説明

α−アミノトランスフェラーゼ活性の検出方法、比活性測定方法、並びにスクリーニング方法、およびα−ケト酸の定量方法

【課題】本発明は、定量可能な酵素濃度範囲が広く、簡便にα−アミノトランスフェラーゼの活性を検出できる検出方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ω−アミノ化合物と、検出対象のα−アミノトランスフェラーゼが触媒する反応によって生じたα−ケト酸とが、そのω−アミノ化合物及びα−ケト酸に特異的なω−アミノトランスフェラーゼを触媒とし、反応生成物である含アルデヒド化合物を生じさせ、この含アルデヒド化合物に対し、酸化型ニコチンアミド補酵素の存在下で、アルデヒドデヒドロゲナーゼを触媒として反応させて生じる還元型ニコチンアミド補酵素を検出することにより、検出対象のα−アミノトランスフェラーゼを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α−アミノトランスフェラーゼの活性検出方法、比活性測定方法、並びにスクリーニング方法、及びα−ケト酸の定量方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心疾患又は肝疾患の場合、アラニントランスアミナーゼやアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼが血中に遊離することから、診断や治療の経過観察の指標として、これらアミノトランスフェラーゼの活性測定が繁用されている。
【0003】
アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ活性の測定は、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼに対し、L−アスパラギン酸及び2−オキソグルタル酸を基質として、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼによって生成されるオキサロ酢酸を、リンゴ酸脱水素酵素によってリンゴ酸に変え、このときの還元型ニコチンアミド補酵素の減少速度を、波長340nmにおける吸光度を測定することにより行われている。
【0004】
しかし上記の方法は、還元型ニコチンアミド補酵素の減少速度を測定する方法であり、十分量の基質を反応系に加えることができないため、反応がすぐに飽和してしまい、定量可能な酵素濃度の上限が低い。従って、アミノトランスフェラーゼ活性の測定には、生成する還元型ニコチンアミド補酵素の吸光度の上昇に基づいて生体物質を測定する方法が好適である。
【0005】
アミノトランスフェラーゼにより生成するピルビン酸から、ピルビン酸デヒドロゲナーゼを用いて、還元型ニコチンアミド補酵素を生成させ、吸光度の上昇によりアミノトランスフェラーゼの活性測定を行う方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、この反応系はピルビン酸を定量する際にも用いられている。
【0006】
しかしながら、上記の方法では、酵素としてピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体が用いられており、当該酵素複合体は3種の酵素が非共有結合で分子集合した複合体なので、高純度の酵素複合体を得ることが困難である。また、還元作用を示すコエンザイムAを使用する必要があり、コエンザイムAが測定値に影響を与えるおそれがあるという難点を有している。
【特許文献1】特開平6−86693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明は、定量可能な酵素濃度範囲が広く、簡便にα−アミノトランスフェラーゼの活性を検出できる検出方法やα−ケト酸の定量方法などを提供することを目的としてなされた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下によって構成される。
【0009】
(1)ω−アミノ化合物と、α−アミノトランスフェラーゼが触媒する酵素反応によって生じたα−ケト酸とを基質とし、ω−アミノトランスフェラーゼを触媒とする酵素反応の反応生成物である含アルデヒド化合物を検出することを特徴とする、α−アミノトランスフェラーゼ活性の検出方法。
【0010】
(2)含アルデヒド化合物の検出方法が、含アルデヒド化合物を基質とし、酸化型ニコチンアミド補酵素の存在下、アルデヒドデヒドロゲナーゼを触媒とする酵素反応の生成物である還元型ニコチンアミド補酵素を検出する方法であることを特徴とする、前記第1項に記載のα−アミノトランスフェラーゼ活性の検出方法。
【0011】
(3)検体に、α−アミノトランスフェラーゼの基質になりうるα−ケト酸1とアミノ酸を加えてα−ケト酸2を生成させる工程と、α−ケト酸2とω−アミノ化合物とを、それらを基質とするω−アミノトランスフェラーゼの存在下で反応させて、含アルデヒド化合物を生成させる工程と、含アルデヒド化合物を検出する工程とを有することを特徴とする、α−アミノトランスフェラーゼ活性の検出方法。
【0012】
(4)含アルデヒド化合物の検出工程が、酸化型ニコチンアミド補酵素の存在下、含アルデヒド化合物に、含アルデヒド化合物を基質とするアルデヒドデヒドロゲナーゼを作用させ、生成する還元型ニコチンアミド補酵素を検出する工程であることを特徴とする、前記第3項に記載のα−アミノトランスフェラーゼ活性の検出方法。
【0013】
(5)α−アミノトランスフェラーゼが好熱菌由来である、前記第1項〜第4項の何れか1項に記載のα−アミノトランスフェラーゼ活性の検出方法。
【0014】
(6)ω−アミノトランスフェラーゼが好熱菌由来である、前記第1項〜第4項の何れか1項に記載のα−アミノトランスフェラーゼ活性の検出方法。
【0015】
(7)アルデヒドデヒドロゲナーゼが好熱菌由来である、前記第4項に記載のα−アミノトランスフェラーゼ活性の検出方法。
【0016】
(8)α−アミノトランスフェラーゼの基質になりうるα−ケト酸1及びアミノ酸と、α−アミノトランスフェラーゼによる反応生成物であるα−ケト酸2を基質とするω−アミノトランスフェラーゼと、ω−アミノトランスフェラーゼの基質であるω−アミノ化合物とを有する、α−アミノトランスフェラーゼ活性の検出用キット。
【0017】
(9)さらに、ω−アミノトランスフェラーゼによる反応生成物である含アルデヒド化合物を基質とするアルデヒドデヒドロゲナーゼと、酸化型ニコチンアミド補酵素とを有する、前記第8項に記載のα−アミノトランスフェラーゼ活性の検出用キット。
【0018】
(10)複数のα−アミノトランスフェラーゼのそれぞれに対し、α−ケト酸を用いて前記第1項〜第7項のいずれか1項に記載の検出方法を行うことを特徴とする、α−ケト酸をアミノ基転移反応によってアミノ酸に変換するためのα−アミノトランスフェラーゼのスクリーニング方法。
【0019】
(11)α−ケト酸1と、このα−ケト酸1を基質とするα−アミノトランスフェラーゼの基質になりうるアミノ酸と、このα−アミノトランスフェラーゼを触媒とする酵素反応の反応生成物であるα−ケト酸2を基質とするω−アミノトランスフェラーゼと、このω−アミノトランスフェラーゼの基質であるω−アミノ化合物とを有する、α−ケト酸をアミノ基転移反応によってアミノ酸に変換するためのα−アミノトランスフェラーゼのスクリーニング用キット。
【0020】
(12)さらに、ω−アミノトランスフェラーゼを触媒とする酵素反応の反応生成物である含アルデヒド化合物を基質とするアルデヒドデヒドロゲナーゼと、酸化型ニコチンアミド補酵素とを有する、前記第12項に記載のα−ケト酸をアミノ基転移反応によってアミノ酸に変換するためのα−アミノトランスフェラーゼのスクリーニング用キット。
【0021】
(13)複数のα−ケト酸のそれぞれに対し、α−アミノトランスフェラーゼを用いて前記第1項〜第7項に記載のいずれかの検出方法を行うことを特徴とする、α−アミノトランスフェラーゼ基質のスクリーニング方法。
【0022】
(14)α−ケト酸を基質とするα−アミノトランスフェラーゼの基質になりうるアミノ酸と、このα−アミノトランスフェラーゼを触媒とする酵素反応の反応生成物であるα−ケト酸2を基質とするω−アミノトランスフェラーゼと、このω−アミノトランスフェラーゼの基質であるω−アミノ化合物とを有する、α−アミノトランスフェラーゼ基質のスクリーニング用キット。
【0023】
(15)さらに、ω−アミノトランスフェラーゼを触媒とする酵素反応の反応生成物である含アルデヒド化合物を基質とするアルデヒドデヒドロゲナーゼと、酸化型ニコチンアミド補酵素とを有することを特徴とする、前記第14項に記載の特定のα−アミノトランスフェラーゼ基質のスクリーニング用キット。
【0024】
(16)ω−アミノトランスフェラーゼの基質になりうるα−ケト酸とω−アミノ化合物とを、ω−アミノトランスフェラーゼの存在下で反応させ、アミノ酸及び含アルデヒド化合物を生成する第1の工程と、生成したアミノ酸のアミノ基を除去することにより、α−ケト酸を再生する第2の工程と、第1の工程及び第2の工程を繰り返すことによってα−ケト酸及び含アルデヒド化合物を増加させる第3の工程と、増加した含アルデヒド化合物を定量する第4の工程とを有することを特徴とする、α−ケト酸の定量方法。
【0025】
(17)第2の工程におけるアミノ酸からのアミノ基の除去方法が、α−アミノトランスフェラーゼを用いた酵素反応であることを特徴とする、前記第16項に記載のα−ケト酸の定量方法。
【0026】
(18)第4の工程における含アルデヒド化合物の定量方法が、含アルデヒド化合物に、酸化型ニコチンアミド補酵素の存在下、含アルデヒド化合物を基質とするアルデヒドデヒドロゲナーゼを作用させ、生成する還元型ニコチンアミド補酵素を定量する方法である、前記第16項に記載のα−ケト酸の定量方法。
【0027】
(19)α−アミノトランスフェラーゼが好熱菌由来である、前記第16項〜第18項の何れか1項に記載のα−ケト酸の定量方法。
【0028】
(20)ω−アミノトランスフェラーゼが好熱菌由来である、前記第16項〜第18項の何れか1項に記載のα−ケト酸の定量方法。
【0029】
(21)アルデヒドデヒドロゲナーゼが好熱菌由来である、前記第18項に記載のα−ケト酸の定量方法。
【0030】
(22)ω−アミノトランスフェラーゼと、ω−アミノトランスフェラーゼの基質になりうるω−アミノ化合物と、ω−アミノトランスフェラーゼを触媒とする酵素反応の反応生成物であるアミノ酸を基質とするα−アミノトランスフェラーゼと、α−アミノトランスフェラーゼの基質になりうるα−ケト酸とを有する、α−ケト酸の定量用キット。
【0031】
(23)さらに、ω−アミノトランスフェラーゼを触媒とする酵素反応の反応生成物である含アルデヒド化合物を基質とするアルデヒドデヒドロゲナーゼと、酸化型ニコチンアミド補酵素とを有する、前記第22項に記載のα−ケト酸の定量用キット。
【0032】
(24)比活性が未知のα−アミノトランスフェラーゼの所定量に、このα−アミノトランスフェラーゼの基質になりうるα−ケト酸1とアミノ酸を加えてα−ケト酸2を生成させる工程と、α−ケト酸2とω−アミノ化合物とを、それらを基質とするω−アミノトランスフェラーゼの存在下で反応させて、含アルデヒド化合物を生成させる工程と、生成した含アルデヒド化合物を定量する工程と、比活性が既知のα−アミノトランスフェラーゼを用いることにより生成された含アルデヒド化合物の量と、その際の当該α−アミノトランスフェラーゼの使用量との相関関係に、上記工程で測定した含アルデヒド化合物の生成量を照合し、比活性が未知のα−アミノトランスフェラーゼの比活性を算出する工程とを有することを特徴とする、α−アミノトランスフェラーゼの比活性測定方法。
【0033】
(25)比活性が未知のα−アミノトランスフェラーゼの所定量に、α−アミノトランスフェラーゼの基質になりうるα−ケト酸1とアミノ酸を作用させて、α−ケト酸2を生成させる工程と、α−ケト酸2とω−アミノ化合物とを、それらを基質とするω−アミノトランスフェラーゼの存在下で反応させて、含アルデヒド化合物を生成させる工程と、この含アルデヒド化合物を、酸化型ニコチンアミド補酵素の存在下、含アルデヒド化合物を基質とするアルデヒドデヒドロゲナーゼを作用させて、還元型ニコチンアミド補酵素を生成させる工程と、生成した還元型ニコチンアミド補酵素の吸光度を測定する工程と、比活性が既知のα−アミノトランスフェラーゼを用いることにより生成された還元型ニコチンアミド補酵素の吸光度、その際の当該α−アミノトランスフェラーゼの使用量との相関関係に、上記工程で測定した還元型ニコチンアミノ補酵素の吸光度を照合し、比活性が未知のα−アミノトランスフェラーゼの比活性を算出する工程とを有することを特徴とする、α−アミノトランスフェラーゼの比活性測定方法。
【0034】
(26)α−アミノトランスフェラーゼが好熱菌由来である、前記第24項または第25項に記載のα−アミノトランスフェラーゼの比活性測定方法。
【0035】
(27)ω−アミノトランスフェラーゼが好熱菌由来である、前記第24項または第25項に記載のα−アミノトランスフェラーゼの比活性測定方法。
【0036】
(28)アルデヒドデヒドロゲナーゼが好熱菌由来である、前記第25項に記載のα−アミノトランスフェラーゼの比活性測定方法。
【0037】
(29)比活性が未知のα−アミノトランスフェラーゼの基質になりうるα−ケト酸1及びアミノ酸と、α−アミノトランスフェラーゼを触媒とする酵素反応の反応生成物であるα−ケト酸2を基質とするω−アミノトランスフェラーゼと、ω−アミノトランスフェラーゼの基質になりうるω−アミノ化合物とを有する、α−アミノトランスフェラーゼの比活性測定用キット。
【0038】
(30)さらに、ω−アミノトランスフェラーゼによる反応生成物である含アルデヒド化合物を基質とするアルデヒドデヒドロゲナーゼと、酸化型ニコチンアミド補酵素とを有することを特徴とする、前記第29項に記載のα−アミノトランスフェラーゼの比活性測定用キット。
【0039】
(31)さらに、比活性が既知のα−アミノトランスフェラーゼを含むことを特徴とする前記第29項または第30項に記載のα−アミノトランスフェラーゼの比活性測定用キット。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、たとえば、広い酵素濃度範囲で、簡便にα−アミノトランスフェラーゼの活性が検出または定量でき、さらには、α−ケト酸が定量可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
実施の形態及び実施例に特に説明がない場合には、J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis (Ed.), Molecular cloning, a laboratory manual (3rd edition), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (2001); F. M. Ausubel, R. Brent, R. E. Kingston, D. D. Moore, J.G. Seidman, J. A. Smith, K. Struhl (Ed.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Ltd.などの標準的なプロトコール集に記載の方法、あるいはそれを修飾したり、改変した方法を用いる。また、市販の試薬キットや測定装置を用いる場合には、特に説明が無い場合、それらに添付のプロトコールを用いる。
【0042】
なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的な実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【0043】
<1>α−アミノトランスフェラーゼ活性の検出方法
本発明に従って、検体中のα−アミノトランスフェラーゼの活性を検出するスキームを以下に示す。

【0044】
まず、検体中で、アミノ基受容体としてのα−ケト酸1と、アミノ基供与体としてのアミノ酸1を作用させる。検体にα−アミノトランスフェラーゼの活性がある場合には、その触媒作用によりアミノ酸2とα−ケト酸2が生成する。次に、生成したα−ケト酸2をアミノ基受容体とし、アミノ基供与体としてのω−アミノ化合物を、ω−アミノトランスフェラーゼの存在下で反応させて、含アルデヒド化合物を生成させる。この含アルデヒド化合物を検出することにより、α−アミノトランスフェラーゼ活性を検出する。
【0045】
ここで、検体中に、十分なα−ケト酸1、アミノ酸1、ω−アミノ化合物、ω−アミノトランスフェラーゼが含まれていないと、この反応過程は進まないか、反応に時間がかかるため、含アルデヒド化合物が検出できない。そこで、検出の際には、それらのうち不足すると思われる成分を反応液に加えることが好ましい。この場合、α−ケト酸1及びアミノ酸1は、検出するα−アミノトランスフェラーゼの基質になることができる化合物を選択する。α−ケト酸2は、検出対象のα−アミノトランスフェラーゼによって生成されるため、ω−アミノトランスフェラーゼは、その生成されたα−ケト酸2を基質として用いることのできる酵素を選択する。そして、ω−アミノ化合物は、選択されたω−アミノトランスフェラーゼが基質として用いることができる化合物を選択する。
【0046】
アミノ酸1としてはその入手しやすさや溶解性の観点から、グルタミン酸、アラニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ロイシン、イソロイシン、アスパラギン酸、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、システイン、メチオニン、バリン、セリン等のアミノ酸を用いることができる。検出対象のα−アミノトランスフェラーゼがL−アミノトランスフェラーゼの場合はL−アミノ酸を、D−アミノトランスフェラーゼの場合はD−アミノ酸を、不明の場合はDL−アミノ酸をそれぞれ用いることが好ましい。
【0047】
α−ケト酸1としてはその入手しやすさや溶解性の観点からピルビン酸、2−ケトグルタル酸、オキザロ酢酸、フェニルピルビン酸、4−ヒドロキシフェニルピルビン酸、2−オキソイソペンタン酸、4−メチル−2−オキソペンタン酸、3−メチル−2−オキソペンタン酸、フェニルグリオキシル酸等があげられるが、これらα−ケト酸のうち、使用するω−アミノトランスフェラーゼが基質として認識しない化合物、または認識しても活性が非常に弱い化合物を選択することが好ましい。
【0048】
ω−アミノ化合物は、構造の末端にアミノ基を有する化合物を示し、例示すれば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、1−アミノプロパン、1−アミノブタン、1−アミノペンタン、ベンジルアミン、β−アラニン、6−アミノヘキサン酸、5−アミノペンタン酸、4−アミノブタン酸等があげられる。
【0049】
α−アミノトランスフェラーゼとは、α−アミノ酸のアミノ基をα−ケト酸に転移して、別のα−ケト酸と別のα−アミノ酸を生じる反応を触媒する酵素群のことである。具体的には、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.1)、チロシンアミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.5)、芳香族アミノ酸アミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.57)、ヒスチジノールリン酸アミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.9)、ホスホセリンアミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.52)、セリン−グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.45)、セリン−ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.51)、アラニン−グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.44)、分岐鎖アミノ酸アミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.42)、及びD−アラニンアミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.21)等の各ファミリーに属する酵素を例示できる。
【0050】
また、酵素の具体例としては、E.coliのアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(aspC)、酵母のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AAT2)、Bacillus circulansのアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、Thermus aquaticusのアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(aspC)、Thermotoga martimaのアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、Thermus thermophilusのアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、Sulfolobus solfataricusのアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、Methanococcus aeolicusのアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、Methanobacterium thermoautotrophicumのアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、E.coliの芳香族アミノ酸アミノトランスフェラーゼ(tyrB)、Paracoccusの芳香族アミノ酸アミノトランスフェラーゼ(tyrB)、Pyrococcus furiosusの芳香族アミノ酸アミノトランスフェラーゼ、Thermococcus litoralisの芳香族アミノ酸アミノトランスフェラーゼ、Methanococcus aeolicusの芳香族アミノ酸アミノトランスフェラーゼなどが挙げられる。
【0051】
その他、Acetobacterのヒスチジノールリン酸アミノトランスフェラーゼ(hisC)、Thermotoga martimaのヒスチジノールリン酸アミノトランスフェラーゼ、酵母のホスホセリンアミノトランスフェラーゼ(SerC)、大腸菌のホスホセリンアミノトランスフェラーゼ(serC)、Methanosarcina barkeriのホスホセリンアミノトランスフェラーゼ、Methylobacterium extorquensのセリン−グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ(sgaA)、Hyphomicrobium methylovorumのセリン−グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ(sgaA)、ウサギのセリン−ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(Agxt)、マウスのセリン−ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(Agxt)、Pyrococcus furiosusのアラニンアミノトランスフェラーゼ、酵母のアラニン−グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ(Agx1)などの酵素が挙げられる。
【0052】
また、ラットの分岐鎖アミノ酸アミノトランスフェラーゼ(Bcat)、E.coliの分岐鎖アミノ酸アミノトランスフェラーゼ(ilvE)、Bacillus cereusの分岐鎖アミノ酸アミノトランスフェラーゼ、Bacillus anthracisの分岐鎖アミノ酸アミノトランスフェラーゼ、Methanococcus aeolicusの分岐鎖アミノ酸アミノトランスフェラーゼ、Bacillus sp.のD−アラニンアミノトランスフェラーゼ(dat)、Staphylococcus haemolyticusのD−アラニンアミノトランスフェラーゼ(dat)、Bacillus cereusのD−アラニンアミノトランスフェラーゼ、Bacillus anthracisのD−アラニンアミノトランスフェラーゼなどの酵素も挙げることができる。
【0053】
さらに、近年のゲノム解析の成果より、多くの遺伝子がα−アミノトランスフェラーゼをコードしていることが示唆されている。このようなα−アミノトランスフェラーゼに対しても本発明は使用可能である。具体例としては、Pyrobaculum aerophilumの分岐鎖アミノ酸アミノトランスフェラーゼ(PAE3297)やアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(PAE1964、PAE2251)など、Pyrococcus abissyのアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(PAB0525、PAB0774,PAB1810)など、Thermoplasma volucaniumのアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(TVG0393535、TVG0480705、TVG0557379)やヒスチジノールリン酸アミノトランスフェラーゼ(TVG0077159)などを例示することができる。
【0054】
その他、Thermoplasma acidophilumのセリン−グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ(Ta1018)、Halobacterium sp.の分岐鎖アミノ酸アミノトランスフェラーゼ(VNG0387G、VNG2122G)など、Aerchaeoglobus fulgidusの分岐鎖アミノ酸アミノトランスフェラーゼ(AF0933)やヒスチジノールリン酸アミノトランスフェラーゼ(AF2002、AF2024)など、Mehtanopyrus kandleriの分岐鎖アミノ酸アミノトランスフェラーゼ(MK1627)など、Methanosaricina mazeiのセリン−ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(MM0246)やホスホセリンアミノトランスフェラーゼ(MM2911)などのα−アミノトランスフェラーゼを例示することができる。
【0055】
また、Methanocaldococcus jannaschiiの分岐鎖アミノ酸アミノトランスフェラーゼ(MJ1008)、Pyrococcus horikoshiiのセリンアミノトランスフェラーゼ(PH1308)、Aeropyrum pernixのチロシンアミノトランスフェラーゼ(APE2575)、Sulfolobus tokodaiiのアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ST1225)、Corynebacterium efficienceの分岐鎖アミノ酸アミノトランスフェラーゼ(CE2095)など、Streptomyces avermitilisのD−アラニンアミノトランスフェラーゼ(SAV6804)等のα−アミノトランスフェラーゼを例示することもできる。
【0056】
検体に含まれる酵素は、単独であっても、2種以上であってもよい。酵素の由来は特に制限されず、動物、植物、細菌、酵母、カビ等、どのような生物に由来してもよい。
【0057】
ω−アミノトランスフェラーゼとは、ω−アミノ化合物のアミノ基をα−ケト酸に転移して、含アルデヒド化合物とα−アミノ酸を生じる反応を触媒する酵素群のことである。特にここでは、検出するα−アミノトランスフェラーゼによる反応生成物であるα−ケト酸を基質とするω−アミノトランスフェラーゼを用いる。
【0058】
本発明で使用できるω−アミノトランスフェラーゼとしては、アセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.11)、オルニチンアミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.13)、ω−アミノ酸−ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.18)、4−アミノブタン酸アミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.19)、及びDAPAアミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.62)等の各ファミリーに属する酵素が例示できる。
【0059】
酵素の具体例としては、E.coliのアセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ(argD)、Bacillus subtilisのアセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ(argD)、Pseudomonas putidaのω−アミノ酸−ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ、酵母の4−アミノブタン酸アミノトランスフェラーゼ(UGA1)、E.coliの4−アミノブタン酸アミノトランスフェラーゼ(gabT)、Aspergillus nidulansの4−アミノブタン酸アミノトランスフェラーゼ(GABA)、Bucillus subtilisのDAPAアミノトランスフェラーゼ(bioA)、Brevibacterium flavumのDAPAアミノトランスフェラーゼ(bioA)等が挙げられる。
【0060】
さらに、近年のゲノム解析の成果より、多くの遺伝子がω−アミノトランスフェラーゼをコードしていることが示唆されている。このようなω−アミノトランスフェラーゼも本発明に使用可能であることが予想される。具体例としては、Pyrobaculum aerophilumの4−アミノブタン酸アミノトランスフェラーゼ(PAE1799)、Sulfolobus solfataricusの4−アミノブタン酸アミノトランスフェラーゼ(SSO2727、SSO3211)、Pyrococcus furiosusの4−アミノブタン酸アミノトランスフェラーゼ(PF1232、PF1421)やアセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ(PF1685)やDAPAアミノトランスフェラーゼ(PF1906)、Pyrococcus abyssiの4−アミノブタン酸アミノトランスフェラーゼ(PAB0086、PAB1921、PAB2386)やアセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ(PAB2440)等を例示することができる。
【0061】
その他、Thermoplasma acidophilumの4−アミノブタン酸アミノトランスフェラーゼ(Ta0068)、Archaeoglobus fulgidusのアセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ(AF0080、AF1815)、Methanobacterium thermoautotrophicumのアセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ(MTH1337)、Methanosarcina mazeiのアセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ(MM0047、MM1406)、Methanosarcina acetivoransのアセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ(MA0119、MA2859)、Methanocaldococcus jannaschiiのアセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ(MJ0721)やDAPAアミノトランスフェラーゼ(MJ1300)等のω−アミノトランスフェラーゼを例示することができる。
【0062】
また、Pyrococcus horikoshiiの4−アミノブタン酸アミノトランスフェラーゼ(PH0138、PH0782、PH1423)やアセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ(PH1716)、Aeropyrum pernixの4−アミノブタン酸アミノトランスフェラーゼ(APE0457)やアセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ(APE1464)、Corynebacterium efficiensのアセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ(CE1529)、Staphylococcus aureusのオルニチンアミノトランスフェラーゼ(SA0179、SA0818)やDAPAアミノトランスフェラーゼ(SA2214)、Streptomyces avermitilisの4−アミノブタン酸アミノトランスフェラーゼ(SAV2583)やオルニチンアミノトランスフェラーゼ(SAV3420,SAV7112)等のω−アミノトランスフェラーゼを例示することもできる。
【0063】
これらの酵素は単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。酵素の由来も特に制限されず、動物、植物、細菌、酵母、カビ等いずれに由来する酵素を用いてもよい。
【0064】
<2>α−アミノトランスフェラーゼのスクリーニング方法
前述のα−アミノトランスフェラーゼ活性の検出方法を用いて、特定のα−ケト酸からアミノ酸を生成するアミノ基転移反応を触媒する酵素をスクリーニングすることができる。即ち、複数のα−アミノトランスフェラーゼのそれぞれに対し、目的とするアミノ基転移反応の基質であるα−ケト酸1とアミノ酸1、ω−アミノ化合物、及びω−アミノトランスフェラーゼを添加、反応させ、含アルデヒド化合物が検出された場合、その時に用いたα−アミノトランスフェラーゼが、添加したα−ケト酸1を基質として利用でき、そのアミノ基転移反応を触媒することが結論される。ここで用いるα−アミノトランスフェラーゼ、アミノ酸1、ω−アミノ化合物、及びω−アミノトランスフェラーゼは前述のものが例示できる。
【0065】
<3>α−ケト酸のスクリーニング方法
前述のα−アミノトランスフェラーゼ活性の検出方法を用いて、特定のα−アミノトランスフェラーゼに対して、その基質となり得るα−ケト酸をスクリーニングすることも可能である。即ち、複数のα−ケト酸のそれぞれに、対象となるα−アミノトランスフェラーゼ、アミノ酸1、ω−アミノ化合物、及びω−アミノトランスフェラーゼを添加、反応させ、含アルデヒド化合物が検出された場合、その時に用いたα−ケト酸が、特定のα−アミノトランスフェラーゼに対する基質であるということが結論される。ここで用いるα−アミノトランスフェラーゼ、アミノ酸1、ω−アミノ化合物、及びω−アミノトランスフェラーゼは前述のものが例示できる。
【0066】
<4>α−ケト酸の定量方法
検体中のα−ケト酸を定量するには、まず、定量対象物であるα−ケト酸2と、アミノ基供与体としてのω−アミノ化合物とをω−アミノトランスフェラーゼの存在下反応させ、アミノ酸1と含アルデヒド化合物を生成させる。この時、ω−アミノトランスフェラーゼは、α−ケト酸2を基質として反応できる酵素を選択し、ω−アミノ化合物は、その酵素が基質とできる化合物を選択する。この反応の結果、アミノ酸1と含アルデヒド化合物が生成する。
【0067】
次にアミノ酸1のアミノ基を除去することにより、α−ケト酸2を再生する、この際、用いる酵素は、アミノ基を付加できる酵素であれば何れでも良く、例えば、α−アミノトランスフェラーゼや、ある種のデヒドロゲナーゼ等が挙げられる。使用できるα−アミノトランスフェラーゼは、「α−アミノトランスフェラーゼ活性の検出方法」で記述した酵素に準じる。α−アミノトランスフェラーゼを用いる場合に必要なケト酸1は、前述のものが例示できる。また、デヒドロゲナーゼとしては、アラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.1)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.2、E.C.1.4.1.3、E.C.1.4.1.4)、L−アミノ酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.5)などが挙げられる。
【0068】
こうして再生されたα−ケト酸2は、ω−アミノトランスフェラーゼによって、再びアミノ酸1になり、これらの反応が繰り返されることにより、α−ケト酸2及び前記含アルデヒド化合物は増加する。この反応の繰り返しによって、ごく微量のα−ケト酸2を検出できるようになる。
【0069】
一方、既知の濃度のα−ケト酸2を用いて、同様の実験を行い、検量線を作製する。最終的に得られた含アルデヒド化合物を直接または間接的に定量し、検量線と比較することにより、検体中のα−ケト酸2が定量できる。
【0070】
<5>α−アミノトランスフェラーゼの比活性の測定方法
後述の実施例で行ったα−アミノトランスフェラーゼの比活性の測定試験から、α−アミノトランスフェラーゼの使用量と、前述のようにしてα−アミノトランスフェラーゼを用いることにより生成された含アルデヒド化合物の量との間には相関関係があることが明らかになった(実施例「好熱菌α−アミノトランスフェラーゼの検量線の作成」参照)。
【0071】
従って、比活性が既知のα−アミノトランスフェラーゼを用いることにより生成された含アルデヒド化合物の量と、その際の当該α−アミノトランスフェラーゼの使用量との相関関係を用いることにより、比活性が未知のα−アミノトランスフェラーゼの比活性を測定することができる。即ち、所定量の、比活性が未知のα−アミノトランスフェラーゼに、前述のα−ケト酸1とアミノ酸1とを作用させてα−ケト酸2を生成させた後、生成したα−ケト酸2とω−アミノ化合物とをω−アミノトランスフェラーゼの存在下で反応させて、含アルデヒド化合物を生成させ、含アルデヒド化合物の生成量を測定した後、この測定結果を前述の相関関係に照合することにより、比活性が未知のα−アミノトランスフェラーゼの比活性を算出することができる。これによって、特定のα−ケト酸1と特定のアミノ酸1とに対する、比活性が未知のα−アミノトランスフェラーゼの比活性が測定できる。
【0072】
なお、比活性が未知のα−アミノトランスフェラーゼと、比活性が既知のα−アミノトランスフェラーゼとの種類は、同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
【0073】
ここで、比活性が既知のα−アミノトランスフェラーゼを用いることにより生成された含アルデヒド化合物の生成量と、当該α−アミノトランスフェラーゼの使用量との相関関係は、例えば検量線などを作成することによって容易に把握することが可能になる。
【0074】
<6>含アルデヒド化合物の検出・定量方法
例えば、生成した含アルデヒド化合物に、酸化型ニコチンアミド補酵素の存在下アルデヒドデヒドロゲナーゼを作用させ、生成する還元型ニコチンアミド補酵素を検出すれば含アルデヒド化合物を検出することができる。この検出方法は、定量性があるため、前述のα−ケト酸やα−アミノトランスフェラーゼの比活性などの定量方法においても用いることができる。また、塩基性フクシンを用いた方法、銀鏡反応やフェーリング反応を用いた方法等を利用してもよい。
【0075】
アルデヒドデヒドロゲナーゼとしては、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(EC 1.2.1.3)、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(1.2.1.12)、マロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(EC 1.2.1.15)、こはく酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(EC 1.2.1.16)、アミノブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼ(EC 1.2.1.19)、ベンズアルデヒドデヒドロゲナーゼ(EC 1.2.1.28)、及びL−アミノアジピン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(EC 1.2.1.31)等の各ファミリーに属する酵素が例示できる。
【0076】
具体例としては、E.coliのアルデヒドデヒドロゲナーゼ(aldH)、Pseudomonas oleovoransのアルデヒドデヒドロゲナーゼ(alkH)、酵母のアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALD1、ALD6、ALD2)、Clostridium kluyveriのこはく酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(sucD)、Pseudomonas putidaのベンズアルデヒドデヒドロゲナーゼ(xylC),Penicillium chrysogenumのL−アミノアジピン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼなどが挙げられる。
【0077】
また、近年のゲノム解析の成果より、多くの遺伝子がアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードしていることが示唆されており、これらも本発明に使用可能であることが予想される。具体例としては、Aeropyrumpernixのアルデヒドデヒドロゲナーゼ(APE1786)、Sulfolobus tokodaiiのメチルマロン酸−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ST1116)、Sulfolobus solfataricusのアルデヒドデヒドロゲナーゼ(SSO03117)やメチルマロン酸−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(SSO1218)、Methanosarcina mazeiのアルデヒドデヒドロゲナーゼ(MM0048)やコハク酸−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(MM0838、MM2341)、Corynebacterium efficiensのアルデヒドデヒドロゲナーゼ(CE0079、CE2625)等を例示することができる。
【0078】
これらの酵素は単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。酵素の由来も特に制限されず、動物、植物、細菌、酵母、カビ等由来の酵素を好適に用いることができる。
【0079】
還元型ニコチンアミド補酵素の測定方法は公知の手法を用いることができる。例えば、生成する還元型ニコチンアミド補酵素がNADHあるいはNADPHである場合は、酸化型ニコチンアミド補酵素が透明であり、還元型ニコチンアミド補酵素が黄色であるため、340nmの吸光度の増加量を測定することにより、還元型ニコチンアミド補酵素の生成量を容易に測定できる。また、生成する還元型ニコチンアミド補酵素とテトラゾリウム塩化合物とから、電子キャリアーを介してホルマザン色素を生成させ、このホルマザン色素を比色定量することにより還元型ニコチンアミド補酵素の生成量を定量することもできる。
【0080】
ω−アミノ化合物として、ヒポタウリンを用い、ω−アミノトランスフェラーゼを触媒にして反応させると、スルフィノアセトアルデヒドを経て、二酸化硫黄が生成する。この二酸化硫黄はローズアニリンを用いた呈色反応により、還元型ニコチンアミド補酵素の生成量を定量することができる(左右田ら (1982)含硫アミノ酸 5巻249頁)。
【0081】
<7>α−アミノトランスフェラーゼの活性検出用キット
本発明のα−アミノトランスフェラーゼの活性検出用キットは、α−アミノトランスフェラーゼの基質であるα−ケト酸1及びアミノ酸1と、α−アミノトランスフェラーゼによる反応生成物であるα−ケト酸2を基質とするω−アミノトランスフェラーゼと、ω−アミノ化合物とを含有するものである。このキットに更にω−アミノトランスフェラーゼによる反応の生成物である含アルデヒド化合物を基質とするアルデヒドデヒドロゲナーゼと、酸化型ニコチンアミド補酵素とを加えることにより、α−アミノトランスフェラーゼの活性検出をさらに容易に行うことができる。
【0082】
特定のα−ケト酸をアミノ基転移反応によってアミノ酸に変換するためのα−アミノトランスフェラーゼのスクリーニング用キットは、特定のα−ケト酸1と、そのα−ケト酸1を基質とするα−アミノトランスフェラーゼの基質であるアミノ酸と、そのα−アミノトランスフェラーゼによる反応生成物であるα−ケト酸2を基質とするω−アミノトランスフェラーゼと、そのω−アミノトランスフェラーゼの基質であるω−アミノ化合物とを含有するものである。このキットに更にω−アミノトランスフェラーゼによる反応の生成物である含アルデヒド化合物を基質とするアルデヒドデヒドロゲナーゼと、酸化型ニコチンアミド補酵素を加えることにより、特定のα−ケト酸をアミノ基転移反応によってアミノ酸に変換するためのα−アミノトランスフェラーゼのスクリーニングを容易に行うことができる。
【0083】
特定のα−アミノトランスフェラーゼ基質のスクリーニング用キットは、候補となる複数のα−ケト酸1のそれぞれに対し、α−ケト酸1を基質とするα−アミノトランスフェラーゼの基質であるアミノ酸1と、このα−アミノトランスフェラーゼによる反応生成物であるα−ケト酸2を基質とするω−アミノトランスフェラーゼと、このω−アミノトランスフェラーゼの基質であるω−アミノ化合物とを有するものである。このキットに更に、ω−アミノトランスフェラーゼによる反応生成物である含アルデヒド化合物を基質とするアルデヒドデヒドロゲナーゼと、酸化型ニコチンアミド補酵素を加えることにより、特定のα−アミノトランスフェラーゼ基質のスクリーニングを手軽に行えるようになる。
【0084】
α−ケト酸の定量キットは、定量対象であるα−ケト酸2を基質とするω−アミノトランスフェラーゼと、このω−アミノトランスフェラーゼの基質であるω−アミノ化合物と、このω−アミノトランスフェラーゼによる反応生成物であるアミノ酸1を基質とするα−アミノトランスフェラーゼと、このα−アミノトランスフェラーゼの基質であるケト酸1を有するものである。このキットに更に、ω−アミノトランスフェラーゼによる反応生成物である含アルデヒド化合物に特異的なアルデヒドデヒドロゲナーゼと、酸化型ニコチンアミド補酵素とを加えることにより、この定量方法をより手軽に行うことができるようになる。
【0085】
比活性が未知のα−アミノトランスフェラーゼの比活性を定量するためには、比活性が既知のα−アミノトランスフェラーゼを用いることにより生成された含アルデヒド化合物の量と、その際の当該α−アミノトランスフェラーゼの使用量との相関関係を用いる場合には、比活性の定量対象のα−アミノトランスフェラーゼの基質であるα−ケト酸1およびアミノ酸1と、このα−アミノトランスフェラーゼによる反応生成物であるα−ケト酸2を基質とするω−アミノトランスフェラーゼと、このω−アミノトランスフェラーゼの基質であるω−アミノ化合物を有するキットを用いることが有効である。このキットは、更に、比活性が既知のα−アミノトランスフェラーゼを有するものであることが好ましい。含アルデヒド化合物の定量方法として、還元型ニコチンアミド補酵素の吸光度を測定する場合には、このキットに更に、ω−アミノトランスフェラーゼによる反応生成物である含アルデヒド化合物を基質とするアルデヒドデヒドロゲナーゼと、酸化型ニコチンアミド補酵素とを加えることが好ましい。
【0086】
これらのキットに含有される個々の試薬は、トリス緩衝溶液、リン酸緩衝溶液、ホウ酸緩衝溶液等の緩衝溶液に溶解されていてもよく、粉状の形態で、実験者が試薬の最終調整をするようになっていてもよい。
【0087】
<8>好熱菌への応用
本発明の、α−アミノトランスフェラーゼ活性の検出方法、α−アミノトランスフェラーゼの比活性の測定方法、α−ケト酸の定量方法、α−アミノトランスフェラーゼやα−ケト酸のスクリーニング方法、あるいはそのための検出用キット、またはスクリーニング用キットは、好熱菌由来の酵素においても用いることができる。
【0088】
好熱菌由来の酵素は中温菌由来の酵素に比べ高い耐熱性を有しており、物理化学的なストレスにも耐性が高く、工業的に有用な酵素として最近注目されている。
【0089】
好熱菌由来の酵素は、中温菌由来の酵素が高い活性を示す30℃から40℃ではほとんど活性がなく、50℃から120℃の高温で高い活性を示す。従って、好熱菌由来の酵素が活性を示す条件で、中温菌由来の酵素を用いて好熱菌由来の酵素の活性を検出、測定、定量またはスクリーニングすることは困難である。
【0090】
例えば、超好熱菌由来のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼのスクリーニングをする場合には、L−アスパラギン酸及び目的とするアミノ酸に対応するα−ケト酸を基質として、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼによって酵素反応温度が70℃から100℃でオキサロ酢酸を生成させる(一回目の酵素反応)。その後反応容器を室温まで冷却し、リンゴ酸脱水素酵素及び還元型ニコチンアミド補酵素を加え、二回目の酵素反応を行い、還元型ニコチンアミド補酵素の減少速度を波長340nmで測定する。このように試薬の添加や冷却といった煩雑な操作が必要になる。
【0091】
従って、好熱菌由来のα−アミノトランスフェラーゼを検出対象とする場合、好熱菌由来のω−アミノトランスフェラーゼと、好熱菌由来のアルデヒドデヒドロゲナーゼを組み合わせて用いることで、工業的に有用な好熱菌由来の酵素活性を煩雑な操作を必要とせず、簡便に検出、測定、定量またはスクリーニングすることができる。
【0092】
ここで、好熱菌由来のα−アミノトランスフェラーゼとしては、Thermus aquaticusのアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(aspC)、Thermotoga martimaのアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、Thermus thermophilusのアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、Sulfolobus solfataricusのアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、Pyrobaculum aerophilumの分岐鎖アミノ酸アミノトランスフェラーゼ(PAE3297)やアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(PAE1964、PAE2251)など、Pyrococcus abissyのアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(PAB0525、PAB0774,PAB1810)などが例示できる。
【0093】
その他、Aerchaeoglobus fulgidusの分岐鎖アミノ酸アミノトランスフェラーゼ(AF0933)やヒスチジノールリン酸アミノトランスフェラーゼ(AF2002、AF2024)など、Methanocaldococcus jannaschiiの分岐鎖アミノ酸アミノトランスフェラーゼ(MJ1008)、Pyrococcus horikoshiiのセリンアミノトランスフェラーゼ(PH1308)、Aeropyrum pernixのチロシンアミノトランスフェラーゼ(APE2575)、Sulfolobus tokodaiiのアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ST1225)などの好熱菌由来のα−アミノトランスフェラーゼも例示できる。検出対象としては、これらの酵素が単独で含まれていても、複数が含まれていてもよい。また、使用対象としては、これらの酵素は単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
また、好熱菌由来のω−アミノトランスフェラーゼとしては、Pyrobaculum aerophilumの4−アミノブタン酸アミノトランスフェラーゼ(PAE1799)、Sulfolobus solfataricusの4−アミノブタン酸アミノトランスフェラーゼ(SSO2727、SSO3211)、Pyrococcus furiosusの4−アミノブタン酸アミノトランスフェラーゼ(PF1232、PF1421)やアセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ(PF1685)やDAPAアミノトランスフェラーゼ(PF1906)、Pyrococcus abyssiの4−アミノブタン酸アミノトランスフェラーゼ(PAB0086、PAB1921、PAB2386)やアセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ(PAB2440)などが例示できる。
【0095】
その他、Thermoplasma acidophilumの4−アミノブタン酸アミノトランスフェラーゼ(Ta0068)、Archaeoglobus fulgidusのアセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ(AF0080、AF1815)、Methanocaldococcus jannaschiiのアセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ(MJ0721)やDAPAアミノトランスフェラーゼ(MJ1300)、Pyrococcus horikoshiiの4−アミノブタン酸アミノトランスフェラーゼ(PH0138、PH0782、PH1423)やアセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ(PH1716)、Aeropyrum pernixの4−アミノブタン酸アミノトランスフェラーゼ(APE0457)やアセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ(APE1464)などの好熱菌由来のω−アミノトランスフェラーゼも例示できる。これらの酵素は単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0096】
好熱菌由来のアルデヒドデヒドロゲナーゼとしては、Aeropyrumpernixのアルデヒドデヒドロゲナーゼ(APE1786)、Sulfolobus tokodaiiのメチルマロン酸−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ST1116)、Sulfolobus solfataricusのアルデヒドデヒドロゲナーゼ(SSO03117)やメチルマロン酸−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(SSO1218)などが例示できる。これらの酵素は単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0097】
中温菌由来のα−アミノトランスフェラーゼの活性検出方法において、好熱菌由来のω−アミノトランスフェラーゼを用いるのも有効である。すなわち、最初から反応系に全て必要な試薬を添加しておき、中温菌由来の酵素が十分な活性を持つ好適な温度で酵素反応を行い、α−ケト酸2を生成させる。次に新たに試薬等を加えることなく、好熱菌由来の酵素が十分な活性を持つ好適な温度まで昇温し、酵素反応を行う。このとき、昇温により中温菌由来の酵素を失活させることができる。そして反応後の還元型ニコチンアミド補酵素を常法により定量すればよい。ω−アミノトランスフェラーゼ反応のための昇温により、同時に中温菌由来の酵素を失活させることができるため、実験手順が省けるだけでなく、より正確に酵素活性を検出することができる。
【0098】
このような中温菌由来のα−アミノトランスフェラーゼと好熱菌由来のω−アミノトランスフェラーゼの組み合わせは、α−アミノトランスフェラーゼやα−ケト酸のスクリーニング方法や、α−アミノトランスフェラーゼの測定方法などにも、有効に応用されうる。
【実施例】
【0099】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0100】
[1]酵素調製方法
1.トランスアミナーゼ(APE2248)
(1)遺伝子組換え細胞の作成方法
外来遺伝子として、超好熱菌エアロパイラム・ペルニクス(Aeropyrum pernix)のトランスアミナーゼ遺伝子(APE2248)(配列番号1)を用いた。
【0101】
まず、配列番号1に示すヌクレオチド配列をエアロパイラム・ペルニクスのゲノムから、PCR反応で増幅し抽出した。PCR反応のためのプライマーには配列番号2および3に示すオリゴヌクレオチドを用いた。
【0102】
従って、増幅したDNAのヌクレオチド配列は、配列番号1に示したヌクレオチド配列から終止コドンを除いた配列とHis-tagをコードする配列との融合配列となる。PCR反応は、KOD plus polymerase(東洋紡績株式会社製)を用い、同酵素のプロトコールに従った。反応終了後、GFX PCR and Gel Band Purification Kit(Amersham製)を用いて、キットのプロトコールに従い精製し、0.1μg/μlのDNA溶液を得た。
【0103】
次に、制限酵素XhoI 1μl、NdeI 1μl、10×H Buffer 5μl(以上、タカラバイオ株式会社製)及び上記で得たDNA溶液43μlを混合し、37℃で、一晩酵素消化を行った。
【0104】
別途、pET21a(+)(0.5μg/μl)(Novagen製)2μl、XhoI 1μl、NdeI 1μl 及び10×H Buffer 5μl(以上、タカラバイオ株式会社製)を混合し、37℃で、一晩酵素消化を行った。こうして得られた制限酵素消化したゲノムDNA及びプラスミドを、それぞれ電気泳動し、両方の必要な部分をまとめ、GFX PCR and Gel Band Purification Kit(Amersham製)を用いて、キットのプロトコールに従い精製した。精製物をイソプロパノールで沈殿させ、70%エタノールでリンスした後乾燥させたものを5μlの滅菌水に溶解した。このDNA溶液に対し、DNA Ligation Kit ver.2 sol I(タカラバイオ株式会社製)を用いて、キットのプロトコールに従いライゲーションし、フェノール-クロロホルム-イソアミルアルコール等で精製した。精製したプラスミドを用いて大腸菌JM109株をエレクトロポレーション法により形質転換した。
【0105】
形質転換した菌を50μg/mlアンピシリンを含むLB平板寒天培地(1L中にトリプトン10g、酵母エキス 5g、NaCl 10gを含む)に植菌し、37℃で、一晩培養した。寒天培地上に形成されたシングルコロニーの中から、コロニーを無作為にいくつか選択し、選択した各コロニーを直接反応溶液に懸濁し、コロニーダイレクトPCRを行うことで目的の断片をもつクローンのスクリーニングを行った。コロニーダイレクトPCRは以下の手順にて行った。
Ex Taqポリメラーゼ(タカラバイオ株式会社製) 0.5μl
緩衝液(10×Ex Taq Buffer、タカラバイオ株式会社製) 5μl
dNTP(各2.5mM、タカラバイオ株式会社製) 4μl
配列番号4のプライマーDNA(100 pmol/μl) 0.5μl
配列番号5のプライマーDNA(100 pmol/μl) 0.5μl
各コロニー中の大腸菌 微量
を混合し、水を加えて、全量50μlに調製した。
【0106】
市販の温度サイクリング装置(RoboCycler、STRATAGENE社製)を用いて94℃、で3分恒温後、〔94℃、60秒−56℃、60秒−72℃、140秒〕のサイクルを25回繰り返した。反応終了後、1%アガロース電気泳動により、目的の断片の増幅が行われているかを確認し、陽性コロニーを得た。この形質転換体を増幅し、目的のトランスアミナーゼ遺伝子を含む組換えプラスミドを調製した。組換えプラスミドに含まれる目的のDNA断片の塩基配列を決定し、DNA配列に間違いがないことを確認した。
【0107】
こうして得た組換えプラスミドを用いて、Rosetta(DE3)株の形質転換を行った。形質転換した大腸菌は、50μg/mlのアンピシリンと34μg/mlのクロラムフェニコールを含むLB平板寒天培地に植菌し、37℃で培養した。
【0108】
(2)タンパク質の発現誘導
(1)で得た組換え大腸菌は、50μg/mlアンピシリンと34μg/mlのクロラムフェニコールを含むLB培地5mlに植菌し、一晩37℃で前培養した。次に、50μg/mlアンピシリンと34μg/mlのクロラムフェニコールを含むLB培地500mlに、前培養した菌液5mlを植菌し、37℃でOD660が1.0になるまで本培養した。ここにIPTGを終濃度1mMになるように添加し、46℃で20時間培養し、トランスアミナーゼ遺伝子の発現を誘導した。
【0109】
培養後菌液を集菌し、10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)で洗菌し、1mMのピリドキサールリン酸を含む10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)に懸濁した。菌体懸濁液を超音波破砕後遠心分離し、上清を無細胞抽出液とした。この無細胞抽出液を80℃で30分熱処理することにより大腸菌由来のアミノトランスフェラーゼを失活させ、遠心して不溶物を除き、上清を粗酵素液とした。このように、好熱菌のアミノトランスフェラーゼを用いることにより、精製段階で、大腸菌等から混入したアミノトランスフェラーゼを容易に失活させることができる。
【0110】
粗酵素液を等量のサンプル緩衝液(0.1Mトリス塩酸(pH6.8)、4%SDS、12%βメルカプトエタノール、20%グリセロール、ここに微量のブロモフェノールブルーを含む)と混合し、含まれる可溶タンパク質をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動にて分析したところ、誘導されたタンパク質のバンドがはっきりと確認できた。
【0111】
(3)酵素の精製
熱処理した粗酵素液から、Protino Ni2000(Macherey−Nagel)のプロトコールに従い、His-tagを利用してタンパク質を精製した。500mlの培養液から1.8mgの精製酵素を得た。
【0112】
(4)酵素活性の確認方法
40mMの2-オキソグルタル酸、0.5mMのピリドキサールリン酸、100mMのリン酸緩衝液(pH7.5)、および40mMのアラニン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、またはロイシンをアミノ基の供与体として含む反応液190μlに、(3)で精製した酵素(0.05μg/μl)を10μl加えて80℃で2分間酵素反応を行った。反応後、30%トリクロロ酢酸水溶液50μlを加えて反応を停止した。反応系中に生成したグルタミン酸は、Marfey’s試薬を用いて誘導体化し、HPLCで定量した。酵素活性の測定結果を図1に示す。
【0113】
2.トランスアミナーゼ(PH1371)
外来遺伝子として、超好熱菌パイロコッカス・ホリコシイ(Pyrococcus horikosii)のトランスアミナーゼ遺伝子(PH1371)を用いた他は、APE2248に準じて組替え大腸菌を得、タンパク質を発現誘導し、粗酵素液を得た。なお、誘導培養は25℃で20時間行った。ここで用いたPH1371のヌクレオチド配列を配列番号6に、PCR反応のためのプライマーを配列番号7および8に示した。
粗酵素液中の可溶タンパク質をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動にて分析したところ、誘導されたタンパク質のバンドが確認できた。
また、APE2248と同様の手法で、酵素活性を測定した。酵素活性の測定結果を図1に示す。
【0114】
3.トランスアミナーゼ(APE0169)
外来遺伝子として、超好熱菌エアロパイラム・ペルニクス(Aeropyrum pernix)のトランスアミナーゼ遺伝子(APE0169)を用いた他は、APE2248に準じて組替え大腸菌を得、タンパク質を発現誘導し、粗酵素液を得た。なお、PCR生成物とベクターの消化にはNotI 1μlとNdeI 1μlを用いた。誘導培養は25℃で20時間行った。ここで用いたAPE0169のヌクレオチド配列を配列番号9に、PCR反応のためのプライマーを配列番号10および11に示した。
粗酵素中の可溶タンパク質をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動にて分析したところ、誘導されたタンパク質のバンドが確認できた。
また、APE2248と同様の手法で、酵素活性を測定した。酵素活性の測定結果を図1に示す。
【0115】
4.トランスアミナーゼ(ST1217)
外来遺伝子として、超好熱菌スルホロバス・トコダイイ(Sulfolobus tokodaii)のトランスアミナーゼ遺伝子(ST1217)を用いた他は、APE2248に準じて組替え大腸菌を得、タンパク質を発現誘導し、粗酵素液を得た。なお、誘導培養は25℃で20時間行った。ここで用いたST1217のヌクレオチド配列を配列番号12に、PCR反応のためのプライマーを配列番号13および14に示した。
粗酵素液中の可溶タンパク質をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動にて分析した。誘導されたタンパク質のバンドが確認できた。
また、APE2248と同様の手法で、酵素活性を測定した。酵素活性の測定結果を図1に示す。
【0116】
5.トランスアミナーゼ(ST1411)
外来遺伝子として、超好熱菌スルホロバス・トコダイイ(Sulfolobus tokodaii)のトランスアミナーゼ遺伝子(ST1411)を用いた他は、APE2248に準じて組替え大腸菌を得、タンパク質を発現誘導し、粗酵素液を得た。なお、誘導培養は25℃で20時間行った。ここで用いたST1411のヌクレオチド配列を配列番号15に、PCR反応のためのプライマーを配列番号16および17に示した。
粗酵素液中の可溶タンパク質をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動にて分析した。誘導されたタンパク質のバンドが確認できた。
また、APE2248と同様の手法で、酵素活性を測定した。酵素活性の測定結果を図1に示す。
【0117】
6.トランスアミナーゼ(ST0191)
外来遺伝子として、超好熱菌スルホロバス・トコダイイ(Sulfolobus tokodaii)のトランスアミナーゼ遺伝子(ST0191)を用いた他は、APE2248に準じて組替え大腸菌を得、タンパク質を発現誘導し、粗酵素液を得た。なお、誘導培養は25℃で20時間行った。ここで用いたST0191のヌクレオチド配列を配列番号18に、PCR反応のためのプライマーを配列番号19および20に示した。
粗酵素液中の可溶タンパク質をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動にて分析した。誘導されたタンパク質のバンドが確認できた。
【0118】
40mMの2-オキソグルタル酸、0.5mMのピリドキサールリン酸、100mMのリン酸緩衝液(pH7.5)、および40mMのオルニチン、アセチルオルニチン、4−アミノブタン酸、5−アミノペンタン酸、β−アラニン、4−アミノブタン、または5−アミノペンタンをアミノ基の供与体として含む反応液190μlに、上記1.の(3)と同様の操作で精製した酵素(0.05μg/μl)を10μl加えて80℃で5分間酵素反応を行った。反応後、30%トリクロロ酢酸水溶液50μlを加えて反応を停止した。反応系中に生成したグルタミン酸は、Marfey’s試薬を用いて誘導体化し、HPLCで定量した。
【0119】
結果を表1に示す。
【表1】

【0120】
7.デヒドロゲナーゼ(ST0064)
外来遺伝子として、超好熱菌スルホロバス・トコダイイ(Sulfolobus tokodaii)のデヒドロゲナーゼ遺伝子(ST0064)を用いた他は、APE2248に準じて組替え大腸菌を得、タンパク質を発現誘導し、粗酵素液を得た。なお、誘導培養は25℃で20時間行った。ここで用いたST0064のヌクレオチド配列を配列番号21に、PCR反応のためのプライマーを配列番号22および23に示した。
粗酵素液中の可溶タンパク質をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動にて分析した。誘導されたタンパク質のバンドが確認できた。
【0121】
10mMのグルタルアルデヒドまたはグリセルアルデヒド、100mMのリン酸緩衝液(pH7.5)、および10mMのニコチンアミド補酵素(酸化型)を含む反応液600μlに、上記1.の(3)と同様な操作で精製した酵素(0.2μg/μl)を20μl加えて50℃で60分間酵素反応を行った。反応後、直ちに氷冷して反応を停止した。反応系中に生成したニコチンアミド補酵素(還元型)を分光高度計を用いて340nmの波長で測定し、酵素活性を求めた。
【0122】
結果を表2に示す。
【表2】

【0123】
[2]α−アミノトランスフェラーゼのスクリーニング
a.4−フルオロフェニルグリオキシル酸、b.2,4,6−トリメチルフェニルグリオキシル酸、c.2−メトキシフェニルグリオキシル酸、d.2,5−ジメチルフェニルグリオキシル酸、e.3−メトキシフェニルグリオキシル酸、f.ビフェニル−4−グリオキシル酸、g.4−メトキシフェニルグリオキシル酸、h.トリメチルグリオキシル酸、j.3,4,5−トリメトキシフェニルグリオキシル酸、k.インドール−3−グリオキシル酸、l.2−メチルインドール−3−グリオキシル酸 m.3,4,5−トリフルオロフェニルグリオキシル酸、n.ナフタレン−1−グリオキシル酸、o.チオフェン−2−グリオキシル酸を用い、各ケト酸を基質とするα−アミノトランスフェラーゼをスクリーニングした。候補となるα−アミノトランスフェラーゼには、PH1371、APE0169、APE2248、ST1217、ST1411を用いた。
【0124】
100mM リン酸緩衝液(pH7.5)、2mM α−ケト酸、5mM L−アラニン、5mM L−グルタミン酸、40mM 5−アミノペンタン酸、1mM NAD、10μM ピリドキサール−5′−リン酸、0.2μgのα−アミノトランスフェラーゼ、2μgのST0191(ω−アミノトランスフェラーゼ)、40μgのST0064(アルデヒドデヒドロゲナーゼ)、Cell Count Reagent(ナカライテスク、電子キャリアーおよびテトラゾリウム塩を含む) 5μl/mlを含む反応液200μlを調製し、70℃で30分間反応させた。反応終了後、反応液を手早く氷冷し、反応液の490nmにおける吸収を測定した。
【0125】
測定結果を表3に示した。なお、表中、目視で着色が認められたものは太字で示した。
【表3】

【0126】
これとは別に、Cell Count Reagent(ナカライテスク)を含まない他は上記と同様の手法で酵素反応を行い、生成したアミノ酸をマススペクトルにて分析した。その結果、着色が確認できた酵素/ケト酸の組み合わせでは、各アミノ酸に相当する分子量のピークを確認できた。
【0127】
本スクリーニング方法を利用することにより、各α−アミノトランスフェラーゼの活性を確認することができた。例えば、ST1411は4−フルオロフェニルグリオキシル酸や4−メトキシフェニルグリオキシル酸を、対応するアミノ酸に変換できることが示された。
【0128】
また、本スクリーニング方法を利用することにより、各ケト酸を特異的に基質とするα−アミノトランスフェラーゼが特定され、従って各アミノ酸合成に有用なα−アミノトランスフェラーゼが明らかとなった。例えば、4−メトキシフェニルグリシン(gに対応するアミノ酸)の合成にはST1411が有用であり、2,5−ジメチルフェニルグリシン(dに対応するアミノ酸)の合成にはAPE0169が有用であることが明らかとなった。
【0129】
[3]α−アミノトランスフェラーゼの比活性測定
(1)好熱菌α−アミノトランスフェラーゼの検量線の作成
100mM リン酸緩衝液(pH7.5)、2mM 3−メチル−2−オキソペンタン酸、10mM L−グルタミン酸、100mM 5−アミノペンタン酸、5mM NADP、10μM ピリドキサール−5′−リン酸、0.005〜0.05μg ST1411、1μg ST0191、10μg ST0064、15μl/ml Cell Count Reagent(ナカライテスク、電子キャリアーおよびテトラゾリウム塩を含む)を含む反応液200μlをマイクロプレート上に調製し、マイクロプレート対応のサーマルサイクラーを用いて酵素反応を行った。サーマルサイクラーのプログラムは70℃(10分)→4℃(10分)とした。反応終了後、マイクロプレートリーダーを用いてA490の値を測定し(表4)、検量線を作成した(図2)。
【表4】

【0130】
表4及び図2に示すように、反応液中の酵素量と上述の反応によって生成されたホルマザンの吸光度(A490)の値との間に良好な直線関係が認められたため、本反応系を用いてα−アミノトランスフェラーゼの比活性を測定可能なことが示された。
【0131】
次に、検量線作成に用いたST1411の3−メチル−2−オキソペンタン酸からのイソロイシンの生成活性を測定した。100mM リン酸緩衝液(pH7.5)、1mM ピリドキサール−5′−リン酸、20mM 3−メチル−2−オキソペンタン酸、20mM L−グルタミン酸、1μg ST1411を含む反応液 200μlを70℃で5分間反応させ、生成したイソロイシンをHPLCで定量した。その結果、ST1411のイソロイシン合成活性は134U/mgであった。
【0132】
(2)好熱菌α−アミノトランスフェラーゼの比活性測定
100mM リン酸緩衝液(pH7.5)、2mM 表5に示す各ケト酸(非天然アミノ酸合成用ケト酸)、10mM L−グルタミン酸、100mM 5−アミノペンタン酸、5mM NADP、10μM ピリドキサール−5′−リン酸、0.02μg α−アミノトランスフェラーゼ、1μg ST0191、10μg ST0064、15μl/ml Cell Count Reagent(ナカライテスク)を含む反応液200μlをマイクロプレート上に調製し、マイクロプレート対応のサーマルサイクラーを用いて酵素反応を行った。サーマルサイクラーのプログラムは70℃(10分)→4℃(10分)とした。反応終了後、マイクロプレートリーダーを用いてA490の値を測定した。
【0133】
一方、比活性を容易に求めることができるように、上記検量線(図2)のX軸の値を、あらかじめ比活性を表すように変換した。即ち、本実験では、0.02μgの酵素を用いたため、上記検量線(図2)のX軸の値(α−アミノトランスフェラーゼの添加量:X)に対し、134U/mg・X×10−3mg(酵素の絶対量)/0.02×10−3mgの値(α−アミノトランスフェラーゼの比活性:X)を求め、α−アミノトランスフェラーゼの添加量(X)をα−アミノトランスフェラーゼの比活性(X)に変換して図3のX軸とした。
【0134】
作成した図3を用いて、測定したA490の値から各ケト酸に対するST1411とAPE0169との比活性を算出し、定量した。
【0135】
結果を表5に示す。
【表5】

【0136】
[4]α−ケト酸の検出及び定量
100mM リン酸緩衝液(pH7.5)、2mM 3−メチル−α−ケト吉草酸、40mM 5−アミノペンタン酸、1mM NAD、10μM ピリドキサール−5′−リン酸、2μg ST1411(α−アミノトランスフェラーゼ)、20μg ST0191(ω−アミノトランスフェラーゼ)、40μg ST0064(アルデヒドデヒドロゲナーゼ)、0−50μM 2−オキソグルタル酸を含む反応液200μlを調製し、70℃で30分間反応させた。反応終了後、反応溶液を素早く氷冷して反応を停止させ、マイクロプレートリーダー(Spectra Max Plus384、モレキュラーデバイス社製)を用いて340nmにおける吸光度を測定した(○)。コントロール(▲)として、ST1411を反応液中に加えていないものも同様に行い、加えたものと比較した。結果を図4に示す。
【0137】
コントロールでは、2−オキソグルタル酸濃度が1−50μMの時、A340の増加はほとんど見られなかった。一方、ST1411を入れた実験系では、A340の増加が見られ、ST1411の反応により、反応液中の2−オキソグルタル酸が増幅し、その結果測定感度が上昇していることが示された。2−オキソグルタル酸濃度が1−50μMの時に、2−オキソグルタル酸濃度とA340の値には直線的な相関性があり、このことからα−ケト酸の定量が可能であることが示唆された。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】本発明の一実施例において、トランスアミラーゼ(APE2248、PH1371、APE0169、ST1217、ST1411)活性の測定結果を示した図である。
【図2】本発明の一実施例において、反応液中のST1411の量と、酵素反応によって生成されたホルマザンの吸光度(A490)の値との相関関係を示す図である。
【図3】本発明の一実施例において、図2のX軸の値をST1411の比活性の値に変換した図である。
【図4】本発明の一実施例において、本発明のケト酸の定量方法に従ってケト酸を定量した実験結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ω−アミノ化合物と、α−アミノトランスフェラーゼが触媒する酵素反応によって生じたα−ケト酸とを基質とし、ω−アミノトランスフェラーゼを触媒とする酵素反応の反応生成物である含アルデヒド化合物を検出することを特徴とする、α−アミノトランスフェラーゼ活性の検出方法。
【請求項2】
含アルデヒド化合物の検出方法が、含アルデヒド化合物を基質とし、酸化型ニコチンアミド補酵素の存在下、アルデヒドデヒドロゲナーゼを触媒とする酵素反応の生成物である還元型ニコチンアミド補酵素を検出する方法であることを特徴とする、請求項1に記載のα−アミノトランスフェラーゼ活性の検出方法。
【請求項3】
検体に、α−アミノトランスフェラーゼの基質になりうるα−ケト酸1とアミノ酸を加えてα−ケト酸2を生成させる工程と、
α−ケト酸2とω−アミノ化合物とを、それらを基質とするω−アミノトランスフェラーゼの存在下で反応させて、含アルデヒド化合物を生成させる工程と、
含アルデヒド化合物を検出する工程と、
を有することを特徴とする、α−アミノトランスフェラーゼ活性の検出方法。
【請求項4】
含アルデヒド化合物の検出工程が、酸化型ニコチンアミド補酵素の存在下、含アルデヒド化合物に、含アルデヒド化合物を基質とするアルデヒドデヒドロゲナーゼを作用させ、生成する還元型ニコチンアミド補酵素を検出する工程であることを特徴とする、請求項3に記載のα−アミノトランスフェラーゼ活性の検出方法。
【請求項5】
α−アミノトランスフェラーゼが好熱菌由来である、請求項1〜4の何れか1項に記載のα−アミノトランスフェラーゼ活性の検出方法。
【請求項6】
ω−アミノトランスフェラーゼが好熱菌由来である、請求項1〜4の何れか1項に記載のα−アミノトランスフェラーゼ活性の検出方法。
【請求項7】
アルデヒドデヒドロゲナーゼが好熱菌由来である、請求項4に記載のα−アミノトランスフェラーゼ活性の検出方法。
【請求項8】
α−アミノトランスフェラーゼの基質になりうるα−ケト酸1及びアミノ酸と、
α−アミノトランスフェラーゼによる反応生成物であるα−ケト酸2を基質とするω−アミノトランスフェラーゼと、
ω−アミノトランスフェラーゼの基質であるω−アミノ化合物と、
を有する、α−アミノトランスフェラーゼ活性の検出用キット。
【請求項9】
さらに、ω−アミノトランスフェラーゼによる反応生成物である含アルデヒド化合物を基質とするアルデヒドデヒドロゲナーゼと、
酸化型ニコチンアミド補酵素と
を有する、請求項8に記載のα−アミノトランスフェラーゼ活性の検出用キット。
【請求項10】
複数のα−アミノトランスフェラーゼのそれぞれに対し、α−ケト酸を用いて請求項1〜7のいずれか1項に記載の検出方法を行うことを特徴とする、α−ケト酸をアミノ基転移反応によってアミノ酸に変換するためのα−アミノトランスフェラーゼのスクリーニング方法。
【請求項11】
α−ケト酸1と、
このα−ケト酸1を基質とするα−アミノトランスフェラーゼの基質になりうるアミノ酸と、
このα−アミノトランスフェラーゼを触媒とする酵素反応の反応生成物であるα−ケト酸2を基質とするω−アミノトランスフェラーゼと、
このω−アミノトランスフェラーゼの基質であるω−アミノ化合物と
を有する、α−ケト酸をアミノ基転移反応によってアミノ酸に変換するためのα−アミノトランスフェラーゼのスクリーニング用キット。
【請求項12】
さらに、ω−アミノトランスフェラーゼを触媒とする酵素反応の反応生成物である含アルデヒド化合物を基質とするアルデヒドデヒドロゲナーゼと、
酸化型ニコチンアミド補酵素と
を有する、請求項12に記載のα−ケト酸をアミノ基転移反応によってアミノ酸に変換するためのα−アミノトランスフェラーゼのスクリーニング用キット。
【請求項13】
複数のα−ケト酸のそれぞれに対し、α−アミノトランスフェラーゼを用いて請求項1〜7に記載のいずれかの検出方法を行うことを特徴とする、α−アミノトランスフェラーゼ基質のスクリーニング方法。
【請求項14】
α−ケト酸1を基質とするα−アミノトランスフェラーゼの基質になりうるアミノ酸と、
このα−アミノトランスフェラーゼを触媒とする酵素反応の反応生成物であるα−ケト酸2を基質とするω−アミノトランスフェラーゼと、
このω−アミノトランスフェラーゼの基質であるω−アミノ化合物と
を有する、α−アミノトランスフェラーゼ基質のスクリーニング用キット。
【請求項15】
さらに、ω−アミノトランスフェラーゼを触媒とする酵素反応の反応生成物である含アルデヒド化合物を基質とするアルデヒドデヒドロゲナーゼと、
酸化型ニコチンアミド補酵素と、
を有することを特徴とする、請求項14に記載のα−アミノトランスフェラーゼ基質のスクリーニング用キット。
【請求項16】
ω−アミノトランスフェラーゼの基質になりうるα−ケト酸とω−アミノ化合物とを、ω−アミノトランスフェラーゼの存在下で反応させ、アミノ酸及び含アルデヒド化合物を生成する第1の工程と、
生成したアミノ酸のアミノ基を除去することにより、α−ケト酸を再生する第2の工程と、
第1の工程及び第2の工程を繰り返すことによってα−ケト酸及び含アルデヒド化合物を増加させる第3の工程と、
増加した含アルデヒド化合物を定量する第4の工程と
を有することを特徴とする、α−ケト酸の定量方法。
【請求項17】
第2の工程におけるアミノ酸からのアミノ基の除去方法が、α−アミノトランスフェラーゼを用いた酵素反応であることを特徴とする、請求項16に記載のα−ケト酸の定量方法。
【請求項18】
第4の工程における含アルデヒド化合物の定量方法が、含アルデヒド化合物に、酸化型ニコチンアミド補酵素の存在下、含アルデヒド化合物を基質とするアルデヒドデヒドロゲナーゼを作用させ、生成する還元型ニコチンアミド補酵素を定量する方法である、請求項16に記載のα−ケト酸の定量方法。
【請求項19】
α−アミノトランスフェラーゼが好熱菌由来である、請求項16〜18の何れか1項に記載のα−ケト酸の定量方法。
【請求項20】
ω−アミノトランスフェラーゼが好熱菌由来である、請求項16〜18の何れか1項に記載のα−ケト酸の定量方法。
【請求項21】
アルデヒドデヒドロゲナーゼが好熱菌由来である、請求項18に記載のα−ケト酸の定量方法。
【請求項22】
ω−アミノトランスフェラーゼと、
ω−アミノトランスフェラーゼの基質になりうるω−アミノ化合物と、
ω−アミノトランスフェラーゼを触媒とする酵素反応の反応生成物であるアミノ酸を基質とするα−アミノトランスフェラーゼと、
α−アミノトランスフェラーゼの基質になりうるα−ケト酸と
を有する、α−ケト酸の定量用キット。
【請求項23】
さらに、ω−アミノトランスフェラーゼを触媒とする酵素反応の反応生成物である含アルデヒド化合物を基質とするアルデヒドデヒドロゲナーゼと、
酸化型ニコチンアミド補酵素と、
を有する、請求項22に記載のα−ケト酸の定量用キット。
【請求項24】
比活性が未知のα−アミノトランスフェラーゼの所定量に、このα−アミノトランスフェラーゼの基質になりうるα−ケト酸1とアミノ酸を加えてα−ケト酸2を生成させる工程と、
α−ケト酸2とω−アミノ化合物とを、それらを基質とするω−アミノトランスフェラーゼの存在下で反応させて、含アルデヒド化合物を生成させる工程と、
生成した含アルデヒド化合物を定量する工程と、
比活性が既知のα−アミノトランスフェラーゼを用いることにより生成された含アルデヒド化合物の量と、その際の当該α−アミノトランスフェラーゼの使用量との相関関係に、上記工程で測定した含アルデヒド化合物の生成量を照合し、比活性が未知のα−アミノトランスフェラーゼの比活性を算出する工程と、
を有することを特徴とする、α−アミノトランスフェラーゼの比活性測定方法。
【請求項25】
比活性が未知のα−アミノトランスフェラーゼの所定量に、α−アミノトランスフェラーゼの基質になりうるα−ケト酸1とアミノ酸を作用させて、α−ケト酸2を生成させる工程と、
α−ケト酸2とω−アミノ化合物とを、それらを基質とするω−アミノトランスフェラーゼの存在下で反応させて、含アルデヒド化合物を生成させる工程と、
この含アルデヒド化合物を、酸化型ニコチンアミド補酵素の存在下、含アルデヒド化合物を基質とするアルデヒドデヒドロゲナーゼを作用させて、還元型ニコチンアミド補酵素を生成させる工程と、
生成した還元型ニコチンアミド補酵素の吸光度を測定する工程と、
比活性が既知のα−アミノトランスフェラーゼを用いることにより生成された還元型ニコチンアミド補酵素の吸光度、その際の当該α−アミノトランスフェラーゼの使用量との相関関係に、上記工程で測定した還元型ニコチンアミノ補酵素の吸光度を照合し、比活性が未知のα−アミノトランスフェラーゼの比活性を算出する工程と
を有することを特徴とする、α−アミノトランスフェラーゼの比活性測定方法。
【請求項26】
α−アミノトランスフェラーゼが好熱菌由来である、請求項24または25に記載のα−アミノトランスフェラーゼの比活性測定方法。
【請求項27】
ω−アミノトランスフェラーゼが好熱菌由来である、請求項24または25に記載のα−アミノトランスフェラーゼの比活性測定方法。
【請求項28】
アルデヒドデヒドロゲナーゼが好熱菌由来である、請求項25に記載のα−アミノトランスフェラーゼの比活性測定方法。
【請求項29】
比活性が未知のα−アミノトランスフェラーゼの基質になりうるα−ケト酸1及びアミノ酸と、
α−アミノトランスフェラーゼを触媒とする酵素反応の反応生成物であるα−ケト酸2を基質とするω−アミノトランスフェラーゼと、
ω−アミノトランスフェラーゼの基質になりうるω−アミノ化合物と、
を有する、α−アミノトランスフェラーゼの比活性測定用キット。
【請求項30】
さらに、ω−アミノトランスフェラーゼによる反応生成物である含アルデヒド化合物を基質とするアルデヒドデヒドロゲナーゼと、
酸化型ニコチンアミド補酵素と
を有することを特徴とする、請求項29に記載のα−アミノトランスフェラーゼの比活性測定用キット。
【請求項31】
さらに、比活性が既知のα−アミノトランスフェラーゼを含むことを特徴とする請求項29または30に記載のα−アミノトランスフェラーゼの比活性測定用キット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−271375(P2006−271375A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−55244(P2006−55244)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(301037213)独立行政法人製品評価技術基盤機構 (25)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【Fターム(参考)】