説明

電磁放射線供給機器

本発明は、組織処理用の電磁放射線供給機器(10)であって、電磁放射線源(14)と、該電磁放射線源(14)と光学的に結合され、電磁放射線を放射する放射窓(16)と、肌接触領域に設けられた少なくとも一つの凹部(18)と、前記凹部(18)の内部圧力または該内部圧力と相関のある圧力を測定する圧力ゲージ(20)とを有する機器に関する。本発明では、組織処理用の電磁放射線供給機器(10)は、前記凹部(18)の内部に過圧状態を形成する手段(22)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織処理用の電磁放射線供給機器であって、電磁放射線源と、該電磁放射線源と光学的に結合され、電磁放射線を放射する放射窓と、肌接触領域に設けられた少なくとも一つの凹部と、前記凹部の内部圧力または該内部圧力と相関のある圧力を測定する圧力ゲージと、を有する機器に関する。
【背景技術】
【0002】
前述のタイプの機器は、国際公開第WO2005/009266A1号で知られている。この文献に記載されている装置は、凹部に減圧を形成する真空手段を有する。減圧は、機器の放射線供給装置ヘッドが、被処理肌と適正な接触状態になった際にのみ、形成または維持される。放射線供給ヘッドが、被処理肌と適正な接触状態にない場合は、凹部に減圧状態は形成されず、または減圧状態が解消される。これを圧力計を用いて検出することにより、電磁放射線が放射されないようにして、放射線供給ヘッドと被処理肌の不適切な接触により、人または動物の目もしくは肌の部分のような非処理対象の人体部分、あるいは電磁放射線による損傷を受け得る他の対象に、電磁放射線が到達することを、確実に回避することができる。
【0003】
国際公開第WO2005/009266A1号で知られる機器の問題は、減圧により肌が凹部に吸い込まれ、肌の上部での機器の動きが妨害されることである。
【特許文献1】国際公開第WO2005/009266号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、最初に述べたようなタイプの別の機器であって、肌の上部での動きが容易化された機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、独立請求項に記載の特徴によって解決される。本発明の別の構成および好適実施例は、従属請求項に示されている。
【0006】
本発明では、前述のタイプの肌の処理用の電磁放射線供給機器であって、凹部内部に過圧状態を形成する手段を有する機器が提供される。過圧を形成する手段は、凹部内に圧縮空気を供給する電気空気ポンプによって形成されることが好ましい。ただし、ある種類の肌の処理のために有意であるとみなされる場合、空気以外の他の気体を使用しても良い。凹部内が過圧状態になることにより、僅かのリークが生じ、すなわち、圧縮空気の一部が凹部から押し出される。従って、空気(または他の気体の)クッションが形成され、この部分に、肌接触領域が形成される。これにより、被処理肌の上部で、機器を容易に動かすことが可能となる。圧力ゲージは、表示器、スイッチまたは他の制御手段と組み合わされた圧力計であっても良い。
【0007】
さらに、本発明による機器の好適実施例は、前記圧力ゲージおよび前記電磁放射線源に、制御手段が接続され、前記圧力ゲージで測定された圧力が所定の閾値よりも低い場合、前記制御手段によって、前記電磁放射線源および/または前記放射窓から、電磁放射線が放射されることが回避されることを特徴とする。これにより、不適切に使用される可能性がより一層抑制される。制御手段は、例えば、電子スイッチまたはシャッタとして提供されても良い。適切な閾値を設定した場合、圧力が所定の値よりも低くなった際に、機器の作動ができなくなる。肌接触領域と被処理肌の間に、適当な接触が存在しないからである。その結果、例えば小さな子供のような不相応な人による操作の場合でも、被害または危険が生じる可能性が抑制される。本願の明細書において、圧力を「測定する」とは、絶対値を定めること、または、例えば所定の閾値に対する相対値を定めること、のいずれかを意味することに留意する必要がある。その場合、真の圧力値を求めることは、必要ではなく、圧力は、閾値に対して上か下かで定められる。閾値、すなわち、これを下回った際に機器が停止される必要のある圧力値、または下回った際に制御手段によって自動的に停止される圧力値は、被処理体部分または表面の特性により適正に選定されても良い。
【0008】
閾値は、周囲圧力に対して1から500mbar高いことが有意である。被処理体部分または表面が、平滑で、柔軟で、圧縮可能な場合、圧力差の下限は、例えば周囲圧力より10または20mbar高く選定されても良い。被処理表面が、粗く非圧縮性である場合、肌接触領域の位置の正確なチェックを可能にするため、閾値は、周囲圧力よりも、例えば200mbar高くする必要がある。前述のように、供給ヘッドが適正な位置にある場合であっても、圧縮空気の一部を凹部からリークさせることが有意である。従って、過圧手段のパワーは、空気がリークしても十分な圧力差を維持できるように、十分に高くする必要がある。当然のことながら、閾値は、周囲圧力に依存し、これは、例えば低圧の領域、または高度の高い領域では、これに応じて閾値は、高圧の領域または海抜の高い領域の閾値に比べて低くされることを意味する。閾値は、周囲圧力に依存することが好ましく、これは、周囲圧力との圧力差で表現されても良い。本発明の好適実施例では、周囲圧力との圧力差として、1から500mbarの間の閾値を定めることが可能である。
【0009】
凹部内の測定圧力が、閾値を下回っている時間の間、制御手段により、電磁放射線源から所定の最大エネルギー量を超える電磁放射線が放射されないようにされることが好ましい。処理の間、ある最大エネルギー量以下の電磁放射線のみが放射されるようにすることにより、不快感(不快感を高める)または損傷の可能性のある、肌の過照射が回避される。また、肌のある部分が放射線を受け、他の部分は受けないなどの、不確実性がなくなる。被処理体部分また表面に供給される電磁放射線は、前記体部分または表面に影響を及ぼすため、供給される放射線の全量を制限することが重要な場合がある。好適実施例では、制御手段により、機器の再作動を回避することが可能であり、これにより、供給ヘッドを持ち上げ、過圧状態を解消しなくても、所定の最大エネルギー量を超える、多くの放射線エネルギーを供給することを確実に防ぐことが可能となる。
【0010】
少なくともある適用領域において、制御手段は、電磁放射線の放射を防ぐことの可能なシャッタを制御することが有意である。そのようなシャッタは、いかなる所望の形態であっても良く、例えば、電気光学式シャッタ、機械式シャッタ、切り替え可能なミラー等であっても良い。そのようなシャッタの設置により、機器が放射線を放射しないときに、電磁放射線源のスイッチをオフにする必要がなくなるという利点が得られる。これは、多くの電磁放射線源において、放射線源の寿命に有益である。しかしながら、電磁放射線源のスイッチのオンオフを頻繁に切り替えても、電磁放射線源の寿命が実質的に短くならない場合、例えばLEDおよびレーザの場合、制御手段は、電磁放射線源の電源を単にオンオフすることも可能である。
【0011】
ある実施例では、凹部に放射窓が存在する。「放射窓」という用語は、例えば放射線供給ヘッドのような、電磁放射線が通過し放射される領域に関する。例えば、放射される電磁放射線に対して透明な、一部の材料の形態であっても良く、例えば光の場合、ガラスであっても良い。しかしながら、放射窓は、さらに、例えば管の出口端のような、いかなる材料にも被覆されていない孔の開口側を意味する場合もある。凹部に放射窓があることの利点は、凹部が正確に設置されている場合、放射窓も同様に、自動的に正確に配置されることである。ほとんどの場合、一つの放射窓が存在する。しかしながら、複数の放射窓が存在する場合もあることに留意する必要がある。
【0012】
別の実施例では、凹部が放射窓を取り囲む。これは、放射窓が凹部内に存在するケースのより一般的な場合である。凹部が放射窓を取り囲んでいる場合、凹部の適当な過圧により、確実に、放射窓の正しい位置決めが可能になる。この場合、凹部は、放射窓の周囲の溝の形態であっても良い。この方法では、凹部と放射窓が異なる形状を有することが可能となる。これにより、例えば均一性のため、放射線が環状パターンで供給される場合、被処理部分を取り囲む表面の異なる部分が、放射線を受けないようにできるという利点が得られる。当然この部分は、異なる形状を有しても良い。また、複数の凹部を提供することも可能である。放射窓の周囲の多くの孔の形態で、多くの微小凹部が存在するようにしても良い。全ての穴が正確に配置されている場合、これは、供給機器を正確に配置するための安全な指標となる。
【0013】
全ての実施例において、凹部は、円周状の端部を有することが有意である。この方法では、円周状端部を検査することにより、正確な位置を目視チェックすることが比較的簡単になる。
【0014】
円周状端部は、柔軟に変形し得ることが有意である。この実施例では、放射窓または凹部の平面と正確に整合しない体部分または表面を適用することが可能となる。非変形の肌接触領域および供給ヘッドのそれぞれを使用し、被処理体部分または表面の変形を利用することも可能ではあるが、柔軟な変形円周状端部では、体部分または表面に印加される圧力があまり変化しないという利点が得られる。放射窓が透明材料部分の形態の場合、この材料を使用して、被処理体部分または表面に圧力を負荷しても良い。この場合、特に肌の場合、前記体部分を通る血流が影響を受け得る。例えば光脱毛の場合、被処理組織での血液の循環が抑制されることが有意である。その後、対象部以外(発色団、毛包)の組織部分により、放射線の吸収が抑制されるためである。また、処理の副作用の可能性が抑制される。柔軟で変形可能な円周状端部は、ゴムのような弾性材料の縁として構成されても良い。他のいかなる柔軟で変形可能な材料または構成も可能である。
【0015】
有意な実施例では、円周状端部は、平坦な表面、凹状の表面または凸状の表面にある。これらの単純な形状では、大部分の被処理体部分または表面を、有効に処理することができる。平坦な表面は、例えば、人工的な対象、または大きくて比較的平坦な体部分の微小領域、例えば脚の処理に使用されても良い。円周状端部が凹状の表面は、凸状の体部分の処理の際に有益であり、例えば、指のような比較的小さな体部分、または他の大きく湾曲した、例えば鼻のような体部分に有益である。円周状端部が凸状の表面は、多少窪んだ表面の処理、例えば脇の下の脱毛に有意である。特定の場合には、円周状端部の他の表面も有意である。
【0016】
本発明による機器の好適実施例では、電磁放射線は、赤外線、可視光線または紫外線を含む。本発明の用途のため、赤外線、可視光線および紫外線は、「光放射線」と称される。光放射線は、体部分の処理に最も良く使用される電磁スペクトルの一部であり、特に、非専門家または他の個人に良く使用される。ただし、原則上は、例えばマイクロ波放射線、X線のような他の種類の電磁放射線を使用することも可能である。本発明による好適な電磁放射線(光放射線)は、筋肉痛の処置用の熱(赤外線)による処理、可視光線による、脱毛、高ビリルビン血症の処理、人工的な日焼け処理、ならびに白斑および乾癬のような各種肌の不調の処理、等の処理を網羅する。日焼けおよび脱毛のようないくつかの処理は、非当業者または非専門家により実施されても良いが、多くの場合、専門家により処置が実施されることが好ましい。ただし、専門家の場合も、本発明による機器の改善された安全性および他の有意な特徴は、明らかである。本願において、「(被処理)体部分」および「被処理表面」という用語は、電磁放射線により処理され得るいかなる人の組織にも関する。特に、これは、肌(人の肌)に関する。しかしながら、通常、いかなる他の処理可能な表面も含まれ、例えば材料研究、材料硬化の分野のものも含まれる。ただし、本発明は、人または動物の処理に関して使用されることが特に有意である。事故等による不慮の損傷の危険性が、有意に軽減されるからである。
【0017】
本発明による機器では、電磁放射線源は、放射線供給ヘッド内に配置されても良い。これは、例えばLEDまたは高圧ガス放電ランプのような光源が、放射線供給ヘッドに組み込まれることを意味する。しかしながら、有意な実施例では、電磁放射線源は、電磁放射線発生手段と、これに光学的に接続された電磁放射線誘導手段とを有する。電磁放射線発生手段および電磁放射線誘導手段を設けることにより、これらの2つの機能を分離することが可能となる。これは、複雑で、大型高重量の電磁放射線発生手段、例えば高出力レーザを、供給ヘッドからある距離だけ離して設置し得ること意味する。電磁放射線発生手段により生じた放射線を最終的に放射する供給ヘッドは、電磁放射線誘導手段と光学的に接続され、後者により、電磁放射線が放射線供給ヘッドの方に誘導され、最終的に放射窓に誘導される。これにより、比較的小型で軽量の供給ヘッドが得られ、これにより機器の使用の簡便性が向上する。
【0018】
有意な実施例では、電磁放射線誘導手段は、ミラー、中空電磁放射線ガイドまたは光ファイバとを有する。適当な誘導手段をどのように選択するかは、当業者には明らかである。例えば、レーザの場合、光ファイバは、一般的な誘導手段である。レーザが電磁放射線発生手段であり、ある被処理領域の走査にレーザビームが使用される場合、ミラーが使用されても良い。これにより、放射線供給ヘッドを動かす操作を行わなくても、レーザービームにより、前記領域を均一に照射することが可能となる。これにより、処理の効率および均一性が大きく改善される。
【0019】
電磁放射線源は、レーザ、フラッシュランプ、LED、ガス放電ランプまたは白熱ランプを有することが有意である。これらの電磁放射線源は、本発明による機器の幅広い用途に有効で有益であることが示されている。これらは、幅広い波長、電力等で提供される。ただし、特定の場合には、X線源等の他の放射線原が使用されても良い。
【0020】
幅よりも長い深さを有する溝により、少なくとも一つの凹部が形成されることが有意である。溝の断面、すなわち幅と深さの間の関係は、極めて重要である。溝の幅が、例えば3mm以下の場合、肌は、該肌を極めて強く装置に押し付けたり、逆に装置を肌に押し付けても、溝の内側に接触できなくなる。肌のドーム効果により、溝の過圧空気供給部が閉止されることがなくなる。通常、溝の断面は異なる形状であっても良く、例えば矩形状、正方形状、半円状、三角形状、または先端が丸まった三角形状であっても良い。
【0021】
これに加えてまたはこれとは別に、凹部は、少なくとも一部が放射窓内に形成されるようにすることもでき、これは、特に、肌と接触するように設計された放射窓の表面に形成されても良い。例えば、出口窓表面上または出口窓表面内に設置された溝を提供しても良い。これにより、過圧空気が表面上を流れ、肌が冷やされるようになる。表面の溝の形状は、例えば、蛇行状に配置されても良く、あるいは、空気は、平行溝内をある側から他の側に流れる。窪んだ窓の場合、空気は、例えば、配置の一つのコーナーから他のコーナーに流れる。
【0022】
本発明の他の構成では、凹部は、機器の処理ヘッド内に形成され、凹部の少なくとも一部は、処理ヘッドの他の部材に対して旋回可能に配置される。例えば、過圧溝システムが放射窓の周囲で旋回可能に配置され、この窓は、例えば、乱視用(非点収差)/円柱レンズまたは凸レンズである。光および過圧システムが統合された、処理ヘッドのハンドピースが肌上で旋回する場合、過圧システムおよびレンズは、常に肌と接する。これらは、平坦な表面に置かれている。少なくともいくつかの場合、旋回可能な過圧システムは、ハンドピースに対して弾性的な負荷を受けることが有意である。
【0023】
本発明による機器の場合、少なくとも一つの凹部に過圧状態を形成する、少なくとも2つの過圧ダクトが設けられることが好ましい。各凹部に、少なくとも2つの過圧ダクトを提供することにより、通常、管の詰まりにより過圧状態が形成されなくなる可能性が最小限に抑制される。
【0024】
本発明の前述のおよび他の態様は、図面に示された以降の実施例を参照した説明から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図面全体を通して、同一のまたは同様の部材を示すため、同一のまたは同様の参照符号が使用されており、これらの部材の少なくともいくつかは、繰り返しを避けるため、一度だけ説明されている。
【0026】
図1には、本発明による機器10の第1の実施例の概略的なブロック図を示すが、図において、機器は、主要装置36と、これに接続された処理ヘッド34とを有する。主要装置36は、電磁放射線源14を有し、この電磁放射線源14は、電磁放射線発生手段30と、電磁放射線誘導手段32とで構成される。電磁放射線発生手段30は、レーザ、フラッシュランプ、LED、ガス放電ランプ、または白熱ランプを有しても良い。ただし、電磁放射線発生手段30が、主要装置36内に配置される場合、レーザにより、放射線が発生されることが好ましい。さらに電磁放射線源14は、放射線誘導手段32を有し、この手段は、図1では光ファイバとして示されている。ただし、この手段は、ミラーまたは中空電磁放射線ガイドおよび/または放射線誘導結晶、特に全内部反射を有する結晶を有しても良い。光ファイバ32は、電磁放射線を、処理ヘッド34内に配置された放射窓16の方に誘導する。さらに主要装置36は、過圧形成手段22を有し、この手段22は、例えば、図に示すような適当なポンプで形成することができる。ポンプ22は、圧力配管44により、凹部18と接続されており、この凹部18には、処理ヘッド34の肌接触領域が提供される。さらに、処理ヘッド34には、凹部18内部の圧力を検出する圧力ゲージ20が設けられている。電磁放射線源14およびポンプ22は、制御手段24により制御され、この制御手段24は、配線46を介して、圧力ゲージ20の出力信号を受信する。図からわかるように、制御手段24は、主要装置36内に配置され、制御手段24は、例えば、マイクロプロセッサ、メモリ手段、および当業者には良く知られた別の回路を有しても良い。
【0027】
例えば、機器10は、脱毛機器である。電磁放射線源14で生じた電磁放射線が放射窓16から放射され、例えば、ユーザの目のような領域に到達することを抑制するため、機器10は、以下のように作動する。処理ヘッド34が被処理肌と適正な接触状態にある場合、放射窓16を完全に取り囲む溝により構成された凹部18に、過圧状態が形成される。この過圧状態は、圧力ゲージ20により検出され、出力信号が制御手段24に供給される。制御手段24により、過圧状態が十分に高いことが検出されると、処理ヘッド34は、被処理肌に対して適正な接触状態にあると解され、制御手段24の指令により、電磁放射線発生手段30は、放射線を発生し、この放射線は、光ファイバ32および放射窓16を介して、被処理肌の方に供給される。処理ヘッド34と被処理肌との不適切な接触のため、凹部18の過圧状態が減退すると、制御手段24は、圧力ゲージ20の出力信号を介して、圧力低下を検出する。ユーザ(または他の人物)が放射線により損傷を受けることを回避するため、制御手段24の指令により、電磁放射線発生手段30による放射線の発生が迅速に停止される。処理ヘッド34と被処理肌の間が適切な接触状態の場合、空気クッションが形成され、作動の間、この空気クッション上で、処理ヘッド34の肌接触領域が滑るように動かされる。また、過圧状態では、一つの開口または複数の開口の目詰まりが防止されるという利点が得られる。埃またはいかなる種類の不純物が存在する場合も、開口からの少量の空気流の支援により、肌の組織からの断片(表皮)、埃等のような不純物が迅速に吹き飛ばされる。
【0028】
図2には、本発明による機器10の第2の実施例の概略的なブロック図を示す。図2に示す部材は、実質的に、図1を参照して示した部材に対応しており、繰り返しを避けるため、対応する記載が参照される。ただし、図2に示す実施例では、機器10は、ハンドピースにより完全に形成され、全ての部材は、ハンドピース内に配置される。図1を参照して示した部材に加えて、図2の実施例は、さらに、シャッタ26を有し、このシャッタは、放射窓16を被覆するように適合しており、これにより、放射線源14で放射線が生じたとしても、放射線が放射されなくなる。肌接触領域と被処理肌の不適切な接触のため、放射窓16を取り囲む凹部18が不十分な過圧状態であることが検出された場合、シャッタ26は、制御手段24により活性化される。
【0029】
図3Aには、本発明よる機器10の第3の実施例の処理ヘッド34の一部の概略的なブロック図を示すが、この図において、放射窓16は、周囲の材料48に対して窪んでいる。図3Bには、肌42の処理中の、図3Aの処理ヘッド34の一部が示されている。放射線が放出される透明放射窓16と、被処理肌42の間には、凹部18を形成する数mmの距離がある。周囲材料48は、反射性であり、または少なくとも不透明であり、あるいは、これは、肌のような光散乱材料で構成される。この目的は、肌から周囲材料48の方に逆向きに散乱する放射線をロスしないようにすることである。図3Bから明らかなように、この配置は、処理中に、肌42に押し付けられる。放射窓16と肌42の間には、凹部18の孔が形成される。先に示した溝の形態の凹部18のように、ポンプ22によって、凹部18に過圧状態が形成される。放射窓16の周りの周囲材料48の端部は、肌42に対して極めて良好な状態で押し付けられ、前述のように、凹部18の圧力は、装置の周囲で利用可能な空気圧力を超える、定められたレベルにまで上昇する。この配置の安全性に関しては、図1に対応する記載が参照される。
【0030】
図4Aには、本発明による機器の第4の実施例の処理ヘッドの底面図を示す。また、図4Bには、図4Aの処理ヘッドの一部の断面図を示す。図から明らかなように、この実施例では、肌接触領域は、矩形形状を有する。放射窓16は、溝の形態の凹部18により取り囲まれている。溝18は、図1を参照して示したように、圧力ゲージ20およびポンプ22と接続されている。図4Bからわかるように、放射窓および周囲材料48は、共通の肌接触面を形成する。周囲材料48は、円周端部28を形成し、この部分は、覆い機能を高めるため、柔軟に変形することができる。
【0031】
図5には、本発明による機器の第5の実施例の処理ヘッドの底面図を示す。この実施例では、肌接触領域は、環状形状を有する。これ以外の構成は、図4Aおよび4Bの実施例と一致する。
【0032】
図6には、本発明による機器の第6の実施例の処理ヘッドの底面図を示す。この実施例では、肌接触領域は、実質的に矩形形状を有する。ただしコーナー部および溝は、丸くなっている。これ以外の構成は、図4Aおよび4Bの実施例と一致する。
【0033】
図7には、本発明による機器の第7の実施例の処理ヘッドの断面図を示す。この実施例では、凹部または溝18は、放射窓とは別個に形成されず、一部が、放射窓16および周囲材料48の傾斜端部により構成されている。そのような配置では、放射窓16と周囲材料48の間に、適正なシール50が提供されるという利点が得られる。
【0034】
図8Aには、本発明による機器の第8の実施例の処理ヘッドの底面図を示し、図8Bには、図8Aの処理ヘッドの一部の断面図を示す。この実施例では、凹部18は、少なくとも一部が、放射窓16の肌接触領域に形成される。図からわかるように、蛇行状の溝18が形成され、この溝には、圧力ゲージ20およびポンプ22が接続されている。これにより、過圧空気は、表面を流れ、処理される肌を冷却する。
【0035】
図9には、想定される凹部18に空気を供給する場合の状態を概略的に示す。図からわかるように、凹部18は、溝の形態で提供され、この溝は、矩形状の断面を有する。凹部18に空気を供給するため、過圧発生手段22の一部と見なし得るダクト52が設けられている。同様のダクトは、溝の他の端部に提供されても良く、これにより、凹部18が圧力ゲージに接続される。
【0036】
図10には、凹部またはその一部を形成する溝の好適形状を概略的に示す。溝の断面、すなわち幅と深さの関係は、極めて重要である。肌接触領域の幅が、溝の深さよりも短い場合、最良の結果が得られる。溝18の幅が、例えば3mm以下の場合、装置を強く押し付けても、あるいは逆に肌を強く押し付けても、肌を溝18の内側面と接触させることはできない。
【0037】
図11には、溝の好ましくない形状において生じる、好ましくない肌のドーム効果を示す。図からわかるように、溝18があまり深くない場合、溝の内側面に肌が接触されるようになり、最悪の場合、圧力ゲージにつながるダクトが密閉され、これにより、安全な動作ができなくなるおそれがある。
【0038】
図12には、溝の有意な形状により、肌のドーム効化が抑制された状態を示す。図からわかるように、この場合も、肌のドームは生じるが、肌は、溝の内側面に接触していない。溝の深さが溝の幅よりも長いためである。
【0039】
図13には、凹部またはその一部を形成する溝の想定される断面の一例を示す。左から右に向かって、以下のような溝18の断面が示されている:矩形状、正方形状、半円状、三角形状、および頂点が丸い三角形状。これら全ての形状が使用可能であるが、やはり溝18の幅は、溝の深さよりも短いことが好ましい。
【0040】
図14Aには、三角形状の断面を有する溝を、溝18に対応した過圧供給ダクト52とともに示す。図14B乃至14Dは、それぞれ、図11Aの線A-A、線B-Bおよび線C-Cに対応する断面図である。図14Aおよび14Bからわかるように、過圧空気を供給するダクト52は、中心に配置されることが好ましい。これは、肌のドーム効果により、ダクト52が塞がれることを回避することができる点で好ましい。
【0041】
図15には、隣接する溝18の想定される配置を概略的に示す。3つの隣接する溝18が示されており、各々は、三角形状の断面を有し、過圧空気を供給する中心ダクト52を有する。溝18は重なり合っており、肌42に対するシール機能は、円周状端部28により提供される。
【0042】
図16には、凸レンズの形態の放射窓16を示す。過圧システム38が、放射窓16および処理ヘッド34のさらに別の部材に対して、旋回可能に配置される。光学系および/もしくは過圧ポンプが統合され得るハンドピースまたは処理ヘッド34が、肌42に対して旋回可能または処理可能な場合、溝18と、凸レンズとを有する過圧システム38は、常時肌42と接触するようになる。過圧システム38が、スプリング40により弾性的に負荷される場合、過圧システム38と肌42の間に最適な接触が得られるため、有意である。
【0043】
図17Aには、乱視用/円柱状レンズの形態の放射窓16を示すが、過圧システム38は、放射窓16および処理ヘッドのさらに別の部材に対して、旋回可能に配置される。図17Bには、図17Aの配置を傾斜させた状態を示す。レンズ構成配置およびなくなったスプリングを除き、図17Aおよび17Bの実施例は、図16の実施例と同様である。
【0044】
図18Aには、窪み状、凹状または凸状の放射窓16の一例を示すが、この窓は、過圧リングシステム38で取り囲まれており、過圧リングシステム38は、放射窓16および処理ヘッド34のさらに別の部材に対して、旋回可能である。また図18Bには、図18Aの配置を傾斜させた状態を示す。図18Aおよび18Bに示す実施例の構成は、図16に示した配置構成と極めて似通っている。ただし、図18Aおよび18Bの実施例では、ハンドピースは、ヒートシンク54を有し、電磁放射線源14により生じた熱を放出することができる。また、示された実施例では、放射窓16の一部に、ARコーティングが設置されることが好ましい。そのような配置では、放射線は、損失されずに放射窓16を通り、過圧システム38と放射窓16の間の角度に依存しない。光ユニットは、放射窓16の中心軸の周囲に対して旋回可能な状態で、取り付けられる。図には示されていないが、過圧システムは、図16に関して示したように、弾性的な負荷を受けても良い。
【0045】
添付の特許請求の範囲に定められた本発明の範囲から逸脱しないで、本願に示されていない等価物および修正を利用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明による機器の第1の実施例の概略的なブロック図であり、図において、機器は、主要装置と、該装置に接続された処理ヘッドとを有する。
【図2】本発明による機器の第2の実施例の概略的なブロック図であり、図において、機器は、全体的にハンドピースで形成される。
【図3A】本発明による機器の第3の実施例の処理ヘッドの一部の概略的なブロック図であり、図において、放射窓は、周囲材料に対して窪んでいる。
【図3B】肌の処理中の、図3Aの処理ヘッドの一部を示した図である。
【図4A】本発明による機器の第4の実施例の処理ヘッドの底面図である。
【図4B】図4Aの処理ヘッドの一部の断面図である。
【図5】本発明による機器の第5の実施例の処理ヘッドの底面図である。
【図6】本発明による機器の第6の実施例の処理ヘッドの底面図である。
【図7】本発明による機器の第7の実施例の処理ヘッドの底面図である。
【図8A】本発明による機器の第8の実施例の処理ヘッドの底面図である。
【図8B】図8Aの処理ヘッドの一部の断面図である。
【図9】想定される凹部に空気を供給する場合を概略的に示した図である。
【図10】凹部またはその一部を形成する溝の好適形状を概略的に示した図である。
【図11】溝の好ましくない形状によって得られる、肌による好ましくないドーム効果を示した図である。
【図12】溝の有意な形状によって得られる、肌によるドーム効果の軽減を示した図である。
【図13】凹部またはその一部を形成する溝の想定される断面の一例を示した図である。
【図14A】三角形状の断面を有する溝を、溝に対応する過圧供給ダクトとともに示した図である。
【図14B】図14AのA-A線に対応する断面図である。
【図14C】図14AのB-B線に対応する断面図である。
【図14D】図14AのC-C線に対応する断面図である。
【図15】隣接する溝の想定される配置を概略的に示した図である。
【図16】凸レンズの形態の放射窓を示した図であり、過圧システムが、放射窓および処理ヘッドのさらに別の部材に対して、旋回可能に配置されている図である。
【図17A】乱視用/円柱状レンズの形態の放射窓を示す図であり、過圧システムが、放射窓および処理ヘッドのさらに別の部材に対して、旋回可能に配置されている図である。
【図17B】傾斜位置での図17Aの配置を示した図である。
【図18A】過圧リングシステムに取り囲まれた窪んだ形状、凹状、または凸状放射窓の一例を示した図であり、過圧リングシステムは、放射窓および処理ヘッドのさらに別の部材に対して、旋回可能である。
【図18B】傾斜位置での図18Aの配置を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織処理用の電磁放射線供給機器であって、
電磁放射線源と、
該電磁放射線源と光学的に結合され、電磁放射線を放射する放射窓と、
肌接触領域に設けられた少なくとも一つの凹部と、
前記凹部の内部圧力または該内部圧力と相関のある圧力を測定する圧力ゲージと、
を有し、
前記凹部の内部に過圧状態を形成する手段を有することを特徴とする電磁放射線供給機器。
【請求項2】
前記圧力ゲージおよび前記電磁放射線源に、制御手段が接続され、
前記圧力ゲージで測定された圧力が所定の閾値よりも低い場合、前記制御手段によって、前記電磁放射線源および/または前記放射窓から、電磁放射線が放射されることが回避されることを特徴とする請求項1に記載の機器。
【請求項3】
前記閾値は、周囲圧力に対して、1から500mbar高いことを特徴とする請求項2に記載の機器。
【請求項4】
前記測定された前記凹部の内部の圧力が閾値よりも低い時間の間、前記制御手段によって、前記電磁放射線源および/または前記放射窓から、所定の最大エネルギー量を超える電磁放射線が放射されることが回避されることを特徴とする請求項2に記載の機器。
【請求項5】
前記制御手段は、前記電磁放射線の放射を防止することの可能なシャッタを制御することを特徴とする請求項2に記載の機器。
【請求項6】
前記放射窓は、前記凹部内に存在することを特徴とする請求項1に記載の機器。
【請求項7】
前記凹部は、前記放射窓を取り囲んでいることを特徴とする請求項1に記載の機器。
【請求項8】
前記凹部は、円周状の端部を有することを特徴とする請求項1に記載の機器。
【請求項9】
前記円周状の端部は、柔軟性があり変形可能であることを特徴とする請求項8に記載の機器。
【請求項10】
前記円周状の端部は、平坦な表面、凹状の表面または凸状の表面上にあることを特徴とする請求項8に記載の機器。
【請求項11】
前記少なくとも一つの凹部は、溝により形成され、該溝は、幅よりも長い深さを有することを特徴とする請求項1に記載の機器。
【請求項12】
前記凹部は、少なくとも一部が前記放射窓内に形成されることを特徴とする請求項1に記載の機器。
【請求項13】
前記凹部は、当該機器の処理ヘッド内に形成され、
前記凹部の少なくとも一部は、前記処理ヘッドの他の部品に対して、旋回可能に配置されることを特徴とする請求項1に記載の機器。
【請求項14】
前記少なくとも一つの凹部に過圧状態を形成する、少なくとも2つの過圧ダクトが提供されることを特徴とする請求項1に記載の機器。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18A】
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【図18B】
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【公表番号】特表2008−543409(P2008−543409A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516424(P2008−516424)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【国際出願番号】PCT/IB2005/053757
【国際公開番号】WO2006/134426
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】