説明

高放熱基板

【課題】厚さ方向への熱伝導性に優れた高放熱基板を得ること。
【解決手段】炭素繊維強化プラスチックを材料とする平板状のCFRP板1と、プリプレグ2a、2b、4a、4b及びガラスクロスを含むプリプレグ5a、5b、6a、6bを積層してCFRP板1の両面にそれぞれ形成された絶縁層50a、50b及び回路層51a、51bとを備え、回路層51aの表面に実装された電子部品12において生じた熱をCFRP板1によって基板全体に拡散させる高放熱基板100であって、金属材料で形成され、ガラスクロスを含むプリプレグ6a、5a、及びプリプレグ4a、2aを貫通してCFRP板1に達するように埋設され、熱伝導性接着剤11を介してCFRP板1に固定された柱状の中実材10を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量で、放熱性に優れた高放熱基板に関し、特に基板の厚さ方向の熱伝導性に優れた高放熱基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント基板は、電子部品の高密度実装化に伴い、放熱性を高めることが望まれている。放熱性に優れたプリント基板として、金属コア基板が既に実用化されている。金属コア基板は、熱伝導率の高いアルミや銅などの金属をコア材として用いることで発熱部品からの熱を基板全体に分散し、発熱部品の温度上昇を抑える。
【0003】
また、最近では、炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastics:CFRP)がコア材として用いられることもある(例えば、特許文献1参照。)。CFRPは、炭素繊維と樹脂とからなる複合材料であり、熱伝導率が高い炭素繊維を用いれば、アルミを超える放熱性を有し、かつアルミよりも軽量なコア材を形成可能である。このコア材を用いれば、アルミコア基板よりも軽量で放熱性の高いプリント基板(CFRPコア基板)を製造可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−66375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、CFRPコア基板は、プリント基板の厚さ方向に積層されるため、平面に沿った方向の熱伝導は良好であるが、電子部品はプリント基板の表面に実装されるため、プリント基板の表面からCFRPコア材への厚さ方向への熱伝導性を高くしないと電子部品からの発熱がCFRPコア材に伝わりにくく、電子部品の過度の温度上昇を招く可能性があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、厚さ方向への熱伝導性に優れた高放熱基板を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、炭素繊維強化プラスチックを材料とする平板状のコア材と、複数のプリプレグを積層してコア材の両面にそれぞれ形成されたプリプレグ層とを備え、一方のプリプレグ層の表面に実装された電子部品において生じた熱をコア材によって基板全体に拡散させる高放熱基板であって、金属材料で形成され、一方のプリプレグ層を貫通して少なくともコア材に達するように埋設され、熱伝導性接着剤を介してコア材に固定された柱状の伝熱材を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、埋設した柱状の伝熱材を介して厚さ方向に熱を効率的に伝導できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の実施の形態にかかる高放熱基板の構成を示す断面図である。
【図2】図2は、高放熱基板に電子部品を実装した状態を示す図である。
【図3】図3は、シャーシフレームと当接する部分に中実材が埋設された高放熱基板の構成例を示す図である。
【図4】図4は、スリーブ状の中実材が埋設された高放熱基板をねじでシャーシフレームにねじ止めした状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明にかかる高放熱基板の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態.
図1は、本発明の実施の形態にかかる高放熱基板の構成を示す断面図である。高放熱基板100は、CFRP板1をコア材とし、CFRP板1のそれぞれの面に絶縁層50a、50bと、回路層51a、51bとが設けられている。
【0012】
CFRP板1に設けられた貫通穴1aの開口周縁(両端部)及び内壁面は保護膜としての銅膜8によって覆われている。
【0013】
絶縁層50aは、プリプレグ2a、ガラスクロス3a及びプリプレグ4aで形成されている。同様に、絶縁層50bは、プリプレグ2b、ガラスクロス3b及びプリプレグ4bで形成されている。プリプレグ2a、2bは、銅膜8で被覆されたCFRP板1の両表面及び貫通穴1aの内壁を覆っている。ガラスクロス3a、3bは、プリプレグ4a、4bによって、プリプレグ2a、2bとの間に挟持されている。プリプレグ2a、2b、4a、4bは、無機フィラーを含有する熱硬化性樹脂として形成されており、ガラスクロスを含んでいない。これにより、プリプレグ2a、2b、4a、4bをラミネートする際に貫通穴1aをボイドなく埋めることができる。
【0014】
回路層51aは、ガラスクロスを含むプリプレグ5a及びプリプレグ6aで形成されている。同様に、回路層51bは、ガラスクロスを含むプリプレグ5b及びプリプレグ6bで形成されている。ガラスクロスを含むプリプレグ5a、5b、6a、6bは、ガラスクロスに熱硬化性樹脂を含浸させた一般的な構成である。ガラスクロスを含むプリプレグ6a上には配線層7aが、ガラスクロスを含むプリプレグ5a、6aの層間には配線層7cが所定のパターンで設けられている。同様に、ガラスクロスを含むプリプレグ6b上には配線層7bが、ガラスクロスを含むプリプレグ5b、6bの層間には配線層7dが所定のパターンで設けられている。
【0015】
このように、コア材であるCFRP板1の両面には、プリプレグ2a、2b、ガラスクロス3a、3b、プリプレグ4a、4b、ガラスクロスを含むプリプレグ5a、5b、6a、6bが積層されて、プリプレグ層としての絶縁層50a、50b及び回路層51a、51bが形成されている。
【0016】
高放熱基板100には、貫通穴1aの中心を通るように、信号スルーホール9が設けられている。信号スルーホール9は、配線層7a、7b、7c及び7dを接続する。信号スルーホール9の内壁部9aには銅めっきが施されている。信号スルーホール9が通る貫通穴1aの両端部及び内壁面は銅膜8によって覆われて炭素粉の発生が防止されているため、CFRP板1と信号スルーホール9との絶縁信頼性が高くなっている。
【0017】
基板上に実装される電子部品のパッケージの裏面と相対する位置には、柱状の伝熱材としての中実材10が埋設されている。中実材10は、回路層51a、絶縁層50a、CFRP板1、絶縁層50b、回路層51bを貫通して、高放熱基板100の表裏に露出している。中実材10は、回路層51a、絶縁層50a及びCFRP板1を貫通する小径部101と、絶縁層50b及び回路層51bを貫通する大径部102とを備えており、小径部101と大径部102との境界の段差103がCFRP板1の板面に当接している。中実材10は、熱伝導性接着剤11を介してCFRP板1に物理的及び熱的に接続されている。熱伝導性接着剤11を介して中実材10を埋設することにより、中実材10とCFRP板1との微小隙間が熱伝導性接着剤11で埋まるため、熱的な接続の確実性を高めることができる。中実材10は、アルミや銅、又はそれらの合金などの熱伝導性の高い材料で形成されている。なお、ここで例示した材料はあくまでも一例であり、これら以外の材料を用いることも可能である。
【0018】
図2は、高放熱基板100に電子部品12を実装した状態を示す図である。電子部品12のパッケージと中実材10の表面10aとの間は、熱伝導材13が充填される。
【0019】
電子部品12から発せられた熱は熱伝導材13から中実材10の表面10aに伝わり、中実材10の内部を高放熱基板100の厚さ方向に伝導する。中実材10からは、熱伝導性接着剤11を介してCFRP板1に熱が伝わり高放熱基板100の平面方向に熱が拡散する。よって、電子部品12から発せられた熱は、高放熱基板100の全体から放熱される。このようにして、電気部品12の過度な温度上昇が抑制される。
【0020】
上記の例では、小径部101と大径部102とを備え軸断面形状が略凸状の中実材10を示したが、軸断面形状が略矩形状(段差の無い柱状)の中実材10であっても同様の効果が得られる。なお、中実材10の軸断面形状を略凸状とし、段差103をCFRP板1の板面に接触させることにより、中実材10とCFRP板1との接触面積を拡大し、熱拡散性能を向上させることができる。ただし、中実材10に段差103を設けてCFRP板1との接触面積を拡大すると、高放熱基板100の大径部102が露出した面では中実材10の占有する面積が他方の面(小径部101が露出した面)よりも大きくなり、配線可能な領域が減少してしまう。したがって、熱拡散性能と配線面積とのどちらに重点を置くかに応じて、中実材10の形状を選定すると良い。
【0021】
また、上記の例では中実材10を電子部品12のパッケージの直下に埋設したが、高放熱基板100とこれを収容する筐体(シャーシフレーム)とが当接する部分に中実材10を埋設すれば、CFRP板1に拡散した熱をシャーシフレームに効率的に伝えることができる。図3は、シャーシフレーム14と当接する部分に中実材10が埋設された高放熱基板100の構成例を示す図である。図3に示す構成においては、シャーシフレーム14がヒートシンクとしての役割を果たすため、CFRP板1に拡散した熱を効率良く放熱できる。
【0022】
また、中実材10を軸方向に貫通する穴の開いたスリーブ状(筒状)にすることで、シャーシフレームのねじ止め位置(ねじボスなど)に高放熱基板100をねじ止めすることも可能である。図4は、スリーブ状の中実材10が埋設された高放熱基板100をねじ15でシャーシフレーム14にねじ止めした状態を示す図である。
【0023】
CFRPはアルミや銅、又はそれらの合金と比較して比重が小さいため、CFRPをコア材の材料として用いることで、高放熱基板の軽量化を実現できる。さらに、CFRPは、アルミや銅、又はそれらの合金よりも熱伝導率が高いため、コア材として用いる量がアルミ等と比較して少なくても、十分な伝熱性能が得られる。よって、CFRPをコア材として使用することで材料使用量を削減できる。
【0024】
なお、上記の実施の形態では、中実材10が高放熱基板100の表裏を貫通する構成を例としたが、中実材10はコア材であるCFRP板1と一方の表面とを熱的に接続していれば良く、高放熱基板100を貫通せずに一方の表面のみで露出している構成とすることも可能である。すなわち、中実材10は、少なくとも絶縁層50a及び回路層51a、又は絶縁層50b及び回路層51bを貫通してCFRP板1まで達していれば良い。ただし、中実材10が高放熱基板100の表裏を貫通するようにした方が、中実材10を設置する穴の加工が容易である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
以上のように、本発明にかかる高放熱基板は、電子部品から発生させた熱を基板全体に拡散させたり、基板全体に拡散させた熱を効率的に外部に放熱したりできる点で有用であり、特に、電子部品を高密度実装するのに適している。
【符号の説明】
【0026】
1 CFRP板
2a、2b、4a、4b プリプレグ
3a、3b ガラスクロス
5a、5b、6a、6b ガラスクロスを含むプリプレグ
7a、7b、7c、7d 配線層
8 銅膜
9 信号スルーホール
9a 内壁部
10 中実材
11 熱伝導性接着剤
12 電子部品
13 熱伝導材
14 シャーシフレーム
15 ねじ
50a、50b 絶縁層
51a、51b 回路層
100 高放熱基板
101 小径部
102 大径部
103 段差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維強化プラスチックを材料とする平板状のコア材と、複数のプリプレグを積層して前記コア材の両面にそれぞれ形成されたプリプレグ層とを備え、一方の前記プリプレグ層の表面に実装された電子部品において生じた熱を前記コア材によって基板全体に拡散させる高放熱基板であって、
金属材料で形成され、前記一方のプリプレグ層を貫通して少なくとも前記コア材に達するように埋設され、熱伝導性接着剤を介して前記コア材に固定された柱状の伝熱材を有することを特徴とする高放熱基板。
【請求項2】
前記伝熱材は、前記コア材及び他方の前記プリプレグ層を貫通していることを特徴とする請求項1記載の高放熱基板。
【請求項3】
前記伝熱材は、前記一方のプリプレグ層及び前記コア材を貫通する小径部と、前記他方のプリプレグ層を貫通する大径部とを備え、前記小径部と前記大径部との境界の段差の部分が前記コア材の板面に当接していることを特徴とする請求項2記載の高放熱基板。
【請求項4】
前記伝熱材は、前記電子部品の実装位置と対応する位置に埋設されており、
前記伝熱材と前記電子部品のパッケージとの間に熱伝導材が充填されることを特徴とすることを特徴とする請求項2又は3記載の高放熱基板。
【請求項5】
前記伝熱材は、軸方向に貫通した穴を備え、該高放熱基板を収容する筐体のボスと対応する位置に埋設されており、該穴を介して前記筐体にねじ止め可能であることを特徴とする請求項2又は3記載の高放熱基板。
【請求項6】
前記コア材の両面の前記プリプレグ層にそれぞれ設けられた配線と、
前記コア材の一方の面側の配線と、前記コア材の他方の面側の配線とを導通させるスルーホールとを有し、
前記コア材は、該コア材の表面にラミネートされた前記プリプレグを形成する樹脂によって埋められ、かつ両端部及び内壁が保護膜で覆われた貫通穴を備え、
前記スルーホールは、前記貫通穴の内部を埋めた樹脂を貫いて形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の高放熱基板。
【請求項7】
前記金属材料は、アルミニウム、銅、アルミニウム合金、及び銅合金のいずれかであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の高放熱基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−119607(P2012−119607A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270173(P2010−270173)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】