説明

o−ヒドロキシフェニル基含有有機基を有するオルガノポリシロキサン及びその製造方法

【課題】フェノール基がカルボン酸アミド基を介してケイ素原子に結合しながら、極性官能基を有する有機樹脂との相溶性、反応性に優れたフェノール基を有するオルガノポリシロキサンとその製造方法を提供する。
【解決手段】o-ヒドロキシフェニル基がエチレン基・カルボン酸アミド基・アルキレン基を介してケイ素原子に結合したオルガノポリシロキサン。アミノアルキル基を有するオルガノポリシロキサンと、(B)水酸基、アルコキシ基またはアルキル基で置換されることのある3,4-ジヒドロクマリン類とを反応させることを特徴とする、前記オルガノポリシロキサンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、o-ヒドロキシフェニル基含有有機基を有するオルガノポリシロキサンおよびその製造方法に関し、詳しくはo-ヒドロキシフェニル基がエチレン基・カルボン酸アミド基・アルキレン基を介してオルガノポリシロキサン中のケイ素原子に結合したオルガノポリオルガノシロキサンおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロキシフェニル基、すなわち、フェノ−ル基がオルガノポリシロキサン中のケイ素原子に直接または連結基を介して結合したオルガノポリシロキサンは、既に公知である。例えば、特許文献1には、両末端にケイ素原子結合水素原子を有するジメチルポリシロキサンとo-アリルフェノールとのヒドロシリル化反応により合成された、ヒドロキシフェニル基がプロピレン基を介してジメチルポリシロキサン中のケイ素原子に結合したジメチルポリシロキサンが開示されている。特許文献2、特許文献3にもヒドロキシフェニル基がプロピレン基を介してジメチルポリシロキサン中のケイ素原子に結合したジメチルポリシロキサンが開示されている。特許文献4には、両末端にケイ素原子結合水素原子を有するジオルガノポリシロキサンとオイゲノールとのヒドロシリル化反応により合成された、ヒドロキシフェニル基がプロピレン基を介してジオルガノポリシロキサン中のケイ素原子に結合したジオルガノポリシロキサンが開示されている。
かかるヒドロキシフェニル基がアルキレン基を介してオルガノポリシロキサン中のケイ素原子に結合したオルガノポリシロキサンを、ヒドロキシフェニル基の反応性を利用してポリカーボネート樹脂(特許文献4)、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の有機樹脂の改質に供する試みがされている。
【0003】
しかしながら、かかるヒドロキシフェニル基がアルキレン基を介してオルガノポリシロキサン中のケイ素原子に結合したオルガノポリシロキサンは、連結基が非極性のアルキレン基であるので、極性官能基を有する有機樹脂(例えば、エポキシ樹脂)との相溶性が乏しく、反応性が十分でない。特許文献5には、ヒンダードフェノール基が極性の高いカルボン酸アミド基を介してオルガノポリシロキサン中のケイ素原子に結合したオルガノポリシロキサンおよびその製造方法が、提案されている。ヒドロキシフェニル基近傍に極性基を導入しているので、改質したい有機樹脂(例えば、エポキシ樹脂)中の極性官能基との相溶性が向上しているが、ヒンダードフェノール基は、有機樹脂中の官能基との反応性が低く、極性官能基を有する有機樹脂の改質には不適であるという問題がある。
【0004】
【特許文献1】米国特許第 3,419,634号(第5頁の実施例5)
【特許文献2】特開平7−196804号公報
【特許文献3】特開平7−196805号公報
【特許文献4】特開平5‐247195号公報(第4頁〜第5頁の段落番号0018〜0019)
【特許文献5】特開平10-204180号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる問題点に鑑み、本発明は、フェノ−ル基がカルボン酸アミド基を介してオルガノポリシロキサン中のケイ素原子に結合したオルガノポリシロキサンでありながら、極性官能基を有する有機樹脂との相溶性、反応性に優れたオルガノポリシロキサンとその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、「[1] 平均単位式:RabSiO(4-a-b)/2 (1)
〔式中、Rは1価炭化水素基または1価置換炭化水素基(ただし、Kに該当するものを除く)であり、Kは一般式(2):
【化1】

(式中、Rはエチレン基またはアルキル置換エチレン基、Rは水素原子または炭素原子数1〜8の1価炭化水素基、R3はアルキレン基であり、Xは水酸基、アルコキシ基またはアルキル基で置換されることのあるo-ヒドロキシフェニル基であり、pは1〜10の整数である。)で示されるo-ヒドロキシフェニル基含有有機基であり、a、bはそれぞれ1≦a≦2.5、0.0005≦b≦1.5である。〕を有するオルガノポリシロキサン。
[2] Xが式(3):
【化2】

(式中、Yは水酸基、アルコキシ基またはアルキル基であり、cは0〜4の整数である。)で示されるo-ヒドロキシフェニル基であることを特徴とする[1]記載のオルガノポリシロキサン。
[3] (A)一般式(4):
【化3】

(式中、R、R、pは前記どおりである。)で示されるアミノアルキル基を有するオルガノポリシロキサンと、(B)水酸基、アルコキシ基またはアルキル基で置換されることのある3,4-ジヒドロクマリン類とを反応させることを特徴とする、(C)一般式(2):
【化4】

(式中、R、R、R3、X、pは前記どおりである。)で示されるo-ヒドロキシフェニル基含有有機基を有するオルガノポリシロキサンの製造方法。
[4] アミノアルキル基を有する(A)が、(A1)平均単位式:RabSiO(4-a-b)/2 (5)
〔式中、R、a、bは前記どおりであり、Lは、一般式(4):
【化5】

(式中、R、R、pは前記どおりである。)で示されるアミノアルキル基である。〕を有するオルガノポリシロキサンであり、o-ヒドロキシフェニル基含有有機基を有するオルガノポリシロキサン(C)が請求項1記載のオルガノポリシロキサンであることを特徴とする、[3]記載のオルガノポリシロキサンの製造方法。
[5] 3,4-ジヒドロクマリン類(B)が式(6):
【化6】

(式中、Y、c、R1は前記どおりである。)で示されるものであることを特徴とする[3]または[4]記載のオルガノポリシロキサンの製造方法。」に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、o-ヒドロキシフェニル基がエチレン基・カルボン酸アミド基・アルキレン基を介してオルガノポリシロキサン中のケイ素原子に結合しているオルガノポリシロキサンが提供される。このo-ヒドロキシフェニル基含有有機基を有するオルガノポリシロキサンは、o-ヒドロキシフェニル基がエチレン基・カルボン酸アミド基・アルキレン基を介してオルガノポリシロキサン中のケイ素原子に結合しているので、極性官能基を有する有機樹脂との相溶性、反応性に優れている。
本発明のo-ヒドロキシフェニル基含有有機基を有するオルガノポリシロキサンの製造方法は、該オルガノポリシロキサンを簡易に生産性よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のo-ヒドロキシフェニル基含有有機基を有するオルガノポリシロキサンは、平均単位式:RabSiO(4-a-b)/2 (1)
〔式中、Rは1価炭化水素基または1価置換炭化水素基(ただし、Kに該当するものを除く)であり、Kは一般式(2):
【化7】

(式中、Rはエチレン基またはアルキル置換エチレン基、Rは水素原子または炭素原子数1〜8の1価炭化水素基、R3はアルキレン基であり、Xは水酸基、アルコキシ基またはアルキル基で置換されることのあるo-ヒドロキシフェニル基であり、pは1〜10の整数である。)で示されるo-ヒドロキシフェニル基含有有機基であり、a、bはそれぞれ1≦a≦2.5、0.0005≦b≦1.5である。〕を有するものであれば、その構成シロキサン単位、構造式、重合度、分子量、常温での性状等は特に制限されない。
【0009】
上記平均単位式(1)で示されるオルガノポリシロキサンの構成シロキサン単位は、(i)KSiO3/2 、RKSiO2/2 、(R)2KSiO1/2 ;(ii)RSiO3/2 、(R)2SiO
2/2 、(R)SiO1/2 、SiO4/2 がある。
式(2)で示されるo-ヒドロキシフェニル基含有有機基を有するオルガノポリシロキサンとして、(i)群の1〜3単位からなるオルガノポリシロキサン、ならびに、(i)群の1〜3単位と(ii)群の1〜3単位とからなるオルガノポリシロキサンがあり得る。これらオルガノポリシロキサン中の一部のケイ素原子に水酸基やアルコキシ基が結合していてもよい。
【0010】
Rは、1価炭化水素基または1価置換炭化水素基(ただし、Kに該当するものを除く)であり、1価炭化水素基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基が例示される。その炭素原子数は1〜12が好ましい。これらのうちでは、アルキル基とフェニル基が一般的であり、メチル基がもっとも一般的であり、ついでメチル基とフェニル基の組み合わせが一般的である。
1価置換炭化水素基(ただし、Kに該当するものを除く)としてフッ化アルキル基、塩化アルキル基が例示され、フッ化アルキル基の具体例として3,3,3-トリフルオロプロピル基、4,4,4,3,3-ペンタフルオロブチル基が挙げられ、塩化アルキル基の具体例として3−クロロプロピル基が挙げられる。アルコキシカルボニルアルキル基やアシルオキシアルキル基も例示される。R基数、すなわち、aは、分子中のケイ素原子1個当たり、平均1以上、2.5以下である。
【0011】
K基数、すなわち、bは、分子中のケイ素原子1個当たり、平均0.0005以上、1.5以下であり、好ましくは、平均0.001以上、1以下である。a+bは、分子中のケイ素原子1個当たり、平均1.001以上、2.6以下である。
【0012】
式(2)で示されるo-ヒドロキシフェニル基含有有機基は、オルガノポリシロキサン1分子中に少なくとも1個存在すればよい。bは0.0005≦b≦1.5であるので、式(2)で示されるo-ヒドロキシフェニル基含有有機基の最小数は分子中のケイ素原子2000個当たり平均1個であり、最大数は分子中のケイ素原子1個当たり平均1.5個であるが、少なすぎると有機樹脂への反応性が乏しくなり、平均1個を越えるものは製造が容易でないので、好ましくは0.001≦b≦1.0である
【0013】
Xは水酸基、アルコキシ基またはアルキル基で置換されることのあるo-ヒドロキシフェニル基であり、式(3):
【化8】

で示される。Yは水酸基、アルコキシ基またはアルキル基であり、アルコキシ基としてメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基が例示され、アルキル基としてはメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基が例示される。アルコキシ基およびアルキル基の炭素原子数は4以下が好ましい。cは0〜4の整数であり、0と1と2が好ましい。
【0014】
はエチレン基またはアルキル置換エチレン基であり、エチレン基、メチルエチレン基、エチルエチレン基が例示される。該アルキル基の炭素原子数は3以下が好ましい。
は水素原子または炭素原子数1〜8の一価炭化水素基であり、一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基が例示される。
はアルキレン基であり、ケイ素原子に直結したRは、製造上の容易さからその炭素原子数は2〜10が好ましく、2〜4がより好ましい。アミド基の窒素原子に直結したRは、製造上の容易さからその炭素原子数は2〜4が好ましく、いずれもエチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基、ブチレン基が例示される。
pは0〜10の整数であるが、製造上の容易さから0または1が好ましい。
【0015】
このような一般式(2)で示されるo-ヒドロキシフェニル基含有有機基のX-R-CO-として以下の基が例示される。
【化9】

【0016】
本発明の平均単位式(1)を有するオルガノポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、分岐した直鎖状、分岐状、網状、環状などいずれでもよい。式(2)で示されるo-ヒドロキシフェニル基含有有機基は分子鎖の末端のみ、側鎖のみ、あるいは、末端と側鎖の両方に存在している。本発明の平均単位式(1)を有するオルガノポリシロキサンの重合度は、2量体以上であり、上限は重合・合成が可能な重合度である。常温での性状は液状が一般的であるが、ペースト状、半固体状、固体状であってもよい。
【0017】
本発明の平均単位式(1)を有するオルガノポリシロキサンは、製造の容易さと性状の点で、下記構造式で示される直鎖状のものが好ましい。
【化10】


【化11】


【化12】


【化13】


式中、RとKは前記どおりであり、mは0以上の整数であり、nは1以上の整数である。mの上限値はbに相当するK/Siが0.0005となる整数であり、m+nの上限値はbに相当するK/Siが0.0005となる整数である。
【0018】
一般式(2)で示されるo-ヒドロキシフェニル基含有有機基を有するオルガノポリシロキサン(C)は、一般式(4)で示されるアミノアルキル基を有するオルガノポリシロキサン(A)と、水酸基、アルコキシ基またはアルキル基で置換されることのある3,4-ジヒドロクマリン類(B)とを反応させることによって収率よく容易に製造することができる。
一般式(2)で示されるo-ヒドロキシフェニル基含有有機基を有するオルガノポリシロキサン(C)は、分子中に少なくとも1個の一般式(2)で示されるo-ヒドロキシフェニル基含有有機基を有すればよく、その構成シロキサン単位、構造式、重合度、分子量、常温での性状等は特に制限されない。その分子構造は、直鎖状、分岐した直鎖状、分岐状、網状、環状などいずれでもよい。式(2)で示されるo-ヒドロキシフェニル基含有有機基は分子鎖の末端のみ、側鎖のみ、あるいは、末端と側鎖の両方に存在している。
その重合度は、2量体以上であり、上限は重合・合成が可能な重合度である。常温での性状は液状が一般的であるが、ペースト状、半固体状、固体状であってもよい。
【0019】
一般式(2)で示されるo-ヒドロキシフェニル基含有有機基を有するオルガノポリシロキサン(C)の構成シロキサン単位は、(1)KSiO3/2 、RKSiO2/2 、K(R)2SiO1/2 ;(2)RSiO3/2 、(R)2SiO2/2 、(R)SiO1/2 、SiO4/2 がある。
式(2)で示されるo-ヒドロキシフェニル基含有有機基を有するオルガノポリシロキサンとして、(1)群の1〜3単位からなるオルガノポリシロキサンと、(1)群の1〜3単位と(2)群の1〜3単位とからなるオルガノポリシロキサンがあり得る。これらオルガノポリシロキサン中の一部のケイ素原子に水酸基やアルコキシ基が結合していてもよい。
【0020】
一般式(2)で示されるo-ヒドロキシフェニル基含有有機基を有するオルガノポリシロキサン(C)の代表例は、平均単位式(1)を有するオルガノポリシロキサンである。
本発明の平均単位式(1)を有するオルガノポリシロキサンは、
(A1)平均単位式:RabSiO(4-a-b)/2 (5)
〔式中、Rは前記どおりであり、Lは、一般式(4):
【化14】

(式中、R、R、pは前記どおりである。)で示されるアミノアルキル基である。〕を有するオルガノポリシロキサンと、(B)水酸基、アルコキシ基またはアルキル基で置換されることのある3,4-ジヒドロクマリン類とを反応させることによって収率よく容易に製造することができる。
【0021】
平均単位式(5)を有するオルガノポリシロキサン(A1)の構成シロキサン単位、構造式、重合度、分子量、常温での性状等は、平均単位式(1)を有するオルガノポリシロキサンに順ずる。
【0022】
その構成シロキサン単位は、(iii)LSiO3/2 、RLSiO2/2 、(R)2 LSiO1/2 ;(ii)RSiO3/2 、(R)2SiO2/2 、(R)SiO1/2 、SiO4/2がある。平均単位式(5)を有するオルガノポリシロキサン(A1)は、(iii)群の1〜3単位からなるオルガノポリシロキサン、ならびに、(iii)群の1〜3単位と(ii)群の1〜3単位とからなるオルガノポリシロキサンがあり得る。これらオルガノポリシロキサン中の一部のケイ素原子に水酸基やアルコキシ基が結合していてもよい。
【0023】
一般式(4)で示されるアミノアルキル基は、オルガノポリシロキサン1分子中に少なくとも1個存在すればよい。bは0.0005≦b≦1.5であるので、一般式(4)で示されるアミノアルキル基の最小数は分子中のケイ素原子2000個当たり平均1個であり、最大数は分子中のケイ素原子1個当たり平均1.5個であるが、少なすぎると反応性が乏しくなり、平均1個を越えるものは製造が容易でないので、好ましくは0.001≦b≦1.0である。
平均単位式(5)を有するオルガノポリシロキサン(A1)の分子構造は、直鎖状、分岐した直鎖状、分岐状、網状、環状などいずれでもよく、一般式(4)で示されるアミノアルキル基は分子鎖の末端のみ、側鎖のみ、あるいは、末端と側鎖の両方に存在している。
【0024】
3,4-ジヒドロクマリン類(B)は、式(6):
【化15】

(式中、Y、c、R1は上記のとおりである。)で示されるものが代表的であり、以下に示す化合物が例示される。
【化16】

【0025】
一般式(4)で示されるアミノアルキル基を有するオルガノポリシロキサンと3,4-ジヒドロクマリン類(B)との反応、ならびに、平均単位式(5)を有するオルガノポリシロキサン(A1)と3,4-ジヒドロクマリン類(B)との反応は、両者を共通の溶媒に溶解するか、懸濁し、室温下または加熱しながら攪拌することによって行われる。溶媒は極性溶媒が好ましく、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール類が好適である。
反応時間は、一般式(4)で示されるアミノアルキル基を有するオルガノポリシロキサンの反応性または平均単位式(5)を有するオルガノポリシロキサン(A1)の反応性、3,4-ジヒドロクマリン類の反応性、および使用する溶媒によって異なるので一律ではないが、低級アルコールを用いた場合、還流温度で10時間以内である。反応終了後、溶媒のような低沸点物を加熱減圧下で留去することによって目的とする一般式(2)で示されるo-ヒドロキシフェニル基含有有機基を有するオルガノポリシロキサン(C)、または、平均単位式(1)を有するオルガノポリシロキサンが得られる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0027】
[実施例1]
温度計、撹拌棒および還流冷却管付きガラスフラスコに、下記平均構造式(7):
【化17】

を有する両末端アミノプロピル基封鎖ジメチルポリシロキサン5.00グラム(NH:13.1ミリモル)、ジヒドロクマリン1.94グラム(13.1ミリモル)及びエタノール5.00グラムを投入して窒素雰囲気下で混合し、40℃で2.5時間攪拌した。赤外線吸光(IR)分析の結果、原料のジヒドロクマリンのラクトン構造に由来する特性吸収(1774cm−1)が消失したので反応終了とし、低沸点物を加熱減圧下除去することにより透明な粘稠液体6.80グラム(収率98%)を得た。このものは赤外線吸光(IR)分析の結果(アミド基に由来する1650cm−1の吸収が生成し、フェノール性水酸基に由来する3300cm−1の吸収が消失したこと)及び13C核磁気共鳴(13C NMR)分析の結果(ジヒドロクマリンのラクトン環のカルボニル炭素に由来する168.4ppmのシグナルが消失し、アミドのカルボニル炭素に由来する173.3ppmのシグナルが生成したこと)から、下記平均構造式(8)の両末端にo-ヒドロキシフェニル基を有するジメチルポリシロキサンであることが判明した。
【化18】


この粘稠液体は長期間室温で保存するとやがて固化した。
【0028】
容器にビスフェノールAジグリシジルエーテル3.73グラム(10.95ミリモル)ビスフェノールA 2.00グラム(8.77ミリモル)、上記のヒドロキシフェニル基を有するジメチルポリシロキサン2.32グラム(2.18ミリモル)およびトリ-n-ブチルアミン0.04グラムを投入してよく撹拌し、150℃に4時間保持すると硬化した。赤外線吸光(IR)分析の結果(エポキシ基に由来する820〜840cm-1の特性吸収はほとんど消失していた)から、水酸基がエポキシ基とよく反応したことがわかった。
【0029】
[実施例2]
温度計、撹拌棒および還流冷却管付きガラスフラスコに、下記平均構造式(9):
【化19】

を有する両末端アミノプロピル基封鎖ジメチルポリシロキサン5.00グラム(NH2:2.13ミリモル)、3,4-ジヒドロクマリン0.32グラム(2.13ミリモル)及びエタノール10.0グラムを窒素雰囲気下で混合し、40℃で2.5時間攪拌した。このものは、赤外線吸光(IR)分析の結果、原料のジヒドロクマリンのラクトン構造に由来する特性吸収(1774cm−1)が消失したので反応終了とし、低沸点物を加熱減圧下除去することにより透明な粘稠液体0.52グラム(収率98重量%)を得た。このものは赤外線吸光(IR)分析の結果(アミド基に由来する1650cm−1の吸収が生成し、フェノール性水酸基に由来する3300cm−1の吸収が消失したこと)及び13C核磁気共鳴(13C NMR)分析の結果(ジヒドロクマリンのラクトン環のカルボニル炭素に由来する168.4ppmのシグナルが消失し、アミドのカルボニル炭素に由来する173.3ppmのシグナルが生成したこと)から、下記平均構造式(10)の両末端にo-ヒドロキシフェニル基含有有機基を有するジメチルポリシロキサンであることが判明した。
【化20】

【0030】
[実施例3]
温度計、撹拌棒および還流冷却管付きガラスフラスコに、下記平均構造式(11):
【化21】

を有する両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチル(3-アミノプロピル)シロキサン共重合体5.00グラム(NH:2.66ミリモル)、ジヒドロクマリン0.39グラム(2.66ミリモル)及びエタノール5.00グラムを投入して窒素雰囲気下で混合し、40℃で2.5時間攪拌した。赤外線吸光(IR)分析の結果、原料のジヒドロクマリンのラクトン構造に由来する特性吸収(1774cm−1)が消失したので反応終了とし、低沸点物を加熱減圧下除去することにより透明な粘稠液体5.1グラム(収率95%)を得た。このものは赤外線吸光(IR)分析の結果(アミド基に由来する1650cm−1の吸収が生成し、フェノール性水酸基に由来する3300cm−1の吸収が消失したこと)及び13C核磁気共鳴(13C NMR)分析の結果(ジヒドロクマリンのラクトン環のカルボニル炭素に由来する168.4ppmのシグナルが消失し、アミドのカルボニル炭素に由来する173.3ppmのシグナルが生成したこと)から、下記平均構造式(12)の側鎖にo-ヒドロキシフェニル基含有有機基を有するジメチルポリシロキサンであることが判明した。
【化22】

【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のo-ヒドロキシフェニル基含有有機基を有するオルガノポリシロキサンは、極性官能基を有する有機樹脂との相溶性、反応性に優れているので、その改質に有用である。また、その他の樹脂への添加剤、ゴム添加剤、皮革処理剤、繊維処理剤、紙処理剤、粉体処理剤、カーワックス添加剤、化粧料添加剤等として有用である。
本発明のo-ヒドロキシフェニル基含有有機基を有するポリオルガノシロキサンの製造方法は該オルガノポリシロキサンを生産に有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均単位式:RabSiO(4-a-b)/2 (1)
〔式中、Rは1価炭化水素基または1価置換炭化水素基(ただし、Kに該当するものを除く)であり、Kは一般式(2):
【化1】

(式中、Rはエチレン基またはアルキル置換エチレン基、Rは水素原子または炭素原子数1〜8の1価炭化水素基、R3はアルキレン基であり、Xは水酸基、アルコキシ基またはアルキル基で置換されることのあるo-ヒドロキシフェニル基であり、pは1〜10の整数である。)で示されるo-ヒドロキシフェニル基含有有機基であり、a、bはそれぞれ1≦a≦2.5、0.0005≦b≦1.5である。〕を有するオルガノポリシロキサン。
【請求項2】
Xが式(3):
【化2】

(式中、Yは水酸基、アルコキシ基またはアルキル基であり、cは0〜4の整数である。)で示されるo-ヒドロキシフェニル基であることを特徴とする請求項1記載のオルガノポリシロキサン。
【請求項3】
(A)一般式(4):
【化3】

(式中、R、R、pは前記どおりである。)で示されるアミノアルキル基を有するオルガノポリシロキサンと、(B)水酸基、アルコキシ基またはアルキル基で置換されることのある3,4-ジヒドロクマリン類とを反応させることを特徴とする、(C)一般式(2):
【化4】

(式中、R、R、R3、X、pは前記どおりである。)で示されるo-ヒドロキシフェニル基含有有機基を有するオルガノポリシロキサンの製造方法。
【請求項4】
アミノアルキル基を有するオルガノポリシロキサン(A)が、(A1)平均単位式:RabSiO(4-a-b)/2 (5)
〔式中、R、a、bは前記どおりであり、Lは、一般式(4):
【化5】

(式中、R、R、pは前記どおりである。)で示されるアミノアルキル基である。〕を有するオルガノポリシロキサンであり、o-ヒドロキシフェニル基含有有機基を有するオルガノポリシロキサン(C)が請求項1記載のオルガノポリシロキサンであることを特徴とする、請求項3記載のオルガノポリシロキサンの製造方法。
【請求項5】
3,4-ジヒドロクマリン類(B)が式(6):
【化6】

(式中、Y、c、R1は前記どおりである。)で示されるものであることを特徴とする請求項3または請求項4記載のオルガノポリシロキサンの製造方法。


【公開番号】特開2006−182949(P2006−182949A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−379545(P2004−379545)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】