説明

mRNACAP類似体

ボラノホスフェート基またはホスホロセレノエート基で異なるリン酸塩位置を修飾したジヌクレオチドキャップ類似体が開示される。類似体はキャップ化mRNAの調製における試薬として有用であり、インビトロとインビボの両方で安定性が増加している。かかる類似体はキャップ依存性翻訳の阻害剤として使用され得る。任意選択で、ボラノホスフェートまたはホスホロセレノエート基は2’−Oまたは3’−Oアルキル基、好ましくはメチル基を有し、BH3−ARCAまたはSe−ARCAと呼ばれる類似体を生成
する。ARCAはα−、β−、またはγ−ボラノホスフェートまたはホスホロセレノエート基で修飾され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なジヌクレオチドキャップ類似体およびその使用方法、かかる類似体を含むRNA分子、RNA合成におけるかかる類似体の使用方法、ペプチドおよびタンパク質の合成におけるかかる類似体の使用方法、翻訳を阻害するためのかかる類似体の使用方法、および他の使用方法に関する。
【0002】
本発明の開発は、米国国立衛生研究所(NIH)の米国国立一般医学研究所(NIGMS)により授与された承認番号R01GM20818の下、米国政府により部分的に資金提供されている。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
本発明の開発は、米国国立科学支援プロジェクト2008−2010により授与された承認番号PBZ−MNiSW−07/I/2007の下、ポーランド政府により部分的に資金提供されている。
【背景技術】
【0004】
リボ核酸(RNA)はヌクレオチドの一本鎖の直線状の重合体である。各ヌクレオチド単位は窒素塩基、リボース糖、およびリン酸基を有している。RNA分子にはいくつかのタイプがある。メッセンジャーRNA(mRNA)分子は、そのヌクレオチド配列がタンパク質のアミノ酸組成を決定するRNA分子である。真核生物では、大半のmRNAの5’末端がブロック、すなわち修飾グアニンヌクレオチドで「キャップ」されている。キャップは2つのヌクレオシド間の5’−5’三リン酸結合およびRNA重合体鎖より先端側のグアニン環上の7−メチル基を含む。いくつかの他の形式のRNA、例えば核内低分子RNA(snRNA)もキャップされている。RNAのキャップ形成は、RNAの安定性および翻訳効率を含めて細胞内の分子活性を調節する。
【0005】
インビトロでキャップ化RNA分子を合成する能力は、それによって種々の生物学的用途で適切に機能するRNA分子の調製を可能にするため、有用である。そのような用途は、研究用途およびポリペプチドの商業的生産の両方を含み、それには例えば特定部位に「非天然」アミノ酸を含む無細胞翻訳系でのポリペプチドの生産または活性または安定のために翻訳後修飾を必要とする培養細胞でのポリペプチドの生産が含まれる。キャップ化RNA分子はより安定しており、細胞の翻訳機により容易に結合するため、キャップ化RNAの翻訳は非キャップ化RNAの場合よりもかなり長時間進行し、タンパク質がより多く生産される。
【0006】
インビトロでキャップ化RNAを製造するための最もよく使用される方法は、4つすべてのリボヌクレオシド三リン酸とm7G(5’)ppp(5’)G(m7GpppGとも称される)のようなキャップジヌクレオチドの存在下でバクテリアまたはバクテリオファージRNAポリメラーゼのいずれかでDNA鋳型を転写することである。RNAポリメラーゼは、次の鋳型とされるヌクレオシド三リン酸のα−リン酸に対するm7GpppGのG
uo部分の3’−OHによる求核攻撃で転写を開始し、その結果中間体m7GpppGp
Nが生じる。競争するGTP開始生成物pppGpNの生成は、転写反応混合物中のm7
GpppG対GTPの分子比を5−10の間に設定することにより抑制される。m7Gp
ppGにより生産された5’−キャップ化mRNAは、正しい順方向に組み込まれたキャップ類似体を含むもの[m7G(5’)ppp(5’)GpNp…]と、逆方向の類似体
を含むもの[G’(5’)ppp(5’)m7GpNp…]との2つの形式のいずれかを
とる可能性がある。後者は細胞翻訳機にキャップ化mRNAと認められず、合成mRNA調製の翻訳効率を減少させる。この問題は、m7GuoのC2’位置またはC3’位置に
O−メチルまたはデオキシ修飾をしているキャップ類似体の使用により回避することが可能である。非特許文献1および2を参照されたい。これらのキャップ類似体はもっぱら順方向でRNA転写物に組み込まれ、したがって、「反逆方向キャップ類似体」(ARCA)と呼ばれる。ウサギ網状赤血球溶解液(RRL)翻訳系では、ARCAキャップ化mRNAは、m7GpppGでキャップされた転写物よりも2倍高い翻訳効率を有していた(
非特許文献1)。培養哺乳動物細胞では、ARCAキャップ化mRNAはm7GpppG
でキャップされたものより2〜2.5倍効率的良く翻訳された。非特許文献3を参照されたい。
【0007】
培養哺乳動物細胞へ導入された合成mRNAから生産されるタンパク質の量は、mRNAの自然な分解により制限される。mRNA分解の1つのインビボ経路はmRNAキャップが外れることから始まる。この取り外しは、調節サブユニット(Dcp1)と触媒サブユニット(Dcp2)を含むヘテロダイマーのピロホスファターゼにより触媒される。触媒サブユニットは、三リン酸架橋のαリン酸基とβリン酸基の間を開裂させる。
【0008】
非特許文献3は、メチレン基がαリン酸基とβリン酸基の間のO原子を交換するキャップ類似体m27,3’-OGppCH2pGについて記載している。この類似体でキャップされた
mRNAは、インビトロでの組換えヒトDcp2による加水分解に対して強い。培養細胞に導入されると、類似体m27,3’-OGppCH2pGでキャップされたmRNAは、m27,3
’-OGpppGでキャップされたmRNAより安定していたが、m27,3’-OGppCH2
GでキャップされたmRNAは全体の翻訳効率が3’−OGppCH2pGより低かった。これは恐らくm27,3’-OGppCH2pGがm27,3’-OGpppGよりeIF4Eに対し
て低い結合親和性を有するためである。真核生物の翻訳開始因子elF4Eは、キャップ化mRNAを翻訳のためにリボソームの所に連れて来ることに関与する。
【0009】
非特許文献4は、三リン酸鎖の中の3つの非架橋O原子のうちの一つがS原子と置換された3つのARCAの合成について記載した。これらのホスホロチオエート類似体(S−ARCAと呼ばれる)の各々は、純粋なジアステレオマーを製造すべくクロマトグラフィで分離することが可能なジアステレオマーの混合物として合成された。eIF4Eに対するホスホロチオエートキャップ類似体の結合親和性は、m7GpppGと等しいか、いく
つかの場合ではm7GpppGよりも大きかった。
【0010】
非特許文献5は、βリン酸で修飾されたS−ARCAでキャップされたmRNAが、インビトロでの組換えヒトDcp2による加水分解に強いことを示した。さらに、1つのβ
S−ARCAジアステレオマーでキャップされたmRNAは、哺乳動物細胞へ導入された時、対応するARCAキャップ化mRNAのジアステレオマーよりも長い半減期を有し、また細胞中でより大きな翻訳効率を有していた。これらのうちの1番目の特性は、おそらくDcp2での加水分解に対するβ S−ARCAの耐性に起因し、2番目の特性は、おそらくeIF4Eに対するβ−S−ARCAのより高い結合性に起因している。
【0011】
合成mRNAキャップ類似体の別の使用方法は、eIF4Eへの結合に関し、キャップ化mRNAとの競合によるキャップ依存的翻訳を阻害することである。非特許文献6および7を参照されたい。
【0012】
キャップ類似体の翻訳阻害能力は、潜在的な治療上の重要性を有する。多くの種類の癌細胞はeIF4Eを過剰発現しており、これは腫瘍形成と転移を促進するタンパク質の発現の増大に結びつく場合がある。非特許文献8を参照されたい。siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、または特異的eIF4EサプレッサーによるeIF4E発現の減少は、腫瘍成長と腫瘍形成を阻害し得る。非特許文献9および10を参照されたい。さらに、elF4Eの翻訳活性は、競争する翻訳に不十分なキャップ類似体で細胞を飽和させ
ることにより抑制することが可能である。
【0013】
いくつかの合成キャップ類似体はeIF4E活性の特異的阻害剤であり、したがって、腫瘍形成および転移の治療、臓器移植における免疫抑制、および他の病状の治療の薬物として有用である可能性がある。しかしながら、これらのキャップ類似体の利用可能性については、一部には細胞内の状態でキャップ類似体が不安定性であるという理由により、これまでインビボで実証されたことはなかった。
非特許文献4はそのγ−S−ARCAが無細胞系での強い翻訳阻害剤であることを実証したが、これはeIF4Eに対するその結合親和性が高いためであると推測される。γ−修飾類似体は、この種の化合物の分解の原因であるスカベンジャーピロホスファターゼであるヒトDcpS酵素による加水分解に強い。
【0014】
他の改変が、キャップ化mRNAを酵素による分解から保護するよう支援し得る。1例はボラノホスフェート修飾であり、ここでは非架橋O原子の一つがボラン基(BH3-)と置換される(BH3-類似体と称されることもある)。別の例はホスホロセレノエート修飾であり、非架橋O原子の一つがセレン原子と置換される(Se類似体と称されることもある)。ホスホロチオエート、ボラノホスフェートおよびホスホロセレノエートはいずれも非架橋酸素原子を置換し、いくつかの化学的および生化学的特性を共有する。しかしながら、これらの基は違いも有する。例えば、P−X結合距離が異なり(XはS、SeまたはBH3は表わす)、X基のファンデルワールス半径が異なり、かつ種々の二価および他の
金属陽イオンに対するX基の親和性が異なる。これらの異なる化学的性質により、かかる基を備えたキャップ類似体の生物活性(キャップ結合タンパク質との相互作用および酵素分解に対する感度を含む)が変化する。
【0015】
ボラノホスフェートモノヌクレオチドおよびボラノホスフェートポリリン酸ジヌクレオチドは非特許文献11で検討されている。
ボラノホスフェートポリリンジヌクレオシド類似体は特許文献1に記載されており、P2Y受容体により調節される疾患(例えば2型糖尿病および癌)に対する該類似体の使用方法についても記載されている。
【0016】
ボラノホスフェートヌクレオチド類似体は、結合角、pKa値およびP−ジアステレオ
異性が類似しているため、ホスホロチオエート類似体との類似点を有している。しかしながら、場合によっては、ボラノホスフェートヌクレオチド類似体が、そのホスホロチオエート相当物より酵素加水分解に対して10倍強いこともある。ボラノホスフェートヌクレオチド類似体はホスホロチオエートよりも脂溶性であるため、それらが細胞膜を通過し、かつ細胞内翻訳機に到達するのを支援し得る。ボラノホスフェート類似体はホウ素中性子捕獲療法(BNCT)にも使用され得る。非特許文献12および13を参照されたい。
【0017】
α位置で修飾したヌクレオシドジホスフェートおよびトリホスフェートのホスホロセレノエート類似体が非特許文献14−17に記載されている。しかしながら、本願発明者らの
知る限りでは、α位置以外の任意の位置で修飾したヌクレオシドポリリン酸類似体についての以前の報告もなければ、任意の位置で修飾したジヌクレオシドポリリン酸についての報告もない。
【0018】
ホスホロセレノエートヌクレオチド類似体は、結合角、pKa値、P−ジアステレオ異
性、および酵素分解に対する耐性が類似しているため、ホスホロチオエートおよびボラノホスフェートと類似している。ホスホロセレノエート、セレンを多波長異常分散(MAD)法に使用することが可能であるため、核酸結晶学に非常に有用であり得る。非特許文献16−19を参照されたい。
【0019】
特許文献2および3に記載されている反逆方向キャップmRNA類似体についての本願発明者らの研究も参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0287271号
【特許文献2】米国特許第7,074,596号
【特許文献3】国際特許出願第2008/157688号
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】J. Stepinski et al., Synthesis and properties of mRNAs containing the novel "anti-reverse" cap analogues 7-methyl(3'-O-methyl)GpppG and 7-methyl(3'-deoxy)GpppG," RNA, vol. 7, pp. 1486-1495 (2001)
【非特許文献2】J. Jemielity et al., Novel 'anti-reverse' cap analogues with superior translational properties,・RNA, vol. 9, pp. 1108-1122 (2003)
【非特許文献3】E. Grudzien et al, "Differential inhibition of mRNA degradation pathways by novel cap analogs," J. Biol. Chem., vol. 281, pp. 1857-1867 (2006)
【非特許文献4】J. Kowalska et al., "Synthesis and characterization of mRNA cap analogs containing phosphorothioate substitutions that bind tightly to eIF4E and are resistant to the decapping pyrophosphatase DcpS," RNA, vol. 14, pp. 1119-1131 (2008)
【非特許文献5】E. Grudzien et al., " Phosphorothioate cap analogs stabilize mRNA and increase translational efficiency in mammalian cells," RNA, vol. 13, pp. 1745-1755 (2007)
【非特許文献6】A. Cai et al., "Quantitative assessment of mRNA cap analogues as inhibitors of in vitro translation," Biochemistry, vol. 38, pp. 8538-8547 (1999)
【非特許文献7】E. Grudzien et al., "Novel cap analogs for in vitro synthesis of mRNAs with high translational efficiency," RNA, vol. 10, pp. 1479-1487 (2004)
【非特許文献8】A. De Benedetti et al, "eIF-4E expression and its role in malignancies and metastases," Oncogene, vol. 23, pp. 3189-3199 (2004)
【非特許文献9】J. R. Graff et al., "Therapeutic suppression of translation initiation factor eIF4E expression reduces tumor growth without toxicity," J. Clin. Investigation, vol. 117, pp. 2638-2648 (2007)
【非特許文献10】T. Herbert, "Rapid induction of apoptosis by peptides that bind initiation factor eIF4E,"Curr. Biol., vol. 10, pp. 793-796 (2000)
【非特許文献11】P. Li et al., "Nucleoside and oligonucleoside boranophosphates: chemistry and properties," Chem. Rev., vol. 107, pp. 4746-4796 (2007)
【非特許文献12】B.R. Shaw et al., "CityplaceReading, Writing and Modulating Genetic Information with Boranophosphate Mimics of Nucleotides, DNA and RNA," Ann. N.Y. Acad. Sci., vol. 1201, pp23-29 (2003)
【非特許文献13】J. Summers et al., "Boranophosphates as Mimics of Natural Phosphodiesters in DNA", Current Medicinal Chemistry, vol. 8, pp 1147-1155 (2001
【非特許文献14】K. Misiura et al., "Synthesis of nucleoside α-thiotriphosphates via an oxathiaphospholane approach," Org. Lett., vol. 7, pp 2217-2220 (2005)
【非特許文献15】P. Li et al., "Synthesis of α-P-modified nucleoside diphosphates with ethylenediamine," J. Am. Chem. Soc., vol. 127, pp. 16782-16783 (2005)
【非特許文献16】N. Carrasco et al., Enzymatic synthesis of phosphoroselenoate DNA using thymidine 5‘-(α-P- seleno)triphosphate and DNA polymerase for x-ray crystallography via MAD,"J. Am. Chem. Soc., vol. 126, pp. 448-449 (2004)
【非特許文献17】N. Carrasco et al., Efficient enzymatic synthesis of phosphoroselenoate RNA by using adenosine 5’-(α-P-seleno)triphosphate, Angew. Chem. Int. Ed., vol. 45, pp. 94-97 (2006)
【非特許文献18】J. Wilds et al., Selenium-assisted nucleic acid crystallography: use of phosphoroselenoates for MAD phasing of a DNA structure,"J. Am. Chem. Soc., vol. 124, pp 14910-14916 (2002)
【非特許文献19】P.S. Pallan et al., Selenium modification of nucleic acids: preparation of phosphoroselenoate derivatives for crystallographic phasing of nucleic acid structures,"Nat. Protoc., vol. 2, pp. 640-646 (2007).
【発明の概要】
【0022】
本願発明者らは新規なクラスのジヌクレオチドキャップ類似体を発見した。この新規なジヌクレオチドキャップ類似体は、ボラノホスフェート基またはホスホロセレノエート基により種々のリン酸塩位置で修飾される。新規な類似体は、キャップ化mRNAの調製の際の試薬として広範な有用性を有する。新規な類似体はインビトロおよびインビボで安定性が増加している。新規な類似体はキャップ依存性翻訳の阻害剤として使用可能である。任意選択で、ボラノホスフェート基またはホスホロセレノエート基は2’−Oまたは3’−O−アルキル基、好ましくはメチル基を有し、BH3−ARCAまたはSe−ARCA
と呼ばれる類似体を生産する。ARCAはα−、β−、またはγ−ボラノホスフェート基またはホスホロセレノエート基で修飾されてもよい。
【0023】
修飾の種類および位置の選択により、mRNAの合成、プロセシング、核−細胞質輸出、翻訳および分解の間にキャップを認識するタンパク質の活性が調節される。
表1は、化学的、生物物理学的、生化学的、および分子生物学的方法により合成および特徴付けされたか、将来合成および特徴付けられる、いくつかのBH3類似体およびSe
類似体を列挙している。mRNAキャップに特に有利な化合物にはβ−BH3−ARCA
およびβ−Se−ARCAが含まれる。翻訳阻害剤として特に有利な化合物にはβ−およびγ−BH3類似体およびSe類似体が含まれる。
【0024】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】5’,5’−三リン酸架橋のα位置にボラノホスフェート基を備えたキャップ類似体の合成。
【図2】5’,5’−三リン酸架橋のβ位置にボラノホスフェート基を備えたキャップ類似体の合成。
【図3】m7GppBH3pm7G(方法II)の合成。
【図4】m27,2 ’-OGppBH3pGの合成。
【図5】m27,2 ’-OGppSepGの合成。
【図6】m7GpSeppGの合成。
【図7】ApppG(非機能キャップ類似体)、m7GpppG、m27,3’-OGpppG、ボラノホスフェートキャップ類似体m7GppBH3pG(ジアステレオマー1:1混合物)およびm7GppBH3pm7GでキャップされたホタルルシフェラーゼmRNAの相対的インビトロ翻訳効率。
【図8】ボラノホスフェートキャップ類似体によるインビトロルシフェラーゼmRNAの翻訳阻害。
【図9】翻訳開始前に60分間ウサギ網状赤血球溶解液でインキュベートしたボラノホスフェートキャップ類似体によるインビトロルシフェラーゼmRNAの翻訳阻害。
【図10】ApppG、m7GpppG、m27,3’-OGpppGおよびホスホロセレノエートキャップ類似体m27,2’-OGppSepG(D1)および(D2)でキャップされたホタルルシフェラーゼmRNAのインビトロ翻訳効率。
【図11】ホスホロセレノエートキャップ類似体によるインビトロルシフェラーゼmRNAの翻訳阻害。
【図12】翻訳開始前に60分間ウサギ網状赤血球溶解液でインキュベートしたホスホロセレノエートキャップ類似体によるインビトロルシフェラーゼmRNAの翻訳阻害。
【図13】種々の類似体で5’キャップしたA31ポリAテイルを備えたホタルルシフェラーゼmRNAの相対的インビトロ翻訳効率。
【図14】ヌクレオポレーション後の、種々の類似体でキャップされ60塩基のポリ(A)テイルを有する培養HeLa細胞中のルシフェラーゼmRNAの安定性の測定値。
【図15】ヌクレオポレーション後の、種々の類似体でキャップされ60ヌクレオチドのポリ(A)テイルを有する培養HeLa細胞中のルシフェラーゼmRNAの翻訳効率。
【発明を実施するための形態】
【0026】
キャップ類似体の合成および単離
ボラノホスフェートおよびホスホロセレノエートキャップ類似体の化学合成は、他の類似体に対して報告された合成スキームを改変したものとした。M. Kadokura et al., "Efficient synthesis of -methyl-capped guanosine 5'-triphosphate as a 5'-terminal unique structure of U6 RNA via a new triphosphate bond formation involving activation of methyl phosphorimidazolidate using ZnCl2 as a catalyst in DMF under anhydrous conditions," Tetrahedron Lett., vol. 38, pp. 8359-8362 (1997)、J. Stepinski
et al. (2001); M. Kalek et al., "Enzymatically stable 5′ mRNA cap analogs," Bioorg. Med. Chem., vol. 14, pp. 3223-3230 (2006);、およびJ. Kowalska et al. (2008)参照。
【0027】
モノヌクレオチドは反応性のイミダゾリド誘導体に変換され、その後、これは過剰のZnCl2の存在下でDMF中の別のモノヌクレオチドに結合される。ZnCl2は、有機溶媒での反応物の溶解度を大きく増強し、イミダゾリド誘導体の加水分解を阻害し、反応速度を加速する。MnCl2、CdCl2またはMgCl2等の他の金属塩化物もピロリン酸
結合の形成を媒介するために使用可能であるがが、ZnCl2ほど一般に効率的ではない
。M. Kadokura et al., "Efficient synthesis of -methyl-capped guanosine 5'-triphosphate as a 5'-terminal unique structure of U6 RNA via a new triphosphate bond formation involving activation of methyl phosphorimidazolidate using ZnCl2 as a catalyst in DMF under anhydrous conditions," Tetrahedron Lett., vol. 38, pp. 8359-8362 (1997を参照されたい。
【0028】
リン酸−ボラノホスフェート結合およびリン酸−ホスホロセレノエート結合を含むキャップ類似体の合成には一般に同様の合成スキームを使用したが、ボラノホスフェート類似体の場合、結合媒介物質としてZnCl2ではなくMgCl2を使用すると最良の結果が得
られた。ZnCl2の存在下でもカップリング反応は生じたが、ZnCl2により生じる酸性条件下でのP−BH3結合の開裂に関する重大な副反応が伴った。
【0029】
図1は、α位置で修飾された類似体の合成を示している。本願発明者らは、最初に中間体グアノシン5’−ボラノホスフェートの合成方法を開発した。グアノシン5’(H−ホスホネート)を、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(BSA)でシリル化した。得られた中間体であるビス(トリメチルシリル)亜リン酸を、分離せずBH3・S
Me2複合体で処理することによりボロン化した。イオン交換クロマトグラフィによりそ
の後脱シリル化および精製し、約30%の収率で所望のグアノシン5’−ボラノホスフェートを得た。キャップ類似体m7GpppBH3G、またはそのARCA相当物であるm27,2
’-OGpppBH 3Gを得るために、グアノシン5’−ボラノホスフェートを、過剰Mg
Cl2の存在下で9:1DMF/水混合物中で、m7GDPまたはm27,2 ’-OGDPのイ
ミダゾリド誘導体とそれぞれ結合させた。いずれの場合も、2つのP−ジアステレオマーの混合物が得られ、その後これは逆相(RP)HPLCにより分離された。逆相HPLCカラムからのそれらの溶出順序に従って、ジアステレオマーにはD1およびD2と名付けた。
【0030】
図2は、β位置で修飾された類似体の合成を示している。ボラノホスフェートトリエチルアンモニウム塩を、V. Nahum et al., "Boranophosphate salts as an excellent mimic of phosphate salts: preparation, characterization, and properties," Eur. J. Inorg. Chem., vol. 20, pp. 4124-4131 (2004)の手順の改変により得た。元の手順では、
トリス(トリメチルシリル)亜リン酸を、BH3・SMe2複合体でボロン化した。次に適切な塩基(例えばアンモニア、トリブチルアミン等)の存在下でメタノール中で脱シリル化し、蒸発乾燥させ、対応する塩(アンモニウム、トリブチルアンモニウム等)としてボラノホスフェートを得た。しかしながら、生成物にはホスホン酸塩(20%以下)が混在した。この混在は、おそらく完全に無水でない反応条件下(ビス化合物は後にボロン化を受けなかった)でトリス(トリメチルシリル)亜リン酸がビス(トリメチルシリル)亜リン酸へ部分加水分解した結果であると考えられた。本願発明者らは、反応液に過剰のシリル化試薬(BSA)を加えることにより、ビス(トリメチルシリル)亜リン酸の形成が阻害され、この問題を克服した。このようにして得られたボラノホスフェートトリエチルアンモニウム塩を、過剰量のグアノシン一リン酸イミダゾリド誘導体と結合させ、対称的なジグアノシン5’,5’’−(2−ボラノトリホスフェート)を生じた(GppBH3pG、図2)
この化合物を次にヨウ化メチルのDMSO溶液で処理し、グアノシンのN7位置にメチル基を導入した。この反応は、モノメチル化キャップ類似体とジメチル化キャップ類似体(m7GppBH3pGとm7GppBH3pm7G)の混合物を生じさせた。これらの生成物の
比は反応条件の調節により制御することが可能である。約4倍の過剰量のヨウ化メチルの存在下で、主生成物(約70%収率)としてm7GppBH3pGが形成された。約8倍〜10倍の過剰量のヨウ化メチルでは、m7GppBH3pm7Gが優勢な生成物(約50%)で
あった。しかしながら、後者の生成物に至る好ましい経路は、7−メチルグアノシンイミダゾリド誘導体とのボラノホスフェートの結合であり、これにより1つの工程からなる合成で本願発明者らは34%の収率で生成物を分離した。図3を参照されたい。
【0031】
β−BH3−ARCA(m27,2 ’-OGppBH3pG)の合成に有用な中間体7,2’−
O−ジメチルグアノシン 5’−(2−ボラノジホスフェート)(m27,2 ’-OGDPβ
BH3)を得る最初の試みは、うまくいかなかった。本願発明者らは、MgCl2の存在下で、m27,2 ’-OGMP−Imと過剰のボラノホスフェートトリエチルアンモニウム塩を
結合させた。結合生成物のMS ESI(−)分析は、所望の生成物が形成されたことを示したが、十分な量でそれを分離することは不可能であった。化合物は水溶液中で比較的速い加水分解を受け、イオン交換クロマトグラフィによる分離が実際不可能になる場合が
ある。したがって、本願発明者らは、MgCl2の存在下でm27,2 ’-OGMP−Imを過剰量のボラノホスフェートと反応させてm27,2 ’-OGDPβBH3を生成し、これを単離することなくGMP−Imと結合させることによるm27,2 ’-OGppBH3pGの代替合成を開発した。図4を参照されたい。
【0032】
図5は、m27,2 ’-OGppSepGの合成について描いている。セレノホスフェート(
PSeO3-3)は、R. Glass et al., "Selenophosphate," Meth. Enzymol., vol. 252, pp. 309-315 (1995)に記載の方法の改変により調製した。トリメチルシリル亜リン酸塩を
セレンのピリジン溶液で処理し、トリメチルシリルセレノホスフェートを与え、その後、これをトリエチルアミンの存在下でメタノールで脱シリル化し、セレノホスフェートトリエチルアンモニウム塩を与える。この化合物を7のイミダゾリド誘導体と結び付けられた、7,2’−O−ジメチルグアノシン 5’−モノホスフェート(m27,2 ’-OGMP−
Im)と結合させ、7,(2’−O−ジメチルグアノシン 5’−O−(2−セレノジホスフェート)(m27,2 ’-OGDPβSe)を与えた。無水ZnCl2を用いてカップリング反応を媒介し、ZnCl2はDMF中の試薬の溶解度を劇的に増加させ、反応速度も加
速させた。反応は非常に速く、本質的に100%のm27,2 ’-OGMP−Imからm27,2 ’-OGDPβSeへの変換が15分後に逆相HPLCにより観察された。m27,2 ’-O
DPβSeは酸性水溶液では不安定であり(m27,2 ’-OGMPに加水分解される)、中
性または塩基性溶液でのみ適度に安定した。したがって、m27,2 ’-OGDPβSeの精
製中にpHを7以上に維持するよう注意し、これにより生成物がイオン交換クロマトグラフィ後に80%の収率で分離されることが可能となった。その後、過剰ZnCl2の存在
下でGMPのイミダゾリド誘導体とm27,2 ’-OGDPβSeを結合させた。逆相HPL
Cにより2つのm27,2 ’-OGppSepGジアステレオマーに対応する2つのピークが観
察され、これらを溶出順序に従ってD1およびD2と名付けた。しかしながら、カップリングは遅く進行し、約2日でm27,2 ’-OGDPβSeの完全な消失が見られた。反応時
間を延長させるとm27,2 ’-OGDPβSeからm27,2 ’-OGMPへの部分加水分解が適度な反応収率でのみ(HPLCで40%変換、25%を分離)生じた。イオン交換クロマトグラフィによる分離後のm27,2 ’-OGppSepGのジアステレオマー混合物を逆相H
PLCで純粋なジアステレオマーに分解することに成功した。生成物を質量分析、1
NMRおよび31P NMRにより特徴付け、構造および均質性を確認した。m27,2 ’-O
GppSepGのD1およびD2異性体は水溶液で安定しており、大幅な加水分解も酸化も受けず、−20℃で水分から保護された状態で少なくとも3か月間固体として保存することが可能である。
【0033】
他のBH3−およびSe−類似体も図1−6に描かれたものとおおむね類似の反応によ
り生産されたか、生産されるだろう。
【0034】
実施例1。キャップ類似体の分離および特徴付けのための一般手順。
中間体ヌクレオチドを、トリエチルアンモニウム重炭酸塩(TEAB)の脱イオン水溶液の直線濃度勾配でDEAEセファデックスA−25カラム(HCO3-形式)でイオン交換クロマトグラフィにより分離した。エタノールを追加して減圧下で蒸発した後、中間体をトリエチルアンモニウム塩として分離した。最終生産物(キャップ類似体)を、半調製逆相HPLCによりさらに分離し、真空凍結乾燥を繰り返した後、アンモニウム塩として分離した。分析HPLCを、0.05M酢酸アンモニウム緩衝液(pH5.9)で0%−25%メタノールの直線濃度勾配でSupelcosil LC−18−T 逆相カラム(4.6×250mmおよび流量1.3ml/分)を使用して、Agilent Technologies1200シリーズの装置で行なった。化合物の溶出をUV−Vis検出器(260nm)と蛍光検出器(280nmの励起および337nmの放出)で検知した。半調製HPLCを、Waters600E Multisolvent Delivery System装置およびWaters Discovery RP Amide
C16逆相カラム(21.2mm×250mmおよび流量5.0ml/分)上で、メタノールの0.05Mの酢酸アンモニウム緩衝液(pH5.9)の直線濃度勾配で行い、260nmでUV検出した。1H NMRおよび31P NMRスペクトルを、それぞれ39
9.94MHzおよび161.90MHzでVarian UNITYプラス分光計にて25℃で記録した。1H NMR化学シフトを内部標準としてのナトリウム3−トリメ
チルシリル−[2,2,3,3−D4]−プロピオナートのD2O溶液と比較して決定し
た。31P NMR化学シフトを外部標準としての20%リン酸のD2O溶液と比較して決
定した。エレクトロスプレイ陰イオンモードにおける質量スペクトル[(ESI MS(−))をMicromass QToF 1 MS分光計で記録した。溶媒および他の試薬をSigma−Aldrichから購入し、別段の記載のない限りそれ以上の処理は行なわずに使用した。アセトニトリルとアセトンをP25で蒸留し、使用に先立って4Å分子篩いにかけて保存した。GMPおよびGDPはDowex 50 WX8イオン交換樹脂でトリエチルアンモニウム塩に変換した。m27,2 ’-OGMPおよびm27,2 ’-OGDPをJ. Jemielity et al.(2003)に以前に記載されたように調製した。
【0035】
実施例2。ヌクレオチドイミダゾリド誘導体の合成のための一般手順。
GMP−Im、m27,2 ’-OGMP−Im、GDP−Im、およびm27,2 ’-OGDP−Imを、T. Mukaiyama et al., "Phosphorylation by oxidation-reduction condensation. Preparation of active phosphorylating reagents," M. Bull. Chem. Soc. Jpn., vol. 44, p. 2284 (1971)に記載されているように調製した。ヌクレオチド(1当量、TE
A塩)、イミダゾール(8当量)および2,2’−ジチオジピリジン(3当量)をDMF(約2.5ml/100mgのヌクレオチド)で混合した。トリエチルアミン(2当量)およびトリフェニルフォスフィン(3当量)を加え、混合物を6〜8時間撹拌した。生成物を、無水NaClO4(1つの負電荷当たり1当量)の乾燥アセトン溶液(DMF1m
l当たり約8ml)を用いて反応液から沈殿させた。4℃での冷却後、沈殿物をろ過し、冷却した乾燥アセトンで繰り返し洗浄し、P410で真空乾燥させた。収率は80%−1
00%であった。
【0036】
実施例3。グアノシン5’−(H−ホスホネート)。
この調製はM. Yoshikawa et al., "Studies of phosphorylation. IV. The phosphorylation of nucleosides with phosphorus trihalide," Bull. Chem. Soc. Jpn., vol. 43,
pp. 456-461 (1970)に従った。2’,3’−O,O−イソプロピリデングアノシン(1
.3g、4.0ミリモル)を19.5mlのトリメチルホスフェートに懸濁し、氷上で0℃に冷却した。PCl3(1.06ml、12.1ミリモル)を加え、混合物を1時間0
℃で撹拌した。反応液を水(80ml)で希釈し、固体NaHCO3でpH約1.5に調
節し、1時間70℃に加熱した。溶液を室温まで冷却し、NaHCO3でpH約6に調節
し、80mlの水で希釈し、TEABの0−0.9M勾配でDEAEセファデックス上でクロマトグラフィにかけた。0.6−0.65M TEABで溶出し、約3.0ミリモルの生成物を含む分画を収集し、蒸発させ、P25で真空デシケータ中で乾燥させた。これにより1.34gのグアノシン5’−(H−ホスホネート)トリエチルアンモニウム塩(収率75%)を生成した。
【0037】
【化1】

【0038】
実施例4。グアノシン5’−O−ボラノホスフェートトリエチルアンモニウム塩。
グアノシン5’−(H−ホスホネート)(1.03g、2.3ミリモル)を丸底フラスコに入れ、30mlの乾燥アセトニトリルに懸濁した。フラスコをゴム隔壁で密閉し、30分間アルゴンで洗浄した。N,O−ビストリメチルシリルアセトアミド(11.3ml、46ミリモル)を注射器を通じて注入し、透明溶液が得られるまで混合物を激しく攪拌し、次にさらに30分間撹拌した。その後、溶液を氷浴で冷却し、2M BH3・SMe2複合体 THF溶液(5.7ml、11.5ミリモル)を加えた。5分後、フラスコを氷浴から除去し、30分間攪拌を続けた。溶液を減圧下で油状残留物になるまで蒸発させ、氷浴に再び置き、60mlのメタノールおよび3mlの2Mアンモニア エタノール溶液で処理し、2時間室温で攪拌した。溶液を減圧下で乾燥するまで蒸発させ、100mlの水に溶解し、20mlのジエチルエーテルで一度抽出した。エーテルを減圧下で水層から除去した。生成物をTEABの0−0.9M勾配でDEAEセファデックスで分離した。生成物の13,200の光学濃度ユニットを含む分画を蒸発させ、水に溶解し、凍結乾燥させ、410mgのグアノシン5’−O−ボラノホスフェートトリエチルアンモニウム塩(32%)を生成した。
【0039】
【化2】

【0040】
実施例5。m7GpppBH3Gの合成。
GMPBH3(50mg、0.089ミリモル、TEA塩)およびm7GDP−Im(100mg、0.18ミリモル、ナトリウム塩)の2.5mlDMF/H2O(9:1)混
合物に、無水MgCl2(110mg、1.16ミリモル)を部分に分けて加え、試薬が
すべて溶解するまで混合物を激しく振動させた。溶液を3日間室温で攪拌し、EDTA(430mg、1.16ミリモル)を25mlの水に入れた溶液を加えることにより反応を停止し、固体NaHCO3を加えてpHを約6に調節した。固体NaHCO3を加えてpHを約6に調節した。生成物を0−1.2M勾配のTEABでDEAEセファデックスで分離した。m7GpppBH3Gのジアステレオマー混合物を得た(685光学濃度ユニット)。ジアステレオマーは半調製HPLCと凍結乾燥を3回行なって分離した。HPLC分離後の収率は13.4mgのm7GpppBH3G(D1)および7.3mgのm7GpppBH3G(D2)(それぞれ18%および9.8%)であった。
【0041】
【化3】

【0042】
実施例6。m27,2 ’-OGpppBH3G。
GMPBH3(30mg、0.053ミリモル、TEA塩)およびm27,2 ’-OGDP−Im(60mg、0.11ミリモル、ナトリウム塩)の1.5mlのDMF/H2O(9
:1)混合物に、無水MgCl2(80mg、0.85ミリモル)を部分に分けて加え、
試薬がすべて溶解するまで混合物を激しく振動させた。溶液を4日間室温で攪拌し、EDTA(320mg、0.85ミリモル)を25mlの水に入れた溶液を加えることにより反応を停止し、固体NaHCO3を加えてpHを約6に調節した。生成物を0−1.2M
勾配のTEABでDEAEセファデックスで分離した。m27,2 ’-OGpppBH3Gのジアステレオマー混合物を得た(520の光学濃度ユニット)。ジアステレオマーは半調製HPLCと凍結乾燥を3回行なって分離した。HPLC分離後の収率は6.1mgのm27,2
’-OGpppBH3G(D1)および3.7mgのm27,2 ’-OGpppBH3G(D2)(それぞれ13.4%および8.0%)であった。
【0043】
【化4】

【0044】
実施例7。ボラノホスフェートトリエチルアンモニウム塩。
この塩はV. Nahum et al., "Boranophosphate Salts as an Excellent Mimic of Phosphate Salts: Preparation, Characterization, and Properties," J. Inorg. Chem. vol.
20, pp. 4124-4131 (2004)の手順の改変により調製した。トリス(トリメチルシリル)
亜リン酸塩(600μl、1.8ミリモル)を5mlの乾燥アセトニトリルを含む丸底フラスコに加えた。フラスコをゴム隔壁で密閉し、アルゴンで30分間洗浄した。N,O−ビストリメチルシリルアセトアミド(1.5ml、5.4ミリモル)を注射器を通じて注入した。30分後、溶液を氷浴で冷却し、2M BH3・SMe2複合体 THF溶液(1.35ml)を加えた。5分後、フラスコを氷浴から除去し、30分間攪拌を続けた。その後、溶液を油状残留物になるまで蒸発させ、氷浴に再び置き、20mlのメタノールおよび0.5mlのトリエチルアミンで処理し、2時間室温で攪拌した。溶液を減圧下で乾燥するまで蒸発させ、残留物をP25で乾燥させた。[HN(CH2CH332HPO3
BH3の収率は530mg(17.8ミリモル)(97%、アセトアミドが混入)であっ
た。このボラノホスフェート トリエチルアンモニウム塩を4℃で保存し、この形式でさらなる反応に使用した。
【0045】
【化5】

【0046】
実施例8。GppBH3pG。
GMPのイミダゾリド誘導体(GMP−Im)(200mg、0.46ミリモル、ナトリウム塩)および以前に得られたボラノホスフェートトリエチルアンモニウム塩(70mg、0.23ミリモル)を4mlのDMFに懸濁し、無水MgCl2(380mg、4ミ
リモル)を部分に分けて加えた。1時間後、EDTA(1.48mg、4ミリモル)を40mlの水に入れた溶液を加えて反応を停止し、固体NaHCO3を加えてpHを約6に
調節した。生成物をTEABの0−1.2M勾配でDEAEセファデックスで分離した。
蒸発後、165mgのGppBH3pG トリエチルアンモニウム塩(260nmで4,0
00の光学濃度ユニット)を得た(収率65%)。
【0047】
【化6】

【0048】
実施例9。m7GppBH3pG。
GppBH3pG(35mg、TEA塩)を1.5mlのDMSOに溶解し、20μlの
ヨウ化メチルを加えた。4時間後、15mlの水を加えて反応を停止し、固体NaHCO3を加えてpHを約7に調節した。生成物を0−1.2M勾配のTEABでDEAEセフ
ァデックスで分離した。m7GppBH3pG(550光学濃度ユニット)のジアステレオマー混合物を収集し、溶媒を蒸発させた。その後、生成物を少量の水に溶解させ、Dowex樹脂上でナトリウム塩に変換した。ジアステレオマーを、半調製HPLCおよび凍結乾燥を3回行なって分離した。HPLC分離後の収率は、NH4+塩(それぞれ37.2%および35.6%)として10.2mgのm7GppBH3pG(D1)および9.8mgのm7GppBH3pG(D2)であった。
【0049】
【化7】

【0050】
実施例10。m7GppBH3pm7G(方法I)。
GppBH3pG(50mg、800の光学濃度ユニット、TEA塩)を1.0mlのD
MSOに溶解させ、30μlのヨウ化メチルを加えた。2時間後、30μlのヨウ化メチルをさらに加えた。2時間後、15mlの水を加えて反応を停止し、固体のNaHCO3
でpHを約7に調節した。生成物を0−1.2M勾配のTEABでDEAEセファデックスで分離した。m7GppBH3pm7G(200光学ユニット密度)を収集し、蒸発させ、
Dowex樹脂でナトリウム塩に変換した。最後に、生成物をエタノールで沈降させ、P25で乾燥させた。その収率は22mgのm7GppBH3pm7G(ナトリウム塩)(54
%)であった。
【0051】
【化8】

【0052】
実施例11。m7GppBH3pm7G(方法II)。
7GMP(m7GMP−Im)(225mg、0.5ミリモル、ナトリウム塩)のイミダゾリド誘導体およびボラノホスフェートトリエチルアンモニウム塩(75mg、0.25ミリモル、ナトリウム塩)を4mlのDMFに懸濁させ、無水MgCl2(380mg
、4つミリモル)を部分に分けて加えた。1時間後、EDTA(1.48mg、4ミリモル)を40mlの水に入れたものを加えることにより反応を停止し、固体NaHCO3
加えてpHを約6に調節した。生成物を0−1.2M勾配のTEABでDEAEセファデックスで分離した。溶媒の蒸発後、生成物を少量の水に溶解させ、Dowex樹脂上でナトリウム塩に変換した。エタノールによる沈澱およびP25での乾燥後、150mgのm7GppBH3pm7Gナトリウム塩が得られた(収率34%)。(スペクトルのデータは上
記の方法Iの記載で与えられる。)
実施例12。m27,2 ’-OGppBH3pG。
【0053】
27,2 ’-OGMP−Im(15mg、0.03ミリモル、ナトリウム塩)およびボラ
ノホスフェートトリエチルアンモニウム塩(30mg、0.1ミリモル)の0.5mlDMFの懸濁液に、無水MgCl2(40mg、0.4ミリモル)を部分に分けて加え、試
薬が溶けるまで混合物を振動させた(1−2分)。その後、GMP−Im(40mg、0.09ミリモル)およびMgCl2(40mg)を反応液に加えた。EDTA(0.8ミ
リモル)を10mlの水に入れたものを加えることにより5時間後に反応を停止し、固体NaHCO3を加えてpHを約6に調節した。生成物を半調製HPLCおよび凍結乾燥を
3回行なって分離した。収率は、NH4+塩(それぞれ18%および17%)として5.1mgのm27,2 ’-OGppBH3pG(D1)および4.8mgのm27,2 ’-OGppBH3pG(D2)であった。
【0054】
【化9】

【0055】
実施例13。セレノホスフェートトリエチルアンモニウム塩。
セレン(160mg、2ミリモル)のピリジン(1ml)懸濁液を、注射器を通じて、隔壁で密封し、かつアルゴンで洗浄したトリス(トリメチルシリル亜リン酸塩(600μl、1.8ミリモル)の乾燥CH3CN(20ml)に部分に分けて天下した。生じた溶
液室温に30分間保持し、次に、乾燥するまで蒸発させた。その後、トリエチルアミン(500μl、3.6ミリモル)のMeOH(20ml)溶液を加え、混合物を2時間室温で撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残留物をメタノールで2回再度蒸発させた。油状の黄色残留物として得られた生成物をさらに処理することなく以下の反応に使用した。
【0056】
実施例14。7,2′−O−ジメチルグアノシン5’−O−(2−セレノジホスフェート)(m27,2 ’-OGDPβSe)
7,2′−O−ジメチルグアノシン5’−O−ホスフェートイミダゾリド(250mg、0.43ミリモル)およびセレノホスフェートトリエチルアンモニウム塩(600μlの(Me3SiO)3P)の5ml DMF懸濁液に、無水ZnCl2(590mg、4.
30ミリモル)を加え、試薬がすべて溶解するまで混合物を激しく振動させた(3分間)。得られた溶液を室温で20分間攪拌させ、反応物を二ナトリウムEDTA(1.6g、4.30ミリモル)および800mgのNaHCO3を300mlの水に入れたものを加
えることにより停止した。必要に応じて固体NaHCO3を加えてpHを約7に調節した
。生成物を0−1.0M勾配のTEABでDEAEセファデックスで分離した。収率はTEA塩として254mg(0.35ミリモル)のm27,2 ’-OGDPβSe(81%)で
あった。ESI MS(-) m/z:553.85(C1218510280Seの計算値:533.97)。
【0057】
実施例15。m27,2’-OGPPsepG。m27,2’-OGDPβSe(250mg、0.35ミリモル)およびGMP−Im(250mg、0.50ミリモル)を、5mlのDMFに懸濁し、無水ZnCl2(480mg、3.5ミリモル)を加えた。生じた溶液を2日
間室温で維持した。二ナトリウムEDTA(1.3g、3.5ミリモル)を100mlの水に入れたものを加えることにより反応を停止し、固体NaHCO3で中和した。生成物
を0−1.2M勾配のTEABでDEAEセファデックスで分離した。最後に、ジアステレオマーを半調製HPLCと凍結乾燥を3回行なって分離した。収率は、NH4+塩(それぞれ13%および11%)として40mg(0.045ミリモル)のm27,2’-OGppSepG(D1)および35mg(0.040ミリモル)のm27,2’-OGppSepG(D2)
であった。
【0058】
【化10】

【0059】
実施例16。7−メチルグアノシン5’−O−(H−ホスホネート)。DMSO(10ml)に溶解させたグアノシン5’−O−(H−ホスホネート)(260mg、0.65ミリモル)にヨウ化メチル(322μl、5.2ミリモル)を添加し、溶液を3時間ストッパー付フラスコ中で攪拌した。反応は200mlの水で希釈することにより停止し、反応混合物をエーテルで3回抽出した。残りのエーテルを減圧下で水層から除去し、生成物をTEABの0−0.7M勾配でDEAEセファデックスにより分離した。蒸発後およびP25での乾燥後、200mg(0.43ミリモル)の生成物がトリエチルアンモニウム塩(66%)として得られた。ESI MS(−)m/z:360.06(C11155
71、360.07)。
【0060】
実施例17。7−メチルグアノシン 5’−O−ホスホロセレノエート(m7GMPS
e,トリエチルアンモニウム塩)。7−メチルグアノシン 5’−(H−ホスホネート)
(200mg、0.43ミリモル)を丸底フラスコに入れ、20mlの乾燥アセトニトリル中に懸濁させた。フラスコをゴム隔壁で密封し、アルゴンで30分間洗浄した。その後、N,O−ビストリメチルシリルアセトアミド(11.3ml、46ミリモル)を注射器を通じて注入した。透明溶液が得られるまで混合物を激しく攪拌し、次にさらに30分間撹拌した。その後、セレン(40mg、0.5ミリモル)のピリジン(0.5ml)溶液を加え、次にさらに30分間続けて攪拌した。溶液を減圧下で蒸発させて油状残留物とし、トリエチルアミン(60μl、0.43ミリモル)のメタノール(40ml)溶液を加え、得られた混合物を2時間撹拌した。溶液を蒸発させ、生成物を100mlの水に溶解し、ペーパーフィルターでろ過した。生成物はTEABの0−0.9M勾配のDEAEセファデックスで分離した。蒸発および真空凍結乾燥後の分画は93mgの7−メチルグアノシン 5’−O−ホスホロセレノエート トリエチルアンモニウム塩(45%)を生成した。ESI MS(−)m/z:439.97(C11155780Seの計算値439.98)。
【0061】
実施例18。m7GpSeppG。m7GMPSe(10mg、0.021ミリモル)およびGDP−Im(15mg、0.027ミリモル)のDMF(0.8ml)懸濁液に、無水ZnCl2(30mg、0.22ミリモル)を加えた。反応を2日間室温で維持し、9
0mgの二ナトリウムEDTAを10mlの水に入れたものを加えることにより停止し、
固体NaHCO3で中和した。ジアステレオマーは逆相HPLCにより分離された。収率
は、NH4+塩として2mgのm7GpSeppG(D1)および2.5mgのm7GpSeppG(D2)(それぞれ10%および13%)であった。ESI MS(−)m/z:465.02(C21282017380Seの計算値865.00)
実施例19。eIF4Eに対する結合親和性の測定。
【0062】
蛍光滴定測定をLS−50BまたはLS−55分光蛍光計(Perkin Elmer社)で、20.0±0.2℃、50mM HEPES/KOH(pH7.2)、0.5mM EDTA、および1mM DTTで、KClの添加によりイオン強度を150mMに調節して行った。種々のキャップ類似体の溶液を、濃度を増大させて、1μlアリコートで1.4mlの0.1または0.2μMのタンパク質溶液に加えた。蛍光強度を2.2nmの帯域幅の280nmまたは295nmの励起光と、4nmの帯域幅で337nmの検出光および290nmのカットフィルターで測定した。データはサンプル稀釈および内部フィルタ効果について補正した。平衡結合定数(Kas)を、他に特記のない限りA. Nied
毆iecka et al., "Biophysical studies of eIF4E cap-binding protein: recognition of mRNA 5'cap structure and synthetic fragments of eIF4G and 4E-BP1 proteins," J.
Mol. Biol., vol. 312, pp. 615-635 (2002)に記載されているように、キャップ類似体
濃度に対する蛍光強度の理論的依存性を実験データにフィットすることにより決定した。タンパク質の濃度を平衡方程式中の自由パラメータとし、「活性」タンパク質の量を決定した。最終Kasを3〜10の独立した滴定の加重平均として計算し、加重の標準偏差の平方の逆数として得た。非線形最小二乗数値回帰分析をORGIN6.0(Microcal Software社、アメリカ合衆国)を使用して行なった。
【0063】
実施例20。DcpSに対する感度の分析。
ヒトDcpSをL. Cohen et al, "Nematode m7GpppG and m32,2,7GpppG decapping: activities in Ascaris embryos and characterization of C. elegans scavenger DcpS," RNA, vol. 10, pp. 1609-1624 (2004)に記載されているように大腸菌で発現した。50mM KCl、0.2mM EDTA、1mM DTT、0.5mM PMSF、および20% グリセリンを含む20mMトリス緩衝液(pH7.5)の15μM タンパク質溶液を、使用するまで−80℃で保存した。酵素反応を、20mM MgCl2および60
mM(NH42SO4を含む500μlの50mM Tris−HCl(pH7.9)で
中で30℃にて実行した。選択されたキャップ類似体の40μM溶液を5.0μlのDcpSで120分間処理した。10、30、60および120分目に100μlのサンプルを反応混合物から収集し、2分間90℃でインキュベートして不活性化した。サンプルを、分析逆相HPLCによるさらなる処理なしで、0.1M KH2PO4(pH6.0)0−50%、15分間にわたるメタノールの直線濃度勾配で分析した。
【0064】
実施例21。BH3およびSe類似体でキャップされたmRNAの合成。方法I(m7GppBH3pG(D1/D2混合物)およびm7GppBH3pm7Gに対する類似体)。インビトロ転写ためのDNA鋳型を、プラスミドSP6p−5’UTRβ−グロビン−ルシフェラーゼからPCRにより合成した。かかる鋳型は、SP6プロモータと、それに続くウサギβ−グロビンmRNAの5’−UTR配列と、ホタルルシフェラーゼmRNAの全コード領域とを含んでいた。通常のインビトロ転写反応混合物(50μl)は、SP6転写緩衝液(Fermentas、カタログ番号EP0131)、2mMの各ATP、CTPおよびUTP、0.1mM GTPおよび1mM ジヌクレオチドキャップ類似体を含んでいた。反応混合物を37℃で5分間インキュベートしてから、SP6 RNAポリメラーゼ(Fermentas)を最終濃度が2U/μlになるよう添加した。37℃で30分間インキュベートした後、GTPを1mMの最終濃度となるように加え、反応をさらに90分間続けた。その後、反応混合物を、鋳型DNA 1μg当たり1UのDNase RQ1(RNAse−free、Promega社)で転写緩衝液中で37℃、20分間処
理した。RNA転写物をDEPC処理セファデックスG−50スピンカラム(Pharmacia社)で精製した。転写物が完全なものであるか否かは、非変性1%アガロースゲルでの電気泳動により確認した。濃度は分光測光法で決定した。転写物を使用するまで−80℃で保存した。
【0065】
実施例21。BH3およびSe類似体でキャップされたmRNAの合成。方法II(類
似体m27,2 ’-OGppBH3pG(D1)、m27,2 ’-OGppBH3pG(D2)、m27,2
’-OGpppBH3G(D1)、m27,2 ’-OGpppBH3G(D2)、m27,2 ’-OGppSepG(D1)およびm27,2 ’-OGppSepG(D2)、m7GppBH3pG(D1)、m7GppBH3pm7G、m27,2 ’-OGppspG(D1)、およびm27,2 ’-OGppspG(D2))キャップ化されたポリアデニル化ルシフェラーゼmRNAを、SP6プロモータと、ウサギβ−グロビンmRNAの5’−UTR配列と、ホタルルシフェラーゼの全コード領域と、31アデノシン残基とを含むdsDNA鋳型からのPCRによりインビトロで合成した。一般的な転写反応混合物(40μl)はSP6転写緩衝液(Fermentas)、0.7μgのDNA鋳型、1U/μl RiboLockリボヌクレアーゼ阻害剤(Fermentas)、0.5mMの各ATP、CPT、およびUTP、0.1mM GTP、および0.5mM ジヌクレオチドキャップ類似体を含んでいた。反応混合物を37℃で5分間インキュベートしてから、SP6 RNAポリメラーゼ(Fermentas)を最終濃度が1U/μlになるよう添加し、続けて37℃で30分間インキュベートした。反応混合物を方法IでのようにDNaseで処理した。RNA転写物をNucAwayスピンカラム(Ambion)で精製した。方法Iでのように転写物と定量が完全なものであるか否かを確認した。
【0066】
実施例22。インビトロシステムでのキャップ化mRNAの翻訳効率。
ミクロコッカスヌクレアーゼで処理したウサギ網状赤血球溶解液系(Flexiウサギ網状赤血球溶解液系、Promega社)を、インビトロ翻訳に使用した。翻訳反応を、10μlに60分間、30℃で行った。通常の反応混合物は40%の網状赤血球溶解液と、20種類の「標準」アミノ酸(各々0.01mM)と、MgCl2(1.2mM)と、
酢酸カリウム(170mM)と、mRNA(各転写物に対して5つの異なる濃度、0.25から4μg/mlまでの範囲に及ぶ)とを含んでいた。ルシフェラーゼ活性をルミノメータ(Glomax、Promega社)で測定した。線形回帰を使用してデータポイントをフィットさせ(ルシフェラーゼ活性対mRNA転写物の濃度)、翻訳効率はこのラインの傾きとして定義した。テストmRNAの相対的翻訳効率を、m7GpppGでキャッ
プ化したルシフェラーゼmRNAのそれと比較し、後者を1.0と定義した。
【0067】
実施例23。BH3類似体によるインビトロでのキャップ依存的翻訳の阻害。インビト
ロ翻訳反応を、キャップ依存的翻訳に好ましい状況下で12.5μl、60分間、30℃にて行なった。ある場合には、反応混合物を60分間30℃でインキュベートしてからジヌクレオチドキャップ類似体(阻害剤)およびm7,3’-OGpppGキャップ化ルシフェ
ラーゼmRNAを加え、翻訳を開始した。他の場合には、生物学的安定性を分析するために、キャップ類似体を翻訳混合物中で60分間、30℃インキュベートしてからルシフェラーゼmRNAを加え、翻訳を開始した。通常の反応混合物は56%の網状赤血球溶解液と、20種類の「標準」アミノ酸(各々0.01mM)と、MgCl2(1.2mM)と
、酢酸カリウム(170mM)と、RiboLockリボヌクレアーゼ阻害剤(0.32U/μl)と、キャップ類似体溶液(合計の反応体積の1/10)と、m27,3’-OGpppG−キャップ化ルシフェラーゼRNAとを含んでいた。転写物はポリアデニル化されていなかったが、代わりに59塩基の3’−UTRを有していた。反応は0.12−100μMの範囲のキャップ類似体濃度で行なった。ルシフェラーゼ活性をルミノメータで測定した。測定から本願発明者らは、50%阻害を生じさせるキャップ類似体の濃度として定義されるIC50値を計算した。プログラムOriginPro8(OriginLab
)を、方程式qLUC=Z/+(1+I/IC50)+Nとの曲線適合に使用した。式中、qLUCはキャップ類似体の存在下で合成されたルシフェラーゼ活性であり、Zはキャップ類似体がない状態で合成されたルシフェラーゼ活性であり、Nはキャップと独立した様式で合成されたルシフェラーゼ活性であり、Iはキャップ類似体の濃度である。データを表2に示す。
【0068】
【表2】

【0069】
実施例24。BH3類似体およびSe類似体の生物物理学的および生化学的特徴付けの
結果。
種々のキャップ類似体の真核生物eIF4Eに対する結合親和性を蛍光消光により決定
した。この生物物理学試験により、翻訳時のキャップ類似体の効能を予測することが可能である。未修飾キャップ類似体(m7GpppG)よりもeIF4Eに対して高い類似性
を有するキャップ類似は、翻訳機に一層よく認識され、翻訳効率がより高くなると予想される。翻訳を阻害するのに自由なキャップジヌクレオチドが使用される場合、未修飾mRNAにより効果的に競争するとも予想される。概略についてはE. Grudzien-Nogalska et al., 鉄ynthesis of anti-reverse cap analogs (ARCAs) and their applications in mRNA translation and stability,・Methods Enzymol., vol. 431, pp. 203-227 (2007)を
参照されたい。結果は、試験されたすべてのBH3類似体およびSe類似体の結合定数が
、その未修飾相当物の結合常数と類似するかそれより高いことを示した。表2および3を参照されたい。
【0070】
【表3】

【0071】
実施例25。BH3類似体およびSe類似体でキャップされたmRNAの翻訳効率。
翻訳効率をインビトロ翻訳により決定した。新規な類似体でキャップされたmRNAは、未修飾の親化合物でキャップされたmRNAより一般に高い翻訳効率を有することが分かった(表4および5)。正しい方向でmRNAが組み込まれた類似体でのみ(BH3
ARCA、Se−ARCAおよびm7GppBH3pm7G)、特に高い翻訳効率が観察され
た。
【0072】
【表4】

【0073】
【表5】

【0074】
実施例26。DcpSによる分解に対する新規な類似体の感受性も決定された。
予想外に、すべてのβ−BH3類似体がDcpS(表2)による加水分解に耐性である
ことが判明した。J. Kowalskaら(2008)は、対応するβ−ホスホロチオエートキャ
ップ類似体がすべてDcpSに弱いことを示しため、この結果は、三リン酸塩架橋の同じ位置に異なるリン酸修飾があると生化学的結果が異なり得ることを示している。Se類似体については、対照的に、γ位置で修飾したものだけが、DcpSに耐性であった(表3)。
【0075】
実施例27。インビトロのキャップ依存的翻訳の阻害剤としてのBH3類似体。
2つのタイプの実験を実行した。実験の一方のセット(条件A)では、キャップ類似体をルシフェラーゼmRNAと一緒に翻訳システムに加えた。実験の他方のセット(条件B)では、mRNAの添加前にキャップ類似体を60分間の翻訳系でインキュベートした。いずれのタイプの実験でも、BH3類似体およびSe類似体は、翻訳(表2および3)の
強い阻害剤であることが分かった。さらに、m7GpppGとは対照的に、これらの類似
体のうちのいくつかのインキュベーションはそれ自信の阻害作用を損なわず、これはおそらくピロホスファターゼ攻撃に対する抵抗を反映している。翻訳系ではDcpSによる加
水分解への耐性と類似体の安定性との間に相関があった。
【0076】
実施例28。翻訳効率の測定および培養HeLa細胞の中でのmRNAの減少
Nucleofector II(Amaxaバイオシステムズ社)を使用し、製造業者の推奨プロトコルに従い、HeLa細胞へRNAを導入した。1μgのRNAを、プログラムT−024を使用してNucleofector溶液(V)で106個の細胞に導
入した。
【0077】
ルシフェラーゼ合成を測定するために、細胞をいくつかのEppendorfチューブに分け、37℃の湯浴に入れて振動させる。タンパク質を抽出するため、2×105個の
細胞を200μlのルシフェラーゼ細胞培養溶解試薬(Promega社)に溶解した。細胞抽出物のルシフェラーゼ活性を製造業者の推奨プロトコルにより測定した。
【0078】
mRNAの安定性を測定するために、細胞を35mmの細胞培養皿に分配し、37℃で5%のCO2高湿度に配置した。細胞を種々の時間に採集し、PBSで2回洗った。細胞
質RNAを抽出するために、2×105細胞を、140mM NaCl、1.5mM M
gCl2、0.5%(v/v)のイゲパール(Igepal、シグマ社)および1mM
ジチオスレイトールを含む50mM Tris−HCl(pH8.0)の175μlに溶解した。RNAをRNeasy(登録商標)miniキットでさらに精製し、リアルタイムPCRで分析した。5.5mM MgCl2、500μM 各dNTP、2.5μM
ランダム壁サマー、0.2ユニットのRNase阻害剤および0.8ユニットのMultiScribe逆転写酵素(Applied Biosystems)を含む20μmの反応混合物で、400ngのRNAに対して逆転写を行なった。反応混合物を25℃で10分間、48℃で30分間、および95℃で5分間インキュベートした。定量的リアルタイムPCRを、Beacon Designerツール(Biorad社)を用いて、各mRNAに対して設計された特定のプライマーに対して行なった。ルシフェラーゼmRNAのレベルを、5’端部から226−398の塩基を増幅するよう設計されたプライマーを使用してPCRにより決定した。マウスGAPDH mRNAのレベルを、同じ方法により(コントロールとして)、マウスGAPDHに特異的なプライマーを使用して決定した。増幅および検出は、5μlの転写反応混合物(50ngのcDNA)、12.5μlのIQ SYBRgreen Supermixおよび0.3mMのプライマー(Bio−Rad)を含む25μlの反応混合物で、iCycler IQリアルタイムPCR検出系で行なった。インキュベーションはポリメラーゼ活性が3分、95℃であり、その後に40サイクル、すなわち95℃で15秒および60℃で1分のそれぞれが続く。ルシフェラーゼmRNAのレベルを、ABI Prism7700配列検出システムに対するユーザー会第2番に記載されているような絶対標準曲線法を使用して計算した。その後、ルシフェラーゼmRNAを、細胞抽出物から精製した全細胞RNAの指標である各サンプル中のマウスGAPDH mRNAの測定レベルとの比較により正規化した。各時点で残っているルシフェラーゼmRNAをゼロ時間に存在するRNAのパーセントに対して変換し、t1/2を決定すべく、log10([RNA])対時間をプロットした。結果を図14に
示す。
【0079】
ルシフェラーゼ合成速度をゼロ時間の細胞中のルシフェラーゼmRNAの濃度に正規化することにより、種々のルシフェラーゼmRNAの翻訳効率を決定した。結果を図15に示す。
【0080】
さらなる実施例
本発明の範囲内の組成物および方法の例には以下のものが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0081】
1つまたは複数の以下の化合物、1つまたは複数の以下の化合物の立体異性体、1つまたは複数の以下の化合物の複数の立体異性体の混合物、もしくは該化合物、該立体異性体、および該混合物のいずれかの1つまたは複数の塩を含む組成物。
【0082】
【化11】

【0083】
(式中、
1、Y2、Y3およびY4はO、BH3およびSeから成るグループから選択され;
種々のYi基は同じであっても異なっていてもよく、iは1、2,3または4であり;
少なくとも1つのYiはBH3またはSeであり;
nは0または1であり;
Rは
【0084】
【化12】

【0085】
から成るグループから選択され:
3とR4は、H、OH、OCH3およびOCH2CH3から成るグループから選択され;
3とR4は同じであっても異なっていてもよく;
Wは
【0086】
【化13】

【0087】
から成るグループから選択され;
1とR2は、H、OH、OCH3またはOCH2CH3から成るグループから選択され;
1とR2は同じであっても異なっていてもよく;かつ
Xはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ベンジル、置換ベンジル、メチレンナフチル、および置換メチレンナフチルから成るグループから選択される。)
1、Y2、Y3およびY4はOおよびBH3から成るグループから選択され;種々のYi基は同じであっても異なっていてもよく、iは1、2,3または4であり;かつ少なくとも1つのYiはBH3である上記組成物。
【0088】
Rが
【0089】
【化14】

【0090】
から成るグループから選択される上記組成物。
3はOH、R4はOHであり
Rが
【0091】
【化15】

【0092】
から成るグループから選択されると、R1およびR2はいずれもOHでない上記組成物。
Wが
【0093】
【化16】

【0094】
であり;R2はOHであり;R1はHまたはOCH3であり;Xはメチルであり;n=0で
あり;Y1、Y2およびY3のうちの1つだけがBH3である上記組成物。
n=0である場合、Y2またはY3がBH3であり;n=1である場合、Y2、Y3または
4がBH3である;上記組成物。
【0095】
5’末端に上記組成物を組み込んでいるRNA分子。
Rが
【0096】
【化17】

【0097】
から成るグループから選択される上記組成物。
インビトロまたはインビボで上記RNA分子を合成する方法であって、ATP、CTP、UTPおよびGTP、上記組成物、ならびにポリヌクレオチド鋳型を、RANポリメラーゼの存在下で、RNAポリメラーゼによるポリヌクレオチド鋳型のRNAコピーへの転写を誘導する条件下で反応させることを含み、それによりいくつかのRNAコピーが前記組成物を組込んで上記RNA分子を製造する方法。
【0098】
タンパク質またはペプチドをインビトロで合成する方法であって、オープンリーディングフレームを有する上記RNA分子を、該オープンリーディングフレームによってコード化されたタンパク質またはペプチドへ翻訳するよう誘導する条件下で、無細胞タンパク質合成系で翻訳することを含む方法。
【0099】
インビボまたは培養細胞でタンパク質またはペプチドを合成する方法であって、オープンリーディングフレームを有する上記RNA分子を、RNA分子のオープンリーディングフレームを該オープンリーディングフレームによってコード化されたタンパク質またはペプチドへ翻訳するよう誘導する条件下で、インビボまたは培養細胞で翻訳することを含む方法。
【0100】
RNAのタンパク質またはペプチドへの翻訳を全部または部分的に阻害するのに有用な量で、RNAをタンパク質またはペプチドに翻訳する系へ上記組成物を投与することを含む方法。
【0101】
前記系は生物体の未変性RNA翻訳系であり、前記方法は該生物体へ組成物をインビボ投与することを含む上記方法。
1、Y2、Y3およびY4はOおよびSeから成るグループから選択され;種々のYi
は同じであっても異なっていてもよく、iは1、2,3または4であり;かつ少なくとも1つのYiはSeである上記組成物。
【0102】
Rが
【0103】
【化18】

【0104】
から成るグループから選択される上記RNA分子。
3はOH、R4はOHであり
Rが
【0105】
【化19】

【0106】
から成るグループから選択されると、R1およびR2はいずれもOHでない上記組成物。
Wが
【0107】
【化20】

【0108】
であり、R2はOHであり;R1はHまたはOCH3であり;Xはメチルであり;n=0で
あり;かつY1、Y2およびY3のうちの1つだけがSeである上記組成物。
n=0の場合、Y2またはY3がSeであり;n=1の場合、Y2、Y3またはY4はSe
である上記組成物。
【0109】
1はOCH3であり;R2はOHであり;R3はOHであり;R4はOHであり;nは0
であり;Y1はOであり;Y2はSeであり;Y3はOであり;Wは
【0110】
【化21】

【0111】
であり、Rは
【0112】
【化22】

【0113】
である上記組成物。
5’末端に上記組成物を組込んでいるRNA分子。
Rは
【0114】
【化23】

【0115】
から成るグループから選択される上記RNA分子。
インビトロまたはインビボで上記RNA分子を合成する方法であって、ATP、CTP、UTPおよびGTP、上記組成物、ならびにポリヌクレオチド鋳型を、RANポリメラーゼの存在下で、RNAポリメラーゼによるポリヌクレオチド鋳型のRNAコピーへの転写を誘導する条件下で反応させることを含み、それによりいくつかのRNAコピーが前記組成物を組込んで上記RNA分子を製造する方法。
【0116】
タンパク質またはペプチドをインビトロで合成する方法であって、オープンリーディングフレームを有する上記RNA分子を、オープンリーディングフレームによってコード化されたタンパク質またはペプチドへ翻訳するよう誘導する条件下で、無細胞タンパク質合
成系で翻訳することを含む方法。
【0117】
インビボまたは培養細胞でタンパク質またはペプチドを合成する方法であって、オープンリーディングフレームを有する上記RNA分子を、RNA分子のオーブンリーディングフレームを該オープンリーディングフレームによってコード化されたタンパク質またはペプチドへ翻訳するよう誘導する条件下で、インビボまたは培養細胞で翻訳することを含む方法。
【0118】
RNAのタンパク質またはペプチドへの翻訳を全部または部分的に阻害するのに有用な量で、RNAをタンパク質またはペプチドに翻訳する系へ上記組成物を投与することを含む方法。
【0119】
前記系は生物体の未変性RNA翻訳系であり、前記方法は該生物体へ組成物をインビボ投与することを含む上記方法。
本明細書に引用されたすべての文献の全開示を本明細書に援用する。両立しない矛盾がある場合は、この明細書が効力を持つものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の以下の化合物、1つまたは複数の以下の化合物の立体異性体、1つまたは複数の以下の化合物の複数の立体異性体の混合物、もしくは該化合物、該立体異性体、および該混合物のいずれかの1つまたは複数の塩を含む組成物。
【化1】

(式中、
1、Y2、Y3およびY4はO、BH3およびSeから成るグループから選択され;
種々のYi基は同じであっても異なっていてもよく、iは1、2,3または4であり;
少なくとも1つのYiはBH3またはSeであり;
nは0または1であり;
Rは
【化2】

から成るグループから選択され:
3とR4は、H、OH、OCH3およびOCH2CH3から成るグループから選択され;
3とR4は同じであっても異なっていてもよく;
Wは
【化3】

から成るグループから選択され;
1とR2は、H、OH、OCH3またはOCH2CH3から成るグループから選択され;
1とR2は同じであっても異なっていてもよく;かつ
Xはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ベンジル、置換ベンジル、メチレンナフチル、および置換メチレンナフチルから成るグループから選択される。)
【請求項2】
1、Y2、Y3およびY4はOおよびBH3から成るグループから選択され;種々のYi基は同じであっても異なっていてもよく、iは1、2,3または4であり;かつ少なくとも1つのYiはBH3である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
Rが
【化4】

から成るグループから選択される請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
Wが
【化5】

であり;R2はOHであり;R1はHまたはOCH3であり;Xはメチルであり;n=0で
あり;Y1、Y2およびY3のうちの1つだけがBH3である請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
n=0である場合、Y2またはY3がBH3であり;n=1である場合、Y2、Y3またはY4がBH3である請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
5’末端に請求項2に記載の組成物を組み込んでいるRNA分子。
【請求項7】
5’末端に請求項5に記載の組成物を組み込んでいるRNA分子。
【請求項8】
Rが
【化6】

から成るグループから選択される請求項7に記載のRNA分子。
【請求項9】
インビトロまたはインビボで請求項6に記載のRNA分子を合成する方法であって、ATP、CTP、UTPおよびGTP、請求項1に記載の組成物、ならびにポリヌクレオチド鋳型を、RANポリメラーゼの存在下で、RNAポリメラーゼによるポリヌクレオチド鋳型のRNAコピーへの転写を誘導する条件下で反応させることを含み、それによりいくつかのRNAコピーが前記組成物を組込んで請求項6に記載のRNA分子を製造する方法。
【請求項10】
タンパク質またはペプチドをインビトロで合成する方法であって、オープンリーディングフレームを有する請求項6に記載のRNA分子を、該オープンリーディングフレームによってコード化されたタンパク質またはペプチドへ翻訳するよう誘導する条件下で、無細胞タンパク質合成系で翻訳することを含む方法。
【請求項11】
インビボまたは培養細胞でタンパク質またはペプチドを合成する方法であって、オープンリーディングフレームを有する請求項6に記載のRNA分子を、RNA分子のオープンリーディングフレームを該オープンリーディングフレームによってコード化されたタンパク質またはペプチドへ翻訳するよう誘導する条件下で、インビボまたは培養細胞で翻訳することを含む方法。
【請求項12】
RNAのタンパク質またはペプチドへの翻訳を全部または部分的に阻害するのに有用な量で、RNAをタンパク質またはペプチドに翻訳する系へ請求項2に記載の組成物を投与することを含む方法。
【請求項13】
前記系は生物体の未変性RNA翻訳系であり、前記方法は該生物体へ組成物をインビボ投与することを含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
1、Y2、Y3およびY4はOおよびSeから成るグループから選択され;種々のYi基は
同じであっても異なっていてもよく、iは1、2,3または4であり;かつ少なくとも1つのYiはSeである請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
Rが
【化7】

から成るグループから選択される請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
Wが
【化8】

であり、R2はOHであり;R1はHまたはOCH3であり;Xはメチルであり;n=0で
あり;かつY1、Y2およびY3のうちの1つだけがSeである請求項15に記載の組成物

【請求項17】
n=0の場合、Y2またはY3がSeであり;n=1の場合、Y2、Y3またはY4はSeで
ある請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
1はOCH3であり;R2はOHであり;R3はOHであり;R4はOHであり;nは0で
あり;Y1はOであり;Y2はSeであり;Y3はOであり;Wは
【化9】

であり、Rは
【化10】

である請求項14に記載の組成物。
【請求項19】
5’末端に請求項14に記載の組成物を組込んでいるRNA分子。
【請求項20】
5’末端に請求項15に記載の組成物を組込んでいるRNA分子。
【請求項21】
Rは
【化11】

から成るグループから選択される請求項20に記載のRNA分子。
【請求項22】
インビトロまたはインビボで請求項19に記載のRNA分子を合成する方法であって、ATP、CTP、UTPおよびGTP、請求項1に記載の組成物、ならびにポリヌクレオチド鋳型を、RANポリメラーゼの存在下で、RNAポリメラーゼによるポリヌクレオチド鋳型のRNAコピーへの転写を誘導する条件下で反応させることを含み、それによりいくつかのRNAコピーが前記組成物を組込んで請求項19に記載のRNA分子を製造する方法。
【請求項23】
タンパク質またはペプチドをインビトロで合成する方法であって、オープンリーディングフレームを有する請求項19に記載のRNA分子を、オープンリーディングフレームによってコード化されたタンパク質またはペプチドへ翻訳するよう誘導する条件下で、無細胞タンパク質合成系で翻訳することを含む方法。
【請求項24】
インビボまたは培養細胞でタンパク質またはペプチドを合成する方法であって、オープンリーディングフレームを有する請求項19に記載のRNA分子を、RNA分子のオーブンリーディングフレームを該オープンリーディングフレームによってコード化されたタンパク質またはペプチドへ翻訳するよう誘導する条件下で、インビボまたは培養細胞で翻訳することを含む方法。
【請求項25】
RNAのタンパク質またはペプチドへの翻訳を全部または部分的に阻害するのに有用な量で、RNAをタンパク質またはペプチドに翻訳する系へ請求項14に組成物を投与することを含む方法。
【請求項26】
前記系は生物体の未変性RNA翻訳系であり、前記方法は該生物体へ組成物をインビボ投与することを含む請求項25に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2011−522542(P2011−522542A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512643(P2011−512643)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/046249
【国際公開番号】WO2009/149253
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(510316682)ウニヴェルシテ ワルシャワスキ (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIWERSYTET WARSZAWSKI
【出願人】(510316637)ボード オブ スーパーバイザーズ オブ ルイジアナ ステイト ユニバーシティ アンド アグリカルチュラル アンド メカニカル カレッジ (1)
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF SUPERVISORS OF LOUISIANA STATE UNIVERSITY AND AGRICULTURAL AND MECHANICAL COLLEGE
【Fターム(参考)】