説明

独泡ウレタンシート及びその製造方法

【課題】本発明は、従来と比べて低密度、シーリング材としての防水性を維持しつつ、高い伸びと強度を合わせもつ独泡ウレタンシートを得ることを課題とする。
【解決手段】液状ウレタン原料に熱膨張マイクロカプセルを配合し発泡・硬化してなる,シーリング材として利用される独泡ウレタンシート3であり、前記液状ウレタン原料がポリテトラメチレンエーテル系ポリオールとポリイソシアネートからなり、接触角が90度以上であることを特徴とする独泡ウレタンシート3。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独泡ウレタンシート及びその製造方法に関する。具体的には、本発明は、例えば自動車のテールランプのシール部のような自動車分野、あるいは建築分野や家電分野等でシーリング材として利用される独泡ウレタンシートに係わるものである。
【背景技術】
【0002】
周知の如く、軟質ウレタンフォームは連続気泡であることが一般的である。また、独立気泡のウレタンフォームを得ようとしても、収縮し易く、収縮しないようにするにはウレタンの剛性を上げていき、収縮力に耐える方法しかない。しかし、この方法では硬質のウレタンフォームは得られるが、軟質のウレタンフォームは原理的に得られない。
【0003】
従来、ウレタンフォームに関する技術としては、例えば特許文献1〜3が知られている。
特許文献1には、特定のポリオール化合物と多官能イソシアネート化合物、整泡剤を添加して非反応性気体の存在下で攪拌し、メレンゲ状態の気泡分散液を得た後硬化させる技術が開示されている。特許文献1は、衝撃吸収性とクッション性に優れ、底着き感の無い軟質ポリウレタンフォームを提供することを目的とする。しかし、この技術では、機械的攪拌により気泡を混入させる方法であるため、密度は実施例1に記載のように0.85g/cmと高く、低密度にすることができない。
【0004】
特許文献2には、特定のポリプロピレングリコールに特定の溶解性を有するガスを溶解させて得られるポリウレタンフォームの製造方法について開示されている。しかし、特許文献2の場合、ポリウレタンフォームの平均密度が0.6〜1.0g/cmと低密度にならない。
【0005】
特許文献3には、液状ポリウレタンプレポリマーと水とを含むポリウレタン組成物において、熱膨張性マイクロカプセルを配合したことを特徴とするポリウレタンフォーム組成物について開示されている。特許文献3は、低硬度で耐摩耗性に優れたウレタンフォームを得ることを目的とし、用途として、紙葉搬送ロールが挙げられている。
【0006】
ところで、大量の熱膨張性マイクロカプセルを液状ウレタン原料に配合し低密度の発泡体を得ると、熱膨張性マイクロカプセルが材料中で一種の充填剤として作用するため、得られる発泡体は伸び及び強度が大幅に低下する。このような伸び・強度の低い材質では、シーリング材として施工するときに裂けたり、接着時に切れたりして実用上問題がある。
【0007】
なお、ウレタン発泡シーリング材は連続気泡であるが、疎水性が高い場合は止水性を発現する。しかし、連続気泡のため、水蒸気を透過してシールすべき構造物内で結露が生じる場合があると考えられている。例えば、自動車のテールランプのシール部に連泡ウレタン発泡シーリング材を施工すると、透湿性のため内部に結露が発生してガラスを曇らす可能性があるとの報告があり、このような用途の発泡シーリング材としては独立気泡タイプが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−264048号公報
【特許文献2】特開2006−206793号公報
【特許文献3】特開平6−199978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上述した課題を解決するためなされたもので、シーリング材として実用的に満足する高い伸び、強度及び止水性をもつとともに、透湿性を大幅に低減できる独泡ウレタンシート及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る独泡ウレタンシートは、液状ウレタン原料に熱膨張マイクロカプセルを配合し発泡・硬化してなる,シーリング材として利用される独泡ウレタンシートであり、前記液状ウレタン原料がポリテトラメチレンエーテル系ポリオールとポリイソシアネートとを含み、接触角が90度以上であることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る独泡ウレタンシートの製造方法は、ポリテトラメチレンエーテル系ポリオールとポリイソシアネートとを含む液状ウレタン原料に、熱膨張マイクロカプセルを配合した後、このウレタン原料を離型性基材の片側にシート状に塗布する工程と、シート状の液状ウレタン原料を加熱により発泡させて硬化し、ウレタンシートを形成する工程を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、シーリング材として実用的に満足する高い伸び、強度及び止水性をもつとともに、透湿性を大幅に低減できる独泡ウレタンシート及びその製造方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る独泡ウレタンシートの製造方法を工程順に示す断面図を示す。
【図2】本発明に係る片面にスキン層を有する独泡ウレタンシートの断面図を示す。
【図3】本発明において止水性を求めるための止水測定治具の説明図を示す。
【図4】本発明において止水性を求めるために用いたサンプルの斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明において、独泡ウレタンシートは本質的に独立気泡と連続気泡の混在したものであるが、その独泡率が少なくとも5%以上であれば、独泡ウレタンシートの物性値である止水性や透湿性が向上し、効果がある。従って、本発明では、独泡率5%以上のウレタンシートを独泡ウレタンシートと定義する。また、液状ウレタン原料に配合する熱膨張マイクロカプセルの添加量は、使用するポリオールに対し5部〜30部が好ましい。ここで、添加量が5部未満では製品の密度の低下効果が少なく、独泡率の向上に対し寄与も少ない。また、添加量が30部を超えると、製品の強度の低下や硬さの上昇があると同時に、経済的にも好ましくない。更に、ウレタンシートの厚みは好ましくは0.1mm〜30mmである。ここで、厚みを0.1mm未満にするには技術的な困難を伴うことから、0.1mmを下限値としている。また、マイクロカプセルは熱によりシート状表面より発泡し、その発泡層ができると、該発泡層が断熱層になるため、ある厚み以上になると効率的に発泡し得ない。従って、30mmを上限値としている。
【0015】
本発明において、液状ウレタン原料はポリテトラメチレンエーテル系ポリオール(PTMG系ポリオール)、ポリイソシアネート又はイソシアネート末端プレポリマー、発泡剤、触媒、架橋剤などからなり、これらを混合することでウレタン発泡体が製造できる。ここで、PTMG系ポリオールを用いることにより、伸び・強度が高まるとともに、高い止水性及び低透湿性も達成される。
【0016】
使用できるポリオールとしては、テトラハイドロフラン(THF)の単独重合体やTHFとネオペンチルグリコールなど側鎖にアルキル基を有するグリコールとの共重合体などのPTMG系ポリオールである。特にTHFの単独重合体で分子量が700〜4000のものが好ましく、更には1000〜2000が伸び・強度が高く最も好ましい。PTMG系ポリオールは融点以上において低粘度であるため、膨張マイクロカプセルを大量に混合する場合に好適である。膨張マイクロカプセルを用いて発泡したウレタンフォームは、その液状ウレタン原料に石油樹脂、粘着付与剤、アスファルト、タールなどの炭化水素系防水剤を混合すると、更に疎水性を高めることが出来る。また、上記ウレタンフォームは、水酸基などの活性水素含有シリコーン整泡剤を用いた場合に、ポリプロピレングリコールと同様に整泡効果が出易く、発泡体を製造し易いメリットがある。
【0017】
ポリイソシアネートとしては、例えばMDI系ポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネートなどの芳香族系ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添XDIなどのジイソシアネートが挙げられる。更に、これらのイソシアネートとポリオールから得られる末端イソシアネートプレポリマーも用いられる。
【0018】
ポリイソシアネートとポリオールとの混合比は、NCO/OH(インデックス)が0.8〜1.4の範囲となるようにするのが望ましい。インデックスが0.8未満では、得られるポリウレタンフォームの止水性や永久歪みなどの物性が低下し、1.4を越えると架橋反応が進み過ぎて成形性が低下する。
【0019】
また、本発明においては、従来の製造方法と同様に、触媒、架橋剤、整泡剤、鎖伸長剤、減粘剤などの添加物を適宜に配合することができる。
触媒としては、公知のアミン系触媒や有機金属系触媒を用いることができ、具体的にはビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、トリエチレンジアミン、N−メチル−N’−(ジメチルアミノ)エチルピペラジン、N−メチルモノフォリン、N−エチルモノフォリン、トリエチルアミン、ラウリン酸錫、オクタン酸錫などが例示される。この触媒の添加量は、ポリオール成分100重量部に対して一般に0.01〜5重量部である。この触媒の添加量は、ウレタンフォーム作製する場合の一般的な配合部数である。
【0020】
架橋剤としては、比較的低分子量のものが用いられ、例えばジオールやトリオール,多
価アミン、又はこれらにエチレンオキシド、プロピレンオキシドを付加したもの、トリエ
タノールアミン、ジエタノールアミンなどを用いることができる。架橋剤の添加量は、ポ
リオール成分100重量部に対して一般に0〜20重量部である。この架橋剤の添加量は、ウレタンフォーム作製する場合の一般的な配合部数である。整泡剤としては、一般に用いられているシリコーン系整泡剤を適宜用いることができる。なお、ポリウレタンフォームに要求される性能に応じて、難燃剤、充填材、帯電防止剤、着色剤、安定剤などを必要に応じて本発明の目的を逸脱しない範囲で添加することができる。
【0021】
本発明において、熱膨張性マイクロカプセルは、熱可塑性樹脂を殻に低沸点炭化水素を保持させたもので、熱可塑性樹脂が熱で軟化することで独泡性のバルーンが得られる。本発明の独泡ウレタンフォームではこの原理を利用している。前記樹脂としては、例えばアクリロニトリル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニリデンなどの共重合体が挙げられる。前記低沸点炭化水素としては、例えばプロパン、ブテン、ノルマルブタン、イソブタン、イソペンタン、ノルマルペンタン、ヘキサン、メチレンクロライド、フロン類などが挙げられている。熱膨張性マイクロカプセルとしては、上記以外に、発泡ビーズとして知られているスチレン樹脂に炭酸ガスを含浸したスチレンビーズや、ポリプロピレンビーズ、ポリエチレンビーズなども好適に使用することができる。
【0022】
本発明において、接触角は90度以上である必要がある。この理由は、接触角が90度未満の場合、防水パッキンとして重要な撥水性能が低くなり、高い防水性を発現しないからである。なお、接触角の測定の仕方は後述するとおりである。
【0023】
本発明において、離型性基材上に液状ウレタン原料をシート状に塗布する方法は、離型紙やポリエステルフィルムの表面にシリコーン樹脂をコーティングしたものや、ポリプロピレンやポリメチルペンテンのようにそれ自体が離型性を持った樹脂のフィルムの上に塗布するものである。また、液状ウレタン原料は離型性基材の片面に形成してもよいし、あるいは液状ウレタン原料を上下面から挟むように離型性基材を配置してもよい。液状ウレタン原料の片面にのみ離型性基材を配置する場合、反対面にはPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムが接着されているケースが多い。また、液状ウレタン原料の両面に離型性基材を配置する場合、一方の面には原料側から順にPETフィルム、接着剤を順次介して離型性基材が配置するケースが多い。この場合、PETフィルム、接着剤及び離型性基材は粘着テープを形成している。
液状ウレタン原料を塗布する方法としては、例えばロールコーターやナイフコーター、ダイスコーター、スプレーコーターが好適な手段として挙げられる。
【0024】
本発明において、独泡ウレタンシートは例えば図1(A)〜(C)に示すように製造する。
まず、ポリオール、ポリイソシアネート、触媒、熱膨張性マイクロカプセル及び他の添加剤を混合し、液状ウレタン原料を準備する。次に、図1(A)に示すように、離型性基材としての第1のフィルム1a上に液状ウレタン原料2を均一に塗布する。つづいて、液状ウレタン原料2の上に第2のフィルム1bを載せる(図1(B)参照)。更に、第1・第2のフィルム1a,1bで挟まれた状態の液状ウレタン原料を、オーブンに入れ、60℃〜130℃に加熱する。これにより、発泡と樹脂化が進行し、独泡ウレタンシート3が形成される(図1(C)参照)。なお、ひきつづき、第1・第2のフィルム1a,1bに挟まれた状態の独泡ウレタンシート3を取り出した後、第1・第2のフィルム1a,1bを剥離し、上下面にスキン層4が形成された製品(防水シーリング材)を得ることができる。
【0025】
ところで、図1では、第1・第2のフィルム1a,1bを剥離した場合について述べたが、これに限らず、図2に示すように、第2のフィルム1bのみを剥し第1のフィルム1aを残してもよい。この場合、防水シーリング材は、片面にスキン層4を有する独泡ウレタンシート3と第1のフィルム1aの一体品となる。また、本発明は、図示しないが、両面に第1・第2のフィルムを有する独泡ウレタンシートにも及ぶ。
【0026】
本発明において、液状ウレタン原料中に補助発泡剤を更に含有させることが好ましい。これにより、熱膨張性マイクロカプセルのみを用いた場合と比較して、更に平滑な形状の整った独泡ウレタンシートが得られる。この理由は、補助発泡剤が熱膨張マイクロカプセルより平行して2次元的厚み方向に発泡し、ついでマイクロカプセルが補助発泡剤による気泡の中で膨張し、主として厚み方向のみ膨張するためと推測される。
【0027】
本発明において、補助発泡剤としては、通常のウレタンフォームを製造する時に用いる発泡剤で、例えば水や低沸点炭化水素、フッ素系化合物、塩素系化合物等揮発性の有機物が挙げられる。
【0028】
本発明において、熱膨張性マイクロカプセルを含有したウレタン原料は離型性基材の上に塗布された後、加熱装置に導入され60℃〜130℃に加熱され、ウレタンの硬化と同時にマイクロカプセルの膨張が進行する。補助発泡剤を用いる場合は、加熱と同時に補助発泡剤による発泡が進行し、マイクロカプセルの膨張がやや遅れて進行するものと推定される。
【0029】
以下に実施例、比較例を示すが、本発明は本実施例に限定されるものではない。また、文中、「部」は質量基準であるものとする。
(実施例1)
まず、PTMG1000(三菱化学社製の商品名、分子量1020で水酸基価110.9のポリテトラメチレンエーテルグリコール)100部、FTR1600(三井化学社製の商品名で石油樹脂)15部、アクトコールIR94(三井化学社製の商品名で水酸基価920の架橋剤)2部、水1.1部、NP−405(信越化学社製の商品名でシリコーン整泡剤)0.5部、スタノクトSO(錫系触媒)0.15部、ルプラネートMI(BASF INOAC ポリウレタン社製の商品名、液状ピュアMDI)46.45部よりなる液体ウレタン原料に、エクスパンセルDU40(日本フィライト社製、膨張マイクロカプセル)10部を配合して、液温35℃にて攪拌した。次に、この液状原料をポリエステル系離型フィルム上に1.8mmの隙間を設けたナイフコーターを用いコーティングした。つづいて、加熱オーブン中で70℃,3.5分加熱し、更に130℃で6.5分加熱した後、シート状ウレタン製品を離型フィルムから剥離した。得られた製品の接触角は95度で、密度0.105g/cm、独泡率15%の厚み約10mmの極めて平滑な表面を持った製品であった。また、この製品の引張強さは353kPa、伸び150%で、透湿性は2.4gで止水性は13cmであった。
【0030】
(実施例2)
まず、PTMG2000(三菱化学社製の商品名、分子量2010で水酸基価55.1のポリテトラメチレンエーテルグリコール)100部、FTR1600(三井化学社製の商品名で石油樹脂)15部、アクトコールIR94(三井化学社製の商品名で水酸基価920の架橋剤)2部、水1.0部、NP−405(信越化学社製の商品名でシリコーン整泡剤)0.5部、スタノクトSO(錫系触媒)0.25部、ルプラネートMI(BASF INOAC ポリウレタン社製の商品名、液状ピュアMDI)31.85部よりなる液体ウレタン原料に、エクスパンセルDU40(日本フィライト社製、膨張マイクロカプセル)7を配合して、液温35℃にて攪拌した。次に、この液状原料をポリエステル系離型フィルム上に1.8mmの隙間を設けたナイフコーターを用いコーティングした。つづいて、加熱オーブン中で70℃,3.5分加熱し、更に130℃で6.5分加熱した後、シート状ウレタン製品を離型フィルムから剥離した。得られた製品の接触角は97度で、密度0.101g/cm、独泡率15%の厚み約10mmの極めて平滑な表面を持った製品であった。また、この製品の引張強さは260kPa、伸び170%で、透湿性は2.1gで止水性は15cmであった。
【0031】
(実施例3)
本実施例3では、FTR1600を入れないこと以外は実施例2と同様にしてシート状ウレタン製品を得た。得られた製品の接触角は92度で、密度0.091g/cm、独泡率12%の厚み約10mmの極めて平滑な表面を持った製品であった。また、この製品の引張強さは210kPa、伸び110%で、透湿性は2.9gで止水性は9cmであった。
【0032】
(比較例1)
まず、エクセノール4600(旭化成社製の商品名、分子量5000で水酸基価34.5のポリプロピレングリコール)100部、FTR1600(三井化学社製の商品名で石油樹脂)15部、水2.0部、NP−405(信越化学社製の商品名でシリコーン整泡剤)1部、スタノクトSO(錫系触媒)0.3部、T65(日本ポリウレタン社製の商品名、トルエンジイソシアナート)25.9部よりなる液体ウレタン原料を液温35℃にて攪拌した。次に、この液状原料をポリエステル系離型フィルム上に1.8mmの隙間を設けたナイフコーターを用いコーティングした。つづいて、加熱オーブン中70℃で3.5分加熱し、更に130℃で6.5分加熱した後、シート状ウレタン製品を離型フィルムから剥離した。得られた製品の接触角は95度で、密度0.094g/cm、独泡率0%の厚み約10mmの極めて平滑な表面を持った製品であった。また、この製品の引張強さは55kPa、伸び60%で、透湿性は4.5gで止水性は7cmであった。
【0033】
(比較例2)
まず、ダイマー酸ポリオール(日立化成ポリオール社製、分子量1000で水酸基価130、ダイマー酸とジエチレングリコールからなるポリエステルポリオール)100部、水1.6部、NP−405(信越化学社製の商品名でシリコーン整泡剤)1部、DABCO−33LV(日本乳化剤社製のアミン触媒)0.2部、スタノクトSO(錫系触媒)0.25部、イソシアナート末端プレポリマー(前述のダイマー酸ポリオール(日立化成ポリオール社製、分子量1000で水酸基価130、ダイマー酸とジエチレングリコールからなるポリエステルポリオール)とT65(日本ポリウレタン社製のトルエンジイソシアナート)よりなる、NCO%=30)60.2部よりなる液状ウレタン原料を液温35℃にて撹拌した。次に、この液状原料をポリエステル系離型フィルム上に1.8mmの隙間を設けたナイフコーターを用いコーティングした。つづいて、加熱オーブン中で70℃,3.5分加熱し、更に130℃で6.5分加熱した後、シート状ウレタン製品を離型フィルムから剥離した。得られた製品の接触角は98度で、密度0.091g/cm、独泡率0%の厚み約10mmの極めて平滑な表面を持った製品であり引張強さは77kPa、伸び40%で、透湿性は3.4gで止水性は7.5cmであった。
【0034】
得られた製品の物性値は下記表1に示すとおりである。表1より、実施例1〜3によれば、比較例1,2と比べて、シーリング材として実用的に満足する高い伸び、引張強さ及び止水性有するとともに、透湿性を大幅に低減できる独泡ウレタンシートが得られることが確認できた。
【表1】

【0035】
なお、上記実施例1〜3及び比較例1,2において、接触角、密度、独泡率、透湿性、伸び、引張強さ及び止水性は、次のようにして測定した。
接触角:接触角は、得られたウレタンフォームをアルミフォイルで挟み、約200℃で加熱しつつ圧力約50kg/cmにてプレスして薄いフィルム状にした後、アルミフォイルを取り除き、フィルム状のウレタンフォームに水滴を滴下して、協和接触角測定器で測定した。
【0036】
「密度」:密度は、100mm×100mmのサイズに打ち抜いたサンプルの厚み,重量を測定し、重量÷体積で求めた。
【0037】
「独泡率」:独泡率は、ASTMD2856−70により、サンプルサイズ25mm×25mm×10mmの試験片を、東京サイエンス社製のベックマン空気比較式比重計にて測定した。
【0038】
「透湿性」:透湿性は、サンプルサイズが外径φ75mm,内径φ35.5mm,厚み10mmの試験片を標準瓶に50%圧縮してセットし、瓶の中にシリカゲルを約45g正確に秤量し、温度85℃,湿度85%の恒温恒湿槽に24時間放置し、重量増加量を透湿性とした。
【0039】
「伸び」:伸びは、JIS K6400−5 ダンベル2号形にサンプルを打ち抜き、万能試験機にてサンプルを速度200mm/minで引張測定を行ない、サンプル破断時の長さを測定し、この長さの引張前サンプルの長さに対する伸長率を伸びとした。
【0040】
「引張強さ」:引張強さは、JIS K6400−5 ダンベル2号形にサンプルを打ち抜き、万能試験機にてサンプルを速度200mm/minで引張測定を行ない、サンプル破断時の応力を測定し、この応力を引張強さとした。
【0041】
「止水性」:止水性は、図3(A),(B)の止水測定治具を用いて行う。ここで、図3(A)は同治具の側面図、図3(B)は図3(A)の上面図を示す。まず、外径R1(φ60),内径R2(φ40)のサイズにサンプル11を打ち抜く(図4参照)。次に、図3に示すように、サンプル11を上下のアクリル板12で挟む。つづいて、元の厚みの50%の枠状のスペーサー13を介して、ボルト14及びナット15でサンプル11を圧縮固定する。この後、サンプル11上のパイプ16に水17を入れ、24h後に漏水の有無を確認し、漏水が認められない最高高さHを止水性とした。
【0042】
上述したように、本発明によれば、ポリテトラメチレンエーテル系ポリオールとポリイソシアネートからなる液状ウレタン原料に熱膨張性マイクロカプセルを配合することにより、シーリング材として実用的に満足する高い伸び・強度をもつ独泡ウレタンシートが得られる。また、得られる独泡ウレタンシーリング材は、高い止水性を持つと共に、透湿性を大幅に低減できる。
【0043】
なお、この発明は、上記実施例そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施例に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施例に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1a…第1のフィルム(離型性基材)、1b…第2のフィルム(離型性基材)、2…液状ウレタン原料、3…独泡ウレタンシート、4…スキン層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状ウレタン原料に熱膨張マイクロカプセルを配合し発泡・硬化してなる,シーリング材として利用される独泡ウレタンシートであり、前記液状ウレタン原料がポリテトラメチレンエーテル系ポリオールとポリイソシアネートとを含み、接触角が90度以上であることを特徴とする独泡ウレタンシート。
【請求項2】
ポリテトラメチレンエーテル系ポリオールとポリイソシアネートとを含む液状ウレタン原料に、熱膨張マイクロカプセルを配合した後、このウレタン原料を離型性基材の片側にシート状に塗布する工程と、シート状の液状ウレタン原料を加熱により発泡させて硬化し、ウレタンシートを形成する工程を具備することを特徴とする独泡ウレタンシートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−157452(P2011−157452A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19344(P2010−19344)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】