説明

β−アミノ基を含むDPP−IV阻害剤、その製造方法及びそれを有効成分として含む糖尿または肥満予防及び治療用医薬組成物

本発明は、β−アミノ基を含む新規なヘテロ環化合物及び前記β−アミノ基を含むヘテロ環化合物の製造方法、前記ヘテロ環化合物または薬学的に許容されるその塩を有効成分として含む医薬組成物に関するものである。本発明によるヘテロ環化合物は、優れたDPP−IV阻害活性とバイオアベイラビリティを示し、DPP−IVによって誘発される糖尿病または肥満などの疾病を予防または治療するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジペプチジルペプチダーゼ−IV(Dipeptidyl Peptidase−IV、以下“DPP−IV”とする)に対する優れた阻害活性及び高いバイオアベイラビリティを示すβ−アミノ基を含むヘテロ環化合物、及び前記β−アミノ基を含むヘテロ環化合物または薬学的に許容されるその塩を有効成分として含む医薬組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
酵素ジペプチジルペプチダーゼ、以下略してDPP−IV(および他においてDP−IV、DP−4またはDAP−IVとして)および分類EC3.4.14.5としても知られている、はセリンプロテアーゼであり(Barrett A.J.等,Arch.Biochem.Biophys.,1995年,247−250頁)、配列H−Xaa−Pro−Yまたは、H−Xaa−Ala−Y(ここで、Xaaは親油性の任意のアミノ酸を表し、Proはプロリンを表し、Alaはアラニンを表す)から始まるペプチドのN−末端ジ−ペプチドを切断する機能(Heins J.,等,Biochim.et Biophys.Acta,1988年,161頁)を有する酵素である。DPP−IVは広範囲に分布し、腎臓、肝臓及び小腸など様々な哺乳動物組織に見出される(Hegen M.等,J.Immunol.,1990年,2908−2914頁)。DPP−IVは初めは、膜結合タンパク質として同定された。最近になって、その可溶性形態が同定された(Duke−Cohan J.S.等,J.Biol.Chem.,1995年,14107−14114頁)。最近公開された研究および報告によれば、このようなDPP−IVの可溶性形態は、酵素の膜結合形態と同一な構造及び作用を有し、特定形態の膜結合ドメインがない状態で血液中で発見されることが明らかにされた(Christine D.等,Eur.J.Biochem.,2000年,5608−5613頁)。
【0003】
初期の興味は、DPP−IVがTリンパ球を活性化する役割に集中した。Tリンパ球の活性化に応答性のDPP−IVを特別にCD26と名付けた。CD−26がヒト免疫不全ウィルス(HIV)と結合または相互作用することを示した研究(Guteil W.G.等,Proc.Natl.Acad.Sci.,1994年,6594−6598頁)により、DPP−IV阻害剤は、AIDSの治療にも有用であり得ると考えられた(Doreen M.A.等,Bioorg.Med.Chem.Lett.,1996年,2745−2748頁)。
【0004】
免疫系に参加する重大な役割以外に、DPP−IVの主な機能は、上述したようなペプチド分解作用から生じる。DPP−IVが小腸におけるグルカゴン様タンパク質−1(以下「GLP−1」とする)の分解に関与する鍵となる酵素であることが明らかにされ(Mentlein R.等,Eur.J.Biochem.,1993年,829−835頁)、DPP−IVの役割が特に注目を集めるようになった。GLP−1は、小腸での栄養摂取に応答して小腸のL−細胞によって分泌される30アミノ酸ペプチドホルモンである(Goke R.等,J.Biol.Chem.,1993年,19650−19655頁)。このホルモンは、食後の血糖量調節におけるインスリンの作用の増強効果を有することが知られていたため(Holst J.J.等,Diabetes Care,1996年,580−586頁)、DPP−IV阻害剤が第2型糖尿病治療にも有用であると仮定された。このような仮説を基に、初期的な形態のDPP−IV阻害剤が開発され、動物実験で医薬品の治療的効果を立証した事例もいくつか報告された(Pauly R.P.等,Metabolism,1999年,385−389頁)。さらに、DPP−IV遺伝子欠損マウスまたはラットでGLP−1の活性および高いインスリンレベルが維持され、血糖を減少させる結果となるが、DPP−IV遺伝子のかかる遺伝子破壊または変異は、動物個体の生存に特別な支障がない(Marguet D.等,Proc.Natl.Acad.Sci.,2000年,6874−6879頁)。その結果、DPP−IVは、第2型糖尿病の治療において、非常に有力な治療剤としてふさわしいことを提示するようになり、DPP−IV阻害剤開発のための研究が加速化された。
【0005】
多様な組織におけるGLP−1と受容体との結合は、満腹感(充足感)、胃の排出の遅延、および膵臓β−細胞の成長促進をもたらす。したがって、GLP−1自体の静脈投与を通した、上述した第2型糖尿病治療についての臨床試験(Verdich C.等,J.Clin.Endocrinol.Metab.,2001年,4382−4389頁)が徐々に増加した。しかし、GLP−1の体内半減期は、2分程度に過ぎないので(Kieffer T.J.,等,Endocrinology,1995年,3585−3596頁)、そのような短い半減期は、GLP−1自体を治療剤として直接使用するにあたって大きな障害となる。以後、多くの研究グループでGLP−1を誘導体化することを試み、短い体内半減期を延長することができるペプチドを開発および商用化するに至った(Deacon C.F.,Diabetes,2004年,2181−2189頁)。しかしながら、このようなGLP−1誘導体も注射剤であるという根本的な限界に悩まされている。さらに、活性GLP−1(7−36)がDPP−IVによって分解され、ほんの短い時間、例えば2分、で不活性なGLP−1(9−36)に変換されるという事実のため、効率的なDPP−IV阻害剤に対する関心はさらに大きくなっている。
【0006】
初期のDPP−IV阻害剤の開発傾向は、他の阻害剤の開発傾向と類似していた。すなわち、ほとんど大部分が基質類似体に対する研究結果物であった。その中で代表的な基質類似体がジ−ペプチド誘導体であり、これは、DPP−IVが特定アミノ酸であるPro(プロリン)を含むペプチドに優れた親和力を有するという事実(Chinnaswamy T.等,J.Biol.Chem.,1990年,1476−1483頁)に基づいて、Proと類似な構造を有する母核を研究した初期研究の結果だった。Pro類似構造は、ピロリジド及びチアゾリジドが代表的であり、これら母核を含んだ誘導体は、DPP−IV酵素に対して可逆的で競合的な阻害活性を示した(Augustyns KJL.,等,Eur.J.Med.Chem.,1997年,301−309頁)。
【0007】
このような研究開発の結果物の中で、現在までもその作用機序と効力に対する実験が続いているものとして、特に、Val−Pyr(Valine−Pyrrolidide)、Ile−Thia(Isoleucine−Thiazolidide)などがある。この中で、Val−Pyrは、DPP−IVに対する阻害活性が相対的に落ちるので(Hanne B.R.,等,Nat.Struct.Biol.,2003年,19−25頁)、多くの関心がIle−Thiaに集中され、Ile−Thia化合物の誘導体に対する研究が本格的に進行された。
【0008】
前記研究によって注目され、得られたIle−Thia誘導体化合物の中で最も活性の優れた化合物が、メルク(Merck)社が試みたβ−アミノ酸チアゾリジド系列だった。しかし、ラットでの薬力学および薬物動態学実験の結果、酵素活性の阻害において明らかな制限があると同時にバイオアベイラビリティが顕著に低かった(Jinyou Xu,等,Bioorg.Med.Chem.Lett.,2004年,4759−4762頁)。その結果、重度の不利点のため、この系列の化合物に対する開発は、それ以上進行されなかった。
【0009】
前記研究中にメルク社は、チアゾリジド母核に加え、β−アミノ酸もまたDPP−IV阻害活性に顕著な効果を有する鍵となる因子であることに気付いた。この発見は、チアゾリジド母核を他の母核に置換する研究に活用された(Linda L.B.,等,Bioorg.Med.Chem.Lett.,2004年,4763−4766頁)。このような後続研究によって、前記チアゾリジド母核がピペラジン母核に置換された多様な誘導体が合成され、その効力試験及び薬力学研究が行われた。残念なことに、メルク社のピペラジン誘導体もバイオアベイラビリティの顕著な低さに悩まされていた。かかる不利点を克服するための化合物最適化の中で、ピペラジン部分をトリアゾロピペラジン部分に変形させてMK−0431(商品名:JANUVIA)を開発した。この物質は、2006年にアメリカFDA新薬承認を得て現在市販されている。また、MK−0431に続いて、ジアゼパノン部分(7員環)を導入した化合物が開発中にある(WO2004037169;WO2005011581;WO2006104997;Bioorg.Med.Chem.Lett.,2007年,49−52頁)。特に、発表された論文(Bioorg.Med.Chem.Lett.,2007年,49−52頁)によると、イミダゾロン(5員環)とピペラジノン(6員環)の場合、ジアゼパノンに比較してin vitro活性が非常に落ちる結果を示し、したがってジアゼパノンの最適化に集中した。
【0010】
【化1】

【0011】
上述の問題を解決するための、および興味ある化合物の最適化を達成するための様々な広範に渡るおよび集約的な研究および実験の結果として、本発明者等は、ピペラジノン部分をヘテロ原子を含む置換を行なう場合、優れたDPP−IV阻害活性を有するのみならず、従来のDPP−IV阻害剤と比較して顕著に改善したバイオアベイラビリティを有し得ることを発見して、新規なβ−アミノ基を含んだヘテロ環化合物を合成した。本発明はこれらの発見に基づいて完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、DPP−IV阻害活性を有するβ−アミノ基を含むヘテロ環化合物、その薬学的に許容可能な塩、その水和物またはその溶媒和物を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、前記β−アミノ基を含むヘテロ環化合物、その薬学的に許容可能な塩、その水和物またはその溶媒和物を有効成分として含む糖尿または肥満の予防及び治療用製薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明は、下記化学式1で表わされるβ−アミノ基を含むヘテロ環化合物またはその薬学的に許容されるその塩に関するものである。
【0015】
【化2】

【0016】
前記化学式1において、XはOR1、SR1またはNR1R2であり、R1、R2はそれぞれ、C〜Cの低級アルキルで、NR1R2のR1とR2は、Oのヘテロ原子を含み5員ないし7員環を成すことができる。
【0017】
本発明による前記化学式1の化合物は、好ましくはピペラジノンの3番位置の炭素に光学活性を誘発する立体異性体である下記化学式2で表わされる化合物を含む。
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、Xは前記化学式1における定義と同じである)
【0020】
すなわち、本発明の化学式1の化合物は、二つの非対称中心を有することができる。したがって、前記化学式2に示されたようにβ−炭素とピペラジノンの3番位置の炭素に非対称中心を有することができるので、単一ジアステレオ異性体、ラセミ体、ラセミ体混合物またはジアステレオ異性体の混合物の形態として存在することができ、これは本発明の化学式1の化合物に含まれ得る。
【0021】
また、本発明の化学式1の化合物の一部は、互変異性体として存在することも可能であり、さらにはそれぞれの互変異性体だけではなく、それらの混合物も本発明の化合物に含まれ得る。
【0022】
本発明の前記立体異性体は、当業界に広く公知された方法によって光学的に純粋な出発物質、または公知された配列の試薬を使用して立体選択的合成によって得ることができる。
【0023】
本発明による前記化学式1の化合物のβ−アミノ基を含むヘテロ環化合物の好ましい例を、下記に示す。
【0024】
1)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オン塩酸塩、
2)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタノイル]−3−(メトキシメチル)ピペラジン−2−オン塩酸塩、
3)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタノイル]−3−(エトキシメチル)ピペラジン−2−オン塩酸塩、
4)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタノイル]−3−(イソプロポキシメチル)ピペラジン−2−オン塩酸塩、
5)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタノイル]−3−(シクロペンチルオキシメチル)ピペラジン−2−オン塩酸塩、
6)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタノイル]−3−[(ジエチルアミノ)メチル]ピペラジン−2−オン二塩酸塩、
7)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタノイル]−3−[(エチルメチルアミノ)メチル]ピペラジン−2−オン二塩酸塩、
8)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタノイル]−3−(モルホリノメチル)ピペラジン−2−オン二塩酸塩、
9)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタノイル]−3−(t−ブチルチオメチル)ピペラジン−2−オン塩酸塩、
10)(S)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オン塩酸塩、
11)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オン、
12)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オン酒石酸塩、
13)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オンクエン酸塩、
14)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オンリン酸塩、
15)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オン酢酸塩、
16)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オンリンゴ酸塩、
17)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オンコハク酸塩、
18)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オンアジピン酸塩。
【0025】
本発明による前記化学式1のβ−アミノ基を含むヘテロ環化合物は、薬学的に許容されるその塩、それから製造され得る水和物及び溶媒和物を含む。
【0026】
前記化学式1のβ−アミノ基を含むヘテロ環化合物の薬学的に許容される塩は、一般的に使用される塩の製造方法によって製造することができる。
【0027】
本発明において、「薬学的に許容される塩」という語は、無機または有機塩基及び無機または有機酸を含む薬学的に許容される非毒性塩基または酸から製造される塩をいう。薬学的に許容される塩の例は、化合物1と無機塩基、例えばアルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン塩、マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛イオン、との塩を含んでよい。特に、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウムまたはナトリウム塩が好ましい。固形の塩は、一つ以上の結晶構造を有してよく、また水和物形態で存在することができる。薬学的に許容される非毒性有機塩基の塩の例は、化合物1と、一級、二級または三級アミン、天然置換アミンなどの置換アミン、環状アミン、またはアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エチルアルコールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ハイドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどの塩基性イオン交換樹脂との塩を含んでよい。
【0028】
本発明の化合物が塩基性の場合、塩は無機及び有機酸を含む薬学的に許容される非毒性酸から製造することができる。前記酸の例は、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、アジピン酸などを含んでよい。酢酸、クエン酸、塩酸、リンゴ酸、リン酸、コハク酸、酒石酸またはアジピン酸が、特に好ましい。
【0029】
本発明において化学式1の化合物を指称する場合には、薬学的に許容される塩を含むことを意図する。
【0030】
本発明において、「水和物」という語は、化学式1の化合物またはその薬学的に許容される塩であって、さらに非共有的分子間力で結合される化学量論的または非化学量論的量の水をさらに含んでいるものを意味する。前記水和物は、1当量以上、一般的には1〜5当量の水を含んでよい。前記水和物は、水または水を含む溶媒から本発明の化学式1の化合物またはその薬学的に許容される塩を結晶化させて製造してよい。
【0031】
本発明において、「溶媒和物」という語は、本発明の化学式1の化合物またはその薬学的に許容される塩であって、さらに非共有的分子間力で結合される化学量論的または非化学量論的量の溶媒を含んでいるものを意味する。前記溶媒として好ましいのは、揮発性、非毒性または人間に投与するのに相応しい溶媒である。例えば、エチルアルコール、メタノール、プロパノール、メチレンクロライドなどであってよい。
【0032】
本発明の別の態様によれば、前記化学式1のβ−アミノ基を有するヘテロ環化合物またはその薬学的に許容可能な塩の製造方法が提供される。
【0033】
本発明は、下記スキーム1で表わされるように、1)化学式3のβ−アミノ基を有する化合物と化学式4の置換されたヘテロ環化合物とを、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)と1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、3級アミンの存在下で反応させて、ペプチド結合を有する化学式5の化合物を製造する工程及び、2)前記化学式5の化合物を酸の存在下で反応させてβ−アミノ基を有するヘテロ環化合物を製造する工程を含む化学式2のβ−アミノ基を有するヘテロ環化合物の製造方法を含む。
【0034】
【化4】

【0035】
(式中、Xは前記化学式1における定義と同じである)
【0036】
例えば、化学式5の中間体は、化学式3の化合物及び化学式4の化合物をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)またはジクロロメタンのような溶媒中で、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)または1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)などのカップリング試薬、及びジイソプロピルエチルアミンまたはトリエチルアミンなどの塩基の存在下で、0℃〜室温で3〜48時間慣習的に反応させて得てよい。
【0037】
ペプチド化反応によって製造された化学式5の中間体の窒素原子は、ペプチド化反応に加わらないように保護基で保護されている。脱保護化反応によって前記保護基を除去することで、目的とする化学式2のβ−アミノ基を有するヘテロ環化合物を得ることができる。すなわち、前記保護基がBocなので、保護基除去は、酸条件、一般的に、トリフルオロ酢酸/ジクロロメタン、酢酸エチル/塩化水素、塩化水素/ジクロロメタンまたはメタノール/塩化水素を使用して、0℃〜室温で1〜24時間反応させて行ってよい。
【0038】
前記ペプチド結合反応及び脱保護反応によって製造された化学式2の化合物は、必要に応じて、再結晶、粉末化 、分取薄膜クロマトグラフィー、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(参照:W.C.Still等,J.Org.Chem.,1978年,第43巻,2923頁)、またはHPLCによって目的としない副産物から精製することができる。HPLCによって精製された化合物は、相応する塩として分離することができる。化学式5の化合物もこれと同様に精製することができる。
【0039】
本発明では、出発物質として立体異性体の混合物を使用して、化学式1の化合物を立体異性体の混合物を製造し、得られた混合物をそれぞれの立体異性体として分離して化学式1の化合物を得てよい。さらに、出発物質としてそれぞれの立体異性体を使用することで、化学式1の化合物をそれぞれの立体異性体で製造してよい。立体異性体の分離は、通常のカラムクロマトグラフィーまたは再結晶法で行ってよい。
【0040】
本発明の化学式2の化合物の製造において、反応スキーム1で使用される化学式3の化合物は商業的に入手可能であり、当業者に公知されているあらゆる方法によって容易に製造されてよい。
【0041】
また、本発明の化学式2の化合物の製造において、反応スキーム1で使用される化学式4で表わされる化合物は、スキーム2及びスキーム3の経路によって製造してよい。
【0042】
下記スキーム2において、化合物6は、置換基Xによって市販されていてもよいし市販されていなくてもよく、したがって化合物6は市販されているものであるか、例えば下記スキーム3など、当業者に公知のあらゆる方法によって容易に製造されてよい。
【0043】
下記スキーム2において、本発明の化合物を製造するために使用される化合物4は、化合物6から製造することができる。特に、化合物6を還元試薬の存在下でN−ブチルオキシカルボニル−2−アミノアセトアルデヒドと反応させて化合物7を得、そこから2級アミンをベンジルオキシカルボニル(Cbz)で保護した化合物8を製造し、続いて脱保護して、ブチルオキシカルボニル(Boc)を脱保護化した化合物9を製造する。化合物9をトリメチルアルミニウム(または、ジイソプロピルエチルアミン/エチルアルコール、炭酸水素ナトリウム/メタノールなど)で環化反応させて化合物10を得、続いてCbzを脱保護化することで、化合物4を製造する。化合物6からの化合物7の製造に使用する還元試薬は、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、または水素化ホウ素ナトリウムなどがある。
【0044】
【化5】

【0045】
(式中、Xは前記化学式1における定義と同様である)
【0046】
前記スキーム2での化合物6が市販されていない場合には、下記スキーム3と類似の方法で製造することができる。下記スキーム3で多様な置換基R1を有する化合物6は、D−セリンメチルエステルをトリチルクロライドで置換させた化合物11を製造し、続いてヒドロキシ基をメシル基に置換した後、還流させてアジリジン化合物12を製造する。化合物12のトリチル基を、トリフルオロ酢酸を使用して除去した後、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)保護により化合物13を製造する。化合物13を、多様なR1を有するHXと反応させて化合物14を製造し、続いてCbzを脱保護化することで化合物6を製造する。
【0047】
【化6】

【0048】
(式中、Xは前記化学式1における定義と同様である)
【0049】
本発明の化学式1の一部の化合物について、反応を促進するまたは目的としない反応生成物を避けるために、前述の反応条件及び反応手順を所望のように変化させてよい。
【0050】
上述したように、本発明の化学式1の化合物、出発物質、中間体などは、当該技術分野で知られた多様な方法によって合成されてよい。
【0051】
本発明のさらなる側面によれば、前記化学式1の化合物または薬学的に許容されるその塩を有効成分として含む、糖尿病または肥満を予防及び治療するための医薬組成物が提供される。
【0052】
本発明の前記化学式1の化合物は、DPP−IVに対する優れた阻害活性を示す。酵素DPP−IVに対する本発明の化学式1の化合物の阻害能力を測定した場合、DPP−IVの酵素反応を50%抑制するために求められる濃度IC50は、大部分0.5〜20nMの範囲を示し、数百〜数千nM、さらには数万nMのIC50測定結果を示すことが報告された従来のDPP−IV阻害剤と比較して、優れたDPP−IV阻害活性を示す(Jinyou Xu,等,Bioorg.Med.Chem.Lett.,2004年,4759−4762頁;Linda L.B.,等,Bioorg.Med.Chem.Lett.,2004年,4763−4766頁)。
【0053】
また、本発明の化学式1の化合物は、高い経口ブドウ糖耐性を有する。経口ブドウ糖耐性試験(OGTT)によれば、本発明の化学式1の化合物が35%以上、好ましくは50%以上の血糖減少効果を示すことが測定され、従来のDPP−IV阻害剤と比較して非常に優れたバイオアベイラビリティを示す。その他にも、薬物動態学/薬力学相関性、DPP−IV阻害維持時間測定、体内動態実験を含むin vivo実験結果は、本発明の化合物のDPP−IV阻害活性及びバイオアベイラビリティが優秀であることを示している。
【0054】
したがって、本発明の前記化学式1の化合物を有効成分として含む医薬組成物は、DPP−IVに起因する代表的な疾病である糖尿病、肥満などの治療及び予防に有用に使用され得る。
【0055】
本発明のさらに別の側面によれば、前記で言及した本発明の化合物を含んだ医薬組成物の糖尿または肥満を予防および治療のための使用及び有効量の化学式1の化合物を含んだ組成物を哺乳類(ヒトを含む)に投与することを含む、糖尿または肥満の予防及び治療方法を提供する。
【0056】
本発明の前記化学式1の化合物、その立体異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物、または溶媒和物を有効成分として含む医薬組成物は、下記の多様な経口または非経口投与形態で剤形化することができるが、これに限定されるものではない。
【0057】
経口投与用剤形の例は、錠剤、丸薬、硬質・軟質カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳液剤、シロップ剤、顆粒剤、エリキシル剤などを含んでよい。これら剤形は、前記有効成分以外に通常的に使用される充填剤、増量剤、湿潤剤、崩解剤、流動促進剤、結合剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を1種以上使用することができる。
【0058】
崩解剤の例は、寒天、澱粉、アルギン酸またはそのナトリウム塩、無水リン酸1水素カルシウム塩などを含んでよい。流動促進剤の例は、シリカ、タルク、ステアリン酸またはそのマグネシウム塩またはカルシウム塩、ポリエチレングリコールなどを含んでよい。結合剤の例は、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、澱粉ペースト、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどを含んでよい。さらに製剤は、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース、グリシンなどの希釈剤を含んでよい。必要に応じて、製剤はさらに一般的に知られた沸騰混合物、吸収剤、着色剤、香料、甘味料などを含んでよい。
【0059】
また、前記化学式1の化合物または薬学的に許容されるその塩を有効成分として含む製薬組成物は、非経口投与、例えば座薬、皮下注射、静脈注射、筋肉内注射または胸腔内注射などによって投与されてよい。ここで、非経口投与用剤形に製剤化するために、前記化学式1の化合物またはその薬学的に許容される塩を安定剤または緩衝剤と水の存在下で混合して溶液または懸濁液に製造し、それをアンプルまたはバイアルの単位投与型に製造することができる。
【0060】
前記組成物は、滅菌されてよくおよび/または防腐剤、安定化剤、水和剤または乳化促進剤、浸透圧調節のための塩および/または緩衝剤などの補助剤、及び治療に有用な物質を含んでよく、混合、顆粒化またはコーティングなどの従来の方法によって製剤化することができる。
【0061】
必要に応じて、本発明による化学式1の化合物またはそれを有効成分として含む製薬組成物は、その他の薬剤、例えば、他の糖尿治療剤と組み合わせて投与されてよい。
【0062】
本発明の化学式1の化合物またはそれを有効成分として含む製薬組成物を単位用量形態に剤形化する場合、有効成分として化学式1の化合物を単位用量中約0.1〜1,500mgで含有することが好ましい。当業者には明らかなように、化学式1の化合物の投与量は、患者の体重、年齢及び疾病の性質及び重症度等の様々な要因に依存して、医者の処方によって決定されてよい。しかし、成人治療に必要な投与量は、投与の頻度と強度を考慮して、典型的には一日に約1〜500mgの範囲である。成人に筋肉内または静脈内投与する場合、数回の単位投与量に分離して一日に普通約5〜300mgの全体投与量なら十分であろうが、一部患者の場合、一日投与量がさらに多くてもよい。
【発明の効果】
【0063】
以下に特に例示されるように、本発明によると、DPP−IVの酵素活性に優れた阻害活性を有するβ−アミノ基を含むヘテロ環化合物を提供する。本発明の前記化合物を有効成分として含む医薬組成物は、優れたDPP−IV阻害活性とバイオアベイラビリティを示し、DPP−IVに起因すると考えられる糖尿病、肥満などの疾病を予防及び治療するのに有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】MK−0431及び実施例1化合物の血漿DPP−IV活性と薬物濃度相関性を示したグラフである。
【図2】実験用ラットにおいて、MK−0431と実施例1のDPP−IV阻害維持時間を比較測定した結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0065】
以下、本発明を下記の実施例及び実験例よってさらに詳細に説明する。但し、下記の実施例は、本発明を例示するだけのものであって、本発明の内容が下記の実施例に限定されるのではない。
【0066】
<実施例1>(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オン塩酸塩の製造
工程1):(R)−メチル1−トリチルアジリジン−2−カルボキシレートの製造
D−セリンメチルエステル塩酸塩200gをクロロホルム1.8lに加えた後、反応液を0℃に冷却させてトリエチルアミン448mlを徐々に加えた。前記反応混合物に、トリチルクロライド358.4gを徐々に加えた後、1時間さらに撹拌した。反応混合物を常温まで昇温させた後、クロロホルム1lを加えて水2.5lで洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで脱水して、0℃に冷却した後、トリエチルアミン484mlと4−メチルアミノピリジン15.7gを順に徐々に加えた。反応混合物を5分間撹拌した後、メタンスルホニルクロライド139mlを徐々に加えた。反応混合物を常温に昇温した後、4時間さらに撹拌して、12時間還流した。反応混合物を常温に冷却して水4lで洗浄した後、塩水3lで再び洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで脱水して濃縮減圧乾燥した。残渣にエチルアルコール3lを加えて撹拌した。得られた固体を濾過して表題化合物329gを得た。
【0067】
1H NMR (400 MHz, CDCl3): 7.42 to 7.49(m, 6H), 7.18 to 7.32(m, 9H), 7.68(s, 1H), 3.74(s, 3H), 2.24(m, 1H), 1.87(m, 1H), and 1.40(m, 1H)
【0068】
工程2):(R)−1−ベンジル2−メチルアジリジン−1,2−ジカルボキシレートの製造
(R)−メチル1−トリチルアジリジン−2−カルボキシレート328.4gをクロロホルム1.4lに溶解した後、反応液を0℃に冷却してトリフルオロ酢酸462mlを徐々に加えた。反応混合物を1時間撹拌した後、水2lを加えて10分間撹拌した後、有機層を除去した。水層を炭酸水素ナトリウムで中和した後、精製なしに次の反応に使用した。
【0069】
前記の水層にジエチルエーテル2lと炭酸水素ナトリウム120.5gを加えて反応液を0℃に冷却した後、ベンジルクロロホルマート165mlを徐々に滴下した。反応混合物を2時間さらに撹拌した後、水層を除去した。有機層を硫酸マグネシウムで脱水して濃縮及び減圧乾燥した後、カラムクロマトグラフィーによって精製して表題化合物108.5gを得た。
【0070】
1H NMR (400 MHz, DMSO): 7.32-7.36(m, 5H), 5.13(s, 2H), 3.09(dd, J=3.2, 5.4Hz, 1H), 2.58(dd, J=1.2, 3.2Hz, 1H), and 2.47(dd, J=1.2, 5.4Hz, 1H)
【0071】
工程3):(R)−2−アミノ−3−t−ブトキシプロパンメチルエステルの製造
(R)−1−ベンジル2−メチルアジリジン−1,2−ジカルボキシレート1.1gをクロロホルム11mlに溶解した後、t−ブタノール18mlを加えた。反応混合物に BFOEt1.2mlを徐々に滴下した後、12時間撹拌した。反応混合物に水2lを加えて反応を終結させた。有機層を分離し、硫酸マグネシウムで脱水して濃縮及び減圧乾燥した後、精製なしに次の反応に使用した。
【0072】
前記の残渣をメタノール10mlに溶解した後、酢酸エチル2ml中のパラジウム/炭素740mgを加え、周辺気圧下で水素を1時間の間バブリングした。反応混合物を濾過した後、減圧乾燥して表題化合物736mgを得た。
【0073】
1H NMR (400 MHz, CD3OD): 4.21(m, 1H), 3.82(s, 3H), 3.74-3.88(m, 2H), and 1.20(s, 9H)
【0074】
工程4):(R)−3−tert−ブトキシ−2−(2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)エチルアミノ)プロパン酸メチルエステルの製造
前記工程3の(R)−2−アミノ−3−t−ブトキシプロパンメチルエステル736mgをジクロロメタン14mlに溶解した後、N−t−ブトキシカルボニル−2−アミノアセトアルデヒドメタノール6335mgを徐々に加えた。反応混合物を0℃に冷却してトリエチルアミン1.2mlを徐々に加えた後、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム1.78gを徐々に加えた。反応混合物を常温に昇温した後、12時間撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加えて反応を終結させた後、水10mlと塩水で有機層を洗浄後、濃縮及び減圧乾燥した。残渣をカラムクロマトグラフィーによって精製して表題化合物355mgを得た。
【0075】
1H NMR (400 MHz, CDCl3): 5.10(m, 1H), 3.71(s, 3H), 3.56(m, 2H), 3.40(m, 1H), 3.15-3.28(m, 2H), 2.81(m, 1H), 2.67(m, 1H), 1.42(s, 9H), and 1.13(s, 9H)
【0076】
工程5):(R)−2−((ベンジルオキシカルボニル)(2−t−ブトキシカルボニルアミノ)エチル)アミノ)−3−tert−ブトキシプロパン酸メチルエステルの製造
前記工程4の(R)−3−tert−ブトキシ−2−(2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)エチルアミノ)プロパン酸メチルエステル355mgをテトラヒドロフラン11mlに溶解した後、反応混合物を0℃に冷却して炭酸水素ナトリウム187mgを加えた。ベンジルクロロホルマート192μlを徐々に滴下した後、反応混合物を常温に昇温した。12時間後、反応混合物を減圧乾燥した後、酢酸エチル10mlを加えて水10mlで有機層を洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで脱水して減圧乾燥した後、カラムクロマトグラフィーによって精製して表題化合物410mgを得た。
【0077】
1H NMR (400 MHz, CDCl3): 7.36-7.25(m, 5H), 5.82-5.72 (m, 1H), 5.17-5.03 (m, 2H), 4.15(m, 1H), 3.98(m, 1H), 3.81(m, 1H), 3.73(s, 3H), 3.60(m, 1H), 3.42-3.28 (m, 3H), 1.40(s, 9H), and 1.14(s, 9H)
【0078】
工程6):(R)−ベンジル2−(tert−ブトキシメチル)−3−オキソピペラジン−1−カルボキシレートの製造
前記工程5の(R)−2−((ベンジルオキシカルボニル)(2−t−ブトキシカルボニルアミノ)エチル)アミノ)−3−tert−ブトキシプロパン酸メチルエステル410mgをメタノール10mlに溶解した後、反応混合物を0℃に冷却して、2−N塩酸/ジエチルエーテル4mlを徐々に加えた後、3時間撹拌した。反応混合物を減圧乾燥させた後、次の反応にそのまま使用した。
【0079】
前記の残渣をジクロロメタン10mlに溶解した後、反応混合物を0℃に冷却してトリエチルアミン152μlを徐々に加えた。トリメチルアルミニウム(2.0M トルエン溶液)1.1mlを徐々に加えた後、反応混合物を常温に昇温して12時間撹拌した。反応混合物を0℃に冷却して飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を終結させた。反応混合物に酢酸エチル10mlを加えて塩水10mlで洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで脱水した後、減圧乾燥して残渣をカラムクロマトグラフィーによって精製して表題化合物103mgを得た。
【0080】
1H NMR (400 MHz, CDCl3): 7.34-7.25(m, 5H), 6.27 (m, 1H), 5.14(m, 2H), 4.57(m, 1H), 4.19(m, 1H), 4.08(m, 1H), 3.94(m, 1H), 3.74(m, 1H), 3.64 (m, 1H), 3.42(m, 1H), 3.29(m, 1H), and 1.09(s, 9H)
【0081】
工程7):(R)−(3−tert−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オンの製造
前記工程6の(R)−ベンジル2−(tert−ブトキシメチル)−3−オキソピペラジン−1−カルボキシレート103mgをメタノール2mlに溶解した後、酢酸エチル1ml中のパラジウム/炭素50mgを加えて、周辺気圧下で水素を1時間バブリングした。反応混合物を濾過した後、減圧乾燥して表題化合物58mgを得た。
【0082】
1H NMR (400 MHz, CDCl3): 6.41(brs, 1H), 3.76(m, 3H), 3.63 (m, 1H), 3.52(m, 1H), 3.42(m, 1H), 3.28(m, 1H), 3.16(m, 1H), 2.95(m, 1H), 2.45(brs, 1H), and 1.17(s, 9H)
【0083】
工程8):tert−ブチル(R)−4−[(R)−2−(tert−ブトキシメチル)−3−オキソピペラジン−1−イル]−4−オキソ−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−イルカルバメイトの製造
(3R)−t−ブトキシカルボニルアミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン酸104mgと(R)−(3−tert−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オン58mgをN,N−ジメチルホルムアミド4mlに加えた後、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)63mgとジイソプロピルエチルアミン217μlを加えた。反応混合物を0℃に冷却した後、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)78mgを加えて常温で12時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチル10mlに希釈した後、塩水で2回洗浄して有機層を硫酸マグネシウムで脱水及び濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーで精製して表題化合物97mgを得た。
【0084】
1H NMR (400 MHz, CDCl3): 7.03(m, 1H), 6.88(m, 1H), 5.97(m, 1H), 5.48(m, 1H), 4.16-4.07(m, 1H), 4.02-3.91(m, 1H), 3.74(m, 2H) 3.37(m, 2H), 3.24(m, 1H), 2.92(m, 2H), 2.80(m, 1H), 2.59(m, 2H), 1.34(d, 9H), and 1.13(s, 9H)
【0085】
工程9):(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3−(tert−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オン塩酸塩の製造
前記工程8のtert−ブチル(R)−4−[(R)−2−(tert−ブトキシメチル)−3−オキソピペラジン−1−イル]−4−オキソ−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−イルカルバメート97mgをメタノール3mlに溶解した後、2N−塩酸/ジエチルエーテル2mlを加えて常温で3時間撹拌した。反応混合物を濃縮及び減圧乾燥して泡沫状固体の表題化合物64mgを得た。
【0086】
1H NMR (400 MHz, CD3OD): 7.37(m, 1H), 7.23(m, 1H), 4.80(m, 1H), 4.59-4.40(m, 1H), 3.93(m, 1H), 3.90-3.83(m, 2H), 3.70(m, 1H), 3.38(m, 2H), 3.27(m, 1H), 3.07(m, 2H), 2.89-2.66(m, 2H), 1.18(s, 3H), and 1.11(s, 6H)
Mass (M+1): 402
【0087】
<実施例2>(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタノイル]−3−(メトキシメチル)ピペラジン−2−オン塩酸塩の製造
実施例1の工程3で、t−ブタノールの代わりにメタノールを使用した後、実施例1の工程4から9と同じ方法で表題の化合物40mgを合成した。
【0088】
1H NMR (400 MHz, CD3OD): 7.34(m, 1H), 7.23(m, 1H), 4.82(m, 1H), 4.62-4.46(m, 1H), 3.92(m, 1H), 3.87-3.82(m, 2H), 3.66(m, 1H), 3.35(m, 2H), 3.24(m, 1H), 3.04(m, 2H), 2.94-2.72(m, 2H), and 3.27(s, 3H)
Mass (M+1): 360
【0089】
<実施例3>(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタノイル]−3−(エトキシメチル)ピペラジン−2−オン塩酸塩の製造
実施例1の工程3で、t−ブタノールの代わりにエチルアルコールを使用した後、実施例1の工程4から9と同じ方法で表題の化合物66mgを合成した。
【0090】
1H NMR (400 MHz, CD3OD): 7.38(m, 1H), 7.23(m, 1H), 4.83(m, 1H), 4.54-4.44(m, 1H), 3.98(m, 1H), 3.93-3.82(m, 2H), 3.71(m, 1H), 3.53(m, 2H), 3.36(m, 2H), 3.26(m, 1H), 3.07(m, 2H), 2.90-2.70(m, 2H), and 1.11(t, 3H)
Mass (M+1): 374
【0091】
<実施例4>(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタノイル]−3−(イソプロポキシメチル)ピペラジン−2−オン塩酸塩の製造
実施例1の工程3で、t−ブタノールの代わりにイソプロパノールを使用した後、実施例1の工程4から9と同じ方法で表題の化合物69mgを合成した。
【0092】
1H NMR (400 MHz, CD3OD): 7.38(m, 1H), 7.23(m, 1H), 4.86(m, 1H), 4.62-4.43(m, 1H), 3.96(m, 1H), 3.90-3.87(m, 2H), 3.77(m, 1H), 3.69(m, 1H), 3.44(m, 2H), 3.26(m, 1H), 3.08(m, 2H), 2.95-2.69(m, 2H), and 1.15(m, 6H)
Mass (M+1): 388
【0093】
<実施例5>(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタノイル]−3−(シクロペンチルオキシメチル)ピペラジン−2−オン塩酸塩の製造
実施例1の工程3で、t−ブタノールの代わりにシクロペンタノールを使用した後、実施例1の工程4から9と同じ方法で表題の化合物51mgを合成した。
【0094】
1H NMR (400 MHz, CD3OD): 7.38(m, 1H), 7.23(m, 1H), 4.82(m, 1H), 4.61-4.42(m, 1H), 3.93(m, 1H), 3.90-3.82(m, 2H), 3.67(m, 1H), 3.40(m, 1H), 3.36(m, 2H), 3.25(m, 1H), 3.08(m, 2H), 3.01-2.62(m, 2H), and 1.67-1.50(m, 8H)
Mass (M+1): 414
【0095】
<実施例6>(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタノイル]−3−[(ジエチルアミノ)メチル]ピペラジン−2−オン二塩酸塩の製造
実施例1の工程3で、t−ブタノールの代わりにジエチルアミンを加えて、BFOEtを加える代わりに還流した後、実施例1の工程4から9と同じ方法で表題の化合物68mgを合成した。
【0096】
1H NMR (400 MHz, CD3OD): 7.41(m, 1H), 7.24(m, 1H), 5.21(m, 1H), 3.59-3.53(m, 2H), 3.50-3.53(m, 4H), 3.43-3.37(m, 4H), 3.35(m, 2H), 3.09(m, 2H), 2.97-2.81(m, 2H), and 1.37(m, 6H)
Mass (M+1): 401
【0097】
<実施例7>(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタノイル]−3−[(エチルメチルアミノ)メチル]ピペラジン−2−オン二塩酸塩の製造
実施例1の工程3で、t−ブタノールの代わりにエチルメチルアミンを加えて、BFOEtを加える代わりに還流した後、実施例1の工程4から9と同じ方法で表題の化合物67mgを合成した。
【0098】
1H NMR (400 MHz, CD3OD): 7.42(m, 1H), 7.24(m, 1H), 5.22(m, 1H), 4.08-3.87(m, 2H), 3.86-3.75(m, 2H), 3.68-3.57(m, 2H), 3.56-3.33(m, 4H), 3.09(m, 2H), 3.02-2.81(m, 5H), and 1.38(m, 3H)
Mass (M+1): 387
【0099】
<実施例8>(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタノイル]−3−(モルホリノメチル)ピペラジン−2−オン二塩酸塩の製造
実施例1の工程3で、t−ブタノールの代わりにモルホリンを加えて、BFOEtを加える代わり還流した後、実施例1の工程4から9と同じ方法で表題の化合物27mgを合成した。
【0100】
1H NMR (400 MHz, CD3OD): 7.37(m, 1H), 7.23(m, 1H), 5.32(m, 1H), 4.12-3.98(m, 4H), 3.97-3.77(m, 4H), 3.74-3.52(m, 4H), 3.48-3.39(m, 2H), 3.14-2.91(m, 4H), and 2.86-2.72(m, 2H)
Mass (M+1): 415
【0101】
<実施例9>(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタノイル]−3−(t−ブチルチオメチル)ピペラジン−2−オン塩酸塩の製造
実施例1の工程3で、t−ブタノールの代わりにt−ブチルチオールを使用して実施例1の工程4から9と同じ方法で表題の化合物25mgを合成した。
【0102】
1H NMR (400 MHz, CD3OD): 7.34(m, 1H), 7.25(m, 1H), 5.04(m, 1H), 4.60(s, 1H), 4.60-4.41(m, 1H), 3.86(m, 2H), 3.70(m, 1H), 3.40(m, 2H), 3.25(m, 1H), 3.05(m, 2H), 2.95(m, 1H), 2.81(m, 2H), and 1.26(s, 9H)
Mass (M+1): 418
【0103】
<実施例10>(S)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オン塩酸塩の製造
実施例1の工程1で、D−セリンメチルエステル塩酸塩の代わりにL−セリンメチルエステル塩酸塩を使用した後、実施例1の工程2から9と同じ方法で表題化合物31mgを合成した。
【0104】
1H NMR (400 MHz, CD3OD): 7.34(m, 1H), 7.24(m, 1H), 4.79(m, 1H), 4.580-4.40(m, 1H), 3.96(m, 1H), 3.86-3.74(m, 2H), 3.70(m, 1H), 3.36(m, 2H), 3.19(m, 1H), 3.05-2.86(m, 3H), 2.67(m, 1H), 1.15(s, 4H), and 1.03(s, 5H)
Mass (M+1): 402
【0105】
<実施例11>(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オンの製造
実施例1で得た化合物60mgに5%炭酸水素ナトリウム水溶液10mlを加えてジクロロメタン/2−プロパノール(4/1(v/v))混合溶液10mlを加えて2回抽出した。有機層を減圧乾燥して固体の表題化合物55mgを得た。
【0106】
1H NMR (400 MHz, CD3OD): 7.27 (m, 1H), 7.14(m, 1H), 4.56-4.39(m, 1H), 3.96-3.81(m, 3H), 3.70(m, 1H), 3.46(m, 1H), 3.43-3.32(m, 1H), 2.83-2.65(m, 3H), 2.58-2.40(m, 2H), 1.16(s, 3H), and 1.11(s, 6H)
Mass (M+1): 402
【0107】
<実施例12>(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オン酒石酸塩の製造
実施例11の化合物55mgをアセトン0.56mlに溶解した後、L−酒石酸26mgをエチルアルコール/水(9/1(v/v))0.35mlに溶解した溶液を徐々に加えて30分間撹拌した。そこに2−プロパノール0.56mlをさらに加えて10分間撹拌した後、濾過して固体の表題化合物77mgを得た。
【0108】
1H NMR (400 MHz, CD3OD): 7.38(m, 1H), 7.22(m, 1H), 4.80(m, 1H), 4.59-4.40(m, 1H), 4.40(s, 2H), 3.93(m, 1H), 3.90-3.83(m, 2H), 3.70(m, 1H), 3.38(m, 2H), 3.27(m, 1H), 3.07(m, 2H), 2.89-2.66(m, 2H), 1.15(s, 3H), and 1.11(s, 6H)
Mass (M+1): 402
【0109】
<実施例13>(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オンクエン酸塩の製造
実施例11の化合物496mgをエチルアルコール2mlに溶解した後、無水クエン273mgを水1mlに溶解した溶液を徐々に加えて30分間撹拌した。反応混合物を濃縮した後、酢酸エチル2mlと2−プロパノール1mlを加えて撹拌した。ヘキサン15mlを加えて10分間撹拌した後、濾過して固体の表題化合物637mgを得た。
【0110】
1H NMR (400MHz, CD3OD): 7.34(m, 1H), 7.22(m, 1H), 4.81(m, 1H), 4.58-4.40(m, 1H), 3.94(m, 1H), 3.87(m, 2H), 3.70(m, 1H), 3.36(m, 2H), 3.25(m, 1H), 3.03(m, 2H), 2.94-2.70(m, 4H), 1.18(s, 3H), and 1.12(s, 6H)
Mass (M+1): 402
【0111】
<実施例14>(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オンリン酸塩の製造
実施例11の化合物501mgを2−プロパノール3mlに溶解した後、85%リン酸水溶液84μlを徐々に加えて30分間撹拌した。そこに2−プロパノール3mlをさらに加えて10分間撹拌した後、濾過して固体の表題化合物100mgを得た。
【0112】
1H NMR (400MHz, CD3OD): 7.33(m, 1H), 7.19(m, 1H), 4.81(m, 1H), 4.58-4.41(m, 1H), 3.94(m, 1H), 3.85(m, 2H), 3.65(m, 1H), 3.37(m, 2H), 3.22(m, 1H), 2.95(m, 2H), 2.69(m, 2H), 1.17(s, 3H), and 1.12(s, 6H)
Mass (M+1): 402
【0113】
<実施例15>(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オン酢酸塩の製造
実施例11の化合物500mgを酢酸エチル3mlに溶解した後、酢酸74.5mgを酢酸エチル1mlに溶解した溶液を徐々に加えて30分間撹拌した。反応混合物を濃縮した後、酢酸エチル2mlと2−プロパノール1mlを加えて撹拌した。ヘキサン15mlを加えて10分間撹拌した後、濾過して固体の表題化合物495mgを得た。
【0114】
1H NMR (400MHz, CD3OD): 7.32(m, 1H), 7.20(m, 1H), 4.79(m, 1H), 4.60-4.40(m, 1H), 3.94(m, 1H), 3.87(m, 2H), 3.70(m, 1H), 3.34(m, 2H), 3.24(m, 1H), 2.90(m, 2H), 2.76-2.58(m, 2H), 1.94(s, 3H), 1.17(s, 3H), and 1.12(s, 6H)
Mass (M+1): 402
【0115】
<実施例16>(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オンリンゴ酸塩の製造
実施例11の化合物498mgをアセトン4mlに溶解した後、L−リンゴ酸166mgをアセトン1mlに溶解した溶液を徐々に加えて30分間撹拌した。反応混合物を濃縮した後、酢酸エチル2mlと2−プロパノール1mlを加えて撹拌した。ヘキサン15mlを加えて10分間撹拌した後、濾過して固体の表題化合物506mgを得た。
【0116】
1H NMR (400MHz, CD3OD): 7.34(m, 1H), 7.21(m, 1H), 4.80(m, 1H), 4.58-4.39(m, 1H), 4.26(m, 1H), 3.94(m, 1H), 3.84(m, 2H), 3.71(m, 1H), 3.36(m, 2H), 3.22(m, 1H), 3.02(m, 2H), 2.82-2.63(m, 3H), 2.50(m, 1H), 1.17(s, 3H), and 1.12(s, 6H)
Mass (M+1): 402
【0117】
<実施例17>(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オンコハク酸塩の製造
実施例実施例11の化合物498mgをアセトン3mlに溶解した後、コハク酸147mgをアセトン/水(20/1(v/v))2mlに溶解した溶液を徐々に加えて30分間撹拌した。反応混合物を減圧濃縮及び乾燥して固体の表題化合物596mgを得た。
【0118】
1H NMR (400MHz, CD3OD): 7.34(m, 1H), 7.21(m, 1H), 4.81(m, 1H), 4.58-4.40(m, 1H), 3.95(m, 1H), 3.85(m, 2H), 3.70(m, 1H), 3.36(m, 2H), 3.25(m, 1H), 2.92(m, 2H), 2.81-2.64(m, 2H), 2.51(s, 4H), 1.18(s, 3H), and 1.12(s, 6H)
Mass (M+1): 402
【0119】
<実施例18>(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オンアジピン酸塩の製造
実施例11の化合物503mgを酢酸エチル4mlに溶解した後、アジピン酸183mgをアセトン/水(30/1(v/v))3mlに溶解した溶液を徐々に加えて30分間撹拌した。反応混合物を濃縮した後、酢酸エチル2mlと2−プロパノール1mlを加えて撹拌した。ヘキサン15mlを加えて10分間撹拌した後、濾過して固体の表題化合物336mgを得た。
【0120】
1H NMR (400MHz, CD3OD): 7.32(m, 1H), 7.19(m, 1H), 4.80(m, 1H), 4.56-4.40(m, 1H), 3.94(m, 1H), 3.87(m, 2H), 3.70(m, 1H), 3.35(m, 2H), 3.25(m, 1H), 2.92(m, 2H), 2.83-2.58(m, 2H), 2.25(m, 4H), 1.63(m, 4H), 1.21(s, 3H), and 1.12(s, 6H)
Mass (M+1): 402
【0121】
<実験例1>DPP−IV阻害活性測定実験
実施例によって製造された本発明の化学式1の化合物のDPP−IVに対する阻害能力を調べるために、下記の実験を行なった。
【0122】
セリンプロテアーゼとして知られたDPP−IVは、R&Dシステム社から購入し、対照物質であるMK−0431は、文献(J.Med.Chem.,2005年,第48巻,141−151頁)に記載された方法によって製造した。本発明の化学式1の化合物の薬効を評価するため、蛍光基質Gly−Pro−AMCを使用して合成された阻害剤の結合活性を測定した。酵素反応は、25mMトリス/HCl(pH8.0)を含んだ緩衝溶液でDPP−IV100ng/mlの濃度で50μM Gly−Pro−AMCを使用して色々な濃度の阻害剤を25℃で反応させた。阻害剤の阻害定数であるIC50は、1時間酵素反応をさせた後、蛍光分光器で反応後に出た蛍光の量を測定して、酵素反応を50%抑制する阻害剤の濃度を計算して求めた。蛍光分光器には、Tecan社のSpectraFluor spectrophotometerを使用し、励起波長360nm、放出波長465nmを用いた。その結果、本発明の化学式1の化合物のDPP−IVの活性を阻害させる能力を測定したIC50測定値の範囲は、0.5〜20nMを示すことが示された(表1:in vitro humanDPP−IV阻害活性)。これは、市販されているJANUVIA、または従来に報告されたDPP−IV阻害剤として知られた化合物(数百〜数千nM)のIC50測定値と比較して、非常に優れたDPP−IV阻害活性であることが分かる。
【0123】
【表1】

【0124】
<実験例2>経口ブドウ糖耐性試験(OGTT)
本発明の化学式1の化合物を有効成分として含む医薬組成物の糖尿病治療効果を調べるため、一定時間内にブドウ糖を代謝できる身体能力を測定する試験である経口ブドウ糖耐性実験(OGTT)を行なった。
【0125】
実験対象は、実験用ネズミ(C57BL/6マウス)を実験前日あらかじめ絶食(16〜17時間)させた。実験当日、午前に尾静脈から血液を採取してACCU−CHEK ACTIVEブドウ糖測定機(Roche diagnostics)で血糖を測定した。本発明の医薬組成物及び担体は、ブドウ糖投与30分前に経口投与を実施し(−30分)、30分後にブドウ糖溶液(2g/kg/10ml)を経口投与した(0分)。採血は、指定された時間−薬物投与直前、ブドウ糖溶液投与直前、ブドウ糖投与後5分、15分、30分、60分及び90分に行なった。
【0126】
その結果、実施例1、3および12は、1mg/kgで対照群(組成物及び担体非投与群)と比較してそれぞれ54%、52%および62%の優れた血糖減少効果を示した。このことから本発明の化学式1の化合物は、高いバイオアベイラビリティを示すので、糖尿病、肥満を含むDPP−IV関連疾患の治療に有用に使用できることが分かる。
【0127】
<実験例3>薬物動態学/薬力学相関性(血中DPP−IV活性と薬物濃度相関性)
本発明の化学式1の化合物の糖尿病治療効果を調べるため、MK−0431と血漿DPP−IV阻害活性を比較評価した。8週齢のC57BL6マウスにMK−0431と本発明の化合物(実施例1の化合物)を用量別に経口投与した後、1時間経過後、2g/kgでグルコース溶液を投与した。10分後に眼球から採血をした。得た血液から血漿を確保し、血漿DPP−IV活性及び血漿薬物濃度を測定した。
【0128】
血漿DPP−IV活性は、基質にGly−Pro−AMC(Bachem,Switzerland)を使用して、DPP−IVによって遊離するAMC(7−アミノ−4−メチルクマリン)量を測定して求めた。この目的のため、反応液(100mM HEPES、pH7.6、0.1mg/ml、50μM Gly−Pro−AMC)に50μlプラズマを加えて、25℃で5分間AMC遊離速度を計算した。
【0129】
実験の結果、化学式1の化合物(実施例1の化合物)が、MK−0431と比較して 血漿濃度が10ng/mlである時、4〜5倍の阻害活性を示し、EC50(50%有効濃度)及びEC80(80%有効濃度)は、8〜9倍程度優れていることが確認された(図1)。
【0130】
<実験例4>インビボDPP−IV分析(DPP−IV阻害維持時間測定)
本発明の化学式1の化合物の糖尿病治療効果を調べるため、一般SDラットでのMK−0431と本発明の化合物(実施例1の化合物)を投与後、血漿DPP−IV阻害活性及び持続時間を比較評価してみた。
【0131】
この目的のため、実験用ネズミ(SDラット)を実験前日あらかじめ絶食(16〜17時間)させた。実験当日節食したラットをエーテル麻酔後、腹部大動脈にカニューレ挿管し、MK−0431と本発明の化合物(実施例1の化合物)を0.5%MCで希釈して投与した。薬物投与前(0h)および投与後の指定した時間経過後にあらかじめ準備しておいた500μlヘパリンチューブに採血して、血漿を分離した。血漿50μlを反応液(0.1M HEPES,pH7.6,0.1mg/ml,50μM Gly−Pro−AMC)に加えて5分間動態検査を実施して反応速度を計算した。
【0132】
実験の結果本発明の化合物は、10mg/kgの投与用量で投与後24時間まで90%以上のDPP−IV阻害活性を有することが見出され、これは、MK−0431が投与後24時間経過時には50%程度のDPP−IV阻害活性しか有さないということを考慮すると、非常に高い活性である(図2)。
【0133】
<実験例5>体内動態実験
本発明の化学式1の化合物の体内半減期を測定するため、一般SDラット(8週齢)でのMK−0431と本発明の化合物(実施例1、3及び12の化合物)を10mg/kg経口投与した。定期的に大腿動脈から採血して、前記化合物の体内残存時間を測定した。実験の結果、MK−0431の体内半減期(T1/2)と比較して本発明の化合物の体内半減期が優れた結果を示した。
【0134】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0135】
上記から明らかなように、本発明によると、優れたDPP−IV活性の阻害効果を有するβ−アミノ基を含むヘテロ環化合物を得ることができ、本発明の前記化合物を有効成分として含む医薬組成物は、優れたDPP−IV阻害活性とバイオアベイラビリティを示し、DPP−IVに起因すると考えられる糖尿病、肥満などの疾病を予防及び治療するのに有用に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表わされる化合物、またはその立体異性体、薬学的に許容される塩、水和物または溶媒和物:
【化1】

前記化学式1において、XはOR1、SR1またはNR1R2であり、R1、R2は各々C〜Cの低級アルキルであり、NR1R2のR1とR2はOのヘテロ原子を含み5員ないし7員環を成してもよい。
【請求項2】
下記化学式2であることを特徴とする、請求項1に記載の化学式1で表わされる化合物、またはその立体異性体、薬学的に許容される塩、水和物または溶媒和物。
【化2】

(式中、Xは請求項1における定義と同様である)
【請求項3】
化学式1の化合物が、下記化合物からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物;
1)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタノイル]−3−(メトキシメチル)ピペラジン−2−オン塩酸塩、
2)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタノイル]−3−(エトキシメチル)ピペラジン−2−オン塩酸塩、
3)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタノイル]−3−(イソプロポキシメチル)ピペラジン−2−オン塩酸塩、
4)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オン塩酸塩、
5)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタノイル]−3−(シクロペンチルオキシメチル)ピペラジン−2−オン塩酸塩、
6)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタノイル]−3−[(ジエチルアミノ)メチル]ピペラジン−2−オン二塩酸塩、
7)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタノイル]−3−[(エチルメチルアミノ)メチル]ピペラジン−2−オン二塩酸塩、
8)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタノイル]−3−(モルホリノメチル)ピペラジン−2−オン二塩酸塩、
9)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタノイル]−3−(t−ブチルチオメチル)ピペラジン−2−オン塩酸塩、
10)(S)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オン塩酸塩、
11)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オン、
12)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オン酒石酸塩、
13)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オンクエン酸塩、
14)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オンリン酸塩、
15)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オン酢酸塩、
16)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オンリンゴ酸塩、
17)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オンコハク酸塩及び
18)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オンアジピン酸塩。
【請求項4】
1)化学式3のβ−アミノ基を有する化合物と化学式4の置換されたヘテロ環化合物とを、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)および3級アミンの存在下で反応させてペプチド結合を有する化学式5の化合物を製造する工程、および
2)前記化学式5の化合物を酸の存在下で反応させる工程
を含む化学式2で表される化合物の製造方法;
【化3】

式中、XはOR1、SR1またはNR1R2であり、R1、R2は各々C〜Cの低級アルキルであり、NR1R2のR1とR2はOのヘテロ原子を含み、5員ないし7員環を成してもよい。
【請求項5】
請求項1に記載の化学式1で表わされる化合物、またはその立体異性体、薬学的に許容される塩、水和物または溶媒和物を含む、糖尿または肥満の予防及び治療用医薬組成物。
【請求項6】
化合物が、下記化合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の医薬組成物;
1)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オン塩酸塩、
2)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタノイル]−3−(エトキシメチル)ピペラジン−2−オン塩酸塩、
3)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタノイル]−3−(イソプロポキシメチル)ピペラジン−2−オン塩酸塩、
4)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタノイル]−3−(メトキシメチル)ピペラジン−2−オン塩酸塩、
5)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタノイル]−3−(シクロペンチルオキシメチル)ピペラジン−2−オン塩酸塩、
6)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタノイル]−3−[(ジエチルアミノ)メチル]ピペラジン−2−オン二塩酸塩、
7)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタノイル]−3−[(エチルメチルアミノ)メチル]ピペラジン−2−オン二塩酸塩、
8)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタノイル]−3−(モルホリノメチル)ピペラジン−2−オン二塩酸塩、
9)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタノイル]−3−(t−ブチルチオメチル)ピペラジン−2−オン塩酸塩、
10)(S)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オン塩酸塩、
11)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オン、
12)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オン酒石酸塩、
13)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オンクエン酸塩、
14)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オンリン酸塩、
15)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オン酢酸塩、
16)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オンリンゴ酸塩、
17)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オンコハク酸塩及び
18)(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オンアジピン酸塩。
【請求項7】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の化合物を含む組成物を、それを要する哺乳類に有効量投与することを含む、糖尿または肥満を予防および治療する方法。
【請求項8】
糖尿または肥満の予防及び治療用医薬製剤を製造するための請求項1ないし請求項3の化合物を含む医薬組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−500508(P2011−500508A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503979(P2010−503979)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【国際出願番号】PCT/KR2008/002203
【国際公開番号】WO2008/130151
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(501187848)ドン・ア・ファーム・カンパニー・リミテッド (20)
【Fターム(参考)】