説明

α−オレフィン低重合体の製造方法

【課題】 原料α−オレフィンを低重合反応させα−オレフィン低重合体を製造する方法において、より安価に効率よく、安定的にα−オレフィン低重合体を製造する方法を提供する。
【解決手段】遷移金属含有化合物、窒素含有化合物及びアルミニウム含有化合物より形成される触媒を用いて、原料α−オレフィンを反応器に連続的に供給し、溶媒の存在下、反応器内で該原料α−オレフィンを低重合反応させα−オレフィン低重合体を生成し、該α−オレフィン低重合体を含む反応液を該反応器から連続的に抜き出し、該反応液から溶媒を分離し、分離された溶媒を該反応器へ連続的に循環供給するにあたり、定常状態における循環供給する溶媒中の窒素含有化合物の濃度が5.0wtppm以上であるα−オレフィン低重合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料α−オレフィンを低重合反応させ、α−オレフィン低重合体の製造方法に関し、より詳しくは、原料としてエチレンを用いて、エチレンの三量化反応により、1−ヘキセンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
α−オレフィン低重合体は、オレフィン系重合体(ポリマー)の原料モノマーとして、また各種高分子のコモノマーとして、さらには可塑剤や界面活性剤、潤滑油などの原料として広く用いられている有用な物質である。α−オレフィンの低重合体は、遷移金属含有化合物より形成される均一系触媒を用いて、溶媒の存在下で原料α−オレフィンを低重合反応させて得ることができる。
【0003】
エチレンを原料として、エチレンの三量体である1−ヘキセンを製造する方法としては、例えば、クロム化合物とアミン又は金属アミドとアルキルアルミニウム化合物の組み合わせからなる触媒系を使用し、溶媒中でα−オレフィンの低重合を行い、得られた反応液からα−オレフィン低重合体を蒸留分離し、回収された触媒成分含有溶媒を反応系に循環する方法(特開平7−149673号公報)や、完全混合槽型反応器、脱ガス槽、エチレン蒸留塔、ヘキセン蒸留塔、ヘプタン蒸留塔、蒸発器から成るプロセスにおいて、溶媒としてn−ヘプタンを用いて、エチレンの連続低重合反応を行い、反応器から流出されるn−ヘプタンをヘプタン蒸留塔にて分離して、分離されたn−ヘプタンを循環パイプで反応器に循環する方法(特開平8−239419号公報)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−149673号公報
【特許文献2】特開平8−239419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の方法で、α−オレフィン低重合体を製造すると、反応系へ循環する溶媒中に目的生成物であるα−オレフィン低重合体よりも沸点が高い副生物や変質した触媒成分が蓄積され、目的生成物であるα−オレフィン低重合体の選択率が低下し、副生ポリマーが増大する問題があった。
また、特許文献2には、反応系へ循環する溶媒中に目的生成物であるα−オレフィン低重合体よりも沸点が高い副生物や変質した触媒成分が蓄積されないようにヘプタン分離塔が記載されているが、この方法で連続運転すると、触媒活性が次第に低下する問題があった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、遷移金属含有化合物、窒素含有化合物及びアルミニウム含有化合物より形成される触媒を用いる原料α−オレフィンを低重合反応させα−オレフィン低重合体を製造する方法において、より安価に効率よく、安定的にα−オレフィン低重合体を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、溶媒を循環する工程を有するα−オレフィン低重合体を製造するプロセスでは、触媒成分の一つである窒素含有化合物を循環溶媒中にある一定量存在させることで、定常運転下では触媒活性を低下させること
なく、向上することができ、かつ副生ポリマーの発生を抑制できることを見出した。
本発明はこのような知見に基いて達成されたものであり、以下[1]〜[8]を要旨とする。
[1] 遷移金属含有化合物、窒素含有化合物及びアルミニウム含有化合物より形成される触媒を用いて、原料α−オレフィンを反応器に連続的に供給し、溶媒の存在下、反応器内で該原料α−オレフィンを低重合反応させα−オレフィン低重合体を生成し、該α−オレフィン低重合体を含む反応液を該反応器から連続的に抜き出し、該反応液から溶媒を分離し、分離された溶媒を該反応器へ連続的に循環供給するにあたり、定常状態における循環供給する溶媒中の窒素含有化合物の濃度が5.0wtppm以上であるα−オレフィン低重合体の製造方法。
[2] 前記反応液から目的生成物であるα−オレフィン低重合体よりも沸点が高い副生物を分離する際に、蒸留塔を用いて蒸留を行い、且つ還流比を1.0以下とすることを特徴とする[1]に記載のα-オレフィン低重合体の製造方法。
[3] 前記窒素含有化合物が、ピロール含有化合物であることを特徴とする[1]又は[2]に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
[4] 前記遷移金属含有化合物が周期表第4〜6族の遷移金属を含むことを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
[5] 前記遷移金属含有化合物が、クロム、チタン、ジルコニウム、バナジウム及びハフニウムからなる群より選ばれる1種類以上の金属を含有することを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに1項に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
[6] 前記触媒が、更にハロゲン含有化合物を含む[1]〜[5]のいずれか1項に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
[7] 前記溶媒が、飽和炭化水素である、[1]〜[6]のいずれか1項に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
[8] 前記α−オレフィンがエチレンであり、前記α−オレフィン低重合体が1−ヘキセンである[1]〜[7]のいずれか1項に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、連続運転での触媒活性低下を抑制し、定常状態であれば触媒活性を向上することができる。加えて、副生ポリエチレンを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のα−オレフィン低重合体の製造方法の実施の形態を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に限定されない。以下、その詳細について説明する。
(触媒)
本発明で使用する触媒は、α−オレフィンを低重合反応させ、α−オレフィン低重合体を生成できる触媒であれば、特に限定されないが、少なくとも触媒成分として遷移金属含有化合物、窒素含有化合物及びアルミニウム含有化合物の各触媒成分の組み合わせからなる触媒系が使用される。また、これらの3つの触媒成分に加え、ハロゲン含有化合物を更に含有することが好ましい。
【0011】
(遷移金属含有化合物)
本実施の形態が適用されるα−オレフィン低重合体の製造方法において、触媒を構成する成分の一つとして使用する遷移金属含有化合物としては、遷移金属を含む化合物であれば特に限定されないが、中でも、周期表第4〜6族の遷移金属が好ましく用いられる。具体的に、好ましくは、クロム、チタン、ジルコニウム、バナジウム及びハフニウムからな
る群より選ばれる1種類以上の金属であり、更に好ましくは、クロム又はチタンであり、最も好ましくは、クロムである。
【0012】
本発明において、触媒の原料として使用される遷移金属含有化合物は、一般式MeZnで表される1種以上の化合物である。ここで、一般式中、Meは遷移金属元素、Zは任意の有機基又は無機基もしくは陰性原子、nは1から6の整数を表し、2以上が好ましい。nが2以上の場合、Zは同一又は相互に異なっていても良い。有機基としては、置換基を有していても良い炭素数1〜30の炭化水素基であればよく、具体的には、カルボニル基、アルコキシ基、カルボキシル基、β−ジケトナート基、β−ケトカルボキシル基、β−ケトエステル基、アミド基等が挙げられる。また、無機基としては、硝酸基、硫酸基等の金属塩形成基が挙げられる。また、陰性原子としては、酸素、ハロゲン等が挙げられる。なお、ハロゲンが含まれる遷移金属含有化合物は、後述するハロゲン含有化合物には含まれない。
【0013】
遷移金属がクロムである遷移金属含有化合物(以下、クロム含有化合物と呼ぶことがある)の場合、具体例としては、クロム(IV)−tert−ブトキシド、クロム(III)ア
セチルアセトナート、クロム(III)トリフルオロアセチルアセトナート、クロム(III)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、クロム(III)(2,2,6,6−テトラメチル
−3,5−ヘプタンジオナート)、Cr(PhCOCHCOPh)(但し、ここでPhはフェニル基を示す。)、クロム(II)アセテート、クロム(III)アセテート、クロム
(III)2−エチルヘキサノエート、クロム(III)ベンゾエート、クロム(III)ナフテ
ネート、クロム(III)ヘプタノエート、Cr(CHCOCHCOOCH 、塩化第一クロム、塩化第二クロム、臭化第一クロム、臭化第二クロム、ヨウ化第一クロム、ヨウ化第二クロム、フッ化第一クロム、フッ化第二クロム等が挙げられる。
【0014】
遷移金属がチタンである遷移金属含有化合物(以下、チタン含有化合物と呼ぶことがある)の場合、具体例としては、TiCl4 ,TiBr4 ,TiI4 ,TiBrCl3 ,TiBr2Cl2 ,Ti(OC254 ,Ti(OC252 Cl2 ,Ti(O−n−C3
74,Ti(O−n−C372Cl2,Ti(O−iso−C374 ,Ti(O−iso−C372Cl2,Ti(O−n−C494 ,Ti(O−n−C492Cl2
Ti(O−iso−C494 ,Ti(O−iso−C492Cl2 ,Ti(O−te
rt−C494 ,Ti(O−tert−C492Cl2 ,TiCl(thf)
左記化学式中、thfはテトラヒドロフランを表す)、Ti((CH32N)4,Ti(
(C252N)4,Ti((n−C372N)4,Ti((iso−C372N)4
Ti((n−C492N)4 ,Ti((tert−C492N)4,Ti(OSO3CH34 ,Ti(OSO3254,Ti(OSO3374,Ti(OSO3494
TiCp2Cl2,TiCp2ClBr,Ti(OCOC254 ,Ti(OCOC252Cl2 ,Ti(OCOC374,Ti(OCOC372Cl2,Ti(OCOC374
,Ti(OCOC372Cl2,Ti(OCOC494,Ti(OCOC492Cl2などが挙げられる。
【0015】
遷移金属がジルコニウムである遷移金属含有化合物(以下、ジルコニウム含有化合物と呼ぶことがある)の場合、具体例としては、ZrCl4,ZrBr4,ZrI4,ZrBr
Cl3,ZrBr2Cl2 ,Zr(OC254,Zr(OC252Cl2,Zr(O−n
−C374,Zr(O−n−C372Cl2,Zr(O−iso−C374,Zr(O−iso−C372Cl2Zr(O−n−C494,Zr(O−n−C492Cl2
Zr(O−iso−C494 ,Zr(O−iso−C492Cl2 ,Zr(O−tert−C494 ,Zr(O−tert−C492Cl2 ,Zr((CH32N)4
Zr((C252N)4,Zr((n−C372N)4 ,Zr((iso−C372N)4 ,Zr((n−C492N)4 ,Zr((tert−C492N)4 ,Zr(OS
3CH34,Zr(OSO3254,Zr(OSO3374 ,Zr(OSO3494 ,ZrCp2Cl2,ZrCp2ClBr,Zr(OCOC254 ,Zr(OCOC252Cl2,Zr(OCOC374,Zr(OCOC372Cl2,Zr(OCOC374,Zr(OCOC372Cl2,Zr(OCOC494,Zr(OCOC492Cl2 ,ZrCl2(HCOCFCOF)2,ZrCl2(CH3COCFCOCH32などが挙げられる。
【0016】
遷移金属がハフニウムである遷移金属含有化合物(以下、ハフニウム含有化合物と呼ぶことがある)の場合、具体例としては、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−イソプロピル−4H−アズレニル)}ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}〕ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(4−フルオロフェニル)−4H−アズレニル}〕ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(3−クロロフェニル)−4H−アズレニル}〕ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−{2−メチル−4−(2,6−ジメチルフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4,6−ジイソプロピル−4H−アズレニル)}ハフニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ハフニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ハフニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(1−ナフチル)−4H−アズレニル}〕ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−エチル−4−(1−アントラセニル)−4H−アズレニル}〕ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−エチル−4−(2−アントラセニル)−4H−アズレニル}〕ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−エチル−4−(9−フェナンスリル)−4H−アズレニル}〕ハフニウムジクロリド、ジメチルメチレンビス[1−{2−メチル−4−(4−ビフェニリル)−4H−アズレニル}]ハフニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス[1−{2−メチル−4−(4−ビフェニリル)−4H−アズレニル}]ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4―(3,5−ジメチル−4−トリメチルシリルフェニル−4H−アズレニル)}ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレ2ン[1−{2−メチル−4−(4−ビフェニリル)−4H−アズレニル}][1−{2−メチル−4−(4−ビフェニリル)インデニル}]ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレン{1−(2−エチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}{1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)}ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)}ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(1−ナフチル)インデニル}〕ハフニウムジクロリド等が挙げられる。
これらの遷移金属含有化合物の中でも、クロム含有化合物が好ましく、クロム含有化合物の中でも、特に好ましくは、クロム(III)2−エチルヘキサノエートである。
【0017】
(アルミニウム含有化合物)
本実施の形態で使用するアルミニウム含有化合物は、トリアルキルアルミニウム化合物、アルコキシアルキルアルミニウム化合物、又は水素化アルキルアルミニウム化合物等などが挙げられる。トリアルキルアルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが挙げられる。アルコキシアルミニウム化合物の具体的な例としては、ジエチルアルミニウムエトキシドが挙げられる。水素化アルキルアルミニウム化合物の具体的な例としては、ジエチルアルミニウムヒドリドが挙げられる。これらの中でも、トリアルキルアルミニウム化合物が好ましく、
トリエチルアルミニウムが更に好ましい。これらの化合物は、単一の化合物を使用しても、複数の化合物を混合して用いても良い。
【0018】
(窒素含有化合物)
本実施の形態で使用する窒素含有化合物としては、アミン、アミド又はイミド等が挙げられる。アミン類としては、例えばピロール骨格含有化合物が挙げられ、具体例としては、ピロール、2,4−ジメチルピロール、2,5−ジメチルピロール、2,5−ジエチルピロール,2,5−ジ−n−プロピルピロール,2,5−ジ−n−ブチルピロール,2,5−ジ−n−ペンチルピロール,2,5−ジ−n−ヘキシルピロール、2,5−ジベンジルピロール,2,5−ジイソプロピルピロール、2−メチル−5−エチルピロール、2,5−ジメチル−3−エチルピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジクロロピロール、2,3,4,5−テトラクロロピロール、2−アセチルピロール、インドール、2−メチルインドール、2つのピロール環が置換基を介して結合したジピロール等のピロール又はこれらの誘導体が挙げられる。誘導体としては、例えば、金属ピロライド誘導体が挙げられ、具体例としては、例えば、ジエチルアルミニウムピロライド、エチルアルミニウムジピロライド、アルミニウムトリピロライド、ジエチルアルミニウム(2,5−ジメチルピロライド)、エチルアルミニウムビス(2,5−ジメチルピロライド)、アルミニウムトリス(2,5−ジメチルピロライド)、ジエチルアルミニウム(2,5−ジエチルピロライド)、エチルアルミニウムビス(2,5−ジエチルピロライド)、アルミニウムトリス(2,5−ジエチルピロライド)等のアルミニウムピロライド類、ナトリウムピロライド、ナトリウム(2,5−ジメチルピロライド)等のナトリウムピロライド類、リチウムピロライド、リチウム(2,5−ジメチルピロライド)等のリチウムピロライド類、カリウムピロライド、カリウム(2,5−ジメチルピロライド)等のカリウムピロライド類が挙げられる。なお、アルミニウムピロライド類は、上述のアルミニウム含有化合物には含まれない。また、ハロゲンを含有するピロール化合物は、後述のハロゲン含有化合物には含まれない。
【0019】
アミド類としては、例えば、アセトアミド、N−メチルヘキサンアミド、スクシンアミド、マレアミド、N−メチルベンズアミド、イミダゾール−2−カルボキソアミド、ジ−2−テノイルアミン、β−ラクタム、δ−ラクタム、ε−カプロラクタム又はこれらと周期表の1、2若しくは13族の金属との塩が挙げられる。
イミド類としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボキシイミド、スクシンイミド、フタルイミド、マレイミド、2,4,6−ピペリジントリオン、ペルヒドロアゼシン−2,10−ジオン又はこれらと周期律表の1、2若しくは13族の金属との塩が挙げられる。スルホンアミド類およびスルホンイミド類としては、例えば、ベンゼンスルホンアミド、N−メチルメタンスルホンアミド、N−メチルトリフルオロメチルスルホンアミド、又はこれらと周期律表の1〜2若しくは13族の金属との塩が挙げられる。これらの化合物は単一の化合物で使用しても、複数の化合物で使用しても良い。
【0020】
本発明では、これらの中でも、アミン類が好ましく、中でも、ピロール骨格含有化合物がより好ましく、特に好ましくは2,5−ジメチルピロールである。
(ハロゲン含有化合物)
本実施の形態で使用するクロム系触媒には、必要に応じて第4成分としてハロゲン含有化合物が含まれる。ハロゲン含有化合物としては、例えば、ハロゲン化アルキルアルミニウム化合物、ベンジルクロリド骨格含有化合物、3個以上のハロゲン原子を有する炭素数2以上の直鎖状ハロゲン炭化水素化合物、3個以上のハロゲン原子を有する炭素数3以上の環状ハロゲン炭化水素化合物等が挙げられる。但し、ハロゲン化アルキルアルミニウム化合物は、前述したアルミニウム含有化合物には含まれない。
【0021】
具体的な化合物としては、例えば、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウ
ムセスキクロリド、ベンジルクロリド、(1−クロロエチル)ベンゼン、2−メチルベンジルクロリド、3−メチルベンジルクロリド、4−メチルベンジルクロリド、4−エチルベンジルクロリド、4−イソプロピルベンジルクロリド、4−tert−ブチルベンジルクロリド、4−ビニルベンジルクロリド、α−エチル−4−メチルベンジルクロリド、α,α´−ジクロロ−o−キシレン、α,α´−ジクロロ−m−キシレン、α,α´−ジクロロ−p−キシレン、2,4−ジメチルベンジルクロリド、2,5−ジメチルベンジルクロリド、2,6−ジメチルベンジルクロリド、3,4−ジメチルベンジルクロリド、2,3,5,6−テトラメチルベンジルクロリド、1−(クロロメチル)ナフタレン、1−(クロロメチル)−2−メチルナフタレン、1,4−ビス−クロロメチル−2,3−ジメチルナフタレン、1,8−ビス−クロロメチル−2,3,4,5,6,7−ヘキサメチルナフタレン、9−(クロロメチル)アントラセン、9,10−ビス(クロロメチル)アントラセン、7−(クロロメチル)ベンズアントラセン、7−クロロメチル−12−メチルベンズアントラセン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,2,−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、ヘキサクロロエタン、1,2,3−トリクロロシクロプロパン、1,2,3,4,5,6−ヘキサクロロシクロヘキサン,1,4−ビス(トリクロロメチル)−2,3,5,6−テトラクロロベンゼン等が挙げられる。
【0022】
(α−オレフィン)
本実施の形態が適用されるα−オレフィン低重合体の製造方法において、原料として使用するα−オレフィンとしては、例えば、炭素数2〜炭素数30の置換又は非置換のα−オレフィンが挙げられる。このようなα−オレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。中でも、原料のα−オレフィンとしてはエチレンが好適であり、エチレンを原料とした場合、エチレンの三量体である1−ヘキセンが高収率かつ高選択率で得ることができるので好ましい。また、エチレンを原料として用いる場合、原料中にエチレン以外の不純物成分を含んでいても構わない。具体的な成分としては、メタン、エタン、アセチレン、二酸化炭素等が挙げられる。これらの成分は、原料のエチレンに対して0.1mol%以下であることが好ましい。
【0023】
(溶媒)
本実施の形態が適用されるα−オレフィン低重合体の製造方法では、α−オレフィンの反応を溶媒中で行うことができる。このような溶媒としては特に限定されないが、飽和炭化水素が好適に使用され、好ましくは、例えば、ブタン、ペンタン、3−メチルペンタン、n−ヘキサン、n−へプタン、2−メチルヘキサン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、2,2,4−トリメチルペンタン、デカリン等の炭素数1〜20の鎖状飽和炭化水素又は炭素数1〜20脂環式飽和炭化水素である。また、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、テトラリン等の芳香族炭化水素をα−オレフィン低重合体を溶媒として用いてもよい。これらは、単独で使用する他、混合溶媒として使用することもできる。
【0024】
これらの溶媒の中でも、ポリエチレン等の副生ポリマーの生成を抑制できるという点、更に、高い触媒活性が得られる傾向にあるという観点から、炭素数4〜炭素数10の鎖状飽和炭化水素又は脂環式飽和炭化水素を用いるのが好ましく、更に好ましくは、n−ヘプタン、シクロヘキサン又はメチルシクロヘキサンなどの炭素数5〜7の飽和炭化水素が好ましく、最も好ましくは、n−ヘプタンである。
【0025】
(触媒前調製)
本発明において、低重合反応に用いられる触媒は、遷移金属含有化合物とアルミニウム含有化合物とが予め接触しない、又は予めの接触時間が短い態様で、原料α−オレフィンと触媒とを接触させるのが好ましい。このような接触態様により、選択的に原料α−オレ
フィンの低重合反応を行うことができ、原料α−オレフィンの低重合体を高収率で得ることができる。なお、本発明において、「遷移金属含有化合物と、アルミニウム含有化合物とが予め接触しない、又は予めの接触時間が短い態様」とは、反応の開始時だけでなく、その後原料α−オレフィン及び各触媒成分を反応器へ追加供給する際においても上記の態様が維持されることを意味する。しかし、上記の特定の態様は、触媒の調製の際に要求される好ましい態様であり、触媒が調製された後は無関係である。従って、すでに調製された触媒を反応系から回収し再利用する場合は、上記の好ましい態様に関係なく触媒を再利用することができる。
【0026】
遷移金属含有化合物とアルキルアルミニウム化合物とが予め接触する態様で触媒を使用した場合にα−オレフィンの低重合反応の活性が低くなる理由は、未だ詳らかではないが、次の様に推定される。
すなわち、遷移金属含有化合物とアルキルアルミニウムとを接触させた場合、遷移金属含有化合物に配位している配位子とアルキルアルミニウム化合物中のアルキル基との間で配位子交換反応が進行し、不安定になると考えられる。そのため、アルキル−遷移金属含有化合物の分解還元反応が優先して進行し、その結果、α−オレフィンの低重合反応に不適当なメタル化が起こり、α−オレフィンの低重合反応の活性が低下する。
【0027】
そのため、触媒を、上記の4成分、即ち遷移金属含有化合物(a)、窒素含有化合物(b)、アルミニウム含有化合物(c)及びハロゲン含有化合物(d)で触媒調整を行う場合は、各成分の接触の態様は、通常、(1)触媒成分(b)、(c)及び(d)を含む溶液中に触媒成分(a)を導入する方法、(2)触媒成分(a)、(b)及び(d)を含む溶液中に触媒成分(c)を導入する方法、(3)触媒成分(a)及び(d)を含む溶液中に、触媒成分(b)及び(c)を導入する方法、(4)触媒成分(c)及び(d)を含む溶液中に、触媒成分(a)及び(b)を導入する方法、(5)触媒成分(a)及び(b)を含む溶液中に、触媒成分(c)及び(d)を導入する方法、(6)触媒成分(b)及び(c)を含む溶液中に、触媒成分(a)及び(d)を導入する方法、(7)触媒成分(c)を含む溶液中に、触媒成分(a)、(b)及び(d)を導入する方法、(8)触媒成分(a)を含む溶液中に、触媒成分(b)〜(d)を導入する方法、(9)各触媒成分(a)〜(d)をそれぞれ同時かつ独立に反応系に導入する方法などによって行われる。そして、上記の各溶液は、通常、反応溶媒を使用して調製される。
【0028】
(低重合反応条件)
本実施の形態で使用する触媒の各構成成分の比率は、通常、遷移金属含有化合物1モルに対し、ハロゲン含有化合物は1モル〜50モル、好ましくは1モル〜30モルである。又は窒素含有化合物やアルミニウム含有化合物を含む場合は、遷移金属含有化合物1モルに対し、窒素含有化合物は、1モル〜100モル、好ましくは1モル〜50モルであり、アルミニウム含有化合物は1モル〜200モル、好ましくは10モル〜150モルである。
【0029】
本実施の形態において、触媒の使用量は特に限定されないが、通常、溶媒1リットルあたり、遷移金属含有化合物の遷移金属1原子あたり1.0×10−9モル〜0.5モル、好ましくは5.0×10−9モル〜0.2モル、更に好ましくは1.0×10−8モル〜0.05モルとなる量である。
このような触媒を用いることにより、例えば、エチレンを原料とした場合、選択率90%以上でエチレンの三量体であるヘキセンを得ることができる。
【0030】
本実施の形態では、反応温度としては、通常、0〜250℃であり、好ましくは50〜200℃、更に好ましくは80〜170℃である。
また、反応圧力としては、通常、常圧〜25MPaであり、好ましくは、0.5〜15
MPa、さらに好ましくは、1.0〜10MPaの範囲である(圧力は、絶対圧力基準)。
【0031】
反応器の種類としては、特に限定されないが、連続攪拌槽型反応器や管型反応器などが好適に用いられる。
反応器内での滞留時間は、通常1分〜10時間、好ましくは3分〜3時間、更に好ましくは5分〜40分の範囲である。
低重合反応の反応形式は、連続式である。即ち、触媒を有する反応器に、原料であるα−オレフィンを供給し、反応器内で生成されるα−オレフィン低重合体を含む反応液を反応器から抜き出す操作が同時に行われる。反応器中には、常時ある一定量の反応液が存在しており、反応液中には、生成物であるα−オレフィン低重合体や溶媒の他に、未反応の原料α−オレフィンや副生成物であるポリマーなどを含む高沸点化合物、そして反応器に供給された触媒成分などが含まれる。
【0032】
本発明では、反応器から連続的に抜き出される反応液から、溶媒を分離して連続的に反応器に循環供給する。溶媒を分離する方法としては、通常蒸留が好適に使用される。反応液中には、好ましくは、溶媒、未反応α−オレフィン、目的生成物であるα−オレフィン低重合体よりも沸点が高い副生物及びα−オレフィン低重合体などが含まれる。反応液から分離された溶媒を連続的に反応器に循環供給するにあたり、反応液から目的生成物であるα−オレフィン低重合体よりも沸点が高い副生物を分離する方法としては、特に限定されない。通常、蒸留による分離が好適に行われる。蒸留塔を用いて目的生成物であるα−オレフィン低重合体よりも沸点が高い副生物の分離を行う場合、塔頂部圧力は絶対圧力基準で通常0.01〜2.00MPa、好ましくは0.05〜1.00MPaであり、理論段数は、通常2〜100段、好ましくは5〜50段、また、還流比(R/D)は、0〜2.5が好ましく、より好ましくは0.1〜1.0である。還流比が低くなるほど、触媒失活剤及び/又は溶媒より高沸点の副生物が溶媒中に混入しやすく、高くなるほど、蒸気等のエネルギー使用量が増大する。
【0033】
本発明では、反応液から分離された溶媒を反応器に循環供給する際に、その溶媒中の窒素含有化合物の濃度を5.0wtppm以上であることを必要とする。循環する溶媒中の窒素含有化合物は、反応器から抜き出された反応液中に含まれるものであり、その濃度を5.0wtppm以上とする具体的な手段としては、例えば、溶媒を分離する際の蒸留塔の還流比を1.0以下とする、及び/又は反応液を蒸留塔へフィードする位置を蒸留塔の塔底又は塔底から理論段で5段以内の高さの位置とする事などが挙げられる。
【0034】
この循環する溶媒中の窒素含有化合物の濃度を5.0wtppm以上、好ましくは10.0wtppm以上とすると、定常状態における触媒活性が向上し、副生ポリエチレンが低減することができる。
この理由は必ずしも明確では無いが、次のようなことが推測される。即ち、連続運転における定常状態では、循環溶媒中又は循環エチレン中に触媒成分の一つであるハロゲン含有化合物などの分解物が蓄積する。この分解物は、反応器内で遷移金属化合物に配位するので、本来、遷移金属化合物に配位すべき窒素含有化合物の配位が阻害され、触媒活性が低下する傾向になる。そのため、循環溶媒中の窒素含有化合物の濃度を高める事で、反応器内での遷移金属化合物への窒素含有化合物の配位しやすくなり、触媒活性が低下することがないと考えられる。また、窒素含有化合物は、通常、高価であるので、製造コストの観点から溶媒とともに反応器に循環させる事で反応器内の濃度を高める方が好ましい。
【0035】
循環する溶媒中の窒素含有化合物の濃度が高すぎると遷移金属化合物に過剰配位し、触媒活性を低下させる傾向となるので、循環する溶媒中の窒素含有化合物の濃度の上限としては、200wtppmが好ましく、100wtppmがより好ましい。
(α−オレフィン低重合体の製造方法)
本発明におけるα−オレフィン低重合体とは、α−オレフィンが数個結合したオリゴマーを意味する。具体的には、α−オレフィンが2個〜10個結合した重合体のことである。
【0036】
次に、α−オレフィンとしてエチレンを用い、α−オレフィン低重合体としてエチレンの三量体である1−ヘキセンへの低重合を例に挙げ、α−オレフィン低重合体の製造方法について説明する。
図1は、本実施の形態におけるα−オレフィン低重合体の製造フロー例を説明する図である。
【0037】
図1に示すエチレンを原料とする1−ヘキセンの製造フロー例には、エチレンを触媒存在下で重合させる完全混合撹拌型の反応器10と、反応器10から抜き出された反応液から未反応エチレンガスを分離する脱ガス槽20と、脱ガス槽20から抜き出された反応液中のエチレンを溜出させるエチレン分離塔30と、エチレン分離塔30から抜き出された反応液中の高沸点物質(以下、HB(ハイボイラー)と記すことがある。)を分離する高沸分離塔40と、高沸分離塔40の塔頂から抜き出された反応液を蒸留し、1−ヘキセンを溜出させるヘキセン分離塔50とが示されている。また、脱ガス槽20及びコンデンサー16において分離された未反応エチレンを循環配管21を介して反応器10に循環させる圧縮機17が設けられている。
【0038】
図1おいて、反応器10としては、例えば、撹拌機10a、バッフル、ジャケット等が付設された従来周知の形式のものが挙げられる。撹拌機10aとしては、パドル、ファウドラー、プロぺラ、タービン等の形式の撹拌翼が、平板、円筒、ヘアピンコイル等のバッフルとの組み合わせで用いられる。
図1に示すように、エチレン供給配管12aから圧縮機17及び第1供給配管12を介して、反応器10にエチレンが連続的に供給される。ここで、圧縮機17が、例えば、2段圧縮方式の場合、1段目に循環配管31を接続し、2段目に循環配管21を接続することにより、電気代の低減が可能である。また、第2供給配管13からは、エチレンの低重合反応に使用する溶媒が反応器10に供給される。
【0039】
他方、予め、触媒槽1cで調製された遷移金属含有化合物及び窒素含有化合物が、触媒供給配管13aを介して第2供給配管13から反応器10に供給され、第3供給配管14からアルミニウム含有化合物が供給され、第4供給配管15からハロゲン含有化合物が供給される。ここで、ハロゲン含有化合物は、供給管を介して第2供給配管13から反応器10に供給してもよい。また、アルミニウム含有化合物も遷移金属含有化合物との接触時間が数分以内で反応器10に供給されるのであれば、供給管を介して第2供給配管13から反応器10に供給してもよい。この方式の際には、第2供給配管13と反応器10の間にスタティックミキサー等を設置すれば、各触媒成分の均一混合液を反応器10に供給できる為、反応器10の撹拌動力が低減される。
【0040】
本実施の形態では、反応器10における反応温度としては、通常、0℃〜250℃、好ましくは50℃〜200℃、更に好ましくは80℃〜170℃である。
さらに、エチレンの三量化反応は、反応液中のエチレンに対する1−ヘキセンのモル比((反応液中の1−ヘキセンのモル濃度)/(反応液中のエチレンのモル濃度))が0.05〜1.5、特に0.10〜1.0となるように行うのが好ましい。即ち、連続反応の場合には、反応液中のエチレンと1−ヘキセンとのモル比が上記の範囲になるように、触媒濃度、反応圧力その他の条件を調節することが好ましい。また、回分反応の場合には、モル比が、上記の範囲にある時点において、エチレンの三量化反応を中止させることが好ましい。
【0041】
このような条件でエチレンの三量化反応を行うことにより、1−ヘキセンよりも沸点の高い成分の副生が抑制されて、1−ヘキセンの選択率が更に高められる傾向がある。
次に、反応器10の底から配管11を介して連続的に抜き出された反応液は、失活剤供給配管11aから供給された失活剤によりエチレンの三量化反応が停止され、脱ガス槽20に供給される。脱ガス槽20では上部から未反応エチレンが脱ガスされ循環配管21、コンデンサー16、圧縮機17及び第1供給配管12を介して反応器10に循環供給される。また、脱ガス槽20の槽底から未反応エチレンが脱ガスされた反応液が抜き出される。脱ガス槽20の運転条件は、通常、温度0℃〜250℃、好ましくは、50℃〜200℃であり、圧力は常圧〜15MPa、好ましくは、常圧〜9MPaである。
【0042】
続いて、脱ガス槽20において未反応エチレンが脱ガスされた反応液は、脱ガス槽20の槽底から抜き出され、配管22によりエチレン分離塔30に供給される。エチレン分離塔30では蒸留により塔頂部からエチレンが溜出され、循環配管31及び第1供給配管12を介して反応器10に循環供給される。また、塔底部からエチレンが除去された反応液が抜き出される。
【0043】
エチレン分離塔30の運転条件は、通常、塔頂部圧力は常圧〜3MPa、好ましくは、常圧〜2MPa、また、還流比(R/D)は、通常、0〜500、好ましくは、0.1〜100である。
次に、エチレン分離塔30においてエチレンを溜出した反応液は、エチレン分離塔30の塔底から抜き出され、配管32により高沸分離塔40に供給される。高沸分離塔40では、塔底から高沸点成分(HB:ハイボイラー)が抜き出される。また、塔頂から配管42により高沸点成分が分離された溜出物が抜き出される。高沸分離塔40の運転条件は、通常、塔頂部圧力0.01MPa〜2.0MPa、好ましくは、0.05MPa〜1.0MPa、また、還流比(R/D)は、通常、0〜2.5、好ましくは、0.1〜1.0である(圧力は、絶対圧力基準)。
【0044】
続いて、高沸分離塔40の塔頂部から溜出物として抜き出された反応液は、配管41によりヘキセン分離塔50に供給される。ヘキセン分離塔50では塔頂部から蒸留による1−ヘキセンが配管51により溜出される。また、ヘキセン分離塔50の塔底部からヘプタンが抜き出され、溶媒循環配管52を介して溶媒ドラム60に貯留され、さらに、第2供給配管13を介して反応溶媒として反応器10に循環供給される。ヘキセン分離塔50の運転条件は、通常、塔頂部圧力0.01MPa〜1.0MPa、好ましくは、0.05MPa〜0.5MPa、また、還流比(R/D)は、通常、0〜100、好ましくは0.1〜20である。
【実施例】
【0045】
以下に本発明の実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。
(参考例1)
図1において、完全混合攪拌型の反応器10と、脱ガス槽20と、エチレン分離塔30と、高沸分離塔40と、ヘキセン分離塔50と、循環溶媒を貯蔵する溶媒ドラム60とを有し、ヘキセン分離塔50の塔底に接続する溶媒循環配管52の他端を第2供給配管13に接続し、溶媒ドラム60を経由せずに直接反応器10に循環させるプロセスにおいて、原料α−オレフィンにエチレンを用いて、エチレンの連続低重合反応による1−ヘキセンの製造を行った。
【0046】
第1供給配管12からは、エチレン供給配管12aから新たに供給されるエチレンと共に、脱ガス槽20及びエチレン分離塔30から分離された未反応エチレンをそれぞれ配管
31と配管21を用いて抜き出し、圧縮機17を使って反応器10に連続供給した。また、第2供給配管13から、還流比1.1の条件で運転した高沸分離塔40及びヘキセン分離塔50にて分離された回収n−ヘプタン溶媒を、溶媒ドラム60(0.2MPa窒素シール)をバイパスさせ、流量25Kg/Hrで反応器10に連続的に循環供給した。なお。反応器に循環供給されるn−ヘプタン溶媒中の2,5−ジメチルピロール(b)は、3.9wtppmであり、0.0975g/Hr(1.03mmol/Hr)で反応器10に連続供給された。
【0047】
触媒供給配管13aから、クロム(III)2−エチルヘキサノエート(a)を0.262mmol/Hr、2,5−ジメチルピロール(b)をクロム(III)2−エチルヘキサノエート(a)に対し3.0当量で供給し、第2供給配管13を介して反応器10に連続供給した。また、トリエチルアルミニウム(c)を17.5mmol/Hrで、第3供給配管14から反応器10に連続供給した。さらに、ヘキサクロロエタン(d)を1.62mmol/Hrで、第4供給配管15から反応器10に連続供給した。
【0048】
なお、これらの触媒各成分はn−ヘプタンで希釈され、0.2MPaに窒素シールされたタンク(図示せず)から供給された。
反応器10に供給された触媒成分(2,5−ジメチルピロール(b)については、循環
溶媒中の2,5−ジメチルピロールも含む)は、各成分のモル比が、(a):(b):(
c):(d)=1:6.9:67:6.2となるように反応器10に連続供給した。反応条件は、反応器内温度が140℃、反応器内圧力は7.0MPaであった。
【0049】
反応器10から連続的に抜き出された反応液は、失活剤供給配管11aから、触媒失活剤として2−エチルヘキサノールをトリエチルアルミニウム(c)に対し、約3当量で添加された後、順次、脱ガス槽20、エチレン分離塔30、高沸分離塔40、ヘキセン分離塔50にて処理された。上記の条件で、30日間以上、定常状態で運転を実施した。
結果を表−1に示す。ポリエチレン選択率については、エチレン分離塔の塔底液をサンプリングし、室温まで冷却後、ろ過(フィルター径0.2μm)残渣を乾燥して得られるポリエチレンから算出される。C6選択率は循環ヘプタン溶媒とエチレン分離塔30の塔底液をそれぞれガスクロマトグラフィー(島津製作所社製、型式GC-17AAF)でそれぞれの組成分析を行い、反応器内で生成した各成分の選択率を算出した。
触媒効率は、1時間で供給される触媒成分のクロム原子重量(単位:g)当たりの1時間で生成する生成物重量(単位:g)である。
【0050】
(実施例1)
参考例1において、高沸分離塔40の還流比を0.9、反応器に循環供給されるn−ヘプタン溶媒中の2,5−ジメチルピロール(b)を13.9wtppm、反応器10に供給された触媒成分(2,5−ジメチルピロール(b)については、循環溶媒中の2,5−ジメチルピロールも含む)のモル比を、(a):(b):(c):(d)=1:17:65:6.0とした以外は全て同様の方法で、エチレンの低重合反応を行い、1−ヘキセンを製造した。結果を表−1に示す。
【0051】
(実施例2)
実施例1において、反応器に循環供給されるn−ヘプタン溶媒中の2,5−ジメチルピロール(b)を6.5wtppm、触媒供給配管13aから供給されるクロム(III)2
−エチルヘキサノエート(a)の供給量を0.180mmol/Hr、反応器10に供給された触媒成分(2,5−ジメチルピロール(b)については、循環溶媒中の2,5−ジメチルピロールも含む)のモル比を、(a):(b):(c):(d)=1:12:73:4.5とした以外は全て同様の方法で、エチレンの低重合反応を行い、1−ヘキセンを製造した。結果を表−1に示す。
【0052】
(実施例3)
実施例1において、高沸分離塔40の還流比を0.6、反応器に循環供給されるn−ヘプタン溶媒中の2,5−ジメチルピロール(b)を10.4wtppm、触媒供給配管13aから供給されるクロム(III)2−エチルヘキサノエート(a)の供給量を0.18
1mmol/Hr、反応器10に供給された触媒成分(2,5−ジメチルピロール(b)
については、循環溶媒中の2,5−ジメチルピロールも含む)のモル比を、(a):(b
):(c):(d)=1:18:72:4.4とした以外は全て同様の方法で、エチレンの低重合反応を行い、1−ヘキセンを製造した。結果を表−1に示す。
【0053】
(実施例4)
実施例1において、高沸分離塔40の還流比を0.3、反応器に循環供給されるn−ヘプタン溶媒中の2,5−ジメチルピロール(b)を13.7wtppm、触媒供給配管13aから供給されるクロム(III)2−エチルヘキサノエート(a)の供給量を0.17
6mmol/Hr、反応器10に供給された触媒成分(2,5−ジメチルピロール(b)
については、循環溶媒中の2,5−ジメチルピロールも含む)のモル比を、(a):(b
):(c):(d)=1:24:74:4.6とした以外は全て同様の方法で、エチレンの低重合反応を行い、1−ヘキセンを製造した。結果を表−1に示す。
【0054】
(実施例5)
実施例1において、高沸分離塔40の還流比を0.3、反応器に循環供給されるn−ヘプタン溶媒中の2,5−ジメチルピロール(b)を15.5wtppm、触媒供給配管13aから供給されるクロム(III)2−エチルヘキサノエート(a)の供給量を0.16
8mmol/Hr、反応器10に供給された触媒成分(2,5−ジメチルピロール(b)
については、循環溶媒中の2,5−ジメチルピロールも含む)のモル比を、(a):(b
):(c):(d)=1:27:78:4.7とした以外は全て同様の方法で、エチレンの低重合反応を行い、1−ヘキセンを製造した。結果を表−1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
表−1に示す結果から、回収ヘプタン中の回収2,5−ジメチルピロールの濃度が高いほど、触媒効率が高く、ポリエチレン選択率が低下することが分かる。
【符号の説明】
【0057】
1c…触媒槽、
10…反応器、
10a…撹拌機、
11,22,32,41,42,51…配管、
11a…失活剤供給配管
12…第1供給配管、
12a…エチレン供給配管、
13…第2供給配管、
13a…触媒供給配管、
14…第3供給配管、
15…第4供給配管、
21,31…循環配管、
16…コンデンサー、
17…圧縮機、
20…脱ガス槽、
30…エチレン分離塔、
40…高沸分離塔、
50…ヘキセン分離塔、
52…溶媒循環配管、
60…溶媒ドラム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
遷移金属含有化合物、窒素含有化合物及びアルミニウム含有化合物より形成される触媒を用いて、原料α−オレフィンを反応器に連続的に供給し、溶媒の存在下、反応器内で該原料α−オレフィンを低重合反応させα−オレフィン低重合体を生成し、該α−オレフィン低重合体を含む反応液を該反応器から連続的に抜き出し、該反応液から溶媒を分離し、分離された溶媒を該反応器へ連続的に循環供給するにあたり、定常状態における循環供給する溶媒中の窒素含有化合物の濃度が5.0wtppm以上であるα−オレフィン低重合体の製造方法。
【請求項2】
前記反応液から目的生成物であるα−オレフィン低重合体よりも沸点が高い副生物を分離する際に、蒸留塔を用いて蒸留を行い、且つ還流比を1.0以下とすることを特徴とする請求項1に記載のα-オレフィン低重合体の製造方法。
【請求項3】
前記窒素含有化合物が、ピロール含有化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
【請求項4】
前記遷移金属含有化合物が周期表第4〜6族の遷移金属を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
【請求項5】
前記遷移金属含有化合物が、クロム、チタン、ジルコニウム、バナジウム及びハフニウムからなる群より選ばれる1種類以上の金属を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに1項に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
【請求項6】
前記触媒が、更にハロゲン含有化合物を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
【請求項7】
前記溶媒が、飽和炭化水素である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
【請求項8】
前記α−オレフィンがエチレンであり、前記α−オレフィン低重合体が1−ヘキセンである請求項1〜7のいずれかに記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。



【図1】
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【公開番号】特開2012−188371(P2012−188371A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51660(P2011−51660)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】