説明

αVβ6に対する抗体およびその使用

標的結合剤、例えば抗原αVβ6に対する抗体および上記結合剤の使用について記載している。特に、抗原αVβ6に対する完全ヒトモノクローナル抗体を開示している。重鎖および軽鎖免疫グロブリン分子をコード化するヌクレオチド配列、およびそれらを含むアミノ酸配列、特にフレームワーク領域および/または相補性決定領域(CDR)、具体的にはFR1〜FR4またはCDR1〜CDR3に及ぶ連続重鎖および軽鎖配列に対応する配列を開示している。上記免疫グロブリン分子およびモノクローナル抗体を発現するハイブリドーマまたは他の細胞株についても開示している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2006年8月3日出願、米国仮出願第60/835,559号に対し優先権を主張するものであり、これは、引用により、その全体として、かつすべての目的に関して、本明細書に包含される。
【0002】
分野
本発明は、アルファVベータ6インテグリン(αVβ6)に対するモノクローナル抗体および上記抗体の使用に関するものである。ある態様において、本発明は、αVβ6に対する完全ヒトモノクローナル抗体に関するものである。上記抗体は、診断法として、およびαVβ6の活性および/または過剰産生に伴う疾患の処置に有用である。
【背景技術】
【0003】
背景
インテグリンスーパーファミリーは、18個のアルファ鎖および8個のベータ鎖を利用するヘテロ二量体から成る少なくとも24個のファミリーメンバーを含む(Hynes, (2002) Cell 110: 673-87)。この受容体のファミリーは、細胞表面で発現され、細胞の生存、増殖、移動および分化並びに腫瘍浸潤および転移を調節する細胞−細胞および細胞−細胞外マトリックスの相互作用を伝達する(ffrench-Constantおよび Colognato, (2004) Trends Cell Biol. 14: 678-86)。インテグリンは、他の細胞受容体、成長因子および細胞外マトリックスタンパク質と結合し、その多くのファミリーメンバーは、特定タンパク質について重複する結合特異性を共有している。この重複性により、特定のインテグリンが存在しなくても重要な機能の継続は確保され得る(Koivisto et al., (2000) Exp. Cell Res. 255: 10-17)。しかしながら、特異性は類似していても個々のインテグリンの発現には時間的および空間的な制限があることも報告されており、それによりリガンド結合に対する細胞性応答も改変され得る(Yokosaki et al., (1996) J. Biol. Chem. 271: 24144-50; Kemperman et al., (1997) Exp. Cell Res. 234: 156-64; Thomas et al., (2006) J. Oral Pathol. Med. 35: 1-10)。
【0004】
インテグリンファミリーは、ヘテロ二量体のリガンド特異性に基づいて幾つかのサブファミリーに分類され得る。一サブファミリーは、RGDトリペプチドを認識して結合するインテグリン全部により構成される。これらの受容体は、αIIb/β3およびαVヘテロ二量体の全部を含む(Thomas et al., (2006) J. Oral Pathol. Med. 35: 1-10)。αV鎖は5つの既知ベータ鎖と対合し得、これらのベータ鎖のいくつかはαVと対合し得るのみである。β6鎖は、αVに対するヘテロ二量体化について選択的であり、この対は細胞外マトリックスおよびサイトカインタンパク質と高または低親和力で結合する。αVβ6は、TGFβ1LAPおよびTGFβ3LAPの両潜在型複合体におけるRGDモチーフと結合し、それらを活性化する(Munger et al., (1999) Cell 96: 319-328; Annes et al., (2002) FEBS Letters 511: 65-68)。しかしながら、それは、トリペプチドをもたないTGFβ2LAPとは結合せず、活性化もしない(Ludbrook et al., (2003) Biochem. J. 369: 311-18)。αVβ6を介したTGFβの活性化は、細胞外マトリックスに潜在型TGFβ複合体を拘束させる潜在型TGFβ結合タンパク質1(LTBP1)を必要とする。TGFβLAPが細胞およびマトリックス間でそれぞれαVβ6およびLTBP1により拘束されるときに誘導される立体配座の変化により活性化が誘発されると提案されている(Keski-Oja et al., (2004) Trends Cell Biol. 14: 657-659; Annes et al., (2004) J. Cell Biol. 165: 723-34)。TGFβLAP複合体についてのαVβ6のピコモル結合親和力は、その既知リガンドのいずれについても最高である。αVβ6に関する他のリガンドには、フィブロネクチン、テナシン、ビトロネクチンおよびオステオポンチンがある(Busk et al., (1992) J. Biol. Chem. 267: 5790-6; Prieto et al., (1993) PNAS 90: 10154-8; Huang et al., (1998) J. Cell. Sci. 111(Pt 15): 2189-95; Yokosaki et al., (2005) Matrix Biol. 24: 418-27)。これらの細胞外マトリックスタンパク質についてのαVβ6の結合親和力は、低親和力であり、ナノモル範囲である。
【0005】
αVβ6インテグリンの発現は、成人における活性組織モデリング領域、具体的には回復中の傷の上皮および浸潤している腫瘍の外縁部に制限される(Breuss et al., (1995) J. Cell Sci. 108: 2241-51)。傷外縁部でのケラチノサイトは、創傷へのそれらの移動中にαVβ6の発現をアップレギュレーションするが、傷上皮の縁が合わさった後も発現は高レベルのままである(Breuss et al., (1995) J. Cell Sci. 108: 2241-51; Haapasalmi et al., (1996) J. Invest. Dermatol. 106: 42-48)。創傷の細胞外マトリックスには、フィブロネクチン、テナシンおよびビトロネクチンがあり、これらは全てαVβ6についてのリガンドである(Busk et al., (1992) J. Biol. Chem. 267: 5790-6; Koivisto et al., (1999) Cell Adhes. Commun. 7: 245-57; Hakkinen et al., (2000) J. Histochem. Cytochem. 48: 985-98)。さらに、αVβ6は、IV型コラーゲンを分解し、細胞運動を促進し得るマトリックスメタロプロテイナーゼ、MMP−9の発現をアップレギュレーションする(Niu et al., (1998) Biochem. Biophys. Res. Com. 249: 287-91; Agrez et al., (1999) Int. J. Can. 81: 90-97; Thomas et al., (2001) Int. J. Cancer 92: 641-50; Gu et al., (2002) Br. J. Can. 87: 348-51)。創傷およびインビトロ試験におけるその発現パターンに基づくと、αVβ6は、傷口が閉じる間にケラチノサイトの移動を促し、その後TGFβの活性化を通して傷を消散させる二重の役割を有し得る。αVβ6によりTGFβが活性化されると、再上皮形成の調節、炎症の抑制および結合組織再生および瘢痕形成の促進を通して傷の消散が促される(Thomas et al., (2006) J. Oral Pathol. Med. 35: 1-10)。ベータ6ヌルマウスを用いるインビボ創傷試験は、創傷が治癒しても、著しく増加した免疫応答が皮膚に存在することを示していた。創傷閉鎖およびケラチノサイト活性は、他のインテグリンファミリーメンバーの発現故に、αVβ6が失われても影響は無いと思われた(Huang et al., (1996) J. Cell Biol. 133: 921-8)。ベータ6ヌルマウス創傷における炎症性浸潤物は、TGFβ1ヌルマウスからのものと類似していることから、αVβ6の非存在下で免疫応答を抑制するのにこのサイトカインの活性では不十分であることが示唆された(Shull et al., (1992) Nature 359: 693-9; Thomas et al., (2006) J. Oral Pathol. Med. 35: 1-10)。
【0006】
また、肺損傷および腎臓疾患モデルにおけるベータ6ヌルマウスの分析により、線維症におけるαVβ6についての役割が確認された。ベータ6ヌルマウスにおける肺線維症は、ブレオマイシン損傷モデルでは阻害された(Munger et al., (1999) Cell 96: 319-328)。これらの動物はまた、MMP12依存的気腫(emphasema)様表現型から防御された(Morris et al., (2003) Nature 422: 169-73)。両疾患表現型は、TGFβの活性化に依存的である(Munger et al., (1999) Cell 96: 319-328)。また、αVβ6インテグリン伝達によるTGFβの活性化の阻害は、急性肺損傷に対する初期応答において肺浮腫を促進するものと仮定された(Pittet et al., (2001) J. Clin. Invest. 107: 1537-44)。ベータ6ヌルマウスはまた、TGFβ活性化が尿細管間質性線維化病変の発現に不可欠である腎臓疾患モデルにおいて線維症から防御された(Ma et al., (2003) Am. J. Pathol. 63: 1261-73)。
【0007】
創傷治癒におけるその発現に加えて、αVβ6インテグリンは、多くのヒト腫瘍の周囲でアップレギュレーションされる。αVβ6発現は、口腔(Breuss et al., (1995) J. Cell Sci. 108: 2241-51; Jones et al., (1997) J. Oral Pathol. Med. 26: 63-8; Hamidi et al., (2000) Br. J Cancer 82: 1433-40; Regezi et al., (2002) Oral Oncology 38: 332-6; Impola et al., (2004) J. Pathol. 202: 14-22)および皮膚扁平上皮癌、および肺(Smythe et al., (1995) Can. Met. Rev. 14: 229-39)胸部(Arhiro et al., (2000) Breast Can. 7: 19-26)、膵臓(Sipos, et al., (2004) Histopathology 45: 226-36)、胃(Kawashima et al., (2003) Pathol. Res. Pract. 199: 57-64)、結腸(Bates et al., (2005) J. Clin. Invest. 115: 339-47)、卵巣(Ahmed et al., (2002) Carcinogenesis 23: 237-44; Ahmed et al., (2002) J. Histochem. Cytochem. 50: 1371-79)および唾液腺(Westernoff et al., (2005) Oral Oncology 41: 170-74)の癌腫で報告されている。これらの報告の多くにおいて、αVβ6の発現は、腫瘍悪性度分類の高い等級(Ahmed et al., (2002) J. Histochem. Cytochem. 50: 1371-79; Arihiro et al., (2000) Breast Can. 7: 19-26)、起こり得るリンパ節への転移(Kawashima et al., (2003) Pathol. Res. Pract. 199: 57-64; Bates et al., (2005) J. Clin. Invest. 115: 339-47)または予後の悪さ(Bates et al., (2005) J. Clin. Invest. 115: 339-47)と相関関係をなす。最も研究し尽くされた腫瘍型は口腔扁平上皮癌であり、研究者らは前癌病変でのαVβ6についても調べ、その発現と悪性への進行の相関関係を明らかにした(Hamidi et al., (2000) Br. J Cancer 82: 1433-40)。αVβ6発現と腫瘍進行間の関連について結腸癌でも研究されており、インビトロモデルにおいてインテグリンの存在と結腸細胞の上皮間葉転換(EMT)の相関関係が明らかにされた(Brunton et al., (2001) Neoplasia 3: 215-26; Bates et al., (2005) J. Clin. Invest. 115: 339-47)。EMTは、上皮細胞をその本来の組織から離れて新たな領域へと移動させ得る通常の発生過程である(Thiery および Sleeman, (2006) Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 7: 131-42)。それは、例えばマトリックスプロテアーゼ類、TGFβなどのサイトカインおよびインテグリンを含む様々な細胞接着分子などの細胞の移動および浸潤を促進するタンパク質の発現の増加を特徴とする(Zavadil および Bottinger, (2005) Oncogene 24: 5764-5774)。またEMTマーカーの発現は、腫瘍、特に進行性浸潤性および転移性癌でも確認されている。αVβ6が、間質性フィブロネクチンへの接着を促し得ることにより、MMP−9および他のマトリックスプロテアーゼの発現がアップレギュレーションされ、TGFβを活性化し得ることから、それが悪性細胞のEMTおよび腫瘍の進行を促し得ることがわかる(Batesおよび Mercurio, (2005) Cancer Bio. & Ther. 4: 365-70)。
【0008】
ヒト癌の動物およびインビトロモデルからは、細胞増殖の促進およびアポトーシスの阻害においてαVβ6がシグナル変換を伝達することが推測された。インビトロでコラーゲンゲルマトリックスにおけるαVβ6トランスフェクションSW480結腸腫瘍細胞の増殖を促進するベータ6鎖のC−末端内における残基が同定された。完全長β6トランスフェクションSW480細胞と比べると、β6欠失突然変異体は、ヌードマウスにおける皮下増殖能が著しく低下していた(Agrez et al., (1994) J. Cell. Biol. 127: 547-56)。αVβ6を安定して発現する口腔癌細胞株では、フィブロネクチンへの結合の結果、ベータ6サブユニットによりFynキナーゼが漸増し、活性化された。下流シグナル変換の結果、MMP−3が産生され、インビトロでの細胞増殖、同所性モデルにおける腫瘍浸潤および尾部静注モデルにおける転移が促進された(Li et al., (2003) J. Biol. Chem. 278: 41646-53)。
【0009】
細胞増殖などのアポトーシスの抑制は、αVβ6が腫瘍増大を促し得る別の形である。正常な重層扁平上皮はαVβ5インテグリンを発現するが、それをダウンレギュレーションし、癌への悪性転換後にはαVβ6発現をアップレギュレーションする。αVβ5を過剰発現する癌細胞株を用いることにより、αVβ6発現は、インビトロでの懸濁誘導細胞死(アノイキス)を阻止することが示された(Janes および Watt, (2004) J. Cell Biol. 166: 419-31)。アポトーシス阻害はまた、シスプラチンで処置した卵巣癌細胞株においてインビトロで観察されており、これはインビボでのこれらの腫瘍の薬剤耐性機構を示すものであり得る(Wu et al., (2004) Zhonghua Fu Chan Ke Za Zhi 39: 112-14)。
【0010】
多くの研究者らが、線維症および癌においてαVβ6活性をターゲッティングする治療法を開発している。αVβ6、αVβ3およびαVβ5インテグリンについての特異性をもつマウス抗体は、インビトロでビトロネクチンおよびフィブロネクチンへのHT29結腸癌細胞の接着を阻止することが示された(Lehmann et al., (1994) Can. Res. 54: 2102-07)。ヒトαVβ6タンパク質に特異的な別のマウス抗体療法は、マウスの経口異種移植腫瘍モデルにおいてHSC−3口腔癌細胞の侵襲的増殖を阻止することが立証された(Xue et al., (2001) Biochem. Biophys. Res. Com. 288: 610-18)。ベータ6ヌルマウスモデルを宿主として用いることにより、一連のヒトαVβ6特異抗体を産生させた。これらの抗体は、インビトロでインテグリンへのTGFβLAPおよびフィブロネクチン結合の両方を遮断することができた(Weinreb et al., (2004) J. Biol. Chem. 279: 17875-87)。それらはまた、ヒト咽頭癌異種移植モデルにおいて顕著な腫瘍増殖阻害を立証した(Leone et al., (2003) Proc. of the Am. Assoc. Can. Res. 44, Abstract #4069)。
【0011】
抗体を遮断する機能に加えて、ヒトαVβ6インテグリンのペプチド模倣阻害剤の作製が報告されている。この化合物は、200nM範囲のIC50でフィブロネクチンへのUCLAP−3細胞結合を阻害し、それぞれ3〜20μM範囲でビトロネクチンへのαVβ5およびαVβ3インテグリン介在細胞結合を遮断する追加活性を有することが示された(Goodman et al., (2002) J. Med. Chem. 45: 1045-51)。
【0012】
αVβ6について最近報告されたもう一つの役割は、ウイルス病原体についての細胞受容体としての役割である。それは、口蹄疫ウイルスおよびコクサッキーウイルス9に関するウイルスキャプシドの結合を伝達することにより、インビトロでウイルス侵入させ得る(Miller et al., (2001) J. Virol. 75: 4158-64; Williams et al., (2004) J. Virol. 78: 6967-73)。口蹄疫ウイルスおよびコクサッキーウイルス9キャプシドタンパク質は、両方とも多数のインテグリンファミリーメンバーにより認識されるRGD配列を含む。両病原体のウイルス侵入は、αVβ6インテグリンに対する抗体により遮断される(Williams et al., (2004) J. Virol. 78: 6967-73)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
概要
本発明は、概してαVβ6に結合する標的結合剤(targeted binding agent)に関するものである。本発明の態様は、αVβ6に特異的に結合することにより、αVβ6へのリガンドの結合を阻害する完全ヒト標的結合剤に関するものである。また、標的結合剤は、腫瘍細胞接着も阻害する。さらに、標的結合剤は、腫瘍の成長を低下させるのに有用である。これが達成され得る機構は、限定されるわけではないが、リガンドのその受容体αVβ6への結合阻害、TGFβ−LAPなどのリガンドとの相互作用の排除による、αVβ6の有効濃度の低減化を含み得る。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様では、標的結合剤は、αVβ6に結合し、αVβ6のリガンドへのαVβ6結合を阻止する完全ヒト抗体である。αVβ6のリガンドの例には、TGFβLAP、フィブロネクチン、テナシン、ビトロネクチンおよびオステオポンチンがある。抗体は、35nM、25nM、10nMまたは60pM未満のKでαVβ6と結合し得る。
【0015】
さらに別の態様は、αVβ6に結合し、1μg/mlまたはそれ未満の低抗体濃度でHT29細胞のTGFβ−LAP介在的接着の80%を超える割合、85%、90%または99%を阻害する完全ヒト抗体である。
【0016】
さらに別の態様は、αVβ6に結合し、0.070μg/ml未満のIC50でHT29細胞のTGFβ−LAP介在的接着を阻害する完全ヒト抗体である。
【0017】
標的結合剤(すなわち抗体)は、表8または表29に示された配列の一つを伴う相補性決定領域(CDR)を有する重鎖アミノ酸配列を含み得る。一態様では、標的結合剤は、表8または表29に示されたCDR1、CDR2またはCDR3配列のいずれか1つを含む配列を含み得る。別の態様では、標的結合剤は、表8または表29に示されたCDR1、CDR2またはCDR3配列のいずれか2つ(すなわち、CDR1およびCDR2、CDR1およびCDR3またはCDR2およびCDR3)を含む配列を含み得る。別の態様では、標的結合剤は、表8または表29に示されたCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む配列を含み得る。当業者であれば、容易にCDR決定を為し得るものとする。例えば、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、NIH Publication 91-3242, べセスダ、メリーランド (1991)、第1−3巻参照。
【0018】
別の態様において、標的結合剤(すなわち、抗体)は、相補性決定領域(CDR)、表9または表30に示されたCDR1、CDR2またはCDR3配列を有する軽鎖アミノ酸配列を含み得る。別の態様では、標的結合剤は、表9または表30に示されたCDR1、CDR2またはCDR3配列のいずれか2つ(すなわち、CDR1およびCDR2、CDR1およびCDR3、またはCDR2およびCDR3)を含む配列を含み得る。別の態様では、標的結合剤は、表9または表30に示されたCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む配列を含み得る。
【0019】
本発明の標的結合剤は、下記で詳細に検討しているように、通常1つまたはそれ以上のCDR、例えば非抗体タンパク質スキャフォールドにおけるCDRのセットにより与えられる、非抗体分子内における抗原結合部位を含み得る。
【0020】
別の態様において、標的結合剤は、完全ヒトモノクローナル抗体sc264RAD、sc264RAD/ADY、sc188SDM、sc133、sc133TMT、sc133WDS、sc133TMT/WDS、sc188、sc254、sc264またはsc298のCDR1、CDR2またはCDR3配列のいずれか1つを含む配列を含む。
【0021】
別の態様において、標的結合剤は、完全ヒトモノクローナル抗体sc264RAD、sc264RAD/ADY、sc188SDM、sc133、sc133TMT、sc133WDS、sc133TMT/WDS、sc188、sc254、sc264またはsc298のCDR1、CDR2またはCDR3配列のいずれか2つ(すなわち、CDR1およびCDR2、CDR1およびCDR3、またはCDR2およびCDR3)を含む。
【0022】
別の態様において、標的結合剤は、完全ヒトモノクローナル抗体sc264RAD、sc264RAD/ADY、sc188SDM、sc133、sc133TMT、sc133WDS、sc133TMT/WDS、sc188、sc254、sc264またはsc298のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む
【0023】
本発明の一態様において、標的結合剤は抗体である。本発明の一態様において、標的結合剤は、モノクローナル抗体である。本発明の一態様において、標的結合剤は、完全ヒトモノクローナル抗体である。
【0024】
本発明の別の態様は、αVβ6に結合し、表9または表30に示されたCDR1、CDR2またはCDR3配列のいずれか1つを含む軽鎖アミノ酸配列を含む抗体を含む。本発明の別の態様は、αVβ6に結合し、表9または表30に示されたCDR1、CDR2またはCDR3配列のいずれか2つ(すなわち、CDR1およびCDR2、CDR1およびCDR3、またはCDR2およびCDR3)を含む軽鎖アミノ酸配列を含む抗体を含む。本発明の別の態様は、αVβ6に結合し、表9または表30に示されたCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む軽鎖アミノ酸配列を含む抗体を含む。ある態様では、抗体は完全ヒトモノクローナル抗体である。
【0025】
本発明のさらに別の態様は、αVβ6に結合し、表8または表29に示されたCDR1、CDR2またはCDR3配列のいずれか1つを含む重鎖アミノ酸配列を含む抗体を含む。本発明の別の態様は、αVβ6に結合し、表8または表29に示されたCDR1、CDR2またはCDR3配列のいずれか2つ(すなわち、CDR1およびCDR2、CDR1およびCDR3、またはCDR2およびCDR3)を含む重鎖アミノ酸配列を含む抗体を含む。本発明の別の態様は、αVβ6に結合し、表8または表29に示されたCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖アミノ酸配列を含む抗体を含む。ある態様では、抗体は完全ヒトモノクローナル抗体である。
【0026】
本発明の一態様は、下記で詳細に検討しているように、αVβ6に特異的に結合する完全ヒトモノクローナル抗体sc264RAD、sc264RAD/ADY、sc188SDM、sc133、sc133TMT、sc133WDS、sc133TMT/WDS、sc188、sc254、sc264またはsc298の1つまたはそれ以上を含む。
【0027】
さらに別の態様は、αVβ6に結合し、表9または表30に示された配列の1つを含むCDRを有する軽鎖アミノ酸配列を含む抗体である。別の態様は、αVβ6に結合し、表8または表29に示された配列の1つを含むCDRを有する重鎖アミノ酸配列を含む抗体である。ある態様では、抗体は完全ヒトモノクローナル抗体である。
【0028】
さらなる態様は、αVβ6に結合し、表8または表29に示されたCDR配列の1つを有する重鎖アミノ酸配列および表9または表30に示されたCDR配列の1つを有する軽鎖アミノ酸配列を含む抗体である。ある態様では、抗体は完全ヒトモノクローナル抗体である。
【0029】
本発明のさらなる態様は、本発明の抗体とαVβ6への結合について競合する標的結合剤(すなわち抗体)である。一態様では、上記の標的結合剤は、表8または表29に示されたCDR配列の少なくとも1つを有する重鎖アミノ酸配列および表9または表30に示されたCDR配列の少なくとも1つを有する軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0030】
本発明のさらなる態様は、本発明抗体と同じαVβ6上のエピトープに結合する標的結合剤である。一態様では、上記の標的結合剤は、表8または表29に示されたCDR配列の少なくとも1つを有する重鎖アミノ酸配列および表9または表30に示されたCDR配列の少なくとも1つを有する軽鎖アミノ酸配列を含んでいた。
【0031】
別の態様において、標的結合剤は、表8または表29に示されたCDR1、CDR2またはCDR3配列のいずれか1つおよび表9または表30に示されたCDR1、CDR2またはCDR3配列のいずれか1つを含む配列を含む。別の態様では、標的結合剤は、表8または表29に示されたCDR1、CDR2またはCDR3配列のいずれか2つおよび表9または表30に示されたCDR1、CDR2またはCDR3配列のいずれか2つ(すなわち、CDR1およびCDR2、CDR1およびCDR3、またはCDR2およびCDR3)を含む。別の態様では、標的結合剤は、表8または表29に示されたCDR1、CDR2およびCDR3配列および表9または表30に示されたCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む。
【0032】
若干の態様では、本発明の結合剤は、下記で詳細に検討しているように、通常1つまたはそれ以上のCDR、例えば非抗体タンパク質スキャフォールドにおけるCDRのセットにより与えられる、非抗体分子内における抗原結合部位を含み得る。
【0033】
さらに別の態様は、αVβ6に結合し、1つまたはそれ以上の修正的突然変異を有するアミノ酸配列を含む抗体であり、抗体配列が突然変異によりそのそれぞれの生殖系列配列に戻されている。例えば、抗体は、表10〜13のいずれかに示された配列を有し得る。
【0034】
さらに本発明は、患者または患者試料におけるαVβ6のレベルの検定方法であって、抗αVβ6抗体を患者からの生物学的試料と接触させ、試料中における上記抗体とαVβ6間の結合レベルを検出することを含む方法を提供する。さらに具体的な態様では、生物学的試料は血液または血漿である。
【0035】
他の態様において、本発明は、抗体またはその機能的フラグメントを含む、標的結合剤および医薬上許容される担体を含む組成物を提供する。
【0036】
本発明のさらなる態様は、αVβ6関連疾患または障害に罹患している動物を有効に処置する方法であって、新生物または非新生物疾患について処置を必要とする動物を選択し、αVβ6に特異的に結合する完全ヒトモノクローナル抗体の治療有効量を動物に投与することを含む方法を含む。
【0037】
本発明の抗体は、αVβ6関連疾患または障害の治療に使用され得る。αVβ6関連疾患または障害は、αVβ6の異常な活性化または発現により生じる状態を包含し得る。上記疾患の例は、αVβ6がそのリガンドと異常な形で相互作用することにより、細胞接着または細胞シグナリング特性が改変される場合を含む。細胞接着または細胞シグナリング特性におけるこの改変が、新生物疾患を誘発し得る。他のαVβ6関連疾患または障害には、炎症性疾患、肺疾患、線維症に随伴する疾患およびTGFβ調節障害に随伴する疾患がある。
【0038】
一例では、αVβ6関連疾患は、新生物疾患、例えばメラノーマ、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、肝細胞(肝臓)癌、甲状腺腫瘍、胃(腹部)癌、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、肺癌、神経膠芽腫、子宮体癌、腎臓癌、結腸癌、膵臓癌、食道癌、頭部および頸部癌、中皮腫、肉腫、胆管(胆管癌)、小腸腺癌、小児悪性疾患および類表皮癌である。
【0039】
別の例では、αVβ6関連疾患は、炎症性疾患、例えば炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、若年性慢性関節炎、脊椎関節症、全身性硬化症、例えば硬皮症、特発性炎症性ミオパシー、例えば、皮膚筋炎、多発性筋炎、シェーグレン症候群、全身性血管炎(vaculitis)、サルコイドーシス、甲状腺炎、例えばグレーブス病、橋本甲状腺炎、若年性リンパ球性甲状腺炎、萎縮性甲状腺炎、免疫介在性腎疾患、例えば、糸球体腎炎、尿細管間質性腎炎、中枢および末梢神経系の脱髄疾患、例えば多発性硬化症、特発性多発ニューロパシー、肝胆管疾患、例えば感染性肝炎、例えばA、B、C、D、E型および他の非肝指向性ウイルス性肝炎、自己免疫慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、肉芽腫性肝炎、および硬化性胆管炎、炎症性および線維症性肺疾患(例えば、嚢胞性線維症)、グルテン感受性腸症、自己免疫または免疫介在性皮膚疾患、例えば水疱性皮膚疾患、多形性紅斑および接触皮膚炎、乾癬、肺のアレルギー性疾患、例えば好酸性肺炎、特発性肺線維症、アレルギー性結膜炎および過敏性肺炎、移植片拒絶および移植片対宿主病を含む移植関連疾患である。
【0040】
さらに別の例では、αVβ6関連疾患は腎臓または肺線維症などの線維症である。
さらに別の例では、αVβ6関連疾患は、TGF−β調節障害に伴うもので、癌および結合組織(線維症性)疾患がある。
【0041】
本発明のさらなる態様は、動物でのαVβ6誘導による細胞接着の阻害方法を含む。これらは、αVβ6誘導による細胞接着について処置を必要とする動物を選択し、完全ヒトモノクローナル抗体の治療有効量を上記動物に投与することを含む方法であり、上記抗体はαVβ6に特異的に結合する。
【0042】
本発明のさらなる態様は、動物におけるαVβ6関連疾患または障害の治療を目的とする医薬の製造における抗体の使用を含むものであり、上記モノクローナル抗体はαVβ6に特異的に結合する。
【0043】
さらなる態様において、ここに記載の標的結合剤は、動物でのαVβ6誘導による細胞接着の有効な治療を目的とする医薬の製造に使用され得るものであり、上記モノクローナル抗体はαVβ6に特異的に結合する。
【0044】
ここに記載の本発明の態様は、αVβ6と結合し、αVβ6機能に影響を及ぼすモノクローナル抗体に関するものである。他の態様は、αVβ6についての高い結合親和力、インビトロおよびインビボでのαVβ6中和能、およびαVβ6誘導細胞接着および腫瘍増殖の阻害能を含む、治療的観点から望ましい特性をもつ完全ヒト抗αVβ6抗体および抗αVβ6抗体調製物に関するものである。
【0045】
一態様において、本発明は、非常に高い親和力(K)でαVβ6に結合する抗体を含む。例えば、ヒト、ウサギ、マウス、キメラまたはヒト化抗体は、限定されるわけではないが、約10−5、10−6、10−7、10−8、10−9、10−10または約10−11M未満、またはその範囲または値のKでαVβ6と結合し得る。親和力および/または結合活性測定値は、ここに記載のKinExA(登録商標)および/またはBIACORE(登録商標)により測定され得る。
【0046】
本発明の一態様は、αVβ6に結合する単離抗体または上記抗体のフラグメントを含む。当業界で公知のとおり、抗体は、例えば、ポリクローナル、オリゴクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト化および/または完全ヒト抗体であり得る。ここに記載の本発明の態様はまた、これらの抗体を産生する細胞を提供する。
【0047】
本発明の態様は、特定形態の抗体または作製または製造方法に限定されないものとする。例えば、抗αVβ6抗体は、完全長抗体(例えば、無傷のヒトFc領域を有する)または抗体フラグメント(例えば、Fab、Fab'またはF(ab')、FVまたはDab(Dabはヒト抗体の最小機能結合単位である))であり得る。さらに、抗体は、抗体を分泌するハイブリドーマから、または抗体をコード化する一遺伝子または複数遺伝子により形質転換またはトランスフェクションされた遺伝子組換え技法による細胞から製造され得る。
【0048】
本発明の他の態様は、ここに記載の抗体のいずれかをコード化する単離核酸分子、抗αVβ6抗体をコード化する単離核酸分子を有するベクターまたは上記核酸分子のいずれかで形質転換された宿主細胞を含む。さらに、本発明の一態様は、核酸分子を発現させることにより抗体を製造する条件下で宿主細胞を培養し、次いで抗体を回収することによる抗αVβ6抗体の製造方法である。本発明の態様はまた、抗体生産のため宿主細胞へトランスフェクションされたときに抗体またはそのフラグメントの収率を高めるように最適化された核酸配列を含む本発明の抗体または抗体のフラグメントをコード化する核酸分子を包含するものとする。
【0049】
さらなる態様は、哺乳類をヒトαVβ6またはそのフラグメント、および1つまたはそれ以上のオーソロガス配列またはそのフラグメントで免疫化することによる、αVβ6に対する高親和力抗体の製造方法を含む。
【0050】
他の態様は、αVβ6に特異的に結合する単離抗体の作製および同定に基づく。αVβ6の生物活性を阻害することにより、αVβ6誘導による細胞接着および他の所望の効果は阻止され得る。
【0051】
本発明の別の態様は、ここに記載の要領で製造された抗体を利用して、患者試料におけるαVβ6のレベルを検出する疾患または状態の診断方法を含む。一態様では、患者試料は血液または血漿である。さらなる態様では、危険因子の同定、病気の診断および病期分類方法が提示され、それらは必然的に抗αVβ6抗体の使用によるαVβ6の過剰発現の同定を含む。
【0052】
本発明の別の態様は、細胞でのαVβ6の発現に随伴する状態の診断方法であって、血清または細胞を抗αVβ6抗体と接触させ、次いでαVβ6の存在を検出することによる方法を含む。好ましい状態には、限定されるわけではないが、新生物疾患、例えばメラノーマ、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、肝細胞(肝臓)癌、神経膠芽腫、および甲状腺、胃、前立腺、乳房、卵巣、膀胱、肺、子宮、腎臓、結腸および膵臓、唾液線および結腸直腸の癌腫を含むαVβ6関連疾患または障害がある。
【0053】
別の態様において、本発明は、哺乳類組織、細胞または体液でのαVβ6を検出することにより、αVβ6関連疾患についてスクリーニングするための検定キットを含む。このキットは、αVβ6に結合する抗体およびαVβ6が存在する場合の抗体との反応を示す手段を含む。一態様では、抗体はモノクローナル抗体である。別の態様では、αVβ6と結合する抗体を標識する。さらに別の態様では、抗体は非標識一次抗体であり、キットはさらに一次抗体検出手段を含む。一態様では、検出手段は、抗免疫グロブリンである標識二次抗体を含む。抗体は、蛍光色素、酵素、放射性核種および放射線不透過性物質から成る群から選択されるマーカーで標識され得る。
【0054】
本発明の他の態様は、医薬上許容される担体または希釈剤と混合した形で抗αVβ6抗体の有効量を有する医薬組成物を含む。さらに他の態様では、抗αVβ6抗体またはそのフラグメントは、治療剤とコンジュゲートされる。治療剤は、例えば毒素または放射性同位元素であり得る。
【0055】
さらに別の態様は、患者におけるαVβ6の発現に随伴する疾患または状態の処置方法であって、抗αVβ6抗体の有効量を患者に投与することによる方法を含む。抗αVβ6抗体は、単独で投与され得るか、または追加的抗体または化学療法剤または放射線療法と組み合わせて投与され得る。例えば、細胞接着を遮断するαVβ6抗体のモノクローナル、オリゴクローナルまたはポリクローナル混合物は、腫瘍細胞増殖を直接阻害することが示された薬剤と組合わせて投与され得る。本方法はインビボで遂行され得、患者は好ましくはヒト患者である。好ましい態様において、本方法は、限定されるわけではないが、新生物疾患、例えばメラノーマ、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、肝細胞(肝臓)癌、神経膠芽腫、および甲状腺、胃、前立腺、乳房、卵巣、膀胱、肺、子宮、腎臓、結腸および膵臓、唾液線および結腸直腸の癌腫を含むαVβ6関連疾患または障害の処置に関するものである。
【0056】
別の態様において、本発明は容器を含む製品を提供する。容器は、抗αVβ6抗体を含む組成物、および組成物が、αVβ6の過剰発現を特徴とするαVβ6関連疾患または障害の処置に使用され得ることを示すパッケージ挿入物またはラベルを含む。
【0057】
態様によっては、抗αVβ6抗体を患者に投与した後、循環している過剰の抗体を血中から除去するための浄化剤(clearing agent)を投与することもある。
【0058】
さらに別の態様は、αVβ6関連疾患または障害、例えば新生物疾患、炎症性疾患、線維症、肺疾患またはTGF−β調節障害に伴う疾患の治療を目的とする医薬の製造における抗αVβ6抗体の使用である。一態様では、新生物疾患には、癌、例えば乳房、卵巣、胃、子宮内膜、唾液線、肺、腎臓、結腸、結腸直腸、食道、甲状腺、膵臓、前立腺および膀胱癌がある。別の態様において、αVβ6関連疾患または障害には、限定されるわけではないが、新生物疾患、例えばメラノーマ、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、肝細胞(肝臓)癌、肉腫、頭部および頸部癌、中皮腫、胆管(胆管癌)、小腸腺癌、小児悪性疾患および神経芽膠腫がある。
【0059】
本発明のさらに別の態様は、限定されるわけではないが、関節炎、アテローム性動脈硬化症、アレルギー性結膜炎を含む炎症性または過増殖性疾患の処置を目的とする医薬の製造における抗αVβ6抗体の使用である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は、精製モノクローナル抗体がαVβ6に結合し、GST−LAPペプチドへのその結合を遮断する能力を示す線グラフである。
【図2】図2Aおよび2Bは、ヒトαVβ6抗原を安定して発現するK562細胞に対する抗体の一つの結合親和力を評価するのに使用された、分子mAb濃度の関数として平均をとった幾何平均蛍光(GMF)のプロットを示す線グラフである。図2Aに示されているのは、mAb188に関する親和力データである。図2Bは、mAb264 RADについての親和力データを示す。
【図3】図3A〜3Eは、αVβ6インテグリンを安定して発現している293細胞における精製モノクローナル抗体が補体依存的細胞傷害性を伝達する能力を示す棒グラフである。
【図4】図4は、Detroit-562鼻咽頭細胞株を用いることによる抗体264RAD、133および188SDMが腫瘍増殖を阻害する能力を示す棒グラフである。
【図5】図5は、264RAD/ADYと264RADの活性の比較を示す棒チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0061】
詳細な記載
本発明の態様は、αVβ6インテグリン(αVβ6)と結合する標的結合剤に関するものである。態様によっては、結合剤がαVβ6に結合し、αVβ6へのリガンドの結合を阻害する場合もある。一態様では、標的結合剤はモノクローナル抗体またはその結合性フラグメントである。別の態様では、抗体はβ6鎖にのみ結合するが、αVβ6へのリガンドの結合を阻害することはできる。
【0062】
本発明の他の態様は、治療上有用な完全ヒト抗αVβ6抗体、および抗体調製物を含む。一態様では、抗αVβ6抗体調製物は、αVβ6についての強い結合親和力、およびインビトロでのTGFβLAP介在的細胞接着の阻害能を含む望ましい治療特性を有する。
【0063】
本発明の態様はまた、抗αVβ6抗体の完全ヒト単離結合性フラグメントを含む。一態様において、結合性フラグメントは、完全ヒト抗αVβ6抗体から誘導される。フラグメントの例としては、下記で詳述しているとおり、Fv、Fab'または他の公知抗体フラグメントがある。本発明の態様はまた、αVβ6に対する完全ヒト抗体を発現する細胞を含む。細胞の例には、ハイブリドーマ、遺伝子組換えによる細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、CHO細胞の変異型(例えばDG44)およびαVβ6に対して抗体を産生するNS0細胞がある。CHO細胞の変異型に関するさらなる情報は、Andersenおよび Reilly (2004) Current Opinion in Biotechnology 15, 456-462頁から得られ、これについては、その全体を出典明示で援用する。
【0064】
さらに、本発明の態様は、αVβ6関連疾患または障害の治療を目的とするこれらの抗体の使用方法を含む。αVβ6関連疾患または障害は、αVβ6の異常な活性化または発現により誘発される状態を包含し得る。上記疾患の例には、αVβ6がそのリガンドと異常な形で相互作用することにより、細胞接着または細胞シグナリング特性を改変させる場合が含まれる。細胞接着または細胞シグナリング特性におけるこの改変が、新生物疾患を誘発し得る。他のαVβ6関連疾患または障害には、炎症性疾患、肺疾患、線維症に随伴する疾患およびTGFβ調節障害に随伴する疾患がある。
【0065】
一例では、αVβ6関連疾患は、新生物疾患、例えばメラノーマ、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、肝細胞(肝臓)癌、甲状腺腫瘍、胃(腹部)癌、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、肺癌、神経膠芽腫、子宮体癌、腎臓癌、結腸癌、膵臓癌、食道癌、頭部および頸部癌、中皮腫、肉腫、胆管(胆管癌)、小腸腺癌、小児悪性疾患および類表皮癌である。
【0066】
別の例では、αVβ6関連疾患は、炎症性疾患、例えば炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、若年性慢性関節炎、脊椎関節症、全身性硬化症、例えば硬皮症、特発性炎症性ミオパシー、例えば、皮膚筋炎、多発性筋炎、シェーグレン症候群、全身性血管炎(vaculitis)、サルコイドーシス、甲状腺炎、例えばグレーブス病、橋本甲状腺炎、若年性リンパ球性甲状腺炎、萎縮性甲状腺炎、免疫介在性腎疾患、例えば、糸球体腎炎、尿細管間質性腎炎、中枢および末梢神経系の脱髄疾患、例えば多発性硬化症、特発性多発ニューロパシー、肝胆管疾患、例えば感染性肝炎、例えばA、B、C、D、E型および他の非肝指向性ウイルス性肝炎、自己免疫慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、肉芽腫性肝炎、および硬化性胆管炎、炎症性および線維症性肺疾患(例えば、嚢胞性線維症)、グルテン感受性腸症、自己免疫または免疫介在性皮膚疾患、例えば水疱性皮膚疾患、多形性紅斑および接触皮膚炎、乾癬、肺のアレルギー性疾患、例えば好酸性肺炎、特発性肺線維症、アレルギー性結膜炎および過敏性肺炎、移植片拒絶および移植片対宿主病を含む移植関連疾患である。
【0067】
さらに別の例では、αVβ6関連疾患は腎臓または肺線維症などの線維症である。
さらに別の例では、αVβ6関連疾患は、TGF−β調節障害に伴うもので、癌および結合組織(線維症性)疾患がある。
【0068】
本発明の他の態様には、生物学的試料中のαVβ6の量を特定的に測定する診断的検定法がある。検定キットは、抗αVβ6抗体を、それらの検出に必要な標識と一緒に含み得る。これらの診断的検定法は、限定されるわけではないが、新生物疾患、例えばメラノーマ、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、肝細胞(肝臓)癌、神経膠芽腫、および甲状腺、胃、前立腺、乳房、卵巣、膀胱、肺、子宮、腎臓、結腸および膵臓、唾液線および結腸直腸の癌腫を含むαV関連疾患またはβ6障害についてスクリーニングするのに有用である。
【0069】
本発明の別の態様はαVβ6の生物活性のアンタゴニストであり、アンタゴニストはαVβ6に結合する。一態様では、アンタゴニストは標的結合剤、例えば抗体である。アンタゴニストは、
i)β6単独;
ii)αVβ6;または
iii)αVβ6/リガンド複合体
またはこれらの組合わせと結合し得る。一態様において、抗体は、インビトロおよびインビボでαVβ6の生物活性と拮抗することができる。抗体は、完全ヒトモノクローナル抗体、例えばsc264RAD、sc264RAD/ADY、sc188SDM、sc133、sc133TMT、sc133WDS、sc133TMT/WDS、sc188、sc254、sc264またはsc298またはその変異型から選択され得る。
【0070】
一態様において、αVβ6の生物活性のアンタゴニストは、αVβ6に結合することにより、TGFβLAP介在的細胞接着を阻止し得る。
【0071】
一態様は、完全ヒトモノクローナル抗体sc264RAD、sc264RAD/ADY、sc188SDM、sc133、sc133TMT、sc133WDS、sc133TMT/WDS、sc188、sc254、sc264またはsc298と同一のエピトープまたは複数エピトープに結合する抗体である。
【0072】
一態様において、標的結合剤は、100ナノモル(nM)未満のKでαVβ6に結合する。標的結合剤は、約35ナノモル(nM)未満のKで結合し得る。標的結合剤は、約25ナノモル(nM)未満のKで結合し得る。標的結合剤は、約10ナノモル(nM)未満のKで結合し得る。別の態様において、標的結合剤は、約60ピコモル(pM)未満のKで結合する。
【0073】
一態様は、上記の抗体の軽鎖および/または重鎖を生産する抗体分泌性形質細胞である。一態様において、形質細胞は、完全ヒトモノクローナル抗体の軽鎖および/または重鎖を生産する。別の態様では、形質細胞は、完全ヒトモノクローナル抗体sc264RAD、sc264RAD/ADY、sc188SDM、sc133、sc133TMT、sc133WDS、sc133TMT/WDS、sc188、sc254、sc264またはsc298の軽鎖および/または重鎖を生産する。あるいは、形質細胞は、完全ヒトモノクローナル抗体sc264RAD、sc264RAD/ADY、sc188SDM、sc133、sc133TMT、sc133WDS、sc133TMT/WDS、sc188、sc254、sc264またはsc298と同一のエピトープまたは複数エピトープに結合する抗体を生産し得る。
【0074】
別の態様は、上記の抗体の軽鎖または重鎖をコード化する核酸分子である。一態様において、核酸分子は、完全ヒトモノクローナル抗体の軽鎖または重鎖をコード化する。さらに別の態様は、抗体sc264RAD、sc264RAD/ADY、sc188SDM、sc133、sc133TMT、sc133WDS、sc133TMT/WDS、sc188、sc254、sc264またはsc298から選択される完全ヒトモノクローナル抗体の軽鎖または重鎖をコード化する核酸分子である。
【0075】
本発明の別の態様は、上記の一核酸分子または複数核酸分子を含むベクターであり、上記ベクターは上記の抗体の軽鎖および/または重鎖をコード化する。
【0076】
本発明のさらに別の態様は、上記のベクターを含む宿主細胞である。別法として、宿主細胞は複数のベクターを含み得る。
【0077】
さらに、本発明の一態様は、核酸分子を発現させることにより抗体を生産する条件下で宿主細胞を培養し、次いで抗体を回収することによる抗体の生産方法である。
【0078】
一態様では、本発明は、上記の抗体をコード化する少なくとも1つの核酸分子で少なくとも1つの宿主細胞をトランスフェクションし、核酸分子を宿主細胞で発現させ、抗体を単離することによる抗体の製造方法を含む。
【0079】
別の態様によると、本発明は、本明細書に記載されたアンタゴニストの投与を含むαVβ6の生物活性に拮抗する方法を含む。本方法は、αVβ6関連疾患または障害について処置を必要とする動物を選択し、動物にαVβ6の生物活性のアンタゴニストの治療有効量を投与することを含み得る。
【0080】
本発明の別の態様は、上記の抗体投与を含むαVβ6の生物活性に拮抗する方法を含む。本方法は、αVβ6関連疾患または障害について処置を必要とする動物を選択し、αVβ6の生物活性に拮抗する抗体の治療有効量を上記動物に投与することを含み得る。
【0081】
別の態様によると、哺乳類におけるαVβ6関連疾患または障害の処置方法であって、αVβ6の生物活性のアンタゴニストの治療有効量の投与を含む方法が提供される。本方法は、αVβ6関連疾患または障害について処置を必要とする動物を選択し、αVβ6の生物活性のアンタゴニストの治療有効量を上記動物に投与することを含み得る。
【0082】
別の態様によると、αVβ6の生物活性に拮抗する抗体の治療有効量の投与を含む、哺乳類におけるαVβ6(関連)疾患または障害の処置方法が提供される。本方法は、αVβ6関連疾患または障害について処置を必要とする動物を選択し、αVβ6の生物活性に拮抗する抗体の治療有効量を上記動物に投与することを含み得る。上記抗体は、単独で投与され得るか、または追加抗体または化学療法剤または放射線療法と組合わせて投与され得る。
【0083】
別の態様によると、哺乳類における癌の処置方法であって、αVβ6の生物活性のアンタゴニストの治療有効量の投与を含む方法が提供される。本方法は、癌について処置を必要とする動物を選択し、αVβ6の生物活性に拮抗するアンタゴニストの治療有効量を上記動物に投与することを含み得る。上記アンタゴニストは、単独で投与され得るか、または追加抗体または化学療法剤または放射線療法と組合わせて投与され得る。
【0084】
別の態様によると、哺乳類における癌の処置方法であって、αVβ6の生物活性に拮抗する抗体の治療有効量の投与を含む方法が提供される。本方法は、癌について処置を必要とする動物を選択し、αVβ6の生物活性に拮抗する抗体の治療有効量を上記動物に投与することを含み得る。上記抗体は、単独で投与され得るか、または追加抗体または化学療法剤または放射線療法と組合わせて投与され得る。
【0085】
本発明の別の態様は、αVβ6関連疾患または障害を処置する医薬の製造を目的とするαVβ6の生物活性のアンタゴニストの使用に関するものである。
【0086】
本発明の別の態様は、αVβ6関連疾患または障害を処置する医薬の製造を目的とするαVβ6の生物活性に拮抗する抗体の使用に関するものである。
【0087】
好ましい態様では、本発明は、αVβ6インテグリンにのみ、または一部依存的な腫瘍をもつ患者において、αVβ6に拮抗するための使用に特に適している。
【0088】
本発明の別の態様は、哺乳類組織、細胞または体液からαVβ6を検出することにより、αVβ6関連疾患または障害についてスクリーニングするための検定キットを含む。キットは、αVβ6と結合する抗体およびαVβ6が存在する場合にはそれと抗体の反応を示す手段を含む。抗体はモノクローナル抗体であり得る。一態様において、αVβ6と結合する抗体は標識される。別の態様では、抗体は非標識一次抗体であり、キットはさらに一次抗体の検出手段を含む。一態様において、この手段は、抗免疫グロブリンである標識二次抗体を含む。好ましくは、抗体は、蛍光色素、酵素、放射性核種および放射線不透過性物質から成る群から選択されるマーカーにより標識されている。
【0089】
抗αVβ6抗体に関するさらなる態様、特徴などについては、下記でさらに詳細に説明する。
【0090】
配列リスト
本発明の態様は、下記表1に列挙した特異的抗αVβ6抗体を含む。この表は、各抗αVβ6抗体の識別番号を、対応する重鎖および軽鎖遺伝子の可変ドメインの配列番号と一緒に記録している。各抗体には、「sc」という文字に次いで番号を含む識別番号が与えられている。
【表1】

【表2】

【表3】

【0091】
定義
特に断らなければ、本明細書で使用している科学および技術用語は、一般的に当業者により理解されている意味を有するものとする。さらに、文脈上特に要求されなければ、単数形の用語は複数の場合も包含し、複数形の用語は、単数の場合も含むものとする。一般的に、本明細書に記載されている細胞および組織培養、分子生物学、およびタンパク質およびオリゴまたはポリヌクレオチド化学およびハイブリダイゼーションに関して利用される命名法およびそれらの技術は、公知であり、当業界で常用されているものである。
【0092】
組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、および組織培養および形質転換(例えば、電気穿孔、リポフェクション)については標準技術を使用する。酵素反応および精製技術は、製造業者の仕様書に従って、または当業界で通常実施されている要領で、または本明細書の記載に従って実施される。前述の技術および手順は、当業界で公知の慣用的方法に従って、本明細書全体を通して引用および検討されている様々な一般的およびさらに詳細な参考文献に記載の要領で実施される。例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press, コールドスプリングハーバー、ニューヨーク (2001))参照、これについては出典明示で援用する。ここに記載の分析化学、合成有機化学、および医薬および製薬化学に関して利用されている命名法、およびそれらの実験手順および技術は、当業界では公知であり、常用されているものである。化学合成、化学分析、医薬調製物、製剤および送達、および患者の処置については、標準技術を使用する。
【0093】
本開示に従って利用されている以下の用語は、特に断らなければ、次の意味を有するものとする。
【0094】
本明細書で使用している「および/または」の語は、2つの特定の特徴または成分のそれぞれが他方と共に、または片方のみが具体的に示されているものとして解釈される。例えば、「Aおよび/またはB」は、(i)A、(ii)Bおよび(iii)AおよびBのそれぞれの場合を、それぞれが本明細書で個々に示されているかのごとく具体的に示されているものとして解釈するべきである。
【0095】
アンタゴニストは、ポリペプチド、核酸、炭水化物、脂質、小分子量化合物、オリゴヌクレオチド、オリゴペプチド、RNA干渉(RNAi)、アンチセンス、組換えタンパク質、抗体、またはそのコンジュゲートまたは融合タンパク質であり得る。RNAiの概説については、Milhavet O, Gary DS, Mattson MP. (Pharmacol Rev. 2003年12月;55(4):629-48. Review.)参照、アンチセンスについては、Opalinska JB, Gewirtz AM. (Sci STKE. 2003年10月28日;2003 (206):pe47.)参照。
【0096】
「αVβ6」の疾患関連異常活性化または発現は、異常な、望ましくないまたは病理学的細胞接着、例えば腫瘍関連細胞接着であり得る。細胞接着関連疾患には、限定されるわけではないが、非固体腫瘍、例えば白血病、多発性骨髄腫またはリンパ腫、および固体腫瘍、例えばメラノーマ、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、肝細胞(肝臓)癌、神経膠芽腫、甲状腺、胆管、骨、胃、脳/CNS、頭部および頸部、肝臓系、腹部、前立腺、乳房、腎臓、精巣、卵巣、皮膚、頸部、肺、筋肉、ニューロン、食道、膀胱、肺、子宮、外陰部、子宮内膜、腎臓、結腸直腸、膵臓、胸膜/腹膜、唾液線および表皮の癌腫がある。
【0097】
化合物とは、分子量が約2000ダルトン未満である小分子量化合物を包含する。
「αVβ6」の語は、αV鎖およびβ6鎖から成るヘテロ二量体インテグリン分子をいう。
【0098】
「中和性の」の語は、標的結合剤、例えば抗体について用いられる場合、上記の標的結合剤が標的抗原の活性を排除、または著しく低減化する能力に関するものである。したがって、「中和性」抗αVβ6抗体は、αVβ6の活性を排除または著しく縮小させ得る。中和性αVβ6抗体は、例えば、インテグリンαVβ6へのTGFβLAPの結合を遮断することにより作用し得る。この結合を遮断することにより、αVβ6依存的細胞接着は、著しく、または完全に排除される。理想的には、αVβ6に対する中和性抗体は、細胞接着を阻害する。
【0099】
本明細書で使用している「単離ポリヌクレオチド」の語は、それが天然で存在する環境から単離されているポリヌクレオチドをいう。上記ポリヌクレオチドは、ゲノム、cDNAまたは合成起源によるものであり得る。単離ポリヌクレオチドは、好ましくはそれらが自然の状態で付随しているポリヌクレオチドの全部または一部分に付随してはいない。単離ポリヌクレオチドは、自然の状態では結合されていない別のポリヌクレオチドと機能し得るように結合され得る。さらに、単離ポリヌクレオチドは、好ましくは長い配列の一部として天然に存在するものではない。
【0100】
本明細書でいう「単離タンパク質」の語は、それが自然界に存在する環境から単離されたタンパク質を意味する。上記タンパク質は、ゲノムDNA、cDNA、組換えDNA、組換えRNAまたは合成起源またはそれらの組合わせから誘導され得、その起源または誘導供給源により、「単離タンパク質」は、(1)天然で見出されるタンパク質に付随していないか、(2)同一供給源からの他のタンパク質を含まない、例えばマウスタンパク質を含まないか、(3)異なる種からの細胞により発現されるか、または(4)天然では存在しない。
【0101】
一般用語として本明細書で使用している「ポリペプチド」の語は、天然タンパク質、ポリペプチド配列のフラグメントまたは類似体をいう。このため、天然タンパク質、フラグメント、および類似体は、ポリペプチド類の化学種である。本発明による好ましいポリペプチドは、ヒト重鎖免疫グロブリン分子およびヒトカッパ軽鎖免疫グロブリン分子、および重鎖免疫グロブリン分子を軽鎖免疫グロブリン分子、例えばカッパまたはラムダ軽鎖免疫グロブリン分子と共に含む組合わせ(逆もまた同様)により形成される抗体分子、およびそのフラグメントおよび類似体を含む。本発明による好ましいポリペプチドはまた、ヒト重鎖免疫グロブリン分子またはそのフラグメントのみを含み得る。
【0102】
本明細書においてある対象に適用される「天然に存在する」の語は、その対象が天然で見出され得るという事実を示す。例えば、天然での供給源から単離され得、実験その他で人為的修飾が加えられていない生物体(ウイルスを含む)に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列は、天然に存在するものである。
【0103】
本明細書で使用している「機能し得るように結合された」の語は、記載された成分が意図された形でそれらを機能させ得る位置関係に置かれていることをいう。例えば、コーディング配列に「機能し得るように結合された」制御配列は、コーディング配列の発現が制御配列と適合し得る条件下で達成されるように連結されている。
【0104】
本明細書で使用している「ポリヌクレオチド」の語は、少なくとも10塩基長のヌクレオチドのポリマー形態で、リボヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドまたはいずれかのタイプのヌクレオチドの修飾形態、またはRNA−DNAヘテロ−デュプレックスをいう。この語は、DNAの1本および2本鎖形態を包含する。
【0105】
本明細書でいう「オリゴヌクレオチド」の語は、天然に存在するヌクレオチド、および天然および非天然的結合により連結された修飾ヌクレオチドを包含する。オリゴヌクレオチドは、一般に200またはそれ未満の塩基長を含むポリヌクレオチドサブセットである。好ましくは、オリゴヌクレオチドは、10〜60塩基長、最も好ましくは12、13、14、15、16、17、18、19または20〜40塩基長である。オリゴヌクレオチドは、例えばプローブ用としては通常1本鎖であるが、オリゴヌクレオチドは、例えば遺伝子突然変異体の構築用には2本鎖であり得る。オリゴヌクレオチドは、センスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドであり得る。
【0106】
本明細書でいう「天然(に存在する)ヌクレオチド」の語は、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドを包含する。本明細書でいう「修飾ヌクレオチド」の語は、修飾または置換された糖基などをもつヌクレオチドを包含する。本明細書でいう「オリゴヌクレオチド結合」の語は、例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホラニラデート、ホスホロアミデートなどのオリゴヌクレオチド結合を含む。例えば、LaPlanche et al., Nucl. Acids Res. 14:9081 (1986); Stec et al., J. Am. Chem. Soc. 106:6077 (1984); Stein et al., Nucl. Acids Res. 16:3209 (1988); Zon et al., Anti-Cancer Drug Design 6:539 (1991); Zon et al., Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, 87−108頁 (F. Eckstein 編、Oxford University Press, オックスフォード、英国 (1991)); Stec et al., 米国特許第5151510号; Uhlmann および Peyman Chemical Reviews 90:543 (1990)参照、これらの開示については出典明示で援用する。オリゴヌクレオチドは、所望ならば検出用の標識を含み得る。
【0107】
本明細書でいう「選択的にハイブリダイゼーションする」の語は、検出可能かつ特異的に結合することを意味する。ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチドおよびそれらのフラグメントは、非特異的核酸に対する相当の検出可能結合量を最小限にするハイブリダイゼーションおよび洗浄条件下で核酸鎖と選択的にハイブリダイゼーションする。高度に厳密な条件を用いることにより、当業界で周知であり、本明細書で検討している選択的ハイブリダイゼーション条件が達成され得る。一般的に、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチドまたは抗体フラグメントおよび興味の対象である核酸配列間の核酸配列相同性は、少なくとも80%、さらに典型的には少なくとも85%、90%、95%、99%および100%のさらに高い相同性が好ましい。
【0108】
「CDR領域」または「CDR」の語は、Kabat et al., 1991 (Kabat, E.A. et al., (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版、米国保健福祉省、公益事業、NIH、ワシントン)および後続版により定義されたところによると、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の高可変領域を示すものとする。抗体は、典型的には3つの重鎖CDRおよび3つの軽鎖CDRを含む。本明細書で使用しているCDRまたは複数形のCDRの語は、場合によっては、抗体が認識する抗原またはエピトープについての抗体の親和力による結合に関与するアミノ酸残基の大多数を含むこれらの領域の1つまたはこれらの領域の幾つか、または全体を示すものとする。
【0109】
6つの短いCDR配列の中で、重鎖の第3CDR(HCDR3)は、大きなサイズ変動性(本質的にそれを生じさせる遺伝子配置機構に起因する大きな多様性)を有する。既知の最長サイズは26であるが、それは2アミノ酸程度の短いものであり得る。CDR長はまた、特定の根本的フレームワークにより調整され得る長さによって変化し得る。機能的には、HCDR3は、抗体の特異性の決定において部分的にある一定の役割を演じる(Segal et al., PNAS, 71:4298-4302, 1974, Amit et al., Science, 233:747-753, 1986, Chothia et al., J. Mol. Biol., 196:901-917, 1987, Chothia et al., Nature, 342:877- 883, 1989, Caton et al., J. Immunol., 144:1965-1968, 1990, Sharon et al., PNAS, 87:4814-4817, 1990, Sharon et al., J. Immunol., 144:4863-4869, 1990, Kabat et al., J. Immunol., 147:1709-1719, 1991)。
【0110】
本明細書でいう「CDRのセット」の語は、CDR1、CDR2およびCDR3を含む。すなわち、HCDRのセットとは、HCDR1、HCDR2およびHCDR3(HCDRは可変重鎖CDRをいう)をいい、LCDRのセットとは、LCDR1、LCDR2およびLCDR3(LCDRは可変軽鎖CDRをいう)をいう。特に断らなければ、「CDRのセット」は、HCDRおよびLCDRを含むものとする。
【0111】
2つのアミノ酸配列間に部分的または完全な同一性がある場合、それらの配列は「相同性」である。例えば、85%相同性とは、2つの配列をマッチが最大となるように整列させたときにアミノ酸の85%が同一であることを意味する。ギャップ(マッチしている2配列のいずれかにおける)はマッチを最大にする場合に認められる。5またはそれ未満のギャップ長が好ましく、2またはそれ未満がさらに好ましい。他方、そして好ましくは、2つのタンパク質配列(または少なくとも約30アミノ酸長を有するそこから誘導されたポリペプチド配列)が、突然変異データマトリックスおよび6またはそれより大きいギャップペナルティによるプログラムALIGNを使用したときに5を超えるアラインメントスコア(標準偏差単位で)を有する場合、本明細書におけるこの語の上記使用と同様、それらの配列は相同性である。Dayhoff, M.O., Atlas of Protein Sequence and Structure,101−110頁 (第5巻、National Biomedical Research Foundation (1972))およびこの巻に対する補遺2、1−10頁参照。さらに好ましくは、2つの配列またはその一部について、ALIGNプログラムを用いて最適な形で整列させたときに、それらのアミノ酸が50%またはそれより大きい割合で同一である場合、それらは相同性である。2つのオーソログ配列内に相同性の異なる領域が存在し得ることもあるものとする。例えば、マウスおよびヒトオーソログの機能性部位は、非機能性領域より高度の相同性を有し得る。
【0112】
本明細書で使用している「に対応する」の語は、ポリヌクレオチド配列が、リファレンスポリヌクレオチド配列の全部または一部分と相同性である(すなわち、厳密に進化的に関連しているのではなく、同一である)こと、またはポリペプチド配列がリファレンスポリペプチド配列と同一であることを意味する。
【0113】
対比的に、本明細書で使用している「と相補的な」の語は、相補的配列がリファレンスポリヌクレオチド配列の全部または一部分と相同性であることを意味する。実例を挙げると、ヌクレオチド配列「TATAC」は、リファレンス配列「TATAC」に対応し、リファレンス配列「GTATA」と相補的である。
【0114】
「配列同一性」の語は、2つのポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列が、比較ウインドウ全体にわたって同一である(すなわち、ヌクレオチドごとまたは残基ごとに基づいて)ことを意味する。「配列同一性のパーセンテージ」の語は、比較ウインドウ全体にわたって最適となるように整列させた2つの配列を比較し、同一核酸塩基(例、A、T、C、G、UまたはI)またはアミノ酸残基が両配列で現れる位置の数を測定して、マッチした位置の数を得、マッチした位置の数を比較ウインドウにおける総数(すなわち、ウインドウサイズ)で割り、結果を100倍して、配列同一性のパーセンテージを得ることにより計算される。本明細書で使用している「実質的同一性」の語は、ポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列の特徴を示すもので、ポリヌクレオチドまたはアミノ酸は、少なくとも18ヌクレオチド(6アミノ酸)位置の比較ウインドウ全体にわたって、多くの場合少なくとも24〜48ヌクレオチド(8〜16アミノ酸)位置のウインドウ全体にわたってリファレンス配列と比べたときに少なくとも85パーセント配列同一性、好ましくは少なくとも90〜95パーセント配列同一性、さらに好ましくは少なくとも99パーセント配列同一性を有する配列を含む場合をいい、配列同一性のパーセンテージは、比較ウインドウ全体にわたって総計してリファレンス配列の20パーセントまたはそれ未満となる欠失または付加を含み得る配列とリファレンス配列を比較することにより計算される。リファレンス配列は、長い配列のサブセットであり得る。
【0115】
本明細書で使用している20の慣用アミノ酸およびそれらの省略形は、慣用的用法に従う。Immunology - A Synthesis (第2版、E.S. Golub および D.R. Gren 編、Sinauer Associates, サンダーランド、マサチューセッツ(1991))参照、これについては出典明示で援用する。また、20の慣用アミノ酸の立体異性体(例、D−アミノ酸)、非天然アミノ酸、例えばα−、α−ジ置換アミノ酸、N−アルキルアミノ酸、酪酸および他の非慣用的アミノ酸は、本発明ポリペプチドにとって適切な構成成分であり得る。非慣用的アミノ酸の例には、4−ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタメート、ε−N,N,N−トリメチルリシン、ε−N−アセチルリシン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリシン、σ−N−メチルアルギニンおよび他の類似アミノ酸およびイミノ酸(例、4−ヒドロキシプロリン)がある。本明細書で使用しているポリペプチド表記法では、標準の用法および慣用法に従って、左手方向がアミノ末端方向であり、右手方向がカルボキシ末端方向である。
【0116】
同様に、特に断らなければ、1本鎖ポリヌクレオチド配列の左側末端は5'末端であり、2本鎖ポリヌクレオチド配列の左手方向は5'方向を指す。新生RNA転写物の5'から3'への付加の方向を転写方向という。RNAと同じ配列を有するDNA鎖上にあって、RNA転写物の5'末端に対し5'である配列領域を、「上流配列」といい、RNAと同じ配列を有するDNA鎖上にあって、RNA転写物の3'末端に対し3'である配列領域を「下流配列」という。
【0117】
ポリペプチドに適用している「実質的同一性」の語は、2つのペプチド配列を、例えばデフォルトギャップ加重を用いるプログラムGAPまたはBESTFITにより最適となるように整列させたとき、それらが少なくとも80パーセント配列同一性、好ましくは少なくとも90パーセント配列同一性、さらに好ましくは少なくとも95パーセント配列同一性、最も好ましくは少なくとも99パーセント配列同一性を共有することを意味する。好ましくは、同一ではない残基位置は、同類アミノ酸置換により異なる。同類アミノ酸置換は、類似側鎖を有する残基の互換性をいう。例えば、脂肪族側鎖を有する一群のアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンである。脂肪族ヒドロキシル側鎖を有する一群のアミノ酸は、セリンおよびトレオニンである。アミド含有側鎖を有するアミノ酸の一群は、アスパラギンおよびグルタミンである。芳香族側鎖を有するアミノ酸の一群は、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンである。塩基性側鎖を有するアミノ酸の一群は、リシン、アルギニンおよびヒスチジンである。硫黄含有側鎖を有するアミノ酸の一群は、システインおよびメチオニンである。好ましい同類アミノ酸置換基は、バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リシン−アルギニン、アラニン−バリン、グルタミン酸−アスパラギン酸、およびアスパラギン−グルタミンである。
【0118】
ここに記載している抗体または免疫グロブリン分子のアミノ酸配列における僅かな変形も、アミノ酸配列における変化が、ここに記載の抗体または免疫グロブリン分子に対し少なくとも約75%、さらに好ましくは少なくとも80%、90%、95%および最も好ましくは約99%の配列同一性を維持するものであれば、本発明に含まれるものとする。特にこの場合、保存アミノ酸置換が考えられる。同類置換は、関連した側鎖を有するアミノ酸の一ファミリー内で行われるものである。遺伝子コード化されたアミノ酸は、一般的に次のファミリー:(1)酸性=アスパラギン酸、グルタミン酸;(2)塩基性=リシン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性=アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;および(4)非荷電極性=グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシンに分類される。さらに好ましいファミリーは次のとおりである:セリンおよびトレオニンは脂肪族ヒドロキシファミリーである;アスパラギンおよびグルタミンはアミド含有ファミリーである;アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンは脂肪族ファミリーである;フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンは芳香族ファミリーである。例えば、特に置換がフレームワーク内のアミノ酸を巻き込まなければ、イソロイシンまたはバリンによるロイシンの、グルタメートによるアスパルテートの、セリンによるトレオニンの単独置換、または一アミノ酸の構造上関連したアミノ酸による類似置換が、生成した分子の結合機能または特性に大した影響を及ぼさないと予測するのは妥当である。
【0119】
アミノ酸変化が機能性ペプチドをもたらすか否かは、ポリペプチド誘導体の比活性を検定することにより容易に決定され得る。検定法は本明細書で詳述されている。抗体または免疫グロブリン分子のフラグメントまたは類似体は、当業者により容易に調製され得る。フラグメントまたは類似体の好ましいアミノおよびカルボキシ末端は、機能性ドメインの境界付近に現れる。構造的および機能的ドメインは、公開または著作権のある配列データベースとヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列データを比較することにより同定され得る。好ましくは、コンピューターによる比較方法を用いることにより、既知構造および/または機能を有する他のタンパク質で現れる配列モチーフまたは推定タンパク質立体配座ドメインを同定する。既知三次元構造に折りたたまれるタンパク質配列の同定方法は公知である。Bowie et al., (1991) Science 253:164。すなわち、前述の例は、当業者であれば、ここに記載の抗体に従って構造的および機能的ドメインを特定するのに使用され得る配列モチーフおよび構造的立体配座を認識できることを立証している。
【0120】
本発明のさらなる態様は、表1、添付の配列リストに示された抗体、ここに記載の抗体のいずれかのVHドメイン、または表8または表29に示されたHCDR(例、HCDR1、HCDR2またはHCDR3)と少なくとも約60、70、80、85、90、95、98または約99%アミノ酸配列同一性を有するVHドメインを含むターゲッティング結合剤または抗体分子である。またターゲッティング結合剤または抗体分子は、所望により表1、添付の配列リストに示された抗体、ここに記載の抗体のいずれかのVLドメイン、または表9または表30に示されたLCDR(例、LCDR1、LCDR2またはLCDR3)と少なくとも約60、70、80、85、90、95、98または約99%アミノ酸配列同一性を有するVLドメインを含み得る。2つのアミノ酸配列の同一性%を計算するのに使用され得るアルゴリズムには、例えばBLAST(Altschul et al., (1990) J. Mol. Biol. 215: 405-410)、FASTA(Pearson および Lipman (1988) PNAS USA 85: 2444-2448)またはSmith-Watermanアルゴリズム(Smith および Waterman (1981) J. Mol Biol. 147: 195-197)があり、例えばデフォルトパラメーターを使用する。若干の態様において、上記のアミノ酸配列同一性を共有するターゲッティング結合剤または抗体は、リファレンス抗体と実質的に同じ活性を呈する。例えば、実質的に同じ活性は、約50%以下、40%、30%、20%、10%、5%、2%、1%またはそれ未満の割合でリファレンス抗体の活性とは異なる少なくとも一つの活性を含む。
【0121】
抗原結合部位は、一般的に可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)免疫グロブリンドメインにより形成され、相補性(complimentarity)決定領域(CDR)と呼ばれる6つの表面ポリペプチドループにより形成される抗原結合インターフェースを伴う。フレームワーク領域(FR)と一緒に、各VH(HCDR1、HCDR2、HCDR3)および各VL(LCDR1、LCDR2、LCDR3)には3つのCDRが存在する。
【0122】
VHまたはVLドメインは、単独でも抗原との結合に使用され得るが、典型的には、VHドメインは、VLドメインと対合することにより抗体抗原結合部位を提供する。VHドメイン(例、表1から)がVLドメイン(例、表1から)と対合し得ることにより、VHおよびVLの両ドメインを含む抗体抗原結合部位が形成される。本明細書で開示している他のVHおよびVLドメインについても同様の態様が提供される。他の態様では、表8または表29におけるVH鎖が異種VLドメインと対合される。軽鎖乱交雑性は当業界では十分に確立されている。また、本発明は、本明細書で開示している他のVHおよびVLドメインについても同様の態様を提供する。すなわち、親抗体または表9または表30における抗体鎖のいずれかのVHは、親抗体または表1における抗体のいずれかまたは他の抗体のVLと対合され得る。
【0123】
抗原結合部位は、親抗体または表1における抗体のいずれかのHおよび/またはL CDRのセットを含み、開示されたHおよび/またはL CDRのセット内に20、16、10、9程度またはそれ以下、例えば1、2、3、4または5つのアミノ酸付加、置換、欠失および/または挿入を伴い得る。これに代わるものとして、抗原結合部位は、親抗体または表1における抗体のいずれかのHおよび/またはL CDRのセットを含み、開示されたHおよび/またはL CDRのセット内に20、16、10、9程度またはそれ以下、例えば1、2、3、4または5つのアミノ酸置換を伴い得る。上記修飾は、潜在的にはCDRのセット内のいずれの残基においても加えられ得る。
【0124】
好ましいアミノ酸置換とは、(1)タンパク質分解に対する感受性を低下させる、(2)酸化に対する感受性を低下させる、(3)タンパク質複合体の形成に関する結合親和性を改変する、(4)結合親和性を改変する、(4)上記類似体の他の物理化学的または機能的特性を付与または修飾するものである。類似体は、天然に存在するペプチド配列以外の配列の様々な突然変異タンパク質を含み得る。例えば、単一または多数のアミノ酸置換(好ましくは同類アミノ酸置換)は、天然配列(好ましくは分子間接触を形成するドメイン(複数も可)の外側にあるポリペプチド部分)において導入され得る。同類アミノ酸置換は、親配列の構造特性を実質的に変えるべきではない(例、置換アミノ酸は、親配列に存在するらせんを破壊したり、親配列を特徴づける他のタイプの二次構造を崩壊する傾向を示すべきではない)。当業界で認められているポリペプチド二次および三次構造の例は、Proteins, Structures and Molecular Principles (Creighton 編、W. H. Freeman and Company, ニューヨーク(1984)); Introduction to Protein Structure (C. Branden および J. Tooze 編、Garland Publishing, ニューヨーク、ニューヨーク (1991)); および Thornton et at. Nature 354:105 (1991)に記載されており、それぞれ出典明示で援用する。
【0125】
本発明のさらなる態様は、表1、添付の配列リストに列挙または本明細書に記載した抗体のいずれかのVHドメイン、または表8または表29に示されたHCDR(例、HCDR1、HCDR2またはHCDR3)と少なくとも約60、70、80、85、90、95、98または約99%アミノ酸配列同一性を有するVHドメインを含む抗体分子である。また抗体分子は、所望により表1、添付の配列リストに示されたかまたは本明細書に記載の抗体のいずれかのVLドメイン、または表9または表30に示されたLCDR(例、LCDR1、LCDR2またはLCDR3)と少なくとも60、70、80、85、90、95、98または約99%アミノ酸配列同一性を有するVLドメインを含み得る。2つのアミノ酸配列の同一性%を計算するのに使用され得るアルゴリズムには、例えばBLAST(Altschul et al., (1990) J. Mol. Biol. 215: 405-410)、FASTA(Pearson and Lipman (1988) PNAS USA 85: 2444-2448)またはSmith-Watermanアルゴリズム(Smith and Waterman (1981) J. Mol Biol. 147: 195-197)があり、例えばデフォルトパラメーターを使用する。
【0126】
本発明のVHおよびVLドメインおよびCDRの変異型は、アミノ酸配列が本明細書で示されており、αVβ6について薬剤および抗体をターゲッティングするのに使用され得るものを含め、配列改変または突然変異導入および所望の特徴を伴う抗原ターゲッティングに関するスクリーニングの方法により得られる。所望の特徴の例には、限定されるわけではないが、抗原に特異的である既知抗体と比べて抗原についての高い結合親和力、抗原活性が判明している場合に抗原に特異的である既知抗体よりも高い抗原活性中和力、特定モル比での抗原に対する既知抗体またはリガンドとの特異的競争力、複合体を免疫沈降させる能力、特定エピトープ、線形エピトープ、例えばここに記載のペプチド結合スキャンを用いて、例えば線形および/または束縛された立体構造でスクリーニングされたペプチドを用いて同定されるペプチド配列、非連続残基により形成された立体構造エピトープへの結合能、αVβ6または下流分子の新たな生物活性の調節能力がある。本発明は上記方法も提供する。
【0127】
本明細書で開示した抗体分子の変異型は、本発明で製造および使用され得る。構造/特性−活性関係への多変量データ解析技術の適用におけるコンピューター化学技法の前例に従って(Wold, et al., Multivariate data analysis in chemistry. Chemometrics -Mathematics and Statistics in Chemistry (B. Kowalski 編), D. Reidel Publishing Company, ドルドレヒト、オランダ国、1984)、抗体の量的活性−特性関係が、公知の数学的技術、例えば統計回帰分析、パターン認識および分類法を用いて誘導され得る(Norman et al., Applied Regression Analysis. Wiley-Interscience; 第3版(1998年4月); Kandel, Abraham & Backer, Eric. Computer-Assisted Reasoning in Cluster Analysis. Prentice Hall PTR, (1995年5月11日); Krzanowski, Wojtek. Principles of Multivariate Analysis: A User’s Perspective (Oxford Statistical Science Series, No 22 (研究論文)). Oxford University Press; (2000年12月); Witten, Ian H. & Frank, Eibe. Data Mining: Practical Machine Learning Tools and Techniques with Java Implementations. Morgan Kaufmann; (1999年10月11日);Denison David G. T. (編), Christopher C. Holmes, Bani K. Mallick, Adrian F. M. Smith. Bayesian Methods for Nonlinear Classification and Regression (Wiley Series in Probability and Statistics). John Wiley & Sons; (2002年7月); Ghose, Arup K. & Viswanadhan, Vellarkad N. Combinatorial Library Design and Evaluation Principles, Software, Tools, and Applications in Drug Discovery)。抗体の特性は、抗体配列、機能的および三次元構造の経験的および理論的モデル(例えば、可能性のある接触残基の分析または計算された物理化学特性)から演繹され得、これらの特性は単独および組合わせて考慮され得る。
【0128】
VHドメインおよびVLドメインにより構成される抗体抗原結合部位は、典型的にはポリペプチドの6ループ:軽鎖可変ドメイン(VL)からの3ループおよび重鎖可変ドメイン(VH)からの3ループにより形成される。既知原子構造の抗体の分析により、抗体結合部位の配列と三次元構造間の関係が解明され得る。これらの関係は、VHドメインにおける第3領域(ループ)を除き、結合部位ループが少数の主鎖立体配座:正規構造の一つを有することを暗示している。特定ループで形成される正規構造は、そのサイズおよびループおよびフレームワークの両領域にある重要部位におけるある種の残基の存在により決定されることが示された。
【0129】
この配列−構造関係の試験は、配列は既知であるが、三次元構造は未知である抗体において、そのCDRループの三次元構造を維持するのに重要であることから、結合特異性を維持している残基を予測するのに使用され得る。これらの予測は、前例の最適化実験からのアウトプットと予測結果の比較により裏付けされ得る。構造的研究方法では、自由に入手可能または市販のパッケージ、例えばWAMを用いることにより抗体分子のモデルが作製され得る。次いで、タンパク質視覚化および分析ソフトウェアパッケージ、例えばInsight II(Accelrys, Inc.)またはDeep Viewを用いることにより、CDRにおける各位置での可能な置換が評価され得る。次いで、この情報を用いることにより、活性に対して最小限または有益な影響を及ぼすと思われる置換が導入され得る。
【0130】
一般にCDR、抗体VHまたはVLドメインおよび/または結合剤のアミノ酸配列内に置換を導入するのに要求される技術は、当技術分野で利用し得るものである。活性に対して最小限または有益な影響を及ぼすと予測され得るかまたはされ得ない置換を加えることにより、様々な配列が作製され、結合能および/または中和能について、および/または他の所望の特性について試験され得る。
【0131】
本明細書で配列が具体的に開示されているVHおよびVLドメインのいずれかの可変ドメインアミノ酸配列変異型は、検討されている要領で本発明にしたがって使用され得る。
【0132】
本明細書で使用している「ポリペプチドフラグメント」の語は、アミノ末端および/またはカルボキシ末端欠失を有するが、残りのアミノ酸配列が、例えば完全長cDNA配列から推定される天然配列における対応位置と同一であるポリペプチドをいう。フラグメントは、典型的には少なくとも約5、6、8または10アミノ酸長、好ましくは少なくとも約14アミノ酸長、さらに好ましくは少なくとも約20アミノ酸長、通常少なくとも約50アミノ酸長、さらに好ましくは少なくとも約70アミノ酸長である。本明細書で使用している「類似体」の語は、推定されるアミノ酸配列の一部分との実質的同一性を有し、次の特性:(1)適切な結合条件下におけるαVβ6への特異的結合性、(2)適切なリガンド/αVβ6結合を遮断する能力、または(3)αVβ6活性の阻害能の少なくとも1つを有する少なくとも約25アミノ酸のセグメントにより構成されるポリペプチドをいう。典型的には、ポリペプチド類似体は、天然配列に関して同類アミノ酸置換(または付加または欠失)を含む。類似体は、典型的には少なくとも20アミノ酸長、好ましくは少なくとも50アミノ酸長またはそれより長いものであり、多くの場合完全長天然ポリペプチドと同程度の長さであり得る。
【0133】
ペプチド類似体は、鋳型ペプチドと特性が類似している非ペプチド薬剤として製薬業界で常用される。これらのタイプの非ペプチド化合物は、「ペプチド模倣物質」または「ペプチドミメティクス」と呼ばれる。Fauchere, J. Adv. Drug Res. 15:29 (1986); Veber および Freidinger TINS p.392 (1985);および Evans et al., J. Med. Chem. 30:1229 (1987)、これらについては出典明示で援用する。上記化合物は、コンピューターによる分子モデリングの助けを借りて開発されることが多い。治療上有用なペプチドと構造が類似しているペプチド模倣物質は、均等内容の治療的または予防的効果を生じさせるのに使用され得る。一般的に、ペプチド模倣物質は、パラダイムポリペプチド(すなわち、生化学的特性または薬理学的活性を有するポリペプチド)、例えばヒト抗体と構造的に類似しているが、所望により、当業界で公知の方法により、--CHNH--、--CHS--、--CH−CH--、--CH=CH--(シスおよびトランス)、--COCH--、--CH(OH)CH--および−CHSO--から成る群から選択される結合により置換されていてもよい1つまたはそれ以上のペプチド結合を有する。共通配列の1個またはそれ以上のアミノ酸を同一タイプのD−アミノ酸と系統的に置換(L−リシンをD−リシンにより置換)することにより、さらに安定したペプチドが生成され得る。さらに、共通配列または実質的に同一の共通配列変異を含む拘束型ペプチドは、当業界で公知の方法(Rizo および Gierasch Ann. Rev. Biochem. 61:387 (1992)、出典明示で援用する)、例えばペプチドを閉環する分子内ジスルフィド結合を形成し得る内部システイン残基を付加することにより生成され得る。
【0134】
本明細書で使用している「抗体」の語は、抗原の抗原決定基の特徴と相補的な内部表面形状および電荷分布をもつ三次元結合空間を有するポリペプチド鎖の折りたたみから形成される少なくとも1つの結合ドメインにより構成されるポリペプチドまたはポリペプチドの一群をいう。抗体は、典型的にはポリペプチド鎖の2つの同一対を含む四量体形態を有しており、各対は1つの「軽」鎖および1つの「重」鎖を有する。各軽/重鎖対の可変領域が抗体結合部位を形成する。
【0135】
本明細書で使用している「標的結合剤」は、優先的に標的部位へ結合する作用物質、例えば抗体またはその結合性フラグメントである。一例において、標的結合剤は、唯一の標的部位に特異的である。他の例では、標的結合剤は、複数の標的部位に特異的である。一例では、標的結合剤はモノクローナル抗体であり得、標的部位はエピトープであり得る。下記によると、標的結合剤は、抗体の少なくとも1つの抗原結合ドメインを含み得、上記ドメインは縮合しているかまたは異種タンパク質内に含まれる。
【0136】
抗体の「結合性フラグメント」は、組換えDNA技術により、または無傷の抗体の酵素的または化学的開裂により製造される。結合性フラグメントには、Fab、Fab'、F(ab')、Fvおよび1本鎖抗体がある。「二重特異性」または「二価」抗体以外の抗体は、その結合部位のそれぞれが同一であるものとする。過剰の抗体がカウンター受容体に結合した受容体の量を少なくとも約20%、40%、60%または80%の率、通常は約85%より大きい率で減少させる場合(インビトロ競合結合検定法で測定)、抗体は実質的にカウンター受容体への受容体の接着を阻害している。
【0137】
抗体は、オリゴクローナル、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、多重特異性抗体、二重特異性抗体、触媒性抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、抗イディオタイプ抗体および可溶性または結合形態で標識され得る抗体およびそのフラグメント、変異型または誘導体であり、単独または公知技術により提供される他のアミノ酸配列と組み合わされたものであり得る。抗体は、いかなる種に由来するものでもよい。抗体の語はまた、本発明抗体の結合性フラグメントを包含する。フラグメントの典型例には、Fv、Fab、Fab'、1本鎖抗体(svFC)、二量体可変領域(二重特異性抗体)およびジスルフィド安定化可変領域(dsFv)がある。
【0138】
全抗体のフラグメントでも抗原結合機能を遂行し得ることが示された。結合性フラグメントの例は、(Ward, E.S. et al., (1989) Nature 341, 544-546)VL、VH、CLおよびCH1ドメインから成るFabフラグメント;(McCafferty et al., (1990) Nature, 348, 552-554)VHおよびCH1ドメインから成るFdフラグメント;(Holt et al., (2003) Trends in Biotechnology 21, 484-490)単抗体のVLおよびVHドメインから成るFvフラグメント;(iv)VHまたはVLドメインから成るdAbフラグメント(Ward, E.S. et al., Nature 341, 544-546 (1989), McCafferty et al., (1990) Nature, 348, 552-554, Holt et al., (2003) Trends in Biotechnology 21, 484-490);(v)単離CDR領域;(vi)F(ab')フラグメント、2つの結合されたFabフラグメントを含む二価フラグメント;(vii)1本鎖Fv分子(scFv)、この場合VHドメインおよびVLドメインをペプチドリンカーで連結させることにより、2つのドメインが会合して抗原結合部位を形成し得る(Bird et al., (1988) Science, 242, 423-426, , Huston et al., (1988) PNAS USA, 85, 5879-5883);(viii)二重特異性1本鎖Fv二量体(PTC/US92/09965)および(ix)遺伝子融合により構築される「二重特異性抗体」、多価または多重特異性フラグメント(WO94/13804; Holliger, P. (1993) et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90 6444-6448)である。Fv、scFVまたは二重特異性分子は、VHドメインとVLドメインを結合するジスルフィド架橋を組み込むことにより安定化され得る(Reiter, Y. et al., Nature Biotech, 14, 1239-1245, 1996)。CH3ドメインに連結したscFVを含むミニボディー(低分子量抗体)も作製され得る(Hu, S. et al., (1996) Cancer Res., 56, 3055-3061)。結合性フラグメントの他の例は、抗体ヒンジ領域からの1個またはそれ以上のシステインを含む、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端における少数残基の付加によりFabフラグメントとは相違を示すFab'、および定常ドメインのシステイン残基(複数も可)が遊離チオール基をもつFab'フラグメントであるFab'−SHである。
【0139】
「エピトープ」の語は、免疫グロブリンまたはT細胞受容体へ特異的に結合し得るタンパク質決定基を包含する。エピトープ性決定基は、通常化学活性表面分子群、例えばアミノ酸または糖側鎖により構成され、必ずというわけではないが、特異的三次元構造特性および特異的電荷特性を有し得る。解離定数が1μMまたはそれ以下、好ましくは100nMまたはそれ以下、最も好ましくは10nMまたはそれ以下であるとき、抗体は抗原と特異的に結合すると言われる。
【0140】
本明細書で使用している「作用物質」の語は、化学的化合物、化学的化合物の混合物、生物学的巨大分子、または生物材料から得られる抽出物を示す。
【0141】
αVβ6ヘテロ二量体ポリペプチドに関する「活性の」または「活性」とは、天然αVβ6ポリペプチドの生物学的または免疫学的活性を有するαVβ6ヘテロ二量体ポリペプチドの一部分をいう。本明細書で使用している「生物学的」とは、天然αVβ6ポリペプチドの活性から生じる生物学的機能をいう。好ましいαVβ6生物活性には、例えばαVβ6誘導細胞接着がある。
【0142】
本明細書で使用している「哺乳類」とは、哺乳類とみなされている動物を全て包含する。好ましくは、哺乳類はヒトである。
【0143】
酵素、パパインでの抗体の消化により、抗原結合活性はもたないが、結晶化能力を有する、「Fab」フラグメントおよび「Fc」フラグメントとしても知られている、2つの同一抗原結合性フラグメントが生じる。酵素ペプシンでの抗体の消化により、抗体分子の2本のアームが連結されたままであり、2抗原結合部位を含むF(ab')フラグメントが生じる。F(ab')フラグメントは、抗原との架橋形成能を有する。
【0144】
本明細書で使用している「Fv」は、抗原認識および抗原結合部位の両方を保持する抗体の最小フラグメントをいう。
【0145】
本明細書で使用している「Fab」は、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖のCH1ドメインを含む抗体のフラグメントをいう。
「mAb」の語は、モノクローナル抗体を指す。
【0146】
本明細書で使用している「リポソーム」とは、哺乳類への本発明αVβ6ポリペプチドまたはそのαVβ6ポリペプチドに対する抗体を含み得る薬剤の送達に有用であり得る小胞をいう。
【0147】
本明細書で使用している「標識」または「標識された」とは、ポリペプチドへの検出可能な部分、例えば放射性標識、蛍光標識、酵素標識、化学発光標識またはビオチニル基の付加をいう。放射性同位元素または放射性核種は、H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131Iを含み得、蛍光標識は、ローダミン、ランタノイドリン光体またはFITCを含み得、酵素標識は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリ性ホスファターゼを含み得る。
【0148】
追加される標識には、説明のためであって、限定するわけではないが、以下のものがある:酵素、例えばグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ(「G6PDH」)、アルファ−D−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコースアミラーゼ、カルボニックアンヒドラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、リゾチーム、マレイン酸デヒドロゲナーゼおよびペルオキシダーゼ;染料;追加的蛍光標識または蛍光剤には、例えばフルオレセインおよびその誘導体、フルオロクロム、GFP(「緑色蛍光タンパク質」であるGFP)、ダンシル、ウンベリフェロン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルアルデヒドおよびフルオレスカミンがある;発蛍光団、例えばランタノイドのクリプテートおよびキレート、例えばユーロピウムなど(Perkin ElmerおよびCis Biointernational);化学発光標識または化学発光剤、例えばイソルミノール、ルミノールおよびジオキセタン類;感光剤;補酵素;酵素基質;粒子、例えばラテックスまたは炭素粒子;金属ゾル;クリスタリット;リポソーム;染料、触媒または他の検出可能な基によりさらに標識され得る細胞など;分子、例えばビオチン、ジゴキシゲニンまたは5−ブロモデオキシウリジン;毒素部分、例えばシュードモナス外毒素(PEまたはその細胞傷害性フラグメントまたは突然変異体)、ジフテリア毒素またはその細胞傷害性フラグメントまたは突然変異体、ボツリヌス毒素A、B、C、D、EまたはF、リシンまたはその細胞傷害性フラグメント、例えばリシンA、アブリンまたはその細胞傷害性フラグメント、サポリンまたはその細胞傷害性フラグメント、アメリカヤマゴボウ抗ウイルス毒素またはその細胞傷害性フラグメントおよびブリョジン1またはその細胞傷害性フラグメントの一群から選択される毒素部分。
【0149】
本明細書で使用している「薬剤または薬物」の語は、患者へ適正に投与されたときに所望の治療効果を誘導し得る化学的化合物または組成物をいう。本明細書における他の化学用語は、The McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms (Parker, S.編、McGraw-Hill, サンフランシスコ (1985))(出典明示で援用する)により例示されている、当業界における慣用的用法に従って使用されている。
【0150】
本明細書で使用している「実質的に純粋な」とは、対象化学種が主に存在する化学種である(すなわち、モルに基づいて、組成物中における他の個々の化学種よりも多く存在する)ことを意味し、好ましくは、実質的精製フラクションは、対象化学種が存在する全高分子化学種の少なくとも約50パーセント(モルに基づく)を構成する組成物である。一般的に、実質的に純粋な組成物は、組成物中に存在する全高分子化学種の約80パーセントを超える割合、さらに好ましくは約85%、90%、95%および99%を超える割合を占める。最も好ましくは、対象化学種は本質的に等質に精製され(汚染化学種は、慣用的検出方法により組成物からは検出され得ない)、その場合組成物は本質的に単一高分子種により構成される。
「患者」の語は、ヒトおよび獣医学的対象を包含する。
【0151】
ヒト抗体および抗体のヒト化
ヒト抗体を用いると、マウスまたはラット可変および/または定常領域を有する抗体に伴う問題が一部回避される。かかるマウスまたはラット誘導タンパク質の存在は、抗体の急速なクリアランスを招き得るか、または患者による抗体に対する免疫応答の発生を誘導し得る。マウスまたはラット由来の抗体の利用を回避するために、げっ歯動物、他の哺乳類または動物へ機能性ヒト抗体遺伝子座を導入して、げっ歯動物、他の哺乳類または動物に完全ヒト抗体を生産させることにより、完全ヒト抗体を生成させ得る。
【0152】
完全ヒト抗体の一生成方法は、ヒト重鎖座およびカッパ軽鎖遺伝子座の1000kb以下、それ未満のサイズの生殖系列形成フラグメントを含むように遺伝子操作を加えたマウスのXenoMouse(登録商標)系統の使用によるものである。Mendez et al., Nature Genetics 15:146-156 (1997)およびGreen and Jakobovits J. Exp. Med. 188:483-495 (1998)参照。XenoMouse(登録商標)株は、Amgen, Inc.(フレモント、カリフォルニア)から入手可能である。
【0153】
マウスのXenoMouse(登録商標)株の製造については、1990年1月12日出願、米国特許出願第07/466008号、1990年11月8日出願、同第07/610515号、1992年7月24日出願、同第07/919297号、1992年7月30日出願、同第07/922649号、1993年3月15日出願、同第08/031801号、1993年8月27日出願、同第08/112848号、1994年4月28日出願、同第08/234145号、1995年1月20日出願、同第08/376279号、1995年4月27日出願、同第08/430938号、1995年6月5日出願、同第08/464584号、1995年6月5日出願、同第08/464582号、1995年6月5日出願、同第08/463191号、1995年6月5日出願、同第08/462837号、1995年6月5日出願、同第08/486853号、1995年6月5日出願、同第08/486857号、1995年6月5日出願、同第08/486859号、1995年6月5日出願、同第08/462513号、1996年10月2日出願、同第08/724752号、1996年12月3日出願、同第08/759620号、2001年11月30日付、米国特許公開第2003/0093820号、および米国特許第6162963、6150584、6114598、6075181および5939598号および日本国特許第3068180B2、3068506B2および3068507B2号でさらに検討され、詳細に叙述されている。また、1996年6月12日付認可、欧州特許第EP 0 463 151 B1号、1994年2月3日公開、国際特許出願第WO94/02602号、1996年10月31日公開、第WO96/34096号、1998年6月11日公開、同第WO98/24893号、2000年12月21日公開、同第WO00/76310号も参照。上記で挙げた特許、出願および参考文献のそれぞれの開示については、その全体を出典明示で援用する。
【0154】
別法として、その他、GenPharm International, Inc.などは「ミニ遺伝子座(minilocus)」方法を利用している。ミニ遺伝子座方法では、Ig遺伝子座からの複数の断片(個々の遺伝子)を含ませることにより、外来性Ig遺伝子座を模倣する。すなわち、1つまたは複数のV遺伝子、1つまたは複数のD遺伝子、1つまたは複数のJ遺伝子、μ定常領域、および通常第2の定常領域(好ましくは、ガンマ定常領域)が、動物へ挿入するための構築物中に形成される。この方法は、Surani et al.、米国特許第5,545,807号、および、いずれもLonberg and Kayによる、米国特許第5,545,806、5,625,825、5,625,126、5,633,425、5,661,016、5,770,429、5,789,650、5,814,318、5,877,397、5,874,299および6,255,458号、Krimpenfort and Berns、米国特許第5,591,669および6,023,010号、Berns et al.、米国特許第5,612,205、5,721,367、および5,789,215号、およびChoi and Dunn、米国特許第5,643,763号、およびGenPharmによる国際米国特許出願である1990年8月29日出願の第07/574,748号、1990年8月31日出願の第07/575,962号、1991年12月17日出願の第07/810,279号、1992年3月18日出願の第07/853,408号、1992年6月23日出願の第07/904,068号、1992年12月16日出願の第07/990,860号、1993年4月26日出願の第08/053,131号、1993年7月22日出願の第08/096,762号、1993年11月18日出願の第08/155,301号、1993年12月3日出願の第08/161,739号、1993年12月10日出願の第08/165,699号、1994年3月9日出願の第08/209,741号に記載されており、それらについては出典明示で援用する。また、欧州特許第0546073B1号、国際特許出願第WO92/03918号、第WO92/22645号、第WO92/22647号、第WO92/22670号、第WO93/12227号、第WO94/00569号、第WO94/25585号、第WO96/14436号、第WO97/13852号およびWO98/24884号、および米国特許第5,981,175号も参照、これらについては出典明示で援用する。さらに、Taylor et al., 1992、Chen et al., 1993, Tuaillon et al., 1993、Choi et al., 1993、Lonberg et al., (1994), Taylor et al., (1994)およびTuaillon et al., (1995), Fishwild et al., (1996)も参照、これらについてはその全体を出典明示で援用する。
【0155】
また、Kirinは、微小核融合を通して染色体の大きな断片または全染色体を導入する、マウスからのヒト抗体の作製を実証した。欧州特許出願第773288および843961号参照、これらについては出典明示で援用する。さらに、KirinのTcマウスとMedarexのミニ遺伝子座(Humab)マウスの雑種形成の結果である、KM(登録商標)マウスが作製された。これらのマウスは、Kirin マウスのヒトIgH導入染色体(transchromosome)および Genpharm マウスのカッパ鎖導入遺伝子を有する(Ishida et al., Cloning Stem Cells, (2002) 4:91-102)。
【0156】
ヒト抗体はまた、インビトロ方法により誘導され得る。適切な例には、限定されるわけではないが、ファージディスプレー(CAT, Morphosys, Dyax, Biosite/Medarex, Xoma, Symphogen, Alexion (以前はProliferon), Affimed)リボソームディスプレー(CAT)、酵母ディスプレーなどがある。
【0157】
抗体の調製
ここに記載の抗体は、下記のXenoMouse(登録商標)技術の使用により調製された。したがって、上記マウスは、ヒト免疫グロブリン分子および抗体を生産し得、マウス免疫グロブリンおよび抗体の生産性を欠いている。これを達成するのに利用される技術は、本明細書の発明の背景の項に開示された特許、出願および参考文献で開示されている。しかしながら、特に、トランスジェニックマウスの生産およびそこからの抗体産生の好ましい態様は、1996年12月3日出願の米国特許出願第08/759620号および1998年6月11日公開の国際特許出願第WO98/24893号および2000年12月21日公開の同第00/76310号に開示されており、これらの開示については出典明示で援用する。また、Mendez et al., Nature Genetics 15:146-156 (1997)参照、これらの開示については出典明示で援用する。
【0158】
上記技術の使用を通じて、様々な抗原に対する完全ヒトモノクローナル抗体が生産されている。本質的には、マウスのXenoMouse(登録商標)系統を、興味の対象である抗原(例、αVβ6)により免疫化し、リンパ系細胞(例えばB細胞)を、超免疫マウスから回収し、回収されたリンパ球を骨髄型細胞株と融合することにより、不死化ハイブリドーマ細胞株を製造する。これらのハイブリドーマ細胞株をスクリーニングにかけ、選択することにより、興味の対象である抗原に特異的な抗体を産生したハイブリドーマ細胞株を同定する。本発明は、αVβ6に特異的な抗体を産生する多くのハイブリドーマ細胞株の製造方法を提供する。さらに、本発明では、上記抗体の重および軽鎖のヌクレオチドおよびアミノ酸配列解析を含む、上記細胞株により生産される抗体の特性確認を行う。
【0159】
これに代わる方法として、ミエローマ細胞と融合させてハイブリドーマを生成するのではなく、B細胞が直接検定され得る。例えば、CD19+B細胞を超免疫XenoMouse(登録商標)マウスから単離し、増殖させ、抗体分泌性形質細胞に分化させ得る。次いで、細胞上清からの抗体を、αVβ6免疫原に対する反応性についてELISAによりスクリーニングにかける。また、αVβ6のフラグメントに対する免疫反応性について上清をスクリーニングにかけることにより、αVβ6に関して機能的な興味の対象であるドメインへの結合について種々の抗体のさらなるマッピングを行い得る。また、他の関連ヒトインテグリンに対して、および種交差反応性が最も決定されそうもない、αVβ6のラット、マウス、非ヒト霊長類、例えばカニクイザルのオーソログに対して抗体をスクリーニングにかけ得る。興味の対象である抗体を含むウェルからのB細胞は、個々の、またはプールしたウェルからハイブリドーマを作製するための融合を含む様々な方法により、またはEBVで感染させるかまたは既知不死化遺伝子でトランスフェクションし、次いで適切な培地で培養することにより不死化され得る。別法として、αVβ6特異的溶血プラーク検定法を用いて、所望の特異性をもつ抗体を分泌する単形質細胞を単離する(例えば、Babcook et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:7843-48(1996)参照)。好ましくは、溶解に関してターゲッティングされる細胞は、αVβ6抗原でコーティングしたヒツジ赤血球(SRBC)である。
【0160】
興味の対象である免疫グロブリンおよび補体を分泌する形質細胞を含むB細胞培養物の存在下において、プラークの形成は、興味の対象である形質細胞を取り囲むヒツジ赤血球の特異的αVβ6介在的溶解を示す。プラークの中心にある単抗原特異的形質細胞は単離され得、抗体の特異性をコード化する遺伝情報を単形質細胞から単離する。逆転写、次いでPCR(RT−PCR)を用いることにより、抗体の重および軽鎖可変領域をコード化するDNAがクローン化され得る。次いで、上記のクローン化DNAを、適切な発現ベクター、好ましくはpcDNAなどのベクターカセット、さらに好ましくは免疫グロブリン重および軽鎖の定常領域を含むpcDNAベクターへ挿入する。次いで、生成されたベクターを宿主細胞、例えばHEK293細胞、CHO細胞へトランスフェクションし、転写誘導、形質転換体の選択、または所望の配列をコード化する遺伝子の増幅に適するように改変された慣用的栄養培地で培養する。
【0161】
一般に、融合ハイブリドーマにより産生される抗体は、完全ヒトカッパまたはラムダ軽鎖を伴うヒトIgG重鎖であった。ここに記載の抗体は、ヒトIgG4重鎖およびIgG2重鎖を有する。抗体はまた、IgG1を含む他のヒトイソ型のものであり得る。抗体は高い親和力を有し、固相および液相技術で測定したとき、典型的には約10−6〜約10M−12またはそれ未満のKを有する。少なくとも10−11MのKを有する抗体が、αVβ6の活性の阻害には好ましい。
【0162】
抗体は、ハイブリドーマ細胞株以外の細胞株で発現され得るものとする。特定抗体をコード化する配列を用いることにより、適切な哺乳類宿主細胞が形質転換され得る。形質転換は、宿主細胞へポリヌクレオチドを導入する公知方法、例えば、ポリヌクレオチドをウイルス(またはウイルス性ベクター)にパッケージし、ウイルス(またはベクター)により宿主細胞に対し形質導入を行うか、または当業界で公知のトランスフェクション法により行われ得、これらについては米国特許第4399216、4912040、4740461および4959455号で具体的に示されている(これらの特許については出典明示で援用する)。使用する形質転換手順は、形質転換される宿主により異なる。哺乳類細胞への異種ポリヌクレオチドの導入方法は、当業界では公知であり、例えばデキストラン依存的トランスフェクション、リン酸カルシウム沈降、ポリブレン依存的トランスフェクション、プロトプラスト融合、電気穿孔、リポソームでのポリヌクレオチド(複数も可)封入および核へのDNAの直接顕微注入がある。
【0163】
発現用宿主として利用可能な哺乳類細胞株は、当業界では熟知されており、限定されるわけではないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒーラ(HeLa)細胞、仔ハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例、Hep G2)、ヒト上皮腎臓293細胞、および若干の他の細胞株を含む、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞株を含む。特に好ましい細胞株は、どの細胞株が高い発現レベルを有し、構成的αVβ6結合特性をもつ抗体を産生するかを測定することにより選択される。
【0164】
αVβ6活性を著しく中和するmAbの能力(下記実施例で立証されている)に基づくと、これらの抗体は、αVβ6発現に起因する症状および状態の処置において治療効果を有する。態様によると、本明細書における抗体および方法は、αVβ6誘導細胞接着またはαVβ6とそのリガンドとの相互作用の結果として誘導されるシグナリングに起因する症状の処置に関連している。
【0165】
本発明の別の態様では、αVβ6の生物活性のアンタゴニストおよび医薬上許容される担体を含む医薬組成物が提供される。一例において、アンタゴニストは抗体を含む。本発明のさらに別の態様では、αVβ6の生物活性のアンタゴニストおよび医薬上許容される担体を含む医薬組成物が提供される。一例において、アンタゴニストは抗体を含む。
【0166】
抗αVβ6抗体は、患者試料におけるαVβ6の検出に有用であるため、ここに記載の病状に関する診断法としても有用である。さらに、αVβ6活性に対するその著しい阻害能に基づくと(下記実施例で立証されている)、抗αVβ6抗体は、αVβ6発現に起因する症状および状態の処置において治療効果を有する。態様によると、本明細書における抗体および方法は、αVβ6誘導細胞接着に起因する症状の処置に関連している。さらなる態様では、ここに記載の抗体および方法を用いることにより、新生物疾患、例えばメラノーマ、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、肝細胞(肝臓)癌、甲状腺腫瘍、胃(腹部)癌、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、肺癌、神経膠芽腫、子宮体癌、腎臓癌、結腸癌および膵臓癌を含む、αVβ6関連疾患または障害を治療する。
【0167】
治療的投与および製剤
本発明の態様は、病気の治療薬として有用な抗αVβ6抗体の滅菌医薬製剤を含む。上記製剤は、αVβ6インテグリンへのリガンドの結合を阻害することにより、例えば組織αVβ6が異常に高い病理学的状態を効果的に処置する。抗αVβ6抗体は、好ましくはαVβ6活性を強力に阻害するのに十分な親和力を有し、好ましくはヒトに頻繁に投薬する必要のない程度に十分な作用持続時間を有する。作用持続時間の延長により、代替的非経口経路、例えば皮下または筋肉内注射による投薬スケジュールは少ない頻度でより便利なものになり得る。
【0168】
滅菌製剤は、例えば、抗体の凍結乾燥および再構成の前または後に滅菌濾過膜を通して濾過することにより製造され得る。通常抗体は凍結乾燥形態または溶液中で貯蔵される。一般的に治療用抗体組成物は、滅菌引出口を有する容器、例えば製剤を引き出し得るアダプター、例えば皮下注射針により貫通可能なストッパーを有する静注用袋またはバイアル中に入れられる。
【0169】
抗体の投与経路は既知方法によるものであり、例えば静脈内、腹腔内、大脳内、筋肉内、眼内、動脈内、鞘内、吸入または病変部内経路による注射または注入、腫瘍部位への直接注射、または下記で示す持続放出系によるものがある。抗体は、好ましくは注入またはボーラス注射により連続投与される。
【0170】
治療に使用される抗体の有効量は、例えば治療対象、投与経路、および患者の状態により異なる。したがって、治療医は、最適な治療効果を得るための必要性に応じて投薬量を力価測定分析し、投与経路を改変するのが好ましい。典型的には、所望の効果を達成する用量に到達するまで、臨床医は抗体を投与する。この治療の経過は、慣用的検定法またはここに記載の検定法により容易にモニターされる。
【0171】
ここに記載の抗体は、医薬上許容される担体との混合物中で調製され得る。この治療組成物は、静脈内経路または鼻または肺を通して、好ましくは液体または粉末エーロゾル(凍結乾燥)として投与され得る。また本組成物は、所望に応じて非経口または皮下投与され得る。全身投与するとき、治療組成物は、当然無菌状態、発熱物質不含有であり、適正なpH、等張性および安定性を有する非経口投与上許容される溶液中に含まれるべきである。これらの条件は当業者には周知である。簡単に述べると、ここに記載の化合物の投薬用製剤は、所望の純度を有する化合物を医薬上許容される担体、賦形剤または安定剤と混合することにより貯蔵または投与用に調製される。上記物質は、使用される投薬量および濃度では受容者にとって非毒性であり、緩衝液、例えばトリスHCl、リン酸、クエン酸、酢酸および他の有機酸塩、酸化防止剤、例えばアスコルビン酸、低分子量(約10残基未満)ペプチド、例えばポリアルギニン、タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン、親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリジノン、アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸またはアルギニン、単糖類、二糖類および他の炭水化物、例えばセルロースまたはその誘導体、グルコース、マンノース、またはデキストリン、キレート剤、例えばEDTA、糖アルコール、例えばマンニトールまたはソルビトール、対イオン、例えばナトリウムおよび/または非イオン性界面活性剤、例えばトゥイーン、プルロニックまたはポリエチレングリコールを含む。
【0172】
注射用滅菌組成物は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy (第20版、Lippincott Williams & Wilkens Publishers (2003))に記載された慣用的製薬実践法に従って製剤化され得る。例えば、医薬上許容される担体、例えば水または天然植物油、例えばゴマ、落花生または綿実油または合成脂肪族賦形剤、例えばエチルオレエートなどに活性化合物を溶解または懸濁するのが所望され得る。緩衝液、保存剤、酸化防止剤などは、許容された製薬実践法に従って組み込まれ得る。
【0173】
徐放性製剤の適切な例は、ポリペプチドを含む固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスを含み、この場合マトリックスは、成型品、フィルムまたはマイクロカプセル形態である。徐放性マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例、Langer et al., J. Biomed Mater. Res., (1981)15:167−277および Langer, Chem. Tech., (1982) 12:98−105に記載されたポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(米国特許第3773919号、欧州特許第58481号)、L−グルタミン酸とガンマエチル−L−グルタメートのコポリマー(Sidman et al., Biopolymers, (1983) 22:547-556)、非分解性エチレン−酢酸ビニル(Langer et al.、前出)、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON(登録商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドにより構成される注射可能ミクロスフェア)、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸(欧州特許第133988号)がある。
【0174】
エチレン−酢酸ビニルおよび乳酸−グリコール酸などのポリマーは100日間にわたって分子を放出し得るが、ある種のヒドロゲルはタンパク質を短期間放出する。封入されたタンパク質が長期間体内に残存すると、それらは37℃での水分曝露の結果、変性または凝集することにより、生物活性を喪失し、免疫原性の変化を起こし得る。合理的な戦略が、関与する機構に応じたタンパク質安定化について考案され得る。例えば、凝集機構がジスルフィド交換を通じた分子間S−S結合形成であると見出された場合、安定化は、スルフヒドリル残基を修飾し、酸性溶液から凍結乾燥し、水分含有率を制御し、適切な添加剤を使用し、特異的ポリマーマトリックス組成物を開発することにより達成され得る。
【0175】
また、本発明の抗体は、非修飾抗体の場合よりも長い哺乳類、好ましくはヒトにおける半減期(例、血清半減期)を有する抗体を包含する。一態様では、上記抗体の抗体半減期は、15日を超える、20日を超える、25日を超える、30日を超える、35日を超える、40日を超える、45日を超える、2か月を超える、3か月を超える、4か月を超える、または5か月を超える。哺乳類、好ましくはヒトにおける本発明抗体またはそのフラグメントの半減期の増加により、哺乳類における上記抗体またはそのフラグメントの血清力価は高くなるため、上記抗体または抗体フラグメントの投与頻度は少なくなり、そして/または投与される抗体または抗体フラグメントの濃度も低くなる。インビボで高い半減期を有する抗体またはそのフラグメントは、当業者に公知の技術により生成され得る。例えば、高いインビボ半減期を有する抗体またはそのフラグメントは、FcドメインとFcRn受容体間の相互作用に関与するものとして同定されたアミノ酸残基を修飾(例、置換、欠失または付加)することにより生成され得る(例、国際公開第WO97/34631およびWO02/060919号参照、これらについては出典明示で援用する)。高いインビボ半減期を有する抗体またはそのフラグメントは、ポリマー分子、例えば高分子ポリエチレングリコール(PEG)を抗体または抗体フラグメントに結合させることにより生成され得る。PEGは、上記抗体または抗体フラグメントのN−またはC−末端へのPEGの位置特異的コンジュゲーションを通じて、またはリシン残基に存在するイプシロン−アミノ基を介して多機能リンカーの存在または存在下で抗体または抗体フラグメントに結合され得る。生物活性の喪失が最小限ですむ線状または分枝状ポリマー誘導体化を使用する。コンジュゲーションの程度をSDS−PAGEおよび質量分析法により緊密にモニターすることにより、抗体へのPEG分子の適正なコンジュゲーションを確認する。未反応PEGは、例えばサイズ排除またはイオン交換クロマトグラフィーにより抗体−PEGコンジュゲートから分離され得る。
【0176】
徐放性組成物はまた、結晶を懸濁状態で維持し得る適切な製剤に懸濁した抗体の結晶の調製物を含む。これらの調製物は、皮下または腹腔内注射されると、徐放性効果を生じ得る。また、他の組成物には、リポソーム包括抗体がある。上記抗体を含むリポソームは、自体公知の方法により製造される:米国特許第DE3218121号;Epstein et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, (1985) 82:3688-3692; Hwang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, (1980) 77:4030-4034;欧州特許第52322号、欧州特許第36676号、欧州特許第88046号、欧州特許第143949号、142641号;日本国特許出願83−118008号;米国特許第4485045および4544545号および欧州特許第102324号。
【0177】
所定の患者に対する抗体製剤の用量は、病気の重症度およびタイプ、体重、性別、食事療法、投与時間および経路、他の薬物療法および他の関連性のある臨床因子を含む薬剤作用を改変することが知られている様々な因子を考慮に入れながら担当医により決定される。治療有効用量は、インビトロまたはインビボ方法により決定され得る。
【0178】
治療に使用されるここに記載の抗体の有効量は、例えば治療対象、投与経路および患者の状態により異なる。したがって、治療専門家は、最適な治療効果を得るための必要性に応じて投薬量を力価測定分析し、投与経路を改変するのが好ましい。典型的な1日用量は、上述の因子に左右されるが、約0.001mg/kgから100mg/kg以下またはそれ以上の範囲である。典型的には、所望の効果を達成する用量に到達するまで、臨床医は治療用抗体を投与する。この治療の経過は、慣用的検定法またはここに記載の検定法により容易にモニターされる。
【0179】
本発明組成物および方法により治療剤を投与するとき、それらは適切な担体、賦形剤、および製剤に組み込まれると移入、送達、耐容性などを改善させる他の薬剤と共に投与されるものとする。これらの製剤は、例えば粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ろう、油類、脂質、脂質(カチオン性またはアニオン性)含有小胞(例えばLipofectin(登録商標))、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト、水中油および油中水エマルジョン、エマルジョンカーボワックス(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲルおよびカーボワックスを含有する半固体混合物を含む。製剤中の有効成分が製剤により不活化されておらず、製剤が投与経路と生理学的に適合し、耐容し得るものであれば、前述の混合物はいずれも、本発明による処置および治療に適切であり得る。また、Baldrick P. “Pharmaceutical excipient development: the need for preclinical guidance.” Regul. Toxicol. Pharmacol. 32(2):210-8 (2000)、Wang W. “Lyophilization and development of solid protein pharmaceuticals.” Int. J. Pharm. 203(1-2):1-60 (2000)、Charman WN “Lipids, lipophilic drugs, and oral drug delivery-some emerging concepts.” J Pharm Sci 89(8):967-78 (2000), Powell et al., “Compendium of excipients for parenteral formulations” PDA J Pharm Sci Technol. 52:238-311 (1998)および薬剤師に熟知されている製剤、賦形剤および担体に関連した追加的情報についてそこに引用されているものも参照。
【0180】
他の治療薬の設計および生成
本発明にしたがって、またαVβ6に関して本発明で産生および特性確認された抗体の活性に基づくと、抗体部分の範囲を超えた他の治療モダリティーの設計が容易になる。上記モダリティーには、制限するわけではないが、進歩した抗体治療薬、例えば二重特異性抗体、免疫毒素、および放射性標識治療薬、単ドメイン抗体、ペプチド治療薬の生成、新規スキャフォールドにおけるαVβ6結合性ドメイン、遺伝子療法、特に細胞内発現抗体、アンチセンス治療薬および小分子がある。
【0181】
進歩した抗体治療薬の生成に関して、補体固定が望ましい特質である場合、例えば二重特異性抗体、免疫毒素または放射性標識を使用することにより細胞を殺す際の補体依存性を回避することが可能であり得る。
【0182】
(i)一方はαVβ6に対する特異性をもち、他方は第2分子に対する特異性をもつ一緒にコンジュゲートを形成する2つの抗体、(ii)αVβ6に特異的な1鎖および第2分子に特異的な第2鎖を有する単抗体、または(iii)αVβ6および他分子に対する特異性を有する1本鎖抗体を含む二重特異性抗体が生成され得る。上記の二重特異性抗体は、公知技術を用いて生成され得る。例えば、(i)および(ii)に関しては、Fanger et al., Immunol Methods 4:72-81 (1994)および Wright および Harris、前出参照、また(iii)に関しては、例えばTraunecker et al., Int. J. Cancer (補遺) 7:51-52 (1992)参照。いずれの場合も、第2の特異性は、限定するわけではないが、CD16またはCD64(例えば、Deo et al., Immunol. Today 18:127 (1997)参照)またはCD89(例えば、Valerius et al., Blood 90:4485-4492 (1997)参照)を含む重鎖活性化受容体に対して導入され得る。
【0183】
免疫毒素に関して、抗体は、当業界で公知の技術を用いることにより免疫毒素として作用するように修飾され得る。例えば、Vitetta Immunol Today 14:252 (1993)参照。また、米国特許第5194594号も参照。放射性標識抗体の製造に関して、上記修飾抗体はまた、当業界で公知の技術を用いることにより容易に製造され得る。例えば、Junghans et al.、Cancer Chemotherapy and Biotherapy 655-686 (第2版、Chafner and Longo 編、Lippincott Raven (1996))参照。また、米国特許第4,681,581、4,735,210、5,101,827、5,102,990 (RE35,500)、5,648,471および5,697,902号も参照。
【0184】
抗原結合部位は、非抗体タンパク質スキャフォールド、例えばフィブロネクチンまたはシトクロムBなどにおけるCDRの配置により(Haan & Maggos (2004) BioCentury, 12(5): A1-A6; Koide et al., (1998) Journal of Molecular Biology, 284: 1141-1151; Nygren et al., (1997) Current Opinion in Structural Biology, 7: 463-469)、または所望の標的についての結合特異性を付与するようにタンパク質スキャフォールド内におけるループのアミノ酸残基をランダム化または突然変異させることにより提供され得る。タンパク質における新規結合部位を遺伝子操作するためのスキャフォールドについては、Nygren et al.,(Nygren et al., (1997) Current Opinion in Structural Biology, 7:463−469)により詳細に検討されている。抗体模倣物質についてのタンパク質スキャフォールドは、国際公開第WO/0034784号に開示されており、出典明示で援用するが、それによると発明者らは、少なくとも1つのランダム化ループを有するフィブロネクチンIII型ドメインを含むタンパク質(抗体模倣物質)について報告している。1つまたはそれ以上のCDR、例えばHCDRのセットが移植される適切なスキャフォールドは、免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリーのいずれかのドメインメンバーにより提供され得る。スキャフォールドは、ヒトまたは非ヒトタンパク質であり得る。非抗体タンパク質スキャフォールドの利点は、それが、少なくとも若干の抗体分子よりも小さく、そして/または製造し易いスキャフォールド分子において抗原結合部位を提供し得ることである。結合剤のサイズが小さいことにより、例えば細胞に入りこむか、組織へ深く浸透するか、または他の構造内の標的に到達する能力、または標的抗原のタンパク質腔内での結合能などの有用な生理学的特性が付与され得る。非抗体タンパク質スキャフォールドにおける抗原結合部位の使用については、Wess、2004(Wess, L.、BioCentury, The Bernstein Report on BioBusiness, 12(42), A1-A7, 2004)で検討されている。典型的なのは安定したバックボーンおよび1つまたは複数の可変ループを有するタンパク質であり、1ループまたは複数ループのアミノ酸配列に特異的または無作為に突然変異を導入することにより、標的抗原と結合する抗原結合部位を形成させる。上記タンパク質には、スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)からのプロテインAのIgG-結合性ドメイン、トランスフェリン、アルブミン、テトラネクチン、フィブロネクチン(例、第10フィブロネクチンIII型ドメイン)、リポカリンおよびガンマ−結晶および他のAffilin(登録商標)スキャフォールド(Scil Proteins)がある。他の方法の例には、分子内ジスルフィド結合を有する小タンパク質であるサイクロチド(cyclotide)に基づく合成「ミクロボディー」、微小タンパク質(Versabodies(登録商標)、Amunix)およびアンキリン反復タンパク質(DARPins, Molecular Partners)がある。
【0185】
抗体配列および/または抗原結合部位に加えて、本発明による結合剤は、例えばペプチドまたはポリペプチド、例えば折りたたまれたドメインを形成するか、または抗原結合能に加えて別の機能的特徴を分子に付与するために他のアミノ酸を含み得る。本発明結合剤は、検出可能な標識を伴い得るか、または毒素またはターゲッティング部分または酵素に(例、ペプチジル結合またはリンカーを介して)コンジュゲーションされ得る。例えば、結合剤は、触媒性部位(例、酵素ドメインにおける)および抗原結合部位を含み得、その抗原結合部位は抗原に結合することにより、抗原へ触媒性部位をターゲッティングする。触媒性部位は、例えば開裂により抗原の生物学的機能を阻害し得る。
【0186】
組み合わせ
本明細書で説明されている抗腫瘍処置は、単独治療として適用され得るか、または本発明化合物に加えて、慣用的手術または放射線治療または化学療法を含み得る。上記化学療法は、抗腫瘍剤の以下のカテゴリーの1つまたはそれ以上を含み得る:
【0187】
(i)内科腫瘍学で使用される、他の抗増殖性/抗新生物薬剤およびその組合わせ、例えばアルキル化剤(例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、窒素マスタード、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、テモゾラミドおよびニトロソウレア);代謝拮抗物質(例えば、ゲムシタビンおよび葉酸代謝拮抗薬、例えばフルオロピリミジン類、例えば5−フルオロウラシルおよびテガフール、ラルチトレキセド、メトトレキセート、シトシンアラビノシド、およびヒドロキシ尿素);抗腫瘍抗生物質(例えば、アントラサイクリン系、例えばアドリアマイシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、イダルビシン、マイトマイシン−C、ダクチノマイシンおよびミトラマイシン);抗有糸分裂薬(例えばビンカアルカロイド系、例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシンおよびビノレルビンおよびタキソイド類、例えばタキソールおよびタキソテールおよびポロキナーゼ阻害剤);トポイソメラーゼ阻害剤(例えばエピポドフィロトキシン類、例えばエトポシドおよびテニポシド、アムサクリン、トポテカンおよびカンプトテシン);
【0188】
(ii)細胞増殖抑制剤、例えば抗エストロゲン(例えばタモキシフェン、フルベストラント、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェンおよびヨードキシフェン)、抗アンドロゲン(例えばビカルタミド、フルタミド、ニルタミドおよび酢酸シプロテロン)、LHRHアンタゴニストまたはLHRHアゴニスト(例えばゴセレリン、ロイプロレリンおよびブセレリン)、プロゲストーゲン(例えば酢酸メゲストロール)、アロマターゼ阻害剤(例えばアナストロゾール、レトロゾール、ボラゾールおよびエキセメスタン)および5α−レダクターゼの阻害剤、例えばフィナステリド;
【0189】
(iii)抗浸潤剤(例えば、c−Srcキナーゼファミリー阻害剤、例えば4−(6−クロロ−2,3−メチレンジオキシアニリノ)−7−[2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エトキシ]−5−テトラヒドロピラン−4−イルオキシキナゾリン(AZD0530;国際特許出願第WO01/04341号)およびN−(2−クロロ−6−メチルフェニル)−2−{6−[4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イル]−2−メチルピリミジン−4−イルアミノ}チアゾール−5−カルボキサミド(ダサチニブ、BMS−354825;J. Med. Chem., 2004, 47, 6658-6661)、およびメタロプロテイナーゼ阻害剤、例えばマリマスタット、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子受容体機能の阻害剤またはヘパラナーゼに対する抗体);
【0190】
(iv)成長因子機能の阻害剤:例えば上記阻害剤は、成長因子抗体および成長因子受容体抗体を含む(例えば抗erbB2抗体トラスツズマブ[Herceptin(登録商標)]、抗EGFR抗体パニツムマブ、抗EGFR阻害剤ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、抗erbB1抗体セツキシマブ[アービタックス(Erbitux)、C225]および Stern et al., Critical reviews in oncology/haematology, 2005、第54巻、11−29頁に開示された成長因子または成長因子受容体抗体);上記阻害剤はまた、チロシンキナーゼ阻害剤、例えば表皮増殖因子ファミリーの阻害剤(例えばEGFRファミリーのチロシンキナーゼ阻害剤、例えばN−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−メトキシ−6−(3−モルホリノプロポキシ)キナゾリン−4−アミン(ゲフィチニブ、ZD1839)、N−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)キナゾリン−4−アミン(エルロチニブ、OSI-774)および6−アクリルアミド−N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−(3−モルホリノプロポキシ)−キナゾリン−4−アミン(CI1033)、erbB2チロシンキナーゼ阻害剤、例えばラパチニブ、肝細胞増殖因子ファミリーの阻害剤、血小板由来増殖因子ファミリーの阻害剤、例えばイマチニブ、セリン/トレオニンキナーゼの阻害剤(例えばRas/Rafシグナリング阻害剤、例えばファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、例えばソラフェニブ(BAY43−9006))、MEKおよび/またはAKTキナーゼを介した細胞シグナリングの阻害剤、肝細胞増殖因子ファミリーの阻害剤、c−kit阻害剤、ab1キナーゼ阻害剤、IGF受容体(インスリン様増殖因子)キナーゼ阻害剤;オーロラキナーゼ阻害剤(例えばAZD1152、PH739358、VX−680、MLN8054、R763、MP235、MP529、VX−528およびAX39459)およびサイクリン依存的キナーゼ阻害剤、例えばCDK2および/またはCDK4阻害剤を含む;
【0191】
(v)血管新生阻害薬、例えば血管内皮増殖因子の作用を阻害するもの、[例えば抗血管内皮細胞増殖因子抗体ベバシズマブ(Avastin(アバスチン、登録商標))およびVEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤、例えば4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシ−7−(1−メチルピペリジン−4−イルメトキシ)キナゾリン(ZD6474;国際公開第WO01/32651号内の実施例2)、4−(4−フルオロ−2−メチルインドール−5−イルオキシ)−6−メトキシ−7−(3−ピロリジン−1−イルプロポキシ)キナゾリン(AZD2171;国際公開第WO00/47212号内の実施例240)、バタラニブ(PTK787;国際公開第WO98/35985号)およびSU11248(スニチニブ;国際公開第WO01/60814号)、例えば国際特許出願第WO97/22596、WO97/30035、WO97/32856およびWO98/13354号で開示されている化合物および他の機構により作用する化合物(例えばリノミド、インテグリンαVβ3機能の阻害剤およびアンギオスタチン);
【0192】
(vi)血流阻害剤、例えばコンブレタスタチンA4および国際特許出願第WO99/02166、WO00/40529、WO00/41669、WO01/92224、WO02/04434およびWO02/08213号で開示された化合物;
【0193】
(vii)アンチセンス治療薬、例えば上記で列挙した標的に指向されたもの、例えばISIS2503、抗rasアンチセンス;
【0194】
(viii)遺伝子治療法、例えば異常遺伝子、例えば異常p53または異常BRCA1またはBRCA2を置き換える方法、GDEPT(遺伝子指向性酵素プロドラッグ治療)方法、例えばシトシンデアミナーゼ、チミジンキナーゼまたは細菌性ニトロレダクターゼ酵素を用いる方法および化学療法または放射線療法に対する患者の耐容性を高める方法、例えば多剤耐性遺伝子療法;および
【0195】
(ix)免疫療法、例えば患者腫瘍細胞の免疫原性を高めるエクスビボおよびインビボ方法、例えばサイトカイン、例えばインターロイキン2、インターロイキン4または顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子によるトランスフェクション、T細胞アネルギーを減少させる方法、トランスフェクションされた免疫細胞、例えばサイトカイン−トランスフェクション樹状細胞を用いる方法、サイトカイン−トランスフェクション腫瘍細胞株を用いる方法および抗イディオタイプ抗体を用いる方法。
【0196】
上記のコンジョイント治療は、治療の個々の成分を同時、連続または個別投薬することにより達成され得る。上記の併用製品は、前記用量範囲内における本発明化合物またはその医薬上許容される塩類および他の医薬活性剤をその許容された用量範囲内で使用する。
【実施例】
【0197】
実施された実験および得られた結果を含む以下の実施例については、説明を目的としているのに過ぎず、本発明を制限するものとしてみなすべきではない。
【0198】
実施例1
免疫化および力価測定
免疫化
可溶性αVβ6および細胞結合αVβ6(細胞表面でヒトαVβ6を発現するCHOトランスフェクタント)をそれぞれ用いて免疫化を実施した。CHOトランスフェクタントを作製するため、ヒト完全長αVβ6 cDNAを、pcDNA3発現ベクターに挿入した。CHO細胞を、電気穿孔により一時的にトランスフェクションした。免疫原目的に適切なレベルでの細胞表面におけるヒトαVβ6の発現を、蛍光活性化細胞分取(FACS)分析により確認した。キャンペーン1についての10μg/マウスの可溶性タンパク質、およびキャンペーン2についての3×10細胞/マウスのトランスフェクションCHO細胞を、1996年12月3日出願の米国特許出願第08/759620号および1998年6月11日公開の国際特許出願第WO98/24893号、および2000年12月21日公開の同第WO01/76310号(これらについては、出典明示で援用する)に開示された方法に従ってXenoMouse(登録商標)での初回免疫化に使用した。初回免疫後、5μg/マウスの13追加促進薬量による免疫強化を群1および2(可溶性抗原)に施し、1.5×10細胞/マウスの9追加促進薬量による免疫強化を群3および4(細胞結合抗原)に施した。免疫化プログラムを表2に要約する。
【表4】

【0199】
力価による採取用動物の選択
ヒトαVβ6に対する抗体の力価を、可溶性抗原で免疫化したマウスについてELISA検定法により試験した。天然(細胞結合)抗原で免疫化したマウスについての抗体の力価をFACSにより試験した。ELISAおよびFACS分析は、αVβ6に特異的であると思われるマウスもいることを示した。したがって、免疫化プログラムの最後に、実施例2の記載に従って、20匹のマウスを採取用に選択し、リンパ球を免疫化マウスの脾臓およびリンパ節から単離した。
【0200】
実施例2
リンパ球の回収およびB細胞単離
免疫化マウスを頸部脱臼により殺し、排出するリンパ節を採取し、各コーホートからプールした。リンパ系細胞をDMEM中で粉砕することにより解離し、組織から細胞を放出させ、細胞をDMEMに懸濁した。B細胞をIgMでの負の選択およびIgGでの正の選択により濃厚化した。細胞を培養することにより、B細胞を拡大させ、抗体分泌性形質細胞に分化させ得た。
抗体分泌性形質細胞を、選択培地において常用手順で増殖させた。抗ヒトαVβ6抗体を産生する可能性がある細胞から集めた余すところのない上清を、下記実施例で詳述している後続のスクリーニング検定法にかけた。
【0201】
実施例3
細胞結合αVβ6への結合
αVβ6への分泌された抗体の結合を評価した。下記要領で、FMATマクロ共焦点スキャナーを用いて、細胞結合αVβ6への結合を評価し、可溶性αVβ6への結合をELISAにより分析した。
採取した細胞から集めた上清を試験することにより、αVβ6を安定して過剰発現するHEK293細胞への分泌抗体の結合を評価した。親293F細胞株を陰性対照として使用した。フリースタイル(Freestyle)培地(Invitrogen)中の細胞を、安定したトランスフェクタントについては2500細胞/ウェルの密度、および親細胞については22500細胞/ウェルの密度で、50μL/ウェルの容量での384ウェルFMATプレートへ播種し、細胞を一晩37℃でインキュベーションした。次いで、10μL/ウェルの上清を加え、プレートを約1時間4℃でインキュベーションした後、10μL/ウェルの抗ヒトIgG−Cy5二次抗体を2.8μg/mlの濃度(400ng/ml最終濃度)で加えた。次いで、プレートを1時間4℃でインキュベーションし、FMATマクロ共焦点スキャナー(Applied Biosystems)を用いて蛍光を読み取った。11抗体に関するFMATの結果を表3に要約する。
【0202】
さらに、可溶性αVβ6への抗体結合を、ELISAにより分析した。Costar ミディアム結合性96ウェルプレート(カタログ#3368)を、50μL/ウェルの総容量についてTBS/1mM MgCl緩衝液中5μg/mlの濃度でαVβ6と一晩4℃でインキュベーションすることによりコーティングした。次いで、プレートをTBS/1mM MgCl緩衝液で洗浄し、室温で30分間250μLの1XPBS/1%ミルクにより遮断した。次いで、10μLの上清を、40μLのTBS/1mMのMgCl/1%ミルクに加え、室温で1時間インキュベーションした。プレートを洗浄し、次いでTBS/1mMのMgCl/1%ミルク中0.400ng/mlでのヤギ抗ヒトIgG Fc−ペルオキシダーゼと室温で1時間インキュベーションした。プレートを洗浄し、次いで1−ステップTMB基質により検出した。抗体の一つに関するELISA結果を表3に示す。
【表5】

【0203】
実施例4
細胞接着の阻害
種々の抗体含有上清の相対効力を測定するため、αVβ6陽性HT29細胞のTGFβLAP介在的接着に対する阻害能について抗体を評価した。プレートを10μg/mlのTGFβLAPにより一晩コーティングし、検定前の1時間3%BSA/PBSにより予め遮断した。次いで、細胞を沈降させ、HBBSで2回洗浄した後、細胞を適切な濃度でHBSSに再懸濁した。細胞を、4℃で30分間V底プレートにおいて適切な抗体の存在下でインキュベーションした。抗原コーティング溶液を除去し、プレートを室温で1時間100μLの3%BSAにより遮断した。プレートをPBSまたはHBSSで2回洗浄し、細胞−抗体混合物をコーティングしたプレートに移し、プレートを37℃で30分間インキュベーションした。次いで、コーティングしたプレートにおける細胞を温HBSS中で4回洗浄し、その後細胞を−80℃で1時間冷凍した。細胞を室温で1時間解凍し、次いで、100μLのCyQuant染料/溶解緩衝液(Molecular Probes)を、製造業者の使用説明書に従って各ウェルに加えた。蛍光を485nmの励起波長および530nmの放射波長で読み取った。12抗体に関する結果を表4に要約する。示されているそれらの抗体は、検定法で得られる最大および最小接着値を表すのに使用されるプレート上のコーティングおよび非コーティング対照ウェルに対して阻害率が62%から100%を超える効力範囲であった。
【表6】

【0204】
実施例5
マカークαVβ6およびヒトαVへの交差反応性
マカークαVβ6への抗体含有上清の交差反応性を、カニクイザルαVおよびカニクイザルβ6で一時的にトランスフェクションしたHEK−293細胞におけるFACS分析を用いて上清で試験した。
ヒトαVへの交差反応性についても試験した。この検定法の場合、αVβ6ではなくαVβ3およびαVβ5を発現する親A375M細胞についてのFACS分析を用いて、交差反応性を上清で試験した。このスクリーンは、抗体がβ6鎖またはαVと組み合わせたβ6鎖を特異的に認識していることを示すように設計された。ヒトαV検定法を、マカークαVβ6交差反応性スクリーンと同時に実施した。
【0205】
次の要領で検定法を実施した。約75%密集度であるA375M細胞に対し、ファルコンチューブ中で細胞を解離、次いで沈降させ(1ウェル当たり250000〜300000細胞に相当)、次いでFACS緩衝液中0.125μMのCFSEに再懸濁して250000細胞ごとに100μLの最終容量とし、次いで37℃で5分間インキュベーションすることにより、CFSE細胞内染料で標識した。次いで、細胞を沈降させ、上清を廃棄し、FACS緩衝液に再懸濁し、37℃で30分間インキュベーションした。次いで、細胞をFACS緩衝液で2回洗浄し、1ウェル当たり最終容量100μLのFACS緩衝液に再懸濁した。
HEK−293細胞を、カニクイザルαVおよびカニクイザルβ6で一時的にトランスフェクションした。48時間後、細胞を集め、FACS緩衝液に再懸濁し、100μL中約50000細胞の最終濃度とした。
【0206】
CFSE標識A375M細胞およびトランスフェクション293細胞の50:50混合物を含む、合計約100000の細胞を、次の要領で各反応において使用した。100μLのCFSE標識A375M細胞および100μLの293細胞を、V底プレートへ分配した。プレート中の細胞を、3分間1500rpmで沈降させ、次いで100μLのFACS緩衝液に再懸濁した。沈降段階を反復し、FACS緩衝液上清を除去した。採取した抗体含有上清、または対照一次抗体を50μLの容量中に加え、細胞を再懸濁した。一次抗体対照は、マウスαVβ6(カタログ#MAB2077z、Chemicon)および抗αV組換え体であった。プレートを氷上で45分間インキュベーションした後、100μLのFACS緩衝液を加えることにより一次抗体を希釈した。次いで、細胞を3分間1500rpmでの遠心分離により沈降させ、ペレットを100μLのFACS緩衝液に再懸濁した。沈降段階を反復し、FACS緩衝液上清を除去した。次いで、細胞を、7AAD染料(10μg/ml)と共に適切な二次抗体(5μg/ml)に再懸濁し、氷上で7分間染色した。次いで、150μLのFACS緩衝液を加え、細胞を3分間1500rpmで沈降させた後、細胞を100μLのFACS緩衝液中で洗浄し、沈降させ、次いで250μLの緩衝液に再懸濁し、FACS管に加えた。試料をハイスループットFACS機で分析し、Cell Quest Pro ソフトウェアを用いて解析した。
【0207】
12抗体についての結果は、表5に要約されており、示された抗体がマカークαVβ6に特異結合し得たが、親A375M細胞におけるヒトαVとは非特異結合し得なかったことを立証している。
【表7】

【0208】
実施例6
αVβ6特異的溶血プラーク検定法
抗体分泌性形質細胞を、組換え抗体生産用に各採取物から選択した。次いで、蛍光プラーク検定法を用いて、αVβ6に対する抗体を発現する単形質細胞を同定した。次いで、単細胞を逆転写およびポリメラーゼ連鎖反応にかけることにより、実施例7に記載した最初の抗体特異性をコード化する可変重鎖および可変軽鎖をレスキューおよび増幅した。αVβ6特異的溶血プラーク検定法の実施に必要とされる多くの特殊試薬および材料の調製を以下に記載する。
【0209】
ヒツジ赤血球(SRBC)のビオチニル化。SRBCを25%ストックとしてRPMI培地中で貯蔵した。ストック1.0mLを15mLのファルコンチューブへ取り分け、細胞を遠心力で沈降させ、上清を除去することにより、250μlのSRBC充填細胞ペレットを得た。次いで、細胞ペレットを、50mL管中で4.75mLのPBS、pH8.6に再懸濁した。別々の50mL管中で、Sulfo−NHSビオチン2.5mgを、45mLのPBS、pH8.6に加えた。ビオチンが完全に溶解した後、5mLのSRBCを加え、管を室温で1時間回転させた。SRBCを3000gで5分間の遠心分離にかけた。上清を排出させ、25mLのPBS、pH7.4を洗浄液として加えた。洗浄サイクルを3回反復し、次いで4.75mLの免疫細胞培地(RPMI1640+10%FCS)を、250μlのビオチニル化−SRBC(B−SRBC)ペレットに加えることにより、B−SRBCを徐々に再懸濁した(5%B−SRBCストック)。ストックを必要とされるまで4℃で貯蔵した。
【0210】
B−SRBCのストレプトアビジン(SA)コーティング。5%B−SRBCストック1mLを、きれいなエッペンドルフ管に移し入れた。B−SRBC細胞を、微量遠心管で8000rpm(6800rcf)でのパルススピンにより沈降させた。次いで、上清を排出させ、ペレットを1.0mLのPBS、pH7.4に再懸濁し、遠心分離を反復した。洗浄サイクルを2回反復し、次いでB−SRBCペレットを1.0mLのPBS、pH7.4に再懸濁することにより、5%(v/v)の最終濃度とした。10mg/mLストレプトアビジン(CalBiochem、サンディエゴ、カリフォルニア)ストック液10μlを加えた。管を混合し、RTで20分間回転させた。洗浄工程を反復し、SA−SRBCを1mLのPBS、pH7.4に再懸濁した(5%(v/v))。
【0211】
SA−SRBCのヒトαVβ6コーティング。可溶性抗原(貫膜ドメインを欠く)をSRBCのコーティングに使用した。αVβ6は二量体として細胞表面にのみ存在するので、両鎖とも使用した。SA−SRBCを、50μg/mLのビオチニル化−αVβ6でコーティングし、混合し、室温で20分間回転させた。上記と同様1.0mLのPBS、pH7.4でSRBCを2回洗浄した。Ag−コーティングSRBCを、RPMI(+10%FCS)に再懸濁して、5%(v/v)の最終濃度とした。
【0212】
免疫蛍光(IF)によるαVβ6−SRBCの質の測定。10μlの5%SA−SRBCおよび10μlの5%Ag−コーティングSRBCを、40μlのPBSを含む別々のきれいな1.5mLエッペンドルフ管にそれぞれ加えた。ヒト抗αVβ6抗体を、50μg/mLでSRBCの各試料に加えた。管を室温で25分間回転させ、次いで細胞を100μlのPBSで3回洗浄した。細胞を50μlのPBSに再懸濁し、光安定性蛍光染料Alexa488(Molecular Probes、ユージーン、オレゴン)にコンジュゲーションしたGt−抗ヒトIgG Fc抗体2μg/mLとインキュベーションした。管を室温で25分間回転させた後、100μlのPBSで洗浄し、10μlのPBSに再懸濁した。染色された細胞10μlを、きれいなガラス製顕微鏡スライド上にスポットし、カバーグラスで覆い、蛍光下で観察し、0〜4の任意スケールで評点することにより、単離細胞の質を評価した。
【0213】
形質細胞の調製。αVβ6活性を中和するものとして以前に確認された(したがって、興味の対象である免疫グロブリンを分泌するB細胞クローンを含む)単B細胞培養ウェルの内容物を採取した。ウェルに存在するB細胞培養物を、37℃でRPMI+10%FCSの添加により回収した。細胞をピペットで取り、次いできれいな1.5mLエッペンドルフ管に移し入れることにより再懸濁した(最終容量約500〜700μl)。細胞を、室温で2分間、微量遠心管中1500rpm(240rcf)で遠心分離にかけ、次いで管を180度回転させ、再度1500rpmで2分間遠心分離にかけた。冷凍培地を排出させ、免疫細胞を100μlのRPMI(10%FCS)に再懸濁し、次いで遠心分離にかけた。このRPMI(10%FCS)による洗浄を反復し、細胞を60μlのRPMI(FCS)に再懸濁し、使用時まで氷上で貯蔵した。
【0214】
溶血プラーク検定法の実施。免疫細胞の60μl試料に、αVβ6コーティングSRBC(5%v/vストック)、RPMI(FCS)中で調製した4xモルモット補体(Sigma、オークビル、オンタリオ)ストック、および4x高血清ストック(RPMI(FCS)中1:900)をそれぞれ60μl加えた。混合物(3〜5μl)を、100mmファルコン組織培養プレートからプラスチックのふたへスポットし、スポットを非希釈パラフィン油で覆った。スライドを37℃で最低45分間インキュベーションした。
【0215】
プラーク検定結果の分析。ヒトαVβ6の触媒性ドメインでのヒツジ赤血球のコーティングは有効であった。次いで、これらのAg−コーティング赤血球を用いて、下記表6に示したウェルから抗原特異的形質細胞を同定した。次いで、これらの細胞をマイクロマニピュレーションにより単離した。マイクロマニピュレーションで抗原特異的形質細胞をレスキューした後、実施例7でのさらなる記載に従って可変領域遺伝子をコード化する遺伝子を、単形質細胞でのRT−PCRによりレスキューした。
【表8】

【0216】
実施例7
組換えタンパク質単離
実施例4からの目的単形質細胞の単離後、mRNAを抽出し、逆転写酵素PCRを実施することにより、各細胞により分泌される抗体の可変重および軽鎖をコード化するcDNAを生成した。ヒト可変重鎖cDNAを、PCR中に添加した制限酵素により消化し、この反応産物を、クローニングに適合し得る突出部をもつIgG2発現ベクターへクローン化した。このベクターは、pcDNA3.1+/Hygro(Invitrogen、バーリントン、オンタリオ、カナダ)の多重クローニング部位へヒトIgG2の定常ドメインをクローン化することにより作製された。ヒト可変軽鎖cDNAを、PCR反応中に添加した制限酵素で消化し、この反応産物を、クローニングに適合し得る突出部をもつIgKappaまたはIgLamda発現ベクターへクローン化した。このベクターは、ヒトIgKまたはIgLの定常ドメインをpcDNA3.1+/Neo(Invitrogen)の多重クローニング部位へクローン化することにより作製された。
【0217】
次いで、重鎖および軽鎖発現ベクターを、リポフェクタミンを用いて70%密集度ヒト胎芽腎臓(HEK)293細胞の60mm皿へ同時トランスフェクションした。トランスフェクションされた細胞は、24〜72時間もとの形質細胞と同一の特異性をもつ組換え抗体を分泌した。上清(3mL)をHEK293細胞から採取したところ、無傷抗体の分泌がサンドイッチELISAにより立証され、ヒトIgGが特異的に検出された。特異性は、ELISAを用いることにより、αVβ6への組換え抗体の結合を通して確認された。標的抗原に結合し得る抗体を分泌するレスキューされたクローンを表7に要約する。
【表9】

【0218】
実施例8
組換え抗体の精製
抗αVβ6抗体を大規模製造するため、重および軽鎖発現ベクター(各鎖2.5μg/皿)を、HEK293細胞による70%密集度である10枚の100mm皿へリポフェクションした。トランスフェクションした細胞を、37℃で4日間インキュベーションし、上清(6mL)を採取し、6mLの新しい培地と交換した。7日目、上清を除去し、初回採取物と共にプールした(10プレートから合計120mL)。プロテインAセファロース(Amersham Biosciences、ピスキャタウェイ、ニュージャージー)アフィニティークロマトグラフィー(1mL)を用いて、抗体を上清から精製した。抗体を、500μLの0.1Mグリシン、pH2.5によりプロテインAカラムから溶離した。溶出液をPBS、pH7.4中で透析し、滅菌濾過した。抗体を非還元的SDS−PAGEで分析することにより、純度および収率を評価した。280nmでの光学密度を測定することにより、タンパク質濃度を測定した。
【0219】
実施例9
αVβ6抗体の構造分析
抗体の可変重鎖および可変軽鎖をシークエンサーにかけることにより、それらのDNA配列を決定した。抗αVβ6抗体に関する完全な配列情報は、各ガンマおよびカッパ/ラムダ鎖の組合わせに関するヌクレオチドおよびアミノ酸配列を含む配列リストで提供されている。可変重鎖配列を解析することにより、Vファミリー、D領域配列およびJ領域配列を決定した。次いで、配列を翻訳することにより、一次アミノ酸配列を決定し、生殖系列V、DおよびJ領域配列と比較し、体細胞高頻度突然変異を評価した。
【0220】
表8は、抗体重鎖領域をそれらの同起源の生殖系列重鎖領域と比較している表である。表9は、抗体カッパまたはラムダ軽鎖領域をそれらの同起源の軽鎖領域と比較している表である。免疫グロブリン鎖の可変(V)領域は、多数の生殖系列DNA断片によりコード化され、それらはB細胞個体発生中に一緒になって機能的可変領域(VDJまたはV)を構成する。αVβ6に対する抗体応答の分子および遺伝的多様性を詳細に試験した。これらの検定法により、抗αVβ6抗体に特異的な幾つかの点が明らかにされた。
【0221】
配列決定データによると、sc298およびsc374の重鎖の一次構造は類似しているが、同一ではない。sc254は、他の二つとは構造が異なる。また、特定の抗体がアミノ酸レベルでその個々の生殖系列配列とは異なる場合、抗体配列において生殖系列配列に戻る突然変異が誘発され得るものとする。上記の矯正的突然変異は、標準分子生物学技術を用いて、1か所、2か所、3か所またはそれ以上の位置、または突然変異位置のいずれかの組合わせとして導入され得る。非限定的な実施例として、表9は、sc298の軽鎖配列(配列番号40)が、対応する生殖系列配列(配列番号68)とは、FR1領域におけるAlaに対するValの突然変異(突然変異1)、CDR1領域におけるAlaに対するLeuの突然変異(突然変異2)およびFR3領域におけるSerに対するAsnの突然変異が存在する点で異なることを示している。すなわち、sc298の軽鎖をコード化するアミノ酸またはヌクレオチド配列に対し、突然変異1を変える修飾を加えることにより、突然変異1の部位に生殖系列配列をもたらし得る。さらに、mAb sc298の軽鎖をコード化するアミノ酸またはヌクレオチド配列に対し、突然変異2を変える修飾を加えることにより、突然変異2の部位に生殖系列配列をもたらし得る。またさらに、mAb sc298の軽鎖をコード化するアミノ酸またはヌクレオチド配列に対し、突然変異3を変える修飾を加えることにより、突然変異3の部位に生殖系列配列をもたらし得る。さらにまた、sc298の軽鎖をコード化するアミノ酸またはヌクレオチド配列に対し、突然変異1、突然変異2および突然変異3を変える修飾を加えることにより、突然変異1、2および3の部位に生殖系列配列をもたらし得る。さらにまた、sc298の軽鎖をコード化するアミノ酸またはヌクレオチド配列に対し、突然変異1、突然変異2および突然変異3の組合わせを変える修飾を加え得る。別の例において、sc264の重鎖(配列番号30)は、61位がその生殖系列(配列番号55)とは異なる。すなわち、sc264の重鎖をコード化するアミノ酸またはヌクレオチド配列に対し、NからYへの修飾を加えることにより生殖系列配列をもたらし得る。下記表10〜13は、sc133、sc188およびsc264に関する生殖系列からの上記変異の位置を説明する。各列は、太字で示した位置における生殖系列および非生殖系列残基の特有の組合わせを表す。生殖系列配列へ戻る突然変異が誘発され得る抗体配列の特定の例には、重鎖のアミノ酸70にあるLを、Mの生殖系列アミノ酸に戻す突然変異が誘発されているsc133(本明細書ではsc133 TMTと称す);軽鎖のアミノ酸93にあるNを、Dの生殖系列アミノ酸に戻す突然変異が誘発されているsc133(本明細書ではsc133 WDSと称す);および軽鎖のアミノ酸84にあるAを、Dの生殖系列アミノ酸に戻す突然変異が誘発されているsc264(本明細書ではsc264 ADYと称す)がある。
【0222】
一態様において、本発明は、CDR領域、すなわちCDR1、CDR2および/またはCDR3におけるアミノ酸の1つまたはそれ以上の修飾を特徴とする。一例では、ここに記載の抗体の重鎖のCDR3が修飾されている。典型的には、アミノ酸は、類似側鎖を有するアミノ酸と置換(同類アミノ酸置換)されるか、または適切なアミノ酸、例えばアラニンまたはロイシンと置換され得る。一態様において、sc264 CDR3、配列番号30のVATGRGDYHFYAMDV AA残基100〜114では、1個またはそれ以上のアミノ酸が修飾され得る。出願人らは、活性に有害な影響を及ぼすことなくCDR3領域が修飾され得ることを既に立証している。すなわち、CDR3領域における第2のGがAと置換されているsc264 RAD参照。CDR3領域内における他の修飾もまた予測される。別の態様において、sc133 CDR3領域、RLDVは、1個またはそれ以上のアミノ酸が修飾され得、例えばLに対しAおよび/またはVに対しAの置換が含まれる。アミノ酸を置換する方法は当業界では公知であり、部位特異的突然変異導入法がある。
【0223】
別の態様において、本発明では、本発明抗体の結合の不均一性および特異性に影響を及ぼし得る配列における構造上不利な部分を置き換える。一例では、抗体sc264は、交差反応性結合を誘発し得るCDR3領域にRGD配列を有する。したがって、RGDにおけるグリシン残基は、アラニンにより置換され得る(sc264 RAD)。
【表10】

【表11】

【0224】
【表12】

【表13】

【0225】
【表14】

【0226】
【表15】

【0227】
【表16】

【表17】

【表18】

【表19】

【0228】
【表20】

【0229】
実施例10
αVβ6抗体の効力測定
TGFβLAPへのHT29細胞の接着を阻止する能力に基づいて抗体を区別するため、以下の接着検定法を実施した。
Nunc MaxiSorp(Nunc)プレートを、一晩50μLの10μg/mlのTGFベータ1 LAP(TGFβLAP)でコーティングし、検定前に1時間3%BSA/PBSで予め遮断した。次いで、最適密度まで増殖させたHT29細胞を、沈降させ、HBBS(1%BSA含有およびMn2+不含有)中で2回洗浄した後、細胞を1ウェル当たり30000細胞でHBSSに再懸濁した。コーティング液をプレートから除去し、次いで室温で1時間、100μLの3%BSAで遮断した後、PBSで2回洗浄した。
【0230】
抗体力価測定液を、30μLの最終容量中1:3系列希釈液および2度にわたって最終濃度で調製した。対照ウェルにおけるPBS濃度が最希釈抗体ウェルにおけるPBS濃度と確実にマッチするように注意した。30μLの細胞を各ウェルに加え、細胞を、4℃で40分間、V底プレートにおいて抗体の存在下でインキュベーションした。細胞抗体混合物を、コーティングプレートに移し入れ、プレートを37℃で40分間インキュベーションした。次いで、コーティングプレート上の細胞を、温HBSS中で4回洗浄した後、細胞を−80℃で15分間冷凍した。細胞を室温で解凍し、次いで100μLのCyQuant染料/溶解緩衝液(Molecular Probes)を製造業者の使用説明書に従って各ウェルに加えた。蛍光を485nmの励起波長および530nmの放射波長で読み取った。各mAbについての推定IC50値を、陽性および陰性対照ウェルにより測定された、本検定法で可能な細胞接着の最大および最小量に基づいて計算した。12抗体についての結果を表14に要約する。
【表21】

【0231】
実施例11
競合検定法
抗体が可溶性TGFβLAPへのαVβ6インテグリン結合を特異的に遮断し得ることを立証するため、競争検定法を精製抗体で実施することにより、それらがαVβ6へ結合する能力およびGST−LAPペプチドへのその結合を遮断する能力を測定した。
中程度の結合性96ウェルプレート(Costar、カタログ#3368)を、PBSおよび0.05%アジ化ナトリウム中10μg/mlのGST−LAP50μL/ウェルによりコーティングし、4℃で一晩インキュベーションした。次いで、300μL/ウェルの検定希釈剤(TBS(50mMのトリス、50mMのNaCl、1mMのMgClおよび1mMのCaCl、pH6.9)中1%ミルク)を用いてプレートを3回洗浄した後、300μL/ウェルのTBS中5%ミルクを用いてプレートを遮断し、室温で30分間インキュベーションした。mAb(10μg/ml〜0.01μg/mlの範囲の1:3系列希釈液中)を、αVβ6(0.05%アジ化ナトリウムを含む検定希釈剤中250ng/ml)と一晩インキュベーションした。翌日、50μL/ウェルのプレインキュベーションした一次抗体を、GST−LAPペプチドコーティングプレートに移し入れ、室温で1時間インキュベーションした。次いで、300μL/ウェルの検定希釈剤を用いてウェルを3回洗浄した。次いで、プレートに結合したαVβ6の量を検出するため、mAb2075(Chemicon)を検定希釈剤(50μL/ウェル)中1μg/mlの濃度で加え、室温で1時間インキュベーションした。次いで、300μL/ウェルの検定希釈剤を用いてウェルを3回洗浄し、検定希釈剤(50μL/ウェル)中400ng/mlのヤギ抗マウスIgG Fc−ペルオキシダーゼと室温で1時間インキュベーションした。次いで、300μL/ウェルの検定希釈剤を用いてウェルを3回洗浄し、50μL/ウェルの総容量で1段階TMB(Neogen)を用いて発色させた。15分後、発色反応を50μL/ウェルの1N塩酸でクエンチングした。プレートを450nmで読み取り、抗体の5つについての結果を図1に要約する。図1は、抗体がGST−LAPへのαVβ6結合を阻害し得たことを示している。
【0232】
実施例12
αVβ3またはαVβ5インテグリンとの交差反応性
抗体が、αVβ3またはαVβ5インテグリンではなく、αVβ6インテグリンに対してのみ機能的であることを立証するため、以下の検定を実施することにより、オステオポンチンペプチドへのA375細胞の接着に対する抗体の阻害能を試験した。
検定プレートをオステオポンチンペプチドでコーティングした。オステオポンチンの2種のフラグメント:OPN17−168およびOPN17−314を使用した。検定プレートを、検定前に1時間3%BSA/PBSで予め遮断した。A375細胞を培養フラスコから除去し、沈降させ、1%BSAおよび1mMのCa2+および1mMのMg2+を含むHBSSで2回洗浄した。次いで、細胞を、1ウェル当たり30000細胞の濃度でHBSSに再懸濁した。オステオポンチンフラグメントを含むコーティング液を除去し、プレートを室温で1時間3%BSA100μLにより遮断した。コーティングしたプレートを1%BSA含有HBSSにより2回洗浄した。抗体力価測定液を、30μLの最終容量での1:4系列希釈液および2回にわたって最終濃度で調製した。再懸濁した細胞を、V底プレートにおける力価測定抗体を含むウェルに添加し、細胞および抗体を4℃で40分間共インキュベーションした。次いで、細胞抗体混合物を、コーティングプレートに移し入れ、その後プレートを37℃で40分間インキュベーションした。次に、コーティングプレート上の細胞を、温HBSS中で4回洗浄し、次いで、プレート中の細胞を−80℃で15分間冷凍した。細胞を室温で解凍し、次いで100μLのCyQuant 染料/溶解緩衝液(Molecular Probes)を製造業者の使用説明書に従って各ウェルに加えた。蛍光を485nmの励起波長および530nmの放射波長で読み取った。
【0233】
5抗体に関する結果を表15に要約する。市販のαVインテグリン特異抗体を、本検定法での陽性対照として使用したところ、約90%の接着阻害を呈した。市販のαVβ6抗体を、αVβ3またはαVβ5インテグリンへの接着に関する本検定法での陰性対照として使用した。全抗体を5μg/mlの濃度で試験したところ、試験抗体の中でαVβ3またはαVβ5インテグリンへの接着を遮断し得たものは無かった。
【表22】

【0234】
実施例13
α4β1インテグリンへの交差反応性
抗体が、α4β1インテグリンではなく、αVβ6インテグリンに対してのみ機能的であることを立証するため、検定を実施することにより、フィブロネクチンのCS−1ペプチドへのJ6.77細胞の接着に対する抗体の阻害能を試験した。上記実施例12記載の要領で本検定法を実施したが、ただし、J6.77細胞を結合に使用し、フィブロネクチンのCS−1ペプチドを検定プレートのコーティングに使用した。
11抗体に関する結果を表16に要約する。市販されているβ1インテグリン特異抗体を、本検定法での陽性対照として用いたところ、97%の接着阻害を呈した。市販されているαVβ6特異抗体を、α4β1への接着に関する本検定法での陰性対照として使用した。全抗体を5μg/mlで使用したところ、試験抗体の中でα4β1インテグリンへの接着を遮断し得たものは無かった。
【0235】
【表23】

【0236】
実施例14
α5β1インテグリンへの交差反応性
抗体が、α5β1インテグリンではなく、αVβ6インテグリンに対してのみ機能的であることを立証するため、接着検定法を実施することにより、フィブロネクチンへのK562細胞の接着に対する抗体の阻害能を試験した。
検定プレートを、12.5μg/mLの濃度のフィブロネクチンのFN9−10ペプチドでコーティングした。検定プレートを、検定前に1時間3%BSA/PBSで予め遮断した。K562細胞を培養フラスコから取り出し、沈降させ、1%BSAおよび1mMのMn2+を含むHBSSで2回洗浄した。次いで、細胞を1ウェル当たり30000細胞の濃度でHBSSに再懸濁した。オステオポンチンフラグメントを含むコーティング液を除去し、プレートを室温で1時間3%BSA100μLにより遮断した。コーティングしたプレートを1%BSA含有HBSSにより2回洗浄した。抗体力価測定液を、30μLの最終容量での1:4系列希釈液および2回にわたって最終濃度で調製した。再懸濁した細胞を、V底プレートにおける力価測定抗体を含むウェルに添加し、細胞および抗体を4℃で60分間共インキュベーションした。次いで、細胞抗体混合物を、コーティングプレートに移し入れ、その後37℃で40分間インキュベーションした。次に、コーティングプレート上の細胞を、温HBSS中で4回洗浄し、次いで、プレート中の細胞を−80℃で15分間冷凍した。細胞を室温で解凍し、次いで100μLのCyQuant 染料/溶解緩衝液(Molecular Probes)を製造業者の使用説明書に従って各ウェルに加えた。蛍光を485nmの励起波長および530nmの放射波長で読み取った。
【0237】
5抗体に関する結果を表17に要約する。試験抗体を、陽性対照としての市販のα5β1抗体および陰性対照としてのαVβ6特異抗体と比較した。本検定法において5μg/mlの濃度で用いたところ、試験抗体の中で本検定法における接着を遮断し得たものは無かった。
【表24】

【0238】
実施例15
マウスおよびカニクイザルαVβ6インテグリンへの交差反応性
抗体がマウスαVβ6またはカニクイザルαVβ6に対し交差反応性を呈するか否かを測定するため、以下の検定法を実施した。
マカークおよびマウスαVβ6へのmAbの交差反応性を、カニクイザルまたはマウスαV、β6またはαVβ6で一時的にトランスフェクションしたHEK−293細胞でのFACS分析を用いて精製mAbにおいて試験した。トランスフェクションの約48時間後、細胞を集め、FACS緩衝液に再懸濁して、100μL中約50000細胞の最終濃度に到達させた。
【0239】
合計約100000細胞を、次の要領で各反応において使用した。293細胞200μLを、V底プレートに分注した。プレート中の細胞を3分間1500rpmで沈降させ、次いで100μLのFACS緩衝液に再懸濁した。沈降工程を反復し、FACS緩衝液上清を除去した。精製mAbまたは対照一次抗体を50μLの容量で加え、細胞を再懸濁した。一次抗体対照はマウスαVβ6(カタログ#MAB2077z、Chemicon)および抗αVおよび抗β6組換え体であった。プレートを氷上で45分間インキュベーションした後、100μLのFACS緩衝液を加えて一次抗体を希釈した。次いで、細胞を3分間1500rpmでの遠心分離により沈降させ、ペレットを100μLのFACS緩衝液に再懸濁した。沈降工程を反復し、FACS緩衝液上清を除去した。次いで、細胞を、7AAD染料(10μg/ml)と共に適切な二次抗体(5μg/ml)に再懸濁し、氷上で7分間染色した。次いで、FACS緩衝液150μLを加え、細胞を3分間1500rpmで沈降させた後、細胞を100μLのFACS緩衝液で洗浄し、沈降させ、次いで250μLの緩衝液に再懸濁し、FACS管に加えた。試料をハイスループットFACS機で分析し、Cell Quest Pro ソフトウェアを用いて解析した。
【0240】
結果を表18に要約し、mAb sc133およびmAb sc188が、マウスおよびカニクイザルαVβ6およびβ6と明らかに交差反応性を示したことを証明する。mAb sc254は、β6、αVおよびαVβ6と交差反応すると思われた。mAb sc264および298は、親細胞に対し高レベルの結合性を有しているため、種交差反応性の識別が困難になっていた。
【表25】

データは、シフトした細胞のパーセントを表す。
【0241】
実施例16
内在化検定法
安定してヒトαVβ6を発現するK562細胞株を用いて、抗体の内在化を試験した。精製抗体の内在化を、この検定法では内在化されていない市販のαVβ6抗体と比較した。
結果を表19に要約する。
【表26】

【0242】
実施例17
高分解能ビアコア(BIACORE)解析
可溶性αVβ6タンパク質を用いてCM5チップに固定した抗体と結合させる高分解能ビアコア(Biacore)解析を、5種のαVβ6抗体について実施することにより可溶性抗原に対するそれらの親和力を評価した。
ビアコア解析を次の要領で実施した。2つのCM5ビアコアチップ全面にわたる高密度ヤギαヒトIgG抗体表面を、常用のアミンカップリング法を用いて調製した。100μg/mlのBSA、1mMのMgClおよび1mMのCaClを含む脱気したHBS−P泳動用緩衝液で各mAbを約1μg/mLの濃度に希釈した。より正確には、mAb sc133を0.98μg/mLに希釈し、mAb sc188を0.96μg/mLに希釈し、mAb sc264を0.94μg/mLに希釈し、mAb sc254.2を0.87μg/mLに希釈し、mAb sc298を1.6μg/mLに希釈した。次いで、上記で列挙した濃度、流速10μL/分で別々のフローセルで各mAbを捕捉することにより、捕捉レベルプロトコルを各mAbについて展開した。mAb sc133、sc298およびsc254.2を30秒間捕捉し、mAb sc188およびsc264を1分間捕捉した。50μL/分での4分洗浄工程の後、mAbベースラインを安定させた。
【0243】
可溶性αVβ6を、mAb sc133、sc188、sc264およびsc298については116〜3.6nM、およびmAb sc254.2については233〜3.6nMの濃度範囲で、各濃度範囲について2倍系列希釈により4分間注入した。10分間解離させた後、各抗原を注入した。上記のHBS−P泳動用緩衝液中で抗原試料を調製した。二重のリファレンス(基準)に対応させるため散在させて数回のmAb捕捉/緩衝液注入サイクルにより全試料をトリプリケイトで無作為に注入した。高密度ヤギαマウス抗体表面を、流速100μL/分での各サイクル後、146mMのリン酸(pH1.5)の1回18秒パルスにより再生した。全抗原注入サイクルについて50μL/分の流速を使用した。
【0244】
次いで、CLAMPを用いて質量輸送に関する限界点を含ませた1:1相互作用モデルに、データを当てはめた。得られた結合定数を表20に列挙する。親和力の高いものから低いものへとmAbを列挙する。
【表27】

【0245】
実施例18
FACSを用いた結合親和力分析
また、ビアコア(Biacore)に代わる方法として、FACS解析法を用いることにより、ヒトαVβ6抗原を安定して発現するK562細胞に対する抗体の一つの結合親和力を評価した。抗原の量を力価測定することにより、結合曲線を作成し、抗原への結合親和力を評価した。
【0246】
αVβ6を発現するK562細胞を、約600万細胞/mLの濃度で1mMのMgClおよび1mMのCaClを含む濾過済のHBS緩衝液に再懸濁した。細胞を氷上で保存した。精製mAb sc188を、96ウェルプレートにおける横11ウェルでHBS中1:2の倍率により系列希釈した。各列における12番目のウェルは緩衝液のみを含んでいた。力価測定をトリプリケイトで実施した。追加のHBSおよび細胞を、最終容量が300μL/ウェルとなり、各ウェルが約120000細胞を含むように各ウェルに加えた。mAb sc188に関する最終分子濃度範囲は、4.9〜0.019nMであった。プレートを、4℃で5時間プレート振とう器中に置いた後、プレートを回転させ、HBSで3回洗浄し、200μLの131nMのCy5ヤギα−ヒトポリクローナル抗体(Jackson Laboratories、#109−175−008)を各ウェルに加えた。次いで、プレートを4℃で40分間振とうさせた後、回転させ、再度3回HBSで洗浄した。FACSCalibur装置を用いて各mAb濃度についての20000「事象」の幾何平均蛍光(GMF)を記録し、対応するトリプリケイト力価測定点を平均化することにより、各mAb濃度に関して1つのGMF点を得た。Scientist ソフトウェアにより分子mAb濃度の関数として平均化したGMFのプロットを、下記等式を用いて非線形的に当てはめた:
【数1】

【0247】
上記等式において、F=幾何平均蛍光、L=総分子mAb濃度、P'=結合mAbに対する任意蛍光単位に関する比例定数、M=モル濃度での細胞濃度、n=1細胞あたりの受容体数、B=バックグラウンドシグナル、およびK=平衡解離定数。mAb sc188については、Kに関する推定値をP'として得、n、BおよびKを、非線形分析で自由に変動させる。
【0248】
得られたプロットをその非線形適合点(赤線)と共に図2に示す。表21は、mAb sc188について得られたKを、適合点の95%信頼区間と一緒に示す。mAb sc188に関するこれらの結果は、1タイプの受容体への結合を示している。
【0249】
FACSにより測定されたsc188についての結合親和力は、ビアコア(実施例17)による測定結果よりも著しく堅固であった。sc188に関するK値の差異については、少なくとも2つの可能な説明がある。第一の理由は、2種の検定法が測定用に異なる形態の抗原を使用したこと−ビアコアは可溶性抗原を使用し、FACS分析は細胞結合形態の抗原を使用したことである。第二の理由は、試験された抗体が、抗原の細胞結合形態に対して産生されたものであり、それらが細胞結合抗原に結合するときほど、可溶性抗原には高い親和力では結合し得ないことである。
【表28】

【0250】
実施例19
CDC検定法
上記実施例記載の精製抗体は、IgG1イソ型に属し、エフェクター機能を有し得る。これらの抗体が補体依存的細胞傷害性(CDC)を伝達する能力を測定するため、αVβ6を安定して発現する293細胞(293−10A11)および親細胞(293F)を用いて以下の検定法を実施した。
細胞をカルセイン染色するため、HT29、293−10A11および293F細胞のそれぞれ約25X10e6のアリコートを、血清不含有RPMI培地3mlに個々に再懸濁した。次いで、1mMのカルセイン45μLを、細胞の各3ml試料に加え、試料を37℃で45分間インキュベーションした。細胞を1200xRPMで3分間遠心分離にかけ、上清を廃棄し、細胞を各細胞株の培養培地に再懸濁した。遠心分離工程を反復し、細胞を再懸濁して、50μL培地中約100000細胞の最終濃度とした。
【0251】
各抗体の系列1:2希釈物を、v底96ウェルプレートにおいて、容量50μL中20μg/ml〜0.625μg/mlの濃度範囲で調製した。次いで、上記要領で調製した細胞100000個を、50μLの容量で抗体含有プレートに加え、生じた混合物を氷上で2時間インキュベーションした。インキュベーション後、細胞を沈降させ、上清を廃棄した。細胞を、10%ヒト血清(ABIドナー#27)を含むそれらの各培地100μLに再懸濁し、37℃で30分間インキュベーションした。次いで、細胞を遠心分離にかけ、上清80μLをFMAT管に移し入れた。プレートをTecanリーダーで485nmの励起波長および530nmの放射波長を用いて読み取った。
結果を図3A〜3Eに要約しており、試験された各精製抗体が、αVβ6インテグリンを安定して発現する293細胞においてCDCを伝達し得ることが証明される。
【0252】
実施例20
位置指定突然変異導入
免疫化(実施例1)から調製された抗体の一つ(sc264)は、TGFβLAP結合阻害検定法(実施例4参照)においてインビトロで強い機能的遮断活性を示したが、非αVβ6発現細胞株との交差反応性結合を呈した(実施例15参照)。この抗体、sc264は、CDR3領域にRGD配列を有しており、これが交差反応性結合に関与すると推測される。したがって、位置指定突然変異導入を用いて、RGDにおけるグリシン残基をアラニンにより置換した(sc264RAD)。
第二抗体(sc188)は、FR3領域内にグリコシル化部位を有する。この部位は、NLTからKLTへの置換による位置指定突然変異導入を通して排除された(sc188SDM)。次いで、これら2種の抗体の突然変異体を、実施例7および8記載の要領で発現させ、精製し、精製抗体を以下の実施例に記載した要領で分析した。
【0253】
実施例21
突然変異体抗体の交差反応性結合を試験する結合検定法
実施例15で観察された交差反応性結合がsc264の位置指定突然変異導入により低減化されるか否かを試験するため、結合検定法を実施した。抗体の結合を293Tおよび293F細胞株で分析することにより、RGD部位をsc264から除去することによりもとの抗体と比べて結合性が減少するか否かを試験した。
293Tおよび293F細胞を収集後回転により沈降させ、1%BSAおよび1mMのCaClおよび1mMのMgClを含むHBSS(洗浄緩衝液)に再懸濁することにより、少なくとも150000の細胞を各反応で使用した。細胞をV底96ウェルプレート(Sarstedt)における反応間に分け、プレート中の細胞を3分間1500rpmで沈降させた後、HBSS上清を除去した。一次抗体を50μLの容量において表19に示した濃度で加え、細胞を再懸濁した後、氷上で60分間インキュベーションした。インキュベーション後、細胞を3分間1500rpmでの遠心分離により沈降させ、100μLの洗浄緩衝液に再懸濁し、次いで再び沈降させた。次いで、細胞を、10μg/mlの7AADと共に2μg/mlで適切な二次抗体に再懸濁し、氷上で7分間染色した後、150μLの洗浄緩衝液を加え、細胞を3分間1500rpmで沈降させ、次いで100μLの1%BSA含有HBSSに再懸濁した。HTS連結装置を取り付けたFACS機で試料を読み取り、Cell Quest Pro ソフトウェアを用いてデータを解析した。結果を表22に要約しており、データは任意単位での幾何平均シフト値として表わされている。これらのデータは、試験した全濃度で、sc264 RADが、もとのmAb sc264よりも親293T細胞への結合性が著しく低かったことを立証している。
【表29】

【0254】
実施例22
突然変異抗体の効力分析
HT−29細胞のTGFβLAP介在的接着を阻害するのに必要とされる突然変異体αVβ6抗体の濃度(IC50)を測定するため、次の検定法を実施した。
Nunc MaxiSorp(Nunc)プレートを、一晩50μLの10μg/mlのTGFベータ1 LAP(TGFβLAP)でコーティングし、検定前に1時間3%BSA/PBSで予め遮断した。次いで、最適密度まで増殖させたHT29細胞を、沈降させ、HBBS(1%BSA含有および1mMのCa2+および1mMのMn2+含有)中で2回洗浄した後、細胞を1ウェル当たり30000細胞でHBSSに再懸濁した。コーティング液をプレートから除去し、次いで室温で1時間、100μLの3%BSAで遮断した後、PBSで2回洗浄した。
【0255】
抗体力価測定液を、30μLの最終容量中1:4系列希釈液および2度にわたって最終濃度で調製した。対照ウェルにおけるPBS濃度が最希釈抗体ウェルにおけるPBS濃度と確実にマッチするように注意した。30μLの細胞を各ウェルに加え、細胞を、4℃で40分間、V底プレートにおいて抗体の存在下でインキュベーションした。細胞抗体混合物を、コーティングプレートに移し入れ、プレートを37℃で40分間インキュベーションした。次いで、コーティングプレート上の細胞を、温HBSS中で4回洗浄した後、細胞を−80℃で15分間冷凍した。細胞を室温で解凍し、次いで100μLのCyQuant 染料/溶解緩衝液(Molecular Probes)を製造業者の使用説明書に従って各ウェルに加えた。蛍光を485nmの励起波長および530nmの放射波長で読み取った。12抗体についての結果を表23に要約しており、突然変異抗体のIC50が、それぞれのもとの抗体の場合より一貫して低いことを立証している。
【表30】

【0256】
実施例23
α4β1インテグリンとの突然変異抗体の交差反応性
突然変異抗体が、α4β1インテグリンではなく、αVβ6インテグリンに対してのみ機能的であることを立証するため、検定を実施することにより、フィブロネクチンのCS−1ペプチドへのJ6.77細胞の接着に対する抗体の阻害能を試験した。下記記載の要領で検定法を実施した。
【0257】
検定プレートを、フィブロネクチンのCS−1ペプチドでコーティングした。検定プレートを、検定前に1時間3%BSA/PBSで予め遮断した。J6.77細胞を密集成長させ、次いで培養フラスコから取り出し、沈降させ、HBSSで3回洗浄した。次いで、細胞を1ウェル当たり30000細胞の濃度でHBSSに再懸濁した。フィブロネクチンフラグメントを含むコーティング液を除去し、プレートを室温で1時間3%BSA100μLにより遮断した。コーティングしたプレートをHBSSにより3回洗浄した。抗体力価測定液を、30μLの最終容量での1:4系列希釈液および2回にわたって最終濃度で調製した。再懸濁した細胞を、V底プレートにおける力価測定抗体を含むウェルに添加し、細胞および抗体を4℃で40分間共インキュベーションした。次いで、細胞抗体混合物を、コーティングプレートに移し入れ、その後37℃で40分間インキュベーションした。次に、コーティングプレート上の細胞を、温HBSS中で4回洗浄し、次いで、プレート中の細胞を−80℃で15分間冷凍した。細胞を室温で解凍し、次いで100μLのCyQuant 染料/溶解緩衝液(Molecular Probes)を製造業者の使用説明書に従って各ウェルに加えた。蛍光を485nmの励起波長および530nmの放射波長で読み取った。
【0258】
2突然変異抗体およびそれらの非突然変異対応抗体に関する結果を表24に要約する。市販されているβ1インテグリン特異抗体を、本検定法での陽性対照として用いたところ、95%の接着阻害を呈した。市販されているαVβ6特異抗体を、α4β1への接着に関する本検定法での陰性対照として使用した。全抗体を5μg/mlで使用したところ、試験抗体の中でα4β1への接着を遮断し得たものは無かった。
【表31】

【0259】
実施例24
α5β1インテグリンとの突然変異抗体の交差反応性
突然変異抗体が、α5β1インテグリンではなく、αVβ6インテグリンに対してのみ機能的であることを立証するため、検定を実施することにより、フィブロネクチンへのK562細胞の接着に対する抗体の阻害能を試験した。上記実施例14記載の要領で本検定法を実施した。結果を表25に要約しており、試験抗体の中でα5β1への接着を遮断し得るものは無かったことを立証している。
【表32】

【0260】
実施例25
マウスおよびカニクイザルαVβ6インテグリンとの突然変異抗体の交差反応性
突然変異体αVβ6特異抗体がマウスαVβ6またはカニクイザルαVβ6との交差反応性を呈するか否かを測定するため、次の検定法を実施した。
K562親細胞、またはカニクイザルまたはマウスαVβ6を発現するK562細胞を収集後回転により沈降させ、1%BSAおよび1mMのCaClおよび1mMのMgClを含むHBSS(洗浄緩衝液)に再懸濁することにより、少なくとも150000の細胞を各反応で使用した。細胞をV底96ウェルプレート(Sarstedt)における反応間に分け、プレート中の細胞を3分間1500rpmで沈降させた後、HBSS上清を除去した。一次抗体を50μLの容量で加え、細胞を再懸濁した後、氷上で60分間インキュベーションした。インキュベーション後、細胞を3分間1500rpmでの遠心分離により沈降させ、100μLの洗浄緩衝液に再懸濁し、次いで再び沈降させた。次いで、細胞を、10μg/mlの7AADと共に2μg/mlで適切な二次抗体に再懸濁し、氷上で7分間染色した後、150μLの洗浄緩衝液を加え、細胞を3分間1500rpmで沈降させ、次いで100μLの1%BSA含有HBSSに再懸濁した。HTS連結装置を取り付けたFACS機で試料を読み取り、Cell Quest Pro ソフトウェアを用いてデータを解析した。結果を表26に要約しており、データは任意単位での幾何平均シフト値として表わされている。これらのデータは、試験した濃度で、sc264RADおよびsc188SDMが、マウスおよびカニクイザルαVβ6との交差反応性を呈することを立証している。
【表33】

【0261】
実施例26
内在化検定法
ヒトαVβ6を安定して発現するK562細胞株を用いて、突然変異抗体の内在化を試験した。実施例15記載の要領で本検定法を実施した。精製抗体の内在化を、この検定法では内在化されていない市販のαVβ6抗体と比較した。
結果を表27に要約しており、sc264RAD突然変異抗体の内在化が、非突然変異sc264の場合より著しく低いことを立証している。
【表34】

【0262】
実施例27
FACSを用いたsc264RADの結合親和力分析
sc264RAD抗体のαVβ6への結合親和力を、実施例18記載の要領で実施した。この検定法の結果を表28に要約しており、sc264RAD抗体が50pMより低い親和力を有することを立証している。
【表35】

【0263】
実施例28
sc264RADとsc264RAD/ADYの活性の比較
sc264RAD抗体および264RADの生殖系列(GL)バージョン(軽鎖に突然変異A84Dを含む)、264RAD/ADYの活性を、デトロイト(Detroit)−562接着検定法で比較した。
プレートを一晩4℃で0.5μg/mlのGST−TGF−b LAP融合タンパク質によりコーティングし、翌朝、洗浄し、次いで3%BSA/PBSにより1時間遮断した。次いで、Detroit-562細胞(1ウェル当たり25000細胞)を、2mMのMgClを含むHBSS中37℃で45分間プレートに接着させた。45分後、プレートをPBS中で3回洗浄し、次いでエタノールに固定した。Hoeschtで染色することにより、細胞を視覚化し、Cellomics Arrayscan IIにおいて1ウェル当たりに結合した細胞数を数えることにより定量した。図5に示したデータは、sc264RADおよびsc264RAD/ADYが両方とも類似した活性を有すること、およびαVβ6機能の遮断能は修飾抗体でも維持されていることを示している。
【0264】
実施例29
成長試験
抗体264RAD、133および188SDMがインビボでavb6機能を遮断することを立証するため、αVβ6陽性腫瘍異種移植片の成長に対する阻害能についてそれぞれ試験した。かかる一モデルは、Detroit−562鼻咽頭(nasophayngeal)細胞株であり、これはαVβ6を発現し、また皮下腫瘍異種移植片として成長する。
Detroit 562細胞を、EarleのBSSおよび2mMのL−Glu+1.0mMのピルビン酸ナトリウム、0.1mMのNEAA+1.5g/L重炭酸ナトリウム+10%FBSを含むEMEM中で培養した。細胞を採取し、50%PBS+50%マトリゲルに再懸濁した。次いで、懸濁液を、右脇腹内に0.1mlの容量でマウス1匹あたり5x10−6の濃度で内植した。動物は6〜8週齢のNCR雌ヌードマウスであった。腫瘍が0.1cmに達したとき、投薬を開始し、試験の持続期間中週1回20mg/kgの用量で投与した。3抗体は全て、腫瘍の成長を阻害した(図4参照)。264RADが最も有効であり、次いで133および188であった。このデータは、抗体264RAD、133および188がインビボで活性を示し、成長に関するαVβ6シグナリングに依存的な腫瘍の成長を抑制し得ることを立証している。
【0265】
参考文献の引用
特許、特許出願、研究論文、教科書などを含む本明細書で引用している全参考文献、およびそこに引用されている参考文献については、それらが既存していない範囲まで、全ての目的に関してそのまま出典明示で援用する。
【0266】
均等内容事項
上記の明細書は、当業者が本発明を実践するのに十分な内容であると考えられる。上述の記載内容および実施例は、本発明の好ましい態様を詳述しており、本発明者らが最善であるとみなす方法を記載している。しかしながら、いかに本明細書で詳述されておろうと、本発明は多くの方法で実践され得るものとし、本発明は添付の請求の範囲およびその均等内容事項に従って解釈されるべきである。
【0267】
【表36】

【0268】
【表37】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
αVβ6に特異的に結合し、αVβ6へのリガンドの結合を阻止する標的結合剤(targeted binding agent)。
【請求項2】
標的結合剤が、HT29細胞のTGFβ−LAP介在的接着を99%より高い率で阻害する、請求項1記載の標的結合剤。
【請求項3】
標的結合剤が、0.070μg/ml未満のIC50でHT29細胞のTGFβ−LAP介在的接着を阻害する、請求項1記載の標的結合剤。
【請求項4】
標的結合剤が、35ナノモル(nM)未満のKでαVβ6と結合する、請求項1記載の標的結合剤。
【請求項5】
標的結合剤が、25ナノモル(nM)未満のKでαVβ6と結合する、請求項1記載の標的結合剤。
【請求項6】
標的結合剤が、10ナノモル(nM)未満のKでαVβ6と結合する、請求項1記載の標的結合剤。
【請求項7】
標的結合剤が、60ピコモル(pM)未満のKでαVβ6と結合する、請求項1記載の標的結合剤。
【請求項8】
標的結合剤が、モノクローナル抗体である、請求項1記載の標的結合剤。
【請求項9】
標的結合剤が、完全ヒトモノクローナル抗体である、請求項8記載の標的結合剤。
【請求項10】
標的結合剤が、sc264RAD、sc264RAD/ADY、sc188SDM、sc133、sc133TMT、sc133WDS、sc133TMT/WDS、sc188、sc254、sc264またはsc298である、請求項9記載の標的結合剤。
【請求項11】
結合剤が、少なくとも配列番号14のアミノ酸98〜102を有するVH CDR3を含む、請求項11記載の標的結合剤。
【請求項12】
結合剤が、少なくとも配列番号22のアミノ酸99〜113を有するVH CDR3を含む、請求項1記載の標的結合剤。
【請求項13】
結合剤が、少なくとも配列番号26のアミノ酸99〜117を有するVH CDR3を含む、請求項1記載の標的結合剤。
【請求項14】
結合剤が、少なくとも配列番号30のアミノ酸99〜114を有するVH CDR3を含む、請求項1記載の標的結合剤。
【請求項15】
結合剤が、少なくとも配列番号38のアミノ酸97〜113を有するVH CDR3を含む、請求項1記載の標的結合剤。
【請求項16】
結合剤が、配列番号14の配列を有する重鎖ポリペプチドを含む、請求項1記載の標的結合剤。
【請求項17】
結合剤が、配列番号22の配列を有する重鎖ポリペプチドを含む、請求項1記載の標的結合剤。
【請求項18】
結合剤が、配列番号26の配列を有する重鎖ポリペプチドを含む、請求項1記載の標的結合剤。
【請求項19】
結合剤が、配列番号30の配列を有する重鎖ポリペプチドを含む、請求項1記載の標的結合剤。
【請求項20】
結合剤が、配列番号38の配列を有する重鎖ポリペプチドを含む、請求項1記載の標的結合剤。
【請求項21】
結合剤が、配列番号71の配列を有する重鎖ポリペプチドを含む、請求項1記載の標的結合剤。
【請求項22】
結合剤が、配列番号75の配列を有する重鎖ポリペプチドを含む、請求項1記載の標的結合剤。
【請求項23】
αVβ6と結合する単離ヒトモノクローナル抗体であって、
CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域および
CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域
を含み、
重鎖可変領域CDR3配列が、配列番号14、配列番号22、配列番号26、配列番号30または配列番号38、配列番号71、配列番号76、配列番号79およびその同類配列修飾形から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖可変領域CDR3配列が、配列番号:配列番号16、配列番号24、配列番号28、配列番号32または配列番号40、配列番号85、配列番号93およびその同類配列修飾形から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む
抗体。
【請求項24】
医薬上許容される担体と配合された、請求項1記載の標的結合剤。
【請求項25】
標的結合剤が、抗αVβ6抗体の完全ヒト単離結合性フラグメントである、請求項1記載の標的結合剤。
【請求項26】
請求項1記載の標的結合剤をコード化する核酸分子。
【請求項27】
請求項26記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項28】
請求項27記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項29】
動物における悪性腫瘍の処置方法であって、処置を必要とする動物に、請求項1記載の標的結合剤の治療有効量を投与することを含む方法。
【請求項30】
動物がヒトである、請求項29記載の方法。
【請求項31】
標的結合剤が、モノクローナル抗体sc264RAD、sc264RAD/ADY、sc188SDM、sc133、sc133TMT、sc133WDS、sc133TMT/WDS、sc188、sc254、sc264またはsc298である、請求項29記載の方法。
【請求項32】
悪性腫瘍が、メラノーマ、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、肝細胞(肝臓)癌、甲状腺腫瘍、胃(腹部)癌、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、肺癌、神経膠芽腫、子宮体癌、腎臓癌、結腸癌、膵臓癌、食道癌、頭部および頸部癌、中皮腫、肉腫、胆管(胆管癌)、小腸腺癌、小児悪性疾患および類表皮癌から成る群から選択される、請求項29記載の方法。
【請求項33】
処置を必要とする動物に、請求項1記載の標的結合剤の治療有効量を投与することを含む、炎症の処置方法。
【請求項34】
動物がヒトである、請求項33記載の方法。
【請求項35】
標的結合剤が、完全ヒトモノクローナル抗体である、請求項33記載の方法。
【請求項36】
標的結合剤が、αVβ6に結合する、請求項33記載の方法。
【請求項37】
αVβ6を請求項1記載の標的結合剤と接触させる、αVβ6とそのリガンド間の相互作用の阻害方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−545327(P2009−545327A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523064(P2009−523064)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際出願番号】PCT/US2007/075120
【国際公開番号】WO2008/112004
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(391008951)アストラゼネカ・アクチエボラーグ (625)
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】