説明

α,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法及びα,β−不飽和カルボン酸エステル

【課題】 副生成物および触媒残査が少ない高純度のα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法を提供する。
【解決手段】 スルホン酸基担持無機多孔体(α)の存在下に、アルコール(A)とα,β−不飽和カルボン酸またはその低級アルキルエステル(B)とを反応させることを特徴とするα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法であり、硫黄原子含有量がα,β−不飽和カルボン酸エステルの重量に基づいて50ppm以下、副生エーテル化合物および副生付加生成物がα,β−不飽和カルボン酸エステルのモル数に基づいてそれぞれ2モル%以下および1モル%以下であるα,β−不飽和カルボン酸エステルを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法に関する。詳しくは、固体酸を触媒として用いるα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法および得られたα,β−不飽和カルボン酸エステルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルコールとα,β−不飽和カルボン酸またはその低級エステルとを反応せしめてα,β−不飽和カルボン酸エステルを製造するための酸触媒としては、鉱酸(硫酸、リン酸など)およびスルホン酸(p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸など)が一般的に用いられている。
しかし、これらのブレンステッド酸を触媒として用いた場合は、反応後に、中和、水洗または吸着処理するなどの繁雑な触媒除去工程が必要であり、多量の廃棄物が発生するとともに、得られたカルボン酸エステルに触媒残さが残存し、その用途によっては接触する金属を腐食するという問題があった。
これらの問題を解決するものとして、種々の固体酸触媒を用いるα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法が提案されている。これらは不均一系触媒である固体酸を用いることで容易に反応生成物と触媒が分離でき、中和、水洗などによる廃棄物の発生を抑えるものである。
これらの固体酸触媒としては、イオン交換樹脂(スチレン−ジビニルベンゼン共重合体のスルホン化物)を触媒とするもの(特許文献1および2)、スルホン酸含有フッ素樹脂(Du−Pont社「ナフィオン」など)を触媒とするもの(特許文献3)、リンタングステン酸などの固体超強酸を触媒とするもの(特許文献4)などが提案されている。
しかし、これらの固体酸触媒は、α,β−不飽和カルボン酸エステルのための触媒としていずれも触媒活性が満足できるものではなく、かつ副生成物が生成し易かった。副生成物としては、脱離反応生成物(1分子のアルコールから水が脱離して生成するオレフィン)、エーテル化物(2分子のアルコールから脱水縮合して生成するエーテル)および付加生成物(α,β−不飽和基へアルコールが付加して生成する付加物など)があり、得られるα,β−不飽和カルボン酸エステルの純度が低いという問題点があった。
しかも、ブレンステッド酸の場合よりは少ないものの、触媒の分解によって溶出した硫黄酸化物など酸成分が残存しやすいという問題点もあった。
【特許文献1】特開昭64−9956号公報
【特許文献2】特開平10−81647号公報
【特許文献3】特開平11−319574号公報
【特許文献4】特開平11−152248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、多量の廃棄物が発生せず、かつ、副生成物および触媒残査が少なく、高純度のα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法、並びに該製造方法で得られたα,β−不飽和カルボン酸エステルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は上記問題を解決するため鋭意検討し、本発明に到達した。すなわち本発明は、スルホン酸基担持無機多孔体(α)の存在下に、アルコール(A)とα,β−不飽和カルボン酸またはその低級アルキルエステル(B)とを反応させることを特徴とするα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法;及び、スルホン酸基担持無機多孔体(α)の存在下に、アルコール(A)とα,β−不飽和カルボン酸またはその低級アルキルエステル(B)とを反応させて得られ、硫黄原子含有量がα,β−不飽和カルボン酸エステルの重量に基づいて50ppm以下、副生エーテル化合物および副生付加生成物がα,β−不飽和カルボン酸エステルのモル数に基づいてそれぞれ2モル%以下および1モル%以下であるα,β−不飽和カルボン酸エステル;である。
【発明の効果】
【0005】
本発明のα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法は、副生成物および触媒残査が少ない高純度のα,β−不飽和カルボン酸エステルを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明において、アルコール(A)(以下、単に(A)と表記する場合がある)としては、1価アルコール(A1)および2価以上の多価アルコール(A2)が挙げられる。
【0007】
(A1)としては以下のものが挙げられる。
(A11)飽和脂肪族1価アルコール[炭素数1〜36の直鎖もしくは分岐のアルコール、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクタデシルアルコール、ノナデシルアルコール、2−デシルテトラデシルアルコール、2−テトラデシルオクタデシルアルコールなど];
(A12)不飽和脂肪族1価アルコール[炭素数2〜36の直鎖もしくは分岐のアルコール、例えばビニルアルコール、(メタ)アリルアルコール、オクテニルアルコール、デセニルアルコール、ドデセニルアルコール、トリデセニルアルコール、ペンタデセニルアルコール、オレイルアルコール、ガドレイルアルコール、リノレイルアルコールなど];
(A13)脂環式1価アルコール[脂環基を有する総炭素数6〜36のアルコール、例えばエチルシクロヘキシルアルコール、プロピルシクロヘキシルアルコール、オクチルシクロヘキシルアルコール、ノニルシクロヘキシルアルコール、アダマンチルアルコールなど];
(A14)1価フェノール類[フェノール環を有する総炭素数6〜36のフェノール類、例えばフェノール、クレゾール、t−ブチルフェノール、スチレン化フェノール、ブロモフェノールなど];
(A15)窒素原子、硫黄原子および/またはハロゲン原子を有する1価アルコール[上記の(A11)〜(A14)の一部を窒素原子、硫黄原子および/またはハロゲン原子含有基で置換したアルコール、例えばジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、モルホリノエタノール、2−クロロエタノールなど];
(A16)前記アルコール(A11)〜(A15)のアルキレンオキサイド(以下、AOと略記)[炭素数2〜8のもの、例えばエチレンオキサイド(以下、EOと略記)、プロピレンオキサイド(以下、POと略記)、1,2−または2,3−ブチレンオキサイド、テトラヒドロフランおよびスチレンオキサイドなど]付加物(付加モル数1〜50);
が挙げられる。
【0008】
(A2)の具体例としては、
(A21)2価アルコール[炭素数2〜12のアルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコールおよび1,6−ヘキサンジオールなど)、重合度2〜1,000のポリアルキレングリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリブチレングリコールなど)、脂環式ジオール(脂環基を有する総炭素数6〜36のジオール、例えば1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび水素添加ビスフェノールAなど)、およびこれらの2価アルコールのAO付加物(付加モル数1〜50)およびビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールFおよびビスフェノールSなど)のAO付加物(付加モル数2〜30)(AOは前述と同様のもの)];
(A22)3〜8価またはそれ以上の脂肪族多価アルコール[アルカンポリオールおよびその分子内もしくは分子間脱水物(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ポリグリセリン、およびジペンタエリスリトール)、糖類およびその誘導体(蔗糖およびメチルグルコシドなど)、および上記脂肪族多価アルコールのAO付加物(付加モル数1〜50)];
(A23)3〜8価またはそれ以上の芳香環含有多価アルコール[トリスフェノール類(トリスフェノールPAなど)のAO付加物(付加モル数2〜50)、ノボラック樹脂(フェノールノボラックおよびクレゾールノボラックなど)のAO付加物(付加モル数2〜50)など];が挙げられる。
【0009】
(A)のうち好ましいものは1価アルコール(A1)もしくは2〜8価の多価アルコールおよびそれらのAO付加物であり、さらに好ましいものは(A1)である。
(A1)のうち好ましいものは(A11)、(A12)、(A15)およびそれらのAO付加物であり、とりわけ好ましいものは、高純度の生成物が得られ易いという観点から(A11)のうちの炭素数8〜32の飽和脂肪族1価アルコールおよびそのAO(特にEO)付加物である。
また、(A)に含まれる水酸基としては1級水酸基および2級水酸基が挙げられるが、好ましいのは1級水酸基である。
【0010】
本発明におけるα,β−不飽和カルボン酸またはその低級アルキルエステル(B)(以下、単に(B)と表記する場合がある)におけるα,β−不飽和カルボン酸(B1)としては、脂肪族α,β−不飽和モノカルボン酸[(メタ)アクリル酸およびクロトン酸など]および脂肪族α,β−不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸など)が挙げられる。
またα,β−不飽和カルボン酸の低級アルキルエステル(B2)としては、(B1)と炭素数1〜4のアルキル基を有するアルコールから得られるエステル(メチルエステル、エチルエステルおよびイソプロピルエステルなど)が挙げられる。
【0011】
(B)のうち、純度の高いエステルが得られるという観点から好ましいものは(B1)、さらに好ましいものは副生成物のうちの付加生成物の量が少ないという観点から、脂肪族α,β−不飽和モノカルボン酸、特に好ましいものは得られたα,β−不飽和カルボン酸エステルの重合性が優れるという観点からアクリル酸およびメタクリル酸である。
【0012】
本発明におけるスルホン酸基担持無機多孔体(α)(以下、単に(α)と表記する場合がある)は、無機多孔体にスルホン酸基含有化合物を固定化して担持させたものであり、(A)と(B)のエステル化反応の触媒となるものである。
無機多孔体としては、公知の無機多孔体が使用でき、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、マグネシアおよびジルコニアからなる群から選ばれる1種以上の無機物からなる無機多孔体が挙げられる。
具体的には、シリカからなる無機多孔体としてはシリカゲル;アルミナからなる無機多孔体としてはアルミナゲルなど;シリカおよびアルミナからなる無機多孔体としてはゼオライトなど;その他の無機多孔体としては吸着剤として市販されている「キョーワード」(協和化学(株)製)および珪藻土など;が挙げられる。これらのうち触媒活性の観点から好ましいものは、シリカ、アルミナ、ゼオライトおよび「キョーワード」であり、特に好ましいものはシリカゲルおよび「キョーワード」である。
【0013】
無機多孔体は通常は粒状物であり、その形状としては、不定形粒子、球状粒子またはペレット状などが挙げられる。
これらのうち球状粒子およびペレット状、特に球状粒子が、後述する流通法で反応させる際の圧力損失が小さい点で好ましい。
【0014】
無機多孔体の粒径は、d50(平均粒子径)として、好ましくは1〜8,000μm、さらに好ましくは10〜6,000μm、特に好ましくは40〜500μmである。1μm以上にすることで取り扱いが容易になり、8,000μm以下が触媒活性の面で好ましい。本発明においてd50はJIS K1150に規定される粒度分布測定法において測定できる。
【0015】
無機多孔体の比表面積は、BET比表面積として、好ましくは30m2/g以上、さらに好ましくは50〜1,500m2/g、特に好ましくは100〜800m2/gである。30m2/g以上であることが、触媒活性が高くなりかつ副反応が少なくなる点で好ましい。本発明においてBET比表面積はJIS K1150に規定される比表面積測定法により測定できる。
【0016】
無機多孔体のアスペクト比は、1.0〜1.25が好ましく、さらに好ましくは1.0〜1.18、特に好ましくは1.0〜1.11である。なお、アスペクト比とは粒子の最長直径と最短直径の比であり、1.0に近いほど真球状であることを表す。アスペクト比が1.25以下であれば、後述する流通法で反応させる際の圧力損失が小さい点で好ましい。
本発明においてアスペクト比は、粒子を顕微鏡観察し、その最長直径と最短直径を計測し、100個の粒子について平均することにより測定できる。
【0017】
無機多孔体にスルホン酸基を担持させる方法としては、無機多孔体を、スルホン酸基に変換可能なスルホン酸前駆体基含有化合物(s)(以下、単に(s)と表記する場合がある)と反応させ、その後スルホン酸前駆体基をスルホン酸基に変換する方法などが挙げられる。
【0018】
(s)は、その分子中に、無機多孔体の表面の官能基と反応する基およびスルホン酸基に変換可能な基を有する化合物である。
無機多孔体の表面の官能基としては水酸基、アミノ基およびカルボキシル基などが挙げられる。好ましいのは無機多孔体の表面を修飾しやすいという観点から水酸基である。
【0019】
一方、(s)が含有する、無機多孔体の表面の官能基と反応する基としては、表面の官能基が水酸基またはアミノ基の場合はトリアルコキシシリル基、グリシジル基およびカルボキシル基などが挙げられ、表面の官能基がカルボキシル基の場合はトリアルコキシシリル基、グリシジル基およびアミノ基などが挙げられる。
これらのうち好ましいのは表面の官能基との反応が進行し易いという観点からトリアルコキシシリル基およびグリシジル基、特にトリアルコキシシリル基である。
(s)が含有するスルホン酸基に変換可能なスルホン酸前駆体基としては、メルカプト基(酸化してスルホン酸基に変換)およびフェニル基(スルホン化してスルホフェニル基に変換)などが挙げられる。
【0020】
(s)の具体例としては、メルカプト基含有シランカップリング剤(メルカプトプロピルトリメトキシシランおよびメルカプトプロピルトリエトキシシランなど)、フェニル基含有シランカップリング剤(フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシランなど)およびフェニル基含有グリシジル化合物(フェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテルなど)が挙げられる。これらのうち好ましいものはメルカプト基含有シランカップリング剤である。
【0021】
シランカップリング剤と無機多孔体との反応は、種々の反応条件で行うことができる。例えば、シランカップリング剤を無機多孔体の重量に基づいて30〜60重量%の割合で仕込み、溶剤の存在下に加熱撹拌し、シランカップリング剤中のトリアルコキシシリル基と無機多孔体の表面の官能基(水酸基など)を反応させた後、精製して得ることができる。
反応溶剤としては有機溶剤(トルエン、キシレン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトンおよび/または低級アルコール等)を使用することができ、水とこれらの有機溶剤との混合溶剤でもよい。
水は無機多孔体表面の水酸基およびシランカップリング剤の活性を促進させるため少量使用する方が好ましく、水の割合はシランカップリング剤に対して3倍モル以下が特に好ましい。
また反応溶剤の使用量は無機多孔体の重量に基づいて、通常80〜300%(以下において、%は特に限定しない限り重量%を表す)、好ましくは100〜250%である。
【0022】
反応温度は通常60〜150℃であり、生成するアルコキシ基由来物質(例えばメタノール、エタノール等の低級アルコール)を除去しながら反応してもよい。
反応後は粒状物をろ過もしくは遠心分離機等を用いて分離・回収し、未反応物質(未反応シランカップリング剤など)除去のために、上記の有機溶剤で数回洗浄した後、減圧乾燥(通常100〜120℃、10〜20mmHgで3〜5時間)させる。
【0023】
メルカプト基含有シランカップリング剤を反応させた後、メルカプト基をスルホン酸基に変換するには、反応溶剤の存在下に酸化反応を行う。用いる酸化剤としては種々の酸化剤、例えば硝酸、過酸化水素、次亜塩素酸塩、過マンガン酸カリウム、クロム酸または過酸化物などが挙げられ、好ましいのは過酸化水素である。反応溶剤としてはアセトン、低級アルコール、アセトニトリル、ピリジン、クロロホルムおよび/またはジクロロメタンなどが通常使用される。反応温度は通常0〜100℃である。過酸化水素による酸化反応は米国特許5912385号明細書記載の反応条件でも行うことができる。
【0024】
フェニル基含有シランカップリング剤を反応させた後、フェニル基をスルホン化するには、種々のスルホン化方法が適用できる。スルホン化剤としては例えば濃硫酸、発煙硫酸、三酸化硫黄、クロロ硫酸、フルオロ硫酸またはアミド硫酸等を用いる方法が挙げられる。この場合の反応溶剤としては酢酸、無水酢酸、酢酸エチル、アセトニトリル、ジクロロエタンおよび/または四塩化炭素などが使用できる。反応温度は通常−10〜180℃である。
【0025】
酸化反応またはスルホン化反応のいずれの場合でも反応後の精製処理操作として前述と同様の操作(分離・回収、洗浄および乾燥)を行うことによりスルホン酸基担持無機多孔体(α)が得られる。
【0026】
(α)の製造方法のうち好ましいのは、メルカプト基含有シランカップリング剤を無機多孔体に反応させた後、スルホン酸基に変換する方法である。
【0027】
(α)は、好ましくは5〜250mgKOH/g、さらに好ましくは10〜150mgKOH/g、特に好ましくは15〜100mgKOH/gの酸価を有する。
酸価が5mgKOH/g以上であることで触媒活性が向上し、少量の触媒でエステル化反応が進行し、酸価を100mgKOH/g以下であることで副反応が起こりにくくなる。
(α)の酸価の測定はイオン交換水に(α)を浸し、過剰の水酸化ナトリウムを加えて攪拌し、0.1N塩酸水溶液で中和滴定するという方法で測定できる。
【0028】
(α)は、スルホン酸基を担持する前の無機多孔体と実質的に同じ形状であり、そのd50、BET比表面積およびアスペクト比の好ましい範囲も同様である。
【0029】
(α)は、好ましくは1〜8,000μm、さらに好ましくは10〜6,000μm、特に好ましくは40〜500μmのd50を有する。1μm以上であることで取り扱いが容易になり、8,000μm以下であることが触媒活性の面で好ましい。
【0030】
(α)は、好ましくは30m2/g以上、さらに好ましくは50〜1,500m2/g、特に好ましくは100〜800m2/gのBET比表面積を有する。30m2/g以上であることが、触媒活性が高くなりかつ副反応が少なくなる点で好ましい。
【0031】
(α)は、好ましくは1.0〜1.25、さらに好ましくは1.0〜1.18、特に好ましくは1.0〜1.11のアスペクト比を有する球状粒子である。
アスペクト比が1.25以下であれば、後述する流通法で反応させる際の圧力損失が小さい点で好ましい。
【0032】
本発明の不飽和カルボン酸エステルの製造方法において、(A)と(B)の仕込み当量比は、通常1:3〜3:1、好ましくは1:2〜2:1、さらに好ましくは1:1.5〜1.5:1、特に好ましくは1:1.5〜1:1.02である。
(A)または(B)のうち除去が容易な方を過剰に用い、反応完了後、過剰の(A)または(B)を除去するのが反応率向上の観点で有利である。
【0033】
本発明の不飽和カルボン酸エステルの製造方法において、不飽和基の重合を防止する目的で重合禁止剤を添加することもできる。
重合禁止剤としては、フェノール系重合禁止剤(ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、クレゾール、ジ−t−ブチルクレゾール、ジ−t−ブチルフェノール、トリ−t−ブチルフェノールなど)、およびアミン系重合禁止剤(フェノチアジン、ジフェニルアミン、アルキル化ジフェニルアミンなど)などが挙げられる。
これらのうち好ましいものはフェノール系重合禁止剤である。
重合禁止剤の添加量は、(A)と(B)の総重量に基づいて通常0.001〜2%、好ましくは0.01〜1%、さらに好ましくは0.01〜0.5%、特に好ましくは0.01〜0.2%である。
【0034】
(α)の使用量は(A)と(B)の総重量に対して、通常0.1〜70%、好ましくは1〜60%、さらに好ましくは2〜50%、特に好ましくは3〜40%である。
0.1%以上用いることで効率的にエステル化反応が進行し、70%以下が経済面から好ましい。
また、(α)の使用量は、(A)の仕込み当量に対する(α)中のスルホン酸基の当量の比が好ましくは0.005〜0.3、さらに好ましくは0.01〜0.2となる添加量である。0.005以上であれば反応速度の観点から好ましく、0.3以下であれば副反応が抑制されるという観点から好ましい。
【0035】
エステル化反応の形態としては、バッチ法または流通法のいずれの方法でも実施することができる。
【0036】
バッチ法の場合は、(α)、(A)、(B)および必要により反応溶剤を反応槽の中に仕込み、加熱撹拌し、生成する水または低級アルコールを除去しながら反応を進行させる。反応完了後、反応生成物と(α)をデカンテーション、ろ過、遠心分離などによって分離する。(A)または(B)を過剰に用いた場合は、(α)を分離する前または分離後に過剰の原料を除去することで、不飽和カルボン酸エステルを得ることができる。
【0037】
エステル化反応温度は、通常60〜180℃、好ましくは80〜160℃、さらに好ましくは100〜140℃である。60℃以上が反応速度の観点から好ましく、180℃以下が副反応を抑制する観点から好ましい。
反応時間は、通常10分〜24時間、好ましくは30分〜10時間、特に好ましくは1〜5時間である。
反応溶剤としては、炭化水素系溶剤(トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素など)、ケトン系溶剤(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、およびエーテル系溶剤(テトラヒドロフランなど)などが使用できる。これらの反応溶剤のうち、反応生成水を分離して除去し易いという観点から炭化水素系溶剤が好ましい。
生成する水または低級アルコールを除去する方法としては、常圧または減圧下に溜去させる方法、分液や遠心分離する方法、モレキュラシーブス、硫酸マグネシウムなどの脱水剤と接触させる方法、水分離膜などの選択膜により膜分離する方法などが挙げられる。上記バッチ法の場合は、常圧または減圧下に溜去させる方法が好ましい。
【0038】
流通法の場合は、(α)を充填したカラム、固定床または流動床などに、所定の温度に温調した(A)と(B)の混合物を通液することでエステル化反応させることができる。
1パス後の反応混合物を蒸留することにより不飽和カルボン酸エステルを得ることもできるが、反応率を高くすることができるという観点から、(α)の存在下に(A)と(B)とを反応させる工程(1)と、(A)と(B)との反応によって生成した水または低級アルコールを反応混合物から除去する工程(2)とからなる製造方法が好ましい。
特に、工程(1)と工程(2)とを繰り返すことで反応率をさらに高めることができる。 工程(1)において通液する(A)と(B)の混合物の温度は、通常60〜180℃、好ましくは80〜160℃、さらに好ましくは100〜140℃である。60℃以上が反応速度の観点から好ましく、180℃以下が副反応を抑制する観点から好ましい。
工程(1)における1パスあたりの平均通液時間(触媒と反応液の平均接触時間)は、通常0.1〜60分、好ましくは0.2〜10分、さらに好ましくは0.5〜5分である。
工程(2)における水または低級アルコールを除去する方法としては、連続式エバポレーターで留去する方法、コンデンサーを付した反応槽などを用いて常圧または減圧下に溜去させる方法、並びに水分離膜、遠心分離もしくは脱水剤によって脱水する方法などが挙げられる。これらのうち、連続式エバポレーター、コンデンサーを付した反応槽およびそれらの併用が生産効率の観点から好ましい。
工程(1)と工程(2)の繰り返し回数は、通常1〜500回、好ましくは3〜200回、さらに好ましくは5〜100回である。
【0039】
本発明の製造方法において、(B)および生成物の重合を禁止する目的で、反応液中に酸素を溶存させることもできる。酸素の供給源としては、酸素ガス、空気、および空気と窒素の混合気(以下、(混合気)と略記する場合がある)などが挙げられ、これらを反応液中に通気することで酸素を溶存させられる。こららのうち安全性の観点から、空気および混合気、特に混合気が好ましい。
【0040】
混合気の空気と窒素の混合体積比率は、通常1:9〜9:1、好ましくは1:9〜5:5、特に好ましくは2:8〜4:6である。空気の比率を高めることで重合禁止効果が高まり、窒素の比率を高めることで生成物の着色が少なくなる点で好ましい。
空気または混合気の通気量は、(A)と(B)の総和1kgあたり、好ましくは1〜5,000mL/分、さらに好ましくは20〜1,000mL/分、特に好ましくは30〜500mL/分である。
空気または混合気を通気する方法としては、バッチ法の場合は反応槽下部からエステル化反応中に常時通気する方法が挙げられる。
流通法の場合は、工程(1)、工程(2)およびそれらの途中の配管中に通気する方法が挙げられるが、工程(2)において通気することが反応速度と重合禁止の両立の観点で特に好ましい。
【0041】
本発明の不飽和カルボン酸エステルの純度は、通常95%以上、好ましくは98%以上である。
不純物としては、未反応アルコール、脱離反応生成物(1分子のアルコールから水が脱離して生成するオレフィンなど)、副生エーテル化合物(2分子のアルコールから脱水縮合して生成するエーテル)、副生付加生成物(α,β−不飽和基へアルコールが付加して生成する付加物など)および硫黄原子含有化合物(触媒の分解によって溶出した硫黄酸化物など)などが挙げられる。また、不純物ではないが添加物としての重合禁止剤が含まれる。
【0042】
未反応アルコールの含有量は、α,β−不飽和カルボン酸エステルのモル数に基づいて通常5モル%以下、好ましくは2モル%以下である。
脱離反応生成物の含有量は、α,β−不飽和カルボン酸エステルのモル数に基づいて通常2モル%以下、好ましくは0.1モル%(検出限界)以下である。
副生エーテル化合物および副生付加生成物の含有量は、α,β−不飽和カルボン酸エステルのモル数に基づいてそれぞれ好ましくは2モル%以下(さらに好ましくは1.5モル%以下)および1モル%以下(さらに好ましくは0.8モル%以下)である。
【0043】
硫黄原子含有化合物は、α,β−不飽和カルボン酸エステルの重量に基づいて、硫黄原子含量(以下において、S含量と略記する)として、通常50ppm以下、好ましくは20ppm(検出限界)以下である。
【0044】
重合禁止剤としては、前述のフェノール系重合禁止剤およびアミン系重合禁止剤からなる群から選ばれる1種以上の重合禁止剤が挙げられる。
重合禁止剤の含有量はα,β−不飽和カルボン酸エステルの重量に基づいて0.001〜0.2%、好ましくは0.01〜0.06%である。
【0045】
なお、α,β−不飽和カルボン酸エステル、未反応アルコール、脱離反応生成物、副生エーテル化物および副生付加生成物の含有量は、生成物のH1−NMRを測定して解析することにより定量できる。また、S含量はICP測定装置「ICPS−8000」(島津製作所製)により定量できる。
【0046】
本発明のα,β−不飽和カルボン酸エステルは、高純度であり、かつ、重合性の不飽和基を有するため各種のポリマーの原料モノマーとして好適に使用できる。
本発明のα,β−不飽和カルボン酸エステルをモノマーの1種として用いて得られるポリマーは、各種の樹脂、樹脂改質剤、粘着剤用バインダー、塗料用ビヒクル、潤滑油用粘度指数向上剤、潤滑油用流動点降下剤または各種添加剤として使用できる。
【0047】
<実施例>
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、部はいずれも重量部を表す。
【0048】
<スルホン酸基担持無機多孔体(α)の製造例>
製造例1
攪拌装置、加熱冷却装置、温度計及び還流管を備えた反応容器に、あらかじめイオン交換水で洗浄後乾燥させたシリカゲル(ワコーゲルC−100:和光純薬工業株式会社製)200部並びに溶剤としてのトルエン400部および水10部を仕込んだ後、100〜110℃に昇温した。次いで3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン100部加え、環流下に8時間撹拌反応させた。その後さらに水15部を加えて8時間反応させた。反応混合物から固形分をろ別し、トルエン400部で3回、イソプロピルアルコール400部で3回の順で洗浄した後、120℃にて5時間減圧乾燥し、シランカップリング剤担持無機多孔体190部を得た。
シランカップリング剤担持無機多孔体のうちの150部、溶剤としてのメタノール450部、および30%過酸化水素水150部を上記と同様の反応容器に仕込み、環流下に70℃で8時間反応させた。反応混合物から固形分をろ別し、メタノール400部で3回、0.1N硫酸400部で1回およびイオン交換水400部で3回の順で洗浄した後、120℃にて5時間減圧乾燥して、スルホン酸基担持無機多孔体からなる触媒(α−1)を140部得た。(α−1)は、シリカゲルがスルホプロピル基を担時した構造であり、そのd50は230μm、BET比表面積は222m2/g、酸価は37mgKOH/g、アスペクト比は1.89であった。
【0049】
製造例2
3−メルカプトプロピルトリメトキシシランの代わりにフェニルトリエトキシシランを200部使用した以外は製造例1と同様の方法でシランカップリング剤担持無機多孔体190部を得た。 シランカップリング剤担持無機多孔体のうちの150部、溶剤としてのジクロロエタン180部を反応容器に仕込み、水冷下、17〜23℃で三酸化硫黄10部を5時間かけて滴下し、その後40〜50℃で3時間攪拌してスルホン化を行った。イオン交換水4部を加えて未反応の三酸化硫黄を硫酸に変換した後、反応混合物から固形分をろ別し、イソプロピルアルコール400部で3回およびイオン交換水400部で3回洗浄した後、120℃にて5時間減圧乾燥して触媒(α−2)を140部得た。(α−2)は、シリカゲルがスルホフェニル基を担時した構造であり、そのd50は230μm、BET比表面積は215m2/g、酸価は45mgKOH/g、アスペクト比は1.82であった。
【0050】
製造例3
触媒の担体としてシリカ−アルミナ系多孔体(「キョーワード700SN」:協和化学工業株式会社製)を200部使用した以外は製造例1と同様の方法で触媒(α−3)を140部得た。(α−3)は、シリカ−アルミナがスルホプロピル基を担時した構造であり、そのd50は216μm、BET比表面積は197m2/g、酸価は85mgKOH/g、アスペクト比は1.12であった。
【0051】
製造例4
触媒の担体としてアルミナ(「活性アルミナ200」:ナカライテスク株式会社製)を200部使用した以外は製造例1と同様の方法で触媒(α−4)を140部得た。(α−4)は、アルミナがスルホプロピル基を担時した構造であり、そのd50は68μm、BET比表面積は231m2/g、酸価は52mgKOH/g、アスペクト比は1.14であった。
【0052】
製造例5
触媒の担体としてシリカゲル(CARiACT Q−6 75−500μm:富士シリシア化学株式会社製)を200部使用した以外は製造例1と同様の方法で触媒(α−5)を140部得た。(α−5)は、シリカゲルがスルホプロピル基を担時した構造であり、そのd50は220μm、BET比表面積は287m2/g、酸価は43mgKOH/g、アスペクト比は1.02であった。
【0053】
製造例6
触媒の担体としてシリカゲル(CARiACT Q−6 45−75μm:富士シリシア化学株式会社製)を200部使用した以外は製造例1と同様の方法で触媒(α−6)を140部得た。(α−6)は、シリカゲルがスルホプロピル基を担時した構造であり、そのd50は58μm、BET比表面積は320m2/g、酸価は34mgKOH/g、アスペクト比は1.02であった。
【0054】
<α,β−不飽和カルボン酸エステルの製造>
実施例1
攪拌装置、加熱冷却装置、温度計、分水管を備えた反応容器に、ラウリルアルコール1,800部とメタクリル酸1,100部を仕込み(モル比1:1.3)、これに触媒(α−1)を580部および重合禁止剤としてハイドロキノン0.3部を加えた。反応温度115〜125℃にて生成水を分水管により連続的に系外へ除去しながら2時間エステル化反応させた。さらに250〜300mmHgの減圧下に115〜125℃で1時間反応させ、次いで10〜20mmHg、120〜130℃で過剰のメタクリル酸を留去した後、冷却し、触媒をデカンテーションで除去することで、本発明の不飽和カルボン酸エステル(E−1)を2,500部得た。
1−NMRでの解析の結果、(E−1)は、目的のメタクリル酸ラウリルエステル99.8モル%および未反応アルコール0.2モル%を含有し、脱離反応生成物、副生エーテル化物および副生付加生成物はいずれも検出限界以下(0.1モル%以下)であった。
また触媒から生成物中へのスルホン酸基由来成分の溶出量を調べるため、S含量をICP測定装置「ICPS−8000」(島津製作所製)により定量した結果、検出限界以下(20ppm以下)であった。
【0055】
実施例2〜5
下記表1記載の原料を表1記載の部数使用したこと以外は実施例1と同様にして実施例の2〜5のα,β−不飽和カルボン酸エステル(E−2)、(E−3)、(E−4)および(E−5)を製造した。
生成物の分析結果を表2に示す。
【0056】
実施例6
攪拌装置、加熱冷却装置、温度計、気体吹き込み口、コンデンサー、ピットを付した12Lステンレス製反応槽に、炭素数12および13のアルキルアルコールの混合物(「ドバノール23」;三菱化学株式会社製)5.7kg、メタクリル酸3.3kg(モル比1:1.3)および重合禁止剤としてハイドロキノンを1gを仕込み、空気−窒素の混合気(1:2)を500ml/分で通気した。反応温度の115〜125℃まで昇温した後、ダイヤフラムポンプにて反応槽内の反応液を、触媒(α−5)1.8kgを充填したステンレス製固定床へ流速1.1L/分で連続的に通液し、吐出液を元の反応槽へと循環させ、反応槽では115〜125℃で常圧で脱水することで、反応液を循環しながら、反応と脱水工程を同時に連続的に1時間行った。
その後、反応槽内を250〜300mmHgの減圧にして、さらに2時間、同様の反応と脱水を行い、エステル化反応を完結させた。次いで、反応液の全量を反応槽に戻し、10〜20mmHg、120〜130℃の条件下、過剰のメタクリル酸を留去することで本発明のα,β−不飽和カルボン酸エステル組成物(E−6)を7.6kg得た。
尚、固定床での1パスあたりの反応液の平均滞留時間は2.5分であった。
また、エステル化反応における反応液全量の循環繰り返し回数は、固定床での流速から約18回と計算された。
生成物の分析結果を表2に示す。
【0057】
実施例7
通液の流速3.1L/分、および、固定床での1パスあたりの平均滞留時間0.8分としたこと以外は実施例6と同様にして実施例7のα,β−不飽和カルボン酸エステル組成物(E−7)を製造した。
常圧における反応液全量の循環繰り返し回数は、固定床での流速と平均滞留時間から約50回と計算された。
生成物の分析結果を表2に示す。
【0058】
比較例1
触媒としてポリスチレンスルホン酸型イオン交換樹脂「アンバーリスト−16」(ローム&ハース社製)を表1記載の部数使用したこと以外は実施例1と同様にして比較例1のα,β−不飽和カルボン酸エステル(H−1)を製造した。「アンバーリスト16」のd50は720μm、BET比表面積は35m2/g、酸価は280mgKOH/g、アスペクト比は1.05であった。
生成物の分析結果を表2に示す。
【0059】
比較例2
(B)としてアクリル酸を表1記載の部数使用したこと以外は比較例1と同様にして比較例2のα,β−不飽和カルボン酸エステル(H−2)を製造した。
生成物の分析結果を表2に示す。
【0060】
比較例3
触媒として硫酸を表1記載の部数使用したこと以外は実施例1と同様にしてエステル化し、さらに水酸化ナトリウム水溶液で中和・分液し、イオン交換水にて水洗・分液処理することにより、比較例3のα,β−不飽和カルボン酸エステル(H−3)を得た。
生成物の分析結果を表2に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
表2から分かるように、本発明のα,β−不飽和カルボン酸エステルは、副生成物が少なく高純度であり、また、触媒残査も少ない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のα,β−不飽和カルボン酸エステルは、高純度であり、かつ、重合性の不飽和基を有するため各種のポリマーの原料モノマーとして好適に使用できる。
また、本発明のα,β−不飽和カルボン酸エステルをモノマーの1種として用いて得られるポリマーは、各種の樹脂、樹脂改質剤、粘着剤用バインダー、塗料用ビヒクル、潤滑油用粘度指数向上剤、潤滑油用流動点降下剤または各種添加剤として使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホン酸基担持無機多孔体(α)の存在下に、アルコール(A)とα,β−不飽和カルボン酸またはその低級アルキルエステル(B)とを反応させることを特徴とするα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項2】
(A)が、1価アルコールもしくは2〜8価の多価アルコールまたはそれらのアルキレンオキサイド付加物である請求項1記載のα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項3】
(B)がアクリル酸またはメタクリル酸である請求項1または2記載のα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項4】
(α)が、シリカ、アルミナ、チタニア、マグネシアおよびジルコニアからなる群から選ばれる1種以上の無機物からなる無機多孔体にスルホン酸基を担持させた粒状物である請求項1〜3のいずれか記載のα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項5】
(α)が、無機多孔体をスルホン酸前駆体基含有化合物(s)と反応させてスルホン酸前駆体基担持無機多孔体を得た後、スルホン酸前駆体基をスルホン酸基に変換して得られるスルホン酸基担持無機多孔体である請求項1〜4のいずれか記載のα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項6】
(α)が、1〜8,000μmの平均粒径を有する粒状物である請求項1〜5のいずれか記載のα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項7】
(α)が、30m2/g以上のBET比表面積を有する請求項1〜6のいずれか記載のα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項8】
(α)が5〜250mgKOH/gの酸価を有する請求項1〜7のいずれか記載のα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項9】
(α)が、1.0〜1.25のアスペクト比を有する球状粒子である請求項1〜8のいずれか記載のα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項10】
(α)の存在下に(A)と(B)とを反応させる工程(1)と、(A)と(B)との反応によって生成した水または低級アルコールを反応混合物から除去する工程(2)とからなる請求項1〜9のいずれか記載のα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項11】
工程(2)において、空気または空気と窒素からなる混合気体を、反応混合物中に通気することを特徴とする請求項10記載のα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項12】
スルホン酸基担持無機多孔体(α)の存在下に、アルコール(A)とα,β−不飽和カルボン酸またはその低級アルキルエステル(B)とを反応させて得られ、硫黄原子含有量がα,β−不飽和カルボン酸エステルの重量に基づいて50ppm以下、副生エーテル化合物および副生付加生成物がα,β−不飽和カルボン酸エステルのモル数に基づいてそれぞれ2モル%以下および1モル%以下であるα,β−不飽和カルボン酸エステル。
【請求項13】
さらに、フェノール系重合禁止剤およびアミン系重合禁止剤からなる群から選ばれる1種以上の重合禁止剤を0.001〜0.2重量%含有する請求項12記載のα,β−不飽和カルボン酸エステル。

【公開番号】特開2006−96748(P2006−96748A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−238600(P2005−238600)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】