説明

毛髪化粧料

【課題】 化学的処理で損傷し弱体化した毛髪や加齢に伴う衰えにより細くなった毛髪に、ハリ・コシを与え、特にボリューム感を付与する毛髪化粧料を提供する。
【解決手段】 カチオン性界面活性剤と、ピロリドンカルボン酸Naを少なくとも含有し、前記ピロリドンカルボン酸Naが0.5質量%以上であることを特徴とする、毛髪化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布時からすすぎ時にかけて毛髪になめらかなコート感を与え、乾燥後の毛髪にボリュームアップ感や髪のハリ・コシ等を付与する毛髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪は、日常のヘアケアやヘアカラー、パーマ、ブリーチ等の化学的処理によって損傷を受けてしまう。さらに加齢により毛髪はハリ・コシを失い、ボリューム感が低下するといった問題を有している。そこで、髪の細さやハリ・コシのなさを改善するため、以前から育毛有効成分や毛髪と類似した成分を配合した育毛剤や、毛髪補修剤等が利用されてきた。
【0003】
しかしながら、従来の育毛剤や毛髪補修剤では、短期間でハリ・コシを与えるほどの効果は期待できないという問題があった。そのため、皮膜形成樹脂を配合したセット剤や毛髪化粧料を活用して、毛髪にハリ・コシ、ボリューム感を与えようとする試みも行なわれているが、これらを利用することにより、ハリ・コシは付与されるものの髪がごわつくなどの欠点があった。
【0004】
そこで、従来から感触的にも毛髪本来の自然な手触り感を損なうことなく、毛髪にハリ・コシやボリューム感を付与することが強く求められていた。このような背景から、これまでにもいくつかの方法が提案されている。例えば、コラーゲン誘導体やケラチン誘導体等の毛髪と類似した成分を毛髪に浸透、補充する方法が知られている(特許文献1、2を参照)。
【0005】
また、毛髪表面を天然高分子によりコートする方法(特許文献3〜5参照)、毛髪固定用高分子化合物と分岐鎖脂肪酸エステル等を組み合わせて配合する毛髪固定用化粧料(特許文献6参照)、両親媒性高分子と6−ベンジルアミノプリン及びその誘導体を含有する養育毛組成物(特許文献7参照)などが報告されている。
【0006】
しかしながら、これらの方法や毛髪化粧料等では、化学的処理で損傷し弱体化した毛髪や、加齢に伴う衰えにより細くなった毛髪に、ハリ・コシ等をある程度蘇らせる効果は認められるものの、髪にボリューム感を付与するには、十分に満足のいくものではなかった。
特に、髪のボリューム感は、若々しさやはつらつとした印象に与える影響は大きいことから、失われた髪のボリューム感を十分に蘇らせる技術への要望は、非常に大きいものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭60−243010号公報
【特許文献2】特開平02―53712号公報
【特許文献3】特開昭62―36308号公報
【特許文献4】特開平02―53712号公報
【特許文献5】特開平04―308525号公報
【特許文献6】特開平04―244010号公報
【特許文献7】特開2006―213637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、化学的処理で損傷し弱体化した毛髪や加齢に伴う衰えにより細くなった毛髪に、ハリ・コシを与え、特にボリューム感を付与する毛髪化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するにあたり、本発明者らは鋭意検討を行った結果、カチオン性界面活性剤とピロリドンカルボン酸Naを組み合わせて毛髪化粧料とすれば、髪にボリューム感を付与できることを見出した。さらに、ピロリドンカルボン酸Naが所定量存在すれば、髪のボリューム感のみならず、髪にゴワツキ感やパサツキ感を与えることなく、ハリ・コシを付与することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係る第一の形態は、カチオン性界面活性剤と、ピロリドンカルボン酸Naを少なくとも含有し、前記ピロリドンカルボン酸Naが0.5質量%以上であることを特徴とする、毛髪化粧料である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の毛髪化粧料であれば、髪にゴワツキ感やパサツキ感を与えることなく、ハリ・コシを付与することができ、特に十分な髪のボリューム感を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】年齢による髪の分け目角度の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について、詳細に説明する。
毛髪化粧料は、毛髪に使用し毛髪セット効果を付与する任意の化粧料であり、毛髪の帯電防止、ごわつきの抑制、ツヤを出す、櫛どおりや手触りをなめらかにする、シャンプー等による洗浄後に開いたキューティクルを元に戻す、髪に残留してコーティングする等の目的で使用する。
本発明では、毛髪化粧料は、リンスに限定されるものでなく、コンディショナー、トリートメント、パック、マスク、リンスインシャンプー等も含まれる。
本発明の毛髪化粧料は、カチオン性界面活性剤と、0.5質量%以上のピロリドンカルボン酸Naを含有する。
カチオン性界面活性剤としては、例えば次の一般式で表される第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0014】
【化1】

〔式中、R及びRは各々独立して水素原子、炭素数1〜28のアルキル基、ベンジル基又はROR−基を示すが、同時に水素原子又はベンジル基となる場合を除く。Xはアニオンを示す。また、Rは炭素数1〜28のアルキル基、Rは炭素数1〜3の二価の飽和炭化水素基を示す。〕
【0015】
ここでR及びRは、その一方が炭素数16〜22のアルキル基、とりわけ直鎖アルキル基であるもの、またはRが炭素数16〜22のアルキル基、とりわけ直鎖アルキル基であるROR−基であることが好ましく、また他方は炭素数1〜3の低級アルキル基、特にメチル基であることが好ましい。
【0016】
アニオンX-としては、塩化物イオン、臭化物イオン等のハロゲン化物イオン、エチル硫酸イオン、炭酸メチルイオン等の有機アニオン等が挙げられ、ハロゲン化物イオン、特に塩化物イオンが好ましい。
【0017】
カチオン性界面活性剤としては、モノ長鎖アルキル四級アンモニウム塩またはモノ長鎖アルキルオキシアルキレン四級アンモニウム塩が毛髪化粧料に用いられる。具体的には、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化オクタデシロキシプロピルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0018】
本発明の毛髪化粧料としては、カチオン性界面活性剤として塩化オクタデシロキシプロピルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、若しくは塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムのいずれか、またはこれらの組み合わせであることが好ましい。これらのカチオン性界面活性剤であれば、ピロリドンカルボン酸Naと組み合わせることで、髪に十分なボリューム感を付与することができるからである。
【0019】
カチオン性界面活性剤は、毛髪化粧料中に2〜5質量%含有することが好ましい。カチオン性界面活性剤は、ピロリドンカルボン酸Naを含有する毛髪化粧料の系の安定性を保つはたらきがある。以下に詳しく説明するが、髪のボリューム感を付与するにはピロリドンカルボン酸Naが0.5質量%以上必要であるところ、カチオン性界面活性剤が2質量%よりも少ないと、毛髪化粧料中へピロリドンカルボン酸Naを0.5質量%以上含有させることが困難となる。また、5質量%よりも多い場合には、ぬめり感やべたつきなどが生じ、感触の低下になりボリュームアップ効果も弱まる。
【0020】
次に、ピロリドンカルボン酸Naは、天然保湿因子の一つであり、一般的には保湿剤として用いられる物質である。保湿剤として毛髪化粧料等に配合する場合、0.5質量%以下でも十分に保湿効果を付与することが可能であり、0.5質量%以上配合してしまうと、べたつきなどの感触低下が生じたり、乳化できなくなることにより毛髪化粧料としての安定性が損なわれるといった弊害が生じるということが知られている。
本発明の毛髪化粧料では、ピロリドンカルボン酸Naは保湿剤としての効果のみならず、毛髪化粧料の塗布時からすすぎ時にかけてカチオン性界面活性剤との錯体を形成させることをねらいとして配合するのであり、この錯体が髪のボリューム感に大きく影響することとなる。そのためには、毛髪化粧料中にピロリドンカルボン酸Naを0.5質量%以上含有させることが不可欠となる。0.5質量%よりも少ないと、髪のボリューム感を十分に付与することができないからである。また、ピロリドンカルボン酸Naを含有する毛髪化粧料中の安定性に寄与するカチオン性界面活性剤が、毛髪化粧料中に含有可能な量を考慮すれば、ピロリドンカルボン酸Naの含有量の上限は2.5質量%となる。
【0021】
また、ピロリドンカルボン酸Naには、DL表記法に基づくD体とL体が存在する。ピロリドンカルボン酸Naとしては、D体とL体が1:1の比率で共存するDL体あるいはL体を用いることができる。本発明の毛髪化粧料においては、DL体単独あるいはDL体とL体を併用することが可能であり、D体とL体が1:1〜1:19の範囲内の比率であるピロリドンカルボン酸Naを用いれば、髪のボリューム感を十分に付与することができる。
【0022】
また、カチオン性界面活性剤とピロリドンカルボン酸Naの含有比率が2:1〜10:1(質量比)であることが好ましい。この質量比の範囲内であれば、髪のボリューム感を十分に付与することができるからである。
なお、上記質量比が<2:1の場合、カチオン性界面活性剤の乳化力が低下し、乳化することが困難となるだけでなく、毛髪化粧料として系の安定性を確保することも困難となり、分離等の問題が発生する。一方、上記質量比が>10:1の場合、カチオン性界面活性剤が過剰となるために、毛髪化粧料として系の安定性を確保することが困難となるだけでなく、不快なぬめり感・べたつき感が強くなり感触が低下してしまう。
これらの現象を踏まえ、髪のボリューム感の付与と使用感、および系の安定性を考慮すれば、カチオン性界面活性剤とピロリドンカルボン酸Naの含有比率が3:1〜5:1(質量比)であることが、より好ましい。
【0023】
本発明の毛髪化粧料は、架橋型メチルポリシロキサンまたはヒドロキシエチルセルロースの少なくともいずれかを含有することができる。
架橋型メチルポリシロキサンは、毛髪化粧料において、さらさら感や柔らかな感触、滑らかな感触といった使用感を付与するものである。本発明の毛髪化粧料では、架橋型メチルポリシロキサンを0.05質量%〜2.0質量%含有することができる。
また、ヒドロキシエチルセルロースは、粘性調整剤であり、本発明の毛髪化粧料では、0.05質量%〜1.0質量%含有することができる。
【0024】
尚、本発明の毛髪化粧料には、上記成分の他に、化粧料として通常用いられる成分を、発明の効果を損なわない範囲において任意に併用することもできる。
このような成分としては、例えば、カルボキシビニルポリマー等の増粘剤;ポリプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール、ポリエチレングリコール等の溶剤;炭化水素油、エステル油等の油剤;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、タンパク加水分解液等の保湿剤;高重合PEG(ポリエチレングリコール)、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガム等のコンディショニング剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の可溶化剤;パラベン等の防腐剤;サリチル酸、トリクロサン、ピロクトンオラミン等の殺菌剤;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のpH調整剤;エデト酸塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸等の金属イオン封鎖剤;パラメトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル、オキシベンゾン、パラジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシル等の紫外線吸収剤;ジブチルヒドロキシトルエン、酢酸トコフェロール等の酸化防止剤;色素などを挙げることができる。
【0025】
また、本発明の毛髪化粧料は、水溶液、エタノール溶液、エマルション、サスペンション、ゲル、液晶、固形、エアゾール等の所望の形態にすることができ、例えば、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアパック、ヘアクリーム、ヘアムース、ヘアスプレー、リーブオントリートメント等に適用できる。特に、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント等の、洗い流して使用する剤型として好適である。
なお、これらの形態とするために、毛髪化粧料を製造するにあたり、特別な設備や機器等を必要とせず、従来設備を用いて製造することができる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0027】
1.カチオン性界面活性剤とアニオン化合物の検討
カチオン性界面活性剤とアニオン化合物を組み合わせた毛髪化粧料が与える、髪へのボリュームアップ感を評価した。
【0028】
表1に示す配合の毛髪化粧料の作製方法として、実施例1の毛髪化粧料を例に挙げる。まず、容器内で精製水88.6質量部、乳酸0.2質量部、グリセリン2質量部、DL‐ピロリドンカルボン酸Na(味の素株式会社製)1質量部を混合し、その後ヒドロキシエチルセルロース0.2質量部を投入し、室温から80℃〜85℃まで加熱して20分間撹拌することにより、水相を準備した。次に、塩化オクタデシロキシプロピルトリメチルアンモニウム(花王株式会社製)3質量部とステアリルアルコール5質量部を80℃〜85℃条件下で30分間均一に混合することにより、油相を準備した。そして、水相92質量部に油相8質量部を撹拌投入し、80℃〜85℃条件下で30分間撹拌後、室温まで冷却することにより、毛髪化粧料を得た。
実施例2では、DL‐ピロリドンカルボン酸Naに代わってDL体とL体とが1:9の比率(D:L=1:19)で存在するピロリドンカルボン酸(味の素株式会社製)を、実施例3では、塩化オクタデシロキシプロピルトリメチルアンモニウムに代わって塩化ステアリルトリメチルアンモニウム(花王株式会社製)を、実施例4では、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム(日油株式会社製)を混合した。
また、比較例1〜3では、DL‐ピロリドンカルボン酸Naに代わってポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸Na(花王株式会社製)、ラウロイル加水分解シルクNa(株式会社成和化成製)または(スチレン/ビニルピロリドン)コポリマー(ISPジャパン製)を混合した。
なお、本実施例において、他の原材料としては、ステアリルアルコール(花王株式会社製)、架橋型メチルポリシロキサン(東レ・ダウコーニング株式会社製)、ヒドロキシエチルセルロール(ダイセル化学工業株式会社製)を使用した。
【0029】
各毛髪化粧料の髪へのボリュームアップ感の評価は、毛髪化粧料の使用前後において、髪の分け目角度を測定し、その角度変化を比較することにより行った。
具体的には、10名の女性パネラーが同一のシャンプーを使用して毛髪を洗浄後、10gの実施例1〜4、比較例1〜3の各毛髪化粧料を塗布し、流水ですすいでからタオルで髪の水分を拭き取り、最後にドライヤーで乾燥させた。予めシャンプーの前に各パネラーの頭部を撮影し、ドライヤーで乾燥後にも頭部を撮影して、髪の分け目角度の差を算出した。結果を表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
図1は、年齢による髪の分け目角度の変化を模式的に示す図であり、代表的な20代女性の髪の分け目角度は約120度(図1(a))、30代女性は約125度(図1(b))、40代女性は約135度(図1(c))、50代女性は約145度(図1(d))である。これらの分け目角度を目安とした場合、毛髪化粧料の使用により分け目角度が20度以上変化すれば、50代女性が20代あるいは30代女性並みの分け目角度となり、ボリュームアップ感が実感できるといえる。
表1の結果から、塩化オクタデシロキシプロピルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、若しくは塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムのいずれかのカチオン性界面活性剤と、ピロリドンカルボン酸Naとを組み合わせた毛髪化粧料は、髪の分け目角度差が20度以上となり、髪のボリュームアップ感を付与する優れた結果を示した(実施例1〜4)。一方、ピロリドンカルボン酸Naに代わってポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸Na、ラウロイル加水分解シルクNaまたは(スチレン/ビニルピロリドン)コポリマーを配合した毛髪化粧料は、ピロリドンカルボン酸Naを配合したものと比べて、ボリュームアップ感の付与に劣る結果となった。
これらの結果から、髪のボリュームアップ感の付与に最も優れていた塩化オクタデシロキシプロピルトリメチルアンモニウムとDL‐ピロリドンカルボン酸Naの組み合わせを基本配合とし、次に、ピロリドンカルボン酸Naの含有量の最適化を行った。
【0032】
2.ピロリドンカルボン酸Naの含有量の検討
「1.カチオン性界面活性剤とアニオン化合物の検討」と同様に、表2に示す毛髪化粧料を作製し、髪へのボリュームアップ感を評価することにより、ピロリドンカルボン酸Naの好適な含有量の検討を行った。結果を表2に示す。
【0033】
【表2】

【0034】
表2の結果から、髪へのボリュームアップ感の付与にとって、DL‐ピロリドンカルボン酸Naは毛髪化粧料中に0.5質量%以上含有することを要することがわかった。
表2の結果を踏まえ、次に、カチオン性界面活性剤である塩化オクタデシロキシプロピルトリメチルアンモニウムと、DL‐ピロリドンカルボン酸Naの含有比率の検討を行った。
【0035】
3.カチオン性界面活性剤とピロリドンカルボン酸Naの含有比率の検討
「1.カチオン性界面活性剤とアニオン化合物の検討」と同様に、表3に示す毛髪化粧料を作製し、髪へのボリュームアップ感を評価することにより、カチオン性界面活性剤とピロリドンカルボン酸Naの好適な含有比率の検討を行った。結果を表3に示す。
【0036】
【表3】

【0037】
表3の結果から、髪へのボリュームアップ感の付与にとって、カチオン性界面活性剤である塩化オクタデシロキシプロピルトリメチルアンモニウムと、DL‐ピロリドンカルボン酸Naの含有比率は2:1〜10:1の範囲であることを要することがわかった。
表1〜表3により、カチオン性界面活性剤とピロリドンカルボン酸Naが与える髪のボリュームアップ感へ与える影響を評価した。次に、本発明の毛髪化粧料の実用性評価として、髪のハリ・コシやボリューム感等の評価を行った。
【0038】
4.髪のハリ・コシ等の実用性評価
「1.カチオン性界面活性剤とアニオン化合物の検討」と同様に、表4に示す毛髪化粧料を作製した。
10名の女性パネラーの毛髪束(健常な日本人女性の毛髪20g、15cm)について、同一のシャンプーを使用して毛髪束を洗浄後、2gの表4に示す各毛髪化粧料を塗布し、40℃、4L/分の流水ですすいでからタオルで髪の水分を拭き取り、最後にドライヤーで乾燥させ、乾燥後の毛髪のハリ・コシ、ボリューム感、ゴワツキ感の評価を行った。更にこの髪を25℃低湿度下(45%RH)の恒温槽に30分放置し、「パサツキ感の評価」を行った。
【0039】
評価基準としては、毛髪のハリ・コシ、およびボリューム感の各評価項目に対して、
ある:2点、ややある:1点、普通:0点、ややない:−1点、ない:−2点
の評価点を付けた。
また、ゴワツキ感については、
ゴワツキ感がない:2点、ゴワツキ感がややない:1点、ややゴワツク:0点、
ゴワツク:−1点
の評価点を付けた。
パサツキ感については、
髪がパサつかない:2点、髪がややパサつく:1点、髪がパサつく:0点、
髪が強くパサつく:−1点
の評価点を付けた。
【0040】
上記評価基準を基に、パネラー10名の平均点を求め、次の基準でA〜D評価を行った。
A:平均点1.5以上
B:平均点1.0以上1.5未満
C:平均点0.0以上1.0未満
D:平均点0.0未満
結果を表4に示す。
【0041】
【表4】

【0042】
表4の結果から、本発明の毛髪化粧料は、使用することにより髪の分け目角度を変化させるといった髪のボリュームアップ感を付与するのみならず、毛髪のハリ・コシ、ボリューム感、ゴワツキ感および髪のパサつき感といった使用感においても、優れた結果を示した。一方、表4に示す比較例の毛髪化粧料は、髪のハリ・コシといった一部の使用感については優れた効果を示すことが認められるものの(比較例11)、上記毛髪のハリ・コシ、ボリューム感、ゴワツキ感および髪のパサつき感といった4項目の全ての評価において優れた結果を示すものではなかった。
【0043】
5.ヘアトリートメントおよびヘアコンディショナーの作製
「1.カチオン性界面活性剤とアニオン化合物の検討」と同様に、表5に示すヘアトリートメント(pH3.5)および表6に示すヘアコンディショナー(pH4.0)を作製し、使用感等を評価した。
【0044】
【表5】

【0045】
【表6】

【0046】
作製したヘアトリートメント(実施例18)およびヘアコンディショナー(実施例19)について、上記同様に髪へのボリュームアップ感の評価および髪のハリ・コシ等の実用性評価を行ったところ、上記実施例1〜17と同様に、いずれも毛髪に良好な感触を与えると共に、ボリュームアップ効果に優れるものだった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の毛髪化粧料であれば、髪にゴワツキ感やパサツキ感を与えることなく、ハリ・コシを付与することができ、特に十分な髪のボリューム感を付与することができることから、化粧品業界等にとって産業上有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン性界面活性剤と、ピロリドンカルボン酸Naを少なくとも含有し、前記ピロリドンカルボン酸Naが0.5質量%以上であることを特徴とする、毛髪化粧料。
【請求項2】
前記カチオン性界面活性剤と前記ピロリドンカルボン酸Naの含有比率が2:1〜10:1(質量比)である請求項1記載の毛髪化粧料。
【請求項3】
前記カチオン性界面活性剤が、塩化オクタデシロキシプロピルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、若しくは塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムのいずれか、またはこれらの組み合わせである請求項1または請求項2記載の毛髪化粧料。
【請求項4】
架橋型メチルポリシロキサンまたはヒドロキシエチルセルロースの少なくともいずれかを含有する請求項1〜3のいずれかに記載の毛髪化粧料。

【図1】
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【公開番号】特開2013−43870(P2013−43870A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183666(P2011−183666)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(599098518)株式会社ディーエイチシー (31)
【Fターム(参考)】