説明

α−グルコサミニド誘導体の製造法

【課題】α-グルコサミニド誘導体の提供。
【解決手段】グルコサミン誘導体として、2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-2-デオキシ-D-グルコピラノシル アシレートを糖供与体に用いて、トリフレート塩と三フッ化ホウ素ジエチル錯体を共存させた活性化剤の存在下、アルコールと反応させて、高いα選択性で対応する2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-2-デオキシ-D-グルコピラノシドを得る。本発明によって製造できる2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシドのTroc基は、特異的な反応条件下で脱保護でき、アミノ基遊離にすることができ、またアミノ基は容易にアセチル化することができ、アセトアミド基に変換することが可能である。2-アミノあるいは2-アセトアミド-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシル残基を有する糖化合物や糖鎖の簡便な製造法を確立した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、農薬あるいは試薬として有用な中間体であるα-グルコサミニド誘導体の製造法に関するものである。詳しくは、グルコサミン(2-アセトアミド-2-デオキシ-D-グルコピラノース)のアミノ基が2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル(Troc)基で保護された2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-2-デオキシ-D-グルコピラノシル アシレート誘導体とアルコールとを、活性化剤の存在下で反応させるα-グルコサミニド誘導体の製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のα-グルコサミニド誘導体を製造する方法は、2-位のアミノ基を隣接基効果が低い官能基で保護された糖誘導体(例えば非特許文献1、2を参照)、あるいは還元反応でアミノ基に変換することができるアジド基を用いた糖誘導体を糖供与体に用いたグリコシル化反応(例えば非特許文献3を参照)によって、α-グルコサミニド誘導体が製造されている。しかしながら、これらの製造方法におけるα選択性は、一般的に高いものとは言いがたく、糖受容体の基質の特性が大きくグリコシル化反応のα選択性に影響を与えることも多く、α体を生成させることが困難な場合も知られている。
ところで、グルコサミンのアミノ基にTroc基を導入したグルコサミン誘導体を糖供与体に用いたいくつかのグリコシル化法では選択的にβ-グルコサミニドを製造することができることが知られている(例えば非特許文献4を参照)。すなわち、Troc基のカルボニル基の隣接基効果によって、β-グルコサミニド体の製造に適しているが、有効なα-グルコサミニド体には適していない。しかしTroc基は亜鉛―酢酸を用いることで選択的に脱保護することが可能であり、Troc基を導入したグルコサミン誘導体からα-グルコサミニド誘導体を製造することができれば、極めて有用なα-グルコサミニド誘導体の製造法となることが期待される。
【0003】
【非特許文献1】C. Prakashら、「Synthesis of poly(isoprenyl) glycosides」、Carbohydrate Research、1980年、84巻、C-9ページ.
【非特許文献2】S. Kotoら、「Synthesis of 2-amino-2-deoxy-α-D-glucopyranosyl β-D-fructofuranoside (2-amino-2-deoxysucrose) via Koenigs-Knorr reaction」、Carbohydrate Research、1982年、109巻、276ページ.
【非特許文献3】M. Mizunoら、「Synthesis of aminoglycoside derivatives on a Cbz-type heavy fluorous tag」、Tetrahedron Letters、2006年、47巻、8831ページ.
【非特許文献4】A. Scottら、「Solid-phase synthesis of O-linked glycopeptides analogues of enkephalin」、Journal of Organic Chemistry、2001年、66巻、2327ページ.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、グルコサミンのアミノ基をTroc基で保護したグルコサミン誘導体を糖供与体に用いたグリコシル化反応によって、グリコシド結合がα‐結合を持つグルコサミニド誘導体を温和な条件で製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
グルコサミン誘導体として、2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-2-デオキシ-D-グルコピラノシル アシレートを糖供与体に用いて、トリフレート塩と三フッ化ホウ素ジエチル錯体を共存させた活性化剤の存在下、アルコールと反応させたところ、従来知られていない程の高いα選択性で対応する2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-2-デオキシ-D-グルコピラノシドが得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-2-デオキシ-D-グルコピラノシル アシレート誘導体から、トリフレート塩―三フッ化ホウ素ジエチル錯体を活性化剤に用いて、2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシド体を製造する方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によって製造できる2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシドのTroc基は、特異的な反応条件下で脱保護でき、アミノ基遊離にすることができる。本方法は、グルコサミン系配糖体であるアミノグリコシド系抗生物質やその類似体等の製造に利用することができる。また、アミノ基は容易にアセチル化することができ、アセトアミド基に変換することが可能であることから、2-アセトアミド-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシル残基を有する糖鎖や配糖体糖の製造に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-2-デオキシ-D-グルコピラノシル アシレート誘導体とアルコールとを、トリフレート塩と三フッ化ホウ素ジエチル錯体との共存下で反応させるα-グルコサミニド誘導体の製造法に関するものである。
【0008】
本発明の原料の一つに使用する2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-2-デオキシ-D-グルコピラノシル アシレート誘導体の3,4,6位の糖水酸基の保護基は、周知の保護基を用いることができる。例えば、ベンジル基、メチル基やアリル基等のエーテル型保護基、アセチル基やベンゾイル基等のアシル型保護基、イソプロピリデン基やベンジリデン基等のアセタール型保護基等を挙げることができる。好ましくは、ベンジル基を使用する。2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-2-デオキシ-D-グルコピラノシル アシレート誘導体を構成するアノマー水酸基の保護基としては、周知のアシル型保護基を使用することができる。例えば、アセチル基、メトキシアセチル基、ベンゾイル基等を挙げることができる。好ましくは、アセチル基を使用する。
【0009】
本発明のもう一つの原料として使用されるアルコールは、周知のものを使用できる。例えば脂肪族アルコール、芳香族アルコール、ステロイドアルコール、グリセロール誘導体、糖誘導体、アミノ酸誘導体等が挙げられる。具体的にはメタノール、エタノール、オクチルアルコール、フェノール、ベンジルアルコール、1,2:3,4-ジ-O-イソプロピリデンガラクトピラノース、3β-コレスタノール、イソプロピリデングリセロール、N-ベンジルオキシカルボニル-L-セリンメチルエステルなどが挙げられる。
【0010】
トリフレート塩を構成する金属は周知のものを使用することができる。例えば、イッテルビウム、イットリウム、ランタン、スカンジウムやビスマス等を挙げることができる。好ましくは、イッテルビウムを使用する。
【0011】
溶媒は、アルコールを除く周知の有機溶媒を使用することができる。例えば、エーテル、ベンゼン、トルエン、ジクロロメタン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。しかし、グリコシド誘導体のアグリコン部分の構造が使用するアルコールのアルキル部分と同じ構造の場合に限りアルコールを溶媒として用いることができることは言うまでもない。この場合にアルコールとしては、炭素数12以下の周知の脂肪族アルコール、不飽和アルコールや芳香族アルコールを使用することができる。例えば、メタノール、エタノール、オクタノール、アリルアルコール、m-クレゾール等反応の際に液体であるアルコールを使用できる。
【0012】
トリフレート塩の存在下、2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-2-デオキシ-D-グルコピラノシル アシレート誘導体とアルコールとを反応させる際に、三フッ化ホウ素エーテル錯体を共存させるが、三フッ化ホウ素エーテル錯体の使用量については特に制限はない。通常、2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-2-デオキシ-D-グルコピラノシル アシレート誘導体に対して、0.5〜200モル%用いるが、好ましくは、1〜100モル%で使用する。
【0013】
2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-2-デオキシ-D-グルコピラノシル アシレート誘導体およびアルコールの使用量については特に制限はない。2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-2-デオキシ-D-グルコピラノシル アシレート誘導体をアルコールに対して過剰に用いることもできるが、通常1〜10当量の範囲である。好ましくは、アルコールに対して1〜1.5当量で使用する。また逆に、アルコールを2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-2-デオキシ-D-グルコピラノシル アシレート誘導体に対して過剰に用いることが出来るのは言うまでもない。さらに、アルコールを溶媒として用いる場合には当然アルコールが大過剰使用される。
【0014】
トリフレート塩の使用量についても特に制限はない。通常、2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-2-デオキシ-D-グルコピラノシル アシレート誘導体に対して5〜300モル%用いることができるが、好ましくは30〜150モル%で使用する。
【0015】
反応温度は特に制限はないが、通常−50℃〜60℃で行う。好ましくは、−20℃〜30℃の範囲である。反応時間は反応温度、原料の種類等によって異なるが、数時間から数日の範囲である。
【実施例】
【0016】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、以下の実施例により何等の制限を受けるものではない。
[実施例1] フェニル 3,4,6-トリ-O-ベンジル-2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシド(1)の製造
【化1】

アルゴン雰囲気下、イッテルビウム(III)トリフレート92.3 mg(0.15 mmol)、3,4,6-トリ-O-ベンジル-2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-2-デオキシ-D-グルコピラノシル アセテート123.9 mg(0.19 mmol)とフェノール14.3 mg (0.15 mmol)を4 mlのジクロロメタンに溶解する。これに、0.0235 M三フッ化ホウ素エーテル錯体のジクロロメタン溶液を0.2 ml(0.0047 mmol)加え、3時間室温で攪拌したのちに、5%炭酸水素ナトリウム溶液10 mlとクロロホルムを10mlを加えて反応を停止する。反応混合物をクロロホルムで抽出し、有機層を水、飽和の塩化ナトリウム水溶液で洗浄したのち、無水硫酸ナトリウムで乾燥する。無機塩を濾過したのちに、有機溶媒を減圧下留去し、濃縮物を薄層クロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/4)で精製を行い、目的のフェニル 3,4,6-トリ-O-ベンジル-2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシド(1)を82.5 mg、収率77%で得た。
1H NMR (600MHz, CDCl3): δ 3.54 (1H, d, J = 10.3 Hz, Ha-6), 3.79 (1H, dd, J = 2.7 Hz, J = 11.0 Hz, Hb-6), 3.81-3.93 (3H, m, H-3,4,5), 4.11 (1H, dt, J = 3.5 Hz, J = 9.6 Hz, H-2), 4.35-5.02 (8H, m, OCH2Ph, OCH2CCl3), 5.51 (1H, d, J = 4.2 Hz, H-1), 6.91-7.27 (20H, m, Ph):
13C NMR (150MHz, CDCl3): δ 55.0, 68.1, 71.6, 73.4, 74.7, 75.1, 75.3, 78.0, 80.1, 95.3, 96.4, 116.6, 122.8, 127.9-138.0, 156.1
【0017】
[実施例2] イソプロピル 3,4,6-トリ-O-ベンジル-2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシド(2)の製造
【化2】

アルゴン雰囲気下、イッテルビウム(III)トリフレート125.8 mg(0.20 mmol)、3,4,6-トリ-O-ベンジル-2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-2-デオキシ-D-グルコピラノシル アセテート137.3 mg(0.21 mmol)とイソプロパノール15.4 mg (0.20 mmol)を4 mlのジクロロメタンに溶解する。これに、0.0315 M三フッ化ホウ素エーテル錯体のジクロロメタン溶液を0.2 ml(0.0063 mmol)加え、1日間室温で攪拌したのちに、5%炭酸水素ナトリウム溶液10 mlとクロロホルムを10mlを加えて反応を停止する。反応混合物をクロロホルムで抽出し、有機層を水、飽和の塩化ナトリウム水溶液で洗浄したのち、無水硫酸ナトリウムで乾燥する。無機塩を濾過したのちに、有機溶媒を減圧下留去し、濃縮物を薄層クロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/4)で精製を行い、目的のイソプロピル 3,4,6-トリ-O-ベンジル-2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシド(2)を113.3 mg、収率84%で得た。
1H NMR (600MHz, CDCl3): δ 1.13 (3H, d, J = 5.5 Hz, OCH(CH3) CH3), 1.20 (3H, d, J = 6.2 Hz, OCH(CH3) CH3), 3.66 (1H, d, J = 9.7 Hz, Ha-6), 3.70-3.75 (2H, m, H-3,4), 3.77 (1H, dd, J = 4.1 Hz, J = 11.0 Hz, Hb-6), 3.85-3.87 (1H, m, H-5), 3.89 (1H, m, OCH(CH3) CH3), 3.99 (1H, dt, J = 3.4 Hz, J = 9.7 Hz, H-2), 4.47-4.85 (7H, m, OCH2Ph, OCH2CCl3), 4.94 (1H, d, J = 3.5 Hz, H-1), 5.03 (1H, d, J = 9.6 Hz, OCH2CCl3), 7.14-7.34 (15H, m, Ph):
13C NMR (150MHz, CDCl3): δ 21.4, 23.2, 55.1, 68.4, 69.9, 70.8, 73.4, 74.5, 75.0, 75.2, 78.3, 80.7, 95.8, 97.1, 127.6-138.2, 154.1
【0018】
[実施例3] 1-アダマンタニル 3,4,6-トリ-O-ベンジル-2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシド(3)の製造
【化3】

アルゴン雰囲気下、イッテルビウム(III)トリフレート82.9 mg(0.13 mmol)、3,4,6-トリ-O-ベンジル-2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-2-デオキシ-D-グルコピラノシル アセテート109.0 mg(0.16 mmol)と1-アダマンタノール20.8 mg (0.14 mmol)を4 mlのジクロロメタンに溶解する。これに、0.0195 M三フッ化ホウ素エーテル錯体のジクロロメタン溶液を0.2 ml(0.0039 mmol)加え、15時間室温で攪拌したのちに、5%炭酸水素ナトリウム溶液10 mlとクロロホルムを10mlを加えて反応を停止する。反応混合物をクロロホルムで抽出し、有機層を水、飽和の塩化ナトリウム水溶液で洗浄したのち、無水硫酸ナトリウムで乾燥する。無機塩を濾過したのちに、有機溶媒を減圧下留去し、濃縮物を薄層クロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/2)で精製を行い、目的の1-アダマンタニル 3,4,6-トリ-O-ベンジル-2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシド(3)を51.2 mg、収率52%で得た。
1H NMR (600MHz, CDCl3): δ 1.56-1.66, 1.73-1.79, 2.10-2.12 (15H, m, 1-adamantanol), 3.65 (1H, dd, J = 1.3 Hz, J = 11.0 Hz, Ha-6), 3.71-3.75 (2H, m, H-3,4), 3.79 (1H, dd, J = 3.6 Hz, J = 9.0 Hz, Hb-6), 3.95 (1H, dt, J = 3.5 Hz, J = 10.3 Hz, H-2), 3.99-4.00 (1H, m, H-5), 4.48-4.92 (8H, m, OCH2Ph, OCH2CCl3), 5.25 (1H, d, J = 4.1 Hz, H-1), 7.14-7.35 (15H, m, Ph):
13C NMR (150MHz, CDCl3): δ 30.5, 36.1, 42.4, 55.2, 68.6, 70.5, 73.4, 74.5, 74.8, 75.3, 78.4, 80.7, 90.8, 95.5, 127.6-138.3, 154.1
【0019】
[実施例4] メチル 6-{3,4,6-トリ-O-ベンジル-2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシル}-2,3,4-トリ- O-ベンジル-α- D-グルコピラノシド (4)の製造
【化4】

アルゴン雰囲気下、イッテルビウム(III)トリフレート81.3 mg(0.13 mmol)、3,4,6-トリ-O-ベンジル-2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-2-デオキシ-D-グルコピラノシル アセテート111.1 mg(0.16 mmol)とメチル 2,3,4-トリ- O-ベンジル-α- D-グルコピラノシド61.4 mg (0.13 mmol)を4 mlのジクロロメタンに溶解する。これに、0.0195 M三フッ化ホウ素エーテル錯体のジクロロメタン溶液を0.2 ml(0.0039 mmol)加え、一日間室温で攪拌したのちに、5%炭酸水素ナトリウム溶液10 mlとクロロホルムを10mlを加えて反応を停止する。反応混合物をクロロホルムで抽出し、有機層を水、飽和の塩化ナトリウム水溶液で洗浄したのち、無水硫酸ナトリウムで乾燥する。無機塩を濾過したのちに、有機溶媒を減圧下留去し、濃縮物を薄層クロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/2)で精製を行い、目的のメチル 6-{3,4,6-トリ-O-ベンジル-2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシル}-2,3,4-トリ- O-ベンジル-α- D-グルコピラノシド(4)を89.9 mg、収率63%で得た。
1H NMR (600MHz, CDCl3): δ 3.35 (3H, s, OCH3), 3.39 (1H, t, J = 8.9 Hz, H-10), 3.48-3.50 (2H, m, H-2, Ha-12), 3.56-3.73 (6H, m, H-4, H-5, Ha-6, H-9, H-11, Hb-12), 3.87 (1H, dd, J = 4.8 Hz, J = 11.7 Hz, Hb-6), 3.95 (1H, dt, J = 3.4 Hz, J = 10.3 Hz, H-8), 3.98 (1H, t, J = 8.9 Hz, H-3), 4.45-4.89 (13H, m, H-1, OCH2Ph or OCH2CCl3), 4.89 (1H, d, J = 3.4 Hz, H-7), 4.98, 5.11 (2H, d, OCH2Ph or OCH2CCl3), 7.14-7.34 (30H, m, Ph):
13C NMR (150MHz, CDCl3): δ 55.1, 55.2, 66.8, 68.3, 69.6, 71.2, 73.2, 73.4, 74.6, 74.8, 74.9, 75.7, 77.4, 78.1, 79.9, 80.2, 82.0, 95.5, 97.8, 98.4, 127.6-138.6, 154.1
【産業上の利用可能性】
【0020】
本α-グルコサミニド誘導体の製造法を用いることによって、本α-グルコサミニド誘導体を含む医薬品、農薬や試薬を容易に製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-2-デオキシ-D-グルコピラノシル アシレート誘導体とアルコールとを、トリフレート塩と三フッ化ホウ素ジエチル錯体の共存下で反応させるα-グルコサミニド誘導体の製造法。
【請求項2】
2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-2-デオキシ-D-グルコピラノシル アシレート誘導体として、3,4,6-トリ-O-ベンジル-2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-2-デオキシ-D-グルコピラノシル アセテートを用いることを特色とする請求項1記載のα-グルコサミニド誘導体の製造法。
【請求項3】
トリフレート塩として、イッテルビウム(III)トリフレートを用いることを特徴とする請求項1記載のα-グルコサミニド誘導体の製造法。

【公開番号】特開2008−137907(P2008−137907A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−323264(P2006−323264)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000173924)財団法人野口研究所 (108)
【Fターム(参考)】