説明

p55Rを介するTNFαシグナル伝達を選択的に抑制する抗TNFα抗体

本発明は、p55Rを介するTNFαシグナル伝達を選択的に抑制する抗TNFα抗体を提供する。本発明はより詳細には、p75Rに比べてp55Rを介するTNFαシグナル伝達を選択的に抑制する抗TNFα抗体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TNFαに対する抗体に関する。特に本発明は、例えばTNFαがp55レセプターに結合することを選択的に抑制することにより、p75Rと比べてp55Rを介したTNFαシグナル伝達を選択的に抑制する抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍壊死因子α(TNFα)は、免疫系の細胞により放出され、免疫系の細胞と相互作用する炎症誘発性サイトカインである。TNFαは、関節リウマチ、クローン病、潰瘍性大腸炎及び多発性硬化症などの慢性疾患を含む多数のヒトの疾病で上方制御されることが示されている。
【0003】
ヒトTNF−αは17kDaのタンパク質で、活性型はホモ3量体として存在する(Pennicaら、1984、Nature、312、724〜729;Davisら、1987、Biochemistry、26、1322〜1326;Jonesら、1989、Nature、338、225〜228)。2つの構造的には関連するが機能的には異なる細胞表面レセプターであり、大部分の細胞型で同時発現するp55R及びp75Rとの相互作用を介して、NFαはその生物学的効果を及ぼす(Loetscherら、1990、Cell、61、351;Smithら、1990、Science、248、1019)。p55Rは、p55TNFR、CD120a、TNFR I、TNFR 1及びTNFRSF1aとしても知られている。p75Rは、p75TNFR、CD120b、TNFR II、TNFR 2及びTNFRSF1bとしても知られている。両レセプターはタンパク質加水分解で、TNFαを結合できる可溶性分子としても放出される。2つのレセプターの細胞外ドメインは、保存された位置に4〜6個のシステイン含む4つの反復するシステインに富むモチーフから成る配列相似性を示す。対照的に、これらの細胞質のシグナル伝達領域の配列には関連がなく、異なるシグナル伝達及び機能の様式を示唆している。
【0004】
2つのレセプターの異なった役割が、2つのレセプターの1方又は両方を、遺伝的に欠損させたマウスの生成によって示された(Peschonら、1998、J.Immunol.160、943〜952)。本研究は、p55Rは多くのTNFαを介した炎症反応の原因となり、p75Rはある環境下では、TNFα媒介炎症反応を抑制する働きをし、2つのレセプターは、TNFα機能に対する平衡システムとして働くことができることを明らかにした。
【0005】
疾病の治療、特に関節リウマチを治療する方法としてのTNFα活性の抑制が、抗体及び可溶性のレセプターなどの抑制剤を用いる、多くの異なる方法によって達成されている。例として、Immunex Corporationからエンブレル(商標)として市販されているエタナーセプトが挙げられる。エタナーセプトはヒト免疫グロブリンのFc部分に連結した2つのp75可溶性TNF−レセプタードメインを含む組換え型の融合タンパク質である。Centocor Corporation からレミケード(商標)として市販されているインフリキシマブは、マウス抗TNFα可変領域及びヒトIgG 1の定常領域を有するキメラ抗体である。Abbott LaboratoriesからHumira(商標)として市販されているアダリムマブは、組換え型の完全なヒト抗TNFα抗体である(TussirotとWendling、2004、Expert Opin.Pharmacother.5、581〜594)。その他の抑制剤には、天然のTNFαを使って3量体を形成し、受容体結合を妨げる操作したTNFα分子が挙げられる(Steedら、2003、Science、301、1895〜1898;WO03033720;WO0164889)。
【0006】
TNFα活性を抑制するこれら現在の方法は、p55及びp75レセプターの両方にTNFαの結合を妨げる(例えば、Mease、2005、Expert Opin.Biol.Therapy、5、11、1491〜1504を参照のこと)。興味深いことに、レネルセプト及びインフリキシマブはいずれも、多発性硬化症を悪化させることが明らかになり、MSに関してTNFαの有益な役割があることも示唆している(WiendlとHohlfeld、2002、Biodrugs、16、183〜200)。現在では、MSの急性期におけるTNFαの有害な効果には、p55Rを介するTNFαシグナル伝達が必要であるが、p75Rを介するTNFαシグナル伝達が、炎症性浸潤の除去などの有益な効果に導くと考えられている。このTNFαの免疫抑制の役割が、他の自己免疫性疾患でも提案されている(Cope、1998、Current Opinion in Immunology、10、669〜676)。実際に、p75Rアゴニストは、アレルギー性気管支喘息のようなアレルギー性疾患の治療に用いることができることが示唆されている(WO99/59632)。
【0007】
2つのレセプターがTNFαに結合する正確なメカニズムは分かっていないが、1つの報告では、類似した相互作用部位を用いて、両方のTNFαレセプターがTNFαと結合することを示唆している(Bannerら、1993、Cell、73(431〜445))。TNFαポリペプチドでの点突然変異を用いた多くの研究で、サブユニットの底部寄りに位置する表面ループの小さな領域が、機能的に最も関連していることが示されている。3量体では、これらの領域は2つのサブユニットの間の表面の溝の反対側に互いに向き合っている。このことは、1つのレセプターは、2つの隣接したサブユニットの部位と相互作用し、TNFα3量体は、3つの空間的には異なるが、等価なレセプター結合部位を有することを示唆している。両方のレセプターが、同時に同じ3量体に結合できることが可能であるとは考えられない(Barbaraら、1994、EMBO、13、843〜850)。
【0008】
しかし、p75又はp55レセプターに選択的に結合するTNFα変異体を作製することは可能であった。p55Rに結合しないが、p75Rには結合するTNFα変異体は、抗腫瘍活性を保持するが、炎症誘発性活性の減少を示すことが明らかにされた(Barbaraら、1994、EMBO J、13、843〜850)。このことが、天然のTNFαに対して見られる全身毒性を避けるため、抗癌治療用に研究されているp75Rに選択的なTNFαの変異体の作製につながった(Burress Welborn IIIら、1996、J.Exp.Med、184、165〜171;US5,606,023;EP0486908;EP0619372;EP0563714)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
MSのような特定の自己免疫性疾患及び特定の炎症性疾患の治療のためには、p75Rを介するTNFαシグナル伝達には殆ど影響を与えずに、p55Rを介するTNFαシグナル伝達を、選択的に抑制できることが望ましい。
【0010】
p55Rを介するシグナル伝達の選択的抑制は、p55レセプター特異的抗体を用いて達成できるであろう。現在まで、マウスのp55及びp75レセプターに選択的な抗体のみが分離されている(Sheehanら、1995、J.Exp.Med.181、607〜617)。しかし、これらの抗体がレセプターの可溶型にも結合でき、可溶性レセプターの保護効果を失うばかりでなく、抗体の有効性を減少させるので、抗レセプター抗体の使用は潜在的欠点を伴う。さらに、抗体は一旦レセプターと結合すると、それ自体シグナル伝達を引き起こし得る、すなわちアゴニストになり得るリスクも存在する。また、低レベルではあるが体の大部分の細胞型でp55Rが見られるので、大量の抗体が、十分なp55Rシグナル伝達遮断の達成には必要とされるだろう。したがって、その代わりにより少量のリガンドであるTNFαのシグナル伝達を、p55Rを介して、例えばp55Rに対する結合の遮断によって選択的に遮断することがより優れているだろう。p75Rを介するTNFαシグナル伝達は保持しているが、p55Rを介するTNFαシグナル伝達を選択的に抑制する抗TNFα抗体についての報告は今までになかった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
意外にも、p55及びp75レセプターがTNFα3量体上の同じ結合部位を明らかに共有しているにもかかわらず、例えばTNFαのp55Rへの結合を選択的に抑制して、p55Rを介するTNFαシグナル伝達を選択的に抑制する抗TNFα抗体を分離できることを、本発明者らは実証することができた。それゆえ、本発明は、p55Rを介するTNFαシグナル伝達を選択的に抑制する抗TNFα抗体を提供する。特に、本発明の抗TNFα抗体は、p75Rと比べてp55Rを介するTNFαシグナル伝達を選択的に抑制する。したがって本発明の抗体は、本抗体がp55Rで仲介されるTNFαの効果を選択的に抑制でき、一方でp75Rを介するTNFαシグナル伝達の有益な効果保持できるという有利な特性を有する。したがって、自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療及び/又は予防用の医薬品の製造のための、p55Rを介するTNFαシグナル伝達を選択的に抑制する抗TNFα抗体の使用も、本発明は提供する。さらに、対象の自己免疫又は炎症性疾患の治療及び/又は予防のために、p55Rを介するTNFαシグナル伝達を選択的に抑制する抗体の治療有効量を前記対象に投与することを含む方法を提供する。
【0012】
抗体の可変領域の残基には、Kabatらによって考案された方式に従って慣例通りに番号をつける。この方式は、Kabatら、1987、in Sequences of Proteins of Immunological Interest、USDepartment of Health and Human Services、NIH、USA(以下「Kabatら(上述の)」という)に記載されている。特に示された場合を除いて、このナンバリング方式が本明細書で用いられる。
【0013】
Kabatの残基命名は、アミノ酸残基の直線的な番号付けと必ずしも直接的には対応していない。実際の直線的なアミノ酸配列が、厳密なKabatのナンバリングより少いか又は多くのアミノ酸を含む場合があり、ナンバリングは、基本的な可変領域構造のフレームワークであれ相補性決定領域(CDR)であれ、構造成分の短縮又は構造成分への挿入に対応している。任意の抗体に対して、抗体配列の相同な残基を「標準的な」Kabatナンバリング配列と並べることにより、正しい残基のKabatナンバリングを決定することができる。
【0014】
H鎖可変領域のCDRは、Kabatのナンバリング方式に従って、残基31〜35(CDR−Hl)残基50〜65(CDR−H2)及び残基95〜102(CDR−H3)に位置する。しかし、Chothia(Chothia,C.とLesk,A.M.、J.Mol.Biol,196、901〜917(1987))によれば、CDR−H1に相当するループが、残基26から残基32まで延びている。したがって、本明細書で使用した「CDR−H1」は、Kabatのナンバリング方式とChothiaの位相的なループ定義の組合せにより記載されるように、残基26〜35を含む。
【0015】
L鎖可変領域のCDRは、Kabatのナンバリング方式に従って、残基24〜34(CDR−L1)、残基50〜56(CDR−L2)及び残基89〜97(CDR−L3)に位置する。
【0016】
本発明の抗TNFα抗体は、選択的にTNFαに結合する。選択的に結合するということは、抗体が他ポリペプチドに対するよりもTNFαポリペプチドに対してより大きな親和性を有することを意味する。TNFαポリペプチドは、ヒトTNFαであることが好ましい。
【0017】
TNFαポリペプチド又は前記ポリペプチドを発現している細胞を、特異的に前記ポリペプチドを認識する抗TNFα抗体産生に用いることができる。TNFαポリペプチドは、「成熟」ポリペプチド、又は生物学的に活性なフラグメント、又はレセプター結合部位を含むこれらの誘導体であってもよい。TNFαポリペプチドは、成熟ポリペプチドであるのが好ましい。TNFαポリペプチドは、当分野で既知の方法により、発現系を含む遺伝子改変の宿主細胞から調製できるか又は、天然の供給源から回収されてもよい。本明細書中では、用語「ポリペプチド」は、ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質を含む。これらの用語は、特に断わらない限り互換的に用いられる。TNFαポリペプチドは、場合によっては、例えば親和性タグに融和した融合タンパク質などの、さらに大きなタンパク質の部分あってもよい。動物に免疫処置が必要な場合、動物に、好ましく人間以外の動物に、周知の通常の手法を用いてポリペプチドを投与して、これらのポリペプチドに対して生成された抗体を得ることができる(例えばHandbook of Experimental Immunology、D.M.Weir(編)、Vol 4、Blackwell Scientific Publishers、Oxford、England、1986を参照のこと)。多くの温血動物、例えばウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、ウシ又はブタを免疫してもよい。しかし、マウス、ウサギ、ブタ及びラットが通常は選ばれる。
【0018】
本発明で使用する抗TNFα抗体は、完全な抗体及び機能的に活性フラグメント又はそれらの誘導体を含み、これらに限定されるものではないが、モノクローナル、多価、多重特異的、ヒト化又はキメラ抗体、単鎖の抗体、Fabフラグメント、Fab’及びF(ab’)フラグメント、Fab発現ライブラリーによって産生されるフラグメント、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、及び上記のもののいずれかのエピトープ−結合フラグメントであってもよい。特定の抗体フラグメントには、国際特許出願WO2005003169、WO2005003170とWO2005003171(2005年1月13日に全て公開)に記載された抗体フラグメントも含む。抗体フラグメント及び抗体フラグメントを産生する方法は、当分野でよく知られている(例えばVermaら、1998、Journal of Immunological Methods、216、165〜181.を参照)。
【0019】
本発明で使用する抗体は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性部分、すなわち特異的に抗原と結合する抗原結合部位を有する分子を含む。本発明の免疫グロブリン分子は、任意のクラス(例えばIgG,IgE,IgM,IgD及びIgA)又は免疫グロブリン分子のサブクラスであってもよい。
【0020】
本発明の抗体分子の定常領域ドメインがもし存在する場合は、定常領域ドメインを抗体分子の提唱された機能及び必要とされることがある特にエフェクター機能を考慮して選択できる。例えば、定常領域ドメインが、ヒトIgA、IgD、IgE、IgG又はIgMドメインであってもよい。特に、ヒトIgGの定常領域ドメインを用いることができ、抗体分子が治療的使用を目的とし、抗体のエフェクター機能が必要とされるときは、特にIgG1及びIgG3アイソタイプの定常領域ドメインを用いることができる。或いは、抗体分子が治療用途を目的とし、抗体のエフェクター機能が必要とされないときは、IgG2とIgG4アイソタイプを用いることができる。これらの定常領域ドメインの変異体も用いることができる。例えば、Angalら、Molecular Immunology、1993、30(1)、105〜108に記載されているように、241位のセリンがプロリンに変異したIgG分子を用いることができる。IgG4定常ドメインにこの変異を含んでいるのが特に好ましい。
【0021】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術(KohlerとMilstein、1975、Nature、256:495〜497)、トリオーマ技法、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら、1983、Immunology Today、4:72)及びEBV−ハイブリドーマ技術(Coleら、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、pp77〜96、Alan R Liss,Inc.,1985)のような任意の当分野で知られている方法によって作製できる。
【0022】
特異的抗体生産のために選択された単一のリンパ球から作製された可変領域cDNAのクローニング及び発現により、単一リンパ球抗体法を用いて、本発明に使用する抗体を生成することもでき、例えばBabcook、Jら、1996、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93(15):7843〜78481;WO92/02551;WO2004/051268及び国際特許出願番号WO2004/106377により記載された方法による。
【0023】
ヒト化の抗体は、1つ若しくは複数の非ヒト種由来の相補性決定領域(CDR)及び1つのヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域を有する抗体分子である(例えばUS5,585,089;WO91/09967を参照)。
【0024】
キメラ抗体は、L鎖及びH鎖遺伝子が、異なる種に属する免疫グロブリン遺伝子断片から構成されるように遺伝子改変された免疫グロブリン遺伝子によってコードされたキメラ抗体である。これらのキメラ抗体は、抗原性が低い傾向がある。2価抗体は、当該分野で公知の方法により作製できる(Milsteinら、1983,Nature 305:537−539;WO93/08829、Trauneckerら、1991、EMBO J.10:3655〜3659)。多価抗体は、多重特異性を含んでもよく、又は単一特異性であってもよい(例えばWO92/22853を参照)。
【0025】
本発明使用する抗体は、当該分野で公知の多様なファージディスプレイ方法を用いて作製することもでき、以下に開示されているものが含まれる。Brinkmanら(J、Immunol.Methods、1995、182:41〜50)、Amesら、(J.Immunol.Methods,1995,184:177〜186)、Kettleboroughら、(Eur.J.Immunol.1994,24:952〜958)、Persicら、(Gene,1997 187 9〜18)、Burtonら、(Advances in Immunology,1994,57:191〜280)並びにWO90/02809;WO91/10737;WO92/01047;WO92/18619;WO93/11236;WO95/15982;WO95/20401;並びにUS5,698,426;5,223,409;5,403,484;5,580,717;5,427,908;5,750,753;5,821,047;5,571,698;5,427,908;5,516,637;5,780,225;5,658,727;5,733,743及び5,969,108。単鎖抗体を生成する技法、例えばUS4,946,778で記載された技術は、TNFαポリペプチドに対する単鎖抗体の生成にも適用できる。また、トランスジェニックマウス又は他の哺乳動物を含む他の生物を、ヒト化抗体の発現に用いてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
一実施形態では、本発明は、H鎖の可変領域が、CDR−H1として配列番号9に示した配列を有するCDR、CDR−H2として配列番号10又は配列番号21に示した配列を有するCDR、及びCDR−H3として配列番号11に示した配列を有するCDRの、少なくとも1つを含む1つのH鎖を含む、p55Rを介するTNFαシグナル伝達を選択的に抑制する抗TNFα抗体を提供する。
【0027】
一例では、本発明の抗体は、H鎖の可変領域のCDR−H1、CDR−H2及びCDR−H3のうちの少なくとも2つが、CDR−H1として配列番号9に示した配列、CDR−H2として配列番号10又は配列番号21に示した配列及びCDR−H3として配列番号11に示した配列から選択されるH鎖を含む。例えば、抗体が、CDR−H1が配列番号9に示した配列を有し、及びCDR−H2が配列番号10に示した配列を有する1つのH鎖を含んでもよい。代わりに、抗体が、CDR−H1が配列番号9に示した配列及びCDR−H3が配列番号11に示した配列を有する1つのH鎖を含んでもよく、或いは抗体が、CDR−H2が配列番号21に示した配列及びCDR−H3が配列番号11に示した配列を有するH鎖を含んでもよい。疑義を回避するため、全ての置換を含むことは理解されよう。
【0028】
一実施形態では、本発明に記載の抗体は、可変領域が、CDR−H1として配列番号9に示した配列、CDR−H2として配列番号10に示した配列及びCDR−H3として配列番号11に示した配列を含む1つのH鎖を含む。
【0029】
一実施形態では、本発明に記載の抗体は、可変領域が、CDR−H1として配列番号9に示した配列、CDR−H2として配列番号21に示した配列及びCDR−H3として配列番号11に示した配列を含む1つのH鎖を含む。
【0030】
一実施形態では、本発明の抗体は、H鎖の可変領域が配列番号6に示した配列を含む、1つのH鎖を含む。
【0031】
一実施形態では、本発明の抗体は、H鎖の可変領域が配列番号20に示した配列を含む、1つのH鎖を含む。
【0032】
別の実施形態では、本発明の抗体は、H鎖の可変領域が、配列番号6に示した配列又は配列番号20に示した配列に、少なくとも60%の同一性又は類似性を有する配列を含む1つのH鎖を含む。一実施形態では、本発明の抗体は、H鎖の可変領域が、配列番号6に示した配列又は配列番号20に示した配列に対して、少なくとも90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有する配列を含む1つのH鎖を含む。
【0033】
本明細書で用いる「同一性」とは、整列配列において任意の特定の位置における、アミノ酸残基が配列間で同一であることを示す。本明細書で用いる「類似性」とは、整列配列において任意の特定の位置における、アミノ酸残基が配列間で類似した種類であることを示す。例えば、ロイシンはイソロイシン又はバリンと置換されうる。互いにしばしば置換され得る他アミノ酸としては、限定するものではないが、
−フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファン(芳香族側鎖を有するアミノ酸)、
−リジン、アルギニン及びヒスチジン(塩基側鎖を有するアミノ酸)、
−アスパラギン酸及びグルタミン酸(酸性側鎖を有するアミノ酸)、
−アスパラギン及びグルタミン(アミド側鎖を有するアミノ酸)、並びに
−システイン及びメチオニン(硫黄含有側鎖を有するアミノ酸)が挙げられる。
同一性及び類似性の程度は、容易に評価さすることができる(Computational Molecular Biology、Lesk、A.M.編、Oxford University Press、New York、1988;Biocomputing.Informatics and Genome Projects、Smith,D.W.編、Academic Press,New York、1993;Computer Analysis of Sequence Data、Part 1、Griffin,A.M.とGriffin,H.G.編、Humana Press、New Jersey、1994;Sequence Analysis in Molecular Biology、von Heinje,G.、Academic Press、1987;及びSequence Analysis Primer、Gribskov,M.とDevereux,J.編、M Stockton Press、New York、1991)。
【0034】
本発明はまた、L鎖の可変領域が、CDR−L1として配列番号12に示した配列を有するCDR、CDR−L2として配列番号13に示した配列を有するCDR及びCDR−L3として配列番号14に示した配列を有するCDRの、少なくとも1つを含む1つのL鎖を含む、p55Rを介するTNFαシグナル伝達を選択的に抑制する抗TNFα抗体を提供する。
【0035】
一実施形態では、本発明の抗体は、L鎖の可変領域のCDR−L1、CDR−L2及びCDR−L3のうちの少なくとも2つが、CDR−L1として配列番号12に示した配列、CDR−L2として配列番号13に示した配列、及びCDR−L3として配列番号14に示した配列から選択されるL鎖を含む。例えば、抗体は、CDR−L1が配列番号12に示した配列及びCDR−L2が配列番号13に示した配列を有するL鎖を含んでもよい。代わりに、抗体は、CDR−L1が、配列番号12に示した配列及びCDR−L3が、配列番号14に示した配列を有するL鎖を含んでもよく、或いは抗体が、CDR−L2が配列番号13に示した配列、及びCDR−L3が配列番号14に示した配列を有するL鎖を含んでもよい。疑義を回避するため、全ての置換を含むことは理解されよう。
【0036】
一例では、本発明の抗体は、可変領域が、CDR−L1として配列番号12に示した配列、CDR−L2として配列番号13に示した配列及びSCDR−L3として配列番号14に示した配列を含むL鎖を含む。
【0037】
一実施形態では、本発明は、L鎖の可変領域は、配列番号8に示した配列を含むL鎖を含む。
【0038】
別の実施形態では、本発明の抗体は、L鎖の可変領域が、配列番号8に示した配列に対して、少なくとも60%の同一性又は類似性を有する配列を含むL鎖を含む。抗体は、L鎖の可変領域が、配列番号8に示した配列に対して、少なくとも90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有す配列を含むL鎖を含むのが好ましい。
【0039】
本発明の抗体分子は、それぞれ相補的L鎖又は相補的H鎖を含むのが好ましい。
【0040】
一実施形態では、本発明の抗体は、H鎖の可変領域が、CDR−H1として配列番号9に示した配列、CDR−H2として配列番号10又は配列番号21に示した配列及びCDR−H3として配列番号11に示した配列を含むH鎖、及びL鎖の可変領域が、CDR−L1として配列番号12に示した配列、CDR−L2として配列番号13に示した配列、及びCDR−L3として配列番号14に示した配列を含むL鎖を含む。
【0041】
一実施形態において、抗体はH鎖の可変領域が配列番号6に示した配列を含むH鎖、及びL鎖の可変領域が、配列番号8に示した配列を含むL鎖を含む。
【0042】
一実施形態において、抗体は、H鎖の可変領域が、配列番号20に示した配列を含むH鎖、及びL鎖の可変領域が、配列番号8に示した配列を含むL鎖を含む。
【0043】
本発明のさらなる一実施形態では、抗体は、H鎖の可変領域が、配列番号6に示した配列に対して、少なくとも60%の同一性又は類似性を有する配列を含み、L鎖の可変領域が、配列番号8に示した配列に対して、少なくとも60%の同一性又は類似性を有する配列を含むH鎖及びL鎖を含む。抗体は、L鎖の可変領域が、配列番号6に示した配列に対して、少なくとも90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有する配列を含む1つのH鎖、及び配列番号8に示した配列に対して、少なくとも90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有する配列を含む1つのL鎖を含むのが好ましい。
【0044】
本発明のさらなる一実施形態では、抗体は、H鎖の可変領域が、配列番号20に示した配列に対して、少なくとも60%の同一性又は類似性を有する配列を含み、L鎖の可変領域が、配列番号8に示した配列に対して、少なくとも60%の同一性又は類似性を有する配列を含むH鎖及びL鎖を含む。抗体は、L鎖の可変領域が、配列番号20に示した配列に対して、少なくとも90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有する配列を含む1つのH鎖、及びL鎖の可変領域が、配列番号8に示した配列に対して、少なくとも90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有する配列を含む1つのL鎖を含むのが好ましい。
【0045】
本発明によって提供される1つの抗体を、本明細書では抗体「462」と呼ぶ。ラット抗体「462」のH鎖可変領域の完全なヌクレオチド及びアミノ酸配列を、配列番号5及び6に示し、ラット抗体「462」のL鎖可変領域の完全なヌクレオチドとアミノ酸配列を、配列番号7及び8に示す。ラットのリーダー配列を含むこの抗体のH鎖可変領域のヌクレオチド及びアミノ酸配列を、配列番号1及び2に示し、L鎖可変領域のヌクレオチド及びアミノ酸配列を、配列番号3及び4に示す。
【0046】
本発明によって提供されるもう1つの抗体を、本明細書では抗体「463」と呼ぶ。ラット抗体「463」のH鎖可変領域の完全なヌクレオチド及びアミノ酸配列を、配列番号19及び20に示し、ラット抗体「463」のL鎖可変領域の完全なヌクレオチド及びアミノ酸配列を、配列番号7及び8に示す。ラットのリーダー配列を含むこの抗体のH鎖可変領域のヌクレオチド及びアミノ酸配列を、配列番号15及び16に示し、L鎖可変領域のヌクレオチド及びアミノ酸配列を、配列番号17及び18に示す。
【0047】
本発明はまた、抗体がp55Rを介するTNFαシグナル伝達を選択的に抑制することを特徴とする、CDR移植(又はヒト化)抗TNFα抗体を提供する。一実施形態では、CDR移植抗体分子の中の1つ若しくは複数のCDRが、ラット抗体462か又は463のいずれかから得られた。ラット抗体462のCDRは、配列番号9、10、11、12、13及び14で提供される。ラット抗体463のCDRは、配列番号9、21、11、12、13及び14で提供される。本明細書で用いる用語、「CDR移植抗体分子」とは、H鎖及び/又はL鎖が、ドナー抗体(例えば本明細書に記載した抗体「462」又は「463」のようなラット抗体)から、アクセプター抗体(例えばヒト抗体)のH鎖及び/又はL鎖可変領域のフレームワークに移植された、1つ若しくは複数のCDR(必要に応じて、1つ若しくは複数の改変されたCDRを含む)を含む抗体分子を指す。Vaughanら、Nature Biotechnology、16、535〜539、1998を参照することができる。
【0048】
CDRを移植する場合、CDRの由来するドナー抗体のクラス/タイプを考慮して、マウス、霊長類及びヒトフレームワーク領域を含む任意の適切なアクセプターの可変領域フレームワーク配列を用いてもよい。本発明のCDR移植抗体は、ヒトのアクセプターフレームワーク領域を含む可変領域、並びに1つ若しくは複数の上記のようなドナー抗体由来のCDRを有するのが好ましい。それゆえ、可変領域は、ヒトのアクセプターフレームワーク領域及びヒト以外の、好ましくはラットのドナーCDRを含むCDR移植抗体が提供される。
【0049】
本発明で用いうるヒトフレームワークの例には、KOL、NEWM、REI、EU、TUR、TEI、LAY及びPOMが挙げられる(Kabatら、上記)。例えば、KOL及びNEWMはH鎖に用いることができ、REIはL鎖に用いることができ、EU、LAY及びPOMはH鎖及びL鎖に用いることができる。或いは、ヒト生殖細胞系配列を用いてもよい。これらは、http://vbase.mrc−cpe.cam.ac.uk/で利用可能である。
【0050】
本発明のCDR移植抗体において、アクセプターH鎖及びL鎖は、必ずしも同じ抗体から由来する必要はなく、所望であれば異なる鎖に由来するフレームワーク領域を有する複合鎖を含んでもよい。
【0051】
また、本発明のCDR移植抗体において、フレームワーク領域はアクセプター抗体のフレームワーク領域と正確に同じ配列を有している必要はない。例えば、普通でない残基をそのアクセプター鎖クラス又はタイプにおいて、より高頻度に現れる残基に変えてもよい。或いは、アクセプターフレームワーク領域中の選択した残基を、ドナー抗体において同じ位置に見られる残基に一致するよう変えてもよい(Reichmannら、1998、Nature、332、323〜324を参照)。そのような交換はドナー抗体の親和性を回復するために必要最小限にとどめるべきである。アクセプターフレームワーク領域において、変更する必要がある残基を選択するためのプロトコルが、WO91/09967に述べられている。
【0052】
ドナー残基は、ドナー抗体、すなわち、CDRがもともと由来する抗体から由来する残基であり、ドナー抗体は、本発明の一実施形態では、本明細書に記載されるようなラット抗体「462」又は「463」のいずれでもよい。
【0053】
本発明のいずれかの態様における抗体分子は、TNFαに対する高い結合親和性を有するのが好ましく、ピコモルでの結合親和性を有するのが好ましい。本発明の抗体分子は、約1〜500pMの間の結合親和性を有するのが好ましい。一実施形態において、本発明の抗体分子は、約10〜400pMの間の結合親和性を有する。本発明によって提供される抗体の親和性を、当分野で知られている任意の適当な方法を用いて変更することができることは理解されるであろう。したがって本発明はまた、本発明の抗体分子の変異体であってTNFαに対する改善された親和性を有するものに関する。必要な場合には、本発明に用いる抗体の親和性を、CDRの変異導入(Yangら、J.Mol.Biol、254、392〜403、1995)、鎖シャッフリング(Marksら、Bio/Technology,10,779〜783,1992)、大腸菌の変異誘発株の使用(Lowら、J.Mol.Biol.,250,359〜368,1996)、DNAシャッフリング(Pattenら、Curr.Opin.Biotechnol.,8,724〜733,1997)、ファージディスプレイ(Thompsonら、J.Mol.Biol,256,77〜88,1996)及び有性のPCR(sexual PCR)(Crameriら、Nature,391,288〜291,1998)などの当分野において知られている親和性成熟プロトコルを用いて改善してもよい。Vaughanら(上述)はこれらの親和性成熟プロトコルについて論じている。
【0054】
本発明によって提供される抗TNFα抗体は、例えばTNFαのp55Rへの結合を選択的に抑制することによって、p55Rを介するTNFαシグナル伝達を選択的に抑制する。すなわち抗TNFα抗体は、このレセプターを介するシグナル伝達を減少させる。「選択的に抑制する」という用語は、本発明の抗体は、p75Rを介するTNFαシグナル伝達を抑制するよりもはるかに強く、p55Rを介するTNFαシグナル伝達を抑制することを意味する。それゆえ、一実施形態において、本発明は、p75Rに比べてp55Rを介するTNFαシグナル伝達を選択的に抑制する抗TNFα抗体を提供する。本抗体は、p55Rを介するTNFαシグナル伝達を実質的に減少させるのが好ましい。一例では、本発明の抗体は、p55RへのTNFαの結合を実質的に減少させる。一例では、本発明の抗体は、p75RへのTNFαの結合を抑制するよりも強く、p55RへのTNFαの結合を抑制する。本明細書で用いる用語、「抑制する」とは、完全な及び部分的な抑制を含むことは理解されるであろう。したがって、この用語は、p55Rを介するTNFαシグナル伝達の完全な及び部分的な抑制を含む。抑制の程度は、用いた抗体量によって影響され得ることは理解されるであろう。
【0055】
一実施形態では、抗TNFα抗体は、p55Rを介するTNFαシグナル伝達を40%よりも強く、好ましく40〜100%、より好ましくは、45〜100%抑制する。一実施形態では、抗TNFα抗体は、50%又はそれ以上p55Rを介するTNFαシグナル伝達を抑制する。一実施形態では、抗TNFα抗体は、60%又はそれ以上p55Rを介するTNFαシグナル伝達を抑制する。一実施形態では、抗TNFα抗体は、70%又はそれ以上p55Rを介するTNFαシグナル伝達を抑制する。一実施形態では、抗TNFα抗体は、80%又はそれ以上p55Rを介するTNFαシグナル伝達を抑制する。一実施形態では、抗TNFα抗体は、90%又はそれ以上p55Rを介するTNFαシグナル伝達を抑制する。
【0056】
一例では、本発明の抗TNFα抗体は、p55RへのTNFαの結合を40%よりも大きく、好ましく40〜100%に、より好ましくは45〜100%に減少させる。
【0057】
本発明の抗TNFα抗体は、p75Rを介するTNFαシグナル伝達が殆ど変化しないのが好ましい。本発明の抗TNFα抗体は、p75Rを介するTNFαシグナル伝達を好ましくは約50%以下、好ましくは0〜50%に減少させる。一例では、本発明の抗TNFα抗体は、p75Rを介するTNFαシグナル伝達を約40%以下に減少させる。一例では、本発明の抗TNFα抗体は、p75Rを介するTNFαシグナル伝達を約30%以下に減少させる。一例では、本発明の抗TNFα抗体は、p75Rを介するTNFαシグナル伝達を約20%以下に減少させる。一例では、本発明の抗TNFα抗体は、p75Rを介するTNFαシグナル伝達を約10%以下に減少させる。
【0058】
一例では、本発明の抗TNFα抗体は、p75RへのTNFαの結合が殆ど変化しないのが好ましい。本発明の抗TNFα抗体は、p75RへのTNFαの結合を、約30%以下に、好ましくは0〜30%に、より好ましくは0〜20%に、さらにより好ましくは0〜15%に減少させる。
【0059】
したがって、一例では、本発明の抗TNFα抗体が、p55Rを介するTNFαシグナル伝達を50%抑制する濃度で、p75Rを介するTNFαシグナル伝達を、40%以下に、一般には30%以下に、通常は25%以下に、概しては20%以下に、理想的には10%以下に減少する。
【0060】
一例では、TNFαシグナル伝達を50%抑制するために必要とされる抗体量は、IC50として示される。したがって、一例では、本発明の抗TNFα抗体は、p75Rを介するTNFαシグナル伝達に対するIC50よりも、少なくとも5倍低い、一般には少なくとも10倍低い、概しては少なくとも15倍低い、通常は少なくとも20倍低い、理想的には少なくとも50倍低い、好ましくは少なくとも100倍低い、p55Rを介するTNFαシグナル伝達に対するIC50を有する。IC50の数が低ければ低いほど、より高い活性の化合物を意味することを当業者には理解できよう。
【0061】
p55Rを介するTNFαシグナル伝達を選択的に抑制する、例えばp55RへのTNFαの結合を抑制することによって抑制する抗TNFα抗体を同定するために、当業者によって多くの異なる方法がとられてもよい。一例では、これらの特性を有する抗体を、TNFαと相互作用する抗体をまず特定することにより同定し、次いでそれらの抗体を調べて、p55Rを介するTNFαシグナル伝達を選択的に抑制する抗体を同定する。他の例では、TNFαと相互作用する抗体をまず特定し、次いでそれらの抗体を調べてp55RへのTNFαの結合を選択的に抑制する抗体を同定し、必要に応じてシグナル伝達の選択的抑制に関して、それらの抗体さらにスクリーニングすることにより、抗体を同定する。或いは、p75Rと比べてp55Rを介したTNFαシグナル伝達を選択的に抑制する抗体を同定するために、抗体を直接スクリーニングしてもよく、例えばシグナル伝達及び/又は結合実験で直接スクリーニングすることによって抗体を直接スクリーニングしてもよい。
【0062】
任意の適当な方法、例えばTNFαポリペプチドが、候補抗体と接触し、候補抗体がTNFαポリペプチドと相互作用する能力が測定されるアッセイ方式を用いて、TNFαと相互作用する抗体を同定できる。TNFαポリペプチドと相互作用する候補抗体の能力は、レファレンスレンジ又は対照と比較するのが好ましい。必要に応じて、複数の候補抗体をスクリーニングするために、このアッセイを用いることができる。一例では、天然の又は組換え型のTNFαポリペプチドを含む第1試料及び第2試料を、候補抗体又は対照物質と接触し、TNFαポリペプチドと相互作用する候補抗体の能力を、候補抗体と対照物質とでの相互作用の差異を比較することによって測定する。例えば、特異的にTNFαポリペプチドを認識して結合する固定化した抗体と、ポリペプチドを接触させるか又は、TNFαポリペプチドの精製調製物を、タンパク質を結合するように設計された表面に接触させて、TNFαポリペプチドをまず固定化するのが好ましい。TNFαポリペプチドは、部分的に又は完全に精製(例えば、部分的に又は完全に他ポリペプチドを含まない)されていてもよく、或いは細胞可溶化物の部分であってもよい。さらに、ポリペプチドは、TNFαポリペプチド又はTNFαポリペプチドの生物学的に活性な部分、及びグルタチオニン−S−トランスフェラーゼなどの領域又はIgG1のFc領域を含む融合タンパク質であってもよい。或いは、当業者によく知られた技法を用いて、ポリペプチドをビオチン標識してもよい(例えばbiotinylation kit、Pierce Chemicals;Rockford、IL)。場合によっては、TNFαポリペプチド又は候補抗体を、例えば放射性標識(32P、35S又は125Iなど)、或いは蛍光標識(例えば、フルオレッセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フトアルデヒド(o−phthaldehyde)又はフルオレサミン)で標識して、TNFαポリペプチドと候補抗体間での相互作用の検出を可能にする。TNFαポリペプチドと相互作用する候補抗体の能力は、当業者に既知の方法、例えばELISA、BIAcore(商標)、フローサイトメトリー又は応用技術(FMAT)によって測定することができる。
【0063】
上記のように、p55Rを介するTNFαシグナル伝達を選択的に抑制する抗体の能力に関して、TNFαを結合する抗体をスクリーニングする前に、抗体を予備スクリーニングして、TNFαを結合する抗体を同定してもよい。
【0064】
一実施形態では、本発明の抗体は、p55RへのTNFαの結合を抑制することによって、p55Rを介するTNFαシグナル伝達を選択的に抑制する。p55RへのTNFαの結合を選択的に抑制する抗体を、任意の適当な方法によって同定することができ、例えば、
(i)候補抗体の存在下でのp55RへのTNFαの結合と、候補抗体の非存在下又は対照物質の存在下でのp55RへのTNFαの結合とを比較すること、及び
(ii)候補抗体の存在下でのp75RへのTNFαの結合と、候補抗体の非存在下又は対照物質の存在下でのp75RへのTNFαの結合とを比較すること、及び
(iii)候補抗体が、p75Rと比べてp55RへのTNFαの結合を実質的に抑制するかどうかを測定することによって同定することができる。
【0065】
このようなアッセイは、臨床モニタリング及び/又は薬剤開発において、候補物質のスクリーニングに用いることができる。
【0066】
適切なTNFαレセプター(p55R及びp75R)の結合抑制アッセイの例が記載されている。例えばUS5,606,023及びLoetscherら、The Journal of Biological Chemistry、268,26350〜26357を参照。適切な無細胞系アッセイ及び細胞ベースのアッセイのその他の例が、実施例で提供される。
【0067】
p55RへのTNFαの結合を選択的に抑制する候補抗体の能力を、レファレンスレンジ又は対照と比較するのが好ましい。必要に応じて、このアッセイは複数のレセプター結合抑制アッセイを用いて、複数の候補抗体のスクリーニングに用いることができる。無細胞系アッセイの1つの実施例では、天然又は組換え型のTNFαポリペプチドを含む第1試料及び第2試料を、候補抗体又は対照物質と接触させ、p55R又はp75RのいずれかへのTNFαポリペプチドの結合を抑制する候補抗体の能力を、候補抗体及び対照物質の存在下で、それぞれのレセプターへのTNFαの結合の差を比較することによって測定する。このようなアッセイの一例では、例えば、レセプターの細胞外ドメインを特異的に認識して結合する、固定化した抗体と適切なレセプターの細胞外ドメインを接触させることによって、又はレセプターポリペプチドの精製調製物を、タンパク質を結合するように設計した表面と接触させることによって、レセプターポリペプチドの細胞外ドメインを、まず固定化する。レセプターポリペプチドは、部分的に又は完全に精製(例えば、部分的に又は完全に他ポリペプチドを含まない)されていてもよく、或いは細胞可溶化物の部分であってもよい。さらに、レセプターポリペプチドは、レセプターの細胞外ドメイン又はレセプターの細胞外ドメインの生物学的に活性な部分、及びグルタチオニン−S−トランスフェラーゼなどの領域又はIgG1のFc部分を含む融合タンパク質であってもよい。或いは、当業者によく知られた技法を用いて、レセプターポリペプチドをビオチン標識してもよい(例えばbiotinylation kit、Pierce Chemicals;Rockford、IL)。固定化されたp55又はp75レセプターへのTNFαの結合を抑制する候補抗体の能力は、当業者に既知の方法、例えばELISA、BIAcore(商標)、フローサイトメトリー又は蛍光応用技術(FMAT)によって測定することができる。
【0068】
このようなアッセイの他の例では、例えばTNFαポリペプチドを、本ポリペプチドを特異的に認識して結合する、固定化した抗体と接触させることによって、又はTNFαポリペプチドの精製調製物を、タンパク質を結合するように設計した表面と接触させることによって、TNFαポリペプチドをまず固定化する。p55R又はp75RへのTNFαの結合を選択的に抑制する候補抗体の能力を、候補抗体を固定化したTNFαポリペプチドと共にインキュベートし、p55R又はp75RポリペプチドのいずれかとTNFαポリペプチドを接触させ、レセプターがTNFαポリペプチドに結合いるかどうかを検出することにより測定することができる。p55R及びp75Rポリペプチドは、それぞれレセプターの細胞外のドメイン又はレセプターの細胞外のドメインの生物学的に活性な部分、及びIgG1のFc部分などのドメインを含む融合タンパク質であってもよい。例えばペルオキシダーゼなどのレポーター基にコンジュゲートした、レセプター融合タンパク質のFc部分に結合する抗IgG Fc抗体を用いて、レセプター結合が検出できる。レセプター結合の存否が、候補抗体がp55RへのTNFαの結合を選択的に遮断したかどうかを測定するために用いられる。
【0069】
細胞ベースのアッセイを用いる他の例では、p55Rか又はp75Rを発現している細胞集団をTNFα及び候補抗体と接触させ、レセプターへのTNFαの結合を抑制する候補抗体の能力を測定する。TNFα結合を抑制する候補抗体の能力を、レファレンスレンジ又は対照と比較するのが好ましい。細胞は、例えば真核生物由来(例えば哺乳動物又は酵母菌)でもよく、p55R又はp75Rを内因的に発現してもよく、又は本ポリペプチドを発現するように遺伝子改変されていてもよい。場合によっては、TNFαポリペプチドを、例えば放射性標識(32P、35S又は125Iなど)、或いは蛍光標識(例えば、フルオレッセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フトアルデヒド(o−phthaldehyde)又はフルオレサミン)で標識して、TNFαポリペプチドとレセプター間での相互作用の検出を可能にする。ELISA、フローサイトメトリー及びFMATなどの代替法も使用できる。
【0070】
p55Rを介するTNFαシグナル伝達を選択的に抑制する、例えばp55RへのTNFαの結合を選択的に抑制することによって抑制する抗体が、細胞ベースのシグナル伝達アッセイを用いて同定できる。
【0071】
一例では、マウスのp55Rを発現するが、p75Rは発現しないL929細胞(マウス線維芽細胞株)が、候補抗体がp55Rを介するTNFαシグナル伝達を、例えばp55Rへの結合を抑制することによって遮断するかどうかを決定するために用いられる。それゆえ、アクチノマイシンDのようなタンパク合成阻害剤で感作された場合、これらの細胞はヒトTNFαによって殺され、例えば候補抗体がp55RへのTNFαの結合を遮断する場合、タンパク合成阻害剤が細胞をTNFα媒介細胞毒性から守る。したがって、アッセイの終わりに、細胞生存度測定して阻止抗体を検出できる。アッセイは、本明細書及びWO92/11383で提供される実施例に詳述されている。
【0072】
或いは、TNFαの結合に続く下流領域の遺伝子発現を検出するために、TNFαレセプターp55又はp75の少なくとも細胞外領域(又は細胞外領域のTNFα結合部分)に連結したルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼ、又は緑色蛍光タンパク質等のリポーター遺伝子を用いる細胞ベースでのリポーター遺伝子アッセイにより、そのレセプターのうちの1つへのTNFαの結合及びその結果生じたレセプターシグナル伝達を検出できる。このようなアッセイ例の詳細は、実施例の中に示されている。リポーター遺伝子発現の減少は、候補抗体がレセプターを介するTNFαシグナル伝達を、例えばレセプターへの結合を抑制して遮断していることを示唆している。
【0073】
p75Rと比べてp55Rを介するTNFαシグナル伝達を選択的に抑制する抗TNFα抗体を見つけるために、上述した方法を用いて、任意の適切な供給源からの多くの異なる抗TNFα抗体をスクリーニングする必要がある。したがって、本発明はp55RへのTNFαの結合を選択的に抑制する抗TNFα抗体を得る、
a)少なくとも1つの抗TNFα抗体を得ること、
b)抗体が、p55Rを介するTNFαシグナル伝達を選択的に抑制する、例えばp55RへのTNFαの結合を選択的に抑制することによって抑制するか否かを判定するために、ステップ(a)で得られる抗体をスクリーニングすること、及び必要な場合は、少なくとも1つの選択的な抗体が見つかるまでステップ(a)と(b)を繰り返すことを含む方法を提供する。本方法のステップ(b)で同定された抗体は、p55RへのTNFαの結合を選択的に45%よりも大きく抑制し、かつp75RへのTNFαの結合を30%以下に抑制するのが好ましい。
【0074】
好ましい一実施形態では、本方法のステップ(a)で得る抗体は、免疫された動物から得られ、好ましくは、例えばBabcookら、1996,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93(15):7843〜7848;WO92/02551;WO2004/051268及び国際特許出願番号WO2004/106377に記載される方法を用いて得られる。
【0075】
p55Rを介するTNFαシグナル伝達を選択的に抑制する、例えばp55RへのTNFαの結合を抑制することを介して選択的に抑制する抗TNFα抗体が、例えば1つ若しくは複数の動物モデルで治療有効量を決定するために同定されるか、さらに試験されるであろう。適切な動物の例には、マウス、ラット、ウサギ、サル、モルモット、イヌ及びネコが含まれるがそれに限定されない。用いる動物は、自己免疫又は炎症性疾患、例えばMS、糖尿病、SLE、関節リウマチ、自己免疫性溶血性貧血、重症筋無力症、バセドウ病、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性甲状腺炎、ベーチェット疾病、ヴェゲナー肉芽腫症、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎又はクローン病及び潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患のモデルであるのが好ましい。
【0076】
一例では、p55Rを介するTNFαシグナル伝達の選択的抑制は、疾病症状の回復又は改善、疾病の発症の遅れ又は緩徐性進行、例えば限定はされないが、臨床スコアの減少をモニターすることによって判定することがでる。自己免疫疾患に通じた医師に知られた技法は、候補物質が疾病に伴う1つ若しくは複数の症状を変更したかどうかの判定に用いることができる。
【0077】
自己免疫性疾患の多くの異なるモデルが、当該技術分野において知られており、例えばMSに対する多くの疾病モデルがある(’t HartとAmor 2003,Current Opinion in Neurology 16:375〜83)。特に、ABHマウスの実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)は、ヒトのMSのモデルとして適当であるとみなされている(Bakerら、1990.Journal of Neuroimmunology,28:261〜270)。急性及び再発寛解型のモデルが開発されている。
【0078】
本発明はまた、TNFαポリペプチドの特異的な領域への抗体の結合が、p55Rを介するTNFαシグナル伝達を選択的に抑制する、例えばp75Rと比べてp55RへのTNFαの結合を抑制することにより抑制するTNFαポリペプチドの特異的な領域を提供する。TNFαポリペプチドのこの特異的な領域又はエピトープは、本発明によって提供される抗体と組み合わせて、当分野において知られている任意の適切なエピトープマッピング法によって同定できる。このような方法の実施例には、抗体によって認識されるエピトープの配列を含む抗体に特異的に結合することができる最小フラグメントの本発明の抗体への結合に対して、さまざまな長さのTNFα由来するペプチドをスクリーニングすることが含まれる。TNFαペプチドは、合成的に又はTNFαポリペプチドのタンパク分解によって作製されてもよい。抗体を結合するペプチドは、質量分析によって同定できる。他の例では、NMRスペクトル法が本発明のエピトープの同定に用いられる。一度同定されると、本発明の抗体と結合するエピトープのフラグメントを、必要に応じて、同じエピトープと結合する新たな抗体を得るために用いることができる。
【0079】
一実施形態では、抗体「462」若しくは「463」又は配列番号9、10、11、12、13、14及び21に示した1つ若しくは複数のCDRを含む抗体の、ヒトTNFαの特異的な領域又はエピトープへの結合が、p55Rを介するTNFαシグナル伝達を選択的に抑制する、ヒトTNFαの特異的な領域又はエピトープが提供される。
【0080】
TNFαへの本発明の抗体の結合を交差ブロックする抗体は、p55Rを介するTNFαシグナル伝達の選択的抑制において同様に有効であろう。したがって、一実施形態では、抗体「462」又は抗体「463」又は配列番号9、10、11、12、13、14及び21で提供される1つ若しくは複数のCDRを含む任意の抗体がヒトTNFαに結合するのを交差ブロックする及び/又はそれらの抗体のいずれか1つによってヒトTNFαに結合することを交差ブロックする、ヒトTNFαに特異性を有する抗体が提供される。一実施形態では、本発明のこの側面による抗体は、抗体「462」又は抗体「463」又は配列番号9、10、11、12、13、14及び21で提供される1つ若しくは複数のCDRを含む任意の抗体と結合したエピトープと境を接する及び/又は重なる1つのエピトープに結合する。或いは、本発明のこの側面による抗体は、抗体「462」又は抗体「463」又は配列番号9、10、11、12、13、14及び21で提供される1つ若しくは複数のCDRを含む任意の抗体又は前記エピトープと境を接する及び/又は重なるエピトープと同じエピトープに結合しない。
【0081】
ヒトTNFαへの交差ブロック抗体の結合が、抗体「462」又は抗体「463」又は配列番号9、10、11、12、13、14及び21で提供される1つ若しくは複数のCDRを含む任意の抗体の結合を妨げる場合又はその逆の場合、本発明のこの側面に記載の交差ブロック抗体を、当業界で公知の任意の適当な方法を用いて、例えば競合ELISA又はBIAcoreを用いて同定できる。
【0082】
本発明のこの側面の一実施形態では、p55Rを介するTNFαシグナル伝達を選択的に抑制し、抗体「462」又は抗体「463」又は配列番号9、10、11、12、13、14及び21で提供される1つ若しくは複数のCDRを含む任意の抗体の、ヒトTNFαへの結合を交差ブロックする抗TNFα抗体が提供される。一実施形態では、本発明のこの側面によって提供される交差−遮断抗体は、抗体「462」又は抗体「463」又は配列番号9、10、11、12、13、14及び21で提供される1つ若しくは複数のCDRを含む任意の抗体の、ヒトTNFαへの結合を、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上抑制する。
【0083】
これに代えて、又はこれに加えて、抗体「462」又は抗体「463」又は配列番号9、10、11、12、13、14及び21で提供される1つ若しくは複数のCDRを含む任意の抗体によって、本発明のこの側面による抗体は、ヒトTNFαに結合することが交差ブロックされる。したがって、p55Rを介するTNFαシグナル伝達を選択的に抑制し、抗体「462」又は抗体「463」又は配列番号9、10、11、12、13、14及び21で提供される1つ若しくは複数のCDRを含む任意の抗体によって、ヒトTNFαへ結合することが交差ブロックされる抗TNFα抗体も提供される。一実施形態では、発明のこの側面によって提供される交差ブロック抗体は、抗体「462」又は抗体「463」又は配列番号9、10、11、12、13、14及び21で提供される1つ若しくは複数のCDRを含む任意の抗体によって、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上ヒトTNFαへの結合が抑制される。
【0084】
本発明に使用する抗体は、必要に応じてエフェクター分子にコンジュゲートすることができる。本明細書で用いる用語エフェクター分子は、例えば、抗悪性腫瘍薬、薬剤、トキシン、生物学的に活性なタンパク質、例えば酵素、他の抗体又は抗体フラグメント、合成又は天然のポリマー、核酸及び核酸のフラグメント例えばDNA、RNA及びこれらのフラグメント、放射性核種、特に放射性ヨウ化物、放射性同位元素、キレート化金属、ナノ粒子、並びに蛍光化合物又はNMR又はESR分光法で検出できる化合物等のレポーター基である。一例では、抗TNFα抗体を、細胞障害性の物質、放射性核種又は薬剤部分などのエフェクター分子にコンジュゲートして、所定の生物反応を改変することができる。例えば、治療薬は、望ましい生物活性を持つタンパク質又はポリペプチドである薬剤部分であってもよい。上記の部分は、例としてであって限定するものではないが、トキシン例えばアブリン、リシンA、シュードモナスエキソトキシン若しくはジフテリア毒素、タンパク質例えば腫瘍壊死因子、α−インターフェロン、β−インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子若しくは組織プラスミノーゲン活性化因子、血栓性薬剤若しくは抗血管新生薬剤、例えばアンギオスタチン又はエンドスタチン、又は、生体応答調整物質例えばリンホカイン、インターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−6(IL−6)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、神経成長因子(NGF)若しくは他の成長因子が含まれる。
【0085】
他の例では、エフェクター分子は、細胞に有害(例えば、殺す)である任意の因子を含む細胞毒素又は細胞障害性因子であってもよい。例としては、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、並びにピューロマイシン及びピューロマイシンの類似物又は相同物が挙げられる。さらに、エフェクター分子には、代謝拮抗剤(例えばメトトレキセート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン、アルキル化剤(例えばメクロレタミン、チオエパクロラムブシル(thioepa chlorambucil)、メルファラン、カルムスチン(BSNU)及びロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、及びシスジクロロジアミンプラチナ(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えばダウノルビシン(以前はダウノマイシン)及びドキソルビシン)、抗生物質(例えばダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、アントラマイシン(AMC)、カリケアマイシン又はデュオカルマイシン)、並びに有糸分裂阻害剤(例えばビンクリスチン及びビンブラスチン)が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0086】
他エフェクター分子には、放射性核種例えば111In及び90Y、Lu177、ビスマス213、カリホルニウム252、イリジウム192及びタングステン188/レニウム188、又は薬剤例えば限定するものではないが、アルキルホスホコリン、トポイソメラーゼI阻害剤、タキソイド及びスラミンを挙げることができる。
【0087】
抗体に上記のエフェクター分子をコンジュゲートする技法は、当分野においてよく知られている(Hellstromら、Controlled Drug Delivery,第2版、Robinsonら編、1987,pp.623〜53;Thorpeら、1982、Immunol.Rev.,62:119−58及びDubowchikら、1999,Pharmacology and Therapeutics,83,67〜123を参照)。一例では、抗体又は抗体のフラグメントを、必要に応じて、他のタンパク質のアミノ酸配列(又はそれらの部分で、好ましくはタンパク質の少なくとも10個、20個若しくは50個のアミノ酸部分)にN末端又はC末端で共有結合(例えばペプチド結合)により融合する。抗体又は抗体のフラグメントが、抗体の定常ドメインのN末端で他タンパク質に結合されるのが好ましい。組換えDNA手法は、例えばWO86/01533及びEP0392745に記載される融合を作製するために用いることができる。
【0088】
他の例では、エフェクター分子は、in vivoでの半減期を増大してもよく及び/又は免疫系に対する上皮性関門を越えて抗体の供給を増強してもよい。このタイプの適切なエフェクター分子の例としては、PCT/GB2005/002084で記載される分子のような、ポリマー、アルブミン、アルブミン結合タンパク質又はアルブミン結合化合物が挙げられる。
【0089】
一例では、本発明の抗体は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)部分に付着できる。1つの特定の例では、抗体は、抗体フラグメントであり、PEG分子は、任意の利用可能なアミノ酸側鎖又は抗体フラグメント中にある末端アミノ酸官能基、例えば任意の遊離のアミノ、イミノ、チオール、ヒドロキシル又はカルボキシル基を介して付着できる。上記のアミノ酸は、天然に抗体フラグメントに存在してもよく、又は組換えDNA法を用いてフラグメントに加工してもよい。例えばUS5,219,996を参照のこと。複数の部位を、2つ以上のPEG分子を付着するために用いることができる。PEG分子は、抗体フラグメント中にある少なくとも1つのシステイン残基のチオール基を介して共有結合で結合されるのが好ましい。チオール基を付着部位として用いる場合、適切に活性化されたエフェクター分子、例えばマレイミド並びにシステイン誘導体などのチオールに選択的な誘導体を用いることができる。
【0090】
他の例では、抗体は、例えばEP 0948544に開示された方法により、PEG化された、すなわちFab’フラグメントにPEG(ポリ(エチレングリコール))を共有結合で付着させた改変Fab’フラグメントである[“Poly(ethyleneglycol)Chemistry,Biotechnical and Biomedical Applications”,1992,J.Milton Harris(編),Plenum Press,New York,“Poly(ethyleneglycol)Chemistry and Biological Applications”,1997,J.Milton HarrisとS.Zalipsky(編),American Chemical Society,Washington DC及び“Bioconjugation Protein Coupling Techniques for the Biomedical Sciences”,1998,M.AslamとA.Dent,Grove Publishers,New York;Chapman,A.2002,Advanced Drug Delivery Reviews 2002,54:531〜545も参照のこと]。PEGは、ヒンジ領域でシステインに付着されるのが好ましい。一例では、改変Fab’フラグメントは、改変されたヒンジ領域中の単一のチオール基に共有結合的に結合したマレイミド基を有する。リジン残基は、マレイミド基に共有結合的に結合されてもよく、リジン残基のそれぞれのアミン基に、約20,000Daの分子量を有するメトキシポリ(エチレングリコール)ポリマーが付着されてもよい。したがって、Fab’フラグメントに付着したPEGの総分子量は、約40,000のDaである。
【0091】
特定のPEG化された抗体フラグメントは、さらに、国際特許出願WO2005003169、WO2005003170及びWO2005003171中に記載されたものを含む。
【0092】
本発明はまた、本発明の抗体分子のH鎖及び/又はL鎖(複数可)をコードする単離したDNA塩基配列を提供する。本DNAの塩基配列が、本発明の抗体分子のH鎖又はL鎖をコードするのが好ましい。本発明のDNA配列は合成DNA、例えば化学的方法によって作製されたもの、cDNA、ゲノムDNA又はそれらのどんな組合せを含んでいてもよい。
【0093】
本発明の抗体分子をコードするDNA配列は当業者によく知られた方法によって得ることができる。例えば、抗体H鎖及びL鎖の1部又は全部をコードするDNA配列は所望により、決定したDNA配列又は対応するアミノ酸配列に基づいて合成することができる。
【0094】
アクセプターフレームワーク配列をコードするDNAは当業者には広く入手可能であり、既知のアミノ酸配列に基づいて容易に合成することができる。
【0095】
本発明の抗体分子をコードするDNA配列を調製するために分子生物学の標準的な技法を使用することができる。所望のDNA配列はオリゴヌクレオチド合成技法を用いて完全に又は部分的に合成することができる。適切ならば、部位特異的変異導入及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を使用することができる。
【0096】
適切なDNAの塩基配列の例が、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号15、配列番号17及び配列番号19に示されている。
【0097】
本発明はまた、本発明の1つ若しくは複数のDNAの塩基配列を含むクローニングベクター又は発現ベクターに関する。したがって、本発明の抗体をコードする1つ若しくは複数のDNAの塩基配列を含むクローニングベクター又は発現ベクターを提供する。本クローニングベクター又は発現ベクターは本発明の抗体分子のL鎖及びH鎖をそれぞれコードする2つのDNA配列を含むのが好ましい。
【0098】
ベクターを構築することができる一般的な方法、トランスフェクション方法及び培養方法は当業者によく知られたものである。この点について、“Current Protocols in Molecular Biology”,1999,F.M.Ausubel(編集),Wiley Interscience,New York及びCold Spring Harbor Publishingから出版されているManiatis Manualを参照することができる。
【0099】
また、本発明の抗体をコードする1つ若しくは複数のDNAの塩基配列を含む、1つ若しくは複数のクローニングベクター又は発現ベクターを含む宿主細胞も提供される。本発明の抗体分子をコードするDNA配列の発現のために、どのような適切な宿主細胞/ベクター系を使用してもよい。細菌系、例えば大腸菌及び他の微生物系を用いてもよく、又は真核生物の、例えば哺乳動物の宿主細胞発現系を用いてもよい。適切な哺乳動物宿主細胞にはCHO、ミエローマ又はハイブリドーマ細胞が含まれる。
【0100】
本発明はまた、本発明のベクターを含む宿主細胞を、本発明による抗体分子をコードするDNAからタンパク質発現を誘導するために適切な条件下で培養し、前記抗体分子を単離することを含む、本発明の抗体分子を製造する方法を提供する。
【0101】
抗体分子はH鎖又はL鎖ポリペプチドのみを含んでもよく、その場合はH鎖又はL鎖ポリペプチドコードの配列のみを宿主細胞をトランスフェクションするために使用する必要がある。H鎖及びL鎖の両方を含む産物の産生のためには、細胞株を2つのベクター、L鎖ポリペプチドをコードする第1のベクター及びH鎖ポリペプチドをコードする第2のベクターでトランスフェクションすればよい。或いは、L鎖及びH鎖ポリペプチドをコードする配列を含む、単一のベクターを使用してもよい。
【0102】
また本発明は、例えば、p55RへのTNFαの結合を選択的に抑制することにより、p55Rを介するTNFαシグナル伝達を選択的に抑制する、抗TNFα抗体の治療有効量の投与を含む、自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療及び/又は予防のための方法を提供する。また本発明は、自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療及び/又は予防のための医薬品製造用の、例えばp55RへのTNFαの結合を選択的に抑制することにより、p55Rを介するTNFαシグナル伝達を選択的に抑制する、抗TNFα抗体の使用を提供する。
【0103】
「治療」という用語は、治療的療法か予防的療法のいずれかを含む。特定の抑制剤又は抑制剤の組合せを用いる、疾病又は症状を治療又は防ぐある方法に言及するとき、上記言及は、自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療及び/又は予防用の医薬品の製造のための、その抑制剤又は抑制剤の組合せの使用を意味することを、理解すべきである。
【0104】
p55Rを介するTNFαシグナル伝達を選択的に抑制する、例えばp55RへのTNFαの結合を抑制することを介して選択的に抑制する抗体が、p55R媒介シグナル伝達、特に自己免疫疾患及び炎症性疾患の結果として生じる、あらゆる疾病治療用の医薬品の製造に使用できる。特定の自己免疫及び炎症性疾患には、CNSの脱髄性自己免疫疾患、多発性硬化症(MS)、糖尿病、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ、自己免疫性溶血性貧血、重症筋無力症、バセドウ病、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性甲状腺炎、ベーチェット疾病、ヴェゲナー肉芽腫症、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患が含まれる。
【0105】
ここで述べているように、例えばTNFαのp55Rへの結合を選択的に抑制して、p55Rを介するTNFαシグナル伝達を選択的に抑制する抗TNFα抗体は、自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療及び/又は予防に使用することができる。上記の使用のために、薬剤は医薬品組成物の形態で一般に投与される。
【0106】
また、p55Rを介するTNFαシグナル伝達を選択的に抑制する抗TNFα抗体を含む医薬品組成物、及び薬学的に許容し得る担体も提供される。
【0107】
薬学的に許容し得る担体を通常は含む無菌の医薬品の組成物の1部として、組成物は通常供給される。この組成物は、任意の適切な形態(組成物を患者に投与する望ましい方法に応じて)であってもよい。
【0108】
本発明の抗体は対象に、種々の別の経路で、例えば経口で、経皮的に、皮下に、鼻腔内に、静脈内に、筋肉内に、くも膜下腔内に及び脳室内に投与されるのが好ましい。いずれの場合においても、投与に最も適切な経路は、特定の抗体、対象、並びに疾病の性質と重症度及び対象の体調に依存する。
【0109】
本発明で使用する抗体は、例えば、同時に、経時的に又は別々に、1つ若しくは複数の他の治療的に活性な化合物と組み合わせて投与されてもよく、この組合せは、例えば他の抗自己免疫疾患治療又は抗癌治療であってもよい。
【0110】
医薬品組成物は、本発明の活性因子の1回あたりの所定量を含む便利な単位投与剤形で提供することができる。治療されている症状、投与経路並びに対象の年齢、重量及び体調に応じて、例えばこれらに限定されないが、上述のある単位は750mg/kg〜0.1mg/kgを含んでもよい。
【0111】
本発明に使用する薬学的に許容し得る担体は、例えば投与経路に応じて様々な形態をとってもよい。
【0112】
経口投与用の組成物は、液体又は固体であってもよい。経口液状製剤は、例えば水性又は油性懸濁液、溶液、乳化液、シロップ又はエリキシル剤の形態であってもよく、又は使用前に水若しくはその他の適当なビヒクルで再形成するための乾燥製品であってよい。経口液状製剤は、当技術分野で既知の懸濁剤を含んでもよい。
【0113】
経口固形剤の場合、例えば粉末、カプセル及び錠剤、澱粉などの担体、糖類、微結晶性セルロース、顆粒化剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などが含まれてもよい。投与の容易性から、錠剤とカプセルが最も有利な経口的投与単位形態であり、この場合には一般に固体調剤担体が使用される。上記で説明した一般的な投与形態に加えて、本発明の活性因子は、調節した放出手段及び/又は送達手段によって投与されてもよい。錠剤及びカプセルは、結着剤例えばシロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビトール、トラガカンタ、又はポリビニルピロリドン;賦形剤、例えばラクトース、糖、トウモロコシ澱粉、リン酸カルシウム、ソルビトール又はグリシン;錠剤成形用潤滑剤例えばステアリン酸マグネシウム、滑石、ポリエチレングリコール又はシリカ;崩壊剤、例えばジャガイモ澱粉;又はドデシル硫酸ナトリウムのような許容可能な湿潤剤のような、従来の担体又は賦形剤を含んでもよい。錠剤は、標準の医薬調製法で周知の方法に従って標準的水性又は非水性技術で被覆することができる。
【0114】
経口投与に適切な本発明の医薬品組成物は、粉末若しくは顆粒剤として、又は溶液若しくは水性液体中の懸濁液、非水溶液体、水中油型乳剤又は油中水型乳濁液として、それぞれ活性因子の所定量を含むカプセル、カシェ剤若しくは錠剤のような区分された単位として提供できる。このような組成物は任意の調剤方法で調製し得るが,それらの方法はいずれも活性因子と、1つ若しくは複数の必要な成分から成るキャリヤとを結合するステップを含む。一般に、上記組成物は、活性因子を液体キャリヤ若しくは微粉状固体キャリヤ、又はこれらのキャリヤの両方と均一かつ十分に混合し、その後必要であれば得られた混合物を所望の形状に成形することによって調製する。例えば、必要に応じて1つ若しくは複数の補助成分と共に圧縮又は成形によって錠剤を製造することができる。
【0115】
非経口投与のために適切な医薬品組成物は、ヒドロキシプロピルセルロースのような界面活性剤と十分に混合した、水中の本発明の活性因子の溶液又は懸濁液として調製することができる。分散液はまた、グリセロール,液体ポリエチレングリコール及びオイル中のそれらの混合物で調製することができる。保存及び使用の通常の条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を防止するために保存剤を含む。
【0116】
注射剤に適した薬剤形態は、抗酸化剤、緩衝液、静菌薬及び組成物を予定されたレシピエントの血液と等張にする溶質を含んでもよいし又は非水性滅菌注射溶液、並びに懸濁剤及び粘稠化剤を含んでもよい水性又は非水性滅菌懸濁液を含む。即席注射用液類、分散剤及び懸濁液を、無菌の粉末類、顆粒類及び錠剤類から調製することができる。
【0117】
医薬品組成物は、当該技術分野で既知の医療器具を用いて投与できる。例えば、好ましい実施形態において、本発明の医薬品組成物は、US5,399,163、5,383,851、5,312,335、5,064,413、4,941,880、4,790,824又は4,596,556に開示される装置のような針のない皮下注入装置を用いて投与することができる。本発明で有用な公知の埋込物及びモジュールの例は、制御された速度で薬物を分配するための埋込可能な微小注入ポンプを開示するUS4,487,603、皮膚を通して薬剤を投与する治療装置を開示するUS4,486,194、正確な注入速度で薬物を供給する薬剤注入ポンプを開示するUS4,447,233、連続的薬物送達のための可変流量の埋込可能な注入装置を開示するUS4,447,224、多チャンバー区画を有する浸透性薬物送達系を開示するUS4,439,196、及び浸透性薬物送達系を開示するUS4,475,196を包含する。多くの他のこうした埋込物、送達系、及びモジュールは当業者に公知である。
【0118】
局所的適用に適した医薬品組成物は、軟膏、クリーム、懸濁液、ローション剤、粉末、溶液、ペースト、ゲル、含浸包帯剤、スプレー、エアゾール又はオイル、経皮的装置、散布剤その他として製剤化することができる。これらの組成物は、活性因子を含む従来の方法で調製できる。したがって、また組成物は、例えば防腐剤、薬剤浸透を促進する溶媒、クリームの皮膚軟化薬又は軟膏並びにローション剤用のエタノール又はオレイルアルコールなどの適合した通常の担体及び添加剤を含んでもよい。上記担体は組成物の約1%〜約98%の範囲の量で存在することができる。より一般には、担体は、組成物の最高約80%を構成する。例のみとして、クリーム又は軟膏は、所望の濃度のクリーム又は軟膏の製造には十分量で、化合物の約5〜10重量%範囲の量を含む、十分な量の親水性材料及び水を混合して調製する。
【0119】
経皮投与するのに適した医薬品組成物は、長時間にわたって、受容者の表皮と密接に接触しつづけることを意図した分離したパッチとして提供することができる。例えば、活性因子が、イオン泳動によってパッチから供給されてもよい。
【0120】
外部組織例えば口及び皮膚への使用のためには、組成物を、局所用の軟膏又はクリームとして適用するのが好ましい。軟膏で製剤化した場合は、活性因子をパラフィン又は水溶性軟膏基剤のいずれかと共に用いてもよい。或いは、活性因子を、水中油型クリーム基剤又は油中水型基剤をもつクリームに製剤化してもよい。
【0121】
口腔内への局所投与に適する医薬品組成物は、舐剤、香錠及び口内洗剤を含む。
【0122】
眼への局所投与に適する医薬品組成物は、適切な担体、特に水溶性の溶媒中に活性因子が溶解又は懸濁されている点眼剤を含む。また上記のように、眼への局所投与に適する医薬品組成物には、局所用の軟膏又はクリームを含む。
【0123】
直腸内適用に適する担体が固体である医薬品組成物は、単位服用量の坐剤として、提供されるのが最も好ましい。適切な担体は、カカオバター又は他グリセリド又は当該技術分野で一般的に使用されている物質が含まれ、坐剤は軟化又は溶解した担体(複数可)を有する化合物の混合物を、冷却して成型することにより都合よく形成することができる。また医薬品組成物は、浣腸剤として投与されてもよい。
【0124】
p55Rを介するTNFαシグナル伝達を選択的に抑制する抗TNFα抗体の投与される用量は、特定の抗体、自己免疫疾患又は炎症性疾患のタイプ、対象、並びに疾病の性状及び疾病の重症度、並びに対象の体調、並びに選択された投与経路によって変わり、適切な用量は、当業者によって容易に決定することができる。ヒト及び動物での、自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療及び/又は予防のために、抗体を含む医薬品組成物を、治療的又は予防的に有効な用量(例えば、自己免疫疾患又は炎症性疾患の抑制及び/又は自己免疫疾患症状又は炎症性疾患症状の軽減に結びつく用量)で、抗体ベースの臨床製剤のような臨床製剤に対する任意の適切な投与経路、例えば注射及び当分野において知られている他の投与経路を用いて、患者(例えば、ヒト被験者)に投与することができる。
【0125】
本組成物は、投与方法に依存して、本発明の抑制剤を0.1重量%から、好ましくは10〜60又はそれ以上の重量%含んでもよい。
【0126】
最適量及び本発明1つの抑制剤個々の用量の間隔は、治療している性状及び症状の程度、剤形、投与経路及び投与部位、並びに治療を受ける特定対象の年齢及び症状によって決定され、医師が用いる適切な用量が最終的に決定されることは当業者には認識されよう。この用量は、適切になるまで繰り返すことができる。副作用が生じる場合、標準の医療に従って用量の量及び/又は回数を変更又は減らすことができる。
【0127】
本発明はさらに、添付の図面を参照する以下の実施例において例示としてのみ記載される。
【実施例】
【0128】
(実施例1)抗TNFα抗体パネルの分離
ラットを可溶性ヒト組換え型TNFαで免疫した。3〜4週間間隔で4×5μgを最初は完全フロインドアジュバント中、皮下経路で投与。
【0129】
次いで、1匹のラットの脾臓細胞を、すべて検出されるTNFα結合抗体が、クローン抗体であることを保証する細胞密度で、40個のマイクロタイタープレートに播種した。それから細胞を7日間、T細胞馴化培地(3%)及びEL−4細胞(5×10/ウェル)で培養した。7日後に免疫反応板上にコーティングしたヒツジポリクローナルによって捕捉されたヒトTNFα(50ng/ml)を用いて、これらのプレートの上清を、抗TNFα抗体についてELISAによりスクリーニングした。次いで陽性のウェルから上清を、下記のL929バイオアッセイ並びにp55及びp75レセプター特異的タンパク質アッセイでさらに試験した。
【0130】
(実施例2)TNFαレセプター結合阻害アッセイ
L929 アッセイ
マウスのp55TNFαレセプターを発現するがp75TNFαレセプターは発現しないL929細胞(マウス線維芽細胞細胞系)を、このレセプターへのTNFαの結合を遮断する抗TNFα抗体のアッセイに用いた。タンパク合成阻害剤で感作した場合、これらの細胞はヒトTNFαによって殺される。
【0131】
アッセイで必要になる前日まで、細胞を標準的組織培養培地で増殖させ、96ウェル組織培養プレートに播種した。培地を除去し、試験する上清を、個々のウェルに添加した。次いでヒト組換え型のTNFαを、アクチノマイシンD1μg/ml(最終濃度)の存在下、200〜400pg/mlで各ウェルに添加した後、プレートを37℃で1夜インキュベートした。
【0132】
翌日、プレートを、PBSで穏やかに洗浄し、細胞をメタノールで固定した。続いて細胞を、1%のクリスタルバイオレットで染色した(生存細胞は、プレートに付着して残り、色素を取り込む)。余分の染色液を洗い落とし、残存する染色された細胞を、30%酢酸で可溶化した後、プレートを570/405nMで読み取った。
【0133】
マウスp55TNFRへのTNFαの結合を遮断する抗体が入っているウェルは、細胞をTNFα媒介細胞毒性から保護し、陰性対照ウェルと比べシグナル増強を示す。
【0134】
陽性のウェルは、p55R及びp75Rアッセイでさらに試験した。
【0135】
p55TNFR及びp75TNFR結合阻害アッセイ
標準的ELISAプレートを、1/10,000希釈したヒツジ抗ヒトTNFαポリクローナル抗体でコーティングした。続いて、プレートをPBS+1% BSAでブロックした。それから、ヒトTNFαを、25〜50ng/mlで各ウェルに添加した。1時間後に、遊離のTNFαを洗い流した後、抗TNFα抗体を含む上清を、レプリカウェルに添加した。各レプリカの1つのウェルに追加して、ヒトp55TNFR−Human Fc融合タンパク質か又はヒトp75TNFR−Human Fc融合タンパク質を添加した。これらを1時間インキュベート後に、洗浄して遊離のレセプターを除去した。このステップに続き、抗ヒトIgG Fcペルオキシダーゼコンジュゲートポリクローナル抗体(Stratech Scientific)を、1/2000希釈して添加した。プレートを1時間放置後、洗浄して遊離のコンジュゲートを除去した。次いで、TMB基質を各ウェルに添加し、色を発色させた。したがって、抗TNFα抗体がレセプター(複数可)への結合を遮断したウェルは可視化できる。
【0136】
図1は、4つの異なる抗TNF抗体による、p55TNFR及びp75TNFRへのTNFαの結合抑制パーセンテージを示す。抗体「3D6」は、p55TNFRへのTNFαの結合を49.3%抑制したが、p75TNFRへのTNFαの結合は14.6%抑制しただけであった。これと対照的に、例えば抗体22H3は、p55R及びp75RへのTNFαの結合を、それぞれ78.9及び71.9%抑制した。したがって、抗体3D6はp55RへのTNFαの結合を選択的に遮断する。
【0137】
(実施例3)さらに選択的な抗体の分離
実施例1と同じラット集団を用いて、培養したB細胞を、TNFα選択的抗体を同定するためにスクリーニングした。
【0138】
製造業者のプロトコルに従って、ヒトTNFα(Strathman Biotech GmbH)を、室温で1時間、10倍モル過剰のSulfo−NHS−LC−LC−biotin(Pierce)で、ビオチン標識した。5μgのビオチン化TNFαを、50μlの9.95ミクロンスーパーアビジンをコーティングした微粒子(Bangs Beads)と、室温で1時間、500μlの容量(1×384ウェルプレートに混合)で混合した。次いで、ビーズをPEGブロック(1%のPEG/0.1%のトゥイーン/PBS)中で、5回洗浄して遊離のTNFαを除去した。続いてTNFαコートビーズを、約4mlのPEGブロックに再懸濁し、10μlを384ウェルプレートの各ウェルに添加した。ラット抗体及び10μlの1:1666希釈ヤギ−抗−ラットIgG Fc ガンマ特異的Cy5コンジュゲートを含む10μlのB細胞培養を、ビーズを含有するウェルに添加した。プレートを室温、暗所で1時間インキュベート後、Applied Biosystems 8200 machineで読み取った。Applied Biosystemsのソフトウェアを用いて陽性のウェルを同定した。
【0139】
約1400枚のB細胞培養プレートをスクリーニングした。このプレートには、約2×10のB細胞に相当する約140000ウェルが存在する。
【0140】
スクリーニングした2500のウェルは、TNFαに結合した抗体を有していた。
【0141】
これらを、実施例4で記載されるアッセイを用いて、p75Rと比べてp55Rを介するTNFαシグナル伝達を選択的に遮断する能力に関してさらにスクリーニングした。まず抗体を、p55Rシグナル伝達の遮断に関してスクリーニングし、シグナル伝達を遮断したものについて、p75Rを介するTNFαシグナル伝達遮断能力を試験した。p55Rを介するシグナル伝達を選択的に遮断するそれらの抗体を、WO2004/051268に記載されたホモジニアス蛍光アッセイを用いて分離し、H鎖及びL鎖の可変領域遺伝子を、単1のラットB細胞から逆転写PCRでクローニングした。ヒト抗体定常領域遺伝子(Angalら、Molecular Immunology,1993,30(1),105〜108に記載の241位のセリンがプロリンに変更されたヒトカッパL鎖及びガンマ−4H鎖)を含む発現ベクターにサブクローニングすることにより、シグナル伝達アッセイで、可変領域を組換え型IgG形式で発現させて、結合及び活性を確かめ、ラット/ヒトキメラ抗体がCHO細胞で一過性に発現した。CHO細胞のトランスフェクションは、製造業者の指示書(InVitrogen、カタログNo.18324)に従い、リポフェクタミン手法を用いて実施した。
【0142】
2つの抗体配列が得られ、「462」及び「463」と名付けた。「462」のV−領域配列は、配列番号1、2、3及び4に示されている。リーダー配列を伴わない可変領域配列は、配列番号5、6、7及び8に示されている。「463」のV−領域配列は、配列番号15、16、17及び18に示されている。リーダー配列を伴わない可変領域配列は、配列番号19、20、7及び8に示されている。
【0143】
(実施例4)TNFRシグナル伝達アッセイ
4.1 p55Rシグナル伝達アッセイ
p55 NFkBルシフェラーゼアッセイ
A549−ES−Luc細胞を、このリポーター遺伝子アッセイに用いた。A549細胞は、p55 TNFレセプターを発現し、ルシフェラーゼ遺伝子に結合したEセレクチンプロモーター(3×NFkB結合部位を含む)及び安定な細胞系生成のための選択可能なマーカーを含むベクターで安定にトランスフェクションしている上皮肺細胞癌である。A549−ES−Lucは、次の培地に増殖させた。
RPMI 1640(フェノールを含まない)
+10%FCS
+2Mm グルタミン
+1mg/ml G418(Life Tech,50mg/ml原液)
【0144】
A549−ES−luc細胞を、1.5×10細胞/mlの細胞懸濁液を用い、100μl/ウェル= 15,000細胞/ウェルで、白色不透明な96ウェルプレート(Perkin Elmer)に播種した。細胞を1夜、37℃/5%COで付着させた。翌日、培地を吸引し、30分間、最終濃度3ng/mlのヒトTNFαと共にプレインキュベートしたアッセイ培地中の抗体100μlで置換した。細胞を、37℃/5%のCOで、5時間インキュベートした。次いで、ルシフェラーゼの発現は、ルシフェラーゼリポーター遺伝子アッセイキット(Perkin ElmerのLucLite)を用いてアッセイし、プレートはルミネセンスプレートリーダーthe LJL Analystで読み取った。
【0145】
4.2 p75シグナル伝達アッセイ
CD28及びTCRゼータの細胞内シグナル伝達領域に結合した、p75R細胞外ドメインをコードするカセット含む、ベクターで安定にトランスフェクションしたJurkat細胞を用いて、p75シグナル伝達をアッセイした。同じベクターの中に、最小限のEセレクチンプロモーター領域を有するNFkBに対する5つの結合部位があり、これがリポーター遺伝子ルシフェラーゼと安定な細胞系生成のための選択可能なマーカーの発現を推進する。そのリガンドであるヒトTNFαを有するp75バイオアッセイレセプターの刺激作用が、バイオアッセイレセプターのCD28/ゼータ領域を介して細胞内でシグナル伝達カスケードの開始に導く。シグナル伝達カスケードは、NFkB活性化を誘導し、ルシフェラーゼリポーター遺伝子の転写を可能にする。次いで、活性化レベルがルシフェラーゼアッセイで測定できる。この活性化を遮断できる抗体は、ルシフェラーゼの発現を妨げる。
【0146】
レセプター発現クローニングカセット及びシャトルベクターの構築
バイオアッセイレセプターの発現に必要な完全な発現カセットを含む仲介シャトルベクターを用いた。このベクターは、(Finneyら、J.Immunol.2004 172:104)ですでに記載した、pBluescript SK+(Stratagene)で考案されたクローニングカセットを含んでいる。このクローニングカセットの5’側には、HCMVプロモーターがあり、SV40ポリアデニル化シグナルは、このクローニングカセットの3’側に存在する。クローニングカセットは、細胞外ドメイン(ECD)結合成分、膜貫通成分及びシグナル伝達領域成分から構成され、個々の成分の交換を容易にしている。下記のDNAフラグメントを組み合わせて、シャトルベクターを作製した。
A)NotI〜Xholのフラグメント上のpBluescript II SK(−)(Stratagene)のベクターのバックボーン
B)HindIII〜EcoRIフラグメント上のすでに記載したクローニングカセット
C)NotI〜HindIIIフラグメントの上のHCMVプロモーター
D)EcoRI〜Xholフラグメント上のSV40ポリアデニル化シグナル
このシャトルベクターの生成を図2に示す。
【0147】
結合、膜貫通及びシグナル伝達成分フラグメントの構築
ヒトp75 TNFαレセプター細胞外ドメイン結合成分HindIII〜NarIフラグメント。
【0148】
リーダー配列及びヒトp75 TNF−αレセプターの細胞外ドメイン残基1〜257(GenBank参照:NM 001066)を含むフラグメントを、プラスミドpORF9−hTNFRSF1B(Invivogen)からの、オリゴ4023(配列番号22)及び4024(配列番号23)を用いて、PCRクローニングした。オリゴ4023は、5’側HindIII部位及びKosak配列を導入する。オリゴ4024は、3’側NarI部位を導入する。次いで、PCR産物を制限酵素HindIII及びNarIで消化した。
【0149】
ヒトCD28膜貫通及びシグナル伝達領域並びにヒトTCRゼータシグナル伝達領域成分NarI〜EcoRIフラグメント。
【0150】
ヒトCD28膜貫通及びシグナル伝達領域の残基135〜202並びにヒトTCRゼータ細胞内領域の残基31〜142含むフラグメントを、制限酵素NarI及びEcoRIで、(Finneyら、J.Immunol.2004 172:104)ですでに記載したプラスミドから消化した。
【0151】
バイオアッセイレセプターリポーター遺伝子ベクターの構築
バイオアッセイレセプター用の完全長発現カセットを、上述のシャトルベクターで上述した結合、膜貫通及びシグナル伝達成分を組み合わせて作製した。次いでこのカセットを、リポーター遺伝子ベクターpNifty2−Luc(Invivogen)にサブクローニングした。このベクターは、NF−kB誘導性プロモーターの制御下にあるルシフェラーゼリポーター遺伝子及び大腸菌及び哺乳動物細胞の両方での選択用の、選択可能なマーカーZeocin(商標)を含む。バイオアッセイレセプター発現カセットを、NotI〜NotIフラグメント上のシャトルベクターから取り出し、pNifty2−LucのNotI部位にクローニングした。
【0152】
安定なバイオアッセイレセプターリポーター遺伝子細胞系の生成
製造業者の指示書(Amaxa Biosystems)に従ってAmaxa Nucleofector装置を用いて、ベクターのプラスミドDNAを、ヒトT細胞白血病細胞系Jurkat E6.1にトランスフェクションした。続いて安定な細胞系を、200μg/mlの濃度のZeocin(商標)で培養して作製した。
【0153】
p75/CD28−TCRゼータバイオアッセイレセプターを用いる抗ヒトのTNFα抗体の分析。
ヒトp75 TNFαレセプター細胞外ドメイン結合成分、ヒトCD28膜貫通及びシグナル伝達領域並びにヒトTCRゼータシグナル伝達領域成分を含む、バイオアッセイレセプターを発現している安定な細胞系を上記のように作製した。これらの細胞に対してヒトTNFαの滴定を加え、生成したルシフェラーゼの量を、供給者の指示に従って、Lucliteアッセイキット(Promega)を用いて4時間後に測定した。p75/CD28−TCRゼータバイオアッセイレセプターからのTNFα誘導ルシフェラーゼ応答を、図3に示す。TNFαの濃度をこの滴定から選択し、p75/CD28−TCRゼータバイオアッセイレセプターを介するルシフェラーゼ生成を遮断する抗TNFα抗体の能力を評価するために用いた。
【0154】
アッセイ培地:
500ml DMEM(フェノールを含まない)
+10%ウシ胎仔血清
+2mM グルタミン
+1ml ノルマシン(Normacin)
+200μg/ml zeocin
+1%のエンハンサー溶液、プロテアーゼ阻害剤
Jurk細胞を、2×10細胞/mlの細胞懸濁液を用いて白色の不透明な96ウェルプレートに播種した。次いで、抗体を所望の滴定スケールでプレートに加えた。プレートを、37℃で30分間インキュベートし、各ウェルに、30ng/mlの濃度で10μlのヒトTNFαリガンドを加えて、各ウェルでヒトTNFα3ng/mlの最終濃度にした。プレートを37℃で4時間インキュベートした後、ルシフェラーゼ発現をルシフェラーゼリポーター遺伝子アッセイキット(Luclite 1000 kit,Perkin−Elmer)を用いてアッセイした。
【0155】
結果
抗体「462」及び市販の抗TNFα抗体の効果
p55Rシグナル伝達アッセイにおけるルシフェラーゼ生成に及ぼすアダリムマブ及びインフリキシマブを図4に示す。全て3つの抗体は、p55Rを介するTNFαシグナル伝達を抑制することは明らかである。図5は、抗体「463」は、p55Rを介すTNFαシグナル伝達も抑制することを示している。
【0156】
p75Rシグナル伝達アッセイにおけるルシフェラーゼ生成に及ぼす、抗体「462」並びに市販の抗TNFα抗体アダリムマブ及びインフリキシマブの効果を図6に示す。抗体「462」は、p75Rを介するTNFαシグナル伝達を殆ど変化させないのに対し、アダリムマブ及びインフリキシマブのみが、p75R介するTNFαシグナル伝達を抑制することは明らかである。図7は、抗体「463」も、p75Rを介するTNFαシグナル伝達を殆ど変化させないことを示している。抗体「462」及び「463」は、p55Rシグナル伝達アッセイと比べて、p75Rシグナル伝達アッセイでは有意に抑制力が低かった。
【0157】
したがって、抗体「462」及び「463」は、p55Rを介するTNFαシグナル伝達を選択的に抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】p55R及びp75Rに対するTNFαの結合に及ぼす、異なる抗TNFα抗体の効果を示すp55TNFR及びp75TNFR結合阻害アッセイを示す。
【図2】バイオアッセイレセプターシャトルベクターの作製のために、pBluescript(登録商標)II SK(+)の大きなNotI及びXhoI制限フラグメントにクローンニングした発現カセットを示す。
【図3】p75/CD28−TCRゼータバイオアッセイレセプターからの、TNFα誘発ルシフェラーゼ応答の滴定を示す。
【図4】抗体「462」、インフリキシマブ及びアダリムマブのp55Rシグナル伝達に及ぼす効果を示す。
【図5】p55Rシグナル伝達に抗体「463」の及ぼす効果を示す。
【図6】抗体「462」、インフリキシマブ及びアダリムマブのp75Rシグナル伝達に及ぼす効果を示す。
【図7】抗体「463」のp75Rシグナル伝達に及ぼす効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
p75Rと比べてp55Rを介するTNFαシグナル伝達を選択的に抑制することを特徴とする抗TNFα抗体。
【請求項2】
p55Rを介するTNFαシグナル伝達を実質的に抑制する、請求項1に記載の抗TNFα抗体。
【請求項3】
p55Rを介するTNFαシグナル伝達を45%よりも大きく減少させる、請求項2に記載の抗TNFα抗体。
【請求項4】
p75Rを介するTNFαシグナル伝達を40%以下減少させる、請求項3に記載の抗TNFα抗体。
【請求項5】
抗体或いはその機能的に活性なフラグメント又は誘導体である、請求項1から4までのいずれか一項に記載の抗体。
【請求項6】
抗体又はそのフラグメントがCDR移植抗体である、請求項5に記載の抗体。
【請求項7】
抗体フラグメントが、Fab、Fab’、F(ab’)、scFv又はそのエピトープ結合フラグメントである、請求項5又は請求項6に記載の抗体。
【請求項8】
抗体又はそのフラグメントが、1つ又は複数のエフェクター分子(複数可)にコンジュゲートされている、請求項1から7までのいずれか一項に記載の抗体。
【請求項9】
自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療用の医薬品を製造するための、請求項1から8までのいずれか一項に記載の抗体の使用。
【請求項10】
対象の自己免疫疾患又は炎症性疾患を治療及び/又は予防するための方法であって、前記対象に、請求項1から9までのいずれか一項に記載の抗体の治療有効量を投与することを含む方法。
【請求項11】
請求項1から9までのいずれか一項に記載の抗TNFα抗体及び薬学的に許容し得る担体を含む医薬品組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−521783(P2008−521783A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−542113(P2007−542113)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【国際出願番号】PCT/GB2005/004511
【国際公開番号】WO2006/056779
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(507073918)ユセベ ファルマ ソシエテ アノニム (70)
【Fターム(参考)】