説明

α−オレフィン重合用触媒及びそれを用いるα−オレフィン重合体の製造方法

【課題】非晶性成分が極めて少なく立体規則性が高く、高剛性や高密度であって、べたつき成分の少ない、α−オレフィン重合体を製造可能とする触媒、及びそのようなα−オレフィン重合体の製造方法を実現する。
【解決手段】以下の成分(A)、成分(B)、成分(C)及び任意成分(D)からなるα−オレフィン重合用触媒、及びそれを用いてのα−オレフィンの重合方法。成分(A):マグネシウム、チタン及びハロゲンを必須成分とする固体触媒成分成分(B):有機アルミニウム化合物成分(C):亜硫酸エステル化合物成分(D):ケイ素化合物又は少なくとも2つのエーテル結合を有する化合物。
【効果】触媒活性が高く、重合時の収率に優れ、高い立体規則性、ベタツキ成分の生成が少なく、密度、剛性、耐熱性が高いα−オレフィン重合体が製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α−オレフィン重合用触媒及びそれを用いるα−オレフィン重合体の製造方法に関するものであり、詳しくは、固体触媒成分と有機アルミニウム化合物、及び任意成分のケイ素化合物又はジエーテル化合物、さらに特定の亜硫酸エステル化合物を組み合わせてなるα−オレフィン重合用触媒であり、また、それを用いてα−オレフィンの重合を行うことにより、非晶性成分が極めて少なく立体規則性が高く、高密度で高剛性であり、さらにべたつき成分の少ないα−オレフィン重合体を高い収率で得ることができる、α−オレフィン重合体の製造方法に係わるものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンは、産業資材として最も重要なプラスチック材料であり、フィルムやシートとして包装材料及び電気材料などに、成形品として自動車部材や家電製品などの工業材料に、さらに繊維材料や建築材料などの各種の用途に広範に汎用されている。
このように利用用途が非常に広く多岐にわたるために、ポリオレフィンにおいては、それらの用途面から、多種の性質においての改良向上が求め続けられ、それらの要望に応じるために、主として重合触媒の改良による技術開発が展開されてきた。
【0003】
遷移金属化合物と有機金属化合物を利用したチーグラー系の触媒により、オレフィンの重合活性が非常に高められて工業生産が実現化されたが、その後に分子量分布による重合体の物性の改善やα−オレフィンの立体規則性の向上をはじめ、多種の性能の改良がなされている。
具体的には、マグネシウム化合物を触媒担持体としてチタン及びハロゲンを必須成分として含有する固体触媒成分を使用した触媒が開発され、さらに電子供与体を使用して触媒活性と立体規則性を高めた触媒(例えば、特許文献1)、その後には、各種の有機ケイ素化合物を新たに触媒成分に付加して、さらに触媒活性や立体規則性の向上をはかり、分子量分布を広くする提案もなされている(例えば、特許文献2)。
さらには、代表的には、分岐状脂肪族炭化水素基又は環状脂肪族炭化水素基を有する有機ケイ素化合物を内部ドナーとし、スルホン酸エステルを外部ドナーとして成形加工性を高め、高結晶性の重合体を得る(特許文献3)、特定のアルコキシ基含有有機ケイ素化合物の使用により分子量分布を広くする(特許文献4)、スルホンなどのS=O結合を含有する有機化合物と有機ケイ素化合物を内部ドナーとして使用し溶融張力を高めフィルムの成形性を向上させる(特許文献5)、有機ケイ素化合物と組み合わせた酸素含有有機化合物を外部ドナーとして使用して、非晶性成分を低減する(特許文献6)、などをはじめとして、多観点からの非常に多くの改良提案がなされ多くの成果が挙げられている。
【0004】
しかしながら、本発明者らが知るところでは、このようないずれの触媒系においても生成するα−オレフィン重合体の立体規則性や高結晶化などの諸性質特性の改良は未だに充分とはいえなく、各利用分野においてなお諸性質の向上が必要とされ、例えば、自動車部品材料分野などでは成形品として高剛性や高密度が要求され、特に高結晶性すなわち冷キシレンに溶解する非晶性成分の低減に対するさらなる改善が望まれ、包装材料分野ではベタツキ性のさらなる改良なども強く要望されている。
【0005】
【特許文献1】特開昭58−138706号公報(特許請求の範囲、第2頁左下欄)
【特許文献2】特開平7−145204号公報(要約)
【特許文献3】特開平9−110924号公報(要約)
【特許文献4】特開平9−241318号公報(要約)
【特許文献5】特開2001−114816号公報(要約、段落0003、段落0022)
【特許文献6】特開2002−265517号公報(要約)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ポリオレフィン材料分野における前記した従来技術の状況において、広範な利用分野からのさらなる性能向上の要望に応えるべく、剛性や密度をさらに高め、なお一層の非晶性成分の低減をなし立体規則性を向上させた、あるいはべたつき成分の少ない、α−オレフィン重合体を製造可能とする触媒及びそのようなα−オレフィン重合体の製造方法を実現することを発明の課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記のような課題を解決するために、各種の触媒成分について研究開発を行って、マグネシウム化合物を触媒担持体としてチタン及びハロゲンを必須成分として含有する固体触媒成分及び有機アルミニウム化合物を使用するチーグラー系触媒において、特殊な有機ケイ素化合物を内部ドナーとしスルホン酸エステルを外部ドナーとして、成形加工性に優れ極めて高結晶性のオレフィン重合体を高収率で得られる重合触媒が見い出され、先に特許出願がなされ(特開平9−110924号公報 前記の特許文献3)、また、ウレア系化合物を外部ドナーとして、非晶性成分が一層低減され立体規則性が向上される重合触媒も見い出され、先に特許出願されている(特願2003−317597)ところであるが、かかる研究開発の継続において、本発明者らは、上記の課題の解決に関わって、立体規則性が高く非晶性成分の極めて少ない高結晶性α−オレフィン重合体を高い収率で得るために、また、高剛性で高密度でべたつきも可及的に少ないα−オレフィンを得るために、新たな触媒を開発すべく新規な触媒成分を求めて、触媒活性点への配位と選択的な被毒の観点から、総合的な考察を行って触媒成分を探索し、実験的な検討を重ねた結果、固体触媒成分に有機アルミニウム化合物と特定の亜硫酸エステル化合物を組み合わせることにより、非晶性成分の極めて少ない高結晶性のα−オレフィン重合体が高収率で得られることを見い出し、本発明に到達するに至った。
【0008】
本発明は、チーグラー系触媒の触媒成分として新規な特定の化合物を採用することを特徴とする、新しく創作された発明であって、有機アルミニウム化合物及び任意成分のケイ素化合物又はジエーテル化合物との組み合わせにおいて、下記の一般式[1]の化学構造を有す特定の亜硫酸エステル化合物が外部ドナーとして、段落0062に後述するように、上記の先願発明におけるウレア系化合物と同様に、触媒活性点への配位と選択的な被毒の作用をなして、非晶性成分の極めて少ない高結晶性α−オレフィン重合体が高収率で得られるものと推察され、さらに、付随的に、高剛性で高密度でべたつきも可及的に少ないα−オレフィンを得ることができる。
【0009】
【化2】

[1]
【0010】
(ここで、R及びRは、炭素数1つ以上の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基であり、R及びRが連結された環状構造を形成してもよい。)
【0011】
以上において、本発明の創作の経緯と構成の概要を記述したが、本発明は、基本的に次の〔1〕〜〔9〕の発明単位群から構成され、〔1〕及び〔2〕が基本発明であって、それ以下のものは基本発明を具体化ないしは実施態様化するものである。
〔1〕以下の成分(A)、成分(B)及び成分(C)からなるα−オレフィン重合用触媒。
成分(A):マグネシウム、チタン及びハロゲンを必須成分とする固体触媒成分
成分(B):有機アルミニウム化合物
成分(C):亜硫酸エステル化合物
〔2〕以下の成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)からなるα−オレフィン重合用触媒。
成分(A):マグネシウム、チタン及びハロゲンを必須成分とする固体触媒成分
成分(B):有機アルミニウム化合物
成分(C):亜硫酸エステル化合物
成分(D):ケイ素化合物又は少なくとも2つのエーテル結合を有する化合物
〔3〕成分(C)の亜硫酸エステル化合物が、下記の一般式[1]で表される化合物から選ばれることを特徴とする、〔1〕又は〔2〕におけるα−オレフィン重合用触媒。
【0012】
【化3】

[1]
【0013】
(ここで、R及びRは、炭素数1つ以上の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基であり、R及びRが連結された環状構造を形成してもよい。)
〔4〕R及びRが炭素数1から10のアルキル基又はシクロアルキル基からなる立体的に嵩の低い置換基である、あるいは5〜7員環の環状構造を形成することを特徴とする、〔3〕におけるα−オレフィン重合用触媒。
〔5〕成分(D)ケイ素化合物が下記の式で表されるケイ素化合物であることを特徴とする、〔2〕〜〔4〕のいずれかにおけるα−オレフィン重合用触媒。
3−mSi(OR
(ここで、Rは、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基であり、Rは、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基、ハロゲン又は水素、Rは、炭化水素基であり、mは、1≦m≦3を示す。)
〔6〕成分(D)少なくとも2つのエーテル結合を有する化合物が脂肪族ジエーテル又は芳香族ジエーテルであることを特徴とする、〔2〕〜〔4〕のいずれかにおけるα−オレフィン重合用触媒。
〔7〕成分(A)が、マグネシウム、チタン、ハロゲン及び電子供与性化合物を必須成分として含有する固体触媒成分であることを特徴とする、〔1〕〜〔6〕のいずれかにおけるα−オレフィン重合用触媒。
〔8〕成分(A)が、マグネシウム、チタン及びハロゲンを必須成分とする固体触媒成分に、有機アルミニウム及び有機ケイ素化合物を予め接触させたものであることを特徴とする、〔1〕〜〔7〕のいずれかにおけるα−オレフィン重合用触媒。
〔9〕〔1〕〜〔8〕のいずれかにおけるα−オレフィン重合用触媒を用いて、α−オレフィンを単独重合又は2種類以上を共重合することを特徴とするα−オレフィン重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明のα−オレフィン重合用触媒は、触媒活性が高く、重合時の収率に優れており、本発明のα−オレフィン重合用触媒により重合されるα−オレフィン重合体は、非晶性成分が極めて少なく高い立体規則性を有し、ベタツキ成分の生成も少なく、さらに密度や剛性及び耐熱性も高く、優れた機械的特性を有するものである。
したがって、本発明によるα−オレフィン重合体は、高剛性化や高耐熱性化が要求される自動車部品や家電部品などの工業材料として、さらにはべた付き性が少ないことから包装材料などの用途にも好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
段落0007〜0014において総括的に記載した本発明を、発明の実施の形態として、以下において具体的に詳細に説明する。
【0016】
1.α−オレフィン重合用触媒
本発明における触媒は、成分(A)、成分(B)、特定の成分(C)及び任意成分の成分(D)からなるものである。ここで「からなる」ということは、成分が挙示のもの(すなわち、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D))のみであるということを意味するものではなく、本発明の目的に沿って他の成分が共存することを包含する。
本発明の触媒は、成分(A):マグネシウム、チタン、及びハロゲンを必須成分とする固体触媒成分、成分(B):有機アルミニウム化合物、成分(C):亜硫酸エステル化合物、及び成分(D):ケイ素化合物又は少なくとも2つのエーテル結合を有する化合物からなるα−オレフィン重合用触媒である。また、好ましくは、成分(A)に、成分(E)電子供与体を含有してもよい。
【0017】
2.成分(A)
(1)固体触媒成分
本発明で用いられる成分(A)は、チタン、マグネシウム及びハロゲンを必須成分として含有するα−オレフィンの立体規則性重合用固体成分である。ここで「必須成分として含有する」ということは、挙示の三成分以外に、本発明の目的に沿った他元素を含んでいてもよいこと、これらの元素はそれぞれが、本発明の目的に沿った任意の化合物として存在してもよいこと、並びにこれら元素は相互に結合したものとして存在してもよいことを示すものである。なお、以下における各例示化合物は代表的な化合物を列挙して、記載を簡潔になしている。
【0018】
(1−1)マグネシウム源
本発明において使用されるマグネシウム源となるマグネシウム化合物としては、マグネシウムジハライド、ジアルコキシマグネシウム、アルコキシマグネシウムハライド、マグネシウムオキシハライド、ジアルキルマグネシウム、アルキルマグネシウムハライド、アリロキシマグネシウム、アリロキシマグネシウムハライド、金属マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムのカルボン酸塩などが挙げられる。
これらの中でもマグネシウムジハライド、ジアルコキシマグネシウム、アルコキシマグネシウムハライドなどのMg(OR)2−n(ここで、Rは炭化水素基、好ましくは炭素数1〜10程度のものであり、Xはハロゲンを示し、nは0≦n≦2である。)で表されるマグネシウム化合物が好ましく、マグネシウムジハライドがより好ましい。
【0019】
(1−2)チタン源
チタン源となるチタン化合物としては、一般式Ti(OR)4−pp(ここで、Rは炭化水素基、好ましくは炭素数1〜10程度のものであり、Xはハロゲンを示し、pは0≦p≦4である。)で表される化合物が挙げられる。なかでも四価のチタン化合物が好ましく、ハロゲンを含む四価のチタン化合物がより好ましい。
具体例としては、TiCl、TiBr、Ti(OC)Cl、Ti(OCCl、Ti(OCCl、Ti(O−nCCl、Ti(O−nCCl、Ti(OC)Cl、Ti(O−iCCl、Ti(O−nC、Ti(O−iC、Ti(O−nC13、Ti(O−nC17などが挙げられる。
【0020】
また、TiX´(ここで、X´はハロゲンを示す。)に後述する電子供与体を反応させた分子化合物をチタン源として用いることもできる。そのような分子化合物の具体例としては、TiCl・CHCOC、TiCl・CHCO、TiCl・CNO、TiCl・CHCOCl、TiCl・CCOCl、TiCl・CCO、TiCl・ClCOC、TiCl・COなどが挙げられる。
TiCl(TiClを水素で還元したもの、アルミニウム金属で還元したもの、あるいは有機金属化合物で還元したものなどを含む)、TiBr、Ti(OC)Cl、TiCl、ジシクロペンタジエニルチタニウムジクロライド、シクロペンタジエニルチタニウムトリクロライドなどのチタン化合物の使用も可能である。
これらのチタン化合物の中でも、TiCl、Ti(OC、Ti(OC)Clなどが好ましく、TiCl、Ti(OCがさらに好ましい。
【0021】
(1−3)ハロゲン
ハロゲンは、上述のマグネシウム及び/又はチタンのハロゲン化合物から供給されるのが普通であるが、他のハロゲン源、例えばAlCl、AlBr、AlI、EtAlCl、EtAlClなどのアルミニウムのハロゲン化物やBCl、BBr、BIなどのホウ素のハロゲン化物、SiCl、MeSiClなどのケイ素のハロゲン化物、PCl、PClなどのリンのハロゲン化物、WClなどのタングステンのハロゲン化物、MoClなどのモリブデンのハロゲン化物といった公知のハロゲン化剤から供給することもできる。触媒成分中に含まれるハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などであり又はこれらの混合物であってもよく、特に塩素が好ましい。
【0022】
(1−4)電子供与体
さらに、この成分(A)の固体成分を製造する場合に、任意成分として成分(E)電子供与体を内部ドナーとして使用することもできる。
この固体成分の製造に利用できる成分(E)電子供与体としては、アルコール類、フェノール類、ケトン類、アルデヒド類、カルボン酸類、有機酸又は無機酸類のエステル類、エーテル類、酸アミド類、酸無水物類のような含酸素電子供与体、アンモニア、アミン、ニトリル、イソシアネートのような含窒素電子供与体、スルホン酸エステルのような含硫黄電子供与体などを例示することができる。
【0023】
より具体的には、(イ)メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、フェニルエチルアルコール、イソプロピルベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオールなどの炭素数1ないし18のアルコール類。
【0024】
(ロ)フェノール、クレゾール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、ナフトール、1,1´−ビ−2−ナフトールなどのアルキル基を有してよい炭素数6ないし25のフェノール類。
【0025】
(ハ)アセトン、メチルエチルケトン、ベンゾフェノン、アセチルアセトンなどの炭素数3ないし15のケトン類。
【0026】
(ニ)アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒドなどの炭素数2ないし15のアルデヒド類。
【0027】
(ホ)ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸プロピル、酢酸セロソルブ、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、クロル酢酸メチル、メタクリル酸メチル、クロトン酸エチル、シクロへキサンカルボン酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸セロソルブ、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、トルイル酸アミル、エチル安息香酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル、エトキシ安息香酸エチル、γ−ブチロラクトン、α−バレロラクトンなどの有機酸モノエステル、又はフタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジヘプチル、2−メチルマロン酸ジ−n−プロピル、2−シクロプロピルマロン酸ジ−n−プロピル、2,2−ジメチルマロン酸ジ−n−プロピル、2,2−ジエチルマロン酸ジ−n−プロピル、2−イソプロピルマロン酸ジ−n−プロピル、コハク酸ジエチル、2,3−ジエチル−コハク酸ジブチル、2,3−ジイソプロピル−コハク酸ジブチル、酒石酸ジブチル、マレイン酸ジブチル、1,2−シクロヘキサンカルボン酸ジエチル、ノルボルナンジエニル−1,2−ジメチルカルボキシラート、シクロプロパン−1,2−ジカルボン酸−ジ−n−ヘキシル、1,1−シクロブタンジカルボン酸ジエチルなどの有機酸多価エステルの炭素数2ないし20の有機酸エステル類。
【0028】
(ヘ)ケイ酸エチル、ケイ酸ブチルなどのケイ酸エステル、又は炭酸エチレンのような無機酸エステル類。
【0029】
(ト)アセチルクロリド、ベンゾイルクロリド、トルイル酸クロリド、アニス酸クロリド、塩化フタロイル、イソ塩化フタロイルなどの炭素数2ないし15の酸ハライド類。
【0030】
(チ)メチルエーテル、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、アミルエーテル、テトラヒドロフラン、アニソール、ジフェニルエーテル、2,2´−ジメトキシ−1,1´−ビナフタレン、1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジメチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−s−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−t−ブチル−2−メチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−t−ブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソペンチル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジフェニル−1,3−ジメトキシプロパン、1,3−ジエトキシプロパン、2,2−ジメチル−1,3−ジエトキシプロパン、1,3−ジプロポキシプロパン、1,3−ジブトキシプロパン、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジエトキシプロパン、1,2,3−トリメトキシプロパン、1,1,1−トリメトキシメチル−エタンなどの炭素数2ないし20のエーテル類。
【0031】
(リ)酢酸アミド、安息香酸アミド、トルイル酸アミドなどの酸アミド類。
【0032】
(ヌ)メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリブチルアミン、ピペリジン、トリベンジルアミン、アニリン、ピリジン、ピコリン、テトラメチルエチレンジアミンなどのアミン類。
【0033】
(ル)アセトニトリル、ベンゾニトリル、トルニトリルなどのニトリル類。
【0034】
(ヲ)2−(エトキシメチル)−安息香酸エチル、2−(t−ブトキシメチル)−安息香酸エチル、3−エトキシ−2−フェニルプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシ−2−s−ブチルプロピオン酸エチル、3−エトキシ−2−t−ブチルプロピオン酸エチルなどのアルコキシエステル化合物類。
【0035】
(ワ)2−ベンゾイル安息香酸エチル、2−(4´−メチルベンゾイル)安息香酸エチル、2−ベンゾイル−4,5−ジメチル安息香酸エチルなどのケトエステル化合物類。
【0036】
(カ)ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、p−トルエンスルホン酸エチル、p−トルエンスルホン酸イソプロピル、p−トルエンスルホン酸−n−ブチル、p−トルエンスルホン酸−s−ブチルなどのスルホン酸エステル類などを挙げることができる。
【0037】
これらの電子供与体は、二種類以上用いることもできる。これらの中で好ましいのは有機酸エステル化合物、酸ハライド化合物及びエーテル化合物であり、特に好ましいのはフタル酸ジエステル化合物、フタル酸ジハライド化合物、コハク酸ジエステル化合物、酒石酸エステル、及び脂肪族あるいは芳香族のジエーテル化合物である。
【0038】
(1−5)任意成分
固体触媒成分には、段落0053〜0055に後述する成分(B)と同一の成分(有機アルミニウム化合物)を任意成分(a)として、段落0064〜0074に後述する成分(D)、好ましくは成分(D)中のケイ素化合物と同一の成分を任意成分(b)として、それらを予め接触させたものであってもよい。
この、予備接触工程に、さらに、追加で任意成分を共存させることもできる。このような、任意成分としては、(c)ビニルシラン化合物や(d)有機金属化合物が例示される。
【0039】
(c)ビニルシラン化合物としては、モノシラン(SiH)中の少なくとも一つの水素原子がビニル基(CH=CH−)に置き換えられ、そして残りの水素原子のうちのいくつかが、ハロゲン(好ましくはCl)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜12の炭化水素基)、アリール基(好ましくはフェニル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基)、その他で置き換えられた構造を示すものである。
【0040】
より具体的には、CH=CH−SiH、CH=CH−SiH(CH)、CH=CH−SiH(CH、CH=CH−Si(CH、CH=CH−SiCl、CH=CH−SiCl(CH)、CH=CH−SiCl(CH、CH=CH−SiH(Cl)(CH)、CH=CH−Si(C、CH=CH−SiCl(C、CH2=CH−SiCl(C)、CH=CH−Si(CH(C)、CH=CH−Si(CH)(C、CH=CH−Si(n−C、CH=CH−Si(C、CH=CH−Si(CH)(C、CH=CH−Si(CH(C)、CH=CH−Si(CH(CCH)、(CH=CH)(CHSi−O−Si(CH(CH=CH)、(CH=CH)SiH、(CH=CH)SiCl、(CH=CH)Si(CH、(CH=CH)Si(Cなどを例示することができる。
【0041】
(d)本発明で使用する有機金属化合物は、周期律表(短周期型)第I族〜第III族金属の有機金属化合物であり、少なくとも一つの有機基−金属結合を持つ。その場合の有機基としては、炭素数1〜20程度、好ましくは1〜6程度のヒドロカルビル基が代表的である。原子価の少なくとも一つが有機基で充足されている有機金属化合物の金属の残りの原子価(もしそれがあれば)は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロカルビルオキシ基(ヒドロカルビル基は、炭素数1〜20程度、好ましくは1〜6程度)、あるいは酸素原子を介した当該金属(具体的には、メチルアルモキサンの場合の−O−Al(CH)−)その他で充足される。
【0042】
このような有機金属化合物の具体例を挙げれば、(イ)メチルリチウム、n−ブチルリチウム、t−ブチルリチウムなどの有機リチウム化合物、(ロ)ブチルエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ヘキシルエチルマグネシウム、ブチルマグネシウムクロライド、t−ブチルマグネシウムブロマイドなどの有機マグネシウム化合物、(ハ)ジエチル亜鉛、ジブチル亜鉛などの有機亜鉛化合物がある。
【0043】
上記追加任意成分(c)及び(d)は、一種又は二種以上を組み合わせて使用することができる。また、この時にTiClなどのチタンのハロゲン化合物、WClなどのタングステンのハロゲン化物、MoClなどのモリブデンのハロゲン化物といった公知のハロゲン化剤を共存させてもよい。これらの任意成分を使用すると、本発明の効果はより大きくなる。
【0044】
任意成分としてのビニルシラン化合物を使用するときのその使用量は、成分(A)を構成するチタン成分に対するモル比で、0.001〜1,000の範囲内がよく、好ましくは0.01〜100の範囲内である。任意成分としての有機金属化合物を使用するときのその使用量は、前記のマグネシウム化合物の使用量に対してモル比で0.001〜100の範囲内がよく、好ましくは0.01〜10の範囲内である。
【0045】
(2)成分(A)の製造
成分(A)は、成分(A)を構成する各成分を、又は必要により前記任意成分と、段階的にあるいは一時的に相互に接触させて、その中間及び/又は最後に有機溶媒、例えば炭化水素溶媒又はハロゲン化炭化水素溶媒で洗浄することによって製造することができる。
【0046】
(2−1)成分の接触
成分(A)を構成する各成分の接触条件は、酸素の不存在下で実施する必要があるものの、本発明の効果が認められるかぎり任意のものでありうるが、一般的には、次の条件が好ましい。
接触温度は、−50〜200℃程度、好ましくは0〜100℃である。接触方法としては、回転ボールミル、振動ミル、ジェットミル、媒体撹拌粉砕機などによる機械的な方法、不活性希釈剤の存在下に撹拌により接触させる方法などがある。このとき使用する不活性希釈剤としては、脂肪族又は芳香族の炭化水素及びハロ炭化水素、ポリシロキサンなどが挙げられる。
【0047】
(2−2)成分の使用量
成分(A)を構成する各成分の使用量の量比は本発明の効果が認められるかぎり任意のものでありうるが、一般的には、次の範囲内が好ましい。
チタン化合物の使用量は、使用するマグネシウム化合物の使用量に対してモル比で0.0001〜1,000の範囲内がよく、好ましくは0.01〜10の範囲内である。
ハロゲン源としてそのための化合物を使用する場合は、その使用量はチタン化合物及び(又は)マグネシウム化合物がハロゲンを含む、含まないにかかわらず、使用するマグネシウムの使用量に対してモル比で0.01〜1,000の範囲内がよく、好ましくは0.1〜100の範囲内である。
【0048】
(2−3)製造
成分(A)は必要により電子供与体等の他成分を用いて、例えば以下のような製造方法によって製造される。
(イ)ハロゲン化マグネシウムと必要に応じて電子供与体と、チタン含有化合物を接触させるか、あるいはチタン含有化合物及びケイ素化合物成分を接触させる方法。
(ロ)アルミナ又はマグネシアをハロゲン化リン化合物で処理し、それにハロゲン化マグネシウム、電子供与体と、チタンハロゲン含有化合物を接触させるか、あるいはチタンハロゲン含有化合物及びケイ素化合物成分を接触させる方法。
(ハ)ハロゲン化マグネシウムとチタンテトラアルコキシド及び特定のポリマーケイ素化合物成分を接触させて得られる固体成分に、チタンハロゲン化合物及び/又はケイ素のハロゲン化合物を接触させた反応生成物を不活性有機溶媒で洗浄後、ケイ素化合物成分を接触させるか、又は、各々別に接触させる方法。
このポリマーケイ素化合物としては、下式で示されるものが適当である。
【0049】
【化4】

【0050】
(ここで、Rは炭素数1〜10程度の炭化水素基であり、qはこのポリマーケイ素化合物の粘度が1〜100センチストークス程度となるような重合度を示す。)
具体的には、メチルハイドロジェンポリシロキサン、エチルハイドロジェンポリシロキサン、フェニルハイドロジェンポリシロキサン、シクロヘキシルハイドロジェンポリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサンなどが好ましい。
(ニ)マグネシウム化合物をチタンテトラアルコキシド及び/又は電子供与体で溶解させて、ハロゲン化剤又はチタンハロゲン化合物で析出させた固体成分に、チタン化合物及び/又はケイ素化合物成分を接触させるか又は、各々別に接触させる方法。
(ホ)グリニャール試薬などの有機マグネシウム化合物をハロゲン化剤、還元剤などと作用させた後、これに必要に応じて電子供与体を接触させ、次いでチタン含有化合物を接触させるか、あるいはチタン含有化合物及びケイ素化合物成分を接触させる方法。
(ヘ)アルコキシマグネシウム化合物にハロゲン化剤及び/又はチタン化合物を電子供与体の存在下もしくは不存在下に接触させ、次いでチタン化合物及び/又はケイ素化合物成分を接触させるか又は、各々別に接触させる方法。
(ト)上記(イ)から(ヘ)で製造した固体成分に、有機アルミニウムと有機ケイ素化合物、並びに必要に応じてビニルシラン化合物を室温下で接触させる方法。
これらの製造方法の中でも(イ)、(ハ)、(ニ)及び(ヘ)並びに(ト)が好ましい。成分(A)は、その製造の中間及び/又は最後に不活性有機溶媒、例えば脂肪族又は芳香族炭化水素溶媒(ヘキサン、ヘプタン、トルエン、シクロヘキサンなど)、あるいはハロゲン化炭化水素溶媒(塩化−n−ブチル、1,2−ジクロロエチレン、四塩化炭素、クロルベンゼンなど)で洗浄することができる。
【0051】
(3)予備重合
(3−1)オレフィン類
本発明で使用する成分(A)としては、ビニル基含有化合物、例えばオレフィン類、ジエン化合物、スチレン類などを接触させて重合させることからなる予備重合工程を経たものとして使用することもできる。
予備重合を行う際に用いられるオレフィン類の具体例としては、例えば炭素数2〜20程度のもの、具体的にはエチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチルブテン−1、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−エイコセンなどがあり、ジエン化合物の具体例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、1,3−ヘプタジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン、1,3−シクロヘプタジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,9−デカジエン、1,13−テトラデカジエン、p−ジビニルベンゼン、m−ジビニルベンゼン、o−ジビニルベンゼンなどがある。また、スチレン類の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、アリルベンゼン、クロルスチレンなどがある。
【0052】
(3−2)重合条件
成分(A)中のチタン成分と上記のビニル基含有化合物の量比関係は、本発明の効果が認められる限り任意のものでありうるが、一般的には次の範囲内が好ましい。ビニル基含有化合物の予備重合量は、チタン固体成分1グラムあたり0.001〜100グラム、好ましくは0.1〜50グラム、さらに好ましくは0.5〜10グラムの範囲内である。
予備重合時の反応温度は−150〜150℃、好ましくは0〜100℃である。そして、「本重合」、すなわちα−オレフィンの重合のときの重合温度よりも低い重合温度が好ましい。
反応は、一般的に撹拌下に行うことが好ましく、その時ヘキサン、ヘプタンなどの不活性溶媒を存在させることもできる。また、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の接触時に予備重合を行うこともできる。
このような、成分(A)の製造法としては、例えば、特開昭57−63310号、特開昭58−83006号、特開昭60−23404号、特開昭63−3010号、特開平3−706号、特開平4−218507号、特開平6−336503号、特開平8−333413号などの各公報に固体触媒成分の製造法が例示される。
【0053】
3.有機アルミニウム化合物(成分(B))
本発明で用いられる有機アルミニウム化合物(成分(B))としては、R3−rAlX、R3−sAl(OR(ここで、R及びRは、炭素数1〜20の炭化水素基又は水素原子であり、Rは炭化水素基であり、Xはハロゲンであり、r及びsはそれぞれ0≦r<3、0<s<3である。)で表されるものである。
【0054】
具体的には、(イ)トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、トリ−n−デシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、(ロ)ジエチルアルミニウムモノクロライド、ジイソブチルアルミニウムモノクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライドなどのアルキルアルミニウムハライド、(ハ)ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライド、(ニ)ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシドなどが挙げられる。
また、上記に類似する化合物として酸素原子あるいは窒素原子を介して2以上のアルミニウムが結合した有機アルミニウム化合物を用いることもできる。具体的には(ホ)(CAlOAl(C、(CAlN(CAl(C、メチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、メチルイソブチルアルモキサンなどが挙げられる。
【0055】
これら(イ)〜(ホ)の有機アルミニウム化合物を複数併用したり、その他の有機金属化合物、例えばR2−tZn(OR´)(ここで、R及びR´は同一又は異なってもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、tは0≦t≦2である。)で表される有機亜鉛などの有機金属化合物を併用することもできる。例えば、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムエトキシドの併用、ジエチルアルミニウムモノクロライドとジエチルアルミニウムエトキシドの併用、エチルアルミニウムジクロライドとエチルアルミニウムジエトキシドの併用、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムエトキシドとジエチルアルミニウムモノクロライドとの併用、トリエチルアルミニウムとジエチル亜鉛の併用などが挙げられる。
【0056】
成分(B)の有機アルミニウム化合物と成分(A)の固体触媒成分中のチタン成分との割合は、Al/Ti=1〜1,000モル/モルが一般的であり、好ましくは、Al/Ti=10〜500モル/モルの割合で使用される。
【0057】
4.亜硫酸エステル化合物(成分(C))
(1)化合物
本発明で用いられる亜硫酸エステル化合物は、以下式[1]の化合物から選ばれることが好ましい。(ここで、R及びRは、炭素数1つ以上の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基であり、任意のR及びRが連結された環状構造を形成してもよい。)
【0058】
【化5】

[1]
【0059】
及びRが脂肪族炭化水素基あるいは脂環式炭化水素基からなる場合、炭素数1から20、より好ましくは1から10のアルキル基、シクロアルキル基などの構造的に嵩が小さい置換基であることが好ましい。
具体的には、メチル基、エチル基、ビニル基、アリル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、i−ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロオクチル基が挙げられ、とりわけ、メチル基、エチル基、n−プロピル基が好ましい。
及びRが芳香族炭化水素基からなる場合、炭素数6から20、より好ましくは6から12の置換基のない芳香族炭化水素基などの置換基であることが好ましい。これらの置換基は、環構造の歪みによりS=O基がより配位しやすい特性をもつものと考えられ好ましい。
具体的には、フェニル基、ビフェニル基、インデニル基、フルオレニル基が挙げられ、とりわけ、フェニル基、ビフェニル基、インデニル基が好ましい。
及びRに含有可能なヘテロ原子としては窒素、酸素、ケイ素、リン、硫黄であり、窒素、酸素がより好ましい。また、任意のR及びRが連結された環状構造を形成してもよく、R及びRが飽和炭素水素基であることが好ましい。とりわけ、R及びRが5〜7員環の環状構造を形成することが望ましい。
【0060】
具体的には、次に示す亜硫酸エステル化合物を例示することができる。
亜硫酸ジメチル、亜硫酸ジエチル、亜硫酸ジプロピル、亜硫酸ジイソプロピル、亜硫酸ジブチル、亜硫酸ジヘキシル、亜硫酸ジヘプチル、亜硫酸ジシクロプロピル、亜硫酸ジシクロペンチル、亜硫酸ジシクロヘキシル、亜硫酸ジシクロオクチル、亜硫酸ジフェニル、グリコールスルフィトなどの亜硫酸エステル化合物などを挙げることができる。これらの亜硫酸エステル化合物は、二種類以上用いることもできる。
【0061】
これらの亜硫酸エステル化合物の中でも亜硫酸ジメチル、亜硫酸ジエチル、亜硫酸ジプロピル、亜硫酸ジイソプロピル、亜硫酸ジシクロペンチル、亜硫酸ジシクロヘキシル、亜硫酸ジフェニル、グリコールスルフィトが好ましく、とりわけ亜硫酸ジメチル、亜硫酸ジエチルが好ましい。
【0062】
(2)亜硫酸エステル化合物の触媒作用
これらの亜硫酸エステル化合物は、R−Oの電子吸引的な効果によりS=O基が選択的に非晶性成分を生成する活性点に配位し被毒することができると推測される。またS=O基近傍のR及びRは構造的に嵩が小さいか、あるいは環構造の歪みによりS=O基がより配位しやすい構造を作ることによって、優れた効果を発現すると推定される。
【0063】
(3)使用量と接触
成分(C)の亜硫酸エステル化合物と成分(B)の有機アルミニウム化合物との割合は、有機アルミニウム化合物の使用量に対してモル比で0.001〜1の範囲内がよく、好ましくは0.005〜0.5の範囲内である。
成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)の接触方法は任意であるが,一般には、各成分を逐次的に接触させてもよいし、一度に接触させてもよい。
【0064】
5.ケイ素化合物成分又は少なくとも2つのエーテル結合を有する化合物(成分(D))
本発明で好ましく用いられる成分(D)は、ケイ素化合物又は少なくとも2つのエーテル結合を有する化合物である。
【0065】
(1)ケイ素化合物
ケイ素化合物成分は、下記の式で表される。
3−mSi(OR
(ここで、Rは、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基であり、Rは、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基、ハロゲン又は水素、Rは、炭化水素基であり、mは、1≦m≦3を示す。)
【0066】
が脂肪族炭化水素基である場合は、炭素数が通常3〜20、好ましくは3〜10の分岐脂肪族炭化水素基であり、i−プロピル基、i−ブチル基、t−ブチル基、i−ヘキシル基などが好ましく挙げられ、なかでも、t−ブチル基がより好ましい。また、Rが環状脂肪族炭化水素基である場合の炭素数は通常4〜20、好ましくは5〜10であり、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロオクチル基などが好ましく挙げられ、なかでも、シクロペンチル基、シクロへキシル基がより好ましい。Rが含有可能なヘテロ原子としては窒素、酸素、ケイ素、リン、硫黄であり、窒素、酸素がより好ましい。
【0067】
は、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基、ハロゲン又は水素である。より詳しくは、水素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン基、また、炭化水素基の炭素数は、通常1〜20、好ましくは1〜10であり、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、i−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基などが好ましく挙げられ、なかでも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基がより好ましい。
【0068】
は、炭化水素基であり、炭素数は通常1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5であり、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基などが好ましく挙げられ、なかでも、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0069】
本発明で使用できるケイ素化合物成分の具体例は、下記の通りである。
(CHCSi(CH)(OCH、(CHCSi(CH(CH)(OCH、(CHCSi(CH)(OC、(CHCSi(C)(OCH、(CHCSi(n−C)(OCH、(CHCSi(n−C13)(OCH、(CCSi(CH)(OCH、(CH)(C)CHSi(CH)(OCH、((CHCHCHSi(OCH、((CHC)Si(OCH、(C)(CHCSi(OCH、(C)(CHCSi(OC、(CHCSi(OC(CH)(OCH、((CHCH)Si(OC、((CHCHCH)((CHCH)Si(OCH、(CSi(OCH、(CSi(OC、(C)(CH)Si(OCH、(C)((CHCHCH)Si(OCH、(C11)Si(CH)(OCH、(C11Si(OCH、(C11)((CHCHCH)Si(OCH、HC(CHC(CHSi(CH)(OCH、(CHCSiH(OCH、(CHCSiCl(OCH、(CHCSiF(OCH
【0070】
【化6】

【0071】
(CHCSi(OCH(CH)(OCH、(CHCSi(OC(CH)(OCH、(CHCSi(N(C)(OCH、(CHCSi(NC10)(OCH、(CHCSi(NC16)(OCH、((CHHCO)Si(OCH、((CHCO)Si(OCH、(4−CH−C11O)Si(OCH、(C1017O)Si(OCH、((CN)Si(OCH、(CN)Si(OCH、(C10N)Si(OCH、(C16N)Si(OCHなどを挙げることができる。
【0072】
これらの中で好ましいのは、(CHCSi(CH)(OCH、(CHCSi(CH(CH)(OCH、(CHCSi(CH)(OC、(CHCSi(C)(OCH、((CHCH)Si(OCH、(CHCSi(n−C)(OCH、(CHCSi(n−C13)(OCH、(CSi(OCH、(CSi(OC、(C11)Si(CH)(OCH、(C11Si(OCHなどが挙げられる。
【0073】
(2)ジエーテル化合物
成分(D)の少なくとも2つのエーテル結合を有する化合物は、成分(A)の固体触媒成分に、電子供与体として好適に使用されるジエーテル化合物と同じ群から選ばれるものであり、同一であっても異なっていてもよい。
【0074】
具体的には、1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジメチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−s−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−t−ブチル−2−メチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−t−ブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジフェニル−1,3−ジメトキシプロパン、1,3−ジエトキシプロパン、2,2−ジメチル−1,3−ジエトキシプロパン、1,3−ジプロポキシプロパン、1,3−ジブトキシプロパン、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジエトキシプロパン、2,2´−ジメトキシ−1,1´−ビナフタレン、1,2,3−トリメトキシプロパン、1,1,1−トリメトキシメチル−エタンなどが挙げられる。
【0075】
(3)使用量
成分(D)のケイ素化合物又は少なくとも2つのエーテル結合を有する化合物と成分(B)の有機アルミニウム化合物成分との割合は、有機アルミニウム化合物の使用量に対してモル比で0.01〜10の範囲内がよく、好ましくは0.05〜1の範囲内である。
【0076】
6.α−オレフィン重合
本発明の新規な触媒を使用する、α−オレフィン重合は、炭化水素溶媒を用いるスラリー重合、実質的に溶媒を用いない液相無溶媒重合又は気相重合などに適用される。スラリー重合の場合の重合溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの炭化水素溶媒が用いられる。
採用される重合方法は、連続式重合、回分式重合又は多段式重合などいかなる方法でもよい。
重合温度は、通常30〜200℃程度、好ましくは50〜150℃であり、その時分子量調節剤として水素を用いることができる。
【0077】
7.α−オレフィンモノマー原料
本発明の触媒系で重合するα−オレフィンは、一般式R−CH=CH(ここで、Rは炭素数1〜20の炭化水素基であり、分枝基を有してもよい。)で表されるものである。
具体的には、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1などのα−オレフィン類である。これらのα−オレフィンの単独重合のほかに、α−オレフィンと共重合可能なモノマー(例えば、エチレン、α−オレフィン、ジエン類、スチレン類など)との共重合も行うことができる。これらの共重合性モノマーは、ランダム共重合においては15重量%まで、ブロック共重合においては50重量%まで使用することができる。
【0078】
8.α−オレフィン重合体
本発明により重合されるα−オレフィン重合体は、非晶性成分が極めて少なく高い立体規則性を有し、臭いや色相も良好であることを特徴とするものである。
特にバルク重合にて製造されるα−オレフィン重合体は、非晶性成分として冷キシレン可溶分(CXS)が好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.1〜1重量%、さらに好ましくは0.2〜0.7重量%に実現できる。
ここで、CXSは試料(約5g)を140℃のキシレン(300ml)中に一度完全に溶解させてから、23℃に冷却し、12時間放置した後に濾過し濾液を、エバポレータを用いて蒸発乾固して、110℃で2時間減圧乾燥した後、常温まで放冷してその重量を測定することにより求められる。
【0079】
さらにスラリー重合にて製造されるα−オレフィン重合体は、非晶性成分としてアタック量が好ましくは1.2重量%以下、より好ましくは0.1〜0.9重量%、さらに好ましくは0.1〜0.5重量%に実現できる。
ここで、アタック量は、スラリー重合により製造されたα−オレフィン重合体において、重合終了後、得られるポリマースラリーを濾過により分離し、濾過液を乾燥して得られるポリマーの量を測定し、濾過液中に溶解しているポリマー量の全ポリマー量に対する割合を算出し、これをアタック量(重量%)とする。
【0080】
本発明により重合されるα−オレフィン重合体は、非晶性成分が極めて少なく高い立体規則性を有することから、密度が高く、剛性及び耐熱性も高く、優れた特性を有するものである。
また、このα−オレフィン重合体は、収率も高く製造され、特に、高剛性化や高耐熱性化が要求される自動車部品や家電部品などの工業材料、あるいはべたつきの少ないことから包装材料などの用途に好適に用いることができる。
【実施例】
【0081】
本発明において、実施例を比較例との対照において詳しく記載し説明して、本発明の卓越性及びその構成の有意性と合理性とを立証する。以下において、本発明における各物性値の測定方法及び装置を記載する。
【0082】
1)MFR
装置:タカラ社製 メルトインデクサー
測定方法:JIS−K6921に基づき、230℃、21.18Nの条件で評価した。
2)ポリマー嵩密度
パウダー試料の嵩密度をASTM D1895−69に準ずる装置を使用し測定した。
3)冷キシレン可溶分[CXS]
測定方法:試料(約5g)を140℃のキシレン(300ml)中に一度完全に溶解させてから、23℃に冷却し、12時間放置した後に濾過し濾液を、エバポレータを用いて蒸発乾固して、110℃で2時間減圧乾燥した後、常温まで放冷してその重量を測定することによってCXSを求めた。
4)アタック量
スラリー重合により製造されたα−オレフィン重合体において、重合終了後、得られたポリマースラリーを濾過により分離し、濾過液を乾燥して得られるポリマーの量を測定し、濾過液中に溶解しているポリマー量の全ポリマー量に対する割合を算出し、これをアタック量(重量%)とした。
【0083】
実施例−1
[成分(A)の製造]
充分に窒素置換したフラスコに、脱水及び脱酸素したn−ヘプタン200mlを導入し、次いでMgClを0.4モル、Ti(O−n−Cを0.8モル導入し、95℃で2時間反応させた。反応終了後、40℃に温度を下げ、次いでメチルヒドロポリシロキサン(20センチストークスのもの)を48ml導入し、3時間反応させた。生成した固体成分をn−ヘプタンで洗浄した。
次いで、充分に窒素置換したフラスコに、上記と同様に精製したn−ヘプタンを50ml導入し、上記で合成した固体成分をMg原子換算で0.06モル導入した。次いでn−ヘプタン25mlにSiCl0.1モルを混合して30℃、30分間でフラスコへ導入し、70℃で3時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。次いでn−ヘプタン25mlにフタル酸クロライド0.006モルを混合して、70℃、30分間でフラスコへ導入し、90℃で1時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。次いで、TiCl2.5モルを導入して90℃で3時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで充分に洗浄して、さらに、TiCl2.5モルを導入して90℃で3時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで充分に洗浄して成分(A)を製造するための固体成分(A1)とした。このもののチタン含量は2.6重量%であった。
さらに、充分に窒素置換したフラスコに、上記と同様に精製したn−ヘプタンを50ml導入し、上記で合成した固体成分を5グラム導入し、(t−C)Si(CH)(OCH1.2ml、Al(C1.7gを30℃で2時間接触させた。接触終了後、n−ヘプタンで充分に洗浄し、塩化マグネシウムを主体とする成分(A)を得た。このもののチタン含量は、2.3重量%であった。
【0084】
[プロピレンの重合]
撹拌及び温度制御装置を有する内容積3.0Lのステンレス鋼製オートクレーブを真空下で加熱乾燥し、室温まで冷却してプロピレン置換した後、成分(B)としてAl(Cを550mg、成分(C)として亜硫酸ジメチルを53mg及び水素を5,000ml導入し、次いで液体プロピレンを1,000g導入して、内部温度を75℃に合わせた後に、上記で製造した成分(A)を7mg圧入して、プロピレンを重合させた。1時間後にエタノールを10ml圧入して重合を終了し、得られたポリマーを回収し乾燥させた。その結果、164.6(g)のポリマーが得られた。得られたポリマーは、MFR=24(g/10分)、ポリマー嵩密度=0.49(g/cc)、CXS=0.5(wt%)であった。以上の結果を表1に示す。
【0085】
実施例−2,3
[プロピレンの重合]
成分(A)として、実施例−1で製造した成分(A)を7mg用い、成分(C)として表1の化合物を所定量用いる以外は、全て実施例−1と同様の重合を実施した。以上の結果を表1に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
比較例−1
実施例−1の成分(C)の亜硫酸ジメチルを使用しない以外は実施例−1と全く同様に行った。その結果、308.2(g)のポリマーが得られた。得られたポリマーは、MFR=34(g/10分)、ポリマー嵩密度=0.48(g/cc)、CXS=1.4(wt%)であった。以上の結果を表2に示す。
【0088】
比較例−2〜4
[プロピレンの重合]
成分(A)として、実施例−1で製造した成分(A)を7mg用い、成分(C)の代わりに表2の化合物を所定量用いる以外は、全て実施例−1と同様の重合を実施した。以上の結果を表2に示す。
【0089】
【表2】

【0090】
実施例−4
[成分(A)の製造]
充分に窒素置換したフラスコに、脱水及び脱酸素したトルエン100mlを導入し、次いでMg(OEt)10gを導入し懸濁状態とした。次いで、TiCl20mlを導入し、90℃に昇温してフタル酸ジ−n−ブチル2.5mlを導入し、さらに110℃に昇温して3時間反応させた。反応終了後、トルエンで洗浄した。次いでTiCl20ml及びトルエン100mlを導入し、110℃で2時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで充分に洗浄して、さらに、TiCl20ml及びトルエン100mlを導入し、110℃で2時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで充分に洗浄して成分(A)を製造するための固体成分(A1)とした。このもののチタン含量は2.7重量%であった。
次いで、充分に窒素置換したフラスコに、上記と同様に精製したn−ヘプタンを50ml導入し、上記で合成した固体成分を5g導入し、(CSi(OCH1.5ml及びAl(C1.7gを30℃で2時間接触させた。接触終了後、n−ヘプタンで充分に洗浄し、塩化マグネシウムを主体とする成分(A)を得た。このもののチタン含量は、2.3重量%であった。
【0091】
[プロピレンの重合]
成分(A)として上記の成分を用い、成分(C)として亜硫酸ジメチルを53mg使用した以外は実施例−1と全く同様に行った。その結果、159.2(g)のポリマーが得られた。得られたポリマーは、MFR=10(g/10分)、ポリマー嵩密度=0.48(g/cc)、CXS=0.7(wt%)であった。
【0092】
実施例−5
[成分(A)の製造]
充分に窒素置換したフラスコに、脱水及び脱酸素したトルエン100mlを導入し、次いでMg(OEt) 10gを導入し懸濁状態とした。次いで、TiCl20mlを導入し、90℃に昇温して2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン2.5mlを導入し、さらに110℃に昇温して3時間反応させた。反応終了後、トルエンで洗浄した。次いでTiCl20ml及びトルエン100mlを導入し、110℃で2時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで充分に洗浄して、さらに、TiCl20ml及びトルエン100mlを導入し、110℃で2時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで充分に洗浄して成分(A)を製造するための固体成分(A1)とした。このもののチタン含量は2.7重量%であった。
次いで、充分に窒素置換したフラスコに、上記と同様に精製したn−ヘプタンを50ml導入し、上記で合成した固体成分を5g導入し、(C11)CHSi(OCH2.7ml及びAl(C1.7グラムを30℃で2時間接触させた。接触終了後、n−ヘプタンで充分に洗浄し、塩化マグネシウムを主体とする成分(A)を得た。このもののチタン含量は、2.3重量%であった。
【0093】
[プロピレンの重合]
成分(A)として上記の成分を用い、成分(C)として亜硫酸ジエチルを67mg使用した以外は実施例−1と全く同様に行った。その結果、110.6(g)のポリマーが得られた。得られたポリマーは、MFR=50(g/10分)、ポリマー嵩密度=0.47(g/cc)、CXS=1.1(wt%)であった。以上の結果を表3に示す。
【0094】
【表3】

【0095】
実施例−6
[プロピレンブロック共重合]
撹拌及び温度制御装置を有する内容積3.0Lのステンレス鋼製オートクレーブを真空下で加熱乾燥し、室温まで冷却してプロピレン置換した後、成分(B)としてAl(Cを550mg、成分(C)として亜硫酸ジエチルを67mg及び水素を10,000ml導入し、次いで液体プロピレンを1,000g導入して、内部温度を75℃に合わせた後に、実施例−1の成分(A)を7mg圧入して、プロピレンを重合させた。1時間後にプロピレン及び水素を充分パージして第1段階での重合を終わらせた。第1段階でのポリマー収量は153.3(g)であった。精製窒素流通下で20g抜き出した。
次いで撹拌しながら80℃まで昇温し、昇温後にプロピレンガスとエチレンガスを全重合圧力が2.0MPaになるよう装入し、第2段階の重合開始とした。全重合圧力が2.0MPaで一定になるようプロピレンとエチレンの混合ガスを供給しながら、80℃で20分重合を行った。ここでプロピレン/(プロピレン+エチレン)比は平均45.3モル%であった。
その後、混合ガスをパージして重合を終了した。得られたプロピレンブロック共重合体のポリマー収量は158.2(g)であり、第2段階重合体の含量は15wt%、MFR=31(g/10分)、ポリマー嵩密度=0.47(g/cc)であった。また、第1段階で得られたポリマーのMFR=93(g/10分)、ポリマー嵩密度=0.47(g/cc)、CXS=0.6(wt%)、密度=0.9102(g/cc)であった。
【0096】
実施例−7
[プロピレンの重合]
撹拌及び温度制御装置を有する内容積3.0Lのステンレス鋼製オートクレーブを真空下で加熱乾燥し、室温まで冷却してプロピレン置換した後、成分(B)としてAl(Cを550mg、成分(D)とし(t−C)Si(CH)(OCHを80mg、成分(C)として亜硫酸ジメチルを53mg及び水素を5,000ml導入し、次いで液体プロピレンを1,000g導入して、内部温度を75℃に合わせた後に、実施例−1で製造した固体成分(A1)を7mg圧入して、プロピレンを重合させた。1時間後にエタノールを10ml圧入して重合を終了し、得られたポリマーを回収し乾燥させた。その結果、120.1(g)のポリマーが得られた。得られたポリマーは、MFR=8(g/10分)、ポリマー嵩密度=0.46(g/cc)、CXS=0.6(wt%)であった。
【0097】
実施例−8
実施例−7の成分(D)の(t−C)Si(CH)(OCHの代わりに、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパンを104mg使用し、成分(C)の亜硫酸ジメチルの代わりに、亜硫酸ジエチルを67mg使用した以外は実施例−7と全く同様に行った。その結果、93.6(g)のポリマーが得られた。得られたポリマーは、MFR=20(g/10分)、ポリマー嵩密度=0.45(g/cc)、CXS=0.7(wt%)であった。以上の結果を表4に示す。
【0098】
【表4】

【0099】
比較例−5〜7
[プロピレンの重合]
実施例−7の成分(C)及び成分(D)として表5の化合物を所定量用いる以外は、全て実施例−7と同様の重合を実施した。以上の結果を表5に示す。
【0100】
【表5】

【0101】
実施例−9
[プロピレンの重合]
成分(A)として実施例−4で製造した固体成分(A1)を用い、成分(D)として(CSi(OCH110mg、成分(C)として亜硫酸ジメチル53mg使用した以外は実施例−7と全く同様に行った。その結果、130.5(g)のポリマーが得られた。得られたポリマーは、MFR=20(g/10分)、ポリマー嵩密度=0.46(g/cc)、CXS=0.8(wt%)であった。
【0102】
実施例−10
[プロピレンの重合]
成分(A)として実施例−5で製造した固体成分(A1)を用い、成分(D)として(C11)CHSi(OCH90mg、成分(C)として亜硫酸ジエチル67mg使用した以外は実施例−7と全く同様に行った。その結果、120.4(g)のポリマーが得られた。得られたポリマーは、MFR=48(g/10分)、ポリマー嵩密度=0.47(g/cc)、CXS=1.2(wt%)であった。以上の結果を表6に示す。
【0103】
【表6】

【0104】
実施例−11
[プロピレンの重合]
撹拌及び温度制御装置を有する内容積1.5Lのステンレス鋼製オートクレーブを充分にプロピレンガスで置換した後、充分に脱水及び脱酸素したn−ヘプタンを500ml、成分(B)としてAl(Cを125mg、成分(C)として亜硫酸ジメチルを120mg、実施例−1で製造した成分(A)を15mg、次いで水素を390ml導入し、昇温昇圧し、重合圧力=5g/cmG、重合温度=75℃、重合時間=2時間の条件でプロピレンを重合させた。重合終了後、得られたポリマースラリーを濾過により分離し、ポリマーを乾燥させた。その結果、150.4gのポリマーが得られた。
濾過液中に溶解していた低立体規則性のアタックポリマーは、0.2重量%であった。また、得られたポリマーは、MFR=10(g/10分)、ポリマー嵩密度=0.41(g/cc)であった。
【0105】
比較例−8
実施例−11の成分(C)の亜硫酸ジメチルを使用しない以外は実施例−11と全く同様に行った。その結果、180.5(g)のポリマーが得られた。濾過液中に溶解していた低立体規則性のアタックポリマーは、0.4重量%であった。また、得られたポリマーは、MFR=12(g/10分)、ポリマー嵩密度=0.42(g/cc)であった。以上の結果を表7に示す。
【0106】
【表7】

【0107】
〔実施例と比較例の結果の考察〕
以上の各実施例−1〜11及び各比較例−1〜8を対照検討することにより、本発明では、嵩密度、冷キシレン可溶分(CXS)、アタック量などの全般にわたり比較例に比して優れた結果が得られていることが明白であって、特に非晶成分が少ないことが顕著である。
具体的には、成分(C)を使用しない比較例1〜3では、収量だけは実施例1〜3よりも優れるものの、冷キシレン可溶分(CXS)が非常に劣っている。成分(C)が本発明のものでない比較例4では、収量が非常に悪く、冷キシレン可溶分(CXS)も劣っている。同様に、成分(C)を使用しないか、成分(C)が本発明のものでない比較例5〜7でも、特に冷キシレン可溶分(CXS)の物性が悪くなり、比較例7では収量も悪い。また、成分(C)を使用しない比較例8では、冷キシレン可溶分(CXS)が劣り、アタック量が悪い結果となっている。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の触媒構成についての理解を明確にするためのフローチャート図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)、成分(B)及び成分(C)からなるα−オレフィン重合用触媒。
成分(A):マグネシウム、チタン及びハロゲンを必須成分とする固体触媒成分
成分(B):有機アルミニウム化合物
成分(C):亜硫酸エステル化合物
【請求項2】
以下の成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)からなるα−オレフィン重合用触媒。
成分(A):マグネシウム、チタン及びハロゲンを必須成分とする固体触媒成分
成分(B):有機アルミニウム化合物
成分(C):亜硫酸エステル化合物
成分(D):ケイ素化合物又は少なくとも2つのエーテル結合を有する化合物
【請求項3】
成分(C)の亜硫酸エステル化合物が、下記の一般式[1]で表される化合物から選ばれることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載されたα−オレフィン重合用触媒。
【化1】


[1]
(ここで、R及びRは、炭素数1つ以上の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基であり、R及びRが連結された環状構造を形成してもよい。)
【請求項4】
及びRが炭素数1から10のアルキル基又はシクロアルキル基からなる立体的に嵩の低い置換基である、あるいは5〜7員環の環状構造を形成することを特徴とする、請求項3に記載されたα−オレフィン重合用触媒。
【請求項5】
成分(D)ケイ素化合物が下記の式で表されるケイ素化合物であることを特徴とする、請求項2〜請求項4のいずれかに記載されたα−オレフィン重合用触媒。
3−mSi(OR
(ここで、Rは、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基であり、Rは、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基、ハロゲン又は水素、Rは、炭化水素基であり、mは、1≦m≦3を示す。)
【請求項6】
成分(D)少なくとも2つのエーテル結合を有する化合物が脂肪族ジエーテル又は芳香族ジエーテルであることを特徴とする、請求項2〜請求項4のいずれかに記載されたα−オレフィン重合用触媒。
【請求項7】
成分(A)が、マグネシウム、チタン、ハロゲン及び電子供与性化合物を必須成分として含有する固体触媒成分であることを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれかに記載されたα−オレフィン重合用触媒。
【請求項8】
成分(A)が、マグネシウム、チタン及びハロゲンを必須成分とする固体触媒成分に、有機アルミニウム及び有機ケイ素化合物を予め接触させたものであることを特徴とする、請求項1〜請求項7のいずれかに記載されたα−オレフィン重合用触媒。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれかに記載されたα−オレフィン重合用触媒を用いて、α−オレフィンを単独重合又は2種類以上を共重合することを特徴とするα−オレフィン重合体の製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−225449(P2006−225449A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−38494(P2005−38494)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】