説明

pcLEDのためのドープしたガーネット製の発光団

本発明は、式(I)(Y,Gd,Lu,Se,Sm,Tb,Pr,Th,Ir,Sb,Bi3−x(Al,Ga12:Ce、式中、a+b+c+d+e+f+g+h+i+j+k=1、l+m=1、x=0.005〜0.1が適用される、で表されるガーネット構造を有する発光団、および前記発光団の製造方法、および青色発光または近UV領域に位置するLEDの発光の変換発光団としての使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Th4+、Sb3+、Ir3+および/またはBi3+で同時ドープされた(co-doped)ガーネットからなる蛍光体、この調製、ならびに白色LEDまたはいわゆるカラーオンデマンド(colour-on-demand)用途のためのLED変換蛍光体としてのこの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
カラーオンデマンドの概念は、1種または2種以上の蛍光体を用いるpcLED(=蛍光体変換LED)による、ある種の色点(colour point)の光の発生を意味するものと解釈される。この概念は、例えば、例えば照明された企業ロゴ、商標などのためのある種の企業デザインを作成するために、用いられる。
【0003】
ガーネット構造、例えば純粋なYAG:Ceまたはこの誘導体を有する慣用の蛍光体は、特に高出力のLEDにおいて用いる際に、最適の分光学的特性を示さない。これについての理由は、以下である:
・蛍光体の表面は、大きい比率の一次放射を散乱し、これは、この比率が蛍光体により吸収され得ないことを意味する、
・イオン、特に活性剤イオン(activator ion)が蛍光体粒子中に不均一に分布する結果、内部量子収量の減少がもたらされる、
【0004】
・<300nmの小さい単結晶の大きさの結果、主要な作用を奏する表面効果が得られる:他方、表面上に存在する欠陥により、結晶格子において無放射性の組み換えが発生し、他方、表面に近接する活性剤イオンは、格子の不均一な結晶場中に存在し、変換効果に有用ではないか、または表面へのエネルギー移動により後者を防止し、これが次に、放射性でない組み換えと関連する、
【0005】
・蛍光体において生じる特定の比率の蛍光は、蛍光体を離れることができず、この理由は、これが界面において光学的により細い環境に全体的に反射され、波伝導プロセスによって蛍光体中に移動し、再吸収により最終的に失われるからである、
【0006】
・蛍光体が、その長い寿命の励起状態によって飽和されるため、蛍光体に進入する大きい比率の一次放射は、吸収され得ない(減衰期間t1/e YAG:Ce=63〜67ns、Ce3+濃度に依存する、Weber M.J., Solid State commun. (1973) 12, 741を参照)。
【0007】
EP-0142 931には、ガーネット構造を有する蛍光体が用いられ、基板材料が本質的に組成YAl12を有する、視覚的ディスプレイデバイスが開示されている。
EP-1095 998には、組成A12:(Ce,Pr)を有し、ここでAが群Y、Tb、Laおよび/またはLuからの希土類金属であり、BがAlおよび/またはGaを意味する蛍光体が開示されている。
WO 2005/061659には、A12(Ce,Pr,Eu)タイプのガーネット構造を有し、ここでA=希土類金属であり、B=Al、Gaであり、ここで成分BのいくらかがSiにより置き換えられている蛍光体が記載されている。
【0008】
一次放射として青色発光チップを含む白色pcLEDsのために現在用いられている蛍光体は、主にYAG:Ce3+もしくはこの誘導体またはまた、Eu2+がドープされているオルトケイ酸塩類(Ca,Sr,Ba)SiOである。
【0009】
蛍光体は、酸化物出発物質を粉末として混合し、混合物を粉砕し、次に任意に還元雰囲気中で数日までにわたり1700℃までの温度にて、オーブン中で混合物をか焼することによって、固体拡散法(また「混合および焼成」または「混合&焼成」としても知られている)により調製される。これにより、形態、粒度分布および基材の量における発光活性化イオンの分布に関して、不均一性を有する蛍光体粉末が得られる。さらに、伝統的な方法により調製されるこれらの蛍光体の形態、粒度分布および他の特性は、乏しく調整することができるに過ぎず、再現するのが困難である。
【0010】
したがって、これらの粒子は、多数の欠点を有し、例えば、特には、最適でなく、かつ不均一な形態および粒度分布を有するこれらの蛍光体でLEDチップが不均一にコーティングされ、この結果散乱による高度な損失プロセスがもたらされる。他の損失は、LEDチップの蛍光体コーティングが不均一であるのみならず、LEDごとに再現可能でもないという事実により、これらのLEDの製造において発生する。この結果、バッチ内でさえもpcLEDから発光された光の色点の変化がもたらされる。これにより、LED(いわゆるビニング)の複雑な分類プロセスが必要になる。
【発明の概要】
【0011】
したがって、本発明の目的は、1つまたは2つ以上の前述の欠点を有さず、暖かい白色光を生じる、白色LED用の、またはカラーオンデマンド用途用の変換蛍光体を提供することにある。
【0012】
驚くべきことに、この目的は、変換蛍光体がセリウムで活性化される、Th3+、Sb3+および/またはBi3+が同時にドープされたガーネットからなる点で、前述の欠点を回避することにより達成することができ、ここで、好ましいドーパントは、少なくとも100ppmの濃度で存在する。
【0013】
他の驚異的な効果は、本発明の蛍光体が、固体拡散法によって調製される同時ドープでないYAG:Ce蛍光体より高い光度を有することにある(図1および2を参照)。
【0014】
したがって、本発明は、式I
(Y,Gd,Lu,Se,Sm,Tb,Pr,Th,Ir,Sb,Bi3−x(Al,Ga12:Ce(I)
式中、
a+b+c+d+e+f+g+h+i+j+k=1であり、
l+m=1であり、
x=0.005〜0.1である、
で表されるガーネット構造を有する蛍光体に関する。
【0015】
本明細書中のガーネット構造はまた、この結晶が典型的なガーネット構造を保持する限り、必然的に、ガーネットの理想的な場合とわずかに異なる欠陥または格子の欠陥に基づく構造を意味する。典型的なガーネット構造は、一般的に、A12:Dを意味するものと解釈され、ここでA=希土類金属(RE);B=Al、Ga;およびD=REと置き換えられる活性剤、例えばセリウムである。
【0016】
セリウムのドーピング濃度が0.5〜10重量%であるのが、好ましい。これは、特に好ましくは2.0〜5.0重量%、最も好ましくは3.0〜3.5重量%である。3.0〜3.5%のセリウム濃度にて、蛍光体の増大した吸収およびしたがって増大した光収率または一層大きい輝度が、一般的に発生する。一層高いセリウム濃度では、量子収量が減少し、したがって次に低下した光収率がもたらされる。
【0017】
式Iで表されるルミネッセント材料の吸収および発光スペクトル、熱消失挙動および減衰期間τ1/eは、3価のカチオンの正確な組成に高度に依存する。上述の分光学的特性についての重要な要因は、Ce3+の12面体位置の結晶場強度またはCe−O結合の共有結合特徴、即ち酸素アニオンの有効負電荷およびアニオンと金属電子軌道との重複である。
【0018】
一般的に、Ce3+発光帯([Xe]5d→[Xe]4f遷移)が、増大する結晶場強度を伴って、または増大する共有結合特性を伴って赤色スペクトル領域に移動することを、観察することができる。したがって、上記の式Iで表される組成または電子が豊富である(「容易に酸化可能な」)三価カチオンでのドーピングの結果、この方向において影響されるスペクトル特性がもたらされる。
【0019】
特に好ましいのは、式Iで表される蛍光体であり、ここで、式Iで表される化合物は、式II〜IVで表される化合物から選択される化合物である:
(Y1−x−yCeSbAl12、式中0.005≦x≦0.1および0.001≦y≦0.005 (II)
(Y1−x−yCeBiAl12、式中0.005≦x≦0.1および0.001≦y≦0.005 (III)
(Y1−x−yCeThAl12、式中0.005≦x≦0.1および0.001≦y≦0.005 (IV)
【0020】
ガーネット構造における構成成分Bi、SbまたはThの1種または2種以上の比率の増大により、本発明の蛍光体の発光波長が赤色方向に移動する。これは、暖かい白色光を発生させるために特に重要である。高い色再生を有する快適な光を発生させるために、異なる蛍光体、即ち緑色方向に移動した蛍光体、例えばY(Al,Ga)12などと、本発明の蛍光体と、赤色蛍光体(例えば高いルーメン当量に寄与することができる赤色バンドまたは線エミッタ、例えばユウロピウムをドープしたタングステン酸塩、モリブデン酸塩および/またはリン酸塩)との混合物を用いるのが、有利である。さらに、青緑色蛍光体、例えばLuAl12:Ce(LUAG:Ce)を混合することも、可能である。これにより、日光のVIS昼光スペクトルに極めて類似するほぼ連続的な発光スペクトルが得られる。
【0021】
本発明の蛍光体の粒子の大きさは、50nm〜30μm、好ましくは1μm〜20μmである。
【0022】
他の態様において、式Iで表される蛍光体は、さらに以下の蛍光体材料のさらなる少なくとも1種を含んでいてもよい:
酸化物、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、バナジウム酸塩、III族窒化物、(オキシ)窒化物、各々個々に、または1種もしくは2種以上の活性剤イオン、例えばCe、Eu、Mn、Crおよび/またはBiとのこれらの混合物。
特定の色空間が確立されるべきである場合には、これは特に有利である。
【0023】
さらに好ましい態様において、蛍光体はLEDチップの反対側に、構造化された(例えばピラミッド状の)表面を有する(DE 102006054330.0、Merckを参照、これを、参照によりこの全範囲において本出願の文脈中に包含する)。これにより、可能な限り多量の光を蛍光体から結合させることが可能になる。
【0024】
蛍光体の構造化された表面を、すでに構造化された好適な材料でその後コーティングすることにより、またはその後の段階において(フォト)リソグラフィープロセス、エッチングプロセスにより、あるいはエネルギーもしくは材料ビーム、または機械力の作用を用いた書き込みプロセスにより作製する。
【0025】
さらに好ましい態様において、本発明の蛍光体は、LEDチップの反対側に、SiO、TiO、Al、ZnO、ZrOおよび/またはYもしくはこれらの材料の組み合わせのナノ粒子または蛍光体組成物を含む粒子を担持する粗面を有する。粗面はここで、数百nmまでの粗さを有する。被覆した表面は、全反射を低減するかまたは防止することができ、光が本発明の蛍光体から一層良好に結合することができる(DE 102006054330.0 (Merck)を参照。これを、参照によりこの全範囲において本出願の文脈中に包含する)という利点を有する。
【0026】
本発明の蛍光体がチップに面していない表面上に屈折率適合層を有し、これにより一次放射および/または蛍光体素子により発せられた放射の結合を単純化するのが、さらに好ましい。
【0027】
他の好ましい態様において、蛍光体は、SiO、TiO、Al、ZnO、ZrOおよび/またはYまたはこれらの混合物からなる連続的表面コーティングを有する。この表面コーティングは、屈折率を環境に適合させることを、コーティング材料の屈折率の好適な勾配により達成することができるという利点を有する。この場合において、蛍光体の表面における光の散乱は低減され、一層大きい比率の光は、蛍光体中に浸透し、吸収され、ここで変換され得る。加えて、全反射が低減されるため、屈折率適合される表面コーティングにより、一層多量の光が蛍光体から結合するのが可能になる。
【0028】
加えて、蛍光体がカプセル封入されなければならない場合には、連続層は有利である。これは、直接的な周辺で水または他の物質を拡散させることに対する蛍光体またはこの一部の感受性に対処するために必要であり得る。連続さやでカプセル封入することについての他の理由は、チップにおいて発生する熱からの実際の蛍光体の熱分断である。この熱の結果、蛍光体の蛍光光収率が減少し、また蛍光の色に影響し得る。最後に、このタイプのコーティングにより、蛍光体の効率を、蛍光体中で発生する格子の振動が環境中に伝播するのを防止することにより上昇させるのが可能になる。
【0029】
加えて、蛍光体が、SiO、TiO、Al、ZnO、ZrOおよび/またはYまたはこれらの混合酸化物または蛍光体組成物からなる多孔性表面コーティングを有するのが、好ましい。これらの多孔性コーティングは、単一の層の屈折率をさらに減少させる可能性を提供する。WO 03/027015に記載されているように、このタイプの多孔性コーティングを、3つの従来の方法により製造することができ、これを、参照によりこの全範囲において本出願の文脈中に包含する:ガラス(例えばソーダ石灰ガラス(US 4019884を参照))のエッチング、多孔質層の適用および多孔質層とエッチングプロセスとの組み合わせ。
【0030】
他の好ましい態様において、蛍光体は、好ましくはエポキシまたはシリコーン樹脂からなる、周囲との化学結合を促進する官能基を担持する表面を有する。これらの官能基は、例えばオキソ基を介して結合しており、エポキシドおよび/またはシリコーンをベースとする結合剤の構成成分への結合を形成することができるエステル類または他の誘導体であり得る。このタイプの表面は、蛍光体を結合剤中に均質に混合することが容易になるという利点を有する。さらに、蛍光体/結合剤系およびまたポット寿命のレオロジー的特性を、したがってある程度調節することができる。したがって、混合物の加工は単純化される。
【0031】
LEDチップに適用される本発明の蛍光体層が、好ましくはシリコーンと均一な蛍光体粒子との混合物からなり、シリコーンが表面張力を有するため、この蛍光体層は微視的なレベルにおいて不均一であるか、または層の厚さは完全に一定ではない。
【0032】
本発明はさらに、アルミニウム、イットリウムおよびセリウム含有出発物質を少なくとも1種のアンチモン、ビスマス、イリジウムおよび/またはトリウム含有同時ドーパント(co-dopant)と、任意にさらにガドリニウム、ルテニウム、セレン、サマリウム、テルビウム、プラセオジムおよび/またはガリウム含有物質と、湿式化学的方法により混合し、その後熱後処理することにより得られる、ガーネット構造を有する蛍光体に関する。
【0033】
蛍光体を調製するための出発物質は、前述のように、ベース物質(例えばアルミニウム、イットリウムおよびセリウムの塩溶液)ならびに少なくとも1種のSb、Bi、IrまたはTh含有ドーパントならびに任意にさらにGd、Lu、Sc、Sm、Tb、Prおよび/またはGa含有物質からなる。好適な出発物質は、無機および/または有機物質、例えば金属、半金属、遷移金属および/または希土類元素の硝酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、カルボン酸塩、アルコラート、酢酸塩、シュウ酸塩、ハロゲン化物、硫酸塩、有機金属化合物、水酸化物および/または酸化物であり、これを無機および/または有機液体中に溶解および/または懸濁させる。好ましいのは、対応する要素を所要の化学量論比で含む混合硝酸塩溶液、塩化物または水酸化物溶液を用いることである。
【0034】
本発明はさらに、以下のプロセス段階:
a)Sb、Biおよび/またはTh含有物質で同時ドープされたセリウムで活性化された蛍光体を、蛍光体前駆体懸濁液または溶液から、Y、Al、Ce、Gd、Lu、Sc、Sm、Tb、Prおよび/またはGa含有物質から選択される少なくとも3種の出発物質を湿式化学的方法により混合することにより調製すること、
b)Sb、Biおよび/またはThで同時ドープされた蛍光体を熱後処理すること
を有する蛍光体の製造方法に関する。
【0035】
湿式化学的調製は、一般的に、得られる材料が、本発明の蛍光体を調製する粒子の化学量論的組成、粒子の大きさおよび形態に関して一層大きい均一性を有するという、従来の固体拡散法にまさる利点を有する。
【0036】
例えば硝酸イットリウム、硝酸アルミニウム、硝酸セリウムおよび硝酸ビスマス溶液の混合物からなる蛍光体の水性前駆体(蛍光体前駆体)の湿式化学的前処理のために、以下の既知の方法が好ましい:
【0037】
・NHHCO溶液での共沈(例えばJander, Blasius Lehrbuch der analyt. u. praep. anorg. Chem. [Textbook of Analyt. and Prep. Inorg. Chem.] 2002を参照)
・クエン酸およびエチレングリコールの溶液を用いるPecchini法(例えばAnnual Review of Materials Research Vol. 36: 2006, 281-331を参照)
・尿素を用いる燃焼法
・水溶液または有機塩溶液(出発物質)の噴霧乾燥
・水溶液または有機塩溶液(出発物質)の噴霧熱分解
・硝酸塩溶液の蒸発および残留物の熱変換
【0038】
前述の共沈において、NHHCO溶液を、例えば対応する蛍光体出発物質の硝酸塩溶液に加え、蛍光体前駆体の生成をもたらす。
【0039】
Pecchini法において、クエン酸およびエチレングリコールからなる沈殿試薬を、例えば対応する蛍光体出発物質の前述の硝酸塩溶液に、室温にて加え、混合物をその後加熱する。粘性が上昇する結果、蛍光体前駆体が生成する。
【0040】
既知の燃焼方法において、対応する蛍光体出発物質の前述の硝酸塩溶液を、例えば水に溶解し、次に還流下で沸騰させ、尿素で処理し、この結果、蛍光体前駆体がゆっくりと生成する。
【0041】
噴霧熱分解は、エアゾール方法の1つであり、これは、種々の方法で加熱した反応空間(反応器)中に溶液、懸濁液または分散体を噴霧し、固体粒子を形成し、沈殿させることにより特徴づけられる。<200℃の高温ガス温度を用いる噴霧乾燥とは対照的に、高温プロセスとしてのスプレー熱分解において、溶媒の蒸発に加えて、用いる出発物質(たとえば塩類)の熱分解および物質(例えば酸化物、混合酸化物)の再生成がさらに発生する。
【0042】
前述の6つの方法の変法は、DE 102006027133.5 (Merck)中に詳細に記載されており、これを、参照によりこの全範囲において本出願の文脈中に包含する。
【0043】
本発明の蛍光体を、以下による種々の湿式化学的方法により調製することができる。
1)構成成分を均一に沈殿させ、次に溶媒を分離し、続いて単一段階の、または多段階の熱後処理を施し、ここでこれらの段階の1つを還元雰囲気中で行ってもよい、
2)例えば噴霧プロセスの補助により、混合物を微細に分割し、溶媒を除去し、続いて単一段階の、または多段階の熱後処理を施し、ここでこれらの段階の1つを還元雰囲気中で行ってもよい、あるいは、
【0044】
3)例えば噴霧プロセスの補助により、混合物を微細に分割し、溶媒を熱分解との関連において除去し、続いて単一段階の、または多段階の熱後処理を施し、ここでこれらの段階の1つを還元雰囲気中で行ってもよい、
4)その後、方法1〜3の補助により調製した蛍光体をコーティングして、これらの環境への屈折率適合を達成する。
【0045】
蛍光体の湿式化学的調製を、好ましくは沈殿および/またはゾル−ゲル法により行う。
前述の熱後処理において、か焼を、還元条件(例えば一酸化炭素、フォーミングガス、純粋な水素または少なくとも真空であるかもしくは酸素欠乏雰囲気を用いる)下で少なくとも部分的に行うのが、好ましい。
【0046】
一般的に、固体拡散方法によって本発明の蛍光体を調製することも可能であるが、これは、すでに述べた欠点を生じる。
前述の方法により、蛍光体粒子のすべての所望の外形、例えば球状粒子、薄片または構造化された材料およびセラミックスを作製するのが可能になる。
【0047】
他の好ましい態様として、薄片形態の蛍光体を、対応する金属および/または希土類元素塩から従来の方法により調製する。調製方法は、EP 763573およびDE 102006054331.9に詳細に記載されており、これらを、参照によりこれらの全範囲において本出願の文脈中に包含する。これらの薄片形態の蛍光体を、極めて大きいアスペクト比、原子的に平滑な表面および調整可能な厚さを有する、例えばマイカ薄片、SiO薄片、Al薄片、ZrO薄片、ガラス薄片またはTiO薄片製の、天然の、または合成的に製造された高度に安定な支持体または基板を、蛍光体層で、水性分散体または懸濁液中で沈殿反応によりコーティングすることによって、調製することができる。
【0048】
マイカ、ZrO、SiO、Al、ガラスもしくはTiOまたはこれらの混合物以外に、薄片はまた、蛍光体材自体からなるか、または材料から構築されていてもよい。薄片自体が単に蛍光体コーティングについての支持体として供されるに過ぎない場合には、後者は、LEDからの一次放射に対して透明であるか、または一次放射を吸収し、このエネルギーを蛍光体層に伝達する材料からならなければならない。薄片形態の蛍光体を、樹脂(例えばシリコーンまたはエポキシ樹脂)中に分散させ、この分散体を、LEDチップに適用する。
【0049】
薄片形態の蛍光体を、50nm〜約20μm、好ましくは150nm〜5μmの厚さで、工業的大規模で調製することができる。ここでの直径は、50nm〜20μmである。
これは、一般的に、1:1〜400:1、特に3:1〜100:1のアスペクト比(直径対粒子の厚さの比率)を有する。
薄片の大きさ(長さ×幅)は、配置に依存する。薄片はまた、特にこれらが特に小さい寸法を有する場合には、変換層内の散乱の中心部としても適する。
【0050】
LEDチップに面する本発明の薄片形態の蛍光体の表面は、LEDチップにより発せられた一次放射に関する反射低減作用を有するコーティングを備えることができる。この結果、一次放射の後方散乱の低減がもたらされ、後者の本発明の蛍光体素子中への結合が増強される。
【0051】
この目的のために適するのは、例えば、以下の厚さd:d=[LEDチップからの一次放射の波長/(4×蛍光体セラミックスの屈折率)]を有しなければならない、屈折率適合されたコーティングである。例えば、Gerthsen, Physik [Physics], Springer Verlag, 第18版、1995を参照。このコーティングはまた、フォトニック結晶からなっていてもよく、これはまた、特定の機能を達成するために薄片形態の蛍光体の表面を構造化することを包含する。
【0052】
セラミックス素子の形態の本発明の蛍光体の調製を、DE 102006037730 (Merck)に記載されている方法と同様に行い、これを、参照によりこの全範囲において本出願の文脈中に包含する。蛍光体をここで、対応する出発物質とドーパントとを湿式化学的方法により混合し、その後混合物を平衡に加圧し、均一であり、薄い、無孔の薄片の形態のチップの表面に混合物を直接適用することにより、調製する。蛍光体の励起および放出の位置に依存する変化はこのように発生せず、これと共に提供されるLEDを生じて、恒常的な色の均一な光錐を発し、高い発光力(luminous power)を有する。
【0053】
セラミックス蛍光体素子を、工業的大規模で、例えば数百nm〜約500μmの厚さの薄片として、製造することができる。薄片の大きさ(長さ×幅)は、配置に依存する。チップに直接適用する場合において、薄片の寸法を、好適なチップ配置の場合(例えばフリップチップ配置)において、または、対応して、約10%〜30%のチップ表面の特定の過剰な大きさでチップの大きさ(約100μm×100μmないし数mm)に従って選択しなければならない。蛍光体薄片を完成したLEDの最上部に装着する場合には、発せられた光錐はすべて、薄片に達する。
【0054】
セラミックス蛍光体素子の側面を、軽金属または貴金属、好ましくはアルミニウムまたは銀で金属化することができる。金属化は、光が蛍光体要素から側方に進出しないという効果を有する。側方に進出する光は、LEDから結合する光束を低減し得る。セラミックス蛍光体素子の金属化を、平衡加圧の後のプロセス段階において行って、棒または薄片を得、ここで、所望により、棒または薄片を、金属化の前に所要の大きさに切断することができる。このために、側面を、例えば硝酸銀およびグルコースの溶液で湿潤させ、その後上昇した温度にてアンモニア雰囲気に曝露する。この操作の間、銀コーティングが、例えば側面上に形成する。
【0055】
あるいはまた、無電解金属化方法が、好適である。例えば、Hollemann-Wiberg, Lehrbuch der anorganischen Chemie [Textbook of Inorganic Chemistry], Walter de Gruyter VerlagまたはUllmanns Enzyklopaedie der chemischen Technologie [Ullmann's Encyclopaedia of Chemical Technology]を参照。
セラミックス蛍光体素子を、所要に応じて、水ガラス溶液を用いてLEDチップの基板に固定することができる。
【0056】
他の態様において、セラミックス蛍光体素子は、LEDチップの反対側に構造化された(例えばピラミッド状の)表面を有する。これにより、可能な限り多量の光が蛍光体素子から結合するのが可能になる。蛍光体素子上の構造化された表面を、構造化されたプレスプレートを有し、したがって構造を表面にエンボス加工する型を用いた均衡な押圧を行うことにより作製する。目的が可能な限り薄い蛍光体素子または薄片を製造することにある場合には、構造化された表面が望ましい。押圧条件は、当業者に知られている(J. Kriegsmann, Technische keramische Werkstoffe [Industrial Ceramic Materials], 第4章、Deutscher Wirtschaftsdienst, 1998を参照)。用いる押圧温度が押圧される物質の融点の2/3〜5/6であることが、重要である。
【0057】
加えて、本発明の蛍光体を、約410nm〜530nm、好ましくは430nm〜約500nmに及ぶ広範囲にわたり、励起させることができる。したがって、これらの蛍光体は、UVまたは青色発光一次光源、例えばLED、または従来の放電ランプ(例えばHgをベースとする)による励起に適するのみならず、451nmにて青色In3+線を用いるものなどの光源にも適する。
【0058】
本発明はさらに、発光極大が410nm〜530nm、好ましくは430nm〜約500nm、特に好ましくは440〜480nmの範囲内にある少なくとも1つの一次光源を有する照明ユニットに関し、ここで一次放射は、本発明の蛍光体によってより長い波長の放射に部分的に、または完全に変換される。この照明ユニットは、好ましくは白色光を発光するか、または特定の色点(カラーオンデマンド原理)を有する光を発光する。本発明の照明単位の好ましい態様を、図3〜14に示す。
【0059】
本発明の照明ユニットの好ましい態様において、光源は、ルミネッセンス性の窒化インジウムアルミニウムガリウム、特に式InGaAlNで表され、式中0≦i、0≦j、0≦k、およびi+j+k=1であるものである。照明ユニットは、好ましくは白色放射である。このタイプの光源の可能な形態は、当業者に知られている。これらは、種々の構造を有する発光LEDチップであり得る。
【0060】
本発明の照明ユニットの他の好ましい態様において、光源は、ZnO、TCO(透明伝導性酸化物)、ZnSeもしくはSiCをベースとするルミネッセンス配置または有機発光層(OLED)をベースとする配置である。
【0061】
本発明の照明ユニットの他の好ましい態様において、光源は、エレクトロルミネッセンスおよび/またはフォトルミネッセンスを示す光源である。光源はさらにまた、プラズマまたは放電源であってもよい。
【0062】
本発明の蛍光体を、樹脂(例えばエポキシもしくはシリコーン樹脂)中に分散させるか、または好適な大きさの比率の場合には、一次光源上に直接配置するかまたは、用途に依存して、これから遠隔に配置することができる(後者の配置はまた、「遠隔蛍光体技術(remote phosphor technology)」をも含む)。遠隔蛍光体技術の利点は、当業者に知られており、例えば以下の刊行物において明らかにされている: Japanese Journ. of Appl. Phys. 第44巻、No. 21 (2005), L649-L651。
【0063】
他の態様において、蛍光体と一次光源との間の照明ユニットの光学的結合が光伝導性の配置により達成されるのが、好ましい。これにより、一次光源が、中心の位置に設置され、光伝導性装置、例えば光伝導ファイバーにより蛍光体に光学的に結合されるのが可能になる。このようにして、照明の希望に整合し、単に1種、または種々の蛍光体からなり、光スクリーンおよび光伝導体を形成するように配置することができ、一次光源に結合するランプを、達成することができる。このようにして、さらなる電気的配線を伴わずに、代わりに単に光伝導体を配置することにより、強力な一次光源を、電気的設置に好ましい位置に位置させること、および光伝導体に結合される蛍光体を含むランプを、任意の所望の位置において設置することが、可能である。
【0064】
本発明はさらに、発光ダイオードからの青色または近UV発光を部分的に、または完全に変換するための、本発明の蛍光体の使用に関する。
本発明の蛍光体を、さらに、好ましくは、青色または近UV発光を可視白色放射に変換するために用いる。本発明の蛍光体を、さらに、好ましくは、「カラーオンデマンド」概念によって一次放射を特定の色点に変換するために用いる。
【0065】
本発明はさらに、本発明の蛍光体を、エレクトロルミネッセント材料、例えばエレクトロルミネッセントフィルム(また発光フィルムまたは光フィルムとしても知られている)において用いることに関し、ここで、例えば、硫化亜鉛またはMn2+、CuもしくはAgがドープされている硫化亜鉛をエミッタとして用い、これは黄緑色領域において発光する。エレクトロルミネッセントフィルムの適用の領域は、例えば広告、液晶ディスプレイスクリーン(LCディスプレイ)におけるディスプレイ背面照射および薄膜トランジスタ(TFT)ディスプレイ、自己照射車両ナンバープレート、床面の図形(破砕耐性かつ滑り止め積層体と組み合わせて)、例えば自動車、列車、船舶および航空機におけるディスプレイおよび/または制御素子において、またはまた屋内電気器具、庭設備、測定機器またはスポーツおよびレジャー用の設備である。
【0066】
以下の例は、本発明を例示することを意図する。しかし、これらは、いかなる方法によっても限定的であると考慮するべきではない。組成物中で用いることができるすべての化合物または成分は、既知であり、商業的に入手できるか、または既知の方法により合成することができる。例中に示す温度は、常に℃で示す。さらに、明細書においても、また例においても共に、組成物中の成分の添加量は、常に合計100%に加えられることは、言うまでもない。示す百分率のデータは、常に所定の関連において考慮しなければならない。しかし、これらは通常、常に示す部分量の重量または合計量に関する。
【0067】

例1:湿式化学的方法による蛍光体(Y0.939Ce0.06Th0.001Al12の調製
537.6gの炭酸水素アンモニウムを、3リットルの脱イオン水に溶解する。205.216gの塩化アルミニウム六水和物、151.522gの塩化イットリウム六水和物、3.617gの塩化セリウム六水和物および0.191gの塩化トリウム(IV)を、約400mlの脱イオン水に溶解し、炭酸水素溶液に迅速に滴加する。この添加の間、濃アンモニアを加えることにより、pHをpH 8に維持しなければならない。その後、混合物を、さらに1時間撹拌する。熟成させた後、沈殿物を濾別し、乾燥キャビネット中で約120℃にて乾燥する。
【0068】
乾燥沈殿物を、乳鉢中で粉砕し、その後1000℃にて空気中で4時間か焼する。その後、生成物を、乳鉢中で再び粉砕し、1700℃にて水素/アルゴン雰囲気中で8時間か焼する。
【0069】
例2:湿式化学的方法による蛍光体(Y0.939Ce0.06Bi0.001Al12の調製
537.6gの炭酸水素アンモニウムを、3リットルの脱イオン水に溶解する。205.216gの塩化アルミニウム六水和物、151.522gの塩化イットリウム六水和物、3.617gの塩化セリウム六水和物および0.161gの塩化ビスマス(III)を、約400mlの脱イオン水に溶解し、炭酸水素溶液に迅速に滴加する。この添加の間、濃アンモニアを加えることにより、pHをpH 8に維持しなければならない。その後、混合物を、さらに1時間撹拌する。熟成させた後、沈殿物を濾別し、乾燥キャビネット中で約120℃にて乾燥する。
【0070】
乾燥沈殿物を、乳鉢中で粉砕し、その後1000℃にて空気中で4時間か焼する。その後、生成物を、乳鉢中で再び粉砕し、1700℃にて水素/アルゴン雰囲気中で8時間か焼する。
【0071】
例3:湿式化学的方法による蛍光体(Y0.939Ce0.06Sb0.001Al12の調製
537.6gの炭酸水素アンモニウムを、3リットルの脱イオン水に溶解する。205.216gの塩化アルミニウム六水和物、151.522gの塩化イットリウム六水和物、3.617gの塩化セリウム六水和物および0.116gの塩化アンチモン(III)を、約400mlの脱イオン水に溶解し、炭酸水素溶液に迅速に滴加する。この添加の間、濃アンモニアを加えることにより、pHをpH 8に維持しなければならない。その後、混合物を、さらに1時間撹拌する。熟成させた後、沈殿物を濾別し、乾燥キャビネット中で約120℃にて乾燥する。
【0072】
乾燥沈殿物を、乳鉢中で粉砕し、その後1000℃にて空気中で4時間か焼する。その後、生成物を、乳鉢中で再び粉砕し、1700℃にて水素/アルゴン雰囲気中で8時間か焼する。
【0073】
例4:混合および焼成法(固体拡散)によるYAG:Ce(Ceドーピング濃度は2%、Y2.94Al12:Ce0.063+)の調製
0.344gの二酸化セリウム(CeO)、33.646gの酸化イットリウム(Y)および25.491gの酸化アルミニウム(Al)を秤量し、水でスラリーにする。この混合物を、乳鉢中で少量の水を用いることにより湿式粉砕する。次に、スラリーを、チャンバー炉中に移送し、ここでこれを、フォーミングガス雰囲気中で1200℃の温度にて6時間にわたりか焼する。冷却後、材料を再び微細に粉砕し、これに、炉中で1700℃の温度にて8時間にわたり、還元的か焼を施す。
【0074】
例5:湿式化学的方法によるYAG:Ce(Ceドーピング濃度は2%、Y2.94Al12:Ce0.063+)の調製
537.6gの炭酸水素アンモニウムを、3リットルの脱イオン水に溶解する。205.216gの塩化アルミニウム六水和物、153.242gの塩化イットリウム六水和物および3.617gの塩化セリウム六水和物を、約400mlの脱イオン水に溶解し、炭酸水素溶液に迅速に滴加する。この添加の間、濃アンモニアを加えることにより、pHをpH 8に維持しなければならない。その後、混合物を、さらに1時間撹拌する。熟成させた後、沈殿物を濾別し、乾燥キャビネット中で約120℃にて乾燥する。
【0075】
乾燥沈殿物を、乳鉢中で粉砕し、その後1000℃にて空気中で4時間か焼する。その後、生成物を、乳鉢中で再び粉砕し、1700℃にて水素/アルゴン雰囲気中で8時間か焼する。
【0076】
例6〜8:混合および焼成法(固体拡散)による蛍光体(Y0.98−xCe0.02ThAl12(式中x=0.001;x=0.0025およびx=0.005)の調製
12.5mmolのガンマ−酸化アルミニウムAl、7.35mmol−xの酸化イットリウムY、0.3mmolの二酸化セリウムCeOおよび0.015mmol≦x≦0.075mmolの酸化トリウムThOを、秤量する。その後、出発物質をアセトンでスラリーにし、乳鉢中で十分に粉砕する。最初のか焼段階において、試料を、1200℃にて一酸化炭素の下で2時間加熱する。乳鉢中でさらに十分に粉砕した後、第2のか焼段階を行い、ここで、バッチを、1650℃にて、同様に一酸化炭素雰囲気下で4時間加熱する。
【0077】
乳鉢中で最終的に粉砕した後、試料を、X線粉末回折法、ルミネッセンス分光法および反射分光法により特徴づけする。
【図面の簡単な説明】
【0078】
本発明を、多数の実施例を参照して以下に一層詳細に説明し、ここで:
【図1】図1:本発明の蛍光体(Y,Bi)Al12:Ce、(Y,Th)Al12:Ceおよび(Y,Sb)Al12:Ceの、固体拡散反応(混合および焼成)により調製した、2%のCeを含む商業的に入手できる純粋なYAl12:Ceおよび湿式化学的方法により調製した純粋なYAG:Ce(前駆体)と比較した発光スペクトル。励起波長は、450nmである(x軸:ラムダ/nm=波長(単位nm);y軸:強度/nm=任意単位における蛍光強度)。
【0079】
【図2a】図2a:種々の発光極大を一層良好に例示するための発光スペクトルの拡大図である。湿式化学的方法により調製し、Bi、ThまたはSbでドープされた本発明の蛍光体は、驚異的なことに、固体拡散反応により調製された商業的な純粋なYAG:Ceおよび湿式化学的方法により調製された純粋なYAG:Ceよりも高い蛍光強度を有する。
【0080】
(x,y) CIE 1937色度図における色点:
(Y0.969Ce0.020.001Al12
ここでX=Sb:(x/y)=0.438/0.541、
ここでX=Bi:(x/y)=0.440/0.539、
ここでX=Th:(x/y)=0.439/0.541
固体拡散反応により調製された商業的なYAG:Ce:
(x/y)=0.435/0.541
湿式化学的方法により調製されたYAG:Ce:
(x/y)=0.435/0.541
【0081】
【図2b】図2b:固体拡散反応(混合および焼成)により調製した本発明の蛍光体(Y,Bi)Al12:Ceおよび(Y,Th)Al12:Ceの、同時ドープされていないYAG:Ceと比較しての発光スペクトルを示す図である。
【0082】
【図3】図3:蛍光体含有コーティングを有する発光ダイオードの図式図を示す。構成要素は、放射源としてチップ状発光ダイオード(LED)1を含む。発光ダイオードは、カップ形状の反射体中に設置され、これは調整フレーム2により保持されている。チップ1は、フラットケーブル7を介して第1の接点6に、および第2の電気接点6’に直接接続されている。本発明の変換蛍光体を含むコーティングは、反射体カップの内部の湾曲に適用されている。蛍光体を、互いに別個に、または混合物として用いる。(部分の番号のリスト:1 発光ダイオード、2 反射体、3 樹脂、4 変換蛍光体、5 拡散器、6 電極、7 フラットケーブル)。
【0083】
【図4】図4:白色光のための光源(LED)として供されるInGaNタイプのCOB(チップオンボード)パッケージを示す(1=半導体チップ;2、3=電気的接続;4=変換蛍光体;7=板)。蛍光体は、バインダーレンズ中に分布し、これは同時に、二次的な光学素子を表し、レンズとして発光特徴に影響する。
【0084】
【図5】図5:白色光のための光源(LED)として供されるInGaNタイプのCOB(チップオンボード)パッケージを示す(1=半導体チップ;2、3=電気的接続;4=変換蛍光体;7=板)。蛍光体は、薄いバインダー層中に、LEDチップ上に直接位置し、分布する。透明な材料からなる二次的な光学素子を、この上に配置することができる。
【0085】
【図6】図6:白色光のための光源(LED)として供されるGolden Dragon(登録商標)パッケージを示す(1=半導体チップ;2、3=電気的接続;4=反射体を有する空洞中の変換蛍光体)。変換蛍光体はバインダー中に分散しており、ここで、混合物は空洞を充填する。
【0086】
【図7】図7:Luxeon(登録商標)パッケージを示し、ここで1=ハウジング;2=電気的接続;3=レンズ;4=半導体チップである。この設計は、フリップチップ設計であるという利点を有し、ここでチップからの光の一層大きい比率を、ベース上の透明な基板および反射体を介して、照明目的のために用いることができる。加えて、熱放散が、この設計において好ましい。
【0087】
【図8】図8:パッケージを示し、ここで1=ハウジング;2=電気的接続;4=半導体チップであり、レンズの下の空洞は、本発明の変換蛍光体で完全に充填されている。このパッケージは、一層多量の変換蛍光体を用いることができるという利点を有する。これはまた、遠隔の蛍光体として作用することができる。
【0088】
【図9】図9:SMDパッケージ(表面実装パッケージ)を示し、ここで1=ハウジング;2、3=電気的接続;4=変換層である。半導体チップは、本発明の蛍光体で完全に被覆されている。SMD設計は、これが小さい物理的大きさを有しており、したがって従来のランプに適合するという利点を有する。
【0089】
【図10】図10:T5パッケージを示し、ここで1=変換蛍光体;2=チップ;3,4=電気的接続;5=透明な樹脂を有するレンズである。変換蛍光体は、LEDチップの背面上に位置し、これは、蛍光体が金属的接続を介して冷却されるという利点を有する。
【0090】
【図11】図11:発光ダイオードの図式図を示し、ここで1=半導体チップ;2、3=電気的接続;4=変換蛍光体;5=ボンドワイヤであり、ここで蛍光体は、バインダー中で最上部の球体として適用される。蛍光体/バインダー層のこの形態は、二次的な光学素子として作用し、例えば光伝搬に影響し得る。
【0091】
【図12】図12:発光ダイオードの図式図を示し、ここで1=半導体チップ;2、3=電気的接続;4=変換蛍光体;5=ボンドワイヤであり、ここで蛍光体は、バインダー中で薄層として分散されて適用される。二次的な光学素子、例えばレンズとして作用する他の素子を、この層に容易に適用することができる。
【0092】
【図13】図13:原理においてUS-B 6,700,322からすでに知られている他の適用の例を示す。本発明の蛍光体を、ここでOLEDと共に用いる。光源は、有機発光ダイオード31であり、これは、実際の有機フィルム30および透明な基板32からなる。フィルム30は、特に、例えばPVK:PBD:クマリン(PVK、ポリ(N−ビニルカルバゾール)についての略語;PBD、2−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールについての略語)により発生する青色一次光を発する。
【0093】
発光は、本発明の蛍光体の層33により形成する被覆層によって、黄色の二次的に発せられた光に部分的に変換され、したがって、全体的な白色発光が、一次的に、および二次的に発せられた光の色混合により達成される。OLEDは本質的に、発光ポリマーの、または2つの電極間のいわゆる小分子の少なくとも1つの層からなり、これは、自体知られている材料、例えばアノードとしてのITO(酸化インジウムスズについての略語)およびカソードとしての高度に反応性の金属、例えばBaまたはCaからなる。しばしば、複数の層がまた、電極間で用いられ、これは、正孔輸送層として作用するか、または小分子の領域においては、また電子輸送層として作用する。用いる発光ポリマーは、例えばポリフルオレン類またはポリスピロ材料である。
【0094】
【図14】図14:水銀非含有ガス充填21(図式的)を有する低圧ランプ20を示し、これは、WO 2005/061659と同様にインジウム充填および緩衝ガスを含み、ここで本発明の蛍光体の層22が適用されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
(Y,Gd,Lu,Se,Sm,Tb,Pr,Th,Ir,Sb,Bi3−x(Al,Ga12:Ce(I)
式中、
a+b+c+d+e+f+g+h+i+j+k=1であり、
l+m=1であり、
x=0.005〜0.1である、
で表されるガーネット構造を有する蛍光体。
【請求項2】
x=0.02〜0.05であることを特徴とする、請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
式Iで表される化合物が、式II〜IV:
(Y1−x−yCeSbAl12、式中0.005≦x≦0.1および0.001≦y≦0.005 (II)
(Y1−x−yCeBiAl12、式中0.005≦x≦0.1および0.001≦y≦0.005 (III)
(Y1−x−yCeThAl12、式中0.005≦x≦0.1および0.001≦y≦0.005 (IV)
で表される化合物から選択される化合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の蛍光体。
【請求項4】
構造化された表面を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の蛍光体。
【請求項5】
SiO、TiO、Al、ZnO、ZrOおよび/またはYもしくはこれらの混合酸化物のナノ粒子または蛍光体組成物を含む粒子を担持する粗面を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の蛍光体。
【請求項6】
SiO、TiO、Al、ZnO、ZrOおよび/またはYまたはこれらの混合酸化物からなる連続的表面コーティングを有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の蛍光体。
【請求項7】
SiO、TiO、Al、ZnO、ZrOおよび/またはYまたはこれらの混合酸化物または蛍光体組成物からなる多孔性表面コーティングを有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の蛍光体。
【請求項8】
表面が、好ましくはエポキシまたはシリコーン樹脂からなる、周囲との化学結合を促進する官能基を担持することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の蛍光体。
【請求項9】
アルミニウム、イットリウムおよびセリウム含有出発物質と、少なくとも1種のSb、Bi、Irおよび/またはTh含有同時ドーパントとを、ならびに任意にさらにGd、Lu、Sc、Sm、Tb、Prおよび/またはGa含有物質とを、湿式化学的方法により混合し、その後熱処理することにより得られる、請求項1〜8のいずれかに記載の蛍光体。
【請求項10】
式Iで表されるガーネット構造を有する蛍光体の製造方法であって、以下のプロセス段階:
a)アンチモン、ビスマス、イリジウムおよび/またはトリウム含有物質で同時ドープされたセリウム活性化蛍光体を、蛍光体前駆体懸濁液または溶液から、Y、Al、Ce、Gd、Lu、Sc、Sm、Tb、Prおよび/またはGa含有物質から選択される少なくとも3種の出発物質を湿式化学的方法により混合することによって調製すること、
b)アンチモン、ビスマス、イリジウムおよび/またはトリウムで同時ドープされた蛍光体を熱後処理すること
を有する、前記方法。
【請求項11】
蛍光体前駆体を、段階a)において、ゾル−ゲル法、沈殿法および/または乾燥法、好ましくは噴霧乾燥により、有機および/または無機金属および/または希土類元素塩から湿式化学的方法により調製することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
蛍光体の表面が、SiO、TiO、Al、ZnO、ZrOおよび/またはYもしくはこれらの混合酸化物のナノ粒子または蛍光体組成物のナノ粒子で被覆されていることを特徴とする、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
蛍光体の表面が、SiO、TiO、Al、ZnO、ZrOおよび/またはYまたはこれらの混合酸化物の連続的コーティングを備えることを特徴とする、請求項10または11に記載の方法。
【請求項14】
蛍光体の表面が、SiO、TiO、Al、ZnO、ZrOおよび/またはYまたはこれらの混合酸化物または蛍光体組成物の多孔性コーティングを備えることを特徴とする、請求項10または11に記載の方法。
【請求項15】
発光極大が410nm〜530nm、好ましくは430nm〜500nmの範囲内にある少なくとも1種の一次光源を有する照明ユニットであって、この放射が、請求項1〜9のいずれかに記載の蛍光体によってより長い波長の放射に部分的に、または完全に変換される、前記照明ユニット。
【請求項16】
光源が、ルミネッセンス性の窒化インジウムアルミニウムガリウム、特に式InGaAlNで表され、式中0≦i、0≦j、0≦k、およびi+j+k=1であるものであることを特徴とする、請求項15に記載の照明ユニット。
【請求項17】
光源が、ZnO、TCO(透明伝導性酸化物)、ZnSeもしくはSiCをベースとするルミネッセンス化合物であることを特徴とする、請求項15に記載の照明ユニット。
【請求項18】
光源が、有機発光層をベースとする材料であることを特徴とする、請求項15に記載の照明ユニット。
【請求項19】
光源が、エレクトロルミネッセンスおよび/またはフォトルミネッセンスを示す光源であることを特徴とする、請求項15に記載の照明ユニット。
【請求項20】
光源が、プラズマまたは放電源であることを特徴とする、請求項15に記載の照明ユニット。
【請求項21】
蛍光体を、一次光源上に直接配置するか、および/またはこれから遠隔に配置することを特徴とする、請求項15〜20のいずれかに記載の照明ユニット。
【請求項22】
蛍光体と一次光源との間の光学的結合が、光伝導性の配置により達成されることを特徴とする、請求項15〜21のいずれかに記載の照明ユニット。
【請求項23】
請求項1〜9のいずれかに記載の式Iで表される少なくとも1種の蛍光体の、発光ダイオードからの青色または近UV発光を部分的に、または完全に変換するための変換蛍光体としての使用。
【請求項24】
請求項1〜9のいずれかに記載の式Iで表される少なくとも1種の蛍光体の、カラーオンデマンド概念によって一次放射を特定の色点に変換するための変換蛍光体としての使用。
【請求項25】
請求項1〜9のいずれかに記載の式Iで表される少なくとも1種の蛍光体の、青色または近UV発光を可視白色放射に変換するための使用。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2010−520337(P2010−520337A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552084(P2009−552084)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【国際出願番号】PCT/EP2008/001074
【国際公開番号】WO2008/107062
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】