説明

α−オレフィン低重合体の製造方法

【課題】より高い触媒活性と生成物選択率を有し、かつ、プロセス閉塞の原因となるポリマーの副生を抑制できる、工業的に有利なα−オレフィン低重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】触媒の存在下、溶媒中で原料α−オレフィンの低重合反応を行うことにより、反応生成物であるα−オレフィン低重合体を得るにあたり、該触媒が、遷移金属含有化合物、アルミニウム含有化合物及び下式(I)で示されるハロゲン含有化合物からなる触媒であり、反応器内の溶媒に対する水分重量が0.1〜13.0wtppmであることを特徴とするα−オレフィン低重合体の製造方法。


[式中、Xはハロゲン原子を表し、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基又は置換基を有していてもよいヘテロ原子含有炭化水素基を表し、Rは置換基を有していてもよい芳香族基又は芳香族複素環基を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒の存在下、溶媒中でα−オレフィンを低重合反応させ、α―オレフィン低重合体を得る方法に関し、より詳細には、原料のエチレンの三量化反応によって、1−ヘキセンを得る方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
α−オレフィン低重合体は、オレフィン系重合体(ポリマー)の原料モノマーとして、また各種高分子のコモノマーとして、さらには可塑剤や界面活性剤、潤滑油などの原料として広く用いられる有用な物質である。中でも、エチレンを三量化して得ることができる1−ヘキセンは、直鎖状低密度ポリエチレンの原料として有用であることが知られている。
【0003】
通常、α−オレフィンの低重合体は、触媒、中でも均一系触媒を用いて、溶媒の存在下で原料α−オレフィンを低重合反応させる方法で製造されている。低重合反応に用いる触媒として、例えば、チーグラー系触媒(特許文献1)やクロム系触媒(特許文献2,3)などがあり、これら触媒を使用すれば、エチレンの低重合体として1−ヘキセンを高い選択率で製造することができる。
【0004】
また、特許文献2,3に記載のクロム系触媒は、触媒成分としてハロゲン含有化合物を含有すれば、触媒活性や反応生成物の選択率の向上に寄与することが知られており、特許文献2には、いくつかの無機あるいは有機ハロゲン化合物がハロゲン含有化合物として例示されている。また、同様に、特許文献3にも2−フルオロ−6−クロロベンゾトリクロリドなどの有機ハロゲン化合物が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】日本国特開2002−256007号公報
【特許文献2】日本国特開平6−239920号公報
【特許文献3】中国特許第1256968号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらハロゲン含有化合物は、使用する触媒系やその種類によって、発現する触媒活性や反応生成物の選択率向上の効果は様々であり、工業的なα−オレフィン低重合体の製造において満足できる触媒活性や選択率を達成できるとは限らなかった。また、反応系内に水が存在すると、長期連続運転で反応を継続する場合に触媒活性が低下すると共に副生物であるポリマー生成が促進されることから、予め系内より水分を除去し、水分濃度が管理された条件下において反応を行う必要があった。
【0007】
このような問題点に鑑み、本発明では、α−オレフィンの低重合反応によるα−オレフィン低重合体の製造方法、特にエチレンの三量化反応による1−ヘキセンの製造方法において、より高い触媒活性と生成物選択率を有し、かつ、プロセス閉塞の原因となる副生成物のポリマー生成の抑制できる、工業的に有利なα−オレフィン低重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、触媒成分として、ある特定の
構造を有するハロゲン含有化合物を使用し、且つ、反応系内の水分濃度を一定の数値範囲に調整することで、驚くべきことに触媒の活性が飛躍的に向上し、プロセス閉塞の原因となる副生成物のポリマーの選択率を下げることができることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の要旨は、以下の[1]〜[7]に存する。
[1] 触媒の存在下、溶媒中で原料α−オレフィンの低重合反応を行うことにより、反応生成物であるα−オレフィン低重合体を得る、α−オレフィン低重合体の製造方法であって、該触媒が、遷移金属含有化合物、アルミニウム含有化合物及び下記一般式(I)で表されるハロゲン含有化合物を含む触媒であり、反応器内の溶媒に対する水分含有量が0.1〜13.0wtppmであるα−オレフィン低重合体の製造方法。
【0009】
【化1】

【0010】
(上記式(I)中、Xはハロゲン原子を表す。R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基又は置換基を有していてもよいヘテロ原子含有炭化水素基である。Rは、置換基を有していてもよい芳香族基又は芳香族複素環基である。)
[2] 前記一般式(I)中のXが、塩素又は臭素である上記[1]に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
[3] 前記遷移金属含有化合物が周期表第4〜6族の遷移金属を含む上記[1]又は[2]に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
[4] 前記遷移金属含有化合物が、クロム、チタン、ジルコニウム、バナジウム及びハフニウムからなる群より選ばれる1種類以上の金属を含有する上記[1]〜[3]のいずれかに記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
[5] 前記触媒が、更に窒素含有化合物を含む上記[1]〜[4]のいずれかに記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
[6] 前記溶媒が、飽和炭化水素である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
[7] 前記α−オレフィンがエチレンであり、前記α−オレフィン低重合体が1−ヘキセンである上記[1]〜[6]のいずれかに記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、α−オレフィンの低重合反応によりα−オレフィン低重合体を製造するにあたり、反応収率を維持しつつ、触媒活性を向上でき、ポリマー固形物の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本実施の形態におけるα−オレフィン低重合体(1−ヘキセン)の製造フロー例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、発明の実施の形態)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲
内で種々変形して実施することが出来る。
(α−オレフィン)
本実施の形態が適用されるα−オレフィン低重合体の製造方法において、原料として使用するα−オレフィンとしては、例えば、炭素数2〜炭素数30の置換又は非置換のα−オレフィンが挙げられる。このようなα−オレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。中でも、本発明では原料のα−オレフィンとしてはエチレンが好適であり、エチレンを原料とした場合、エチレンの三量体である1−ヘキセンが高収率かつ高選択率で得ることができるので好ましい。また、エチレンを原料として用いる場合、原料中にエチレン以外の不純物成分を含んでいても構わない。具体的な成分としては、メタン、エタン、アセチレン、二酸化炭素等が挙げられる。これらの成分は、原料のエチレンに対して0.1mol%以下であることが好ましい。
【0014】
(溶媒)
本実施の形態が適用されるα−オレフィン低重合体の製造方法では、α−オレフィンの反応を溶媒中で行うことができる。このような溶媒としては特に限定されないが、飽和炭化水素が好適に使用され、好ましくは、ブタン、ペンタン、3−メチルペンタン、n−ヘキサン、n−へプタン、2−メチルヘキサン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、2,2,4−トリメチルペンタン、デカリン等の、炭素数1〜20の鎖状飽和炭化水素又は炭素数1〜20の脂環式飽和炭化水素である。また、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、テトラリン等の芳香族炭化水素をα−オレフィン低重合体を溶媒として用いてもよい。これらは、単独で使用する他、混合溶媒として使用することもできる。
【0015】
これらの溶媒の中でも、ポリエチレン等の副生ポリマーの生成又は析出を抑制できるという観点、更に、高い触媒活性が得られる傾向にあるという観点から、炭素数4〜炭素数10の鎖状飽和炭化水素又は脂環式飽和炭化水素を用いるのが好ましく、具体的には、n−ヘプタン又はシクロヘキサンが好ましく、最も好ましくは、n−ヘプタンである。
(触媒)
本発明で使用する触媒は、α−オレフィンを低重合反応させ、α−オレフィン低重合体を生成できる触媒であれば、特に限定されないが、少なくとも触媒成分として遷移金属含有化合物、アルミニウム含有化合物及び一般式(I)で表されるハロゲン含有化合物の組み合わせからなる触媒系を使用する。また、これら3つの触媒成分に加えて、更に窒素含有化合物を含有することが好ましい。
【0016】
(遷移金属含有化合物)
本実施の形態が適用されるα−オレフィン低重合体の製造方法において、触媒として使用する遷移金属含有化合物に含有する金属としては、遷移金属であれば特に限定されないが、中でも、周期表第4〜6族の遷移金属が好ましく用いられる。具体的に、好ましくは、クロム、チタン、ジルコニウム、バナジウム及びハフニウムからなる群より選ばれる1種類以上の金属であり、更に好ましくは、クロム及びチタンの少なくとも一方であり、最も好ましくは、クロムである。
【0017】
本発明において、触媒の原料として使用される遷移金属含有化合物は、一般式MeZで表される1種以上の化合物である。ここで、一般式中、Meは遷移金属元素、Zは任意の有機基もしくは無機基又は陰性原子を表す。nは1から6の整数を表し、2以上が好ましい。nが2以上の場合、Zは同一又は相互に異なっていても良い。有機基としては、置換基を有していても良い炭素数1〜30の炭化水素基であればよく、具体的には、カルボニル基、アルコキシ基、カルボキシル基、β−ジケトナート基、β−ケトカルボキシル基、β−ケトエステル基、アミド基等が挙げられる。また、無機基としては、硝酸基、硫酸
基等の金属塩形成基が挙げられる。また、陰性原子としては、酸素原子、ハロゲン原子等が挙げられる。なお、ハロゲン原子が含まれる遷移金属含有化合物は、後述するハロゲン含有化合物には含まれない。
【0018】
遷移金属がクロムである遷移金属含有化合物(以下、クロム含有化合物と呼ぶことがある)の場合、具体例としては、クロム(IV)−tert−ブトキシド、クロム(III)アセチルアセトナート、クロム(III)トリフルオロアセチルアセトナート、クロム(III)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、クロム(III)(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)、Cr(PhCOCHCOPh)(但し、ここでPhはフェニル基を示す。)、クロム(II)アセテート、クロム(III)アセテート、クロム(III)2−エチルヘキサノエート、クロム(III)ベンゾエート、クロム(III)ナフテネート、クロム(III)ヘプタノエート、Cr(CHCOCHCOOCH、塩化第一クロム、塩化第二クロム、臭化第一クロム、臭化第二クロム、ヨウ化第一クロム、ヨウ化第二クロム、フッ化第一クロム、フッ化第二クロム等が挙げられる。
【0019】
遷移金属がチタンである遷移金属含有化合物(以下、チタン含有化合物と呼ぶことがある)の場合、具体例としては、TiCl、TiBr、TiI、TiBrCl、TiBrCl、Ti(OC、Ti(OCCl、Ti(O−n−C、Ti(O−n−CCl、Ti(O−iso−C、Ti(O−iso−CCl、Ti(O−n−C、Ti(O−n−CCl、Ti(O−iso−C、Ti(O−iso−CCl、Ti(O−tert−C、Ti(O−tert−CCl、TiCl(thf)(左記化学式中、thfはテトラヒドロフランを表す)、Ti((CHN)、Ti((CN)、Ti((n−CN)、Ti((iso−CN)、Ti((n−CN)、Ti((tert−CN)、Ti(OSOCH、Ti(OSO、Ti(OSO、Ti(OSO、TiCpCl、TiCpClBr、Ti(OCOC、Ti(OCOCCl、Ti(OCOC、Ti(OCOCCl、Ti(OCOC、Ti(OCOCCl、Ti(OCOC、Ti(OCOCClなどが挙げられる。
【0020】
遷移金属がジルコニウムである遷移金属含有化合物(以下、ジルコニウム含有化合物と呼ぶことがある)の場合、具体例としては、ZrCl、ZrBr、ZrI、ZrBrCl、ZrBrCl、Zr(OC、Zr(OCCl、Zr(O−n−C、Zr(O−n−CCl、Zr(O−iso−C、Zr(O−iso−CCl、Zr(O−n−C、Zr(O−n−CCl、Zr(O−iso−C、Zr(O−iso−CCl、Zr(O−tert−C、Zr(O−tert−CCl、Zr((CHN)、Zr((CN)、Zr((n−CN)、Zr((iso−CN)、Zr((n−CN)、Zr((tert−CN)、Zr(OSOCH、Zr(OSO、Zr(OSO、Zr(OSO、ZrCpCl、ZrCpClBr、Zr(OCOC、Zr(OCOCCl、Zr(OCOC、Zr(OCOCCl、Zr(OCOC、Zr(OCOCCl、Zr(OCOC、Zr(OCOCCl、ZrCl(HCOCFCOF)、ZrCl(CHCOCFCOCHなどが挙げられる。
【0021】
遷移金属がバナジウムである遷移金属含有化合物(以下、バナジウム含有化合物と呼ぶことがある)の場合、具体例としては、五酸化バナジウム、バナジウムオキシトリクロリド,バナジウムオキシトリブロミド,メトキシバナデート,エトキシバナデート,n−プロピルバナデート,イソプロポキシバナデート,n−ブトキシバナデート,イソブトキシバナデート,t−ブチルバナデート,1−メチルブトキシバナデート,2−メチルブトキシバナデート,n−プロポキシバナデート,ネオペントキシバナデート,2−エチルブトキシバナデート,シクロヘキシルバナデート,アリルシクロヘキシルバナデート,フェノキシバナデート、バナジウム(III)アセチルアセトナート、バナジウム(III)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、バナジウム(III)(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)、V(C6 5 COCHCOC6 5 3 、バナジウム(III)アセテート、バナジウム(III)2−エチルヘキサノエート、バナジウム(III)ベンゾエート、バナジウム(III)ナフテネート、V(CH3 COCHCOOCH3 3 、塩化(III)バナジウム、臭化(III)バナジウム、ヨウ化(III)バナジウム、フッ化(III)バナジウム、ビス(シクロペンタジエニル)バナジウムジメチル、ビス(シクロペンタジエニル)バナジウムジメチルクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)バナジウムエチルクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)バナジウムジクロリド、等が挙げられる。
【0022】
遷移金属がハフニウムである遷移金属含有化合物(以下、ハフニウム含有化合物と呼ぶことがある)の場合、具体例としては、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−イソプロピル−4H−アズレニル)}ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}〕ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(4−フルオロフェニル)−4H−アズレニル}〕ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(3−クロロフェニル)−4H−アズレニル}〕ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−{2−メチル−4−(2,6−ジメチルフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4,6−ジイソプロピル−4H−アズレニル)}ハフニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ハフニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ハフニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(1−ナフチル)−4H−アズレニル}〕ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−エチル−4−(1−アントラセニル)−4H−アズレニル}〕ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−エチル−4−(2−アントラセニル)−4H−アズレニル}〕ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−エチル−4−(9−フェナンスリル)−4H−アズレニル}〕ハフニウムジクロリド、ジメチルメチレンビス[1−{2−メチル−4−(4−ビフェニリル)−4H−アズレニル}]ハフニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス[1−{2−メチル−4−(4−ビフェニリル)−4H−アズレニル}]ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4―(3,5−ジメチル−4−トリメチルシリルフェニル−4H−アズレニル)}ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレ2ン[1−{2−メチル−4−(4−ビフェニリル)−4H−アズレニル}][1−{2−メチル−4−(4−ビフェニリル)インデニル}]ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレン{1−(2−エチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}{1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)}ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)}ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(1−ナフチル)インデニル}〕ハフニウムジクロリド等が挙げられる。
【0023】
これらの遷移金属含有化合物の中でも、クロム含有化合物が好ましく、クロム含有化合物の中でも、特に好ましくは、クロム(III)2−エチルヘキサノエートである。
(アルミニウム含有化合物)
本実施の形態で使用するアルミニウム含有化合物は、トリアルキルアルミニウム化合物、ハロゲン化アルキルアルミニウム化合物、アルコキシアルキルアルミニウム化合物、又は水素化アルキルアルミニウム化合物等などが挙げられる。トリアルキルアルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが挙げられる。ハロゲン化アルキルアルミニウム化合物の具体的な例としては、ジエチルアルミニウムモノクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリドが挙げられる。アルコキシアルミニウム化合物の具体的な例としては、ジエチルアルミニウムエトキシドが挙げられる。水素化アルキルアルミニウム化合物の具体的な例としては、ジエチルアルミニウムヒドリドが挙げられる。これらの中でも、トリアルキルアルミニウム化合物が好ましく、トリエチルアルミニウムが更に好ましい。これらの化合物は、単一の化合物を使用しても、複数の化合物を混合して用いても良い。
【0024】
(ハロゲン含有化合物)
本発明で使用するハロゲン含有化合物としては、下記一般式(I)で表される化合物が用いられる。
【0025】
【化2】

【0026】
(上記式(I)中、Xはハロゲン原子を表す。R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基又は置換基を有していてもよいヘテロ原子含有炭化水素基である。Rは、置換基を有していてもよい芳香族基又は芳香族複素環基である。)
上記式(I)中のXは、ハロゲン原子を表し、具体的には、塩素、臭素、フッ素、又はヨウ素が挙げられ、好ましくは塩素又は臭素であり、最も好ましくは、塩素である。
【0027】
上記式(I)中のR〜Rは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基又は置換基を有していてもよいヘテロ原子含有炭化水素基である。炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリル基、アリール基、ビニル基などが挙げられ、ヘテロ原子含有炭化水素基としては、上記に例示した炭化水素基の酸素含有基、窒素含有基、イオウ含有基などが挙げられる。好ましくはアルキル基であり、更に好ましくは、炭素数が1〜10の直鎖状または分岐状のアルキル基である。また、R〜Rが炭化水素基の場合、本発明の効果を著しく阻害しない範囲で、任意の炭素原子上に置換基を有していてもよく、その置換基の具体例として、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基などがある。
【0028】
上記式(I)中のRは置換基を有していてもよい芳香族基又は芳香族複素環基である。
本発明における芳香族基とは、芳香族性を有する環式の炭化水素基のことであり、例えば、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、1−ナフチル基、2−ナ
フチル基、o−キシリル基、m−キシリル基、ビフェニリル基等が挙げられる。
【0029】
芳香族複素環基としては、特に限定されないが、例えばフリル基、チエニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、キノリル基、イソキノリル基が挙げられる。
なお、芳香族基又は芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリル基、アリール基、ビニル基、酸素含有基、窒素含有基、イオウ含有基などが挙げられる。
【0030】
上記一般式(I)で表されるハロゲン含有化合物の種類は、芳香族系ハロゲン含有化合物又は複素芳香族系ハロゲン含有化合物に分類される。
式(I)中のXが塩素である芳香族系ハロゲン含有化合物の具体例としては、ベンジルクロリド、(1−クロロエチル)ベンゼン、2−メチルベンジルクロリド、3−メチルベンジルクロリド、4−メチルベンジルクロリド、4−エチルベンジルクロリド、4−イソプロピルベンジルクロリド、4−tert−ブチルベンジルクロリド、4−ビニルベンジルクロリド、α−エチル−4−メチルベンジルクロリド、α,α´−ジクロロ−o−キシレン、α,α´−ジクロロ−m−キシレン、α,α´−ジクロロ−p−キシレン、2,4−ジメチルベンジルクロリド、2,5−ジメチルベンジルクロリド、2,6−ジメチルベンジルクロリド、3,4−ジメチルベンジルクロリド、2,4,5−トリメチルベンジルクロリド、2,4,6−トリメチルベンジルクロリド、2,4,6−トリイソプロピルベンジルクロリド、2,3,5,6−テトラメチルベンジルクロリド、1−(クロロメチル)ナフタレン、1−(クロロメチル)−2−メチルナフタレン、1,4−ビス−クロロメチル−2,3−ジメチルナフタレン、1,8−ビス−クロロメチル−2,3,4,5,6,7−ヘキサメチルナフタレン、9−(クロロメチル)アントラセン、9,10−ビス(クロロメチル)アントラセン、7−(クロロメチル)ベンズアントラセン、7−クロロメチル−12−メチルベンズアントラセン、2−クロロベンジルクロリド、3−クロロベンジルクロリド、4−クロロベンジルクロリド、2−ブロモベンジルクロリド、3−ブロモベンジルクロリド、4−ブロモベンジルクロリド、2−フルオロベンジルクロリド、3−フルオロベンジルクロリド、4−フルオロベンジルクロリド、2−ニトロベンジルクロリド、3−ニトロベンジルクロリド、4−ニトロベンジルクロリド、2−シアノベンジルクロリド、3−シアノベンジルクロリド、4−シアノベンジルクロリド、2−メトキシベンジルクロリド、3−メトキシベンジルクロリド、4−メトキシベンジルクロリド、2−フェノキシベンジルクロリド、4−(メチルチオ)ベンジルクロリド、4−(トリフルオロメトキシ)ベンジルクロリド、1−(1−クロロエチル)−4−ニトロベンゼン、2,3−ジクロロベンジルクロリド、2,4−ジクロロベンジルクロリド、2,6−ジクロロベンジルクロリド、3,4−ジクロロベンジルクロリド、2,4−ジフルオロベンジルクロリド、2,6−ジフルオロベンジルクロリド、2−クロロ−4−フルオロベンジルクロリド、2−クロロ−6−フルオロベンジルクロリド、4−ブロモ−2−フルオロベンジルクロリド、2−メチル−3−ニトロベンジルクロリド、4−メチル−3−ニトロベンジルクロリド、5−メチル−2−ニトロベンジルクロリド、2−メチル−2−フェノキシベンジルクロリド、α,α´,2,3,5,6−ヘキサクロロ−p−キシレン、α,α´,2,4,5,6−ヘキサクロロ−m−キシレン等が挙げられる。
【0031】
式(I)中のXが臭素である芳香族系ハロゲン含有化合物の具体例としては、ベンジルブロミド、(1−ブロモエチル)ベンゼン、4−ブチルベンジルブロミド、α−ブロモ−o−キシレン、α−ブロモ−m−キシレン、α−ブロモ−p−キシレン、α,α´−ジブロモ−o−キシレン、α,α´−ジブロモ−m−キシレン、α,α´−ジブロモ−p−キシレン、3,5−ジ−tert−ブチルベンジルブロミド、2−(ブロモメチル)ナフタレン、1,4−ビス(ブロモメチル)ナフタレン、2−クロロベンジルブロミド、3−ク
ロロベンジルブロミド、4−クロロベンジルブロミド、2−ブロモベンジルブロミド、3−ブロモベンジルブロミド、4−ブロモベンジルブロミド、2−フルオロベンジルブロミド、3−フルオロベンジルブロミド、4−フルオロベンジルブロミド、2−ヨードベンジルブロミド、3−ヨードベンジルブロミド、4−ヨードベンジルブロミド、2−ニトロベンジルブロミド、3−ニトロベンジルブロミド、4−ニトロベンジルブロミド、2−シアノベンジルブロミド、4−シアノベンジルブロミド、2−(トリフルオロメトキシ)ベンジルブロミド、4−(トリフルオロメトキシ)ベンジルブロミド、4−(トリフルオロメチルチオ)ベンジルブロミド、2,3−ジクロロベンジルブロミド、3,4−ジクロロベンジルブロミド、2,5−ジクロロベンジルブロミド、2,6−ジクロロベンジルブロミド、2,4−ジフルオロベンジルブロミド、3,4−ジフルオロベンジルブロミド、2,5−ジフルオロベンジルブロミド、3,5−ジフルオロベンジルブロミド、2,6−ジフルオロベンジルブロミド、3,5−ジメトキシベンジルブロミド、3,5−ジベンジルオキシベンジルブロミド、2−クロロ−4−フルオロベンジルブロミド、2−クロロ−5−フルオロベンジルブロミド、2−クロロ−6−フルオロベンジルブロミド、3−クロロ−2−フルオロベンジルブロミド、3−ブロモ−4−フルオロベンジルブロミド、4−ブロモ−2−フルオロベンジルブロミド、5−クロロ−2−ニトロベンジルブロミド、2−ヒドロキシ−5−ニトロベンジルブロミド、3−(2−フルオロメトキシ)ベンジルブロミド、3−(4−フルオロフェノキシ)ベンジルブロミド、2,3,4−トリフルオロベンジルブロミド、2,4,5−トリフルオロベンジルブロミド、3,4,5−トリフルオロベンジルブロミド、3,5−ビス(3,5−ジメトキシベンジルオキシ)ベンジルブロミド、3,5−ビス(tert−ブチルチオ)ベンジルブロミド、3,5−ビス[3,5−ビス(3,5−ベンジルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルブロミド、ペンタフルオロベンジルブロミド、2,3,4,5−テトラフルオロベンジルブロミド、2,3,5,6−テトラフルオロベンジルブロミド等が挙げられる。
【0032】
式(I)中のXがフッ素又はヨウ素である芳香族系ハロゲン含有化合物の具体例としては、ベンジルフロリド、ベンジルアイオダイド等が挙げられる。
複素芳香族系ハロゲン含有化合物の具体例としては、2,6−ビス(クロロメチル)ピリジン、2,6−ビス(ブロモメチル)ピリジン、2−(クロロメチル)−5−ニトロフラン、2−クロロ−5−(クロロメチル)ピリジン、2−クロロ−5−(クロロメチル)チオフェン等が挙げられる。
【0033】
上記式(I)で表されるハロゲン含有化合物の中で、触媒活性を向上させ、且つ目的生成物の選択率を向上できるという観点から、式(I)中のXが塩素又は臭素である芳香族系ハロゲン含有化合物が好ましく、中でも入手のし易さや分解物が反応へ与える影響が少ないという観点から、更に好ましくはベンジルクロリドである。これらのハロゲン含有化合物は1種類で用いても複数の種類を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
また、式(I)で表されるハロゲン含有化合物の他に、発明の効果を阻害しない範囲で、5−クロロ−1,3−ペンタジエン、5−メチル−1,2,3,4,5−ペンタクロロ−1,3−シクロペンタジエン、5−クロロ−1,3−シクロペンタジエン、などのハロゲン含有化合物も必要に応じて触媒成分として使用しても良い。
(窒素含有化合物)
本発明では、上記の遷移金属含有化合物、アルミニウム含有化合物及びハロゲン含有化合物の3つの触媒成分に加えて、更に、窒素含有化合物を触媒成分として含むことが好ましい。窒素含有化合物としては、アミン、アミド又はイミド等が挙げられる。
【0035】
アミン類としては、例えばピロール化合物が挙げられ、具体例としては、ピロール、2,4−ジメチルピロール、2,5−ジメチルピロール、2−メチル−5−エチルピロール、2,5−ジメチル−3−エチルピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジクロ
ロピロール、2,3,4,5−テトラクロロピロール、2−アセチルピロール、2つのピロール環が置換基を介して結合したジピロール等のピロール又はこれらの誘導体が挙げられる。誘導体としては、例えば、金属ピロライド誘導体が挙げられ、具体例としては、例えば、ジエチルアルミニウムピロライド、エチルアルミニウムジピロライド、アルミニウムトリピロライド、ジエチルアルミニウム(2,5−ジメチルピロライド)、エチルアルミニウムビス(2,5−ジメチルピロライド)、アルミニウムトリス(2,5−ジメチルピロライド)等のアルミニウムピロライド類、ナトリウムピロライド、ナトリウム(2,5−ジメチルピロライド)等のナトリウムピロライド類、リチウムピロライド、リチウム(2,5−ジメチルピロライド)等のリチウムピロライド類、カリウムピロライド、カリウム(2,5−ジメチルピロライド)等のカリウムピロライド類が挙げられる。なお、アルミニウムピロライド類は、上述のアルミニウム含有化合物には含まれない。また、ハロゲンを含有するピロール化合物は、上述のハロゲン含有化合物には含まれない。
【0036】
アミド類としては、例えば、アセトアミド、N−メチルヘキサンアミド、スクシンアミド、マレアミド、N−メチルベンズアミド、イミダゾール−2−カルボキソアミド、ジ−2−テノイルアミン、β−ラクタム、δ−ラクタム、ε−カプロラクタム又はこれらと周期表の1、2若しくは13族の金属との塩が挙げられる。
イミド類としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボキシイミド、スクシンイミド、フタルイミド、マレイミド、2,4,6−ピペリジントリオン、ペルヒドロアゼシン−2,10−ジオン又はこれらと周期律表の1、2若しくは13族の金属との塩が挙げられる。スルホンアミド類およびスルホンイミド類としては、例えば、ベンゼンスルホンアミド、N−メチルメタンスルホンアミド、N−メチルトリフルオロメチルスルホンアミド、又はこれらと周期律表の1〜2若しくは13族の金属との塩が挙げられる。これらの化合物は単一の化合物で使用しても、複数の化合物で使用しても良い。
【0037】
本発明では、これらの中でも、アミン類が好ましく、中でも、ピロール化合物がより好ましく、特に好ましくは2,5−ジメチルピロール又はジエチルアルミニウム(2,5−ジメチルピロライド)である。
(触媒前調製)
本発明において、低重合反応に用いられる触媒は、遷移金属含有化合物とアルミニウム含有化合物とが予め接触しない、又は予めの接触時間が短い態様で、原料α−オレフィンと触媒とを接触させるのが好ましい。このような接触態様により、選択的に原料α−オレフィンの低重合反応を行うことができ、原料α−オレフィンの低重合体を高収率で得ることができる。なお、本発明において、「遷移金属含有化合物と、アルミニウム含有化合物とが予め接触しない、又は予めの接触時間が短い態様」とは、反応の開始時だけでなく、その後原料α−オレフィン及び各触媒成分を反応器へ追加供給する際においても上記の態様が維持されることを意味する。しかし、上記の特定の態様は、触媒の調製の際に要求される好ましい態様であり、触媒が調製された後は無関係である。従って、すでに調製された触媒を反応系から回収し再利用する場合は、上記の好ましい態様に関係なく触媒を再利用することができる。
【0038】
遷移金属含有化合物とアルミニウム含有化合物とが予め接触する態様で触媒を使用した場合にα−オレフィンの低重合反応の活性が低くなる理由は、未だ詳らかではないが、次の様に推定される。
すなわち、遷移金属含有化合物とアルミニウム含有化合物とを接触させた場合、遷移金属含有化合物に配位している配位子とアルミニウム化合物中の例えばアルキル基との間で配位子交換反応が進行し、不安定になると考えられる。そのため、アルキル−遷移金属含有化合物の分解還元反応が優先して進行し、その結果、α−オレフィンの低重合反応に不適当なメタル化が起こり、α−オレフィンの低重合反応の活性が低下する。
【0039】
そのため、触媒を、上記の4成分、即ち遷移金属含有化合物(a)、窒素含有化合物(b)、アルミニウム含有化合物(c)及びハロゲン含有化合物(d)で触媒調製を行う場合は、各成分の接触の態様は、通常、
(1)触媒成分(b)、(c)及び(d)を含む溶液中に触媒成分(a)を導入する方法、
(2)触媒成分(a)、(b)及び(d)を含む溶液中に触媒成分(c)を導入する方法、
(3)触媒成分(a)及び(d)を含む溶液中に、触媒成分(b)及び(c)を導入する方法、
(4)触媒成分(c)及び(d)を含む溶液中に、触媒成分(a)及び(b)を導入する方法、
(5)触媒成分(a)及び(b)を含む溶液中に、触媒成分(c)及び(d)を導入する方法、
(6)触媒成分(b)及び(c)を含む溶液中に、触媒成分(a)及び(d)を導入する方法、
(7)触媒成分(c)を含む溶液中に、触媒成分(a)、(b)及び(d)を導入する方法、
(8)触媒成分(a)を含む溶液中に、触媒成分(b)〜(d)を導入する方法、
(9)各触媒成分(a)〜(d)をそれぞれ同時かつ独立に反応系に導入する方法などによって行われる。そして、上記の各溶液は、通常、低重合反応に使用される溶媒と同じ溶媒を用いて調製される。
【0040】
(低重合反応条件)
本発明における触媒の各構成成分の比率は、通常、遷移金属含有化合物1モルに対し、ハロゲン含有化合物は1モル〜50モル、好ましくは1モル〜30モルである。アルミニウム含有化合物は遷移金属含有化合物1モルに対し、1モル〜200モル、好ましくは10モル〜150モルである。又は窒素含有化合物を含む場合は、遷移金属含有化合物1モルに対し、1モル〜50モル、好ましくは1モル〜30モルである。
【0041】
本実施の形態において、触媒の使用量は、通常、溶媒1リットルあたり、遷移金属含有化合物の遷移金属が1.0×10−9モル〜0.5モル、好ましくは5.0×10−9モル〜0.2モル、更に好ましくは1.0×10−8モル〜0.05モルとなる量である。
このような触媒を用いることにより、例えば、エチレンを原料とした場合、選択率90%以上でエチレンの三量体であるヘキセンを得ることができる。さらに、この場合、ヘキセンに占める1−ヘキセンの比率を99%以上にすることができる。
【0042】
本実施の形態では、反応温度としては、通常、0〜250℃であり、好ましくは50〜200℃、更に好ましくは80〜170℃である。
また、反応圧力としては、通常、常圧〜250kgf/cmであり、好ましくは、5〜150kgf/cm、さらに好ましくは、10〜100kgf/cmの範囲である。
【0043】
反応器内での滞留時間は、通常1分〜10時間、好ましくは3分〜3時間、更に好ましくは5分〜40分の範囲である。
反応形式は、回分式、半回分式または連続式のいずれであってもよい。
本発明における反応器内の溶媒に対する水分含有量は、α−オレフィン低重合体反応を行う反応器内の水分濃度を直接測定しても、反応器内に供給される原料、溶媒及び触媒成分などに随伴される水分重量を予め測定し、その合計重量を反応器に供給される溶媒重量で割って算出してもよい。本発明では、測定の簡便さや測定値の管理のし易さから、反応器内に供給される原料、溶媒及び触媒成分などに随伴される水分重量を予め測定し、その
合計重量を反応器に供給される溶媒重量で割って算出したものを、反応器内の溶媒に対する水分含有量とするのが好ましい。水分含有量としては、0.1〜13.0wtppm、好ましくは、0.1〜7.0wtppmの範囲である。この水分含有量の値が大きくなるほど、ポリマー選択率が増加し、プロセスでの閉塞の恐れがあり、さらに触媒活性も低下してしまう。一方、この水分含有量の値が低くなるほど、水分除去する際の設備コストや負荷が高くなる。
【0044】
本発明において、反応器内の溶媒に対する水分含有量を調整する方法について説明する。例えば、反応溶媒としてn−ヘプタンを使用した場合、通常、市販されているn−ヘプタンは、20〜30wtppm程度の水分を含有していることがあるため、反応器に供給する前にモレキュラーシーブ等の乾燥剤を使って、予め反応溶媒及び原料α−オレフィン中の水分量を低減しておくことが好ましい。更に、反応溶媒中に残留する水分を蒸留分離によって除去してもよい。また、低重合反応を行う際に、触媒成分を反応系内に供給する前に、予め原料α−オレフィンと反応溶媒を循環させておき、そこに少量のアルキルアルミニウムを導入することで、循環している原料α−オレフィン及び溶媒中の水分を除去することもできる。なお、この際に、反応器中の水分と導入したアルキルアルミニウムとの反応によりアルミニウム変性物が生成するが、実際の低重合反応を行う前、即ち触媒成分を反応器に供給する前にこれらを系外に排出しておくことが好ましい。系外に排出する方法としては、通常、反応液に分散、同伴させて反応系外へ抜き出し、抜き出された液をろ過あるいは蒸留によって、アルミニウム変性物を分離、除去する。
【0045】
反応液中の水分濃度はカールフィッシャー法により、また原料ガス中の水分濃度は露点計を用いることにより、正確に測定することが可能である。水分濃度が上記範囲になったことを確認した後、触媒を導入して低重合反応を行うことが好ましい。
(α−オレフィン低重合体の製造方法)
本発明におけるα−オレフィン低重合体とは、モノマーであるα−オレフィンが数個結合したオリゴマーを意味する。具体的には、モノマーであるα−オレフィンが2個〜10個結合した重合体のことである。
【0046】
次に、α−オレフィンとしてエチレンを用い、α−オレフィン低重合体としてエチレンの三量体である1−ヘキセンへの低重合を例に挙げ、α−オレフィン低重合体の製造方法について説明する。
図1は、本実施の形態におけるα−オレフィン低重合体の製造フロー例を説明する図である。図1に示すエチレンを原料とする1−ヘキセンの製造フロー例には、エチレンを触媒存在下で重合させる完全混合撹拌型の反応器10と、反応器10から抜き出された反応液から未反応エチレンガスを分離する脱ガス槽20と、脱ガス槽20から抜き出された反応液中のエチレンを溜出させるエチレン分離塔30と、エチレン分離塔30から抜き出された反応液中の高沸点物質(以下、HB(ハイボイラー)と記すことがある。)を分離する高沸分離塔40と、高沸分離塔40の塔頂から抜き出された反応液を蒸留し、1−ヘキセン(1−HEX)を溜出させるヘキセン分離塔50とが示されている。また、脱ガス槽20及びコンデンサー16において分離された未反応エチレンを循環配管21を介して反応器10に循環させる圧縮機17が設けられている。
【0047】
図1おいて、反応器10としては、例えば、撹拌機10a、バッフル(図示せず)、ジャケット(図示せず)等が付設された従来周知の形式のものが挙げられる。撹拌機10aとしては、パドル、ファウドラー、プロぺラ、タービン等の形式の撹拌翼が、平板、円筒、ヘアピンコイル等のバッフルとの組み合わせで用いられる。
図1に示すように、エチレン供給配管12aから圧縮機17及び第1供給配管12を介して、反応器10にエチレン(ETY)が連続的に供給される。ここで、圧縮機17が、例えば、2段圧縮方式の場合、1段目に循環配管31を接続し、2段目に循環配管21を
接続することにより、電気代の低減が可能である。また、第2供給配管13からは、エチレンの低重合反応に使用する溶媒が反応器10に供給される。
【0048】
他方、予め、触媒槽(図示せず)で調製された遷移金属含有化合物及び窒素含有化合物が、触媒供給配管13aを介して第2供給配管13から反応器10に供給され、第3供給配管14からアルミニウム含有化合物が供給され、第4供給配管15からハロゲン含有化合物が供給される。
ここで、ハロゲン含有化合物は、供給管(図示せず)を介して第2供給配管13から反応器10に供給してもよい。また、アルミニウム含有化合物も遷移金属含有化合物との接触時間が数分以内で反応器10に供給されるのであれば、供給管(図示せず)を介して第2供給配管13から反応器10に供給してもよい。この方式の際には、第2供給配管13と反応器10の間にスタティックミキサー等を設置すれば、各触媒成分の均一混合液を反応器10に供給できる為、反応器10の撹拌動力が低減される。
【0049】
さらに、エチレンの三量化反応は、反応液中のエチレンに対する1−ヘキセンのモル比((反応液中の1−ヘキセンのモル濃度)/(反応液中のエチレンのモル濃度))が0.05〜1.5、特に0.10〜1.0となるように行うのが好ましい。即ち、連続反応の場合には、反応液中のエチレンと1−ヘキセンとのモル比が上記の範囲になるように、触媒濃度、反応圧力その他の条件を調節することが好ましい。また、回分反応の場合には、モル比が、上記の範囲にある時点において、エチレンの三量化反応を停止させることが好ましい。
【0050】
このような条件でエチレンの三量化反応を行うことにより、1−ヘキセンよりも沸点の高い成分の副生が抑制されて、1−ヘキセンの選択率が更に高められる傾向がある。
次に、反応器10の底から配管11を介して連続的に抜き出された反応液は、失活剤供給配管11aから供給された失活剤によりエチレンの三量化反応が停止され、脱ガス槽20に供給される。脱ガス槽20では上部から未反応エチレンが脱ガスされ循環配管21、コンデンサー16、圧縮機17及び第1供給配管12を介して反応器10に循環供給される。また、脱ガス槽20の槽底から未反応エチレンが脱ガスされた反応液が抜き出される。脱ガス槽20の運転条件は、通常、温度0℃〜250℃、好ましくは、50℃〜200℃であり、圧力は常圧〜150kgf/cm、好ましくは、常圧〜90kgf/cmである。
【0051】
続いて、脱ガス槽20において未反応エチレンが脱ガスされた反応液は、脱ガス槽20の槽底から抜き出され、配管22によりエチレン分離塔30に供給される。エチレン分離塔30では蒸留により塔頂部からエチレンが溜出され、循環配管31及び第1供給配管12を介して反応器10に循環供給される。また、塔底部からエチレンが除去された反応液が抜き出される。
【0052】
エチレン分離塔30の運転条件は、通常、塔頂部圧力は常圧〜30kgf/cm、好ましくは、常圧〜20kgf/cm、また、還流比(R/D)は、通常、0〜500、好ましくは、0.1〜100である。
次に、エチレン分離塔30においてエチレンを溜出した反応液は、エチレン分離塔30の塔底から抜き出され、配管32により高沸分離塔40に供給される。高沸分離塔40では、塔底から高沸点成分(HB:ハイボイラー)が抜き出される。また、塔頂から配管42により高沸点成分が分離された溜出物が抜き出される。高沸分離塔40の運転条件は、通常、塔頂部圧力0.1kgf/cm〜10kgf/cm、好ましくは、0.5kgf/cm〜5kgf/cm、また、還流比(R/D)は、通常、0〜100、好ましくは、0.1〜20である。
【0053】
続いて、高沸分離塔40の塔頂部から溜出物として抜き出された反応液は、配管41によりヘキセン分離塔50に供給される。ヘキセン分離塔50では塔頂部から蒸留による1−ヘキセンが配管51により溜出される。また、ヘキセン分離塔50の塔底部からはヘプタンが抜き出され、溶媒循環配管52を介して溶媒ドラム60に貯留され、さらに、第2供給配管13を介して反応溶媒として反応器10に循環供給される。ヘキセン分離塔50の運転条件は、通常、塔頂部圧力0.1kgf/cm〜10kgf/cm、好ましくは、0.5kgf/cm〜5kgf/cm、また、還流比(R/D)は、通常、0〜100、好ましくは0.1〜20である。
【実施例】
【0054】
以下、実施例に基づき本発明をさらに具体的に説明する。尚、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
本実施例で使用したn−ヘプタンは全て、予めモレキュラーシーブにより脱水しておき、反応系に供給する前の水分濃度を測定したところ、0.6wtppmであった。測定には、電量滴定式水分測定装置(三菱化学株式会社製、型式:CA−06型)を使用した。また反応に使用したエチレン中の水分濃度は露点測定により1.0wtppmであった。測定には、露点計(株式会社テクネ洋行製、型式:TK−100)を使用した。
【0055】
まず、予め140℃で2時間以上加熱乾燥させた500mlの撹拌機を有したガラス製3つ口フラスコに、窒素雰囲気下で2,5−ジメチルピロールを0.26g(2.73mmol)とn−ヘプタンを239ml仕込み、これにn−ヘプタンで50g/Lに希釈したトリエチルアルミニウムを6.22ml(2.73mmol)添加した。その後、フラスコをオイルバスに浸した後に昇温し、窒素雰囲気下でn−ヘプタンの還流を98℃で3時間行うことで、窒素含有化合物であるアルミニウムピロライドを調製した。その後、80℃まで冷却した。続いて、n−ヘプタンで50g/Lに希釈した2−エチルヘキサン酸クロムを4.38ml(0.45mmol)添加した。添加後、窒素雰囲気下で80℃、30分間加熱、撹拌し、触媒液を調製した。
【0056】
次に、140℃で2時間以上加熱乾燥させた500mlオートクレーブ一式を熱時のまま組み立て、真空窒素置換を行った。このオートクレーブには耐圧の破裂板を備えた触媒フィード管を取り付けた。フィード管には、上述のように調製した触媒液を2ml仕込んだ。オートクレーブの胴側には、反応溶媒であるn−ヘプタンを162ml、ガスクロマトグラフィーで組成分析する際の内部標準として使用するn−ウンデカンを5ml、n−ヘプタンで6.67g/Lに希釈したトリエチルアルミニウムを3.36ml(0.20mmol)、及びn−ヘプタンで2.76g/Lに希釈した塩化ベンジルを2ml(0.044mmol)仕込んだ。
【0057】
オートクレーブを140℃まで加温した後、触媒フィード管よりエチレンを導入し、エチレンの低重合反応を開始した。反応中はオートクレーブ内の温度を140℃、全圧を7MPaGに保持した。
30分後、エタノールを加えて反応を停止させた。反応開始から反応停止までに反応器に導入した総エチレン重量は123g、反応器内のn−ヘプタン重量は119gであった。そして反応液と反応ガスをサンプリングし、ガスクロマトグラフィーでC6全体、C6中の1−ヘキセン及びC10−C30のそれぞれの組成分析を行った。また反応液をろ過して乾燥後、反応液中に含まれるポリマー固形物の濃度の測定を行った。触媒活性は、30分の反応により得られた反応生成物の質量を、反応に使用した遷移金属触媒成分中の遷移触媒金属原子量(グラム)で除して求めた。
【0058】
なお、反応器内の溶媒に対する水分含有量は次のように算出した。総エチレン重量には
、反応により消費されたエチレン重量だけでなく反応せずに反応器内に残った未反応のエチレン重量も含まれる。
反応器内の溶媒に対する水分含有量[wtppm]=(総エチレン中の水分重量[mg]+溶媒中の水分重量[mg])/溶媒重量[g]
即ち、実施例1で反応器内に導入された総エチレン重量は123g、また使用したエチレンに含まれる水分濃度は1.0wtppmなので、総エチレン中に含まれる水分重量は0.12mgになる。一方、溶媒であるn−ヘプタンの重量は119g(175ml)、含まれる水分濃度は0.6wtppmであることから、溶媒に含まれる水分重量は、0.07mgである。よって、反応器内の溶媒に対する水分含有量は1.6wtppmとなる。
【0059】
結果を表1に示す。
[実施例2]
実施例1において、オートクレーブの胴側に仕込む塩化ベンジルの量を2.67ml(0.058mmol)とした以外は、全て同様にエチレンの低重合反応を行い、1−ヘキセンを製造した。また、反応の結果、反応器内に導入された総エチレン重量が114gとなり、総エチレン中に含まれる水分重量が0.11mgとなったため、反応器内の溶媒に対する水分含有量は1.6wtppmであった。結果を表1に示す。
【0060】
[実施例3]
実施例1において、オートクレーブの胴側に仕込む塩化ベンジルの量を1.33ml(0.029mmol)とした以外は、全て同様にエチレンの低重合反応を行い、1−ヘキセンを製造した。また、反応の結果、反応器内に導入された総エチレン重量が109gとなり、総エチレン中に含まれる水分重量が0.11mgとなったため、反応器内の溶媒に対する水分含有量は1.5wtppmであった。結果を表1に示す。
【0061】
[実施例4]
実施例1において、オートクレーブの胴側に仕込むトリエチルアルミニウムの量を2.12ml(0.12mmol)とした以外は、全て同様にエチレンの低重合反応を行い、1−ヘキセンを製造した。また、反応の結果、反応器内に導入された総エチレン重量が126gとなり、総エチレン中に含まれる水分重量が0.13mgとなったため、反応器内の溶媒に対する水分含有量は1.7wtppmであった。結果を表1に示す。
【0062】
[実施例5]
実施例1において、低重合反応に用いるn−ヘプタンに水分を添加して、反応系に供給する前の水分濃度を5.7wtppmとした以外は、全て同様にエチレンの低重合反応を行い、1−ヘキセンを製造した。また、反応の結果、反応器内に導入された総エチレン重量が121gとなり、総エチレン中に含まれる水分重量が0.12mgとなったため、反応器内の溶媒に対する水分含有量は6.7wtppmであった。結果を表1に示す。
【0063】
[実施例6]
実施例1において、低重合反応に用いるn−ヘプタンに水分を添加して、反応系に供給する前の水分濃度を11.5wtppmとした以外は、全て同様にエチレンの低重合反応を行い、1−ヘキセンを製造した。また、反応の結果、反応器内に導入された総エチレン重量が113gとなり、総エチレン中に含まれる水分重量が0.11mgとなったため、反応器内の溶媒に対する水分含有量は12.5wtppmであった。結果を表1に示す。
【0064】
[比較例1]
実施例1において、低重合反応に用いるn−ヘプタンに水分を添加して、反応系に供給する前の水分濃度を23.3wtppmとした以外は、全て同様にエチレンの低重合反応
を行い、1−ヘキセンを製造した。また、反応の結果、反応器内に導入された総エチレン重量が83gとなり、総エチレン中に含まれる水分重量が0.08mgとなったため、反応器内の溶媒に対する水分含有量は24.0wtppmであった。結果を表1に示す。
【0065】
[比較例2]
実施例1において、塩化ベンジルの代わりにヘキサクロロエタンを使用した以外は、全て同様にエチレンの低重合反応を行い、1−ヘキセンを製造した。また、反応の結果、反応器内に導入された総エチレン重量が85gとなり、総エチレン中に含まれる水分重量が0.09mgとなったため、反応器内の溶媒に対する水分含有量は1.3wtppmであった。結果を表1に示す。
【0066】
[比較例3]
実施例1において、塩化ベンジルの代わりに塩化ベンザルを使用し、その塩化ベンザルをn−ヘプタンで3.51g/Lに希釈し、2ml(0.044mmol)の量をオートクレーブの胴側に仕込んだ以外は、全て同様にエチレンの低重合反応を行い、1−ヘキセンを製造した。また、反応の結果、反応器内に導入された総エチレン重量が68gとなり、総エチレン中に含まれる水分重量が0.07mgとなったため、反応器内の溶媒に対する水分含有量は1.2wtppmであった。結果を表1に示す。
【0067】
[比較例4]
比較例3において、オートクレーブの胴側に仕込む塩化ベンザルの量を1ml(0.022mmol)とした以外は、全て同様にエチレンの低重合反応を行い、1−ヘキセンを製造した。また、反応の結果、反応器内に導入された総エチレン重量が77gとなり、総エチレン中に含まれる水分重量が0.08mgとなったため、反応器内の溶媒に対する水分含有量は1.2wtppmであった。結果を表1に示す。
【0068】
[比較例5]
実施例1において、塩化ベンジルの代わりにベンゾトリクロリドを使用し、そのベンゾトリクロリドをオートクレーブの胴側にn−ヘプタンで2.13g/Lに希釈した4ml(0.044mmol)仕込んだ以外は、全て同様にエチレンの低重合反応を行い、1−ヘキセンを製造した。また、反応の結果、反応器内に導入された総エチレン重量が55gとなり、総エチレン中に含まれる水分重量が0.07mgとなったため、反応器内の溶媒に対する水分含有量は1.1wtppmであった。結果を表1に示す。
【0069】
[比較例6]
実施例1において、塩化ベンジルの代わりに塩化アリルを使用した以外は、全て同様にエチレンの低重合反応を行い、1−ヘキセンを製造した。また、反応の結果、反応器内に導入された総エチレン重量が79gとなり、総エチレン中に含まれる水分重量が0.08mgとなったため、反応器内の溶媒に対する水分含有量は1.3wtppmであった。結果を表1に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
実施例1〜6と比較例1〜6とを対比すると、実施例1〜6の触媒活性が比較例1〜6の触媒活性よりも高いことがわかる。また、実施例1〜6と比較例1とを対比すると、ポリマー固形物量の選択率が小さいことがわかる。以上のことから、実施例1〜6の1ヘキセンの製造方法は、触媒の活性を高くすることができ、且つ副生物のポリマー固形物の発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0072】
1c…触媒槽、
10…反応器、
10a…撹拌機、
11,22,32,41,42,51…配管、
11a…失活剤供給配管
12…第1供給配管、
12a…エチレン供給配管、
13…第2供給配管、
13a…触媒供給配管、
14…第3供給配管、
15…第4供給配管、
21,31…循環配管、
16…コンデンサー、
17…圧縮機、
20…脱ガス槽、
30…エチレン分離塔、
40…高沸分離塔、
50…ヘキセン分離塔、
52…溶媒循環配管、
60…溶媒ドラム
1−HEX…1−ヘキセン
ETY…エチレン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒の存在下、溶媒中で原料α−オレフィンの低重合反応を行うことにより、反応生成物であるα−オレフィン低重合体を得る、α−オレフィン低重合体の製造方法であって、該触媒が、遷移金属含有化合物、アルミニウム含有化合物及び下記一般式(I)で表されるハロゲン含有化合物を含む触媒であり、反応器内の溶媒に対する水分含有量が0.1〜13.0wtppmであるα−オレフィン低重合体の製造方法。
【化1】

(上記式(I)中、Xはハロゲン原子を表す。R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基又は置換基を有していてもよいヘテロ原子含有炭化水素基である。Rは、置換基を有していてもよい芳香族基又は芳香族複素環基である。)
【請求項2】
前記一般式(I)中のXが、塩素又は臭素である請求項1に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
【請求項3】
前記遷移金属含有化合物が周期表第4〜6族の遷移金属を含む請求項1又は2に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
【請求項4】
前記遷移金属含有化合物が、クロム、チタン、ジルコニウム、バナジウム及びハフニウムからなる群より選ばれる1種類以上の金属を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
【請求項5】
前記触媒が、更に窒素含有化合物を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
【請求項6】
前記溶媒が、飽和炭化水素である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
【請求項7】
前記α−オレフィンがエチレンであり、前記α−オレフィン低重合体が1−ヘキセンである請求項1〜6のいずれか1項に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。


【図1】
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【公開番号】特開2011−219474(P2011−219474A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68132(P2011−68132)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】