説明

β−アミノ酸の立体選択的合成方法及び鏡像異性体濃縮方法

本発明は、ベータ-アミノ酸の立体特異的合成方法及び鏡像異性体濃縮方法に関する。D-ベータ-フェニルアラニン・D-3-アミノ-3-フェニルプロパン酸への立体選択性を示す新規のD-ベータ-アミノトランスフェラーゼは、バリオボラックス・パラドキサスの新たに単離された株から精製された。新規のL-ベータ-アミノトランスフェラーゼは、アルカリゲネス・ユートロフスの新たに単離された株から精製された。D-及びL-ベータ-アミノトランスフェラーゼは、コファクターであるリン酸ピリドキサールの存在下で、L-グルタミン酸又はL-アラニン、及び3-ケト-3-フェニルプロパン酸からベータ-D-フェニルアラニン又はベータ-L-フェニルアラニンの立体選択的生合成を促進するために使用されうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0002] 本発明は、βアミノ酸の立体特異的合成方法及び鏡像異性体濃縮方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0001] 本出願は、2003年7月10日に出願された米国仮特許出願第60/486,032号、及び2003年9月2日に出願された米国仮特許出願第60/499,622号の優先権を主張する。
【0003】
背景
[0003] β-アミノ酸は、抗菌性、抗真菌性、又は細胞傷害性の性質を有する多様な天然物において鍵となる構造要素であることが多い。β-アミノ酸を最終的な構造の要素として必要とする化合物、又は鏡像異性的に純粋なβ-アミノ酸をキラル中間体として使用することを必要とする化合物の合成は、困難であることが多い(Enantioselective Synthesis of β-Amino Acids, Eusebio Juaristi編, Wiley-VCH, 491頁, 1997を参照のこと)。
【0004】
[0004] 多くのβ-アミノ酸は市販されておらず、合成することが難しいか、又は鏡像異性的に純粋な調製品を得ることは法外に値段が高い。鏡像異性的に純粋なβ-アミノ酸を生産するために、多くの合成化学経路が開発されてきた一方、アミノ・トランスフェラーゼ又は他の酵素を使用するβ-アミノ酸を産生するための生合成経路は、クロマトグラフィー方法によりキラル化合物の分離を必要とする化学方法より好ましいかもしれない( (Soloshonok, V. A. Biocatalytic entry to enantiomerically pure p-amino acids. In Enantioseleetive Synthesis of-Amino Acids, Eusebio Juaristi編, Wiley-VCH, 1997, 443-464)。
【0005】
[0005] アミノ・トランスフェラーゼ(E.C. 2. 6. 1)は、一級アミンからアミノ基、電子対、及びプロトンを、アクセプター分子のカルボニル基に移すことを触媒する((Stirling, D. I. "Enzymic synthesis and resolution of enantiomerically pure compounds" In Chiralty Ind. (1992) 209-22, Wileyら編. Colins, Andrew N.; Sheldrake, G. N., 及びCrosby, J.)。多くのアミノ・トランスフェラーゼは、コファクター、つまりコエンザイムであるピリドキサール5-リン酸を必要とする。種々のアミノ・トランスフェラーゼは、特徴づけられてきており、特にα-アミノ酸からのアミノ基を、2-ケト酸に移すことに関与する。ピルビン酸、オキサロアセテート、及び2-ケトグルタル酸は、アルファ・アミノ・トランスフェラーゼと分類されるこれらの酵素の重要な基質である。
【0006】
[0006] アミノ・トランスフェラーゼの幾つかの別の型(例えば、γ-、ε-、及びω-アミノ・トランスフェラーゼ)が記載された。ω-アミノ・トランスフェラーゼは、アミノ基がカルボン酸基に近接(隣接)していない基質を利用できる。当該クラスの酵素において、アミノ・ドナーは、一般的にω-アミノ酸及びα,ω-ジアミノ酸に限定されている。これらは、アルファ・オメガ-ジアミノ酸(E.C.2.6.8)、L-オルニチン(E.C.2.6.13)、β-アラニン(E.C.2.6.18)、4アミノブチレート(E.C.2.6.19)、アルファオメガ・ジアミン(E.C.2.6.29)、L-リジン(E.C.2.6.36)、2.4ジアミノブチレート(E.C.2.6.46)、又はタウリン(E.C.2.6.55)をアミノ酸ドナーとして使用し、そして2-ケトグルタレート又はピルベートをアミノ・アクセプターとして使用する酵素を含む。
【0007】
[0007] β-アラニン-ピルベート・トランスアミナーゼ(EC2.6.1.18;β-アラニン-ピルベート・アミノ・トランスフェラーゼ;β-アラニン-α-アラニン・トランスアミナーゼ;L-アラニン:3-オキソプロパノエート・アミノ・トランスフェラーゼ)として通常知られるω-アミノ・トランスフェラーゼは、リン酸ピリドキサールをコファクターとして使用して、以下の反応:
L-アラニン+3-オキソプロパノエート=ピルベート+β-アラニン
を行う (Hayaishi, O., Nishizuka, Y., Tatibana, M., Takeshita, M. 及び Kuno, S. Enzymatic studies on the metabolism of β-alanine. J. Biol. Chem. 236 (1961) 781-790; Stinson, R. A. 及び Spencer, M.S. β-alanine aminotransferase(s) from a plant source. Biochem. Biophys. Res. Commun. 34 (1969) 120- 127)。 Watersとその同僚は、シュードモナス・アレルギノーサ(Pseudomonas aeraginosa)によるβ-アラニンの完全な異化代謝が、β-アラニン:ピルベート・アミノ・トランスフェラーゼでのアミノ基転移に関するということを記載した(FEMS Micro Lett 34 (1986) 279-282)。
【0008】
[0008] Yonahaとその同僚は、シュードモナス種において見つかったオメガ・アミノ酸ピルベート・トランスアミナーゼを記載した。ここでピルベートは、排他的(exclusive)アミノ・アクセプターであった(Agric. Biol. Chem. 42(12) : 2363-2367, 1978; Agric. Biol. Chem. 41 (9) : 1701-1706, 1977)。 一級アミノアルカンは、好ましいアミノ・ドナーであり、そしてオメガ・アミノ酸、例えばβ-アラニンは、好ましい基質ではない。
【0009】
[0009] ナカノとその同僚は、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)において、β-アラニン・アミノ・トランスフェラーゼ及びガンマ・アミノブチレート・トランスアミナーゼを含む2種のオメガ・アミノ酸・トランスアミナーゼを同定した。当該2種の酵素は、β-アラニンにおける活性(100対3)及びガンマ-アミノブチレートにおける活性(43対100)において異なった(J. Biochem 81, 1375-1381, 1977)。
【0010】
[0010] β-アラニン・アミノ・トランスフェラーゼは、βアラニン(3-アミノプロピオン酸)、或いはアミノ基が末端でありかつカルボン酸に近接していない類似構造の直鎖アミノ酸を使用する。しかしながら、これらの酵素のどれも、より複雑なβ-アミノ酸(例えば、β-置換β-アミノ酸、又はα,β-二置換β-アミノ酸)の可逆性アミノ基転移、例えば3-ケト-3-フェニルプロピオン酸とβ-フェニルアラニンとの間のアミノ基転移を触媒しないことが示された。
【0011】
[0011] イー・コリ(E. coli)のペニシリン・アシラーゼ(PA;EC 3. 5.1.11)は、β-置換及びα,β-二置換β-アミノ酸を製造するために使用された。α-アミノ酸のみを基質として許容する多くのアミノ酸アシラーゼ及びアミノ・トランスフェラーゼとは異なって、PAは、広い基質許容性を有するように思われる(Pohl, T., Waldmann H, Tetrahedron Lett (1995) 36: 2963 - 2966; Waldman H. Tetrahedron Lett (1988) 29 : 1131-1134)。Soloshonokとその同僚は、β-アルキル及びβ-フルオロアルキル・ベータ・アラニンのN-フェニルアセチル誘導体のPA触媒性加水分解を報告し、そして光学的に純粋なβ-アリール-β-アミノ酸の合成を報告した(Soloshonok, V. A.ら、An enzymatic entry to enantiopure β-amino acids. Synlett (1933) 5: 339-341; Soloshonok, V. A.ら、Biocatalytic approach to enantiomerically pure β-amino acids. Tetrahedron : Asymmetry (1995) 6 : 1601-1610)。Cardilloとその同僚は、一連のラセミ化合物のα-アルキル-β-アミノ酸を製造した(Cardillo G. ら、Enzymic resolution of α-alkyl-β-amino acids using immobilized Penicillin G acylase, J. Org. Chem. (1996) 61: 8651-8654)。Ngとその同僚は、β-一置換β・アミノ酸のPA-触媒性の分離を報告した(Ng, J. S. and Topgi, R. S. Biocatalytic process for optically active β-amino acids. Curr. Opin. Drug Disc Dev (1998) 1(3) : 314-328 ;米国特許第6,214,909号に総説される)。
【0012】
[0012] キラル・アミノ酸及びアミンの製造において使用するアミノ・トランスフェラーゼ酵素の単離のための選択的濃縮の使用が報告された(Stirling, D. I.,1992 The Use of Aminotransferases for the Production of Chiral Amino Acids and Amines, pp. 209-222. In: Collins, Sheldrake, 及びCrosbyら(編), Chirality in Industry, John Wiley and Sons Ltd., New York)。Stirlingは、唯一の窒素源としてカルチャー内に第二アミンを含むことにより、微生物の濃縮を記載した。単離された生物体、並びにω-アミノ・トランスフェラーゼ活性を含むと知られている生物体は、1-フェニル-3-アミノブタンを脱アミノ化する能力についてスクリーニングされた。バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)ATCC 15692、及びシュードモナス・プチーダ(Pseudomonas putida)ATCC 39213は全て、当該能力について選別された。これらの酵素の全ては、脱アミノ化反応において、ピルビン酸、又は代わりのα-ケト酸を、アミノ基アクセプターとして必要とすることが発見された。当該研究が、β-フェニルアラニンを脱アミノ化(鏡像異性体濃縮、又は分離)できる可能性を記載する一方で、当該研究は、トランスアミナーゼ酵素を使用して、対応するβ-ケト酸から当該化合物を鏡像異性体合成する証拠を示さない。ラセミ性β-フェニルアラニンの分離はまた、(R)又はL-鏡像異性体での活性に特異的である。
【0013】
[0013] Stirlingらに対する米国特許第4,950,606号、第5,300,437号、及び第5,169,780号は、アミノ基がキラル置換される二番目の炭素原子上にある、アミンの鏡像異性濃縮を開示する。プロキラル・ケトン由来の1のキラルアミンの立体選択的合成が開示される。当該試験において使用されるω-トランスアミナーゼの由来元は、バチルス・メガテリウム、シュードモナス・アエルギノーサATCC15692、及びシュードモナス・プチーダATCC39213を含む。これらの酵素を使用して、β-ケト酸からβ-アミノ酸、例えばβ-フェニルアラニンを製造することは開示されなかった。
【0014】
[0014] Kidmanに対する米国特許第5,316,943号は、アミノ酸のD,Lラセミ混合体から、光学的に純粋なL-アミノ酸を製造する方法であって、以下のステップ:
(i) 当該アミノ酸のラセミ混合体を、トランスアミナーゼ産生微生物で処理し;
(ii) 当該アミノ酸のラセミ混合体及び微生物を適切な温度及びpHで適切な時間発酵し;そして
(iii) 当該光学的に純粋なL-アミノ酸を回収する
を含む方法を記載する。
【0015】
[0015] Rozellに対する米国特許第4,518,692号は、アルファ・アミノ酸又はその誘導体を産生する方法であって、トランスアミナーゼ酵素の存在下でアルファ-ケト酸をL-アスパラギン酸と反応して、(1)当該アルファ・ケト酸に対応するアルファ・アミノ酸及び(2)オキサロアセテートを産生し;そして当該オキサロアセテートを脱炭酸することを含む方法を開示する。
【0016】
[0016] Rozellに対する米国特許第4,826,766号は、2個のアミノ・トランスフェラーゼに関与する結合反応を使用して、所望のアルファ-アミノ酸を産生する方法を開示する。第一トランスアミナーゼは、所望のアルファ-アミノ酸及び不所望のアルファ・ケト酸をもたらす反応を効率的に触媒し、そして第二トランスアミナーゼは、不所望のアルファ・ケト酸を基質として使用して、反応を効率的に触媒する。
【0017】
[0017] Fotheringhamに対する米国特許第6,197,558号は、第一アミノ酸及びケト酸を、トランスアミナーゼと反応させて、第二アミノ酸及びピルベートを産生し、そしてピルベートをアセト乳酸シンターゼと反応して、トランスアミナーゼと反応しない化合物を製造することによりアミノ酸を作成する方法を記載する。
【0018】
[0018] Woodに対する米国特許第4,600,692号は、フェニルアラニンの製造方法であって、フェニルピルビン酸又はフェニルピルベートを、アミン・ドナーの存在下でトランスアミナーゼ活性を有する固定化全細胞と接触することを含む方法を記載する。遊離又は固定状態において、酵素で破壊又は投下処理された細胞が使用されうる。
【発明の開示】
【0019】
要約
[0019] 本発明は、β-アミノ酸の立体特異的合成及び鏡像異性体濃縮に関する。その最も広い意味では、本発明は、アミノ・アクセプターの存在下において、β-アミノ酸トランスアミナーゼ(β-トランスアミナーゼ又はβ-アミノ・トランスフェラーゼ)を使用して、当該アミノ基が非末端、キラル置換される炭素原子に結合するキラルアミンの混合体を立体選択的に合成し又は鏡像異性体濃縮することに関する。
【0020】
[0020] 本発明の1の態様は、β-アミノ酸、又はその塩の立体選択的な合成方法であり、当該合成は、β-アミノ酸トランスアミナーゼの存在下においてアミノ・ドナー及びアミノ・アクセプターを接触して、アミノ・アクセプターからβ-アミノ酸鏡像異性体、又はその塩を形成することを含む。
好ましい態様において、当該β-アミノ酸は、以下の式I:
【化1】

の化合物であり、そして当該アミノ・アクセプターは、以下の式II:
【化2】

の化合物である。
式中、R1、R2、及びR3は、水素、C1-8アルキル、C2-8アルケニル、C2-8アルキニル、C3-12シクロアルキル、C6-12アリール、C3-12ヘテロシクリル、C6-12アリール-C1-8アルキル、及びC3-12ヘテロシクリル-C1-8アルキルのラジカルからなる群から独立して選ばれ;
ここで、当該ラジカルの全ては、ヒドロキシル、低級アルコキシ、低級アルキル、ハロゲン、ニトロ、カルボキシル、トリフルオロメチル、アミノ、アシルオキシ、フェニル、ベンジル、ナフチル、キノリン、イソキノリン(これらの基は場合によりハロゲン、ニトロ、チオ、低級アルコキシ、及び低級アルキルで場合により置換される)で場合により置換され、
但し、R1、R2、及びR3は全てがHであることはなく、
4が、水酸基、O-、及び-OM(基中、Mはカチオンである)を含む。
【0021】
[0021] 本発明の別の態様は、β-アミノ酸、又はその塩を立体選択的に合成するための方法であり、当該方法は、β-アミノ酸トランスアミナーゼの存在下においてアミノ・ドナー及びアミノ・アクセプターを接触して、当該アミノ・アクセプターから立体選択的にβ-アミノ酸鏡像異性体、又はその塩を形成することを含む。
ここで、当該β-アミノ酸、又はその塩は、以下の式III:
【化3】

で表される化合物であり、そして当該アミノ酸アクセプターは、以下の式IV:
【化4】

の化合物である。
式中、R4は、水酸基、O-、及び-OM(基中、Mはカチオンである)を含む。
【0022】
[0022] 本発明の別の態様は、D-β-アミノ酸鏡像異性体及びその対応するL-β-アミノ酸鏡像異性体を含む混合体を鏡像異性的に濃縮する方法であり、当該方法は、立体選択的L-β-トランスアミナーゼの存在下で、当該L-β-アミノ酸鏡像異性体をアミノ・アクセプターと接触させて、当該L-β-アミノ酸エナンチオマーの少なくとも一部を、対応するβ-ケト酸に変換し、それにより濃縮混合体において当該D-β-アミノ酸鏡像異性体対当該L-β-アミノ酸鏡像異性体のモル比を増加させることを含む。
【0023】
[0023] 本発明の別の態様は、L-β-アミノ酸鏡像異性体、及びその対応するD-β-アミノ酸鏡像異性体を含む混合体を鏡像異性体濃縮する方法であり、当該方法は、立体選択的D-β-トランスアミナーゼの存在下において、当該D-β-アミノ酸鏡像異性体を、アミノ・アクセプターと接触して、D-β-アミノ酸鏡像異性体の少なくとも一部を、対応するβ-ケト酸に変換し、それにより濃縮混合体における当該L-β-アミノ酸鏡像異性体対当該D-β-アミノ酸鏡像異性体のモル比を増大することを含む。
【0024】
[0024] 本発明の別の態様は、鏡像異性体濃縮されたβ-アミノ酸、又はその塩を製造する方法であり、当該方法は、ラセミ体のβ-アミノ酸の1の鏡像異性体をその対応するβ-ケト酸誘導体に変換するために適切な条件下で、
(i) 以下の式I:
【化5】

[式中、R1、R2、及びR3は、水素、C1-8アルキル、C2-8アルケニル、C2-8アルキニル、C3-12シクロアルキル、C6-12アリール、C3-12ヘテロシクリル、C6-12アリール-C1-8アルキル、及びC3-12ヘテロシクリル-C1-8アルキル・ラジカルからなる群から独立して選ばれ;
ここで当該ラジカルの全ては、水酸基、低級アルコキシ、低級アルキル、ハロゲン、ニトロ、カルボキシル、トリフルオロメチル、アミノ、アシルオキシ、フェニル、ベンジル、ナフチル、キノリン、イソキノリン(これらは、場合によりハロゲン、ニトロ、チオ、低級アルコキシ、及び低級アルキルで置換される)で場合により置換され;
但し、R1、R2、及びR3は、全てがHではなく;そして
4が水酸基、O-、及び-OM(基中、Mはカチオンである)を含む]
で表される構造を有するラセミ体β-アミノ酸、又はその塩;
(ii) アミノ・アクセプター、及び
(iii) 立体特異的β-アミノ酸トランスアミナーゼ
を接触し、それにより当該β-アミノ酸の反対の鏡像異性体が、実質的に鏡像異性体濃縮された形態で保持され、そして当該保持されたβ-アミノ酸からβ-ケト酸誘導体を分離することを含む。
【0025】
[0025] 本発明の別の態様は、バリオボラックス属(Variovorax)、ノカルディア属(Nocardia)、コマモナス属(Comamonas)、ロドコッカス属(Rhodococcus)、及びシュードモナス属(Pseudomonas)からなる群から選ばれる微生物由来の精製された立体選択的D-β-トランスアミナーゼである。
【0026】
[0026] 本發明の別の態様は、アルカリゲネス属(Alcaligenes)の微生物由来の精製された立体選択的L-β-トランスアミナーゼである。
【0027】
[0027] 本発明の別の態様は、立体特異的β-トランスアミナーゼを含む細胞ホモジェネート由来の立体特異的β-トランスアミナーゼを精製する方法であり、当該方法が、当該細胞ホモジェネートを沈殿剤と接触して、立体特異的β-トランスアミナーゼを含む沈殿物を産生することを含む。
【0028】
[0028] 本発明の別の態様は、立体特異的β-トランスアミナーゼを含む組成物から立体特異的β-トランスアミナーゼを精製する方法であり、当該方法は以下のステップ:
(a) 疎水性相互作用物質上に当該立体特異的β-トランスアミナーゼを吸着し;そして
(b) 溶出緩衝液を使用して当該疎水性相互作用物質から立体特異的β-トランスアミナーゼを溶出する
を含む。
【0029】
[0029] 本発明の別の態様は、立体特異的β-トランスアミナーゼを含む組成物から立体特異的β-トランスアミナーゼを精製する方法であり、当該方法は、以下のステップ:
(a) サイズ排除物質上に当該立体特異的β-トランスアミナーゼを吸着し、そして
(b) 溶出溶媒を使用して当該サイズ排除物質から当該立体特異的β-トランスアミナーゼを溶出する
を含む。
【0030】
[0030] 本発明の別の態様は、β-トランスアミナーゼを発現する1以上の微生物について、微生物の個体数を増大させる方法であり、当該方法は、β-アミノ酸又はその塩を選択的窒素源として含むカルチャー培地中で当該微生物の個体数を増大させることを含む。
【0031】
[0031] 本発明の別の態様は、バリオボラックス・パラドキサス(Variovorax paradoxus)を含む精製されたカルチャーであって、ここで当該バリオボラックス・パラドキサスの16S rDNAの配列が配列番号1を含む、前記カルチャーである。
【0032】
[0032] 本発明の別の態様は、ロドコッカス・オパクス(Rhodococcus opacus)を含む精製されたカルチャーであって、ここで当該ロドコッカス・オパクスの16S rDNAの配列は配列番号2を含む、前記カルチャーである。
【0033】
[0033] 本発明の別の態様は、配列番号1に記載される16S rDNA配列を含む精製核酸、又はその相補体である。
【0034】
[0034] 本発明の別の態様は、配列番号1に記載される16S rDNA配列精製核酸に、高度に厳密な条件下で特異的にハイブリッド形成する核酸、又はその相補体である。
【0035】
[0035] 本發明の別の態様は、配列番号1に記載される16S rDNA配列の断片を含む核酸断片、又はその相補体であって、300〜1500ヌクレオチド長を有するものである。
【0036】
[0036] 本発明の別の態様は、配列番号1に記載される16S rDNA配列の断片を含む核酸断片に高度に厳密な条件下で特異的にハイブリッド形成する核酸、又はその相補体であって、300〜1500ヌクレオチド長を有するものである。
【0037】
[0037] 本発明の別の態様は、配列番号2に記載される16S rDNA配列を含む精製核酸、又はその相補体である。
【0038】
[0038] 本発明の別の態様は、配列番号2に記載される16S rDNA配列を含む精製された核酸に高度に厳密な条件下で特異的にハイブリッド形成する核酸、又はその相補体である。
【0039】
[0039] 本発明の別の態様は、配列番号2に記載される16S rDNA配列の断片を含む核酸断片、又はその相補体であって、300〜1500ヌクレオチド長を有するものである。
【0040】
[0040] 本発明の別の態様は、配列番号2に記載される16S rDNA配列の断片を含む核酸断片に高度に厳密な条件下で特異的にハイブリッド形成する核酸、又はその相補体であって、300〜1500ヌクレオチド長を有するものである。
【0041】
[0041] 本発明の別の態様は、核酸の検出方法であって以下の:
(A) 第一核酸を、細胞から得られるか又は細胞に由来する第二核酸とインキュベーションし、ここで当該第一核酸は、配列番号1の少なくとも50個のヌクレオチド、そのRNA相当物、又はそれらの全長相補体、或いは配列番号1の約100個のヌクレオチド、そのRNA相当物、又はそれらの全長相補体に少なくとも97%の同一性を有する核酸を含み、
(B) 当該第一核酸と当該第二核酸との間のハイブリッド形成を許容し;そして
(C) 当該第一核酸へのハイブリッド形成の存在を検出する
を含む方法である。
【0042】
[0042] 本発明の別の態様は、核酸の検出方法であって以下の:
(A) 第一核酸を、細胞から得られるか又は細胞に由来する第二核酸とインキュベーションし、ここで当該第一核酸は、配列番号2の少なくとも50個のヌクレオチド、そのRNA相当物、又はそれらの全長相補体、或いは配列番号2の約100個のヌクレオチド、そのRNA相当物、又はそれらの全長相補体に少なくとも97%の同一性を有する核酸を含み、
(B) 当該第一核酸と当該第二核酸との間のハイブリッド形成を許容し;そして
(C) 当該第一核酸へのハイブリッド形成の存在を検出する
を含む方法である。
【0043】
用語と定義
[0043] 以下は、本明細書中で互換的に使用される略語とその対応する意味のリストである:
CV = カラム体積
GC/MS = ガス・クロマトグラフィー・質量分析
GC-FAME = ガス・クロマトグラフィー・脂肪酸メチル・エステル
HPLC = 高速液体クロマトグラフィー
L = リットル
LC/MS = 液体クロマトグラフィー・質量分析
mBar = ミリバール
mg = ミリグラム
ml又はmL = ミリリットル
MWCO = 分画分子量
OC600 = 吸光単位における光学密度
rpm = 一分あたりの回転数
RT = 室温
U = ユニット
ug又はμg = マイクログラム
ul又はμl = マイクロリットル
【0044】
[0044] 以下は、本明細書中で使用される種々のアミノ酸についての一文字表記のリストである:A = アラニン;B = アスパラギン酸又はアスパラギン; C = シトシン ; D = アスバラギン酸; E = グルタミン; F = フェニルアラニン; G = グリシン; H = ヒスチジン; I = イソロイシン ; K = リジン; L = ロイシン; M = メチオニン; N = アスパラギン ; P = プロリン; Q = グルタミン ; R = アルギニン; S = セリン; T = スレオニン ; U = セレノシステイン; V = バリン; W = トリプトファン ; Y = チロシン ; Z = グルタメート又はグルタミン ; X = いずれかのアミノ酸残基。
【0045】
[0045] 「β-アミノ酸トランスアミナーゼ」「β-トランスアミナーゼ」、及び「β-アミノ・トランスフェラーゼ」という用語は、互換的に使用され、そしてβ-アミノ酸、又はその塩のアミノ基(>C-NH2)を、カルボニル基(>C=O)に可逆的に変換する性質を示す酵素を意味する。
【0046】
[0046] 「ベータ・アミノ酸」という用語は、以下の:
(1) α-一置換β-アミノ酸、例えばβ-アミノ-α-ヒドロキシ酸;
(2) α,α-二置換β-アミノ酸;及び
(3) β-置換βアミノ酸、及びその塩
からなる群から選ばれる化合物を意味する。当該用語は、以下の式I:
【化6】

[式中、R1、R2、及びR3は、水素、C1-8アルキル、C2-8アルケニル、C2-8アルキニル、C3-12シクロアルキル、C6-12アリール、C3-12ヘテロシクリル、C6-12アリール-C1-8アルキル、及びC3-12ヘテロシクリル-C1-8アルキル・ラジカルからなる群から独立して選ばれ、ここで当該ラジカルの全ては、水酸基、低級アルコキシ、低級アルキル、ハロゲン、ニトロ、カルボキシル、トリフルオロメチル、アミノ、アシルオキシ、フェニル、ベンジル、ナフチル、キノリン、イソキノリン(これらは、ハロゲン、ニトロ、チオ、低級アルコキシ、及び低級アルキルで場合により置換される)で場合により置換され;
但し、R1、R2、及びR3の全てがHではなく;そして
4は、水酸基、O-、及び-OM(基中、Mはカチオンである)を含む。
【0047】
[0047] 「アミノ・アクセプター」という用語は、β-アミノ酸トランスアミナーゼの影響下で記載されたアミンからのアミノ基を受容できるカルボニル化合物を意味する。
【0048】
[0048] 「アミノ・ドナー」という用語は、同じβ-アミノ酸トランスアミナーゼの影響下で、アミノ基を記載されたケトン基に提供でき、それによりカルボニル種になる種々のアミノ化合物を指す。
【0049】
[0049] 本明細書中で使用されるとき、置換基そのものとして又は置換基の一部としてのアルキル、アルケニル、及びアルキニニル基は、C1-C50、好ましくはC1-C20、そして最も好ましくはC1-C10である。
【0050】
[0050] 「脂環式炭化水素」という用語は、3〜約10個の炭素原子、そして好ましくは3〜約6個の炭素原子を有する環状の脂肪族ラジカルを意味する。適切な脂環式ラジカルの例は、シクロプロピル、シクロプロピルエニル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、2-シクロヘキセン-1-イル、シクロヘキセニルなどを含む。
【0051】
[0051] 「アルキル」及び「低級アルキル」という用語は、1〜約10個の炭素原子、及び1〜約6個の炭素原子をそれぞれ有する直鎖又は分枝鎖の炭化水素ラジカルを指す。そうしたアルキル・ラジカル及び低級アルキル・ラジカルの例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、オクチル、ノニル、デシルなどである。
【0052】
[0052] 「アルケニル」又は「低級アルケニル」という用語は、少なくとも1の二重結合及び2〜約10個の炭素原子、及び2〜約6個の炭素原子をそれぞれ含む不飽和非環式炭化水素ラジカルを指し、その炭素-炭素二重結合は、当該二重結合炭素上に置換された基に対して、アルケニル部分内においてシス又はトランス幾何配置を有しうる。そうした基の例は、エテニル、プロペニル、ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、オクテニル、ノネニル、デセニルなどである。
【0053】
[0053] 「アルコキシ」などの用語は、直鎖又は分枝鎖の式-OR[式中、Rは上で定義されたアルキル基である]の酸素含有ラジカルを指す。含まれるアルコキシ基の例は、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、n-ブトキシ、イソプロポキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、t-ブトキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシなどを含む。
【0054】
[0054] 「アルキニル」又は「低級アルキニル」という用語は、1以上の三重結合及び2〜約10個の炭素原子、及び2〜約6個の炭素原子をそれぞれ含む非環式の炭化水素ラジカルを指す。そうした基の例は、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、オクチニル、ノニニル、デシニルなどを含む。
【0055】
[0055] 「芳香族炭化水素ラジカル」という用語は、6〜約14個の炭素原子、好ましくは6〜約12個の炭素原子、より好ましくは6〜約10個炭素原子を意味する。適切な芳香族炭化水素ラジカルの例は、フェニル、ナフチルなどを含む。
【0056】
[0056] 本明細書中に使用される「アリール」という用語は、1以上の芳香環から構成される芳香環システムを指す。好ましいアリール基は、1、2、または3個の芳香環からなる基である。当該用語は、フェニル、ピリジル、ナフチル、チオフェン、フラン、ビフェニルなどの芳香族ラジカルを包含する。
【0057】
[0057] 「アリールアルキル」又は「アラルキル」という用語は、式-R2-R1[式中、R1は本明細書中に定義されるアリールであり、そしてR2は、本明細書中に定義されるアルキレンである]のラジカルを指す。アラルキル基の例は、ベンジル、ピリジルメチル、ナフチルプロピル、フェネチルなどを含む。
【0058】
[0058] 「カルボキシル誘導体」という用語は、カルボン酸、カルボキシル・エステル、及びカルボキシル・アミドを含む。
[0059] 本明細書中で使用される「シクロアルキル」という用語は、3〜約8個の炭素原子、及びより好ましくは4〜約6個の炭素原子を含む飽和又は部分的に不飽和の環状ラジカルを指す。そうしたシクロアルキルラジカルの例は、シクロプロピル、シクロプロペニル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、2-シクロヘキセン-1-イルなどを含む。
【0059】
[0060] 「融合アリール」という用語は、1以上のフェニル環に融合される上で定義されたアリール基などの芳香環を指す。「融合アリール」置換基は、非限定的にペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、ビフェニレン、非対称インダセン(asymm-indacene)、対称インダセン(symm-indacene)、アセナフチレン、フルオレン、フェナレン、フェナンスレン、アントラセン、フルオラセン(flouranthene)、アセフェナンスリレン(acephenanthrylene)、アセアンスリレン(aceanthrylene)、トリフェニレン、ピレン(pyrene)、クリセン(chrysene)、ナフタセン(Naphthacene)、プレジャデン(plejadene)、ピセン(picene)、ペリレン(perylene)、ペンタフェン(pentaphene)、ペンタセン(pentacene)、テトラフェニレン、ヘキサフェン、ヘキサセン(hexacene)、ルビセン(rubicene)、コロネン(coronene)、トリナフチレン、ヘプタフェン、ヘップタセン(heptacene)、ピランスレン(ピランthrene)、オバレン(ovalene)、インデン(indane)、アセナフセン(acenaphthene)、コランスレン(cholanthrene)、アセアンスレン(aceanthrene)、アセフェナンスレン(acephenanthrene)、ビオラスレン(violanthrene)、イソビアランスレン(isovialanthrene)を含む。
【0060】
[0061] 「融合単環複素環」という用語は、ベンゼンが融合される上で定義された単環複素環を指す。本明細書中で使用されるとき「融合単環複素環」置換基は、非限定的にベンゾフラン、ベンゾピラン、ベンゾジオキソール、ベンゾチアゾール、ベンゾチオフェン、ベンズイミダゾール・ピロリジン、インドリジン、イソインドール、3H-インドール、インドール、1H-インダゾール、プリン、4H-キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、1,8-ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、キノリン、プテリジニン(pteridine)、4aH-カルバゾール、カルバゾール、フェナンスリジン(phenanthridine)、アクリジン(acridine)、ペリミジン(perimidine)、1,7-フェナンスロリン(phenanthroline)、フェナジン(phenazine)、フェノメルカジン(phenomercazine)、フェナルサジン(phenarsazine)、イソチアゾール、フェノホスファジン(phenophosphazine)、フェノテルラジン(phenotellurazine)、フェノセレナジン(phenoselenazine)、フェノチアジン、イソキサゾール、フラザン(furazane)、フェノキサジン(phenoxazine)、イソクロマン、クロマン、ピロリジン、ピロリン(pyrroline)、イミダゾリジン、フェノメルクリン(phenomercurine)、イソアルシンドール(isoarsindole)、アルシンドール(arsindole)、イソアルシノリン(isoarsinoline)、アルシノリン(arsinoline)、アルサンスリジン(arsanthridine)、アルシンダルシン(arcidarsine)、アルサンスレン(arsanthrene)、イソホスフィンドール(isophosphindole)、ホスフィンドール(phosphindole)、イソホスフィノリン(isophosphinoline)、ホスフィノリン(phosphinoline)、ホスファンスレン(phosphanthrene)、セレナンスレン(selenanthrene)、ベンゾ [b] チオフェン、ナフトール[2,3-b]チオフェン、チアンスレン(thianthrene)、フェノチアルシン(phenothiarsine)、イソベンゾフラン、2H-クロマン、キサンテン(xanthene)、フェノキサンチモニン(phenoxantimonine)、フェノキサシン(phenoxarsine)、フェノキサホスフィン(phenoxaphosphine)、フェノキサテルリン(phenoxatellurine)、フェノキサセレン(phenoxaselenin)、及びフェノキサチン( phenoxathiine)を含む。
【0061】
[0062] 「ハロ」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードを意味する。
[0063] 「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素を意味する。
[0064] 「ハロアルキル」という用語は、1以上の炭素原子上で、同じか又は異なる1以上のハロ基で置換される上で定義されたアルキル基を指す。ハロアルキル基の例は、トリフルオロメチル、ジクロロエチル、フルオロプロピルなどを含む。
[0065] 「ヘテロ原子」という用語は、炭素及び水素以外の原子を意味するべきである。
【0062】
[0066] 「炭化水素」及び「炭化水素の(hydrocarbyl)」という用語は、本明細書中に使用されるとき、炭素元素及び水素元素からのみなる有機化合物又はラジカルを記載する。これらの部分は、アルキル、アルケニル、アルキニル、及びアリール部分を含む。これらの部分はまた、他の脂肪族又は環状炭化水素基で置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、及びアリール部分、例えばアルカリール(alkaryl)、アルケナリール(Alkenaryl)、及びアルキナリール(Alkynaryl)を含む。他に記載がない限り、これらの部分は好ましくは1〜20個の炭素原子を含む。
【0063】
[0067] 「ヘテロシクリル・ラジカル」という用語は、4〜約10個の炭素原子、好ましくは約5個〜約6個の炭素原子(ここで1〜約3個の炭素原子は窒素、酸素、又は硫黄により置き換えられる)を有するヘテロシクリル炭化水素ラジカル、好ましくは芳香族ヘテロシクリル炭化水素を意味する。「ヘテロシクリル・ラジカル」という用語は、芳香族炭化水素ラジカルに融合されるか、又は別の複素環ラジカルに融合され得る。「複素環ラジカル」は、飽和、部分的に飽和、又は十分に不飽和でありうる。適切な例は、ピロリル、ピリジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピリミジニル、ピリダジニル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、インドリル、チオフェニル、フラニル、テトラゾリル、2-ピロリニル、3-ピロリニル、ピロリジニル、1,3-ジオキソラニル、2-イミダゾリニル、イミダゾリジニル、2-ピラゾリニル、ピラゾリジニル、イソキサゾリン、イソチアゾリン、1,2,3-オキサジアゾリン、1,2,3-トリアゾリン、1,3,4-チアジアゾリン、2H-ピラニル、4H-ピラニル、ピペリジニル、1,4-ジオキサニル、モルフォリニル、1,4-ジチアニル、チオモルフォリニル、ピラジニル、ピペラジニル、1,3,5-トリアジニル、1,3,5-トリチアニル、ベンゾ(b)チオフェニル、ベンズイミダゾリン、キノリニルなどを含む。
【0064】
[0068] 「低級アルキル」という用語は、単独又は組合せにおいて、1〜約10個、好ましくは1〜約8個の炭素原子、より好ましくは1〜約6個の炭素原子を含む非環式のアルキルラジカルを意味する。そうしたラジカルの例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソ-アミル、ヘキシル、オクチルなどを含む。
【0065】
[0069] 「低級アルケニル」という用語は、少なくとも1の二重結合を含む不飽和非環式炭化水素ラジカルを指す。約2〜約10個の炭素原子、好ましくは約2〜約8個の炭素原子、そしてより好ましくは2〜約6個の炭素原子を含む。適切なアルケニルラジカルの例は、プロピレニル、ブテン-1-イル、イソブテニル、ペンテン-1-イル、2-2-メチルブテン-1-イル、3-メチルブテン-1-イル、ヘキセン-1-イル、ヘプテン-1-イル、及びオクテン-1-イルなどを含む。
【0066】
[0070] 本明細書中に使用される「低級アルキレン」又は「アルキレン」という用語は、1〜約6個の炭素原子の二価直鎖又は分枝鎖炭化水素ラジカルを指す。
[0071] 「低級アルコキシ」という用語は、単独又は組合せにおいて、アルキル・エーテル・ラジカルであり、ここで当該アルキルという用語は上で定義される通りであり、そして最も好ましくは1〜約4個の炭素原子を含む。適切なアルキル・エーテル・ラジカルの例は、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソ-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシなどを含む。
【0067】
[0072] 「低級アルキニル」という用語は、1以上の3重結合を含む不飽和非環炭化水素ラジカルを指し、そうしたラジカルは約2〜約10個の炭素原子を含み、好ましくは約2〜約8個の炭素原子を有し、そしてより好ましくは2〜約6個の炭素原子を有する。適切なアルキニル・ラジカルの例は、エチニル、プロピニル、ブチン-1-イル、ブチン-2-イル、ペンチン-1-イル、ペンチン-2-イル、3-メチルブチン-1-イル、へキシン-1-イル、へキシン-2-イル、へキシン-3-イル、3,3-ジメチルブチン-1-イル・ラジカルなどを含む。
【0068】
[0073] 「単環複素環」又は「単環複素環の」という用語は、4〜約12個の原子、そしてより好ましくは5〜約10個の原子(ここで1〜3個の原子は、酸素、窒素、及び硫黄からなる群から選ばれるヘテロ原子である。但し、2以上の異なるヘテロ原子が存在する場合、少なくとも1のヘテロ原子は、窒素でなければならない)からなる単環を指す。置換基は、非限定的にイミダゾール、フラン、ピリジン、オキサゾール、ピラン、トリアゾール、チオフェン、ピラゾール、チアゾール、チアジアゾール、ピラゾール、ピラジンピリミジン、ピリダジン、チオフェン、テルロフェン(tellurophene)、セレノフェン(selenophene)、及びピロールを含む。
【0069】
[0074] 本明細書中に記載される「置換炭化水素」部分は、炭素以外の少なくとも1の原子で置換された炭化水素部分であり、炭素鎖原子が、窒素、酸素、ケイ素、リン、ホウ素、硫黄、又はハロゲン原子で置換される部分を含む。これらの置換基は、ハロゲン、複素環、アルコキシ、アルコキシ、アルケノキシ、アリールオキシ、水酸基、保護水酸基、ケト、アシル、アシルオキシ、ニトロ、アミノ、アミド、ニトロ、シアノ、チオール、ケタール、アセタール、エステル、及びエーテルを含む。
【0070】
[0075] 本発明中に示される化合物は、種々の異性体形態で存在し、そしてそうした異性体形態の全てが含まれることを意図する。互変異性体、並びにそうした異性体及び互変異性体の塩もまた含まれる。
【0071】
[0076] 文書中に記載された化学反応は、本発明の化合物の製造に対する最も広い適用について一般的に開示される。時々、当該反応は、開示された範囲内に含まれる各化合物に対して記載されるように適用されないかもしれない。こうしたことが起こる化合物は、当業者により容易に認識されるであろう。そうした場合の全てにおいて、当業者に知られる慣用の改変、例えば妨害基の適切な保護、代わりの慣用試薬への変更、反応条件の通常の改変などによってうまく行われる反応、或いは本明細書中に開示されるかそうでなければ慣用である他の反応のいずれかは、本発明の対応する化合物の製造に適用できるであろう。全ての製造方法、全ての開始物質は知られているか、又は既知の開始物質から容易に作られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0072】
[0086] その最も広い意味において、本発明は、アミノ・アクセプターの存在下において、β-アミノ酸トランスアミナーゼ(β-トランスアミナーゼ又はβ-アミノ・トランスフェラーゼ)を使用して、キラル・アミンの混合体を立体選択的に合成し、又は鏡像異性体濃縮することに関する。
【0073】
[0087] 本発明は、新たに単離された微生物(例えば土壌由来及びコンポスト・サンプル由来)由来のβ-アミノ・トランスフェラーゼの驚くべき発見及び部分的な特徴づけに関する。これらの酵素は、鏡像異性的に純粋なβ-アミノ酸、特にL-β-フェニルアラニン及びD-β-フェニルアラニンの生合成に経済的に実行可能な経路を提供しうる。
【0074】
[0088] β-アミノ・トランスフェラーゼ活性を有する微生物は、濃縮培養プロトコルを利用して単離された。当該プロトコルは、β-アミノ酸としてのみ供給される窒素を利用する能力に基づいて、環境集団由来の微生物を濃縮した。DL-β-フェニルアラニンは、唯一の窒素源として存在する場合、アミノ酸のベータ炭素に結合された窒素を利用できる微生物をうまく選別することをもたらした。選ばれた微生物は、純粋なカルチャーとして使用され、そしてβ-アミノ・トランスフェラーゼ活性について、全細胞触媒として、及び無細胞ホモジェネート調製品の両方として選別された。β-アミノ・トランスフェラーゼ活性を有する微生物は、3-ケト-3フェニルプロピオン酸とβ-フェニルアラニンとの間の可逆的アミノ基転移を触媒した。
【0075】
[0089] 1の酵素は、β-D-フェニルアラニンに100%の選好性を示し、L-鏡像異性体に対して活性を有さない。当該酵素は、α-ケトグルタレートをアミノ・アクセプターとして好み、そしてリン酸ピリドキサールを触媒作用に必要とする。当該酵素は、L-アミノ酸又はα-アミノ酸に作用せず、そして驚くべきことに、3-ケト-3-フェニルプロピオン酸のβ-D-フェニルアラニンへのアミノ基転移において、D-グルタミン酸よりもL-グルタミン酸を、アミノ・ドナーとして好む。適切な条件下において、当該酵素は、β-アミノ酸、特にD-β-アミノ酸、そして好ましくはD-β-フェニルアラニンの鏡像異性選択的生合成のために使用されうる。
【0076】
[0090] 第二のβ-アミノ・トランスフェラーゼはまた、上記と同じ条件下で単離され、そして反対の立体選択性を有することが示された。第二の酵素は、β-L-フェニルアラニンへの100%の選好性を示し、D-鏡像異性体について活性を有さない。当該酵素は、ピルビン酸をアミノ・アクセプターとして好み、そして触媒作用にリン酸ピリドキサールを必要とする。適切な条件下で、当該酵素は、β-アミノ酸、特にL-β-アミノ酸、及び好ましくはL-β-フェニルアラニンの鏡像選択的生合成に使用されうる。
【0077】
[0091] 本発明の1の態様は、β-アミノ酸、又はその塩の立体選択的合成方法であり、当該方法は、β-アミノ酸トランスアミナーゼの存在下で、アミノ・ドナーとアミノ・アクセプターを接触させて、アミノ・アクセプターからβ-アミノ酸鏡像異性体、又はその塩を形成することを含む。
【0078】
[0092] 好ましくは、当該アミノ・アクセプターは、β-ケト酸である。
[0093] 好ましくは、当該アミノ・ドナーは、α-アミノ酸である。
[0094] 好ましくは、形成されたD-β-アミノ酸又はL-β-アミノ酸対それぞれの形成されたL-β-アミノ酸又はD-β-アミノ酸のモル比は、1:1を超える。より好ましくは、当該モル比は3:1を超える。さらに好ましくは当該モル比は好ましくは10:1を超える。
【0079】
[0095] 好ましくは、当該方法は、さらに当該β-アミノ酸を回収することをさらに含む。
[0096] 好ましくは、当該接触は、β-トランスアミナーゼを含む微生物の全細胞の存在下で行われる。
[0097] 好ましくは、当該接触は、β-トランスアミナーゼを含む微生物の膜透過細胞の存在下で行われる。
[0098] 好ましくは、β-トランスアミナーゼの無細胞調製品の存在下で行われる。
[0099] 好ましくは、当該β-トランスアミナーゼは、支持体上に固定される。
[0100] 好ましくは、当該接触は、水性条件下で行われる。
【0080】
[0101] 好ましくは当該接触は、有機共溶媒の存在下で行われうる。より好ましくは、当該有機共溶媒は、アルコール、ケトン、エーテル、エステル、ニトリル、及び炭化水素からなる群から選ばれる。より好ましくは、当該有機共溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、ジエチル・エーテル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、メチル t-ブチル・エーテル、フタル酸ジオクチル、トルエン、ジアルキル・エーテル、ジフェニルエーテルからなる群から選ばれる。さらにより好ましくは、当該有機共溶媒は、0%〜100%の間の量(v/v)で存在する。さらにより好ましくは、当該有機共溶媒は、0%〜約80%の量で存在する。さらにより好ましくは、当該有機共溶媒は、約5%の量で存在する。より好ましくは、当該有機共溶媒は、水混和性である。より好ましくは、当該有機共溶媒は、水不混和性である。
【0081】
[0102] 好ましくは、当該方法はさらに、β-アミノ酸トランスアミナーゼの存在下において、アミノ・ドナーとアミノ・アクセプターを接触することにより産生されたアミノ・ドナーの対応するケト形態を、β-トランスアミナーゼと反応しない化合物を産生するために適切な条件下で反応することを含む。より好ましくは、当該アミノ・ドナーのケト形態は、アルファ-ケト酸である。さらにより好ましくは、当該アミノ・ドナーは、グルタメートであり、そして当該アミノ・ドナーのケト形態は、α-ケト・グルタレートである。さらにより好ましくは当該アミノ・ドナーは、グルタメートであり、当該アミノ・ドナーのケト形態は、α-ケト・グルタレートであり、そして当該反応は、asp-オキサロアセテート・トランスアミナーゼ及びオキサロアセテート・デカルボキシラーゼの存在下で行われる。より好ましくは、当該アミノ・ドナーのケト形態は、ピルビン酸である。さらにより好ましくは、当該アミノ・ドナーは、L-アラニンであり、当該アミノ・ドナーのケト形態は、ピルビン酸であり、そして当該反応は、ピルベート・デカルボキシラーゼの存在下で行われる。
【0082】
[0103] 好ましくは、当該β-アミノ酸鏡像異性体は、D-β-アミノ酸鏡像異性体である。より好ましくは、当該β-アミノ酸鏡像異性体は、D-β-アミノ酸及び当該トランスアミナーゼは、立体選択的D-β-トランスアミナーゼである。さらにより好ましくは、当該トランスアミナーゼは、バリオボラックス、ノカルディア、コマモナス、ロドコッカス、及びシュードモナスからなる属から選ばれる微生物由来である。さらにより好ましくは、当該トランスアミナーゼは、バリオボラックス・パラドキサス、バリオボラックス・パラドキサスGC亜群A、ノカルディア・アステロイデス(Nocardia asteroides)、コマモナス・テリゲーナ(Comamonas terrigena)、シュードモナス・メンドシナ(Pseudomonas mendocina)、コマモナス・アシドボランス(Coomamonas acidovorans)、及びロドコッカス・オパクス(Rhodococcus opacus)からなる群から選ばれる微生物由来である。さらにより好ましくは、当該トランスアミナーゼが、バリオボラックス、ノカルディア、コマモナス、ロドコッカス、及びシュードモナスからなる属から選ばれる微生物により産生される立体選択的D-β-トランスアミナーゼに実質的に同一である。さらにより好ましくは、当該トランスアミナーゼは、バリオボラックス・パラドキサス、バリオボラックス・パラドキサスGC亜群A、ノカルディア・アステロイデス、コマモナス・テリゲーナ、シュードモナス・メンドシナ、コマモナス・アシドボランス、及びロドコッカス・オパクスからなる群から選ばれる微生物により産生される立体選択的D-β-トランスアミナーゼに実質的に同一である。さらにより好ましくは、当該トランスアミナーゼは、バリオボラックス、ノカルディア、コマモナス、ロドコッカス、及びシュードモナスからなる属から選ばれる微生物により産生される立体選択的D-β-トランスアミナーゼのアミノ酸配列に少なくとも80%同一である。さらにより好ましくは、当該トランスアミナーゼは、バリオボラックス・パラドキサス、バリオボラックス・パラドキサスGC亜群A、ノルカディア・アステロイデス、コマモナス・テリゲーナ、シュードモナス・メンドシナ、コマモナス・アシドボランス 、及びロドコカス・オパクスからなる群から選ばれる微生物により産生される立体選択的D-β-トランスアミナーゼのアミノ酸配列に少なくとも80%同一である。
【0083】
[0104] 好ましくは、当該β-アミノ酸鏡像異性体は、L-β-アミノ酸鏡像異性体である。より好ましくは、L-β-アミノ酸は、立体選択的L-β-トランスアミナーゼの存在下で合成される。さらにより好ましくは、トランスアミナーゼは、アルカリゲネス属の微生物から由来される。さらにより好ましくは、当該トランスアミナーゼは、アルカリゲネス・ユートロフスにより産生される。さらにより好ましくは、当該トランスアミナーゼは、アルカリゲネス属の微生物により産生される立体選択的のL-β-トランスアミナーゼに実質的に同一である。さらにより好ましくは、当該トランスアミナーゼは、アルカリゲネス・ユートロフスにより産生される立体選択的L-β-トランスアミナーゼに実質的に同一である。さらに好ましくは、当該トランスアミナーゼは、アルカリゲネス属の微生物により産生される立体選択的L-β-トランスアミナーゼのアミノ酸配列に少なくとも80%同一である。さらにより好ましくは、当該トランスアミナーゼは、アルカリゲネス・ユートロフスにより産生される立体選択的L-β-トランスアミナーゼのアミノ酸配列に、少なくとも80%同一である。
【0084】
[0105] 好ましくは、当該β-アミノ酸鏡像異性体は、立体選択的D-β-トランスアミナーゼの存在下において合成されるD-β-アミノ酸鏡像異性体であり、ここで当該トランスアミナーゼは、配列番号1に記載される16S rRNA配列と少なくとも97%の同一性を有する微生物から由来される。
【0085】
[0106] 好ましくは、当該β-アミノ酸鏡像異性体は、立体選択的L-β-トランスアミナーゼの存在下において合成されるL-β-アミノ酸鏡像異性体であり、ここで当該トランスアミナーゼは、配列番号2に記載される16S rRNA配列と少なくとも97%の同一性を有する微生物から由来される。
【0086】
好ましくは、当該β-アミノ酸は、以下の式I:
【化7】

の化合物であり、そして当該アミノ・アクセプターは、以下の式II:
【化8】

の化合物である。
式中、R1、R2、及びR3は、水素、C1-8アルキル、C2-8アルケニル、C2-8アルキニル、C3-12シクロアルキル、C6-12アリール、C3-12ヘテロシクリル、C6-12アリール-C1-8アルキル、及びC3-12ヘテロシクリル-C1-8アルキル・ラジカルからなる群から独立して選ばれ;
ここで当該ラジカルの全ては、水酸基、低級アルコキシ、低級アルキル、ハロゲン、ニトロ、カルボキシル、トリフルオロメチル、アミノ、アシルオキシ、フェニル、ベンジル、ナフチル、キノリン、イソキノリン(これらは、場合によりハロゲン、ニトロ、チオ、低級アルコキシ、及び低級アルキルと置換される)で場合により置換され;
但し、R1、R2、及びR3は全てがHではなく;そして
4が、ヒドロキシ、O-、及び-OM(基中、Mはカチオンである)を含む。
【0087】
[0107] より好ましくは、Mは、アルカリ金属、カチオン、及びNH4+からなる群から選ばれる。さらにより好ましくは、Mは、Na+、K+、及びNH4+からなる群から選ばれる。
【0088】
[0108] より好ましくは、R1、R2、及びR3は、水素、C1-8アルキル、C2-5アルケニル、C2-8アルキニル、C6-12アリール、及びC6-12アリール-C1-8アルキル、ラジカルからなる群から選ばれ、ここで当該ラジカルの全ては、水酸基、低級アルコキシ、低級アルキル、ハロゲン、ニトロ、カルボキシル、トリフルオロメチル、アミノ、アシルオキシ、フェニル、ベンジル、ナフチル、キノリン、イソキノリン(これらは、ハロゲン、ニトロ、チオ、低級アルコキシ、及び低級アルキル・ラジカルで場合により置換される)で場合により置換される。
【0089】
[0109] さらにより好ましくは、R1、R2、及びR3は、水素、C6-12アリール、及びC6-12アリール-C1-8アルキル、ラジカルからなる群から独立して選ばれ;ここで、当該ラジカルの全ては、水酸基、低級アルコキシ、低級アルキル、ハロゲン、ニトロ、カルボキシル、トリフルオロメチル、アミノ、アシルオキシ、フェニル、ベンジル、ナフチル、キノリン、イソキノリン(これらは、場合によりハロゲン、ニトロ、チオ、低級アルコキシ、及び低級アルキル・ラジカルで置換される)で場合により置換される。
【0090】
[0110] さらにより好ましくは、R1、R2、及びR3は、水素、C1-8アルキル、C2-8アルケニル、及びC2-8アルキニル、ラジカルからなる群から選ばれ;ここで、当該ラジカルの全ては、水酸基、低級アルコキシ、低級アルキル、ハロゲン、ニトロ、カルボキシル、トリフルオロメチル、アミノ、アシルオキシ、フェニル、ベンジル、ナフチル、キノリン、イソキノリン(これらは、場合によりハロゲン、ニトロ、チオ、低級アルコキシ、及び低級アルキル・ラジカルで置換される)により場合により置換される。
【0091】
[0111] さらにより好ましくは、R2又はR3がOHであるが、両方がOHであることはない。
[0112] さらにより好ましくは、R2又はR3がHであるが、両方がHであることはない。
[0113] さらにより好ましくは、R2及びR3が両方ともHである。
[0114] さらにより好ましくは、R1は、C6-12アリール及びC6-12アリール-C1-8アルキル・ラジカル(これらは、場合によりハロゲン、ニトロ、チオ、低級アルコキシ、及び低級アルキル・ラジカルで置換される)からなる群から選ばれる。
[0115] さらにより好ましくは、R1はフェニルである。
【0092】
[0116] 本発明の別の態様は、β-アミノ酸、又はその塩の立体選択的合成方法であり、当該方法は、β-アミノ酸トランスアミナーゼの存在下でアミノ・ドナーとアミノ・アクセプターを接触させて、当該アミノ・アクセプターから立体選択的にβ-アミノ酸鏡像異性体、又はその塩を形成することを含む。
【0093】
[0117] ここで、当該β-アミノ酸又はその塩は、以下の式III:
【化9】

で表される化合物であり、そして当該アミノ・アクセプターは、以下の式IV:
【化10】

で表される化合物である。
[0118] 式中、R4は、水酸基、O-、及び-OM(基中、Mはカチオンである)を含む。
【0094】
[0119] 好ましくは、当該β-アミノ酸は、D-β-フェニルアラニン及びL-フェニルアラニンからなる群から選ばれる。
[0120] 好ましくは、当該アミノ・アクセプターは、β-ケト酸及びインサイチュにおいてβ-ケト酸に変換される化合物からなる群から選ばれる。
【0095】
[0121] 好ましくは、当該アミノ・ドナーは:D-グルタミン酸、L-グルタミン酸、D,L-グルタミン酸、D-アスパラギン酸、L-アスパラギン酸、D,L-アスパラギン酸、D-アラニン、L-アラニン、及びD,L-アラニン、3-アミノアジピン酸、及び2-アミノアジピン酸からなる群から選ばれる。より好ましくは、当該アミノ・ドナーは: D-グルタミン酸、L-グルタミン酸、D,L-グルタミン酸、D-アスパラギン酸、L-アスパラギン酸、D,L-アスパラギン酸からなる群から選ばれる。
【0096】
[0122] 本発明の別の態様は、D-β-アミノ酸鏡像異性体及びその対応するL-β-アミノ酸鏡像異性体を含む混合体を、鏡像異性体濃縮する方法であり、当該方法は、立体選択的L-β-トランスアミナーゼの存在下において、L-β-アミノ酸鏡像異性体をアミノ・アクセプターと接触して、少なくとも1部のL-β-アミノ酸鏡像異性体を、当該対応するβ-ケト酸に変換し、それにより濃縮された混合体におけるD-β-アミノ酸鏡像異性体 対 L-β-アミノ酸鏡像異性体のモル比を増大することを含む。
【0097】
[0123] 好ましくは、濃縮された混合体におけるD-β-アミノ酸鏡像異性体 対 L-β-アミノ酸鏡像異性体のモル比は、3:1より大きい。さらにより好ましくは、濃縮混合体におけるD-β-アミノ酸鏡像異性体 対 L-β-アミノ酸鏡像異性体のモル比は、10:1を超える。
【0098】
[0124] より好ましくは、濃縮混合体におけるD-β-アミノ酸鏡像異性体 対 L-β-アミノ酸鏡像異性体のモル比は、3:1を超える。さらにより好ましくは、濃縮混合体益虫におけるD-β-アミノ酸鏡像異性体 対 L-β-アミノ酸鏡像異性体のモル比は、10:1を超える。
【0099】
[0125] 本発明の別の態様は、L-β-アミノ酸鏡像異性体とその対応するD-β-アミノ酸鏡像異性体を含む混合体を鏡像異性的に濃縮する方法であり、当該方法は、立体選択的D-β-アミナーゼの存在下において、当該D-β-アミノ酸鏡像異性体を、アミノ・アクセプターと接触して、D-β-アミノ酸鏡像異性体の少なくとも1部を対応するβ-ケト酸に変換し、それにより濃縮混合体においてL-β-アミノ酸鏡像異性体 対 D-β-アミノ酸鏡像異性体のモル比を増大することを含む。
【0100】
[0126] 好ましくは、濃縮混合体におけるL-β-アミノ酸鏡像異性体 対 D-β-アミノ酸鏡像異性体のモル比は、1:1より大きい。
[0127] より好ましくは、濃縮混合体におけるL-β-アミノ酸鏡像異性体 対 D-β-アミノ酸鏡像異性体のモル比は、3:1より大きい。さらにより好ましくは、当該濃縮混合体におけるL-β-アミノ酸鏡像異性体 対 D-β-アミノ酸虚像異性体のモル比は、10:1より大きい。
【0101】
[0128] 本発明の別の態様は、鏡像異性的に濃縮されたβ-アミノ酸又はその塩の製造方法であって、以下の:
(i) 以下の式I:
【化11】

[式中、R1、R2、及びR3は、水素、C1-8アルキル、C2-8アルケニル、C2-8アルキニル、C3-12シクロアルキル、C6-12アリール、C3-12ヘテロシクリル、C6-12アリール-C1-8アルキル、及びC3-12ヘテロシクリル-C1-8アルキル・ラジカルから独立して選ばれ;
ここで当該ラジカルの全てが、水酸基、低級アルコキシ、低級アルキル、ハロゲン、ニトロ、カルボキシル、トリフルオロメチル、アミノ、アシルオキシ、フェニル、ベンジル、ナフチル、キノリン、イソキノリン(これらは、場合によりハロゲン、ニトロ、チオ、低級アルコキシ、及び低級アルキルで置換される)で場合により置換され;
但し、R1、R2、及びR3の全てがHであることはなく、そして
4は、水酸基、O-、及び-OM(基中、Mはカチオンである)を含む]
の構造を有するラセミ体のβ-アミノ酸、又はその塩
(ii) アミノ・アクセプター、及び
(iii) 立体特異的β-アミノ酸トランスアミナーゼ
を、ラセミ体のβ-アミノ酸の1の鏡像異性体を対応するβ-ケト酸誘導体に変換するために適切な条件下で接触させて、それにより当該β-アミノ酸の反対の鏡像異性体を、実質的に鏡像異性的に濃縮された形態で保持し、そして
当該保持されたβアミノ酸からβ-ケト酸誘導体を分離する
ことを含む。
【0102】
[0129] 本発明の別の態様は、バリオボラックス、ノカルディア、コマモナス、ロドコッカス、及びシュードモナスからなる群から選ばれる微生物由来の精製された立体選択的D-β-トランスアミナーゼである。
[0130] 好ましくは、当該精製された立体選択的D-β-トランスアミナーゼは、バリオボラックス・パラドキサス、バリオボラックス・パラドキサスGC亜群A、ノルカディア・アステロイデス、コマモナス・テリゲーナ、シュードモナス・メンドシナ、コマモナス・アシドボランス、及びロドコッカス・オパクスからなる群から選ばれる微生物由来である。
【0103】
[0131] より好ましくは、当該微生物の16S rDNAの配列は、配列番号1に記載される16S rDNAの配列に1500ヌクレオチドにわたり少なくとも97%の同一性を有する。さらにより好ましくは、当該精製された立体選択的D-β-トランスアミナーゼは、バリオボラックス・パラドキサス由来であり、ここで当該微生物の16S rDNAの配列は、配列番号1を含む。さらにより好ましくは、請求項83に記載される当該精製された立体選択的D-β-トランスアミナーゼは、バリオボラックス・パラドキサスから由来され、ここで当該微生物の16S rDNAの配列は配列番号1からなる。
【0104】
[0132] より好ましくは、当該微生物の16S rDNAの配列は、配列番号2に記載される16S rDNAの配列に1500ヌクレオチドに渡って少なくとも97%の同一性を有する。さらにより好ましくは、当該精製された立体選択的D-β-トランスアミナーゼは、ロドコッカス・オパクス由来である。さらにより好ましくは、特許請求の範囲に記載される当該精製された立体選択的D-β-トランスアミナーゼは、ロドコッカス・オパクス由来であり、ここで当該微生物の16S rDNAの配列は配列番号2を含む。さらにより好ましくは、当該精製された立体選択的D-β-トランスアミナーゼは、ロドコッカス・オパクス由来であり、ここで当該微生物の16S rDNAの配列は配列番号2からなる。
【0105】
[0133] 本発明の別の態様は、アルカリゲネス属の微生物由来の精製された立体選択的L-β-トランスアミナーゼである。
[0134] 好ましくは、当該精製された立体選択的L-β-トランスアミナーゼは、アルカリゲネス・ユートロフス由来である。
【0106】
[0135] 本発明の別の態様は、立体選択的β-トランスフェラーゼを含む細胞ホモジェネートから立体選択的β-トランスアミナーゼを精製する方法であり、当該方法は、細胞ホモジェネートを沈殿剤と接触させて、立体特異的β-トランスアミナーゼを含む沈殿を生成することを含む。
【0107】
[0136] 好ましくは、当該沈殿剤は、硫酸アンモニウムである。
[0137] 好ましくは、当該沈殿が、さらにクロマトグラフィーにより精製される。
[0138] より好ましくは、当該沈殿が、疎水性相互作用クロマトグラフィーによりさらに精製される。さらにより好ましくは、当該疎水性相互作用クロマトグラフィーは、ブチル・セファロースFFレジンで行われる。
【0108】
[0139] より好ましくは、当該沈殿は、さらにサイズ排除クロマトグラフィーにより生成される。さらにより好ましくは当該サイズ排除クロマトグラフィーは、TSK G300SWレジンで行われる。
【0109】
[0140] より好ましくは、当該沈殿は、さらに疎水性相互作用クロマトグラフィー及びサイズ排除クロマトグラフィーにより精製される。さらにより好ましくは、当該疎水性相互作用クロマトグラフィーは、ブチルセファロースFFレジンで行われ、そして当該サイズ排除クロマトグラフィーは、TSK G300 SWレジンで行われる。
【0110】
[0141] 好ましくは、当該立体選択的D-β-トランスアミナーゼは、当該細胞ホモジェネートがバリオボラックス、ノルカディア、コマモナス、ロドコッカス、及びシュードモナスからなる群から選ばれる微生物から得られる方法によって行われる。
【0111】
[0142] より好ましくは、当該立体選択的D-β-トランスアミナーゼは、当該細胞ホモジェネートがバリオボラックス・パラドキサス、バリオボラックス・パラドキサスGC 亜群A、ノルカディア・アステロイデス、コマモナス・テリゲーナ、シュードモナス・メンドシナ、コマモナス・アシドボランス、及びロドコッカス・オパクスからなる群から選ばれる微生物から得られる方法により製造される。さらにより好ましくは、当該立体選択的D-β-トランスアミナーゼは、当該細胞ホモジェネートがバリオボラックス・パラドキサスから得られる方法により製造される。さらにより好ましくは、当該立体選択的D-β-トランスアミナーゼは、バリオボラックス・パラドキサスにより産生され、ここで当該微生物の16S rDNAは配列番号1を含む。さらにより好ましくは当該立体選択的D-β-トランスアミナーゼは、バリオボラックスにより産生され、ここで当該微生物の16S rDNAは、配列番号1からなる。さらにより好ましくは、当該立体選択的D-β-トランスアミナーゼは、当該細胞ホモジェネートがロドコッカス・オパクスから得られる方法により産生される。さらにより好ましくは、当該立体選択的D-β-トランスアミナーゼは、ロドコッカス・オパクスにより産生され、ここで当該微生物の16S rDNAは配列番号2を含む。さらにより好ましくは、立体選択的D-β-トランスアミナーゼは、ロドッコッカス・オパクスにより産生され、ここで当該微生物の16S rDNAは配列番号2からなる。
【0112】
[0143] 好ましくは、立体選択的L-β-トランスアミナーゼは、上記細胞ホモジェネートをアルカリゲネス属の微生物から取得する前記方法により製造される。
[0144] より好ましくは、当該立体選択的L-β-トランスアミナーゼは、上記微生物がアルカリゲネス・ユートロフスである前記方法により製造される。
[0145] 好ましくは、β-トランスアミナーゼは、前記方法により製造され、45〜55kDaの分子量のサブユニットを有する。
[0146] 本発明の別の態様は、立体特異的β-トランスアミナーゼを含む組成物から立体特異的β-トランスアミナーゼを精製する方法であり、当該方法は、以下のステップ:
a) 立体特異的β-トランスアミナーゼを疎水性相互作用物質上に吸着させ、そして
b) 溶出緩衝液を使用して疎水性相互作用物質から立体特異的β-トランスアミナーゼを溶出する
を含む。
【0113】
[0147] 本発明の別の態様は、立体特異的β-トランスアミナーゼを含む組成物から、立体特異的β-トランスアミナーゼを精製する方法であり、当該方法は、以下のステップ:
(a) 立体特異的β-トランスアミナーゼをサイズ排除物質上に吸着し、そして
(b) 溶出緩衝液を使用して当該サイズ排除物質から立体特異的β-トランスアミナーゼを溶出する
を含む。
【0114】
[0148] 本発明の別の態様は、β-トランスアミナーゼを発現する1以上の微生物について微生物の個体数を増大させる方法であり、当該方法は、β-アミノ酸、又はその塩を選択的窒素源として含むカルチャー培地中において、微生物の個体数を増大させることを含む。
【0115】
[0149] 好ましくは、当該β-トランスアミナーゼは、立体特異的β-トランスアミナーゼである。
[0150] より好ましくは、当該立体特異的β-トランスアミナーゼは、D-β-トランスアミナーゼである。
[0151] より好ましくは、当該立体特異的β-トランスアミナーゼは、L-β-トランスアミナーゼである。
[0152] 好ましくは、当該β-アミノ酸は、D-β-アミノ酸、L-β-アミノ酸、又はそれらの混合体からなる群から選ばれる。
[0153] より好ましくは、当該β-アミノ酸は、D-β-フェニルアラニン、及びL-β-フェニルアラニン、又はそれらの混合体からなる群から選ばれる。
【0116】
[0154] 好ましくは、当該カルチャー培地は、無機塩、炭素源、及び窒素源を含み、ここで当該β-アミノ酸又はその塩は、選択的濃縮に使用される窒素源である。
[0155] 好ましくは、当該カルチャー培地は、無機塩、炭素源、及び窒素源を含み、ここで当該β-アミノ酸又はその塩は、窒素源及び炭素源である。
[0156] 好ましくは、微生物の個体は、土壌から収集される。
[0157] 本発明の別の態様は、バリオボラックス・パラドキサスを含む精製されたカルチャーであり、ここで当該バリオボラックス・パラドキサスの16S rDNAの配列は配列番号1を含む。
[0158] 本発明の別の態様は、ロドコッカス・オパクスを含む精製されたカルチャーであり、ここで当該ロドコッカス・オパクスの16S rDNAの配列は配列番号2を含む。
【0117】
[0159] 本発明の別の態様は、配列番号1に記載される16S rDNAの配列を含む精製された核酸、又はその相補体である。
[0160] 好ましくは、配列番号1に記載される16S rDNAの配列を含む精製された核酸のRNA相当物、又はその相補体を含む。
【0118】
[0161] 本発明の別の態様は、配列番号1に記載される16S rDNA配列の精製された核酸に対して高度に厳密な条件下で特異的にハイブリッド形成する核酸、又はその相補体である。
【0119】
[0162] 本発明の別の態様は、配列番号1に記載される16S rDNA配列の断片を含む核酸断片、又はその相補体であって、300〜1500ヌクレオチド長を有するものである。
[0163] 好ましくは、当該精製核酸は、配列番号1に記載される16S rDNA配列の断片を含む核酸断片のRNA同等物、又はその相補体であって、300〜1500ヌクレオチド長を有するものである。
[0164] 本発明の別の態様は、高度に厳密な条件下で、配列番号1に記載される16S rDNA配列の断片を含む核酸に、高度に厳密な条件下で特異的にハイブリッド形成する核酸、又はその相補体であって、300〜1500ヌクレオチド長を有する核酸断片に特異的にハイブリッド形成する核酸である。
【0120】
[0165] 本発明の別の態様は、配列番号2に記載される16S rDNA配列を含む精製核酸、又はその相補体である。
[0166] 好ましくは、当該精製核酸が、配列番号2に記載される16S rDNA配列を含む精製核酸のRNA相当物、又はその相補体を含む。
[0167] 本発明の別の態様は、高度に厳密な条件下、配列番号2に記載される16S rDNA配列を含む精製核酸に特異的にハイブリッド形成する核酸、又はその相補体である。
[0168] 本発明の別の態様は、配列番号2に記載される16S rDNA配列の断片を含む核酸断片、又はその相補体であって、300〜1500ヌクレオチド長を有するものである。
【0121】
[0169] 好ましくは、当該精製核酸は、配列番号2に記載される16S rDNA配列の断片を含む核酸断片のRNA相当物、又はその相補体であって、300〜1500ヌクレオチド長を有するものを含む。
【0122】
[0170] 本発明の別の態様は、配列番号2に記載される16S rDNA配列の断片を含む核酸断片に、高度に厳密な条件下で特異的にハイブリッド形成する核酸、又はその相補体であって、300〜1500ヌクレオチド長を有するものを含む。
【0123】
[0171] 本発明の別の態様は、核酸を検出する方法であって、以下の:
(A) 第一核酸を、細胞から得られるか又は細胞に由来する第二核酸とインキュベーションし、ここで第一核酸が、配列番号1の少なくとも50個のヌクレオチド、そのRNA相当物、又はそれらの全長相補体を含むか、或いは配列番号1の約100個のヌクレオチドに少なくとも97%の同一性を有する核酸、そのRNA相当物、又はそれらの全長相補体を含み、
(B) 当該第一核酸と当該第二核酸との間のハイブリッド形成を許容し;そして
(C) 当該第一核酸へのハイブリッド形成の存在を検出する
を含む、方法である。
【0124】
[0172] 好ましくは、当該第一核酸は、配列番号1の少なくとも100個のヌクレオチド、そのRNA相当物、又はそれらの全長相補体を含む。
[0173] 好ましくは、当該第一核酸は、配列番号1の少なくとも150個のヌクレオチド、そのRNA相当物、又はそれらの全長相補体を含む。
[0174] 好ましくは、当該第一核酸は、配列番号1の少なくとも200個のヌクレオチド、そのRNA相当物、又はそれらの全長相補体を含む。
[0175] 好ましくは、当該第一核酸は、配列番号1の少なくとも250個のヌクレオチド、そのRNA相当物、又はそれらの全長相補体を含む。
[0176] 好ましくは、当該第一核酸は、配列番号1の少なくとも300個のヌクレオチド、そのRNA相当物、又はそれらの全長相補体を含む。
【0125】
[0177] 本発明の別の態様は、核酸を検出する方法であって、以下の:
(A) 第一核酸を、細胞から得られるか又は細胞に由来する第二核酸とインキュベーションし、ここで第一核酸が、配列番号2の少なくとも50個のヌクレオチド、そのRNA相当物、又はそれらの全長相補体を含むか、或いは配列番号2の約100個のヌクレオチドに少なくとも97%の同一性を有する核酸、そのRNA相当物、又はそれらの全長相補体を含み、
(B) 当該第一核酸と当該第二核酸との間のハイブリッド形成を許容し;そして
(C) 当該第一核酸へのハイブリッド形成の存在を検出する
を含む、方法である。
【0126】
[0178] 好ましくは、当該第一核酸は、配列番号2の少なくとも100個のヌクレオチド、そのRNA相当物、又はそれらの全長相補体を含む。
[0179] 好ましくは、当該第一核酸は、配列番号2の少なくとも150個のヌクレオチド、そのRNA相当物、又はそれらの全長相補体を含む。
[0180] 好ましくは、当該第一核酸は、配列番号2の少なくとも200個のヌクレオチド、そのRNA相当物、又はそれらの全長相補体を含む。
[0181] 好ましくは、当該第一核酸は、配列番号2の少なくとも250個のヌクレオチド、そのRNA相当物、又はそれらの全長相補体を含む。
[0182] 好ましくは、当該第一核酸は、配列番号2の少なくとも300個のヌクレオチド、そのRNA相当物、又はそれらの全長相補体を含む。
【0127】
具体的実施態様
[0183] 1. β-アミノ酸又はその塩の立体選択的合成方法であって、当該方法が、β-アミノ酸トランスアミナーゼの存在下でアミノ・ドナーとアミノ・アクセプターを接触させて、当該アミノ・アクセプターからβ-アミノ酸鏡像異性体又はその塩を形成することを含む、前記合成方法。
[0184] 2. 前記アミノ・アクセプターがβ-ケト酸である、実施態様1に記載の方法。
[0185] 3. 前記アミノ・ドナーがα-アミノ酸である、実施態様1に記載の方法。
[0186] 4. 前記D-β-アミノ酸又はL-β-アミノ酸 対 対応するL-アミノ酸又はD-β-アミノ酸のモル比が、1:1を超える、実施態様1に記載の方法。
[0187] 5. 前記モル比が3:1を超える、実施態様4に記載の方法。
[0188] 6. 前記モル比が10:1を超える、実施態様5に記載の方法。
[0189] 7. 前記β-アミノ酸を回収することをさらに含む、実施態様1に記載の方法。
[0190] 8. 前記接触が、前記β-トランスアミナーゼを含む微生物の全細胞の存在下で行われる、実施態様1に記載の方法。
[0191] 9. 前記接触が、β-トランスアミナーゼを含む微生物の膜透過細胞の存在下において行われる、実施態様1に記載の方法。
[0192] 10. 前記接触が、β-トランスアミナーゼの無細胞調製品の存在下で行われる、実施態様1に記載の方法。
【0128】
[0193] 11. 前記β-トランスアミナーゼが、支持体上に固定される、実施態様1に記載の方法。
[0194] 12. 前記接触が、水性条件において行われる、実施態様1に記載の方法。
[0195] 13. 前記接触が、有機共溶媒の存在下で行われる、実施態様1に記載の方法。
[0196] 14. 前記有機共溶媒が、アルコール、ケトン、エーテル、エステル、ニトリル、及び炭化水素からなる群から選ばれる、実施態様13に記載の方法。
[0197] 15. 前記有機共溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、ジエチル・エーテル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、メチル・t-ブチル・エーテル、フタル酸ジオクチル、トルエン、ジアルキル・エーテル、及びジフェニル・エーテルからなる群から選ばれる、実施態様13に記載の方法。
【0129】
[0198] 16. 前記有機共溶媒が、0%〜100%(v/v)の量で存在する、実施態様15に記載の方法。
[0199] 17. 前記有機共溶媒が、0%〜30%(v/v)の量で存在する、実施太陽16に記載の方法。
[0200] 18. 前記有機共溶媒が、約5%(v/v)の量で存在する、実施態様17に記載の方法。
[0201] 19. 前記有機共溶媒が水混和性である、実施態様1に記載の方法。
[0202] 20. 前記有機共溶媒が水不混和性である、実施態様1に記載の方法。
【0130】
[0203] 21. β-アミノ酸トランスアミナーゼの存在下でアミノ・ドナーとアミノ・アクセプターを接触させることにより製造される当該アミノ・ドナーの対応するケト形態を、β-トランスアミナーゼと反応しない化合物を製造するために適した条件下で反応することをさらに含む、実施態様1に記載の方法。
[0204] 22. 当該アミノ・ドナーのケト形態がアルファ・ケト酸である、実施態様21に記載の方法。
[0205] 23. 前記アミノ・ドナーがグルタメートであり、そして当該アミノ・ドナーのケト形態がα-ケト・グルタレートである、実施態様22に記載の方法。
[0206] 24. 前記アミノ・ドナーがグルタメートであり、当該アミノ・ドナーのケト形態がα-ケト・グルタレートであり、そして前記反応がasp-オキサロ酢酸トランスアミナーゼ及びオキサロ酢酸デカルボキシラーゼの存在下で行われる、実施態様23に記載の方法。
[0207] 25. 前記アミノ・ドナーのケト形態が、ピルビン酸である、実施態様21に記載の方法。
【0131】
[0208] 26. 前記アミノ・ドナーがL-アラニンであり、当該アミノ・ドナーのケト形態がピルビン酸であり、そして前記反応が、ピルベート・デカルボキシラーゼの存在下で行われる、実施態様25に記載の方法。
[0209] 27. 前記β-アミノ酸鏡像異性体が、D-β-アミノ酸鏡像異性体である、実施態様1に記載の方法。
[0210] 28. 前記β-アミノ酸鏡像異性体が、D-β-アミノ酸であり、そして前記トランスアミナーゼが、立体選択的D-β-トランスアミナーゼである、実施態様27に記載の方法。
[0211] 29. 前記トランスアミナーゼが、バリオボラックス、ノルカディア、コマモナス、ロドコッカス、及びシュードモナスからなる属から選ばれる微生物に由来する、実施態様28に記載の方法。
[0212] 30. 前記トランスアミナーゼが、バリオボラックス・パラドキサス、バリオボラックス・パラドキサスGC亜群A、ノルカディア・アステロイデス、コマモナス・テリゲーナ、シュードモナス・メンドシナ、コマモナス・アシドボランス、及びロドコッカス・オパクスからなる群から選ばれる微生物に由来する、実施態様29に記載の方法。
【0132】
[0213] 31. 前記トランスアミナーゼが、バリオボラックス、ノルカディア、コマモナス、ロドコッカス、及びシュードモナスからなる属から選ばれる微生物により産生される立体選択的D-β-トランスアミナーゼに実質的に同一である、実施態様28に記載の方法。
[0214] 32. 前記トランスアミナーゼが、バリオボラックス・パラドキサス、バリオボラックス・パラドキサスGC亜群A、ノルカディア・アステロイデス、コマモナス・テリゲーナ、シュードモナス・メンドシナ、コマモナス・アシドボランス、及びロドコッカス・オパクスからなる群から選ばれる微生物により産生される立体選択的D-β-トランスアミナーゼに実質的に同一である、実施態様31に記載の方法。
[0215] 33. 前記トランスアミナーゼが、バリオボラックス、ノルカディア、コマモナス、ロドコッカス、及びシュードモナスからなる属から選ばれる微生物により産生される立体選択的D-β-トランスアミナーゼのアミノ酸配列に少なくとも30%同一である、実施態様28に記載の方法。
[0216] 34. 前記トランスアミナーゼが、バリオボラックス・パラドキサス、バリオボラックス・パラドキサスGC亜群A、ノルカディア・アステロイデス、コマモナス・テリゲーナ、シュードモナス・メンドシナ、コマモナス・アシドボランス、及びロドコッカス・オパクスからなる群から選ばれる微生物により産生される立体選択的D-β-トランスアミナーゼのアミノ酸配列に少なくとも80%同一である、実施態様33に記載の方法。
【0133】
[0217] 35. 前記β-アミノ酸鏡像異性体が、L-β-アミノ酸鏡像異性体である、実施態様1に記載の方法。
[0218] 36. L-β-アミノ酸が立体選択的L-β-トランスアミナーゼの存在下において合成される、実施態様35に記載の方法。
[0219] 37. 前記トランスアミナーゼが、アルカリゲネス属の微生物に由来する、実施態様36に記載の方法。
[0220] 38. 前記トランスアミナーゼが、アルカリゲネス・ユートロフスにより産生される、実施態様37に記載の方法。
[0221] 39. 前記トランスアミナーゼが、アルカリゲネス属の微生物により産生される立体選択的L-β-トランスアミナーゼに実質的に同一である、実施態様36に記載の方法。
[0222] 40. 前記トランスアミナーゼが、アルカリゲネス・ユートロフスにより産生される立体選択的L-β-トランスアミナーゼに実質的に同一である、実施態様39に記載の方法。
【0134】
[0223] 41. 前記トランスアミナーゼが、アルカリゲネス属の微生物により産生される立体選択的L-β-トランスアミナーゼのアミノ酸配列に対して少なくとも80%同一である、実施様態36に記載の方法。
[0224] 42. 前記トランスアミナーゼが、アルカリゲネス・ユートロフスにより産生される立体選択的L-β-トランスアミナーゼのアミノ酸配列に対して少なくとも80%同一である、実施態様41に記載の方法。
[0225] 43. 前記β-アミノ酸鏡像異性体が、立体選択的D-β-トランスアミナーゼの存在下において合成されるD-β-アミノ酸鏡像異性体であり、ここで当該トランスアミナーゼが、配列番号1に記載される16S rRNA配列と1500ヌクレオチドにわたり少なくとも97%の同一性を有する微生物に由来する、実施態様1に記載の方法。
[0226] 44. 前記β-アミノ酸鏡像異性体が、立体選択的D-β-トランスアミナーゼの存在下において合成されるD-β-アミノ酸鏡像異性体であり、ここで当該トランスアミナーゼが、配列番号2に記載される16S rRNA配列と1500ヌクレオチドにわたり少なくとも97%の同一性を有する微生物に由来する、実施態様1に記載の方法。
[0227] 45. 前記β-アミノ酸が、以下の式I:
【化12】

で表される化合物であり、そして前記アミノ・アクセプターが以下の式II:
【化13】

[両式中、
1、R2、及びR3は、水素、C1-8アルキル、C2-8アルケニル、C2-8アルキニル、C3-12シクロアルキル、C6-12アリール、C3-12ヘテロシクリル、C6-12アリール-C1-8アルキル、及びC3-12ヘテロシクリル-C1-8アルキル・ラジカルからなる群から独立して選ばれ;
ここで当該ラジカルの全てが、水酸基、低級アルコキシ、低級アルキル、ハロゲン、ニトロ、カルボキシル、トリフルオロメチル、アミノ、アシルオキシ、フェニル、ベンジル、ナフチル、キノリン、イソキノリン(これらは場合により水素、ニトロ、チオ、低級アルコキシ、及び低級アルキルで場合により置換される)で場合により置換され;
但しR1、R2、及びR3の全てが、Hであることはなく;そして
4は、水酸基、O-、及び-OM(基中、Mはカチオンである)を含む]
で表される化合物である、実施態様1に記載の方法。
[0228] 46. Mがアルカリ金属カチオン及びNH4+からなる群から選ばれる、実施態様45に記載の方法。
[0229] 47. MがNa+、K+、及びNH4+からなる群から選ばれる、実施態様46に記載の方法。
[0230] 48. R1、R2、及びR3が、水素、C1-8アルキル、C2-8アルケニル、C2-8アルキニル、C6-12アリール、及びC6-12アリール-C1-8 アルキル、ラジカルからなる群から選ばれ;
ここで当該ラジカルの全てが、水酸基、低級アルコキシ、低級アルキル、ハロゲン、ニトロ、カルボキシル、トリフルオロメチル、アミノ、アシルオキシ、フェニル、ベンジル、ナフチル、キノリン、イソキノリン(これらは場合によりハロゲン、ニトロ、チオ、低級アルコキシ、及び低級アルキル・ラジカルで置換される)で場合により置換される、
実施態様45に記載の方法。
[0231] 49. R1、R2、及びR3が、水素、C6-12アリール、及びC6-12 アリール-C1-8アルキル、ラジカルからなる群から独立して選ばれ;
ここで、当該ラジカルの全てが、水酸基、低級アルコキシ、低級アルキル、ハロゲン、ニトロ、カルボキシル、トリフルオロメチル、アミノ、アシルオキシ、フェニル、ベンジル、ナフチル、キノリン、イソキノリン(これらは場合によりハロゲン、ニトロ、チオ、低級アルコキシ、及び低級アルキル・ラジカルで置換される)で場合により置換される、実施態様48に記載の方法。
[0232] 50. R1、R2、及びR3は、水素、C1-8アルキル、C2-8アルケニル、及びC2-8アルキニル、ラジカルからなる群から選ばれ;
ここで、当該ラジカルの全ては、水酸基、低級アルコキシ、低級アルキル、ハロゲン、ニトロ、カルボキシル、トリフルオロメチル、アミノ、アシルオキシ、フェニル、ベンジル、ナフチル、キノリン、イソキノリン(これらは、場合によりハロゲン、ニトロ、チオ、低級アルコキシ、及び低級アルキル・ラジカルで置換される)で場合により置換される、実施態様48に記載の方法。
【0135】
[0233] 51. R2又はR3がOHであるが、両方がOHであることはない、実施態様48に記載の方法。
[0234] 52. R2又はR3がHであるが、両方がHであることはない、実施態様48に記載の方法。
[0235] 53. R2及びR3が両方ともHである、実施態様48に記載の方法。
[0236] 54. R1がC6-12アリール及びC6-12アリール-C1-8アルキル・ラジカルからなる群から選ばれ、これらが場合によりハロゲン、ニトロ、チオ、低級アルコキシ、及び低級アルキル・ラジカルで置換される、実施態様53に記載の方法。
[0237] 55. R1がフェニルである、実施態様54に記載の方法。
【0136】
[0238] 56. β-アミノ酸、その塩の立体選択的合成方法であって、当該方法がβ-アミノ酸トランスアミナーゼの存在下でアミノ・ドナーとアミノ・アクセプターを接触して、当該アミノ・アクセプターから立体選択的にβ-アミノ酸鏡像異性体又はその塩を形成することを含み、
ここで当該β-アミノ酸又はその塩が、以下の式III:
【化14】

で表される化合物であり、そして当該アミノ・アクセプターが以下の式IV:
【化15】

[両式中、R4は、水酸基、O-、及び-OM(基中、Mはカチオンである)を含む]
の化合物である、前記方法。
[0239] 57. 前記β-アミノ酸が、D-β-フェニルアラニン及びL-β-フェニルアラニンからなる群から選ばれる、実施態様56に記載の方法。
[0240] 58. 前記アミノ・アクセプターが、β-ケト酸及びインサイチュでβ-ケト酸に変換される化合物からなる群から選ばれる、実施態様56に記載の方法。
[0241] 59. 前記アミノ・ドナーが、以下の:
D-グルタミン酸、L-グルタミン酸、D,L-グルタミン酸、
D-アスパラギン酸、L-アスパラギン酸、D,L-アスパラギン酸、
D-アラニン、L-アラニン、及びD,L-アラニン、
3-アミノアジピン酸、及び
2-アミノアジピン酸
からなる群から選ばれる、実施態様56に記載の方法。
[0242] 60. 前記アミノ・ドナーが、以下の:
D-グルタミン酸、L-グルタミン酸、D,L-グルタミン酸、
D-アスパラギン酸、L-アスパラギン酸、及びD,L-アスパラギン酸
からなる群から選ばれる、実施態様59に記載の方法。
【0137】
[0243] 61. D-β-アミノ酸鏡像異性体及びその対応するL-β-アミノ酸鏡像異性体を含む混合体を鏡像異性的に濃縮する方法であって、当該方法が、当該L-β-アミノ酸鏡像異性体を、立体選択的L-β-トランスアミナーゼの存在下でアミノ・アクセプターと接触して、L-β-アミノ酸鏡像異性体の少なくとも一部を対応するβ-ケト酸に変換し、それにより濃縮された混合体において、当該D-β-アミノ酸鏡像異性体 対 当該L-β-アミノ酸鏡像異性体のモル比を増大することを含む、前記方法。
[0244] 62. 前記濃縮混合体におけるD-β-アミノ酸鏡像異性体 対 L-β-アミノ酸鏡像異性体のモル比が、1:1を超える、実施態様61に記載の方法。
[0245] 63. 前記濃縮混合体におけるD-β-アミノ酸鏡像異性体 対 L-β-アミノ酸鏡像異性体のモル比が、3:1を超える、実施態様62に記載の方法。
[0246] 64. 前記濃縮混合体におけるD-β-アミノ酸鏡像異性体 対 L-β-アミノ酸鏡像異性体のモル比が、10:1を超える、実施態様63に記載の方法。
[0247] 65. L-β-アミノ酸鏡像異性体及びその対応するD-β-アミノ酸鏡像異性体を含む混合体を立体異性的に濃縮する方法であって、当該方法が、立体選択的D-β-トランスアミナーゼの存在下で当該D-β-アミノ酸鏡像異性体をアミノ・アクセプターと接触させて、D-β-アミノ酸鏡像異性体の少なくとも一部を対応するβ-ケト酸に変換し、それにより濃縮混合体において、当該L-β-アミノ酸鏡像異性体 対 当該D-β-アミノ酸鏡像異性体のモル比を増大することを含む、前記方法。
【0138】
[0248] 66. 前記濃縮混合体におけるL-β-アミノ酸鏡像異性体 対 D-β-アミノ酸鏡像異性体のモル比が、1:1を超える、実施態様65に記載の方法。
[0249] 67. 前記濃縮混合体におけるL-β-アミノ酸鏡像異性体 対 D-β-アミノ酸鏡像異性体のモル比が、3:1を超える、実施態様66に記載の方法。
[0250] 68. 前記濃縮混合体におけるL-β-アミノ酸鏡像異性体 対 D-β-アミノ酸鏡像異性体のモル比が、10:1を超える、実施態様67に記載の方法。
【0139】
[0251] 69. 鏡像異性的に濃縮されたβ-アミノ酸又はその塩を鏡像異性的に濃縮する方法であって、当該方法が、
ラセミ体のβ-アミノ酸の1の鏡像異性体をその対応するβ-ケト酸誘導体に変換し、それにより当該β-アミノ酸の反対の鏡像異性体が、鏡像異性的に濃縮された形態で実質的に保持される条件下で、
以下の式I:
【化16】

[式中、R1、R2、及びR3は、水素、C1-8アルキル、C2-8アルケニル、C2-8アルキニル、C3-12シクロアルキル、C6-12アリール、C3-12ヘテロシクリル、C6-12アリール-C1-8アルキル、及びC3-12ヘテロシクリル-C1-8アルキル・ラジカルからなる群から独立して選ばれ;
ここで当該ラジカルの全ては、水酸基、低級アルコキシ、低級アルキル、ハロゲン、ニトロ、カルボキシル、トリフルオロメチル、アミノ、アシルオキシ、フェニル、ベンジル、ナフチル、キノリン、イソキノリン(これらは、場合によりハロゲン、ニトロ、チオ、低級アルコキシ、及び低級アルキルで場合により置換される)で場合により置換され;
ただしR1、R2、及びR3は、全てがHであることはなく;そして
4は、水酸基、O-、及び-OM(ここでMはカチオンである)を含む]
の構造を有するラセミ性β-アミノ酸又はその塩;
アミノ・アクセプター;及び
構造特異的β-アミノ酸トランスアミナーゼと接触させ、そして
当該保持されたβ-アミノ酸から当該β-ケト酸誘導体を分離することを含む、前記方法。
【0140】
[0252] 70. バリオボラックス、ノルカディア、コマモナス、ロドコッカス、及びシュードモナスからなる群から選ばれる微生物に由来する精製された立体選択的β-トランスアミナーゼ。
[0253] 71. バリオボラックス・パラドキサス、バリオボラックス・パラドキサスGC亜群A、ノルカディア・アステロイデス、コマモナス・テリゲーナ、シュードモナス・メンドシナ、コマモナス・アシドボランス、及びロドコッカス・オパクスからなる群から選ばれる微生物に由来する、実施態様70に記載の精製された立体選択的D-β-トランスアミナーゼ。
[0254] 72. 前記微生物の16S rDNAの配列は、配列番号1に記載される16S rDNAの配列と1500ヌクレオチドに渡って少なくとも97%の同一性を有する、実施態様71に記載の精製された立体選択的D-β-トランスアミナーゼ。
[0255] 73. バリオボラックス・パラドキサスに由来する、実施態様71に記載の精製された立体選択的D-β-トランスアミナーゼ。
[0256] 74. 前記微生物の16S rDNAの配列が配列番号1を含む、バリオボラックス・パラドキサスに由来する実施態様73に記載の精製された立体選択的D-β-トランスアミナーゼ。
[0257] 75. 前記微生物の16S rDNAの配列が配列番号1からなる、バリオボラックス・パラドキサスに由来する実施態様73に記載の精製され立体選択的D-β-トランスアミナーゼ。
【0141】
[0258] 76. 前記微生物の16S rDNAの配列が、配列番号2に記載される16S rDNAの配列と1500ヌクレオチドに渡って少なくとも97%の同一性を有する、実施態様71に記載の精製された立体選択的D-β-トランスアミナーゼ。
[0259] 77. ロドコッカス・オパクスに由来する実施態様71に記載の精製された立体選択的D-β-トランスアミナーゼ。
[0260] 78. 前記微生物の16S rDNAの配列が、配列番号2を含む、ロドコッカス・オパクスに由来する、実施態様77に記載の精製された立体選択的D-β-トランスアミナーゼ。
[0261] 79. 前記微生物の16S rDNAの配列が、配列番号2からなる、ロドコッカス・オパクスに由来する、実施態様77に記載の精製された立体選択的D-β-トランスアミナーゼ。
[0262] 80. アルカリゲネス属の微生物に由来する、精製された立体選択的L-β-トランスアミナーゼ。
【0142】
[0263] 81. アルカリゲネス・ユートロフスに由来する、実施態様80に記載の精製された立体選択的L-β-トランスアミナーゼ。
[0264] 82. 前記立体特異的β-トランスアミナーゼを含む細胞ホモジェネートから立体特異的β-トランスアミナーゼを精製する方法であって、当該方法が、当該細胞ホモジェネートを沈殿剤と接触させて、立体特異的β-トランスアミナーゼを含む沈殿を生成することを含む、前記方法。
[0265] 83. 前記沈殿剤が、硫酸アンモニウムである、実施態様82に記載の方法。
[0266] 84. 前記沈殿が、クロマトグラフィーによりさらに精製される、実施態様82に記載の方法。
【0143】
[0267] 85. 前記沈殿が、疎水性相互作用クロマトグラフィーによりさらに精製される、実施態様82に記載の方法。
[0268] 86. 前記疎水性相互作用クロマトグラフィーが、ブチル・セファロースFFレジンで行われる、実施態様85に記載の方法。
[0269] 87. 前記沈殿が、サイズ排除クロマトグラフィーによりさらに精製される、実施態様82に記載の方法。
[0270] 88. 前記サイズ排除クロマトグラフィーが、TSK G300SWレジンで行われる、実施態様97に記載の方法。
[0271] 89. 前記沈殿が、疎水性相互作用クロマトグラフィー及びサイズ排除クロマトグラフィーによりさらに精製される、実施態様82に記載の方法。
【0144】
[0272] 90. 前記疎水性相互作用クロマトグラフィーが、ブチル・セファロースFFレジンで行われ、そして前記サイズ排除クロマトグラフィーが、TSK G300SWレジンで行われる、実施態様89に記載の方法。
【0145】
[0273] 91. 前記細胞ホモジェネートが、バリオボラックス、ノルカディア、コマモナス、ロドコッカス、及びシュードモナスからなる群から選ばれる微生物から得られる、実施態様82に記載の方法により製造される立体選択的D-β-トランスアミナーゼ。
[0274] 92. 前記細胞ホモジェネートが、バリオボラックス・パラドキサス、バリオボラックス・パラドキサスGC亜群A、ノルカディア・アステロイデス、コマモナス・テリゲーナ、シュードモナス・メンドシナ、コマモナス・アシドボランス、及びロドコッカス・オパクスからなる群から選ばれる微生物から得られる、実施態様91に記載の方法により製造される立体選択的D-β-トランスアミナーゼ。
[0275] 93. 前記細胞ホモジェネートが、バリオボラックス・パラドキサスから得られる、実施態様92に記載の方法により製造される立体選択的D-β-トランスアミナーゼ。
[0276] 94. 前記微生物の16S rDNAが、配列番号1を含む、バリオボラックス・パラドキサスにより産生される実施態様93に記載の立体選択的D-β-トランスアミナーゼ。
[0277] 95. 前記微生物の16S rDNAが、配列番号1からなる、バリオボラックス・パラドキサスにより産生される実施態様93に記載の立体選択的D-β-トランスアミナーゼ。
【0146】
[0278] 96. 前記細胞ホモジェネートが、ロドコッカス・オパクスから得られる、実施態様92に記載の方法により製造される立体選択的D-β-トランスアミナーゼ。
[0279] 97. 前記微生物の16S rDNAが、配列番号2を含む、ロドコッカス・オパクスにより産生される実施態様96に記載の立体選択的D-β-トランスアミナーゼ。
[0280] 98. 前記微生物の16S rDNAが、配列番号2からなる、ロドコッカス・オパクスにより産生される実施態様96に記載の立体選択的D-β-トランスアミナーゼ。
[0281] 99. 前記細胞ホモジェネートが、アルカリゲネス属の微生物から得られる、実施態様82に記載の方法により製造される立体選択的L-β-トランスアミナーゼ。
[0282] 100. 前記微生物がアルカリゲネス・ユートロフスである、実施態様99に記載の方法により製造される立体選択的L-β-トランスアミナーゼ。
【0147】
[0283] 101. 45〜55kDaのサブユニット分子量を有する、実施態様82の方法により製造されるβ-トランスアミナーゼ。
[0284] 102. 立体特異的β-トランスアミナーゼを含む組成物から、立体特異的β-トランスアミナーゼを精製する方法であって、当該方法が以下のステップ:
疎水性相互作用物質上に立体特異的β-トランスアミナーゼを吸着させ、そして
溶出緩衝液を使用して、疎水性相互作用物質から当該立体特異的β-トランスアミナーゼを溶出する
を含む、前記方法。
[0285] 103. 立体特異的β-トランスアミナーゼを含む組成物から、立体特異的β-トランスアミナーゼを精製する方法であって、当該方法が以下のステップ:
サイズ排除物質上に立体特異的β-トランスアミナーゼを吸着し、そして
溶出緩衝液を使用して、当該サイズ排除物質から当該立体特異的β-トランスアミナーゼを溶出する
を含む、前記方法。
[0286] 104. β-トランスアミナーゼを発現する1以上の微生物について、微生物の個体数を増大させる方法であって、当該方法は、β-アミノ酸又はその塩を選択的窒素源として含むカルチャー培地中で微生物の個体数を増大させることを含む、前記方法。
[0287] 105. 前記β-トランスアミナーゼが、立体特異的β-トランスアミナーゼである、実施態様104に記載の方法。
【0148】
[0288] 106. 前記立体特異的β-トランスアミナーゼが、D-β-トランスアミナーゼである、実施態様105に記載の方法。
[0289] 107. 前記立体特異的β-トランスアミナーゼが、L-β-トランスアミナーゼである、実施態様105に記載の方法。
[0290] 108. 前記β-アミノ酸が、D-β-アミノ酸、L-β-アミノ酸、又はそれらの混合体からなる群から選ばれる、実施態様104に記載の方法。
[0291] 109. 前記β-アミノ酸が、D-β-フェニルアラニン及びL-βフェニルアラニン、又はそれらの混合体からなる群から選ばれる、実施態様108に記載の方法。
【0149】
[0292] 110. 前記カルチャー培地が、無機塩、炭素源、及び窒素源を含み、ここで前記β-アミノ酸又はその塩が、選択的濃縮に使用される窒素源である、実施態様104に記載の方法。
[0293] 111. 前記カルチャー培地が、無機塩、炭素源、及び窒素源を含み、ここで前記β-アミノ酸又はその塩が、窒素源及び炭素源である、実施態様104に記載の方法。
[0294] 112. 前記微生物の個体が、土壌から収集される、実施態様104に記載の方法。
[0295] 113. バリオボラックス・パラドキサスを含む精製されたカルチャーであって、当該バリオボラックス・パラドキサスの16S rDNAの配列が、配列番号1を含む、前記カルチャー。
[0296] 114. ロドコッカス・オパクスを含む精製されたカルチャーであって、当該ロドコッカス・オパクスの16S rDNAの配列が、配列番号2を含む、前記カルチャー。
[0297] 115. 配列番号1に記載される16S rDNA配列を含む精製された核酸、又はその相補体。
【0150】
[0298] 116. 実施態様115のRNA相当物を含む、精製された核酸。
[0299] 117. 実施態様115に記載の核酸に高度に厳密な条件下で特異的にハイブリッド形成する核酸。
[0300] 118. 配列番号1に記載される16S rDNA配列の断片を含む核酸断片、又はその相補体であって、300〜1500ヌクレオチド長を有するもの。
[0301] 119.実施態様118のRNA相当物を含む精製された核酸。
[0302] 120. 高度に厳密な条件下で、実施態様118に記載の核酸に特異的にハイブリッド形成する核酸。
【0151】
[0303] 121. 配列番号2に記載される16S rDNA配列を含む精製された核酸、又はその相補体。
[0304] 122. 実施態様121に記載のRNA相当物を含む、精製された核酸。
[0305] 123. 高度に厳密な条件下で、実施態様121に記載の核酸に特異的にハイブリッド形成する核酸。
[0306] 124. 配列番号2に記載される16S rDNA配列の断片を含む核酸断片、又はその相補体であって、300〜1500ヌクレオチド長を有するもの。
[0307] 125. 実施態様124に記載のRNA相当物を含む、精製された核酸。
【0152】
[0308] 126. 高度に厳密な条件下で、実施態様124に記載の核酸に特異的にハイブリッド形成する核酸。
[0309] 127. 以下の:
第一核酸を、細胞から得られるか又は細胞に由来する第二核酸とインキュベーションし、ここで当該第一核酸が配列番号1の少なくとも50個のヌクレオチド、そのRNA相当物、又はそれらの全長相補体を含むか、或いは配列番号1の約100個のヌクレオチドに少なくとも97%同一性を有する核酸、そのRNA相当物、又はそれらの全長相補体を含み、
当該第一核酸と当該第二核酸との間のハイブリッド形成を許容し、そして
当該第一核酸に対するハイブリッド形成の存在を検出する
を含む、核酸の検出方法。
[0310] 128. 前記第一核酸が、配列番号1の少なくとも100個のヌクレオチド、そのRNA相当物、又はそれらの全長相補体を含む、実施態様127に記載の方法。
[0311] 129. 前記第一核酸が、配列番号1の少なくとも150個のヌクレオチド、そのRNA相当物、又はそれらの全長相補体を含む、実施態様127に記載の方法。
【0153】
[0312] 130. 前記第一核酸が、配列番号1の少なくとも200個のヌクレオチド、そのRNA相当物、又はそれらの全長相補体を含む、実施態様127に記載の方法。
[0313] 131. 前記第一核酸が、配列番号1の少なくとも250個のヌクレオチド、そのRNA相当物、又はそれらの全長相補体を含む、実施態様127に記載の方法。
[0314] 132. 前記第一核酸が、配列番号1の少なくとも300個のヌクレオチド、そのRNA相当物、又はそれらの全長相補体を含む、実施態様127に記載の方法。
[0315] 133. 以下の:
第一核酸を、細胞から得られるか又は細胞に由来する第二核酸とインキュベーションし、ここで当該第一核酸が配列番号2の少なくとも50個のヌクレオチド、そのRNA相当物、又はそれらの全長相補体を含むか、或いは配列番号2の約100個のヌクレオチドに少なくとも97%同一性を有する核酸、そのRNA相当物、又はそれらの全長相補体を含み、
当該第一核酸と当該第二核酸との間のハイブリッド形成を許容し、そして
当該第一核酸に対するハイブリッド形成の存在を検出する
を含む、核酸の検出方法。
[0316] 134. 前記第一核酸が、配列番号2の少なくとも100個のヌクレオチド、そのRNA相当物、又はそれらの全長相補体を含む、実施態様133に記載の方法。
[0317] 135. 前記第一核酸が、配列番号2の少なくとも150個のヌクレオチド、そのRNA相当物、又はそれらの全長相補体を含む、実施態様133に記載の方法。
[0318] 136. 前記第一核酸が、配列番号2の少なくとも200個のヌクレオチド、そのRNA相当物、又はそれらの全長相補体を含む、実施態様133に記載の方法。
[0319] 137. 前記第一核酸が、配列番号2の少なくとも250個のヌクレオチド、そのRNA相当物、又はそれらの全長相補体を含む、実施態様133に記載の方法。
[0320] 138. 前記第一核酸が、配列番号2の少なくとも300個のヌクレオチド、そのRNA相当物、又はそれらの全長相補体を含む、実施態様133に記載の方法。
【0154】
一般的な材料と方法
[0321] ラセミ体のβ-フェニルアラニンは、Aldrich Chemical Companyから購入した。ピルビン酸ナトリウム及びα-ケトグルタレートはSigma Chemical Company(St. Louis, MO)から購入した。鏡像異性的に純粋であるL-又は(R)-3-アミノフェニルプロピオン酸、D-又は(S)-3-アミノ-3-フェニルプロピオン酸、D-又は(R)-3-アミノ-5-フェニル-ペンタン酸、及びL-又は(S)-3-アミノ-5-フェニル-ペンタン酸は、PepTech Corporation (Cambridge, MA)から購入した。D-又は(R)-2フェニルグリシン及びL-又は(S)-2-フェニルグリシンをSigmaから購入した。バクト・アガー及び乾燥培地をDifcoから購入した。タンパク質測定用のブラッドフォード試薬及びウシ血清アルブミン溶液をSigmaから購入した。他の全ての試薬は、分析品質であった。
[0322] ほかに記載がない限り、全てのパーツは重量により計量され、そして温度は摂氏(℃)である。
【0155】
微生物
[0323] 当該研究において特徴づけられる微生物は、以下に記載される選択的濃縮により環境サンプルから単離された。
【0156】
カルチャー培地
[0324] 濃縮培養をスレーターの濃縮培地(Slaterら、1979)で行った。当該培地は、1.5g/LのK2HPO4、0.5g/LのKH2PO4、0.5g/Lの(NH4)2SO4、0.2g/LのMgSO4・7H2O、及びMilli-Q(商標)H2O(Milli-Qは、Millipore Corporationの純水システムについての商標である)に溶解した10.0mlのトレース溶液、pH7.0で構成される。トレース溶液は、12.0g/LのNa2EDTA-2H2O、2.0g/LのFeSO4・7H2O、1.0g/LのCaCl2、10.0g/LのNa2SO4、0.4g/LのZnSO4・7H2O、0.4g/LのMnSO4・4H2O、0.1g/LのCuSO4・5H2O、0.1g/LのNa2MoO4・2H2O、及び0.5ml・H2SO4を含むMilli-Q(商標)H2Oで構成される。全ての炭素源及び窒素源が1g/Lになるように0.22μMろ過されたストック溶液を加えた。固体培地は、同じ内容で20g/LのDifco Bacto Noble Agarを加えてなった。
【0157】
[0325] 酵素活性スクリーニングに使用されるカルチャーを、2g/Lで加えられたD,L-β-フェニルアラニンを有するMSB培地(Stanierら、1957)中で成長させた。MSB中で成長できない単離株を、2g/LのDL-β-フェニルアラニンを含む栄養倍地中で成長させた。MSB培地は、40ml/l溶液A、20ml/l溶液B、5ml/l溶液Cを含むMilli-Q(商標)H2Oで構成された。培地のpHは、7.2であった。炭素源を、滅菌溶液から加えた。溶液Aは、141.2g/LのNa2HPO4、及び136.0g/LのKH2PO4を含むMilliQ・H2Oで構成された。溶液Bは、10g/Lのニトリロトリ酢酸、29.3g/LのMgSO4-7H2O、3.33g/LのCaCl2-2H2O、0.00925g/L(NH4)6Mo724・4H2O、0.099g/LのFeSO4・7H2O、50ml/Lのメタル44(Metals 44)溶液と数滴のH2SO4を含むMilli-Q(商標)H2Oで構成される。溶液Cは、60gの(NH4)2SO4を含む0.3LのMilliQ・H2Oで構成される。メタル44溶液は、0.25gのEDTA、0.1095gのZnSO4・7H2O、0.154gのMnSO4・H2O、0.5gのFeSO4-7H2O、0.0392gのCuSO4・5H2O、0.0248gのCo(NO3)2・6H2O、0.0177gのNa247・10H2O、2滴のH2SO4を含む100mlのMilliQ・H2Oで構成される。
【0158】
[0326] 栄養培地をディフコのバクト栄養ブロス(Difco Bacto Nutrient Broth)又はディフコのバクト栄養アガー(Difco Bacto Nutrient Agar)から、製造元により記載される通りに調製した。酵母-モルト培地を、液体培地用にディフコのバクトYMブロス(Difco Bacto YM Broth)から調製するか、又は固体培地用に20g/Lのディフコ・バクト・アガー(Difco Bacto Agar)で調製した。
【0159】
[0327] タンパク質精製研究用の細胞集団の製造において使用されるスケール・アップ条件は、種々の添加物を加えたMSB培地中におけるフラスコ振盪研究から決定された。最終的に、10リットルの発酵についての条件は、30℃で、pH7.0、400rpmの攪拌であり、溶解された酸素は100%に設定され、そして30%超に維持され、500mBの圧力で、1〜2g/Lの間にグルコースが制御され、そして典型的には125mg(R,S)-β-フェニルアラニンが発酵時間10時間経過毎に加えられた。バッチ条件は、5.65g/LのK2HPO4、5.44g/LのKH2PO4、2g/LのDL-β-フェニルアラニン、5g/Lの酵母抽出物、10mLのUCON・LB625の消泡剤を含む。121℃で滅菌後、30分間冷却し、10mlのSR-005・10%微量金属溶液、10mlのSR-001(4.0mg/ml)CaCl2溶液、10mlのSR-002(0.3g/ml)MgSO4溶液、及び10g/LのSR-008(50%)グルコース溶液を加えた。SR-005微量金属溶液は、0.5g/LのMnSO4・H2O、0.2g/LのH3BO3、0.8g/LのCuSO4・5H2O、0.7g/LのNa2MoO4・2H2O、0.7g/LのCoCl2・6H2O、0.4g/LのZnSO4・7H2O、37.8g/LのFeCl3・6H2O、3.4ml/LのH2SO4を含む1Lの蒸留H2Oで構成される。当該培地を9.5リットル含むタンクは、邪魔板のついた2.8lのファーンバッハ・フラスコ中で好気的に一晩増殖させた同様の培地の500mlの種培養を無菌的に移すことにより植菌された。
【0160】
分析方法
[0328] ブラッドフォード試薬を使用して、タンパク質の測定を行い、そしてウシ血清アルブミンタンパク質標準平均吸光度 対 濃度に基づいて評価された。吸光度の読み取りを、10×4×45mmプラスチック製Sarstedtキュベットを使用して、Hewlett Packard 8453 分光光度計で行った。Sigmaにより提供される手順に正確に従った。
【0161】
[0329] 逆相HPLC分析を、VYDAC 218TP C18、4.6×150mm カラム(The Separations Group, Hesperia, CA) を使用して、Hewlett Packard 1100 HPLCシステム上で行った。基質及び生成物の分離を、0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を含むHPLC品質の10%メタノール及び0.1%トリフルオロ酢酸を含む90%MilliQ H2Oの定組成溶離を使用して行われた。40%メタノール/0.1%トリフルオロ酢酸及び60%MilliQ H2O/0.1%トリフルオロ酢酸への直線勾配を5分間続けた。40%メタノール/0.1%TFA及び60%MilliQH2O/0.1%トリフルオロ酢酸の定組成溶離を14分間続けた。β-フェニルアラニン及び3-ケト-3-フェニルプロピオン酸は、それぞれ4分及び7.5分であった。UV検出は、254nMで行われた。
【0162】
[0330] アミノ酸鏡像異性体のキラル分析は、(S,S)ウェルク(Whelk)-O1,4.6×250mmカラム(Retis, Morton Grove, IL)を使用して、Hewlett Packard 1100 HPLCシステム上で行われた。鏡像異性体の分離は、60%イソプロピル・アルコール溶出を使用して、定組成溶離を達成した。第一に、アミノ酸を2.52M・HClを含む無水エタノールで完全に反応することによりエステル化した。エステル溶液を次に乾燥するまで濃縮し、そして1-ナフトイル・クロリドで誘導体化した。ナフトイル化D-及びL-フェニルアラニン・エチル・エステルの保持時間は、それぞれ14.7分及び16.7分であった。UV検出を290nMで行った。
【0163】
[0331] キラル分析は、Hewlett Packard 1100 HPLCシステム上でEclipse XDB-C8 4.6×150 mmカラム(Agilent Technologies)を使用することにより行われた。サンプルを、マーフィー試薬(N-α(2,4-ジニトロ-5-フルオロフェニル)アラニンアミドを使用して誘導体化した。50%〜100%のメタノール勾配を使用して、ジアステレオマーを分離し、当該溶媒を0.1%トリフルオロ酢酸で酸性化した。検出を330nmで行った。
【0164】
[0332] 質量及び構造の確認は、LC/MS及びGC/MSにより、標準技術を使用して達成した。分析サービスセンター、Pfizer Corporatonが当該分析を行った。
【0165】
β-トランスアミナーゼ・アミノ化活性アッセイ
[0333] D-β-フェニルアラニンの産生をもたらすアミノ化活性は、以下のアッセイ・システム:100mMリン酸カリウム、3-ケト-3-フェニルプロピオネート(濃度を変化させる)、20mM・L-グルタミン酸、0.2mMリン酸ピリドキサール、100mM・L-アスバラギン酸、50Uオキサロ酢酸デカルボキシラーゼ、40〜50Uグルタミン酸-オキサロ酢酸トランスアミナーゼ、10mM・MgCl2、pH8.0中に、0.1〜0.3mg/mlのタンパク質を加えることによりアッセイした。当該アッセイは、37℃で攪拌しながら実行した。あらかじめ決められた時間点において、0.1mlのサンプルをとり、0.1mlの0.1N・HClを加え、そして酸性化されたサンプルを微小遠心機において最高スピードで3分間遠心した。当該上清溶液をHPLCサンプル・バイアル中に移した。3-ケト-3-フェニルプロピオネートのβ-フェニルアラニンへの変換を、逆相HPLCを使用して定量した。3-ケト-3-フェニルプロピオネートを、Rocheから購入したブタ肝臓エステラーゼ(Chirazyme E-2)を使用して、ベンゾイル酢酸エチルから製造した。酵素が3-ケト-3-フェニルプロピオン酸をアミノ基転移することにより得られるβ-フェニルアラニンは、分離及び検出後にHPLCから回収された。回収された体積を乾燥するまで蒸発した。これらの回収された分画を、本物の試料と並んで質量分析にかけ、そしてキラルHPLCを使用するキラル分析用に誘導体化した。図2は、立体特異的D-β-アミノ・トランスフェラーゼの存在下で3-ケト-3-フェニルプロピオン酸及びグルタメートからD-β-フェニルアラニンを生物触媒的に合成するための反応スキームを示す。
【0166】
[0334] L-β-フェニルアラニン産生に対するアミノ化活性を、0.1〜0.3mg/mlのタンパク質を以下のアッセイシステム:100mMリン酸カリウム、3-ケト-3-フェニルプロピオネート(濃度を変化させる)、20mM・L-アラニン、0.2mMリン酸ピリドキサール、50Uピルベートデカルボキシラーゼ、pH8.0に加えることにより評価した。当該アッセイを37℃で攪拌しながら実行した。あらかじめ決められた時間点において、0.1mlのサンプルをとり、0.1mlの0.1N・HClを加え、そして酸性化されたサンプルを、微小遠心において最大スピードで3分間遠心した。上清溶液をHPLCサンプルバイアル中に回収した。3-ケト-3-フェニルプロピオネートのβ-フェニルアラニンへの変換は、逆相HPLCを使用して定量した。3-ケト-3-フェニルプロピオネートを、ロシュから購入したブタ肝臓エステラーゼ(Chirazyme E-2)を使用して定量した。図3は、立体特異的L-β-アミノ・トランスフェラーゼの存在下で3-ケト-3-フェニルプロピオン酸及びL-アラニンから、L-β-フェニルアラニン及びピルベートの生物触媒性合成についての反応スキームを示す。
【0167】
[0335] 図4及び6は、本物のDL-β-フェニルアラニンから得た質量スペクトルデーターを示す。バリオボラックス・パラドキサス酵素を使用する酵素的アミノ基転移反応の分析からのHPLC分画を、回収し、そして乾燥するまで蒸発した。図5及び7は、これらのサンプルから得られた質量スペクトルデーターを表す。新たに単離された酵素を使用して生物酵素的に製造されたβ-フェニルアラニンは、本物のβ-フェニルアラニンに構造的に同一であるということが当該データーから明らかである。
【0168】
β-トランスアミナーゼ測定活性アッセイ
[0336] β-トランスアミナーゼ検出活性は、0.1〜0.3mg/mlタンパク質を、以下のアッセイシステム:100mM・リン酸カリウム、2mg/mlDL-β-フェニルアラニン、10mg/mlα-ケトグルタレート、又はピルビン酸、0.1mM・リン酸ピリドキサール、pH8.0中に加えることにより評価された。当該アッセイは、37℃で攪拌しながら実行した。前もって決められた時間点で、0.1mlサンプルをとり、0.1N・HClを加え、そして酸性化されたサンプルは、微小遠心において、最大のスピードで3分間遠心した・上清溶液をHPLCサンプル・バイアル中に移した。DL-β-フェニルアラニンの3-ケト-3-フェニルプロピオネートへの変換を、逆相HPLCを使用して定量した。
【0169】
核酸ハイブリッド形成
[0337] 本明細書中に使用されるとき、2個の分子が逆平行、二本鎖核酸構造を形成できるならば、2個の核酸分子は、特異的に互いにハイブリッド形成できると記載される。核酸分子は、完全な相補性を示す場合、他の核酸分子の「相補体」と記載される。本明細書中に使用されるとき、当該1の分子の全ヌクレオチドが、もう一方のヌクレオチドに相補的である場合、「完全な相補性」を示すと記載される。2個の分子は、少なくとも慣用の「低い厳密度」条件下で、互いにアニールされた状態で残ることを許容するために十分な安定性で互いにハイブリッド形成できる場合、「最小の相補性」であると呼ばれる。同様に、当該分子は、それらが慣用の「高度に厳密な」条件下で互いにアニールされた状態で残ることを許容する十分な安定性で互いにハイブリッド形成できる場合、「相補的」であるといわれる。慣用の厳密条件は、Sambrookら、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、第二版、Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (1989)、及びHaymesら、(Nucleic Acid Hybridization, A Practical Approach, IRL Press, Washington, DC, 1985)により記載される。完全な相補性からの逸脱は、そうした逸脱が、当該分子が二本鎖構造を形成する可能性を完全に妨げない限りは、それゆえ許容される。
【0170】
[0338] DNAハイブリッド形成を促進する適切な厳密条件、例えば約45℃にて6×クエン酸ナトリウム生理食塩水(SSC)、続いて50℃にて2×SSCでの洗浄は、当業者に周知であるか、又はCurrent Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons, N. Y. (1989), 6.3.1-6.3.6に見つけることができる。例えば、洗浄ステップにおける塩濃度は、50℃での約2×SSCのどちらかと言うと低い厳密度〜50℃での0.2×SSCの高い厳密度から選ばれうる。加えて、洗浄ステップにおける温度は、室温、約22度での低い厳密度条件から約65℃での高い厳密度条件まで増大されうる。温度と塩の両方が変えられてもよく、又は一方が変化する間、温度又は塩濃度のどちらかが一定に保たれることもある。対応する核酸の長さに依存して、低い、中間の、及び高度に厳密なRNA:DNA又はRNA:RNAハイブリッド形成反応を促進する条件はまた、当該技術分野に周知である。
【0171】
実施例
[0339] 以下の実施例は、本発明をかなり詳細に記載するが、本発明はこれらの特異的な実施例に限定されないということは理解されるであろう。様々なほかの例は、本開示を読んだ後に、本発明の精神と範囲から逸脱することなく当業者に明らかであろう。こうした他の例の全ては、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれるということが意図される。
【0172】
実施例1 カルチャーの増殖及び単離
[0340] Foristell, Missouriの2の位置からの環境サンプルを収集し、そして4℃で貯蔵した。1のサンプルを、鳥の檻又は小屋に近い領域、つまり高濃度の窒素に富む化合物に晒される領域から収集した。別のサンプルは、たい肥積みの近くの領域、つまり腐りかけの落ち葉、並びに他の腐りかけの有機物質に晒されている領域から収集した。5グラムの土壌サンプルを、250mlの邪魔板付き振盪フラスコ中の50mlの100mM・KPO4緩衝液pH7.0中に植菌した。好気的に200rpm、28℃で18時間振盪し、フラスコの中身を2〜3時間静置した。
【0173】
[0341] 静置された土壌混合液からの各上清1mlを、250mlの邪魔板付き振盪フラスコ中の25mlのスレーター濃縮培地中に植菌した。各土壌サンプルを6種の濃縮条件:1mg/mlのDL-β-フェニルアラニンを含む1mg/mlのα-ケトグルタレート、1mg/mlのDL-β-フェニルアラニンを含む1mg/mlピルビン酸ナトリウム、窒素源を加えない1mg/mlのα-ケトグルタレート、窒素源を加えない1mg/mlのピルビン酸ナトリウム、1mg/mlのDL-β-フェニルアラニン、又は添加なし中に植菌した。全てのフラスコを、好気的に200rpm、28℃で6日間攪拌した。
【0174】
[0342] 各第一フラスコ(「1回目」)の1mlを、25mlの同じ濃縮培地中に植菌した。これらのフラスコを、好気的に、200rpm、28℃で48時間振盪した。各第二フラスコ(「2回目」)の1mlを25mlの同じ濃縮倍地中に植菌した。これらの「3回目」カルチャーを、好気的に200rpm、28℃で48時間振盪した。3回目の濃縮カルチャーの3回目を、連続的に10倍希釈して、炭素又は窒素を加えないスレ-ター濃縮倍地中に10-8にした。各希釈液の100μLの量を、3回目のカルチャー液体培地と同じ組成の固体化したスレ-ター濃縮倍地上に、撒いた。これらのアガー・プレートをパラフィルム(商標)で密封して、28℃でインキュベーションした。
【0175】
[0343] 3回目の濃縮から成長した個々の代表的なコロニーを、滅菌植菌耳を使用して拾い上げ、そして外見が細菌又は酵母様である場合は栄養アガープレート上に移し、或いは外見が真菌様であるならばYMアガー・プレート上に移した。拾い上げた各単離コロニーは、土壌サンプル起源、炭素及び窒素濃縮源、及び単離体が拾い上げられた順番に対応する名前を与えられた。プレートをパラフィルム(商標)で密封し、そして28℃で一晩インキュベーションした。全てのコロニーを、同じ組成の栄養に富むアガープレート上に単離するために、ストリークした。単離されたコロニーを収集し、そして同じ培地組成の2mlの液体カルチャーに植菌し、そして一晩28℃で好気的に成長させた。全ての単離体を次に80℃で25%グリセロール・ストックとして貯蔵した。
【0176】
実施例2- トランスアミナーゼ活性についての微生物のスクリーニング
[0344] 環境分離株、並びに市販の微生物を、DL-β-フェニルアラニンに対するトランスアミナーゼ活性についてスクリーニングした。各生物の1の凍結グリセロール・バイアルを使用して、2g/L・DL-β-フェニルアラニンを含む250mlフラスコ中の25mlMSB液体培地に植菌するか、又は特定の株が最小培地中で低い成長度を示す場合、2g/L・DL-β-フェニルアラニンを含む栄養ブロス中に植菌した。生物の増殖は、28℃の好気的条件下で、1/10フラスコ体積の下で獲得した。生物の増殖は、目で見て懸濁するまで、典型的には24〜48時間後までモニターした。
【0177】
[0345] カルチャーを2等分した。全細胞生物変換アッセイでは、カルチャーの半分を8000×g以下で10分間4℃にて遠心することによりペレット化した。上清を捨て、そして細胞の塊を25mlの100mMリン酸カリウム緩衝液pH8.0で2回洗浄した。洗浄された細胞を、次にトランスアミナーゼ生物変換アッセイ緩衝液中に、元のカルチャーの二倍の細胞濃度で懸濁した。トランスアミナーゼ・生物変換アッセイ緩衝液は、100mMリン酸カリウム、10mg/ml・DL-β-フェニルアラニン、及び10mg/mlα-ケトグルタレート、pH8.0からなった。生物変換は、28℃で、200rpmの攪拌で48時間実行した。48時間の反応時間において、1mlのサンプルをとり、そして細胞を遠心により取り除いた。上清溶液をHPLCサンプルバイアル中に回収した。DL-β-フェニルアラニンから3-ケト-3-フェニルプロピオネートへの変換を、逆相HPLCを使用して定量した。
【0178】
[0346] 粗製細胞ホモジェネートを微生物カルチャーの残りの半分から調製した。当該細胞をペレット化し、そして全細胞アッセイ方法と同じく100mMリン酸カリウム緩衝液中で二回洗浄した。洗浄された細胞ペレットを、French圧力細胞破壊緩衝液中にペレット体積の3倍の体積で懸濁した。French圧力細胞破壊緩衝液は、100mMリン酸カリウム緩衝液、pH8.0、1mMジチオスレイトール、1mM塩化マグネシウム、1mMフェニルメチルスルホニル・フルオリド(PMSF)、及び0.1mg/mlデオキシリボヌクレアーゼを含むMilli-Q・H2Oからなった。全ての操作は、氷と接触させて行った。15000〜20000psiで、French圧力細胞を通すことにより、細胞を破裂させた。細胞破片を、エッペンドルフ微小遠心中で最高スピードで15分間遠心することにより取り除いた。上清を新しいチューブに収集し、そして氷上においた。粗製細胞ホモジェネートのタンパク質濃度を、標準のブラッドフォードタンパク質アッセイ条件を使用して測定した。粗製細胞ホモジェネートのトランスアミナーゼ活性は、0.1〜0.3mg/mlタンパク質を、以下のアッセイシステム:100mMリン酸カリウム、0.5mMジチオスレイトール、2mg/mlDL-β-フェニルアラニン、10mg/mlα-ケトグルタレート、又はピルビン酸ナトリウム、0.1mM・リン酸ピリドキサール、pH8.0中に加えることにより、アッセイした。生物変換を、28℃で48時間200rpmで攪拌して行った。48時間の反応時間で、1mlのサンプルをとり、そして細胞を遠心により取り除いた。上清溶液を、HPLCサンプルバイアル中に回収した。DL-β-フェニルアラニンから3-ケト-3-フェニルプロピオネートへの変換を、逆相HPLCを使用して定量した。
【0179】
[0347] DL-β-フェニルアラニンを唯一の窒素源として含む倍地中での選択的濃縮は、58の形態学的に異なる土壌分離株をもたらした。使用された選択的濃縮プロセスの性質のため、β-フェニルアラニン上での成長に責任を有する酵素メカニズムを決定することはできなかった。分離株を、全細胞アッセイ並びに粗製細胞ホモジェネート酵素アッセイを使用して、DL-β-フェニルアラニンに対する一般的なデアミナーゼ活性についてスクリーニングした。濃縮メカニズムに基づく可能な反応スキームを、図1に示す。粗製細胞ホモジェネートアッセイが、β-トランスアミナーゼ発現分離株の特異的な同定を標的とする一方で、デヒドロゲナーゼ及びライアーゼメカニズムの同定を標的としない。全細胞アッセイは、3種の潜在的なメカニズム全てを標的とした。
【0180】
[0348] 表1及び表2は、粗製細胞ホモジェネート及び全細胞デアミナーゼ活性からのデーターを示す。結果は、粗製ホモジェネートアッセイ(表1)については、mgタンパク質あたりの3-ケト-3-フェニルプロピオン酸の量( A254でのピーク領域)として報告される。逆相HPLC分析の48時間点から全細胞アッセイについては、A660あたりの3-ケト-3-フェニルプロピオン酸の量(A254でのピーク領域)として報告される。
【0181】
【表1】

【0182】
【表2】

【0183】
[0349] 異なる分離株の活性は、粗製細胞ホモジェネートを酵素源として使用するとき明らかに異なる。しかしながら、多くの場合、酵素が、粗製細胞ホモジェネートに比べて、全細胞から調製される場合に、得られる結果の間で違いが示される。例えば分離株cp-PyrbPhe-I6は、他の分離株と比較して、粗製細胞ホモジェネートとしてアッセイされる際、(R,S)-β-フェニルアラニンに対する最も高い活性を有した。当該分離株は、全体細胞アッセイでは、他の分離株に比較して、DL-β-フェニルアラニンに対して最も低いデアミナーゼ活性のうちの1つを有した。
【0184】
実施例3- GC-FAME及びBIOLOG分析による微生物の同定
[0350] 精製された微生物の分類学的同定を、各微生物における脂肪酸のプロファイルを既知の微生物と比較すること(GC-FAME)、並びに種々の異なる炭素源における増殖パターン(BIOLOG分析)により行った。行われた微生物同定は、GC-FAME及びBIOLOG実験データーを、以下に記載されるように最新のデーターベースと比較することに基づく。未知微生物の分類学上の同定及び分類を容易にするGC-FAME及びBIOLOGデータの使用が、比較された(Barnett, S. J.; Alami, Y.; Singleton, I. ; Ryder, M. H. Diversification of Pseudorncanas corrugata 2140 produces new phenotypes altered in GC- FAME、BIOLOG、and in vitro inhibition profiles and taxonomic identification. Can. J. Microbiol. (1999)、45 (4)、287-298)。
【0185】
[0351] BIOLOGは、市販される微生物の同定のための自動化代謝特徴づけシステムである。当該システムは、種々の炭素源及び代謝指示薬を配置した96ウェル・マイクロタイタープレートからなる。各ウェルにおけるテトラゾリウム色素は、微生物により炭素源が酸化されるときに暗紫色になる。当該試験は、植菌された各微生物の代謝の形跡を与える陽性(紫色)及び陰性ウェルの特徴的なパターンをもたらす。基質に対する活性のパターンは、既知の微生物の基質と比較され、既知のプロファイルとの適合に基づいて、同定を行った。幾つかのデーターベースは、比較を容易にするために使用され、例えば、好気性菌、嫌気性菌、グラム陽性菌及びグラム陰性菌、酵母、放線菌、及び乳酸菌を含む(www.biolog.com/bacteriaid.htm)。
【0186】
[0352] 脂肪酸メチルエステルのガスクロマトグラフィー(GC-FAME)、又は脂肪酸分析は、工業及び臨床適用において重要な微生物の同定のための有効なツールである。GC-FAMEは、細胞壁の固有の脂肪酸組成に基づいた、酵母、真菌、嫌気性菌、及び好気性菌、微生物、マイコバクテリウム、及び放線菌の同定方法である(www. microbeinotech.com)。(9〜20個の炭素鎖長の)脂肪酸は、培養されたサンプルから抽出され、そして対応するメチルエステルへの変換される。当該メチル・エステルは、ガスクロマトグラフィーによる分離にかけられ、そして存在する脂肪酸のタイプ及び濃度が記録された。クロマトグラフィー・プロファイルは、パターン認識プログラムをとおして、2600を超える種及び亜種から収集されたデーターを含む微生物データーベースと比較される。コンピューターが作成した報告は、脂肪酸プロファイル、最適のデーターベース適合のリストを、適合の信頼レベルを示す統計的確率の数値と共に含む。
【0187】
[0353] 未知の微生物を同定するために使用されるGC-FAME及びBIOLOGは、数千の細菌種から収集されたデーターを表す。データーベース中の各細菌種は、平均化された数百のサンプルから集められたデーターを表して、各細菌種に固有の特徴セットを決定する。
【0188】
[0354] 類似及び距離係数は、データーベース中の仮想の「平均」生物への類似性及び距離を指す。データーベース中の平均生物は、類似係数1と距離係数0を有する。近種は、それぞれ類似係数1と距離係数0の付近であり、より近い種は、データーベース中の平均生物と一致する。よい適合は、0.5を超える類似係数を有し、そして7未満の距離係数を有する種である。
【0189】
[0355] 他の分離株に比べて、β-フェニルアラニンに対する最も高いβ-トランスアミナーゼ活性を示す11の土壌分離株は、同定のために選ばれた。新たにストリークされた栄養アガープレートを、Microbe Inotech Laboratories, Inc, St. Louis, MO. にかけた。微生物同定を、最新のデーターのGC-FAME及びBIOLOG実験データーの比較に基づいて行った。表3は、Microbe Inotech Laboratories, Inc.から受けた結果を示す。分類にかけられた11の株のうち、5の明らかに区別される属が存在し、そして6の異なる属及び種名が存在した。
【0190】
【表3】

【0191】
表4は、11の土壌分離株のGC-FAME及びBIOLOG分析により得られた結果を要約する。幾つかの分離株の同定は、BIOLOG分析によって決められなかった。
【0192】
【表4】

【0193】
実施例4- 16S rRNA配列による微生物の同定
[0356] リボゾーマルDNA配列は、2の精製された微生物の分類学的同定を容易にするために使用された (Kolbert, C. P. and D. H. Persing. 1999. Ribosomal DNA sequencing as a tool for identification of bacterial pathogens. C. Opinions in Microbiol. 2: 299-305);Patel, J. B., D. G. B. Leonard, X. Pan, J. M. Musser, R. E. Bergman and I. Nachamkin. 2000. Sequence-Based Identification of Mycobacterium Species Using the MicroSeq 500 16S rDNA Bacterial Identification System. J. Clin. Micro. 38: 246-251)。2種の微生物の16S-rRNA遺伝子(rDNA)の全長DNA配列はまた、MIDI Labs(Newark, DE)により決定され、そして全ての既知の16S rDNA配列のデーターベースと比較された。
【0194】
[0357] CC-KGbPhe-114及びCP-PyrbPhe-I4と名付けられる2種の微生物をMIDI Labs、Newark、DEに提出し、そして16S rRNA遺伝子(rDNA)の全長DNA配列を決定した。16S RNA遺伝子の配列は以下に示される(表5、6、及び7)。
【0195】
【表5】

【0196】
【表6】

【0197】
【表7】

【0198】
[0358] これらの二種の微生物は、既知の16S rDNA配列へのデーターベース適合により、バリオボラックス・パラドキサス[CC-KGbPhe-I14株](配列番号:1)及びロドコッカス・オパクス[CP-PyrbPhe-I4](配列番号2)と同定された。GC-FAME分析が、後者の種[CP-PyrbPhe-I4]をコマモナス・アシドボランス(最新の細菌命名法[承認リスト、改変リスト]2003年3月DSMZ(Deutsche Sammlung von Microorganismen und Zellculturen GmbH)において、デルフチア・アシドボランスとしても知られている)として同定し、そして同じ種についてのBIOLOG分析が決定できなかったということに注意してください。
【0199】
実施例5-酵素精製
[0359] 多量のD-β-アミノ・トランスフェラーゼを、以下に記載される方法を使用して、バリオボラックス・パラドキサス(表8)として同定される微生物から製造した。同一の方法を使用して、アルカリゲネス・ユートロフスから多量のL-β-アミノ・トランスフェラーゼを精製した。立体特異的(D-又はL-β-アミノ・トランスフェラーゼ)、基質特異性(精製されたアミノ・ドナー及びアミノ・アクセプター)、及び必要なコファクターを、以下に概説される方法を使用して各酵素調製品について決定した。
【0200】
【表8】

【0201】
[0360] 1の10Lの発酵器を使用して、タンパク質精製のための細胞集団を産生した。発酵後の細胞の分離から得られる細胞ペーストを、細胞ペースト体積の3倍のFrench圧力細胞破壊緩衝液中に懸濁した。細胞を組織ホモジェナイザーを使用して再懸濁した。細胞を次に16000psiにおいて微小流体機を2回通して破壊した。得られたホモジェネート中の細胞破片及び破壊されていない細胞を、8000×gで20分間遠心することにより取り除いた。細胞ホモジェネートからの上清を4℃で貯蔵した。
【0202】
[0361] 酵素精製における第一ステップとして、粗製細胞ホモジェネートの硫酸アンモニウム沈殿を使用した。4℃において、攪拌しながら硫酸アンモニウムを30%に飽和になるまで加えた。当該30%硫酸アンモニウム溶液を、さらに約16時間攪拌させた。沈殿を4℃で、3時間10000×gで遠心することにより取り除いた。当該30%硫酸アンモニウム沈殿からの上清溶液を、4℃で回収し、そして貯蔵した。
【0203】
[0362] 次に当該トランスアミナーゼ活性を、30%の硫酸アンモニウム((NH4)2SO4)を含む(Sartobran P 0.8/0.2μmろ過ユニットで)ろ過された1500mlの発酵抽出液から、部分的に精製した。当該抽出液340mlを、1.2M硫酸アンモニウム、25mM・Tris、pH8.1で平衡化された170mlのベッド体積のブチル・セファロースFFカラム(3.2×19.8cm)上にロードした。流速は5ml/分であり、そして、ロードした後に、4カラム分の体積(CV)の平衡化緩衝液で洗浄を行った。勾配溶出を、10CVで、1.2M(NH4)2SO4、25mM・Tris、pH8.1〜25mM・Tris、pH8.1の勾配で行った。カラムクロマトグラフィーを、250mlまでを含む最後のロード体積で合計4回繰返した。各13mlの95個の分画を回収し(〜0.1CV)、そしてトランスアミナーゼ活性についてアッセイした。活性の2つのピークを、35〜55(ピークA)の分画間及び75〜95(ピークB)の分画間で検出した。全てのピークA分画を、単一ピークAプール中に貯蔵し(620ml、0.51mgタンパク質/ml)、そしてピークB活性プールについても(670ml、0.2mgタンパク質/ml)貯蔵した。各プールを、50cm210K MWCO Millipore Pellicon XLセルロース膜及びMillipore Labscale TFFシステムを使用し、20mMTris、pH9.5に対して、20〜25psiで限外ろ過/ダイアフィルトレーションをして、もとのタンパク質の濃度の2倍にした。
【0204】
[0363] ブチル・セファロースFFカラムから得た1回ダイアフィルトレーションされた活性プールを、直接80mlのベッド体積のQセファロースHPカラム(2.6×1.5cm)上にロードした。プールA活性のみを、ロード前に平衡緩衝液(20mM・Tris、pH9.5)で1:1希釈した。カラムを、20mM・Tris、pH9.5〜20mM・Tris、200mM・NaCl、pH9.5の10CV勾配で溶出した。90個の8ml分画(0.1CV)を回収し、そしてトランスアミナーゼ活性についてアッセイした。プールA活性は、分画55〜85(120ml)で溶出した。プールB活性は、分画65〜75(68ml)で溶出した。各Qカラム活性プールを、1/4プール体積に濃縮し、そして凍結した。
【0205】
[0364] QセファロースHPカラムからの各プールの活性は、50mM・Tris、100mM・NaCl、pH7.0の移動層を使用して、TSK G3000SWxlカラム(7.8mm×30cm)を1ml/分で使用するサイズ排除HPLCによりさらに精製された。各々100μLの複数の注入をクロマトグラフィーし、そして0.5mlの分画を合計5又は10回の実行から回収した。HPLC溶出液を各実行についての同じ分画中に収集することによって、全体のピークの回収を行い、そしてトランスアミナーゼ活性についてアッセイした。A及びBの両方の活性は、分画19〜21でおよそ50K MWで溶出した。
【0206】
実施例6- D-β-アミノ・トランスフェラーゼの基質特異性の測定
[0365] バリオボラックス・パラドキサス(CC-KGbPhe-I14)から半精製されたβ-アミノ・トランスフェラーゼ酵素を、100mMリン酸カリウム、2mg/mlDL-β-フェニルアラニン、10mg/mlα-ケト-アクセプター、及び0.1mMリン酸ピリドキサール、pH8.0からなるアッセイ中において、アミノ・ドナーとしてD-β-フェニルアラニンを使用してアッセイした。当該反応を、37℃で1時間、穏和に攪拌して行った。1時間の反応時間において、0.1mlのサンプルをとり、0.1mlの0.1N・HClを加えることにより酸性化し、そして遠心した。上清溶液をHPLCサンプル・バイアル中に回収した。DL-β-フェニルアラニンから3-ケト-3-フェニルプロピオネートへの変換を、逆相HPLCを使用して定量した。以下のケト酸:
α-ケトグルタル酸、オキサロ酢酸、ピルビン酸、3-オキソアジピン酸、2-オキソアジピン酸、1,3-アセトンジカルボン酸、及び4-ケトピメリン酸を活性についてスクリーニングした。種々のケト・アクセプターを使用するD-β-フェニルアラニンから3-ケト-3-フェニルプロピオン酸への変換の相対割合は、α-ケトグルタレート、実験的に決定された好ましいアクセプターを使用した割合の百分率として報告する。相対割合を表9に示す。
【0207】
【表9】

【0208】
[0366] 次にバリオボラックス・パラドキサス由来の半精製β-アミノ・トランスフェラーゼ酵素の同じ調製品を、100mMリン酸カリウム、10mg/mlα-ケトグルタレート、2mg/mlアミノ・ドナー、及び0.1mMリン酸ピリドキサール、pH8.0からなるアッセイ中において、α-ケトグルタレートをケト・アクセプターとして使用して、アッセイした。当該反応を、37℃で穏和に1時間攪拌して行った。1時間の反応時間で、0.1mlのサンプルをとり、0.1mlの0.1N・HClを加えて酸性化し、そして遠心した。上清溶液をHPLCサンプルバイアル中に収集した。アミノ酸の対応するケトンへの変換を、逆相HPLCを使用して定量した。(アミノ・ドナーとしての)以下のアミノ酸:α-(D)-フェニルアラニン、α-(L)-フェニルアラニン、β-(D)-フェニルアラニン、β-(L)-フェニルアラニン、(D)-3-アミノ-5-フェニルペンタン酸、及び(L)-3-アミノ-5-フェニルペンタン酸を活性についてスクリーニングした。β-(D)-フェニルアミン及び(D)-3-アミノ-5-フェニルペンタン酸のみが、これらの条件下で酵素の基質であった。
【0209】
実施例7- L-β-アミノ・トランスフェラーゼ基質特異性の決定
[0367] アルカリゲネス・ユートロフス(CP-PyrbPhe-I2)の粗製細胞ホモジェネート調製品を、1g/lのD,L-β-フェニルアラニンを加えた栄養ブロス中で成長された細胞から作った。無細胞ホモジェネートを、基質特異性を決定するために設計されたアッセイにおいて使用した。当該アッセイは、0.1〜0.3mg/mlタンパク質、10mg/mlケト受容体、1mg/mlアミノドナー、0.1mMリン酸ピリドキサール、及び100mMリン酸カリウム、pH8.0を含んだ。当該反応を、穏和に攪拌しながら1時間37℃で行った。1時間の反応時間において、0.1mlのサンプルをとり、0.1mlの0.1NHClを加えて酸性化し、そして遠心した。上清溶液をHPLCサンプル・バイアル中に回収した。アミノ酸の対応するケトンへの変換は、逆相HPLCを使用して定量した。酵素活性を、1時間におけるアミノ・ドナーの変換割合として計測した。一連の反応において、酵素活性は、α-ケトグルタレート又はピルベートをケト・アクセプターとして使用し、そして(D)-又は(L)-β-フェニルアラニンをアミノ・ドナーとして使用して、リン酸ピリドキサールを含めて又は含めないで計測した。アルカリゲネス・ユートロフスからのL-β-アミノ・トランスフェラーゼは、リン酸ピリドキサールの必要性を示し、ピルビネートをケトアクセプターとしてのα-ケトグルタレートとして好み、そして(D)-エナンチオマーについて(L)-β-フェニルアラニンを使用する(表10のデーターは、図8及び図9においてグラフで表される)。
【0210】
【表10】

【0211】
[0368] 当該同一の粗製細胞ホモジェネートの分離アッセイにおいて、当該特定の酵素が、L-アラニンをアミノ・ドナーとして使用して3-ケト-3フェニルプロピオン酸からβ-フェニルアラニンを産生を触媒できるということを示した。当該アッセイは、0.1〜0.3mg/mlタンパク質、10mg/mlケト・アクセプター、200mMアミノ・ドナー、0.1mMリン酸ピリドキサール、及び100mMリン酸カリウムをpH8.0で含んだ。平衡への到達からの逆反応を妨げるために、0.1ユニットのピルベートデカルボキシラーゼを含めた。当該反応を、37℃で24時間ゆっくり攪拌することで行った。24時間の反応時間において、0.1mlのサンプルをとり、0.1ml・0.1N・HClを加えることで酸性化し、そして遠心した。上清溶液をHPLCサンプルバイアルに集めた。アミノ酸の対応するケトンへの変換は、逆相HPLCを使用して定量した。スクリーニングされたアミノ・ドナーは、(L)-アラニン、(D)-アラニン、及びβ-アラニンであった。(L)アラニンのみが、β-フェニルアラニンの産生におけるアミノ・ドナーとして、酵素により利用された。
【0212】
実施例8- β-アミノ酸の立体特異的合成における基質特異性の測定
[0369] バリオボラックス・パラドキサス及びアルカリゲネス・ユートロフスから単離されたD-及びL-β-アミノ・トランスフェラーゼ酵素の基質特異性は、それぞれβ-アミノ酸の立体特異的合成において、(表11から選ばれる)アミノ・アクセプターの存在下で種々のアミノ・ドナー(グルタミン酸、アスバラギン酸、及び/又はアラニン)を使用して試験され、(上記実施例8及び9に記載される方法を使用して)対応するアミノ酸産物を形成した。
【0213】
【表11】

【0214】
実施例9- β-アミノ酸の鏡像異性体濃縮における基質特異性の測定
[0370] β-アミノ酸のラセミ混合体からのβ-アミノ酸の鏡像異性体濃縮を促進するためのD-及びL-β-アミノ・トランスフェラーゼ酵素の利用は、(表12から選ばれる)アミノ・アクセプターの存在下で種々のアミノ・アクセプター(α-ケトグルタル酸、オキサロ酢酸、及び/又はピルビン酸)を使用して試験されて、(上記実施例8及び9において記載される方法を使用して)対応するβ-アミノ酸産物を形成する。
【0215】
【表12】

【0216】
実施例10-バリオボラックス・パラドキサス・β-アミノ・トランスフェラーゼを使用した基質の分離
細胞ライセートの調製
培地調製
[0371] 栄養ブロス(NB)、基礎培地を、1リットルの脱イオン水あたり8グラムを溶解し、100μLのUCON LB625ポリアルキレン・グリコール消泡剤/リットルを加え、そして加熱滅菌することにより調製した。ストック溶液を、20mlの脱イオン水あたり1グラムのラセミ性β-フェニルアラニンを溶解し、その間、攪拌し、そして2NのNaOHを加えてpHを約10に維持することにより調製した。溶解後、ストック溶液のpHを2N・HClを加えることにより8に減らし、そして0.2ミクロン上の0.8ミクロンフィルターを通すことによりフィルター滅菌した。次に室温に維持された滅菌栄養ブロスに、滅菌ろ液を1リットルあたり2〜3gのβフェニルアラニンの終濃度になるまで加えた。
【0217】
カルチャー増殖
[0372] バリオボラックス・パラドキサスを、β-フェニルアラニンを加えた栄養ブロス中で成長させた。典型的に、500mlのβ-フェニルアラニンを加えた栄養ブロスを、シリコーン・スポンジ・フォーム・クロージャー(silicone sponge foam closure)を取り付けた2.8lファーンバッハフラスコに加えた。カルチャーを植菌し、そして200rpm、5.08センチ(2インチ)のストロークで、26度にて十分に増殖するまで振盪した。
【0218】
カルチャーの回収
[0373] 細胞を約24000×gで10分間遠心することにより回収した。上清をデカンタで取り除き、そして細胞ペレットはしっかりとした固体ではないので、残った透明の液体をピペットで取り除いた。次に大体元の体積と同じ1%NaCl(w/v)を含むpH7.0の50mMリン酸緩衝液に再懸濁することにより、細胞を洗浄した。遠心及び上清の除去を繰返した。得られた細胞ペレットを、次に約35mlの同じ緩衝液中に懸濁し、そして43000×gで10分間遠心して、しっかりとした細胞ペレットをもたらした。上清をデカンタで取り除いた。再懸濁に使用された約5mlの緩衝液を、細胞ペレットに加え、そして緩衝液及び細胞ペレットを激しくかき混ぜて細胞スラリーを作った。
【0219】
細胞破壊
[0374] 20000psiで行われるアベスチン装置(Avestin device)により、細胞スラリーを溶解させた。当該アベスチン装置にロードする前に、少量のDNAseIを懸濁液に加えた。当該細胞スラリーを1回装置に通し、非定量的顕微鏡評価に基づいて、良好な溶解を達成した。
【0220】
無細胞ライセートの調製
[0375] 破壊された細胞スラリーを、43000×gで10分間遠心した。透明な上清を取り、そして取っておき、そして残りのスラリーを再び遠心して、更に透明な上清を得た。両方の透明な上清を合わせて攪拌しながら、pHを6.4から8.0へと2N・NaOHで調節した。pH調節上清をそのまま使用するか、又は2回まで凍結融解した後に使用した。
【0221】
反応緩衝液の調製
[0376] 0.3Mトリシン、15mM・MgSO4、淡黄色与えるために十分なリン酸ピリドキサール、及び0.3Mグルタメート(脱アミノ化反応用)、又は0.3Mの2-ケトグルタル酸一カリウム塩(合成反応用)からなる緩衝液を調製した。
【0222】
バリオボラックス・パラドキサスを用いた合成又は脱アミノ化反応
[0377] 緩衝液のある量を、2倍量のライセートと混合し、そして当該混合液を次に、1mg/mlの濃度を与えるように前もって測られた基質に加えた。典型的に1mlのスケールで26℃にて、ゆっくり攪拌して反応を行った。
【0223】
反応サンプル・プロセッシング
[0378] 10μLの2N・HClを、プラスチック製のスクリューキャップのついたバイアルに加え、そして90μlのサンプルを次に加えた。混合液のpHを4以下にし、そして混合液を微小遠心機で最大スピードにて約2分間遠心して、沈殿物を取り除いた。
【0224】
[0379] サンプルを、マーフィー試薬、N-(2,4-ジニトロ-5-フルオロフェニル)-L-アラニンアミドを使用して誘導体化した。10mg/mlの当該試薬のアセトン溶液ストックを調製した。20又は40μLのいずれかの生物変換サンプルを20μLの1.3M・KHCO3に加えた。これに、80μlのストック試薬溶液を加え、当該バイアルをしっかり密封し、そして70℃で10分間熱した。必要に応じて、室温に冷却した後に、熱したサンプルを遠心して、固体を取り除いた。Eclipse SCB-C8カラム4.6×150mmを使用して、50%メタノールから100%メタノールまでの水中のメタノール勾配で溶出して、上清を分析した。両方の溶媒を0.1%トリフルオロ酢酸で酸性化した。
【0225】
[0380] 分離実験では、消費されたピークの領域(ケト酸に変換された)は、変換が行われていないという仮定の元、未消費ピークの残りの領域と比較される。
【0226】
[0381] 合成実験では、β-ケト酸がβ-アミノ酸に変換される合成実験では、ピーク(単数又は複数)の領域は、β-フェニルアラニンについて得られた標準曲線と比較された。
【0227】
[0382] ベータ・アミノ酸の分離又は合成を計測する個々の実験は、以下に記載される。分離実験についての結果は、表13に要約される。
【0228】
実験1
[0383] 分離について上に記載されるプロトコルを使用して、β-フェニルアラニンを、バリオボラックス・パラドキサス由来の細胞ライセートと23時間インキュベーションし、その後、後に溶出するピークの82%が消費されていた。
【0229】
実験2
[0384] 分離について上に記載されるプロトコルを使用して、p-メトキシ-β-フェニルアラニンを、バリオボラックス・パラドキサス由来の細胞ライセートと23時間インキュベーションし、その後、後に溶出するピークの80%が消費されていた。
実験3
[0385] 分離について上に記載されるプロトコルを使用して、m-ニトロ-β-フェニルアラニンを、バリオボラックス・パラドキサス由来の細胞ライセートと23時間インキュベーションし、その後、後に溶出するピークの95%が消費されていた。
【0230】
実験4
[0386] 分離について上に記載されるプロトコルを使用して、p-フルオロ-β-フェニルアラニンを、バリオボラックス・パラドキサス由来の細胞ライセートと23時間インキュベーションし、その後、後に溶出するピークの82%が消費されていた。
実験5
[0387] 分離について上に記載されるプロトコルを使用して、o-フルオロ-β-フェニルアラニンを、バリオボラックス・パラドキサス由来の細胞ライセートと67時間インキュベーションし、その後、後に溶出するピークの99%が消費されていた。
【0231】
実験6
[0388] 分離について上に記載されるプロトコルを使用して、3-アミノ-4-メチルペンタン酸を、バリオボラックス・パラドキサス由来の細胞ライセートと48時間インキュベーションし、その後、後に溶出するピークの65%が消費されていた。
実験7
[0389] 分離について上に記載されるプロトコルを使用して、3-アミノ-3-シクロへキシルプロパン酸を、バリオボラックス・パラドキサス由来の細胞ライセートと2時間インキュベーションし、その後、後に溶出するピークの99%超が消費されていた。
【0232】
実験8
[0390] 分離について上に記載されるプロトコルを使用して、3-アミノ-3-シクロプロピルプロパン酸を、バリオボラックス・パラドキサス由来の細胞ライセートと22時間インキュベーションし、その後、後に溶出するピークの98%が消費されていた。
実験9
[0391] 分離について上に記載されるプロトコルを使用して、β-フェニルアラニンを、バリオボラックス・パラドキサス由来の細胞ライセートと5時間インキュベーションし、その後、後に溶出するピークの99%超が消費されていた。
【0233】
実験10
[0392] 分離について上に記載されるプロトコルを使用して、p-ニトロ-β-フェニルアラニンを、バリオボラックス・パラドキサス由来の硫酸ナトリウムで精製されたベータ-アミノ・トランスフェラーゼとインキュベーションした。30分後、後に溶出するピークのおよそ98%が消費され;1時間後、当該ピークは検出されなかった。18時間後、先に溶出する立体異性体の濃度に検出できる変化は存在しなかった。
【0234】
実験11
[0393] 分離について上に記載されるプロトコルを使用して、β-フェニルアラニンを、アルカリゲネス・ユートロフスからの細胞ライセートでインキュベーションした。5時間後、先に溶出するピークのおよそ97%が消費される。1日後、先に溶出するピークは検出できず、そして後に溶出する立体異性体の濃度に検出できる変化はなかった。
実験12
[0394] 分離について上に記載されるプロトコルを使用して、3-アミノ-3-シクロへキシル・プロパン酸を、アルカリゲネス・ユートロフス由来の細胞ライセートとインキュベーションした。22時間後、先に溶出するピークの約37%が消費されていた。
【0235】
実験13
[0395] 分離について上に記載されるプロトコルを使用して、3-アミノ-3-シクロプロピルプロパン酸を、アルカリゲネス・ユートロフス由来の細胞ライセートとインキュベーションした。22時間後、先に溶出するピークの約42%が消費されていた。
実験14
[0396] 分離について上に記載されるプロトコルを使用して、3-アミノ-3-(3-チエニル)プロパン酸を、アルカリゲネス・ユートロフス由来の細胞ライセートと21時間インキュベーションした。その後、先に溶出するピークの約82%が消費されていた。
【0236】
実験15
[0397] 分離について上に記載されるプロトコルを使用して、3-アミノ-3-(2-フリル)プロパン酸を、アルカリゲネス・ユートロフス由来の細胞ライセートと21時間インキュベーションした。その後、先に溶出するピークの約72%が消費されていた。
【0237】
実験16
[0398] 分離について上に記載されるプロトコルを使用して、3-アミノ-3-(2-ナフチル)プロパン酸を、バリオボラックス・パラドキサス由来の細胞ライセートと5分間インキュベーションした。その後、後に溶出するピークの50%が消費されていた。
実験17
[0399] 分離について上に記載されるプロトコルを使用して、3-アミノ-3-(2-ベンゾフリル))プロパン酸を、バリオボラックス・パラドキサス由来の細胞ライセートと5時間インキュベーションした。その後、後に溶出するピークの98%が消費されていた。
【0238】
実験18
[0400] 分離について上に記載されるプロトコルを使用して、3-アミノ-3-(3-ピリジル)プロパン酸を、バリオボラックス・パラドキサス由来の細胞ライセートと5分間インキュベーションした。その後、後に溶出するピークの95%超が消費されていた。
実験19
[0401] 分離について上に記載されるプロトコルを使用して、3-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)プロパン酸を、バリオボラックス・パラドキサス由来の細胞ライセートと5分間インキュベーションした。その後、後に溶出するピークの58%が消費されていた。
【0239】
実験20
[0402] 分離について上に記載されるプロトコルを使用して、3-アミノヘキサン酸を、バリオボラックス・パラドキサス由来の細胞ライセートと1時間インキュベーションした。その後、後に溶出するピークの99%超が消費されていた。
【0240】
実験21
[0403] 分離について上に記載されるプロトコルを使用して、2-アミノシクロヘキサンカルボン酸を、バリオボラックス・パラドキサス由来の細胞ライセートと19時間インキュベーションした。その後、後に溶出するピーク(単数又は複数)の99%超が消費されており、前に溶出する各ペアの2個のジアステレオ異性体のピークは残っていた。
【0241】
実験22
[0404] 分離について上に記載されるプロトコルを使用して、2-アミノシクロペンタンカルボン酸を、バリオボラックス・パラドキサス由来の細胞ライセートと24時間インキュベーションした。その後、1ペアのジアステレオマーのうちの先に溶出するピークの45%超が消費され、そして他のペアのジアステレオマーのうちの先に溶出するピークの20%が消費されていた。
【0242】
実験23
[0405] 合成について上に記載されるプロトコルを使用して、o-フルオロ-フェニル-2-オキソプロパン酸を、バリオボラックス・パラドキサス由来の硫酸ナトリウム精製されたβ-アミノ・トランスフェラーゼと3時間インキュベーションした。その後、後に溶出するピークのみが観測され、それはβ-フェニルアラニンを標準として使用しておよそ0.02mg/mlに相当した。
【0243】
実験24
[0406] 合成について上に記載されるプロトコルを使用して、約50mMの終濃度の3-オキソへキサン酸を、約60mMグルタミン酸の存在下で、バリオボラックス・パラドキサス由来の細胞ライセートとインキュベーションした。19時間後、後の溶出ピークのみが観察され、それはβ-フェニルアラニンを標準として使用して、約1mg/mlの3-アミノヘキサン酸に相当した。
【0244】
実験25
[0407] 合成について上に記載されるプロトコルを使用して、約45mMの終濃度の3-(2-フルオロベンゼン)ベータ-オキソプロパン酸を、約84mMアラニンの存在下で、アルカリゲネス・ユートロフス由来の細胞ライセートとインキュベーションした。47時間後、先の溶出ピーク 対 後の溶出ピークは、約2.5:1の割合で観測され、そしてベータ-フェニルアラニンを標準として使用して、約0.1mg/mlの2-フルオロ-ベータ-フェニルアラニンに相当した。
【0245】
実験26
[0408] 合成について上に記載されるプロトコルを使用して、0.255Mの3-アミノ-3-シクロプロピルプロピオン酸を、バリオボラックス・パラドキサス由来の細胞ライセート及び0.45Mのアルファ-ケトグルタレート、pH8.1とインキュベーションした。18.2時間後、先に溶出するピークの99.5%を観察した。6.5mlの生物変換における残りの立体異性体を、イオン交換クロマトグラフィーに吸着し、そして水酸化アンモニウムで溶出することによる単離は、80mgの単一(先に溶出する)立体異性体を、95%超のキラル純度で与えた。
【表13】

【0246】
参考文献
[0409] 本明細書中に引用される全ての参考文献、特許、又は出願は、その全てを援用される。
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[0436] West TP. Role of cytosine deaminase and beta-alanine-pyruvate transaminase in pyrimidine base catabolism by Burkholderia cepacia. Antonie Van Leeuwenhoek 2000 Jan; 77 (1) : 1-5。日和見病原体ユーコルデリア・セパシアATCC25416によるピリミジン塩基、ウラシル及びチミンの代謝におけるサルベージ酵素シトシン・デアミナーゼ又はベータ-アラニン・ピルビン酸トランスアミナーゼの決定が行われた。シトシン・デアミナーゼ活性が、試験されたピリミジンにおける細胞成長にわずかに影響したということが発見された。これらの酵素が、ピリミジン塩基に基づく細胞増殖により影響されるか、そしてそのそれぞれの代謝産物が、ピリミジン還元性代謝酵素として同じ程度であるか、を研究することは関心が高い。シトシンデアミナーゼ活性が、試験されたピリミジンに基づく細胞成長によりほとんど影響されないということが発見された。グルコースを炭素源として使用すると、5-メチルシトシンを窒素源として成長するB.セパシアのみが、(NH4)2SO4成長細胞に対して約3倍にデアミナーゼ活性を増大させた。対照的に、ベータ-アラニン-ピルビン酸トランスアミナーゼの活性は、(NH4)2SO4の代わりに窒素源としてピリミジン塩基及び代謝産物が与えられるとき、グルコースで成長されたATCC25416細胞において少なくとも2倍で観察された。グルコースで成長されたB.セパシアにおけるトランススアミナーゼ活性は、(NH4)2SO4成長細胞に比較して当該株がウラシル又は5-メチルシトシンを窒素源として成長された後に最大となった。B.セパシアによるピリミジン塩基代謝におけるベータ-アラニン-ピルビン酸トランスアミナーゼの可能な役割は、三つの還元性代謝酵素の応答に比較した際に、当該酵素活性がピリミジン塩基及び代謝産物での細胞成長に応答する仕方への類似性から示唆される。Yonahaとその同僚Agric. Biol. Chem. 41 (9): 1701-1706,1977)。
【0249】
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【図面の簡単な説明】
【0250】
【図1】[0077] 図1は、生物体に使用され、β-アミノ酸を合成するための亢進された能力を有するトランスアミナーゼ、デヒドロゲナーゼ、及びアンモニア・リアーゼが関与するβ-フェニルアラニンの酵素的脱アミノ化についての3種の反応スキームを示す。これらの反応メカニズムを指針として使用して、濃縮による微生物の選別のための条件を開発した。濃縮は、βフェニルアラニンを液体培養液中の唯一の窒素源として使用することに基づき、これらの又は他の未知の酵素システムを有する微生物種が、当該システムを欠いている種を超えた成長により選択的に濃縮されるということを可能にする。
【図2】[0078] 図2は、立体特異的D-β-アミノ・トランスフェラーゼの存在下において、3-ケト-3-フェニルプロピオン酸及びグルタメートの生物触媒合成のための反応スキームを示す。 アスバラギン酸は、asp-オキサロ酢酸トランスアミナーゼの存在下でα-ケトグルタレートをグルタメート及びオキサロアセテートに変換する共役反応におけるアミノ・ドナーとして使用される。オキサロアセテートは、オキサロアセテートデカルボキシラーゼの存在下でピルベート及びCO2に変換され、α-ケトグルタレートの増加を最小にし、そしてD-β-フェニルアラニンの増加を最大にする。
【図3】[0079] 図3は、立体異性L-β-アミノ・トランスフェラーゼの存在下における3-ケトー3-フェニルプロピオン酸及びL-アラニンからのL-β-フェニルアラニン及びピルベートの生物触媒合成の反応スキームを示す。ピルベートは、共役反応においてCO2及びアセトアルデヒドに変換されて、L-β-フェニルアラニンの蓄積を最大にする。
【図4】[0080] 図4は、質量分析により、D,L-β-フェニルアラニンの本物のサンプルから得られた断片スペクトルであり、166.2ダルトンの原子量を有する種が多く存在することを示す。
【図5】[0081] 図5は、質量分析により、酵素学的に製造されたβ-フェニルアラニンのサンプルから得られた断片スペクトルである。3-ケト-3-フェニルプロピオン酸、L-グルタメート、及びリン酸ピリドキサールは、当該反応が終了するまで、D-β-トランスアミナーゼ調製品と反応した。β-フェニルアラニンは、LC/MS分析用に、HPLCに基づく分離からの溶出する物質を収集することにより、当該酵素反応から回収された。最も多い化学種は、166.2ダルトンの原子量を有する。
【図6】[0082] 図6は、質量分析により、DL-β-フェニルアラニンの本物サンプルから得られた断片スペクトルである。本物サンプルの理論上の質量は、DL-β-フェニルアラニンの理論上の質量と一致する。
【図7】[0083] 図7は、質量分析により、図5に記載されたD-β-フェニルアラニンの酵素的に産生されたサンプルからえられた断片スペクトルである。本物サンプルの理論上の質量は、DL-β-フェニルアラニンの理論上の質量に適合する。
【図8】[0084] 図8は、アルカリゲネス・ユートロフス(Alcaligenes eutrophus)から単離された(R)-β-フェニルアラニン特異的トランスアミナーゼの基質特異性を示す。粗製細胞ホモジェネートを、最少塩培養液(MSB)中で成長させたアルカリゲネス・ユートロフス(株CP-PyrbPhe-I2)細胞から調製した。ラセミ混合体D,L-β-フェニルアランから、D-又はL-β-フェニルアラニンを、対応するケトンに変換することは、種々の基質(ピルベート、ピルベート+コファクター・リン酸ピリドキサール(PLP)、αケト-グルタレート、α-ケト・グルタレート+リン酸ピリドキサール)の存在下で計測した。反応において消費されたD-β-フェニルアラニン(S-b-Phe)又はL-β-フェニルアラニン(R-b-Phe)の量を、1時間で計測した。L-β-フェニルアラニン(R-b-Phe)の変換割合は、D-β-フェニルアラニン(S-b-Phe)の変換割合より大きい。リン酸ピリドキサールは、この反応割合を高め、そしてピルベートは、アルファ・ケト・グルタレートに比較して好ましい基質である。
【図9】[0085] 図9は、アルカリゲネス・ユートロフスから単離された(R)-β-フェニルアラニン特異的トランスアミナーゼの基質特異性を示す。粗製細胞ホモジェネートを、栄養培養液(NB)にけるアルカリゲネス・ユートロフス(株CP-PyrbPhe-I2)細胞から調製した。当該アッセイ条件は、図8の説明に記載される条件と同じである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
β-アミノ酸又はその塩の立体選択的合成方法であって、当該方法が、β-アミノ酸トランスアミナーゼの存在下で、アミノ・ドナーとアミノ・アクセプターを接触させて、当該アミノ・アクセプターからβ-アミノ酸鏡像異性体又はその塩を形成することを含む、前記方法。
【請求項2】
β-アミノ酸トランスアミナーゼの存在下で、アミノ・ドナーとアミノ・アクセプターを接触させることにより産生される当該アミノ・ドナーの対応するケト形態を、当該β-トランスアミナーゼと反応しない化合物を産生するために適切な条件下で反応させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記β-アミノ酸鏡像異性体が、D-β-アミノ酸鏡像異性体及びL-β-アミノ酸鏡像異性体からなる群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記β-アミノ酸が、以下の式I:
【化1】

で表される化合物であり、そして前記アミノ・アクセプターが、以下の式II:
【化2】

[両式中、
1、R2、及びR3は、水素、C1-8アルキル、C2-8アルケニル、C3-12シクロアルキル、C6-12アリール、C3-12ヘテロシクリル、C6-12アリール-C1-8アルキル、及びC3-12ヘテロシクリル-C1-8アルキルラジカルからなる群から独立して選ばれ;
ここで当該ラジカルの全ては、水酸基、低級アルコキシ、低級アルキル、ハロゲン、ニトロ、カルボキシル、トリフルオロメチル、アミノ、アシルオキシ、フェニル、ベンジル、ナフチル、キノリン、イソキノリン(これらは場合により水素、ニトロ、チオ、低級アルコキシ、及び低級アルキルで場合により置換される)で場合により置換され;
但しR1、R2、及びR3の全てが、Hであることはなく;そして
4は、水酸基、O-、及び-OM(基中、Mはカチオンである)を含む]
で表される化合物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
β-アミノ酸又はその塩の立体選択的合成方法であって、当該方法は、β-アミノ酸トランスアミナーゼの存在下でアミノ・ドナーとアミノ・アクセプターを接触させて、当該アミノ・アクセプターからβ-アミノ酸鏡像異性体又はその塩を立体選択的に形成することを含み、
ここで当該β-アミノ酸又はその塩が、以下の式III:
【化3】

で表される化合物であり、そして当該アミノ・アクセプターが、以下の式IV:
【化4】

[両式中、R4は、水酸基、O-、及び-OM(基中、Mはカチオンである)を含む]
で表される化合物である、前記方法。
【請求項6】
D-β-アミノ酸鏡像異性体及びその対応するL-β-アミノ酸鏡像異性体を含む混合体を鏡像異性体濃縮する方法であって、当該方法が、立体選択的L-β-トランスアミナーゼの存在下で上記L-β-アミノ酸鏡像異性体をアミノ・アクセプターと接触させて、当該L-β-アミノ酸鏡像異性体の少なくとも一部を、対応するβ-ケト酸に変換し、それにより濃縮混合体中におけるD-β-アミノ酸鏡像異性体 対 L-β-アミノ酸鏡像異性体のモル比を増大させることを含み、当該モル比が1:1を超える、前記方法。
【請求項7】
L-β-アミノ酸鏡像異性体及びその対応するD-β-アミノ酸鏡像異性体を含む混合体を鏡像異性体濃縮する方法であって、当該方法が、立体選択的D-β-トランスアミナーゼの存在下で上記D-β-アミノ酸鏡像異性体をアミノ・アクセプターと接触させて、当該D-βアミノ酸鏡像異性体の少なくとも一部を、対応するβ-ケト酸に変換し、それにより濃縮混合体中におけるL-β-アミノ酸鏡像異性体 対 D-アミノ酸鏡像異性体のモル比を増大させることを含み、当該モル比が1:1を超える、前記方法。
【請求項8】
鏡像異性体濃縮されたβ-アミノ酸又はその塩の製造方法であって、ラセミ性β-アミノ酸の鏡像異性体を、対応するβ-ケト酸誘導体1の鏡像異性体に変換するために適切な条件下で、
以下の:
(i) 以下の式I:
【化5】

[式中、R1、R2、及びR3は、水素、C1-8アルキル、C2-8アルケニル、C3-12シクロアルキル、C6-12アリール、C3-12ヘテロシクリル、C6-12アリール-C1-8アルキル、及びC3-12ヘテロシクリル-C1-8アルキル・ラジカルからなる群から独立して選ばれ;
ここで、当該ラジカルの全ては、水酸基、低級アルコキシ、低級アルキル、ハロゲン、ニトロ、カルボキシル、トリフルオロメチル、アミノ、アシルオキシ、フェニル、ベンジル、ナフチル、キノリン、イソキノリン(これらの基は場合によりハロゲン、ニトロ、チオ、低級アルコキシ、及び低級アルキルで場合により置換される)で場合により置換され、
但し、R1、R2、及びR3は全てがHであることはなく、そして
4が、水酸基、O-、及び-OM(基中、Mはカチオンである)を含む]
で表される構造を有するラセミ性β-アミノ酸又はその塩;
(ii) アミノ・アクセプター;及び
(iii) 立体特異的β-アミノ酸トランスアミナーゼ
を接触させ、それにより当該βアミノ酸の反対の鏡像異性体が、実質的に鏡像異性体濃縮形態で保持され、そして当該保持されたβ-アミノ酸からβ-ケト酸誘導体を分離することを含む、前記方法。
【請求項9】
立体特異的β-トランスアミナーゼを含む組成物から立体特異的β-トランスアミナーゼを精製する方法であって、当該方法が以下のステップ:
(a) 当該立体特異的β-トランスアミナーゼを疎水性相互作用物質及びサイズ排除物質からなる群から選ばれる物質溶に吸着し、そして
(b) 溶出緩衝液を使用して、ステップ(a)の物質から立体特異的β-トランスアミナーゼを溶出する
を含む、前記方法。
【請求項10】
β-トランスアミナーゼを発現する1以上の微生物から微生物の個体数を増大する方法であって、当該方法が、β-アミノ酸又はその塩を選択的窒素源として含むカルチャー培地中で、微生物の個体数を増大させることを含む、前記方法。
【請求項11】
バリオボラックス・パラドキサス及びロドコッカス・オパクスからなる群から選ばれる精製されたカルチャーであって、
ここで当該バリオボラックス・パラドキサスの16S rDNAの配列が、配列番号1を含み、そして
当該ロドコッカス・オパクスの16S rDNAの配列が、配列番号2を含む、前記カルチャー。
【請求項12】
核酸の検出方法であって、以下の:
(a) 第一核酸を細胞から得られるか又は細胞に由来する第二核酸とインキュベーションし、ここで当該第一核酸が以下の:
配列番号1の少なくとも50個のヌクレオチド、配列番号1の少なくとも50個のヌクレオチドのRNA相当物、それらの全長相補体
配列番号1の約100個のヌクレオチドに少なくとも97%の同一性を有する核酸、そのRNA相当物、それらの全長相補体、
配列番号2の少なくとも50個のヌクレオチド、配列番号2の少なくとも50個のヌクレオチドのRNA相当物、それらの全長相補体、
配列番号2の約100個のヌクレオチドに少なくとも97%の同一性を有する核酸、そのRNA相当物、及びそれらの全長相補体、
からなる群から選ばれ、
(b) 当該第一核酸と当該第二核酸との間のハイブリッド形成を許容し;そして
(c) 当該第一核酸へのハイブリッド形成の存在を検出する
を含む、前記方法。
【請求項13】
バリオボラックス、ノカルディア、コマモナス、ロドコッカス、及びシュードモナスからなる群から選ばれる微生物に由来する精製された立体選択的D-β-トランスアミナーゼ。
【請求項14】
配列番号1に記載される16S rDNA配列を含む精製された核酸、又はその相補体。
【請求項15】
配列番号2に記載される16S rDNA配列を含む精製された核酸、又はその相補体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−526751(P2007−526751A)
【公表日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518393(P2006−518393)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【国際出願番号】PCT/IB2004/002183
【国際公開番号】WO2005/005633
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(303050964)ファルマシア コーポレイション (18)
【Fターム(参考)】