説明

プリン誘導体の製造方法

【課題】
本発明は、医薬として有用なトランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリン水和物の結晶の高品質かつ工業的な製造方法を提供せんとするものである。
【解決手段】
トランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリン=ジメチルスルホキシド和物の結晶を、水又は加湿した不活性気体で処理することにより、目的化合物の結晶を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬として有用なトランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリン水和物(以下、化合物Iと略す場合がある)の結晶の新規な製造方法、当該製造方法に有用な新規製造中間体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
国際公開パンフレット:WO2004/002986(特許文献1)には、トランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリンが、例えば過食症、肥満症、糖尿病等の処置剤として有用であることが開示されている。当該特許文献の実施例13に記載された化合物のForm−Cなる結晶形が本発明に係るトランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリン水和物の結晶である。
【特許文献1】国際公開パンフレット:WO2004/002986
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1に開示された製造方法は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製工程が必要とされているなど、工業的な製造方法として、好ましくない製造方法である。本発明は、前記特許文献1に開示された製造方法の工業的な製法として不適な点を解消することができる、工業的な製造方法として簡便な、着色物質及び副生成物等の不純物の混入が少ない高品質な当該化合物の結晶の工業的な製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、トランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリン(以下、化合物IIIと略す場合がある)の無水物、塩又は溶媒和物を、ジメチルスルホキシドを含む混合溶媒に加熱溶解し、得られた溶液を冷却することにより、トランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリン=ジメチルスルホキシド和物(以下、化合物IIと略す場合がある)の結晶とし、該化合物IIの結晶を水又は加湿した不活性気体で処理することにより、着色物質及び副生成物等の不純物が除去された高品質な化合物Iの結晶を製造できることを見出した。
さらに、新規な化合物IIの結晶は、本発明に係る製造方法の中間体として有用であることも併せて見い出し本発明を完成した。
【0005】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(7)に関するものである。
(1)トランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリン=ジメチルスルホキシド和物の結晶を、水又は加湿した不活性気体で処理することを特徴とするトランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリン水和物の結晶の製造方法;
(2)加湿した不活性気体が、相対湿度70%〜80%に加湿した空気、窒素ガス、ヘリウム又はアルゴンである、(1)の製造方法;
(3)トランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリン=ジメチルスルホキシド和物の結晶;
(4)トランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリンの無水物、塩又は溶媒和物を、ジメチルスルホキシドを含む混合溶媒に加熱溶解し、得られた溶液を冷却することを特徴とするトランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリン=ジメチルスルホキシド和物の結晶の製造方法;
(5)トランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリンの塩が、トランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリンのマレイン酸塩、フマール酸塩又は酒石酸塩であることを特徴とする(4)の製造方法;
(6)トランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリンの溶媒和物が、トランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリンの水和物、ジメチルアセトアミド和物又はジメチルホルムアミド和物であることを特徴とする(4)の製造方法及び
(7)ジメチルスルホキシドを含む混合溶媒が、ジメチルスルホキシドとトルエンからなる混合溶媒であることを特徴とする(4)の製造方法。
【0006】
以下に、本発明に係る化合物Iの製造方法について具体的に説明する。
化合物IIIの無水物、塩又は溶媒和物から化合物IIの結晶を製造する工程は、化合物IIIの無水物、塩又は溶媒和物を、ジメチルスルホキシドを含む混合溶媒に加え、例えば80℃〜100℃に加熱して溶解させ、得られた溶液を、60℃〜70℃に冷却して1時間〜3時間熟成させた後、20℃〜40℃に冷却して1時間〜20時間熟成させ、ついで−15℃〜−5℃に冷却して3時間〜10時間熟成させ、生成した結晶を濾取した後、これを洗浄・乾燥することにより実施することができる。化合物IIIの無水物、塩又は溶媒和物は精製物であっても、粗製物であってもよい。
化合物IIの結晶の洗浄・乾燥工程は、前記で得られた化合物IIの結晶を、体積1のジメチルスルホキシドに対して、体積10〜20、好ましくは15のトルエン又はヘプタンからなる洗液で10分間練り洗いし、結晶を濾取し、ついで、例えばヘプタン又はトルエンにて練り洗いし、結晶を濾取し、ついで窒素気流下減圧にて、50℃〜70℃で1時間〜10時間乾燥することにより実施することができる。
ジメチルスルホキシド、及びトルエン又はヘプタンからなる洗液の使用量は、前記工程で得られた化合物IIの結晶1kgに対して、3L〜5Lである。
トルエン又はヘプタンからなる洗液の使用量は、当該化合物IIの結晶1kgに対して、3L〜5Lである。
【0007】
本工程の原料である化合物IIIの無水物、塩又は溶媒和物としては、例えば前記特許文献1に開示された製造方法により製造され、シリカゲルクロマトグラフィーによる処理をされていない粗製物等が挙げられる。当該塩としてはマレイン酸塩、フマール酸塩又は酒石酸塩等が挙げられ、当該溶媒和物としては、水和物、ジメチルアセトアミド和物又はジメチルホルムアミド和物等が挙げられる。
【0008】
本工程の原料である化合物IIIの無水物、塩又は溶媒和物と、ジメチルスルホキシドを含む混合溶媒との使用割合は、当該原料化合物1kgあたり、混合溶媒が0.5L〜2Lである。
【0009】
ジメチルスルホキシドを含む混合溶媒とは、ジメチルスルホキシドと、例えばトルエン、ヘプタン又は水との混合溶媒であり、その混合比は、体積比でジメチルスルホキシドが1に対して、当該その他の溶媒が2〜5である。
【0010】
以上の工程により、着色物質及び副生成物等の不純物が除去された高品質な化合物IIの結晶を製造することができ、当該結晶を以下の工程に付すことにより、高品質な化合物Iの結晶を得ることができる。すなわち、化合物IIの結晶は、着色物質及び副生成物等の不純物が除去された高品質な新規化合物であり、化合物Iの製造原料又は製造中間体として有用である。
【0011】
化合物IIの結晶を水で処理し、化合物Iの結晶を製造する工程は、20℃〜100℃にて化合物IIの結晶を水に懸濁させ、攪拌した後、結晶を濾取し、これを洗浄・乾燥することにより実施することができる。
本工程の所要時間を短縮するためには、60℃〜100℃に昇温することが好ましい。更に好ましい方法は、20℃〜30℃で10分〜30時間攪拌した後、60℃〜100℃に昇温することである。
水の使用量は、化合物IIの結晶1kgあたり、5L〜50Lである。
化合物Iの結晶の洗浄・乾燥工程は、上記で得られた化合物Iの結晶を、体積比で水1に対してメタノール1からなる洗液にて、練り洗いし、ついで窒素気流下減圧にて、50℃〜70℃で1時間〜10時間乾燥することにより実施することができる。
水及びメタノールからなる洗液の使用量は、前記工程で得られた化合物Iの結晶1kgに対して、3L〜5Lである。
【0012】
一方、化合物IIの結晶を、加湿した不活性気体で処理し、化合物Iの結晶を製造する工程は、化合物IIの結晶を、相対湿度70%〜80%に加湿した不活性気体に、50℃〜60℃で接触させることにより実施することができる。
【0013】
「不活性気体」とは、例えば空気、窒素ガス、ヘリウム又はアルゴン等の化合物Iの結晶の物理化学的性状を変化させない気体を意味する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、着色物質及び副生成物等の不純物の混入が少ない高品質なトランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリン水和物の結晶を、従来知られた方法に比して、簡便に工業的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0016】
実施例1
トランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリン=ジメチルスルホキシド和物の結晶の製造
結晶化用タンクにジメチルスルホキシド11.09kg(10.1L)、トルエン29.08kg(33.6L)をシャワーボールより加えた後、トランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリン粗結晶(着色度(COS):100;総副生成物含量:0.61%)8.74kgをハンドホールより添加した。ジメチルスルホキシド3.33kg(3.02L)、トルエン8.72kg(10.1L)をシャワーボールより加え洗いこんだ。当該結晶化用タンクの内温を75〜80℃とし、当該粗結晶を溶解させた。
ついで、当該結晶化用タンクの内温を30分間かけて63〜67℃まで冷却した後、種晶50gをハンドホールより加え、内温63〜67℃で2時間熟成した。さらに1時間かけて内温20〜30℃まで冷却し、同温度で18時間熟成した。その後、40分間かけて内温−10±5℃に冷却し、同温度で4時間結晶を熟成させた。
濾過乾燥機を5℃の冷媒を循環させて冷却した後、当該結晶を濾取した。
別のタンクにジメチルスルホキシド1.20kg(1.09L)、トルエン14.2kg(16.4L)を加え結晶の洗浄液を調製した。当該結晶化用タンクに当該洗浄液をシャワーボールより加えて洗浄し、ついで当該洗浄液を、結晶を濾取した上記の濾過乾燥機に移液し、当該結晶を5分間練り洗いした後、結晶を濾取した。
当該乾燥濾過機にトルエン15.1kg(17.5L)をシャワーリングより加えスラリーを5分間練り洗いした後、濾取した。ついで当該濾過乾燥機にトルエン7.56kg(8.8L)をシャワーリングより加えて当該結晶を洗浄し、濾取した。ついで、当該濾過乾燥機に60分間窒素ガス(圧力0.17MPa)を吹き込んだ。さらに濾過乾燥機で低速攪拌、50℃加温下、減圧下窒素ガス(20L/時間)で1時間、減圧乾燥し、表題のトランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリン=ジメチルスルホキシド和物の結晶を得た。
HNMR(500MHz,DMSO−d,δppm):1.84−2.00(2H,m),2.16−2.27(2H,m),2.36−2.42(2H,m),3.43(1H,s),7.35(2H,t,J=8.9Hz),7.87(1H,dd,J=0.7Hz,4.9Hz),8.49(2H,dd,J=5.8Hz,8.5Hz),8.89(1H,d,J=4.9Hz),9.13(1H,s),9.20(1H,s),13.46(1H,s)
【0017】
高速液体クロマトグラフィーによる分析:
純度(HPLC):99.9面積%
総副生成物量:0.10面積%
ガスクロマトグラフィーによる分析:
ジメチル スルホキシド含量:15.5重量%
トルエン 含量:0.09重量%
水分含量(KF):0.1重量%
着色度(COS):8
【0018】
高速液体クロマトグラフィーの分析法
試料として上記で得られた結晶約25mgを精密に量り、試料溶媒に溶かし正確に100mL(約0.25mg/mLの濃度)とし試料溶液とする。また、3標準品約25mgを精密に量り、試料溶媒に溶かし正確に100mL(約0.25mg/mLの濃度)とし標準溶液とした。試料溶液10μLにつき、次の条件で液体クロマトグラフ法により試験を行った。同様の方法にて空試験を行い、生ずるピークを補正した。
本試験は、本品及び標準品をそれぞれ2秤量し、試料溶液及び標準溶液を調製した。それぞれの結果を平均し、報告値とした。なお、試料溶液は室温で4時間安定であった。
含量(w/w%)の算定式:
100 × Ai / [Rf × Ci(1−0.01F)]
Ai: 試料溶液のピーク面積
Ci: 試料溶液の濃度(mg/mL)
F : 試料中における(水分 + 溶媒)の重量%
(水分値は<0.1%の場合は、0とする)

Rf=Astd/(Cstd×Pstd)
Astd:標準溶液のピーク面積
Cstd:標準溶液の濃度(mg/mL)
Pstd:標準試料の純度(脱水脱溶媒)
<操作条件>
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:220nm)
カラム:
YMC AM12S03−1046WT
(AM−301−3;4.6mm×100mm,3μm)
カラム温度:25℃
試料溶媒:
10mM NaHPO/HO(pH6.5):CHCN=1:3
移動相:
A:10mM NaHPO/HO(pH6.5;NaOHにより調整)
B:CHCN
流量: 1.8mL/分
面積測定時間:8分
直線グラジエント:
経時 移動相A 移動相B
スタート時 80% 20%
1分後 60% 40%
2.5分後 60% 40%
5分後 20% 80%
7分後 20% 80%
7.5分後 80% 20%
【0019】
着色度(COS)の測定法:
濁度測定で用いた溶液を使用し440nmの吸光度を測定した。ブランク(テトラヒドロフラン)を10回測定し平均した値を、試料の測定値から差し引き以下の式により求めた。試料の測定は10回行った。ただし、吸光度が2.00を超える場合は、テトラヒドロフランにより吸光度が2.00内におさまるように希釈し測定した。
着色度(COS)の算定式:
(−logT Ave.)×希釈(mL)/試料量(mg)×10×1000
【0020】
実施例2
トランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリン水和物の結晶の製造
実施例1で製造されたトランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリン=ジメチルスルホキシド和物の結晶を収納した濾過乾燥機を、内温25±5℃に冷却した後、当該濾過乾燥機を中速攪拌(55rpm)下で、水約70Lをシャワーリングより加え、同温度で10分間攪拌した。ついで水の残り約20.6Lをシャワーリングより加え、内温25±5℃で15時間攪拌した。45分間かけて内温80±2℃に昇温し、当該濾過乾燥機中速攪拌(55rpm)下、同温度で15時間熟成し、結晶変換の完了を確認した。ついで、100分間かけて内温20±5℃に冷却し、同温度で3時間熟成した。当該濾過乾燥機で結晶の濾過を行った。
さらに、水22.7kg(22.7L)、メタノール17.9kg(22.7L)からなる洗液の約30Lをシャワーリングより加え、懸濁液を5分間練り洗い後、濾過し、ついで残りの洗液約15Lをシャワーリングより加えてケーキを洗浄、結晶を濾取した。窒素ガス(圧力0.18MPa)を40分間吹き込んだ後、濾過乾燥機を低速攪拌下、50℃加温下、減圧下、窒素ガスを20L/時間で吹き込み17時間、減圧乾燥し、表題のトランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリン水和物の結晶7.749kg(88.4%A)を白色結晶として得た。
HNMR(400MHz,CDCl,δppm):1.44−2.58(8H,m),3.30−3.50(1H,m),7.19(2H,t,J=8.8Hz),7.80(1H,d,J=4.8Hz),8.46(2H,dd,J=5.6Hz,8.8Hz),8.88(1H,d,J=4.8Hz),8.96(1H,s),9.18(1H,s);
マススペクトル(ESI):416(M+H)
【0021】
高速液体クロマトグラフィー分析:
含量:99.9面積%,
総副生成物含量:0.09面積%
ガスクロマトグラフィー分析:
メタノール含量:<0.01wt%,
トルエン含量:0.04wt%,
ジメチルスルホキシド:<0.01wt%,
水分含量(カールフィッシャー):4.3wt%,
着色度(COS):8
【0022】
ガスクロマトグラフィーの測定条件
カラム:
DB−WAX(長さ×内径×膜厚=30m×0.32mm×0.50μm)(Agilent社製)
移動層:
ヘリウム
注入口:
圧力:90Kpa
初期流量:2.98mL/分
温度:200℃
オーブン:
50℃−25℃/分−200℃(2分)
FID(検出器)温度:
220℃
【0023】
実施例3
トランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリン水和物の結晶の製造
実施例1で製造されたトランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリン=ジメチルスルホキシド和物の結晶を収納した濾過乾燥機を中速攪拌(55rpm)下で、水約45Lをシャワーリングより加え、70分間かけて内温80±2℃まで昇温し、残りの水45Lを加え結晶変換を行った。当該濾過乾燥機中速攪拌(55rpm)下、同温度で23時間熟成し、結晶変換の完了を確認した。ついで、75分間かけて内温20±5℃に冷却し、同温度で2時間熟成した。当該濾過乾燥機で結晶の濾過を行った。
さらに、水22.7kg(22.7L)、メタノール17.9kg(22.7L)からなる結晶洗液の約30Lをシャワーリングより加え、スラリーを5分間練り洗いした後、濾過し、ついで結晶洗液の残り約15Lをシャワーリングより加えてケーキを濾過洗浄し、結晶を濾取した。窒素ガス(圧力0.18MPa)を40分間ブローした。ついで、濾過乾燥機を低速攪拌下、50℃加温下、減圧下、窒素ガスを20L/時間で吹き込み20時間、減圧乾燥し、表題のトランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリン水和物の結晶7.238kg(82.6%A)を白色結晶として得た。
【0024】
高速液体クロマトグラフィー分析:
含量:99.9面積%,
総副生成物量:0.07面積%
ガスクロマトグラフィー分析:
メタノール含量:<0.01wt%,
トルエン含量:<0.01wt%,
ジメチルスルホキシド:<0.01wt%,
水分含量(カールフィッシャー):4.3wt%,
着色度(COS):7
なお、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー及び着色度(COS)の測定条件は、実施例2と同様である。
【0025】
実施例4
トランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリン水和物の結晶の製造
実施例1で製造されたトランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリン=ジメチルスルホキシド和物の結晶約5mgをアルミパンにのせ、温度が60℃に保たれた半密閉の粉末X線―示差走査熱量計(XRD−DSC)(リガク社製)の中に置いた。ついで、湿度発生装置で60℃−相対湿度75%の空気(水蒸気分圧約15000Paに相当)を発生させ、系内に導入すると、瞬時に表題のトランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリン水和物の結晶に変化することを、粉末X線―示差走査熱量計のデータにより確認した。
当該変換過程は一瞬であり、その間に結晶が崩れる(アモルファス化する)ことはなかった。
なお、40℃−75%相対湿度の空気(水蒸気分圧:5500Pa)を使用した場合には、当該水和物への変化は起こらなかった。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明により、例えば過食症、肥満症、糖尿病等の処置剤として有用であるトランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリン水和物の結晶を、工業的かつ高品質に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】トランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリン=ジメチルスルホキシド和物の結晶の粉末X回折パターンを表す。
【図2】トランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリン水和物の結晶の粉末X回折パターンを表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリン=ジメチルスルホキシド和物の結晶を、水又は加湿した不活性気体で処理することを特徴とするトランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリン水和物の結晶の製造方法。
【請求項2】
加湿した不活性気体が、相対湿度70%〜80%に加湿した空気、窒素ガス、ヘリウム又はアルゴンである請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
トランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリン=ジメチルスルホキシド和物の結晶。
【請求項4】
トランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリンの無水物、塩又は溶媒和物を、ジメチルスルホキシドを含む混合溶媒に加熱溶解し、得られた溶液を冷却することを特徴とするトランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリン=ジメチルスルホキシド和物の結晶の製造方法。
【請求項5】
トランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリンの塩が、トランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリンのマレイン酸塩、フマール酸塩又は酒石酸塩であることを特徴とする請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
トランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリンの溶媒和物が、トランス−2−(4−フルオロフェニル)−8−[3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−イル]プリンの水和物、ジメチルアセトアミド和物又はジメチルホルムアミド和物であることを特徴とする請求項4記載の製造方法。
【請求項7】
ジメチルスルホキシドを含む混合溶媒が、ジメチルスルホキシドとトルエンからなる混合溶媒であることを特徴とする請求項4記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−126424(P2007−126424A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−322583(P2005−322583)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【出願人】(000005072)萬有製薬株式会社 (51)
【Fターム(参考)】