説明

搬送用ロール

【課題】
サクションロールに代わる、吸引装置等の付帯設備を持たず、製作工程も性能的にも、抱き角が任意に変更できるよう改良され更に、機構的にも簡単で、安価な搬送用ロールを提供すること。
【解決手段】
塩化ビニール樹脂にフタル酸ブチルを5〜30重量部添加し、及びアルミニュウム粉末、錫粉末、炭酸バリュウムの少なくとも一種類を1〜5重量部、及びグリセリンを添加した塩化ビニール樹脂からなる樹脂層を外筒表面上に具備したことを特徴とする搬送用ロールによって解決する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙、合成樹脂、布等の長尺シート状搬送物の搬送の案内、保持を行う搬送用ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術では、一般には紙、合成樹脂、布等の搬送物を搬送する場合は、シートに所定のテンションを保持しながら支承する必要がある。従来の支承ロールとしては、2個のロールにより搬送物を侠持して搬送を案内しながら支承するものとロール表面に搬送物を吸着させて搬送の案内と保持を行うようにしたサクション形式のものがある。2個のロールにより搬送物を侠持して搬送を案内しながら支承するものは、引張力の低い複写機、プリンター等に使用され、引張力の大きさを必要とする長尺シートの搬送には、サクションロール形式のものが支流となっている。
この種のサクションロールは表面の全幅に亘って多数の小さな通気孔を窄孔した外筒と、この外筒の内側には、外筒表面に搬送物が接触する周長が描く角度の範囲で形成された開口部を有する内筒とによって構成されていて、この開口部の角度が抱き角を決めている。
そして前記内筒内を吸引装置により減圧することによって、内筒の開口部、吸引角度の範囲で外筒表面に搬送物が吸着され、サクションロールの回転に伴って搬送の案内、保持を行う事が出来るようになっている。
(例えば特許文献1)

(例えば特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開H05−27726号公報
【特許文献2】特開2006−36451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記先行技術によるものは、搬送物に対しては充分な吸着力を得ることが出来るものの、通気孔の孔径を大きくすると搬送物の吸着面に孔の吸着痕が付き搬送物に品質上の問題が生じ、逆に孔径を小さくすると吸引力不足を招くばかりか、塵埃が通気孔に目詰まりし、搬送物を吸着できない事態を招くという問題があった。その後、これらの改良がなされているが、ロールの製作が、素材はアルミニュウム合金等から形成される外筒にドリルやレザー光で通気孔を窄孔するものであるため、この窄孔作業に多くの時間を必要とし、製作コストの上昇を招くという問題があつた。又、ロール表面に搬送物を吸着させるための吸引装置は、基本的要素で、必ず必要となっている。
サクション方式に代わる、簡単な方法で、安価な搬送用ロールの創案を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の、上記課題を解決するための技術手段は、塩化ビニール樹脂に、可塑剤、及びアルミニュウム粉末、錫粉末、炭酸バリウム、の少なくとも一種類、更に、グリセリンを含有した樹脂層を外筒表面上に具備したことを特徴とする搬送用ロールによって解決する。
【0006】
又、塩化ビニール樹脂100重量部に対して添加の可塑剤として、フタル酸ブチルを5〜30重量部含有することを特徴とする上記記載の搬送用ロールによって解決する。
【発明の効果】
【0007】
上記のように搬送物を受けるべく回転するロールの外筒表面に樹脂層を具備するだけの簡単な方法で、樹脂の粘着力を利用して、吸引装置も、機構的にも複雑な装置も必要とすることなく、製作工程的にも安価で、更に性能的にも、従来のものでは、抱き角を変えるには、内部構造を変えなければならないが、本発明では、抱き角を任意に変えることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、創案されたもので、その意図するところは、塩化ビニール樹脂に可塑剤として、フタル酸ブチルを添加し、その添加量を変化させることで表面の濡れ性と帯電性が変化することを知ってこれを利用した。
即ち、無添加の塩化ビニール樹脂では、表面は高硬度で、摩擦性無く、フィルム等への粘着は全く無いが、可塑剤としてのフタル酸ブチル、及び、アルニニュウム粉末、錫粉末、炭酸バリユウム等の少なくとも一種類を添加すると、添加量につれて、柔軟性、粘着力が発生し、フィルム等を吸着することが出来る。
【0009】
此処での、アルミニュウム粉末、錫粉末炭酸バリュウムは添加することで、その粘着力の変化を調整する事が出来る。又、クリアーな塩化ビニール樹脂に着色すること、更に、帯電性を変化させる役目もある。
フタル酸ブチルの添加量は5重量部から30重量部の範囲で、5重量部以下では搬送物の引張力が低く、30重量部以上では、粘り、粘着力が強すぎる。又、この範囲では、表面の帯電電位は、略、0Vを示し、そのため、空気中のゴミ、埃、は付着する事は無い。無添加の塩化ビニール樹脂は負の帯電列に属し、通常は数百V、帯電しているが、アルミニュウム粉末、スズ粉末、炭酸バリュウムを添加することで帯電電位が低くなる、それらの添加量は1重量部〜5重量部の添加量とするのが良い。
【0010】
更に、グリセリン、搬送用ロールの外筒に付着された樹脂層の粘着力を持続させる為の保湿の為に添加するもので、その添加量は15〜30重量部の範囲に添加されるのが良い。
【0011】
可塑剤としては、フタル酸エステルのフタル酸ブチルの他に、アジピン酸エステル、クエン酸エステル、ポリエステル、トリメット酸エステル、リン酸エステル、エポキシ化植物油、等も使用できる。
以下本発明の構成を更に詳しく説明する。
【0012】
図1は本発明に係る搬送用ロール1の正面図である。
外筒表面には塩化ビニール樹脂にフタル酸ブチル等を添加した樹脂2を塗布してある。
塗布の方法は、浸漬、スプレー等の方法で行なわれる。
3は搬送用ロールのフランジ、4は回転用の中心軸である。
図2は図1の側面図である。
【0013】
図3は従来のサクションロールの搬送条件の一つ抱き角で、90度程度で、可変は不可能である。変化させる為には、内筒を変える必要があり、新規に製作しなければならない。
図4は本発明の搬送用ロールの抱き角で、そのままのロール構成で、45度程度から可変が可能である。引張力は角度が狭くなるほど、弱くなるが、従来に比較して、遜色ない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の搬送用ロールの正面図
【図2】本発明の搬送用ロールの側面図
【図3】従来のサクションロールの抱き角の状態図
【図4】本発明の搬送用ロールの抱き角の状態図
【実施例1】
【0015】
外径80φ厚さ1mm、長さ600mmの円筒パイプの外側表面上に、塩化ビニール樹脂100Grにフタル酸ブチル15CC、アルミニュウム粉末5Gr、グリセリンを25重量部、添加撹拌の後、塗布し、常温で3時間乾燥後、厚さ75μm、幅310mmのPETフィルムを塗布後の円筒パイプの外側に、密着させた後45度の抱き角の状態で、引っ張り力を測定したところ、50KG以上を得た。
【符号の説明】
【0016】
1 搬送用ロール
2 樹脂層
3 フランジ
4 回転用軸
5 内筒
6 外筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニール樹脂に、可塑剤、及びアルミニュウム粉末、錫粉末、炭酸バリウム、の少なくとも一種類、更に、グリセリンを含有した樹脂層を外筒表面上に具備したことを特徴とする搬送用ロール。
【請求項2】
塩化ビニール樹脂100重量部に対して添加の可塑剤として、フタル酸ブチルを5〜30重量部含有することを特徴とする請求項1記載の搬送用ロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−144923(P2011−144923A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276664(P2010−276664)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(300004681)
【Fターム(参考)】