説明

p53突然変異体の結晶構造とその使用

本発明は、220、143、又は270位のβサンドイッチ領域中に突然変異を有するp53の結晶に関する。この構造は、βサンドイッチ領域内に結合してタンパク質を安定化できるβリガンドを同定する、コンピューターに基づく薬剤設計のために使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍抑制タンパク質p53の変異体の結晶、その構造、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍抑制タンパク質p53は393アミノ酸の転写因子であり、これは細胞サイクルを調節し、癌発生の予防において主要な役割を果たす。細胞ストレス(例えば、UV照射、低酸素、及びDNA損傷)に応答して、p53はG1及びG2細胞サイクルの停止及びアポトーシスに関連する多くの遺伝子の転写を誘導する(1〜3)。ヒトの癌の約50%で、p53はp53遺伝子のミスセンス突然変異の結果として不活性化される(4、5)。
【0003】
p53の多機能性はその構造の複雑さに反映されている。p53テトラマー中の各鎖は、いくつかのドメインからなる。十分に規定されたDNA結合性ドメイン及び四量体化ドメイン、並びに非常に可動性の、大部分が構造化していない領域がある(6〜11)。多くのp53癌突然変異は、このタンパク質のDNA結合コアドメイン中に位置する(4)。このドメインは、X線結晶解析(6)によってそのコグネートDNAとの複合体で、及びNMR(12)によって溶液中のその遊離形態で、構造的に特徴付けられている。これは、DNA結合表面の基本的足場となる2つの逆平行のβシートの中央のβサンドイッチからなる。DNA結合表面は、亜鉛イオンとループ−シート−へリックスモチーフとにより安定化される2つのβターンループ(L2及びL3)からなる。これらの構造要素は一緒に、陽性荷電アミノ酸に富む伸長されたDNA結合表面を形成し、種々のp53応答要素と特異的に接触する。ヒトの癌で最も高頻度に突然変異する6つのアミノ酸残基は、DNA結合表面中又はこの近くに位置する(www-p53.iarc.frでp53突然変異データベースのリリースR10を参照)(4)。これらの残基は、これらがDNAに直接接触するか、又はDNA結合表面の構造的完全性の維持に役割を果たすかにより、「接触」(Arg248、Arg273)又は「構造」(Arg175、Arg245、Arg249、Arg282)残基として分類されている(6)。
【0004】
体温でほんのわずかに安定なp53は、非常に動的でかつ本質的に不安定であるという証拠が増えつつあり(12、22、35)、例えば腫瘍抑制タンパク質p16についても共通の形質が観察されている(36)。
【0005】
尿素変性試験は、接触突然変異体R273Hはコアドメインの熱力学的安定性に何の影響も無いが、構造突然変異はこのタンパク質を実質的に不安定化する(これはG245Sについての1 kcal/mol及びR249Sについての2 kcal/molから、R282Wについての3 kcal/mol以上の範囲である)ことを示している(13)。この不安定化は、細胞中のこれらの突然変異体の折り畳み状態に深刻な意味を有する。野生型コアドメインはほんのわずかに安定であり、室温よりほんのわずかに高い融点を有するため、高度に不安定化した突然変異体(例えばR282W)は生理的条件下ではほとんど展開されてしまい、従って機能しなくなる(14)。
【0006】
多くのp53突然変異体は展開されてしまうため、これらの突然変異体のタンパク質結晶を作製することができない。この問題を克服するために、p53の熱安定性の合成の機能的変異体(「T-p53C」と呼ぶ)が使用されている。この変異体は、置換M133L、V203A、N239Y、及びN268Dを有する。この変異体は癌ホットスポット突然変異体R273H及びR249Sの導入に使用され、これら2つの突然変異体の構造はX線結晶解析により決定された(18)。これらの構造研究は、極めて重要なDNA接触が失われているが、DNA結合表面全体の構造は保存されている純粋なDNA接触突然変異体としてR273Hを樹立した。これに対してR249S突然変異は、L3ループ中に、Arg248を介したDNA結合に直接的に関与しかつDNA結合形態において異なるコアドメイン間で境界面の一部を形成する、実質的なコンフォメーション変化を誘導する。さらに、第2部位抑制突然変異H168Rは、野生型においてArg249の構造的役割を模倣することにより、特異的な様式でR249Sの機能をレスキューする(18)。
【0007】
しかし癌関連突然変異はDNA結合表面に制限されておらず、前記タンパク質のβサンドイッチ領域にも見られる。DNA結合表面の外側の最も一般的な突然変異はY220Cである。これはβ鎖S7とS8とを連結する折り返しの開始部分でβサンドイッチの遠端に位置する。Try220のベンゼン部分はβサンドイッチの疎水性コアの一部を形成するが、ヒドロキシル基は溶媒に向いている。
【0008】
DNA結合表面から離れた他の突然変異には、β鎖S3上に位置するV143A癌突然変異とF270Lとがある。前者は温度感受性p53突然変異体の古典的な例である。体温でこの変異体は不活性でかつ展開されているが、低温では転写促進活性を保持する(15)。
【0009】
近年、包括的なミスセンス突然変異ライブラリーをスクリーニングすることにより非常に多数の温度感受性突然変異体が同定された(16)。ほとんどの突然変異はβサンドイッチ中に集中している。定性的NMR研究は、ホットスポット突然変異体が特徴的な局所的構造変化を証明していることを示した(17)。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、DNA結合表面の外側のβサンドイッチ領域に変化を有するp53突然変異体の構造に関する。T-p53Cを使用して本発明者らは、p53中の結合キャビティ候補が作製されるようなp53への変化を引き起こす特定の突然変異体に対する構造変化を見いだした。これらのキャビティは、p53突然変異体の安定化及びレスキューの標的を提供する。
【0011】
一態様において、本発明者らは、Y220C突然変異体がp53に構造変化を引き起こし、これがβサンドイッチドメインの遠端で溶媒がアクセス可能な間隙の生成を生じることを見いだした。突然変異によるこの構造変化は、野生型で既存のやや浅い表面の2つの裂け目を連結して、T-p53C-Y220Cにおいて長い延長した間隙を形成する(残基109、145〜157、202〜204、219〜223、228〜230、及び257)。この突然変異による誘導される間隙は、突然変異部位(Cys220)にその最深地点を有し、その結果、小分子薬剤、特に突然変異体Y220C及び/又はキャビティの残基を選択的に標的化する部分を有する小分子薬剤、に対する結合ポケットを提供する。
【0012】
別の態様において、本発明者らは、βサンドイッチ領域の疎水性コアの両側に並ぶ残基への2つの別々の突然変異(V143A及びF270L)が、大きな疎水性キャビティを生成させることを見いだした。各場合でキャビティは周囲の構造の陥没を引き起こすようにはみえないが、増加した空間容積の生成は、これらの突然変異体の低い融点によって反映されるタンパク質の安定性の喪失を引き起こす。従ってこれらの突然変異体の構造は、これらの突然変異により引き起こされるキャビティを安定化するのに使用できる分子を同定するための標的創薬を可能にする。
【0013】
すなわち一般的態様において、本発明は、p53突然変異体の構造の提供と、分子構造、例えば潜在的な及び既存の医薬化合物、又はかかる化合物の断片と、その構造との相互作用のモデリングにおけるその使用に関する。
【0014】
本発明のこれらの及び他の態様、及び実施形態は以下で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1−1】図1−1は、T-p53C-Y220Cの構造の座標データを示す。
【図1−2】図1−1の続き。
【図1−3】図1−2の続き。
【図1−4】図1−3の続き。
【図1−5】図1−4の続き。
【図1−6】図1−5の続き。
【図1−7】図1−6の続き。
【図1−8】図1−7の続き。
【図1−9】図1−8の続き。
【図1−10】図1−9の続き。
【図1−11】図1−10の続き。
【図1−12】図1−11の続き。
【図1−13】図1−12の続き。
【図1−14】図1−13の続き。
【図1−15】図1−14の続き。
【図1−16】図1−15の続き。
【図1−17】図1−16の続き。
【図1−18】図1−17の続き。
【図1−19】図1−18の続き。
【図1−20】図1−19の続き。
【図1−21】図1−20の続き。
【図1−22】図1−21の続き。
【図1−23】図1−22の続き。
【図1−24】図1−23の続き。
【図1−25】図1−24の続き。
【図1−26】図1−25の続き。
【図1−27】図1−26の続き。
【図1−28】図1−27の続き。
【図1−29】図1−28の続き。
【図1−30】図1−29の続き。
【図1−31】図1−30の続き。
【図1−32】図1−31の続き。
【図1−33】図1−32の続き。
【図1−34】図1−33の続き。
【図1−35】図1−34の続き。
【図1−36】図1−35の続き。
【図1−37】図1−36の続き。
【図1−38】図1−37の続き。
【図1−39】図1−38の続き。
【図1−40】図1−39の続き。
【図1−41】図1−40の続き。
【図1−42】図1−41の続き。
【図1−43】図1−42の続き。
【図1−44】図1−43の続き。
【図1−45】図1−44の続き。
【図1−46】図1−45の続き。
【図1−47】図1−46の続き。
【図1−48】図1−47の続き。
【図1−49】図1−48の続き。
【図1−50】図1−49の続き。
【図1−51】図1−50の続き。
【図1−52】図1−51の続き。
【図1−53】図1−52の続き。
【図1−54】図1−53の続き。
【図1−55】図1−54の続き。
【図1−56】図1−55の続き。
【図1−57】図1−56の続き。
【図1−58】図1−57の続き。
【図1−59】図1−58の続き。
【図2−1】図2−1はT-p53C-V143Aの構造の座標データを示す。
【図2−2】図2−1の続き。
【図2−3】図2−2の続き。
【図2−4】図2−3の続き。
【図2−5】図2−4の続き。
【図2−6】図2−5の続き。
【図2−7】図2−6の続き。
【図2−8】図2−7の続き。
【図2−9】図2−8の続き。
【図2−10】図2−9の続き。
【図2−11】図2−10の続き。
【図2−12】図2−11の続き。
【図2−13】図2−12の続き。
【図2−14】図2−13の続き。
【図2−15】図2−14の続き。
【図2−16】図2−15の続き。
【図2−17】図2−16の続き。
【図2−18】図2−17の続き。
【図2−19】図2−18の続き。
【図2−20】図2−19の続き。
【図2−21】図2−20の続き。
【図2−22】図2−21の続き。
【図2−23】図2−22の続き。
【図2−24】図2−23の続き。
【図2−25】図2−24の続き。
【図2−26】図2−25の続き。
【図2−27】図2−26の続き。
【図2−28】図2−27の続き。
【図2−29】図2−28の続き。
【図2−30】図2−29の続き。
【図2−31】図2−30の続き。
【図2−32】図2−31の続き。
【図2−33】図2−32の続き。
【図2−34】図2−33の続き。
【図2−35】図2−34の続き。
【図2−36】図2−35の続き。
【図2−37】図2−36の続き。
【図2−38】図2−37の続き。
【図2−39】図2−38の続き。
【図2−40】図2−39の続き。
【図2−41】図2−40の続き。
【図2−42】図2−41の続き。
【図2−43】図2−42の続き。
【図2−44】図2−43の続き。
【図2−45】図2−44の続き。
【図2−46】図2−45の続き。
【図2−47】図2−46の続き。
【図2−48】図2−47の続き。
【図2−49】図2−48の続き。
【図2−50】図2−49の続き。
【図2−51】図2−50の続き。
【図2−52】図2−51の続き。
【図2−53】図2−52の続き。
【図2−54】図2−53の続き。
【図2−55】図2−54の続き。
【図2−56】図2−55の続き。
【図2−57】図2−56の続き。
【図2−58】図2−57の続き。
【図2−59】図2−58の続き。
【図3−1】図3−1はT-p53C-F270Lの構造の座標データを示す。
【図3−2】図3−1の続き。
【図3−3】図3−2の続き。
【図3−4】図3−3の続き。
【図3−5】図3−4の続き。
【図3−6】図3−5の続き。
【図3−7】図3−6の続き。
【図3−8】図3−7の続き。
【図3−9】図3−8の続き。
【図3−10】図3−9の続き。
【図3−11】図3−10の続き。
【図3−12】図3−11の続き。
【図3−13】図3−12の続き。
【図3−14】図3−13の続き。
【図3−15】図3−14の続き。
【図3−16】図3−15の続き。
【図3−17】図3−16の続き。
【図3−18】図3−17の続き。
【図3−19】図3−18の続き。
【図3−20】図3−19の続き。
【図3−21】図3−20の続き。
【図3−22】図3−21の続き。
【図3−23】図3−22の続き。
【図3−24】図3−23の続き。
【図3−25】図3−24の続き。
【図3−26】図3−25の続き。
【図3−27】図3−26の続き。
【図3−28】図3−27の続き。
【図3−29】図3−28の続き。
【図3−30】図3−29の続き。
【図3−31】図3−30の続き。
【図3−32】図3−31の続き。
【図3−33】図3−32の続き。
【図3−34】図3−33の続き。
【図3−35】図3−34の続き。
【図3−36】図3−35の続き。
【図3−37】図3−36の続き。
【図3−38】図3−37の続き。
【図3−39】図3−38の続き。
【図3−40】図3−39の続き。
【図3−41】図3−40の続き。
【図3−42】図3−41の続き。
【図3−43】図3−42の続き。
【図3−44】図3−43の続き。
【図3−45】図3−44の続き。
【図3−46】図3−45の続き。
【図3−47】図3−46の続き。
【図3−48】図3−47の続き。
【図3−49】図3−48の続き。
【図3−50】図3−49の続き。
【図3−51】図3−50の続き。
【図3−52】図3−51の続き。
【図3−53】図3−52の続き。
【図3−54】図3−53の続き。
【図3−55】図3−54の続き。
【図3−56】図3−55の続き。
【図3−57】図3−56の続き。
【図3−58】図3−57の続き。
【図3−59】図3−58の続き。
【図4】図4は、gadd45コンセンサスDNAに結合したp53コアドメインのワイヤーフレームモデルを示す(PDB IDコード1TSR、分子B)。2次構造要素は半透明のリボンと円筒で強調されている。結合コンセンサスDNAの2つの鎖をこのモデルの上部に示す。この研究とJoerger et al. 2005で構造的に調査された癌突然変異部位の側鎖をオレンジ色で示す。黒い球体は、超安定4重突然変異体M133L/V203A/N239Y/N268D (T-p53C)の突然変異部位の位置を示す。「ホットスポット」突然変異領域の残基を、220、143、及び270位のβサンドイッチ領域の残基とともに示す。
【図5】図5は、T-p53C(PDB IDコード1UOL、分子A)の構造に重ねた、T-p53C-Y220C(分子A)中のβサンドイッチの周辺の突然変異部位の立体図を示す。突然変異により生成した裂け目を埋める、T-p53C-Y220C中のCys220の近くのいくつかの水分子を球体として示す。
【図6】図6Aは、T-p53C(PDB IDコード1UOL、分子A)に重ねた、T-p53C-V143Aの構造の立体図を示す。T-p53C中のVal143側鎖の半径4.5Å以内のβサンドイッチの疎水性コア中のすべての残基を示す。図6Bは、T-p53C(PDB IDコード1UOL、分子A)に重ねた、Tp53C-F270Lの構造の立体図を示す。T-p53C中のPhe270側鎖の半径6Å以内のすべての残基を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
表の簡単な説明
表1(図1)は、T-p53C-Y220Cの構造の座標データを示す。
【0017】
表2(図2)は、T-p53C-V143Aの構造の座標データを示す。
【0018】
表3(図3)は、T-p53C-F270Lの構造の座標データを示す。
【0019】
表4は、本発明で結晶化される配列を示す。残基の番号は、野生型ヒトp53(SWISS PROT P04637)を参照して示される。太字の残基は、野生型と比較して変化しているものである。本明細書において(特に明記しない場合は)、p53残基の番号付けは、配列表の番号付けとは反対に、表4に示す野生型の番号付けを参照している。
【0020】
表5は、データ収集と精緻化統計値である。
【0021】
表6は、p53コアドメイン突然変異体の尿素誘導型展開のフリーエネルギーの変化を示す。
【0022】
表7は、突然変異に誘導される内部キャビティの容積を示す。
【0023】
配列の簡単な説明
配列番号1は、タンパク質T-p53C-Y220Cの配列である。
【0024】
配列番号2は、タンパク質T-p53C-V143Aの配列である。
【0025】
配列番号3は、タンパク質T-p53C-F270Lの配列である。
【0026】
発明の詳細な説明
A. タンパク質結晶
本発明は、T-p53C-Y220C、T-p53C-V143A、又はT-p53C-F270Lタンパク質の結晶を提供する。これらのタンパク質は添付の実施例に記載のように製造することができる。
【0027】
本発明の結晶は、T-p53C-Y220C、T-p53C-V143A、又はT-p53C-F270Lタンパク質とリガンドとの共結晶又はアポ結晶でもよい。すなわち、別の態様において本発明は、T-p53C-Y220C、T-p53C-V143A、又はT-p53C-F270Lタンパク質とリガンドとの共結晶を提供する。
【0028】
リガンドは、タンパク質を安定化する能力についてスクリーニングされている化合物でもよい。
【0029】
かかる共結晶は、共結晶化又はソーキングにより得ることができる。
【0030】
より具体的な実施形態において本発明は、T-p53C-Y220C、T-p53C-V143A、又はT-p53C-F270Lタンパク質の結晶を提供し、各結晶は空間群P212121を有する。場合によりこれらの結晶は、前記タンパク質とリガンドとの共結晶でもよい。
【0031】
T-p53C-Y220Cの結晶は、単位胞寸法が、a=64.50Å、b=71.11Å、c=104.90Å、β=90℃で、すべての寸法で単位胞の変動度は5%でありうる。
【0032】
T-p53C-V143Aの結晶は、単位胞寸法が、a=64.66Å、b=71.07Å、c=105.00Å、β=90℃で、すべての寸法で単位胞の変動度は5%でありうる。
【0033】
T-p53C-F270Lタンパク質の結晶は、単位胞寸法が、a=64.71Å、b=71.04Å、c=104.92Å、β=90℃で、すべての寸法で単位胞の変動度は5%でありうる。
【0034】
より一般的には、前記結晶は、単位胞寸法が、a=64.50〜64.71Å、b=71.04〜71.11Å、c=104.90〜105Å、β=90℃で、すべての寸法で単位胞の変動度は5%、好ましくは2.5%、好ましくは1%でありうる(ここで変動度は前記各範囲の中点値から計算される)。
【0035】
結晶化されるタンパク質は、表4に示す配列を有しうる。
【0036】
T-p53C-Y220Cの場合、これはp53の残基94〜312に対応する残基を含む。しかし、最初の分解性残基は96であり、最後は291であるため、表4の配列のトランケーションも使用することができる。特にこの配列は、N末端で最大10個、好ましくは最大5個、例えば最大2個のアミノ酸をトランケートできる。この配列はC末端で最大25個、好ましくは最大21個、好ましくは最大15個、例えば最大10個、例えば最大5個のアミノ酸をトランケートできる。上記N及びC末端のトランケーションの任意の組合せは、本発明のT-p53C-Y220Cの結晶を製造するのに使用することができる。かかる組合せの例には、T-p53C-Y220C104-287;T-p53C-Y220C104-291;T-p53C-Y220C104-302;T-p53C-Y220C104-307;T-p53C-Y220C104-312;T-p53C-Y220C99-287;T-p53C-Y220C99-291;T-p53C-Y220C99-302;T-p53C-Y220C99-307;T-p53C-Y220C99-312;T-p53C-Y220C96-287;T-p53C-Y220C96-291;T-p53C-Y220C96-302;T-p53C-Y220C96-307;及びT-p53C-Y220C96-312がある(ここでT-p53C-Y220Cx-yは、表4のT-p53C-Y220Cタンパク質のp53残基xからp53残基yまでの断片を示す)。
【0037】
T-p53C-Y220Cタンパク質は、例えば天然に存在するp53配列及び/又は異種配列(例えば、短いタグのようなタンパク質の発現又は精製に関連するもの)の、短いN-もしくはC-末端伸長を含んでもよい。かかる配列は、独立に最大5個、例えば最大10個のアミノ酸残基を表4の配列のN末端及びC末端のいずれかもしくは両方に付加することができる。
【0038】
すなわち本発明書中でいうT-p53C-Y220Cタンパク質は、少なくとも残基104〜287(例えば、最大で少なくとも94〜312、場合により上記したように伸長される)を含みかつ結晶を形成できるタンパク質を含む。この結晶は空間群P212121を有し、かつこの形態で、添付の実施例に例示したT-p53C-Y220C結晶の各方向に5%以内の単位胞寸法を有することができる。
【0039】
T-p53C-V143Aの場合、これはp53の残基94〜312に対応する残基を含む。しかし最初の分解性残基は96であり、最後は290であるため、表4の配列のトランケーションを使用することもできる。特にこの配列はN末端で最大10個、好ましくは最大5個、例えば最大2個のアミノ酸をトランケートできる。この配列はC末端で最大25個、好ましくは最大21個、好ましくは最大15個、例えば最大10個、例えば最大5個のアミノ酸をトランケートできる。上記N及びC末端トランケーションの任意の組合せは、本発明のT-p53C-V143Aの結晶を製造するのに使用することができる。かかる組合せの例には、T-p53C-V143A104-287;T-p53C-V143A104-290;T-p53C-V143A104-302;T-p53C-V143A104-307;T-p53C-V143A104-312;T-p53C-V143A99-287;T-p53C-V143A99-290;T-p53C-V143A99-302;T-p53C-V143A99-307;T-p53C-V143A99-312;T-p53C-V143A96-287;T-p53C-V143A96-290;T-p53C-V143A96-302;T-p53C-V143A96-307;及びT-p53C-V143A96-312がある(ここでT-p53C-V143Ax-yは、表4のT-p53C-V143Aタンパク質のp53残基xからp53残基yまでの断片を表す)。
【0040】
T-p53C-V143Aタンパク質は、例えば天然に存在するp53配列及び/又は異種配列(例えば、短いタグのようなタンパク質の発現又は精製に関連するもの)の、短いN-もしくはC-末端伸長を含んでもよい。かかる配列は、独立に最大5個、例えば最大10個のアミノ酸残基を表4の配列のN及びC末端のいずれかもしくは両方に付加することができる。
【0041】
したがって本明細書でいうT-p53C-V143Aタンパク質は、少なくとも残基104〜287(例えば、最大で少なくとも94〜312、場合により上記したように伸長される)を含みかつ結晶を形成できるタンパク質を含む。この結晶は空間群P212121を有し、かつこの形態で、添付の実施例に例示したT-p53C-V143A結晶の各方向に5%以内の単位胞寸法を有することができる。
【0042】
T-p53C-F270Lの場合、これはp53の残基94〜312に対応する残基を含む。しかし最初の分解性残基は96であり、最後は290であるため、表4の配列のトランケーションも使用することができる。特にこの配列は、N末端で最大10個、好ましくは最大5個、例えば最大2個のアミノ酸をトランケートできる。この配列はC末端で最大25個、好ましくは最大21個、好ましくは最大15個、例えば最大10個、例えば最大5個のアミノ酸をトランケートできる。上記N及びC末端トランケーションの任意の組合せは、本発明のT-p53C-F270Lの結晶を製造するのに使用することができる。かかる組合せの例には、T-p53C-F270L104-287;T-p53C-F270L104-290;T-p53C-F270L104-302;T-p53C-F270L104-307;T-p53C-F270L104-312;T-p53C-F270L99-287;T-p53C-F270L99-290;T-p53C-F270L99-302;T-p53C-F270L99-307;T-p53C-F270L99-312;T-p53C-F270L96-287;T-p53C-F270L96-290;T-p53C-F270L96-302;T-p53C-F270L96-307;及びT-p53C-F270L96-312がある(ここでT-p53C-F270Lx-yは、表4のT-p53C-F270Lタンパク質のp53残基xからp53残基yまでの断片である)。
【0043】
T-p53C-F270Lタンパク質は、例えば天然に存在するp53配列及び/又は異種配列(例えば、短いタグのようなタンパク質の発現又は精製に関連するもの)の、短いN-もしくはC-末端伸長を含んでもよい。かかる配列は、独立に最大5個、例えば最大10個のアミノ酸残基を表4の配列のN及びC末端のいずれかもしくは両方に付加することができる。
【0044】
したがって本明細書でいうT-p53C-F270Lタンパク質は、少なくとも残基104〜287(例えば、最大で少なくとも94〜312、場合により上記したように伸長される)を含みかつ結晶を形成できるタンパク質を含む。結晶は空間群P212121を有し、かつこの形態で、添付の実施例に例示したT-p53C-F270L結晶の各方向に5%以内の単位胞寸法を有することができる。
【0045】
B. 結晶座標
別の態様において、本発明はまた、表1の3次元原子座標を有するT-p53C-Y220Cタンパク質の結晶;表2の3次元原子座標を有するT-p53C-V143Aタンパク質の結晶;表3の3次元原子座標を有するT-p53C-F270Lタンパク質の結晶を提供する。
【0046】
表1〜3の原子座標により規定される構造の有利な特徴は、該原子座標が約2.0Åより良好な分解能を有することである。
【0047】
表1〜3は、それぞれT-p53C-Y220C、T-p53C-V143A、及びT-p53C-F270Lタンパク質の原子座標データを与える。表中、第3のカラムは原子、第4のカラムは残基のタイプ、第5のカラムは鎖の識別、第6のカラムは残基番号、第7、第8、及び第9のカラムは対象の原子のそれぞれX、Y、Z座標、第10のカラムは原子の占有度、第11のカラムは原子の温度因子、第12のカラムは鎖の識別子を示す。
【0048】
表1〜3は、内部一致フォーマットで示される。例えば(表1の最初の残基とは別に)、各アミノ酸残基の原子の座標は、骨格窒素原子が最初で、次がC-α骨格炭素原子(CAと表記)で、次が側鎖残基(標準的慣習に従って表記)、そして最後にタンパク質骨格の炭素及び酸素であるように列挙されている。これらの原子の別の順序又は側鎖残基の異なる命名を含む別のファイルフォーマット(例えば、EBI Macromolecular Structure Database (Hinxton, UK)のフォーマットに一致するフォーマット)が、当業者により使用されるか又は好まれるかもしれない。しかし表の座標を提示又は操作するために異なるファイルフォーマットを使用することは、本発明の範囲内であることは明らかであろう。
【0049】
表1〜3は、T-p53C変異体タンパク質の2つのタンパク質単位を含む。表はさらに、多くの水分子(「WAT」と表記)と亜鉛イオンを含む。多くの残基(例えば182と277位のCys残基)が2種の配座異性体で観察されるので、各鎖についてそれぞれの配座異性体が提供される。
【0050】
本発明の結晶構造を使用する本明細書に記載の本発明の実施形態において、本発明のT-p53C構造及びその使用とは、いずれかの配座異性体における個々のタンパク質鎖のいずれかの構造又は使用であると解釈すべきであることは理解されよう。両方の単位の使用は排除されないが、本発明を実施するのに必要ではない。同様に、本発明のT-p53C構造は、溶媒又はイオンの座標を含まないが、これらの使用は排除されず、これらは本発明の特定の用途に有利であるか又は必要なことがある。
【0051】
タンパク質構造の類似性は、二乗平均平方根偏差(r.m.s.d.)で慣用的に表記及び測定され、これは2セットの原子間の空間における位置取りの差異の尺度である。r.m.s.d.は、その最適な重ね合わせ後の同等な原子間の距離の尺度となる。r.m.s.d.は全原子にわたって、残基の骨格原子(すなわち、タンパク質アミノ酸残基の窒素−炭素−炭素骨格原子)にわたって、主鎖の原子のみ(すなわち、タンパク質アミノ酸残基の窒素−炭素−酸素−炭素骨格原子)、側鎖原子のみ、又はより一般的にはC-α原子のみにわたって計算することができる。本発明の目的においてr.m.s.d.は、下記に概説する方法のいずれかを用いて、これらのいずれかにわたって計算することができる。
【0052】
好ましくは、選択された座標が使用される場合にこれらがC-α原子の少なくとも約5%、好ましくは少なくとも約10%を含むことを条件に、rmsdはC-α原子を参照することにより計算される。選択された座標が前記少なくとも約5%を含まない場合、rmsdは4つすべての骨格原子を参照することにより計算できるが、ただしこれらが少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約20%、及びさらに好ましくは少なくとも約30%の選択された座標を含むことを条件とする。選択された座標が90%又はそれ以上の側鎖原子を含む場合、rmsdはすべての選択された座標を参照することにより計算することができる。
【0053】
こうして表1〜3の座標は、原子位置の尺度をオングストロームで小数第3位まで与える。座標は3次元で形状を規定する位置の相対的セットであるが、当業者は、異なる起点及び/又は軸を有する完全に異なる座標のセットが同様もしくは同一の形状を規定できることを理解するであろう。さらに当業者は、残基骨格原子について表1に示した座標上に重ねたとき、残基の骨格原子(すなわちタンパク質アミノ酸残基の窒素−炭素−炭素骨格原子)の二乗平均平方根偏差が、2.0Å未満、好ましくは1.5Å未満、好ましくは1.0未満、例えば0.75Å未満、さらに好ましくは0.5Å未満、さらに好ましくは0.3Å未満、例えば0.25Å未満、又は0.2Å未満、最も好ましくは0.1Å未満になるように構造の原子の相対的原子位置を変化させることは、一般に、本発明のT-p53Cタンパク質構造及び分子構造とのその相互作用性の構造ベースの分析の構造的特徴及び有用性の両者の点で、表1の構造と実質的に同じである構造を与えることを理解するであろう。
【0054】
同様に当業者は、表の水分子の数及び/又は位置を変化させても、一般にT-p53Cタンパク質相互作用性構造の構造ベースの分析についての構造の有用性に影響は与えないことを理解するであろう。すなわち本発明の態様であるとして本明細書に記載される目的のために、表1〜3のいずれか1つの座標が異なる起点及び/又は軸に転置されても;残基骨格原子について表1〜3に示した座標上に重ねたときに、残基骨格原子の二乗平均平方根偏差が、1.5Å未満、好ましくは1.0未満、例えば0.75Å未満、さらに好ましくは0.5Å未満、さらに好ましくは0.3Å未満、例えば0.25Å未満、又は0.2Å未満、最も好ましくは0.1Å未満になるように構造の原子の相対的原子位置を変化させても;及び/又は水分子の数及び/又は位置を変化させても、本発明の範囲内である。
【0055】
従って、表1〜3のいずれか1つもしくは表1〜3のいずれか1つからの座標データ及びその使用などへの言及は、表の一つまたはそれ以上の個々の値がこうして変化する座標データを含み、特に明記しない場合は、そのようなものを意味すると理解される。
【0056】
rmsdを測定するためのプログラムには、MNYFIT(COMPOSERと称するプログラム集の一部, Sutcliffe, M.J., Haneef, I., Carney, D. and Blundell, T.L. (1987) Protein Engineering, 1, 377-384)、MAPS(Lu, G. An Approach for Multiple Alignment of Protein Structures(1998, 原稿、及びhttp://bioinfo1.mbfys.lu.se/TOP/maps.html)などがある。
【0057】
C-α原子を考慮することが一般的であり、次にrmsdはLSQKAB (Collaborative Computational Project 4. The CCP4 Suite: Programs for Protein Crystallography, Acta Crystallographica, D50, (1994), 760-763), QUANTA (Jones et al., Acta Crystallography A47 (1991), 110-119、及びAccelerys, San Diego, CAから市販されている)、Insight (Accelerys, San Diego, CAから市販されている)、Sybyl(登録商標)(Tripos, Inc., St Louisから市販されている)、O(Jones et al., Acta Crystallographica, A47, (1991), 110-119)、及び他の座標適合プログラムのようなプログラムを使用して計算することができる。
【0058】
例えばプログラムLSQKABやOでは、ユーザーは計算の目的のためにペアリングされるべき2つのタンパク質中の残基を規定することができる。あるいは残基のペアリングは、2つのタンパク質の配列アライメントを作製することにより決定することができ、配列アライメントのためのプログラムは以下に詳述される。次いで、原子座標はこのアライメントに従って重ね合わせ、r.m.s.d.値を計算することができる。プログラムSequoia (C.M. Bruns, I. Hubatsch, M. Ridderstrom, B. Mannervik, and J.A. Tainer (1999)、Human Glutathione Transferase A4-4 Crystal Structures and Mutagenesis Reveal the Basis of High Catalytic Efficiency with Toxic Lipid Peroxidation Products, Journal of Molecular Biology 288(3): 427-439)は、相同的タンパク質配列のアライメントと、相同的タンパク質の原子座標の重ね合わせを行う。いったん整列されると、上記プログラムを使用してr.m.s.d.を計算することができる。同一の又は同一性の高い配列について、タンパク質の構造的アライメントは上記で概説したように手動で又は自動的に行うことができる。他のアプローチは、配列を考慮することなくタンパク質原子座標の重ね合わせを作製するであろう。
【0059】
これは、顕著に異なるセットの座標を比較してC-α原子のみにわたってrmsd値を計算する際により一般的である。これは、側鎖の動きを分析してすべての原子にわたってrmsdを計算する際に特に有用であり、LSQKABや他のプログラムを使用して行うことができる。
【0060】
当業者は、本発明の多くの用途において、表1〜3のすべての座標を利用する必要は無く、これらの一部のみを使用することを理解するであろう。例えば後述するように、本発明のT-p53Cタンパク質を用いる分子構造のモデリング方法において、本明細書で言及する選択された座標を使用することができる。
【0061】
「選択された座標」とは、T-p53Cタンパク質構造の少なくとも5個、好ましくは少なくとも10個、さらに好ましくは少なくとも50個、さらに好ましくは少なくとも100個、例えば少なくとも500個、又は少なくとも1000個の原子を意味する。同様に、本明細書に記載の本発明の他の用途(ホモロジーモデリング及び構造解、並びに座標のデータ保存及びコンピューター支援操作を含む)も、表1〜3のいずれか1つの座標のすべて又は一部(すなわち選択された座標)を利用することができる。
【0062】
ある態様において、表1の選択された座標は、残基109、145〜157、202〜204、219〜223、228〜230、及び257の少なくとも1つからの少なくとも1つの原子を含むことができる。いくつかの態様において、Cys200の少なくとも1つの原子を含むことが望ましいかもしれない。かかる態様において、表1の選択された座標として以下を挙げることができる:
(i)残基109、145〜157、202〜204、219〜223、228〜230、及び257の少なくとも1つからの原子、場合により少なくとも1つがCys220の原子である該残基からの少なくとも2つの原子、の少なくとも1つの座標;
(ii)場合によりCys220と組合せた、残基Arg156、Arg158、Arg202、Glu204、Pro219、及びGlu258の少なくとも1つ又はそれ以上からの少なくとも1つの原子;又は
(iii)場合によりCys220と組合せた、残基Trp146、Val147、Thr150、及びPro223の少なくとも1つ又はそれ以上からの少なくとも1つの原子。
【0063】
好ましくは選択された座標は、残基の上記(i)〜(iii)群の少なくとも2個、例えば少なくとも3個、4個、5個、6個、7個、8個、又は9個からの原子を含む。
【0064】
別の態様において、表2の選択された座標は、群:111、113、124、133、141〜143、145、157、232、234、236、255、及び270の残基の少なくとも1つ、好ましくは群:113、124、133、141〜143、234、236、及び270の残基の少なくとも1つ、からの少なくとも1つの原子を含むことができる。前記群は、143の一つまたはそれ以上の原子を含んでもよいし、又は他の残基の他の原子の組合せでもよい。
【0065】
別の態様において、表3の選択された座標は、群:111、113、133、143、159、234、236、253、255、270、及び272の残基の少なくとも1つからの少なくとも1つの原子を含むことができる。前記群は、270の一つまたはそれ以上の原子を含んでもよいし、又は他の残基の他の原子の組合せでもよい。
【0066】
好ましくは選択された座標は、上記の残基群の少なくとも2個、例えば3個、4個、5個、6個、7個、8個、又は9個からの原子を含む。選択された座標の数がn(ここでnは、2から上記任意の群のアミノ酸の総数までの数である)である実施形態において、これらは、使用される選択された群の少なくともn個の異なるアミノ酸に由来してもよい。選択される残基は、側鎖若しくは主鎖の原子でもよいし、又はこれらの任意の組合せでもよい。
【0067】
さらに本明細書に記載の突然変異により生じるキャビティに関連する上記原子の群の同定は、これらのキャビティ中に及び/又はこれらの残基の構造的直近に結合するリガンドの同定、設計、又は修飾を可能にする。
【0068】
C. コンピューターシステム
別の態様において本発明は、システム、より具体的にはコンピューターシステムであって、表1〜3のいずれかの座標データの1つを含み、該データが本発明のT-p53C変異体タンパク質の3次元構造又はその少なくとも1つの選択された座標を規定する、前記システムを提供する。
【0069】
例えばコンピューターシステムは、(i)コンピューター可読データでコードされるデータ記憶素子を含むコンピューター可読データ記憶媒体;(ii)該コンピューター可読データを処理するための命令を保存するためのワーキングメモリー;及び(iii)該コンピューター可読データを処理することによって構造を生成し及び/又は合理的薬剤設計(本発明のp53構造と相互作用するその能力が不明の化合物のコンピューターに基づくスクリーニングを含む)を行うための、前記ワーキングメモリー及び前記コンピューター可読データ記憶媒体と連結した中央処理装置を含むことができる。コンピューターシステムはさらに、前記構造を表示するための、前記中央処理装置に連結したディスプレイを含むことができる。
【0070】
本発明はまた、上記の標的タンパク質の原子座標データを含み、該データは、表1のデータで提供される開始データ又はその選択された座標に基づいて本明細書に記載の本発明の方法によって作成されている、前記システムを提供する。
【0071】
かかるデータは、p53タンパク質の作用機構を分析するための及び/又はp53タンパク質(特にp53 Y220C、p53 V143A、又はp53 F270Lタンパク質)と相互作用する化合物(かかるタンパク質の安定化剤候補である化合物など)の合理的な薬剤設計を実施するための構造の生成を含む、多くの目的に有用である。
【0072】
別の態様において本発明は、表1〜3のいずれかの座標データを有するコンピューター可読媒体であって、該データは、本発明のT-p53C変異体タンパク質の3次元構造又は少なくともその選択された座標を規定する、前記コンピューター可読データを提供する。
【0073】
本明細書において「コンピューター可読媒体」は、コンピューターが直接読みかつアクセスすることができる任意の媒体を意味する。かかる媒体には、特に限定されないが:磁気記憶媒体、例えばフロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク記憶媒体、及び磁気テープ;光学式記憶媒体、例えば光ディスク又はCD-ROM;電子記憶媒体、例えばRAM及びROM;並びにこれらのカテゴリーの組合せ、例えば磁気/光学式記憶媒体などがある。
【0074】
かかるコンピューター可読媒体を提供することにより、本発明のT-p53C変異体タンパク質又はその選択された座標をモデリングするために、本発明の原子座標データに日常的にアクセスすることができる。例えばRASMOL(Sayle et al., TIBS, Vol. 20, (1995), 374)は、公共的に利用可能なコンピューターソフトウェアパッケージであり、これは構造決定及び/又は合理的薬剤設計のための原子座標データのアクセスと分析とを可能にする。
【0075】
本明細書において「コンピューターシステム」は、本発明の原子座標データを分析するために使用されるハードウェア手段、ソフトウェア手段、及びデータ記憶手段を意味する。本発明のコンピューターに基づくシステムの最小のハードウェア手段は、中央処理装置(CPU)、入力手段、出力手段、及びデータ記憶手段を含む。好ましくは構造データを視覚化するためにモニターが提供される。データ記憶手段は、RAM又は本発明のコンピューター可読媒体にアクセスするための手段でありうる。かかるシステムの例は、Unix(登録商標)ベースで、Windows(登録商標) NTで、又はIBM OS/2で機能するシステムを実行する、Silicon Graphics Incorporated及びSun Microsystemsから入手できるマイクロコンピューターワークステーションである。
【0076】
本発明の別の態様は、T-p53C-Y220C、-V143A、又は-F270タンパク質と相互作用する化合物の構造を生成するための及び/又は該化合物の最適化を行うためのデータを提供する方法であって、
(i) Cα原子から1.5Å以下の二乗平均平方根偏差内で変化していてもよい表1のT-p53C-Y220C、-V143A、若しくは-F270構造、又はその選択された座標を含むコンピューター可読データを含むリモートデバイスとの通信を確立し;そして
(ii)該リモートデバイスから該コンピューター可読データを受信する、
ことを含む、前記方法を提供する。
【0077】
したがって、リモートデバイスは、例えば本発明の先の一態様のコンピューターシステム又はコンピューター可読媒体を含むことができる。このデバイスは、コンピューター可読データを受信する場所とは異なる国又は管轄にあってもよい。
【0078】
通信は、有線又は無線(例えば地上無線又は衛星)を通じて伝達されるインターネット、イントラネット、eメールなどを介することができる。典型的に通信は、事実上電子的であるが、通信経路の一部又はすべてが、例えば光ファイバー上で、光学的でもよい。
【0079】
データが前記デバイスから受信された時点で、本発明は、本明細書に記載される発明のモデリングシステムで該データを使用するさらなる工程を含むことができる。
【0080】
D. 本発明の構造の使用
本発明者らの構造観察は、p53を安定化する小分子薬剤を用いてp53の機能をレスキューすることを目的とする新規治療戦略にとって大きな意味を有する。本発明者らの構造研究に基づいて、βサンドイッチ突然変異体(例えばV143A及びF270L)は一般的な小分子薬剤によるレスキューのための有望な標的であり、というのもこの場合タンパク質の安定化が生理学的条件下で野生型様活性を回復するのに充分でありうるからである。Y220Cは一般的な野生型結合化合物によりレスキューされる能力を有するだけでなく、欠失により生成される間隙に結合できる特定の薬剤の標的でもある。間隙領域は、機能性部位及びタンパク質の境界から離れて現れるため、特に魅力的である。
【0081】
コアドメインのβサンドイッチ領域中の癌突然変異は、一般的にはDNA結合領域中ほど多くはない。しかし総合すると、これらは癌関連ミスセンス突然変異の大部分を占める。実際、p53コアドメイン中の報告されている癌突然変異の3分の1は、DNA結合表面を形成する構造要素(ループL2、L3、及びLSHモチーフ)の外に位置する。T-p53C-V143AとT-p53C-F270Lの構造は、2つの癌関連βサンドイッチ突然変異の構造作用を明らかにする。Val143とPhe270はβサンドイッチに対向する鎖上に位置する。それらの側鎖は互いに向き合い、βサンドイッチの疎水性コアの必須部分を形成する(図4)。V143A突然変異体は、多くの応答要素の結合について酵母と哺乳動物系で充分に研究されたその温度感受性挙動のために特に興味深い(15, 24)。最近の研究は、包括的なミスセンス突然変異ライブラリーから酵母に基づく機能的アッセイを使用して、温度感受性p53突然変異体を単離している(16)。ほとんどの突然変異はこのタンパク質のβシート領域に集まっており、主に大きい疎水性残基からより小さい疎水性残基に置換していた(この研究ではV143Aは検出されなかったが、残基270での突然変異(F270IとF270C)は検出された)。T-p53C-V143AとT-p53C-F270Lの構造は、多くのp53突然変異体の温度感受性挙動を理解するための分子的基礎を与える。V143AとF270L突然変異は双方とも、周囲の構造を陥没させることなくβサンドイッチの疎水性コア中にキャビティを生成した。コアドメインの全体的構造は完全に保存されていたが、空隙容積の生成は3.7及び4.1 kcal/molの高エネルギーコストに達した。これらの構造的及びエネルギーの変化は、タンパク質の疎水性コア中の特定タイプの「大から小」への置換に対するエネルギー応答が、生成されたキャビティの容積と近隣の構造シフトとに相関することを示したT4-リゾチーム及びバーナーゼについての研究と一致する(25〜27)。興味深いことに、Y220C突然変異も、温度感受性挙動を引き起こすことが報告されている(24)。この挙動も、本発明の構造データと完全に一致する。この突然変異は、βサンドイッチの遠端に溶媒がアクセス可能な裂け目を生成した。Tyr220の芳香族側鎖の除去は、βサンドイッチの疎水性コアの周辺で、エネルギー的にあまり好ましくないパッキング相互作用を有する又は部分的に溶媒に暴露されるいくつかの残基を残し、熱力学的安定性の喪失を引き起こす。しかし構造的変化は、DNA結合表面からは離れており非常に局在化していた。
【0082】
βサンドイッチ突然変異体の共通の構造的特徴は、突然変異による小さな構造破壊のみが存在するが、タンパク質の熱力学的安定性に対する影響は、DNA結合表面中のホットスポット突然変異についてのものより一般的に大きいようである点である。亜鉛結合領域及びループ−シート−へリックスモチーフと比較してはるかにコンパクトかつ頑強なβサンドイッチの構造フレームワークは、一般的に、これを突然変異により誘導される構造変化、特に「大から小」への置換に影響されにくくしている。表面領域、特にDNA結合表面に構造変化が無いことは、機能にとって重要である。温度感受性挙動は、特異的プロモーター配列への結合だけでなく、他のタンパク質の全サブセットとの相互作用及び完全長の四量体p53中の正しいドメイン構成といった、p53の機能にとって不可欠な表面相補性を犠牲にすることなく、コアドメインを不安定化するすべての癌突然変異について予測することができる(11, 28〜31)。
【0083】
したがって、本発明で得られる結晶構造は、下記で詳述される薬剤設計のために種々の手法で使用することができる。具体的な実施形態において、この構造は、突然変異体p53のY220Cポケットを安定化するように該ポケット内で相互作用する化合物を同定するために使用することができる。かかる安定化は、Y220C突然変異を有する被験体においてp53の機能のレスキューを可能にし、その結果、腫瘍細胞中のp53の機能を回復することができる。同様に表2及び3の構造は、V143及びF270L突然変異により生成されるキャビティを安定化する他の化合物を同定するために使用することができる。このキャビティを安定化する化合物は、p53 βサンドイッチ領域突然変異体を安定化する上でより広く使用することができる。
【0084】
そのような化合物又は化合物候補の結合についての情報は、共結晶化、ソーキング、又は結合ポケットへの薬剤のコンピューターによるドッキングにより得ることができる。これは薬剤のタンパク質との相互作用を媒介する又は制御するように設計された化学構造への具体的な修飾を誘導するであろう。かかる修飾は、治療及び/又は予防作用を改善するように設計することができる。
【0085】
(i)結晶複合体の取得と分析
1つのアプローチでは、T-p53C-Y220C、-V143A、又は-F270タンパク質に結合した化合物の構造は実験により決定することができる。これは、T-p53C-Y220C、-V143A、又は-F270タンパク質に結合した化合物の分析の出発点を提供し、従って具体的な化合物が野生型p53C-Y220C、-V143A、又は-F270タンパク質とどのように相互作用するか、及びこれが機能する機構についての詳細な見識を当業者に提供するであろう。
【0086】
上記の構造に基づく薬剤設計に対する技術及びアプローチの多くは、リガンド−タンパク質複合体中のリガンドの結合位置を同定するための、ある段階でのX線分析に依存する。これを行う一般的な手法は、複合体についてX線結晶解析を行い、示差的なフーリエ電子密度マップを作成し、電子密度の特定パターンをリガンドと関連付けることである。しかしマップを作成するためには(例えばBlundell et al., Protein Crystallography, Acedemic Press, New York, London and San Francisco (1976)で説明されている)、あらかじめタンパク質3D構造(又は少なくともタンパク質構造因子)を知る必要がある。従ってT-p53C-Y220C、-V143A、又は-F270タンパク質構造の決定も、タンパク質−化合物複合体の示差的フーリエ電子密度マップの作成、薬剤の結合位置の決定を可能にし、従って合理的薬剤設計のプロセスを大幅に支援する。
【0087】
従って本発明は、T-p53C-Y220C、-V143A、又は-F270タンパク質に結合した化合物の構造を決定する方法であって、
本発明のT-p53C-Y220C、-V143A、又は-F270タンパク質の結晶を提供し;
該結晶を前記化合物とソーキングし;そして
それぞれ表1〜3の座標データ又はその選択された座標を使用して、該T-p53C-Y220C、-V143A、又は-F270タンパク質化合物複合体の構造を決定する、
ことを含む、前記方法を提供する。
【0088】
あるいは、T-p53C-Y220C、-V143A、又は-F270タンパク質及び化合物は、共結晶化されてもよい。したがって本発明は、T-p53C-Y220C、-V143A、又は-F270タンパク質に結合した化合物の構造を決定する方法であって、
該タンパク質を化合物と混合し、タンパク質−化合物複合体を結晶化し、それぞれ表1〜3の座標データ又はその選択された座標を参照して、該タンパク質−化合物複合体の構造を決定する、
ことを含む、前記方法を提供する。
【0089】
かかる構造の分析は、(i)複合体からのX線結晶回折データ、及び(ii)複合体の示差的フーリエ電子密度マップを作成するための、T-p53C-Y220C、-V143A、又は-F270タンパク質の3次元構造、又は少なくともその選択された座標(3次元構造はそれぞれ表1〜3の原子座標データ又はその選択された座標により規定される)を使用する。次いで、示差的フーリエ電子密度マップを分析することができる。
【0090】
従って、前記複合体を結晶化し、X線回折法を使用して、例えばGreer et al., J. of Medicinal Chemistry, Vol. 37, (1994), 1035-1054により記載されたアプローチに従って分析することができ、ソーキングされた又は共結晶化されたタンパク質のX線回折パターンと複合体を形成していないタンパク質の解構造とに基づいて、示差的フーリエ電子密度マップを計算することができる。次にこれらのマップは、例えば、特定の化合物がT-p53C-Y220C、-V143A、又は-F270タンパク質に結合するか否か、及び/又は該タンパク質のコンフォメーションを変化させるか否か、並びに特定の化合物がT-p53C-Y220C、-V143A、又は-F270タンパク質に結合する箇所、及び/又は該タンパク質のコンフォメーションが変化する箇所、を決定するために、分析することができる。
【0091】
電子密度マップは、CCP4コンピューティングパッケージ(Collaborative Computational Project 4. The CCP4 Suite: Programs for Protein Crystallography, Acta Cryastallographica, D50 (1994), 760-763)からのプログラムなどを使用して計算することができる。「O」(Jones et al. Acta Crystallographica, A47, (1991), 110-119)のようなマップの視覚化とモデル構築のためのプログラムを使用することができる。
【0092】
上記のすべての複合体は周知のX線回折技術を使用して研究することができ、CNX(Brunger et al., Current Opinion in Structural Biology, Vol. 8, Issue 5, October 1998, 606-611、及びAccelrys, San Diego, CAから販売されている)のようなコンピューターソフトウェアを使用し、そしてBlundell et al, (1976)及びMethods in Enzymology, vol. 114 & 115, H. W. Wyckoff et al., eds., Academic Press (1985)に記載されたように、1.0〜3.5Å分解能X線データに対して約0.30以下のR値まで精緻化することができる。
【0093】
(ii)in silico分析と設計
本発明は、T-p53C-Y220C、-V143A、又は-F270タンパク質及び該タンパク質と相互作用する化合物を含む実際の結晶構造の決定を容易にするが、現在のコンピューター技術は、かかる結晶を作成し、回折データを作成かつ分析する必要性に対して強力な代替法を提供する。したがって本発明の特に好適な態様は、本発明のT-p53C-Y220C、-V143A、又は-F270タンパク質構造と相互作用する化合物の分析及び開発に向けられた「in silico」方法に関する。
【0094】
T-p53C-Y220C、-V143A、又は-F270タンパク質の3次元構造の決定は、特に類似したタンパク質を比較するとき、このタンパク質の結合部位について重要な情報を提供する。
【0095】
添付の実施例に記載されるように、βサンドイッチ領域にY220C改変により引き起こされる顕著な差異があり、これは野生型タンパク質と比較してこの領域の残基のいくつかの顕著な置換を引き起こしている。
【0096】
次にこの情報は、例えば結合部位に対する結合リガンド候補を同定するコンピューター技術により、薬剤に対する結合断片アプローチを可能にすることにより、及びX線結晶解析を使用して結合リガンド(例えば、本明細書で上記したようなリガンドを含む)の同定と位置付けとを可能にすることにより、p53リガンドの合理的設計及び修飾に使用することができる。これらの技術は、下記に詳述される。
【0097】
このようにT-p53C-Y220Cの3次元構造の決定の結果として、合理的薬剤設計のためのより純粋なコンピューター技術を使用して、Y220C変化を保持するp53とのその相互作用がより良く理解される構造を設計することができる(これらの技術の概要に関し、Drug Discovery Today, Vol.3, No.4, (1998), 160-178; Abagyan, R.; Totrov, M. Curr. Opin. Chem. Biol. 2001, 5, 375-382を参照)。同様にT-p53C-V143A及びT-p53C-F270L構造を使用して、これらの突然変異により生じる、キャビティの残基又は構造的直近である残基を標的とするリガンドを設計することができる。
【0098】
例えば標的受容体の原子座標についての正確な情報を必要とする自動化リガンド−受容体ドッキングプログラム(Jones et al., Current Opinion in Biotechnology, Vol.6, (1995), 652-656、及びHalperin, I.; Ma, B.; Wolfson, H.; Nussinov, R. Proteins 2002, 47, 409-443で考察されている)を使用することができる。
【0099】
従って本発明は、ある分子構造のp53構造との相互作用を分析するためのコンピューターに基づく方法であって、
Cα原子から1.5Å以下の二乗平均平方根偏差内で変化していてもよい表1のp53構造又はその選択された座標を提供し;
該p53構造又はその選択された座標に適合される分子構造を提供し;そして
該分子構造を該p53構造に適合させる、ことを含み、
ここで該選択された座標は、残基109、145〜157、202〜204、219〜223、228〜230、及び257からの原子の少なくとも1つの座標を含む、前記方法を提供する。
【0100】
実際には、表1からの座標又は結合ポケットを表すその選択された座標によって規定される十分な数のT-p53C-Y220C構造の原子、例えば上記セクションBで規定される好ましい残基からの原子又は原子の数をモデリングすることが望ましい。すなわち本発明のこの態様において、選択された座標はこれらの上記残基の一部又はすべての座標を含むことができる。
【0101】
従って本発明は、ある分子構造のp53構造との相互作用を分析するためのコンピューターに基づく方法であって、
Cα原子から1.5Å以下の二乗平均平方根偏差内で変化していてもよい表2のp53構造又はその選択された座標を提供し;
該p53構造又はその選択された座標に適合される分子構造を提供し;そして
該分子構造を該p53構造に適合させる、ことを含み、
ここで該選択された座標は、残基113、124、133、141〜143、234、236、及び270からの原子の少なくとも1つの座標を含む、前記方法を提供する。
【0102】
実際には、表2からの座標又は結合ポケットを表すその選択された座標によって規定される十分な数のT-p53C-V143A構造の原子、例えば上記セクションBで規定される好適な残基からの原子又は原子の数をモデリングすることが望ましい。すなわち本発明のこの態様において、選択された座標はこれらの上記残基の一部又はすべての座標を含むことができる。
【0103】
従って本発明は、ある分子構造のp53構造との相互作用を分析するためのコンピューターに基づく方法であって、
Cα原子から1.5Å以下の二乗平均平方根偏差内で変化していてもよい表3のp53構造又はその選択された座標を提供し;
該p53構造又はその選択された座標に適合される分子構造を提供し;そして
該分子構造を該p53構造に適合させる、ことを含み、
ここで該選択された座標は、残基111、113、133、143、159、234、236、253、255、270、及び272からの原子の少なくとも1つの座標を含む、前記方法を提供する。
【0104】
実際には、表3からの座標又は結合ポケットを表すその選択された座標によって規定される十分な数のT-p53C-F270L構造の原子、例えば上記セクションBで規定される好適な残基からの原子又は原子の数をモデリングすることが望ましい。すなわち本発明のこの態様において、選択された座標はこれらの上記残基の一部又はすべての座標を含むことができる。
【0105】
分子構造の適合後、当業者は、構造が互いにどの程度相互作用するかを(例えば、水素結合、他の非共有結合性相互作用により、又は構造の部分間の共有結合を与える反応により)判定するために分子モデリングを使用しようとするかもしれない。
【0106】
当業者は、T-p53C-Y220C、-V143A、又は-F270構造と異なる様式で相互作用する新規構造を設計するために、in silicoモデリング方法を使用して1つ又はそれ以上の構造を改変することができる。
【0107】
新たに設計された構造は合成することができ、そのT-p53C-Y220C、-V143A、又は-F270構造との相互作用を測定することができ、又はその新たに設計された構造がどのように該T-p53C-Y220C、-V143A、又は-F270構造に結合するかを予測することができる。前記構造とT-p53C-Y220C、-V143A、又は-F270構造との相互作用をさらに改変するために、このプロセスを繰り返してもよい。
【0108】
さらに、適合された構造が本発明のT-p53C-Y220C、-V143A、又は-F270構造を安定化するようなに適合された時点で、コンピューター支援手段又はリガンドの合成及び試験により、この構造を他のp53タンパク質(野生型配列の突然変異体を含む)に適合させることができる。
【0109】
「適合させる」とは、分子構造の少なくとも1つの原子と本発明のT-p53C-Y220C、-V143A、又は-F270構造の少なくとも1つの原子との間の少なくとも1つの相互作用を、自動的又は半自動的手段により判定し、かかる相互作用が安定である程度を計算することを意味する。相互作用には、疎水性、極性、荷電、立体的、π-π相互作用などにより引き起こされる引力及び反発力などがある。種々のコンピューターに基づく適合方法が、本明細書でさらに記載される。
【0110】
さらに詳しくは、化合物のT-p53C-Y220C、-V143A、又は-F270構造との相互作用は、GOLD (Jones et al., J. Mol. Biol., 245, 43-53 (1995), Jones et al., J. Mol. Biol., 267, 727-748 (1997))、GRAMM(Vakser, I.A., Proteins, Suppl., 1:226-230 (1997))、DOCK(Kuntz et al, J. Mol. Biol. 1982, 161, 269-288, Makino et al, J. Comput. Chem. 1997, 18, 1812-1825)、AUTODOCK(Goodsell et al, Proteins 1990, 8, 195-202, Morris et al, J. Comput. Chem. 1998, 19, 1639-1662)、FlexX(Rarey et al, J. Mol. Biol. 1996, 261, 470-489)、又はICM(Abagyan et al, J. Comput. Chem. 1994, 15, 488-506)のようなドッキングプログラムを用いるコンピューターモデリングを使用して調べることができる。この方法は、化合物の形状や化学構造がどのようにT-p53C-Y220C構造に結合するかを確かめるための、該構造への化合物のコンピューターによる適合を含むことができる。
【0111】
本明細書に記載の種々のコンピューターに基づく分析方法は、上記セクションに記載したようなコンピューターシステムを使用して行うことができる。一般に、使用されるコンピューターシステムは、表1、2、又は3の構造又はその選択された座標のモデルと分子構造とを、2つの間の1つ又はそれ以上の相互作用を示すために、表示又は送信するように構成される。当該分野で種々の表示フォーマットが公知であり、例えば判定されている相互作用の性質を含む種々の因子に依存して、当業者が選択することができる。
【0112】
T-p53C-Y220C、-V143A、又は-F270の活性部位構造のコンピューター支援によるマニュアル調査も行うことができる。活性部位を分析して、例えば化合物又はタンパク質の安定性を改変させる修飾のタイプを予測するために、GRID(Goodford, J. Med. Chem., 28, (1985), 849-857)(分子間の種々の官能基及びタンパク質表面との相互作用部位候補を調べるプログラム)などのプログラムを使用してもよい。
【0113】
次にT-p53C-Y220C、-V143A、又は-F270構造への化合物の結合についての詳細な構造情報を得ることができ、この情報を考慮して、例えばT-p53C-Y220C、-V143A、又は-F270構造との化合物の相互作用を改変するために、化合物の構造又は機能性を調整するができる。上記工程は繰り返され、必要に応じて再度繰り返すことができる。
【0114】
本発明で使用できる分子構造は、通常、医学的用途のために開発中の化合物である。一般に、かかる化合物は有機分子であり、これは典型的には分子量が約100〜2000Da、さらに好ましくは約100〜1000Daである。かかる化合物には、ペプチド及びその誘導体が含まれる。原理的に、薬剤学の分野で開発中の化合物はいずれも、その開発を促進するために又はさらなる合理的薬剤設計を可能にしてその性質を改善するために使用することができる。
【0115】
別の実施形態において、本発明は、T-p53C-Y220Cとのその相互作用を改変するために化合物の構造を修飾する方法であって、
出発化合物を、本発明のT-p53C-Y220C構造のリガンド結合領域の少なくとも1つのアミノ酸残基の1以上の座標に適合させ;
出発化合物の構造を修飾して、そのリガンド結合領域との相互作用を増加又は減少させる、ことを含み、
ここでリガンド結合領域は、残基109、145〜157、202〜204、219〜223、228〜230、及び257の少なくとも1つ、好ましくは2つ以上を含むものとして規定される、前記方法を提供する。残基の好適な数と組合せは上記の通りである。
【0116】
構造の修飾が通常はin silicoで行われ、これにより修飾構造がp53又はその突然変異体とどのように相互作用するかを予測することが可能であることは当業者に理解されよう。そのような化合物が開発された時点で、これを合成し、そして上記したように試験することができる。
【0117】
(iii)断片結合と成長
本発明の結晶構造の提供はまた、断片結合又は断片成長(growing)アプローチに基づいてT-p53C-Y220C、-V143A、又は-F270の結合ポケット領域と相互作用する(例えば該タンパク質を安定化するように作用する)化合物の開発を可能にする。
【0118】
例えば1つ又はそれ以上の分子断片の結合は、X線結晶解析によりタンパク質の結合ポケット中で判定することができる。分子断片は典型的には、分子量が100〜200Daの化合物である。次にこれは、構造に基づくアプローチを使用して相互作用を最適化する医薬品化学のための出発点を提供することもできる。この断片は鋳型上に組合わせるか、又はインヒビターをタンパク質の他のポケット中に「成長させる」ための出発点として使用することができる。この断片はT-p53C-Y220C、-V143A、又は-F270構造の結合ポケット中に位置し、次に利用できる空間を埋めるように「成長」され、分子認識に関与する静電気による、ファンデルワールス力による、又は水素結合による相互作用を探究することができる。こうして本来的に弱い結合断片の能力は、構造に基づく化学合成の繰り返しにより急速に改善することができる。
【0119】
断片伸長アプローチの1つまたはそれ以上の段階で、化合物を合成し、その活性を生物系で試験することができる。これは、断片のさらなる成長を誘導するために使用することができる。
【0120】
2つの断片結合領域が同定される場合、結合断片アプローチは、2つの断片の直接的結合を図ること、又はより大きな結合構造(これは所望の性質を有してもよい)を得るために上記したように一方又は両方の断片の成長を図ることに基づく。
【0121】
2つまたはそれ以上のリガンドの結合部位が判定される場合、これらを連結してリード化合物候補を生成してもよく、これを、例えばGreerらの繰り返し技法を使用して、さらに改良することができる。仮想結合断片アプローチについては、Verlinde et al., J. of Computer-Aided Molecular Design, 6, (1992), 131-147を、そしてNMR及びX線アプローチについては、Shuker et al., Science, 274, (1996), 1531-1534、及びStout et al., Structure, 6, (1998), 839-848を参照されたい。p53結合リガンドを設計するためのこれらのアプローチの使用は、本発明により提供される構造の決定により可能になる。
【0122】
(iv)p53リガンドの分析
別の態様において、本発明に従って分子構造が取得されている場合、本発明は、該構造を、これに対して設計されたもの以外のp53構造へ適合させる工程をさらに含むことができる。例えばかかる構造は、T-p53C (PDB IDコード1UOL)、T-p53C-R273H (PDB IDコード2BIM)、又は野生型p53 (PDB IDコード1TSR)でありうる。
【0123】
このタイプの比較は、構造がβサンドイッチ領域中の非突然変異残基に結合でき、その結果、分子の安定性を増強する可能性があるかどうかを調べるために行うことができる。
【0124】
必要又は所望であれば、この構造は別のp53構造への適合を考慮して修飾し、次に本発明のp53突然変異体構造に再適合させることができる。このプロセスは、さらにp53結合構造を調べるために必要に応じて繰り返すことができる。
【0125】
上記の本発明の突然変異体T-p53C構造に結合するコンピューター設計した構造を提供するために本発明が使用される場合、本発明の別の態様では、かかる構造を合成又は取得し、多くの手法で試験することができる。
【0126】
すなわちある態様において本発明は、本明細書に記載の分子構造の分析又は設計後に、以下の工程の1つまたはそれ以上を含む:
(a)前記分子構造を有する化合物を取得又は合成し;そして該化合物をp53タンパク質に接触させて、該化合物が該p53タンパク質と相互作用する能力を判定する;又は
(b)前記分子構造を有する化合物を取得又は合成し;p53タンパク質と該化合物との複合体を形成し;そして該複合体をX線結晶解析により分析して、該化合物がp53タンパク質と相互作用する能力を判定する;又は
(c)前記分子構造を有する化合物を取得又は合成し;そして該化合物がp53構造とどのように相互作用するかを判定又は予測し;そして化合物構造を修飾して、これとp53との間の相互作用を改変する。
【0127】
使用することができるp53タンパク質は、野生型、安定化変異体、又は突然変異体(p53Y220C、T-p53C-Y220C、p53V143A、T-p53C-V143A、p53F270L、又はT-p53C-F270Lタンパク質のいずれかを含む)でありうる。
【0128】
かかる化合物と相互作用するp53タンパク質の能力を判定するために、多くの異なる分析方法を使用することができる。例えばp53を細胞中で発現させることができ、その化合物の存在下又は非存在下での該細胞のアポトーシスの割合を比較することができる。化合物がp53を安定化する場合、これはプロアポトーシス作用で反映されるかもしれない。別の実施形態において、その安定性を判定するために(例えば尿素誘導型展開のフリーエネルギーの変化により測定される)、化合物をp53と接触させることができる。
【0129】
さらに、本発明の方法で同定される化合物は本明細書で同定されるキャビティを安定化させるため、かかる化合物は、β-サンドイッチ領域で生じるp53の突然変異体を安定化するために用いることができ、その結果、この突然変異体は該化合物と共結晶化することができる。
【0130】
すなわち一態様において本発明は、p53 βサンドイッチ突然変異体タンパク質を化合物と混合し;タンパク質−化合物複合体を結晶化し;そしてCα原子から1.5Å以下の二乗平均平方根偏差内で変化していてもよい表1〜3のいずれか1つからのデータ又はその選択された座標を使用して、複合体の構造を決定する、ことを含む方法を提供する。
【0131】
この方法は、本発明の表1〜3のいずれかのp53突然変異体の構造へのリガンド構造の適合後に行うことができる。
【0132】
好適な態様において、βサンドイッチ突然変異体は、位置220、143、又は270の1つで突然変異したp53タンパク質である。この突然変異体はp53 Y220C、p53 V143A、又はp53 F270Lでありうる。この突然変異体が位置220、143、又は270である場合、表1、2、及び3のデータはそれぞれ先の段落の方法で使用されることが好ましい。
【0133】
(v)本発明の化合物
出発化合物を本発明のT-p53C-Y220C、-V143A、又は-F270構造に適合させ、これから作用率(p53へのより大きい又はより小さい結合親和性を含む)が変化した修飾化合物を予測することにより修飾化合物候補が開発されている場合、本発明は、修飾化合物を合成する工程と、これが(例えばp53の安定性もしくはレスキューされるp53突然変異体の能力を修飾するように)作用する活性及び/又は割合を測定するために、これをin vivo又はin vitroの生物系で試験する工程とをさらに含む。これは、例えば細胞中で突然変異体p53を発現させ、その化合物の存在下又は非存在下で細胞のアポトーシス率を測定することにより判定することができる。
【0134】
別の態様において本発明は、上記の本発明の方法により同定される化合物を含む。
【0135】
かかる化合物の同定後に、これは医薬、医薬組成物、又は薬剤のような組成物の調製、すなわち製造又は製剤化で製造及び/又は使用することができる。これらは個体に投与することができる。
【0136】
すなわち本発明は、種々の態様において、本発明で提供される化合物だけでなく、医薬組成物、医薬、薬剤、又はこのような化合物を含む他の組成物へと拡張される。この組成物は、疾患、特に癌の治療(これは予防的治療を含む)のために使用することができる。このような治療は、例えば疾患の治療のための、患者へのそのような組成物の投与;例えば疾患の治療のための、投与用の組成物の製造におけるそのようなインヒビターの使用;及び、そのようなインヒビターを医薬的に許容し得る賦形剤、ビヒクル、又は担体、そして場合により他の成分と混合することを含む医薬組成物の製造方法を含むことができる。
【0137】
すなわち本発明の別の態様は、医薬、医薬組成物、又は薬剤の製造方法であって、(a)本明細書に記載の本発明の他の態様のいずれか1つの方法により化合物を同定又は修飾し;(b)その分子の構造を最適化し;そして(c)最適化した化合物を含有する医薬、医薬組成物、又は薬剤を製造することを含む、前記方法を提供する。
【0138】
本発明の上記方法は、修飾化合物自体が次の化合物設計の基礎でありうるため、繰り返すことができる。
【0139】
「構造を最適化する」とは、例えば分子足場を付加する、官能基を付加又は改変する、又は分子を他の分子に結合させる(例えば、断片結合アプローチを使用して)ことにより、本来のモジュレート機能を維持又は増強しながら、モジュレーター分子の化学構造を変化させることを意味する。かかる最適化は通常、例えばリード化合物の力価を増強し、医薬的許容性を促進し、化学的安定性を増加させるために、薬剤開発プログラムの間に行われる。
【0140】
修飾は熟練した医薬品化学者に公知の当該分野で慣用ものであり、例えば本発明のT-p53C-Y220C、-V143A又は-F270構造のアミノ酸側鎖基と相互作用する残基を含む基の置換又は除去などがある。例えば、試験化合物中の基の電荷を減少又は増加させるための基の付加もしくは除去、荷電基の反対の電荷を有する基による置換、又は疎水基の親水基による置換もしくはその逆などを挙げることができる。これらは、新しい医薬化合物の開発において医薬品化学者が考慮する置換のタイプを単に例示するものであり、出発化合物の性質とその活性に依存して他の修飾を行うことができることは理解されよう。
【0141】
適切な任意の投与経路及び投与手段用に組成物を製剤化することができる。医薬的に許容し得る担体又は希釈剤には、経口、直腸、鼻内、局所(口腔及び舌下を含む)、膣、又は非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、くも膜下、及び硬膜外)投与に適した製剤で使用されるものが挙げられる。製剤は便宜的に単位投与剤型で提供してもよいし、薬学の分野で周知の方法のいずれかにより調製することができる。
【0142】
固体組成物用の慣用の非毒性固体担体として、例えば医薬グレードのマンニトール、乳糖、セルロース、セルロース誘導体、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、グルコース、ショ糖、炭酸マグネシウムなどが使用できる。医薬的に投与可能な液体組成物は、例えば上記の活性化合物及び任意の医薬アジュバントを担体(例えば、水、食塩水、ブドウ糖水溶液、グリセロール、エタノールなど)に溶解、分散等して溶液又は懸濁液を生成することにより調製することができる。所望であれば、投与される医薬組成物はさらに、少量の非毒性補助物質、例えば湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤など(例えば、酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミン、酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、オレイン酸トリエタノールアミンなど)を含有してもよい。かかる剤形を調製するための実際の方法は、当業者に公知であるか明らかであろう。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack publishing Company, Easton, Pennsylvania, 第15版、1975、を参照されたい。
【0143】
本発明は以下の実施例により例示される。
【0144】
(実施例)
突然変異誘発とタンパク質精製
T-p53C突然変異体である-Y220C、-V143A、及び-F270L(それぞれ配列番号1〜3)を、既に記載されている(18)ように、突然変異誘発により作製し、発現させ、精製した。最後の精製工程(ゲルろ過)後、突然変異体タンパク質を6〜7mg/mlに濃縮し、急速冷凍し、液体窒素中に保存した。
【0145】
尿素変性
尿素変性実験用のサンプルを、Hamilton Microlabディスペンサーを使用して、尿素の原液、バッファー、及びタンパク質から、25mM リン酸ナトリウムバッファー(pH7.2)、150mM KCl、及び5mM DTT中に1μMのタンパク質、及び増加濃度の尿素を含有するように調製した。測定前にサンプルを10℃で14時間インキュベートした。280nmで励起したp53コアドメインの内部蛍光スペクトルを、Waters 2700サンプルマネージャーを備えかつ実験室ソフトウェアで制御されたPerkin-Elmer LS50B分光蛍光計で、300〜400nmの範囲で記録した。データ解析は既に記載されるように行った(39)。
【0146】
結晶化と構造決定
すべての結晶は、sitting-drop蒸気拡散技術を使用して17℃で成長させた。結晶はT-p53Cについて記載される条件下(19)で成長させた。すべての場合に、結晶の質を改善するためにシーディング(seeding)技術を適用することが必要であった。結晶は、液体窒素中で20% PEG200又は20%グリセロールのいずれかを凍結防止剤として含む母液を使用して急速冷凍した。T-p53C-V143AのX線データセットを、100K、ビームライン14.1、Synchrotron Radiation Source Daresburyで波長1.488Åを使用して収集した。T-p53C-Y220CとT-p53C-F270Lのデータセットは、ビームライン10.1、波長1.284Åを使用して収集した。データ処理は、Mosflm(40)とScala(41)を使用して行った。すべての結晶は空間群P212121に属し、T-p53CとT-p53C-R273Hについて得られたもの(18, 19)と等晶形であった。細胞パラメータは0.6%以内で一致した。CNS(42)を用いて構造解及び精緻化を行った。T-p53C(PDB IDコード1UOL)又はT-p53C-R273H(PDB IDコード2BIM)の構造のいずれかを出発モデルとして用いた剛体精緻化の開始ラウンド後、CNS、及びMAIN(43)によるマニュアルモデル構築を用いた精緻化の繰り返しサイクルにより構造を精緻化した。CNS内で実行したウォーターピックオプションを使用して構造に水分子を加えた。プログラムCNSを15〜3.5Åからの回折データ及び検索モデルとしてのT-p53C鎖A(PDB IDコード1UOL)と共に使用して、分子置換により構造解を得た。ローテーションサーチとトランスレーションサーチは、4種の分子について非対称ユニットで明確な解を与えた。その後の精緻化は上記したように行った。精緻化統計は表5に示す。
【0147】
構造分析
特に明記しない場合は、突然変異体構造の詳細な説明は、特定の突然変異体の分子AとT-p53Cの分子Aとの比較に基づく。2次構造要素の番号付けは、DNAとの複合体における野生型構造について報告されたものである(6)。溶媒がアクセス可能な表面は、プローブ半径1.4Åを使用してCNSを用いて計算した。特定の残基についての溶媒の接触性(パーセント)は、親タンパク質における溶媒のアクセス可能な表面を、伸長されたAla-X-Alaトリペプチドにおける溶媒がアクセス可能な面積で割ったものとして定義した(44)。内部キャビティの容積は、プログラムVOIDOO(45)を以下のパラメータを用いて計算した:開始格子間隔0.295Å、VDW成長係数1.1、原子成長係数(atomic fattening factor)1.1、及び格子収縮係数0.9。収束(収束基準0.1)に達するまで連続的に細格子を使用して、キャビティ容積を精緻化した。格子に基づく方法の結果は格子に対する分子の配向に依存しうるため、各計算は分子のランダム配向したコピーで9回繰り返した。異なるプローブサイズを試みた。プローブ半径1.4Åは水分子のサイズを模倣している。より小さいプローブサイズは、キャビティの形状をより正確に描写するであろう。従って計算された容積は、プローブサイズが減少すると増加するであろう。しかしより小さいプローブサイズでは、特定のキャビティが隣のキャビティ又は溶媒内に洩出し、この方法は分子の配向に対してより敏感になる。従って本発明者らは、1.2Åと1.4Åのプローブサイズを使用した。キャビティは、結晶モデルリングプログラムO(46)を用いて視覚的に試験した。構造の図は、MOSCRIPT(47)とRASTER3D(48)とを使用して作成した。
【表1】

【表2】

【表3】

【0148】
Y220Cはサンドイッチの周辺で最適下(sub-optimal)パッキングを誘導する
Y220CはDNA結合表面外の最も一般的な癌突然変異であり(www-p53.iarc.frのp53突然変異データベースのリリースR10を参照)、コアドメインの安定性に対して大きな不安定化作用を有する。これはβ鎖S7とS8とを連結する折り返しの開始部分でβサンドイッチの遠端に位置する(図4)。Try220のベンゼン部分はサンドイッチの疎水性コアの一部を形成するが、ヒドロキシル基は溶媒に向いている。T-p53C-Y220Cの結晶構造は、Y220C突然変異が規定の位置で水分子により満たされる溶媒がアクセス可能な裂け目を生成する一方で、コアドメインの全体構造を無傷のままにすることを示した(図5)。Cys220はほぼ、野生型におけるTyr220の同等の原子の位置を占めている。近接残基の構造的応答は、構造中のそれらの位置に相関する。βサンドイッチのコア中に位置する近接疎水性側鎖の位置は、大きくシフトしていない(Leu145、Val157、及びLeu257)。しかしこの突然変異は、疎水性相互作用の喪失とこれらの疎水性コア残基の最適下パッキングを引き起こす。野生型において完全に埋もれているLeu145の側鎖は、T-p53CY220Cでは部分的に溶媒がアクセス可能になる。Pro151付近のプロリンリッチの堅固なS3/S4折り返しのコンフォメーション(これは野生型ではTyr220に対してパッキングされている)も大きな影響を受けず、T-p53Cに非常によく似た温度係数プロフィールを示す。最も大きな構造変化は、Pro222についてのS7/S8折り返し自体に見られた。しかしこの構造全体を通して0.9Åより大きいCα転位はない。
【0149】
V143A及びF270Lはキャビティ形成性突然変異である
V143Aは温度感受性p53突然変異体の最も古典的な例の1つである(15)。突然変異部位はβサンドイッチの疎水性コア中に位置する(図4)。全体としてT-p53CとT-p53C-V143Aの構造は実質的に同じであり、突然変異によりわずかな構造の動きがあるのみである(図6A)。両方の構造とも、同等の鎖のCα原子について0.12Åのr.m.s.偏差で重ねることができる。T-p53C-V143Aでは、Val143の2つのメチル基のトランケーションにより、水により満たされない溶媒がアクセス可能な48Å3の容積の疎水性キャビティを生成する(表7)。構造的応答はほとんど無く、従ってこのエネルギー的に好ましくないキャビティが生成されても周囲構造が崩壊することはない。突然変異残基は新たに形成されたキャビティに向かってほんのわずかに移動するのみであり、突然変異部位の近周囲で個々の原子の最も大きな転位は0.3Åである。このキャビティは内側にLeu111、Phe113、Leu133、Tyr234、Ile255、及びPhe270の疎水性側鎖が並んでいる。T-p53C-V143A中のこのエネルギー的に好ましくないキャビティの生成は、3.7kca/molのタンパク質の熱力学的安定性の低下の原因である。
【0150】
T-p53C-V143A中のタンパク質原子の平均B係数は22.3Å2であり、これはT-p53Cの構造について観察された16.3Å2より顕著に高い。実質的に同じ条件で成長させた等晶形の結晶を使用して同様の分解能で両方の構造解が得られたことを考えれば、これはT-p53C-V143A中のタンパク質鎖の高い全体的移動性を反映しているかもしれない。骨格原子について標準化した平均結晶B係数の分析は、突然変異部位を含むβ鎖S3上の残基143〜145の相対的移動性のかなりの増加を示した。キャビティに並ぶ他の構造要素上の残基の相対的移動性の変化は、あまり顕著ではないことが観察された。
【0151】
F270L癌突然変異はV143A突然変異と同じ疎水性コアに影響を与え、本発明者らは、この突然変異がp53コアドメインの構造と安定性に同様の影響を与えるはずであると仮定した。これはT-p53C-F270Lの構造により確認され、この構造は、突然変異に対する構造的応答がV143Aの場合と基本的に同じであることを表している。この突然変異は内部キャビティを生成するが、タンパク質の全体構造には影響を与えない。また、突然変異構造は、T-p53Cの構造に完全に重ねることができる(同等の鎖のCα原子についてr.m.s.偏差=0.09Å)。F270L突然変異により生成されるキャビティに並ぶ側鎖のコンフォメーションは、T-p53Cと本質的に同じである(図6B)。突然変異部位の6Å半径内の最大の原子シフトは0.5Åである。Phe270-γと比較して異なるLeu270-Cγの混成(sp3対sp2)及び生じる結合角の差異のため、ロイシン側鎖はT-p53C中のフェニルアラニンの対応する原子とは異なるように適応されなければならない。CγとCσ2原子は10°回転(×1)の結果としてフェニルアラニンの本来の環平面からわずかにはずれるが、Cσ1原子はこの平面からそれており、Phe113、Tyr126、Leu133、及びVal272の側鎖に対してパッキングする。F270L突然変異により生成される内部キャビティは、V143Aにより生成されるキャビティよりわずか大きい(図7)。埋め込まれた水分子と理論的に接触できた内側の29個の原子のうちの27個が炭素であるため(1.4Åプローブ半径)、これは非常に疎水性である。これは、このキャビティでは埋め込まれた水分子が検出されないという観察に一致する。
【0152】
上記明細書で言及したすべての刊行物及び特許は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の範囲及び精神を逸脱することなく、当業者には記載した発明の種々の修飾と変更が明らかであろう。本発明を具体的な好ましい実施形態との関連で記載したが、本発明は不当にかかる具体的実施形態に限定されるべきではないことを理解されたい。
【表4】


【0153】
参考文献



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある分子構造のp53構造との相互作用を分析するためのコンピューターに基づく方法であって、
Cα原子から2.0Å以下の二乗平均平方根偏差内で変化していてもよい表1のp53構造又はその選択された座標を提供し;
該p53構造又はその選択された座標に適合される分子構造を提供し;そして
該分子構造を該p53構造に適合させる、ことを含んでおり、
ここで該選択された座標は、残基109、145〜157、202〜204、219〜223、228〜230、及び257からの原子の少なくとも1つの座標を含んでいる、前記方法。
【請求項2】
選択された座標は、場合によりCys220の少なくとも1つの原子との組合せで、Arg156、Arg158、Arg202、Glu204、Pro219、及びGlu258の残基の少なくとも1つからの少なくとも1つの原子を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
選択された座標は、場合によりCys220との組合せで、残基Trp146、Val147、Thr150、及びPro223の少なくとも1つ又はそれ以上からの少なくとも1つの原子を含む、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
ある分子構造のp53構造との相互作用を分析するためのコンピューターに基づく方法であって、
Cα原子から1.5Å以下の二乗平均平方根偏差内で変化していてもよい表2のp53構造又はその選択された座標を提供し;
該p53構造又はその選択された座標に適合される分子構造を提供し;そして
該分子構造を該p53構造に適合させる、ことを含んでおり、
ここで該選択された座標は、残基113、124、133、141〜143、234、236、及び270からの原子の少なくとも1つの座標を含む、前記方法。
【請求項5】
ある分子構造のp53構造との相互作用を分析するためのコンピューターに基づく方法であって、
Cα原子から1.5Å以下の二乗平均平方根偏差内で変化していてもよい表3のp53構造又はその選択された座標を提供し;
該p53構造又はその選択された座標に適合される分子構造を提供し;そして
該分子構造を該p53構造に適合させる、ことを含んでおり、
ここで該選択された座標は、残基111、113、133、143、159、234、236、253、255、270、及び272からの原子の少なくとも1つの座標を含む、前記方法。
【請求項6】
野生型又は熱安定性p53構造に前記構造を適合させることをさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記分子構造を有する化合物を取得又は合成する工程;および
該化合物をp53タンパク質に接触させて、該化合物が該p53タンパク質と相互作用する能力を判定する工程
をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記分子構造を有する化合物を取得又は合成する工程;
p53タンパク質と該化合物との複合体を形成させる工程;および
該複合体をX線結晶解析により分析して、該化合物がp53タンパク質と相互作用する能力を判定する工程
をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記分子構造を有する化合物を取得又は合成する工程;および
該化合物がp53タンパク質とどのように相互作用するかを判定又は予測する工程;および
化合物構造を修飾して、該化合物とp53との相互作用を改変する工程
をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記p53タンパク質は、野生型p53タンパク質、又はp53Y220C、p53V143A、もしくはp53F270Lタンパク質である、請求項7、8、又は9記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項記載の方法を使用して同定される修飾構造を有する化合物。
【請求項12】
選択される座標は少なくとも5、10、50、100、500、又は1000原子のものである、請求項1〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
p53 βサンドイッチ突然変異体タンパク質に結合した化合物の構造を決定する方法であって、
該突然変異体タンパク質を化合物と混合し、
タンパク質-化合物複合体を結晶化し;そして
Cα原子から1.5Å以下の二乗平均平方根偏差内で変化していてもよい表1〜3のいずれか1つからのデータ又はその選択された座標を使用して、該複合体の構造を決定する、
ことを含む、前記方法。
【請求項14】
p53 βサンドイッチ突然変異体タンパク質はp53 Y220C、p53 V143A、又はp53 F270Lである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
p53 Y220C突然変異体タンパク質と相互作用する化合物の構造を生成するための及び/又は該化合物の最適化を行うためのデータを提供する方法であって、
(i) Cα原子から2.0Å以下の二乗平均平方根偏差内で変化していてもよい表1のp53C Y220C突然変異体構造又はその選択された座標を含むコンピューター可読データを含有するリモートデバイスとの通信を確立し;そして
(ii)該リモートデバイスから該コンピューター可読データを受信する、
ことを含んでおり、
ここで該選択された座標は、残基109、145〜157、202〜204、219〜223、228〜230、及び257からの原子の少なくとも1つの座標を含む、前記方法。
【請求項16】
p53 V143A突然変異体タンパク質と相互作用する化合物の構造を生成するための及び/又は該化合物の最適化を行うためのデータを提供する方法であって、
(i) Cα原子から1.5Å以下の二乗平均平方根偏差内で変化していてもよい表2のp53 V143A突然変異体構造又はその選択された座標を含むコンピューター可読データを含有するリモートデバイスとの通信を確立し;そして
(ii)該リモートデバイスから該コンピューター可読データを受信する、
ことを含んでおり、
ここで該選択された座標は、残基111、113、124、133、141〜143、145、157、232、234、236、255、及び270からの原子の少なくとも1つの座標を含む、前記方法。
【請求項17】
p53 F270L突然変異体タンパク質と相互作用する化合物の構造を生成するための及び/又は該化合物の最適化を行うためのデータを提供する方法であって、
(i) Cα原子から1.5Å以下の二乗平均平方根偏差内で変化していてもよい表3のp53 F270L突然変異体構造又はその選択された座標を含むコンピューター可読データを含有するリモートデバイスとの通信を確立し;そして
(ii)該リモートデバイスから該コンピューター可読データを受信する、
ことを含んでおり、
ここで該選択された座標は、残基111、113、133、143、159、234、236、253、255、270、及び272からの原子の少なくとも1つの座標を含む、前記方法。
【請求項18】
前記データを用いて請求項1〜12のいずれか1項記載の方法を実施することをさらも含む、請求項15、16、又は17記載の方法。
【請求項19】
T-p53C-Y220C、T-p53C-V143A、又はT-p53C-F270Lタンパク質の結晶。
【請求項20】
T-p53C-Y220C、T-p53C-V143A、又はT-p53C-F270Lタンパク質とリガンドとの共結晶。
【請求項21】
前記p53-Y220Cタンパク質は配列番号1の残基104〜287を含み;前記T-p53C-V143Aタンパク質は配列番号2の残基104〜287を含み;又は前記T-p53C-F270Lタンパク質は配列番号3の残基104〜287を含む、請求項19又は20記載の結晶又は共結晶。
【請求項22】
空間群P212121を有する、請求項19〜21のいずれか1項記載の結晶又は共結晶。
【請求項23】
単位胞寸法が、a=64.50〜64.71Å、b=71.04〜71.11Å、c=104.90〜105Å、β=90℃で、すべての寸法で単位胞の変動度は5%である、請求項22記載の結晶又は共結晶。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図1−4】
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【図1−5】
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【図1−6】
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【図1−7】
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【図1−8】
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【図1−9】
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【図1−10】
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【図1−11】
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【図1−12】
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【図1−13】
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【図1−20】
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【図1−21】
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【図1−22】
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【図1−23】
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【図1−24】
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【図1−25】
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【図1−26】
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【図1−27】
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【図1−28】
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【図1−29】
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【図1−30】
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【図1−31】
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【図1−32】
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【図1−33】
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【図1−34】
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【図1−35】
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【図1−36】
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【図1−37】
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【図1−40】
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【図1−41】
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【図1−43】
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【図1−44】
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【図1−45】
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【図1−46】
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【図1−50】
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【図1−53】
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【図1−54】
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【図1−55】
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【図1−57】
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【図1−59】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【図2−5】
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【図2−6】
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【図2−7】
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【図2−9】
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【図2−10】
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【図2−11】
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【図2−12】
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【図2−13】
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【図2−14】
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【図2−15】
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【図2−16】
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【図2−17】
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【図2−18】
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【図2−24】
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【図2−30】
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【図2−31】
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【図2−33】
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【図2−34】
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【図2−35】
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【図2−36】
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【図2−37】
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【図2−39】
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【図2−40】
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【図2−43】
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【図2−44】
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【図2−45】
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【図2−46】
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【図2−47】
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【図2−48】
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【図2−49】
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【図2−50】
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【図2−51】
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【図2−52】
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【図2−53】
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【図2−56】
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【図2−57】
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【図2−58】
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【図2−59】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図3−4】
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【図3−5】
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【図3−6】
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【図3−7】
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【図3−8】
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【図3−9】
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【図3−10】
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【図3−11】
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【図3−12】
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【図3−13】
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【図3−14】
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【図3−16】
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【図3−19】
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【図3−20】
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【図3−21】
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【図3−22】
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【図3−23】
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【図3−24】
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【図3−25】
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【図3−26】
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【図3−57】
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【図3−59】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−500543(P2010−500543A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523347(P2009−523347)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際出願番号】PCT/GB2007/003056
【国際公開番号】WO2008/017863
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(503276997)メディカル リサーチ カウンシル (10)
【Fターム(参考)】