説明

毒性の減少されたマルチターゲティングフォレート拮抗薬

テトラヒドロフォレート、メチレンテトラヒドロフォレートおよび/またはメチルテトラヒドロフォレート、並びに少なくとも1のマルチターゲティングフォレート拮抗薬を、k癌の治療のための医薬組成物の製造のために使用することを開示する。当該マルチターゲティングフォレート拮抗薬とテトラヒドロフォレート、メチレンテトラヒドロフォレートおよび/またはメチルテトラヒドロフォレートの組み合わせによって、当該薬物の抗腫瘍作用を低下させることなく、有毒な副作用を顕著(markable)に幻聴することが可能である。医薬組成物、当該医薬組成物を含むキット、同様に癌の治療方法をまた開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌の治療のための医薬組成物の製造のためのマルチターゲティングフォレート拮抗薬(multitargeting antifolates)の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
薬物関連の毒性(例えば、骨髄抑制、下痢、粘膜の毒性および感染など)の制御は、癌化学療法の歴史全体に及ぶ主要な懸念であった。癌化学療法で使用される物質は、従来、例えば、抗フォレート(antifolates)、アントラサイクリン、および抗腫瘍薬などである。
【0003】
抗フォレート、またはフォレートアンタゴニストは、代謝拮抗剤のクラスを構成し、多くの充実性腫瘍(solid tumor)および血液学的な悪性腫瘍のための活性な化学療法剤である(Thomas Purcell W et al; “Novel Antifolate Drugs”、Evolving Therapies、pp 114-125、March 2003)。
【0004】
長年において、メトトレキサート(MTX)が、臨床医学において使用される主要な抗フォレート抗代謝剤である。MTXの主要な細胞標的は、酵素ジヒドロフォレートレダクターゼ(DHFR)であり、従って、MTXは、抗フォレートを単一の酵素を標的とする。また、他の、単一の酵素標的のみを攻撃すると認められた薬剤、例えば、5-フルオロウラシル(5-FU)などは、チミジル酸シンターゼ(thymidylate synthase)(TS)を阻害する(Scagliotti、Giorgio V et al; Phase II Study of Pemetrexed With and Without Folic Acid and Vitamin B12 as Front-Line Therapy in Malignant Pleural Mesothelioma”、Journal of Clinical Oncology、Vol 21、No 8、April 15 2003、pp 1556-1561)。
【0005】
治療に対する反応が患者において観察されるにもかかわらず、それら患者の多くは耐性の発展のために逆戻りしてしまう。薬物耐性は、多くの場合、成功する単一酵素標的抗フォレートでの化学療法を制限する要因(limiting factor)である。(Banerjee D et a1; “Novel aspects of resistance to drugs targeted to dihydrofolate reductase and thymidylate synthase”、Biochimica et Biophysica Acta 1587 (2002) 164-173)。
【0006】
新規の抗フォレートが開発され、効果と毒性のプロフィールが改善され、抗フォレート療法に対する抵抗についての種々の公知の機序が低減されている。これらの新規の抗フォレートは、マルチターゲティングフォレート拮抗薬であり、広域のスペクトル抗腫瘍性活性を示す。この新世代の抗フォレートは、チミジンおよびプリン生合成経路の幾つかの重要なフォレート要求性酵素、特に、チジミレートシンターゼ、DHFRおよびGARFT(グリシナミドリボヌクレオチドフォルミルトランスフェラーゼ(glycinamide ribonucleotide formyltransferase))を、還元型のフォレートと結合部位について競合することによって阻害する。それに伴う細胞内フォレート代謝の阻害は、細胞増殖の阻害を導く(Niyikiza Clet et al;“Homocysteine and Metylmalonic Acid:Markers to Predict and Avoid Toxicity from Pemetrexed Therapy”、Molecular Cancer Therapeutics、Vol 1、545-552、May 2002)。
【0007】
抗フォレートの細胞毒性活性とその後の効果は、一部の患者に対する実質的な毒性に関与していることがありえる。抗フォレートは、クラスとして、胃腸毒性で散発的な重篤な骨髄抑制と関連している。そのような毒性の組み合わせは、高いリスクの死亡率をもたらす。これらの毒性を制御することができないことが、幾つかの抗フォレートの臨床開発の中止を導き、他の臨床開発を困難にした(Niyikiza Clet et al; “Homocysteine and Methylmalonic Acid: Markers to Predict and Avoid Toxicity from Pemetrexed Therapy”、Molecular Cancer Therapeutics、Vol 1、545-552、May 2002)。
【0008】
US 5 376 658 (Spears et al)は、CFFH、およびその溶液産物異性体FHの癌療法における5−EUのモジュレーターとしての使用を開示する。また、CFFHまたはFHを、患者に投与された抗フォレート剤の毒性を低減するために使用する方法も開示される。開示された当該抗フォレート剤は、メトトレキセート、トリメトレキセート、亜酸化窒素およびジデオキシテトラヒドロフォリックアシッド(dideoxytetrahydrofolic acid)であり、これらの全ては単一酵素標的抗フォレートの群に属する。フォリニックアシッド(folinic acid)と組み合わせの5−FU様の特異的TS阻害剤による治療は、腫瘍効果を減弱することなしに副作用を減らすことが示された。フォレートの不足が、幾つかの癌患者における毒性に関与している可能性があり、フォリック(folic)またはフォリニックアシッド(folinic acid)を含む栄養学的なサプリメントが抗癌活性の保持と共に毒性および治療に関連する死の減少を導いた。(Calvert H; “Folate status and the safety profile of antifolates”; Semin Oncol 2002;29:3-7)。
【0009】
最近の研究において、ニイキザらは、フォリックアシッド(folic acid、葉酸)を含むサプリメントがペメトレックスドで治療される患者におけるより良い安全性プロフィールと、恐らく向上された効力を導く可能性があることを報告した。毒性はフォリックアシッドのサプリメンテーションにより調節され、最大に耐えられる用量を増やすことが可能になった(Niyikiza C et al、“Homocysteine and メチルmalonic acid: markers to predict and avoid toxicity from pemetrexed therapy”; Mol Cancer Ther 2002;1:545-52)。
【0010】
しかしながら、フォリックアシッドの代謝は非常に複雑な過程であり、多くの代謝工程が、フォリックアシッドの代謝の活性物質に達するために必要である。フォリックアシッドは、フォレートの最も酸化型で安定した形態であり、当該細胞において、デコンジュゲート、還元およびメチル化されて代謝的に活性化されなければならない(Kelly GS、“Folates: supplemental forms and therapeutic applications”; Altern Med Rev 1998;3:208-20)。
【0011】
毒性を減らすためのフォリックアシッドサプリメントは、従って、実際は全く非効率的であり、更に、不必要な代謝中間体を導き得る。これまで、マルチターゲティングフォレート拮抗薬の毒性を減らすための満足な方法は提案されていなかった。抗フォレートの非常に有望な作用を考慮して、それらの副作用を効率的に減らすという可能性が非常に求められている。従って、臨床においてそれらを使用することを可能にするために、毒性を減らし、同時に、マルチターゲティングフォレート拮抗薬の効果を維持または向上する方法が必要である。
【発明の開示】
【0012】
[発明の概要]
本発明の目的は、上述の欠点を解決すること、並びにマルチターゲティングフォレート拮抗薬の毒性を減らすための改善方法およびマルチターゲティングフォレート拮抗薬の効果を維持または向上する方法を提供することである。
【0013】
この目的は、テトラヒドロフォレート(THF)、メチレンテトラヒドロフォレート(methylene-THF)および/またはメチルテトラヒドロフォレート(methyl-THF)、および少なくとも1のマルチターゲティングフォレート拮抗薬を癌の治療のための医薬組成物製造に使用することによって達成される。
【0014】
THE、メチレン−THFおよび/またはメチル−THEとマルチターゲティングフォレート拮抗薬とを本発明に従って組み合わせた使用は、マルチターゲティングフォレート拮抗薬の副作用を激減させ、結果的に、治療係数が改良される。従って、腫瘍に対してより高い容量を副作用を増加させずに投与し、よりよい臨床効果を導くことが可能である。
【0015】
好ましくは、少なくとも60重量%の前記THF、メチル−THFおよび/またはメチレン−THEは、生物学的な活性な異性体の形態である。それによって、マルチターゲティングフォレート拮抗薬との組み合わせによる相乗効果が最適化される。
【0016】
前記マルチターゲティングフォレート拮抗薬は、以下からなる群より選択されてよい;プレメトレックスド(premetrexed)、ラルチトレックスド(raltitrexed)およびロメトレクソール(lometrexol)。しかしながら、また、他のマルチターゲティングフォレート拮抗薬、同様に、マルチターゲティングフォレート拮抗薬の特徴を有する他の物質も使用されて良い。
【0017】
当該医薬組成物は、更に、以下からなる群より選択される少なくとも1の化学療法剤を含んでよい;アントラサイクリン、プラチナ誘導体、トポイソメラーゼ阻害剤およびアンチメタボライト。本発明により得られる重篤な副作用の減少は、より大きな組み合わせの可能性を提供する。
【0018】
前記アントラサイクリンは、ドキソルビシンおよびエピルビシンからなる群より選択されてもよい;前記プラチナ誘導体は、オキサリプラチン(oxaliplatin)、シスプラチンおよびカルボプラチンからなる群より選択されてもよい;前記トポイソメラーゼ阻害剤は、イリノテカンおよびCPT11(トポイソメラーゼI−阻害剤)からなる群より選択されてよい;および前記アンチメタボライトは、カペシタビン(capecitabine)、ゲムシタビン(gemcitabin)、UFTおよびS1からなる群より選択されてよい。しかしながら、また、上述した物質の群に属している他の物質が使用されてもよい。
【0019】
当該THE、メチレン−THFおよび/またはメチル−THF、および前記マルチターゲティングフォレート拮抗薬は、異なる医薬組成物において、または共通の医薬組成物において製剤化されてもよい。異なる組成物への製剤化は、大きな投与融通性を提供する。共通の医薬組成物への製剤化は、一方では、単純な製造過程、並びに簡単な投与方法を提供する。
【0020】
本発明に従って治療されるべき癌の例は、乳癌、胃癌、胆嚢癌、胆管癌、大腸癌、直腸癌、肝癌、膵臓癌、頭および頸癌、並びに中皮腫癌である。
【0021】
本発明はまた、少なくとも1のマルチターゲティングフォレート拮抗薬並びにTHE、メチレン−THFおよび/またはメチル−THEを含む医薬組成物に関する。好ましくは少なくとも60重量%の前記THE、メチル−THFおよび/またはメチレン−THFが生物学的に活性な異性体の形態にある。当該医薬組成物は、更に、以下からなる群より選択される少なくとも1の化学療法剤を含んでよい;アントラサイクリン、プラチナ誘導体、トポイソメラーゼ阻害剤およびアンチメタボライト。
【0022】
更に本発明は、少なくとも1のマルチターゲティングフォレート拮抗薬を含む医薬組成物およびTHE、メチレン−THEおよび/またはメチル−THEまたはその異性体を含む医薬組成物を含むキットに関する。好ましくは少なくとも60重量%の前記THE、メチル−THEおよび/またはメチレン−THFは、生物学的に活性な異性体の形態にある。そのようなキットは、更に、アントラサイクリン、プラチナ誘導体、トポイソメラーゼ阻害剤およびアンチメタボライトからなる群より選択される化学療法剤を含む医薬組成物を具備してもよい。
【0023】
本発明はまた、癌を治療するための方法であって、患者に対して、薬学的に活性な量の少なくとも1のマルチターゲティングフォレート拮抗薬および薬学的に活性な量のTHF、メチレン−THFおよび/またはメチル−THEを投与することを具備する方法に関する。好ましくは、少なくとも60重量%の前記THE、メチル−THEおよび/またはメチレン−THEは、生物学的に活性な異性体の形態にある。当該方法は、更に、アントラサイクリン、プラチナ誘導体、トポイソメラーゼ阻害剤およびアンチメタボライトからなる群より選択された化学療法剤の投与を具備してもよい。
【0024】
[発明の詳細な説明]
本発明に導いた調査研究において、当該発明者らは、驚くべきことに、THE、メチレン−THFおよび/またはメチル−THEおよびマルチターゲティングフォレート拮抗薬の共投与によって、当該マルチターゲティングフォレート拮抗薬の抗腫瘍活性を減弱せずに、当該薬物の有毒な副作用を顕著に減少することが可能であることを見出した。
【0025】
本発明者らは、マルチターゲティングフォレート拮抗薬と天然形態のメチレン−THFとの結合によって、毒性の増大なしに当該マルチターゲティングフォレート拮抗薬の投与量を有意に増加することが可能であることを示した(例2を参照されたい)。
【0026】
更に、更に副作用を低いレベルに維持したままで、腫瘍での細胞毒性を更に増加するために、他の化学療法剤、例えば、アントラサイクリン、プラチナ誘導体、トポイソメラーゼ阻害剤およびアンチメタボライトなどをそれに対して加えて投与してもよい。
【0027】
5,l0−メチレン−テトラヒドロフォレート(以下、メチレン-THFまたはCH2FH4と称する)は、フォリックアシッドの正常な細胞内代謝産物であり、チミジル酸シンターゼ(TS)によるチミジル酸の合成のために使用される。同じことが、メチレン−THFのポリグルタミン酸に関しても当て嵌まる。メチレン−THFは、また、CHFH−レダクターゼ、セリンヒドロキシメチラーゼおよびCl−テトラヒドロフォレートシンターゼおよびCHFHデヒドロゲナーゼを含む他の幾つかの酵素によっても使われる。メチレン−THFを含むこれらの相互変換は、プリン合成、アミノ酸合成および脂質代謝にとって不可欠である。このように、メチレン−THFは、代謝の分岐点で少なくとも4つの異なる酵素のための基質として位置する(Spears et al; US Patent no 5,376,658)。
【0028】
上述の通り、以前の研究は、フォレートの状態が癌化学療法の毒性と有効性とを調節することを示している。本発明者らは、フォリックアシッドの有効性がフォリックアシッドから形成されるメチレン−THEの濃度の増加によることを発見した。細胞におけるメチレン−THEの高濃度は、より効果的なTS阻害を導き、これはチミジンのない状態とウラシルの誤取り込みの増加をDNAにおいて帰着する。
【0029】
メチレン−THEは、フォリックアシッド代謝の活性物質であるので、この内生植物フォレート(endogen folate)を癌治療における毒性を減少するために使用することは、フォリックアシッドを使用することよりも非常に都合がよい。
【0030】
食餌性のフォレートは、ポリグルタメート化されたフォレートの混合物であり、これは、小腸のブラシ縁膜に根ざしている酵素の作用によってモノグルタミル形態に消化され、グルタメートカルボキシペプチダーゼII遺伝子(GCPII)により発現される(Devlin AM et al、“Glutamate carboxypeptidase II: a polymorphism associated with lower levels of serum folate and hyperhomocysteinemia”; Hum Mol Genet 2000;9:2837-44)。小腸におけるデコンジュゲーションの後、フォリックアシッドは、肝臓においてテトラヒドロフォレートに還元される。還元されたフォレートは、胆汁と共に小腸に分泌され、そこにおいてそれらは再吸収され、他の臓器に分布される。
【0031】
当該還元型のフォレート担体、RFC−1は、還元型フォレートの細胞への主な輸送体である(Sirotnak FM、Tolner B、“Carrier-mediated membrane transport of folates in mammalian cells”; Annu Rev Nutr l999;19:91-122)。細胞内の還元型フォレートモノグルタメートは、酵素フォリルポリグルタメートシンターゼ(folylpolyglutamate synthase、FPGS)によってポリグルタメートに変換される(Shane B、“Folylpolyglutamate synthesis and role in the regulation of one-carbon metabolism”; Vitam Horm l989;45:263-335)。当該ポリグルタメート化された形態のテトラヒドロフォレートは、次に更に、5,10−メチレンテトラヒドロフォレート(メチレン-THF)に変換され、dUNPのdTMPへの変換におけるメチル提供体として必要とされる(Spears CP et al、“Deoxyuridylate effects on thymidylate synthase-5-fluorodeoxyuridylate- folate ternary complex formation”; Biochem Pharmacol 1989;38:2985-93; Spears CP、et al “Thymidylate synthetase inhibition in malignant tumors and normal liver of patients given intravenous 5-fluorouracil”、Cancer Res 1984;44:4144-50)。当該変換は、チミジレートシンターゼ(TS)によって触媒される。メチレン−THFは、また、代謝的に活性な5−メチルテトラヒドロフォレート(メチル-THF)の前駆体であり、ホモシステインの再メチル化において利用される。メチレンTHFのメチルTHFへの変換は、メチレンテトラヒドロフォレートレダクターゼ(MTHFR)に依存する。
【0032】
酵素γ−グルタミルヒドラーゼ(GGH)は、細胞間および細胞内のポリグルタメートの分解を触媒する(Galivan J et al、“Glutamyl hydrolase. pharmacological role and enzymatic characterization”、Pharmacol Ther 2000;85:207-15)。図1は、フォレートとホモシステインがDNA合成、修復およびメチル化に影響を与える主な代謝経路を要約している。酵素MTHFRは、バランスを保ち、DNAメチル化とDNA合成経路の正常な恒常性を維持している。(RFCは還元型フォレート担体;FPGSはフォリルポリグルタメートシンターゼ;GGHはグルタミルヒドラーゼ;TSはチミジレートシンターゼ;THFはテトラヒドロフォレート;MTHFRはメチレンテトラヒドロフォレートレダクターゼ;MSはメチオニンシンターゼ:SAMはS-アデノシルメチオニン;DPDはジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ;B2はリボフラビン;B6はピリドキシン;B12はコバラミン)。
【0033】
示される通り、DNA合成とメチル化の経路の適切な機能には、リボフラビン(ビタミンB2)、ピリドキシン(ビタミンB6)およびコバラミン(ビタミンB12)が、フォレートに加えて必要である。これらの代謝産物の何れかの不十分なレベルは、高いホモシステイン濃度に帰着する。ピリドキシン欠乏は、また、フリーラジカルとアルキル化剤障害の無毒化のために必要とされる主要な抗酸化剤であるグルタチオンを生産する細胞の能力を弱めるであろう。
【0034】
経口でのフォレートは一般的に、2つのサプリメント形態、即ち、フォリックおよびフォリニックアシッドが利用できる。フォリックアシッドまたはフォリニックアシッド(ロイコボリン)によるフルオロウラシル(FU)活性の調節のための生化学的根拠は、代謝産物メチレン−THFの上昇であり、これは、メチレン−THF、チミジレートシンターゼおよび5−FUの活性代謝物の間で形成される抑制性の三要素からなる
複合体を安定化する。フォリニックアシッドは、メチレン−THFの直接の前駆体であり、それはフォリニックアシッドの経口投与がフォリックアシッドのために必要とされるデコンジュゲーションと還元工程を受けないからである。フォリニックアシッドは、フォリックアシッドよりもより代謝的に活性な形態であるようであり、還元型フォレートとして、直接に脳血液関門を通過できるかもしれない。フォリックアシッドのように、フォリニックアシッドは、メチル化されて代謝的に活性にならなくてはならない。フォリックおよびフォリニックアシッドの当該メチル化工程は、十分な濃度のセリンと機能的なセリンメチルトランスフェラーゼ(SHMT)酵素が必要である(Costi MP, Ferrari S, "Update on antifolate drugs targets"; Curr Drug tARGETS 2001; 2: 235-66)。還元型フォレートメチレン−THFおよびメチル−THFを含むサプリメントは、このメチル化工程を回避するという長所を有している。
【0035】
遺伝薬理学は、癌化学療法剤の毒性形態の常用量で高い危険性のある個体を識別することを目的とする。薬物療法の有効性と毒性における個体相互間の変動性は、薬物代謝酵素、輸送体または薬物標的をコードする遺伝子における多形と関連する。
【0036】
主要な代謝産物メチレン−THFは、dTMPの生合成、プリン合成のための10−フォルミル−THFへの変換、およびホモシステインからメチオニンへのメチル化のためのメチル−THFに対する還元に直接関係している(Kelly GS. Folates: supplemental forms and therapeutic applications. Altern Med Rev 1998; 3: 208-20)。メチレン−THFのメチル−THFへの変換には酵素MTHFRが必要とされる。
【0037】
異なるフォレートの分布の以上は、MTHRF C677T多型に起因する可能性がある(Guinotte CL et al、“Methylentetrahydrofolate reductase 677C-->T variant modulates folate status response to controlled folate intakes in young women”; J Nutr 2003;l33:1272-80)。Tアレルのためのホモ−またはヘテロ結合は最適以下の活性のHTHFR酵素とメチレン−THFの増加に帰着する。MTHFR多型と腫瘍の5−FUに対する反応との間の関連が最近のコーヘンらの研究で認められた(Cohen V et al、“Methylentetrahydrofolate Reductase Polymorphism In Advanced Colorectal Cancer: A Novel Genomic Predictor of Clinical Response to Fluoro-pyrimidine-based Chemotherapy”; Olin Cancer Res 2003; 9:1611-5)。CTまたはTT遺伝子型の患者は、CC遺伝子型の患者よりも当該治療に対してよりよく反応した。当該MTHFR C677T遺伝子型は、また、ラルチトレックスドに対する臨床学的な毒性の予測することも可能である (Stevenson JP et al "Phase I clinical and pharmacogenetic trial of irinotecan and raltitrexed administered every 21 days to patients with cancer”; J Clin Oncol 2001;19:4081-7)。当該MTHFR C677T多型によるホモザイゴートは、野生型またはヘテロ接合遺伝子形質と比較してより少ないラルチトレックスド関連毒性が経験された。
【0038】
メチレンTHFからエチルTHFへの変換は、最適以下の活性を有するMTHFR酵素を有する個体において障害される可能性がある。(Guinotte CL et al “Methylentetrahydrofolate reductase 6770-->T variant modulates folate status response to controlled folate intakes in young women”; J Nutr 2003;133:1272-80)。また、フォレートの不十分な個体で見られるように、ホモシステインまたはS-アデノシルホモシステインの高レベルがMTHFR酵素を阻害することが知られている。(De Cabo SF et al、“Molecular and cytological evidence of S-adenosyl-L-homocysteine as an innocuous undermethylating agent in vivo”; Ctogenet Cell Genet 1995;71: 187-92)。このように、メチレン−THFとメチル−THFとの選択時には、患者の遺伝子型およびフォレートの状態を考慮することが重要であるかもしれない。
【0039】
X線修復のクロス・コンプリメンンティング遺伝子I(The X-ray repair cross-complementing gene I, XRCC1)蛋白質は、DNAの塩基除去修復において重要な機能を有している。異なる多形性形態の蛋白質が存在し、Arg399Gln多型がCRCの展開の危険と、同様にオキサリプラチン/5−FU化学療法に対する耐性に関係している。(Stoehlmacher J et al、"A polymorphism of the XRCC1 gene predicts for response to platinum based treatment in advanced colorectal cancer" Anticancer Res 2001;21:3075-9)。恐らく、XROO1遺伝子はまた、異常なメチル化またはフォレート欠乏に起因する突然変異によって失活されるかもしれない。オキサリプラチン耐性の反転は、メチレン−THF様フォレートの使用によって達成され得る。
【0040】
更に、フォレートの低食餌摂取または低血中濃度は、結腸直腸の異常増殖のリスク増加と関係している。実際に、疫学研究は、フォレートの状態と結腸直腸の異常増殖の間の反比例の関係を証明した(Kim et al; "Colonic mucosal concentrations of folate correlate well with blood measurements of folate status in persons with colorectal polyps”、Am J Clin Nutr 1998; 68: 866-72)。
【0041】
THF、メチレン−THFおよび/またはメチル−THFの結腸粘膜のフォレート結合の治療のための使用は非常に有利であり、これはもっとも効果的なフォレートがそれによって、直接にもっとも必要とされる部位に投与されるからである。
【0042】
メチル化されたフォレートはまた、上皮粘膜における神経ネットワークを保護することによりマルチターゲティングフォレート拮抗薬により誘導される重篤な下痢を減らすことも可能である。
【0043】
本発明の関連において、天然と同様に合成THF、メチレン−THFおよびメチル−THFも使用されてよい。更に、THF、メチレン−THFおよび/またはメチル−THFのためのプロドラッグも使用されてよい。THF、メチレン−THFおよびメチル−THFは、幾つかの異性体形態で存在してよいが、しかしながら、生物学的活性異性体のTHF、メチレン−THFおよびメチル−THFが、それぞれ本発明に従って好ましい。ここで使用される通り、「生物学的に活性な異性体」はTHF、メチレンTHFまたはメチル−THFに関連し、即ち、生態における酵素系に適合する天然の形態である。
【0044】
1つの天然の生物学的に活性な異性体であるTHFは、[6S]−THFであり、1つの天然の生物学的に活性な異性体であるメチレン−THFは、[6R]−メチレン−THFであり、1つの天然の生物学的に活性な異性体であるメチル−THFは、[6S]−メチル−THFである。
【0045】
本発明者らは、驚くことに、当該生物学的に活性な異性体がマルチターゲティングフォレート拮抗薬と組み合わせて使用されることがもっとも適切であることを見出した。
【0046】
当該天然異性体、即ち、当該生物学的に活性な形態のメチレン−THF(100% 6R-構造)が、ラセミ混合物(50%の6R-構造と50%の6S-構造)よりもよりよい成長因子であることが既に示されている。あるものは、従って、天然異性体は、腫瘍の過剰成長の危険のために化学療法薬と組み合わせることは好ましくないと予想している。しかしながら、マルチターゲティングフォレート拮抗薬との組み合わせにおいて、よりよい成長因子の性質は実は役立つものであり、何故ならば、より多くの癌細胞は次に刺激されて細胞周期に入るからである。これがこの場合において有利であるのは、マルチターゲティングフォレート拮抗薬が主に細胞分裂の間に細胞に影響を及ぼすからである。
【0047】
本発明によれば、少なくとも60重量%のTHF、メチル−THFおよび/またはメチレン−THFが生物学的に活性な異性体の形態にあることが好ましい。より好ましくは、少なくとも75%が生物学的に活性な形態にあること、より好ましくは少なくとも95%が生物学的に活性な形態にあることが好ましい。生物学的に活性な異性体の重量部分がより高い程、よりよい結果が達成されるだろう。これは本発明の全ての態様における事実である。
【0048】
本発明に従うTHF、メチレン−THFおよびメチル−THFは、適切には、純度90%以上である。純度97%以上が好ましい。より高い純度は、フォレートのよりよい安定性を提供する。低い純度では、THF、メチレン−THFおよびメチルTHFは、非常に酸化の影響を受けやすく、従って不安定である。
【0049】
メチレン−THFの代わりの表現は、5,10−メチレン−THF、または5,10−CH−FHメチレン−THFである。メチレン−THFは、例えば、CaまたはNa塩の形態で、または種々の硫酸塩の形態で使用されてもよい。更に、本発明に従うと、遊離酸が使用されてもよく、即ち、メチレンテトラヒドロフォリックアシッド、または5,10−メチレンテトラヒドロプテロイルグルタミン酸(5,10-CH2-CH4-PgeGlu)が使用されてもよい。
【0050】
メチル−THFの代わりの表現は、5−メチル−THF、または5−CH−H
である。メチル−THFは、例えば、そのCaまたはNaの塩の形態において、またはその種々の塩の形態において使用されてよい。更に、本発明に従うと、遊離酸が使用されても、即ち、メチルテトラヒドロフォリックアシッド、またはメチルテトラヒドロプテロイルグルタミン酸(5-CH3-H4PteGlu)が使用されてもよい。
【0051】
THFの代わりの表現は、HF、または5,6,7,8−テトラヒドロフォレート」である。THFは、例えば、そのCaまたはNaの塩の形態において、またはその種々の塩の形態において使用されてよい。更に、本発明に従うと、遊離酸が使用されても、即ち、テトラヒドロフォリックアシッド、またはテトラヒドロプテロイルグルタミン酸(H4PteGlu)が使用されてもよい。
【0052】
ここで使用される用語「化学療法剤」は、癌の治療のための薬物に関する。
【0053】
ここで使用される用語「マルチターゲティングフォレート拮抗薬」(またはマルチファンクショナルフォレート拮抗薬)は、フォレート合成に関連する2以上の酵素において作用する抗フォレートに関する。単一の酵素を標的とする抗フォレートとマルチターゲティングフォレート拮抗薬との違いは、ハナウスクらの文献において説明されており("Pemetrexed Disodium: A Novel Antifolate Clinically Active Against Multiple Solid Tumors" by Hanauske A,et al)、そこにおいて、異なる酵素に対するペメトレックスドとMTXの阻害活性が比較されている。ペメトレックスドは、MTXとは異なり、ぺメトレックスドは複数の酵素系に対して有意な阻害活性を示す。
【0054】
更に、当該マルチターゲティングフォレート拮抗薬の多機能性は、薬物耐性の発生の危険性を低減し、このことは単一酵素標的抗フォレートと比較して大きく異なる。
【0055】
当該マルチターゲティングフォレート拮抗薬は、例えば、以下からなる群より選択されてよい;プレメトレックスド(premetrexed、登録商標、アリムタ(Alimta))、ラルチトレックスド(raltitrexed、登録商標、トムデックス(Tomudex))、およびロメトレクソール(lometrexol)。(ラルチロレックスドの多機能性は例えば、ジャックマンらにより示される(Jackman AL et al in "I0I D1694、a quinazoline antifolate thymidylate synthase inhibitor that is a potent inhibitor of L12l0 tumor cell growth in vitro and in vivo: a new agent for clinical study"、Cancer Res 991 Oct 15; 51(20) :5579-86。)
ここで使用される用語「アントラサイクリン」、「プラチナ誘導体」、「トポイソメラーゼ阻害剤」、および「アンチメタボライト」はナショナル・ライブラリー・オブ・メディスン()に定義される通りの化合物に関連する。
【0056】
ここで使用される「患者」の語は、本発明に従う方法、キットまたは医薬組成物で治療されることを必要とする何れかのヒトまたは非ヒト哺乳類に関連する。
【0057】
ここで使用される「治療」の語は、異なる種類の癌の症状を治癒または軽減するための処置と、癌の進行を予防するための処置の両方に関連する。特に、充実性腫瘍は、本発明に従って治療されるのに非常に適している。
【0058】
ここで使用される「薬学的に活性な量」の語は、所望する薬理学的および/または治療効果を導くであろう物質の投与量に関連する。所望する薬理学的および/または治療効果は、上述の通り、異なる種類の癌の症状を治癒または軽減すること、および癌の進行を予防することである。
【0059】
THE、メチレン−THFおよび/またはメチル−THF、並びにマルチターゲティングフォレート拮抗薬は、同時にまたは順次投与されてもよい。順次投与される場合には、THF、メチレン−THFおよび/またはメチル−THFの何れかが最初に投与され、その後、マルチターゲティングフォレート拮抗薬が投与されてもよく、またはマルチターゲティングフォレート拮抗薬が最初に投与され、その後、THF、メチレン−THFおよび/またはメチル−THFが投与されてもよい。当該投与間の間隔は、薬物の特徴に依存し、また、例えば、時間から日数まで多様であってもよい。しかしながら、より短い間隔でも、より長い間隔でも使用されてもよい。
【0060】
他の化学療法剤、即ち、アントラサイクリン、プラチナ誘導体、トポイソメラーゼ阻害剤、およびアンチメタボライトが同様に投与されるべきである場合、それらは、THF、メチレン−THFおよび/またはメチル−THFと同時、またはマルチターゲティングフォレート拮抗薬と同時の何れかで投与されてよい。更に、全ての物質、即ち、THF、メチレン−THFおよび/またはメチル−THF、マルチターゲティングフォレート拮抗薬および他の化学療法剤物質は同時に投与されてもよい。他の化学療法剤は、また、THF、メチレン−THFおよび/またはメチル−THF、およびマルチターゲティングフォレート拮抗薬が別々に投与されてもよい。
【0061】
薬物およびフォレートの順番は、化学療法処理の成果のために主に重要なことである可能性もある。説明されるとおり、ラグナザンらは以下のことを示した;フォリニックアシッド投与の1時間後にフォレートの減少した動物に対して5FUが投与されたとき、腫瘍の増殖は約80%抑制され、それに比べてコントロールマウスでは約50%抑制した(Raghunathan K et al "Impact of schedule on leucovorin potentiation of fluorouracil antitumor activity in dietary folic acid deplete mice"; Biochem Pharmacol 1997;53:1197-202)。5FUの12時間前に投与されたフォリニックアシッドは、腫瘍の増殖を刺激する結果を生じたが、これは5−FUなしでフォリニックアシッドが投与されたときに刺激された顕著な増殖と一致した。
【0062】
本発明に従う医薬組成物は、また、他の物質、例えば、不活性溶媒または薬学的に許容される補助剤、担体、保存剤、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、抗酸化剤などを含んでもよく、また、それらは当業者に周知である。
【0063】
本発明に従う医薬組成物は、慣用的な製造方法、例えば、ロイコボリンの生産のために使用されるような方法と類似の製造方法によって製造されてよい。
【0064】
本発明に従って治療されるべき癌の例は、乳癌、胃癌、胆嚢癌、胆管癌、大腸癌、直腸癌、肝癌、膵臓癌、頭および頸癌、並びに中皮腫癌である。
【0065】
THF、メチレン−THFおよび/またはメチル−THFは、好ましくは100pg〜1000mgの用量、好ましくは100〜200mgの用量、体重1kg当たり約1〜5mgに一致する用量で投与される。1投与量は、個々に調整されるであろし、従って、例えば、患者の状況に依存して変更してよい。
【0066】
投与は、例えば、毎日、毎週または毎月で投与されてもよい。例えば、皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、腹膜内、鼻腔内または経口で投与されてよい。
【0067】
更に、本発明に従う方法を、癌の他の従来の薬学的治療と組み合わせることも可能である。THF、メチレン−THFおよび/またはメチル−THF並びにマルチターゲティングフォレート拮抗薬を、このように癌を治療するために使用される他の従来の医薬品と組み合わせて投与されてもよい。
【0068】
発明に従う組成物は、また、ビタミンB12、ビタミンB6およびビタミンB2との共投与されてもよい。
【0069】
マルチターゲティングフォレート拮抗薬並びにTHE、メチレン−THFおよび/またはメチル−THEの組み合わせの例は以下の通りである:
・プレメトレックスド+THE、メチレン−THFおよび/またはメチルTHF
・プレメトレックスド+5−フルオロウラシル+THF、メチレン−THFおよび/またはメチルTHF
・ラルチトレックスド+THE、メチレン−THFおよび/またはメチルTHF
・ラルチトレックスド+5−フルオロウラシル+THF、メチレン−THFおよび/またはメチルTHF。
【0070】
[例]
本発明は、更に、以下の例において説明されるであろう。これらの例は、本発明を例示することを意図するのみであり、本発明の範囲を制限するためのものであるとは決してみなされるべきものでない。
【0071】
[例1]:メチレンTHFの投与、対、フォリニックアシッドの投与
ロイコボリンとメチレンTHFをそれぞれに投与した後に、メチレンTHEの組織濃度の増加レベルを比較した。
【0072】
肝移植のために手術を受ける患者は、1投与量のフォレートを投与された。バイオプシーは、メチレンテトラヒドロフォレートにおけるロイコボリンのi.v.でのボーラス注射の前に、当該腫瘍から採取された。20分で、新しい腫瘍のバイオプシーを採取し、MTHFの濃度を評価した。当該メチレンTHFの投与は、ロイコボリンよりもメチレンTHFの組織濃度がより高く導いた。当該結果を図2および3に示す。これらの結果は、フォリニックアシッドの代わりにメチレンTHFを投与することがより効率的なことを示す。
【0073】
[例2]:
ラットにおける実験的腺癌におけるマルチターゲティングフォレート拮抗薬療法(ALIMTA)と天然異性体のメチレンテトラヒドロフォレート(R-5、1O-CH2FH4)との組み合わせ
方法
以下の実験的試験は、イェーテボリ大学(the Goteborg University)で地元の倫理委員外の承認を得た。
【0074】
8匹の同系交配の雌性ウィスターラットを全身麻酔下で、実験用腺癌の0.1mL、100万個の生存可能な腫瘍細胞を肝葉の中央に植えつけた。5日目に、当該動物を全身麻酔下で再開胸し、体重を記録し、孤立性の肝腫瘍(sloritary liver tumor)をノギス(verinier calipers)で測定した。
【0075】
当該動物は、無作為に2つの群に割り当てられた。第1群には、ALIMTA(premetrexedされた)の0.01mg/kgを、第2群にはALIMTAの0.1mg/kgを静注した。両群とも、15mg/kgのR−5,10−CHFHをALIMTAの注射の直後に受けた。治療は、尾静脈からの静注を介して6〜8日目と11〜12日目に投与した。13日目に、全ての動物を過量の麻酔により屠畜した。
【0076】
体重を記録し、肝腫瘍のサイズを測定した。摘出された肝腫瘍および脾臓の湿重量を記録した。
【0077】
結果
全ての動物が試験期間中に亘って生存し、何れの毒性の兆候は観察されなかった。5日目と13日目の体重を図4に示す。(図4は、5日目と13日目の体重を示す。第1群(5日目=1、14日目=2)、第2群(5日目=4、13日目=5)。平均±SEM)
0.01mg/kgのALIMTAを受けた全ての動物は、肺に転移するなど腹腔内における肝臓外腫瘍増殖が見つかった。両群の肝腫瘍の腫瘍重量を図5に示す。腹腔および肺転移において肝臓外の腫瘍増殖の総腫瘍重量は記録しなかった。肝腫瘍重量だけを図5に示す。(図5は、第1群(1)と第2群(2)における肝腫瘍の腫瘍重量を示す。平均値±SEM)。
【0078】
2つの群における脾臓の当該湿重量を図6に示す。(図6は、第1群(1)と第2群(2)における脾臓重量を示す。平均値±SEM)。代替マーカーとして当該脾臓重量を見ることにより薬物の毒性をモニターすることは当業技術において周知である。
【0079】
[結論]
本試験は、多機能性フォレート拮抗薬と天然の形態のメチレンテトラヒドロフォレートを組み合わせることが可能であるきこと、そのような組み合わせが抗腫瘍効果を改善することの原理の証明である。最高用量のアリムタ(Alimta)を用いた群は、肝臓外転移は記録されず、また更に一般毒性も見られなかった。
【0080】
[例3]:マルチターゲティングフォレート拮抗薬の作用
この実験において、マルチターゲティングフォレート拮抗薬、即ち、トムデックス(Tomudex)(raltitrexed)の効果が示された。図7は、トムデックス静脈内ボーラス注射の後、当該腫瘍のTS発現レベルを示し、図8は、トムでクス静脈内ボーラス注射の後のTSの遺伝子発現レベルを示す。
【0081】
9人の直腸結腸癌患者が当該試験に含まれ、当該発現レベルをアクチンにおいて測定された。アクチンは、多くの真核生物の細胞の細胞骨格のための重要な構造分子として用いられる蛋白質である。
【0082】
この実験は、マルチターゲティングフォレート拮抗薬だけの使用により、正常な粘膜が実際に当該腫瘍よりもより不都合な影響を受けることを示す。これはまた、臨床所見と一致する;腸からの重度な毒性作用が、治療を続けることを不可能にした。
【0083】
従って、本発明により得られる効果、即ち、細胞障害効果を維持しながら、マルチターゲティングフォレート拮抗薬の毒性を減少することは、後に非常に追及される。
【0084】
本発明は、そのある特定の態様と共に詳述されてきたが、種々の変更および修飾が本発明の精神および範囲から逸脱せずになされ得ることは当業者には明白であろう。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1は、DNA合成、修復およびメチル化においてフォレートが強い影響を与える主要な代謝経路を示す。
【図2】図2は、 個々の患者における結腸直腸癌から肝転移において、メチレンテトラヒドロフォレート(MTHF)の組織濃度のパーセント増加を示す。
【図3】図3は、個々の患者における、結腸直腸癌から転移におけるメチレンテトラヒドロフォレート(MTHF)の組織濃度の平均パーセント増加を示す。
【図4】図4は、例2の動物の5日目および13日目の体重(平均値±SEM)を示す。
【図5】図5は、例2の当該動物の肝腫瘍の腫瘍重量(平均値±SEM)を示す。
【図6】図6は、例2における当該動物の膵臓の重量(平均値±SEM)を示す。
【図7】図7は、マルチターゲティングフォレート拮抗薬の静脈内ボーラス注射後のTS発現レベルを示す。
【図8】図8は、マルチターゲティングフォレート拮抗薬の静脈内ボーラス注射後の平均遺伝子発現レベルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラヒドロフォレート、メチレンテトラヒドロフォレートおよび/またはメチルテトラヒドロフォレート、および少なくともマルチターゲティングフォレート拮抗薬の癌治療のための医薬組成物の製造のための使用。
【請求項2】
請求項1に記載の使用であって、少なくとも60重量%の前記THE、メチルTHEおよび/またはメチレンTHFが生物学的に活性な異性体の形態にある使用。
【請求項3】
請求項1または2の何れか1項に記載の使用であって、前記マルチターゲティングフォレート拮抗薬が、以下からなる群より選択される使用;プレメトレックスド、ラルチトレックスドおよびロメトレクソール。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の使用であって、前記医薬組成物が更に、以下からなる群より少なくとも1選択される化学療法剤を具備する使用;アントラサイクリン、プラチナ誘導体、トポイソメラーゼ阻害剤およびアンチメタボライト。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の使用であって、前記テトラヒドロフォレート、メチレンテトラヒドロフォレートおよび/またはメチルテトラヒドロフォレート、および少なくとも1のマルチターゲティングフォレート拮抗薬が、異なる医薬組成物において製剤化されている使用。
【請求項6】
請求項1〜4の何れか1項に記載の使用であって、前記テトラヒドロフォレート、メチレンテトラヒドロフォレートおよび/またはメチルテトラヒドロフォレート、および前記少なくとも1のマルチターゲティングフォレート拮抗薬が共通の医薬組成物において製剤化されている使用。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の使用であって、前記癌が、以下からなる群より選択される使用;乳癌、胃癌、胆嚢癌、胆管癌、大腸癌、直腸癌、肝癌、膵臓癌、頭および頸癌および中皮腫癌。
【請求項8】
テトラヒドロフォレート、メチレンテトラヒドロフォレートおよび/またはメチルテトラヒドロフォレートおよび少なくとも1のマルチターゲティングフォレート拮抗薬を含む医薬組成物。
【請求項9】
請求項8に従う医薬組成物であって、少なくとも60重量%の前記THF、メチル−THEおよび/またはメチレン−THFが生物学的活性な異性体である医薬組成物。
【請求項10】
請求項8または9の何れか1項に記載の医薬組成物であって、前記マルチターゲティングフォレート拮抗薬が以下からなる群より選択される医薬組成物;プレメトレックスド、ラルチトレックスドおよびロメトレクソール。
【請求項11】
請求項8〜10の何れか1項に記載の医薬組成物であって、更に、以下からなる群より選択される少なくとも1の化学療法剤を含む医薬組成物;アントラサイクリン、プラチナ誘導体、トポイソメラーゼ阻害剤およびアンチメタボライト。
【請求項12】
請求項8〜11の何れか1項に記載の医薬組成物であって、前記テトラヒドロフォレート、前記メチレンテトラヒドロフォレートおよび/または前記メチルテトラヒドロフォレート、および前記少なくとも1のマルチターゲティングフォレート拮抗薬が、異なる医薬組成物内に製剤化される医薬組成物。
【請求項13】
請求項8〜11の何れか1項に記載の医薬組成物であって、前記テトラヒドロフォレート、前記メチレンテトラヒドロフォレートおよび/または前記メチルテトラヒドロフォレート、および前記少なくとも1のマルチターゲティングフォレート拮抗薬が共通の医薬組成物において製剤化されている医薬組成物。
【請求項14】
テトラヒドロフォレート、メチレンテトラヒドロフォレートおよび/またはメチルテトラヒドロフォレートを含む医薬組成物、並びに少なくとも1のマルチターゲティングフォレート拮抗薬を含む医薬組成物を具備するキット。
【請求項15】
請求項14に従うキットであって、少なくとも60重量%の前記テトラヒドロフォレート、メチレンテトラヒドロフォレートおよび/またはメチルテトラヒドロフォレートが、生物学的に活性な異性体の形態であるキット。
【請求項16】
請求項14または15に従うキットであって、更に、以下からなる群より選択される化学療法剤を含む医薬組成物を具備するキット;アントラサイクリン、プラチナ誘導体、トポイソメラーゼ阻害剤およびアンチメタボライト。
【請求項17】
テトラヒドロフォレート、メチレンテトラヒドロフォレートおよび/またはメチルテトラヒドロフォレート、および薬学的に活性な量の少なくとも1のマルチターゲティングフォレート拮抗薬の薬学的活性量を患者に対して投与することを具備する癌の治療のための方法。
【請求項18】
請求項17に従う方法であって、少なくとも60重量%の前記テトラヒドロフォレート、メチレンテトラヒドロフォレートおよび/またはメチルテトラヒドロフォレートを、生物学的に活性な異性体の形態にある方法。
【請求項19】
請求項17または18に従う方法であって、前記マルチターゲティングフォレート拮抗薬が以下からなる群より選択される方法;プレメトレックスド、ラルチトレックスドおよびロメトレクソール。
【請求項20】
請求項17〜19の何れか1項に記載の方法であって、更に、以下からなる群より選択される薬学的に活性な量の化学療法剤;アントラサイクリン、プラチナ誘導体、トポイソメラーゼ阻害剤およびアンチメタボライト;を投与することを具備する方法。
【請求項21】
請求項17〜20の何れか1項に記載の方法であって、前記テトラヒドロフォレート、前記メチレンテトラヒドロフォレートおよび/または前記メチルテトラヒドロフォレート、並びに少なくとも1のマルチターゲティングフォレート拮抗薬が連続的に投与される方法。
【請求項22】
請求項17〜20の何れか1項に記載の方法であって、前記テトラヒドロフォレート、前記メチレンテトラヒドロフォレートおよび/または前記メチルテトラヒドロフォレート、並びに前記少なくとも1のマルチターゲティングフォレート拮抗薬が同時に投与される方法。
【請求項23】
請求項17〜22の何れか1項に記載の方法であって、前記癌が以下からなる群より選択される方法;乳癌、胃癌、胆嚢癌、胆管癌、大腸癌、直腸癌、肝癌、膵臓癌、頭および頸癌および中皮腫癌。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−515482(P2007−515482A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546912(P2006−546912)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【国際出願番号】PCT/SE2004/001955
【国際公開番号】WO2005/060973
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(506215342)バイオフォル・エービー (1)
【Fターム(参考)】