説明

α−リポ酸含有組成物

【課題】α−リポ酸が均一に溶解あるいは分散し長時間安定なα−リポ酸含有組成物を提供する。本発明のα−リポ酸含有組成物を原料に使用すると、α−リポ酸を高濃度で含んでも安定な乳化液が提供される。
【解決手段】 下記のA成分を1〜40質量%、B成分を0.2〜50質量%、C成分を0.2〜50質量%、D成分を10〜98.6質量%含有するα−リポ酸含有組成物。
A成分:α−リポ酸、
B成分:食用油脂、
C成分:リン脂質、
D成分:アルコール
前記のα−リポ酸含有組成物を水に分散して得られる乳化液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α−リポ酸含有組成物、これを使用した乳化液に関する。さらに、詳しくはα−リポ酸が均一に存在でき安定性が高いα−リポ酸含有組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
α−リポ酸は生体内に含まれ、糖の代謝、TCAサイクルの回転に作用する補酵素の一種であり、構造式C14、分子量206.3の化合物である。その物性は、黄色結晶、融点60〜62℃の物質として知られている。α−リポ酸は、ヒトにおけるエネルギー生産において、酸化的脱炭酸反応のコファクターとして重要な役割を自然に果たしており、多くの研究において、強力な細胞酸化還元調節剤、内因性「抗酸化剤」の再生物質、および酸化ストレスの軽減物質であることが認められているなど、高い生理活性を持ち、かつ生体内に存在する安全性の高い物質と考えられている。
α−リポ酸は原体で医薬品として使用されてきたが、食薬区分見直しにより、食品への使用が認められ、乳化液、可溶化液、分散液等の水性飲食食品への応用が期待されている。α−リポ酸の原体は水に溶け難い結晶状態であるので、そのままの状態で食する場合には吸収量は低くなる。吸収量を向上させるためには乳化液の使用が期待されるが(特許文献1)、α−リポ酸は常温で固体なので油相に単独で用いると均一の乳化液を製造することが難しい。
そこで、乳化液の油相にα−リポ酸を油脂等の液体に溶解したα−リポ酸含有組成物を使用することが考えられる。しかし、α−リポ酸は食用油脂には室温において十分に溶解できず、油脂中で再結晶化し沈殿が生じ均一な状態となりにくい。また、α−リポ酸はエタノールなどのアルコールには完全に溶解するが、アルコール溶液中では経時的に反応し重合物が発生する問題がある(特許文献2,3)。特許文献4は、植物油脂とアルコールの混合物にα−リポ酸を溶解しα−リポ酸含有油脂組成物を製造するものであるが、この場合でも、長時間保存すると、α−リポ酸の重合物や結晶の沈殿が生じることになる。
したがって、このようにα−リポ酸は重合しやすく、また、結晶が析出しやすいので、安定なα−リポ酸含有組成物を得ることは容易ではない。さらに、α−リポ酸含有組成物は乳化液の油相に使用されることから、これを原料として乳化液を容易に製造できるものである必要がある。
【特許文献1】特願2002−336704号公報
【特許文献2】特開2006−219467号公報
【特許文献3】特開2006−257010号公報
【特許文献4】特開2006−296315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、α−リポ酸が均一に溶解あるいは分散し長時間安定なα−リポ酸含有組成物を提供する。これに水を添加し、安定な乳化液を製造できるα−リポ酸含有組成物を提供する。さらに、製造時にα−リポ酸の重合を起こさない安定な方法を提供する。本発明のα−リポ酸含有組成物を原料に使用すると、α−リポ酸を高濃度で含んでも安定な乳化液が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は下記の(1)〜(4)である。
(1)下記のA成分を1〜40質量%、B成分を0.2〜50質量%、C成分を0.2〜50質量%、D成分を10〜98.6質量%含有するα−リポ酸含有組成物。
A成分:α−リポ酸、
B成分:食用油脂、
C成分:リン脂質、
D成分:アルコール
【0005】
(2)下記のA成分を1〜40質量%、B成分を0.2〜50質量%、C成分を0.2〜50質量%、D成分を10〜98.4質量%、E成分を0.2〜50質量%含有するα−リポ酸含有組成物。
A成分:α−リポ酸、
B成分:食用油脂、
C成分:リン脂質、
D成分:アルコール
E成分:プロピレングリコール脂肪酸エステル
【0006】
(3)前記(1)または(2)のα−リポ酸含有組成物の製造方法であって、D成分以外の成分を混合した後、D成分を添加することを特徴とするα−リポ酸含有組成物の製造方法。
【0007】
(4)前記(1)または(2)のα−リポ酸含有組成物を水に分散して得られる乳化液。
【発明の効果】
【0008】
本発明の(1)、(2)によれば、保存時のα−リポ酸の経時安定性が高く、かつ、重合物を生じないα−リポ酸含有組成物が提供される。本発明のα−リポ酸含有組成物は長期間保存しても、α−リポ酸が沈殿することなく、あるいは、α−リポ酸の重合体を形成することなく、均一な状態を保つことができる。また、本発明のα−リポ酸含有組成物を水に分散させると、容易に安定な乳化液を製造できる。
さらに、本発明の(2)によれば、本発明の(1)においてより臭いのないものが得られる。
本発明の(3)によれば、製造時にα−リポ酸の重合を起こすことのない製造方法を提供できる。
本発明の(4)によれば、食品などに使用できる安定な乳化液を提供できる。
本発明の乳化液はα−リポ酸を高濃度で含有しても安定である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(A成分)
本発明で用いるA成分であるα−リポ酸は、R,S−(+/−)−α−リポ酸、R−(+)−α−リポ酸、S−(−)−α−リポ酸等が挙げられる。
α−リポ酸はアルコールに溶解するが、α−リポ酸自体の還元効果が強く、アルコールなどと反応して重合物を生じる。一方で、α−リポ酸は食用油脂に加熱により溶解することができるが、室温での溶解性は低く放置すると結晶等が生じる。本発明では、予めα−リポ酸をB成分の食用油脂、D成分のリン脂質、E成分のプロピレングリコール脂肪酸エステルと混合した後、これにアルコールを加えて均一な溶液として組成物を製造すると、均一で重合物や結晶の沈殿物が殆ど生じない安定なα−リポ酸含有組成物の製造できることを見出した。この方法は、本発明の高濃度でα−リポ酸及びアルコールを含むα−リポ酸含有組成物を得るため有効であった。
【0010】
本発明において、α−リポ酸のα−リポ酸含有組成物中における含有量は1〜40質量%、好ましくは3〜30質量%である。
α−リポ酸の含有量が少ないと、例えば、本発明の組成物をソフトカプセルなどに充填しそのままで、あるいは乳化液として食品分野に使用する際に、α−リポ酸を少量しか摂取できず生理機能が発現できなくなる。
α−リポ酸の含有量が40質量%を超えると、均一に溶解できないだけでなくα−リポ酸含有組成物の保存時の安定性が悪くなり好ましくない。
α−リポ酸の市販品としては、例えばα−リポ酸(デグサテクスチュラントシステムズ ジャパン(株) 製 商品名:ALIPURE、立山化成(株) 製 商品名:α−リポ酸(チオクト酸)、コグニス(株) 製 商品名:Lipoec)等が挙げられる。
これらのα−リポ酸は、純度は特に限定されず、天然由来のものであっても、合成品であってもよい。
【0011】
(B成分)
本発明において、B成分である食用油脂は組成物中のα−リポ酸を溶解できる成分であり、α−リポ酸の重合反応を抑制し、さらに、α−リポ酸を含有する安定な乳化液の形成に役立つ成分である。
α−リポ酸含有組成物におけるB成分の含有量は0.2〜50質量%、好ましくは3〜40質量%である。B成分の含有量が0.2質量%より少ないとα−リポ酸含有組成物においてα−リポ酸が重合しやすい。また、水に乳化する際に安定な乳化液が製造し難くなる。50質量%より多いとα−リポ酸含有組成物におけるα−リポ酸の濃度が低くなることになり好ましくない。
さらに、B成分はA成分のα−リポ酸100質量部に対して、20〜150質量部であることが好ましい。20質量部に満たなくては、α−リポ酸の重合反応の抑制、安定な乳化液の形成に対する効果が十分に発揮できず、150質量部を超えると、α−リポ酸の濃度が低くなることになり好ましくない。
本発明に用いる食用油脂としては、一般に食用油脂である動物、植物、微生物を原料とする油脂、天然から抽出した油分または合成油等を使用できる。例えば、豚脂、牛脂、鶏油、鯨油、マグロ油、イワシ油、サバ油、サンマ油、カツオ油、ニシン油、肝油、大豆油、綿実油、サフラワー油、米油、コーン油、ナタネ油、パーム油、シソ油、エゴマ油、カカオ脂、落花生油、ヤシ油;ビタミンA油、ビタミンD油、ビタミンE油等、ミックストコフェロール、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、アスタキサンチン、γ−オリザノール、カテキン、ゴマ油抽出物、生コーヒー豆抽出物、米糠油抽出物、ユーカリ葉抽出物、ローズマリー抽出物、ヒノキチオール、トコトリエノール、プロポリス抽出物;アスコルビン酸脂肪酸エステル、および中鎖脂肪酸トリグリセリド等の合成トリグリセリド等が挙げられ、これらを単独で、または適宜組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、パーム油、ヤシ油、中鎖脂肪酸トリグリセリドなどの比較的短鎖の脂肪酸を含む油脂を用いるとα−リポ酸含有組成物の安定性が更に向上するので好ましい。
【0012】
(C成分)
本発明において、C成分であるリン脂質はα−リポ酸含有組成物中のα−リポ酸の重合反応を抑制し、さらにα−リポ酸の結晶化を抑制する成分である。また、組成物に水を加えた際にα−リポ酸を含有する乳化液の形成に役立つ成分である。
本発明において、組成物中におけるC成分であるリン脂質のα−リポ酸含有組成物における含有量は0.2〜50質量%、好ましくは1〜45質量%、さらに好ましくは5〜30質量%である。
C成分の含有量が、0.2質量%より少ないと油脂組成物のα−リポ酸の重合反応を十分に抑制できず、さらにα−リポ酸の結晶化を抑制する効果が十分に発揮することができなくなり易い。水への分散性が悪くなり、乳化液の保存安定性が悪くなるだけでなくα−リポ酸が重合体を形成するなどの問題があり、好ましくない。
また、50質量部より多いとリン脂質の風味が最終製品に影響し好ましくない。さらにC成分は、B成分100質量部に対して80質量部以上であることが好ましい。
リン脂質としては、大豆レシチン、卵黄レシチン、リゾレシチンなどを使用することができる。これらの中でもリゾレシチンがより好ましい。
レシチンおよびリゾレシチンの市販品としては、例えば、太陽化学(株)製 商品名:サンレシチンL−6、同サンレシチンA、同W−1、理研ビタミン(株)製 商品名:レシマールEL、キューピー(株)製 卵黄レシチンLPL−10P等が挙げられる。
なお、上記のレシチンおよびリゾレシチンとしては、純度は特に限定されず、天然由来のものであっても、合成品であってもよい。
【0013】
(D成分)
本発明におけるD成分であるアルコールは、組成物を均一化する成分である。また、組成物に水を加えた際にα−リポ酸を含有する乳化液の形成に役立つ成分である。
本発明において、組成物中におけるD成分であるアルコールのα−リポ酸含有組成物における含有量は10〜98.6質量%、好ましくは10〜50質量%、さらに好ましくは
10〜30質量%である。
アルコールの含有量が10質量%未満では、均一な油脂組成物を製造することが難しくなり、98.6質量%を超えるとα−リポ酸が重合し易くなるので好ましくない。
さらにA成分100質量部に対してD成分が50〜10000質量部であることが好ましく、100〜3000質量部であることがより好ましい。D成分が50質量部より少ないとα−リポ酸含有組成物を均一にすることが難しくなり、1000質量部を超えるとα−リポ酸含有組成物の安定性が不安定になり好ましくない。
本発明に用いるアルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、1,3−ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等が挙げられ、これらを単独で、または適宜組み合わせて用いることができる。これらの中でもエタノールとグリセリンが好ましい。
【0014】
(E成分)
本発明において、E成分であるプロピレングリコール脂肪酸エステルはα−リポ酸含有組成物中のα−リポ酸の臭いを抑制し、さらにα−リポ酸の結晶化を抑制する成分であり、HLB8以下のものが好ましい。具体的には、炭素数16〜20の脂肪酸とプロピレングリコールとのエステル化合物が挙げられる。
本発明において、組成物中におけるE成分であるプロピレングリコール脂肪酸エステルのα−リポ酸含有組成物における含有量は0.2〜50質量%、好ましくは1〜45質量%、さらに好ましくは5〜30質量%である。
プロピレングリコール脂肪酸エステルの市販品としては、例えば、理研ビタミン(株)製 商品名:リケマールPS−100、同PO−100V、同PP−100、同PB−100、太陽化学(株)製 商品名:サンソフトNo.25BD、同No.25CD、同No.25OD等が挙げられる。
【0015】
(油脂組成物の製造方法)
本発明のα−リポ酸含有組成物は、D成分以外のA成分のα−リポ酸、B成分の植物油脂及びC成分のリン脂質、場合によってはE成分のプロピレングリコール脂肪酸エステルを混合した後、D成分のアルコールを添加することにより製造することができる。順序として、A〜C成分、及び場合によってはE成分を混合後にD成分のアルコールを添加すればよく、A成分を予め作製したB成分、C成分、及び場合によってはE成分の混合物に添加して混合した後、D成分のアルコールを添加してこれらを溶解してもよい。本発明において、A成分のα−リポ酸とB成分の食用油脂及びC成分のリン脂質とを混合する前に、α−リポ酸にD成分のアルコールを添加するとα−リポ酸の重合物が生じるおそれがある。
α−リポ酸は、所定量の食用油脂及びリン脂質と混合し、均一な状態とする。混合時には、60℃以下の温度で加熱してもよい。60℃を超える温度で加温するとα−リポ酸が重合することもあるので、好ましくない。
α−リポ酸、食用油脂及びレシチンの混合物は、所定量のD成分のアルコールをこれに添加し溶解させる。ここで、アルコールにα−リポ酸、食用油脂及びレシチンの混合物を添加してもよい。溶解は攪拌しながら行うが、60℃以下に加熱することが好ましい。本発明のα−リポ酸含脂組成物は、アルコール添加による溶解工程により均一にすることができる。α−リポ酸含有組成物を室温に放置すると、全体的に白濁する場合があるが、この場合も均一性は保たれる。
【0016】
本発明のα−リポ酸含有油脂組成物には、水溶性抗酸化剤を含有させてもかまわない。α−リポ酸の重合を防止し、長期に安定化できる。水溶性抗酸化剤としては、アスコルビン酸およびそれらの塩類、などが挙げられ、これらを単独で、または適宜組み合わせて用いることができる。
【0017】
(乳化液)
本発明のα−リポ酸含有組成物を水に添加し、乳化すると乳化液を製造することができる。
使用する水の量は、α−リポ酸含有組成物100質量部に対して133〜1000000質量部が好ましい。使用する水は、イオン交換水、蒸留水等の精製水、水道水、天然水、アルカリイオン水等が挙げられる。
本発明のα−リポ酸含有組成物は水に容易に分散できるが、安定な乳化液を製造するためには、乳化剤を添加してもかまわない。これらの乳化剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、サポニン、ステロール、コール酸、デオキシコール酸、ユッカ抽出物、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カゼイン等が挙げられる。特に脂肪酸の炭素数が12〜18、グリセリン重合度5以上のグリセリン脂肪酸エステルの使用が好ましい。使用量としては、α−リポ酸含有組成物100質量部に対して50〜1000質量部が好ましい。
さらに、安定剤を添加することができる。安定剤としては、ガム質や多価アルコール、糖類などが挙げられる。具体的には、アラビアガム、キサンタンガム、トラガントガム、グアガム、ジェランガム、ローカストビーンガム、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、マルチトール、還元水あめ、ラクチトール、パラチニット、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ブドウ糖果糖液糖、加糖ブドウ糖液糖、デキストリン、乳糖などが挙げられる。
さらに、本発明のα−リポ酸含有組成物あるいはこれを用いた乳化液には、機能性素材を添加することができる。
【0018】
本発明の本発明のα−リポ酸含有組成物あるいはこれを用いた乳化液は飲食品に含有させることができる。
食品としては、パン、ビスケット、キャンディー、ゼリーなどのパン・菓子類や、ヨーグルト、ハムなどの乳肉加工食品や味噌、ソース、タレ、ドレッシングなどの調味料や豆腐、めん類などの加工食品やマーガリン、ファットスプレッド、ショートニングなどの油脂加工食品や粉末飲料、粉末スープなどの粉末食品などやカプセル状、タブレット状、粉末状、顆粒状などにした健康食品などを挙げることができる。
飲料としては、食塩などのミネラル、酸味料、甘味料、アルコール、ビタミン、フレーバーおよび果汁の中から少なくとも1種を含む飲料、例えばスポーツ飲料、果汁飲料、乳酸菌飲料、アルコール飲料、ビタミン・ミネラル飲料などが挙げられる。
さらに、加工乳、豆乳、体質改善のための飲料、生理効果を期待できる天然素材を組み合わせた飲料などを挙げることができる。
例えば清涼飲料の調製法の例としては、ベースとなる飲料の濃縮液に必要量のα−リポ酸含有組成物あるいはそれを用いた乳化液を添加し、撹拌混合した後、飲用水を用いて希釈する。更に、これに加熱殺菌処理を施したものをビンまたは缶等の包材に充填し、製品とすること等が挙げられる。
【0019】
また、本発明のα−リポ酸含有組成物はソフトカプセルに充填でき、例えば、ゼラチンカプセル被膜形成用溶液を調製し、ロータリー式ゼラチンカプセル製造装置などによりα−リポ酸含有組成物を充填したゼラチンカプセルを製造することができる。
【実施例】
【0020】
以下に具体例を用いてさらに本発明を詳細に説明する。
次に用いた測定方法、評価方法を示す。
1.安定性評価
α−リポ酸含有組成物およびこれを水に分散した乳化液の評価については、目視、嗅覚による官能評価を行った。
(沈殿物)
○;沈殿物なし。△;α−リポ酸の結晶の沈殿物が少しある。×;α−リポ酸の結晶の沈殿物がある。
(重合物)
○;なし。△;少しある。×;ある。
(臭い)
○;なし。△;ややある。×;ある。
【0021】
2.乳化液の平均粒子径の測定方法
α−リポ酸含有組成物を水に分散した乳化液の平均粒子径は、試料を精製水にて100〜300倍に希釈した水溶液を調製し、サブミクロン粒度分布測定装置〔型式:N5 ベックマン・コールター(株)製〕により分散粒子を測定した。
【0022】
3.耐熱性試験
精製水にα−リポ酸含有組成物を水に分散した乳化液が1質量%となるように添加し水溶液を形成させ、液の外観状態を目視で評価した。さらに、この組成物の耐熱性を確認するために、水溶液を湯煎にかけて液温が85℃に到達した時点より30分間、85℃で加温処理した後、室温で放冷して外観を目視で観察した。また、加熱前後の平均粒子径を前記の方法で測定して耐熱性を評価した。
粒径 ○;加熱前後の変化が±10nm未満。 △;±20nm未満。 ×;±20nm以上。
状態 ○;良好。 ×;分離。
【0023】
4.耐酸・耐熱試験
クエン酸にてpH=3に調整した緩衝水にα−リポ酸含有組成物を水に分散した乳化液を1質量%となるように添加し水溶液を形成させ、この水溶液を湯煎にかけ液温が85℃に達温した時点より30分間、85℃で加温処理を行った。この水溶液を室温にて放冷し、加熱前後の平均粒子径により耐酸・耐熱性を評価した。
粒径 ○;加熱前後の変化が±10nm未満。 △;±20nm未満。 ×;±20nm以上。
状態 ○;良好。 ×;分離。
【0024】
5.耐塩・耐熱性試験
食塩を5%含有する精製水にα−リポ酸含有組成物を水に分散した乳化液を1質量%となるように添加し水溶液を形成させ、この水溶液を湯煎にかけ、液温が85℃に達温した時点より30分間加温処理を行った。この水溶液を室温にて放冷し、加熱前後の平均粒子径により耐塩・耐熱性を評価した。
粒径 ○;加熱前後の変化が±10nm未満。 △;±20nm未満。 ×;±20nm以上。
状態 ○;良好。 ×;分離。
【0025】
実施例1
B成分のパーム油150g(15質量%)およびビタミンE油(BASF武田ビタミン(株)製 商品名:理研Eオイル805)150g(15質量%)にC成分のリン脂質(リゾレシチン、太陽化学(株)製、商品名:サンレシチンW−1)300g(30質量%)を加え、湯煎にて緩く加熱撹拌する。次にA成分のα−リポ酸(デグサテクスチュラントシステムズジャパン(株)製 商品名:ALIPURE)200g(20質量%)を添加、撹拌した後、D成分のエタノール(今津薬品工業(株)製)200g(20質量%)を加えα−リポ酸を溶解することにより、α−リポ酸含有組成物を製造した。
この組成物を用い、前記の試験方法により安定性評価を行った。結果を表1に示す。
【0026】
実施例2〜6
配合組成を表1に示すようにした以外は、実施例1と同様にしてα−リポ酸含有組成物を得た。実施例1と同様に、結果を表1にそれぞれ示す。プロピレングリコール脂肪酸エステルは、市販品(理研ビタミン(株)製 商品名:リケマールPO−100V)を使用した。
なお、これらの成分は、他の成分と同じく予めα−リポ酸と混合した後、D成分のエタノールを加えα−リポ酸を溶解することにより、α−リポ酸含有組成物を製造した。
【0027】
比較例1
B成分のパーム油490g(49質量%)にC成分のリン脂質(太陽化学(株)製、商品名:サンレシチンW−1)10g(1質量%)を加え、湯煎にて緩く加熱撹拌する。次にA成分のα−リポ酸(デグサテクスチュラントシステムズジャパン(株)製、商品名:ALIPURE)500g(50質量%)を添加、撹拌し、α−リポ酸含有組成物を製造した。
この組成物を用い、前記の試験方法により安定性評価を行った。結果を表1に示す。
【0028】
比較例2
B成分のパーム油450g(45質量%)およびビタミンE油(BASF武田ビタミン(株)製 商品名:理研Eオイル805)400g(40質量%)にA成分のα−リポ酸(デグサテクスチュラントシステムズジャパン(株)製 商品名:ALIPURE)150g(15質量%)を添加、撹拌し、α−リポ酸含有組成物を製造した。
この組成物を用い、前記の試験方法により安定性評価を行った。結果を表1に示す。
【0029】
比較例3
D成分のエタノール(今津薬品工業(株)製 商品名:エタノール99%)500g(50質量%)にA成分のα−リポ酸(デグサテクスチュラントシステムズジャパン(株)製 商品名:ALIPURE)500g(50質量%)を添加、撹拌し、α−リポ酸含有組成物を製造した。
この組成物を用い、前記の試験方法により安定性評価を行った。結果を表1に示す。
【0030】
比較例4
B成分のパーム油200g(20質量%)および中鎖トリグリセライド(日本油脂(株)製 商品名:パナセート810)150g(15質量%)に、D成分のエタノール(今津薬品工業(株)製 商品名:エタノール99%1級)150g(15質量%)を加え、A成分のα−リポ酸(デグサテクスチュラントシステムズジャパン(株)製 商品名:ALIPURE)500g(50質量%)を添加、撹拌し、α−リポ酸含有組成物を製造した。
この組成物を用い、前記の試験方法により安定性評価を行った。結果を表1に示す。
【0031】
比較例5
A成分のα−リポ酸(デグサテクスチュラントシステムズジャパン(株)製、商品名:ALIPURE)270g(27質量%)、B成分のパーム油10g(1質量%)、C成分のリン脂質(リゾレシチン、太陽化学(株)製、商品名:サンレシチンW−1)80g(8質量%)、D成分のエタノール(今津薬品工業(株)製)480g(48質量%)、E成分のプロピレングリコール脂肪酸エステル(理研ビタミン(株)製 商品名:リケマールPO−100V)80g(8質量%)を加え、湯煎にて緩く加熱撹拌する。α−リポ酸を油脂中に溶解することにより、α−リポ酸含有組成物を製造した。
この組成物を用い、前記の試験方法により安定性評価を行った。結果を表1に示す。
【0032】
比較例6
B成分のパーム油10g(1質量%)および、ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製 商品名:リョートーシュガーエステルO−170)80g(8質量%)及びE成分のプロピレングリコール脂肪酸エステル(理研ビタミン(株)製 商品名:リケマールPO−100V)80g(8質量%)を加え、湯煎にて緩く加熱撹拌する。次に、A成分のα−リポ酸(デグサテクスチュラントシステムズジャパン(株)製、商品名:ALIPURE)270g(27質量%)を添加、撹拌した後、D成分のエタノール(今津薬品工業(株)製)480g(48質量%)を加えα−リポ酸を溶解することにより、α−リポ酸含有組成物を製造した。
この組成物を用い、前記の試験方法により安定性評価を行った。結果を表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
実施例1、2、6はα−リポ酸含有組成物の試作後1週間静置後の臭いの点において若干劣っていたが使用できない範囲ではなかった。実施例3は試作直後および1週間静置後の臭いの点で若干劣っていたが使用できない範囲ではなかった。実施例4、5は全てにおいて良好であった。
比較例1、2は経時的に劣化し、使用不可能な状態であった。比較例3、4は調製直後より重合物が発生するなど使用不可能な状態であった。
比較例5は、試作直後は良好であったが経時的に分離が起こる等分散安定性で劣っていた。比較例6は試作直後から重合物が少し見られ、1週間静置後には使用不可能な状態となっていた。
【0035】
実施例7
デカグリセリンラウリン酸モノエステル(太陽化学(株)製 商品名:サンソフトQ−12S)20g(2質量%)、デカグリセリンオレイン酸モノエステル(太陽化学(株)製 商品名:サンソフトQ−17S)106g(10.6質量%)、ペンタグリセリンオレイン酸モノエステル(太陽化学(株)製 商品名:サンソフトA−171E)54g(5.4質量%)、さらにグリセリン(日本油脂(株)製 商品名:食添グリセリン−S)300g(30質量%)、水360g(36質量%)を量り取り、75〜80℃で加熱溶解した。次に、その液を60〜65℃に冷却後、実施例5の組成物150g(15質量%)を加えてスリーワンモーターで20分間攪拌混合を行った。その後、前記液をマイクロフルイダイザー(みづほ工業(株)製 型式:M−110E/H)を用いて147MPa(1500kg/cm)の圧力で均質化する工程を行い、平均粒径が126.8nmのα−リポ酸含有乳化液を製造した。
この乳化液を用い、前記の試験方法により安定性試験を行った。組成および得た乳化液の平均粒子径を表2に示す。さらにこの乳化液を用いて、前記の耐熱性試験、耐酸・耐熱性試験および耐塩・耐熱性試験を行った結果を合わせて表2に示す。
【0036】
【表2】

【0037】
表2により、本発明のα−リポ酸含有組成物を原料とすると容易に安定な乳化液を製造できることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のA成分を1〜40質量%、B成分を0.2〜50質量%、C成分を0.2〜50質量%、D成分を10〜98.6質量%含有するα−リポ酸含有組成物。
A成分:α−リポ酸、
B成分:食用油脂、
C成分:リン脂質、
D成分:アルコール
【請求項2】
下記のA成分を1〜40質量%、B成分を0.2〜50質量%、C成分を0.2〜50質量%、D成分を10〜98.4質量%、E成分を0.2〜50質量%含有するα−リポ酸含有組成物。
A成分:α−リポ酸、
B成分:食用油脂、
C成分:リン脂質、
D成分:アルコール
E成分:プロピレングリコール脂肪酸エステル
【請求項3】
請求項1または2に記載のα−リポ酸含有組成物の製造方法であって、D成分以外の成分を混合した後、D成分を添加することを特徴とするα−リポ酸含有組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載のα−リポ酸含有組成物を水に分散して得られる乳化液。

【公開番号】特開2008−280258(P2008−280258A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−123787(P2007−123787)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】