説明

α4β7インテグリン反応性ヒト化免疫グロブリン

本発明は、α4β7インテグリンへの結合特異性を有し、マウスAct-1抗体の相補性決定領域(CDR)を含むヒト化免疫グロブリン、およびヒト化免疫グロブリンのヒト化軽鎖に関する。本発明は、さらに、ヒト化免疫グロブリン軽鎖に関する。本発明はまた、単離された核酸、組換えベクターおよびヒト化免疫グロブリンまたは免疫グロブリン軽鎖をコードする配列を含む宿主細胞、ならびにヒト化免疫グロブリンの調製方法に関する。ヒト化免疫グロブリンは、治療適用において、例えば、粘膜組織へのリンパ球浸潤を制御または炎症性腸疾患を処置するために使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2005年11月17日に出願された米国仮特許出願60/732,582号の恩恵を主張する。上記出願の全教示は参照により本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
インテグリンレセプターは、リンパ球の炎症部位への再循環および会合に重要である(Carlos, T.M.およびHarlan, J.M., Blood, 84:2068-2101 (1994))。ヒトα4β7は、そのうちの1つが腸管膜内皮静脈のリンパ節およびパイエル板に高度に発現する粘膜管接着MAdCAM-1である(Berlin, C, et al, Cell 74: 185-195 (1993); Erie, DJ., et al, J. Immunol. 153:511-522, (1994))いくつかのリガンドを有する(Streeter, P.R., et al., Nature 337:41-46 (1998))。このように、α4β7インテグリンは、腸内粘膜のリンパ系組織へのリンパ球の移動を仲介するホーミングレセプターとして作用する(Schweighoffer, T., et al, J. Immunol 151: 717-729 (1993))。また、α4β7インテグリンはフィブロネクチンの予備血管細胞接着分子-1(VCAM-1)と相互作用する。
【0003】
潰瘍性大腸炎およびクローン病などの炎症性腸疾患(IBD)は、例えば胃腸管の炎症を含む消耗性で進行性の疾患である。IBDの治療には、抗炎症薬(コルチコステロイドおよびスルファサラジンなど)、免疫抑制薬(6−メルカプトプリン、シクロスポリンおよびアザチオプリンなど)および手術(結腸切除など)が含まれる。Podolsky, New Engl. J. Med., 525:928-937 (1991)、およびPodolsky, New Engl. J. Med, 325:1008-1016 (1991)。
【0004】
マウスモノクローナル抗体Act-1(mAb Act-1)などのヒトα4β7インテグリンに対する抗体は、粘膜リンパ節に高度に存在する粘膜アドレシン細胞接着分子-1(MAdCMA-1)に結合するα4β7インテグリンと相互作用する。元来、Act-1は、Lazarovits, A.I., et al, J. Immunol. 733:1857-1862 (1984)によりヒトの破傷風毒素特異的Tリンパ球で免疫したマウスから単離され、マウスIgG1/κであると報告された。さらに最近、Schweighoffer, T., et al., J. Immunol. 151:717-729 (1993)による抗体の分析により、Act-1はα4β7インテグリンを選択的に発現する、ヒトメモリーCD4+ Tリンパ球の亜集団に結合することが明らかにされた。しかしながら、ヒトにおける治療応用にマウスの抗体を使用することの重要な問題は、マウス抗体がヒトにおいて高度に免疫原性であり、患者中でのマウス抗体の効果を低減し、継続的な投与を妨げ得るヒト抗マウス抗体応答(HAMA)が迅速に誘導されることである。HAMA応答は、マウス抗体の迅速な除去を生じ、いくらかの治療の恩恵が激しく制限される。
【0005】
従って、α4β7インテグリンに介される細胞接着を阻害する治療薬およびそのためのアプローチを改善するため、例えば炎症性腸疾患の治療のための必要性がある。
【0006】
発明の概要
本発明はα4β7インテグリンに結合特異性を有し、マウスAct-1抗体の相補性決定領域(CDR)を含むヒト免疫グロブリンに関し、ヒト化免疫グロブリンのヒト化軽鎖に関する。本発明のヒト化軽鎖抗体は、マウスAct-1抗体の軽鎖CDRを含む他のヒト化軽鎖とは異なるアミノ酸配列を有する。本発明のヒト化軽鎖のアミノ酸配列は、性質的によりヒトであり(つまり、ヒト起源ではないアミノ酸をより少なく含む)、Act-1のCDRを含む他の抗体を越えた利点を提供する。
【0007】
好ましくは、ヒト化免疫グロブリンはヒト化重鎖およびヒト化軽鎖を含む。成熟ヒト化重鎖(プロセッシングされたシグナル配列を除去した後)のアミノ酸配列は、配列番号:2のアミノ酸残基20〜470のアミノ酸配列を含み、成熟ヒト化軽鎖(プロセッシングされたシグナル配列を除去した後)のアミノ酸配列は、配列番号:4のアミノ酸残基20〜238のアミノ酸配列を含む。例えば、ヒト化重鎖は、配列番号:1のヌクレオチド87〜1433のヌクレオチド配列を含むか、または配列番号:1のヌクレオチド配列もしくは配列番号:1のオープンリーディングフレームを含む核酸配列にコードされ得、ヒト化軽鎖は、配列番号:3のヌクレオチド81〜737のヌクレオチド配列を含むか、または配列番号:3のヌクレオチド配列もしくは配列番号:3のオープンリーディングフレームを含む核酸配列にコードされ得る。いくつかの態様において、ヒト化免疫グロブリンは検出可能標識を含む。
【0008】
本発明はまた、本発明のヒト化免疫グロブリンのヒト化軽鎖に関する。ヒト化軽鎖はマウスAct-1抗体のCDRを含む。一態様において、ヒト化免疫グロブリンの軽鎖は配列番号:4のアミノ酸残基20〜238のアミノ酸配列を含む。例えば、ヒト化軽鎖は配列番号:3のヌクレオチド81〜737のヌクレオチド配列を含むか、または配列番号:3のヌクレオチド配列を含む核酸にコードされ得る。
【0009】
本発明はまた、本発明のヒト化免疫グロブリンまたはヒト化軽鎖をコードする核酸分子に関する。いくつかの態様において、本発明は、互いに結合してα4β7インテグリンに対する結合特異性を有するヒト化免疫グロブリン重鎖およびヒト化免疫グロブリン軽鎖をコードする単離された核酸分子に関し、ヒト化免疫グロブリン重鎖は配列番号:2のアミノ酸残基20〜470のアミノ酸配列を含み、ヒト化免疫グロブリン軽鎖は配列番号:4のアミノ酸残基20〜238のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、単離された核酸分子は、それぞれがシグナルペプチドを含むヒト免疫グロブリン重鎖およびヒト化免疫グロブリン軽鎖をコードする。例えば、いくつかの態様において、単離された核酸分子は、配列番号:2のアミノ酸配列を含むヒト化免疫グロブリン重鎖および配列番号:4のアミノ酸配列を含むヒト化免疫グロブリン軽鎖を含む。
【0010】
他の態様において、本発明はα4β7インテグリンに結合特異性を有するヒト化免疫グロブリンをコードする単離された核酸である。かかる態様において、単離された核酸は、ヒト化重鎖をコードする第1のヌクレオチド配列およびヒト化軽鎖をコードする第2のヌクレオチド配列含み、第1のヌクレオチド配列は配列番号:1のヌクレオチド87〜1433を含み、第2のヌクレオチド配列は配列番号:3のヌクレオチド81〜737を含む。いくつかの態様において、第1のヌクレオチド配列および第2のヌクレオチド配列は、それぞれさらにシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。例えば、単離された核酸分子は配列番号:1のヌクレオチド配列を含む第1のヌクレオチド配列、および配列番号:3のヌクレオチド配列を含む第2のヌクレオチド配列を含み得る。
【0011】
本発明はまた、本発明のヒト化軽鎖をコードする単離された核酸分子に関する。一態様において、単離された核酸分子は、配列番号:4のアミノ酸残基20〜238のアミノ酸配列を含むヒト化免疫グロブリン軽鎖をコードする。いくつかの態様において、単離された核酸分子はシグナルペプチドを含むヒト化免疫グロブリン軽鎖をコードする。例えば、本発明の単離された核酸分子は、配列番号:4のアミノ酸配列を含むヒト化免疫グロブリン軽鎖をコードし得る。他の態様において、単離された核酸分子は配列番号:3のヌクレオチド81〜737のヌクレオチド配列を含み、任意にシグナルペプチドをコードするさらなるヌクレオチド配列を含む。例えば、単離された核酸分子は配列番号:3のヌクレオチド配列を含み得る。
【0012】
本発明はまた、本発明のヒト化免疫グロブリン(ヒト化軽鎖およびヒト化重鎖)またはヒト化軽鎖をコードする核酸を含む組換えベクター(例えば、発現ベクター、哺乳動物細胞発現ベクター)に関する。いくつかの態様において、本発明は、配列番号:4のアミノ酸残基20〜238のアミノ酸配列を含み、任意にさらにシグナルペプチドを含むヒト化免疫グロブリン軽鎖をコードする核酸を含む組換えベクターである。例えば、組換えベクターは配列番号:3のヌクレオチド81〜737のヌクレオチド配列を含み得るか、または配列番号:3のヌクレオチド配列を含み得る。いくつかの態様において、ヒト化免疫グロブリン(例えば、配列番号:4のアミノ酸配列を含むヒト化免疫グロブリン軽鎖)をコードする核酸を含む組換えベクターは、配列番号:2のアミノ酸残基20〜470のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖をコードする第2の核酸配列をさらに含む。任意に、第2の核酸にコードされるヒト化重鎖は、シグナルペプチドをさらに含み得る。例えば、第2の核酸は配列番号:1のヌクレオチド87〜1433のヌクレオチド配列を含み得るかまたは、配列番号:1のヌクレオチド配列を含む。
【0013】
他の態様において、組換えベクターはヒト化免疫グロブリン重鎖およびヒト化免疫グロブリン軽鎖をコードする核酸を含み、ヒト化免疫グロブリン重鎖およびヒト化免疫グロブリン軽鎖は互いに結合してα4β7インテグリンに結合特異性を有するヒト化免疫グロブリンを形成する。好ましくは、ヒト化免疫グロブリン重鎖は配列番号:2のアミノ酸残基20〜470のアミノ酸配列を含み、ヒト化免疫グロブリン軽鎖は配列番号:4のアミノ酸残基20〜238のアミノ酸配列を含む。特定の態様において、ヒト化免疫グロブリン重鎖およびヒト化免疫グロブリン軽鎖はそれぞれさらにシグナルペプチドを含む。例えば、単離された核酸分子は配列番号:2のアミノ酸配列を含むヒト化免疫グロブリン重鎖、および配列番号:4のアミノ酸配列を含むヒト化免疫グロブリン軽鎖をコードし得る。
【0014】
他の態様において、組換えベクターはα4β7インテグリンに対して結合特異性を有するヒト化免疫グロブリンをコードする核酸を含み、単離された核酸はヒト化重鎖をコードする第1のヌクレオチドおよびヒト化軽鎖をコードする第2のヌクレオチド配列を含む。好ましくは、第1のヌクレオチド配列は配列番号:1のヌクレオチド87〜1433のヌクレオチド配列を含み、第2のヌクレオチド配列は、配列番号:3のヌクレオチド81〜737のヌクレオチド配列を含む。特定の態様において、第1のヌクレオチド配列および第2のヌクレオチド配列は、それぞれ、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列をさらに含む。例えば、単離された核酸分子は配列番号:1のヌクレオチド配列および配列番号:3のヌクレオチド配列を含み得る。
【0015】
特定の態様において、本発明の組換えベクターは哺乳動物発現細胞などの発現ベクターである。
【0016】
本発明はまた、本発明のヒト化免疫グロブリン(ヒト化軽鎖およびヒト化重鎖)またはヒト化軽鎖をコードする組換え核酸を含む宿主細胞に関する。例えば、いくつかの態様において、宿主細胞は本発明の組換えベクター(例えば、発現ベクター、哺乳動物発現ベクター)を含む。
【0017】
いくつかの態様において、宿主細胞は、配列番号:4のアミノ酸残基20〜238のアミノ酸配列を含むヒト化免疫グロブリン軽鎖をコードする組換え核酸を含み、任意にシグナルペプチドを含む。例えば、いくつかの態様において、宿主細胞は、配列番号:3のヌクレオチド81〜737のヌクレオチド配列を含む組換え核酸を含む。
【0018】
いくつかの態様において、宿主細胞は、配列番号:4のアミノ酸残基20〜238のアミノ酸配列を含むヒト化免疫グロブリン軽鎖をコードする組換え核酸を含み、さらに配列番号:2のアミノ酸残基20〜470のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖をコードする第2の組換え核酸をさらに含む。いくつかの態様において、第2の核酸はシグナルペプチドをさらに含むヒト化重鎖をコードする。例えば、特定の態様において、宿主細胞は、配列番号:1のヌクレオチド87〜1433のヌクレオチド配列を含むか、または配列番号:1のヌクレオチド配列を含む第2の組換え核酸を含む。
【0019】
他の態様において、宿主細胞はヒト化免疫グロブリン重鎖およびヒト化免疫グロブリン軽鎖をコードする組換え核酸を含み、前記ヒト化免疫グロブリン重鎖およびヒト化免疫グロブリン軽鎖は互いに結合して、α4β7インテグリンに対して結合特異性を有するヒト化免疫グロブリンを形成する。好ましくは、ヒト化免疫グロブリン重鎖は、配列番号:2のアミノ酸残基20〜470のアミノ酸配列を含み、ヒト化免疫グロブリン軽鎖は配列番号:4のアミノ酸残基20〜238のアミノ酸配列を含む。特定の態様において、ヒト化免疫グロブリン重鎖およびヒト化免疫グロブリン軽鎖は、それぞれさらにシグナルペプチドを含む。例えば、宿主細胞は、配列番号:2のアミノ酸配列を含むヒト化免疫グロブリン重鎖、および配列番号:4のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖をコードする組換え核酸を含む。
【0020】
他の態様において、宿主細胞は、α4β7インテグリンに対して結合特異性を有するヒト化免疫グロブリンをコードする組換え核酸を含み、ヒト化重鎖をコードする第1のヌクレオチド配列およびヒト化軽鎖をコードする第2のヌクレオチド配列を含む。好ましくは、第1の核酸は配列番号:1のヌクレオチド配列87〜1433のヌクレオチド配列を含み、第2の核酸は配列番号:3のヌクレオチド配列81〜737のヌクレオチド配列を含む。特定の態様において、第1のヌクレオチド配列および第2のクレオチド配列は、それぞれ、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列をさらに含む。例えば、宿主細胞は、配列番号:1のヌクレオチド配列を含む第1のヌクレオチド配列および配列番号:3のヌクレオチド配列を含む第2のヌクレオチド配列を含み得る。
【0021】
本発明はまた、ヒト化免疫グロブリンの発現に適した条件下で本発明の宿主細胞(例えば、本発明のヒト化免疫グロブリン(例えば、ヒト化軽鎖およびヒト化重鎖)をコードする1種以上の組換え核酸を含む宿主細胞)を維持し、ヒト化免疫グロブリンを発現させ、ヒト化免疫グロブリンを生成する工程を含む、ヒト化免疫グロブリンの調製方法に関する。
【0022】
本発明はさらに、本発明のヒト化免疫グロブリンまたはヒト化軽鎖および薬学的に許容され得るビヒクルもしくは担体を含む医薬組成物に関する。いくつかの態様において、該医薬組成物は複数回投薬量を含み、それぞれの投薬量は本発明のヒト化抗体またはヒト化軽鎖またはその抗原結合フラグメントの有効量を含む。他の態様において、該医薬組成物は、ヒト化抗体またはヒト化軽鎖の有効量を含む。
【0023】
本発明はまた、第1の細胞と、有効量の本発明のヒト化抗体またはヒト化単鎖を接触させる工程を含む、α4β7を有する第1の細胞と、そのリガンドを有する第2の細胞の相互作用の阻害方法に関する。
【0024】
本発明はまた、患者に、有効量の本発明のヒト化抗体またはヒト化単鎖を投与する工程を含む、粘膜組織への白血球浸潤の阻害方法に関する。
【0025】
本発明はまた、治療の必要のある患者に、有効量の本発明のヒト化免疫グロブリンまたはヒト化軽鎖を投与する工程を含む、分子MAdCAM-1を発現する組織の白血球浸潤に関連する疾患の治療方法に関する。例えば、該疾患は、乳腺炎、またはクローン静脈洞炎であり得る。いくつかの態様において、該疾患は、α4β7を発現する白血球のMAdCAM-1を発現する消化管関連内皮への結合の結果生じる、組織の白血球浸潤に関連する疾患であり得る。特定の態様において、該疾患は、膵臓炎、インスリン依存性糖尿病、胆嚢炎、胆管炎、胆管周囲炎である。
【0026】
本発明はまた、患者に、有効量の本発明のヒト化免疫グロブリンまたはヒト化軽鎖を投与する工程を含む、患者における炎症性腸疾患の治療方法に関する。いくつかの態様において、炎症性腸疾患は潰瘍性大腸炎またはクローン病である。他の態様において、炎症性腸疾患は、セリアック病、セロネガティブ関節症に関する腸症、微視的もしくはコラーゲン蓄積大腸炎、好酸性胃腸炎、または回腸嚢炎である。
【0027】
本発明はまた、本発明のヒト化免疫グロブリンまたはその抗原結合性フラグメントを含む免疫コンジュゲートに関する。いくつかの局面おいて、免疫コンジュゲートは細胞傷害性部分(例えば、細胞傷害性薬剤)を含む。例えば、細胞傷害性部分は放射性同位体、治療剤(例えば化学治療剤、代謝拮抗物質、アルキル化剤、アントラサイクリン、抗生物質、抗有糸分裂剤、生物応答改変剤、成長因子、(例えば神経栄養因子))、または腫瘍活性化プロドラッグ(例えば、酵素および/または酵素活性化化合物)を含み得る。免疫コンジュゲートの細胞傷害性部分が治療剤である場合、該薬剤はメイタンシン(maytansine)、アウリスタチン(auristatin)、ドラスタチン、デュオカルマイシン、クリプトフィシン(cryptophycin)、タキソール、DNAアルキル化剤、カリケアマイシン、または前述のものの任意の誘導体である。いくつかの局面において、細胞傷害性部分は、DM1およびDM4から選択されるマイタイシンを含む。
【0028】
本発明はまた、治療および/または診断における使用のためなどの、医薬における使用のための、本発明のヒト化免疫グロブリンまたはヒト化軽鎖に関する。本発明はまた、本明細書に記載される疾患または障害(例えば、炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病))の治療のための医薬の製造における、本発明のヒト免疫グロブリンまたはヒト化軽鎖の使用に関する。
【0029】
本発明はまた、活性成分として本発明のヒト化免疫グロブリンまたはヒト化軽鎖を含む、本明細書に記載される疾患または障害(例えば、炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病))の治療のための医薬組成物に関する。いくつかの態様において、医薬組成物は、抗炎症性化合物(例えば、スルファサラジン、非ステロイド性抗炎症化合物、またはステロイド性抗炎症化合物)などの1つ以上のさらなる活性成分を含む。
【0030】
発明の詳細な説明
本明細書で使用する場合、用語「免疫グロブリン」は、抗体全体およびその抗原結合フラグメントのことをいう。抗体の抗原結合フラグメントとしては、例えば、一本鎖抗体、Fvフラグメント、Fabフラグメント、Fab'フラグメントおよびF(ab')2フラグメントが挙げられる。かかるフラグメントは、酵素で切断すること、または組換え技術により生成され得る。例えば、パパインまたはペプシン切断を用いて、FabまたはF(ab')2フラグメントそれぞれが作製され得る。また、抗体は、天然の終止部位の上流に1つ以上の終止コドンを導入された抗体遺伝子を用いて、種々の切断型形態で生成され得る。例えば、F(ab')2フラグメントの重鎖をコードする組換え構築物は、重鎖中にCH1ドメインおよびヒンジ領域をコードするDNA配列を含むように設計され得る。
【0031】
本明細書中で使用する場合、用語「ヒト化免疫グロブリン」は、マウスAct-1抗体のCDR(CDR1、CDR2およびCDR3)および軽鎖CDR(CDR1、CDR2およびCDR3)、ならびにヒト起源の軽鎖および/または重鎖由来のフレームワークおよび定常領域(例えば、フレームワーク変化を有するかまたは有さないCDR-移植抗体)を含む1つ以上のヒト化免疫グロブリン鎖を含む免疫グロブリンのことをいう。本発明のヒト化免疫グロブリンは、配列番号:4のヒト化軽鎖配列の、少なくともアミノ酸残基20〜134を含む。CDR移植一本鎖抗体はまた、用語ヒト化免疫グロブリンに包含される。例えば、Cabilly et al.,米国特許第4,816,567号;Cabilly et al., 欧州特許第0,125,023 B1号;Boss et al., 米国特許第4,816,397号;Boss et al., 欧州特許第0,120,694 B1号;Neuberger, M.S. et al., 国際公開公報86/01533号;Neuberger, M.S. et al., 欧州特許第0,194,276 B1号;Winter, 米国特許第5,225,539号;Winter, 欧州特許第0,239,400 B1号;Padlan, E.A. et al., 欧州特許出願第0,519,596 A1を参照。一本鎖抗体に関しては、Ladner et al., 米国特許第4,946,778号;Huston, 米国特許第5,476,786号;およびBird, R.E. et al., Science, 242: 423-426 (1988))も参照のこと。
【0032】
本発明のヒト化免疫グロブリンの「抗原結合フラグメント」は配列番号:4のヒト化軽鎖の少なくともアミノ酸残基20〜134を含む。かかる抗原結合フラグメントの例としては、配列番号:4のアミノ酸残基20〜238アミノ酸残基を含むヒト化軽鎖、および配列番号:2のヒト化重鎖を含むヒト化免疫グロブリンの、Fabフラグメント、Fab'フラグメントおよびF(ab')2フラグメントが挙げられる。本発明のヒト化免疫グロブリンの抗原結合フラグメントは、酵素的切断または組換え技術により生成され得る。例えば、パパインまたはペプシン切断を用いて、FabまたはF(ab')2フラグメントのそれぞれが作製され得る。また、抗体は、天然の終止部位の上流に1つ以上の終止コドンを導入された抗体遺伝子を用いて、種々の切断型形態で生成され得る。例えば、F(ab')2フラグメントの重鎖をコードする組換え構築物は、重鎖中にCH1ドメインおよびヒンジ領域をコードするDNA配列を含むように設計され得る。好ましい抗原結合フラグメントは、α4β7の、その1つ以上のリガンド(例えば、粘膜アドレシンMAdCAM-1、フィブロネクチン)への結合を阻害する。
【0033】
本明細書に記載するように、マウスAct-1抗体のCDRを含むヒト化免疫グロブリンが生成された。ヒト化免疫グロブリンは、マウスAct-1抗体の他のヒト化形態(例えば、LDP-02の軽鎖)のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有するヒト化軽鎖を含む。本発明のヒト化軽鎖のアミノ酸配列は、特徴的によりヒト型であり、従って、ヒトに対して免疫原性がより低いことが期待される。また、本明細書に記載のように、本発明のヒト化免疫グロブリンは、LDP-02よりも小型であり、安定の増加に関した性質を備え、分解および凝集に耐性であり、可溶性を備える。
【0034】
本発明は、本明細書に記載のヒト化免疫グロブリン、ヒト化免疫グロブリンの抗原結合フラグメント、およびヒト化免疫グロブリンの軽鎖ならびにそのフラグメントに関する。本発明は、プロセッシングされて重鎖および軽鎖が除去され、および/または糖鎖付加された免疫グロブリンなどの成熟ヒト化免疫グロブリンに関する。本発明は、単一ペプチドからなるヒト化軽鎖などの未成熟または前駆体タンパク質にも関する。また、本発明は、未成熟および成熟タンパク質を共にコードする核酸分子(例えばベクター)、かかる核酸分子を含む宿主細胞、および未成熟および成熟タンパク質の生成方法に関する。
【0035】
天然に存在する免疫グロブリンは、2本の同一の軽鎖(約24kD)および2本の同一の重鎖(約55〜70kD)が4量体を形成する共通のコア構造を有する。各鎖のアミノ末端部は可変(V)領域として公知であり、各鎖の残りのより保存された定常(C)領域と区別され得る。軽鎖の可変領域においてC末端部はJ領域として公知である。重鎖の可変領域には、J領域に加えてD領域が存在する。免疫グロブリン中のほとんどのアミノ酸配列の変形は、抗原結合に直接関係する超可変領域または相補性決定領域(CDR)として公知である、3つの別々の位置に閉じ込められる。アミノ末端から進むにつれ、これらの領域はそれぞれCDR1、CDR2およびCDR3と命名される。CDRはより保存されたフレームワーク領域(FR)によって定位置に固定される。アミノ末端から進むにつれて、これらの領域はそれぞれFR1、FR2、FR3およびFR4と命名される。CDRおよびFR領域の位置および番号付けのシステムは、Kabatら(Kabat, E.A. et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版、米国保健社会福祉省、政府印刷局 (1991))により規定されている。
【0036】
ヒト免疫グロブリンは、重鎖のアイソタイプによりクラスおよびサブクラスに分けることができる。該クラスにはIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEが含まれ、その中で重鎖はそれぞれガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)またはイプシロン(ε)型である。サブクラスにはIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2が含まれ、その中で重鎖はそれぞれγ1、γ2、γ3、γ4、α1およびα2型である。選択されるクラスまたはサブクラスのヒト免疫グロブリン分子は、カッパ(κ)またはラムダ(λ)軽鎖のいずれかを含む。例えば、Cellular and Molecular Immunology Wonsiewicz, MJ., 編、45章, pp. 41〜50, W. B. Saunders Co., Philadelphia, PA (1991);Nisonoff, A., Introduction to Molecular Immunology、第2版、4章, pp.45〜65, Sinauer Associates, Inc., Sunderland, MA (1984)を参照のこと。
【0037】
ヒト化免疫グロブリンのCDR(非ヒト部分)はマウスAct-1モノクローナル抗体由来である(Lazarovits, A.I. et al., J. Immunol, 133(4): 1857-1862 (1984))。マウスAct-1モノクローナル抗体は、α4β7インテグリンヘテロダイマーに対して結合特異性を有し、α4鎖またはβ7鎖を含む他のインテグリンには結合しない(Schweighoffer et al., J. Immunol, 151:717- 729 (1993)参照)。従って、本発明のヒト化免疫グロブリンは、α4β1インテグリンおよびα4β7インテグリンに結合するナタリズマブ(Biogen Idee; Cambridge, Massachusetts)などの他の抗体およびα4鎖に結合するヒト化抗体よりも良好な標的選択性を有する。
【0038】
好ましくは、ヒト化免疫グロブリンは、マウスAct-1抗体と同等またはそれよりも良好な親和性を持って、α4β7インテグリンと結合する。好ましい態様において、本発明のヒト化免疫グロブリンはマウスAct-1抗体の結合特異性(例えば、α4β7インテグリンに対する特異性を有し、同一または同等のエピトープ特異性を有する)および/または阻害機能(例えば、インビトロおよび/またはインビボでMAdCAM-1に結合するα4β7インテグリンを阻害する能力など、インビトロおよび/またはインビボにおけるα4β7依存性接着の阻害能力、またはα4β7インテグリンを有する細胞のそのリガンド(例えば、MAdCAM-1を有する細胞)への結合を阻害する能力)を有する。従って、好ましいヒト化免疫グロブリンは、マウスAct-1抗体の結合特異性、マウスAct-1抗体のエピトープ特異性(例えば、マウスAct-1またはヒト化Act-1(例えば、LDP-02)とα4β7(例えば、α4β7インテグリンを有する細胞上の)に関して競合し得る)、およびマウスAct-1抗体の阻害機能を有する。好ましくは、ヒト化免疫グロブリンは、少なくとも少なくとも約107M-1、好ましくは少なくとも約108M-1、およびより好ましくは少なくとも約109M-1の親和性でα4β7インテグリンと結合し得る。
【0039】
マウスAct-1モノクローナル抗体を産生するマウスACT-1ハイブリドーマ細胞株は、2001年8月22日にブタペスト条約の規定の下、Millennium Pharmaceuticals, Inc., 75 Sidney Street, Cambridge, Mass. 02139, U.S.Aに代わって、受託番号PTA-3663でAmerican Type Culture Collection 10801 University Boulevard, Manassas, Va. 20110-2209, U.S.A.に寄託された。
【0040】
ヒト化免疫グロブリンまたはヒト起源である免疫グロブリン鎖の一部は、任意の適切なヒト免疫グロブリンまたは免疫グロブリン鎖に由来し得る。例えば、ヒト定常領域またはその一部は、対立遺伝子バリアントを含むヒト抗体のκまたはλ軽鎖、および/またはγ(例えば、γ1、γ2、γ3、γ4)、μ、α(例えば、α1、α2)、δまたはε重鎖に由来し得る。特定の定常領域(例えば、IgG1)またはそのバリアントもしくはその一部はエフェクター機能を調整するために選択され得る。例えば、変異定常領域(バリアント)は、Fcレセプターへの結合および/または補体を固定する能力を最小限にするために融合タンパク質に組み込まれ得る。(例えば、Winter et al, 英国特許第2,209,757 B号;Morrison et al., 国際特許公開公報89/07142号;Morgan et al., 国際特許公開公報94/29351、1994年12月22日、参照。)
【0041】
好ましくは、ヒトフレームワーク領域および定常領域(例えば、軽鎖可変領域の)は、ドナー(マウスAct-1抗体)の抗原結合領域のアナログまたは同等領域(例えば、軽鎖可変領域)に対する配列類似性を有するヒト抗体可変領域に由来する。ヒト化免疫グロブリンのヒト起源部分に対するフレームワーク領域の他の供給源としては、ヒト可変コンセンサス配列(例えば、Kettleborough, C.A. et al., Protein Engineering 4:773-783 15 (1991);Carter et al., 国際特許公開公報94/04679号)参照)が挙げられる。例えば、非ヒト部分を得るために使用される抗体または可変領域の配列は、Kabat, E.A., et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版、U.S. 米国保険社会福祉省、政府印刷局(1991)に記載されるように、ヒト配列と比較され得る。
【0042】
本発明に使用される非ヒトおよびヒト起源の免疫グロブリン部分は、自身が由来する免疫グロブリンもしくは免疫グロブリン部分またはそのバリアントに同一な配列を有する。かかるバリアントは、1つ以上の残基の付加、欠損または置換によって異なる変異体を含む。上記のように、本発明のヒト化免疫グロブリンはマウスAct-1抗体のCDRを含む。ヒト起源のフレームワーク領域の残基をドナー抗体の対応する位置の残基で置換するなどのフレームワーク領域の変化がなされ得る。1つ以上のアミノ酸の欠損、挿入および置換を含む1つ以上の変異が、フレームワーク領域中になされ得る。所望の場合、フレームワーク変異はヒト化抗体または鎖中に含まれ得、変異部位は、例えば、全教示が参照により本明細書中に援用される、国際特許公開公報98/06248号に記載されるなどの任意の適切な方法を用いて選択され得る。
【0043】
α4β7インテグリンに結合特異性を有するヒト化免疫グロブリンの結合機能は、任意の適切な方法、例えばヒト化抗体とα4β7インテグリン(例えば、ヒトリンパ球(例えば、CD4+αhi、βloサブセット)、ヒトリンパ球細胞株またはα4および/またはβ7をコードする核酸を含む組換え宿主細胞(α4β7インテグリンを発現する)などの、α4β7インテグリンを有する細胞上のα4β7インテグリンを含む膜画分)の間の複合体の形成をモニターするアッセイを用いて検出され得る。
【0044】
結合および/または接着アッセイあるいは他の適切な方法はまた、必要な特異性を有するヒト化免疫グロブリンの(例えば、ライブラリーからの)同定および/または単離のための手順に使用され得る(例えば、α4β7インテグリンを有する細胞とそのリガンド間の接着をモニターするアッセイ(例えば、MAdCAM、MAdCAM-Ig融合タンパク質を発現する第2の細胞または他の適切な方法))。
【0045】
本発明に使用される非ヒトおよびヒト起源の免疫グロブリン部分は、軽鎖、重鎖、ならびに軽鎖および重鎖の部分を含む。これらの免疫グロブリン部分は、免疫グロブリン(例えば、一部の新たな合成により)から得られ得るかまたは由来し得、あるいは所望の特性(例えば、α4β7インテグリンに結合する、配列類似性)を有する免疫グロブリンもしくはその鎖をコードする核酸は産生され得るかまたは発現し得る。ヒトおよび非ヒト起源の所望の部分(例えば、抗原結合領域、CDR、FR、C領域)を備えるヒト化免疫グロブリンは、所望のヒト化鎖をコードする構築物(例えば、cDNA)を調製するための合成および/または組換え核酸を用いて産生され得る。鎖の部分を調製するために、1つ以上の終止コドンを所望の位置に導入し得る。例えば、新規のヒト化可変領域をコードする核酸(例えば、DNA)は、既存のDNA配列を改変するPCR突然変異誘発法を用いて構築され得る(例えばKamman, M., et al., Nucl Acids Res. 17:5404 (1989)参照)。新規のCDRをコードするPCRプライマーは、同一であるか極めて類似するヒト可変領域をもとにした、予めヒト化された可変領域の鋳型にハイブリダイズし得る(Sato, K., et al., Cancer Research 53:851-856 (1993))。類似のDNA配列が鋳型として利用できない場合、可変領域配列をコードする配列を含む核酸を合成オリゴヌクレオチドから構築し得る(例えば、Kolbinger, F., Protein Engineering 8:971-980 (1993)参照)。シグナルペプチドをコードする配列を核酸に組み込み得る(例えば、合成の際、ベクターに挿入の際)。天然のシグナルペプチド配列が利用できない場合、別の抗体由来のシグナルペプチド配列を使用し得る(例えば、Kettleborough, CA. et al., Protein Engineering 4:773-783 15 (1991)参照)。これらの方法、本明細書に記載の方法または他の適切な方法を用いて、バリアントは容易に生成され得る。
【0046】
本発明は、α4β7インテグリンに対する結合特異性を有し、ヒト化重鎖およびヒト化軽鎖を含むヒト化免疫グロブリンに関する。一態様において、ヒト化免疫グロブリンは、配列番号:2のアミノ酸残基20〜470を含む成熟ヒト化重鎖、および配列番号:4のアミノ酸残基20〜238を含む成熟ヒト化軽鎖を含む。例えば、一態様において、ヒト化重鎖およびヒト化軽鎖はプロセッシングされてシグナルペプチドが除去されている。
【0047】
別の態様において、ヒト化免疫グロブリンは配列番号:2の未成熟ヒト化重鎖、および配列番号:4の未成熟ヒト化軽鎖を含む。いくつかの態様において、ヒト化免疫グロブリンは検出可能な標識を含む。
【0048】
本発明はまた、CHO DG44などのCHO細胞株における発現により産生される、本明細書に記載のヒト化免疫グロブリンに関する。
【0049】
いくつかの態様において、ヒト化免疫グロブリンは糖鎖付加され、優勢的にアガラクトシル化された糖形態(例えば、G0F糖形態)を含む。特定の態様において、ヒト化免疫グロブリン上に存在する少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%の糖形態がG0糖形態である。
【0050】
好ましくは、ヒト化免疫グロブリンは、少なくとも約6ヵ月、または少なくとも約12ヵ月、または少なくとも約18ヵ月、または少なくとも約24ヵ月、または少なくとも約30ヵ月安定である。好ましくは、安定性は、水性バッファ(例えば、125mM塩化ナトリウムを含む20mMクエン酸ナトリウムpH 6.0)中の10mg/mL溶液のヒト化免疫グロブリンを4O℃で少なくとも約6ヶ月間維持して、凝集または分解の程度を評価することにより決定される。約10%未満、または約9%未満、または約8%未満、または約7%未満、または約6%未満、または約5%未満、または約4%未満、または約3%未満、または約2%未満、または約1%未満、または実質的にゼロのヒト化抗体が溶液中で凝集または分解される場合、ヒト化免疫グロブリンは安定である。
【0051】
本発明はまた、本明細書中に記載のヒト化免疫グロブリンのヒト化免疫グロブリン軽鎖にも関する。一態様において、ヒト化免疫グロブリン軽鎖は、配列番号:4のアミノ酸残基20〜238のアミノ酸配列を含む。所望の場合、ヒト化免疫グロブリン軽鎖は、さらにシグナルペプチドを含む。例えば、ヒト化免疫グロブリン軽鎖は、配列番号:4のアミノ酸配列を有し得る。
【0052】
本発明はまた、本明細書に記載のヒト化免疫グロブリンの抗原結合フラグメント、および少なくとも配列番号:4のアミノ酸残基20〜134を含むヒト化軽鎖のフラグメントに関する。
【0053】
所望の場合、例えば診断目的(例えば、画像化)で、ヒト化免疫グロブリンまたはその抗原結合フラグメントは検出可能な標識を含み得る。適切な検出可能な標識およびヒト化免疫グロブリンまたはその抗原結合フラグメントの標識方法は、当該技術分野に公知である。適切な検出可能な標識としては、例えば、放射性同位体(例えば、インジウム-111、テクネチウム-99mまたはヨウ素-131など)、陽電子放射標識(例えば、フッ素-19)、常磁性イオン(例えば、ガドリニウム(Gadlinium)(III)、マンガン(II))、エピトープ標識(タグ)、親和性標識(例えば、ビオチン、アビジン)、スピンラベル(spin label)、酵素、蛍光基または化学発光基が挙げられる。標識を使用しない場合、表面プラスモン共鳴または他の適当な方法により、複合体(例えば、ヒト免疫グロブリンとα4β7インテグリンの間の)形成が検出され得る。
【0054】
また、本発明は、本発明のヒト化抗体またはその抗原結合フラグメント、および細胞傷害性部分などの別の治療剤を含む免疫コンジュゲートに関する。例えば、MLN02またはその抗原結合フラグメントは、生物タンパク質、植物または細菌起源の分子(もしくはその誘導体)、例えばメイタンシノイド(maytansinoid)(例えば、メイタンシノール(maytansinol)、例えばDM1、DM4)、タキサン、カリケアマイシン、デュオカルマイシン、またはそれらの誘導体とカップリングし得る。例えば、メイタンシノイドはメイタンシノールまたはメイタンシノールアナログであり得る。メイタンシノールアナログの例としては、修飾芳香環(例えば、C-19-デクロロ、C-20-デメトキシ、C-20-アシルオキシ)を有するもの、および他の位置に修飾を有するもの(例えば、C-9-CH、C-14-アルコキシメチル、C-14-ヒドロキシメチルまたはアセロキシメチル、C-15-ヒドロキシ/アシルオキシ、C-15-メトキシ、C-18-N-デメチル、4,5-デオキシ)が挙げられる。メイタンシノールおよびメイタンシノールアナログは、例えば、その内容が本明細書中に参照によって援用される米国特許第5,208,020号および6,333,410号に記載される。メイタンシノールは、例えばN-スクシニミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(proprionate)(N-スクシニミジル4-(2-ピリジルジチオ)ペンタノエートもしくはSPPとしても知られる)、4-スクシニミジル-オキシカルボニル-a-(2-ピリジルジチオ)-トルエン(SMPT)、N-スクシニミジル-3-(2-ピリジルジチオ)ブチレート(SDPB)、2イミノチオラン、またはS-アセチコハク酸無水物を用いて抗体とカップリングし得る。例えば、タキサンは、タキソール、タキソテール(taxotere)または新規のタキソン(例えば、国際公開公報01/38318参照)であり得る。カリケアマイシンは、例えば、臭素複合化(bromo-complex)カリケアマイシン(例えば、α、βまたはγ臭素複合体)、ヨウ素複合化カリケアマイシン(例えば、α、βまたはγヨウ素複合体)、またはそれらのアナログならびに模倣体であり得る。臭素複合化カリケアマイシンとしては、I1-BR、I2-BR、I3-BR、I4-BR、J1-BR、J2-BRおよびK1-BRが挙げられる。ヨウ素複合化カリケマイシンとしては、I1-I、I2-I、I3-I、J1-I、J2-I、L1-IおよびK1-BRが挙げられる。カリケアマイシンおよび変種、そのアナログおよび模倣物は、それぞれの内容が本明細書中に参照によって援用される米国特許第4,970,198号、5,264,586号、5,550,246号、5,712,374号および5,714,586号に記載される。デュオカルマイシンアナログ(例えば、KW-2189、DC88、DC89 CBI-TMI)およびそれらの誘導体は、例えばそれぞれの内容が参照によって本明細書中に援用される米国特許第5,070,092号、米国特許第5,187,186号、米国特許第5,641,780号、米国特許第5,641,780号、米国特許第4,923,990号および米国特許第5,101,038に記載される。
【0055】
他の治療剤としては限定されることはないが、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、コルヒチン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、代謝拮抗薬(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロラムブシル(thioepa chlorambucil)、CC-1065(米国特許第5,475,092号、5,585,499号および5,846,545号参照)、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびcis-ジクロロジアミンプラチナ(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前はダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ピューロマイシン アントラマイシン(AMC))、デュオカルマイシンおよびそれらのアナログ、および抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、タキソール、アウリスタチン(例えば、アウリスタチンE)およびメイタンシノイド、ならびにそれらのアナログまたはホモログが挙げられる。
【0056】
本発明の免疫コンジュゲートは、所定の生物応答を改変するために使用され得る。該治療剤は、典型的な化学治療剤に限定されることを意図しない。例えば、該治療剤は、所望の生物活性を保持するタンパク質またはポリペプチドであり得る。かかるタンパク質としては、例えば、アブリン、リシンA、シュードモナス属外毒素、ゲロニン(gelonin)、ジフテリア毒素もしくはそれらの成分(例えば、シュードモナス属外毒素の成分であるPE38)等の毒素;腫瘍壊死因子、インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子、組織プラスミノーゲンアクチベータ等のタンパク質;または、例えばリンフォカイン、インターロイキン-1(「IL-1」)インターロイキン-2(「IL-2」)、インターロイキン-6(「IL6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM-CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G-CSF」)もしくはその他の成長因子等の生物応答改変体であり得る。同様に、該治療剤は、ウイルス粒子、例えば本発明の抗OV064抗体にコンジュゲートされる(例えば、ケミカルリンカーを介して)か、または融合される(例えば、ウイルスコートタンパク質を介して)組換えウイルス粒子であり得る。ウイルス核酸分子、例えば組換えウイルス核酸分子の細胞、例えばα4β7を発現する癌細胞への導入により、次いでMLN02/ウイルス粒子コンジュゲートまたは融合体の結合およびエンドサイトーシスが生じ得る。
【0057】
治療的に活性な放射性核種もまた、MLN02またはその抗原結合フラグメントにカップリングし得る。放射性核種(例えば、放射性同位体)は、診断的または治療的応用に使用することができる。MLN02にカップリンし得る放射性同位体としては、限定されることはないが、α-、β-もしくはγ-エミッター、またはβ-およびγ-エミッターが挙げられる。かかる放射性同位体としては限定されることはないが、ヨウ素(131Iもしくは125I)、イットリウム(90Y)、ルテニウム(177Lu)、アクチニウム(225Ac)、プラセオジミウム、アスタチン(211At)、レニウム(186Re)、ビスマス(212Biもしくは213Bi)、インジウム(111In)、テクネチウム(99mTc)、リン(32P)、ロジウム(188Rh)、硫黄(35S)、炭素(14C)、トリチウム(3H)、クロム(51Cr)、塩素(36Cl)、コバルト(57Coもしくは58Co)、鉄(59Fe)、セレニウム(75Se)、またはガリウム(67Ga)が挙げられる。治療剤として有用な放射性同位体としては、イットリウム(90Y)、ルテニウム(177Lu)、アクチニウム(225Ac)、プラセオジミウム、アスタチン(211At)、レニウム(186Re)、ビスマス(212Biもしくは213Bi)、およびロジウム(188Rh)が挙げられる。標識として、例えば診断における使用に有用な放射性同位体としては、ヨウ素(131Iもしくは125I)、インジウム(111In)、テクネチウム(99mTc)、リン(32P)、炭素(14C)およびトリチウム(3H)、または上述の1つ以上の治療用放射性同位体が挙げられる。
【0058】
核酸および組換えベクター
本発明はまた、本発明のヒト化免疫グロブリンまたはヒト化免疫グロブリン軽鎖を含む、単離されたおよび/または組換え(例えば、実質的に純粋なものを含む)核酸に関する。
【0059】
本明細書中で「単離された」と称される核酸は、ゲノムDNAまたは細胞RNAの供給源の起源中のゲノムDNAまたは細胞RNAの核酸(例えば、それは細胞またはライブラリーなどの核酸の混合物中に存在する)から単離された核酸であり、本明細書中に記載の方法または他の適切な方法により得られた核酸を含み、実質的に純粋な核酸、化学合成、生物学的および化学的方法の組合せにより生成された核酸、ならびに単離された核酸を含む(例えば、Daugherty, B. L. et al., Nucleic Acids Res., 19(9): 2471-2476 (1991);Lewis, AP.およびJ.S. Crowe, Gene, 101: 297-302 (1991)参照)。
【0060】
本明細書において「組換え」と称される核酸は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および/または制限酵素を用いたベクターへのクローニングなどの人工的な組換え方法による手順により作製された組換え核酸を含む、組換えDNA方法により生成された核酸である。「組換え」核酸はまた、細胞の天然の機構により起こる組換え事象により得られた核酸であるが、設計された核酸の細胞への導入後に所望の組換え事象を確実にすることを可能にするように選択される。
【0061】
本発明はまた、さらに具体的に、ヒト化Act-1免疫グロブリン(例えば、即ち非ヒト部分がマウスAct-1マウスモノクローナル抗体に由来する、本発明のヒト化免疫グロブリン)またはその軽鎖を含む単離されたおよび/または組換え核酸に関する。
【0062】
本発明の核酸は、α4β7インテグリンに対する結合特異性を有するヒト化免疫グロブリンの産生に使用され得る。例えば、本発明のヒト化免疫グロブリンをコードする核酸(例えば、DNA)は、配列をさらに操作するため、または適切な宿主細胞中のコードされたポリペプチドの産生のために適切な構築物(例えば、組換えベクター)に組み込まれ得る。
【0063】
α4β7インテグリンに対する結合特異性を有するヒト化免疫グロブリンの発現に適切な構築物またはベクターも提供される。単一コピーまたは複数コピー中に維持されるかまたは宿主細胞染色体に組みこまれるベクターを含む種々のベクターが利用可能である。構築物または適切な宿主細胞に導入され得、本発明のヒト化免疫グロブリンを発現する細胞は培養液中で生成され維持され得る。
【0064】
適当な発現ベクター、例えば、哺乳動物細胞発現ベクターはまた、限定されないが、以下:複製起点;選択可能なマーカー遺伝子;転写制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、ターミネータ)および/または1つ以上の翻訳シグナルなどの1つ以上の発現制御エレメント;膜標的化または分泌のためのシグナル配列またはリーダー配列の1種類以上を含む多数の成分を含有し得る。構築物またはベクターにおいて、シグナルペプチド配列は、構築物もしくはベクターまたは他の供給源によって提供され得る。例えば、発現を指示するために免疫グロブリンの転写および/または翻訳シグナルが使用され得る。
【0065】
プロモーターは、適当な宿主細胞内での発現ために提供され得る。プロモーターは、構成的または誘導性であり得る。例えば、プロモーターは、コードされたポリペプチドの発現を指令するようにヒト化免疫グロブリンまたは免疫グロブリン鎖をコードする核酸に作動可能に連結され得る。原核生物宿主(例えば、大腸菌のlac、tac、T3、T7プロモーター)および真核生物(例えば、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH1)、SV40、CMV)宿主の種々の適当なプロモーターが利用可能である。
【0066】
また、ベクター(例えば、発現ベクター)は、典型的に、ベクターを保有する宿主細胞の選択のための選択可能なマーカーを含み、複製可能なベクターの場合は、複製起点を含む。抗生物質または薬物耐性を付与する産物をコードする遺伝子は、一般的な選択可能なマーカーであり、原核生物(例えば、β-ラクタマーゼ遺伝子(アンピシリン耐性)、テトラサイクリン耐性のTet遺伝子)および真核生物細胞(例えば、ネオマイシン(G418またはゲネチシン)、gpt (ミコフェノール酸)、アンピシリンまたはハイグロマイシン耐性遺伝子)において使用され得る。ジヒドロ葉酸還元酵素マーカー遺伝子は種々の宿主においてメトトレキサートでの選択を可能にする。宿主の栄養素要求性マーカーの遺伝子産物をコードする遺伝子(例えば、LEU2、URAS、HIS3)は、しばしば、酵母における選択可能なマーカーとして使用される。ウイルス(例えば、バキュロウイルス)またはファージベクター、およびレトロウイルスベクターなどの宿主細胞のゲノムに組み込まれ得るベクターの使用もまた想定される。
【0067】
本発明はまた、本発明のヒト化免疫グロブリンまたはヒト化軽鎖をコードする単離された核酸分子に関する。いくつかの態様において、本発明は、互いに会合してα4β7インテグリンへの結合特異性を有するヒト化免疫グロブリンを形成するヒト化免疫グロブリン重鎖およびヒト化免疫グロブリン軽鎖をコードする単離された核酸分子である。好ましくは、成熟ヒト化重鎖は、配列番号:1のヌクレオチド87〜1433のヌクレオチド配列を含む核酸にコードされ、成熟ヒト化軽鎖は、配列番号:3のヌクレオチド81〜737のヌクレオチド配列を含む核酸にコードされる。
【0068】
他の態様において、単離された核酸分子は、各々シグナルペプチドもまた含むヒト化免疫グロブリン重鎖およびヒト免疫グロブリン軽鎖をコードする。特定の態様において、単離された核酸分子は配列番号:2のアミノ酸配列を含むヒト化免疫グロブリン重鎖および配列番号:4のアミノ酸配列を含むヒト化免疫グロブリン軽鎖をコードする。より具体的には、単離された核酸分子は、配列番号:1の核酸配列を含むヒト化免疫グロブリン重鎖および配列番号:3の核酸配列を含むヒト化免疫グロブリン軽鎖をコードする。
【0069】
別の態様において、本発明は、α4β7インテグリンへの結合特異性を有するヒト化免疫グロブリンをコードする単離された核酸分子であり、ここで、単離された核酸は、ヒト化重鎖をコードする第1のヌクレオチド配列およびヒト化軽鎖をコードする第2のヌクレオチド配列を含む。具体的には、第1のヌクレオチド配列は配列番号:1のヌクレオチド87〜1433のヌクレオチド配列を含み、第2のヌクレオチド配列は配列番号:3のヌクレオチド81〜737のヌクレオチド配列を含む。
【0070】
別の態様において、本発明は、ヒト化免疫グロブリン軽鎖をコードする単離された核酸分子である。一態様において、単離された核酸分子は、配列番号:3のヌクレオチド81〜737のヌクレオチド配列を含む核酸にコードされるヒト化免疫グロブリン軽鎖をコードする。いくつかの態様において、単離された核酸分子は、シグナルペプチドを含むヒト化免疫グロブリン軽鎖をコードする。例えば、本発明の単離された核酸分子は、配列番号:4のアミノ酸配列を含むヒト化免疫グロブリン軽鎖をコードし得る。例えば、単離された核酸分子は、配列番号:3のヌクレオチド配列を含み得る。
【0071】
本発明はまた、本発明のヒト化免疫グロブリン(ヒト化軽鎖およびヒト化重鎖)またはヒト化軽鎖をコードする核酸を含む組換えベクター(例えば、哺乳動物細胞発現ベクター、CHO 発現ベクター(例えば、pLKTOK38D)などの発現ベクター)に関する。一態様において、組換えベクターは、任意に、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列をさらに含む。より具体的な態様では、本発明のヒト化免疫グロブリンまたはヒト化軽鎖は、pLKTOK38D などのCHO発現ベクターにコードされる。
【0072】
一態様において、組換えベクターは、配列番号:3のヌクレオチド81〜737のヌクレオチド配列を含むか、または配列番号:3のヌクレオチド配列を含む。
【0073】
いくつかの態様において、ヒト化免疫グロブリン軽鎖(例えば、配列番号:4のアミノ酸残基20〜238のアミノ酸配列を含むヒト化免疫グロブリン軽鎖)をコードする核酸を含む組換えベクターは、配列番号:2のアミノ酸残基20〜470のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖をコードする第2の核酸をさらに含む。かかる態様において、コードされた重鎖および軽鎖は互いに会合してα4β7インテグリンへの結合特異性を有するヒト化免疫グロブリンを形成し得る。任意に、第2の核酸コードされるヒト化重鎖は、シグナルペプチドをさらに含み得る。例えば、第2の核酸は、配列番号:1のヌクレオチド87〜1433のヌクレオチド配列を含み得るか、または配列番号:1のヌクレオチド配列を含む。
【0074】
他の態様において、組換えベクターは、α4β7インテグリンへの結合特異性を有するヒト化免疫グロブリンをコードする核酸を含み、ここで、単離された核酸は、ヒト化重鎖をコードする第1のヌクレオチド配列およびヒト化軽鎖をコードする第2のヌクレオチド配列を含む。好ましくは、第1のヌクレオチド配列は、配列番号:1のヌクレオチド87〜1433のヌクレオチド配列を含み、第2のヌクレオチド配列は、配列番号:3のヌクレオチド81〜737のヌクレオチド配列を含む。ある態様において、第1のヌクレオチド配列および第2のヌクレオチド配列は各々、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列をさらに含む。例えば、単離された核酸分子は、配列番号:1のヌクレオチド配列および配列番号:3のヌクレオチド配列を含み得る。
【0075】
α4β7インテグリンに特異性を有するヒト化免疫グロブリンの作製方法
本発明の別の局面は、α4β7インテグリンに結合特異性を有するヒト化免疫グロブリンの作製方法に関する。ヒト化免疫グロブリンは、例えば、適当な宿主細胞において、α4β7インテグリンに結合特異性を有するヒト化免疫グロブリンをコードする1つ以上の組換え核酸の発現によって作製され得る。
【0076】
α4β7インテグリンへの結合特異性を有するヒト化免疫グロブリンを産生する宿主細胞は、任意の適当な方法を用いて作製され得る。例えば、本明細書に記載の発現構築物(例えば、哺乳動物細胞発現ベクター)は、適当な宿主細胞内に導入され得、得られた細胞は、構築物(1つまたは複数)またはベクター(1つまたは複数)の発現に適した条件下に維持され得る(例えば、培養状態、動物内、植物内)。適当な宿主細胞は、大腸菌 (例えば、DH5αTM株(Invitrogen、Carlsbad、CA)、B. subtilisなどの細菌細胞および/または他の適当な細菌を含む原核生物;真菌もしくは酵母細胞(例えば、Pichia pastoris、Aspergillus sp.、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、Neurospora crassa)などの真核生物細胞、または他の下等真核生物細胞、および昆虫由来のもの(例えば、ショウジョウバエSchnieder S2細胞、Sf9昆虫細胞(WO 94/26087 (O'Connor))、哺乳動物(例えば、COS-1 (ATCC受託番号CRL-1650)およびCOS-7 (ATCC受託番号CRL-1651)、CHO (例えば、ATCC受託番号CRL-9096、CHO DG44 (Urlaub、G.およびChasin、LA.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、77(7):4216-4220 (1980)))などのCOS細胞、293 (ATCC受託番号CRL-1573)、HeLa (ATCC受託番号CCL-2)、CVl (ATCC受託番号CCL-70)、WOP (Dailey、L., et al、J. Virol、54:739-749 (1985)、3T3、293T (Pear、W. S., et al、Proc. Natl. Acad. ScL U.S.A.、90:8392-8396 (1993))NSO細胞、SP2/0、HuT 78 細胞などの高等真核生物の細胞または植物(例えば、タバコ)であり得る。(例えば、Ausubel、F.M. et al.編 Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Associates and John Wiley & Sons Inc. (1993)を参照)。いくつかの態様において、宿主細胞は、単離された宿主細胞であり、多細胞生物(例えば、植物または動物)の一部でない。好ましい態様において、宿主細胞は非ヒト宿主細胞である。
【0077】
本発明はまた、本発明のベクター(例えば、発現ベクター)を含む細胞に関する。例えば、α4β7インテグリンに結合特異性を有するヒト化免疫グロブリンの重鎖および軽鎖をコードする核酸(すなわち、1つ以上の核酸)、またはかかる核酸(1つまたは複数)を含む構築物(すなわち、1つ以上の構築物)は、核酸(1つまたは複数)が1つ以上の発現制御エレメントに作動可能に連結されるように選択した宿主細胞に適切な方法(例えば、形質転換、トランスフェクション、エレクトロポレーション、感染)によって適当な宿主細胞に導入され得る(例えば、ベクター内、細胞内プロセスによって作製され、宿主細胞ゲノムに組み込まれた構築物内)。宿主細胞は、発現に適した条件下(例えば、誘導物質の存在下、適切な塩、成長因子、抗生物質、栄養補給剤などを加えた適当な培地)に維持され得、それにより、コードされたポリペプチド(1つまたは複数)が作製される。所望により、コードされたタンパク質(例えば、ヒト化免疫グロブリン)は、例えば、宿主細胞、培養培地または乳汁から単離され得る。このプロセスは、トランスジェニック動物または植物(タバコ)の宿主細胞における発現を含む(例えば、WO 92/03918参照)。
【0078】
ヒト化免疫グロブリンまたは免疫グロブリン鎖が融合タンパク質のN末端位置、C末端位置または内部で非免疫グロブリン部分(すなわち、天然に見られる免疫グロブリンには生じない部分)に連結された融合タンパク質が作製され得る。例えば、いくつかの態様は、pETベクター(例えば、pET-15b、Novagen)、ファージベクター(例えば、pCANTAB 5 E、Pharmacia)、または他のベクター(例えば、pRIT2TプロテインA融合ベクター、Pharmacia)などの適当な発現ベクターへの免疫グロブリン配列をコードする核酸の挿入によって作製され得る。得られた構築物は、発現のために適当な宿主細胞に導入され得る。発現時、いくつかの融合タンパク質が、適当な親和性マトリックスによって細胞溶解物から単離または精製され得る(例えば、Current Protocols in Molecular Biology (Ausubel、F.M. et al編、第2巻、増刊26、pp.16.4.1-16.7.8 (1991)参照)。
【0079】
本発明は、本発明のヒト化免疫グロブリン(ヒト化軽鎖およびヒト化重鎖)またはヒト化軽鎖をコードする組換え核酸を含む宿主細胞に関する。例えば、いくつかの態様において、宿主細胞は、本明細書で言及する本発明の組換えベクター(例えば、発現ベクター、哺乳動物発現ベクター、CHO 発現ベクター、pLKTOK38D 発現ベクター)を含む。特定の態様において、宿主細胞は、CHO DG44などのCHO細胞である。
【0080】
本発明はまた、本明細書に記載する本発明の宿主細胞(例えば、本発明のヒト化免疫グロブリン(例えば、ヒト化軽鎖およびヒト化重鎖、ヒト化軽鎖のみ)をコードする1つ以上の組換え核酸を含む宿主細胞)を、ヒト化免疫グロブリンの発現に適切な条件下に維持することを含む、ヒト化免疫グロブリンの調製方法に関する。ヒト化免疫グロブリンまたはヒト化免疫グロブリンの軽鎖の発現ため、宿主細胞は、任意の適当な条件下に維持され得る。例えば、宿主細胞は、基材または懸濁液中で培養され得る。一態様において、宿主細胞は、適切な条件下に維持され、ヒト化免疫グロブリン鎖が発現され、ヒト化免疫グロブリンが産生される。いくつかの態様において、該方法は、ヒト化免疫グロブリンを単離する工程をさらに含む。
【0081】
治療方法および組成物
本発明は、(1)インビトロおよび/またはインビボでα4β7インテグリンに結合し得る;および/または(2)(a)結合機能(例えば、MAdCAM-1、フィブロネクチンおよび/またはVCAM-1に結合するα4β7インテグリンの能力)および/または(b)組織内の白血球の漸増および/または蓄積を含む白血球浸潤機能(例えば、腸粘膜組織へのリンパ球移動を阻害する能力)などのα4β7インテグリンの活性または機能を調節し得るヒト化免疫グロブリンを提供する。好ましくは、ヒト化免疫グロブリンは、インビトロおよび/またはインビボでα4β7に選択的に結合し得、α4β7媒介相互作用を阻害し得る。一態様において、ヒト化免疫グロブリンはα4β7インテグリンに結合し得、α4β7インテグリンのそのリガンド(例えば、MAdCAM-1、VCAM-1、フィブロネクチン)の1つ以上への結合を阻害し得、それにより、組織の白血球浸潤(組織内の白血球の漸増および/または蓄積を含む)を、好ましくは選択的に阻害する。かかるヒト化免疫グロブリンは、α4β7インテグリンを有する細胞の、腸関連組織、リンパ系器官または白血球(特にTもしくはB細胞などのリンパ球)を含む粘膜組織の血管内皮細胞への細胞接着をインビトロおよび/またはインビボで阻害し得る。特に好ましい態様では、ヒト化免疫グロブリンは、MAdCAM-1および/またはフィブロネクチンのα4β7の相互作用を阻害し得る。
【0082】
本発明のヒト化免疫グロブリンは、研究、診断および治療における適用を伴う種々のプロセスにおいて有用である。例えば、これは、α4β7インテグリンまたはそのバリアントを検出、単離および/または精製するため(例えば、アフィニティ精製または他の適当な方法によって)、ならびにα4β7インテグリンの構造(例えば、立体構造)および機能を研究するために使用され得る。
【0083】
本発明のヒト化免疫グロブリンはまた、診断適用(例えば、インビトロ、エキソビボ)において、または治療(予防を含む)適用においてα4β7インテグリン機能を調節するために使用され得る。
【0084】
例えば、本発明のヒト化免疫グロブリンは、試料(例えば、組織またはα4β7インテグリンを保有する細胞の炎症性滲出液、血液、血清、腸液などの体液)中のα4β7インテグリンのレベルを検出および/または測定するために使用され得る。例えば、試料(例えば、組織および/または体液)は、個体から得られ得、化学発光アッセイ、ラジオイムノアッセイおよび免疫組織学を含む酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)などの方法を含む、α4β7インテグリン発現を検出および/または測定するための適当な免疫学的方法が使用され得る。
【0085】
一態様において、α4β7インテグリンへのヒト化免疫グロブリンの特異的結合および形成される抗体-α4β7インテグリンの複合体の検出に適した条件下で、試料を本発明のヒト化免疫グロブリンと接触させることを含む、試料中の選択されたα4β7インテグリンの検出方法が提供される。該方法の適用において、ヒト化免疫グロブリンは、炎症性腸疾患(IBD)または他の状態およびα4β7の発現の増加(例えば、罹患組織において)間の関連性を検出するために、α4β7インテグリン反応性および/または発現(例えば、免疫組織学的に))について正常対炎症組織 (例えば、ヒト由来)を分析するために使用され得る。
【0086】
本発明のヒト化免疫グロブリンは、正常対炎症組織中のα4β7インテグリンの存在の評価の免疫学的方法を可能にし、それにより、疾患の存在、疾患進行および/または炎症性疾患における抗α4β7インテグリン療法の有効性が評価され得る。本発明のヒト化免疫グロブリンはまた、α4β7インテグリンの結合機能および/または白血球(例えば、リンパ球、単球)浸潤機能を調節(例えば、阻害(低下または抑制))するために使用され得る。例えば、リガンド(すなわち、1つ以上のリガンド)へのα4β7インテグリンの結合を阻害するヒト化免疫グロブリンが、組織 (組織内の白血球の漸増および/または蓄積を含む)、特に、MAdCAM-1分子を発現する組織の白血球(例えば、リンパ球、単球)浸潤と関連する疾患の治療における方法に従って投与され得る。
【0087】
かかる疾患を処置するため、有効量の本発明のヒト化免疫グロブリン(すなわち、1種類以上)が、個体(例えば、ヒトまたは他の霊長類などの哺乳動物)に投与される。例えば、胃腸管(腸関連内皮を含む)、他の粘膜組織、またはMAdCAM-1分子を発現する組織(例えば、小腸および大腸の粘膜固有層の小静脈などの腸関連組織;ならびに乳腺(例えば、乳汁分泌乳腺))の白血球浸潤と関連する疾患を含む、炎症性疾患が本発明の方法に従って処置され得る。同様に、MAdCAM-1を発現する細胞(例えば、内皮細胞)への白血球の結合の結果として生じる組織の白血球浸潤と関連する疾患を有する個体が本発明に従って処置され得る。
【0088】
特に好ましい態様において、結果的に処置され得る疾患としては、潰瘍性大腸炎、クローン病、回腸炎、セリアック病、非熱帯性スプルー、セロネガティブ関節症と関連する腸症、顕微鏡的もしくはコラーゲン蓄積大腸炎、好酸球性胃腸炎、または直腸結腸切除術および回盲吻合後に生じる回腸嚢炎などの炎症性腸疾患(IBD)が挙げられる。
【0089】
膵炎およびインスリン依存性真性糖尿病は、本発明の方法を用いて処置され得る他の疾患である。MAdCAM-1は、NOD(非肥満糖尿病)マウスならびにBALB/cおよびSJLマウスから膵外分泌(exocrine pancreas)におけるいくつかの管によって発現されることが報告されている。MAdCAM-1の発現は、報告によると、NODマウスの膵臓の炎症島内の内皮において誘導され、MAdCAM-1は、インスリン炎の初期にNOD島内皮によって発現された主なアドレシンであった(Hanninen、A.,et al、J. Clin. Invest.、92:2509-2515 (1993))。さらに、島内でα4β7を発現するリンパ球の蓄積が観察され、MAdCAM-1は、α4β7を介する炎症島の血管へのリンパ腫細胞の結合に関与していた(Hanninen、A., et al、J. Clin. Invest.、92:2509- 2515 (1993))。
【0090】
本発明の方法に従って処置され得る、粘膜組織と関連する炎症性疾患の例としては、乳腺炎(乳腺)、胆嚢炎、胆管炎または胆管周囲炎(総胆管および肝臓の周囲組織)、慢性気管支炎、慢性副鼻腔炎、喘息、および対宿主性移植片病(例えば、胃腸管内)が挙げられる。クローン病に見られるように、炎症は、しばしば、粘膜表面を超えて拡張され、したがって、過敏性肺炎、膠原病、サルコイドーシスおよび他の特発性状態などの腸線維症をもたらす肺の慢性炎症性疾患は、処置に従順であり得る。
【0091】
ヒト化免疫グロブリンは、α4β7インテグリンのそのリガンドへの結合を阻害する有効量で投与される。治療のためには、有効量は、所望の治療(予防を含む)効果を達成するのに充分なもの(α4β7インテグリン媒介性結合および/またはシグナル伝達を低下または抑制し、それにより、白血球の接着と浸潤および/または関連細胞応答を阻害するのに充分な量など)である。ヒト化免疫グロブリンは、単位用量または反復用量で投与され得る。投薬量は、当該技術分野で公知の方法によって決定され得、例えば、個体の年齢、感受性、耐性および全体的な健康状態に依存し得る。抗体の適当な投薬量は、約0.1mg/体重1kg〜約10.0mg/体重1kg/処置であり得る。特定の態様では、投与される用量は、約0.3mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kgまたは約10mg/kgである。
【0092】
該方法によれば、ヒト化免疫グロブリンは、単独または別の薬剤の組合せで個体(例えば、ヒト)に投与され得る。ヒト化免疫グロブリンは、さらなる薬剤の投与の前、一緒または後に投与され得る。一態様において、α4β7インテグリンのそのリガンドへの結合を阻害する1種類より多くのヒト化免疫グロブリンが投与される。別の態様において、抗MAdCAM-1、抗VCAM-1または抗ICAM-1抗体などの内皮リガンドへの白血球の結合を阻害するモノクローナル抗体が、本発明のヒト化免疫グロブリンに加えて投与される。また別の態様において、さらなる活性成分(例えば、スルファサラジンなどの抗炎症化合物、別の非ステロイド系抗炎症化合物、またはステロイド系抗炎症化合物)が、本発明のヒト化免疫グロブリンとともに投与され得る。
【0093】
必ずしも限定されないが、処置される疾患または状態に応じて、非経口(例えば、静脈内、動脈内、筋肉内、皮下注射)、経口(例えば、食事)、局所、吸入(例えば、気管支内、鼻腔内または経口吸入、鼻腔内滴剤)、または経直腸を含む種々の投与経路が使用され得る。非経口投与は好ましい投与様式である。
【0094】
製剤は、選択された投与経路(例えば、溶液、エマルジョン)に応じて異なる。投与されるヒト化抗体を含む適切な組成物は、生理学的に許容され得るビヒクルまたは担体中に調製され得る。組成物は、反復用量を含み得るか、または単位用量組成物であり得る。溶液またはエマルジョンのためには、適当な担体としては、例えば、生理食塩水および緩衝媒体を含む、水性またはアルコール性/水溶液、エマルジョンまたは懸濁液が挙げられる。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸化リンゲルまたは固定油が挙げられ得る。静脈内ビヒクルとしては、種々の添加剤、保存剤または液、栄養もしくは電解質補給物が挙げられ得る(一般的に、Remington's Pharmaceutical Sciences、第17版、Mack Publishing Co.、PA、1985を参照)。吸入のためには、該化合物は、可溶化され、投与のための適当なディスペンサー(例えば、アトマイザー、ネブライザーまたは加圧エーロゾルディスペンサー)に充填され得る。
【0095】
本発明はまた、α4β7を保有する第1の細胞とそのリガンドを保有する第2の細胞の相互作用の阻害方法に関する。一態様において、該方法は、第1の細胞を有効量の本発明のヒト化免疫グロブリンまたはヒト化軽鎖と接触させることを含む。
【0096】
本発明はまた、粘膜組織の白血球浸潤の阻害方法に関する。一態様において、該方法は、患者に有効量の本発明のヒト化免疫グロブリンまたはヒト化軽鎖を投与することを含む。
【0097】
本発明はまた、癌(例えば、リンパ腫などのα4β7陽性腫瘍)の処置方法に関する。一態様において、該方法は、患者に有効量の本発明のヒト化免疫グロブリンまたはヒト化軽鎖または免疫コンジュゲートを投与することを含む。
【0098】
本発明はまた、MAdCAM-1分子を発現する組織の白血球浸潤と関連する疾患処置方法に関する。該方法は、有効量の本発明のヒト化免疫グロブリンまたはヒト化軽鎖を、その必要がある患者に投与することを含む。特定の態様において、疾患は、乳腺炎、慢性副鼻腔炎または対宿主性移植片病である。いくつかの態様において、疾患は、MAdCAM-1分子を発現する腸関連内皮へのα4β7インテグリンを発現する白血球の結合の結果として組織の白血球浸潤と関連する疾患である。特定の態様において、疾患は、胃炎(例えば、好酸球性胃炎)、膵炎、インスリン依存性真性糖尿病、胆嚢炎、胆管炎、胆管周囲炎である。
【0099】
本発明はまた、患者の炎症性腸疾患の処置方法に関する。一態様において、該方法は、患者に有効量の本発明のヒト化免疫グロブリンまたはヒト化軽鎖を投与することを含む。いくつかの態様において、炎症性腸疾患は潰瘍性大腸炎またはクローン病である。他の態様において、炎症性腸疾患は、セリアック病、セロネガティブ関節症と関連する腸症、顕微鏡的もしくはコラーゲン蓄積大腸炎、胃腸炎(例えば、好酸球性胃腸炎)、または回腸嚢炎である。
【0100】
本明細書に引用したすべての文献の全教示は、参照により本明細書に援用される。
【実施例】
【0101】
次に、本発明を以下の実施例によって説明する。実施例は、いかなる様式においても限定は意図されない。
【0102】
実施例1 α4β7に結合するヒト化Act-1抗体
マウスAct-1抗体のCDRを含み、α4β7インテグリンに結合するヒト化免疫グロブリン(本明細書においてMLN02ともいう)を作製した。ヒト化免疫グロブリンの重鎖は、補体を固定する能力を低下させるFc部分に変異を含む(配列番号:2)。ヒト化免疫グロブリンの成熟軽鎖のアミノ酸配列(配列番号:4のアミノ酸残基20〜238)を図3に示す。図3に示すように、MLN02のヒト化軽鎖のアミノ酸配列は、マウスAct-1抗体のCDRを含む別のヒト化抗体のヒト化軽鎖(本明細書においてLDP-02という、WO 98/06248参照)のアミノ酸配列と異なる。特に、MLN02およびLDP-02のアミノ酸配列は、成熟タンパク質の114位および115位(それぞれ、配列番号:4のアミノ酸残基133および134、ならびに配列番号:5のアミノ酸残基114および115)で異なる。MLN02およびLDP-02間のアミノ酸の違いの位置は、κ軽鎖の定常領域のアミノ酸2位および3位に対応する(図4)。
【0103】
ヒト(ホモサピエンス)κ軽鎖(配列番号:6)およびマウス(Mus musculus)κ軽鎖(配列番号:7)の定常領域の整列に示されるように、アミノ酸残基ThrおよびVal(これらはMLN02に存在する)は、ヒトκ軽鎖の定常領域に存在するが、アミノ酸残基AlaおよびAsp(これらはLDP-02に存在する)は、マウスκ軽鎖の定常領域に存在する(図4)。したがって、MLN02のヒト化軽鎖(例えば、配列番号:4のアミノ酸残基20〜238)は、LDP-02の軽鎖よりもヒト系である。
【0104】
ヒト化免疫グロブリンが天然のヒト免疫グロブリンに似ている程度は、ヒトに投与された場合にヒト化免疫グロブリンに指向される免疫応答(例えば、ヒト抗ヒト化抗体(HAHA)応答)の大きさと関連する。ELAHA応答 は、ヒト化免疫グロブリンの有効性を制限、低下または排除し得る。ヒト化免疫グロブリンMLN02は、LDP-02よりもヒト系であり、したがって、ヒト化免疫グロブリンの有効性を制限、低下または排除し得るHAHA応答がもたらされるリスクがより少なくヒトに投与され得る。
【0105】
ヒト化抗体MLN02をコード(MLN02のヒト化重鎖およびヒト化軽鎖をコードする)し、CHO細胞内でのMLN02の発現に適したpLKTOK38Dベクター(pTOK38MLN02-TVともよばれる)(図5)を含む大腸菌株を、ブダペスト条約の規定の下、2005年11月10日に、Millennium Pharmaceuticals、Inc.、75 Sidney Street、Cambridge、Massachusetts 02219、U.S.A.を代表してAmerican Type Culture Collection、10801 University Boulevard、Manassas、Va. 20110-2209、U.S.A.に受託番号PTA-7213で寄託した。
【0106】
実施例2 結合データ
AlamarBlue(登録商標)(細胞成長および細胞傷害性インジケータ色素、Trek Diagnostic Systems)、α4β7インテグリン発現RPMI-8866細胞(ヒトB細胞リンパ腫)、およびヒトIgG1のFc領域(すなわち、ヒトIgG1のCH2およびCH3)と融合させたヒトMAdCAM-1の全細胞外ドメインを含むMAdCAM-1キメラを用い、ヒト可溶性MAdCAM-1へのα4β7の結合を阻害するMLN02の能力を評価した。
【0107】
MAdCAM-FcをPBS中で2μg/mlに希釈し、100μlの溶液を96ウェルアッセイプレートのウェル添加した。プレートを密閉し、4℃で1〜3日間維持した。アッセイの日、MAdCAM-Fcコーティング溶液を、プレートのウェルから取り出し、150μlのブロックバッファーを各ウェルに添加した。次いで、プレートをCO2オーブン内で1時間37℃に維持した。次いで、ブロック溶液をウェルから取り出し、プレートをパーパータオル上にブロット乾燥させた。50μlの試験される連続希釈抗体(例えば、MLN02、LDP-02)をアッセイプレートの内部の60ウェルに添加し、次いで、50μlのRPMI-8866細胞(4×106細胞/mlで)を各ウェルに添加した。プレートをプレートの蓋で覆い、回転式攪拌機で1〜2分間静かに攪拌した。次いで、プレートをCO2オーブン内で1時間37℃でインキュベートし、次いで、手持ち型真空吸引器を用いて溶液をウェルから除去した。200μlのPBSを各ウェルの側面に添加し、吸引によって未結合細胞を除去することによりウェルを洗浄し(ウェルの底面の細胞層を乱すことなく)、プレートを180°回転させ、もう一度洗浄した。20% Alamar Blueを各ウェルに添加し、プレートをプレートの蓋で覆い、37℃のCO2オーブンに3時間戻した。次いで、プレートを蛍光プレートリーダーの530nm/590nmで読み、ウェルに固定化したMAdCAM-Fcに接着した細胞の量に比例する相対蛍光単位(RFU)を得た。
【0108】
結果は、NSO細胞(LDP-02 NSO)において産生されたLDP-02およびCHO細胞株の2つの異なるクローン(MLN02 CHO10.21およびMLN02CHO24.9A)によって産生されたMLN02が、類似した効力を有する固定されたMAdCAM-1へのRPMI-8866細胞の接着を阻害したことを示す(図6)。α4β7に結合しない対照抗体(ML 1202)は、アッセイにおいてRPMI-8866細胞の接着を阻害しなかった。
【0109】
LDP-02は、ACT-I抗体よりも高い親和性でα4β7に結合する(WO 98/06248の実施例4Bを参照)。したがって、MLN02がLDP-02と実質的に同じ効力でα4β7に結合することを示す結合アッセイの結果は、MLN02がまた、ACT-I抗体よりも高い親和性でα4β7に結合することを示す。
【0110】
実施例3 MLN02の生化学的および生物物理学的特性
MLN02の生化学的および生物物理学的特性付けを、MLN02のヒト化軽鎖およびヒト化重鎖をコードする発現ベクター(pLKTOK38D)を含むCHO細胞において産生されたMLN02を用いて行なった。異なるCHO細胞クローンによって産生されたMLN02のいくつかの試料(試料32A、10-27A、10-21、8-18A、10-27-4、24-9A)を作製した。また、いくつかの参照標準を調製した(ware prepared)。
【0111】
LDP-02参照標準(これは、NSO細胞を用いて産生されたLDP-02を含んだ)を、125mM 塩化ナトリウムを含有する20mMクエン酸ナトリウム、pH6.0に配合し、LDP-02の最終濃度は4.6mg/mLであった。
【0112】
LDP-02参照標準(これは、CHO細胞を用いて産生されたLDP-02を含んだ)を、90mMリン酸塩、200mMアルギニンおよび0.02% Tween-20(pH6.3)に配合し、LDP-02の最終濃度は56.8mg/mLであった。この参照標準をADB-MLN02-04-002という。
【0113】
LDP-02参照標準(これは、CHO細胞を用いて産生されたLDP-02を含んだ)を、125mM塩化ナトリウムを含有する20mMクエン酸ナトリウム、pH6.0に配合した。この参照標準を2353という。
【0114】
1. サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)
Waters HPLCシステム上でTosoh Biosep G3000 SWXLカラムを用い、SECによって試験試料を解析した。この方法は、凝集物、分解産物ならびに他の産物-および非産物関連種からの抗体モノマーの分離を可能にした。簡単に、100μgの試験試料をカラムに注入し、0.5mL/分の流速を用いてpH6.8の定組成リン酸塩-塩化ナトリウムバッファー系で溶出した。タンパク質種の溶出を280nmでモニターし、純度を決定するために総ピーク面積を評価した。
【0115】
試料タンパク質の分析は、任意の試料で測定されたモノマーのパーセントにおいてほとんど差はなかったことを示した(表1)。表1は、2つの独立したアッセイで得られた(obtain)結果を示す。標準(参照試料)が各アッセイに含まれ、アッセイ間の保持時間の比較は行なわなくてよかった。しかしながら、参照試料およびMLN02試料間の保持時間の差は各アッセイで一定であった。そのままのモノマーのパーセントは、CHO産生タンパク質において、参照標準ADB-MLN02-04-002における99.59%に相当する98.55〜99.64%で異なった。注目された差の1つは、いくつかのCHOクローンによって産生されたそのままのモノマーの保持は、一貫して、NSO細胞において産生された参照LDP-02試料またはCHO細胞を用いて産生されたいずれかのLDP-02参照標準よりも0.07〜0.08分間遅いことであった。この差は、上記のMLN02およびLDP-02のアミノ酸配列の違いに起因し、MLN02がLDP-02よりもコンパクト(compact that)であることを示唆する。

【0116】
2. SDS-PAGE
存在(identity)の確立を補助し、第1の調製物を特性付けし、純度を評価するため、MLN02試験試料を非還元および還元条件下でドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)に供した。還元条件下では、4〜20%ポリアクリルアミドTris-グリシンゲルを用いてMLN02の試験試料を解析した。非還元条件下では、4〜12%ポリアクリルアミドTris-グリシンゲルを用いてMLN02の試験試料を解析した。
【0117】
すべてのCHO細胞産生MLN02試料を、参照標準(ABD-MLN02-04-002)との比較において、還元および非還元条件下でSDS-PAGEによって解析した。ABD-MLN02-04-002参照標準を以前にLDP-02参照標準と比較し、還元条件下での結果は実質的に同じであった。非還元条件下では、微量の種(総量の<3%)がABD-MLN02-04-002において同定されたが、LDP-02参照標準には存在しなかった。
【0118】
還元条件下では、CHOクローンによって産生されたMLN02は、重鎖および軽鎖に相当するおよそ50,000ダルトンおよびおよそ28,000ダルトンの2つの主なバンド領域に分離した。CHOクローンによって産生されたMLN02について重鎖および軽鎖の測定された強度は、参照標準(ABD-MLN02-04-002)での91.2%および96.4%の独立した測定と比較して、総合バンド密度の85.2%〜96.4%であることがわかった。さらなる小さなバンドがいくつかの試料に存在したが、それらの相対パーセントは、すべての場合で2%未満であった。
【0119】
非還元条件下では、そのままのIgGに相当するおよそ172,000ダルトンおよび154,000ダルトンの分子量の1つの主要なバンドおよび1つの小さなバンドがMLN02に存在した。参照標準(ABD-MLN02-04-002)でのそのままのIgGの測定された強度は、2つの独立した測定において78.1%および85.5%であった。CHO細胞クローンによって産生されたMLN02について測定された値は79.8〜84.1%であった。微量の高分子量凝集物がCHO細胞クローンによって産生された試料10-27A、8-18A、10-21、10-27-4および24-9Aにおいて検出されたが、他の種は微量であり、同等の量が参照標準(ABD-MLN02-04-002)およびCHOクローンによって産生されたMLN02において検出された。
【0120】
3. 等電点電気泳動法
6.0〜10.5のpH勾配でアガロースゲルを用い、等電点電気泳動法(IEF)によって本発明の試験試料を解析した。得られた結果をIEF標準と比較した。
【0121】
CHO細胞クローンによって産生されたMLN02の全pI範囲は、7.66〜8.00であることがわかり、個々の試料でほんの少しの変動があった。比較において、CHO細胞によって産生されたLDP-02参照標準(ADB-MLN02-04-002)についてより酸性範囲の7.62〜7.85、およびクローン2353によって産生されたLDP-02参照標準について7.59〜7.89を観察した。
【0122】
CHO細胞において産生されたLDP-02 試料でのpIプロフィールは同様であることがわかり、個々の種分布においてほんの少し差があった。CHO細胞産生標準ADB-MLN02-04-002およびNSO細胞において産生されたLDP-02標準の比較により、種分布におけるより大きな変動が明らかになったが、全pI範囲は類似することがわかった。観察されたわずかな差は、脱アミド化および他の分解プロセスがpI値を改変することが知られているため、NSOにおいて産生されたADB-MLN02-04-002標準およびLDP-02標準の世代(age)によるものであり得る。
【0123】
一次アミノ酸配列に基づいて、NSO細胞において産生されたLDP-02について予測されたpIは7.9であり、MLN02について予測されたpIは8.09であった。NSO細胞を用いて産生されたLDP-02に対し、MLN02において観察されたpIシフトは、ヒト化抗体の軽鎖の異なるアミノ酸配列、特にMLN02の位置134のVと一致する。
【0124】
4. グリコシル化パターン
LDP-02参照標準およびMLN02試料の炭水化物プロフィールを、逆相HPLCによる遊離の蛍光標識炭水化物の分離によって作成した。簡単に、PNGaseFでの一晩の消化によってそのままのグリカンを本発明のタンパク質試料(100μg)から放出させ、適切なバッファー系に交換し、次いで、その還元末端を2-アミノベンズアミド(2-AB)で標識した。アセトニトリル/ギ酸アンモニウムバッファー系を用いたProzyme GlykoSep Nカラムを用い、標識されたグリカンをWaters HPLCシステム上で分画した。次いで、420nmでの蛍光発光によって検出した。個々の炭水化物部分を保持時間を炭水化物標準で得られた従来の結果と比較することによって、ならびにα4β7に結合しない充分特性付けされたヒト化抗体から一時的に同定した。
【0125】
CHOクローンによって産生されたLDP-02およびMLN02試料の炭水化物プロファイリングは、細胞株の製造に起因すると思われるいくつかの明白な変化を示した(表2)。NSO発現LDP-02と比べたこれらの試料におけるより複雑な糖形態(GIF、G2F、G2S1)のレベルの減少は、特に興味深かった。NSO発現LDP-02タンパク質におけるこれらの3種類種の総量はおよそ73%であった。
【0126】
CHO細胞を用いて産生されたLDP-02またはMLN02タンパク質は、GOFオリゴ糖で主にグリコシル化され(ガラクトシル化、コアフコシル化(fucosylated)バイアンテナ(biantennary)型複合体)、観察された全糖形態の58%〜76%を占めた。GIF種(モノガラクトシル化コアフコシル化バイアンテナ型複合体)は、総グリカンの15〜30%のみを占め、G2F(ジガラクトシル化コアフコシル化バイアンテナ型複合体)種は、試験した全試料の5%未満を占めた。微量のさらなる未確認種が存在した。
【0127】
細胞培養条件は、MLN02糖形態において観察された差に小さな役割を果たしたかもしれないが、細胞型がより有意に炭水化物プロフィールに影響した。

【0128】
5. ペプチドマッピング
LDP-02標準およびMLN02試料を変性条件下pH8.7で還元し、次いで、ヨード酢酸で処理して遊離チオール基をブロックした。次いで、試料を脱塩し、トリプシンで消化し、得られたペプチドを、水/アセトニトリル/TFA勾配を用いてC18カラム上で分離し、215nmで検出した。両方の試料における主要ピークの保持時間を同定することにより、MLN02試料プロフィールをLDP-02参照標準と比較した。
【0129】
CHO細胞クローンによって産生されたMLN02のペプチドマッピングの結果は、該タンパク質が、NSO細胞において産生されたLDP-02参照標準にほぼ同等であることを示した。しかしながら、マップ上に、LDP-02参照と明白に異なるいくつかのピークが同定された。特に、CHO細胞クローンによって産生されたMLN02試料の一部または全部において、マップ上のおよそ39、58、95および105分の位置にプロフィールにおける違いが見られた。最も顕著な変化は、CHOクローンによって産生されたすべてのMLN02試料に存在するが、同じくCHO細胞における発現によって産生されたLDP-02参照試料2353には見られないおよそ105分の保持時間を中心に広がる新たなピークの出現であった。これは、MLN02試料およびLDP-02 試料に見られる違いが、おそらくヒト化抗体の軽鎖のアミノ酸配列の違いによることを示す。
【0130】
実施例4 カニクイザルにおける薬物動態/薬力学
この研究は、LDP-02およびMLN02を比較するための薬物動態/薬力学的(PK/PD)情報を提供するために行なった。簡単に、4匹の雄試験動物(カニクイザル、Macaca fascicularis、3〜5kg)の2つの群に、LDP-02(NSO細胞株を用いて産生)またはMLN02 (CHO細胞株を用いて産生) のいずれかを10mg/kgの用量で投与した。試験物質を試験動物に、第1日目におよそ30分間にわたって静脈内(IV)注入によって投与し、次いで、第4、8、11および15日目におよそ1分間にわたって低速ボーラスIVによって投与した。血液試料を投与前第1日目、注入終了時、次いで、注入終了1、2、4、8、10、24および48時間後に回収した。さらなる血液試料を投与前の第4、8および11日目および投与0.5時間後に回収した。第15日目、血液試料を投与前、注入終了0.5、1、2、4、8、10、24、48、72および168時間後に回収した。血液試料を遠心分離し、PK試験のために血清を4等分量(aliquot)(約50μL)して取り出した。
【0131】
サンドイッチELISAアッセイを用いて、LDP-02およびMLN02の血清濃度を測定した。LDP-02およびMLN02に結合するマウス抗体を固定し、血清試料からLDP-02またはMLN02を捕捉するために使用した。ホースラディッシュペルオキシダーゼで標識したマウス抗ヒトIgG抗体を用いて捕捉されたLDP-02またはMLN02を検出した。
【0132】
フローサイトメトリーを用い、細胞の表面上のα4β7に結合されたヒト化抗体または細胞の表面上のα4β7部位の数定性的測定値を得た。
【0133】
結合された抗体の測定のため、血液試料の2つの90μl等分量を使用した。等分量を別々のチューブ(チューブ1およびチューブ2)に入れ、各々を、PBS/0.1% BSAを用いて2回洗浄した。チューブ1の細胞を、CD4、CD8に結合する抗体、ならびにMLN02およびLDP-02に結合して検出するロバ抗ヒトIgG2次抗体で染色した。チューブ2の細胞を、CD4、CD8に結合する抗体およびコントロールIgGで染色した。各チューブの細胞を染色抗体とともに30分間室温でインキュベートした。次いで、チューブ内の赤血球を溶解し、蛍光活性化フローサイトメーターで解析する前に白血球を固定した。このアッセイを使用し、CD4+またはCD8+細胞の表面のα4β7に結合されたヒト化抗体の量の定性的測定値を得た。
【0134】
同様のアッセイを用いてヒト化抗体に結合されていないα4β7部位を検出した。この場合も、血液試料の2つの90ml等分量を使用した。等分量を別々のチューブ(チューブ1およびチューブ2)に入れた。チューブ1の細胞をCD3、CD4、CD8に結合する抗体および標識MLN02(alexa 647で標識)で染色した。チューブ2の細胞を、CD3、CD4およびCD8に結合する抗体で染色した。各チューブの細胞を染色抗体とともに30分間室温でインキュベートした。次いで、チューブ内の赤血球を溶解し、蛍光活性化フローサイトメーターで解析する前に白血球を固定した。このアッセイを使用し、ヒト化抗体に結合されていないCD4+またはCD8+細胞の表面のα4β7の量の定性的測定値を得た。
【0135】
PK(LDP-02およびMLN02の血清濃度)データは、LDP-02およびMLN02を投与された動物の曝露(濃度時間曲線下面積;AUC)が、実質的に類似するが、AUCはLDP-02で若干大きいことを示した(表3)。

【0136】
PD試験は、無CD4+部位、CD4+結合LDP-02またはMLN02、無CD8+部位、およびCD8+結合LDP-02またはMLN02の定性的測定値を提供した。これらの研究では、細胞表面に結合されたLDP-02もしくはMLN02の定性的測定値を示したか、またはLDP-02もしくはMLN02に結合されていないα4β7部位の相対数を測定した。得られたデータは、LDP-02またはMLN02のいずれかを用いた良好な飽和および受容体占有を示した(図7A〜12B)。
【0137】
さらに、カニクイザルにおける中和抗体(霊長類抗ヒト化抗体抗体)の開発の潜在性が存在することが測定された。これは、カニクイザルに投与されるとヒト化抗体が外来タンパク質(外因性)であることから予測された。
【0138】
結果は、LDP-02およびMLN02の薬力学的および薬物動態プロフィールがほぼ同じであることを示した。この霊長類研究において、LDP-02およびMLN02の間に免疫原性プロフィールにほとんど差はなかった。
【0139】


寄託された微生物または他の生物材料に関する表示
(補助紙面)
C.補助表示(続き)
本PCT出願におけるオーストラリアの指定に関して、およびオーストラリア特許規則の規則3.25条3項に従って、出願人はここで、受託番号PTA−3663およびPTA−7213でAmerican Type Culture Collectionに寄託される生物材料の試料の分譲が、特許の付与前、または本願の消滅、拒絶もしくは取下げ前に、本発明に関係のない当業者、および試料の分譲の請求に指定された者に実施されるに過ぎないことを通知する。
本PCT出願におけるカナダの指定に関して、出願人はここで、カナダ特許が出願に基づいて発行されるか、または本願が拒絶されるか、または放棄されて回復しないか、または取り下げられるまで、特許庁長官だけが、受託番号PTA−3663およびPTA−7213でAmerican Type Culture Collectionに寄託され、本願に参照される生物材料の試料の分譲を、長官が指定した独立した専門家に認可することを要請することを国際事務局に通知する。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】図1は、本明細書中でMLN02と呼ばれるヒト化免疫グロブリンの重鎖をコードするヌクレオチド配列(配列番号:1)、および重鎖の推定アミノ酸配列(配列番号:2)の例示である。該ヌクレオチド配列は、重鎖の5'末端にクローニング配列(小文字)、Kozak配列(大文字、配列番号:1のヌクレオチド18〜23)およびリーダー配列(小文字、配列番号:1のヌクレオチド24〜86)を含む。ヌクレオチド配列のオープンリーディング配列は配列番号:1のヌクレオチド24〜1433である。
【図2】図2は、本明細書中でMLN02と呼ばれるヒト化免疫グロブリンの軽鎖をコードするヌクレオチド配列(配列番号:3)、および軽鎖の推定アミノ酸配列(配列番号:4)の例示である。該ヌクレオチド配列は、重鎖の5'末端にクローニング配列(小文字)、Kozak配列(大文字、配列番号:3のヌクレオチド18〜23)およびリーダー配列(小文字、配列番号:3のヌクレオチド24〜80)を含む。ヌクレオチド配列のオープンリーディング配列は配列番号:3のヌクレオチド24〜737である。
【図3】図3は、(A)本明細書中でMLN02と呼ばれるヒト化免疫グロブリンの成熟ヒト化軽鎖(配列番号:4のアミノ酸20〜238)、および(B)本明細書中でLDP-02と呼ばれるヒト化免疫グロブリン(配列番号:5)の成熟ヒト化軽鎖のアミノ酸配列のアライメントである。(LDP-02に関して、国際公開公報98/06248およびFeagan et al., N. Eng. J. Med. 352:2499-2507 (2005)を参照のこと。Feagan et alは、LDP-02の臨床試験を記載しているが、該論文中で彼らはLDP-02をMLN02と呼んでいる。)該アライメントにより、MLN02およびLDP-02の軽鎖のアミノ酸配列は成熟軽鎖の114位および115位で異なることが示される。
【図4】図4は、(A)ヒトκ軽鎖定常領域(配列番号:6)および(B)マウスκ軽鎖定常領域(配列番号:7)のアミノ酸配列のアライメントである。アミノ酸残基ThrおよびVal(成熟MLN02軽鎖の114位および115位(配列番号:4アミノ酸133および134)に存在する)は、ヒトκ軽鎖の定常領域に存在するが、アミノ酸残基AlaおよびAsp(成熟LDP-02軽鎖(配列番号:5)の114位および115位に存在する)は、マウスκ軽鎖の定常領域に存在する。該アライメントにより、MLN02のヒト化はLDP-02の軽鎖よりもヒトに近いものであることが示される。
【図5】図5は、MLN02のヒト化重鎖およびヒト化軽鎖をコードし、CHO細胞におけるMLN02の産生に適しているベクターpLKTOK38D(pTOK38MLN02- TVともいう)のマップである。(pLKTOK38を開示する米国特許公開公報2004/0033561 A1を参照。pLKTOK38Dはマップ上に示される制限部位が軽鎖可変領域をコードする配列の隣に位置するpLKTOK38のバリアントである。)
【図6】図6は、MLN02およびLDP-02が、同様の効力でα4β7発現RPMI-8866細胞の固定されたMAdCAM-1への接着を阻害することを示す接着アッセイの結果を図示するグラフおよび表である。該アッセイを用いて異なるCHO細胞クローン(MLN02 CHO10.21(CHO10.21)およびMLN02 CHO24.9A(CHO24.9A))により産生されたMLN02、ならびにNSO細胞(LDP-02 NSO(NS06868.4))により産生されたLDP-02の2種類の調製物を試験した。
【図7】図7Aおよび7Bは、LDP-02(図7A)またはMLN02(図7B)を投与されたカニクイザルのCD4+細胞の表面のα4β7に結合した、LDP-02(図7A)またはMLN02(図7B)の定量的な量を示すグラフである。血液試料はLDP-02またはMLN-02の投与前にカニクイザルから得られ、LDP-02またはMLN-02に結合される血中の細胞上α4β7部位の量が測定された。結果はLDP-02およびMLN-02によるα4β7の良好な飽和を示す。MLN02を投与されたある動物(2003)はPAHA応答を発生させ、アッセイの最終の時点でα4β7飽和の低下を示した。
【図8】図8Aおよび8Bは、LDP-02(図7A)またはMLN02(図7B)を投与されたカニクイザルのCD4+細胞の表面の、LDP-02(図7A)またはMLN02(図7B)とは結合しなかったα4β7α4β7部位の相対数を示すグラフである。血液試料はLDP-02またはMLN-02の投与前にカニクイザルから得られ、LDP-02またはMLN-02に結合されなかった血中の細胞上α4β7部位の量が測定された。試験の開始前に得られた血液試料中のCD4+細胞上の遊離α4β7部位の量を含む結果により、LDP-02またはMLN-02投与後の遊離α4β7部位の相対量の劇的な減少が示される。これらの結果により、LDP-02およびMLN-02によりα4β7の良好な飽和が達成されたことが明らかにされた。MLN02を投与されたある動物(2003)はPAHA応答を発生させ、アッセイの最終の時点でのα4β7飽和の減少を示した。
【図9】図9Aおよび9Bは、図8Aおよび8Bを予備試験のデータ無しに再度プロットしたグラフである。これらのグラフは、試験経過の際のCD4+細胞上の遊離α4β7部位の相対量のより詳細な考察を提供する。これらの結果により、α4β7の良好な飽和がLDP-02およびMLN02によりなされることが明らかにされる。MLN02を投与されたある動物(2003)は、PAHA応答を発生させ、アッセイの最終の時点でのα4β7の飽和の減少が示された。
【図10】図10Aおよび10Bは、LDP-02(図10A)またはMLN02(図10B)を投与されたカニクイザルのCD8+細胞の表面上のα4β7に結合するLDP-02(図10A)またはMLN02(図10B)の定量的な量を示すグラフである。血液試料は、LDP-02またはMLN-02の投与前のカニクイザルから得られ、LDP-02またはMLN02に結合された血中の細胞上のα4β7部位の量が測定される。結果により、LDP-02およびMLN-02によるα4β7の良好な飽和が示される。MLN02を投与されたある動物(2003)は、PAHA応答を発生し、アッセイの最終の時点でのα4β7の飽和の減少を示した。
【図11】図11Aおよび11Bは、LDP-02(図11A)またはMLN02(図11B)を投与されたカニクイザルのCD8+細胞表面上の、LDP-02(図11A)またはMLN02(図11B)とは結合しなかったα4β7部位の相対数を示すグラフである。血液試料はLDP-02またはMLN-02を投与する前のカニクイザルから得られ、LDP-02またはMLN-02に結合されなかった血中の細胞上α4β7の量が測定された。試験の開始前に得られた血液試料中のCD4+細胞上の遊離α4β7の量を含む結果により、遊離α4β7の相対量が、LDP-02またはMLN-02の投与後に劇的に減少することが示された。これらの結果により、α4β7の良好な飽和は、LDP-02およびMLN-02によりなされることが明らかになる。MLN-02を投与されたある動物(2003)はPAHA応答を発生し、アッセイの最終の時点でα4β7飽和の減少が示された。
【図12】図12Aおよび12Bは、図11Aおよび11Bに示されるデータを予備試験のデータ無しで再度プロットしたグラフである。これらのグラフは、試験経過中のCD4+細胞上の遊離α4β7部位の相対量のより詳細な考察を提供する。これらの結果により、α4β7の良好な飽和はLDP-02およびMLN-02により達成されることが明らかにされる。MLN-02を投与されたある動物(2003)はPAHA応答を発生し、アッセイの最終の時点でα4β7飽和の減少を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:2のアミノ酸残基20〜470のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖ならびに配列番号:4のアミノ酸残基20〜238のアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖を含む、α4β7インテグリンへの結合特異性を有するヒト化免疫グロブリン。
【請求項2】
前記ヒト化重鎖が、配列番号:1のヌクレオチド87〜1433のヌクレオチド配列を含む核酸にコードされ、前記ヒト化軽鎖が、配列番号:3のヌクレオチド81〜737のヌクレオチド配列を含む核酸にコードされる、請求項1記載のヒト化免疫グロブリン。
【請求項3】
検出可能な標識をさらに含む、請求項1記載のヒト化免疫グロブリン。
【請求項4】
ヒト化免疫グロブリン重鎖およびヒト化免疫グロブリン軽鎖をコードする単離された核酸であって、前記ヒト化免疫グロブリン重鎖および前記ヒト化免疫グロブリン軽鎖が互いに会合してα4β7インテグリンへの結合特異性を有するヒト化免疫グロブリンを形成し、
前記ヒト化免疫グロブリン重鎖が配列番号:2のアミノ酸残基20〜470のアミノ酸配列を含み、前記ヒト化免疫グロブリン軽鎖が配列番号:4のアミノ酸残基20〜238のアミノ酸配列を含む、核酸。
【請求項5】
前記単離された核酸が、前記ヒト化重鎖をコードする第1のヌクレオチド配列および前記ヒト化軽鎖をコードする第2のヌクレオチド配列を含み、前記第1のヌクレオチド配列が配列番号:1のヌクレオチド87〜1433のヌクレオチド配列を含み、前記第2のヌクレオチド配列が配列番号:3のヌクレオチド81〜737のヌクレオチド配列を含む、請求項4記載の単離された核酸。
【請求項6】
配列番号:4のアミノ酸残基20〜238のアミノ酸配列を含むヒト化免疫グロブリン軽鎖。
【請求項7】
請求項6記載のヒト化免疫グロブリン軽鎖をコードする単離された核酸。
【請求項8】
請求項6記載のヒト化免疫グロブリン軽鎖をコードする核酸を含む組換えベクター。
【請求項9】
前記核酸が配列番号: 3のヌクレオチド81〜737のヌクレオチド配列を含む、請求項8記載の組換えベクター。
【請求項10】
配列番号:2のアミノ酸残基20〜470のアミノ酸配列を含むヒト化免疫グロブリン重鎖をコードする第2の核酸をさらに含む、請求項8記載の組換えベクター。
【請求項11】
前記第2の核酸が配列番号:1のヌクレオチド87〜1433のヌクレオチド配列を含む、請求項10記載の組換えベクター。
【請求項12】
ヒト化免疫グロブリン重鎖およびヒト化免疫グロブリン軽鎖をコードする核酸を含む組換えベクターであって、前記ヒト化免疫グロブリン重鎖および前記ヒト化免疫グロブリン軽鎖が互いに会合してα4β7インテグリンへの結合特異性を有するヒト化免疫グロブリンを形成し、前記ヒト化免疫グロブリン重鎖が配列番号:2のアミノ酸残基20〜470のアミノ酸配列を含み、前記ヒト化免疫グロブリン軽鎖が配列番号:4のアミノ酸残基20〜238のアミノ酸配列を含む、組換えベクター。
【請求項13】
前記単離された核酸が前記ヒト化重鎖をコードする第1のヌクレオチド配列および前記ヒト化軽鎖をコードする第2のヌクレオチド配列を含み、前記第1のヌクレオチド配列が配列番号:1のヌクレオチド87〜1433のヌクレオチド配列を含み、前記第2のヌクレオチド配列が配列番号:3のヌクレオチド81〜737のヌクレオチド配列を含む、請求項12記載の組換えベクター。
【請求項14】
請求項7記載の単離された核酸を含む宿主細胞。
【請求項15】
請求項8記載の組換えベクターを含む宿主細胞。
【請求項16】
配列番号:2のアミノ酸残基20〜470のアミノ酸配列を含むヒト化免疫グロブリン重鎖をコードする第2の単離された核酸をさらに含む、請求項14記載の宿主細胞。
【請求項17】
請求項4記載の単離された核酸を含む宿主細胞。
【請求項18】
請求項12記載の組換えベクターを含む宿主細胞。
【請求項19】
単離された核酸が、ヒト化重鎖をコードする第1のヌクレオチド配列および
ヒト化軽鎖をコードする第2のヌクレオチド配列を含み、前記第1のヌクレオチド配列が配列番号:1のヌクレオチド87〜1433のヌクレオチド配列を含み、前記第2のヌクレオチド配列が配列番号:3のヌクレオチド81〜737のヌクレオチド配列を含む、請求項17記載の宿主細胞。
【請求項20】
請求項16記載の宿主細胞をヒト化免疫グロブリンの発現に適切な条件下に維持することを含み、それにより、ヒト化免疫グロブリン鎖が発現され、ヒト化免疫グロブリンが産生される、ヒト化免疫グロブリンの調製方法。
【請求項21】
請求項17記載の宿主細胞をヒト化免疫グロブリンの発現に適切な条件下に維持することを含み、それにより、ヒト化免疫グロブリン鎖が発現され、ヒト化免疫グロブリンが産生される、ヒト化免疫グロブリンの調製方法。
【請求項22】
請求項1記載のヒト化免疫グロブリンおよび薬理学的に許容され得るビヒクルまたは担体を含む医薬組成物。
【請求項23】
α4β7を保有する第1の細胞とそのリガンドを保有する第2の細胞の相互作用の阻害方法であって、前記第1の細胞を有効量の請求項1記載のヒト化免疫グロブリンと接触させることを含む、方法。
【請求項24】
有効量の請求項1記載のヒト化免疫グロブリンを、その必要がある患者に投与することを含む、MAdCAM-1分子を発現する組織の白血球浸潤と関連する疾患の処置方法。
【請求項25】
該疾患が、α4β7インテグリンを発現する白血球のMAdCAM-1分子を発現する腸関連内皮への結合の結果としての組織の白血球浸潤と関連する疾患である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
患者に有効量の請求項1記載のヒト化免疫グロブリンを投与することを含む、患者における炎症性腸疾患の処置方法。
【請求項27】
請求項1記載のヒト化抗体を含む免疫コンジュゲート。
【請求項28】
細胞傷害剤をさらに含む請求項27記載の免疫コンジュゲート。
【請求項29】
前記細胞傷害剤が、メイタンシン、アウリスタチンおよびカリケアマイシンからなる群より選択される、請求項28記載の免疫コンジュゲート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2009−515552(P2009−515552A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541266(P2008−541266)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/044105
【国際公開番号】WO2007/061679
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(500287639)ミレニアム・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (98)
【氏名又は名称原語表記】MILLENNIUM PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】