む。一部の実施形態では、特定部位は感染部位である。感染を排除するのを助けるための、免疫細胞の効率的な動員は有益である。
【0103】
別の実施形態では、特定部位は腫瘍である。免疫細胞の腫瘍部位への遊走を促進し、およびそのような細胞をこの部位に維持することは有益である。腫瘍部位は、対象中で癌細胞が存在する任意の部位でありうる。別の実施形態では、抗fugetactic物質以外の抗癌剤の同時投与もまた提供される。
【0104】
別の一実施形態では、特定部位は生殖細胞部位であり、ここで免疫細胞のその特定部位への動員は、不要な生殖細胞、および/または移植胚および非移植胚を排除するのを助ける。別の実施形態では、抗fugetactic物質以外の避妊薬の同時投与もまた提供される。非抗fugetactic避妊薬は本分野でよく知られている。
【0105】
前記の治療法は、対象中の特定部位からの細胞の遊走を促進または阻害するために、本発明のfugetactic物質または抗fugetactic物質と協同的に、相加的に、または相乗的に作用しうる非fugetactic治療剤を、本発明のfugetactic物質または抗fugetactic物質と共に同時投与することを含んでいてよい。一部の実施形態によると、fugetactic物質または抗fugetactic物質は、非fugetactic治療剤と実質的に同時に投与される。「実質的に同時に」とは、fugetactic物質が非fugetactic治療剤の投与と時間的に十分近接して対象に投与され、それによって非fugetactic治療剤がfugetactic物質または抗fugetactic物質の遊走活性に増強作用をもたらしうることを意味する。したがって、実質的に同時にとは、fugetactic物質または抗fugetactic物質が、非fugetactic治療剤の投与の前に、同時に、および/または後に投与されることを意味する。一部の実施形態では、fugetactic物質または抗fugetactic物質は、ポリペプチド、またはfugetactic物質または抗fugetactic物質を発現する核酸として投与できる。
【0106】
抗感染症薬とは、ここでは、微生物の活性を低下させるかまたは微生物を殺す物質であり、および下記を含む:アズトレオナム;グルコン酸クロルヘキシジン;イミド尿素;リセタミン;ニブロキサン;ピラズモナムナトリウム;プロピオン酸;ピリチオンナトリウム;塩化サンギナリウム;チゲモナム二コリン塩;アセダプソン;アセトスルホンナトリウム;アラメシン;アレキシジン;アムジノシリン;アムジノシリンピボキシル;アミサイクリン;アミフロキサシンアミフロキサシン;メシル酸アミフロキサシン;アミカシン;硫酸アミカシン;アミノサリチル酸;アミノサリチル酸ナトリウム;アモキシリン;アンフォマイシン;アンピシリン;アンピシリンナトリウム;アパルシリンナトリウム;アプラマイシン;アスパルトシン;硫酸アストロマイシン;アビラマイシン;アボパルシン;アジスロマイシン;アズロシリン;アズロシリンナトリウム;塩酸バカンピシリン;バシトラシン;メチレン二サリチル酸バシトラシン;バシトラシン亜鉛;バンベルマイシン;ベンゾイルパスカルシウム;ベリスロマイシン;硫酸ベタマイシン;ビアペネム;ビニラマイシン;ビフェナミン塩酸;ビスピリチオンマグサルフェクス;ブチカシン;ブチロシン硫酸;硫酸カプレオマイシン;カルバドックス;カルベニシリン二ナトリウム;カルベニシリンインダニルナトリウム;カルベニシリンフェニルナトリウム;カルベニシリンカリウム;カルモナムナトリウム;セファクロル;セファドロキシル;セファマンドール;セファマンドールナファート;セファマンドールナトリウム;セファパロール;セファトリジン;セファザフルルナトリウム;セファゾリン;セファゾリンナトリウム;セフブペラゾン;セフジニル;セフェピム;塩酸セフェピム;セフェテコール;セフィキシム;塩酸セフメノキシム;セフメタゾール;セフメタゾールナトリウム;セフォニシド一ナトリウム;セフォニシドナトリウム;セフォペラゾンナトリウム;セフォラニド;セフォタキシムナトリウム;セフォテタン;セフォテタン二ナトリウム;塩酸セフォチアム;セフォキシチン;セフォキシチンナトリウム;セフピミゾール;セフピミゾールナトリウム;セフピラミド;セフピラミドナトリウム;硫酸セフピロム;セフポドキシムプロキセチル;セフプロジル;セフロキサジン;セフスロジンナトリウム;セフタジジム;セフチブテン;セフチゾキシムナトリウム;セフトリアキソンナトリウム;セフロキシム;セフロキシムアキセチル;セフロキシムピボキセチル;セフロキシムナトリウム;セファセトリルナトリウム;セファレキシン;塩酸セファレキシン;セファログリシン;セファロリジン;セファロチンナトリウム;セファピリンナトリウム;セファラジン;塩酸セトサイクリン;セトフェニコール;クロラムフェニコール;パルミチン酸クロラムフェニコール;パントテン酸クロラムフェニコール複合体;コハク酸クロラムフェニコールナトリウム;ホスファニル酸クロルヘキシジン;クロロキシレノール;重硫酸クロルテトラサイクリン;塩酸クロルテトラサイクリン;シノキサシン;シプロフロキサシン;塩酸シプロフロキサシン;シロレマイシン;クラリスロマイシン;塩酸クリナフロキサシン;クリンダマイシン;塩酸クリンダマイシン;塩酸パルミチン酸クリンダマイシン;リン酸クリンダマイシン;クロファジミン;クロキサシリンベンザチン;クロキサシリンナトリウム;クロキシクイン;コリスチメサートナトリウム;硫酸コリスチン;クメルマイシン;クメルマイシンナトリウム;シクラシリン;シクロセリン;ダルフォプリスチン;ダプソン;ダプトマイシン;デメクロサイクリン;デメクロサイクリン塩酸;デメサイクリン;デノフンジン;ジアベリジン;ジクロキサシリン;ジクロキサシリンナトリウム;硫酸ジヒドロストレプトマイシン;ジピリチオン;ジリスロマイシン;ドキシサイクリン;ドキシサイクリンカルシウム;ドキシサイクリンホスファテックス;ドキシサイクリンヒクラート;ドロキサシンナトリウム;エノキサシン;エピシリン;塩酸エピテトラサイクリン;エリスロマイシン;エリスロマイシンアシストラート;エリスロマイシンエストラート;エチルコハク酸エリスロマイシン;エリスロマイシングルセプタート;ラクトビオン酸エリスロマイシン;プロピオン酸エリスロマイシン;ステアリン酸エリスロマイシン;塩酸エタンブトール;エチオナミド;フレロキサシン;フロキサシリン;フルダラニン;フルメキン;ホスホマイシン;ホスホマイシントロメタミン;フモキシリン;塩化フラゾリウム;酒石酸フラゾリウム;フシジン酸ナトリウム;フシジン酸;硫酸ゲンタマイシン;グロキシモナム;グラミシジン;ハロプリジン;ヘタシリン;ヘタシリンカリウム;ヘキセジン;イバフロキサシン;イミペネム;イソコナゾール;イセパミシン;イソニアジド;ジョサマイシン;硫酸カナマイシン;キタサマイシン;レボフラルタドン;レボプロピルシリンカリウム;レキシスロマイシン;リンコマイシン;リンコマイシン塩酸;ロメフロキサシン;塩酸ロメフロキサシン;メシル酸ロメフロキサシン;ロラカルベフ;マフェニド;メクロサイクリン;スルホサリチル酸メクロサイクリン;リン酸メガロマイシンカリウム;メキドクス;メロペネム;メタサイクリン;塩酸メタサイクリン;メテナミン;馬尿酸メテナミン;マンデル酸メテナミン;メチシリンナトリウム;メチオプリム;塩酸メトロニダゾール;リン酸メトロニダゾール;メズロシリン;メズロシリンナトリウム;ミノサイクリン;塩酸ミノサイクリン;塩酸ミリンカマイシン;モネンシン;モネンシンナトリウム;ナフシリンナトリウム;ナリジクス酸ナトリウム;ナリジクス酸;ナタマイシン;ネブラマイシン;パルミチン酸ネオマイシン;硫酸ネオマイシン;ウンデシレン酸ネオマイシン;硫酸ネチルマイシン;ニュートラマイシン;ニフラデン;ニフラルデゾン;ニフラテル;ニフラトロン;ニフルダジル;ニフリミド;ニフルピリノール;ニフルキナゾール;ニフルチアゾール;ニトロサイクリン;ニトロフラントイン;ニトロミド;ノルフロキサシン;ノボビオシンナトリウム;オフロキサシン;オルメトプリム;オキサシリンナトリウム;オキシモナム;オキシモナムナトリウム;オキソリン酸;オキシテトラサイクリン;オキシテトラサイクリンカルシウム;オキシテトラサイクリン塩酸;パルジマイシン;パラクロロフェノール;ポーロマイシン;ペフロキサシン;メシル酸ペフロキサシン;ペナメシリン;ペニシリンGベンザチン;ペニシリンGカリウム;ペニシリンGプロカイン;ペニシリンGナトリウム;ペニシリンV;ペニシリンVベンザチン;ペニシリンVヒドラバミン;ペニシリンVカリウム;ペンチジドンナトリウム;アミノサリチル酸フェニル;ピペラシリンナトリウム;ピルベニシリンナトリウム;ピリジシリンナトリウム;塩酸ピルリマイシン;塩酸ピヴァンピシリン;パモ酸ピヴァンピシリン;ピヴァンピシリンプロベナート;硫酸ポリミキシンB;ポルフィロマイシン;プロピカシン;ピラジナミド;ピリチオン亜鉛;酢酸キンデカミン;キヌプリスチン;ラセフェニコール;ラモプラニン;ラニマイシン;レロマイシン;レプロマイシン;リファブチン;リファメタン;リファメキシル;リファミド;リファンピン;リファペンチン;リファキシミン;ロリテトラサイクリン;硝酸ロリテトラサイクリン;ロサラマイシン;酪酸ロサラマイシン;プロピオン酸ロサラマイシン;リン酸ロサラマイシンナトリウム;ステアリン酸ロサラマイシン;ロソキサシン;ロキサルソン;ロキシスロマイシン;サンサイクリン;サンメトリネムナトリウム;サルモキシリン;サルピシリン;スコパフンジン;シソマイシン;硫酸シソマイシン;スパルフロキサシン;塩酸スペクチノマイシン;スピラマイシン;塩酸スタリマイシン;ステフィマイシン;硫酸ストレプトマイシン;ストレプトニコジド;スルファベンズ;スルファベンズアミド;スルファセタミド;スルファセタミドナトリウム;スルファシチン;スルファジアジン;スルファジアジンナトリウム;スルファドキシン;スルファレン;スルファメラジン;スルファメータ;スルファメザジン;スルファメチゾール;スルファメトキサゾール;スルファモノメトキシン;スルファモキソール;スルファニラート亜鉛;スルファニトラン;スルファサラジン;スルファソミゾール;スルファチアゾール;スルファザメト;スルフイソキサゾール;スルフイソキサゾールアセチル;スルフイソキサゾールジオラミン;スルホミキシン;スロペネム;スルタミシリン;サンシリンナトリウム;塩酸タランピシリン;テイコプラニン;塩酸テマフロキサシン;テモシリン;テトラサイクリン;塩酸テトラサイクリン;リン酸テトラサイクリン複合体;テトロキソプリム;チアンフェニコール;チフェンシリンカリウム;チカルシリンクレシルナトリウム;チカルシリン二ナトリウム;チカルシリン一ナトリウム;チクラトン;塩化チオドニウム;トブラマイシン;硫酸トブラマイシン;トスフロキサシン;トリメトプリム;硫酸トリメトプリム;トリスルファピリミジン;トロレアンドマイシン;硫酸トロスペクトマイシン;チロスリシン;バンコマイシン;塩酸バンコマイシン;バージニアマイシン;ゾルバマイシン;塩酸ジフロキサシン;臭化ラウリルイソキノリニウム;モキサラクタム二ナトリウム;オルニダゾール;ペンチソマイシン;および塩酸サラフロキサシン。
【0107】
別の実施形態では、非fugetactic治療剤は抗炎症剤である。そのような抗炎症剤は下記を含む:アルクロフェナック;二プロピオン酸アルクロメタゾン;アルゲストンアセトニド;アルファアミラーゼ;アムシナファール;アムシナフィド;アムフェナックナトリウム;塩酸アミプリロース;アナキンラ;アニロラック;アニトラザフェン;アパゾン;バルサルアジド二ナトリウム;ベンダザック;ベノキサプロフェン;塩酸ベンジダミン;ブロメライン;ブロペラモール;ブデソニド;カルプロフェン;シクロプロフェン;シンタゾン;クリプロフェン;プロピオン酸クロベタゾール;酪酸クロベタゾン;クロピラック;プロピオン酸クロチカゾン;酢酸コルメタゾン;コルトドキソン;デフラザコート;デソニド;デスオキシメタゾン;二プロピオン酸デキサメタゾン;ジクロフェナックカリウム;ジクロフェナックナトリウム;ジフロラゾン二酢酸;ジフルミドンナトリウム;ジフルニサル;ジフルプレドナート;ジフタロン;ジメチルスルホキシド;ドロシノニド;エンドリソン;エンリモマブ;エノリカムナトリウム;エピリゾール;エトドラック;エトフェナマート;フェルビナック;フェナモール;フェンブフェン;フェンクロフェナック;フェンクロラック;フェンドサール;フェンピパロン;フェンチアザック;フラザロン;フルアザコート;フルフェナミン酸;フルミゾール;酢酸フルニソリド;フルニキシン;フルニキシンメグルミン;フルオコルチンブチル;酢酸フルオロメトロン;フルクァゾン;フルルビプロフェン;フルレトフェン;プロピオン酸フルチカゾン;フラプロフェン;フロブフェン;ハルシノニド;プロピオン酸ハロベタゾール;酢酸ハロプレドン;イブフェナック;イブプロフェン;イブプロフェンアルミニウム;イブプロフェンピコノール;イロニダップ;インドメタシン;インドメタシンナトリウム;インドプロフェン;インドキソール;イントラゾール;酢酸イソフルプレドン;イソキセパック;イソキシカム;ケトプロフェン;塩酸ロフェミゾール;ロルノキシカム;ロテプレドノールエタボナート;メクロフェナム酸ナトリウム;メクロフェナム酸;二酪酸メクロリゾン;メフェナム酸;メサラミン;メセクラゾン;メチルプレドニゾロンスレプタナート;モルニフルマート;ナブメトン;ナプロキセン;ナプロキセンナトリウム;ナプロキソール;ニマゾン;オルサラジンナトリウム;オルゴテイン;オルパノキシン;オキサプロジン;オキシフェンブタゾン;塩酸パラニリン;ポリ硫酸ペントサンナトリウム;グリセリン酸フェンブタゾンナトリウム;ピルフェニドン;ピロキシカム;桂皮酸ピロキシカム;ピロキシカムオラミン;ピルプロフェン;プレドナザート;プリフェロン;プロドール酸;プロクァゾン;プロキサゾール;クエン酸プロキサゾール;リメキソロン;ロマザリット;サルコレックス;サルナセジン;サルサラート;塩化サンギナリウム;セクラゾン;セルメタシン;スドキシカム;スリンダック;スプロフェン;タルメタシン;タルニフルマート;タロサラート;テブフェロン;テニダップ;テニダップナトリウム;テノキシカム;テシカム;テシミド;テトリダミン;チオピナック;ピバル酸チキソコルトール;トルメチン;トルメチンナトリウム;トリクロニド;トリフルミダート;ジドメタシン;ゾメピラックナトリウム。
【0108】
抗アレルギー剤は、抗ヒスタミン、ステロイド、およびプロスタグランジン誘導剤を含むがそれらに限定されない。抗ヒスタミンは、肥満細胞または好塩基球によって放出されるヒスタミンを妨げる化合物である。これらの化合物は本分野でよく知られており、およびアレルギーの治療に一般に用いられる。抗ヒスタミンは、ロラタジン、セチリジン、ブクリジン、セチリジンアナログ、フェキソフェナジン、テルフェナジン、デスロラタジン、ノラステミゾール、エピナスチン、エバスチン、エバスチン、アステミゾール、レボカバスチン、アゼラスチン、トラニラスト、テルフェナジン、ミゾラスチン、ベタタスチン、CS560、およびHSR609を含むがそれに限定されない。プロスタグランジン誘導剤は、プロスタグランジン活性を誘導する化合物である。プロスタグランジンは平滑筋弛緩を調節することによって機能するプロスタグランジン誘導剤は、S-5751を含むがそれに限定されない。
【0109】
ステロイドは、ベクロメタゾン、フルチカゾン、トリアムシノロン、ブデソニド、副腎皮質ステロイドおよびブデソニドを含むがそれらに限定されない。
【0110】
副腎皮質ステロイドは、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ブデソニド、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、およびトリアムシノロンアセトニドを含むがそれらに限定されない。
【0111】
全身性副腎皮質ステロイドは、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロンおよびプレドニゾンを含むがそれらに限定されない。
【0112】
現在開発中または販売中である、一般的に用いられるアレルギー薬を表2に示す:
【表2】

【0113】
抗アレルギー剤はまた喘息薬を含む。喘息薬は、PDE-4阻害剤、気管支拡張薬/β-2作用薬、K+チャンネル開口薬、VLA-4拮抗薬、ニューロキン作用薬、TXA2合成阻害剤、キサンタニン、アラキドン酸拮抗薬、5リポキシゲナーゼ阻害剤、トロンボキシンA2受容体拮抗薬、トロンボキサンA2拮抗薬、5-脂肪酸化タンパク質の阻害剤、およびプロテアーゼ阻害剤を含むがそれらに限定されない。
【0114】
一部の実施形態では、非fugetactic治療剤は免疫抑制剤である。そのような免疫抑制剤は下記を含む:アザチオプリン;アザチオプリンナトリウム;シクロスポリン;ダルトロバン;グスペリムス三塩酸塩;シロリムス;タクロリムス。
【0115】
非抗fugetactic物質はまた、抗癌剤である。抗癌剤は下記を含む:アシビシン;アクラルビシン;塩酸アコダゾール;アクロニン;アドゼレシン;アルデスロイキン;アルトレタミン;アンボマイシン;酢酸アメタントロン;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;塩酸ビサントレン;二メシル酸ビスナフィド;ビゼレシン;硫酸ブレオマイシン;ブレキナルナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルムスチン;塩酸カルビシン;カルゼレシン;セデフィンゴール;クロラムブシル;シロレマイシン;シスプラスチン;クラドリビン;メシル酸クリスナトール;シクロホスファミド;シタラビン;デカルバジン;ダクチノマイシン;塩酸ダウノルビシン;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;メシル酸デザグアニン;ジアジクォン;ドセタキセル;ドキソルビシン;塩酸ドキソルビシン;ドロロキシフェン;クエン酸ドロロキシフェン;プロピオン酸ドロモスタノロン;デュアゾマイシン;エダトレキサート;塩酸エフロールニチン;エルサミトルシン;エンロプラスチン;エンプロマート;エピプロピジン;塩酸エピルビシン;エルブロゾール;塩酸エソルビシン;エストラムスチン;リン酸エストラムスチンナトリウム;エタニダゾール;エトポシド;リン酸エトポシド;エトプリン;塩酸ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フロクスウリジン;リン酸フルダラビン;フルオロウラシル;フルロシタビン;フォスキドン;フォストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;塩酸ゲムシタビン;ヒドロキシ尿素;塩酸イダルビシン;イフォスファミド;イルモフォシン;インターフェロンアルファ-2a;インターフェロンアルファ-2b;インターフェロンアルファ-n1;インターフェロンアルファ-n3;インターフェロンベータ-Ia;インターフェロンガンマ-Ib;イプロプラチン;塩酸イリノテカン;酢酸ランレオチド;レトロゾール;酢酸ロイプロリド;塩酸リアロゾール;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン;塩酸ロソキサントロン;マソプロコール;メイタンシン;塩酸メクロルエタミン;酢酸メゲストロール;酢酸メレンゲストロール;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキサート;メトトレキサートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;マイトカルシン;マイトクロミン;マイトギリン;マイトマルシン;マイトマイシン;マイトスパー;マイトタン;塩酸マイトキサントロン;マイコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;パクリタキセル;ペグアスパルガーゼ;ペリオマイシン;ペンタムスチン;硫酸ペプロマイシン;ペルホスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;塩酸ピロキサントロン;プリカマイシン;プロメスタン;ポドフィロックス;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;塩酸プロカルバジン;ピューロマイシン;塩酸ピューロマイシン;ピラゾフリン;リボプリン;ログレチミド;サフィンゴール;塩酸サフィンゴール;セムスチン;シムトラゼン;スパルフォセートナトリウム;スパルソマイシン;塩酸スピロゲルマニウム;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェヌル;タリソマイシン;タキソテール;テコガランナトリウム;テガフール;塩酸テロキサントロン;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;塩酸トポテカン;クエン酸トレミフェン;酢酸トレストロン;リン酸トリシリビン;トリメトレキサート;グルクロン酸トリメトレキサート;トリプトレリン;ツブロゾール塩酸;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン;硫酸ビンブラスチン;硫酸ビンクリスチン;ビンデシン;硫酸ビンデシン;硫酸ビネピジン;硫酸ビングリシナート;硫酸ビンリューロシン;酒石酸ビノレルビン;硫酸ビンロシジン;硫酸ビンゾリジン;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;塩酸ゾルビシン。
【0116】
非fugetactic治療剤はまた、細胞の増殖を刺激しおよびPDGF、EGF、FGF、TGF、NGF、CNTF、およびGDNFといった増殖因子を含む、細胞増殖促進物質を含む。
【0117】
提供される方法はまた、細胞遊走に影響する第二の物質の投与を含むことができる。これらの物質は、実施形態に応じて、化学誘引性または化学反発性でありうる。好ましい一実施形態では、そのような物質はサイトカインを含む。「サイトカイン」は、一つの細胞部分集団から放出されおよび細胞間媒介物質として、たとえば、免疫反応の発生または調節において作用する、非抗体可溶性タンパク質の一般名である。Human Cytokines: Handbook for Basic & Clinical Research (Aggrawal, et al. eds. , Blackwell Scientific, Boston, Mass. 1991)を参照(参照により全体が本開示に含まれる)。サイトカインは、たとえば、インターロイキンIL-1からIL-15、腫瘍壊死因子αおよびβ、インターフェロンα、β、およびγ、腫瘍増殖因子ベータ(TGF-β)、コロニー刺激因子(CSF)および顆粒球単球コロニー刺激因子(GM-CSF)を含む。標的細胞に対する各サイトカインの作用は、細胞表面受容体への結合を通じて媒介される。サイトカインはホルモンの多数の性質を共有するが、しかし、in vivoでは一般的に組織内の近傍の細胞に対して局所的に作用する点で、古典的なホルモンとは異なる。サイトカインの活性は、細胞増殖の促進(たとえば、IL-2、IL-4、およびIL-7)、および増殖停止(IL-10、腫瘍壊死因子およびTGF-β)から、ウイルス耐性の誘導(IFNα、β、およびγ)と幅広い。Fundamental Immunology (Paul ed., Raven Press, 2nd ed. 1989); Encyclopedia of Immunology, (Roitt ed. , Academic Press 1992)を参照(参照により全体が本開示に含まれる)。一部の実施形態では、サイトカインは化学誘引性および/またはケモカイン的性質を有するサイトカインである。そのようなサイトカインの例は下記を含む:PAF、N-ホルミル化ペプチド、C5a、LTB4、LXA4、ケモカイン:CXC、IL-8、GCP-2、GROα、GROβ、GROγ、ENA-78、NAP-2、IP-10、MIG、I-TAC、SDF-1α、BCA-1、PF4、ボルカイン、MIP-1α、MIP-1β、RANTES、HCC-1、MCP-1、MCP-2、MCP-3、MCP-4、MCP-5(マウスのみ)、リューコタクチン-1(HCC-2、MIP-5)、エオタキシン、エオタキシン-2(MPIF2)、エオタキシン-3(TSC)、MDC、TARC、SLC(Exodus-2、6CKine)、MIP-3α(LARC、Exodus-1)、ELC(MIP-3β)、I-309、DC-CK1(PARC、AMAC-1)、TECK、CTAK、MPIF1(MIP-3)、MIP-5(HCC-2)、HCC-4(NCC-4)、MIP-1γ(マウスのみ)、C-10(マウスのみ);C:リンフォタクチン;CX3C:フラクタルカイン(ニューロタクチン)。非常に好ましくは、サイトカインはケモカインのCys-X-Cysファミリー(CXCR-4受容体と結合するケモカイン)のメンバーである。本発明の好ましいそのような物質は、SDF-1α、SDF-1β、およびmet-SDF-1βを含む。別の好ましい 実施形態では、そのような物質は他のCXCR-4受容体リガンドを含む。CXCR-4リガンドは、HIV-1IIIBgp120、低分子のT134およびMD3100、および/またはT22([Tyr5,12,Lys7]-ポリフェムシンII)(Heveker et al. , Curr Biol, 1998, 8: 369-76)を含むがそれらに限定されない。
本組成物は、上記の通り、有効量で投与される。有効量は、投与方法、治療される特定の症状、および目的とする結果に応じて決まる。有効量はまた、症状の段階、対象の年齢および身体的条件、もしあれば並行する療法の性質、および医師によく知られている同様の因子に応じて決まる。治療用途のためには、医学的に望ましい結果を達成するために十分な量である。一部の場合には、これは炎症の局所的(部位特異的)減少である。他の場合には、それは腫瘍増殖および/または転移の阻害である。一部の場合には、fugetactic物質の有効量は、対象中の特定部位から遠ざかる細胞の遊走を促進する量である。別の場合には、抗fugetactic物質の有効量は、対象中の特定部位から遠ざかる細胞の遊走を阻害する量である。
【0118】
一般的に、本発明の活性化合物の用量は、一日当たり約0.01mg/kgないし一日当たり1000mg/kgとなる。50〜500mg/kgの範囲の用量が適当であると予測される。
【0119】
さまざまな投与経路が利用可能である。本発明の方法は、一般的に言って、医学的に許容される任意の投与方法、つまり、臨床的に許容できない有害作用を生じることなく活性化合物の有効レベルを生じる任意の方法を用いて実施することができる。本発明の組成物は、全身的にまたは局所的に投与できる。そのような投与方法は、経口、直腸、局所、経鼻、皮内、または非経口経路を含む。「非経口」の語は、皮下、静脈内、筋肉内、または輸液を含む。静脈内または筋肉内経路は、長期治療および予防には特に適してはいない。それらは、しかし、緊急の場合には好ましい可能性がある。経口投与は、患者および投与計画への利便性のため、予防的処置に好ましい。ペプチドが治療に用いられる場合、一部の実施形態では、望ましい投与英路は肺エアロゾルによる。ペプチドを含むエアロゾル送達システムを作製するための技術は当業者によく知られている。一般的に、そのような系は、パラトープ結合能力といった抗体の生物学的特性を顕著に損なわない成分を利用すべきである(たとえば、参照により本開示に含まれるSciarra and Cutie, "Aerosols,"in Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th edition, 1990, pp 1694-1712を参照)。当業者は、抗体またはペプチドエアロゾルを調製するためのさまざまなパラメーターおよび条件を、必要以上の実験を行うことなく容易に決定できる。
【0120】
一部の実施形態では、fugetactic物質または抗fugetactic物質は、特定部位を標的とすることができる。ターゲッティング法は当業者に公知である。たとえば、本発明の物質は、ターゲッティング分子と結合させることができる。別の一例として、HSPはターゲッティング分子と結合させることができる。ターゲッティング分子は、標的細胞上の表面膜タンパク質に特異的な抗体または標的細胞上の受容体に対するリガンドといった分子を含むがそれらに限定されない。ターゲッティング分子は、したがって、腫瘍抗原に特異的な抗体を含む。
【0121】
腫瘍抗原は、Melan-A/MART-1、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(ADAbp)、シクロフィリンb、結腸直腸関連抗原(CRC)--C017-lA/GA733、癌胎児性抗原(CEA)およびその免疫原性エピトープであるCAP-1およびCAP-2、etv6、amll、前立腺特異的抗原(PSA)およびその免疫原性エピトープであるPSA-1、PSA-2、およびPSA-3、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、T-細胞受容体/CD3-ゼータ鎖、腫瘍抗原のMAGEファミリー(たとえば、MAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A5、MAGE-A6、MAGE-A7、MAGE-A8、MAGE-A9、MAGE-A10、MAGE-A11、MAGE-A12、MAGE-Xp2(MAGE-B2)、MAGE-Xp3(MAGE-B3)、MAGE-Xp4(MAGE-B4)、MAGE-C1、MAGE-C2、MAGE-C3、MAGE-C4、MAGE-C5)、GAGE-ファミリーof腫瘍抗原(たとえば、GAGE-1、GAGE-2、GAGE-3、GAGE-4、GAGE-5、GAGE-6、GAGE-7、GAGE-8、GAGE-9)、BAGE、RAGE、LAGE-1、NAG、GnT-V、MUM-1、CDK4、チロシナーゼ、p53、MUCファミリー、HER2/neu、p21ras、RCAS1、α-フェトプロテイン、E-カドヘリン、α-カテニン、β-カテニンおよびγ-カテニン、p120ctn、gp100Pmell17、PRAME、NY-ESO-1、脳グリコーゲンホスホリラーゼ、SSX-1、SSX-2(HOM-MEL-40)、SSX-1、SSX-4、SSX-5、SCP-1、CT-7、cdc27、大腸腺腫症タンパク質(APC)、フォドリン、P1A、コネキシン37、Ig-イディオタイプ、p15、gp75、GM2およびGD2ガングリオシド、ヒトパピローマウイルスタンパク質のようなウイルス産物、腫瘍抗原のSmadファミリー、lmp-1、EBVコード核内抗原(EBNA)-1、およびc-erbB-2を含む。
【0122】
経口投与に適した組成物は、それぞれ規定量の有効成分を含む、カプセル剤、錠剤、トローチ剤といった不連続単位として提供されうる。他の組成物は、シロップ剤、エリキシル剤または乳剤といった、水系液体または非水系液体中の懸濁液を含む。
【0123】
非経口投与のための調製物は、滅菌水溶液または非水系溶液、懸濁液、および乳液を含む。非水系溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、および、オレイン酸エチルのような注射可能な有機エステルである。水系キャリヤーは、生理食塩水および緩衝培地を含む、水、アルコール/水溶液、乳液または懸濁液を含む。非経口媒体は、塩化ナトリウム溶液、リンゲル液、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液または不揮発性油を含む。経静脈媒体は、水分および栄養補充液、電解質補充液(たとえばリンゲル液を基礎とするもの)、などを含む。保存料および、たとえば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性気体などの他の添加物もまた存在可能である。より低い用量が、経静脈投与といった他の投与形態の結果として生じる。対象における反応が、投与した最初の用量では不十分である場合は、より高い用量(または、別のより局所化された送達経路による、効果的により高い用量)を、患者の耐容性の許容範囲で用いることができる。化合物の適当な全身レベルを達成するために、一日当たり複数回投与が考慮される。
【0124】
一部の実施形態では、本発明のfugetactic物質または抗fugetactic物質は、fugetactic物質が必要とされる部位(たとえば炎症の部位;慢性関節リウマチを有する対象の場合には関節、アテローム性硬化症の臓器の血管、など)へ直接に送られる。たとえば、これは、単離されたfugetactic分子(核酸またはポリペプチド)をバルーンカテーテルの表面に付け;カテーテルを対象の中へ、炎症の部位、たとえばアテローム硬化症の血管に配置されるまで挿入し、およびバルーンを膨張させてバルーン表面を閉塞の部位の血管表面と接触させることによって達成できる。この方法で、組成物を特定の炎症部位へ局所的にターゲッティングし、これらの部位への免疫細胞遊走を調節できる。別の一例では、局所投与は、そのような処置を必要とする部位への移植可能なポンプを含む。好ましいポンプは上記の通りである。別の一例では、膿瘍の治療が含まれる場合、fugetactic物質は、たとえば、軟膏/皮膚用処方中で局所的に届けることができる。必要に応じて、本発明のfugetactic分子は、非fugetactic分子(たとえば、抗炎症、免疫抑制剤、抗癌剤、など)と組み合わせて届けられる。
【0125】
本発明の好ましい一実施形態では、本発明の単離されたfugetactic物質は、対象へバルーン血管形成術と組み合わせて投与される。バルーン血管形成術は、しぼんだバルーンを有するカテーテルを動脈へ挿入することを含む。しぼんだバルーンはアテローム斑および炎症の部位の付近に配置され、および斑が動脈壁へ圧縮されるように膨張させられる。結果として、動脈の表面上の内皮細胞の層が破壊され、それによって下にある血管平滑筋細胞が露出する。単離されたfugetactic分子は、アテローム斑部位および炎症部位での単離されたfugetactic分子の放出を可能にする方法で、バルーン血管形成術カテーテルに付けられる。単離されたfugetactic分子は、本分野で公知の標準的な手順にしたがってバルーン血管形成術カテーテルに付けることができる。たとえば、単離されたfugetactic分子は、バルーンが膨張させられるまでバルーン血管形成術カテーテルの区画内に貯蔵することができ、バルーンが膨張させられる時点で局所環境内へ放出される。代替的に、単離されたfugetactic分子を、バルーンが膨張させられる際に動脈壁の細胞と接触するように、バルーン表面上に含浸させることができる。fugetactic分子はまた、Flugelman, et al., Circulation, v. 85, p. 1110-1117 (1992)に開示されるもののような有孔バルーンカテーテルで届けることができる。また、治療用タンパク質をバルーン血管形成術カテーテルへ付着させる典型的な手順については、たとえば、公開されたPCT出願国際公開第95/23161号パンフレットを参照。この手順は、通常の実験しか用いずに、治療用核酸をバルーン血管形成術カテーテルへ付着させるように改変できる。
【0126】
本発明は別の態様では、fugetactic物質および抗fugetactic物質の医薬組成物を含む。
【0127】
fugetactic物質、抗fugetactic物質、またはその断片は、必要に応じて、医薬品として許容されるキャリヤーと組み合わせることができる。「医薬品として許容されるキャリヤー」の語句はここでは、ヒトへの投与に適した一つ以上の適合性の固体または液体増量剤、希釈剤または封入物質を意味する。「キャリヤー」の語は、適用を容易にするために有効成分と合わせられる、天然または合成の有機または無機成分を表す。医薬組成物の成分はまた、本発明の分子と、および互いに、目的の医薬品としての有効性を実質的に損なう相互作用が存在しないような方法で、一緒に混合されうる。
【0128】
投与される際、本発明の医薬調製物は、医薬品として許容される量で、および医薬品として許容される組成物として適用される。そのような調製物は、塩、緩衝剤、保存料、適合性キャリヤー、および必要に応じて他の治療剤を通常含みうる。医薬に使用される場合、塩は医薬品として許容されるべきであるが、医薬品として許容されない塩は、医薬品として許容されるその塩を調製するために便利に使用することができ、および本発明の範囲から除外されない。そのような薬理学的におよび医薬品として許容される塩は、下記の酸から調製されるものを含むがそれらに限定されない:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、など。また、医薬品として許容される塩は、ナトリウム、カリウムまたはカルシウム塩といった、アルカリ金属塩またはアルカリ土類塩として調製されうる。
【0129】
fugetactic物質(核酸またはポリペプチド)は、組み換えによって作製してもよい。組み換えによって作製されたHSPのようなfugetactic物質は、HSPタンパク質と、たとえば、タンパク質-タンパク質結合、配列特異的核酸結合を提供または促進できるポリペプチド、検定条件下でのHSPポリペプチドの安定性を向上させることが可能なポリペプチド、緑色蛍光タンパク質のような検出可能な部分を提供できるポリペプチド、またはターゲッティング部分を提供できるポリペプチドのような、別のポリペプチドとの融合を含むキメラタンパク質を含む。fugetacticポリペプチドまたは断片と融合したポリペプチドはまた、たとえば免疫学的認識によってまたは蛍光標識化によって、その融合タンパク質を容易に検出する手段を提供できる。
【0130】
本発明の核酸(センスおよびアンチセンス、優性阻害)を細胞に導入するために、核酸がin vitro と in vivoのいずれで宿主に導入されるかに応じて、さまざまな技術を使用できる。そのような技術は、核酸-CaPO4沈降物のトランスフェクション、DEAEを伴う核酸のトランスフェクション、目的の核酸を含むレトロウイルスのトランスフェクション、リポソーム媒介トランスフェクション、などを含む。一部の用途には、特定の細胞を核酸の標的とすることが好ましい。そのような場合には、本発明の核酸を細胞へ届けるために用いられる媒体(たとえば、レトロウイルスまたは他のウイルス;リポソーム)はまた、それに付加されたターゲッティング分子を有していてよい。たとえば、標的細胞上の表面膜タンパク質に特異的な抗体または標的細胞上の受容体に特異的なリガンドといった分子を、核酸送達媒体に結合するかまたはその中に組み込むことができる。たとえば、本発明の核酸を届けるためにリポソームが用いられる場合、ターゲッティングのためにおよび/または取り込みを促進するために、エンドサイトーシスに関連する表面膜タンパク質と結合するタンパク質をリポソーム製剤に組み込むことができる。そのようなタンパク質は、特定細胞型に対して向性であるキャプシドタンパク質またはその断片、サイクリングにおいて内部移行を受けるタンパク質に対する抗体、細胞内局在を標的としおよび細胞内半減期を増大させるタンパク質、などを含む。ポリマー送達システムもまた、当業者に知られている通り、細胞に核酸を運搬することにうまく用いられている。そのような系は、核酸の経口送達さえ可能にする。
【0131】
他の送達システムは、徐放性、遅放性または持続放出性送達システムを含みうる。そのような系はfugetactic物質の反復投与を回避することができ、対象および医師への利便性を高める。さまざまな種類の放出送達システムが利用可能でありおよび当業者に公知である。それらは、ポリ(ラクチド-グリコリド)、オキサラート共重合体、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酪酸、およびポリ無水物といった、ポリマーを基礎とする系を含む。医薬を含む前記のポリマーのマイクロカプセルが、たとえば、米国特許第5,075, 109号明細書に記載されている。送達システムはまた:コレステロール、コレステロールエステルといったステロールおよび脂肪酸またはモノ、ジ、およびトリグリセリドといった中性脂肪を含む脂質;ハイドロゲル放出系;シラスチック系;ペプチドを基礎とする系;ワックスコーティング;従来の結合剤および添加物を用いた圧縮錠剤;部分的に融合したインプラント;などである非ポリマー系を含む。具体的な例は:(a)抗炎症剤が米国特許第4,452,775号、第4,667,014号、第4,748,034号および第5,239,660号明細書に記載されるようなマトリクス内の形で含まれる侵食系、および(b)米国特許第3,832,253号および第3,854,480号明細書に記載されるような、有効成分がポリマーから調節された速度で浸透する拡散系を含むがそれらに限定されない。
【0132】
本発明の好ましい送達システムはコロイド分散系である。コロイド分散系は、水中油エマルジョン、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含む、脂質を基礎とする系を含む。本発明の好ましいコロイド系はリポソームである。リポソームは、in vivoまたはin vitroの運搬ベクターとして有用である人工膜容器である。大型一枚膜リポソーム(LUV)は、0.2〜4.0μmの範囲の大きさであり、大型の高分子を封入できることが示されている。RNA、DNA、および完全なビリオンを、生物学的に活性な形で、水系の内部に封入しおよび細胞へ届けることができる(Fraley, et al. , Trends Biochem. Sci., (1981) 6: 77)。リポソームが効率的な遺伝子運搬ベクターであるためには、下記の特徴の一つ以上が存在すべきである:(1)生物活性の保持を伴う、高効率での目的遺伝子の封入;(2)非標的細胞と比較して、標的細胞との優先的なおよび相当な結合;(3)粒子の水系内容物の、標的細胞の細胞質への高効率での輸送;および(4)遺伝情報の正確なおよび効果的な発現。
【0133】
リポソームは、モノクローナル抗体、糖、糖脂質、またはタンパク質といった特異的リガンドとリポソームを結合することによって、特定の組織へターゲッティングすることができる。リポソームはたとえば、Gibco BRLからLIPOFECTIN(登録商標)およびLIPOFECTACE(登録商標)として市販されており、それらは塩化N-[1-(2,3ジオレイルオキシ)-プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウム(DQTMA)および臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB)といった陽イオン性脂質から形成される。リポソームを作製するための方法は本分野でよく知られており、および多数の出版物に記載されている。リポソームはまたGregoriadis, G.によってTrends in Biotechnology, (1985) 3: 235-241に総説がある。
【0134】
重要な一実施形態では、好ましい媒体は、哺乳類レシピエントへの衣食に適した生体適合性微粒子またはインプラントである。この方法にしたがって有用である典型的な生分解性インプラントは、国際出願番号PCT/US/03307(国際公開第95/24929号パンフレット、表題は"Polymeric Gene Delivery System")に記載されている。PCT/US/0307は、適当なプロモーターの調節下にある外来遺伝子を入れるのに適した、生体適合性、好ましくは生分解性ポリマーマトリクスを記載する。ポリマーマトリクスは、患者体内での外来遺伝子の徐放を達成するために用いられる。本発明にしたがって、ここに記載のfugetactic物質は、PCT/US/03307に開示される生体適合性、好ましくは生分解性ポリマーマトリクスに封入されるかまたはその中に分散される。
【0135】
ポリマーマトリクスは好ましくは、ミクロスフェア(fugetactic物質は固体ポリマーマトリクス全体に分散している)またはマイクロカプセル(fugetactic物質はポリマー外被の中心に貯蔵されている)といった微粒子の形である。fugetactic物質を入れるためのポリマーマトリクスの別の形状は、フィルム、コーティング、ゲル、インプラント、およびステントを含む。ポリマーマトリクス器具の大きさおよび組成は、そのマトリクスが導入される組織において好ましい放出動力学を結果として生じるように選択される。ポリマーマトリクスの大きさはさらに、使用される送達方法にしたがって選択される。好ましくは、エアロゾル経路が用いられる場合、ポリマーマトリクスおよびfugetactic物質は界面活性媒体に包含される。ポリマーマトリクス組成物は、運搬の有効性をさらに高めるために、共に有利な分解速度を持つように選択することができ、およびまた生体接着性である材料製でありうる。マトリクス組成物はまた、分解せずに長期にわたって拡散によって放出するように選択することができる。
【0136】
別の重要な一実施形態では、送達システムは局所的な部位特異的送達に適した生体適合性ミクロスフェアである。そのようなミクロスフェアは、Chickering et al., Biotech. and Bioeng., (1996) 52: 96-101およびMathiowitz et al., Nature, (1997) 386:. 410-414に開示される。
【0137】
非生分解性および生分解性ポリマーマトリクスの両方を、本発明のfugetactic物質を対象へ届けるために用いることができる。生分解性マトリクスが好ましい。そのようなポリマーは、天然または合成ポリマーでありうる。合成ポリマーが好ましい。ポリマーは、一般的に数時間から一年以上の程度の、放出が望まれる期間に基づいて選択される。典型的には、数時間ないし3〜12ヶ月の範囲の期間にわたる放出が非常に望ましい。ポリマーは、必要に応じて、その重量の最大約90%を水中で吸収できるハイドロゲルの形であり、およびさらに、必要に応じて多価イオンまたは他のポリマーと架橋している。
【0138】
一般的に、fugetactic物質または抗fugetactic物質は、生分解性インプラントを用いて拡散によって、またはより好ましくは、ポリマーマトリクスの分解によって、届けられる。生分解性送達システムの作製に用いることができる典型的な合成ポリマーは下記を含む:ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキサイド、ポリアルキレンテレフタラート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリハロゲン化ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタンおよびその共重合体、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、アクリルおよびメタクリルエステルのポリマー、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシエチルセルロース、トリ酢酸セルロース、硫酸セルロースナトリウム塩、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキサイド)、ポリ(エチレンテレフタラート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリビニル酢酸、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、および乳酸およびグリコール酸のポリマー、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、およびポリ(ラクチド-コカプロラクトン)、および天然ポリマー、たとえばアルギン酸およびデキストランおよびセルロースを含む他の多糖、コラーゲン、その化学誘導体(置換、たとえばアルキル、アルキレンといった化学基の付加、水酸化、酸化、および当業者に通常行われる他の修飾)、アルブミンおよび他の親水性タンパク質、ゼインおよび他のプロラミンおよび疎水性タンパク質、共重合体およびその混合物。一般的に、これらの物質は酵素加水分解またはin vivoでの水への曝露によって、表面または全体侵食によって分解する。
非生分解性ポリマーの例は、エチレンビニル酢酸、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアミド、共重合体およびその混合物を含む。特に関心の高い生体接着性ポリマーは、その教示が参照により本開示に含まれるH. S. Sawhney, C. P. Pathak および J. A. HubellによってMacromolecules, (1993) 26: 581-587に記載された生分解性ハイドロゲル、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルチン、ポリ無水物、ポリアクリル酸、アルギン酸、キトサン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、およびポリ(オクタデシルアクリレート)を含む。
【0139】
加えて、本発明の重要な実施形態は、ポンプを基礎とするハードウェア送達システムを含み、その一部は移植に適応している。そのような移植可能なポンプは、放出制御マイクロチップを含む。好ましい放出制御マイクロチップは、Santini, JT Jr. , et al., Nature, 1999,397 : 335-338に記載され、その内容は明示的に参照により本開示に含まれる。
長期徐放インプラントの使用は、慢性症状の治療に特に適している可能性がある。ここでは長期放出とは、インプラントが少なくとも30日間、および好ましくは60日間にわたって有効成分の治療レベルを届けるように構築および準備されていることを意味する。長期徐放インプラントは当業者によく知られており、および上記の放出系の一部を含む。
【0140】
本発明は下記の実施例によってさらに説明され、実施例は決してさらに限定的であると解釈されない。本明細書全体で引用されたすべての参考文献の全内容(参考文献、発行済み特許、出願公開特許、および同時係属出願特許を含む)は明示的に参照により本開示に含まれる。
【実施例】
【0141】
材料および方法
細胞培養および条件培地の作製
EL4細胞株(ATCC, Manassas, VA)を、10%ウシ胎仔血清(I10)、50単位/mlペニシリンおよび50μg/mlストレプトマイシンおよび292μg/ml L-グルタミン(Mediatech; Herndon, VA)を添加したイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)で維持した。EL4 24時間条件培地(EL4CM24)は、EL4細胞を、292μg/ml L-グルタミン(Mediatech ; Herndon, VA)を添加したハイブリドーマ無血清培地(HSF)(Invitrogen; Carlsbad, CA)中に3日間継代することによって作製した。細胞を次いで新しいHSF培地に移し、および初期密度1x106細胞/mlで、24時間37℃で5%CO2加湿インキュベーター内において培養した。細胞培養上清を24時間後に回収し、およびin vitroおよびin vivo検定での使用前に0.2μm孔径フィルターを通してろ過した。
【0142】
濃縮マウスT細胞の調製
C57BL/6マウス(4〜8週齢)(Jackson Laboratories; Bar Harbor ME)を安楽死させ、および浅頚、腋窩、上腕および鼠径リンパ節の切除を無菌条件下で実施した。切除したリンパ節を次いで物理的に解離させ、および細胞懸濁液を作製した。細胞懸濁液を次いで、MACS Panマウス白血球用T細胞単離キット(Miltenyi Biotec; Auburn, CA)を用いた非T細胞の除去によって、T細胞を濃縮した。この方法は、典型的には、フローサイトメトリーによって実証される通り、95%超のCD3+純度を結果として生じる。
【0143】
トランスマイグレーションアッセイ
定量的トランスマイグレーションアッセイは以前に記載された通り実施した[18]。要約すると、3μm孔径フィルター付きChemoTx走化性30μlウェルプレート(Neuro Probe; Gaithersburg, MD)を使用した。20,000個のマウスT細胞をChemoTxシステムの上側チャンバーに加え、および正、負、および均一勾配のEL4CM24に、細胞遊走の標準の交差分析に供した。各勾配で使用した最高濃度は、I0.5培地を用いた2倍、10倍、および100倍希釈のEL4CM24;0.5%ウシ胎仔血清、50単位/mlペニシリン、50μg/mlストレプトマイシンおよび292μg/ml L-グルタミン(Mediatech; Herndon, VA)を添加したイスコフ培地であった。与えられた勾配に反応して遊走する細胞の数は、37℃で加湿5%CO2インキュベーター内においての90分間インキュベート後のChemoTxシステムの下側チャンバー中の細胞の総数と判断された。走化性指数は、EL4CM24に反応して遊走する細胞の平均数と培地単独に反応して遊走する細胞の平均数の商として計算された。すべての実験は、各勾配条件について2連のウェルを用いて、3連で実施した。
【0144】
熱不活性化、プロテイナーゼK消化、熱ショックおよび特異的阻害剤の使用
EL4CM24は、上記のトランスマイグレーションアッセイに使用される前に、42℃で1時間熱不活性化された。細胞の生存率は90%より高いことが観察された。EL4CM24を、水和したプロテイナーゼKアガロース(Sigma-Aldrich; St. Louis, MO) 1 mg/mlと共に、1時間37℃で5%CO2加湿インキュベーター内においてインキュベートし、次いで、トランスマイグレーションアッセイおよび腹腔内検定に用いられる前に、0.2μm孔径フィルターを通してろ過した。マウスT細胞は、トランスマイグレーションアッセイに用いられる前に、百日咳毒素(Sigma-Aldrich; St. Louis, MO)100ng/mlと共に、1時間37℃で5%CO2加湿インキュベーター内においてインキュベートした。EL4CM24は、ラジシコール(Sigma-Aldrich; St. Louis, MO)と共に、2時間室温にて0.1μg/mlおよび7.3μg/mlの濃度でインキュベートした。次いで、EL4CM24混合物を用いてトランスマイグレーションアッセイを実施した。対象として、トランスマイグレーションアッセイはまた、7.3μg/mlのラジシコールを添加したHSF培地の勾配を用いて、または5kDaサイズ排除Centricon Ultrafreeフィルター(Millipore; Billerica, MA)を用いて過剰のラジシコールを除去したEL4CM24-ラジシコール混合物を用いて実施した。HSF中のEL4細胞はまた、トランスマイグレーションアッセイにおけるCMの使用の前に、ゲルダナマイシン1.2μMまたは200nMに曝露した。HSF中のEL4細胞はまた、トランスマイグレーションアッセイにおけるEL4CM24の使用の前、一夜完全な24時間にわたって、ブレフェルジンAの10μg/mlに曝露した。65%超の生存率が、ブレフェルジンA処理後に観察された。
【0145】
イオン交換クロマトグラフィー
EL4CM24の画分を、DEAEカラム(Amersham Biosciences; Piscataway, NJ)から20mMトリエタノールアミン(Sigma-Aldrich; St. Louis, MO)0.25M NaCl緩衝液pH7.5を用いて溶出した。溶出した画分を、PD-10脱塩カラム(Amersham Biosciences; Piscataway, NJ)を用いて脱塩し、次いで、トランスマイグレーションアッセイに用いられる前に、5kDaサイズ排除Centricon Ultrafreeフィルター(Millipore; Billerica, MA)を用いて濃縮した。EL4CM24の画分は、NaCl濃度0.25M、0.5M、0.75M、1.0Mおよび2.0Mで溶出された。溶出された画分は、トランスマイグレーションアッセイでの使用前に脱塩した。
【0146】
SDS PAGE
7.5%アクリルアミドゲルを、Laemmliの方法にしたがって、変性条件下で泳動した。EL4CM24およびイオン交換クロマトグラフィーによって溶出された画分を、Laemmli緩衝液および5%β-メルカプトエタノールと共に3分間沸騰させることによってSDS PAGE用に準備した。ゲルの銀染色はSilver Stain Plusキット(Bio-Rad; Hercules, CA)を使用して達成された。銀染色ゲルからのタンパク質バンドの配列決定は、University of Massachusetts Medical Centerのプロテオミクス質量分析研究所にて標準的な技術を用いて完了した。MS-FitおよびMS-Tag検索を含めて、質量分析に関してさらなる情報が下記のウェブサイトにて容易に入手可能である: http ://prospector. ucsf. edu/。要約すると、MS-Fitは、質量分析データを解析しおよびそのデータをタンパク質配列と「適合(fit)」させることを試みる「ペプチド質量フィンガープリントツール」である。これらのタンパク質配列は、任意の既知の配列に由来するものであってよく、および一般的には既存のデータベースに由来する。MS-Tag検索は同様の方法論に従うが、しかしタンパク質配列のイオン的性質をマッチ(match)させることを試みる。
【0147】
条件培地の腹腔内注射およびリンパ球浸潤の分析
BALB/c-DOl1マウス(Dr. Iacomini, Massachusetts General Hospitalの好意により提供)を、フロイント完全アジュバント(Pierce Biotechnology; Rockford, IL)に濃度1 mg/mlで溶解した卵白アルブミン(ICN Biomedicals; Costa Mesa, CA)100μlの皮下注射によって予備刺激した。3日後、マウスに、滅菌水に濃度0.4mg/mlで溶解した卵白アルブミン250μlを腹腔内注射した。24時間後、実験マウスに、250μlのEL4CM24を腹腔内注射し、一方、対照マウスに、250μlのHSF培地またはプロテアーゼ処理EL4CM24を腹腔内注射した。24時間後、細胞は腹腔から、5mlの冷リン酸緩衝生理食塩水(Mediatech; Herndon, VA)を用いた洗浄ならびに10mlシリンジおよび21ゲージ針を用いた吸引によって抽出された。腹腔洗浄細胞を血球計算盤上で計数し、および次いで抗CD3、CD4、CD8およびTCR-kj-OVAリンパ球発現(BD BioSciences; San Jose, CA)および抗CD4(Caltag Laboratories; Burlingame, CA)について、既知の蛍光団標識PercpおよびPE(フィコエリトリン)で標識化された抗体を用いて免疫染色した。CD3+、CD3+CD4+、CD3+CD8+、CD3+ TCR-kj-OVAを発現しているT細胞を次いでFACS分析によって特定した。
【0148】
結果
EL4条件培地はIn Vitroでマウスリンパ球を追い払う
EL4CM24はHSF中で培養されたEL4細胞から上記の通り作製された。24時間HSF中での培養における細胞の生存率は常に>95%であった。これは、培養中で有意な細胞のアポトーシスまたは壊死が無かったことを実証する点で有意義である。2倍、10倍、および100倍希釈のEL424時間条件培地(EL4CM24)の負の勾配を用いるトランスマイグレーションアッセイでは、条件培地から遠ざかる遊走は培地単独から遠ざかる遊走と比較して顕著であり、およびEL4CM24の濃度漸増と共に減少した。
【0149】
100倍、10倍、および2倍希釈のEL4CM24に反応して遊走する細胞の平均遊走指数はそれぞれ382.50±50.55、325.50±60.96、163.83±35.42であり、走化性指数5.20±0.47、4.67±0.89、2.39±0.55を表した。培地単独中で遊走する細胞の平均数と比較した、各グラジエントのEL4CM24中で遊走する細胞の平均数は、試験したEL4CM24の3種類の濃度それぞれで統計的に有意であった(図2)。したがって、ELCM24中の因子は、負のグラジエントとして与えられた場合、in vitroでT細胞を追い払う。
EL4条件培地によるマウスリンパ球の反発は熱不活性化およびプロテイナーゼK消化によって低下する
熱不活性化されたまたはプロテイナーゼK消化されたEL424時間条件培地の負の勾配を用いるトランスマイグレーションアッセイで、リンパ球の遊走のレベルはプロテイナーゼK消化によって有意に低下したが、熱不活性化では低下しなかった。100倍,10倍,および2倍希釈の熱不活性化されたEL4CM24に反応して遊走する細胞の平均数は、それぞれ161.00±28.10、230.50±41.50、76.50±19.50であり、走化性指数(chemotactic indices)は2.01±0.34、2.76±0.10、0.91±0.07を表した。未処理EL4CM24中で遊走する細胞の平均数と比較した、各グラジエントの熱不活性化されたEL4CM24中で遊走する細胞の平均数は、試験したEL4CM24の3種類の濃度のうち最も高い濃度だけで統計的に有意であった(図3)。
【0150】
100倍、10倍、および2倍希釈のプロテイナーゼK消化されたEL4CM24に反応して遊走する細胞の平均数は、それぞれ110.00±25.00、118.00±18.10、36.50±1.50であり、走化性指数2.50±0.00、2.93±0.63、0.87±0.09を表した。未処理EL4CM24中で遊走する細胞の平均数と比較した、各グラジエントのプロテイナーゼK消化されたEL4CM24中で遊走する細胞の平均数は、試験したEL4CM24の3種類の濃度のうち2種類で統計的に有意であった(図3)。これらの結果は、EL4CM24中の活性を有する因子がタンパク質であることを支持した。
【0151】
EL4条件培地によるマウスリンパ球の反発は特異的阻害剤によって低下する
EL4 24時間条件培地の負の勾配を、百日咳毒素処理したマウスリンパ球と共に用いるトランスマイグレーションアッセイで、リンパ球の遊走のレベルは有意に低下した。100倍、10倍、および2倍希釈のEL4CM24に反応して遊走する百日咳毒素処理細胞の平均数は、それぞれ37.00±4.00、26.50±0.50、20.50±4.50であり、走化性指数3.65±0.52、2.57±0.18、1.93±0.09を表した。EL4CM24中で遊走する未処理細胞の平均数と比較した、各グラジエントのEL4CM24中で遊走する百日咳毒素処理細胞の平均数は、試験したEL4CM24の3種類の濃度のすべてで統計的に有意であった(図4)。GαiサブユニットからのGDPの放出を妨げることによってGタンパク質結合遊走を阻害する百日咳毒素の使用は、EL4CM24によって誘導される遊走がGタンパク質経路を介したシグナル伝達とカップリングしていることを示し、およびEL4CM24中の活性タンパク質に対する受容体がGタンパク質結合性であることを示唆する。
【0152】
ラジシコール処理したEL424時間条件培地の負の勾配を用いたトランスマイグレーションアッセイで、リンパ球の遊走のレベルは有意に低下しなかった。100倍、10倍、および2倍希釈のラジシコール処理EL4CM24に反応して遊走する細胞の平均数は、それぞれ191.83±32.38、172.83±33.12、84.67±18.55であり、走化性指数3.49±0.78、3.60±1.21、2.08±0.79を表した。未処理EL4CM24中で遊走する細胞の平均数と比較した、各グラジエントのラジシコール処理EL4CM24中で遊走する細胞の平均数は、試験したEL4CM24の3種類の濃度のすべてで統計的に有意でなかった(図4)。このことは、ラジシコールはHSP90の公知の阻害剤であるため、EL4条件培地に由来する顕著なタンパク質二重線バンドの配列決定と組み合わせて、大量のHSP90α/βの存在を示す。リンパ球の遊走の全体レベルはラジシコールの使用によって低下したが、ラジシコール処理EL4条件培地について見られた最高レベルの遊走は、培地単独と比較してなお有意であった。この低レベルの阻害は、使用したラジシコールの濃度の関数である可能性があり、またはHSP90が条件培地中の他の一または複数のfugetacticタンパク質と共同して働きその作用を増大することを示す可能性がある。
【0153】
ゲルダナマイシン処理したEL424時間条件培地を100倍、10倍、および2倍希釈に反応したトランスマイグレーションアッセイに用いた結果もまた図4に示す。
【0154】
EL4条件培地の分画はマウスリンパ球の反発を導く候補タンパク質を明らかにする
24時間EL4条件培地の画分の、DEAEカラムからの0.25M NaClを用いた溶出は、トランスマイグレーションアッセイで試験した際にマウスリンパ球の反発を伴う2つの画分を結果として生じた。発見された最高の活性を有する画分に由来する成分タンパク質の配列決定は、fugetactic活性がEL4CM24中の65kDa、84kDa、86kDa、94kDaおよび110kDaタンパク質の存在に随伴したことを実証した。MS-FitおよびMS-Tag検索からの結果を図12〜14に示す。具体的に、これらの図に表される結果は、EL4CM24画分に由来する成分タンパク質と相同であるペプチド配列を含むタンパク質(すなわち、HSPおよびL-プラスチン)の同一性を提供する。
【0155】
EL4 CMは免疫細胞をIn Vivoで追い払う
T細胞浸潤および続いてのアレルギー性免疫反応が、BALB/C DO11マウスの腹腔内で、確立された技術を用いて樹立された(3)。EL4CM24、HSFまたはプロテアーゼ処理EL4CM24が、これらの物質が解剖学的空間へのT細胞浸潤にどのように影響するかを確立するため、炎症を起こした腹腔へ滴下された。EL4CM24単独は、すべてのT細胞サブタイプ、および特にOVA特異的TCRを有するT細胞の腹腔への浸潤を有意に低下させた(p<0.05)(図5)。プロテアーゼ処理したEL4CM24およびHSF単独は、T細胞の腹腔への浸潤に対して有意な効果を有しなかった。
【0156】
EL-4細胞由来の条件培地中のタンパク質に対するモノクローナル抗体を用いた、CM由来のHSP90αの免疫沈降は、in vivoでの免疫負荷後の腹腔に浸潤するT細胞に対するCMのfugetactic作用の4倍の低下に繋がった。
【0157】
EL4 CMは免疫細胞をIn Vivoで追い払う
fugetacticタンパク質は分泌型タンパク質である可能性が高いが、熱ショックはその過剰発現に繋がらなかった。熱ショックを与えた(42℃で)EL4 24時間条件培地の負の勾配を用いたトランスマイグレーションアッセイでは、リンパ球の遊走のレベルは熱ショックによって有意に上昇しなかった(図8)。
【0158】
図8はまた、ブレフェルジンAを用いたEL4 24時間条件培地の処理からの結果を与える。
【参考文献】
【0159】


【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1−1】HSP90(配列番号1-3)、HSP84(配列番号4-5)、HSP86(配列番号6)、HSP60(配列番号7)およびL-プラスチン(配列番号8)のアミノ酸配列を表す。
【図1−2】図1−1の続きである。
【図1−3】図1−2の続きである。
【図2】図2はEL4 24時間条件培地(EL4CM24)の2倍、10倍、および100倍希釈を用いたトランスマイグレーションアッセイの結果を提供する。
【図3】図3は熱不活性化されたまたはプロテイナーゼK消化EL4 24時間条件培地(EL4CM24)の負の勾配(2倍、10倍および100倍希釈)を用いたトランスマイグレーションアッセイの結果を提供する。
【図4】図4はEL4 24時間条件培地(EL4CM24)と共に百日咳毒素処理マウスリンパ球およびラジシコールおよびゲルダナマイシン処理EL4CM24(2倍、10倍および100倍希釈)の負の勾配を用いたトランスマイグレーションアッセイの結果を提供する。
【図5】図5はEL4 24時間条件培地(EL4CM24)を用いた免疫細胞の遊走のin vivo試験の結果を提供する。
【図6】図6はSDS-PAGEで泳動したEL4 24時間条件培地(EL4CM24)(I0.5およびHSF)の結果を提供する。
【図7】図7はEL4 24時間条件培地(EL4CM24)のイオン交換クロマトグラフィーの結果を提供する。
【図8】図8は42℃で熱ショックを加えたおよびブレフェルジンAで処理したEL4 24時間条件培地(EL4CM24)を用いたトランスマイグレーションアッセイの結果を提供する。
【図9】図9は約84/86kDaのタンパク質を含んだEL4 24時間条件培地(EL4CM24)の画分の質量分析からの質量ピークを提供する。
【図10】図10は約94kDaのタンパク質を含んだEL4 24時間条件培地(EL4CM24)の画分の質量分析からの質量ピークを提供する。
【図11】図11は約65kDaのタンパク質を含んだEL4 24時間条件培地(EL4CM24)の画分の質量分析からの質量ピークを提供する。
【図12】図12は約84および86kDaの成分タンパク質のMS-FitおよびMS-Tag検索結果(出現順に配列番号9-45、121および46-51)を提供する。
【図13】図13は約94kDaの成分タンパク質のMS-Fit検索結果(出現順に配列番号52-72)を提供する。
【図14】図14は約65kDaの成分タンパク質のMS-FitおよびMS-Tag検索結果(出現順に配列番号74-106、121および107-118)を提供する。
【図15】図15はヒトHSP90β(配列番号119)およびマウスHSPタンパク質84(配列番号4)の配列整列を提供する。
【図16】図16は、両方ともマウスに由来するHSP84(配列番号4)およびHSP86(配列番号120)の配列整列を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
fugetactic活性を促進するのに有効な量の単離された熱ショックタンパク質(HSP)または熱ショックタンパク質様タンパク質(HSPLP)あるいはその断片と、医薬品として許容されるキャリヤーとを含む医薬組成物。
【請求項2】
HSPまたはHSPLPが、約84kDaの分子量を有することを特徴とする請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
HSPまたはHSPLPが、約86kDaの分子量を有することを特徴とする請求項1記載の医薬組成物。
【請求項4】
HSPまたはHSPLPが、約94kDaの分子量を有することを特徴とする請求項1記載の医薬組成物。
【請求項5】
HSPまたはHSPLPが、HSP60(シャペロニン)、HSP70およびHSP90ファミリーより成る群から選択される熱ショックタンパク質(HSP)ファミリーのメンバーであることを特徴とする請求項1記載の医薬組成物。
【請求項6】
HSPまたはHSPLPが、hsp90ファミリーのメンバーであることを特徴とする請求項5記載の医薬組成物。
【請求項7】
HSPまたはHSPLPが、HSP90αであることを特徴とする請求項6記載の医薬組成物。
【請求項8】
HSPまたはHSPLPが、HSP90βであることを特徴とする請求項6記載の医薬組成物。
【請求項9】
HSPまたはHSPLPが、配列番号3〜7のいずれかのアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項1記載の医薬組成物。
【請求項10】
HSPまたはHSPLPが、分泌型であることを特徴とする請求項1記載の医薬組成物。
【請求項11】
HSPLPの分泌型が、シグナル配列または分泌配列を含むことを特徴とする請求項10記載の医薬組成物。
【請求項12】
HSPまたはHSPLPが、ストレスを受けたかまたはストレスを受けていない細胞に由来することを特徴とする請求項1記載の医薬組成物。
【請求項13】
HSPまたはHSPLPが、腫瘍または腫瘍細胞株に由来することを特徴とする請求項1記載の医薬組成物。
【請求項14】
腫瘍または腫瘍細胞株が、血液腫瘍または血液腫瘍細胞株であることを特徴とする請求項13記載の医薬組成物。
【請求項15】
血液腫瘍または血液腫瘍細胞株が、白血病またはリンパ腫であることを特徴とする請求項14記載の医薬組成物。
【請求項16】
リンパ腫が胸腺腫であることを特徴とする請求項15記載の医薬組成物。
【請求項17】
血液腫瘍細胞株がEL4であることを特徴とする請求項14記載の医薬組成物。
【請求項18】
fugetactic活性を促進するのに有効な量の単離されたL-プラスチンまたはL-プラスチン様タンパク質(LPLP)、あるいはその断片と、医薬品として許容されるキャリヤーとを含む医薬組成物。
【請求項19】
L-プラスチンまたはLPLPが、約65kDaの分子量を有することを特徴とする請求項18記載の医薬組成物。
【請求項20】
L-プラスチンまたはLPLPが、L-プラスチンであることを特徴とする請求項18記載の医薬組成物。
【請求項21】
L-プラスチンまたはLPLPが、配列番号8のアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項18記載の医薬組成物。
【請求項22】
L-プラスチンまたはLPLPが、分泌型であることを特徴とする請求項21記載の医薬組成物。
【請求項23】
L-プラスチンまたはLPLPの分泌型が、シグナル配列または分泌配列を含むことを特徴とする請求項22記載の医薬組成物。
【請求項24】
L-プラスチンまたはLPLPが、腫瘍または腫瘍細胞株に由来することを特徴とする請求項18記載の医薬組成物。
【請求項25】
腫瘍または腫瘍細胞株が、血液腫瘍または血液腫瘍細胞株であることを特徴とする請求項24記載の医薬組成物。
【請求項26】
血液腫瘍または血液腫瘍細胞株が、白血病またはリンパ腫であることを特徴とする請求項25記載の医薬組成物。
【請求項27】
リンパ腫が胸腺腫であることを特徴とする請求項26記載の医薬組成物。
【請求項28】
血液腫瘍細胞株がEL4であることを特徴とする請求項26記載の医薬組成物。
【請求項29】
対象において遊走細胞のfugetaxisを促進する方法であって、そのような処置を必要とする対象に、対象中の特定部位から遠ざかる遊走細胞のfugetaxisを促進するのに有効な量で、配列番号3〜8のHSP、HSPLP、L-プラスチンまたはLPLP、あるいはその断片を投与することを含むことを特徴とする方法。
【請求項30】
非fugetactic治療剤を同時投与することをさらに含むことを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項31】
非fugetactic物質が、抗炎症剤または抗アレルギー剤であることを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記特定部位が炎症部位であることを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項33】
前記特定部位が、医療機器、人工補綴具または移植臓器または組織であることを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項34】
前記医療機器、人工補綴具または移植臓器または組織が、異種、幹細胞由来、合成または同種異系移植片であることを特徴とする請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記医療機器、人工補綴具または移植臓器または組織が、ステントであることを特徴とする請求項33記載の方法。
【請求項36】
前記特定部位が、自己免疫反応部位であることを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項37】
前記自己免疫反応部位が、関節にあるかまたはその付近の部位であることを特徴とする請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記特定部位が、アレルギー反応部位であることを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項39】
医薬組成物が、局所投与されることを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項40】
医薬組成物が、全身投与されることを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項41】
HSP、HSPLP、L-プラスチンまたはLPLPが、ターゲッティング分子に結合していることを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項42】
遊走細胞が造血細胞であることを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項43】
造血細胞が免疫細胞であることを特徴とする請求項42記載の方法。
【請求項44】
免疫細胞がT細胞であることを特徴とする請求項43記載の方法。
【請求項45】
fugetactic活性を阻害するのに有効な量の、HSP、HSPLP、L-プラスチンまたはLPLPと選択的に結合する抗fugetactic物質と、医薬品として許容されるキャリヤーとを含む医薬組成物。
【請求項46】
抗fugetactic物質が、配列番号1〜8のいずれかのアミノ酸配列またはその断片と結合することを特徴とする請求項45記載の医薬組成物。
【請求項47】
HSPまたはHSPLPが、約84kDaの分子量を有することを特徴とする請求項45記載の医薬組成物。
【請求項48】
HSPまたはHSPLPが、約86kDaの分子量を有することを特徴とする請求項45記載の医薬組成物。
【請求項49】
HSPまたはHSPLPが、約94kDaの分子量を有することを特徴とする請求項45記載の医薬組成物。
【請求項50】
HSPまたはHSPLPが、HSP60(シャペロニン)、HSP70およびHSP90より成る群から選択される熱ショックタンパク質(HSP)ファミリーのメンバーであることを特徴とする請求項45記載の医薬組成物。
【請求項51】
HSPまたはHSPLPが、hsp90ファミリーのメンバーであることを特徴とする請求項45記載の医薬組成物。
【請求項52】
HSPまたはHSPLPが、HSP90αであることを特徴とする請求項51記載の医薬組成物。
【請求項53】
HSPまたはHSPLPが、HSP90βであることを特徴とする請求項51記載の医薬組成物。
【請求項54】
L-プラスチンまたはLPLPが、約65kDaの分子量を有することを特徴とする請求項D1記載の医薬組成物。
【請求項55】
L-プラスチンまたはLPLPが、配列番号8のアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項45記載の医薬組成物。
【請求項56】
単離ペプチドであることを特徴とする請求項45記載記載の抗fugetactic物質。
【請求項57】
抗体またはその抗原結合断片であることを特徴とする請求項45記載の抗fugetactic物質。
【請求項58】
HSP、HSPLP、L-プラスチンまたはLPLPが、分泌型であることを特徴とする請求項45記載の抗fugetactic物質。
【請求項59】
HSP、HSPLP、L-プラスチンまたはLPLPの分泌型が、シグナル配列または分泌配列を含むことを特徴とする請求項58記載の抗fugetactic物質。
【請求項60】
HSP、HSPLP、L-プラスチンまたはLPLPが、腫瘍または腫瘍細胞株に由来することを特徴とする請求項45記載の抗fugetactic物質。
【請求項61】
HSPまたはHSPLPが、ストレスを受けたかまたはストレスを受けていない細胞に由来することを特徴とする請求項45記載の医薬組成物。
【請求項62】
HSP、HSPLP、L-プラスチンまたはLPLPが、腫瘍または腫瘍細胞株に由来することを特徴とする請求項45記載の医薬組成物。
【請求項63】
腫瘍または腫瘍細胞株が、血液腫瘍または血液腫瘍細胞株であることを特徴とする請求項62記載の医薬組成物。
【請求項64】
血液腫瘍または血液腫瘍細胞株が、白血病またはリンパ腫であることを特徴とする請求項63記載の医薬組成物。
【請求項65】
リンパ腫が胸腺腫であることを特徴とする請求項64記載の医薬組成物。
【請求項66】
血液腫瘍細胞株がEL4であることを特徴とする請求項63記載の医薬組成物。
【請求項67】
fugetactic活性が、造血細胞のものであることを特徴とする請求項45記載の医薬組成物。
【請求項68】
造血細胞が免疫細胞であることを特徴とする請求項63記載の医薬組成物。
【請求項69】
免疫細胞がT細胞であることを特徴とする請求項68記載の医薬組成物。
【請求項70】
対象において免疫反応を誘導または促進する方法であって、そのような処置を必要とする対象に、対象中の特定部位で免疫細胞特異的fugetactic活性を阻害するのに有効な量で請求項45記載の医薬組成物を投与することを含むことを特徴とする方法。
【請求項71】
前記特定部位がアレルギー反応部位であることを特徴とする請求項70記載の方法。
【請求項72】
前記特定部位が感染部位であることを特徴とする請求項70記載の方法。
【請求項73】
前記特定部位が腫瘍であることを特徴とする請求項70記載の方法。
【請求項74】
医薬組成物が局所投与されることを特徴とする請求項70記載の方法。
【請求項75】
抗fugetactic物質が全身投与されることを特徴とする請求項70記載の方法。
【請求項76】
熱ショックタンパク質がターゲッティング分子に結合していることを特徴とする請求項75記載の方法。
【請求項77】
抗fugetactic物質が、ゲルダナマイシン、17-A-GA、ハービマイシンA、PU3、ノボビオシンまたはラジシコールであることを特徴とする請求項70記載の方法。
【請求項78】
fugetaxisを調節する抗fugetactic物質をスクリーニングする方法であって:
遊走細胞をHSP、HSPLP、L-プラスチンまたはLPLPと混合することによってfugetactic活性の対照レベルを特定し;
遊走細胞をHSP、HSPLP、L-プラスチンまたはLPLPおよび候補化合物と混合することによってfugetactic活性の試験レベルを特定し;
fugetactic活性の対照レベルと試験レベルとを比較する;工程を含み、
試験レベルが対照レベルより低い場合に、候補化合物が抗fugetactic物質であることが示唆されることを特徴とするスクリーニング方法。
【請求項79】
遊走細胞が造血細胞であることを特徴とする請求項78記載の方法。
【請求項80】
造血細胞が免疫細胞であることを特徴とする請求項79記載の方法。
【請求項81】
免疫細胞がT細胞であることを特徴とする請求項80記載の方法。
【請求項82】
胸腺腫細胞株由来単離物を含む組成物であって、該単離物が、百日咳毒素で阻害可能なfugetactic活性を有し、プロテアーゼ分解性であり、約5kDaより大きな分子量を有し、さらに熱不活性化可能であることを特徴とする組成物。
【請求項83】
前記単離物のfugetactic活性が、56℃で一時間の熱不活性化によって阻害されることを特徴とする請求項82記載の組成物。
【請求項84】
前記単離物のfugetactic活性が、37℃で一時間のプロテイナーゼK消化によって阻害されることを特徴とする請求項82記載の組成物。
【請求項85】
前記単離物がヘパリンに有意に結合しないことを特徴とする請求項82記載の組成物。
【請求項86】
前記単離物が、20mMトリエタノールアミン緩衝液および0.25〜0.5M未満の濃度のNaClの存在下でDEAEカラムに有意に結合することを特徴とする請求項82記載の組成物。
【請求項87】
前記単離物が、pH7.5で負に荷電していることを特徴とする請求項82記載の組成物。
【請求項88】
前記単離物のfugetactic活性が、ラジシコールによって阻害されることを特徴とする請求項82記載の組成物。
【請求項89】
胸腺腫細胞による前記単離物の産生が、ブレフェルジンAによって阻害されることを特徴とする請求項82記載の組成物。
【請求項90】
前記単離物の活性が、42℃で一時間の熱ショックによって有意にアップレギュレートされないことを特徴とする請求項82記載の組成物。
【請求項91】
前記単離物の分子量が約65kDaより大きいことを特徴とする請求項82記載の組成物。
【請求項92】
前記単離物の分子量が約80kDaより大きいことを特徴とする請求項82記載の組成物。
【請求項93】
前記単離物の分子量が約90kDaより大きいことを特徴とする請求項82記載の組成物。
【請求項94】
胸腺腫細胞株がEL4であることを特徴とする請求項82記載の組成物。
【請求項95】
fugetactic活性が、T細胞特異的であることを特徴とする請求項82記載の組成物。
【請求項96】
T細胞が、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)であることを特徴とする請求項95記載の組成物。
【請求項97】
前記単離物が、実質的に純粋なポリペプチドであることを特徴とする請求項82記載の組成物。
【請求項98】
前記単離物が、EL4胸腺腫細胞の上清であることを特徴とする請求項82記載の組成物。
【請求項99】
上清が10倍希釈されていることを特徴とする請求項98記載の組成物。
【請求項100】
細胞のfugetaxisを刺激するのに有効な量の請求項82記載の単離物と、医薬品として許容されるキャリヤーとを含む医薬組成物。
【請求項101】
fugetaxisが造血細胞のものであることを特徴とする請求項100記載の医薬組成物。
【請求項102】
造血細胞が免疫細胞であることを特徴とする請求項101記載の医薬組成物。
【請求項103】
免疫細胞がT細胞であることを特徴とする請求項102記載の医薬組成物。
【請求項104】
胸腺腫細胞株が、顕著なアポトーシスまたは壊死を生じていないことを特徴とする請求項82記載の組成物。
【請求項105】
胸腺腫細胞株の95%より多くが生存していることを特徴とする請求項104記載の組成物。
【請求項106】
腫瘍細胞からfugetactic活性を有するポリペプチドを製造する方法であって:
腫瘍細胞を105〜106細胞/mLの密度でハイブリドーマ無血清培地中において培養し;
腫瘍細胞から上清を採取し;
採取した上清を0.2ミクロンフィルターでろ過し;
ろ過した上清を分画し;さらに
fugetactic活性について画分を分析する;工程を含む方法。
【請求項107】
腫瘍細胞が腫瘍細胞株であることを特徴とする請求項106記載の方法。
【請求項108】
細胞株が胸腺腫細胞株であることを特徴とする請求項107記載の方法。
【請求項109】
胸腺腫細胞株がEL4であることを特徴とする請求項109記載の方法。
【請求項110】
請求項106から109いずれか1項記載の方法に基づき製造されたfugetactic活性を有するポリペプチド。
【請求項111】
約84kDaの分子量を有することを特徴とする請求項110記載のポリペプチド。
【請求項112】
約86kDaの分子量を有することを特徴とする請求項110記載のポリペプチド。
【請求項113】
約94kDaの分子量を有することを特徴とする請求項110記載のポリペプチド。
【請求項114】
約65kDaの分子量を有することを特徴とする請求項110記載のポリペプチド。
【請求項115】
fugetactic活性が造血細胞特異的であることを特徴とする請求項110記載のポリペプチド。
【請求項116】
造血細胞が免疫細胞であることを特徴とする請求項115記載のポリペプチド。
【請求項117】
免疫細胞がT細胞であることを特徴とする請求項116記載のポリペプチド。
【請求項118】
熱不活性化可能でありかつプロテアーゼ分解性であることを特徴とする請求項110記載のポリペプチド。
【請求項119】
fugetactic活性が百日咳毒素で阻害可能であることを特徴とする請求項110記載のポリペプチド。
【請求項120】
腫瘍細胞の95%より多くが生存するように腫瘍細胞を培養する工程をさらに含むことを特徴とする請求項110記載の方法。
【請求項121】
fugetaxisを調節する抗fugetactic物質をスクリーニングする方法であって:
遊走細胞を請求項82記載の単離物または請求項106記載のポリペプチドと混合することによってfugetactic活性の対照レベルを特定し;
遊走細胞を請求項82記載の単離物または請求項106記載のポリペプチド、および候補化合物と混合することによってfugetactic活性の試験レベルを特定し、さらに
fugetactic活性の対照レベルと試験レベルとを比較する;工程を含み、
試験レベルが対照レベルより低い場合に、候補化合物が抗fugetactic物質であることが示唆されることを特徴とするスクリーニング方法。
【請求項122】
遊走細胞が造血細胞であることを特徴とする請求項121記載の方法。
【請求項123】
造血細胞が免疫細胞であることを特徴とする請求項122記載の方法。
【請求項124】
免疫細胞がT細胞であることを特徴とする請求項123記載の方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2007−530420(P2007−530420A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518870(P2006−518870)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/021725
【国際公開番号】WO2005/009350
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(300052453)ザ・ジェネラル・ホスピタル・コーポレイション (24)
【Fターム(参考)】