説明

mRNAの阻害/不安定領域の除去方法

【課題】mRNAのコード領域内の阻害/不安定配列の効果を減少させる方法の提供。
【解決手段】mRNAをコードする遺伝子を提供し、mRNAのコード領域内の阻害/不安定配列(群)の位置決定を行い、多重点突然変異を作成することにより遺伝子内の阻害/不安定配列へ突然変異を導入する。この方法により、該mRNAをコードする遺伝子を改変して、遺伝子のコード能を変更しないようにクラスターヌクレオチド置換を施すことで、これらの阻害/不安定配列群を取り除く。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
本出願は1992年3月27日に提出された米国シリアルナンバー07/858、747の一部継続出願である。
I.技術分野
本発明は転写を阻害あるいは減衰させる遺伝子のコード領域中の調節あるいは阻害/不安定配列(INS)に突然変異を導入した遺伝子により生産されるmRNAの安定性および/あるいは有用性の増加方法に関連する。本発明はまた本方法に従って突然変異を導入した遺伝子を保持する発現ベクターを含む構築物および当該構築物を含む宿主細胞に関連する。
本発明の方法はタンパク質をコードする能力を変化させずにmRNAの安定性および/あるいは有用性の増加に特に有効である。本方法は本来mRNA転写物中のINS領域の存在のために発現されないあるいは発現されても僅かである遺伝子の発現を許容あるいは増加するのに有用である。このように本発明の方法、構築物および宿主細胞は、INSを含むmRNA転写物をコードするいかなる遺伝子によって生産されるタンパク質量の増加に有用である。
本発明の方法、構築物および宿主細胞は、たとえば増殖因子、インターフェロン、インターロイキン、fos原癌遺伝子タンパク質、およびHIV−1 gagおよびenvをコードする遺伝子から生産されるタンパク質量の増加に有用である。
本発明はまた、例えばワクチンのような免疫療法および免疫的予防措置、あるいは人体中で発現後の遺伝子療法における本発明の構築物の使用に関連する。このような構築物はレトロウイルスあるいは他の発現ベクターを含んだり融合され、あるいはまた構築物は組織細胞に直接注入されてコードされたタンパク質あるいはタンパク質断片を効率的に発現することもできる。これらの構築物はまた、たとえばin situの標的遺伝子との相同的組換によるin−vivoあるいはinーvitroの遺伝子置換に使用できる。
本発明はまたいかなるmRNA中の阻害/不安定配列の境界を簡単にすぐに検出および/あるいは限定するために使用できる例示した構築物、これらの構築物を使用する方法、およびこれらの構築物を含む宿主細胞に関連する。一度mRNAのINS領域が位置付けされおよび/あるいはさらに定義されると、これらのINS領域をコードするヌクレオチド配列に、mRNAの安定性および/あるいは有用性を増加させうる本発明の方法に従って突然変異を導入し、それゆえ、突然変異の導入されたmRNAをコードする発現ベクターより生産されるタンパク質量が増加することになる。
II.背景技術
転写制御機構の研究に多くの仕事が為されてきて、転写後修飾もまた、与えられた遺伝子により生産されたRNAの量及び有用性を変化させるということが次第に明らかになってきた。これらの転写後修飾は細胞質内のRNA分解に加えて核における転写後修飾(例えばスプライシング、ポリアデニル化、および輸送)を含む。これらの修飾はすべて特定の転写物の最終定常状態レベルに貢献する。これらの制御点は1つの過程が単独で生産するよりもより柔軟な制御体系を生み出す。例えば多量に転写されて効率よく修飾されても短命のメッセンジャーは安定したものよりも量が少ない。効率的な合成速度はメッセンジャーが細胞質に到達し翻訳されることを保証するが、急速な分解速度はmRNAが高レベルに蓄積しないことを保証する。例えば原癌遺伝子であるc−mycおよびc−fosのmRNAのような多くのRNAは、非常に低レベルで発現され、急速に衰退し、種々の条件下ですばやくそして一時的に修飾される点でこの種の制御を示すという研究がなされた。レビューとしてM.Hentze,Biochim.Biophys.Acta 1090:281ー292(1991)を参照。これらのmRNAの多くの分解速度はmRNAそのものの中にある1つあるいはそれ以上の不安定/抑制配列の存在に相関することが示された。
不安定あるいは短命のmRNAをコードする細胞内遺伝子の中には転写されたmRNAの3’非翻訳領域(3’UTR)内にAおよびUが豊富な(AUーリッチ)INSを含むものがあると示された。これらの細胞内遺伝子は、AUーリッチ3’UTR配列(AUUUA配列モチーフを8コピー含む)がマウスとヒトのあいだでタンパク質をコードする配列そのものよりもより高度に保存されている(65%にたいして93%)顆粒細胞ー単細胞コロニー刺激因子(GM−CSF)(G.Shaw,およびR.Kamen,Cell 46:659ー667(1986))および進化を通じて非翻訳領域が保存されているmyc原癌遺伝子(c−myc)(例えばヒトとマウスで81%)(M.ColeおよびS.E.Mongo、Enzyme 44:167−180(1990))を含む。3’UTR内にAUーリッチ配列を含むことが示された他の不安定なあるいは短命なmRNAはインターフェロン(アルファ、ベータ、およびガンマIFN);インターロイキン(IL1,IL2およびIL3);癌ネクローシス因子(TNF);リンフォトキシン(Lym);IgG1誘導因子(IgG IF);顆粒細胞コロニー刺激因子(G−CSF)、myb原癌遺伝子(c−myb)およびsis原癌遺伝子(c−sis)(G.Shaw,およびR.Kamen,Cell 46:659ー667(1986))を含む。R.WisdomおよびW.Lee,Gen.&Devel.5:232ー243(1991)(c−myc);A.Shyuら.,Gen,&Devel.5:221ー231(1991)(c−fos);T.WilsonおよびR.Treisman,Nature 336:396−399(1988)(c−fos);T.JonesおよびM.Cole,Mol.Cell Biol.7:4513ー4521(1987)(c−myc);V.Kruysら.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.89:673−677(1992)(TNF);D.Koellerら.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.88:7778−7782(1991)(トランスフェリン受容体(TfR)およびc−fos);I.Laird−Offringaら.,Nucleic Acids Res.19:2387ー2394(1991)(c−myc);D.WreschnerおよびG.Rechavi,Eur.J.Biochem.172:333−340(1988)(遺伝子の探索および比較安定性の概論を含む);Bunnellら.,Somatic Cell and Mol.Genet.16:151−162(1990)(ガラクトシルトランスフェラーゼー関連タンパク質(GTA)、ヒト、マウスおよびラット間で98%の相同性のあるAU−リッチ3’UTR領域を含む);およびCaputらProc.Natl.Acad.Sci.83:1670−1674(1986)(TNF,ネズミおよびヒトのTNF mRNA中に全体として保存された33ヌクレオチドのAU−リッチ配列を含む)もまた参照。
mRNAの3’UTR内にINSを含むと示されたこれらの細胞内遺伝子のうちいくつかはコード領域内にもINSを含むことが示されている。例えばR.Wisdom,およびW.Lee,Gen.&Devel.5:232−243(1991)(c−myc);A.Shyuら.,Gen.&Devel.5:221−231(1991)(c−fos)参照。
細胞内mRNAと同様に、いくつかのHIV−1 mRNAは、タンパク質コード領域内にINSを含むことが示されていて、それはある例において高AU−含量部分と一致する。例えばHIV−1 gagをコードする配列中においてgag遺伝子の5’末端に存在する高AU含量(61.5%)218ヌクレオチド領域はgag発現の抑制と関連がある。S.Schwartzら.,J.Virol.66:150−159(1992)。さらなる実験によりウイルスゲノムのgagタンパク質分解酵素遺伝子領域中に1つ以上のINSが存在することが示された(下記参照)。高AU含量の領域はHIV−1 gag/polおよびenvのINS領域中に見いだされた。AUUUA配列はgagコード配列中には存在しないが、gag/polおよびenvコード領域中には多コピー存在する。S.Schwartzら.,J.Virol.66:150−159(1992)。例えばM.Emerman,Cell 57:1155−1165(1989)(env遺伝子は3’UTRおよび内部阻害/不安定配列の両方を含む);C.Rosen,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 85:2071−2075(1988)(env);M.Hadzopoulou−Cladarasら.,J.Virol.63:1265−1274(1989)(env);F.Maldarelliら.,J.Virol.65:5732−5743(1991)(gag/pol);A.Cochraneら.,J.Virol.65:5303−5313(1991)(pol)もまた参照。F.Maldarelliら.,(上述)は複製成分に関してINS領域の機能を直接分析し、HIV−1プロウイルスの全長は遺伝子内INSがウイルス構造タンパク質のコード配列中に位置するという事実により複雑であると言及している。彼らはさらにこれらの遺伝子内INS配列中の変異は多くの場合たんぱく質配列にも影響を与え、このような突然変異体の複製にも影響を与えると言及している。
INS領域はAUーリッチである必要はない。例えばc−fosのコード領域のINSは構造的にAUーリッチの3’UTR INSとは関連がないし(A.Shyuら.,Gen.&Devel.5:221−231(1991)、INS要素を含むと見られるenvコード領域のある部分はAU−リッチではない。さらに、安定な転写物の中にもその3’UTR中にAUUUAモチーフを持つものがあり、この配列のみでは転写物を不安定にするのに十分である訳ではなく、あるいはこれらのメッセンジャーが優性の安定化要素も含む(M.ColeおよびS.E.Mango,Enzyme 44:167ー180(1990))ということを示している。興味深いことに特定のmRNAに独特の要素がまたmRNA転写物を安定化できるとして見いだされている。1つの例はRevタンパク質存在中にてmRNA転写物の輸送、安定性および有用性を促進するRev反応要素である(B.Felberら.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1495ー1499(1989))。
AU配列そのもの、および特にShaw−Kamen配列AUUAが分解シグナルの一部あるいはすべてとして働くかどうかまだ知られていない。これが短命のメッセンジャーに関わる唯一の機構であるかどうか、あるいはRNAにはさまざまな階層があって各々独自の分解体系を持つのかどうか明かではない。レビューとしてM.ColeおよびS.E.Mongo,Enzyme 44:167ー180(1990)参照;T.JonesおよびM.Cole,Mol.Cell.Biol.7:4513ー4521(1987)もまた参照。c−myc RNA INS領域中の唯一のAUUUA配列に突然変異を導入してもRNAの半減期に影響はなく、それゆえ、抑制配列はGM−CSFのそれとはまったく異なるのかも知れない(M.ColeおよびS.E.Mango,Enzyme44:167ー180(1990))、あるいはmRNAの不安定性はmRNA中のさらなるINS領域の存在によるためかも知れない。
上述の研究者たちは転写されたmRNAの3’UTR中のAU−リッチ阻害/不安定配列をコードする遺伝子の中に突然変異を導入した。例えばG.ShawおよびR.Kamen,Cell 46:659ー667(1986)はウサギβーグロビン遺伝子の3’UTRの中にGM−CSF由来の51ヌクレオチドのAT−リッチ配列を導入した。この挿入によって本来安定なβーグロビンmRNAがin vivoで高度に不安定になり、野生型の対照と比較してβーグロビンの発現は劇的に減少する結果となった。配列中に14個のGおよびCを点在させた同じ長さの別の配列をウサギβーグロビン遺伝子の3’UTRの同じ場所に導入したところ野生型βグロビンmRNAと同程度の蓄積が生じた。この対照配列はAU−リッチ配列に7回現れるAUUUAモチーフを含まなかった。この結果はβーグロビンmRNA中のAU−リッチ配列の存在が特に不安定性に関与していることを示唆している。
A.Shyuら.,Gen.&Devel.5:221ー231(1991)はUからAへ単一の点突然変異を導入することによってその配列を変化させるが要素のAUの豊富さは保持することにより、3つすべてのAUUUAペンタヌクレオチドを破壊してc−fosの3’UTR中のAU−リッチINSを研究した。3’UTR INS配列中のこの変化は、野生型のINSと比較してβグロビンmRNAの3’UTRに挿入したとき突然変異を導入した3’UTRがβグロビンメッセンジャーを不安定化する能力を劇的に抑制した。c−fosタンパク質をコードする領域のINS(3’UTR INSとは構造的に関連がない)は、βグロビンのコード領域に読み枠を合わせて挿入し、ヘテロなc−fos−βグロビンmRNAの安定性の欠如の効果を観察することによって研究された。
上述の研究者たちはまた、阻害/不安定配列をコードしている遺伝子の転写されたmRNAのコード領域の中に突然変異を導入した。例えばP.Carter−MuenchauおよびR.Wolf,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,86:1138ー1142(1989)はE.coli 6ーフォスフォグルコネートデヒドロゲナーゼ(gnd)遺伝子のコード配列中にある負の制御領域の存在を実証した。この要素の境界は合成した”内部相補配列”(ICS)をクローニングして、gnd遺伝子内部のいくつかの場所に位置させるとこの内部相補要素の遺伝子発現への影響が観察されることによって決定された。gnd−lacZ融合遺伝子の発現の制御に対する、部位特異的突然変異の導入によって合成ICS要素中に導入した1つおよび2つの突然変異の効果は、リボソーム結合部位を隠すように各々のmRNAが2次構造を形成する能力と関連があった。このように、gnd遺伝子の内部制御要素はシスに働くアンチセンスRNAとして機能すると見られる。
M.Lundigranら.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:1479−1483(1991)は、−60から+253(コード領域は+241から始まる)の領域に突然変異を導入し、それから読み枠を合わせてlacZに融合することにより、btuBの適切な発現および転写制御に重要な関連した配列を同定するための実験を行った。それから単一の塩基置換を含む変異プラスミドからのβガラクトシダーゼ発現を分析した。突然変異は使用した突然変異導入方法によるとすべてGCからATへの変換であった。さまざまな突然変異の中で、+253位の単一塩基置換により抑制及び非抑制条件下で共にbtuBーlacZ融合遺伝子の発現が非常に増加した。
R.WisdomおよびW.Lee,Gen.&Devel.5:232−243(1991)は翻訳開始コドンがATGからATCに変異した全長のハイブリッドc−myc遺伝子由来のmRNAは比較的安定であることを示す実験を行い、c−mycコード領域の抑制配列は翻訳に依存した形で機能することが示唆された。
R.ParkerおよびA.Jacobson,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2780−2784(1990)はSaccharomyces Cerevisiae MATα1 mRNAのコード領域中に見いだされた通常は低い安定性にかかわる42ヌクレオチドの領域は、この42ヌクレオチド断片のすぐ上流に翻訳の停止コドンを導入することによって実験的に不活性化し得ることが実証された。この実験によりMATα1 mRNAの分解はコード配列の特定の領域によるリボソームの転位(トランスロケーション)によって促進されることが示唆された。この42ヌクレオチド断片は翻訳の伸長を遅らせると思われる希なコドン(希なコドンは1000酵母コドンにつき13回以下しか現れないものとして定義される(S.Aotaら.,Nucl.Acids.Res.16:r315−r402(1988))を高含量(14中8)持つ。この研究の著者であるR.ParkerおよびA.Jacobsonは、不安定な酵母mRNA中にある稀なコドンの分布および翻訳の一時停止を誘導する稀なコドンの既知の能力が共役した急速な衰退に必要な配列中の希なコドンの量は、mRNAの構造変化は一時停止したリボソームの特定の位置によって影響されるというモデルを示唆すると提唱する。他の著者は翻訳伸長における速度論的変化がmRNAの安定性に影響し得るかどうか(およびどのように)を見いだすことは重要であると述べた(M.Hentze,Bioch.Biophys.Acta 1090:281−292(1991))。しかし、R.ParkerおよびA.Jacobsonは安定なPGK1 mRNAを稀なコドンが最高40%まで増加するよう変化させて、少なくとも定常状態のmRNAレベルの3倍の効果を与えることができること、およびこの相違は実際には転写速度の変化によるだろうと述べている。このようにこれらの著者はリボソーム一時停止そのものは急速なmRNA衰退を促進するのに十分ではないと見られると結論した。
上述の文献はいずれも、mRNAのコード領域内に阻害/不安定配列の位置を見つけ、そのmRNAをコードしている遺伝子を修飾して、遺伝子のコード能力を変化させずに様々なヌクレオチド置換を作成することによってこれらの阻害/不安定性配列を除去するという本発明について記述していないし、示唆していない。
III.発明の開示
本発明は、遺伝子コード領域中に存在して該遺伝子の発現を邪魔する若しくは減らす調節もしくは阻害/不安定配列(INS)を変異させることによって、遺伝子により生産されるmRNAの安定性および/もしくは有用性を増大させる方法に関する。本発明はまた、発現ベクターを含めた、これらの方法に従い変異させられた遺伝子を含むコンストラクト(構築物)、およびこれらのコンストラクトを含む宿主細胞にも関する。
本明細書中での定義として、転写産物の阻害/不安定配列は、mRNA転写産物内にある調節配列であり、(1)そのmRNAの迅速なターンオーバーを担い、第2のインジケーター/レポーターmRNAに融合させた場合に、そのインジケーター/レポーターmRNAを不安定化させうる、または(2)mRNAの利用を不十分にさせ、第2のインジケーター/レポーターmRNAに融合させた場合に、そのインジケーター/レポーターmRNAからの蛋白質生産の減少をもたらしうる、あるいは(3)上述の両方をもたらすものである。遺伝子の阻害/不安定配列は、転写産物の阻害/不安定配列をコードする遺伝子配列である。本明細書中で使われるように、利用(性)(utilization)とは、mRNAの翻訳の全体的な効率に関する。
本発明の方法は、mRNAの蛋白質コード能を変えることなく、mRNAの安定性および/もしくは利用性を増大させることに特に有用である。しかし、コードされる蛋白質のアミノ酸配列が保存的もしくは非保存的アミノ酸置換を含むように変えられるようなやり方で、阻害/不安定配列が変異される(但し、それでも尚、本来コードされていた蛋白質の機能を保持している)本発明の別の態様も本発明の一部である。
これらの方法は、mRNA転写産物のINS領域の存在のために、本方法がなければ発現しない、もしくは僅かしか発現しない遺伝子の発現を可能にする、もしくは増加させるのに有用である。本発明は、阻害/不安定領域をコードする遺伝子いずれかのヌクレオチド配列部分を変更することによって、阻害/不安定領域を含むmRNAをコードする遺伝子によりコードされる蛋白質の生産を増加させる方法を提供する。
本発明の方法、コンストラクトおよび宿主細胞は、INSを含むmRNA転写産物をコードするいかなる遺伝子により産生される蛋白質の量を増加させるのにも有用である。そのような遺伝子の例には、例えば、HIV−1 gagおよびenv蛋白質をコードする遺伝子の他に、増殖因子、インターフェロン、インターロイキン、およびfos原癌遺伝子蛋白質をコードする遺伝子が含まれる。
本発明の方法は、HIV−1 gag遺伝子のコード領域内のINSを変異導入により不活化して、gagの発現を増加させることにより、並びにヒト細胞においてRev非依存性gag発現に有用なコンストラクトにより例示される。この阻害/不安定配列の変異不活化は、gag遺伝子のコード領域内のAUに富んだ阻害配列への多重点変異導入(但し、ヌクレオチドコード配列の縮重により、gag蛋白質のアミノ酸配列には影響しない変異)を用いる。
本発明のコンストラクトは、本発明の方法に従い変異導入されたgag envおよびpol遺伝子を含むベクターにより例示され、宿主細胞はこれらのベクターを含むヒトHLtat細胞により例示される。
本発明はまた、本発明のコンストラクトを、例えばワクチンとして、免疫療法および免疫予防に、またはヒトにおいて発現させた後の遺伝子治療に利用することにも関する。そのようなコンストラクトは、レトロウイルスベクター若しくは他の発現ベクターを含んだり、若しくはそうしたベクターに取り込まれてもよく、または、それらは、コードされる蛋白質もしくは蛋白質断片が効率よく発現するように、組織細胞に直接注入してもよい。これらのコンストラクトは、例えば、標的遺伝子とin−situに相同性組み換えさせることにより、in−vivoもしくはin−vitro遺伝子置換に用いることもできる。
本発明はまた、阻害/不安定領域を含むと知られている、若しくはそう思われるいかなるmRNAにおいても、阻害/不安定配列の限界を、INSがコード領域内にあるのか若しくは3′UTRにあるのかまたはその両方なのかを、簡単かつ迅速に検出し、および/またはさらに細かく規定するのに使うことのできる、ある例示されたコンストラクトにも関する。遺伝子のINS領域がこれらのベクターの利用を通じて位置決定され、および/もしくはさらに細かく規定されれば、その同じベクターは、遺伝子のコード能に影響することなく同定されたINSを排除する変異導入実験にも使うことができ、これによりこれらの変異遺伝子を含む発現ベクターから生産される蛋白質の量を増加させることが可能となる。本発明はまた、これらのコンストラクトの利用法、およびこれらのコンストラクトを含む宿主細胞にも関する。
mRNA内の不安定/阻害領域を検出するのに用いることができる、本発明のコンストラクトは、ベクターp19、p17M1234、p37M1234およびp37M1−10D(図1(B)および図6に示されている)により例示される。p37M1234およびp37M1−10Dは、gagインジケーター/レポーター蛋白質の発現量のいかなる変化も簡単かつ迅速に検出できる市販のELISA試験があることから、好ましいコンストラクトである。しかし、前記の図1(B)および図6のコンストラクトでロングターミナルリピートに挟まれたエレメントを含み、mRNA内の不安定/阻害領域を検出するのに用いることのできる、いかなるコンストラクトも本発明の一部である。
阻害/不安定配列の存在は、当該分野において既に知られているが、遺伝子のコード能を変えることなく多重ヌクレオチド置換を施すことにより、これらの配列をコード領域内に含むmRNAをコードする遺伝子の発現を増大させる問題に対する解決法は、今まで開示されていない。
IV.図面の簡単な説明
図1.(A)はHIV−1ゲノムの構造である。ボックスは異なるウイルス遺伝子を示す。(B)はgag発現プラスミドの構造(下記参照)である。プラスミドp17は完全なHIV−1 5′LTRおよびヌクレオチド(nt)257にあるBssHII制限部位までの配列を含む(ヌクレオチドの番号付けは、HIV−1分子クローンpHXB2の改訂ヌクレオチド配列に関する(G.マイヤーズ(Myers)ら編、Human retroviruses and AIDS.A compilation and analysisl of nucleic acid and amino acid sequences(ロスアラモス国立研究所、ロスアラモス、ニューメキシコ、1991)(本明細書中で参考事項に取り入れられている))。この配列の後ろには、nt336−731に渡るp17gagコード配列(白抜きボックスとして表されている)が続いており、さらにその直後には翻訳終止コドンおよびリンカー配列が続いている。リンカーに隣接しているのは、U5領域のnt8561から最後のヌクレオチドまでのHIV−1 3′UTRである。プラスミドp17Rは、加えて、RREを囲む330nt StyI断片(L.ソロミン(Solomin)ら、J.Virol.64:6010−6017(1990))(斑点ボックスで示されている)をp17gagコード配列の3′側に含む。RREの後ろには、3′UTRのU5領域のnt8021から最後のヌクレオチドまでのHIV−1配列が続く。プラスミドp19およびp19Rは、それぞれ、プラスミドp17およびp17RのHIV−1 p17gagコード配列をRSV p19gagコード配列(黒ボックスで示されている)で置き換えることにより作製された。プラスミドp17M1234は、gagコード領域内に28のサイレントヌクレオチド置換(xxxで示されている)がある以外は、p17と同一である。波線はプラスミド配列を表す。プラスミドp17M1234(731−1424)およびプラスミドp37M1234は、すぐ後、およびその他の箇所において記載する。これらのベクターは、特定のヌクレオチド配列がINSをコードするかを決定するのに用いることのできるコンストラクトの例示である。この場合、インジケーター遺伝子(ここではp17gag)を含むベクターp17M1234はコントロールベクターを表し、ベクターp17M1234(731−1424)およびp37M1234は、問題となるヌクレオチド配列(ここではp24gagコード配列)がそれぞれ、インジケーター遺伝子の終止コドンの3′側のベクターに挿入されているか、若しくはインジケーター遺伝子のコード領域にインフレームで融合されているベクターを表す。(C)はgagINSを同定、およびさらに変異導入するための発現ベクターの構築法である。p17M1234をベクターとして用いて、改変p17gag遺伝子のコード領域の下流に付加的なHIV−1 gag配列が挿入された。ヌクレオチド番号により示された3つの異なる断片を、以下に記すようにベクターp17M1234に挿入した。プラスミドp17M1234(731−1081)、p17M1234(731−1424)およびp17M1234(731−2165)を作製するために、示された断片をp17M1234のp17gagコード配列の終止コドンの3′側に挿入した。発現アッセイ(データは示していない)において、p17M1234(731−1081)およびp17M1234(731−1424)が高レベルのp17gag蛋白質を発現した。対照的に、p17M1234(731−2165)はp17gag蛋白質を発現せず、このHIV−1 gagコード領域内に付加的なINSが存在することを示している。プラスミドp17M1234(731−1081)NS、p37M1234およびp55M1234を作製するために、改変p17gag遺伝子の末端の終止コドンおよびp17M1234の全てのリンカー配列をオリゴヌクレオチド部位特異的変異導入により取り除き、得られたプラスミドは、HIV−1と同様のgagオープンリーディングフレームを回復した。発現アッセイ(データは示していない)において、p37M1234は、ウェスタンブロットおよびELISAアッセイにより決定したところ、高いレベルの蛋白雪を発現したが、p55M1234は検出可能なgag蛋白質を発現しなかった。以上のことから、p24領域の3′側の配列の付加は蛋白質発現の排除をもたらし、ヌクレオチド配列1424−2165にはINSが含まれることが示された。本実験は、p37M1234が付加的なINSを解析するのに適したベクターであることを示した。
図2.種々のベクターからのgag発現。(A)Revの非存在下(−)若しくは存在下(+)で、HLtat細胞をプラスミドp17、p17Rもしくはp17M1234でトランスフェクトした(下記参照)。トランスフェクトした細胞をヒトHIV−1 患者血清を用いた免疫ブロットにより分析した。(B)Revの非存在下(−)若しくは存在下(+)で、プラスミドp19若しくはp19RをHLtat細胞にトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞をウサギ抗RSV p19gag血清を用いた免疫ブロットにより分析した。HIVもしくはRSV蛋白質群は同じゲルにおけるマーカーとして使った。p17gagおよびp19gagの位置を右に示す。
図3.ノザンブロットでのmRNA分析。(A)Revの非存在下(−)若しくは存在下(+)で、HLtat細胞を示されたプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞から調製した20μgの全RNAを分析した(下記参照)。(B)p19若しくはp19RからのRNA産生を、Revの非存在下(−)若しくは存在下(+)で、同様に分析した。
図4.HIV−1 p17gag領域のヌクレオチド配列。全ての変異を作製するのに用いられる4つのオリゴヌクレオチド(M1−M4)の位置を下線で示す。各変異導入オリゴヌクレオチドにより導入されたサイレントヌクレオチド置換を、コード配列の下に示す。番号付けはウイルスmRNAのnt +1から始まる。
図5.種々の変異体によるgag発現。図の上部に示した様々なプラスミドで、HLtat細胞をトランスフェクトした。プラスミドp17RはRevの非存在下(−)若しくは存在下(+)でトランスフェクトしたが、他のプラスミドはRev非存在下で分析した。p17gag産生を図2に記したような免疫ブロットによりアッセイした。
図6.gag領域中の付加的なINSエレメントの同定および排除に使われる発現ベクター。各ベクターに含まれるgagおよびpol領域のヌクレオチドを線により示す。gagおよびpolオリゴヌクレオチドのいくつかの位置を図の上部に示し、p17gag、p24gag、p15gag、プロテアーゼおよびp66pol蛋白質のコード領域に関しても同様である。種々のオリゴヌクレオチドの組み合わせを用いてベクターp37M1234をさらに変異導入した。得られた変異体の一つは、発現後、高いレベルのp24を与えた。これを配列決定により分析し、4つの変異オリゴヌクレオチドM6gag、M7gag、M8gagおよびM10gagを含むことが分かった。異なるオリゴの組み合わせを含む他の変異体は、発現の増加を示さず、または部分的な発現増加しか示さなかった。p55BM1−10およびp55AM1−10はp37M1−10Dに由来した。p55M1−13P0は、オリゴヌクレオチドM11gag、M12gag、M13gagおよびM0polに含まれる、付加的な変異をgagおよびpol領域に含む。斜線のボックスは変異オリゴヌクレオチドの位置を示し;丸のついた斜線ボックスはATTTA配列(mRNAの不安定性および/もしくは阻害に寄与する可能性がある)を含む変異領域を示し;そして三角のついた白抜きのボックスはAATAAA配列(mRNAの不安定性および/もしくは阻害に寄与する可能性がある)を含む変異領域を示す。上記のトランスフェクション後のヒト細胞におけるp24gagの典型的な発現レベルは、右に示す(pg/ml)。
図7.env発現を研究するのに使われる真核細胞発現プラスミド。種々の発現プラスミドはpNL15E(シュワルツ(Schwartz)ら、J.Virol.64:5448−5456(1990))に由来する。種々のコンストラクトの作製は本文に記載されている。番号付けは訂正されたHXB2配列(マイヤーズら、1991、上記;ラトナー(Ratner)ら、Hamatol.Bluttransfus.31:404−406(1987);ラトナーら、AIDS Res.Hum.Retroviruses 3:57−69(1987);ソロミン(Solomin)ら、J.Virol.64:6010−6017(1990))に従い、Rの最初のヌクレオチドを+1として始めた。5′SSは5′スプライス部位;3′SSは3′スプライス部位である。
図8.env発現は機能的なスプライス部位がないとRev依存性である。rev発現プラスミド(pL3crev)非存在下もしくは存在下で、プラスミドp15ESD−およびp15EDSS(C)をHLtat細胞にトランスフェクトした。1日後、細胞をRNAおよび蛋白質の分析用に回収した。全RNAを抽出しノザンブロット分析した(B)。ブロットはHXB2のXhoI−SacI(nt8443−9118)に渡るニックトランスレートプローブでハイブリダイズした。蛋白質生産は、ウェスタンブロットにより測定し、HIV−1患者血清およびウサギ抗gp120抗体の混合物を用いて細胞関連性Envを検出した(A)。
図9.gp120発現プラスミドからのEnv産生。示されたプラスミドを2つのプレート内でHLtat細胞にトランスフェクトした。rev発現プラスミド(pL3srev)を示されたように共トランスフェクトした。1日後、RNAおよび蛋白質の分析用に細胞を回収した。全RNAを抽出しノザンブロット分析した(A)。ブロットはnt6158−7924に渡るニックトランスレートプローブを用いてハイブリダイズした。蛋白質生産(B)は、200mCi/mlの35S−システインで5時間ラベルした後、免疫沈降により測定し、分泌型の加工(プロセシング)されたEnv(gp120)を検出した。
図10.p19(RSV gag)試験系を用いたgp120およびgp41内のINSエレメントの同定。env ORFを含むエクソン5Eの概略構造。gp41部分の種々の断片(AからG)およびvpu/gp120部分の断片HをPCR増幅し、p19のRSV gag遺伝子の下流に位置する唯一のEcoRI部位に挿入した。増幅された断片に含まれる配列の位置は、HXB2R番号付けの系を用いて右に示す。断片AおよびBは、それぞれ、pNL15EおよびpNL15EDSS(スプライス受容部位7A、7Bおよび7が欠失している)から同じオリゴヌクレオチドプライマーを用いて増幅した。それら長さはそれぞれ276および234ヌクレオチドである。断片CはpNL15EDSSから323ヌクレオチド断片として増幅された。断片Fは362ヌクレオチドのHpaI−KpnI制限断片である。断片EはpNL15EDSSから668ヌクレオチド断片として増幅され、それ故、HXB2のヌクレオチド5592にある主要なスプライスドナーが欠失している。残りの断片は図に示されたようにpNL15Eから増幅した。HLtat細胞をこれらのコンストラクトでトランスフェクトした。1日後、細胞を回収し、p19gag産生を抗RSVGag抗体を用いたウェスタンブロット分析により決定した。これらのプラスミドからのGagの発現をp19のGag産生と比較した。SAはスプライス受容部位;BはBamHI;HはHpaI;XはXhoI;KはKpnIである。種々の断片内に含まれるINSの下降調節効果を右に示す。
図11.p37M1−10D(変異INS p37gag発現系)試験系を用いたgp120およびgp41内のINSエレメントの同定。env ORFの概略構造。envの種々の断片(1から7)を図に示されたようにしてPCR増幅し、p37M1−10Dのp37変異gag遺伝子の下流に位置するポリリンカーに挿入した。断片1から6は分子クローンpLW2.4(M.ライツ(Reitz)博士から贈られた、HXB2Rに非常に似ている)から増幅された。クローンpLW2.4は、同じHIV−1株IIIB(HXB2R分子クローンはこれに由来する)に感染した個体からのものであった。断片7はpNL43からクローン化した。一貫性と明確性のため、番号付けはHXB2Rの系に従う。これらのコンストラクトでHLtat細胞をトランスフェクトした。1日後、細胞を回収し、p24gag生産を抗原捕獲アッセイにより決定した。これらのプラスミドからのGagの発現を、p37M1−10DのGag産生と比較した。各断片の下降調節効果を右に示す。
図12.pol領域のCRSのネガティブ効果の排除。HIV−1のヌクレオチド3700−4194を示されるようにベクターp37M1234に挿入した。これによりgagの発現が阻害された。変異オリゴヌクレオチドM9pol−M12pol(P9−P12)を用いて、幾つかの変異CRSクローンを分離し性格付けした。それらの内の一つ、p37M1234RCRSP10+P12pは、図13に示される変異を含む。本クローンは高いレベルのgagを生産した。それ故、p37M1234RCRSP10+P12pにおける変異の組み合わせはINSを排除し、一方、P10もしくはP12領域のみの変異ではINSを排除していなかった。
図13.pol領域(ヌクレオチド3700−4194)のCRSのネガティブ効果を排除する点変異群。HIV−1 pol(ヌクレオチド3700−4194)のCRS領域内の阻害/不安定エレメントを完全に不活化することのできる変異の組み合わせを、配列の下に小文字で示す。これらの変異は、オリゴヌクレオチドM10polおよびM12pol内に含まれる(表2参照)。M12polオリゴヌクレオチドは、DNAシークエンスにより決定にたところ、p37M1234RCRSP10+P12p(図12参照)には導入されなかった変異がさらに含まれている。
図14.効率のよいgag発現ベクターp37M1−10Dのプラスミドマップおよびヌクレオチド配列。(A)ベクターp37M1−10Dのプラスミドマップ。本プラスミドは、pBluescriptKS(−)の骨組み、pNL43ゲノムクローンに見られるようなHIV−1配列の側部のヒトゲノム配列、HIV−1 LTRおよびp37gag領域(p17およびp24)を含む。本文に記載されているように、p17領域はオリゴヌクレオチドM1からM4を用いて変異導入され、p24領域はオリゴヌクレオチドM6、M7、M8およびM10を用いて変異導入された。p37のコード領域の側部には、プロモーターおよびポリアデニル化シグナルを提供する5′および3′HIV−1 LTRがある
(矢印で示されている)。3つの連続した矢印は、それぞれ、LTRのU5、RおよびU3領域を示す。LTRの転写される部分は黒で示されている。p24コード領域の終りに挿入された翻訳終止コドンは1818番に示されている。いくつかの制限エンドヌクレアーゼ切断部位も示されている。(B−D)p37M1−10Dの完全なヌクレオチド配列。p37gag蛋白質のアミノ酸配列をコード領域の下に示す。略号は上記の通りである。番号付けは5′LTRの最初のヌクレオチドから始まる。
V.発明の実施様式
上記の一般的な解説および下記の詳細な解説は共に、単なる例示および説明であって、請求の範囲にあるもののみに本発明を制限するものではないことは、理解されるべきである。本明細書の一部に取り入れられ、かつその一部をなす付属の図面は、本発明の態様を例示し、解説と合わせて、本発明の原理を説明するのに役立っている。
本発明は、(a)遺伝子内の阻害/不安定領域を同定し、そして(b)多重点変異を施すことにより遺伝子内阻害/不安定領域に変異を導入することによって、mRNAの遺伝子内阻害/不安定領域を排除する方法を含む。これらの変異は密集(クラスター)していてもよい。本方法はINSの正確な位置の同定も、INSの機能機構の知識も必要としない。それでも、本明細書中に示される結果から、mRNA内の複数の領域が安定性および利用性の決定に参与し、これらのエレメントの多くがRNA輸送、ターンオーバー、および/もしくは局在のレベルで作用していると結論することができる。一般的に、変異はmRNAによりコードされるアミノ酸配列が変化しないようなものであるが、しかし、保存的および非保存的アミノ酸置換(但し、変異遺伝子によりコードされる蛋白質は、非変異遺伝子によりコードされる蛋白質と実質的に同様であるもの)も本発明の一部である。
改変されるべきヌクレオチドは無作為に選択することができ、唯一要求されることは、蛋白質によりコードされるアミノ酸配列が不変のままであることで;または、保存および非保存的アミノ酸置換がなされる場合、唯一要求されることは、変異遺伝子によりコードされる蛋白質が非変異遺伝子によりコードされる蛋白質と実質的に同様であることである。
INS領域がAT豊富であるか若しくはGC豊富である場合、GおよびCの含量が約50%、並びにAおよびTの含量が約50%となるようにINSを改変するのが望ましい。INS領域が使用頻度の低いコドンを含む場合、使用頻度の高いコドンにINSを改変するのが望ましい。しかし、場合によっては(例えば、AおよびTの豊富な領域をGおよびCの豊富な領域にするために)、使用頻度の高いコドンを使用頻度の低いコドンに改変することもできる。INS領域が保存されたヌクレオチドを含む場合、それらの保存されたヌクレオチドのいくつかを非保存的なヌクレオチドに改変してもよい。ここで再び、唯一要求されることは、蛋白質によりコードされるアミノ酸配列が不変のままであることで;または、保存および非保存的アミノ酸置換がなされる場合、唯一要求されることは、変異遺伝子によりコードされる蛋白質が非変異遺伝子によりコードされる蛋白質と実質的に同様であることである。
本明細書中で使われる場合、保存されたヌクレオチドとは、それらのヌクレオチドが阻害/不安定決定に関わるシグナルの一部であるという事実を進化的保存が反映し得るという理由から、ある遺伝子に関して進化的に保存されたヌクレオチドを意味する。保存されたヌクレオチドは一般的には、問題となる遺伝子に関して発表された参考文献から、若しくは当該分野の実践者が利用可能な種々のコンピュータープログラムを用いることにより決定することができる。
様々な生物に関する使用頻度の低いコドンおよび高いコドンは、T.マルヤマ(Maruyama)ら、Nucl.Acids.Res.14:r151−r197(1986)およびS.アオタ(Aota)ら、Nucl.Acids.Res.16:r315−r402(1988)に示されているようなコドン利用表から、または1992年1月21日に発行されたG.W.ハットフィールド(Hatfield)らによる”Codon Pair Utilization”という名称の米国特許第5,082,767号に開示されているようなコンピュータープログラム(本明細書中で参考事項に取り入れられている)を用いることにより決定することができる。
一般的に、本発明の方法は以下のように実施する:
1.INSを含むmRNAの同定
特定の蛋白質が作られる割合は、それをコードするmRNAの細胞質のレベルに比例するのが普通である。従って、阻害/不安定配列を含むmRNAをコードする候補は、そのmRNAもしくは蛋白質が検出できるほどには発現していないか、または同じ、若しくは同様の強さのプロモーターの制御下にある対照mRNAもしくは蛋白質の発現レベルと比較して僅かしか発現しないものである。同じ若しくは同様の強さのプロモーター制御下にある別の遺伝子からの定常状態レベルと比較した時の、見掛けの転写速度(例えば、核ラン−オンアッセイにより決定される)における変化では説明できない、特定のmRNAの定常状態レベル(例えばノザンブロッティングにより決定される)における相違は、その遺伝子が不安定mRNAをコードする候補であることを示す。不安定に加えて、若しくは不安定とは別に、細胞質で働く様々な阻害機構により細胞質mRNAがあまり利用されないこともある。これらの効果は、本明細書で「阻害配列」と名付けられている特定のmRNA配列により調節されている可能性がある。
阻害/不安定領域を含むmRNA候補には、その発現が厳密に調節される遺伝子からのmRNA(例えば多くの癌遺伝子、増殖因子遺伝子およびインターロイキンなどの生物学的応答のモディファイヤーの遺伝子)が含まれる。これらの遺伝子の多くは、発現が非常に低レベルで、速やかに分解され、そして状況が変化すると素早く且つ一過的な調整を受ける。mRNA安定性および利用性のレベルにおける、負の発現調節は幾つかのケースで記録されており、他の多くのケースにおいてもその存在が提唱されている。mRNAの阻害/不安定領域の存在による転写後調節に関する証拠がある遺伝子の例としては、顆粒球−単球コロニー刺激因子(GM−CSF)、原癌遺伝子c−myc、c−myb、c−sis、c−fos;インターフェロン(アルファ、ベータおよびガンマIFN);インターロイキン(IL1、IL2およびIL3);腫瘍壊死因子(TNF);リンホトキシン(Lym);IgG1誘導因子(IgG IF);顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF);トランスフェリン受容体(TfR);およびガラクトシルトランスフェラーゼ関連蛋白質(GTA)をコードする細胞性遺伝子;env、gagおよびpolをコードするHIV−1遺伝子;6−ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ(gnd)およびbtuBをコードする大腸菌遺伝子;並びにMATα1をコードする酵母遺伝子(上記の“従来の技術”の章における考察を参照)が含まれる。MATα1酵母遺伝子およびgag、envおよびpolのHIV−1遺伝子の他に、細胞性原癌遺伝子c−mycおよびc−fosをコードする遺伝子は、非コード領域内の阻害/不安定領域に関する証拠に加えて、コード領域内の阻害/不安定領域に関する証拠がある遺伝子である。コード領域内に阻害/不安定領域を含むmRNAをコードする若しくはコードすると思われる遺伝子は、本発明に特に関連性がある。
不安定な、もしくは殆ど利用されないmRNA候補が同定されれば、パルス−チェイス実験(即ち、放射性前駆体で新しく合成されたRNAを標識し、ラベルのない状態で放射性標識されたmRNAの分解を追跡する)を行うことにより;またはin vitro転写されたmRNAを(マイクロインジェクション、リン酸カルシウム沈殿法、電気穿孔法もしくは当該分野で知られる他の方法によって)標的細胞に導入し、その規定されたmRNA集団のin vivoでの半減期を追跡することにより;または、誘導することができ、誘導後即座に転写を遮断するプロモーターから研究対象のmRNAを発現させ、この短い転写バーストの間に合成されたmRNAの半減期を評価することにより;または、薬剤(例、アクチノマイシンD)で転写をブロックし、薬の添加後様々な時点でノザンブロッティングもしくはRNAプロテクション(例、S1ヌクレアーゼ)アッセイによって特定のmRNAの崩壊を追うことにより、mRNAのin vivoでの半減期(もしくは安定性)を研究することができる。上記決定法の全てに関する方法はよく確立されている。例えば、M.W.ヘンツ(Hentze)ら、Biochem.Biophys.Acta 1090:281−292(1991)およびそこに記されている参考文献を参照していただきたい。また例えば、S.シュワルツら、J.Virol.66:150−159(1992)も参照していただきたい。最も有用な測定法は、可能な全てのINS機構を包含することから、蛋白質の生産量を測ることである。INSを含むことが示されている、もしくはINSを含むと思われる様々なmRNAの例は、先に記載されている。これらのmRNAの中には、ノザンブロットによりそのmRNAレベルを測定すると、30分未満の半減期を持つことを示されているものもある(例えば、D.ウレシュナー(Wreschner)とG.レハビ(Rechavi)、Eur.J.Biochem.172:333−340(1988)を参照)。
2.不安定性決定要素の位置決定
不安定な、若しくはあまり利用されないmRNAが同定されると、次の工程は、それを担う(cis作用性)RNA配列エレメントを調べることである。cis作用性阻害/不安定領域の位置決定に関する詳細な方法は、上記“従来の技術”の章に記載された参考事項の各々に示されており、以下にも考察される。本発明の例示されたコンストラクトもINSの位置決定に利用することができる(下記参照)。特定のmRNAターンオーバーを担うcis作用性配列は、mRNA安定性の変化した自然に生じた変異体が時たま同定されることによる以外に、欠失および点変異導入によって同定することができる。
短く述べると、推定調節配列がmRNA安定性制御の賦与に十分であるかを評価するために、INSと思われる領域をコードするDNA配列をインジケーター(若しくはレポーター)遺伝子に融合させ、ハイブリッドmRNAをコードする遺伝子を創作する。インジケーター(若しくはレポーター)遺伝子に融合されたDNA配列は、cDNA、ゲノムDNAもしくは合成DNAでもよい。“従来の技術”の章で示された参考文献に記載されたインジケーター(若しくはレポーター)遺伝子の例には、β−グロビン、PGK1およびACT1の遺伝子と同様に、ネオマイシン、β−ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、およびルシフェラーゼの遺伝子が含まれる。サムブルック(Sambrook)ら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,第2版、Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,ニューヨーク、(1989),16.56−16.67頁を参照していただきたい。インジケーター遺伝子として使うことのできる他の遺伝子は、本明細書中に開示されている(即ち、ラウス肉腫ウイルスのgag遺伝子(阻害/不安定領域を欠いている)並びに、コンストラクトp17M1234、p37M1234およびp37M1−10DのRev非依存性HIV−1gag遺伝子(変異導入により阻害/不安定領域を不活化してあり、本発明の一つの側面を成している))。一般的に、安定な、若しくは比較的高レベルに発現するmRNAをコードする、実質的にいかなる遺伝子(そのmRNAもしくは発現された蛋白質レベルに少しでも減少があれば標準的な方法により検出できるほど、十分安定な、若しくは十分高レベルに発現されるものとして本明細書中では定義される)も、インジケーターもしくはレポーター遺伝子として利用することができる。もっとも、本明細書中で例示されるコンストラクトp37M1234およびp37M1−10Dが下記の理由から望ましい。これらのコンストラクトを用いたハイブリッド遺伝子を創作し、これらのコンストラクトからのmRNAおよび蛋白質の発現を試験するのに好適な方法も、以下に示される。
一般的に、インジケーター遺伝子、およびINS領域をコードすると思われる配列に融合されたインジケーター遺伝子から成るハイブリッド遺伝子により生産されるmRNAの安定性および/もしくは利用性は、mRNAをクローン化し発現するのに使われる発現ベクターに適した宿主細胞にハイブリッド遺伝子をトランスフェクトすることにより試験される。その結果得られるmRNAのレベルを、mRNA安定性を決定する標準的な方法、例えばノザンブロット、S1マッピング若しくはPCR法によって決定し、結果として得られる蛋白質生産レベルを、ELISA、免疫沈降法および/もしくはウェスタンブロットなどの蛋白質測定アッセイによって定量する。阻害/不安定領域(複数ある場合は、領域群)は、コントロールインジケーターmRNAと比較した場合の蛋白質発現および/もしくはハイブリッドmRNAの安定性の減少により同定されるだろう。最終的な目標がコードされる蛋白質の産生を増大させることである場合、蛋白質の産生に使われるのと同じ宿主細胞においてINSの同定を実施するのが最も望ましい。
INS配列の同定に使われてきた幾つかの宿主細胞の例としては、哺乳動物体細胞、Xenopus卵母細胞、酵母および大腸菌が含まれる。例えば、β−グロビン遺伝子の3′UTRに推定阻害配列を挿入し、これをマウスもしくはヒト宿主細胞にトランスフェクトした際に該配列がないと安定なβ−グロビンmRNAが不安定になることから、GM−CSFの不安定配列の位置決定をしたG.ショー(Shaw)とR.カーメン(Kamen)、Cell 46:659−667(1986)(上記)を参照していただきたい。また、ラット繊維芽細胞に導入されたハイブリッドc−myc−ネオマイシン耐性遺伝子を用いてc−mycの阻害/不安定配列の位置決定をしたI.レアード−オフリンガ(Laird−Offringa)ら、Nucleic Acids Res.19:2387−2394(1991);および、大腸菌に導入されたハイブリッドbtuB−lacZ遺伝子を用いてbtuB遺伝子の阻害/不安定配列の位置決定をしたM.ランジグラン(Lundigran)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:1479−1483(1991)も参照していただきたい。HIV−1の特定の転写産物内の阻害/不安定配列の位置を、それがなければ長い寿命を持つようなインジケーター転写産物を不安定化することによって決定した報告例としては、例えば、M.エマーマン(Enerman),Cell 57:1155−1165(1989)(env遺伝子の3′UTRをHBVの一部で置き換え、COS−1細胞に導入した);S.シュワルツら、J.Virol.66:150−159(1992)(Rev非依存性tatレポーター遺伝子とのgag遺伝子融合体をHeLa細胞に導入した);F.マルダレリ(Maldarelli)ら、J.Virol.65:5732−5743(1991)(Rev非依存性tatレポーター遺伝子もしくはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子とのgag/pol遺伝子融合体をHeLaおよびSW480細胞に導入した);並びにA.コックレーン(Cochrane)ら、J.Virol.65:5303−5313(1991)(CAT遺伝子もしくはラット プロインシュリン遺伝子とのpol遺伝子融合体をCOS−1およびCHO細胞に導入した)を参照していただきたい。
in vitroでmRNAターンオーバーをアッセイするin vitro mRNA分解系(例えば、細胞質粗抽出液)が、現行のin vivo分析を補い、in vivo系の制限のいくつかを回避するのに役立つことが予想される。M.W.ヘンツら、Biochem.Biophys.Acta 1090:281−292(1991)およびそこに示されている参考文献を参照していただきたい。また、赤血球ライセートの無細胞系で外来性mRNA安定性を解析した、D.ウレシュナーとG.レハビ、Eur.J.Biochem.172:333−340(1988)も参照していただきたい。
本発明の方法では、対象となる遺伝子全体をインジケーターもしくはレポーター遺伝子に融合させ、その遺伝子が阻害/不安定領域(群)を含むかを決定するために、得られたハイブリッドmRNAに対する効果に関する試験をすることができる。対象の遺伝子内のINSをさらに詳細に位置決定するために、対象の遺伝子を5′もしくは3′端または両方から逐次的に欠失することによって、対象の遺伝子の断片を調製することができる。対象となる遺伝子は、当該分野で知られている方法(例えば、制限エンドヌクレアーゼなど)によってオーバーラップする断片に分離してもよい。例えば、S.シュワルツら、J.Virol.66:150−159(1992)を参照していただきたい。遺伝子は約300から2000ヌクレオチドの長さのオーバーラップする断片に分離するのが望ましい。2つのタイプのベクターコンストラクトが作製できる。機能発現のために翻訳される必要のない阻害/不安定領域の検出を可能とするために、対象の遺伝子(もしくはその断片またはINSと思われる領域)をインジケーター若しくはレポーター遺伝子の終止コドンの下流の3′UTRに挿入することができるように、ベクターを構築することができる。これによりINSを通じた翻訳は行われない。いくつかの阻害/不安定配列がmRNAの翻訳後にしか作用しえないという可能性を試験するために、対象の遺伝子(もしくはその断片またはINSと思われる領域)をインジケーター若しくはレポーター遺伝子のコード領域に挿入するように、ベクターを構築することができる。本方法により、機能発現に翻訳を必要とする阻害/不安定領域の検出が可能となるだろう。本ハイブリッドコンストラクトを宿主細胞にトランスフェクトし、その結果得られるmRNAレベルを、上述のような、および“従来の技術”の章に示された参考文献の大部分に記載されているようなmRNA安定性を決定する標準法(例えば、ノザンブロット、S1マッピングもしくはPCR法)により決定する。また、実験法に関して、サムブルックら、(1989)(上記)も参照していただきたい。このような遺伝子から生産される蛋白質も、ELISA、免疫沈降法およびウェスタンブロットなどの、現存のアッセイ(“従来の技術”の章に示された参考文献の大部分にも記載されている)によって容易に定量される。また、実験法に関して、サムブルックら、(1989)(上記)も参照していただきたい。阻害/不安定領域(複数ある場合は領域群)を含むハイブリッドDNAは、コントロールインジケーターmRNAと比較した際の、蛋白質発現および/もしくはハイブリッドmRNAの安定性の減少によって同定されるだろう。遺伝子の様々な断片を使うことにより、独立に機能する(もしあれば)複数の阻害/不安定領域の同定が可能となる。一方、オーバーラップする断片を使うことにより、例えば半分に切断された結果、阻害/不安定領域が同定されなくなる可能性を低下させる。
本明細書中に記載された図1(B)および図6に示された例示試験ベクター、例えば、ベクターp17M1234、p37M1234、p37M1−10Dおよびp19を用いて、様々なRNAにおいて、コード領域内にあるINSを含めて、INSの存在および局在に関してアッセイすることができる。これらのベクターを用いて、まだ調べられていない問題の遺伝子が変異導入回復の候補となるINSを持つかどうかを決定することもできる。これらのベクターは、同定されたINSをその遺伝子のコード能に影響することなく排除する、本発明の変異導入工程(以下に記載)に同じベクターを使用することができる点で、従来の技術よりも特に有利である。
これらのベクターを用いる方法は、遺伝子全体、cDNA全体もしくはおよそ300ヌクレオチドからおよそ2キロベースの範囲の遺伝子断片を、唯一の制限酵素部位(遺伝子工学的にベクターに導入された)を用いてgagのコード領域に3′側に導入することを伴う。HLtat細胞のgag遺伝子発現を、RNAおよび蛋白質の両方のレベルで測定し、始めのベクターからの発現と比較する。発現の減少は、変異導入により回復が可能なINS候補の存在を示す。図1に例示されたベクターを用いた方法は、対象となる遺伝子全体および遺伝子断片をベクターp17M1234、p37M1234およびp19に導入することを伴う。断片の大きさは300−2000ヌクレオチドの長さが望ましい。プラスミドDNAは大腸菌内で調製し、CsCl法により精製する。
機能発現に翻訳される必要のない阻害/不安定領域の検出を可能にするために、問題の遺伝子全体および遺伝子断片をベクターp17M1234、p37M1234もしくはp19のp17gagコード領域の終止コドンの3′側に導入する。翻訳された時にのみ発現に影響を及ぼす阻害/不安定領域が検出できるように、記載されたベクターを操作して、問題の遺伝子全体もしくは遺伝子断片のコード領域を、発現されるgag蛋白質遺伝子に読み枠が合うように融合することができる。例えば、問題の遺伝子のコード領域の全て若しくは一部を含む断片を、ベクターp37M1234のgagコード配列の終止コドンにすぐ3′に挿入することができ、gagの終止コドンおよびリンカー配列をオリゴヌクレオチド変異導入により取り除いて、gagの読み枠が問題の遺伝子の読み枠に融合するようにすることができる。
次いで、2つの発現ベクター(例、gagコード領域終止コドンの3′直後に挿入された問題の遺伝子断片を含むp37M1234(gag終止コドンがそのままである)およびgagコード領域にインフレームに挿入された問題の遺伝子断片を含むp37M1234(gag終止コドンは欠失されている))からのRNAおよび蛋白質生産を、精製されたDNAをHLtat細胞にトランスフェクトした後に比較する。
ヒト細胞へのトランスフェクション後のこれらのベクターの発現をRNAおよび蛋白質生産の両方のレベルでモニターする。RNAレベルは、例えば、ノザンブロット、S1マッピングもしくはPCR法により定量する。蛋白質レベルは、例えば、ウェスタンブロットもしくはELISA法により定量する。p37M1234およびp37M1−10Dは、gag蛋白質の検出に迅速な非放射性ELISAプロトコールが使える(デュポンもしくはコールターgag抗原捕獲アッセイ)ので、定量分析には理想的である。gag抗原の発現レベルの減少は、対象のクローン化遺伝子もしくは遺伝子断片内に阻害/不安定領域が存在することを示す。
阻害/不安定領域が同定されれば、適当なINS断片を含むベクターを用いて一本鎖DNAを調製し、それから下記のクラスター変異導入プロトコールにおいて特異的な化学合成オリゴヌクレオチドによる変異導入実験に用いることができる。
3.安定なmRNAを作製するための阻害/不安定領域の変異
阻害/不安定配列がmRNAのコード領域内に位置決定されると、その遺伝子を改変してこれらの阻害/不安定配列を、該遺伝子のコード能を変えることなく排除する。また、遺伝子を改変して阻害/不安定配列を除くと同時に、保存的もしくは非保存的なアミノ酸置換をコードするように遺伝子のコード能を変える。
本発明の方法において、対象の遺伝子のコード領域にあるINSを排除するのに最も一般的な方法は、該遺伝子によりコードされる蛋白質のアミノ酸配列を変えることなく、遺伝子もしくは遺伝子断片のINS領域に複数の変異を作製することによる;または、保存的および非保存的アミノ酸置換をすべき場合には、唯一要求されることは、変異遺伝子によりコードされる蛋白質が非変異遺伝子によりコードされる蛋白質と実質的に同様であることである。複数ある場合は、阻害/不安定領域と思われる部分全てを同時に変異させるのが望ましい。後に、望むならば、安定なmRNAを作製するために変異させなければならない遺伝子の最小領域を決定するために、各阻害/不安定領域を独立に変異導入することができる。DNAの長い領域を一斉に変異導入できれば、求める安定および/もしくは発現の高いmRNA並びにその結果生じる蛋白質を生産するのに要する時間および労力を削減することができる。これらの変異を含む改変された遺伝子もしくは遺伝子断片を、それから、上記のように、例えば、改変された遺伝子もしくは遺伝子断片をレポーター若しくはインジケーター遺伝子と融合させ、適当な宿主細胞にトランスフェクトした後の改変遺伝子により生産されるmRNAおよび蛋白質のレベルを分析することによって、通常通りに試験する。改変遺伝子もしくは遺伝子断片を含むハイブリッド遺伝子により生産されるmRNAおよび蛋白質のレベルが、インジケーター遺伝子のみをコードするコントロールコンストラクトにより生産されるレベルとほぼ等しいならば、INSに施された改変によって、阻害/不安定領域が遺伝子もしくは遺伝子断片から効果的に除かれたことを意味する。
本発明の方法において、3つ以上の点変異がINS領域に導入されるだろう。所望により、点変異は阻害/不安定領域の少なくとも約10%のヌクレオチドに導入されていもよい。これらの点変異は密集していてもよい。改変されるべきヌクレオチドは無作為に選択することができる(即ち、ATもしくはGC含量、または使用頻度の低い若しくは高いコドンの有無によって選択するのではない)が、唯一要求されるのは、該蛋白質によりコードされるアミノ酸配列が変わらないままであること;または、保存的もしくは非保存的アミノ酸置換がなされる場合、唯一要求されるのは変異遺伝子によりコードされる蛋白質が非変異遺伝子によりコードされる蛋白質と実質的に同様であることである。
本発明の方法において、遺伝暗号が縮重している、即ち多くのアミノ酸が複数のコドンによりコードされ得るという事実から、コードされる遺伝子が同じままであるように遺伝子配列を変異させることができる。セリンに対する塩基暗号は、例えば、コドンTCT、TCG、TCC、TCA、AGTおよびAGC全てがセリンをコードするように、6重に縮重している。同様に、スレオニンはコドンACT、ACA、ACCおよびACGのいずれか一つによってコードされる。このように、複数の異なるDNA配列を利用して特定のアミノ酸の組をコードさせることができる。他のアミノ酸をコードするコドンとしては、フェニルアラニンにはTTTおよびTTC;ロイシンにはTTA、TTG、CTT、CTC、CTAおよびCTG;イソロイシンにはATT、ATCおよびATA;メチオニンにはATG;バリンにはGTT、GTC、GTAおよびGTG;プロリンにはCCT、CCC、CCAおよびCCG;アラニンにはGCU、GCC、GCAおよびGCG;チロシンにはTATおよびTAC;ヒスチジンにはCATおよびCAC;グルタミンにはCAAおよびCAG;アスパラギンにはAATおよびAAC;リジンにはAAAおよびAAG;アスパラギン酸にはGATおよびGAC;グルタミン酸にはGAAおよびGAG;システインにはTGTおよびTGC;トリプトファンにはTGG;アルギニンにはCGT、CGC、CGAおよびCGG;並びにグリシンにはGGU、GGC、GGAおよびGGGがある。コドンを表した図表(即ち遺伝暗号)は、様々な一般の生物学もしくは生化学の教科書に見ることができる。
本発明の方法において、遺伝子の阻害/不安定領域をコードする部分がATに富んでいる場合、阻害/不安定領域中の大部分もしくは全ての変異においてAおよびTがGおよびCヌクレオチドに置き換えられる、即ちGCにより富んだ領域にし、一方それでもなお該遺伝子のコード能を維持しておくようにすることが望ましいが、それが必要条件と考えられるわけではない。遺伝子の阻害/不安定領域をコードする部分がGCに富んでいる場合、阻害/不安定領域中の大部分もしくは全ての変異においてGおよびCヌクレオチドがAおよびTヌクレオチドに置き換えられる、即ちGCにあまり富まない領域にし、一方それでもなお該遺伝子のコード能を維持しておくようにすることが望ましいが、それが必要条件と考えられるわけではない。INS領域がATもしくはGCに富んでいる場合、該領域が約50%のGC含量および約50%のAT含量を有するように改変されるのが最も望ましい。阻害/不安定領域若しくは領域群のAT(即ちAU)含量(あるいはまた、GC含量)は、そのような計算を行うように考案されたコンピュータープログラムを用いることにより計算することができる。本明細書中に例示される、HIV−1 gagの阻害/不安定領域群のAT豊富性を決定するのに使われた、そうしたプログラムの例は、VAXのGCG分析パッケージ(GCG Analysis Package)(ウィスコンシン大学)およびジーンワークパッケージ(Gene Works Package)(インテリジェネティックス)である。
本発明の方法において、INS領域が使用頻度の低いコドンを含む場合、それらのコドンをより使用頻度の高いコドンに改変することが望ましい。しかし、望むなら、(例えばAT−リッチ領域をもっとGC−リッチにするため)使用頻度の高いコドンをより使用頻度の低いものに改変してもよい。使用頻度の低い、もしくは殆ど使われないコドンをより使用頻度の高いコドンで置換することも望ましいが、それが必要条件と考えられるわけではない。所望により、最も使われないコドン(T.マルヤマら、Nucl.Acids Res.14(付録):r151−197(1986)などにあるような既刊のコドン利用表から同定される)のみを使用頻度の高いコドンに置換してもよいし、あるいはまた、使用頻度の低いコドンの大部分もしくは全てを使用頻度の高いコドンに置換してもよい。一般的に、使用するのに好適なコドンの選択は、改変遺伝子が発現されるべき宿主細胞のコドン利用に依存する。しかし、より使用頻度の高いコドンからより使用頻度の低いコドンへの置換も、以下の実施例に示されるように、機能的であることを注目していただきたい。
先に注意したように、コード配列は遺伝暗号をもとに、そして好適には、本発明の変異遺伝子が発現されるべき宿主細胞もしくは生物における望ましいコドン利用をもとに選択される。多くのケースにおいて、特定の宿主もしくは発現系に好適なコドン利用は、利用可能な参考文献(例えば、T.マルヤマら、Nucl.Acids Res.14(付録):r151−197(1986)を参照)から確かめることができ、または他の方法(例えば、1992年1月21日にG.W.ハットフィールドらにより発行された、”Codon Pair Utilization”という名称の米国特許第5,082,767号(本明細書に参考事項として取り入れられている)を参照)によって確かめてもよい。最終的に生産される蛋白質量を増加させるために、mRNA安定性と同様に転写および翻訳を最適化するように配列を選択することが望ましい。コドン選択は、従って、例えば、宿主細胞の好適なコドン利用および/もしくは求める制限エンドヌクレアーゼ部位を提供する必要に応じてなされ、そして、コードされるmRNA転写産物中の潜在的な二次構造規制を避ける必要に応じても選択がなされる場合がある。潜在的な二次構造規制は、M.ズッカーら、Nucl.Acids Res.9:133(1981)に記載されたようなコンピュータープログラムを利用することによって同定することができる。選択された宿主細胞もしくは生物における最適コドン利用に関してコドンの使用頻度が不明もしくは曖昧である状況では、複数のコード配列を選択することができる。しかし、いずれのコドンの正しい組も、最適効率以下で翻訳されるとしても、求める蛋白質をコードすることに変わりはない。
本発明の方法において、INS領域が保存されたヌクレオチドを含む場合、阻害/不安定領域中の保存ヌクレオチド配列を変異させることも望ましいが、それが必要条件と考えられるわけではない。所望により、阻害/不安定領域中になされる変異の最低約75%が、保存ヌクレオチドの変異を伴うこともある。保存ヌクレオチドは、当該分野の実践者に利用可能な様々なコンピュータープログラムを用いることにより決定することができる。
本発明の方法において、コードされるアミノ酸が1つ若しくは複数の保存もしくは非保存アミノ酸を含むように変えられるが、それでも機能的に等価な蛋白質を提供するように、阻害/不安定配列を変異させることが可能であることも予想される。例えば、該配列内の1つもしくは複数のアミノ酸残基を類似の極性を持つ別のアミノ酸(機能的に等価に働く)で置換し、アミノ酸配列において中立的な置換をもたらすようにすることができる。該配列内のアミノ酸に対する置換基は、該アミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択することができる。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンが含まれる。極性中性アミノ酸には、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンが含まれる。正電荷を持つ(塩基性)アミノ酸には、アルギニン、リジンおよびヒスチジンが含まれる。負電荷を持つ(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれる。
例示の本発明の方法において、約300ヌクレオチドの領域に渡る4つの異なるオリゴヌクレオチドでのクラスター部位特異的変異導入を用いて、安定なmRNAをコードするコンストラクトp17M1234(下記)を作製することにより、阻害/不安定活性を持つと思われるHIV−1 gag遺伝子中の全ての領域を、先ず、約270ヌクレオチドの長さの部分全体を一度に変異させた。
4つのオリゴヌクレオチド(図4に示されている)は、

および

である。これらのオリゴヌクレオチドは、51(M1)、48(M2)、50(M3)および50(M4)ヌクレオチドの長さである。各オリゴヌクレオチドは、19−22ヌクレオチドの部分に渡り、いくつかの点変異を導入した(下記参照)。最初の変異ヌクレオチドの5′側にあるヌクレオチド数は、14(M1)、18(M2)、17(M3)および11(M4)であり;最後の変異ヌクレオチドの3′側にあるヌクレオチド数は、15(M1)、8(M2)、14(M3)および17(M4)である。これらの領域の各々に変異前にあったAT/GCヌクレオチド比は、33AT/18GC(M1)、30AT/18GC(M2)、29AT/21GC(M3)および27AT/23GC(M4)であった。これらの領域の各々に変異後にあったAT/GCヌクレオチド比は、25AT/26GC(M1)、24AT/24GC(M2)、23AT/27GC(M3)および22AT/28GC(M4)であった。合計26コドンが変えられた。該コドンがヒト遺伝子1000コドンあたりに出現する回数は(T.マルヤマら、Nucl.Acids Res.14(付録):r151−197(1986)から)、コドンの隣の括弧に挙げられている。例えば、リジン(Lys)をコードする8コドンはaaa(22.0)からaag(35.8)に;チロシン(Tyr)をコードする2コドンはtat(12.4)からtac(18.4)に;ロイシン(Leu)をコードする2コドンはtta(5.9)からcta(6.1)に;ヒスチジン(His)をコードする2コドンはcat(9.8)からcac(14.3)に;イソロイシン(Ile)をコードする3コドンはata(5.1)からatc(24.0)に;グルタミン酸(Glu)をコードする2コドンはgaa(26.8)からgag(41.6)に;アルギニン(Arg)をコードする1コドンはaga(10.8)からcga(5.2)に、およびアルギニン(Arg)をコードする1コドンはagg(11.4)からcgg(7.7)に;アスパラギン(Asn)をコードする1コドンはaat(16.9)からaac(23.6)に;グルタミン(Gln)をコードする2コドンはcaa(11.5)からcag(32.7)に;セリン(Ser)をコードする1コドンはagt(8.7)からtcc(18.7)に;そしてアラニン(Ala)をコードする1コドンはgca(12.7)からgcc(29.8)に変えられた。
DNA分子の構造もしくは配列の改変を起こすのに使われる、オリゴヌクレオチドによる部位特異的変異導入の技術は、当該分野の知識を有するものに知られている。変異させるべき標的DNA配列は、cDNA、ゲノムDNAもしくは合成DNA配列でもよい。一般的に、これらのDNA配列を適当なベクター、例えば、バクテリオファージM13ベクターにクローン化し、組み換えバクテリオファージにより生じたプラークから1本鎖鋳型DNAを調製する。1本鎖DNAを合成オリゴヌクレオチドにアニールさせ、変異導入および以降の工程を当該分野でよく知られた方法により遂行する。例えば、M.スミス(Smith)とS.ギルアム(Gillam)、Genetic Engineering:Principles and Methods,Plenum Press3:1−32(1981)(レビュー)およびT.クンケル(Kunkel)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:488−492(1985)を参照していただきたい。また、サムブルックら、(1989)(上記)も参照していただきたい。合成オリゴヌクレオチドはDNA合成機(例、アプライドバイオシステムズ;Applied Biosystems)で合成でき、当該分野で知られている方法により電気泳動により精製できる。本方法に使われる選択された若しくは調製されたオリゴヌクレオチドの長さは、様々に変えることができる。絶対的なサイズ制限は存在しない。都合の良さから言えば、本発明のプロセスに利用されるにあたっては、オリゴヌクレオチドの最も短い長さは一般的には約20ヌクレオチドで、最も長いものの長さは一般的には約60から100ヌクレオチドである。オリゴヌクレオチドプライマーのサイズは、変異が導入されるべき遺伝子の領域へのプライマーの安定なハイブリダイゼーションに対する必要性、およびオリゴヌクレオチドの合成に関して現在利用可能な方法の限界によって決定される。オリゴヌクレオチドによる変異導入に使われるオリゴヌクレオチドを設計するのに考慮される因子(例えば、全体のサイズ、変異の隣接部のサイズ)は、M.スミスとS.ギルアム、Genetic Engineering:Principles and Methods,Plenum Press 3:1−32(1981)に記載されている。一般的に、オリゴヌクレオチドの全体の長さは、変異部位での安定かつユニークなハイブリダイゼーションを最適化するよう、変異部位から5′および3′側の余剰部分がDNAポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性による変異の修正がなされないほど十分なサイズを持つようになっているだろう。本発明の変異導入に使われるオリゴヌクレオチドは、少なくとも約20ヌクレオチド、通常約40から60ヌクレオチドの長さであることが一般的であり、長さにして約100ヌクレオチドを超えないのが普通であろう。オリゴヌクレオチドは改変されるコドンの3′側に最低約5塩基を含むのが普通であろう。
本発明の好適な変異導入プロトコールにおいて、INSを含む発現ベクターには骨組みとしてBLUESCRIPTプラスミドベクターが含まれる。これにより、1本鎖DNAの他に2本鎖も調製が可能となる。ウラシルを含む1本鎖DNAは以下の標準プロトコールに従って調製される:該プラスミドをF′細菌株(例、DH5αF′)に形質転換する。コロニーを繁殖させ、ヘルパーファージM13−VCS(Stratagene #20025;1×1011pfu/ml)に感染させる。このファージを用いて大腸菌株CJ236の培養物に感染させ、標準的な方法に従って1本鎖DNAを分離する。0.25ugの1本鎖DNAを合成オリゴヌクレオチド(各オリゴは5 OD260/mlの濃度に溶解させ、5ulを用いる)とアニールさせる。合成オリゴヌクレオチドは普通、約40から60ヌクレオチドの長さで、5′および3′の各末端に約10ヌクレオチドの完全な塩基マッチを含むように設計される。それらは残りの20−40ヌクレオチドの中に求めるだけの数の変更を含むことができる。オリゴヌクレオチドは、問題の領域をカバーするよう設計され、それらは互いに隣り合っていてもよいし、またはそれらの間にギャップがあってもよい。1度に6つまで異なるオリゴヌクレオチドが使われたことがあるが、同時に6つ以上のオリゴヌクレオチドを使用することも本発明の方法で実行され得ることが考えられる。アニーリングの後、T4ポリメラーゼによる伸長反応により、ウラシルを含まない第2鎖が作られる。遊離末端はリガーゼにより連結する。これにより、大腸菌株HB101に形質転換するのに使うことのできる2本鎖DNAが生じる。ウラシルを含まない変異鎖が2本鎖DNAを生産し、これに導入された変異が含まれる。個々のコロニーを取り、配列解析により変異を素早く証明する。別の方法として若しくはさらに、異なる変異表現型を生じる異なるオリゴヌクレオチドの組み合わせに関する選択に対して、この変異導入法を用いることができる(実際、用いられた)。これにより、機能に重要な領域の解析が容易になり、INSに関与する正確な配列解析が可能となるので、以下の実験の手助けとなる。本明細書中に記載されたHIV−1のINS−1領域の例示された変異導入に加え、本発明は、並んで編成された3つのオリゴヌクレオチド(合計35の変異を導入する)を用いて、一工程で150ヌクレオチドの領域を変異させるのにも用いられている。変更の上限は明確ではないが、およそ500ヌクレオチドの領域を、本プロトコールを用いて一工程でその20%のヌクレオチドを変更することができると計算されている。
オリゴヌクレオチドによる部位特異的変異導入を用いることにより変異させる例示された方法は、当該分野で知られた他の方法を用いることにより変化させることができる。例えば、重なり合う合成デオキシヌクレオチドを直接用いて(例えば、エッジ(Edge)ら、Nature 292:756(1981);ナンベア(Nambair)ら、Science 223:1299(1984);ジェイ(Jay)ら、J.Biol.Chem.259:6311(1984);またはポリメラーゼ連鎖反応で作製されたDNAもしくはcDNAおよび合成オリゴヌクレオチドを組み合わせて用いることにより、変異遺伝子を合成することができる
4.変異mRNAの安定性の決定
得られた変異mRNAの定常状態レベルおよび/もしくは安定性を、阻害/不安定領域を含む非改変mRNAの定常状態レベルおよび/もしくは安定性を試験するのと同様にして(上記第1章に考察されているように、例えばノザンブロッティングにより)、試験することができる。阻害/不安定領域(群)を含む非改変mRNAおよび望みによっては非改変インジケーターmRNAと共に(従ってこれらと比較して)、変異mRNAを解析することができる。例示されるように、トランスフェクション実験において、ノザンブロット分析によって以降のmRNA解析を行うことにより、HIV−1 p17gag変異体を非変異HIV−1 p17gagと比較する。これらのmRNAにより生産される蛋白質は、ELISAなど、当該分野で知られた免疫ブロッティングおよび他の方法によって測定する。下記参照。
VI.工業的応用性
本発明の方法により変異導入が可能な遺伝子には、そのmRNAがその中にINS領域を含むことが知られている、若しくは含むと思われるものが含まれている。これらの遺伝子には、例えば、増殖因子、インターフェロン、インターロイキン、fos原癌遺伝子蛋白質、並びに、本明細書中に例示されたものに加え、他のウイルスmRNA以外に、HIV−1 gag、envおよびpolをコードする遺伝子が含まれる。本発明の方法により変異導入される遺伝子は、天然の宿主細胞もしくは生物、または異なる細胞若しくは生物において発現させることができる。変異遺伝子は、プラスミド、コスミド、ファージ、ウイルスもしくはミニ染色体などのベクターに導入することができ、当該分野でよく知られた方法により宿主細胞もしくは生物に挿入することができる。一般的に、変異遺伝子もしくはこれらの変異遺伝子を含むコンストラクトは、哺乳動物細胞(例、ヒト(例、HeLa)、サル(例、Cos)、ウサギ(例、ウサギ赤血球)、ラット、ハムスター(例、CHOおよびベビーハムスター腎細胞)もしくはマウス細胞(例、L細胞))、植物細胞、酵母細胞、昆虫細胞または細菌細胞(例、大腸菌)を含め、真核細胞または原核細胞のいずれの細胞にも利用することができる。これらの変異遺伝子のクローン化および/もしくは発現に利用することのできるベクターは、該変異遺伝子が複製され、そして/もしくは発現されて欲しい宿主細胞において、変異遺伝子を複製および/もしくは発現させる能力を持つベクターである。様々なタイプの宿主細胞に適したベクターの例としては、例えば、F.アウスベル(Ausbel)ら、Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates and Wiley−Interscience(1992)およびサムブルックら(1989)を参照していただきたい。そのような遺伝子の本来のプロモーターを、該遺伝子が挿入される宿主と両立し得る強力なプロモーターに置き換えることができる。これらのプロモーターは誘導性であってもよい。これらの変異遺伝子を含む宿主細胞を用いて、酵素調製品、医薬品、診断薬、ワクチンおよび治療学に有用な蛋白質を大量に発現させることができる。
本発明の方法により改変された遺伝子もしくは該遺伝子を含むコンストラクトはin vivoもしくはin vitro遺伝子置換に利用することもできる。例えば、阻害/不安定領域を有すmRNAを生産する遺伝子を、本発明の方法により改変された遺伝子にそのまま(in situ)置き換えて、最終的に発現される生産量を増加させることができる。そのような遺伝子にはウイルス遺伝子および/もしくは細胞性遺伝子が含まれる。そのような遺伝子置換は、例えば、ワクチンおよび/もしくは遺伝子治療の開発に有用であろう。
例示された改変gag、envおよびpol遺伝子をコードするコンストラクトを用いることにより作られたコンストラクトおよび/もしくは蛋白質は、例えば、AIDSおよびAIDS関連疾患に対する診断薬、ワクチンおよび治療薬の生産に利用することができよう。例示されたHIV−1 gag遺伝子中の阻害/不安定エレメントは、宿主における低レベルなウイルス生産状態の確立にも関与し得る。HIV−1および他のレンチウイルス(lentivirus)は、免疫系により一掃されない慢性的な能動感染を引き起こす。レンチウイルスゲノムから阻害/不安定配列エレメントを完全に除くことにより、構成的な発現がもたらされるであろう。これにより、ウイルスが潜伏感染を確立し免疫系の監視を逃れるのを防ぐことができる。阻害配列エレメントの排除によりp17gagの発現増加に成功することは、いかなるネガティブエレメントも持たないレンチウイルスを生産することができることを示唆する。そのようなレンチウイルスは、弱毒化されたワクチンに対する新規のアプローチ法を提供し得るだろう。
例えば、高レベルのGagを発現するベクターは、ヒトで発現させた後の免疫療法および免疫予防に使用することができる。そのようなベクターはレトロウイルスベクターを含み、並びに、例えば、ウォルフら、Science 247:1465−1468(1990)、ウォルフら、Human Molecular Genetics 1(6):363−369(1992)およびウルマー(Ulmer)ら、Science 259:1745−1749(1993)に記載された技術を用いた、DNAの筋細胞もしくは他の受容細胞への直接的な注入(gagの効率的な発現をもたらす)も含む。さらに、gagコンストラクトは、ヒトに導入された後のトランス優性なHIV発現阻害に利用することもできよう。本出願に関して、例えば、高レベルのp55gagもしくはp37gagを発現する適当なベクターもしくはDNA分子を改変して、例えば、ツロノ(Trono)ら、Cell 59:113−120(1989)に記載されているような、トランス優性なgag変異体が作製されるだろう。該ベクターはヒトに導入され、gagトランス優性阻害および生産されたgag蛋白質による免疫刺激を組み合わせた機構によって、HIV産生の阻害をもたらすだろう。加えて、本発明のgagコンストラクトは、レンチウイルスgag蛋白質の発現に基づいた、新しいレトロウイルスベクターの作製に利用できよう。レンチウイルスは、分裂していない細胞を標的とし、効率よく感染することができるという独特の性質を持つ。高レベルのenvを発現するベクターに関して、同様の応用が予想される。
SIV中の同様の阻害/不安定エレメントの同定は、このウイルスがこれらの仮説の検証に便利なモデルを提供し得ることを示唆する。
例示されたコンストラクトはまた、阻害/不安定領域を含むことが知られている、もしくはそう思われるいかなるmRNA、例えば、本明細書中に例示されたものに加え他のウイルスmRNA並びに、様々な増殖因子、インターフェロンもしくはインターロイキンをコードするmRNAにおいて、該配列の境界を簡単かつ迅速に検出および/もしくは更に規定するのにも利用することができる。
以下の実施例は本発明のある態様を例示するが、しかし、いかなる点においても本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。ある種の改変および多様性は、以前の開示からの教訓および以下の実施例より当該分野の知識を有するものには明らかであろう。そしてこれらは、本発明の精神および範囲内にあるものと意図される。
実施例1
HIV−1 GAG 遺伝子
ヒト免疫不全症候群ウイルス1型(HIV−1)のRev制御タンパク質と、Rev−応答エレメント(RRE)と命名されたそのRNA標的との相互作用は、ウイルス構造タンパク質の発現に必要である(レビューとしてG.パブラキスとB.フェルバー(G.Pavlakis and B.Felber)New Biol.:20−31(1990);B.キュレンとW.グリーン(B.Cullen and W.Greene)Cell58:423−426(1989);C.ローゼンとG.パブラキス(C.Rosen and G.Pavlakis)AIDS J.4:499−509(1990)を参照)。RevはRREを含むmRNAの核からの移行を促進し、その安定性を増加させることによって作用する。最近の結果ではREVがこれらのmRNAのポリソームへの効率的な会合に役割を果たすことも示されている(S.アリゴとI.チェン(S.Arrigo and I.Chen)Gene Dev.5:808−819(1991),D.ダゴスティーノら(D,D’Agostino et al.)Mol.Cell Biol.12:1375−1386(1992))。RREを含んだHIV−1のmRNAは、Revの非存在下ではタンパク質を効率良く産生できないことから、これらのmRNAには欠損があり、INS,CRS,またはIRと様々な表記がされている阻害/不安定配列が含まれていると予想されていた(M.エマーマンら(M.Emerman et al.)Cell 57:1155−1165(1989);S.シュワルツら(S.Schwartz et al.)J.Virol.66:150−159(1992);C.ローゼンら(C.Rosen et al.)Proc.Natl.Acad.Sci.USA85:2071−2075(1988);M.ハッツポロークラダラスら(M.Hadzopoulou−Cladaras et al.) J.Virol.63:1265−1274(1989);F.マルダレリら(F.Maldarelli et al.)J.Virol.65:5732−5743(1989);A.W.コクランら(A.W.Cochrane et al.)J.Virol. 65:5305−5313(1991))。これらの阻害/不安定配列の性質と機能に関して、詳細な記述はなされていない。不要のスプライス部位がRevの機能に必要ではないかと予想されており(D.チャンとP.シャープ(D.Chang and P.Sharp)Cell 59:789−795(1989))、こうしたスプライス部位の存在が、HIV−1 mRNAをRev依存性としているのかもしれない。
HIV−1のハイブリッド構築の解析から、HIV−1のgagおよびpol領域内のある種の阻害/不安定配列について最初の記述がなされた(S.シュワルツら(S.Schwartz et al.)J.Virol.66:150−159(1992);F.マルダレリら(F.Maldarelliet al.)J.Virol.65:5732−5743(1991);A.W.コクランら(A.W.Cochrane etal.)J.Virol. 65:5305−5313(1991))。HIV−1のp17gagマトリックスタンパク質のコーディング領域に位置する阻害/不安定性RNAエレメントの同定についても、報告がなされている(S.シュワルツら(S.Schwartz et al.)J.Virol. 66:150−159(1992))。この配列をtat cDNAに挿入すると、cisに作用してHIV−1のtatの発現を阻害することが示されている。この阻害がRev−RREで抑えられることは、このエレメントがRevによる制御において役割を果たしていることを示している。
1.p17gag発現プラスミド
p17gag中の阻害/不安定性エレメントをさらに研究するため、p17gag発現プラスミド(p17図1)を構築した。p17gag配列はコーディング配列の直後に翻訳終止コドンを含むように設計し、そうしてp17gagだけを産生するようにした(このプラスミドの構築は後に記載する)。HIV−1上のgag AUGの上流にある主要な5’スプライス部位は、このベクターから欠失してある(B.フェルバーら(B.Felber et al.)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1495−1499(1989))。p17プラスミドがRevとRREの非存在下でp17gagを産生できるかどうかを調べるため、p17をHLtat細胞に導入した(S.シュワルツら(S.Schwartz et al.)J.Virol. 64:2519−2529(1990))(以下参照)。これらの細胞はHIV−1 LTRプロモーターのtransの活性化に必要な、HIV−1 Tatタンパク質を構成的に産生する。p17プラスミドをRevの非存在下または存在下で導入し、p17gagの産生をウェスタン免疫ブロッティングにより解析した。その結果、非常に低いレベルのp17gagタンパク質が産生されていることがわかった(図2A)。gag mRNAにはRREが含まれないことから予想されるとおり、Revの存在はgagの発現を増加させなかった。次にp17gagコーディング配列とRREの両者を含むプラスミド(p17R 図1)を構築した。p17と同様にこのプラスミドは、Revの非存在下で非常に低いレベルのp17gagを産生した。だが高レベルのp17gagが、Revの存在下でのみ産生された(図2A)。これらの実験は、阻害/不安定性エレメントがp17gagコーディング配列の中に位置することを示唆した。
様々な真核生物ベクターを用いた発現実験は、いくつかの他のレトロウイルスでは、こうした阻害/不安定配列がそのコーディング配列中に含まれないことを示している(たとえばJ.ウィルスら(J.Wills et al.)J.Virol.63:4331−43(1989);V.モリスら(V.Morris et al.)J.Virol.62:349−53(1988))。こうした結果を確かめるため、p17プラスミド上のHIV−1のp17gag(マトリックス)遺伝子を、ラウス肉腫ウイルス(RSV、SR−A系統)の相同タンパク質であるp19gag(マトリックス)のコーディング配列と置換した。得られたプラスミドであるp19(図1)は、gagコーディング配列以外p17プラスミドと同一であった。p19プラスミドからのp19gagの産生をウェスタン免疫ブロッティングにより解析した結果、このプラスミドは高レベルのp19gagタンパク質を産生することがわかった(図2A)。これらの実験は、RSVのp19gagコーディング配列がHIV−1のp17gagとは対照的にこのベクターで効率良く発現されることを明らかにし、RSVのgag領域が阻害/不安定性エレメントを含まないことを示している。p19プラスミドの誘導体としてRREを含むものも構築し、p19Rと命名した(図1)。興味深いことにRevの非存在下では、RREを含むプラスミドp19Rからは非常に低レベルのp19gagタンパク質しか産生されなかった。この観察結果は、導入したRREと3’HIV−1配列が働いてp19Rプラスミドからのp19gagの発現に阻害的な効果を及ぼすことを示すものであり、Revの非存在下でRREを含むウイルスの3’末端のより長い領域が、阻害/不安定性エレメントとして作用することを示した最近のデータと一致する(G.ナシオラス、G.パブラキス、B.フェルバー(G.Nasioulas,G.Pavlakis,B.Felber)論文準備中)。結論として、同じベクターでRSV p19gagの高レベルでの発現が見られたことは、HIV−1 p17gagコ ディング領域内の阻害/不安定配列が極めて低レベルでの発現の要因であるという結果を支持していると言える。
次にp17gagのコーディング配列の阻害/不安定性効果が、mRNAのレベルでも検出されるかどうかを決定した。p17で形質転換した、またはp17Rで形質転換したHLtat細胞から抽出したRNAのノザンブロット解析の結果、p17RからはRevの非存在下ではより低いmRNAレベルしか産生されないことが明らかとなった(図3A)(実施例3参照)。Revの共発現後には、p17RのmRNAレベルは2から8倍の増加が観察された。p17プラスミドの産生するmRNAレベルは、Revの非存在下でp17Rから産生されるmRNAレベルと同じであった。特にRevはRREを含まないmRNAと、そうしたmRNAから産生されるタンパク質のレベルを減少させた。共発現実験におけるRevのこうした阻害効果は、ルシフェラーゼやCATといった他のRREを含まないmRNAについても観察されている(L.ソロミンら(L.Solomin et al.)J.Virol. 64:6010−6017(1990);D.M.ベンコら(D.M.Benko et al.)New Biol:1111−1122(1990))。これらの結果はgagの中の阻害エレメントがmRNAレベルにも影響を及ぼすことを確定したものであり、先の知見と一致するものである(S.シュワルツら(S.Schwartz et al.)J.Virol. 66:150−159(1992))。Revの非存在下または存在下でのp17Rから産生されるmRNAレベルとタンパク質レベルの定量を、試料を適当に段階希釈して走査型密度測定装置を用いて行い、その結果相違はmRNAレベル(2から8倍)よりもタンパク質のレベル(60から100倍)で顕著であることが示された。この結果はgagとenvの両mRNAの局在とポリソームへの取り込みにRevが及ぼす効果に関する先の知見と矛盾しない。(S.アリゴら(S.Arrigo)Gene Dev.5:808−819(1991);D.ダゴスティーノら(D.D’Agostino et al.)Mol.Cell Biol.12:1375−1386(1992);M.エマーマンら(M.Emerman et al.)Cell 57:1155−1165(1989);B.フェルバーら(B.Felber et al.)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1495−1499(1989);M.マリムら(M.Malim et al.)Nature(London) 338:254−257(1989))。RSV gag発現プラスミドから産生されるmRNAのノザンブロット解析の結果、p19は高レベルのmRNAを産生することがわかった(図3B)。この結果はさらに、RSVのp19gagコーディング配列が阻害エレメントを含まないことを示している。p19RプラスミドにはRREと3’HIV−1配列が存在する結果、Revの非存在下でmRNAのレベルが低下しているが、このことはこの配列中に阻害エレメントが存在することを示唆する。以上を考えあわせればこれらの結果は、HIV−1のgagの発現はRSVの場合と根本的に異なるということを証明している。RSVのp19gagコーディング配列が阻害配列を含まないのに対し、HIV−1のp17gagコーディング配列は強い阻害エレメントを含んでいる。興味深いことにプラスミドp19はRSV env mRNAの生成に用いられる5’スプライス部位を含み、これはgag AUGの下流に位置する。この5’スプライス部位は、記載された発現ベクターでは利用されていない(図3B)。この5’スプライス部位の不可変のGTジヌクレオチドをATに変異させても、p19gagの発現に顕著な影響を与えなかった(データは示していない)。一方、HIV−1 p17発現プラスミドは既知のスプライス部位は含んでいないが、Revの非存在下で発現されない。これらの結果はさらに、不要のスプライス部位以外の配列が、gagの発現阻害の要因であることを示している。
2. 変異を導入したp17gagベクター
HIV−1 gag中の阻害配列の正確な性質を調べるため、図4に示すように4種の異なるオリゴヌクレオチドを用いて、p17gagのコーディング配列に部位特異的変異導入を行った。それぞれのオリゴヌクレオチドは、19から22ヌクレオチドの範囲に数箇所の点突然変異を導入した。これらの変異は沈黙コドン変化(silent codon changes)を導入するので、p17gagタンパク質のアミノ酸配列には影響しなかった。最初に4種のオリゴヌクレオチドを同時に用いて、記載のとおり一本鎖DNAを鋳型とした変異導入を行った(T.クンケル(T.Kunkel)Proc.Natl.Acad.Sci.USA82:488−492(1985);S.シュワルツら(S.Schwartz et al.)Mol.Cell.Biol. 12:207−219(1992))。この結果p17ベクター中の270ヌクレオチドの広い領域にわたって、多数の点変異を同時に導入することができた。4種のオリゴヌクレオチド全ての変異を含んだ変異体を単離し、p17M1234と命名した。p17と比較した場合、このプラスミドは高いAU含有率の領域に特に集中する、総数28個の点変異を含んでいる。HLtat細胞に形質転換させた後、p17gagの発現を免疫ブロッティングで解析することにより変異の表現型を評価した。興味深いことにp17M1234は高レベルのp17gagタンパク質を産生し、そのレベルはRevの存在下でp17Rが産生する場合よりも高かった(図2A)。この結果はプラスミドp17M1234ではp17gagmRNAの阻害/不安定性シグナルが不活化されているがことを示している。予想されたとおり、Revタンパク質の存在はp17M1234からの発現を増加させず、gagの発現にわずかに阻害効果を及ぼした。このようにp17M1234変異からのp17gagの発現は、RSVのp19gagと同じ一般的特性、すなわちRevに依存しない高い構成的レベルのgagの発現を示した。ノザンブロット解析の結果、p17M1234から産生されるmRNAのレベルは、p17から産生される場合に比べて増大していることが明らかとなった(図3A)。
最小の阻害/不安定配列の性質と正確な局在をさらに調べるために、p17プラスミド内のp17gagコーディング配列への変異導入を、4種の変異オリゴヌクレオチドのうちの1つだけを用いて行った。この実験操作の結果4種の変異プラスミドが作られ、それぞれが含むオリゴヌクレオチドによりp17M1,p17M2,p17M3,p17M4と命名した。これらの変異体のいずれもp17プラスミドと比較して、顕著に高いレベルのp17gagタンパク質を産生することはなく(図5)、阻害/不安定性エレメントには影響がないことが示された。次にp17コーディング配列に同時に2種のオリゴヌクレオチドで変異を導入した。この結果得られた変異体をp17M12,p17M13,p17M14,p17M23,p17M24,p17M34と命名した。これらの変異体からのタンパク質産生はp17からの場合に比べて僅かに増大したが、p17M1234からの場合よりもかなり低かった(図5)。また3つのオリゴヌクレオチドを用いた変異であるp17M123も、高レベルのp17gagを発現することはなかった(データは示していない)。これらの知見はp17gagのコーディング配列に、複合的な阻害/不安定性シグナルが存在することを示唆するのかもしれない。あるいは単一の阻害/不安定性エレメントが広い領域に広がっていて、その不活化には2種以上のオリゴヌクレオチドでの変異導入が必要なのかもしれない。この可能性はp17gagコーディング配列中の218ヌクレオチドの阻害/不安定性エレメントがgagの発現の強い阻害に必要であるとする先のデータと矛盾しない。この配列をさらに欠失させると徐々に阻害効果が失われる(S.シュワルツら(S.Schwartz et al.)J.Virol.66:150−159(1992))。阻害/不安定性エレメントはmRNA上の特異的な二次構造と一致するのかもしれない。現在特異的な構造が阻害/不安定性エレメントの機能に重要なのかどうかを調べている。
p17gagコーディング配列は、RSVのp19gagコーディング配列と異なり、高い含有率でAおよびUヌクレオチドを含む(S.シュワルツら(S.Schwartzet al.)J.Virol.66:150−159(1992);G.マイヤースとG.パブラキス(G.Myers and G.Pavlakis)J.レビー(J.Levy)編集The Retroviridae所収(Plenum Press,New York,NY,1992)1−37頁)。p17gagコーディング配列には4つの高いAU含有率の領域が存在し、gagの発現阻害に関与している(S.シュワルツら(S.Schwartz et al.)J.Virol.66:150−159(1992))。レンチウイルスは哺乳類のゲノムに比べて、高いAU含有率を持つ。多様にスプライスされるmRNAが低いAU含有率を持つのに対し、高いAU含有率の領域がgag/polおよびenv領域に見出されること(G.マイヤースとG.パブラキス(G.Myers and G.Pavlakis)J.レビー(J.Levy)編集The Retroviridae所収(Plenum Press,New York,NY,1992)1−37頁))は、阻害/不安定性エレメントが高いAU含有率のmRNA領域と関連しているという可能性を支持している。特異的なオリゴヌクレオチド配列であるAUUUAは、いくつかの不安定なmRNAのAUに富んだ3’非翻訳領域に見出されるが、この配列がRNAを不安定化させることが示されている(G.シャーとR.カメン(G.Shaw and R.Kamen)Cell 46:659−667(1986))。この配列はp17gag配列中には存在しないが、gag/polおよびenv領域内に多コピーで見出されている。しかし我々のベクターで強い阻害/不安定性活性を示したRREと3’HIV配列はAUに富んでいないので、不安定配列とAUに富んだ領域との関連は普遍的なものとはいえない。これらの観察結果は2種以上の型の阻害/不安定配列が存在することを示唆する。AU含有率を減少させるのに加えて、p17プラスミドにいくつか変異を導入して、ヒト細胞で使用頻度の低いコドンをより頻度の高いコドンに変化させた。頻度の低いコドンの使用は、HIV gagの低い発現のもう一つの説明になるが、Revの存在によりgagの発現の欠損が是正されるので、これらの結果からこうした型の翻訳制御は考えにくい。さらに非翻訳配列の存在がgagの発現を減少させた観察結果(たとえばp17R上のRRE配列)は、阻害/不安定性領域の翻訳が阻害に必要ではないことを示唆している。p17M1234へのRREと3’HIV配列の導入によりgagの発現を減少させることが可能であり、翻訳と共役して作用するのではない独立した負の因子が、発現の低下の要因となっていることが確められた。
3. gag遺伝子のp24とp15領域の付加的なINS配列の同定と欠失
p17gagコーディング領域内のINS(p17gagコーディング領域は図1(B)上の記載に記されているとおりヌクレオチド336−731に広がり、図1(A)と(B)に示すとおりgagコーディング領域の3つの部分(すなわちp17,p24,p15)のうち最初の部分を含む)の除去が完全なgag遺伝子の発現に与える影響を調べるため、ベクターp17M1234上の、変異により変化させたp17gagコーディング領域の3’側すなわち終止コドンの下流にgag遺伝子の付加的な配列を挿入した発現ベクターを構築した。gagの配列を徐々に伸ばした長さで含んだベクター、すなわち図1(C)に示したp17M1234(731−1081),p17M1234(731−1424),p17M1234(731−2165)の解析を行った。p17gagの発現レベルを測定した結果、gagタンパク質の2番目の部分をコードするmRNA領域(すなわち731−1424ヌクレオチドに広がるp24gagタンパク質をコードする部分)が弱いINSのみを含むことが、p17M1234により発現されるp17gagタンパク質量がp17M1234(731−1424)により発現されるp17gagタンパク質量と比較して少し減少していることから決定されたのに対し、gagタンパク質の3番目の部分をコードするmRNA領域(すなわちヌクレオチド1425−2165に広がるp15gagタンパク質をコードする部分)が強いINSを含むことが、p17M1234(731−2165)により発現されるgagタンパク質量がp17M1234とp17M1234(731−1424)により発現されるタンパク質量と比較し大きく減少していることから決定された。
4.p37M1234ベクター
上記の解析により、高レベルのp37gag前駆タンパク質(p17gagとp24gagタンパク質領域の両方を含む)を発現するp37M1234ベクターの構築が可能となった。ベクターp37M1234の構築は、変化させたp17gagタンパク質をコードする遺伝子の末端の停止コドンを除去し、p24gagタンパク質をコードするヌクレオチド配列をオリゴヌクレオチド変異導入で正しい読み枠に融合して行った。これによりヌクレオチド配列が回復され、HIV−1にコードされていた時と同様に、融合したp17gagとp24gagタンパク質(すなわちp37gagタンパク質)をコードするようになった。p37gagまたはp24gagタンパク質の存在は、商業的に入手可能なELISAキットにより容易に定量可能なので、ベクターp37M1234を用いればINSを含むと疑われる付加的な配列を挿入し検定することができる。そうした用法の実施例を以下に示す。
5.p17M1234(731−1081)NSおよびp55BM1234ベクター
p37M1234の構築と同様の方法で構築された他のベクターは、p17M1234(731−1081)NSとp55BM1234(図1(C))である。これら3種のベクターはいずれもp17コーディング領域の下流の領域(3’側)の翻訳を可能とするが、それぞれからのgagの発現レベルは、終止コドンから3’側のヌクレオチド配列を含んだベクター(すなわち上に記載したp17M1234(731−1081),p17M1234(731−1424),p17M1234(731−2165))それぞれからのgagの発現レベルと同じであった。これらの結果はまたgag遺伝子内のINS領域は、翻訳またはINS領域でのその欠失による影響を受けないことを示している。これらの結果はHIV−1 gagコーディング領域内(すなわちHIV−1 gagの1424−2165をコードする領域の中)の付加的なINS配列を検出するためのp17M1234の用法を示す。したがってこれらの結果はまた、一種またはそれ以上の阻害/不安定性領域を含む遺伝子に変異を導入して、一つの阻害/不安定性領域を除去した後、まだその遺伝子内に存在するかもしれない付加的な阻害/不安定性領域の位置を決定するにはどうすればよいかを示している。
6.p37M1−10Dおよびp55M1−10ベクター
上に記載したように、いくつかの実験からHIV−1のp17gag領域に同定され除去されているINSに加えて、HIV−1のp24とp15領域の中にINSの存在が示されている。これはシュワルツら(Schwartz et al.)のJ.Virol.66:7176−7182(1992)の7180ページの図6に模式的に描かれている。この図においてcgagM1234はp55BM1234と同一である。
付加的なgagおよびpol配列を含むp24gagタンパク質をコードするベクターでの、p24gagタンパク質の発現の研究から、完全なgag遺伝子と部分的なpol遺伝子を含んだベクター(たとえばベクターp55BM1234図6参照)は、上に記載のp17gag中のINS−1を除去しても高レベルで発現されないことが見出された。本発明者らは、これが互いに独立に作用しうる複合的なINS領域の存在によるものと仮定した。付加的なINSを除去するため、数種の変異HIV−1オリゴヌクレオチドを構築し(表2参照)、様々なgag発現ベクターに組み込んだ。たとえばM6gag,M7gag,M8gag,M10gagの各オリゴヌクレオチドをp37M1234に導入してp37M1−10Dを作製し、また同じオリゴヌクレオチドをp55BM1234に導入してp55BM1−10を作製した。これらの実験によりp37gag(p17gagとp24gag前駆タンパク質にあたる)とp55gag(HIV−1により産生されるインタクトなgag前駆分子にあたる)の発現は、M6gag,M7gag,M8gag,M10gagオリゴヌクレオチド(表2に記載)に含まれる付加的な変異をp37M1234とp55BM1234発現ベクターに導入することで、劇的に改善されることが明らかとなった。図6は付加的な変異の導入後、発現が劇的に改善されることを示している。
特に興味深いのは、きわめて高レベルのgagを産生するp37M1−10Dである。これはこれまでにもっとも高レベルのgag産生構築である(図6参照)。面白いことに、p55BM1−10とp55AM1−10ベクター(図6)のようにgagおよびpol配列を付加すると、gagの発現レベルは減少した。さらに変異を導入するにつれ、この領域のベクターp55M1−13P0に対する阻害効果は、図6に示すように部分的に消失した。gag領域ヌクレオチドであるM10gag,M11gag,M12gag,M13gagとpol領域ヌクレオチドであるM0polにより決定される変異を導入すると、gagの発現レベルはp55BM1−10などのベクターに対しおよそ6倍に増大する。
p37M1−10Dとp55M1−13P0のHIV−1プロモーターをヒトサイトメガロウイルス早期プロモーター(CMV)に置換して、それぞれpCMV37M1−10DとpCMV55M1−13P0を作製した。このためCMVプロモーターを含む断片(+1を転写開始点としてヌクレオチド−670から+73,ボシャートら(Boshart et al.)Cell,41,521(1985)を参照)をPCRにより増幅した。この断片をgagベクターp37M1−10Dとp55M1−13P0のStuI−BssHII断片と交換し、HIV−1プロモーターをCMVプロモーターに置換した。この結果得られたプラスミドでヒト細胞を形質転換後、HIV−1プロモーターを含むプラスミドと比較したところ、同様にgagの高発現が得られた。したがってgagは、他のウイルスタンパク質が全く存在しなくても、高発現することが可能である。HIV−1を他のプロモーターと交換することは、構成的発現が望ましい際に有利であり、またマウス細胞などのようにHIV−1プロモーターが弱い他の哺乳類細胞での発現にも有利である。
構築されたベクターp37M1−10Dとp55BM1−10を用いて、それぞれp372gag、p55gagタンパク質をRev非依存的に産生させた。またこれらのベクターを有用なレポーターとして用いて、異なるRNA分子の付加的なINSの同定と除去を行った。
本明細書に記載された実験操作を用いて、gp41(HIV−1 envの膜貫通部分)コーディング領域内とHIV−1のenvよりも3’側に、INSを含む領域を同定した。INSをgag,pol,envの領域から除去すると、HIV−1のRev制御因子の非存在下で本来のHIV−1構造タンパク質の高レベルの発現が可能となる。変異をもったコーディング配列を適当な遺伝子発現ベクターに組み込むことで、特定の細胞の遺伝子ターゲッティングおよび/あるいはより効率的な遺伝子発現が可能となる。あるいは変異をもったコーディング配列を用いて、in vitro またはin vivoのヒトまたは他の細胞で直接発現させ、高いタンパク質レベルで産生させたり強い免疫応答を引き起こすことを目指すことができる。いずれの場合にも究極的に目指す点は、それによりHIVの感染と病気から守ることである。
記載された実験は、阻害/不安定配列がHIV−1の発現を防ぐのに必要であることを示している。このウイルス構造タンパク質の発現障害は、Rev−RRE相互作用により抑圧することができる。INSの非存在下ではHIV−1の発現はより単純なレトロウイルスに似て、Revを必要としないであろう。したがってINSはRevによる制御に必要な因子である。配列の比較は、実験により確認されている訳ではないが、ここで同定されたINS因子がこれまでに単離された全てのHIV−1で保存されていることを示唆している。gagの変異されたヌクレオチドの大部分(28のうち22)は、これまでに単離された全てのHIV−1で保存されているが、28のうち22はHIV−2でも保存されている(G.マイヤースら(G.Myers et al.)編 Human retroviruses and AIDS.A compilation and analysis of nucleic acid and amino acid sequences(Los Alamos National Laboratory,Los Alamos,New Mexico,1991)を本明細書に参考文献として取り入れた)。何通りかの証拠から、レンチウイルスとHTLVグループなどの他の複合レトロウイルスの全てが、同様のINS制御エレメントを含むことが示されている。強いINSエレメントがHTLV−IとSIVのgag領域に同定されている(投稿準備中)。このことはINSが重要な制御エレメントであり、複合レトロウイルスの何らかの生物学的特性の要因であることを示唆する。SIVとHTLV−IにINSが存在することは、これらの因子が複合レトロウイルス間で保存されていることを示唆する。INSが発現を阻害することから、その存在はウイルスに有利に働くと結論されるはずである。さもなければこうした配列は突然変異で迅速に除去されていたであろう。
阻害/不安定配列が他のウイルスタンパク質の非存在下で作用し、突然変異の導入で不活化されうるという観察結果は、これらの因子が、mRNAと作用し遺伝子発現を転写後の段階で阻害するような細胞内因子の結合標的であることを示唆する。HIV−1 mRNAとそうした因子の相互作用の結果、核に保持されて、mRNAはさらにスプライシングされたり迅速に分解されるのかもしれない。スプライシング装置の構成要素がHIV−1 mRNA上のスプライス部位と作用して、mRNAの発現を調節するということが提唱されている(A.コクランら(A.Cochrane et al.)J.Virol.65:5305−5313(1991);D.チャンとP.シャープ(D.Chang and P.Sharp)Cell59:789−795(1989);X.ルら(X.Lu et al.)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:7598−7602(1990))。しかし本明細書に記載した阻害/不安定性エレメントが5’または3’のスプライス部位として機能するとは考えにくい。HIV−1のスプライス部位の完全なマッピングが、いくつかの研究室で逆転写酵素−PCR法を用いて行われているが、gagの中にはいかなるスプライス部位も検出されていない(S.シュワルツら(S.Schwartz et al.)J.Virol.64:2519−2529(1990);J.グアテリら(J.Guatelli et al.)J.Virol.64:4093−4098(1990);E.D.ギャレットら(E.D.Garrett et al.)J.Virol.65:1653−1657(1991);M.ロバートグロフら(M.RobertGuroff et al.)J.Virol.64:3391−3398(1990);S.シュワルツら(S.Schwartz et al.)J.Virol.64:5448−5456(1990);S.シュワルツら(S.Schwartz et al.)Virology 183:677−686(1991))。RevがスプライスされていないmRNAをスプライスソームから遊離させる際に作用する(D.チャンとP.シャープ(D.Chang and P.Sharp)Cell59:789−795(1989))、またはスプライシングを阻害して作用する(J.ケムスら(J.Kjems et al.)Cell67:169−178(1991))という推測は、いかなるレトロウイルスも不要のスプライス部位を含んだmRNAからしか構造タンパク質を産生しない、という知見と容易には一致しない。Rev非存在下でのHIV−1 mRNAも含めて、レトロウイルスのmRNAのスプライシングはすべて、細胞性のmRNAのスプライシングと比較して効率が悪い(J.ケムスら(J.Kjems et al.)Cell67:169−178(1991);A.クライナーら(A.Krainer et al.)Gene Dev.:1158−1171(1990);R.カッツとA.スカルカ(R.Katz and A.Skalka)Mol.Cell.Biol.10:696−704(1990);C.ストルツフスとS.フォガルティー(C.Stoltzfus and S.Fogarty)J.Virol. 63:1669−1676(1989))。レトロウイルスの大多数はRev様のタンパク質を産生しないが、部分的にスプライシングされたmRNAから効率良くタンパク質を発現することから、不要のスプライス部位による発現阻害はレトロウイルス全般の特性ではないと推測される。変異を導入して、機能するスプライス部位を欠失させたHIV−1 gagとenv mRNAを発現する構築を用いた実験は、Revの非存在下ではこれらのmRNAが低レベルでしか蓄積せず、これらの発現がRev依存的であることを示している(M.エマーマンら(M.Emerman et al.)Cell57:1155−1165(1989);B.フェルバーら(B.Felber et al.)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1495−1499(1989);M.マリムら(M.Malim et al.)Nature(London) 338:254−257(1989))。これによりRevはスプライシングとは独立に作用するという結論(B.フェルバーら(B.Felber et al.)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1495−1499(1989);M.マリムら(M.Malim etal.)Nature(London) 338:254−257(1989))とHIV−1 mRNA上にはスプライス部位以外の阻害/不安定性エレメントが存在するという提唱(C.ローゼンら(C.Rosen et al.)Proc.Natl.Acad.Sci.USA85:2071−2075(1988);M.ハッツポロークラダラスら(M.Hadzopoulou−Cladaras et al.)J.Virol.63:1265−1274(1989);B.フェルバーら(B.Felber et al.)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1495−1499(1989))が導かれる。
gag発現プラスミドの構築
プラスミドp17RはpNL17Rと記載されてきた(S.シュワルツら(S.Schwartz et al.)J.Virol.66:150−159(1992))。プラスミドp17はp17Rを制限酵素Asp718で消化し、再度ライゲーションすることにより作製した。この操作により3’LTRの上流にあたるヌクレオチド8021−8561に広がるRREとHIV−1配列が欠失した。p17gagの変異体を作製するため、p17gagコーディング配列を修飾したpBLUESCRIPTベクター(Stratagene社)にサブクローニングし、ウラシルを含んだ一本鎖DNAを産生した。部位特異的変異導入を記載されたとおり行った(T.クンケル(T.Kunkel)Proc.Natl.Acad.Sci.USA82:488−492(1985);S.シュワルツら(S.Schwartz et al.)Mol.Cell.Biol. 12:207−219(1992))。適当な変異を含んだクローンは、二重鎖DNAの塩基配列決定により選択した。p19Rを作製するには、まずプラスミドp17RをBssHIIとEcoRIで消化することによりp17gagのコーディング配列全体、すなわちp17gagAUGの6ヌクレオチド上流からp17gagの終止コドンの3’側のリンカー配列9ヌクレオチドまでを除いた。p17Rのp17gagコーディング配列を、PCR増幅したRSV p19gagコーディング配列を含んだDNA断片で置換した(R.ワイスら(R.Weiss et al.)RNA Tumor Viruses.Molecular Biology of Tumor Viruses(Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,New York,1985))。この断片はRSV gagのAUGの上流8ヌクレオチドとp19gagコーディング配列およびそれにすぐに続く翻訳終止コドンを含んでいる。RSV gag断片は感染性RSVプロウイルスクローンS−RA(R.ワイスら(R.Weiss et al.)RNA Tumor Viruses.Molecular Biology of Tumor Viruses(Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,New York,1985))に由来する。p19はp19Rからヌクレオチド8021−8561に広がるRREと3’HIV−1配列を含むようなAsp718断片を削除することにより作製した。
gag発現プラスミドによるHLtat細胞の形質転換
HLtat細胞(S.シュワルツら(S.Schwartz et al.)J.Virol.64:2519−2529(1990))の形質転換は、カルシウム共沈法(F.グラハムらとA.ファンデルエブ(F.Graham et al.and A.Van der Eb)Virology 52:456−460(1973))を用いて記載(B.フェルバーら(B.Felber et al.)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1495−1499(1989))のとおり行い、5μgのp17,p17R,p17M1234,p19またはp19Rを2μgのRev発現プラスミドpL3crev(B.フェルバーら(B.Felber et al.)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1495−1499(1989))の非存在下(−)または存在下(+)で用いた。形質転換時のDNA総量は、pUC19キャリアDNAを用いて60mmプレートあたり0.5ml中に17μgの沈澱物となるよう調整した。形質転換の20時間後細胞を集め、細胞抽出物を12.5%変性ポリアクリルアミドゲルで電気泳動にかけ、ヒトHIV−1患者血清(Scripps社)またはウサギ抗p19gag血清を用いた免疫ブロッティングにより解析した。pRSV−ルシフェラーゼ(J.デウェットら(J.de Wet et al.)Mol.Cell.Biol.:725−737(1987))はホタルのルシフェラーゼ遺伝子をRSV LTRプロモーターにつないだものを含んでいるが、これを形質転換の効率の対照実験の内部標準として用い、記載(L.ソロミンら(L.Solomin et al.)J.Virol. 64:6010−6017(1990))のとおり定量した。結果は図2に示した。
ノザンブロット解析
HLtat細胞を上述の記載どおり形質転換し、形質転換の20時間後に集めた。総RNAをヘパリン/DNase法(Z.クラウチックとC.ウ(Z.Krawczyk and C.Wu)Anal.Biochem.165:20−27(1987))により調製し、総RNAの20μgについて記載されたとおり(M.ハッツポロークラダラスら(M.Hadzopoulou−Cladaras et al.)J.Viro1.63:1265−1274(1989))ノザンブロット解析を行った。フィルターは、HIV−13’LTRのヌクレオチド8304−9008に広がるDNA断片をPCR増幅し、ニック翻訳したものに対しハイブリダイゼーションさせた。結果は図3に示した。
実施例2
HIV−1ENV遺伝子
env遺伝子断片をベクターp19あるいはp37M1234に挿入し、得られたプラスミドの発現をHLtat細胞に形質転換することによって分析した。いくつかの断片はたんぱく質発現を阻害することが見いだされた。同定された強力なINSのうち1つはヌクレオチド8206−8561(”断片[8206−8561]”)を含んでいる断片中にある。このINSを除去するために以下のオリゴヌクレオチドが合成され、上述に特定したような突然変異導入実験に使用した。断片はHXB2とほとんど同一の分子クローンpNL43由来である。本明細書中で使用されている番号付の体系は一貫して分子クローンHXB2の番号付けに従う。合成オリゴヌクレオチドはpNL43配列に従う。
断片[8206−8561]への突然変異導入に使用し、ヌクレオチド8210−8555間のenvコード領域中に変異を加えたオリゴヌクレオチド(小文字は突然変異を導入したヌクレオチドを示す)は:

mRNAおよびタンパク質両方の分析によって決定されたように、断片[8206−8561]中のINSを除去することによってenvの発現が増加した。
HIV−1env中のINSをさらに詳細に特徴付けるために、envコード領域を適切な合成オリゴヌクレオチドを用いてPCRによって作成した異なる断片に分離して、ベクターp37M1−10Dにクローン化した。このベクターは上述したようにさらに突然変異を導入することによってp37M1234より作成した。ヒト細胞に導入した後、ベクターp37M1−10Dは高レベルでp37gagタンパク質を生産した。どんな強力なINS要素をこのベクターに組換えてもgag発現を阻害しない。使用したenv断片のまとめは図11に示す。この実験の結果は、HIV−1 gagのように、HIV−1 env中に発現を抑制する多くの領域が存在し、このような領域が組合さることで相加的あるいは合成的な抑制が生じる。例えば、断片1、2、あるいは3は個々には発現を2−6倍抑制するが、これらの断片を組み合わせると発現を30倍抑制する。これらの結果に基づいてさらなる突然変異を導入したオリゴヌクレオチドがenv INSの抑制のために合成された。これらのオリゴヌクレオチドは以下に詳細に記述するように、Rev非依存性HIV−1 env発現プラスミドの改良のためにHIV−1 envのための発現ベクターp120pAおよびp120R270(図7参照)に導入された。
1.gp160および細胞外領域(gp120)に対するmRNAが欠如し
ていて、その発現はシスにRRE、トランスにRevの存在に依存する
1.1 HIVのenvmRNA発現の正及び負の決定因子
envを発現するcDNAの同定及び特徴付けのこれまでの実験によりEnvはエキソン4AE,4BE,あるいは5Eを含むmRNAより生産されることが実証された(Schwartzら.,J.Virol.64:5448−5456(1990);Schwartzら.,Mol.Cell.Biol.12:207−219(1992))。envの発現を決定するために作成したすべての構築物はpNL15E由来である。このプラスミドはHIV−1 LTRプロモーター、全長のenv cDNA15Eおよびポリアデニル化シグナルのあるHIV3’LTRを含む(Schwartz,ら.J.Virol.64:5448−5456(1990))(図7)。pNL15Eは分子クローンpNL4−3由来で(pNL4−3は本明細書中のpNL43と同一である)(Adachiら.,J.Virol.59:284−291(1986)、tev mRNAを生じるのに使用されるエキソン6Dのスプライス受容部位を欠いている(Benkoら.,J.Virol.64:2505−2518(1990))。Env発現プラスミドをRev発現プラスミドpL3crev(Felberら.,J.Virol.64:3734−3741(1991))の存在下あるいは非存在下にて構成的にTatを発現している(Tat1エキソン)HLtat細胞(Schwartzら.,J.Virol.64:2519−2529(1990))に形質転換した。1日後、細胞をRNAおよびタンパク質を分析するために集菌した。全RNAを抽出し、ノーザンブロット分析した。タンパク質産物は細胞と結合したEnvを検出するためにウエスタンブロットによって測定した。Revが存在しないと、NL15E mRNAは効率的にスプライスされて、Nefを産生し;Revが存在すると、ほとんどのRNAはスプライスされないままで、前駆体の分泌部分であるgp120およびgp41に加工されるEnv前駆体gp160を生産する。
INSの効果をスプライシングと区別して別々に研究するために、使用したいくつかの断片内に存在する既知のスプライス部位を以下に論じたように除去した。生産されるmRNAの大きさの決定を含めた生じた発現ベクターの分析により、スプライシングはデータの解釈に影響を与えないということが実証された。
1.2 Env発現は機能的なスプライス部位がなくてもRev依存性で
ある
env発現におけるスプライシングの影響を研究するために、nt5592のスプライス供与体を部位特異的突然変異導入によって(GCAGTAをGaAtTcに変化させ、EcoRI部位を導入した)除去し、その結果プラスミド15ESDを作成した(図7)。この構築物からのmRNAは効率的にスプライスされて、Nefをコードする小さなmRNAを生産した(図8)。配列分析によってスプライスされたmRNAはnt5605(TACATgtaatg)に位置する別のスプライス供与体およびnt7925の共通のスプライス受容位の利用によって生じたということが明らかになった。発表された仕事とは反して(Luら.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA87:7598−7602(1990))、この変異体からのEnv発現はRevに依存した。次に、スプライス受容位をnt7925に突然変異を導入した。先のcDNAクローニングによりnt7925のスプライス受容位に加えて、nt7897およびnt7901(Schwartzら.,J.Virol.64:2519−2529(1990))の2つのさらなるスプライス受容位があることが明らかにされたので、nt7884からnt7926に広がる43bpの領域を除去した。これでp15EDSSが生じた(図7)。この構築物で形質転換したHLtat細胞からのmRNAをノーザンブロット分析したところ、15EDSSmRNAはスプライスされないことが確証された(図8B)。すべての機能的なスプライス部位をp15EDSSから除去したにもかかわらず、RevはEnv産物にいまだ必要である(図8A)。gag発現の研究により得られたデータと併せると、これらの結果は非効率的に使用されるスプライス部位の存在はRev依存的Env発現の第一決定因子ではないことが示唆される。少なくとも2つの使用されないスプライス部位がこのmRNA中に存在することが知られている(nt5605の選択的スプライス供与体およびnt6269エキソン6Dのスプライス受容位)。それゆえ、スプライシングを遂行しない初期のスプライソソーム形成がおこりうる可能性は除外できない。これはmRNAが核の中にとどまるのに十分で、スプライシングが起こらないためmRNAの分解を導く可能性がある。あるいは、gag/pol領域内の同定されたもの(INS)と同様のスプライス部位非依存性RNA要素がRev依存性に重要である可能性がある(Schwartzら.,J.Virol.66:7176−7182(1992);Schwartzら.,J.Virol.66:150−159(1992))。
1.3 gp120mRNA内の負因子の同定
これらの可能性を区別するために、このようなINS要素の位置を決定できるように様々な構築物を設計した。まず始めにNruIおよびMluIの制限酵素部位を伴う停止コドンをプラスミドNL15EDSS上のnt7301の細胞外gp120および膜貫通タンパク質gp41のあいだの切断部位に導入し、p120DSS(図7)を作成した。p120DSSで形質転換した細胞の培地からのgp120の免疫沈降によりRev存在下でのみgp120が高レベルで生産されることを確証した(図9B)。細胞に付着して残っている量はごくわずかに検出できる程度なので、gp120の放出はとても効率的である(データは示さない)。この発見により、env cDNAのgp41部分の翻訳はenv発現の失陥に関与する可能性が否定される。次に、gp120の3’領域の終止コドン(RREおよび3’LTRを含むgp41を含む)をSV40ポリアデニル化シグナルで(図7)置き換えた。この構築物p120pAは、Rev非存在下でgp120をとても低いレベルで生産した(図9B)。Envの背景のレベルはRREを含むgp41の5’部分(MluIからnt8200のHpaI)(図9B)を除去することによってpBS120DSSから作成したp120DR(図7)より測定した。これらの結果はgp120部位内に主要なINS様配列が存在することを示す。このmRNAに対するRevの効果を研究するために、異なるRRE(RRE330,RRE270,およびRRED345(Solominら.,J.Viril.64:6010−6017(1990))をp120pAのgp120終止コドンの下流に挿入してそれぞれp120R330,p120R270,およびp120RD345を作成した(図7)。免疫沈降により、トランスにRevおよびシスにRREが存在するとgp120を発現するプラスミドの欠損を補うことができることが示された。高レベルのgp120がRev存在下でp120R330(データは示さない)、p120R270,およびp120RD345(図9B)より生産された。
ノーザンブロット解析により(図8A)タンパク質におけるデータが確証された。Revが存在するとpBS120DSS,p120R270,およびp120RD345によって生産された高レベルのmRNAが蓄積した。低いが検出できる程度のRNAはp120DpAおよびp120DRより生産された。
2.2つの戦略を用いたenvmRNA領域内に位置するINS要素の同定
in vivoで抑制制御効果を持つ要素を同定するために、env cDNA断片を2つの異なる試験発現ベクターp19およびp37M1−10Dに挿入した。これらのベクターは、遺伝子産物の迅速な検出のための強力なプロモーター(例えば、Tat存在下のHIV−1LTR)および高レベルで発現して、測定が容易である指標遺伝子(例えば、どちらも既知のINS様要素を含んでいないRSVのp19gagあるいはHIV−1(p37M1−10D)の突然変異の入ったp37gag遺伝子)を含む。発現ベクターp19はHIV−1LTRプロモーター、RSVp19gag基質遺伝子、および完全な3’LTRを含むKpnI(nt8561)で始まるHIV−1配列(Schwartz,ら.,J.Virol.66:7176−7182(1992))を含む。HLtat細胞に形質転換すると高レベルのp19gagが構成的に生産され、ウエスタンブロットで視覚化された。発現ベクターp37M1−10DはHIV−1LTRプロモーター、突然変異の入ったp37gag(M1−10)、およびKpnI(nt8561)で始まるウイルスの3’部分を含む。HLtat細胞に形質転換するとこのプラスミドはHIV−1p24gag抗原捕捉測定によって定量できるp37gagを構成的に生産する。
2.1 RSV gag発現ベクターを用いたINS要素の同定
gp41およびgp120部分内のINS要素が同定された。この末端にベクターp19が使用され、以下の断片(図10)が挿入された:(A)nt7684から7959;(B)nt7684から7884およびnt7927から7959;これは断片Aと同様であるがスプライス受容部位7A,7Bおよび7の領域が欠失している;(C)nt7595から7884およびnt7927から7959でBのようにスプライス部位が欠失している;(D)nt7939から8066;(E)nt7939から8416;(F)nt8200から8561(HpaI−KpnI);(G)もとのままのRREを含むnt7266から7595;(H)スプライス供与部位SD5が欠失しているnt5523から6190
断片A,B,およびDはGag発現に影響をおよぼさなかったが、断片G(RRE)はgag発現が約5倍減少した。断片C,E,およびHはGag発現を約10−20倍下げ、INS要素の存在を示唆した。
興味深いことに、プラスミドp19中の350bpにおよぶ断片Fの挿入はGag生産を阻害することが観察され、この要素内の強力なINSの存在を示唆した。シスにRREおよびトランスにRevが存在することはRSVp19gagの高レベルの生産を生じる。断片FはまたHIV−1(p17M1234)のINSを修正した(INS−corrected)p17gagの発現にわずかに抑制制御効果を持つ。これらの実験によりp19gag発現を阻害するenv mRNA内に位置する多くの要素の存在が明らかになった。
2.2 断片F内のINSの除去
Envのアミノ酸組成に影響を与えずにこの330nt領域内に103の点突然変異を導入した6つの合成オリゴヌクレオチド(表3)を作成した。INS要素が破壊されたことを証明するために、変異を導入した断片Fをp19で試験した。オリゴ#1内への変異の導入はp19gag発現に影響を与えるには不十分だった一方、すべてのオリゴ(#1から#6)が存在すると断片FのINS効果を完全に不活性化した。これは、INS効果を除去するためにはINS要素内の1つ以上の領域を突然変異を導入する必要があるという別の例である。
このINS要素がtat,revおよびnefのような多重にスプライスされたRev非依存性mRNAすべてに存在することは注目に値する。tatcDNAからこの断片を除去することによって小さなmRNA内の断片Fの機能を決定するための実験を行った。このmRNAに関連して、この要素は弱いINS効果(3−5倍の阻害)しか与えないことから、env mRNA中の発現阻害は少なくとも2つの離れた要素の存在が必要であることが示唆される。これらの結果はenv内のINS効果は多くの相互作用する成分に基づくということが示唆される。あるいは、多様なINS成分間の相対的な位置および相互作用がINS効果の大きさに重要であるかも知れない。それゆえ、異なるベクター中の1つ以上の型の解析がINSの同定及び除去に必要であるかも知れない。
2.3 p37M1−10D発現ベクターを用いたINS要素の同定
envコード領域を異なる連続した断片に分離した。これらの断片およびそれらの組合せを図11に示したようなオリゴを用いてPCRで増幅し、p37M1−10D中の突然変異の導入されたp37gag遺伝子の下流に挿入した。プラスミドをHLtat細胞に形質転換し、翌日に集菌してp24gag発現を解析した。図11は、1+2+3の組合せおよび断片2、3、5の存在は実質的にgag発現を低下させることを示す。Envのアミノ酸組成を変化させずにヌクレオチドを変化させることによってenvコード領域内に位置する3つのAATAAA要素を含むATリッチなドメインを変化させる異なるオリゴ(表4)を合成した。第一のアプローチで、これらのオリゴ1−19を停止点とともにプラスミドp120R270中に導入し、あるいはRev非依存的な方法でgp120を生産する。それからオリゴ20−26のようなオリゴヌクレオチドを2つのenv部位が結合したgp41部位に導入し、完全なgp160はRev非依存的な方法で発現する。
実施例3
原癌遺伝子C−FOS
fos遺伝子断片をp19ベクターに挿入して、作成したプラスミドの発現をHLtat細胞中に形質転換して解析した。いくつかの断片がタンパク質発現を阻害することが見いだされた。強力なINSがヌクレオチド3328−3450(”断片[3328−3450]”)を含む断片中に同定された(fos遺伝子のヌクレオチドはGenebankシーケンスエントリーHUMCFOT,ACCESSION#V01512に従って数えられている)。さらに、少し弱い要素がコード領域中に同定された。
これらのINSを除去するために以下のオリゴヌクレオチドを合成し、上述に特定したような突然変異を導入する実験に使用した。
fosをコードしない領域中のINSを除去するために、ヌクレオチド[3328−3450]間のfosをコードしない領域中を変化させた以下のオリゴヌクレオチド(小文字は突然変異の入ったヌクレオチドを示す)を合成し、断片[3328−3450]に突然変異を導入するために使用した:突然変異を導入する実験は上述に特定する:

これらのオリゴヌクレオチドはベクターp19,p17M1234あるいはp37M1234中に挿入されたfos断片[3328−3450]に突然変異を導入するために使用され、作成したプラスミドの発現はHLtat細胞に形質転換した後に解析する。
fos発現はこのINS領域の除去によって増加することが期待される。
コード領域中のINS要素をさらに特定し除去するために、fosのさらに長い領域をベクターp37M1234中に導入する。コード領域中のINS要素はこの発現ベクターを使用してまずより正確に位置づけされ、それから以下のオリゴヌクレオチドを用いて訂正する:

fos発現はこのINS領域の除去によって増加することが期待された。
実施例4
HIV−1 POL遺伝子
AW Cochraneら.,”ヒト免疫不全ウイルス構造遺伝子発現を抑制する遺伝子内配列の同定および特徴付け”,J.Virol.65:5305−5313(1991)によって特徴付けられたHIV−1のpol遺伝子から阻害/不安定配列を除去するためにベクターp37M1234が使用された。これらの研究者はCRSと名付けたpol中の領域(HIVヌクレオチド3792−4052)が阻害に重要であるということを示唆した。ヌクレオチド3700−4194を含むこの領域よりも大きい断片をベクターp37M1234中に挿入し、作成したプラスミド(プラスミドp37M1234RCRS)(図12参照)からのp37gag発現の効果をHLtat細胞に形質転換した後に分析した。
gag発現の強い阻害(10倍、図13を参照)が観察された。
このINSを除去するために、以下のオリゴヌクレオチドを合成し(小文字は変異を導入したヌクレオチドを示す)、突然変異を導入する実験に使用した。
まず、1つのAUUUA潜在的不安定要素がINS領域内にあることが観察された。これをオリゴヌクレオチドM10polを用いて変異を導入することによって除去し、プラスミドp37M1234RCRSP10を作成した。このプラスミドからのgag発現は増加せず、AUUUA要素の除去のみではINSを除去したことにならないことを示した。図12参照。それゆえ、さらなる変異導入が行われ、CRSを欠くプラスミドと同様のプラスミドp37M1234RCRS中に導入された変異の組合せがgagタンパク質の高レベルの生産に必要で十分であることが示された。INSの除去に必要な変異は図13に示す。
上述の結果によりHIV−1polは記述した技術で検出及び除去可能なINS要素を含むことが示された。
これらの結果はまたA.W.Cochraneら.,上述、によって定義されたCRS中の最小阻害領域の外側の領域が発現レベルに影響を及ぼすことを示唆する。これらの結果は領域のRNA構造が発現阻害に重要であることを示唆する。
【表1】

【表2】





【表3】

【表4】




注釈:
オリゴヌクレオチドの大部分はHXB2配列に従ったが、いくつか例外がある:
オリゴM15ではnt6807はpNL43配列に従う。(具体的には、nt6807はNL43ではCであるが、HXB2ではAである。)オリゴM26はpNL43由来のヌクレオチド配列を持つ。
実施例5
免疫予防措置あるいは免疫治療における
P37M1−10DあるいはP55M1−13POの使用
出生後の遺伝子治療において、身体から標的細胞を除去して、それらに新しい遺伝情報を持ったウイルスのベクターを感染し、それからそれらを身体中に再び移植するといった間接的な方法で;あるいはリポソーム中に処方したDNAをカプセル化する;ウイルス外殻受容タンパク質を含むプロテオリポソームにDNAを封入する;DNAをリン酸カルシウム共沈する;およびポリリジン糖タンパク質担体複合体にDNAを結合させるといった直接的な方法で新しい遺伝情報が組織中に導入されている。さらに、リン酸カルシウム共沈の形成いかんにかかわらず、直接的な肝臓内注入後のクローン化したDNA配列のin vivoにおける感染性についても記述されている。安定性を増強する要素を含むmRNAもまた正に荷電した脂肪小胞の使用でアフリカツメガエル(Xenopus laevis)胚中で効率的に転写されることが示された。例えば、J.A.Wolff,ら.,Science 247:1465−1468(1990)およびその文献中に引用された参考文献を参照。
最近、純粋なRNAあるいはDNAを骨格筋に直接注入すると、筋細胞内で著しい遺伝子発現がおこることが示された。J.A.Wolff,ら.,Science 247:1465−1468(1990)。粒子加速法(particle−acceleration)(N.S.Yang,ら.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:9568−9572(1990);S.R.Williamsら.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:2726−2730(1991))あるいはウイルス形質転換のような他の手段によって筋細胞にRNAあるいはDNAを強制的に導入してもまたDNAあるいはRNAは安定に保持され、発現される。Wolffらで報告された実験中では、RNAあるいはDNAベクターがマウス骨格筋細胞中、特に大腿四頭筋中でレポーター遺伝子を発現するために使用された。タンパク質発現が容易に検出され、特別な輸送体系はこれらの効果に必要なかった。記述した手順の注入液体の組成および量並びに注入方法を改変した場合にもポリヌクレオチドの発現が得られた。例えば、レポーター酵素活性は10から100μlの低張、等張、および高張ショ糖溶液、Opti−MEM,あるいは2mM CaClを含むショ糖溶液で観察され、また、10−から100−μl注入を1分以内ではなく圧縮器で20分以上かけて注入を行ったときに観察された。
レポーター遺伝子によってコードされるタンパク質の酵素活性はまたRNAあるいはDNAベクターを注入した腹筋中にも検出されたことから、他の筋もポリヌクレオチドを取り込み、発現できることを示唆された。RNAおよびDNAベクターを注入した他の組織中(肝臓、すい臓、皮膚、肺、脳および血液)にも低い量のレポーター酵素が検出された。筋中に注入されたプラスミドDNAはヒト以外の霊長類の筋中でも安定に発現されることが示された。S.Jiaoら.,Hum.Gene Therapy 3:21−33(1992)。
ヒト筋内in situに直接遺伝子を送り込めることは、臨床への適用の可能性が有ることを示唆する。筋は、筋が病気に主に関与している場合に加え、そうでない場合にも病気の状態を変化しうる外来遺伝子のヘテロな発現に適切な可能性を有する組織である。例えば、筋組織は免疫可能で血液中に分泌され、あるいは循環する毒物代謝物をきれいにするヘテロなタンパク質の発現に使用することが可能であろう。繰り返しアクセスできるRNAおよび組織の使用は、従来の薬剤的処置のように与えられて可逆な型の遺伝子転位に有用であるかもしれない。J.A.Wolff,ら.,Science247:1465−1468(1990)およびS.Jiaoら.,Hum.Gene Therapy 3:21−33(1992)。
J.A.Wolffら.,上述、によって、抗原をコードする遺伝子の細胞内発現はワクチン改良発への新たなアプローチを供給しうることが提唱された。この仮定はインフルエンザA核タンパク質をコードしているプラスミドDNAをBALB/c マウス大腿四頭筋内に注入すると、インフルエンザA核タンパク質特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)が生じてウイルス肺力価の減少、体重減少の阻害、および生存上昇によってによって示されたように、続いておきるインフルエンザAウイルスのヘテロな株の攻撃から保護される結果となるという最近の報告によって支持された。J.B.Ulmerら.,Science 259:1745−1749(1993)。
従って、抗原を細胞内発現して自己複製試薬またはアジュバントの必要なしに免疫系への提示のためのウイルス抗原を生産するために、ウイルス抗原をコードしているRNAまたはDNAベクターの直接的な注入を使用することができ、その結果、抗原特異的なCTLが生産され、そして、続いて起こるウイルスのホモあるいはヘテロな株の攻撃から防御される。
マウスおよびヒトの両CTLは保存された内部ウイルスタンパク質由来のエピトープを認識することができ、ウイルスに対する免疫反応に重要であると思われている。保存されたウイルスのタンパク質のエピトープを認識することによって、CTLは株間の防御を提供するかもしれない。保存されたウイルス抗原に特異的なCTLは、一般に株特異的な抗体とは逆に、異なるウイルス株にも反応することができる。
このように、ウイルス抗原をコードするRNAあるいはDNAの直接注入は、直接のペプチド移入あるいはウイルスベクターに関する制限がないという利点がある。(J.A.Ulmerら.,上述、および該文献中の「考察」の項及び参考文献を参照。)さらに、DNA注入後発現されるタンパク質に対し高力価の抗体が生産されることは、保存された抗原を標的としたCTLワクチンと別々あるいは一緒に、保存されたあるいは保存されていない抗原を標的とした抗体ベースのワクチンを作成する容易で効率的な手段である可能性を示唆する。これらはまた伝統的なペプチドワクチンと共に使用して、組合せワクチンの生成に使用できるかもしれない。さらに、DNA注入後タンパク質発現が維持されることから、BおよびT細胞の記憶維持は強化されており、それによって長期的な体液性および細胞性免疫を引き起こす。
1.HIV−1に対する免疫予防措置あるいは免疫療法のためのベクター
ベクターp37M1−10Dあるいはp55M1−1PO(図6)中の突然変異を導入したgagゲノム配列をCMVあるいはRSVのような強力な構成的プロモーターあるいはHIV−1のような誘導可能なプロモーターを用いた発現ベクター中に挿入する。
ベクターはヒト組織への直接的なDNAの注入;ヒトの初代培養細胞へのDNAのエレクトロポレーションあるいは形質転換(exvivo)、望ましい形質の細胞の選別、およびそのような細胞の身体への再導入(上述の選別はあらかじめ選別した適切なゲノム領域への導入したDNAの相同的組換えでよい);gag遺伝子を含む感染性できる小胞の生成、exvivoでの細胞への感染およびそのような細胞の身体への再導入;あるいは上述の小胞によるin vivoの直接の感染のようないくつかの技術の一つを使用して薬剤的に受容可能なキャリヤーを用いて動物あるいはヒト中に導入する。
免疫系への有効な刺激を生じる、実質的なレベルのタンパク質が生成されるであろう。
発明の別の態様では、記述した構築物を修飾し、ウイルス小胞形成に参与できないように突然変異を導入したgagタンパク質を発現させる。このようなgagタンパク質は野生型のgagタンパク質と同定度免疫体系を刺激するが、HIV−1生産の増加には関与できないと期待される。この修飾は免疫療法および免疫予防措置において安全なベクターとなる。
実施例6
トランス優性(TD)−TD−GAG−TDまたは
TD GAG−PRO−TD REV遺伝子を用いたHIV−1発現の阻害
DNAの直接注入あるいはレトロウイルスベクター以外のベクターの使用は細胞中でトランスに優性なgag(TDgag)を構成的に高レベルに保つ。さらに、B.K.Felberら.,Science 239:184−187(1988)によって採用されたアプローチによって例えばレトロウイルスベクターによるヒト細胞への感染を干渉しないHIV−1TDgagをコードしたマウス由来のレトロウイルスベクターのようなレトロウイルスベクターの作成が可能になった。Felberら.,上述、のアプローチにおいて、プロモーターおよびポリAシグナルの一部を含むHIV−1LTR断片はマウスレトロウイルスベクター内で有害な効果無しに組み込まれ、転写されないままでいることが示された。Tatタンパク質の存在によりHIV−1LTRからの転写が刺激され、HIV−1LTRに結合した遺伝子の高レベルでの発現が生じた。
ハイブリッドTDgag−TDRevあるいはTDgag−pro−TDRev遺伝子の作成及びヒト細胞への発現ベクターの導入によってHIV−1発現を阻害する2つのタンパク質の効率的な生産が可能になる。同一のベクター中に2つのTD部分を組み込むとウイルス複製において各々の効果が増幅されると期待される。B.K.Felberら.,上述、中に記載されたうちの1つと同様の方法によるHIV−1プロモーターの使用によって、感染細胞中の高レベルのgagおよびrev発現が可能になる。感染させないと、発現は実質的に低くなる。または、他の強力なプロモーターの使用によってこのようなタンパク質の構成的な発現が可能になる。このアプローチは感染可能なウイルスの生産にかかわることができないが、実際にこのような生産に対して反対に作用する、高度に免疫原となるgagの生産のため非常に有用である。これはAIDSに対する効率的な免疫予防措置あるいは免疫療法的なアプローチとして使用可能である。
トランス優性突然変異の例はTronoら.,Cell 59:112−129(1989)中に記載されている。
1.トランス優性gag突然変異タンパク質をコードする構築物の作成
例えばTronoら.,上述、中に記載されたようなトランス優性として作用するgag突然変異タンパク質は、トランス優性gagタンパク質を高度に構成的レベルで生産する修飾したベクターp37M1−10Dあるいはp55M1−13POによって作成する。
トランス優性gagタンパク質は免疫体系を刺激し、感染性ウイルスの生産を阻害するが、感染性ウイルスの生産に貢献しない。
このアプローチのさらなる安全性によってヒトへの応用がより可能になるであろう。
当業者は阻害/不安定配列を含むmRNAをコードしているいかなる遺伝子も本発明に例示した方法あるいは機能的に等価なものに従って改変できることを認識するだろう。
本発明を行うための上記に記載した方法の改変は、遺伝子工学、タンパク化学、薬学、および関連分野の当業者にとって明白であり、以下の請求項の範囲内で行われる。
本明細書中に記載された参考文献はいずれも本明細書中に完全に参考文献として組み入れられた。
【図面の簡単な説明】
【図1−1】 図1(A)は、HIV−1ゲノムの構造である。ボックスは異なるウィルス遺伝子を示す。図1(B)はgag発現プラスミドの構造である。
【図1−2】 図1(C)は、gagINSを同定、およびさらに変異導入するための発現ベクターの構築法である。
【図2】 図2は、種々のベクターからのgag発現を示す。
【図3】 図3は、ノザンブロットでのmRNA分析を示す。
【図4】 図4は、HIV−1 p17 gag領域のヌクレオチド配列を示す。
【図5】 図5は、種々の変異体によるgag発現を示す。
【図6】 図6は、gag領域ちゅの付加的なINSエレメントの同定および排除に使われる発現ベクターを示す。
【図7】 図7は、env発現を研究するのに使われる真核細胞発現プラスミドを示す。
【図8】 図8は、env発現は機能的なスプライス部位がないとRev依存性であることを示す。
【図9−1】 図9は、gp120発現プラスミドからのEnv産生を示す。図9Aは、全RNAを抽出しノザンブロット分析した結果を示す。
【図9−2】 図9は、gp120発現プラスミドからのEnv産生を示す。図9Bは、タンパク質生産について分析した結果を示す。
【図10】 図10は、p19(RSV gag)試験系を用いたgp120およびgp41内のINSエレメントの同定を示す。
【図11】 図11は、p37M1−10D(変異INS p37gag発現系)試験系を用いたgp120およびgp41内のINSエレメントの同定を示す。
【図12】 図12は、pol領域のCRSのネガティブ効果の排除を示す。
【図13】 図13は、pol領域(ヌクレオチド3700〜4194)のCRSのネガティブ効果を排除する点変異群を示す。
【図14−1】 図14は、効率のよいgag発現ベクターp37M1−10Dのプラスミドマップ(図14A)およびヌクレオチド配列(図14B)を示す。
【図14−2】 図14は、効率のよいgag発現ベクターp37M1−10Dのプラスミドマップ(図14A)およびヌクレオチド配列(図14B)を示す。
【図14−3】 図14は、効率のよいgag発現ベクターp37M1−10Dのプラスミドマップ(図14A)およびヌクレオチド配列(図14B)を示す。
【図14−4】 図14は、効率のよいgag発現ベクターp37M1−10Dのプラスミドマップ(図14A)およびヌクレオチド配列(図14B)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)mRNAをコードする遺伝子を提供し;
(b)上述のmRNAコード領域内の阻害/不安定配列をコードする上述の遺伝子内の阻害/不安定配列を同定し;
(c)多重点突然変異を作成することにより上述の遺伝子内の上述の阻害/不安定配列へ突然変異を導入し;
(d)上述の突然変異を導入した遺伝子を細胞へ形質導入し;
(e)上述の突然変異を導入した遺伝子の発現を起こすように上述の細胞を培養し;
(f)mRNAコード領域内の上述の阻害/不安定配列の効果が減少したか決定するために上述の遺伝子の発現レベルを検出する;
工程を含む、上述のmRNAコード領域内の阻害/不安定配列の効果を減少させる方法。
【請求項2】
(g)上述の突然変異を導入した遺伝子を含む発現ベクターで形質導入した宿主細胞を提供し;
(h)ポリペプチドの発現を起こすために上述の宿主細胞を培養し;そして
(i)上述のポリペプチドを回収する;
工程をさらに含む、請求項1の方法。
【請求項3】
上述の形質導入工程の前に上述の突然変異を導入した遺伝子をレポーター遺伝子へ融合させる工程をさらに含み、そして上述の検出工程が上述のレポーター遺伝子の発現レベルを検出することにより行われる、請求項1または2の方法。
【請求項4】
工程(b)が、
(b1)レポーター遺伝子に上述の遺伝子または上述の遺伝子の断片を融合させ、融合遺伝子を作成し;
(b2)上述の融合遺伝子を細胞中へ形質導入し;
(b3)上述の融合遺伝子の発現を起こすように上述の細胞を培養し;
(b4)上述の融合遺伝子の発現が上述のレポーター遺伝子の発現に比較して減少するかどうかを決定するために、上述の融合遺伝子の発現レベルを検出する;
工程をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項の方法。
【請求項5】
工程(a)が上述のレポーター遺伝子の終止コドンの3’側に上述の遺伝子または上述の遺伝子の断片を融合することを含む、請求項3または4の方法。
【請求項6】
工程(a)が上述のレポーター遺伝子のコード領域の3’末端に読み枠を合わせて上述の遺伝子あるいは上述の遺伝子の断片を融合させることを含む、請求項3または4の方法。
【請求項7】
上述の突然変異導入工程が、mRNAによりコードされるアミノ酸配列は変化させずにコドンを変化させる、請求項1〜6のいずれか一項の方法。
【請求項8】
上述の阻害/不安定配列がATリッチであり、そして上述の突然変異導入工程がGまたはCをAまたはTへ置換することを含み、そして上述の突然変異を導入した阻害配列の最終ヌクレオチド組成が約50%のAおよびTおよび約50%のGおよびCである、請求項7の方法。
【請求項9】
点突然変異の少なくとも75%は保存されたヌクレオチドを非保存ヌクレオチドに置換するものである、請求項7または8の方法。
【請求項10】
上述の突然変異導入工程があまり好ましくないコドンをより好ましいコドンへ置換することを含む、請求項7または8の方法。
【請求項11】
上述のmRNAがRev依存性複合体(complex)レトロウィルスのGAGタンパク質をコードする、請求項1〜10のいずれか一項の方法。
【請求項12】
Rev依存性複合体レトロウィルスがヒト免疫不全ウィルス−1である、請求項11の方法。
【請求項13】
(a)阻害/不安定配列の効果を減少させるようにコード領域内で多重点突然変異を作成することにより突然変異を導入した、ポリペプチドをコードする遺伝子を含有する発現ベクターで形質導入した宿主細胞を提供し、
(b)上述のポリペプチドの発現を起こすように上述の宿主細胞を培養し;そして
(c)上述のポリペプチドを回収する;
工程を含む、本来の生産が阻害/不安定配列の存在により妨げられている、ポリペプチドを生産する方法。
【請求項14】
上述の宿主細胞が原核生物である、請求項13の方法。
【請求項15】
上述の宿主細胞が真核生物である、請求項13の方法。
【請求項16】
上述の遺伝子cDNAである、請求項13、14または15の方法。
【請求項17】
上述の遺伝子がゲノムである、請求項13、14または15の方法。
【請求項18】
遺伝子を含む人工核酸構築物であって、その本来の遺伝子の発現が当該遺伝子によってコードされるmRNA中の阻害/不安定配列の存在により妨げられ、かつ当該遺伝子が阻害/不安定配列の効果を減少するようにその遺伝子のコード領域内に多重点突然変異を起こすことにより突然変異を導入されている、前記人工核酸構築物。
【請求項19】
上述の突然変異を導入した遺伝子によりコードされるアミノ酸配列が、本来の遺伝子によりコードされるアミノ酸配列と同一である、請求項18の構築物。
【請求項20】
上述の本来の遺伝子がHIV−1 gagである、請求項19の構築物。
【請求項21】
上述のHIV−1 gag遺伝子のヌクレオチド402および452の間、536および583の間、585および634の間、そして654および703の間に多重点突然変異を導入することによって突然変異を導入した、請求項20の構築物。
【請求項22】
上述の本来の遺伝子が、HIV−1 envである、請求項18の構築物。
【請求項23】
(a)請求項20または21の核酸構築物;および
(b)上述の核酸構築物中の上述の遺伝子の発現レベルを検出するための検出システム;を含んでなる、mRNA中の阻害/不安定配列を同定するためのアッセイキット。
【請求項24】
上述の検出システムがELISAである、請求項23のキット。
【請求項25】
請求項18〜22のいずれか一項の核酸構築物を含むベクター。
【請求項26】
請求項18〜22のいずれか一項の人工核酸構築物または請求項25のベクターを含む、形質転換宿主細胞。
【請求項27】
上述の細胞が真核細胞および原核細胞からなる群から選択される、請求項26の形質転換宿主細胞。
【請求項28】
上述の細胞がヒト細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞またはE.coliである、請求項27の宿主細胞。
【請求項29】
上述の本来の遺伝子がHIV−1 gagである、請求項18の構築物。
【請求項30】
上述の本来の遺伝子がHIV−1 polである、請求項18の構築物。
【請求項31】
上述の本来の遺伝子と比較して、請求項20、21または29の核酸構築物中に含まれる上述の突然変異を導入した遺伝子により生産されるタンパク質の発現を可能にし、またはそのタンパク質の量を増加させるための、請求項20、21または29のいずれか1項の核酸構築物、および媒体、を含む組成物。
【請求項32】
上述の本来の遺伝子と比較して、請求項22の核酸構築物中に含まれる上述の突然変異を導入した遺伝子により生産されるタンパク質の発現を可能にし、またはそのタンパク質の量を増加させるための、請求項22の核酸構築物、および媒体、を含む組成物。
【請求項33】
上述の本来の遺伝子と比較して、請求項30の核酸構築物中に含まれる上述の突然変異を導入した遺伝子により生産されるタンパク質の発現を可能にし、またはそのタンパク質の量を増加させるための、請求項30の核酸構築物、および媒体、を含む組成物。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14−1】
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【図14−2】
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【図14−3】
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【図14−4】
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【公開番号】特開2007−209345(P2007−209345A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−75534(P2007−75534)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【分割の表示】特願平5−517595の分割
【原出願日】平成5年3月29日(1993.3.29)
【出願人】(502006782)アメリカ合衆国 (47)
【Fターム(参考)】