β−ラクタマーゼCD4+T細胞エピトープ
本発明は、親β−ラクタマーゼに比較して低下した免疫原生応答を示す変異体と同様に、β−ラクタマーゼCD4+T細胞エピトープを提供する。本発明はさらに、β−ラクタマーゼをより低下した免疫原生にするための方法と同様に、新規なβ−ラクタマーゼ変異体をコードするDNA分子、新規なβ−ラクタマーゼ変異体をコードするDNAを含む宿主細胞を提供する。さらに本発明は、野生型のβ−ラクタマーゼより免疫原生の低下したこれらのβ−ラクタマーゼ変異体を含む様々な組成物を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年12月18日に出願され、審査継続中の米国仮出願第60/531,128号について米国特許法第119条における優先権を主張する。
本発明は、親β−ラクタマーゼに比較して低下した免疫原性応答を示す変異体と同様に、β−ラクタマーゼCD4+T細胞エピトープに関する。本発明はさらに、β−ラクタマーゼをより低下した免疫原性にするための方法と同様に、新規なβ−ラクタマーゼ変異体をコードするDNA分子、新規なβ−ラクタマーゼ変異体をコードするDNAを含む宿主細胞に関する。さらに本発明は、野生型のβ−ラクタマーゼより免疫原性の低下したこれらのβ−ラクタマーゼ変異体を含む様々な組成物に関する。いくつかの態様において、本発明は、本発明の方法を用いる同定され、および/または特徴づけられた低下した免疫原性を有するβ−ラクタマーゼ変異体に関する。
【背景技術】
【0002】
ベータ−ラクタマーゼ(β−ラクタマーゼ)はβ−ラクタムの加水分解を触媒する酵素である。これらの酵素は、ペニシリン、セファロスポリン、およびそれらの誘導体を含む通常用いられる多くの抗菌剤にβ−ラクタム基が存在するため、臨床的に重要である。β−ラクタム抗菌剤は微生物細胞壁の生合成に関与する酵素を阻害する。β−ラクタムに対する抵抗性は強い生き残り優位性を細菌に与えるため、β−ラマタマーゼのような酵素の生産によるβ−ラクタム抵抗性の発達は重要な生き残り機構をもたらす。β−ラクタマーゼは、細胞壁生合成に関わる酵素(すなわち、ペニシリン結合タンパク質)に構造的に関係し、これらの酵素から進化したものかもしれない。
【0003】
190種を超えるβ−ラクタマーゼが知られている。これらの酵素はプラスミド上および染色体/ゲノムにおいて同定されてきており、その発現は本質的または誘導可能なものである。β−ラクタマーゼは微生物に対する効果が広範に変動する。例えば、あるものはペニシリンに対して高い活性を有するが、一方他のものはセファロスポリンに対してより活性であり、さらに他のものはその両方に効果を有する。したがって、病原性の生物によるβ−ラクタマーゼの生産はある種の感染症の治療において重要な障害となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
β−ラクタマーゼの特徴的な不活性化に加えて、β−ラクタマーゼは免疫原性である。したがって、これらの酵素に曝露された多くの個人において免疫応答は酵素のエピトープに対して起こる。いくつかの研究により特定のタンパク質のアレルゲン性/免疫原性を低下させる方法が提供され、および数人の個人におけるアレルギー性の又は他の免疫原性の反応を引き起こすエピトープの同定がなされてきたが、これらのエピトープを同定するために用いられるアッセイは一般に前にタンパク質に曝露された人の血清のIgEおよびIgGの測定を含んでいる。しかしながら、いったん免疫グロブリン反応が開始すると、感作が既に生じている。したがって、低下した免疫原性応答を生じる人および他の動物においては使用されるタンパク質の同定および/または産生をすることが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本発明は、親β−ラクタマーゼに比較して低下した免疫原性応答を示す変異体と同様に、β−ラクタマーゼCD4+T細胞エピトープを提供する。本発明はさらに、β−ラクタマーゼをより低下した免疫原性にするための方法と同様に、新規なβ−ラクタマーゼ変異体をコードするDNA分子、新規なβ−ラクタマーゼ変異体をコードするDNAを含む宿主細胞を提供する。さらに本発明は、野生型のβ−ラクタマーゼより免疫原性の低下したこれらのβ−ラクタマーゼ変異体を含む様々な組成物を提供する。幾つかの態様において、本発明は、本発明の方法を用いる同定され、および/または特徴づけられた低下した免疫原性を有するβ−ラクタマーゼ変異体を提供する。
【0006】
本発明は、(a)単一のヒト血液源から樹状細胞溶液、および未処理CD4+および/またはCD8+T細胞溶液を得、(b)前記樹状細胞を分化させて分化樹状細胞溶液を生産し、(c)前記分化樹状細胞溶液および前記未処理CD4+および/またはCD8+T細胞溶液をβ−ラクタマーゼのペプチド断片と混合し、および(d)工程(c)における前記T細胞の増殖を測定する工程を含むβ−ラクタマーゼの1つ以上のT細胞エピトープを同定するための方法を提供する。いくつかの態様において前記β−ラクタマーゼは微生物β−ラクタマーゼである。いくつかの選択的な態様において前記微生物β−ラクタマーゼはグラム陽性生物から得られが、他の態様においてはグラム陰性生物から得られる。より更なる態様において前記β−ラクタマーゼはエンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)から得られるが、他の態様において前記β−ラクタマーゼはグラム陰性および/またはグラム陽性菌を含むが、これらに限定されない他の生物から得られる。いくつかの他の態様において前記β−ラクタマーゼは配列番号1で示される配列の部分を少なくとも含む。さらに本発明は前述の方法を用いて同定されるエピトープを提供する。
【0007】
また本発明は、(a)(i)in vitroで1つ以上のサイトカインに曝露することにより分化させた接着性モノサイト由来樹状細胞をT細胞エピトープを含む1つ以上のペプチドに接触させ、および(ii)前記樹状細胞およびペプチドを、前記接着性モノサイト由来樹状細胞として同じ起源から得られ前記ペプチドに応答して増殖する未処理T細胞に接触させるにより、β−ラクタマーゼにおける1つ以上のT細胞エピトープを同定し、および(b)変異体β−ラクタマーゼが前記未処理T細胞のベースライン増殖以下の増殖を誘導するように、前記変異体β−ラクタマーゼを生成するために前記β−ラクタマーゼを修飾し前記T細胞を中和する工程を含む、β−ラクタマーゼの免疫原性を低下させるための方法を提供する。いくつかの態様において前記β−ラクタマーゼは微生物β−ラクタマーゼである。いくつかの選択的な態様において前記微生物β−ラクタマーゼはグラム陽性生物から得られるが、他の態様においてはグラム陰性生物から得られる。いくつかの態様において前記β−ラクタマーゼはエンテロバクター・クロアカエから得られるが、他の態様において前記β−ラクタマーゼはグラム陰性および/またはグラム陽性菌を含むが、これらに限定されない他の生物から得られる。いくつかの選択的な態様において前記β−ラクタマーゼは配列番号1で示される配列の部分を少なくとも含む。いくつかの態様において、本発明は低下した免疫原性を有するβ−ラクタマーゼの生産のための前述の方法を用いて生産されるβ−ラクタマーゼ変異体を提供する。
【0008】
いくつかの態様において前記β−ラクタマーゼのエピトープは、(a)前記T細胞エピトープのアミノ酸配列をβ−ラクタマーゼ・ホモログ由来の類似配列に置換することにより修飾され、ここで前記置換は前記T細胞エピトープの主要な三次構造特性と実質的に擬似する。いくつかの好ましい態様において前記β−ラクタマーゼは配列番号2、3、4、および5からなる群から選択される1つ以上のエピトープを変更することにより修飾される。いくつかの態様において前記エピトープは1つ以上のエピトープに対応する残基のアミノ酸配列を置換することにより修飾されるが、他の態様において前記エピトープは1つ以上のエピトープに対応する残基のアミノ酸配列を欠失することにより修飾され、さらなる態様において前記エピトープは1つ以上のエピトープにアミノ酸を追加することにより修飾される。より更なる態様において本発明は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むE.クロアカエβ−ラクタマーゼにおけるある位置と同じ位置で起こる1つ以上のアミノ酸修飾を含むアミノ酸配列を有するβ−ラクタマーゼ変異体を提供する。さらに本発明は前述の方法を用いて生産されるβ−ラクタマーゼを提供する。
【0009】
また本発明は、β−ラクタマーゼ、特に配列番号1で示されるβ−ラクタマーゼの少なくとも一部分を提供する。さらに本発明は、1つ以上のβ−ラクタマーゼおよび/または1つ以上の変異体β−ラクタマーゼをコードする核酸配列を含む発現ベクターを提供する。また本発明は、1つ以上のβ−ラクタマーゼおよび/または1つ以上の変異体β−ラクタマーゼをコードする核酸配列を含む1つ以上発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。さらに本発明はこれらの宿主細胞を用いて生産される1つ以上のβ−ラクタマーゼを提供する。
【0010】
また本発明は、配列番号10、11、20、21、25、40、48、49、50、52、53、59、69、および84からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む1つ以上のエピトープにおける1つ以上の改変を含む変異体β−ラクタマーゼを提供する。いくつかの態様において、本発明は、配列番号55〜90からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む1つ以上のエピトープを含むβ−ラクタマーゼを提供する。いくつかの特に好ましい態様において、前記変異体β−ラクタマーゼにより生じる免疫原性応答は野生型β−ラクタマーゼにより生じる免疫原性応答よりも小さい。しかしながら、いくつかの他の態様において、前記変異体により生じる免疫原性応答は野生型β−ラクタマーゼにより生じる免疫原性応答よりも大きい。
【0011】
さらに本発明は、変異体β−ラクタマーゼをコードする核酸配列、もちろん該核酸配列を含む発現ベクター、および該発現ベクターで形質転換された宿主細胞を提供する。いくつかの態様において、本発明は、配列番号10、11、20、21、25、40、48、49、50、52、53、59、69、および84からなる群から選択される1つ以上のアミノ酸配列を含むペプチドを提供する。いくつかの態様において、本発明は、配列番号55〜90からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む1つ以上のエピトープを含むβ−ラクタマーゼを提供する。
【0012】
なおさらに本発明は、本発明の変異体β−ラクタマーゼを含む組成物のような組成物を含むが、これらに限定されない医薬および消費者関連製品を提供する。また本発明は、β−ラクタマーゼに対して配向する抗体を提供する。いくつかの態様において、前記β−ラクタマーゼ変異体は異常細胞(例えば、癌細胞)の治療に用いられるような組成物に用いられる。例えば、本発明は細胞毒性化合物に変換されるプロドラッグ(すなわち、非毒性化合物)に好適な酵素として用いられる。したがって、本発明は、抗体および/または抗体成分の使用に頼らないターゲット治療と同様、抗体配向性酵素プロドラッグ治療のような応用に用いられる。実際に本発明は、様々な応用、設定、および組成物に用いるのに好適な変異体β−ラクタマーゼを提供する。
【0013】
図の説明
図1は、β−ラクタマーゼのアミノ酸配列を記述するペプチドセットに対する69の群ドナーの応答を示すグラフである。
図2は、ペプチド#6(配列番号2)および2つの変異体(配列番号10および11)への応答を示すグラフである。
図3は、ペプチド#36(配列番号3)および3つの変異体(配列番号20、21および25)への応答を示すグラフである。
図4は、ペプチド#49(配列番号4)および1つの変異体(配列番号40)への応答を示すグラフである。
図5は、ペプチド#107(配列番号5)および5つの変異体(配列番号48、49、50、52および53)への応答を示すグラフである。
図6は、ペプチド#49(配列番号4)および一連の修飾エピトープへの応答を示すグラフである。
図7は、置換I155Fを含むペプチド#49(配列番号59)およびこの配列に基づくペプセットへの応答を示すグラフである。
図8は、置換I155Vを含むペプチド#49(配列番号63)およびこの配列に基づくペプセットへの応答を示すグラフである。
図9は、置換I155Lを含むペプチド#49(配列番号69)およびこの配列に基づくペプセットへの応答を示すグラフである。
図10は、置換T147Qを含むペプチド#49(配列番号75)およびこの配列に基づくペプセットへの応答を示すグラフである。
図11は、置換L149Sを含むペプチド#49(配列番号82)およびこの配列に基づくペプセットへの応答を示すグラフである。
図12は、置換L149Rを含むペプチド#49(配列番号87)およびこの配列に基づくペプセットへの応答を示すグラフである。
図13は、β−ラクタマーゼ(配列番号1)および2つのエピトープ修飾β−ラクタマーゼを試験するために用いたアッセイから得られた結果を示すグラフである。パネルAは各酵素について得られた平均増殖応答を示すグラフであり、パネルBは各酵素についてレスポンダーのパーセントを示すグラフである。
図14は、BLAペプチドに対するBLA(パネルA)またはCD1.1(パネルB)感作マウス由来のマウス脾臓細胞の増殖応答を示すグラフである。
図15は、総蛋白BLA(パネルA)またはCD1.1(パネルB)に対する増殖応答に関してin vitroで試験した感作マウス由来の脾臓細胞についての結果を示すグラフである。これらの結果は図15に示す。
図16は、3回感作したマウスについてのELISAの結果を示すグラフである。
【0014】
発明の詳細な説明
本発明は、親β−ラクタマーゼに比較して低下した免疫原性応答を示す変異体と同様に、β−ラクタマーゼCD4+T細胞エピトープを提供する。本発明はさらに、β−ラクタマーゼをより低下した免疫原性にするための方法と同様に、新規なβ−ラクタマーゼ変異体をコードするDNA分子、新規なβ−ラクタマーゼ変異体をコードするDNAを含む宿主細胞を提供する。さらに本発明は、野生型のβ−ラクタマーゼより免疫原性の低下したこれらのβ−ラクタマーゼ変異体を含む様々な組成物を提供する。いくつかの特定の態様において、本発明は、本発明の方法を用いる同定され、および/または特徴づけられた低下した免疫原性を有するβ−ラクタマーゼ変異体を提供する。
【0015】
定義
本発明において別に定義されない限り、本発明で用いられる全ての技術および科学用語は、本発明の属する技術分野における当業者により共通に理解されるものと同様の意義を有する。例えば、シングルトンおよびセインズベリー(Singleton and Sainsbury)著、「微生物・分子生物学辞典」、第二版、ジョン・ウィリー・アンド・サン社、ニューヨーク(1994年)、およびヘイルおよびマーハム(Hale and Marham)著、「ザ・ハーパー・コリンズ生物学辞典」、ハーパー・ペレニアル(Harper Perennial)社、ニューヨーク(1991年)は、本発明で用いられる多くの用語の一般辞書を当業者に提供する。本発明で記載されるものと類似または同等な任意の方法および物質は本発明の実施において用いられるが、好ましい方法および物質は本発明に記載されている。したがって、すぐ下記に定義する用語は、全体として明細書を参照することによりより完全に記述されている。また、本発明で用いられる単数形は、別に文脈的に明示されない限り、複数形も含んでいる。
【0016】
本発明で用いられる「β−ラクタマーゼ」はβ−ラクタム環(すなわち、3炭素原子および1窒素原子を含む異種元素環構造)を開裂する任意の酵素のことをいう。β−ラクタム環は、ペニシリン、セファロスポリン、および他の関連化合物を含むが、これらに限定されない数種の抗菌剤の成分である。いくつかの好ましい態様において本発明のβ−ラクタマーゼは未処理(native)酵素であるが、他の態様において本発明のβ−ラクタマーゼは遺伝子組替え体である。いくつかの追加的な好ましい態様において、本発明のβ−ラクタマーゼは、未処理のβ−ラクタマーゼより低い免疫原性反応を刺激するように修飾されている。
【0017】
本発明で用いられる「組換えオリゴヌクレオチド(recombinant oligonucleotide)」という用語は、ポリヌクレオチド配列の制限酵素消化により生成した2つ以上のオリゴヌクレオチド配列の結合、オリゴヌクレオチドの合成(例えば、プライマーまたはオリゴヌクレオチドの合成)などを含むがこれらに限定されない分子生物学的操作を用いて作り出されたオリゴヌクレオチドのことをいう。
【0018】
本発明で用いられる「組換えβ−ラクタマーゼ」という用語は、天然発生アミノ酸配列における1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、または挿入をコードする変異体(ミュータント)DNAを生産するためにβ−ラクタマーゼをコードするDNA配列が修飾されたβ−ラクタマーゼのことをいう。そのような修飾を生成する適切な方法は当業者に周知である。
【0019】
本発明で用いられる「組換えDNA分子」という用語は、分子生物学的技術によって接合されたDNAの区分を含むDNA分子のことをいう。
【0020】
本発明で用いられる「酵素変換」という用語は、基質または中間体を酵素と接触させることによる、炭素基質の中間体への修飾または中間体の最終生産物への修飾のことをいう。いくつかの態様において、接触は基質または中間体を適切な酵素に直接的に曝露することによりなされる。他の態様において、接触することには、発現および/または排出し、所望の基質および/または中間体をそれぞれ所望の中間体および/または最終生産物に代謝する生物体に酵素または中間体を曝露することが含まれる。
【0021】
本発明で用いられる「野生型」および「未処理」タンパク質は自然において認められるタンパク質である。「野生型配列」および「野生型遺伝子」という用語は、本発明において互換的に使用され、未処理の、または宿主細胞において自然に発生する配列のことを言う。いくつかの態様において、野生型配列はタンパク質工学事業の出発点である関心ある配列のことを言う。自然発生の(すなわち、前駆体)タンパク質をコードする遺伝子は、当業者に既知の一般的な方法に従って得ることができる。この方法は通常、関心あるタンパク質領域をコードする推定配列を有する標識プローブの合成、タンパク質を発現する生物体由来のゲノムライブラリの調製、およびプローブへのハイブリダイゼーションによる関心ある遺伝子に関するライブラリのスクリーニングを含む。陽性ハイブリダイズクローンは、次にマッピングおよびシークエンシングされる。
【0022】
本発明で用いられる「サンプル」という用語は、その最も広い意味で使用される。しかし、好ましい態様において、この用語は分析され、同定され、修飾され、および/または他のペプチドと比較されるペプチド(すなわち、関心のあるタンパク質配列を含むペプセット中のペプチド)を含むサンプル(例えば、アリコート)に関連して用いられる。従って、ほとんどの場合、この用語は関心のあるタンパク質またはペプチドを含む物質に関連して用いられる。
【0023】
本発明で用いられる「刺激指数(SI)」は、対照と比較したペプチドのT細胞増殖応答の測定値のことをいう。前記SIは、ペプチドを含むCD4+T細胞および樹状細胞カルチャー得られた平均CPM(1分当たりのカウント数)を、ペプチドを含まない樹状細胞およびCD4+T細胞を含む対照カルチャーの平均CPMで割ることにより計算される。この値は、各ドナーおよび各ペプチドについて計算される。約1.5から4.5の間のSI値は陽性応答を示すために使用されるが、一方、陽性応答を示すための好ましいSI値は2.5および3.5の間であり、好ましくは2.7から3.2、更により好ましくは2.9から3.1の間の値を含む。本発明で記載される最も好ましい態様は、SI値2.95を用いる。
【0024】
本発明で用いられる「データセット」という用語は、各タンパク質についての一組のペプチドおよび一組のドナーについて編集されたデータのことを言う。
【0025】
本発明で用いられる「ペプセット」という用語は、各試験タンパク(すなわち、関心のあるタンパク質)より得られた一組のペプチドのことを言う。このペプセット(または「ペプチドセット」)の中のこれらのペプチドは、各ドナーから得られた細胞を用いて試験される。
【0026】
本発明で用いられる「精製された」または「単離された」という用語は、試料から不純物の除去のことをいう。例えば、β−ラクタマーゼではない溶液または調製物中に混入するタンパク質および他の化合物を除去することによりβ−ラクタマーゼは精製される。
いくつかの態様において組換β−ラクタマーゼは細菌宿主細胞において発現され、これらの組換ラクタマーゼは宿主細胞の他の構成成分を除去することにより精製される。これにより組換β−ラクタマーゼ・ポリペプチドのパーセントは試料中で上昇する。
【0027】
本発明で用いられる「バックグラウンドレベル」および「バックグラウンド応答」は、任意の試験タンパク質のデータセットにおいて任意に与えられたペプチドへの応答者(レスポンダー)の平均パーセントのことを言う。この値は、全ての試験ドナーについて編集されたセット中の全ペプチドに対する平均応答者パーセントによって決定される。例えば、3%のバックグラウンド応答は、平均して、100ドナーにおける試験で得られたデータセットにおいて任意のペプチドへ3陽性(SIが2.95より大きい)応答が存在することを示すことになる。
【0028】
本発明で使用される「抗原提示細胞」(「APC」)は、抗原がT細胞表面の受容体によって認識され得るように、その表面の抗原を提示する免疫系細胞のことを言う。抗原提示細胞には、樹状細胞、掌状細胞(interdigitating cell)、活性化B細胞およびマクロファージが含まれる。
【0029】
細胞株または細胞に関連して用いられる時の「リンパ(lymphoid)」という用語は、その細胞株または細胞がリンパ系に由来し、BおよびTリンパ系の両方の細胞を含むことを意味する。
【0030】
本発明で用いられる「Tリンパ球」および「T細胞」という用語は、T前駆細胞(T細胞受容体遺伝子が再配列されていないThy1陽性細胞を含む)から成熟T細胞(すなわち、CD4またはCD8のどちらかに単一陽性な、表面TCR陽性細胞)までのTリンパ球系内の任意の細胞も含む。
【0031】
本発明で用いられる「Bリンパ球」および「B細胞」という用語は、プレB細胞(免疫グロブリン重鎖遺伝子の再配列を開始したB220+細胞のようなB前駆細胞から成熟B細胞および形質(plasma)細胞までのB細胞系内の任意の細胞を含む。
【0032】
本発明で用いられる「CD4+T細胞」および「CD4T細胞」はヘルパーT細胞のことをいい、一方、「CD8+T細胞」および「CD8T細胞」は細胞毒性(cytotoxic)T細胞のことをいう。
【0033】
本発明で用いられる「B細胞増殖」は、抗原提示細胞の存在下で、抗原の存在下または非存在下において、B細胞の培養期間に産生されたB細胞の数のことを言う。
【0034】
本発明で用いられる「ベースラインB細胞増殖」は、ペプチドまたはタンパク抗原の非存在下において、抗原提示細胞への曝露応答で個体内に通常見られるB細胞増殖の程度のことを言う。本発明の目的のために、ベースラインB細胞増殖レベルは、抗原非存在下におけるB細胞増殖の際の各個体についてのサンプルベースごとに決定される。
【0035】
本発明で用いられる「B細胞エピトープ」は、抗原(すなわち、免疫原)を含むペプチドへの免疫原性応答においてB細胞受容体によって認識されるペプチドまたはタンパク質の特徴のことを言う。
【0036】
本発明で用いられる「変性B細胞エピトープ」は、関心のある変異ペプチドがヒトまたはその他の動物において異なる(すなわち、変性した)免疫原性応答を生じるために、関心のある前駆体ペプチドまたはペプチドとは異なるエピトープのアミノ酸配列のことを言う。変性した免疫原性応答は、変性免疫原性および/またはアレルギー誘発性(すなわち、増大または減少した全体の免疫原性応答のいずれか)を含むと考えられる。いくつかの態様において、変性したB細胞エピトープは同定されたエピトープ内の残基から選択されるアミノ酸の置換および/または欠失を含む。選択的な態様において、変性B細胞エピトープはエピトープ内の1つ以上の追加の残基を含む。
【0037】
本発明で用いられるように「T細胞エピトープ」は、その抗原を含むペプチドへの免疫応答の開始においてT細胞受容体によって認識されるペプチドまたはタンパク質の特徴を意味する。T細胞によるT細胞エピトープの認識は、通常T細胞が抗原提示細胞に発現したクラスIまたはクラスIIの主要組織適合複合体(MHC)に結合する抗原のペプチド断片を認識するメカニズムを経由すると信じられている(例えば、モエラー((Moeller))編、イムノロジカル・レビュー(Immunol. Rev.)、98巻、187頁[1987年]を参照されたい)。本発明のいくつかの態様において、本発明に記述されているように同定されるエピトープまたはエピトープ断片は、エピトープまたは断片を結合および提示すことができるMHC分子をもつ抗原提示細胞の検出に用いられる。いくつかの態様において、エピトープ/エピトープ断片は更に、関心のあるエピトープ/エピトープ断片を結合および/または定時する細胞の同定を容易にする検出可能な標識(すなわち、マーカー)を含む。
【0038】
本発明で用いられる「T細胞増殖」は、抗原提示細胞の存在下で、抗原の存在下または非存在下においてT細胞の培養期間に産生されたT細胞の数のことを言う。
【0039】
本発明で用いられる「ベースラインT細胞増殖」は、ペプチドまたはタンパク抗原の非存在下において、抗原提示細胞への曝露に応答において個体内に通常見られるT細胞増殖の程度のことを言う。本発明の目的のために、ベースラインT細胞増殖レベルは、抗原非存在下における抗原提示細胞への応答においてT細胞増殖の際の各個体についてのサンプルベースごとに決定される。
【0040】
本発明で用いられる「変性した免疫原性応答」は、増加または減少した免疫原性応答のことを言う。タンパク質およびペプチドは、それらが引き起こすT細胞および/またはB細胞応答が親(例えば、前駆体)タンパクまたはペプチド(例えば、関心のあるタンパク質)によって引き起こされる応答よりも大きいとき、「増加した免疫原性応答」を示す。このより高い応答の実質的結果は、変異体タンパクまたはペプチドに対して指向した増加した抗体応答である。タンパク質およびペプチドは、それらが引き起こすT細胞および/またはB細胞応答が親(例えば、前駆体)タンパクまたはペプチドによって引き起こされる応答よりも小さいとき、「減少した免疫原性応答」を示す。好ましい態様において、このより低い応答の実質的結果は、変異体タンパクまたはペプチドに対して指向した減少した抗体応答である。いくつかの好ましい態様において、親タンパクは野生型タンパクまたはペプチドである。
【0041】
本発明で用いられる「免疫原性のin vivoにおける低下」は、生きている生物体内で少なくとも一部分で生じるアッセイ(例えば、生きた動物の使用が必要)により同定される免疫原性応答の明らかな減少のことをいう。具体的な「in vivo」アッセイには、マウスモデルにおける変性した免疫原性応答の測定が含まれる。
【0042】
本発明で用いられる「免疫原性のin vitroにおける低下」は、生きている生物体外の人工的な環境において生じるアッセイ(すなわち、生きた動物の使用が不必要)により同定される免疫原性応答の明らかな減少のことをいう。具体的な「in vitro」アッセイには、関心のあるペプチドへのヒト末梢血単核球細胞による増殖応答の試験が含まれる。
【0043】
本発明で用いられる「有意なエピトープ」という用語は、試験ドナープール内の応答率がバックグラウンド応答率の約3倍以上のエピトープ(すなわち、T細胞および/またはB細胞エピトープ)のことをいう。
【0044】
本発明で用いられる「弱有意エピトープ」は、試験ドナープール内の応答率がバックグラウンド応答率より大きいが、バックグラウンド率の約3倍未満であるエピトープ(すなわち、T細胞および/またはB細胞エピトープ)のことをいう。
【0045】
本発明で用いられる「関心のあるタンパク質」は分析、同定および/または修飾されるタンパク質のことをいう。組み換えタンパクだけでなく天然発生のタンパク質も本発明において使用される。
【0046】
本発明で用いられる「タンパク質」は、アミノ酸を含み、および当業者によってタンパク質として認識されている任意の組成物のことをいう。「タンパク質」、「ペプチド」の用語およびポリペプチドは、本発明において互換的に使用される。ペプチドがタンパク質の一部である場合に、当業者は文脈においてこれら用語の使用を理解する。「タンパク質」の用語は、関連するタンパク質のプロ(pro-)およびプレプロ(prepro-)形態だけでなくタンパク質の成熟形態も含む。タンパク質のプレプロ形態は、タンパク質のアミノ末端に作働可能に結合したプロ配列を有するタンパク質の成熟形態、およびプロ配列のアミノ末端に作働可能に結合した「プレ」または「シグナル」配列を含む。
【0047】
本発明の変異体は、そのような蛋白変異体のプロおよびプレプロ形態と同様に、蛋白変異体の成熟形態を含む。このプレプロ形態は、蛋白変異体の発現、分泌および成熟化を容易にするため好ましい構成である。
【0048】
本発明で用いられる「プロ配列」は、除去されるとタンパク質の「成熟」形態が結果として出現する、タンパク質の成熟形態N末端に結合したアミノ酸配列のことをいう。多くの酵素は翻訳プロ酵素生成物として自然では認められ、翻訳後プロセッシングがないとこの形態で発現される。
【0049】
本発明で用いられる「シグナル配列」および「プレ配列」とは、タンパク質の成熟またはプロ形態の分泌に関与することができるタンパク質のN末端部分またはプロタンパク質のN末端部分に結合した任意のアミノ酸配列のことをいう。シグナル配列のこの定義は機能的なものであり、未処理条件下のタンパク質の分泌を成し遂げることに関与するタンパク質遺伝子のN末端部分をコードする全てのそれらのアミノ酸配列を含むことを意図している。本発明は、本発明で記載される蛋白変異体の分泌を奏功させるそのような配列を利用する。
【0050】
本発明で用いられる「プレプロ」形態の蛋白変異体は、タンパク質のアミノ末端に作働可能に結合したプロ配列およびプロ配列のアミノ末端に作働可能に結合した「プレ」または「シグナル」配列を有するタンパク質の成熟形態から構成される。
【0051】
本発明で用いられるように、機能的に類似のタンパク質は「関連タンパク質」と見なされる。いくつかの態様において、これらのタンパク質は生物体(例えば、細菌タンパク質および真菌タンパク質)のクラス間の相違を含む、異なる属および/または種に由来する。いくつかの態様において、これらのタンパク質は生物体(例えば、細菌β−ラクタマーゼおよび真菌タンパク質)のクラス間の相違を含む、異なる属および/または種に由来する。追加的な態様において、関連タンパクは同一の種から提供される。実際に、本発明は任意の特定の出所に由来する関連タンパクに限定されることを意図していない。
【0052】
本発明で用いられる「誘導体」とは、CおよびN最終末端のいずれかまたは両方への1つ以上のアミノ酸の付加、アミノ酸配列における1つ以上の異なる部位での1つ以上のアミノ酸の置換、および/またはタンパク質のいずれかのまたは両方の末端での又はアミノ酸配列における1つ以上の部位での1つ以上のアミノ酸の欠失、および/またはアミノ酸配列における1つ以上の異なる部位での1つ以上のアミノ酸の挿入により誘導されるタンパク質のことをいう。タンパク質誘導体の調製は、未処理タンパク質をコードするDNA配列の修飾、そのDNAの適切な宿主への形質転換、および誘導体タンパク質を精製する修飾DNA配列の発現により好ましくは達成される。
【0053】
関連(および誘導体)タンパク質は「変異体タンパク質」を含む。好ましい態様において、変異体タンパク質は親タンパク質と互いに少数のアミノ酸残基が異なる。異なるアミノ酸残基の数は1つ以上であり得、好ましくは1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、またはそれより多いアミノ酸残基である。1つの好ましい態様において、変異体間の異なるアミノ酸の数は1および10の間である。特に好ましい態様において、関連タンパク質および特定の変異体タンパク質は50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%のアミノ酸配列相同性を含む。追加的に、本発明で用いられる関連タンパク質または変異体タンパク質は、顕著な領域(prominent region)の数で他の関連タンパク質または親タンパク質と異なるタンパク質のことをいう。例えば、いくつかの態様において、変異体タンパク質は親タンパク質と異なる1、2、3、4、5、または10の対応する顕著な領域を有する。
【0054】
1つの態様において、変異体の対応する顕著な領域はバックグラウンドレベルの免疫原性応答のみを生成する。置換、挿入または欠失が同定されたいくつかの残基は保存された残基であるが、他はそうではない。保存されない残基の場合、1つ以上のアミノ酸の置き換えは自然に認められるものに対応しないアミノ酸配列を有する変異体を生成する置換に限定される。保存される残基の場合、そのような置き換えは自然発生の配列を結果として生じることはないはずである。
【0055】
いくつかの態様において、修飾は好ましくは前駆体酵素のアミノ酸配列をコードする「前駆体DNA配列」になされるが、前駆体タンパク質の操作によっても可能である。保存されない残基の場合、1つ以上のアミノ酸の置き換えは自然に認められるものに対応しないアミノ酸配列を有する変異体を生成する置換に限定される。保存される残基の場合、そのような置き換えは自然発生の配列を結果として生じることはないはずである。本発明によって提供される誘導体は、β−ラクタマーゼの特徴を変化させる1つ以上の化学的修飾をさらに含む。
【0056】
いくつかの態様において、変異体β−ラクタマーゼの特徴は当業者に既知の方法により決定される。具体的な特徴には、熱安定性、アルカリ安定性、および特定のβ−ラクタマーゼ、様々な基質、緩衝溶液、および/または生成物製剤の安定性が含まれるが、これらに限定されない。酵素安定性アッセイと組み合わせて、ランダム突然変異により得られる変異体β−ラクタマーゼは酵素活性を維持する間に増加または減少したアルカリまたは熱安定性のいずれを示すかを調べることができる。
【0057】
アルカリ安定性は、既知の操作または本発明に記載の方法のいずれかにより測定することができる。アルカリ安定性の実質的な変化は、前駆体タンパク質と比較したときに変異体の酵素活性における半減期の約5%以上の増加または減少(ほとんどの態様において、好ましくは増加である)により証明される。
【0058】
熱安定性は、既知の操作または本発明に記載の方法のいずれかにより測定することができる。熱安定性の実質的な変化は、前駆体タンパク質と比較したときに比較的高い温度および中性pHに曝露された変異体の触媒活性における半減期の約5%以上の増加または減少(ほとんどの態様において、好ましくは増加である)により証明される。
【0059】
いくつかの態様において、β−ラクタマーゼ遺伝子は適切な発現プラスミドに結合される。クローンしたβ−ラクタマーゼ遺伝子は、つぎにβ−ラクタマーゼ遺伝子を発現するために宿主細胞を形質転換または宿主細胞に形質移入させるために用いられる。このプラスミドは、プラスミド複製に必要な周知の要素を含む、または前記プラスミドが宿主染色体を完成するために設計され得るというという意味において、宿主細胞において複製できる。必要な要素は効果的な遺伝子発現(例えば、関心のある遺伝子に作働可能に結合したプロモータ)のために提供される。いくつかの態様において、これらの必要な要素は、遺伝子自身の同種(homologous)プロモータが外因性または内因性のβ−ラクタマーゼ遺伝子の末端領域である転写終止因子(transcription terminator)(真核生物宿主細胞のためのポリアデニル化領域)として認識される(すなわち、宿主により転写される)場合には、その転写終止因子として供給される。いくつかの態様において、抗菌剤含有培地における成長によりプラスミド感染宿主細胞の連続的な培養維持が可能となる、抗生物質抵抗性遺伝子のような選択遺伝子も含まれる。
【0060】
他の方法を用いることはできるが、以下のカセット突然変異法は本発明のβ−ラクタマーゼ変異体の構築を容易にするために用いられる。第一に、β−ラクタマーゼをコードする自然発生の遺伝子が得られ、全体または一部がシークエンスされる。次にこの配列はコードされたβ−ラクタマーゼの1つ以上のアミノ酸の突然変異(欠失、挿入または置換)を起こすために望ましい地点を精査される。この地点に隣接する配列は、遺伝子の短い区域を発現の際に様々な変異体をコードすることになるオリゴヌクレオチドのプールで置き換えるための制限部位の存在について評価される。そのような制限部位は、遺伝子区域の置換えを容易にするため、好ましくはタンパク質遺伝子内の特異部位である。しかしながら、制限消化により生成する遺伝子断片が適当な配列に再結集できるという条件で、β−ラクタマーゼ遺伝子において過度に縮重していない任意の便利な制限部位を用いることができる。もし制限部位が選択された地点からの便利な距離内(10〜15塩基)の場所に存在しないなら、リーディングフレーム(reading frame)もコードされたアミノ酸最終構成で変化しないような様式で、そのような部位は遺伝子中の置換ヌクレオチドにより生成される。所望の配列に合わせるようにその配列を変化させるための遺伝子の突然変異は、一般的に知られた方法に従ってM13プライマー延長より達成される。適切な隣接領域の位置を決定し、2つの便利な制限部位配列に到達するために求められる変化を評価する作業は、遺伝子コードの縮重、遺伝子の制限酵素地図および多数の異なる制限酵素によりルーティンとして行われる。もし便利な隣接制限部位が利用できるなら、上記方法は部位を含まない隣接領域に関連してのみ用いる必要があることに注意すべきである。
【0061】
一旦、自然発生DNAまたは合成DNAがクローンされると、変異されるべき位置に隣接する制限部位は同種の制限酵素で消化され、複数最終末端が相補的なオリゴヌクレオチド・カセットが遺伝子に結合される。全てのオリゴヌクレオチドが同じ制限部位をもつように合成することができ、制限部位の作成にいかなる合成リンカーも必要でないため、前記突然変異はこの方法により簡略化される。
【0062】
本発明で用いられる「対応する」は、タンパク質またはペプチドにおける番号を付した位置における残基、またはタンパク質またはペプチドにおける番号を付した残基と類似の、同種の、または等価な残基のことをいう。
【0063】
本発明で用いられる「対応領域」は、一般的に関連タンパク質または親タンパク質に沿った類似の位置のことをいう。
【0064】
「核酸分子をコードする」、「DNA配列をコードする」、および「DNAをコードする」という用語は、デオキシリボ核酸鎖に沿ったデオキシリボヌクレオチドの順序または配列のことをいう。これらのデオキシリボヌクレオチドの順序はポリペプチド(タンパク質)鎖に沿ったアミノ酸の順序を決定する。したがって、前記DNA配列はアミノ酸配列をコードする。
【0065】
本発明で用いられる「類似配列」という用語は、関心のあるタンパク質(すなわち、具体的には関心ある元々のタンパク質)と類似の機能、三次構造、および/または保存残基(conserved residues)を提供するタンパク質内の配列のことをいう。特に好ましい態様において、類似配列はエピトープにおける、またはエピトープ付近における配列を含む。例えば、アルファへリックスまたはベータシート構造を含むエピトープ領域において、類似配列における置換アミノ酸は好ましくは同一の特異的構造を保持する。また、この用語はアミノ酸配列だけでなく、ヌクレオチド配列のことも言う。いくつかの態様において、エピトープにおける、またはエピトープ付近における関心のあるタンパク質のアミノ酸に対して、置換アミノ酸が類似の機能、三次構造および/または保存残基を示すために類似配列が開発されている。従って、エピトープ領域が、例えばアルファヘリックスまたはベータシート構造を含む場合、置換アミノ酸は、好ましくはその特異的構造を保持する。
【0066】
本発明で用いられる「相同タンパク」は、関心のあるタンパク質(例えば、他の起源由来のβ−ラクタマーゼ)と類似の作用、構造、抗原性および/または免疫原性応答を有すタンパク質(例えば、β−ラクタマーゼ)のことを言う。相同体(ホモログ:homolog)は必ずしも進化的に関係を有することを意図していない。従って、この用語は異なる種から得られた同一機能のタンパク質を含むことを意図している。いくつかの好ましい態様において、関心のあるタンパク質におけるエピトープを相同体からの類似の断片で置換することが変化による破壊を低減するので、関心のあるタンパク質と類似の三次および/または一次構造を有する相同体を同定することが望ましい。従って、ほとんどの場合において、密接に相同的なタンパク質はエピトープ置換の最も望ましい源を提供する。選択的に、一定のタンパク質に対してヒトの類似体に注目することは有益である。例えば、いくつかの態様において、一つのβ−ラクタマーゼにおける特定のエピトープを他のβ−ラクタマーゼまたは他種のβ−ラクタマーゼに置換することは、低減した免疫原性でβ−ラクタマーゼの産生をもたらす。いくつかの態様において、本発明のβ−ラクタマーゼ相同体は、野生型β−ラクタマーゼと実質的に類似の三次および/または一次構造を有する。重要なβ−ラクタマーゼのエピトープは相同体酵素からの類似の断片で置換できる。このタイプの置換は、親β−ラクタマーゼにおいて変化による破壊を低減できる。ほとんどの場合、密接に相同なタンパク質はエピトープ置換の最も望ましい源を提供する。
【0067】
本発明で用いられる「相同遺伝子」は、相互に対応し、および相互に同一または非常に類似した種と異なるが、しかし通常関連した一組以上の遺伝子のことを言う。この用語は、遺伝子複製(例えば、パラロガス遺伝子)によって分化された遺伝子だけでなく、種分化(すなわち、新しい種の発生)(例えば、オルソロガス遺伝子)によって分化された遺伝子も含む。これらの遺伝子は「相同タンパク質」をコードする。
【0068】
本発明で用いられる「オルソログ(ortholog)」および「オルソロガス(orthologous)遺伝子」は、種分化によって共通の先祖遺伝子(すなわち、相同遺伝子)から進化した異種における遺伝子のことを言う。典型的には、オルソログは進化の過程において同一の機能を保持する。オルソログの同定は新たにシークエンスされたゲノムにおける遺伝子機能の信頼性のある予測に使用される。
【0069】
本発明で用いられる「パラログ(paralog)」および「パラロガス(paralogous)遺伝子」は、ゲノム内の複製による関連する遺伝子のことを言う。オルソログが進化の過程を通じて同一の機能を保持するのに対して、パラログはある機能がしばしば元々の機能に関連したとしても、新しい機能を進化させる。パラロガス遺伝子の具体例には、トリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ、およびトロンビンをコードする遺伝子を含むが、それらに限定されない。これらは全てセリンプロティナーゼであり、同種内で共に生成する。
【0070】
配列間の相同性の程度は、当該技術分野で既知の任意の適切な方法を用いて決定することができる(例えば、スミスおよびウォーターマン、Adv.Appl.Math.,2:482〔1981年〕;ニードルマンおよびウンシュ、J.Mol.Biol.,48:443〔1970年〕;ピアソンおよびリップマン、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444〔1988年〕;ウィスコンシン遺伝子ソフトウエア・パッケージ収録のGAP、BESTFIT、およびTFASTAといったプログラム(ジェネティクス・コンピューター・グループ、マディソン、ウイスコンシン州);およびドゥブリュー(Devereux)他、Nucl.Acid Res.,12:387-395〔1984年〕を参照されたい)。
【0071】
例えば、PILEUPは、配列相同性レベルを決定するために有益なプログラムである。PILEUPは、進歩したペアワイズ・アラインメント(pairwise alignments)を使用して一群の関連配列から多数の配列アラインメントを生成する。また、それはアラインメントを生成するために使われるクラスタリング(clustering)関係を示す系統樹を描くことができる。PILEUPは、フェンおよびドゥーリトルの進歩的したアラインメント法(Feng and Doolittle, J.Mol.Evol.,35:351-360〔1987年〕)の簡略化を利用する。この方法はヒギンスおよびシャープ(Higgins and Sharp, CABIOS 5:151-153〔1989年〕)によって記述された方法と類似している。有用なPILEUPパラメータは、3.00のデフォルトギャップ重み(default gap weight)、0.10のデフォルトギャップ長重み(default gap length weight)および重みづけ末端ギャップ(weighted end gaps)を含む。有用なアルゴリズムの他の具体例は、アルツール(Altschul)他(Altschul他、J.Mol.Biol.,215:403-410、〔1990年〕;およびカーリン他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA
90:5873-5787〔1993年〕)によって記述されたBLASTアルゴリズムである。1つの特別に有用なBLASTプログラムは、WU−BLAST−2プログラムである(Altschul他、Meth.Enzumol、266:460-480〔1996年〕を参照されたい)。パラメータ「W」、「T」および「X」は、アラインメントの感度と速度を決定する。BLASTプログラムは、デフォルトとして11の語長(W)、BLOSUM62スコアマトリクス(ヘニコフおよびヘニコフ(Henikoff and Henikoff)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:10915〔1989年〕を参照されたい)、50のアラインメント(B)、10の期待値、M’5、N’−4、および両方の鎖(strands)の比較を使用する。
【0072】
本発明で用いられる「パーセント(%)核酸配列同一性」は、配列のヌクレオチド残基と同一である候補配列におけるヌクレオチド残基のパーセンテージとして定義される。
【0073】
本発明で用いられる「ハイブリダイゼーション」という用語は、当該技術分野で既知のように、核酸鎖が塩基対形成を通して相補鎖に結合する過程のことを言う。
【0074】
本発明で用いられる「ハイブリダイゼーション条件」は、ハイブリダイゼーション反応が行われる条件のことをいう。これらの条件は、ハイブリダイゼーションが測定される条件の「ストリンジェンシー」の低度によって具体的に分類される。ストリンジェンシーの条件は、例えば、核酸結合複合体またはプローブの融解温度(Tm)に基づくことができる。例えば、「最大ストリンジェンシー」は、典型的には約Tm−5℃(プローブのTmの5℃下)で起こり、「高度ストリンジェンシー」はTmより約5−10℃下であり、「中程度ストリンジェンシー」はプローブのTmより約10−20℃下であり、「低度ストリンジエンシー」はTmより約20−25℃下である。選択的または追加的に、ハイブリダイゼーション条件はハイブリダイゼーションの塩またはイオン強度条件および/または1つ以上のストリンジェンシー洗浄に基づくことができる。例えば、6×SSC=非常に低度ストリンジェンシー、3×SSC=程度から中程度ストリンジェンシー、1×SSC=中程度ストリンジェンシー、および0.5×SSC=高度ストリンジェンシーである。機能的に最大のストリンジェンシー条件は、ハイブリダイゼーション・プローブと厳格な同等性(strict identity)またはほぼ厳格な同等性(near-strict identity)を有する配列の同定のために用いることができ、一方、高度ストリンジェンシー条件はプローブと約80%以上の同等性を有する核酸配列のホモログの同定に用いられる。
【0075】
高度の選択性を必要とする適用に関して、ハイブリッドを形成するため(例えば、比較的低い塩および/または高温条件が用いられる)、典型的には比較的ストリンジェントな条件を採用することを望むことになる。
【0076】
二つ以上の核酸またはポリペプチドの文脈において「実質的に類似」および「実質的に同一」という言い回しは、具体的には、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが、文献(すなわち、野生型)配列と比較して60%以上の同一性を有する配列を含み、好ましくは75%以上の配列同一性、より好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上、もっとより好ましくは95%、最も好ましくは97%、時として98%および99%の配列同一性を有する配列を含むことを意味する。配列同一性は、標準パラメータを使用してBLAST、ALIGN、およびCLUSTALのような既知のプログラムを使用して決定される。(例えば、Altschul他、J.Mol.Biol. 215:403-410〔1990年〕;ヘニコフ他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915〔1989年〕;カリン他、Proc.Natl.Acad.Sci USA 90:5873〔1993年〕;およびヒギンス他、Gene 73:237-244〔1988年〕を参照されたい)。BLAST分析を実行するためのソフトウエアは、全米バイオテクノロジー情報センターを通じて公的に入手可能である。また、データベースはFASTA (ピアソン他、Proc.Natl.Acad.Sci. USA 85:2444 − 2448〔1988年〕)を使用して検索できる。2つのポリペプチドが実質的に同一であるいうことを示すことにより、第一ポリペプチドは第二ポリペプチドと免疫学的に交差反応性であることがわかる。具体的には、保存的なアミノ酸置換により異なるポリペプチドは免疫学的に交差反応性である。したがって、例えば2つのペプチドが保存的置換によってのみ異なる場合には、ポリペプチドは実質的に第二のポリペプチドと同一である。また、2つの核酸配列が実質的に同一であることを示すことにより、2つの分子はストリンジェントな条件下で(例えば、中程度から高度のストリンジェンシーの範囲内で)互いにハイブリダイズする。
【0077】
本発明で用いられる「等価残基」は、特定のアミノ酸残基を共有するタンパク質のことを言う。例えば、等価残基はその三次構造がX線結晶学によって決定されたタンパク質(例えば、IFN−β)に関する三次構造のレベルで相同性を決定することによって同定することができる。等価残基は、推定上の等価残基を有すタンパク質および関心あるタンパク質(NonN、CAonCA、ConC、および OonO)の特定のアミノ酸残基の主鎖原子の2または3以上の原子座標がアラインメント後に0.13nm、好ましくは0.1nmの範囲内であるものとして定義される。分析されたタンパク質の非水素タンパク原子の原子座標の極大重なりを生じさせるために最良のモデルが配向され、位置づけられた後に、アラインメントが実行される。好ましいモデルは、結晶学およびタンパク質の特徴づけ/分析の当業者に既知の方法を用いて決定された、利用可能な最高の分解能で実験回折データのために最低のR因子を与える結晶学モデルである。
【0078】
本発明は、言及される特定の微生物株由来のものと等価である変更された免疫原性を有すタンパク質を含む。この文脈において、「等価」であるとは、中程度から高度のストリンジェンシー条件下で、ヒトT細胞への変更された免疫原性応答を保持しつつ、配列番号1のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズできるポリヌクレオチドによってβ−ラクタマーゼがコードされることを意味する。したがって、いくつかの態様において、等価なβ−ラクタマーゼは、エピトープ配列およびそのようなエピトープを有する変異体β−ラクタマーゼに対し、55%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上または99%以上の同一性を含む。
【0079】
本発明で用いられる「ハイブリッドβ−ラクタマーゼ」および「融合β−ラクタマーゼ」という用語は、2つ以上の異なるまたは「親」タンパク質から操作されたタンパク質のことを言う。好ましい態様において、これらの親タンパク質は相互に相同体である。例えば、いくつかの態様において、好ましいハイブリッドβ−ラクタマーゼまたは融合タンパクはタンパク質のN末端およびタンパク質の相同体のC末端を含む。いくつかの好ましい態様において、2つの最終端末は完全長の活性タンパクに一致するように結合される。選択的な好ましい態様において、相同体は実質的な類似性を共有するが、同一のT細胞エピトープは持たない。従って、ある態様において、本発明はC末端における1つまたは2以上のT細胞エピトープを有する関心あるβ−ラクタマーゼを提供するが、そこにおいてC末端はC末端において作用の弱いT細胞エピトープ、または少数のエピトープを有する、またはT細胞エピトープの存在しない相同体のC末端に置換される。従って当業者は、相同体間にT細胞エピトープを同定できることによって、異なった免疫原性応答を生成する多様な変異体を形成できることを理解している。更に、内在性部分、および1つ以上の相同体は本発明の変異体を生成するために使用することができることがわかる。
【0080】
本発明で用いられる「制御要素」という用語は、核酸配列の発現のある局面を制御する遺伝的要素のことを言う。例えば、プロモータは、作働可能に結合したコード領域の転写の開始を促進する制御要素である。その他の制御要素は、スプライシング信号、ポリアデニル化信号、および終結信号等である。
【0081】
本発明で用いられる「発現ベクター」は、適当な宿主においてDNAの発現を奏功することができる好適な制御配列に作動可能に結合されたDNA配列を含むDNA構築体のことを言う。そのような制御配列は、転写を奏功するプロモータ、そのような転写を制御する任意のオペレータ配列、好適なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、および転写および翻訳の停止を制御する配列を含む。ベクターはプラスミド、ファージ粒子、または単に潜在的な遺伝子挿入体であり得る。いったん適切な宿主に形質変換されると、ベクターは宿主ゲノムと独立して複製および機能でき、または場合によってはゲノム自体に組み入れられる。本明細書において、「プラスミド」および「ベクター」は、プラスミドが現在ベクターの最も一般的な使用形態であるために、時々互換的に用いられる。しかし、本発明は等価の機能を提供し、また当技術分野で既知の、もしくは知られるようになる発現ベクターのそのような他の形態を含むことを意図している。
【0082】
本発明で用いられる「宿主細胞」は、一般的には、酵素的に活性な内因性プロテアーゼを分泌できないようにするために、好ましくは当該技術分野で既知の方法(例えば、US4,760,025号を参照されたい)により操作された原核生物のまたは真核生物の宿主である。タンパク質を発現するための好ましい宿主細胞は、酵素的に活性な中性タンパク質およびアルカリ性プロテアーゼ(スブチリシン)を欠損したバチルスBG2036株である。BG2036株の構築は米国特許5,264,366号に詳述され、本文献は参照により本発明に取り込まれる。タンパク質を発現するための他の宿主細胞には、B.リケニフォルミス(licheniformis)、B.レントゥス(lentus)、および他のバチルス種などの種を含むが、これらに限定されない任意の好適なバチルス株と同様に、バチルス・スブチリス(subtilis)I168(米国特許4,760,025号(RE34,606号)および米国特許5,264,366号にも記述されている。これらの開示は参照により本発明に取り込まれる。)が含まれる。しかしながら、当該技術分野において好適な宿主細胞として他の生物体(例えば、E.コリ等)が知られているため、本発明は宿主細胞としてバチルス種に限定することを意図していない。いくつかの態様において、前記宿主細胞は、内因性β−ラクタマーゼが宿主細胞により生産されないように修飾されている。
【0083】
宿主細胞は、当該技術分野で既知の組み換えDNA技術を用いて構築されたベクターで形質転換され、または形質移入される。形質転換された宿主細胞は、タンパク質変異体をコードするベクターを複製し、または所望のタンパク質変異体を発現することができる。タンパク質変異体のプレ、またはプレプロ形態をコードするベクターの場合、発現すると、そのような変異体は典型的に宿主細胞から宿主細胞培地に分泌される。
【0084】
核酸配列を細胞に挿入するという文脈における「導入された」という用語は、形質転換、形質誘導、または形質移入を意味する。形質転換の意味には、当該技術分野で知られているように、プロトプラスト形質転換、塩化カルシウム沈降、エレクトロポレーション、むき出しのDNA等が含まれる(チャンおよびコーエン著、Mol.Gen.Genet.168巻、111〜115頁、1979年;スミス他著、Appl.Env.Microbiol.51巻、634頁、1986年;およびフェラーリ他著の総説記事、ハワード編「バチルス」、プレナム・パプリッシング社、57〜52頁、1989年を参照されたい)。
【0085】
「プロモータ/エンハンサ」という用語は、プロモータおよびエンハンサ機能の両方を提供することが可能な配列を含んだDNA断片を意味する(例えば、レトロウイルスの長い末端反復はプロモータおよびエンハンサ機能の両方を含む)。前記エンハンサ/プロモータは、「内因性」または「外因性」または「異種性」であることが可能である。内因性エンハンサ/プロモータは、ゲノムにおいて所与の遺伝子と自然に結合する因子である。外因性(異種性)エンハンサ/プロモータは、遺伝子操作(すなわち、分子生物学技術)を用いて遺伝子に並んで位置される因子である。
【0086】
発現ベクター上の「スプライシング信号」の存在は、しばしば組み換え転写物のより高い発現レベルをもたらす。スプライシング信号は、主要なRNA転写物からのイントロンの除去を媒介し、スプライスのドナーおよびアクセプター部位からなる(サムブルク(Sambrook)他、分子クローニング:実験室マニュアル、第2版、コールド・スプリング・ハーバー研究所出版、ニューヨーク、1989年、16.7〜16.8頁)。一般に使われるスプライのスドナーおよびアクセプター部位はSV40の16S RNAからのスプライス接合部である。
【0087】
「安定した形質移入」および「安定的に形質移入された」という用語は、形質移入された細胞のゲノムへの外来DNAの導入および組み込みのことをいう。「安定した形質移入体」という用語は、安定して外来DNAを形質移入された細胞のゲノムDNAへ組み込んだ細胞のことをいう。
【0088】
本発明で用いられる「選択可能なマーカー」および「選択可能な遺伝子産物」という用語は、選択可能なマーカーが発現する細胞への抗生剤または薬剤に対する抵抗力を与える酵素活性をコードする遺伝子の使用のことをいう。
【0089】
本発明で用いられる「増幅」および「遺伝子増幅」という用語は、増幅された遺伝子が当初ゲノムにおいて存在した遺伝子より高いコピー数で現れるようになるように、特定のDNA配列が不均衡に複製される過程のことをいう。いくつかの態様において、薬剤(例えば、阻害可能酵素の阻害剤)の存在下における増殖による細胞の選択は、薬剤の存在下で増殖のために必要とされる遺伝子産物をコードする内因性遺伝子の増幅、またはこの遺伝子産物をコードする外因性(すなわち、取り込み)配列の増幅によって必要とされる遺伝子産物をコードする内因性遺伝子の増幅、または両方の増幅をもたらす。遺伝子増幅は、両生類卵母細胞におけるリボソーム遺伝子の増幅のような特定の遺伝子の発達の期間に自然に生じる。遺伝子増幅は、培養細胞を薬剤で処理することによって誘発される。薬剤誘発性増幅の具体例は、哺乳類細胞の内因性dhfr遺伝子のメトトレキサート誘発増幅である(シュミッケ(Schmike)他著、サイエンス、202巻、1051頁、1978年)。薬剤(例えば、阻害可能酵素の阻害剤)の存在下における増殖による細胞の選択は、薬剤の存在下で増殖のために必要とされる遺伝子産物をコードする内因性遺伝子の増幅、またはこの遺伝子産物をコードする外因性(すなわち、取り込み)配列の増幅によって必要とされる遺伝子産物をコードする内因性遺伝子の増幅、または両方の増幅をもたらす。
【0090】
「増幅」は鋳型(template)特異性を含む核酸複製の特別な場合のことをいう。それは非特異的鋳型複製(すなわち、鋳型依存性ではあるが、特定の鋳型に依存的ではない複製)と対照的である。鋳型特異性は本発明において複製の正確さ(すなわち、適切なポリヌクレオチド配列の合成)およびヌクレオチド(リボ−またはデオキシリボ−)特異性とからは区別される。鋳型特異性はよく「標的」特異性という用語で記述される。標的配列は、他の核酸から選び出すことを追及するという意味において「標的」であ。増幅技術はこの選び出すことを主な目的として設計される。
【0091】
本発明で用いられる「共増幅(co-amplification)」という用語は、他の遺伝子配列(すなわち、発現ベクター内に含んだもののような、1つ以上の非選択可能な遺伝子を含む)と結合した増幅可能なマーカーを単一細胞に導入し、その細胞が増殖可能なマーカーおよび他の非選択可能な遺伝子配列の両方を増幅するように適切な選択的圧力をかけることをいう。前記増幅可能なマーカーは、1つが増幅可能なマーカーを含んで他方が非選択可能なマーカーを含み、同じ細胞に導入することができる、他の遺伝子配列または選択的に2つの別のDNA断片に物理的に結合することができる。
【0092】
本発明で用いられる「増幅可能なマーカー」、「増幅可能な遺伝子」および「増幅可能なベクター」という用語は、適切な増殖条件下において、その遺伝子の増幅を可能とする遺伝子をコードするマーカー、遺伝子またはベクターのことをいう。
【0093】
「鋳型特異性」は酵素の選択によりほとんどの増幅技術において達成される。増幅酵素は、それらが用いられる条件下で核酸の不均一な混合物において特定の核酸配列のみを処理する酵素である。例えば、Qβレプリカーゼの場合にMDV−1 RNAはレプリカーゼの特異的な鋳型である(例えば、カシアン(Kacian)他著、プロシーデングズ・オブ・ナショナル・アカデミー・サイエンスUSA、69巻、3038頁、1972年を参照されたい)。他の核酸はこの増幅酵素により複製されない。同様に、T7RNAポリメラーゼの場合に、この増幅酵素はそれ自身のプロモータにストリンジェントな特異性を有する(チャンバーリン(Chamberlin)他著、ネイチャー、228卷、227頁、1970年を参照されたい)。T4DNAリガーゼの場、この酵素は、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド基質および結合の鋳型にミスマッチがある場合には2つのオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの結合をしない(ウおよびウァレス(Wu and Wallace)著、ゲノミクス、4卷、560頁、1989年を参照されたい)。最後に、TaqおよびPfuポリメラーゼは、高温で機能するそれらの能力のために結合した配列に高い特異性を示し、したがってプライマーにより定義されることがわかっている。この高温のために、標的配列とのプライマー・ハイブリダイゼーションおよび非標的配列との非ハイブリダイゼーションに向いている熱動力学的条件をもたらす。
【0094】
本発明で用いられる「プライマー」という用語は、精製された制限消化物に当然に生じ、または合成的に生産したの如何を問わず、核酸一本鎖に相補的なプライマー延長生成物の合成が誘導される条件下に置かれた時に(すなわち、ヌクレオチドおよびDNAポリメラーゼのような誘導剤の存在下で、適当な温度およびpHにおいて)合成開始点として働くことができるオリゴヌクレオチドのことをいう。前記プライマーは増幅の最大効果のために好ましくは一本鎖であるが、選択的に二本鎖であることもできる。二本鎖である場合には、前記プライマーは延長生成物を調製ために用いられる前に、初めにその二本鎖を分離するために処理される。前記プライマーは、誘導剤存在下において延長生成物の合成を開始するのに十分な長さを有さなければならない。前記プライマーの正確な長さは、温度、プライマー源、および使用方法を含む多くの要因に依存することになる。
【0095】
本発明で用いられる「プローブ」という用語は、精製された制限消化物に当然に生じ、または遺伝子組換え的またはPCR増幅により合成的に生産したの如何を問わず、関心のある他のオリゴヌクレオチドを加水分解することができるオリゴヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチド配列)のことをいう。プローブは一本鎖でも二本鎖でもよい。プローブは検出、同定、および特定遺伝子配列の単離に有用である。本発明で用いられる任意のプローブは、酵素(例えば、酵素に基づく組織化学的アッセイと同様にELISA)、蛍光、放射活性、および発光系を含むが、これらに限定されない任意の検出系で検出できるように任意の「レポーター分子」で標識されることになると考えられる。本発明は如何なる特定の検出系または標識にも限定されることを意図していない。
【0096】
本発明で用いられる「標的」という用語は、ポリメラーゼ鎖反応を言及するために用いられる場合にはポリメラーゼ連鎖反応に用いられるプライマーにより結合される核酸領域のことをいう。したがって、「標的」は他の核酸配列から選び出すことが意図されている。「領域(segment)」は前記標的配列内の核酸領域として定義される。
【0097】
本発明で用いられる「ポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)」という用語は、米国特許4,683,195号、4,683,202号、および4,965,188号の方法(ここで参照により取り込まれる)のことをいい、クローニングまたは精製を除き、ゲノムDNA混合物において標的配列の領域の濃度を上昇させるための方法を含む。標的配列を増幅するためのこの方法は、所望の標的配列を含むDNA混合物に大過剰の2つのオリゴヌクレオチド・プライマーを導入する工程、つぎにDNAポリメラーゼ存在下における温度サイクルの正確な継続の工程からなる。前記2つのプライマーは二本鎖標的配列のそれぞれの鎖に相補的である。増幅を奏功するために、前記混合物は変性され、前記プライマーは次に標的分子内の相補的配列にアニール(anneal)される。アニーリング(annealing)に続いて、プライマーは相補鎖の新しい対を形成するためにポリメラーゼで延長される。変性工程、プライマー・アニーリングおよびポリメラーゼによる延長は高濃度な所望の標的配列の増幅領域を達成するために多数回(すなわち、変性、アニーリング、および延長は1つのサイクルを構成し、多数のサイクルがあり得る)繰り返すことができる。所望標的配列の増幅領域の長さはプライマー相互の相対的位置により決定することができ、このためこの長さは制御可能なパラメータである。前記工程の繰り返される点から、前記方法は「ポリメラーゼ連鎖反応(以下、「PCR」という。)」と呼ばれる。所望の標的配列の増幅領域が混合物中の主要な配列(濃度という点から)となるため、それらは「PCR増幅された」と言われる。
【0098】
本発明で用いられる「増幅試薬」という用語は、プライマー、核酸鋳型、および増幅酵素を除いて増幅に必要とされるそれらの試薬(デオキシリボヌクレオチド三燐酸、緩衝液など)のことをいう。具体的には、他の反応成分とともに増幅試薬は反応容器(試験管、マイクロウェルなど)に入れられ、および含まれる。
【0099】
PCRを用いると、ゲノムDNAにおける特定標的配列の1コピーを幾つかの異なる方法により検出可能なレベルまで増幅することができる(例えば、標識プローブによるハイブリダイゼーション、ビオチン化プライマー取り込み後のアビジン−酵素結合物検出、dCTPまたはdATPのような32P標識デオキシヌクレオチド三燐酸の増幅領域への取り込み)。ゲノムDNAに加えて、任意のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列は適当なプライマー分子セットで増幅することができる。特に、PCR法それ自体により生成された増幅領域は、それ自体、引き続くPCR増幅のための効果的な鋳型である。
【0100】
本発明で用いられる「PCR生成物」、「PCR断片」、および「増幅生成物」という用語は、変性、アニーリング、および延長というPCR工程の2サイクル以上が完了した後に得られる化合物の混合物のことをいう。これらの用語には、1つ以上の標的配列における1つ以上の領域の増幅が起こる場合が含まれる。
【0101】
本発明で用いられる「制限エンドヌクレアーゼ」および「制限酵素」という用語は、特定のヌクレオチド配列にある、またはその近くにある二重鎖DNAを切断するそれぞれの微生物酵素のことをいう。
【0102】
本発明で用いられる「バチルス属」は、当業者に知られている「バチルス」属の範囲内の全ての種を含む。これらには、バチルス・スブチリス(subtilis)、バチルス・リケニフォルミス(licheniformis)、バチルス・レントゥス(lentus)、バチルス・ブレビス(brevis)、バチルス・ステアロテルモフィルス(stearothermophilus)、バチルス・アルカロフィルス(alkalophilus)、バチルス・アミロリケファシエンス(amyloliquefaciens)、バチルス・クラウシ(clausii)、バチルス・ハロデュランス(halodurans)、バチルス・メガテリウム(megaterium)、バチルス・コアグランス(coagulans)、バチルス・シルクランス(circulans)、バチルス・ラウトゥス(lautus)、およびバチルス・トゥリンギエンシス(thuringiensis)が含まれるが、これらに限定されない。バチルス属については分類学的再編成が継続しておこなわれているものと考えられる。したがって、この属は再分類されてきた種を含むことを意図している。これらには、現在では「ゲオバチルス(geobacillus)・ステアロテルモフィルス」と命名されたバチルス・ステアロテルモフィルスのような生物体が含まれるが、これに限定されない。酸素存在下における抵抗性内生胞子の生産はバチルス属の特徴を決定すると考えられる。もっともこの特徴も最近命名されたアリシクロバチルス(Alicyclobacillus)、アムフィバチルス(Amphibacillus)、アノイリニバチルス(Aneurinibacillus)、アノキシバチルス(Anoxybacillus)、ブレビバチルス(brevibacillus)、フィロバチルス(Filobacillus)、グラシリバチルス(Gracilibacillus)、ハロバチルス(Halobacillus)、ペニバチルス(Paenibacillus)、サリバチルス(Salibacillus)、テルモバチルス(Thermobacillus)、ウレイバチルス(Ureibacillus)、およびビルギバチルス(Virgibacillus)に適用する。
【0103】
本発明で用いられる「有効量のβ−ラクタマーゼ酵素」は、特定の応用において求められる酵素活性を達成するために必要なβ−ラクタマーゼ酵素の量のことをいう。そのような有効量は、当業者によって、使用される特定の酵素変異体、含まれる応用、全組成物のうちの特定組成物などのような多くの要因に基づいて容易に確定される。
【0104】
前述のように、本発明のβ−ラクタマーゼは、その前駆体DNAによりコードされる未処理β−ラクタマーゼと比較した場合、修飾された免疫原性応答(例えば、抗原性および/または免疫原性)を示す。いくつかの好ましい態様において、前記タンパク質(例えば、β−ラクタマーゼ)は低減したアレルゲン性/免疫原性を示す。当業者は、本発明のβ−ラクタマーゼの使用が大部分タンパク質の免疫学的特性で決定されることになることを容易に理解する。
【0105】
本発明の1つの態様において、本発明において同定されるエピトープは、1つまたは両方のそのようなエピトープを含む免疫応答(例えば、β−ラクタマーゼに対する抗体を生成することが望まれる場合)を示すために用いられる。そのような抗体は、これらの領域またはこれに高度に相同な領域のうちの1つまたは両方を含む他のβ−ラクタマーゼのスクリーニングに用いられる。追加的に、本発明のβ−ラクタマーゼは、これら又は高度に相同な領域を含むタンパク質に対するヒトの感受性を評価するために、特定のエピトープ領域を発現する単離天然エピトープ、組換えタンパク質、または合成ペプチドを利用する免疫アッセイのような様々なアッセイにおける試薬として用いられる。
【0106】
他の態様において、本発明のエピチープ断片は、そのような断片を結合し、提示することができるMHC分子を有する抗原提示細胞の検出に用いられる。例えば、前記エピトープ断片は検出可能な標識(例えば、放射活性標識)を含むことができる。この標識断片は次に関心のある細胞とインキュベートされ、さらにその標識断片を結合(または提示)する細胞が検出される。
【0107】
追加的な態様において、低減したアレルゲン性/免疫原性をもつ関連および/または変異体β−ラクタマーゼは、薬学的応用、薬物送達応用、および他のヘルスケア応用を含む他の応用に用いられる。
【0108】
さらに、低減したアレルゲン性/免疫原性をもつ関連および/または変異体タンパク質は、薬学的応用、薬物送達応用、および他のヘルスケア応用を含む他の応用に用いられる。実際、本発明のβ−ラクタマーゼは多くの組成物および応用に広範に用いられることになることが意図されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0109】
発明の詳細な説明
本発明は、親β−ラクタマーゼに比較して低下した免疫原性応答を示す変異体と同様に、β−ラクタマーゼCD4+T細胞エピトープを提供する。本発明はさらに、β−ラクタマーゼをより低下した免疫原性にするための方法と同様に、新規なβ−ラクタマーゼ変異体をコードするDNA分子、新規なβ−ラクタマーゼ変異体をコードするDNAを提供する。さらに本発明は、野生型のβ−ラクタマーゼより免疫原性の低下したこれらのβ−ラクタマーゼ変異体を含む様々な組成物を提供する。幾つかの態様において、本発明は、本発明の方法を用いる同定され、および/または特徴づけられた低下した免疫原性を有するβ−ラクタマーゼ変異体を提供する。
【0110】
前記β−ラクタマーゼT細胞エピトープの一般的な評価に続いて、β−ラクタマーゼにおける4つのT細胞エピトープが本発明の方法を用いて記載されるように、さらに分析された。関心あるものとして同定された以下のエピトープを下記の表1に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
いくつかの態様において、本発明はβ−ラクタマーゼの免疫原性を減少させる残基を同定することをさらに含む。いくつかの態様において、1つ以上のアミノ酸置換が野生型または親β−ラクタマーゼ配列における1つ以上のT細胞で生じる。いくつかの好ましい態様において、低減したアレルゲン性/免疫原性を有するβ−ラクタマーゼ変異体を生成するために親β−ラクタマーゼ配列で多数のアミノ酸が変化される。選択的な好ましい態様において、低減したアレルゲン性/免疫原性を有する変異体β−ラクタマーゼを生成するためにアミノ酸の欠失、挿入および/または置換が親β−ラクタマーゼ配列でなされる。いくつかの態様において前記β−ラクタマーゼはE.クロアカエ(cloacae)β−ラクタマーゼであるが、選択的な態様において前記β−ラクタマーゼは任意の他の生物体から得られるβ−ラクタマーゼである。いくつかの態様において前記β−ラクタマーゼは野生型であるが、他の態様においてそれは、ある個体または被験個体において感作を誘発する、関心のあるエピトープにアミノ酸置換をもつ突然変異した変異体であり、接合した変異体であり、またはハイブリッド変異体である。
【0113】
低減したアレルゲン性/免疫原性を有するβ−ラクタマーゼに加えて、本発明は親β−ラクタマーゼと同程度のアレルゲン性/免疫原性を有するが、他の変化した特徴を有する変異体β−ラクタマーゼと同様に、増強したアレルゲン性/免疫原性を有する変異体β−ラクタマーゼを包含する。選択的な好ましい態様において、増加したアレルゲン性/免疫原性を有する変異体β−ラクタマーゼを生成するために、アミノ酸の欠失、挿入および/または置換が親β−ラクタマーゼ配列において作られる。追加の態様において、前記変異体β−ラクタマーゼはアミノ酸配列の非T細胞エピトープ領域における変性を含む。したがって、本発明はT細胞に対し同等の応答性を有するが、他の変化した特徴を有するβ−ラクタマーゼを包含する。好ましい態様において、これらの変化した特徴は変異体β−ラクタマーゼに有利な特徴を与える。いくつかの態様においてこのβ−ラクタマーゼは野生型であるが、他の態様においてそれは、ある個体または被験個体において感作を誘発する、関心のあるエピトープにアミノ酸置換をもつ突然変異した変異体であり、接合した変異体であり、またはハイブリッド変異体である。
【0114】
本発明のある好ましい態様において、変化した免疫原性応答(例えば、増加または減少した免疫原性応答)を有するペプチドは関心のあるβ−ラクタマーゼ由来である。いくつかの態様において、前記エピトープは以下のエピトープおよび非エピトープを同定するアッセイにより同定される。分化した樹状細胞は未処理ヒトCD4+および/またはCD8+T細胞および関心のあるペプチドと混合される。より具体的には、いくつかの態様において、関心のある低減した免疫原性応答ペプチドが提供される。ここで、T細胞エピトープは(a)単一のヒト血液源から樹状細胞溶液、および未処理CD4+および/またはCD8+T細胞溶液を得、(b)前記樹状細胞を分化させて、(c)前記分化樹状細胞溶液および前記未処理CD4+および/またはCD8+T細胞溶液を関心のあるペプチドと混合し、および(d)工程(c)における前記T細胞の増殖を測定する工程を含み、確認される。
【0115】
本発明の1つの態様において、関心のあるβ−ラクタマーゼの全部または一部分に対応する一群のペプチド・オリゴマーが調製される。いくつかの好ましい態様において、ペプチド・ライブラリが前記タンパク質の主要な部分または全部を含んで生成される。下記の実施例で記述するように、3アミノ酸による一群の15merペプチドの分画(offset)を関心のあるエピトープの同定に用いた。本発明で提供されるアッセイにおいて各ペプチドを個別に分析することにより、本発明の方法はT細胞により認識されたエピトープの正確な同定を容易にする。上記の実施例において、隣のものよりも大きな特定ペプチドの応答により、エピトープ・アンカー領域の同定は3アミノ酸内に容易にできる。いくつかの態様において、これらのエピトープの位置決めがなされた後、前記ペプチドが初めのタンパク質のものと異なるT細胞応答を生じるまで、各エピトープ内の1つ以上のアミノ酸が修飾される。さらに、本発明は、自然発生の形態(すなわち、野生型タンパク質)で用いることができる望ましい低T細胞エピトープ性能を有するタンパク質を同定する手段を提供する。
【0116】
本発明は、免疫原性応答を調整することが望ましい全てのタンパク質の範囲に及ぶ。当業者は、本発明のタンパク質およびペプチドが必ずしも未処理のタンパク質およびペプチドとは限らないことを容易に理解する。実際、本発明の1つの態様において、変化した免疫原性応答を有する組換え遺伝子が考慮されている(遺伝子シャフリングおよびそのような遺伝子の発現の記述については、例えば、ステマー(stemmer)著、プロシーデングズ・オブ・ナショナル・アカデミー・サイエンスUSA、91巻、10747頁、1994年;パッテン(Patten)他著、Curr.Op.Biotechnol.8巻、724頁、1997年;クッシュナーおよびアーノルド(Kuchner and Arnold)著、トレンズ・オブ・バイオテクノロジー、15巻、523頁、1997年;ムーア(Moore)他著、ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー、272巻、336頁、1997年;チャオ(Zhao)他著、ネイチャー・バイオテクノロジー、16巻、258頁、1998年;ギバー(Giver)他著、プロシーデングズ・オブ・ナショナル・アカデミー・サイエンスUSA、95巻、12809頁、1998年;ハラヤマ著、トレンズ・オブ・バイオテクノロジー、16巻、76頁、1998年;リン(Lin)他著、バイオテクノロジー・プログレス、15巻、467頁、1999年;およびサン(Sun)著、コンピュータ・バイオロジー、6巻、77頁、1999年を参照されたいを参照されたい)。いくつかの態様において、β−ラクタマーゼは、β−ラクタマーゼに対する動物の免疫応答が変化するように変性されている。
【0117】
好ましくは本発明にしたがって、β−ラクタマーゼは単離され、精製される。「精製」(または「単離」)は、自然にともに存在するある種の又は全ての自然発生成分からβ−ラクタマーゼを分離することにより、β−ラクタマーゼが自然状態から変化することを意味する。この精製は、最終組成物において望ましくない全細胞、細胞破砕物、不純物、外来タンパク質、および/または酵素を除去するためにイオン交換クロマトグラフィー、アフィニティー・クロマトグラフィー、疎水分離、透析、β−ラクタマーゼ処理、硫酸アンモニウム析出または他の蛋白塩析出、遠心分離、ゲル濾過クロマトグラフィー、濾過、精密濾過、ゲル電気泳動、またはグラジエント分離のような技術が認識された分離技術を含むが、これらに限定されない当該技術分野で既知の任意の適当な手段により達成されることが意図されている。いくつかの態様において、追加的な利益を提供するために、例えば活性化剤、抗阻害剤、所望のイオン、pH調製化合物、および/または他の酵素(例えば、セルラーゼ)のような成分がβ−ラクタマーゼ含有組成物に添加される。さらなる態様において、組換えβ−ラクタマーゼが精製される。
【0118】
上記タンパク質およびペプチドに加えて、本発明は変化した免疫原性応答(例えば、増加または低下した免疫原性応答)を示す変異体β−ラクタマーゼと同様に、野生型β−ラクタマーゼも包含する。いくつかの態様において、変異体β−ラクタマーゼは、それが引き起こすT細胞応答が親(すなわち、前駆体)β−ラクタマーゼにより引き起こされるものより大きい場合には、増加した免疫原性応答を示す。この高い応答の実質的な結果はβ−ラクタマーゼに対する抗体の上昇として現れる。これらの抗体は、β−ラクタマーゼ、β−ラクタマーゼ変異体等を検出する方法を含むが、これらに限定されない様々な設定に用いられる。選択的な態様において、変異体β−ラクタマーゼは、それが引き起こすT細胞応答が親(すなわち、前駆体)β−ラクタマーゼにより引き起こされるものより小さい場合には減少した免疫原性応答を示す。この高い応答の実質的な結果はβ−ラクタマーゼに対する抗体の減少として現れる。これらの変異体β−ラクタマーゼは、他のタンパク質と組み合わせたヒトおよび/または他の動物への投与を含むが、これらに限定されない様々な設定に用いられる。
【0119】
実際、実施例8で記述されるin vivoの結果は、マウスにおける免疫優勢エピトープへの増殖応答を減弱されると、T細胞増殖および抗体産生の両方のレベルで総タンパク質の免疫原性が消失することを示している。新しいエピトープ応答を示唆したCD1.1タンパク質に見られる増殖のレベルは、この免疫感作プロトコルにおける抗体応答を誘発するのに十分ではなかった。標的エピトープはヒト群で同定された免疫優勢エピトープと同一であった。
【0120】
変異体タンパク質の低減した免疫原性応答を確認するのに有用な具体的なアッセイには、in vivoアッセイ(HLA−DR3/DQ2マウスT細胞応答)およびin vitroアッセイ(β−ラクタマーゼおよび/またはβ−ラクタマーゼ変異体のサンプルに対するヒト末梢血単球細胞(PBMC))が含まれるが、これらに限定されない。低減した免疫原性応答を確認するのに有用なin vivoアッセイには、トランスジェニック・マウスの使用に限定されず、例えばラット(タウログ(Taurog)他著、イムノロジンル・シビュー、169巻、209〜223頁、1999年)、ウサギ、またはブタが含まれる。関心のある修飾タンパク質および変異体の低減した免疫原性応答を測定するin vivo試験に好ましいトランスジェニック・マウスモデルは、当該技術分野で知られているHLA−DR3/DQ2マウスモデルである。
【0121】
さらに、自然発生アミノ酸配列に対してヒトのような動物の免疫原性応答を変化(例えば、増加および減少)させるため、本発明は突然変異タンパク質(例えば、タンパク質の機能活性を変化させるために改変されたβ−ラクタマーゼ)の免疫原性応答を低減させるための手段を提供する。いくつかの態様において、増加した活性、増加した熱安定性、増加したアルカリ安定性、および/または酸化安定性を含むが、これらに限定されないいくつかの有益な特徴を提供するために突然変異は起こされる。いくつかの態様において、前記突然変異は、突然変異したβ−ラクタマーゼの新しいT細胞エピトープの取り込みを生じる。本発明でさらに詳細に記述するように、本発明は、突然変異タンパク質の免疫原性応答を変化させることになるアミノ酸の変化を有するβ−ラクタマーゼT細胞エピトープおよび変異体β−ラクタマーゼを提供する。
【0122】
本発明は上記タンパク質および他の多数のものを包含するが、簡略化のために以下にはβ−ラクタマーゼの修飾を含む本発明の特に好ましい態様について記述する。
【0123】
本発明で用いるアミノ酸の位置番号は配列番号1のβ−ラクタマーゼ配列で割り当てられたもののことをいう。しかしながら、本発明はこの特定のβ−ラクタマーゼの突然変異に限定されるものではなく、配列番号1のβ−ラクタマーゼにおける特定のセウ呈された残基と「等価な」位置のアミノ酸残基を含む前駆体β−ラクタマーゼにも及ぶ。前駆体β−ラクタマーゼの残基(アミノ酸)は、もしそれが特定の残基または親β−ラクタマーゼにおけるその残基の部分(すなわち、化学的に結合し、反応し、相互作用する同一または類似の機能的性能を有する)に相同(すなわち、一次または三次構造のいずれかの位置で対応する)または類似なら、親β−ラクタマーゼの残基と等価である。本発明で用いられる「対応する」は一般的にペプチドに沿った類似の位置のことをいう。
【0124】
いくつかの好ましい態様において、一次構造への相同性を確認するためには前駆体β−ラクタマーゼのアミノ酸配列は、親β−ラクタマーゼの一次構造および特に配列既知のβ−ラクタマーゼにおいて変異していないことがわかっている一群の残基と直接比較される。保存された残基とアラインし、アラインメントを維持するために必要な挿入および欠失を許容(すなわち、任意の欠失および挿入により保存された残基の除去を避ける)した後に、親β−ラクタマーゼの一次構造における特定アミノ酸に等価な残基が定義される。保存された残基のアラインメントにより、好ましくはそのような残基の100%が保存されるべきである。しかしながら、75%より高い、または50%のみの保存された残基のアラインメントも等価な残基を定義するのには適当である。したがって、これらの保存された残基は、好ましい親β−ラクタマーゼに高度に相同な他のβ−ラクタマーゼにおいて親β−ラクタマーゼの対応する等価なアミノ酸残基を定義するために用いることができる。
【0125】
いくつかの態様において、本発明は前駆体β−ラクタマーゼに比較して変化した免疫原性応答能力を有する変異体β−ラクタマーゼを提供する。本発明は免疫原性応答を低下させるために有用であるが、本発明で特定された突然変異は当該技術分野で既知の突然変異と組み合わせて用いられて、前駆体と比較して変化した熱安定性および/または変化した基質安定性、修飾活性、改善された比活性または変化したアルカリ安定性をもたらす。
【0126】
追加的な態様において、2つの相同なタンパク質は1つ以上のT細胞エピトープを除去するために融合される。上述のように、T細胞エピトープが存在するタンパク質の領域は、T細胞エピトープをもたない相同タンパク質における同一の領域と置き換えられる。例えば、結果として生じるタンパク質が親β−ラクタマーゼに存在するT細胞エピトープをもたないように、融合タンパク質は親β−ラクタマーゼおよびホモログを用いて生成される。エピトープのみからタンパク質の大部分まで、所望の活性が維持される限り、任意長のアミノ酸が親タンパク質への融合に用いることができる。しかしながら、初期の活性レベルが維持されることは必要とされない。いくつかの態様において、タンパク質の低下したアレルゲン性/免疫原性のために、親タンパク質より多くのハイブリッド蛋白が同一の活性レベルを達成するために用いられる。
【0127】
いくつかの態様において、変異体β−ラクタマーゼ活性は試験され、カゼイン、ケラチン、エラスチン、コラーゲンを含むが、これらに限定されない様々な市販の基質でβ−ラクタマーゼの相互作用を検討することにより関心のあるβ−ラクタマーゼと比較される。所望のように、β−ラクタマーゼ活性は当業者に既知の任意の適当な方法により決定することができる。具体的な特徴には、熱安定性、アルカリ安定性、および様々な基質または緩衝溶液または製品調製における特定β−ラクタマーゼの安定性が含まれるが、これらに限定されない。本発明で開示される酵素安定性アッセイ操作と組み合わせると、ランダム変異により得られるミュータントは、酵素活性を維持する間に増加または減少したアルカリまたは温度安定性のいずれを示すか同定される。
【0128】
いくつかの態様において、本発明は低減した免疫原性を有し、さらに抗体および/または細胞レセプターの認識部位を含むβ−ラクタマーゼ組成物を提供する。いくつかの好ましい態様において、前記低減した免疫原性β−ラクタマーゼは抗体の少なくとも部分で接合される。この態様は特に細胞の標的認識に用いられる。いくつかの態様において、前記抗体で認識された細胞は悪性細胞を含むが、これに限定されない。低減した免疫原異性β−ラクタマーゼの認識において、前記酵素は非毒プロドラッグを細胞毒性成分(例えば、メルファラン)に変換する。いくつかの態様において、前記β−ラクタマーゼは1つ以上の癌標的配列を含むように修飾される。この態様において、患者(例えば、癌患者)は異常(例えば、癌)細胞を直接認識するように修飾されたβ−ラクタマーゼ配列を投与される。したがって、本発明は、破壊および除去のために直接細胞を標的とする手段を提供する。
【実施例】
【0129】
実験
以下の実施例は本発明の特定の好ましい態様および側面を説明するために役立つが、その特許請求の範囲を限定するように意図されていない。
【0130】
以下に示す実験的な開示において、以下の省略記号が適用される。すなわち、sdおよびSD(standard deviation)、M(molar)、mM(millimolar)、μM(micromolar)、nM(nanomolar)、mol(moles)、mmol(millimoles)、μmol(micromoles)、nmol(nanomoles)、gr(grams)、mg(milligrams)、μg(micrograms)、pg(picograms)、L(liters)、ml(milliliters)、μl(microliters)、cm(centimeters)、mm(millimeters)、μm(micrometers)、nm(nanometers)、℃(degrees Centigrade)、cDNA(copy or complementary DNA)、DNA(deoxyribonucleic acid)、ssDNA(single stranded DNA)、dsDNA(double stranded DNA)、dNTP(deoxyribonucleotide triphosphate)、RNA(ribonucleic acid)、PBS(phosphate buffered saline)、g(gravity)、OD(optical density)、CPM and cpm(counts per minutes)、rpm(revolutions per minutes)、DPBS(Dulbecco's phosphate buffered solution)、HEPES(N-[2-Hydroxyethyl]piperazine-N-[2-ethanesulfonic acid])、HBS(HEPES buffered saline)、SDS(sodium dodecylsulfate)、Tris−HCl(tris[Hydroxymethyl]aminomethane-hydrochloride)、2−ME(2-mercaptoethanol)、EGTA(ethylene glycol-bis(B-aminoethylether) N, N, N'. N'-tetraacetic acid)、EDTA(ethylenediaminetetracetic acid)、SI(stimulation index)、bla(β-lactamase or ampicillin-resistance gene)、PBMC(peripheral blood mononuclear cell)、エンドシェン社(Endogen, Woburn, MA)、サイト・ヴァックス(CytoVax, Edmonton, Canada)、ワイス−エルスト社(Wyeth-Ayerst, Philadelphia, PA)、NEN社 (NEN Life Science Products, Boston, MA)、ウォーレス・オイ社(Wallace Oy, Turku, Finland)、ファーマAS社(Pharma AS. Oslo, Norway)、ディナル社(Dynal, Oslo, Norway)、アボット社(Abbott Laboratories, Abbott Park, IL)、バイオ・シンセシス社(Bio-Synthesis, Lewisville, TX)、ATCC(American Type Culture Collection, Rockville, MD)、Gibco/BRL社(Gibco/BRL, Grand Island, NY)、シグマ社(Sigma Chemical Co., St.Louis, MO)、ファルマシア社(Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ)、およびストラタジーン社(Stratagene, La Jolia, CA)
【0131】
ペプチド
全てのペプチドは市販源より入手した(ミモトペス社(Mimotopes)サンジエゴ、カリフォルニア州)。本発明で記載するI−MUNE(登録商標)アッセイ系について、関心のあるタンパク質の完全配列を記載する3アミノ酸による15merペプチド分画はマルチピン・フォーマット(マエジ(Maeji)他著、ジャーナル・オブ・イムノロジカル・メソッド、134巻、23〜33頁、1990年)で合成した。ペプチドは約1〜2mg/mlの濃度でDMSOに再懸濁し、使用の前に−70℃で保存した。各ペプチドは少なくとも2回ずつ試験した。各ペプチドについての結果は平均値を出した。ある場合には、刺激指数は各ペプチドごとに計算した。
【0132】
ヒトドナー血液サンプル
ボランティアのドナーヒト血液軟膜サンプルは2つの市販源(スタンフォード・ブラッド・センター、パロアルト、カリフォルニア州、およびサクラメント・メディカル財団、サクラメント、カリフォルニア州)より入手した。軟膜サンプルは密度分離によりさらに精製した。各サンプルは市販のPCRに基づくキット(バイオ・シンセシス社)を用いてHLA−DRおよびHLA−DQについてHLAタイプ分類を行った。ドナー・プールにおけるHLAのDRおよびDQ表現型は北アメリカ参照標準(モリ他著、トランスプラント、64巻、1017〜1027頁、1997年)とは有意に異なると同定された。しかしながら、前記ドナー・プールはサンフランシスコ湾地域に共通の民族性に僅かに富むことを証明しなかった。
【0133】
データ分析
各個体の軟膜サンプルに関して、全ペプチドの平均CPM値が分析された。「刺激指数」(SI)を決定するために、各ペプチドについての平均CPM値を、対照(DMSOのみ)ウェルについての平均CPM値で除した。ドナーは、各ペプチドセットを用いて、1ペプチドにつき2以上の応答の平均値が集められるまで試験された。各タンパク質についてのデータは、前記セット内の各ペプチドへの応答者率を示すグラフにされた。SI値が2.95以上であった場合、陽性応答が照合された。この値は、標準の母集団分布における3つの標準偏差の差異に近似するように選択された。評価された各タンパク質について、個々のドナーによる個々のペプチドへの陽性応答が集められた。所与のタンパク質についてのバックグラウンド応答を測定するために、前記セットの各ペプチドへの応答者率が平均化され、および標準偏差が計算された。統計的有意性は、前記データセット内の各ペプチドへの応答者数についてポアソン統計を用いて計算された。本発明で記載されるように異なる統計的方法が用いられた。前記ペプチドへ応答するドナー数のいずれかがp<0.05を有するデータセットにより定義されるポアソン分布と異なる場合、および/または応答率がバックグラウンドより少なくとも3倍大きい場合、ペプチドへの応答は有意と見なされた。
【0134】
統計的方法
ペプチド応答の統計的な有意性は、ポワソン統計に基づいて計算された。応答者の平均頻度は、応答総数および前記セット内のペプチド数に基づいたポワソン分布を計算するために用いられた。応答は、p<0.05の場合、有意であるとみなされた。加えて、異なった分散を持つスチューデントの両側t検定が行われた。低いバックグラウンド応答率を有するデータを用いたエピトープ測定に関して、下記式に基づく保存的ポワソンが適用された。
【0135】
【数1】
【0136】
ここで、n=セット内のペプチド数、x=関心のあるペプチドでの応答頻度、およびλ=データセット内の応答頻度の中央値。高いバックグラウンド応答率を有するデータに基づくエピトープ測定に関して、よりストリンジェントでないポアソンに基づく下記の定義が使用された。
【0137】
【数2】
【0138】
ここで、λ=データセットの応答頻度の中央値、およびx=関心のあるペプチドでの応答頻度。
【0139】
追加的な態様において、構造測定は下記式に基づいて珪酸された。
【0140】
【数3】
【0141】
ここで、Σ(上記の場合シグマ)は、データセット内のそのペプチドの頻度を差し引いた各ペプチドへの応答頻度の絶対値の合計である。f(i)は個々のペプチドについての応答頻度として定義され、pはペプチドセット内のペプチド数である。
【0142】
この式の値は0および2の間であり、この値は「構造値」に等しい。0という値は結果が完全に構造を有しないことを示し、2.0という値は全ての構造が単一の領域の周囲に高度に構築されていることを示す。値が2.0に近ければ、タンパク質の免疫原性はより大きくなる。したがって、低い値は低い免疫原性タンパク質を示す。
【0143】
ドナー・プール内のHLAタイプ
HLA−DRおよびDQタイプは定義されたエピトープペプチドへの応答への関連性を分析した。有意差を決定するために、自由度1をもつΧ二乗分析を用いた。応答者および非応答者プールの両方に対立遺伝子が存在する場合には、相対危険度が計算された。
【0144】
HLA−DRB1対立遺伝子表現型は約185のランダムな個体について決定された。HLAタイプ決めは低度ストリンジェンシーPCR定量法を用いて行われた。PCR反応は製造者(バイオ−シンセシス社)の指示にしたがって行った。スタンフォードおよびサクラメントのサンプルについて集められたデータは出版された「コケージアン(Caucasian)」HLA−DRB1頻度に匹敵した(マーシュ(Marsh)他著、「HLAファクト・ブック」、アカデミック・プレス社、サンジエゴ、カリフォルニア州、2000年、398頁、図1を参照されたい)。これらのコミュニティーのドナー母集団にはHLA−DR4およびHLA−DR15が多かった。しかしながら、これらの母集団におけるこれらの対立遺伝子の頻度は、これら2つの対立遺伝子について報告された範囲内(HLA−DR4の5.2〜24.8%、およびHLA−DR15の5.7〜25.6%)のものであった。同様に、HLA−DR3、−DR7、および−DR11について頻度は平均コケイジアン頻度より低いが、それらの対立遺伝子について報告された範囲内であった。また、HLA−DR15は、サンフランシスコ湾地域において非常に代表的な民族母集団において高い頻度で認められることに注目されたい。
【0145】
実施例1
ヒトT細胞を用いたβ−ラクタマーゼにおけるペプチドT細胞エピトープの同定のためのI−MUNE(登録商標)アッセイ系で用いられる細胞の調製
新鮮ヒト末梢血細胞をβ−ラクタマーゼへの曝露が知られていない69名のヒトから収集した。これらの細胞は実施例3で記述されるようにβ−ラクタマーゼ中の抗原エピトープを決定するために試験した。
【0146】
末梢単核血液細胞(24時間よりも古くなく、室温で保存された)を以下のように使用するため調製した。各サンプルについて、1単位の全血からの軟膜調製物約30mlをダルベッコ燐酸緩衝液(DPBS)50mlに導入し、2つの試験管に分割した。前記サンプルは12.5mlの室温リンホプレップ(Lymphoprep)密度分離媒体(ニコメッド(Nycomed)、ファーマAS社製、密度1.077g/ml)の下に置いた。前記試験管は600×gで30分遠心分離した。最終液の細胞密度は、当該技術分野で知られているようにヘモサイトメータで測定した。
【0147】
最終溶液を用いて、下記のように75ml培養フラスコ溶液中に108細胞密度を有する末梢血単核細胞サンプルから分化した樹状細胞カルチャーを調製した。
【0148】
(1)50mlの非血清AIMV培地(ギブコ社製)に1:1000希釈β−メルカプトエタノールを追加した。フラスコ壁に単球を接着させるために、フラスコは5%CO2雰囲気下37℃で2時間静置した。
(2)単球細胞の樹状細胞への分化は以下のように行った。非接着細胞を除去し、残った接着細胞(単球)を30mlのAIMV、800単位/mlのGM−CSF(エンドジェン社製)および500単位/mlのIL−4(エンドジェン社製)を混合し、得られた混合液は5%CO2雰囲気下37℃で5日間培養した。5日間のインキュベートの後、サイトカインであるTNFα(エンドジェン社製)を0.2単位/mlまで添加し、またサイトカインであるIL−1α(エンドジェン社製)を50単位/mlの最終濃度まで添加して、この混合液を5%CO2雰囲気下37℃で2日以上インキュベートした。
(3)7日目に、既に分化した樹状細胞カルチャーの成長を停止させるため、100mMEDTA含有PBS中50μg/mlの濃度までマイトマイシンCを添加した。この溶液を37℃、5%CO2雰囲気下で60分インキュベートした。フラスコを穏やかに叩いて樹状細胞をプラスティック表面からとりはずした。次に樹状細胞を600×gで5分遠心分離し、DPBS中で洗浄し、上述のように計数した。
(4)調製した樹状細胞を、ウエルごとに100μl総容量のAIMV媒体中、2×104の濃度で96穴丸底プレートにとった。
【0149】
CD4+細胞は、ダイナルCD4+T細胞リッチ・キット(Dynal社製)により提供される試薬を用いて、樹状細胞を調製するために用いる末梢血細胞サンプルの凍結塊から調製した。得られたCD4+細胞溶液は遠心分離し、AIMV媒体に再懸濁し、細胞密度は当該技術分野で既知の方法により測定した。次にCD4+T細胞懸濁液は96ウエル・プレートの効果的な操作を可能とするためにAIMV媒体中2×106カウント/mlまで再懸濁した。
【0150】
実施例2
β−ラクタマーゼ中のT細胞エピトープの同定
実施例3に記載されるI−MUNE(登録商標)アッセイに用いられるペプチドは、下記の配列を有するジェンバンク受託番号P05364号のエンテロバクター・クロアカエ由来のβ−ラクタマーゼ前駆体(セファロスポリナーゼ)の配列に基づいて調製された
【0151】
【表2】
【0152】
このβ−ラクタマーゼの完全長アミノ酸配列(配列番号1)に基づいて、β−ラクタマーゼの全配列を含む一群の3アミノ酸による15mer分画がミモトプス社により合成的に調製された。
【0153】
ペプチド抗原はDMSO中の2mg/mlストック溶液として調製された。初めに、0.5μlのストック溶液が、分化した樹状細胞が前もって入れられた96ウエル・プレートの各ウエルにとられた。次に、上述のように調製された希釈CD4+T細胞溶液100μlが各ウエルに添加された。有用なコントロールには、希釈DMSOブランク、および破傷風毒陽性コントロールが含まれた。
【0154】
総容量20μlのときの各ウエルにおける最終濃度は以下の通りである。
2×104 CD4+
2×105 樹状細胞(10:1のR:S)
5μM ペプチド
【0155】
実施例3
ヒトT細胞を用いたβ−ラクタマーゼ中のペプチドT細胞エピトープの同定用のI−MUNE(登録商標)アッセイ
一旦、アッセイ試薬(すなわち、細胞、ペプチド等)が調製され、96ウエル・プレート中に分けられると、I−MUNE(登録商標)アッセイが行われた。コントロールには、CD4+T細胞のみを加えた(DMSO担体とともに)樹状細胞および約5Lf/mLの破傷風毒が含まれた。
【0156】
カルチャーは37℃、5%CO2雰囲気下で5日間インキュベートした。トリチル化チミジン(NEN製)を0.5μCi/ウエルの濃度で加えた。このカルチャーは翌日回収し、ウォラック・トリベータ(Wallac Tribeta)シンチレーション検出系(ウォーレス・オイ社製)を用いて評価した。
【0157】
全ての試験は少なくとも2回繰り返しで行った。報告された全ての試験は、抗原破傷風毒に対して強い陽性コントロール応答を示した。応答は各実験内で平均化し、つぎにベースライン応答に正規化した。陽性事象(すなわち、増殖応答)は、応答がベースライン応答の2.95倍以上の場合に記録された。
【0158】
β−ラクタマーゼからの調製ペプチドに対する免疫原性応答(すなわち、T細胞増殖)は計算され、図1に示される。このペプチドセットに対する応答の全バックグラウンド率は、試験されたドナーについて4.04%であった。これらの方法を用いて潜在的に関心のある様々なペプチドが、下記の表2に示すように同定された。
【0159】
【表3】
【0160】
ペプチド#36および#107は、保存的(1−EXP(−ペプチド番号*(1−ポアソン(値、平均、蓄積した)))および非保存的(1−ポアソン(平均値、蓄積した))統計方法(これらはエクセル(登録商標)スプレッドシート式)を用いて有意(p<0.05)と同定された。これらのペプチドに対する応答は、3×上記バックグラウンド(応答は12.11%であった)およびバックグラウンド+3標準偏差(sd=2.87%、3sd=12.62%)の両方であった。ペプチド#6および#49のいずれも、より低い保存的分析(両方についてp<0.05)を用いて統計的有意差に到達した。用いられた統計分析は上述のものである。
【0161】
本発明において更に述べるように、これらのペプチドにおける又はこれらのペプチドの周りのアミノ酸修飾が低アレルゲン性/免疫原性β−ラクタマーゼとしての使用に適した変異体β−ラクタマーゼを提供することになることが考慮される。
【0162】
実施例4
エピトープペプチド番号とHLA関連
上述の両方のアッセイ試験で試験された65名のドナーのHLA−DRおよびDQ表現型は、市販で入手できるPCRに基づくHLAタイピング・キット(バイオ−シンセシス社製)を用いて評価した。応答者および非応答者中で4つのエピトープ(ペプチド#6、#36、#49、および#107)に対する個々のHLA−DRB1およびDQB1抗原の表現型頻度は自由度1をもつΧ二乗分析を用いて検定した。応答性および非応答性ドナーのいずれのどこにHLA抗原が存在しても、相対危険度(すなわち、HLA抗原の存在に条件付けられた反応提示の増加または減少見込み)が計算された。特定のエピトープに反応した及び反応しなかったドナーの中の対立遺伝子頻度も計算した。ペプチド#6、#36、#49、および#107に対する量的な応答におけるHLA抗原の効果を片側t検定を用いて検定した。さらに、各ペプチドについて量的応答の平均値および標準誤差を測定した。
【0163】
いくつかの態様において、応答者および非応答者中でペプチド番号に対する個々のHLA−DRおよびDQ抗原の表現型頻度を自由度1をもつΧ二乗分析を用いて検定した。問題のHLA抗原が応答性および非応答性ドナーのいずれのサンプルにも存在し、および対応するエピトープがHLA関連エピトープと見なされるどこでも、ペプチド番号に対応したエピトープへの反応の増加または減少見込みが計算された。
【0164】
エピトープ関連HLAを発現する応答者および非応答者において個々のペプチドへの増殖応答の強度がまた分析された。「ペプチドに対する個々の応答者」は2.95より大きな刺激指数で定義される。HLA対立遺伝子に関連するエピトープを発現するドナーにおける増殖応答が、その関連対立遺伝子を発現しないペプチド応答者においてよりも高いということが考えられる。
【0165】
統計的に有意な(p<0.05)相関がいくつかのDRおよびDQ抗原およびペプチド#107、および#49の間に観察された。ペプチド#36および#6に対する応答者および非応答者の間の抗原担体頻度におけるいくつかの相違は存在するが、これらは統計的有意差に到達しなかった。最も強い関連は、非反応群における2%(p<0.0003)に比較して、反応群における33%でペプチド#107への反応およびDR8の存在の間に見出された。このペプチドに対応するDR8-個体に対して、DR8+個体の増加見込みは7.63%であった。
【0166】
DR9はエピトープ#49に反応性の被験者間で増加し、反応群で28.6%、非反応群で3.4%であった(p<0.009)。相対危険度は6.1と認められた。
【0167】
いずれも統計的に有意ではなかった(反応群で26%で、非反応群で9%、p<0.07)が、DR1は1つ以上のペプチドの応答に関連した。その相違は統計的有意差に達しなかったが(p<0.07、1.71の相対危険度で)、4つの全てのペプチドの1つ以上に対して応答するドナーの中でDR1は増加することが見出された。DR1はペプチド#36および#107への応答者の中でより高い量的な応答と関連していることが見出されたため、このエピトープはβ−ラクタマーゼに対するアレルギーの危険性に関連し得ると考えられる。全く統計的に有意ではないが、ペプチド#107(4.2に比べて5.4)への反応性ドナーの中でDR1が27%増加した量的な応答と関連したことは興味深い。ペプチド#36について、DR1+応答者はDR-応答者に対して76%(4.42に比べて7.8)高い応答を有した。もっともこの対立遺伝子の存在は、これまたは任意のペプチドに対する応答と有意に関連することは見出されたいない。
【0168】
ペプチド#107に対する非応答者の中で、DR13は他の表現型より23%低いことが見出されたので、特に低い応答と関連することがわかった。
【0169】
DR13の存在、一方DQ6の非存在(すなわち、DR13+およびDQ6-)は2つ以上のペプチドに対する応答(9%に比べて37%、p<0.028)に有意に関連し、これは統計的に有意であった。この組合せの相対危険度は3.98と認められた。DR13+およびDQ6-の組合せについては、5ペプチドのうちの1つ以上への応答者の中で増加した(p<14)。DR13はβ−ラクタマーゼに対するアレルギー、ただDQ6をもたないハプロタイプのみで重要な役割を有すると思われた。
【0170】
実際、DQ6はペプチド#107に応答するドナーの中には完全に非存在であるが、非応答者には37.5%に認められた(p<0.03)。DR13+およびDQ6-の組合せ増加した。もっともペプチド#49への応答者の中では有意ではなかった(10%に比べて22%)。
【0171】
DQ4はペプチド#36に反応する個体の間で増加した(7%に比べて22%、p<0.15)が、この相違は統計的な有意差に達しなかった。ペプチド#6について、このペプチドに有意に関連する対立遺伝子はなかったが、DR4はこのペプチドに応答するドナーの中で関連する相対危険度3.5で増加した(26%の非反応性に比べて57%の反応性、p<0.09)。
【0172】
DR1の存在はペプチド#107(27%)および#36(36%)への応答性ドナーの中でより高い量的な応答(他の表現型と比較して)と相関が認められた。個々にはDR1はともに取り上げた任意の特定の対立遺伝子と関連しなかったが、これらの知見はDR1がβ−ラクタマーゼへの応答を定義するのに重要であり得ることを示している。
【0173】
上記より、本発明は野生型β−ラクタマーゼにおけるT細胞エピトープの同定のための方法および組成物を提供することが明らかである。一旦、抗原性エピトープが同定されると、所望のようにこのエピトープは修飾され、修飾されたエピトープのペプチド配列は野生型β−ラクタマーゼに取り込まれるため、修飾された配列はもはやCD4+T細胞応答を示すことができないか、またはここで前記CD4+T細胞応答は野生型の親に比べて有意に低減する。特に、本発明はβ−ラクタマーゼの免疫原性を低減させるのに好適な方法および組成物を含む手段を提供する。
【0174】
実施例5
臨界残基試験(Critical Residue Testing)
この実施例では、臨界残基試験がペプチド#6、#36、#49、および#107の変異体について実験される。これらの実験において、各親ペプチド(すなわち、ペプチド#6、#36、#49、および#107)の変異体を生成するためにアラニン・スキャンが各ペプチドについて行われる。これらの変異体ペプチドは、当該技術分野で既知のマルチ−ピン合成技術(例えば、マエジ他著、ジャーナル・オブ・イムノロジカル・メソッド、134巻、23〜33頁、1990年)を用いてミモトープ社(Mimotopes、サンジエゴ、カリフォルニア州)により合成された。
【0175】
アッセイは実施例3で記述したように、66ドナーのサンプルの一群に変異体ペプチドを利用して行われた。増殖応答が参照され、その結果は下記にさらに詳細に記述される。
【0176】
ペプチド#6(配列番号2)について、表3の以下の配列が試験された。これらのうち、配列#6および#7(配列番号10および11)について関心がもたれた。これらのペプチドについてのアッセイの結果は図2に示される。
【0177】
【表4】
【0178】
ペプチド#36(配列番号3)について、表4の以下の配列が試験された。これらのうち、配列#3、#4および#8(配列番号20、21および25)について関心がもたれた。これらのペプチドについてのアッセイの結果は図3に示される。
【0179】
【表5】
【0180】
ペプチド#49(配列番号4)について、表5の以下の配列が試験された。これらのうち、ペプチド#10(配列番号40)について関心がもたれた。これらのペプチドについてのアッセイの結果は図4に示される。
【0181】
【表6】
【0182】
このエピトープについて、以下の実施例で記述されるように、アラニン・スキャン突然変異ペプチドに一致した69ドナーの追加群について特定アミノ酸置換をI−MUNE(登録商標)アッセイ(上記を参照されたい)で試験した。これらのペプチドは、エピトープ#49を含むβ−ラクタマーゼのペプチド配列にわたる3アミノ酸による15merペプチド分画として試験された。これらの試験は、アミノ酸変異体が他のフレームのCD4+T細胞エピトープをde novo産生しなかったことを確認するために実施された。
【0183】
ペプチド#107について、表6の以下の配列が試験された。これらのうち、配列6、7、8、10、および11(配列番号48、49、50、52、および53)について関心がもたれた。これらのペプチドについてのアッセイの結果は図5に示される。
【0184】
【表7】
【0185】
上述の情報を考慮して、以下のペプチドがβ−ラクタマーゼのエピトープの免疫原性能力を低減させる潜在的変異体として選択された。
【0186】
【表8】
【0187】
実施例6
ペプチド#49への修飾
上記に示されるように、アラニン・スキャン突然変異ペプチドに一致した69ドナーの追加群について、ペプチド#49における特定アミノ酸置換をI−MUNE(登録商標)アッセイ(上記を参照されたい)で試験した。これらのペプチドは、エピトープ#49を含むβ−ラクタマーゼのペプチド配列にわたる3アミノ酸による15merペプチド分画として試験された。これらの試験は、アミノ酸変異体が他のフレームのCD4+T細胞エピトープをde novo産生しなかったことを確認するために実施された。
【0188】
このアッセイは表8に掲載された以下の一群のペプチドについて実施された。
【0189】
【表9】
【0190】
これらのペプチドの結果は図6に示す。この図で、各ペプチド番号は表8のそれぞれのペプチドに対応している。親ペプチドはペプチド#2として表8および図6で示されている。
【0191】
また、このアッセイは以下の一群のペプチドについて実施され、ここで出発物質(すなわち、修飾エピトープ)は置換I155Fを有する。
【0192】
【表10】
【0193】
これらのペプチドの結果は図7に示す。この図で、各ペプチド番号は表9のそれぞれのペプチドに対応している。修飾エピトープはペプチド#2として表9および図7で示されている。
【0194】
また、このアッセイは以下の一群のペプチドについて実施され、ここで出発物質(すなわち、修飾エピトープ)は置換I155Vを有する。
【0195】
【表11】
【0196】
これらのペプチドの結果は図8に示す。この図で、各ペプチド番号は表10のそれぞれのペプチドに対応している。修飾エピトープはペプチド#2として表10および図8で示されている。
【0197】
また、このアッセイは以下の一群のペプチドについて実施され、ここで出発物質(すなわち、修飾エピトープ)は置換I155Lを有する。
【0198】
【表12】
【0199】
これらのペプチドの結果は図9に示す。この図で、各ペプチド番号は表11のそれぞれのペプチドに対応している。修飾エピトープはペプチド#2として表11および図9で示されている。
【0200】
これらの3つの変化について図7〜9に示すように、I155V変換は修飾エピトープ配列への応答者パーセントを増加させた。I155FおよびI155L変換はほとんど効果がなかった。
【0201】
エピトープ#49における3つの追加的変換、T147Q、L149S、およびL149Rを試験した。図10〜12に示すように、L149Sのみがエピトープ応答率に影響した。また、これらのペプチドは上述のように3mer分画として試験した。
【0202】
したがって、このアッセイはまた以下の一群のペプチドについて実施され、ここで出発物質(すなわち、修飾エピトープ)は置換T147Qを有する。
【0203】
【表13】
【0204】
これらのペプチドの結果は図10に示す。この図で、各ペプチド番号は表12のそれぞれのペプチドに対応している。修飾エピトープはペプチド#5として表12および図10で示されている。
【0205】
また、このアッセイは以下の一群のペプチドについて実施され、ここで出発物質(すなわち、修飾エピトープ)は置換L149Sを有する。
【0206】
【表14】
【0207】
これらのペプチドの結果は図11に示す。この図で、各ペプチド番号は表12のそれぞれのペプチドに対応している。親ペプチドはペプチド#4として表12および図11で示されている。
【0208】
また、このアッセイは以下の一群のペプチドについて実施され、ここで出発物質(すなわち、「親」ペプチド)は置換L149Rを有する。
【0209】
【表15】
【0210】
これらのペプチドの結果は図12に示す。この図で、各ペプチド番号は表14のそれぞれのペプチドに対応している。修飾エピトープはペプチド#4として表14および図12で示されている。
【0211】
実施例7
PBMC増殖アッセイ
この実施例では、PBMCを刺激するためにβ−ラクタマーゼおよびエピトープ修飾β−ラクタマーゼの能力を評価するために実施される実験が記述される。全てのタンパク質は約2mg/mlまで精製された。
【0212】
これらの実験で用いられる血液サンプルは上述のもの(すなわち、実施例1の前)と同一であった。前記PBMCは当該技術分野で既知のリンホプレップを用いて分離した。リンホプレップはPBSで洗浄し、セル・ダイン(Cell Dyn:登録商標)3700血液分析器(アボット社製)を用いて計数した。細胞数および差は記録した。PBMCは、熱不活性化ヒトAB血清、RPMI1640、ペニシリン/ストレプトマイシン(pen/strep)、グルタミン、および2−MEの溶液中、4×106細胞/mlまで再懸濁した。次にウエルごとに2mlを24−ウエル・プレートにとった。2つのウエルは酵素なしコントロールとして用いた。次に、非修飾β−ラクタマーゼおよび修飾β−ラクタマーゼを10μg/ml、20μg/ml、および40μg/mlの濃度でウエルに加えた。試験したエピトープ修飾β−ラクタマーゼはK21A/S324A(「pCD1.1」と命名される)およびK21A/S324A/L149S(「pCD08.3」と命名される)であった。K21A突然変異は配列番号10に対応するが、S324A突然変異は配列番号48に対応し、L149S突然変異は配列番号84に対応する。S324変異体はエピトープ#107内にあるが、K21Aはエピトープ#6内にあり、L149Sはエピトープ#49内にある。プレートを37℃、5%CO2の湿り気のある雰囲気下で6〜7日間インキュベートした。回収の日に各ウエルの細胞を混合し、ウエルに再懸濁した。次に、各ウエルから100μlの8部を96−ウエルのマイクロタイター・プレートに移した。これらのウエルに0.25μCiのトリチル化チミジンを加えた。これらのプレートを6時間インキュベートし、細胞を回収し計数した。分析のために各ウエルからの8繰り返しデータの平均値をだした。コントロールとして、全体で32繰返しを提供するためにサンプル採取した。8コントロールウエルの各群の平均値をだし、4平均値を各ドナー用にCVを計算するために用いた。SI値は、各サンプル用の8ウエルの各群の平均をコントロールウエル1用の平均CPMで除することにより算出した。データは、各ドナーおよび各酵素用に達成された最高SI値を示すデータセットを作成することにより分析した。あるドナーは、最高のSI値が1.99よりも大きい場合に、応答したと見なした。全体で26ドナーを試験し、結果を平均SIをパネルA、応答者パーセントをパネルBとして図13に示す。
【0213】
結果から、野生型β−ラクタマーゼに比較して、これらのエピトープ修飾β−ラクタマーゼ(pCD1.1およびpCD08.3)の両方が全体としてより少ないドナーでより低い増殖を誘導することが示された。2つのエピトープ修飾β−ラクタマーゼの間で差異はなく、位置149における修飾はβ−ラクタマーゼの増加した免疫原性に寄与しないことが示される。
【0214】
実施例8
CB6F1マウスにおける低減した免疫原性BLA変異体、pCD1.1の試験
この実施例では、in vivoにおけるpCD1.1の低減した免疫原性を試験するために実施される実験が記述される。これらの実験では、当該技術分野でしられているように、マウスごとにアラム(alum)中の20μgの野生型BLAまたはCD1.1蛋白を用いてCB6F1マウスが腹腔内投与で免疫感作された。マウスは1、7、および15日目(すなわち、d=1、d=7、およびd=15)に免疫感作された。脾臓細胞は、19日目にBLAペプチドを用いて反応性が試験された。図14は、BLAペプチドに対してBLAまたはCD1.1免疫感作されたマウスからのマウス脾臓細胞の増殖応答を示している。これらのデータにより示されるように、BLAで免疫感作されたマウスからの脾臓細胞はペプチド107の周りの領域に強く応答する。この応答はヒトの定義されたエピトープの1つと相関する。また、応答はペプチド114領域について言及される。CD1.1蛋白で免疫感作されたマウスからの脾臓細胞はもはやペプチド107領域にも、114領域にも応答しなかった。これらの結果は107ペプチドにおけるS324突然変異が増殖を誘導するペプチドの能力に影響することを示している。
【0215】
全タンパク質BLAまたはCD1.1への増殖応答について、免疫感作されたマウスからの脾臓細胞がin vivoで試験された。その結果は図15に示される。BLAが増加するにつれて、BLA感作マウス脾臓細胞による増殖応答は増加することがわかった。CD1.1蛋白で免疫感作したマウスからの脾臓細胞は、エピトープがそのままの親タンパク質、BLA、またはエピトープ修飾CD1.1蛋白に対してin vitroで有意に応答できなかった。これらの結果は、ペプチド107におけるS324A修飾がタンパク質の免疫原性を激しく減弱させたことを示している。この実験におけるCD1.1への低いレベルの応答が、S324A修飾により現れた新しいT細胞エピトープであるペプチド#75に向けられた増殖を表したと考えられる。しかしながら、本発明は任意の特定の機序に限定されることを意図していない。
【0216】
さらに、血清サンプルが3回感作されたマウスから採取され、抗原特異的ELISAが行われた(図16)。BLAで免疫感作されたマウスは強力なレベルの抗BLA IgG抗体を産生した。しかしながら、CD1.1蛋白で免疫感作されたマウスは、このアッセイ系で検出されるように、有意なレベルのBLA特異的IgG抗体を産生しなかった。ELISAアッセイはプレートの被覆試薬としてBLAおよびCD1.1の両方を用いて行われ、同一の結果が得られた。
【0217】
これらの結果は、マウスにおける免疫優勢エピトープへの増殖応答を減弱することにより、T細胞増殖および抗体産生レベルの両方で全タンパク質の免疫原性の消失をもたらすことを示している。新しいエピトープ応答を示唆するCD1.1蛋白に見られる増殖レベルは、この免疫プロトコルにおける抗体応答を誘導するのに十分ではなかった。標的エピトープはヒト母集団で同定された免疫優勢エピトープと同一であった。
【0218】
上記明細書において言及された全ての公報および特許は、参照により本発明に取り込まれる。本発明で記述された方法およびシステムの種々の修飾および変更は、本発明の範囲と精神から逸脱しない範囲で当業者にとって明らかになることである。本発明は特定の好ましい態様に関連して記述されたでいるが、本発明はそのような特定の態様に過度に限定するべきでないと理解すべきである。実際に、分子生物学、免疫学、製剤、および/または関連した分野における当業者にとって明白である発明を実施するための記述様式の種々の修飾は本発明の範囲内にあるものと意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0219】
【図1】β−ラクタマーゼのアミノ酸配列を記述するペプチドセットに対する69の群ドナーの応答を示すグラフである。
【図2】ペプチド#6(配列番号2)および2つの変異体(配列番号10および11)への応答を示すグラフである。
【図3】ペプチド#36(配列番号3)および3つの変異体(配列番号20、21および25)への応答を示すグラフである。
【図4】ペプチド#49(配列番号4)および1つの変異体(配列番号40)への応答を示すグラフである。
【図5】ペプチド#107(配列番号5)および5つの変異体(配列番号48、49、50、52および53)への応答を示すグラフである。
【図6】ペプチド#49(配列番号4)および一連の修飾エピトープへの応答を示すグラフである。
【図7】置換I155Fを含むペプチド#49(配列番号59)およびこの配列に基づくペプセットへの応答を示すグラフである。
【図8】置換I155Vを含むペプチド#49(配列番号63)およびこの配列に基づくペプセットへの応答を示すグラフである。
【図9】置換I155Lを含むペプチド#49(配列番号69)およびこの配列に基づくペプセットへの応答を示すグラフである。
【図10】置換T147Qを含むペプチド#49(配列番号75)およびこの配列に基づくペプセットへの応答を示すグラフである。
【図11】置換L149Sを含むペプチド#49(配列番号82)およびこの配列に基づくペプセットへの応答を示すグラフである。
【図12】置換L149Rを含むペプチド#49(配列番号87)およびこの配列に基づくペプセットへの応答を示すグラフである。
【図13】β−ラクタマーゼ(配列番号1)および2つのエピトープ修飾β−ラクタマーゼを試験するために用いたアッセイから得られた結果を示すグラフである。
【図14】BLAペプチドに対するBLA(パネルA)またはCD1.1(パネルB)感作マウス由来のマウス脾臓細胞の増殖応答を示すグラフである。
【図15】総蛋白BLA(パネルA)またはCD1.1(パネルB)に対する増殖応答に関してin vitroで試験した感作マウス由来の脾臓細胞についての結果を示すグラフである。
【図16】3回感作したマウスについてのELISAの結果を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年12月18日に出願され、審査継続中の米国仮出願第60/531,128号について米国特許法第119条における優先権を主張する。
本発明は、親β−ラクタマーゼに比較して低下した免疫原性応答を示す変異体と同様に、β−ラクタマーゼCD4+T細胞エピトープに関する。本発明はさらに、β−ラクタマーゼをより低下した免疫原性にするための方法と同様に、新規なβ−ラクタマーゼ変異体をコードするDNA分子、新規なβ−ラクタマーゼ変異体をコードするDNAを含む宿主細胞に関する。さらに本発明は、野生型のβ−ラクタマーゼより免疫原性の低下したこれらのβ−ラクタマーゼ変異体を含む様々な組成物に関する。いくつかの態様において、本発明は、本発明の方法を用いる同定され、および/または特徴づけられた低下した免疫原性を有するβ−ラクタマーゼ変異体に関する。
【背景技術】
【0002】
ベータ−ラクタマーゼ(β−ラクタマーゼ)はβ−ラクタムの加水分解を触媒する酵素である。これらの酵素は、ペニシリン、セファロスポリン、およびそれらの誘導体を含む通常用いられる多くの抗菌剤にβ−ラクタム基が存在するため、臨床的に重要である。β−ラクタム抗菌剤は微生物細胞壁の生合成に関与する酵素を阻害する。β−ラクタムに対する抵抗性は強い生き残り優位性を細菌に与えるため、β−ラマタマーゼのような酵素の生産によるβ−ラクタム抵抗性の発達は重要な生き残り機構をもたらす。β−ラクタマーゼは、細胞壁生合成に関わる酵素(すなわち、ペニシリン結合タンパク質)に構造的に関係し、これらの酵素から進化したものかもしれない。
【0003】
190種を超えるβ−ラクタマーゼが知られている。これらの酵素はプラスミド上および染色体/ゲノムにおいて同定されてきており、その発現は本質的または誘導可能なものである。β−ラクタマーゼは微生物に対する効果が広範に変動する。例えば、あるものはペニシリンに対して高い活性を有するが、一方他のものはセファロスポリンに対してより活性であり、さらに他のものはその両方に効果を有する。したがって、病原性の生物によるβ−ラクタマーゼの生産はある種の感染症の治療において重要な障害となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
β−ラクタマーゼの特徴的な不活性化に加えて、β−ラクタマーゼは免疫原性である。したがって、これらの酵素に曝露された多くの個人において免疫応答は酵素のエピトープに対して起こる。いくつかの研究により特定のタンパク質のアレルゲン性/免疫原性を低下させる方法が提供され、および数人の個人におけるアレルギー性の又は他の免疫原性の反応を引き起こすエピトープの同定がなされてきたが、これらのエピトープを同定するために用いられるアッセイは一般に前にタンパク質に曝露された人の血清のIgEおよびIgGの測定を含んでいる。しかしながら、いったん免疫グロブリン反応が開始すると、感作が既に生じている。したがって、低下した免疫原性応答を生じる人および他の動物においては使用されるタンパク質の同定および/または産生をすることが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本発明は、親β−ラクタマーゼに比較して低下した免疫原性応答を示す変異体と同様に、β−ラクタマーゼCD4+T細胞エピトープを提供する。本発明はさらに、β−ラクタマーゼをより低下した免疫原性にするための方法と同様に、新規なβ−ラクタマーゼ変異体をコードするDNA分子、新規なβ−ラクタマーゼ変異体をコードするDNAを含む宿主細胞を提供する。さらに本発明は、野生型のβ−ラクタマーゼより免疫原性の低下したこれらのβ−ラクタマーゼ変異体を含む様々な組成物を提供する。幾つかの態様において、本発明は、本発明の方法を用いる同定され、および/または特徴づけられた低下した免疫原性を有するβ−ラクタマーゼ変異体を提供する。
【0006】
本発明は、(a)単一のヒト血液源から樹状細胞溶液、および未処理CD4+および/またはCD8+T細胞溶液を得、(b)前記樹状細胞を分化させて分化樹状細胞溶液を生産し、(c)前記分化樹状細胞溶液および前記未処理CD4+および/またはCD8+T細胞溶液をβ−ラクタマーゼのペプチド断片と混合し、および(d)工程(c)における前記T細胞の増殖を測定する工程を含むβ−ラクタマーゼの1つ以上のT細胞エピトープを同定するための方法を提供する。いくつかの態様において前記β−ラクタマーゼは微生物β−ラクタマーゼである。いくつかの選択的な態様において前記微生物β−ラクタマーゼはグラム陽性生物から得られが、他の態様においてはグラム陰性生物から得られる。より更なる態様において前記β−ラクタマーゼはエンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)から得られるが、他の態様において前記β−ラクタマーゼはグラム陰性および/またはグラム陽性菌を含むが、これらに限定されない他の生物から得られる。いくつかの他の態様において前記β−ラクタマーゼは配列番号1で示される配列の部分を少なくとも含む。さらに本発明は前述の方法を用いて同定されるエピトープを提供する。
【0007】
また本発明は、(a)(i)in vitroで1つ以上のサイトカインに曝露することにより分化させた接着性モノサイト由来樹状細胞をT細胞エピトープを含む1つ以上のペプチドに接触させ、および(ii)前記樹状細胞およびペプチドを、前記接着性モノサイト由来樹状細胞として同じ起源から得られ前記ペプチドに応答して増殖する未処理T細胞に接触させるにより、β−ラクタマーゼにおける1つ以上のT細胞エピトープを同定し、および(b)変異体β−ラクタマーゼが前記未処理T細胞のベースライン増殖以下の増殖を誘導するように、前記変異体β−ラクタマーゼを生成するために前記β−ラクタマーゼを修飾し前記T細胞を中和する工程を含む、β−ラクタマーゼの免疫原性を低下させるための方法を提供する。いくつかの態様において前記β−ラクタマーゼは微生物β−ラクタマーゼである。いくつかの選択的な態様において前記微生物β−ラクタマーゼはグラム陽性生物から得られるが、他の態様においてはグラム陰性生物から得られる。いくつかの態様において前記β−ラクタマーゼはエンテロバクター・クロアカエから得られるが、他の態様において前記β−ラクタマーゼはグラム陰性および/またはグラム陽性菌を含むが、これらに限定されない他の生物から得られる。いくつかの選択的な態様において前記β−ラクタマーゼは配列番号1で示される配列の部分を少なくとも含む。いくつかの態様において、本発明は低下した免疫原性を有するβ−ラクタマーゼの生産のための前述の方法を用いて生産されるβ−ラクタマーゼ変異体を提供する。
【0008】
いくつかの態様において前記β−ラクタマーゼのエピトープは、(a)前記T細胞エピトープのアミノ酸配列をβ−ラクタマーゼ・ホモログ由来の類似配列に置換することにより修飾され、ここで前記置換は前記T細胞エピトープの主要な三次構造特性と実質的に擬似する。いくつかの好ましい態様において前記β−ラクタマーゼは配列番号2、3、4、および5からなる群から選択される1つ以上のエピトープを変更することにより修飾される。いくつかの態様において前記エピトープは1つ以上のエピトープに対応する残基のアミノ酸配列を置換することにより修飾されるが、他の態様において前記エピトープは1つ以上のエピトープに対応する残基のアミノ酸配列を欠失することにより修飾され、さらなる態様において前記エピトープは1つ以上のエピトープにアミノ酸を追加することにより修飾される。より更なる態様において本発明は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むE.クロアカエβ−ラクタマーゼにおけるある位置と同じ位置で起こる1つ以上のアミノ酸修飾を含むアミノ酸配列を有するβ−ラクタマーゼ変異体を提供する。さらに本発明は前述の方法を用いて生産されるβ−ラクタマーゼを提供する。
【0009】
また本発明は、β−ラクタマーゼ、特に配列番号1で示されるβ−ラクタマーゼの少なくとも一部分を提供する。さらに本発明は、1つ以上のβ−ラクタマーゼおよび/または1つ以上の変異体β−ラクタマーゼをコードする核酸配列を含む発現ベクターを提供する。また本発明は、1つ以上のβ−ラクタマーゼおよび/または1つ以上の変異体β−ラクタマーゼをコードする核酸配列を含む1つ以上発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。さらに本発明はこれらの宿主細胞を用いて生産される1つ以上のβ−ラクタマーゼを提供する。
【0010】
また本発明は、配列番号10、11、20、21、25、40、48、49、50、52、53、59、69、および84からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む1つ以上のエピトープにおける1つ以上の改変を含む変異体β−ラクタマーゼを提供する。いくつかの態様において、本発明は、配列番号55〜90からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む1つ以上のエピトープを含むβ−ラクタマーゼを提供する。いくつかの特に好ましい態様において、前記変異体β−ラクタマーゼにより生じる免疫原性応答は野生型β−ラクタマーゼにより生じる免疫原性応答よりも小さい。しかしながら、いくつかの他の態様において、前記変異体により生じる免疫原性応答は野生型β−ラクタマーゼにより生じる免疫原性応答よりも大きい。
【0011】
さらに本発明は、変異体β−ラクタマーゼをコードする核酸配列、もちろん該核酸配列を含む発現ベクター、および該発現ベクターで形質転換された宿主細胞を提供する。いくつかの態様において、本発明は、配列番号10、11、20、21、25、40、48、49、50、52、53、59、69、および84からなる群から選択される1つ以上のアミノ酸配列を含むペプチドを提供する。いくつかの態様において、本発明は、配列番号55〜90からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む1つ以上のエピトープを含むβ−ラクタマーゼを提供する。
【0012】
なおさらに本発明は、本発明の変異体β−ラクタマーゼを含む組成物のような組成物を含むが、これらに限定されない医薬および消費者関連製品を提供する。また本発明は、β−ラクタマーゼに対して配向する抗体を提供する。いくつかの態様において、前記β−ラクタマーゼ変異体は異常細胞(例えば、癌細胞)の治療に用いられるような組成物に用いられる。例えば、本発明は細胞毒性化合物に変換されるプロドラッグ(すなわち、非毒性化合物)に好適な酵素として用いられる。したがって、本発明は、抗体および/または抗体成分の使用に頼らないターゲット治療と同様、抗体配向性酵素プロドラッグ治療のような応用に用いられる。実際に本発明は、様々な応用、設定、および組成物に用いるのに好適な変異体β−ラクタマーゼを提供する。
【0013】
図の説明
図1は、β−ラクタマーゼのアミノ酸配列を記述するペプチドセットに対する69の群ドナーの応答を示すグラフである。
図2は、ペプチド#6(配列番号2)および2つの変異体(配列番号10および11)への応答を示すグラフである。
図3は、ペプチド#36(配列番号3)および3つの変異体(配列番号20、21および25)への応答を示すグラフである。
図4は、ペプチド#49(配列番号4)および1つの変異体(配列番号40)への応答を示すグラフである。
図5は、ペプチド#107(配列番号5)および5つの変異体(配列番号48、49、50、52および53)への応答を示すグラフである。
図6は、ペプチド#49(配列番号4)および一連の修飾エピトープへの応答を示すグラフである。
図7は、置換I155Fを含むペプチド#49(配列番号59)およびこの配列に基づくペプセットへの応答を示すグラフである。
図8は、置換I155Vを含むペプチド#49(配列番号63)およびこの配列に基づくペプセットへの応答を示すグラフである。
図9は、置換I155Lを含むペプチド#49(配列番号69)およびこの配列に基づくペプセットへの応答を示すグラフである。
図10は、置換T147Qを含むペプチド#49(配列番号75)およびこの配列に基づくペプセットへの応答を示すグラフである。
図11は、置換L149Sを含むペプチド#49(配列番号82)およびこの配列に基づくペプセットへの応答を示すグラフである。
図12は、置換L149Rを含むペプチド#49(配列番号87)およびこの配列に基づくペプセットへの応答を示すグラフである。
図13は、β−ラクタマーゼ(配列番号1)および2つのエピトープ修飾β−ラクタマーゼを試験するために用いたアッセイから得られた結果を示すグラフである。パネルAは各酵素について得られた平均増殖応答を示すグラフであり、パネルBは各酵素についてレスポンダーのパーセントを示すグラフである。
図14は、BLAペプチドに対するBLA(パネルA)またはCD1.1(パネルB)感作マウス由来のマウス脾臓細胞の増殖応答を示すグラフである。
図15は、総蛋白BLA(パネルA)またはCD1.1(パネルB)に対する増殖応答に関してin vitroで試験した感作マウス由来の脾臓細胞についての結果を示すグラフである。これらの結果は図15に示す。
図16は、3回感作したマウスについてのELISAの結果を示すグラフである。
【0014】
発明の詳細な説明
本発明は、親β−ラクタマーゼに比較して低下した免疫原性応答を示す変異体と同様に、β−ラクタマーゼCD4+T細胞エピトープを提供する。本発明はさらに、β−ラクタマーゼをより低下した免疫原性にするための方法と同様に、新規なβ−ラクタマーゼ変異体をコードするDNA分子、新規なβ−ラクタマーゼ変異体をコードするDNAを含む宿主細胞を提供する。さらに本発明は、野生型のβ−ラクタマーゼより免疫原性の低下したこれらのβ−ラクタマーゼ変異体を含む様々な組成物を提供する。いくつかの特定の態様において、本発明は、本発明の方法を用いる同定され、および/または特徴づけられた低下した免疫原性を有するβ−ラクタマーゼ変異体を提供する。
【0015】
定義
本発明において別に定義されない限り、本発明で用いられる全ての技術および科学用語は、本発明の属する技術分野における当業者により共通に理解されるものと同様の意義を有する。例えば、シングルトンおよびセインズベリー(Singleton and Sainsbury)著、「微生物・分子生物学辞典」、第二版、ジョン・ウィリー・アンド・サン社、ニューヨーク(1994年)、およびヘイルおよびマーハム(Hale and Marham)著、「ザ・ハーパー・コリンズ生物学辞典」、ハーパー・ペレニアル(Harper Perennial)社、ニューヨーク(1991年)は、本発明で用いられる多くの用語の一般辞書を当業者に提供する。本発明で記載されるものと類似または同等な任意の方法および物質は本発明の実施において用いられるが、好ましい方法および物質は本発明に記載されている。したがって、すぐ下記に定義する用語は、全体として明細書を参照することによりより完全に記述されている。また、本発明で用いられる単数形は、別に文脈的に明示されない限り、複数形も含んでいる。
【0016】
本発明で用いられる「β−ラクタマーゼ」はβ−ラクタム環(すなわち、3炭素原子および1窒素原子を含む異種元素環構造)を開裂する任意の酵素のことをいう。β−ラクタム環は、ペニシリン、セファロスポリン、および他の関連化合物を含むが、これらに限定されない数種の抗菌剤の成分である。いくつかの好ましい態様において本発明のβ−ラクタマーゼは未処理(native)酵素であるが、他の態様において本発明のβ−ラクタマーゼは遺伝子組替え体である。いくつかの追加的な好ましい態様において、本発明のβ−ラクタマーゼは、未処理のβ−ラクタマーゼより低い免疫原性反応を刺激するように修飾されている。
【0017】
本発明で用いられる「組換えオリゴヌクレオチド(recombinant oligonucleotide)」という用語は、ポリヌクレオチド配列の制限酵素消化により生成した2つ以上のオリゴヌクレオチド配列の結合、オリゴヌクレオチドの合成(例えば、プライマーまたはオリゴヌクレオチドの合成)などを含むがこれらに限定されない分子生物学的操作を用いて作り出されたオリゴヌクレオチドのことをいう。
【0018】
本発明で用いられる「組換えβ−ラクタマーゼ」という用語は、天然発生アミノ酸配列における1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、または挿入をコードする変異体(ミュータント)DNAを生産するためにβ−ラクタマーゼをコードするDNA配列が修飾されたβ−ラクタマーゼのことをいう。そのような修飾を生成する適切な方法は当業者に周知である。
【0019】
本発明で用いられる「組換えDNA分子」という用語は、分子生物学的技術によって接合されたDNAの区分を含むDNA分子のことをいう。
【0020】
本発明で用いられる「酵素変換」という用語は、基質または中間体を酵素と接触させることによる、炭素基質の中間体への修飾または中間体の最終生産物への修飾のことをいう。いくつかの態様において、接触は基質または中間体を適切な酵素に直接的に曝露することによりなされる。他の態様において、接触することには、発現および/または排出し、所望の基質および/または中間体をそれぞれ所望の中間体および/または最終生産物に代謝する生物体に酵素または中間体を曝露することが含まれる。
【0021】
本発明で用いられる「野生型」および「未処理」タンパク質は自然において認められるタンパク質である。「野生型配列」および「野生型遺伝子」という用語は、本発明において互換的に使用され、未処理の、または宿主細胞において自然に発生する配列のことを言う。いくつかの態様において、野生型配列はタンパク質工学事業の出発点である関心ある配列のことを言う。自然発生の(すなわち、前駆体)タンパク質をコードする遺伝子は、当業者に既知の一般的な方法に従って得ることができる。この方法は通常、関心あるタンパク質領域をコードする推定配列を有する標識プローブの合成、タンパク質を発現する生物体由来のゲノムライブラリの調製、およびプローブへのハイブリダイゼーションによる関心ある遺伝子に関するライブラリのスクリーニングを含む。陽性ハイブリダイズクローンは、次にマッピングおよびシークエンシングされる。
【0022】
本発明で用いられる「サンプル」という用語は、その最も広い意味で使用される。しかし、好ましい態様において、この用語は分析され、同定され、修飾され、および/または他のペプチドと比較されるペプチド(すなわち、関心のあるタンパク質配列を含むペプセット中のペプチド)を含むサンプル(例えば、アリコート)に関連して用いられる。従って、ほとんどの場合、この用語は関心のあるタンパク質またはペプチドを含む物質に関連して用いられる。
【0023】
本発明で用いられる「刺激指数(SI)」は、対照と比較したペプチドのT細胞増殖応答の測定値のことをいう。前記SIは、ペプチドを含むCD4+T細胞および樹状細胞カルチャー得られた平均CPM(1分当たりのカウント数)を、ペプチドを含まない樹状細胞およびCD4+T細胞を含む対照カルチャーの平均CPMで割ることにより計算される。この値は、各ドナーおよび各ペプチドについて計算される。約1.5から4.5の間のSI値は陽性応答を示すために使用されるが、一方、陽性応答を示すための好ましいSI値は2.5および3.5の間であり、好ましくは2.7から3.2、更により好ましくは2.9から3.1の間の値を含む。本発明で記載される最も好ましい態様は、SI値2.95を用いる。
【0024】
本発明で用いられる「データセット」という用語は、各タンパク質についての一組のペプチドおよび一組のドナーについて編集されたデータのことを言う。
【0025】
本発明で用いられる「ペプセット」という用語は、各試験タンパク(すなわち、関心のあるタンパク質)より得られた一組のペプチドのことを言う。このペプセット(または「ペプチドセット」)の中のこれらのペプチドは、各ドナーから得られた細胞を用いて試験される。
【0026】
本発明で用いられる「精製された」または「単離された」という用語は、試料から不純物の除去のことをいう。例えば、β−ラクタマーゼではない溶液または調製物中に混入するタンパク質および他の化合物を除去することによりβ−ラクタマーゼは精製される。
いくつかの態様において組換β−ラクタマーゼは細菌宿主細胞において発現され、これらの組換ラクタマーゼは宿主細胞の他の構成成分を除去することにより精製される。これにより組換β−ラクタマーゼ・ポリペプチドのパーセントは試料中で上昇する。
【0027】
本発明で用いられる「バックグラウンドレベル」および「バックグラウンド応答」は、任意の試験タンパク質のデータセットにおいて任意に与えられたペプチドへの応答者(レスポンダー)の平均パーセントのことを言う。この値は、全ての試験ドナーについて編集されたセット中の全ペプチドに対する平均応答者パーセントによって決定される。例えば、3%のバックグラウンド応答は、平均して、100ドナーにおける試験で得られたデータセットにおいて任意のペプチドへ3陽性(SIが2.95より大きい)応答が存在することを示すことになる。
【0028】
本発明で使用される「抗原提示細胞」(「APC」)は、抗原がT細胞表面の受容体によって認識され得るように、その表面の抗原を提示する免疫系細胞のことを言う。抗原提示細胞には、樹状細胞、掌状細胞(interdigitating cell)、活性化B細胞およびマクロファージが含まれる。
【0029】
細胞株または細胞に関連して用いられる時の「リンパ(lymphoid)」という用語は、その細胞株または細胞がリンパ系に由来し、BおよびTリンパ系の両方の細胞を含むことを意味する。
【0030】
本発明で用いられる「Tリンパ球」および「T細胞」という用語は、T前駆細胞(T細胞受容体遺伝子が再配列されていないThy1陽性細胞を含む)から成熟T細胞(すなわち、CD4またはCD8のどちらかに単一陽性な、表面TCR陽性細胞)までのTリンパ球系内の任意の細胞も含む。
【0031】
本発明で用いられる「Bリンパ球」および「B細胞」という用語は、プレB細胞(免疫グロブリン重鎖遺伝子の再配列を開始したB220+細胞のようなB前駆細胞から成熟B細胞および形質(plasma)細胞までのB細胞系内の任意の細胞を含む。
【0032】
本発明で用いられる「CD4+T細胞」および「CD4T細胞」はヘルパーT細胞のことをいい、一方、「CD8+T細胞」および「CD8T細胞」は細胞毒性(cytotoxic)T細胞のことをいう。
【0033】
本発明で用いられる「B細胞増殖」は、抗原提示細胞の存在下で、抗原の存在下または非存在下において、B細胞の培養期間に産生されたB細胞の数のことを言う。
【0034】
本発明で用いられる「ベースラインB細胞増殖」は、ペプチドまたはタンパク抗原の非存在下において、抗原提示細胞への曝露応答で個体内に通常見られるB細胞増殖の程度のことを言う。本発明の目的のために、ベースラインB細胞増殖レベルは、抗原非存在下におけるB細胞増殖の際の各個体についてのサンプルベースごとに決定される。
【0035】
本発明で用いられる「B細胞エピトープ」は、抗原(すなわち、免疫原)を含むペプチドへの免疫原性応答においてB細胞受容体によって認識されるペプチドまたはタンパク質の特徴のことを言う。
【0036】
本発明で用いられる「変性B細胞エピトープ」は、関心のある変異ペプチドがヒトまたはその他の動物において異なる(すなわち、変性した)免疫原性応答を生じるために、関心のある前駆体ペプチドまたはペプチドとは異なるエピトープのアミノ酸配列のことを言う。変性した免疫原性応答は、変性免疫原性および/またはアレルギー誘発性(すなわち、増大または減少した全体の免疫原性応答のいずれか)を含むと考えられる。いくつかの態様において、変性したB細胞エピトープは同定されたエピトープ内の残基から選択されるアミノ酸の置換および/または欠失を含む。選択的な態様において、変性B細胞エピトープはエピトープ内の1つ以上の追加の残基を含む。
【0037】
本発明で用いられるように「T細胞エピトープ」は、その抗原を含むペプチドへの免疫応答の開始においてT細胞受容体によって認識されるペプチドまたはタンパク質の特徴を意味する。T細胞によるT細胞エピトープの認識は、通常T細胞が抗原提示細胞に発現したクラスIまたはクラスIIの主要組織適合複合体(MHC)に結合する抗原のペプチド断片を認識するメカニズムを経由すると信じられている(例えば、モエラー((Moeller))編、イムノロジカル・レビュー(Immunol. Rev.)、98巻、187頁[1987年]を参照されたい)。本発明のいくつかの態様において、本発明に記述されているように同定されるエピトープまたはエピトープ断片は、エピトープまたは断片を結合および提示すことができるMHC分子をもつ抗原提示細胞の検出に用いられる。いくつかの態様において、エピトープ/エピトープ断片は更に、関心のあるエピトープ/エピトープ断片を結合および/または定時する細胞の同定を容易にする検出可能な標識(すなわち、マーカー)を含む。
【0038】
本発明で用いられる「T細胞増殖」は、抗原提示細胞の存在下で、抗原の存在下または非存在下においてT細胞の培養期間に産生されたT細胞の数のことを言う。
【0039】
本発明で用いられる「ベースラインT細胞増殖」は、ペプチドまたはタンパク抗原の非存在下において、抗原提示細胞への曝露に応答において個体内に通常見られるT細胞増殖の程度のことを言う。本発明の目的のために、ベースラインT細胞増殖レベルは、抗原非存在下における抗原提示細胞への応答においてT細胞増殖の際の各個体についてのサンプルベースごとに決定される。
【0040】
本発明で用いられる「変性した免疫原性応答」は、増加または減少した免疫原性応答のことを言う。タンパク質およびペプチドは、それらが引き起こすT細胞および/またはB細胞応答が親(例えば、前駆体)タンパクまたはペプチド(例えば、関心のあるタンパク質)によって引き起こされる応答よりも大きいとき、「増加した免疫原性応答」を示す。このより高い応答の実質的結果は、変異体タンパクまたはペプチドに対して指向した増加した抗体応答である。タンパク質およびペプチドは、それらが引き起こすT細胞および/またはB細胞応答が親(例えば、前駆体)タンパクまたはペプチドによって引き起こされる応答よりも小さいとき、「減少した免疫原性応答」を示す。好ましい態様において、このより低い応答の実質的結果は、変異体タンパクまたはペプチドに対して指向した減少した抗体応答である。いくつかの好ましい態様において、親タンパクは野生型タンパクまたはペプチドである。
【0041】
本発明で用いられる「免疫原性のin vivoにおける低下」は、生きている生物体内で少なくとも一部分で生じるアッセイ(例えば、生きた動物の使用が必要)により同定される免疫原性応答の明らかな減少のことをいう。具体的な「in vivo」アッセイには、マウスモデルにおける変性した免疫原性応答の測定が含まれる。
【0042】
本発明で用いられる「免疫原性のin vitroにおける低下」は、生きている生物体外の人工的な環境において生じるアッセイ(すなわち、生きた動物の使用が不必要)により同定される免疫原性応答の明らかな減少のことをいう。具体的な「in vitro」アッセイには、関心のあるペプチドへのヒト末梢血単核球細胞による増殖応答の試験が含まれる。
【0043】
本発明で用いられる「有意なエピトープ」という用語は、試験ドナープール内の応答率がバックグラウンド応答率の約3倍以上のエピトープ(すなわち、T細胞および/またはB細胞エピトープ)のことをいう。
【0044】
本発明で用いられる「弱有意エピトープ」は、試験ドナープール内の応答率がバックグラウンド応答率より大きいが、バックグラウンド率の約3倍未満であるエピトープ(すなわち、T細胞および/またはB細胞エピトープ)のことをいう。
【0045】
本発明で用いられる「関心のあるタンパク質」は分析、同定および/または修飾されるタンパク質のことをいう。組み換えタンパクだけでなく天然発生のタンパク質も本発明において使用される。
【0046】
本発明で用いられる「タンパク質」は、アミノ酸を含み、および当業者によってタンパク質として認識されている任意の組成物のことをいう。「タンパク質」、「ペプチド」の用語およびポリペプチドは、本発明において互換的に使用される。ペプチドがタンパク質の一部である場合に、当業者は文脈においてこれら用語の使用を理解する。「タンパク質」の用語は、関連するタンパク質のプロ(pro-)およびプレプロ(prepro-)形態だけでなくタンパク質の成熟形態も含む。タンパク質のプレプロ形態は、タンパク質のアミノ末端に作働可能に結合したプロ配列を有するタンパク質の成熟形態、およびプロ配列のアミノ末端に作働可能に結合した「プレ」または「シグナル」配列を含む。
【0047】
本発明の変異体は、そのような蛋白変異体のプロおよびプレプロ形態と同様に、蛋白変異体の成熟形態を含む。このプレプロ形態は、蛋白変異体の発現、分泌および成熟化を容易にするため好ましい構成である。
【0048】
本発明で用いられる「プロ配列」は、除去されるとタンパク質の「成熟」形態が結果として出現する、タンパク質の成熟形態N末端に結合したアミノ酸配列のことをいう。多くの酵素は翻訳プロ酵素生成物として自然では認められ、翻訳後プロセッシングがないとこの形態で発現される。
【0049】
本発明で用いられる「シグナル配列」および「プレ配列」とは、タンパク質の成熟またはプロ形態の分泌に関与することができるタンパク質のN末端部分またはプロタンパク質のN末端部分に結合した任意のアミノ酸配列のことをいう。シグナル配列のこの定義は機能的なものであり、未処理条件下のタンパク質の分泌を成し遂げることに関与するタンパク質遺伝子のN末端部分をコードする全てのそれらのアミノ酸配列を含むことを意図している。本発明は、本発明で記載される蛋白変異体の分泌を奏功させるそのような配列を利用する。
【0050】
本発明で用いられる「プレプロ」形態の蛋白変異体は、タンパク質のアミノ末端に作働可能に結合したプロ配列およびプロ配列のアミノ末端に作働可能に結合した「プレ」または「シグナル」配列を有するタンパク質の成熟形態から構成される。
【0051】
本発明で用いられるように、機能的に類似のタンパク質は「関連タンパク質」と見なされる。いくつかの態様において、これらのタンパク質は生物体(例えば、細菌タンパク質および真菌タンパク質)のクラス間の相違を含む、異なる属および/または種に由来する。いくつかの態様において、これらのタンパク質は生物体(例えば、細菌β−ラクタマーゼおよび真菌タンパク質)のクラス間の相違を含む、異なる属および/または種に由来する。追加的な態様において、関連タンパクは同一の種から提供される。実際に、本発明は任意の特定の出所に由来する関連タンパクに限定されることを意図していない。
【0052】
本発明で用いられる「誘導体」とは、CおよびN最終末端のいずれかまたは両方への1つ以上のアミノ酸の付加、アミノ酸配列における1つ以上の異なる部位での1つ以上のアミノ酸の置換、および/またはタンパク質のいずれかのまたは両方の末端での又はアミノ酸配列における1つ以上の部位での1つ以上のアミノ酸の欠失、および/またはアミノ酸配列における1つ以上の異なる部位での1つ以上のアミノ酸の挿入により誘導されるタンパク質のことをいう。タンパク質誘導体の調製は、未処理タンパク質をコードするDNA配列の修飾、そのDNAの適切な宿主への形質転換、および誘導体タンパク質を精製する修飾DNA配列の発現により好ましくは達成される。
【0053】
関連(および誘導体)タンパク質は「変異体タンパク質」を含む。好ましい態様において、変異体タンパク質は親タンパク質と互いに少数のアミノ酸残基が異なる。異なるアミノ酸残基の数は1つ以上であり得、好ましくは1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、またはそれより多いアミノ酸残基である。1つの好ましい態様において、変異体間の異なるアミノ酸の数は1および10の間である。特に好ましい態様において、関連タンパク質および特定の変異体タンパク質は50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%のアミノ酸配列相同性を含む。追加的に、本発明で用いられる関連タンパク質または変異体タンパク質は、顕著な領域(prominent region)の数で他の関連タンパク質または親タンパク質と異なるタンパク質のことをいう。例えば、いくつかの態様において、変異体タンパク質は親タンパク質と異なる1、2、3、4、5、または10の対応する顕著な領域を有する。
【0054】
1つの態様において、変異体の対応する顕著な領域はバックグラウンドレベルの免疫原性応答のみを生成する。置換、挿入または欠失が同定されたいくつかの残基は保存された残基であるが、他はそうではない。保存されない残基の場合、1つ以上のアミノ酸の置き換えは自然に認められるものに対応しないアミノ酸配列を有する変異体を生成する置換に限定される。保存される残基の場合、そのような置き換えは自然発生の配列を結果として生じることはないはずである。
【0055】
いくつかの態様において、修飾は好ましくは前駆体酵素のアミノ酸配列をコードする「前駆体DNA配列」になされるが、前駆体タンパク質の操作によっても可能である。保存されない残基の場合、1つ以上のアミノ酸の置き換えは自然に認められるものに対応しないアミノ酸配列を有する変異体を生成する置換に限定される。保存される残基の場合、そのような置き換えは自然発生の配列を結果として生じることはないはずである。本発明によって提供される誘導体は、β−ラクタマーゼの特徴を変化させる1つ以上の化学的修飾をさらに含む。
【0056】
いくつかの態様において、変異体β−ラクタマーゼの特徴は当業者に既知の方法により決定される。具体的な特徴には、熱安定性、アルカリ安定性、および特定のβ−ラクタマーゼ、様々な基質、緩衝溶液、および/または生成物製剤の安定性が含まれるが、これらに限定されない。酵素安定性アッセイと組み合わせて、ランダム突然変異により得られる変異体β−ラクタマーゼは酵素活性を維持する間に増加または減少したアルカリまたは熱安定性のいずれを示すかを調べることができる。
【0057】
アルカリ安定性は、既知の操作または本発明に記載の方法のいずれかにより測定することができる。アルカリ安定性の実質的な変化は、前駆体タンパク質と比較したときに変異体の酵素活性における半減期の約5%以上の増加または減少(ほとんどの態様において、好ましくは増加である)により証明される。
【0058】
熱安定性は、既知の操作または本発明に記載の方法のいずれかにより測定することができる。熱安定性の実質的な変化は、前駆体タンパク質と比較したときに比較的高い温度および中性pHに曝露された変異体の触媒活性における半減期の約5%以上の増加または減少(ほとんどの態様において、好ましくは増加である)により証明される。
【0059】
いくつかの態様において、β−ラクタマーゼ遺伝子は適切な発現プラスミドに結合される。クローンしたβ−ラクタマーゼ遺伝子は、つぎにβ−ラクタマーゼ遺伝子を発現するために宿主細胞を形質転換または宿主細胞に形質移入させるために用いられる。このプラスミドは、プラスミド複製に必要な周知の要素を含む、または前記プラスミドが宿主染色体を完成するために設計され得るというという意味において、宿主細胞において複製できる。必要な要素は効果的な遺伝子発現(例えば、関心のある遺伝子に作働可能に結合したプロモータ)のために提供される。いくつかの態様において、これらの必要な要素は、遺伝子自身の同種(homologous)プロモータが外因性または内因性のβ−ラクタマーゼ遺伝子の末端領域である転写終止因子(transcription terminator)(真核生物宿主細胞のためのポリアデニル化領域)として認識される(すなわち、宿主により転写される)場合には、その転写終止因子として供給される。いくつかの態様において、抗菌剤含有培地における成長によりプラスミド感染宿主細胞の連続的な培養維持が可能となる、抗生物質抵抗性遺伝子のような選択遺伝子も含まれる。
【0060】
他の方法を用いることはできるが、以下のカセット突然変異法は本発明のβ−ラクタマーゼ変異体の構築を容易にするために用いられる。第一に、β−ラクタマーゼをコードする自然発生の遺伝子が得られ、全体または一部がシークエンスされる。次にこの配列はコードされたβ−ラクタマーゼの1つ以上のアミノ酸の突然変異(欠失、挿入または置換)を起こすために望ましい地点を精査される。この地点に隣接する配列は、遺伝子の短い区域を発現の際に様々な変異体をコードすることになるオリゴヌクレオチドのプールで置き換えるための制限部位の存在について評価される。そのような制限部位は、遺伝子区域の置換えを容易にするため、好ましくはタンパク質遺伝子内の特異部位である。しかしながら、制限消化により生成する遺伝子断片が適当な配列に再結集できるという条件で、β−ラクタマーゼ遺伝子において過度に縮重していない任意の便利な制限部位を用いることができる。もし制限部位が選択された地点からの便利な距離内(10〜15塩基)の場所に存在しないなら、リーディングフレーム(reading frame)もコードされたアミノ酸最終構成で変化しないような様式で、そのような部位は遺伝子中の置換ヌクレオチドにより生成される。所望の配列に合わせるようにその配列を変化させるための遺伝子の突然変異は、一般的に知られた方法に従ってM13プライマー延長より達成される。適切な隣接領域の位置を決定し、2つの便利な制限部位配列に到達するために求められる変化を評価する作業は、遺伝子コードの縮重、遺伝子の制限酵素地図および多数の異なる制限酵素によりルーティンとして行われる。もし便利な隣接制限部位が利用できるなら、上記方法は部位を含まない隣接領域に関連してのみ用いる必要があることに注意すべきである。
【0061】
一旦、自然発生DNAまたは合成DNAがクローンされると、変異されるべき位置に隣接する制限部位は同種の制限酵素で消化され、複数最終末端が相補的なオリゴヌクレオチド・カセットが遺伝子に結合される。全てのオリゴヌクレオチドが同じ制限部位をもつように合成することができ、制限部位の作成にいかなる合成リンカーも必要でないため、前記突然変異はこの方法により簡略化される。
【0062】
本発明で用いられる「対応する」は、タンパク質またはペプチドにおける番号を付した位置における残基、またはタンパク質またはペプチドにおける番号を付した残基と類似の、同種の、または等価な残基のことをいう。
【0063】
本発明で用いられる「対応領域」は、一般的に関連タンパク質または親タンパク質に沿った類似の位置のことをいう。
【0064】
「核酸分子をコードする」、「DNA配列をコードする」、および「DNAをコードする」という用語は、デオキシリボ核酸鎖に沿ったデオキシリボヌクレオチドの順序または配列のことをいう。これらのデオキシリボヌクレオチドの順序はポリペプチド(タンパク質)鎖に沿ったアミノ酸の順序を決定する。したがって、前記DNA配列はアミノ酸配列をコードする。
【0065】
本発明で用いられる「類似配列」という用語は、関心のあるタンパク質(すなわち、具体的には関心ある元々のタンパク質)と類似の機能、三次構造、および/または保存残基(conserved residues)を提供するタンパク質内の配列のことをいう。特に好ましい態様において、類似配列はエピトープにおける、またはエピトープ付近における配列を含む。例えば、アルファへリックスまたはベータシート構造を含むエピトープ領域において、類似配列における置換アミノ酸は好ましくは同一の特異的構造を保持する。また、この用語はアミノ酸配列だけでなく、ヌクレオチド配列のことも言う。いくつかの態様において、エピトープにおける、またはエピトープ付近における関心のあるタンパク質のアミノ酸に対して、置換アミノ酸が類似の機能、三次構造および/または保存残基を示すために類似配列が開発されている。従って、エピトープ領域が、例えばアルファヘリックスまたはベータシート構造を含む場合、置換アミノ酸は、好ましくはその特異的構造を保持する。
【0066】
本発明で用いられる「相同タンパク」は、関心のあるタンパク質(例えば、他の起源由来のβ−ラクタマーゼ)と類似の作用、構造、抗原性および/または免疫原性応答を有すタンパク質(例えば、β−ラクタマーゼ)のことを言う。相同体(ホモログ:homolog)は必ずしも進化的に関係を有することを意図していない。従って、この用語は異なる種から得られた同一機能のタンパク質を含むことを意図している。いくつかの好ましい態様において、関心のあるタンパク質におけるエピトープを相同体からの類似の断片で置換することが変化による破壊を低減するので、関心のあるタンパク質と類似の三次および/または一次構造を有する相同体を同定することが望ましい。従って、ほとんどの場合において、密接に相同的なタンパク質はエピトープ置換の最も望ましい源を提供する。選択的に、一定のタンパク質に対してヒトの類似体に注目することは有益である。例えば、いくつかの態様において、一つのβ−ラクタマーゼにおける特定のエピトープを他のβ−ラクタマーゼまたは他種のβ−ラクタマーゼに置換することは、低減した免疫原性でβ−ラクタマーゼの産生をもたらす。いくつかの態様において、本発明のβ−ラクタマーゼ相同体は、野生型β−ラクタマーゼと実質的に類似の三次および/または一次構造を有する。重要なβ−ラクタマーゼのエピトープは相同体酵素からの類似の断片で置換できる。このタイプの置換は、親β−ラクタマーゼにおいて変化による破壊を低減できる。ほとんどの場合、密接に相同なタンパク質はエピトープ置換の最も望ましい源を提供する。
【0067】
本発明で用いられる「相同遺伝子」は、相互に対応し、および相互に同一または非常に類似した種と異なるが、しかし通常関連した一組以上の遺伝子のことを言う。この用語は、遺伝子複製(例えば、パラロガス遺伝子)によって分化された遺伝子だけでなく、種分化(すなわち、新しい種の発生)(例えば、オルソロガス遺伝子)によって分化された遺伝子も含む。これらの遺伝子は「相同タンパク質」をコードする。
【0068】
本発明で用いられる「オルソログ(ortholog)」および「オルソロガス(orthologous)遺伝子」は、種分化によって共通の先祖遺伝子(すなわち、相同遺伝子)から進化した異種における遺伝子のことを言う。典型的には、オルソログは進化の過程において同一の機能を保持する。オルソログの同定は新たにシークエンスされたゲノムにおける遺伝子機能の信頼性のある予測に使用される。
【0069】
本発明で用いられる「パラログ(paralog)」および「パラロガス(paralogous)遺伝子」は、ゲノム内の複製による関連する遺伝子のことを言う。オルソログが進化の過程を通じて同一の機能を保持するのに対して、パラログはある機能がしばしば元々の機能に関連したとしても、新しい機能を進化させる。パラロガス遺伝子の具体例には、トリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ、およびトロンビンをコードする遺伝子を含むが、それらに限定されない。これらは全てセリンプロティナーゼであり、同種内で共に生成する。
【0070】
配列間の相同性の程度は、当該技術分野で既知の任意の適切な方法を用いて決定することができる(例えば、スミスおよびウォーターマン、Adv.Appl.Math.,2:482〔1981年〕;ニードルマンおよびウンシュ、J.Mol.Biol.,48:443〔1970年〕;ピアソンおよびリップマン、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444〔1988年〕;ウィスコンシン遺伝子ソフトウエア・パッケージ収録のGAP、BESTFIT、およびTFASTAといったプログラム(ジェネティクス・コンピューター・グループ、マディソン、ウイスコンシン州);およびドゥブリュー(Devereux)他、Nucl.Acid Res.,12:387-395〔1984年〕を参照されたい)。
【0071】
例えば、PILEUPは、配列相同性レベルを決定するために有益なプログラムである。PILEUPは、進歩したペアワイズ・アラインメント(pairwise alignments)を使用して一群の関連配列から多数の配列アラインメントを生成する。また、それはアラインメントを生成するために使われるクラスタリング(clustering)関係を示す系統樹を描くことができる。PILEUPは、フェンおよびドゥーリトルの進歩的したアラインメント法(Feng and Doolittle, J.Mol.Evol.,35:351-360〔1987年〕)の簡略化を利用する。この方法はヒギンスおよびシャープ(Higgins and Sharp, CABIOS 5:151-153〔1989年〕)によって記述された方法と類似している。有用なPILEUPパラメータは、3.00のデフォルトギャップ重み(default gap weight)、0.10のデフォルトギャップ長重み(default gap length weight)および重みづけ末端ギャップ(weighted end gaps)を含む。有用なアルゴリズムの他の具体例は、アルツール(Altschul)他(Altschul他、J.Mol.Biol.,215:403-410、〔1990年〕;およびカーリン他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA
90:5873-5787〔1993年〕)によって記述されたBLASTアルゴリズムである。1つの特別に有用なBLASTプログラムは、WU−BLAST−2プログラムである(Altschul他、Meth.Enzumol、266:460-480〔1996年〕を参照されたい)。パラメータ「W」、「T」および「X」は、アラインメントの感度と速度を決定する。BLASTプログラムは、デフォルトとして11の語長(W)、BLOSUM62スコアマトリクス(ヘニコフおよびヘニコフ(Henikoff and Henikoff)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:10915〔1989年〕を参照されたい)、50のアラインメント(B)、10の期待値、M’5、N’−4、および両方の鎖(strands)の比較を使用する。
【0072】
本発明で用いられる「パーセント(%)核酸配列同一性」は、配列のヌクレオチド残基と同一である候補配列におけるヌクレオチド残基のパーセンテージとして定義される。
【0073】
本発明で用いられる「ハイブリダイゼーション」という用語は、当該技術分野で既知のように、核酸鎖が塩基対形成を通して相補鎖に結合する過程のことを言う。
【0074】
本発明で用いられる「ハイブリダイゼーション条件」は、ハイブリダイゼーション反応が行われる条件のことをいう。これらの条件は、ハイブリダイゼーションが測定される条件の「ストリンジェンシー」の低度によって具体的に分類される。ストリンジェンシーの条件は、例えば、核酸結合複合体またはプローブの融解温度(Tm)に基づくことができる。例えば、「最大ストリンジェンシー」は、典型的には約Tm−5℃(プローブのTmの5℃下)で起こり、「高度ストリンジェンシー」はTmより約5−10℃下であり、「中程度ストリンジェンシー」はプローブのTmより約10−20℃下であり、「低度ストリンジエンシー」はTmより約20−25℃下である。選択的または追加的に、ハイブリダイゼーション条件はハイブリダイゼーションの塩またはイオン強度条件および/または1つ以上のストリンジェンシー洗浄に基づくことができる。例えば、6×SSC=非常に低度ストリンジェンシー、3×SSC=程度から中程度ストリンジェンシー、1×SSC=中程度ストリンジェンシー、および0.5×SSC=高度ストリンジェンシーである。機能的に最大のストリンジェンシー条件は、ハイブリダイゼーション・プローブと厳格な同等性(strict identity)またはほぼ厳格な同等性(near-strict identity)を有する配列の同定のために用いることができ、一方、高度ストリンジェンシー条件はプローブと約80%以上の同等性を有する核酸配列のホモログの同定に用いられる。
【0075】
高度の選択性を必要とする適用に関して、ハイブリッドを形成するため(例えば、比較的低い塩および/または高温条件が用いられる)、典型的には比較的ストリンジェントな条件を採用することを望むことになる。
【0076】
二つ以上の核酸またはポリペプチドの文脈において「実質的に類似」および「実質的に同一」という言い回しは、具体的には、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが、文献(すなわち、野生型)配列と比較して60%以上の同一性を有する配列を含み、好ましくは75%以上の配列同一性、より好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上、もっとより好ましくは95%、最も好ましくは97%、時として98%および99%の配列同一性を有する配列を含むことを意味する。配列同一性は、標準パラメータを使用してBLAST、ALIGN、およびCLUSTALのような既知のプログラムを使用して決定される。(例えば、Altschul他、J.Mol.Biol. 215:403-410〔1990年〕;ヘニコフ他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915〔1989年〕;カリン他、Proc.Natl.Acad.Sci USA 90:5873〔1993年〕;およびヒギンス他、Gene 73:237-244〔1988年〕を参照されたい)。BLAST分析を実行するためのソフトウエアは、全米バイオテクノロジー情報センターを通じて公的に入手可能である。また、データベースはFASTA (ピアソン他、Proc.Natl.Acad.Sci. USA 85:2444 − 2448〔1988年〕)を使用して検索できる。2つのポリペプチドが実質的に同一であるいうことを示すことにより、第一ポリペプチドは第二ポリペプチドと免疫学的に交差反応性であることがわかる。具体的には、保存的なアミノ酸置換により異なるポリペプチドは免疫学的に交差反応性である。したがって、例えば2つのペプチドが保存的置換によってのみ異なる場合には、ポリペプチドは実質的に第二のポリペプチドと同一である。また、2つの核酸配列が実質的に同一であることを示すことにより、2つの分子はストリンジェントな条件下で(例えば、中程度から高度のストリンジェンシーの範囲内で)互いにハイブリダイズする。
【0077】
本発明で用いられる「等価残基」は、特定のアミノ酸残基を共有するタンパク質のことを言う。例えば、等価残基はその三次構造がX線結晶学によって決定されたタンパク質(例えば、IFN−β)に関する三次構造のレベルで相同性を決定することによって同定することができる。等価残基は、推定上の等価残基を有すタンパク質および関心あるタンパク質(NonN、CAonCA、ConC、および OonO)の特定のアミノ酸残基の主鎖原子の2または3以上の原子座標がアラインメント後に0.13nm、好ましくは0.1nmの範囲内であるものとして定義される。分析されたタンパク質の非水素タンパク原子の原子座標の極大重なりを生じさせるために最良のモデルが配向され、位置づけられた後に、アラインメントが実行される。好ましいモデルは、結晶学およびタンパク質の特徴づけ/分析の当業者に既知の方法を用いて決定された、利用可能な最高の分解能で実験回折データのために最低のR因子を与える結晶学モデルである。
【0078】
本発明は、言及される特定の微生物株由来のものと等価である変更された免疫原性を有すタンパク質を含む。この文脈において、「等価」であるとは、中程度から高度のストリンジェンシー条件下で、ヒトT細胞への変更された免疫原性応答を保持しつつ、配列番号1のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズできるポリヌクレオチドによってβ−ラクタマーゼがコードされることを意味する。したがって、いくつかの態様において、等価なβ−ラクタマーゼは、エピトープ配列およびそのようなエピトープを有する変異体β−ラクタマーゼに対し、55%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上または99%以上の同一性を含む。
【0079】
本発明で用いられる「ハイブリッドβ−ラクタマーゼ」および「融合β−ラクタマーゼ」という用語は、2つ以上の異なるまたは「親」タンパク質から操作されたタンパク質のことを言う。好ましい態様において、これらの親タンパク質は相互に相同体である。例えば、いくつかの態様において、好ましいハイブリッドβ−ラクタマーゼまたは融合タンパクはタンパク質のN末端およびタンパク質の相同体のC末端を含む。いくつかの好ましい態様において、2つの最終端末は完全長の活性タンパクに一致するように結合される。選択的な好ましい態様において、相同体は実質的な類似性を共有するが、同一のT細胞エピトープは持たない。従って、ある態様において、本発明はC末端における1つまたは2以上のT細胞エピトープを有する関心あるβ−ラクタマーゼを提供するが、そこにおいてC末端はC末端において作用の弱いT細胞エピトープ、または少数のエピトープを有する、またはT細胞エピトープの存在しない相同体のC末端に置換される。従って当業者は、相同体間にT細胞エピトープを同定できることによって、異なった免疫原性応答を生成する多様な変異体を形成できることを理解している。更に、内在性部分、および1つ以上の相同体は本発明の変異体を生成するために使用することができることがわかる。
【0080】
本発明で用いられる「制御要素」という用語は、核酸配列の発現のある局面を制御する遺伝的要素のことを言う。例えば、プロモータは、作働可能に結合したコード領域の転写の開始を促進する制御要素である。その他の制御要素は、スプライシング信号、ポリアデニル化信号、および終結信号等である。
【0081】
本発明で用いられる「発現ベクター」は、適当な宿主においてDNAの発現を奏功することができる好適な制御配列に作動可能に結合されたDNA配列を含むDNA構築体のことを言う。そのような制御配列は、転写を奏功するプロモータ、そのような転写を制御する任意のオペレータ配列、好適なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、および転写および翻訳の停止を制御する配列を含む。ベクターはプラスミド、ファージ粒子、または単に潜在的な遺伝子挿入体であり得る。いったん適切な宿主に形質変換されると、ベクターは宿主ゲノムと独立して複製および機能でき、または場合によってはゲノム自体に組み入れられる。本明細書において、「プラスミド」および「ベクター」は、プラスミドが現在ベクターの最も一般的な使用形態であるために、時々互換的に用いられる。しかし、本発明は等価の機能を提供し、また当技術分野で既知の、もしくは知られるようになる発現ベクターのそのような他の形態を含むことを意図している。
【0082】
本発明で用いられる「宿主細胞」は、一般的には、酵素的に活性な内因性プロテアーゼを分泌できないようにするために、好ましくは当該技術分野で既知の方法(例えば、US4,760,025号を参照されたい)により操作された原核生物のまたは真核生物の宿主である。タンパク質を発現するための好ましい宿主細胞は、酵素的に活性な中性タンパク質およびアルカリ性プロテアーゼ(スブチリシン)を欠損したバチルスBG2036株である。BG2036株の構築は米国特許5,264,366号に詳述され、本文献は参照により本発明に取り込まれる。タンパク質を発現するための他の宿主細胞には、B.リケニフォルミス(licheniformis)、B.レントゥス(lentus)、および他のバチルス種などの種を含むが、これらに限定されない任意の好適なバチルス株と同様に、バチルス・スブチリス(subtilis)I168(米国特許4,760,025号(RE34,606号)および米国特許5,264,366号にも記述されている。これらの開示は参照により本発明に取り込まれる。)が含まれる。しかしながら、当該技術分野において好適な宿主細胞として他の生物体(例えば、E.コリ等)が知られているため、本発明は宿主細胞としてバチルス種に限定することを意図していない。いくつかの態様において、前記宿主細胞は、内因性β−ラクタマーゼが宿主細胞により生産されないように修飾されている。
【0083】
宿主細胞は、当該技術分野で既知の組み換えDNA技術を用いて構築されたベクターで形質転換され、または形質移入される。形質転換された宿主細胞は、タンパク質変異体をコードするベクターを複製し、または所望のタンパク質変異体を発現することができる。タンパク質変異体のプレ、またはプレプロ形態をコードするベクターの場合、発現すると、そのような変異体は典型的に宿主細胞から宿主細胞培地に分泌される。
【0084】
核酸配列を細胞に挿入するという文脈における「導入された」という用語は、形質転換、形質誘導、または形質移入を意味する。形質転換の意味には、当該技術分野で知られているように、プロトプラスト形質転換、塩化カルシウム沈降、エレクトロポレーション、むき出しのDNA等が含まれる(チャンおよびコーエン著、Mol.Gen.Genet.168巻、111〜115頁、1979年;スミス他著、Appl.Env.Microbiol.51巻、634頁、1986年;およびフェラーリ他著の総説記事、ハワード編「バチルス」、プレナム・パプリッシング社、57〜52頁、1989年を参照されたい)。
【0085】
「プロモータ/エンハンサ」という用語は、プロモータおよびエンハンサ機能の両方を提供することが可能な配列を含んだDNA断片を意味する(例えば、レトロウイルスの長い末端反復はプロモータおよびエンハンサ機能の両方を含む)。前記エンハンサ/プロモータは、「内因性」または「外因性」または「異種性」であることが可能である。内因性エンハンサ/プロモータは、ゲノムにおいて所与の遺伝子と自然に結合する因子である。外因性(異種性)エンハンサ/プロモータは、遺伝子操作(すなわち、分子生物学技術)を用いて遺伝子に並んで位置される因子である。
【0086】
発現ベクター上の「スプライシング信号」の存在は、しばしば組み換え転写物のより高い発現レベルをもたらす。スプライシング信号は、主要なRNA転写物からのイントロンの除去を媒介し、スプライスのドナーおよびアクセプター部位からなる(サムブルク(Sambrook)他、分子クローニング:実験室マニュアル、第2版、コールド・スプリング・ハーバー研究所出版、ニューヨーク、1989年、16.7〜16.8頁)。一般に使われるスプライのスドナーおよびアクセプター部位はSV40の16S RNAからのスプライス接合部である。
【0087】
「安定した形質移入」および「安定的に形質移入された」という用語は、形質移入された細胞のゲノムへの外来DNAの導入および組み込みのことをいう。「安定した形質移入体」という用語は、安定して外来DNAを形質移入された細胞のゲノムDNAへ組み込んだ細胞のことをいう。
【0088】
本発明で用いられる「選択可能なマーカー」および「選択可能な遺伝子産物」という用語は、選択可能なマーカーが発現する細胞への抗生剤または薬剤に対する抵抗力を与える酵素活性をコードする遺伝子の使用のことをいう。
【0089】
本発明で用いられる「増幅」および「遺伝子増幅」という用語は、増幅された遺伝子が当初ゲノムにおいて存在した遺伝子より高いコピー数で現れるようになるように、特定のDNA配列が不均衡に複製される過程のことをいう。いくつかの態様において、薬剤(例えば、阻害可能酵素の阻害剤)の存在下における増殖による細胞の選択は、薬剤の存在下で増殖のために必要とされる遺伝子産物をコードする内因性遺伝子の増幅、またはこの遺伝子産物をコードする外因性(すなわち、取り込み)配列の増幅によって必要とされる遺伝子産物をコードする内因性遺伝子の増幅、または両方の増幅をもたらす。遺伝子増幅は、両生類卵母細胞におけるリボソーム遺伝子の増幅のような特定の遺伝子の発達の期間に自然に生じる。遺伝子増幅は、培養細胞を薬剤で処理することによって誘発される。薬剤誘発性増幅の具体例は、哺乳類細胞の内因性dhfr遺伝子のメトトレキサート誘発増幅である(シュミッケ(Schmike)他著、サイエンス、202巻、1051頁、1978年)。薬剤(例えば、阻害可能酵素の阻害剤)の存在下における増殖による細胞の選択は、薬剤の存在下で増殖のために必要とされる遺伝子産物をコードする内因性遺伝子の増幅、またはこの遺伝子産物をコードする外因性(すなわち、取り込み)配列の増幅によって必要とされる遺伝子産物をコードする内因性遺伝子の増幅、または両方の増幅をもたらす。
【0090】
「増幅」は鋳型(template)特異性を含む核酸複製の特別な場合のことをいう。それは非特異的鋳型複製(すなわち、鋳型依存性ではあるが、特定の鋳型に依存的ではない複製)と対照的である。鋳型特異性は本発明において複製の正確さ(すなわち、適切なポリヌクレオチド配列の合成)およびヌクレオチド(リボ−またはデオキシリボ−)特異性とからは区別される。鋳型特異性はよく「標的」特異性という用語で記述される。標的配列は、他の核酸から選び出すことを追及するという意味において「標的」であ。増幅技術はこの選び出すことを主な目的として設計される。
【0091】
本発明で用いられる「共増幅(co-amplification)」という用語は、他の遺伝子配列(すなわち、発現ベクター内に含んだもののような、1つ以上の非選択可能な遺伝子を含む)と結合した増幅可能なマーカーを単一細胞に導入し、その細胞が増殖可能なマーカーおよび他の非選択可能な遺伝子配列の両方を増幅するように適切な選択的圧力をかけることをいう。前記増幅可能なマーカーは、1つが増幅可能なマーカーを含んで他方が非選択可能なマーカーを含み、同じ細胞に導入することができる、他の遺伝子配列または選択的に2つの別のDNA断片に物理的に結合することができる。
【0092】
本発明で用いられる「増幅可能なマーカー」、「増幅可能な遺伝子」および「増幅可能なベクター」という用語は、適切な増殖条件下において、その遺伝子の増幅を可能とする遺伝子をコードするマーカー、遺伝子またはベクターのことをいう。
【0093】
「鋳型特異性」は酵素の選択によりほとんどの増幅技術において達成される。増幅酵素は、それらが用いられる条件下で核酸の不均一な混合物において特定の核酸配列のみを処理する酵素である。例えば、Qβレプリカーゼの場合にMDV−1 RNAはレプリカーゼの特異的な鋳型である(例えば、カシアン(Kacian)他著、プロシーデングズ・オブ・ナショナル・アカデミー・サイエンスUSA、69巻、3038頁、1972年を参照されたい)。他の核酸はこの増幅酵素により複製されない。同様に、T7RNAポリメラーゼの場合に、この増幅酵素はそれ自身のプロモータにストリンジェントな特異性を有する(チャンバーリン(Chamberlin)他著、ネイチャー、228卷、227頁、1970年を参照されたい)。T4DNAリガーゼの場、この酵素は、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド基質および結合の鋳型にミスマッチがある場合には2つのオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの結合をしない(ウおよびウァレス(Wu and Wallace)著、ゲノミクス、4卷、560頁、1989年を参照されたい)。最後に、TaqおよびPfuポリメラーゼは、高温で機能するそれらの能力のために結合した配列に高い特異性を示し、したがってプライマーにより定義されることがわかっている。この高温のために、標的配列とのプライマー・ハイブリダイゼーションおよび非標的配列との非ハイブリダイゼーションに向いている熱動力学的条件をもたらす。
【0094】
本発明で用いられる「プライマー」という用語は、精製された制限消化物に当然に生じ、または合成的に生産したの如何を問わず、核酸一本鎖に相補的なプライマー延長生成物の合成が誘導される条件下に置かれた時に(すなわち、ヌクレオチドおよびDNAポリメラーゼのような誘導剤の存在下で、適当な温度およびpHにおいて)合成開始点として働くことができるオリゴヌクレオチドのことをいう。前記プライマーは増幅の最大効果のために好ましくは一本鎖であるが、選択的に二本鎖であることもできる。二本鎖である場合には、前記プライマーは延長生成物を調製ために用いられる前に、初めにその二本鎖を分離するために処理される。前記プライマーは、誘導剤存在下において延長生成物の合成を開始するのに十分な長さを有さなければならない。前記プライマーの正確な長さは、温度、プライマー源、および使用方法を含む多くの要因に依存することになる。
【0095】
本発明で用いられる「プローブ」という用語は、精製された制限消化物に当然に生じ、または遺伝子組換え的またはPCR増幅により合成的に生産したの如何を問わず、関心のある他のオリゴヌクレオチドを加水分解することができるオリゴヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチド配列)のことをいう。プローブは一本鎖でも二本鎖でもよい。プローブは検出、同定、および特定遺伝子配列の単離に有用である。本発明で用いられる任意のプローブは、酵素(例えば、酵素に基づく組織化学的アッセイと同様にELISA)、蛍光、放射活性、および発光系を含むが、これらに限定されない任意の検出系で検出できるように任意の「レポーター分子」で標識されることになると考えられる。本発明は如何なる特定の検出系または標識にも限定されることを意図していない。
【0096】
本発明で用いられる「標的」という用語は、ポリメラーゼ鎖反応を言及するために用いられる場合にはポリメラーゼ連鎖反応に用いられるプライマーにより結合される核酸領域のことをいう。したがって、「標的」は他の核酸配列から選び出すことが意図されている。「領域(segment)」は前記標的配列内の核酸領域として定義される。
【0097】
本発明で用いられる「ポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)」という用語は、米国特許4,683,195号、4,683,202号、および4,965,188号の方法(ここで参照により取り込まれる)のことをいい、クローニングまたは精製を除き、ゲノムDNA混合物において標的配列の領域の濃度を上昇させるための方法を含む。標的配列を増幅するためのこの方法は、所望の標的配列を含むDNA混合物に大過剰の2つのオリゴヌクレオチド・プライマーを導入する工程、つぎにDNAポリメラーゼ存在下における温度サイクルの正確な継続の工程からなる。前記2つのプライマーは二本鎖標的配列のそれぞれの鎖に相補的である。増幅を奏功するために、前記混合物は変性され、前記プライマーは次に標的分子内の相補的配列にアニール(anneal)される。アニーリング(annealing)に続いて、プライマーは相補鎖の新しい対を形成するためにポリメラーゼで延長される。変性工程、プライマー・アニーリングおよびポリメラーゼによる延長は高濃度な所望の標的配列の増幅領域を達成するために多数回(すなわち、変性、アニーリング、および延長は1つのサイクルを構成し、多数のサイクルがあり得る)繰り返すことができる。所望標的配列の増幅領域の長さはプライマー相互の相対的位置により決定することができ、このためこの長さは制御可能なパラメータである。前記工程の繰り返される点から、前記方法は「ポリメラーゼ連鎖反応(以下、「PCR」という。)」と呼ばれる。所望の標的配列の増幅領域が混合物中の主要な配列(濃度という点から)となるため、それらは「PCR増幅された」と言われる。
【0098】
本発明で用いられる「増幅試薬」という用語は、プライマー、核酸鋳型、および増幅酵素を除いて増幅に必要とされるそれらの試薬(デオキシリボヌクレオチド三燐酸、緩衝液など)のことをいう。具体的には、他の反応成分とともに増幅試薬は反応容器(試験管、マイクロウェルなど)に入れられ、および含まれる。
【0099】
PCRを用いると、ゲノムDNAにおける特定標的配列の1コピーを幾つかの異なる方法により検出可能なレベルまで増幅することができる(例えば、標識プローブによるハイブリダイゼーション、ビオチン化プライマー取り込み後のアビジン−酵素結合物検出、dCTPまたはdATPのような32P標識デオキシヌクレオチド三燐酸の増幅領域への取り込み)。ゲノムDNAに加えて、任意のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列は適当なプライマー分子セットで増幅することができる。特に、PCR法それ自体により生成された増幅領域は、それ自体、引き続くPCR増幅のための効果的な鋳型である。
【0100】
本発明で用いられる「PCR生成物」、「PCR断片」、および「増幅生成物」という用語は、変性、アニーリング、および延長というPCR工程の2サイクル以上が完了した後に得られる化合物の混合物のことをいう。これらの用語には、1つ以上の標的配列における1つ以上の領域の増幅が起こる場合が含まれる。
【0101】
本発明で用いられる「制限エンドヌクレアーゼ」および「制限酵素」という用語は、特定のヌクレオチド配列にある、またはその近くにある二重鎖DNAを切断するそれぞれの微生物酵素のことをいう。
【0102】
本発明で用いられる「バチルス属」は、当業者に知られている「バチルス」属の範囲内の全ての種を含む。これらには、バチルス・スブチリス(subtilis)、バチルス・リケニフォルミス(licheniformis)、バチルス・レントゥス(lentus)、バチルス・ブレビス(brevis)、バチルス・ステアロテルモフィルス(stearothermophilus)、バチルス・アルカロフィルス(alkalophilus)、バチルス・アミロリケファシエンス(amyloliquefaciens)、バチルス・クラウシ(clausii)、バチルス・ハロデュランス(halodurans)、バチルス・メガテリウム(megaterium)、バチルス・コアグランス(coagulans)、バチルス・シルクランス(circulans)、バチルス・ラウトゥス(lautus)、およびバチルス・トゥリンギエンシス(thuringiensis)が含まれるが、これらに限定されない。バチルス属については分類学的再編成が継続しておこなわれているものと考えられる。したがって、この属は再分類されてきた種を含むことを意図している。これらには、現在では「ゲオバチルス(geobacillus)・ステアロテルモフィルス」と命名されたバチルス・ステアロテルモフィルスのような生物体が含まれるが、これに限定されない。酸素存在下における抵抗性内生胞子の生産はバチルス属の特徴を決定すると考えられる。もっともこの特徴も最近命名されたアリシクロバチルス(Alicyclobacillus)、アムフィバチルス(Amphibacillus)、アノイリニバチルス(Aneurinibacillus)、アノキシバチルス(Anoxybacillus)、ブレビバチルス(brevibacillus)、フィロバチルス(Filobacillus)、グラシリバチルス(Gracilibacillus)、ハロバチルス(Halobacillus)、ペニバチルス(Paenibacillus)、サリバチルス(Salibacillus)、テルモバチルス(Thermobacillus)、ウレイバチルス(Ureibacillus)、およびビルギバチルス(Virgibacillus)に適用する。
【0103】
本発明で用いられる「有効量のβ−ラクタマーゼ酵素」は、特定の応用において求められる酵素活性を達成するために必要なβ−ラクタマーゼ酵素の量のことをいう。そのような有効量は、当業者によって、使用される特定の酵素変異体、含まれる応用、全組成物のうちの特定組成物などのような多くの要因に基づいて容易に確定される。
【0104】
前述のように、本発明のβ−ラクタマーゼは、その前駆体DNAによりコードされる未処理β−ラクタマーゼと比較した場合、修飾された免疫原性応答(例えば、抗原性および/または免疫原性)を示す。いくつかの好ましい態様において、前記タンパク質(例えば、β−ラクタマーゼ)は低減したアレルゲン性/免疫原性を示す。当業者は、本発明のβ−ラクタマーゼの使用が大部分タンパク質の免疫学的特性で決定されることになることを容易に理解する。
【0105】
本発明の1つの態様において、本発明において同定されるエピトープは、1つまたは両方のそのようなエピトープを含む免疫応答(例えば、β−ラクタマーゼに対する抗体を生成することが望まれる場合)を示すために用いられる。そのような抗体は、これらの領域またはこれに高度に相同な領域のうちの1つまたは両方を含む他のβ−ラクタマーゼのスクリーニングに用いられる。追加的に、本発明のβ−ラクタマーゼは、これら又は高度に相同な領域を含むタンパク質に対するヒトの感受性を評価するために、特定のエピトープ領域を発現する単離天然エピトープ、組換えタンパク質、または合成ペプチドを利用する免疫アッセイのような様々なアッセイにおける試薬として用いられる。
【0106】
他の態様において、本発明のエピチープ断片は、そのような断片を結合し、提示することができるMHC分子を有する抗原提示細胞の検出に用いられる。例えば、前記エピトープ断片は検出可能な標識(例えば、放射活性標識)を含むことができる。この標識断片は次に関心のある細胞とインキュベートされ、さらにその標識断片を結合(または提示)する細胞が検出される。
【0107】
追加的な態様において、低減したアレルゲン性/免疫原性をもつ関連および/または変異体β−ラクタマーゼは、薬学的応用、薬物送達応用、および他のヘルスケア応用を含む他の応用に用いられる。
【0108】
さらに、低減したアレルゲン性/免疫原性をもつ関連および/または変異体タンパク質は、薬学的応用、薬物送達応用、および他のヘルスケア応用を含む他の応用に用いられる。実際、本発明のβ−ラクタマーゼは多くの組成物および応用に広範に用いられることになることが意図されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0109】
発明の詳細な説明
本発明は、親β−ラクタマーゼに比較して低下した免疫原性応答を示す変異体と同様に、β−ラクタマーゼCD4+T細胞エピトープを提供する。本発明はさらに、β−ラクタマーゼをより低下した免疫原性にするための方法と同様に、新規なβ−ラクタマーゼ変異体をコードするDNA分子、新規なβ−ラクタマーゼ変異体をコードするDNAを提供する。さらに本発明は、野生型のβ−ラクタマーゼより免疫原性の低下したこれらのβ−ラクタマーゼ変異体を含む様々な組成物を提供する。幾つかの態様において、本発明は、本発明の方法を用いる同定され、および/または特徴づけられた低下した免疫原性を有するβ−ラクタマーゼ変異体を提供する。
【0110】
前記β−ラクタマーゼT細胞エピトープの一般的な評価に続いて、β−ラクタマーゼにおける4つのT細胞エピトープが本発明の方法を用いて記載されるように、さらに分析された。関心あるものとして同定された以下のエピトープを下記の表1に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
いくつかの態様において、本発明はβ−ラクタマーゼの免疫原性を減少させる残基を同定することをさらに含む。いくつかの態様において、1つ以上のアミノ酸置換が野生型または親β−ラクタマーゼ配列における1つ以上のT細胞で生じる。いくつかの好ましい態様において、低減したアレルゲン性/免疫原性を有するβ−ラクタマーゼ変異体を生成するために親β−ラクタマーゼ配列で多数のアミノ酸が変化される。選択的な好ましい態様において、低減したアレルゲン性/免疫原性を有する変異体β−ラクタマーゼを生成するためにアミノ酸の欠失、挿入および/または置換が親β−ラクタマーゼ配列でなされる。いくつかの態様において前記β−ラクタマーゼはE.クロアカエ(cloacae)β−ラクタマーゼであるが、選択的な態様において前記β−ラクタマーゼは任意の他の生物体から得られるβ−ラクタマーゼである。いくつかの態様において前記β−ラクタマーゼは野生型であるが、他の態様においてそれは、ある個体または被験個体において感作を誘発する、関心のあるエピトープにアミノ酸置換をもつ突然変異した変異体であり、接合した変異体であり、またはハイブリッド変異体である。
【0113】
低減したアレルゲン性/免疫原性を有するβ−ラクタマーゼに加えて、本発明は親β−ラクタマーゼと同程度のアレルゲン性/免疫原性を有するが、他の変化した特徴を有する変異体β−ラクタマーゼと同様に、増強したアレルゲン性/免疫原性を有する変異体β−ラクタマーゼを包含する。選択的な好ましい態様において、増加したアレルゲン性/免疫原性を有する変異体β−ラクタマーゼを生成するために、アミノ酸の欠失、挿入および/または置換が親β−ラクタマーゼ配列において作られる。追加の態様において、前記変異体β−ラクタマーゼはアミノ酸配列の非T細胞エピトープ領域における変性を含む。したがって、本発明はT細胞に対し同等の応答性を有するが、他の変化した特徴を有するβ−ラクタマーゼを包含する。好ましい態様において、これらの変化した特徴は変異体β−ラクタマーゼに有利な特徴を与える。いくつかの態様においてこのβ−ラクタマーゼは野生型であるが、他の態様においてそれは、ある個体または被験個体において感作を誘発する、関心のあるエピトープにアミノ酸置換をもつ突然変異した変異体であり、接合した変異体であり、またはハイブリッド変異体である。
【0114】
本発明のある好ましい態様において、変化した免疫原性応答(例えば、増加または減少した免疫原性応答)を有するペプチドは関心のあるβ−ラクタマーゼ由来である。いくつかの態様において、前記エピトープは以下のエピトープおよび非エピトープを同定するアッセイにより同定される。分化した樹状細胞は未処理ヒトCD4+および/またはCD8+T細胞および関心のあるペプチドと混合される。より具体的には、いくつかの態様において、関心のある低減した免疫原性応答ペプチドが提供される。ここで、T細胞エピトープは(a)単一のヒト血液源から樹状細胞溶液、および未処理CD4+および/またはCD8+T細胞溶液を得、(b)前記樹状細胞を分化させて、(c)前記分化樹状細胞溶液および前記未処理CD4+および/またはCD8+T細胞溶液を関心のあるペプチドと混合し、および(d)工程(c)における前記T細胞の増殖を測定する工程を含み、確認される。
【0115】
本発明の1つの態様において、関心のあるβ−ラクタマーゼの全部または一部分に対応する一群のペプチド・オリゴマーが調製される。いくつかの好ましい態様において、ペプチド・ライブラリが前記タンパク質の主要な部分または全部を含んで生成される。下記の実施例で記述するように、3アミノ酸による一群の15merペプチドの分画(offset)を関心のあるエピトープの同定に用いた。本発明で提供されるアッセイにおいて各ペプチドを個別に分析することにより、本発明の方法はT細胞により認識されたエピトープの正確な同定を容易にする。上記の実施例において、隣のものよりも大きな特定ペプチドの応答により、エピトープ・アンカー領域の同定は3アミノ酸内に容易にできる。いくつかの態様において、これらのエピトープの位置決めがなされた後、前記ペプチドが初めのタンパク質のものと異なるT細胞応答を生じるまで、各エピトープ内の1つ以上のアミノ酸が修飾される。さらに、本発明は、自然発生の形態(すなわち、野生型タンパク質)で用いることができる望ましい低T細胞エピトープ性能を有するタンパク質を同定する手段を提供する。
【0116】
本発明は、免疫原性応答を調整することが望ましい全てのタンパク質の範囲に及ぶ。当業者は、本発明のタンパク質およびペプチドが必ずしも未処理のタンパク質およびペプチドとは限らないことを容易に理解する。実際、本発明の1つの態様において、変化した免疫原性応答を有する組換え遺伝子が考慮されている(遺伝子シャフリングおよびそのような遺伝子の発現の記述については、例えば、ステマー(stemmer)著、プロシーデングズ・オブ・ナショナル・アカデミー・サイエンスUSA、91巻、10747頁、1994年;パッテン(Patten)他著、Curr.Op.Biotechnol.8巻、724頁、1997年;クッシュナーおよびアーノルド(Kuchner and Arnold)著、トレンズ・オブ・バイオテクノロジー、15巻、523頁、1997年;ムーア(Moore)他著、ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー、272巻、336頁、1997年;チャオ(Zhao)他著、ネイチャー・バイオテクノロジー、16巻、258頁、1998年;ギバー(Giver)他著、プロシーデングズ・オブ・ナショナル・アカデミー・サイエンスUSA、95巻、12809頁、1998年;ハラヤマ著、トレンズ・オブ・バイオテクノロジー、16巻、76頁、1998年;リン(Lin)他著、バイオテクノロジー・プログレス、15巻、467頁、1999年;およびサン(Sun)著、コンピュータ・バイオロジー、6巻、77頁、1999年を参照されたいを参照されたい)。いくつかの態様において、β−ラクタマーゼは、β−ラクタマーゼに対する動物の免疫応答が変化するように変性されている。
【0117】
好ましくは本発明にしたがって、β−ラクタマーゼは単離され、精製される。「精製」(または「単離」)は、自然にともに存在するある種の又は全ての自然発生成分からβ−ラクタマーゼを分離することにより、β−ラクタマーゼが自然状態から変化することを意味する。この精製は、最終組成物において望ましくない全細胞、細胞破砕物、不純物、外来タンパク質、および/または酵素を除去するためにイオン交換クロマトグラフィー、アフィニティー・クロマトグラフィー、疎水分離、透析、β−ラクタマーゼ処理、硫酸アンモニウム析出または他の蛋白塩析出、遠心分離、ゲル濾過クロマトグラフィー、濾過、精密濾過、ゲル電気泳動、またはグラジエント分離のような技術が認識された分離技術を含むが、これらに限定されない当該技術分野で既知の任意の適当な手段により達成されることが意図されている。いくつかの態様において、追加的な利益を提供するために、例えば活性化剤、抗阻害剤、所望のイオン、pH調製化合物、および/または他の酵素(例えば、セルラーゼ)のような成分がβ−ラクタマーゼ含有組成物に添加される。さらなる態様において、組換えβ−ラクタマーゼが精製される。
【0118】
上記タンパク質およびペプチドに加えて、本発明は変化した免疫原性応答(例えば、増加または低下した免疫原性応答)を示す変異体β−ラクタマーゼと同様に、野生型β−ラクタマーゼも包含する。いくつかの態様において、変異体β−ラクタマーゼは、それが引き起こすT細胞応答が親(すなわち、前駆体)β−ラクタマーゼにより引き起こされるものより大きい場合には、増加した免疫原性応答を示す。この高い応答の実質的な結果はβ−ラクタマーゼに対する抗体の上昇として現れる。これらの抗体は、β−ラクタマーゼ、β−ラクタマーゼ変異体等を検出する方法を含むが、これらに限定されない様々な設定に用いられる。選択的な態様において、変異体β−ラクタマーゼは、それが引き起こすT細胞応答が親(すなわち、前駆体)β−ラクタマーゼにより引き起こされるものより小さい場合には減少した免疫原性応答を示す。この高い応答の実質的な結果はβ−ラクタマーゼに対する抗体の減少として現れる。これらの変異体β−ラクタマーゼは、他のタンパク質と組み合わせたヒトおよび/または他の動物への投与を含むが、これらに限定されない様々な設定に用いられる。
【0119】
実際、実施例8で記述されるin vivoの結果は、マウスにおける免疫優勢エピトープへの増殖応答を減弱されると、T細胞増殖および抗体産生の両方のレベルで総タンパク質の免疫原性が消失することを示している。新しいエピトープ応答を示唆したCD1.1タンパク質に見られる増殖のレベルは、この免疫感作プロトコルにおける抗体応答を誘発するのに十分ではなかった。標的エピトープはヒト群で同定された免疫優勢エピトープと同一であった。
【0120】
変異体タンパク質の低減した免疫原性応答を確認するのに有用な具体的なアッセイには、in vivoアッセイ(HLA−DR3/DQ2マウスT細胞応答)およびin vitroアッセイ(β−ラクタマーゼおよび/またはβ−ラクタマーゼ変異体のサンプルに対するヒト末梢血単球細胞(PBMC))が含まれるが、これらに限定されない。低減した免疫原性応答を確認するのに有用なin vivoアッセイには、トランスジェニック・マウスの使用に限定されず、例えばラット(タウログ(Taurog)他著、イムノロジンル・シビュー、169巻、209〜223頁、1999年)、ウサギ、またはブタが含まれる。関心のある修飾タンパク質および変異体の低減した免疫原性応答を測定するin vivo試験に好ましいトランスジェニック・マウスモデルは、当該技術分野で知られているHLA−DR3/DQ2マウスモデルである。
【0121】
さらに、自然発生アミノ酸配列に対してヒトのような動物の免疫原性応答を変化(例えば、増加および減少)させるため、本発明は突然変異タンパク質(例えば、タンパク質の機能活性を変化させるために改変されたβ−ラクタマーゼ)の免疫原性応答を低減させるための手段を提供する。いくつかの態様において、増加した活性、増加した熱安定性、増加したアルカリ安定性、および/または酸化安定性を含むが、これらに限定されないいくつかの有益な特徴を提供するために突然変異は起こされる。いくつかの態様において、前記突然変異は、突然変異したβ−ラクタマーゼの新しいT細胞エピトープの取り込みを生じる。本発明でさらに詳細に記述するように、本発明は、突然変異タンパク質の免疫原性応答を変化させることになるアミノ酸の変化を有するβ−ラクタマーゼT細胞エピトープおよび変異体β−ラクタマーゼを提供する。
【0122】
本発明は上記タンパク質および他の多数のものを包含するが、簡略化のために以下にはβ−ラクタマーゼの修飾を含む本発明の特に好ましい態様について記述する。
【0123】
本発明で用いるアミノ酸の位置番号は配列番号1のβ−ラクタマーゼ配列で割り当てられたもののことをいう。しかしながら、本発明はこの特定のβ−ラクタマーゼの突然変異に限定されるものではなく、配列番号1のβ−ラクタマーゼにおける特定のセウ呈された残基と「等価な」位置のアミノ酸残基を含む前駆体β−ラクタマーゼにも及ぶ。前駆体β−ラクタマーゼの残基(アミノ酸)は、もしそれが特定の残基または親β−ラクタマーゼにおけるその残基の部分(すなわち、化学的に結合し、反応し、相互作用する同一または類似の機能的性能を有する)に相同(すなわち、一次または三次構造のいずれかの位置で対応する)または類似なら、親β−ラクタマーゼの残基と等価である。本発明で用いられる「対応する」は一般的にペプチドに沿った類似の位置のことをいう。
【0124】
いくつかの好ましい態様において、一次構造への相同性を確認するためには前駆体β−ラクタマーゼのアミノ酸配列は、親β−ラクタマーゼの一次構造および特に配列既知のβ−ラクタマーゼにおいて変異していないことがわかっている一群の残基と直接比較される。保存された残基とアラインし、アラインメントを維持するために必要な挿入および欠失を許容(すなわち、任意の欠失および挿入により保存された残基の除去を避ける)した後に、親β−ラクタマーゼの一次構造における特定アミノ酸に等価な残基が定義される。保存された残基のアラインメントにより、好ましくはそのような残基の100%が保存されるべきである。しかしながら、75%より高い、または50%のみの保存された残基のアラインメントも等価な残基を定義するのには適当である。したがって、これらの保存された残基は、好ましい親β−ラクタマーゼに高度に相同な他のβ−ラクタマーゼにおいて親β−ラクタマーゼの対応する等価なアミノ酸残基を定義するために用いることができる。
【0125】
いくつかの態様において、本発明は前駆体β−ラクタマーゼに比較して変化した免疫原性応答能力を有する変異体β−ラクタマーゼを提供する。本発明は免疫原性応答を低下させるために有用であるが、本発明で特定された突然変異は当該技術分野で既知の突然変異と組み合わせて用いられて、前駆体と比較して変化した熱安定性および/または変化した基質安定性、修飾活性、改善された比活性または変化したアルカリ安定性をもたらす。
【0126】
追加的な態様において、2つの相同なタンパク質は1つ以上のT細胞エピトープを除去するために融合される。上述のように、T細胞エピトープが存在するタンパク質の領域は、T細胞エピトープをもたない相同タンパク質における同一の領域と置き換えられる。例えば、結果として生じるタンパク質が親β−ラクタマーゼに存在するT細胞エピトープをもたないように、融合タンパク質は親β−ラクタマーゼおよびホモログを用いて生成される。エピトープのみからタンパク質の大部分まで、所望の活性が維持される限り、任意長のアミノ酸が親タンパク質への融合に用いることができる。しかしながら、初期の活性レベルが維持されることは必要とされない。いくつかの態様において、タンパク質の低下したアレルゲン性/免疫原性のために、親タンパク質より多くのハイブリッド蛋白が同一の活性レベルを達成するために用いられる。
【0127】
いくつかの態様において、変異体β−ラクタマーゼ活性は試験され、カゼイン、ケラチン、エラスチン、コラーゲンを含むが、これらに限定されない様々な市販の基質でβ−ラクタマーゼの相互作用を検討することにより関心のあるβ−ラクタマーゼと比較される。所望のように、β−ラクタマーゼ活性は当業者に既知の任意の適当な方法により決定することができる。具体的な特徴には、熱安定性、アルカリ安定性、および様々な基質または緩衝溶液または製品調製における特定β−ラクタマーゼの安定性が含まれるが、これらに限定されない。本発明で開示される酵素安定性アッセイ操作と組み合わせると、ランダム変異により得られるミュータントは、酵素活性を維持する間に増加または減少したアルカリまたは温度安定性のいずれを示すか同定される。
【0128】
いくつかの態様において、本発明は低減した免疫原性を有し、さらに抗体および/または細胞レセプターの認識部位を含むβ−ラクタマーゼ組成物を提供する。いくつかの好ましい態様において、前記低減した免疫原性β−ラクタマーゼは抗体の少なくとも部分で接合される。この態様は特に細胞の標的認識に用いられる。いくつかの態様において、前記抗体で認識された細胞は悪性細胞を含むが、これに限定されない。低減した免疫原異性β−ラクタマーゼの認識において、前記酵素は非毒プロドラッグを細胞毒性成分(例えば、メルファラン)に変換する。いくつかの態様において、前記β−ラクタマーゼは1つ以上の癌標的配列を含むように修飾される。この態様において、患者(例えば、癌患者)は異常(例えば、癌)細胞を直接認識するように修飾されたβ−ラクタマーゼ配列を投与される。したがって、本発明は、破壊および除去のために直接細胞を標的とする手段を提供する。
【実施例】
【0129】
実験
以下の実施例は本発明の特定の好ましい態様および側面を説明するために役立つが、その特許請求の範囲を限定するように意図されていない。
【0130】
以下に示す実験的な開示において、以下の省略記号が適用される。すなわち、sdおよびSD(standard deviation)、M(molar)、mM(millimolar)、μM(micromolar)、nM(nanomolar)、mol(moles)、mmol(millimoles)、μmol(micromoles)、nmol(nanomoles)、gr(grams)、mg(milligrams)、μg(micrograms)、pg(picograms)、L(liters)、ml(milliliters)、μl(microliters)、cm(centimeters)、mm(millimeters)、μm(micrometers)、nm(nanometers)、℃(degrees Centigrade)、cDNA(copy or complementary DNA)、DNA(deoxyribonucleic acid)、ssDNA(single stranded DNA)、dsDNA(double stranded DNA)、dNTP(deoxyribonucleotide triphosphate)、RNA(ribonucleic acid)、PBS(phosphate buffered saline)、g(gravity)、OD(optical density)、CPM and cpm(counts per minutes)、rpm(revolutions per minutes)、DPBS(Dulbecco's phosphate buffered solution)、HEPES(N-[2-Hydroxyethyl]piperazine-N-[2-ethanesulfonic acid])、HBS(HEPES buffered saline)、SDS(sodium dodecylsulfate)、Tris−HCl(tris[Hydroxymethyl]aminomethane-hydrochloride)、2−ME(2-mercaptoethanol)、EGTA(ethylene glycol-bis(B-aminoethylether) N, N, N'. N'-tetraacetic acid)、EDTA(ethylenediaminetetracetic acid)、SI(stimulation index)、bla(β-lactamase or ampicillin-resistance gene)、PBMC(peripheral blood mononuclear cell)、エンドシェン社(Endogen, Woburn, MA)、サイト・ヴァックス(CytoVax, Edmonton, Canada)、ワイス−エルスト社(Wyeth-Ayerst, Philadelphia, PA)、NEN社 (NEN Life Science Products, Boston, MA)、ウォーレス・オイ社(Wallace Oy, Turku, Finland)、ファーマAS社(Pharma AS. Oslo, Norway)、ディナル社(Dynal, Oslo, Norway)、アボット社(Abbott Laboratories, Abbott Park, IL)、バイオ・シンセシス社(Bio-Synthesis, Lewisville, TX)、ATCC(American Type Culture Collection, Rockville, MD)、Gibco/BRL社(Gibco/BRL, Grand Island, NY)、シグマ社(Sigma Chemical Co., St.Louis, MO)、ファルマシア社(Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ)、およびストラタジーン社(Stratagene, La Jolia, CA)
【0131】
ペプチド
全てのペプチドは市販源より入手した(ミモトペス社(Mimotopes)サンジエゴ、カリフォルニア州)。本発明で記載するI−MUNE(登録商標)アッセイ系について、関心のあるタンパク質の完全配列を記載する3アミノ酸による15merペプチド分画はマルチピン・フォーマット(マエジ(Maeji)他著、ジャーナル・オブ・イムノロジカル・メソッド、134巻、23〜33頁、1990年)で合成した。ペプチドは約1〜2mg/mlの濃度でDMSOに再懸濁し、使用の前に−70℃で保存した。各ペプチドは少なくとも2回ずつ試験した。各ペプチドについての結果は平均値を出した。ある場合には、刺激指数は各ペプチドごとに計算した。
【0132】
ヒトドナー血液サンプル
ボランティアのドナーヒト血液軟膜サンプルは2つの市販源(スタンフォード・ブラッド・センター、パロアルト、カリフォルニア州、およびサクラメント・メディカル財団、サクラメント、カリフォルニア州)より入手した。軟膜サンプルは密度分離によりさらに精製した。各サンプルは市販のPCRに基づくキット(バイオ・シンセシス社)を用いてHLA−DRおよびHLA−DQについてHLAタイプ分類を行った。ドナー・プールにおけるHLAのDRおよびDQ表現型は北アメリカ参照標準(モリ他著、トランスプラント、64巻、1017〜1027頁、1997年)とは有意に異なると同定された。しかしながら、前記ドナー・プールはサンフランシスコ湾地域に共通の民族性に僅かに富むことを証明しなかった。
【0133】
データ分析
各個体の軟膜サンプルに関して、全ペプチドの平均CPM値が分析された。「刺激指数」(SI)を決定するために、各ペプチドについての平均CPM値を、対照(DMSOのみ)ウェルについての平均CPM値で除した。ドナーは、各ペプチドセットを用いて、1ペプチドにつき2以上の応答の平均値が集められるまで試験された。各タンパク質についてのデータは、前記セット内の各ペプチドへの応答者率を示すグラフにされた。SI値が2.95以上であった場合、陽性応答が照合された。この値は、標準の母集団分布における3つの標準偏差の差異に近似するように選択された。評価された各タンパク質について、個々のドナーによる個々のペプチドへの陽性応答が集められた。所与のタンパク質についてのバックグラウンド応答を測定するために、前記セットの各ペプチドへの応答者率が平均化され、および標準偏差が計算された。統計的有意性は、前記データセット内の各ペプチドへの応答者数についてポアソン統計を用いて計算された。本発明で記載されるように異なる統計的方法が用いられた。前記ペプチドへ応答するドナー数のいずれかがp<0.05を有するデータセットにより定義されるポアソン分布と異なる場合、および/または応答率がバックグラウンドより少なくとも3倍大きい場合、ペプチドへの応答は有意と見なされた。
【0134】
統計的方法
ペプチド応答の統計的な有意性は、ポワソン統計に基づいて計算された。応答者の平均頻度は、応答総数および前記セット内のペプチド数に基づいたポワソン分布を計算するために用いられた。応答は、p<0.05の場合、有意であるとみなされた。加えて、異なった分散を持つスチューデントの両側t検定が行われた。低いバックグラウンド応答率を有するデータを用いたエピトープ測定に関して、下記式に基づく保存的ポワソンが適用された。
【0135】
【数1】
【0136】
ここで、n=セット内のペプチド数、x=関心のあるペプチドでの応答頻度、およびλ=データセット内の応答頻度の中央値。高いバックグラウンド応答率を有するデータに基づくエピトープ測定に関して、よりストリンジェントでないポアソンに基づく下記の定義が使用された。
【0137】
【数2】
【0138】
ここで、λ=データセットの応答頻度の中央値、およびx=関心のあるペプチドでの応答頻度。
【0139】
追加的な態様において、構造測定は下記式に基づいて珪酸された。
【0140】
【数3】
【0141】
ここで、Σ(上記の場合シグマ)は、データセット内のそのペプチドの頻度を差し引いた各ペプチドへの応答頻度の絶対値の合計である。f(i)は個々のペプチドについての応答頻度として定義され、pはペプチドセット内のペプチド数である。
【0142】
この式の値は0および2の間であり、この値は「構造値」に等しい。0という値は結果が完全に構造を有しないことを示し、2.0という値は全ての構造が単一の領域の周囲に高度に構築されていることを示す。値が2.0に近ければ、タンパク質の免疫原性はより大きくなる。したがって、低い値は低い免疫原性タンパク質を示す。
【0143】
ドナー・プール内のHLAタイプ
HLA−DRおよびDQタイプは定義されたエピトープペプチドへの応答への関連性を分析した。有意差を決定するために、自由度1をもつΧ二乗分析を用いた。応答者および非応答者プールの両方に対立遺伝子が存在する場合には、相対危険度が計算された。
【0144】
HLA−DRB1対立遺伝子表現型は約185のランダムな個体について決定された。HLAタイプ決めは低度ストリンジェンシーPCR定量法を用いて行われた。PCR反応は製造者(バイオ−シンセシス社)の指示にしたがって行った。スタンフォードおよびサクラメントのサンプルについて集められたデータは出版された「コケージアン(Caucasian)」HLA−DRB1頻度に匹敵した(マーシュ(Marsh)他著、「HLAファクト・ブック」、アカデミック・プレス社、サンジエゴ、カリフォルニア州、2000年、398頁、図1を参照されたい)。これらのコミュニティーのドナー母集団にはHLA−DR4およびHLA−DR15が多かった。しかしながら、これらの母集団におけるこれらの対立遺伝子の頻度は、これら2つの対立遺伝子について報告された範囲内(HLA−DR4の5.2〜24.8%、およびHLA−DR15の5.7〜25.6%)のものであった。同様に、HLA−DR3、−DR7、および−DR11について頻度は平均コケイジアン頻度より低いが、それらの対立遺伝子について報告された範囲内であった。また、HLA−DR15は、サンフランシスコ湾地域において非常に代表的な民族母集団において高い頻度で認められることに注目されたい。
【0145】
実施例1
ヒトT細胞を用いたβ−ラクタマーゼにおけるペプチドT細胞エピトープの同定のためのI−MUNE(登録商標)アッセイ系で用いられる細胞の調製
新鮮ヒト末梢血細胞をβ−ラクタマーゼへの曝露が知られていない69名のヒトから収集した。これらの細胞は実施例3で記述されるようにβ−ラクタマーゼ中の抗原エピトープを決定するために試験した。
【0146】
末梢単核血液細胞(24時間よりも古くなく、室温で保存された)を以下のように使用するため調製した。各サンプルについて、1単位の全血からの軟膜調製物約30mlをダルベッコ燐酸緩衝液(DPBS)50mlに導入し、2つの試験管に分割した。前記サンプルは12.5mlの室温リンホプレップ(Lymphoprep)密度分離媒体(ニコメッド(Nycomed)、ファーマAS社製、密度1.077g/ml)の下に置いた。前記試験管は600×gで30分遠心分離した。最終液の細胞密度は、当該技術分野で知られているようにヘモサイトメータで測定した。
【0147】
最終溶液を用いて、下記のように75ml培養フラスコ溶液中に108細胞密度を有する末梢血単核細胞サンプルから分化した樹状細胞カルチャーを調製した。
【0148】
(1)50mlの非血清AIMV培地(ギブコ社製)に1:1000希釈β−メルカプトエタノールを追加した。フラスコ壁に単球を接着させるために、フラスコは5%CO2雰囲気下37℃で2時間静置した。
(2)単球細胞の樹状細胞への分化は以下のように行った。非接着細胞を除去し、残った接着細胞(単球)を30mlのAIMV、800単位/mlのGM−CSF(エンドジェン社製)および500単位/mlのIL−4(エンドジェン社製)を混合し、得られた混合液は5%CO2雰囲気下37℃で5日間培養した。5日間のインキュベートの後、サイトカインであるTNFα(エンドジェン社製)を0.2単位/mlまで添加し、またサイトカインであるIL−1α(エンドジェン社製)を50単位/mlの最終濃度まで添加して、この混合液を5%CO2雰囲気下37℃で2日以上インキュベートした。
(3)7日目に、既に分化した樹状細胞カルチャーの成長を停止させるため、100mMEDTA含有PBS中50μg/mlの濃度までマイトマイシンCを添加した。この溶液を37℃、5%CO2雰囲気下で60分インキュベートした。フラスコを穏やかに叩いて樹状細胞をプラスティック表面からとりはずした。次に樹状細胞を600×gで5分遠心分離し、DPBS中で洗浄し、上述のように計数した。
(4)調製した樹状細胞を、ウエルごとに100μl総容量のAIMV媒体中、2×104の濃度で96穴丸底プレートにとった。
【0149】
CD4+細胞は、ダイナルCD4+T細胞リッチ・キット(Dynal社製)により提供される試薬を用いて、樹状細胞を調製するために用いる末梢血細胞サンプルの凍結塊から調製した。得られたCD4+細胞溶液は遠心分離し、AIMV媒体に再懸濁し、細胞密度は当該技術分野で既知の方法により測定した。次にCD4+T細胞懸濁液は96ウエル・プレートの効果的な操作を可能とするためにAIMV媒体中2×106カウント/mlまで再懸濁した。
【0150】
実施例2
β−ラクタマーゼ中のT細胞エピトープの同定
実施例3に記載されるI−MUNE(登録商標)アッセイに用いられるペプチドは、下記の配列を有するジェンバンク受託番号P05364号のエンテロバクター・クロアカエ由来のβ−ラクタマーゼ前駆体(セファロスポリナーゼ)の配列に基づいて調製された
【0151】
【表2】
【0152】
このβ−ラクタマーゼの完全長アミノ酸配列(配列番号1)に基づいて、β−ラクタマーゼの全配列を含む一群の3アミノ酸による15mer分画がミモトプス社により合成的に調製された。
【0153】
ペプチド抗原はDMSO中の2mg/mlストック溶液として調製された。初めに、0.5μlのストック溶液が、分化した樹状細胞が前もって入れられた96ウエル・プレートの各ウエルにとられた。次に、上述のように調製された希釈CD4+T細胞溶液100μlが各ウエルに添加された。有用なコントロールには、希釈DMSOブランク、および破傷風毒陽性コントロールが含まれた。
【0154】
総容量20μlのときの各ウエルにおける最終濃度は以下の通りである。
2×104 CD4+
2×105 樹状細胞(10:1のR:S)
5μM ペプチド
【0155】
実施例3
ヒトT細胞を用いたβ−ラクタマーゼ中のペプチドT細胞エピトープの同定用のI−MUNE(登録商標)アッセイ
一旦、アッセイ試薬(すなわち、細胞、ペプチド等)が調製され、96ウエル・プレート中に分けられると、I−MUNE(登録商標)アッセイが行われた。コントロールには、CD4+T細胞のみを加えた(DMSO担体とともに)樹状細胞および約5Lf/mLの破傷風毒が含まれた。
【0156】
カルチャーは37℃、5%CO2雰囲気下で5日間インキュベートした。トリチル化チミジン(NEN製)を0.5μCi/ウエルの濃度で加えた。このカルチャーは翌日回収し、ウォラック・トリベータ(Wallac Tribeta)シンチレーション検出系(ウォーレス・オイ社製)を用いて評価した。
【0157】
全ての試験は少なくとも2回繰り返しで行った。報告された全ての試験は、抗原破傷風毒に対して強い陽性コントロール応答を示した。応答は各実験内で平均化し、つぎにベースライン応答に正規化した。陽性事象(すなわち、増殖応答)は、応答がベースライン応答の2.95倍以上の場合に記録された。
【0158】
β−ラクタマーゼからの調製ペプチドに対する免疫原性応答(すなわち、T細胞増殖)は計算され、図1に示される。このペプチドセットに対する応答の全バックグラウンド率は、試験されたドナーについて4.04%であった。これらの方法を用いて潜在的に関心のある様々なペプチドが、下記の表2に示すように同定された。
【0159】
【表3】
【0160】
ペプチド#36および#107は、保存的(1−EXP(−ペプチド番号*(1−ポアソン(値、平均、蓄積した)))および非保存的(1−ポアソン(平均値、蓄積した))統計方法(これらはエクセル(登録商標)スプレッドシート式)を用いて有意(p<0.05)と同定された。これらのペプチドに対する応答は、3×上記バックグラウンド(応答は12.11%であった)およびバックグラウンド+3標準偏差(sd=2.87%、3sd=12.62%)の両方であった。ペプチド#6および#49のいずれも、より低い保存的分析(両方についてp<0.05)を用いて統計的有意差に到達した。用いられた統計分析は上述のものである。
【0161】
本発明において更に述べるように、これらのペプチドにおける又はこれらのペプチドの周りのアミノ酸修飾が低アレルゲン性/免疫原性β−ラクタマーゼとしての使用に適した変異体β−ラクタマーゼを提供することになることが考慮される。
【0162】
実施例4
エピトープペプチド番号とHLA関連
上述の両方のアッセイ試験で試験された65名のドナーのHLA−DRおよびDQ表現型は、市販で入手できるPCRに基づくHLAタイピング・キット(バイオ−シンセシス社製)を用いて評価した。応答者および非応答者中で4つのエピトープ(ペプチド#6、#36、#49、および#107)に対する個々のHLA−DRB1およびDQB1抗原の表現型頻度は自由度1をもつΧ二乗分析を用いて検定した。応答性および非応答性ドナーのいずれのどこにHLA抗原が存在しても、相対危険度(すなわち、HLA抗原の存在に条件付けられた反応提示の増加または減少見込み)が計算された。特定のエピトープに反応した及び反応しなかったドナーの中の対立遺伝子頻度も計算した。ペプチド#6、#36、#49、および#107に対する量的な応答におけるHLA抗原の効果を片側t検定を用いて検定した。さらに、各ペプチドについて量的応答の平均値および標準誤差を測定した。
【0163】
いくつかの態様において、応答者および非応答者中でペプチド番号に対する個々のHLA−DRおよびDQ抗原の表現型頻度を自由度1をもつΧ二乗分析を用いて検定した。問題のHLA抗原が応答性および非応答性ドナーのいずれのサンプルにも存在し、および対応するエピトープがHLA関連エピトープと見なされるどこでも、ペプチド番号に対応したエピトープへの反応の増加または減少見込みが計算された。
【0164】
エピトープ関連HLAを発現する応答者および非応答者において個々のペプチドへの増殖応答の強度がまた分析された。「ペプチドに対する個々の応答者」は2.95より大きな刺激指数で定義される。HLA対立遺伝子に関連するエピトープを発現するドナーにおける増殖応答が、その関連対立遺伝子を発現しないペプチド応答者においてよりも高いということが考えられる。
【0165】
統計的に有意な(p<0.05)相関がいくつかのDRおよびDQ抗原およびペプチド#107、および#49の間に観察された。ペプチド#36および#6に対する応答者および非応答者の間の抗原担体頻度におけるいくつかの相違は存在するが、これらは統計的有意差に到達しなかった。最も強い関連は、非反応群における2%(p<0.0003)に比較して、反応群における33%でペプチド#107への反応およびDR8の存在の間に見出された。このペプチドに対応するDR8-個体に対して、DR8+個体の増加見込みは7.63%であった。
【0166】
DR9はエピトープ#49に反応性の被験者間で増加し、反応群で28.6%、非反応群で3.4%であった(p<0.009)。相対危険度は6.1と認められた。
【0167】
いずれも統計的に有意ではなかった(反応群で26%で、非反応群で9%、p<0.07)が、DR1は1つ以上のペプチドの応答に関連した。その相違は統計的有意差に達しなかったが(p<0.07、1.71の相対危険度で)、4つの全てのペプチドの1つ以上に対して応答するドナーの中でDR1は増加することが見出された。DR1はペプチド#36および#107への応答者の中でより高い量的な応答と関連していることが見出されたため、このエピトープはβ−ラクタマーゼに対するアレルギーの危険性に関連し得ると考えられる。全く統計的に有意ではないが、ペプチド#107(4.2に比べて5.4)への反応性ドナーの中でDR1が27%増加した量的な応答と関連したことは興味深い。ペプチド#36について、DR1+応答者はDR-応答者に対して76%(4.42に比べて7.8)高い応答を有した。もっともこの対立遺伝子の存在は、これまたは任意のペプチドに対する応答と有意に関連することは見出されたいない。
【0168】
ペプチド#107に対する非応答者の中で、DR13は他の表現型より23%低いことが見出されたので、特に低い応答と関連することがわかった。
【0169】
DR13の存在、一方DQ6の非存在(すなわち、DR13+およびDQ6-)は2つ以上のペプチドに対する応答(9%に比べて37%、p<0.028)に有意に関連し、これは統計的に有意であった。この組合せの相対危険度は3.98と認められた。DR13+およびDQ6-の組合せについては、5ペプチドのうちの1つ以上への応答者の中で増加した(p<14)。DR13はβ−ラクタマーゼに対するアレルギー、ただDQ6をもたないハプロタイプのみで重要な役割を有すると思われた。
【0170】
実際、DQ6はペプチド#107に応答するドナーの中には完全に非存在であるが、非応答者には37.5%に認められた(p<0.03)。DR13+およびDQ6-の組合せ増加した。もっともペプチド#49への応答者の中では有意ではなかった(10%に比べて22%)。
【0171】
DQ4はペプチド#36に反応する個体の間で増加した(7%に比べて22%、p<0.15)が、この相違は統計的な有意差に達しなかった。ペプチド#6について、このペプチドに有意に関連する対立遺伝子はなかったが、DR4はこのペプチドに応答するドナーの中で関連する相対危険度3.5で増加した(26%の非反応性に比べて57%の反応性、p<0.09)。
【0172】
DR1の存在はペプチド#107(27%)および#36(36%)への応答性ドナーの中でより高い量的な応答(他の表現型と比較して)と相関が認められた。個々にはDR1はともに取り上げた任意の特定の対立遺伝子と関連しなかったが、これらの知見はDR1がβ−ラクタマーゼへの応答を定義するのに重要であり得ることを示している。
【0173】
上記より、本発明は野生型β−ラクタマーゼにおけるT細胞エピトープの同定のための方法および組成物を提供することが明らかである。一旦、抗原性エピトープが同定されると、所望のようにこのエピトープは修飾され、修飾されたエピトープのペプチド配列は野生型β−ラクタマーゼに取り込まれるため、修飾された配列はもはやCD4+T細胞応答を示すことができないか、またはここで前記CD4+T細胞応答は野生型の親に比べて有意に低減する。特に、本発明はβ−ラクタマーゼの免疫原性を低減させるのに好適な方法および組成物を含む手段を提供する。
【0174】
実施例5
臨界残基試験(Critical Residue Testing)
この実施例では、臨界残基試験がペプチド#6、#36、#49、および#107の変異体について実験される。これらの実験において、各親ペプチド(すなわち、ペプチド#6、#36、#49、および#107)の変異体を生成するためにアラニン・スキャンが各ペプチドについて行われる。これらの変異体ペプチドは、当該技術分野で既知のマルチ−ピン合成技術(例えば、マエジ他著、ジャーナル・オブ・イムノロジカル・メソッド、134巻、23〜33頁、1990年)を用いてミモトープ社(Mimotopes、サンジエゴ、カリフォルニア州)により合成された。
【0175】
アッセイは実施例3で記述したように、66ドナーのサンプルの一群に変異体ペプチドを利用して行われた。増殖応答が参照され、その結果は下記にさらに詳細に記述される。
【0176】
ペプチド#6(配列番号2)について、表3の以下の配列が試験された。これらのうち、配列#6および#7(配列番号10および11)について関心がもたれた。これらのペプチドについてのアッセイの結果は図2に示される。
【0177】
【表4】
【0178】
ペプチド#36(配列番号3)について、表4の以下の配列が試験された。これらのうち、配列#3、#4および#8(配列番号20、21および25)について関心がもたれた。これらのペプチドについてのアッセイの結果は図3に示される。
【0179】
【表5】
【0180】
ペプチド#49(配列番号4)について、表5の以下の配列が試験された。これらのうち、ペプチド#10(配列番号40)について関心がもたれた。これらのペプチドについてのアッセイの結果は図4に示される。
【0181】
【表6】
【0182】
このエピトープについて、以下の実施例で記述されるように、アラニン・スキャン突然変異ペプチドに一致した69ドナーの追加群について特定アミノ酸置換をI−MUNE(登録商標)アッセイ(上記を参照されたい)で試験した。これらのペプチドは、エピトープ#49を含むβ−ラクタマーゼのペプチド配列にわたる3アミノ酸による15merペプチド分画として試験された。これらの試験は、アミノ酸変異体が他のフレームのCD4+T細胞エピトープをde novo産生しなかったことを確認するために実施された。
【0183】
ペプチド#107について、表6の以下の配列が試験された。これらのうち、配列6、7、8、10、および11(配列番号48、49、50、52、および53)について関心がもたれた。これらのペプチドについてのアッセイの結果は図5に示される。
【0184】
【表7】
【0185】
上述の情報を考慮して、以下のペプチドがβ−ラクタマーゼのエピトープの免疫原性能力を低減させる潜在的変異体として選択された。
【0186】
【表8】
【0187】
実施例6
ペプチド#49への修飾
上記に示されるように、アラニン・スキャン突然変異ペプチドに一致した69ドナーの追加群について、ペプチド#49における特定アミノ酸置換をI−MUNE(登録商標)アッセイ(上記を参照されたい)で試験した。これらのペプチドは、エピトープ#49を含むβ−ラクタマーゼのペプチド配列にわたる3アミノ酸による15merペプチド分画として試験された。これらの試験は、アミノ酸変異体が他のフレームのCD4+T細胞エピトープをde novo産生しなかったことを確認するために実施された。
【0188】
このアッセイは表8に掲載された以下の一群のペプチドについて実施された。
【0189】
【表9】
【0190】
これらのペプチドの結果は図6に示す。この図で、各ペプチド番号は表8のそれぞれのペプチドに対応している。親ペプチドはペプチド#2として表8および図6で示されている。
【0191】
また、このアッセイは以下の一群のペプチドについて実施され、ここで出発物質(すなわち、修飾エピトープ)は置換I155Fを有する。
【0192】
【表10】
【0193】
これらのペプチドの結果は図7に示す。この図で、各ペプチド番号は表9のそれぞれのペプチドに対応している。修飾エピトープはペプチド#2として表9および図7で示されている。
【0194】
また、このアッセイは以下の一群のペプチドについて実施され、ここで出発物質(すなわち、修飾エピトープ)は置換I155Vを有する。
【0195】
【表11】
【0196】
これらのペプチドの結果は図8に示す。この図で、各ペプチド番号は表10のそれぞれのペプチドに対応している。修飾エピトープはペプチド#2として表10および図8で示されている。
【0197】
また、このアッセイは以下の一群のペプチドについて実施され、ここで出発物質(すなわち、修飾エピトープ)は置換I155Lを有する。
【0198】
【表12】
【0199】
これらのペプチドの結果は図9に示す。この図で、各ペプチド番号は表11のそれぞれのペプチドに対応している。修飾エピトープはペプチド#2として表11および図9で示されている。
【0200】
これらの3つの変化について図7〜9に示すように、I155V変換は修飾エピトープ配列への応答者パーセントを増加させた。I155FおよびI155L変換はほとんど効果がなかった。
【0201】
エピトープ#49における3つの追加的変換、T147Q、L149S、およびL149Rを試験した。図10〜12に示すように、L149Sのみがエピトープ応答率に影響した。また、これらのペプチドは上述のように3mer分画として試験した。
【0202】
したがって、このアッセイはまた以下の一群のペプチドについて実施され、ここで出発物質(すなわち、修飾エピトープ)は置換T147Qを有する。
【0203】
【表13】
【0204】
これらのペプチドの結果は図10に示す。この図で、各ペプチド番号は表12のそれぞれのペプチドに対応している。修飾エピトープはペプチド#5として表12および図10で示されている。
【0205】
また、このアッセイは以下の一群のペプチドについて実施され、ここで出発物質(すなわち、修飾エピトープ)は置換L149Sを有する。
【0206】
【表14】
【0207】
これらのペプチドの結果は図11に示す。この図で、各ペプチド番号は表12のそれぞれのペプチドに対応している。親ペプチドはペプチド#4として表12および図11で示されている。
【0208】
また、このアッセイは以下の一群のペプチドについて実施され、ここで出発物質(すなわち、「親」ペプチド)は置換L149Rを有する。
【0209】
【表15】
【0210】
これらのペプチドの結果は図12に示す。この図で、各ペプチド番号は表14のそれぞれのペプチドに対応している。修飾エピトープはペプチド#4として表14および図12で示されている。
【0211】
実施例7
PBMC増殖アッセイ
この実施例では、PBMCを刺激するためにβ−ラクタマーゼおよびエピトープ修飾β−ラクタマーゼの能力を評価するために実施される実験が記述される。全てのタンパク質は約2mg/mlまで精製された。
【0212】
これらの実験で用いられる血液サンプルは上述のもの(すなわち、実施例1の前)と同一であった。前記PBMCは当該技術分野で既知のリンホプレップを用いて分離した。リンホプレップはPBSで洗浄し、セル・ダイン(Cell Dyn:登録商標)3700血液分析器(アボット社製)を用いて計数した。細胞数および差は記録した。PBMCは、熱不活性化ヒトAB血清、RPMI1640、ペニシリン/ストレプトマイシン(pen/strep)、グルタミン、および2−MEの溶液中、4×106細胞/mlまで再懸濁した。次にウエルごとに2mlを24−ウエル・プレートにとった。2つのウエルは酵素なしコントロールとして用いた。次に、非修飾β−ラクタマーゼおよび修飾β−ラクタマーゼを10μg/ml、20μg/ml、および40μg/mlの濃度でウエルに加えた。試験したエピトープ修飾β−ラクタマーゼはK21A/S324A(「pCD1.1」と命名される)およびK21A/S324A/L149S(「pCD08.3」と命名される)であった。K21A突然変異は配列番号10に対応するが、S324A突然変異は配列番号48に対応し、L149S突然変異は配列番号84に対応する。S324変異体はエピトープ#107内にあるが、K21Aはエピトープ#6内にあり、L149Sはエピトープ#49内にある。プレートを37℃、5%CO2の湿り気のある雰囲気下で6〜7日間インキュベートした。回収の日に各ウエルの細胞を混合し、ウエルに再懸濁した。次に、各ウエルから100μlの8部を96−ウエルのマイクロタイター・プレートに移した。これらのウエルに0.25μCiのトリチル化チミジンを加えた。これらのプレートを6時間インキュベートし、細胞を回収し計数した。分析のために各ウエルからの8繰り返しデータの平均値をだした。コントロールとして、全体で32繰返しを提供するためにサンプル採取した。8コントロールウエルの各群の平均値をだし、4平均値を各ドナー用にCVを計算するために用いた。SI値は、各サンプル用の8ウエルの各群の平均をコントロールウエル1用の平均CPMで除することにより算出した。データは、各ドナーおよび各酵素用に達成された最高SI値を示すデータセットを作成することにより分析した。あるドナーは、最高のSI値が1.99よりも大きい場合に、応答したと見なした。全体で26ドナーを試験し、結果を平均SIをパネルA、応答者パーセントをパネルBとして図13に示す。
【0213】
結果から、野生型β−ラクタマーゼに比較して、これらのエピトープ修飾β−ラクタマーゼ(pCD1.1およびpCD08.3)の両方が全体としてより少ないドナーでより低い増殖を誘導することが示された。2つのエピトープ修飾β−ラクタマーゼの間で差異はなく、位置149における修飾はβ−ラクタマーゼの増加した免疫原性に寄与しないことが示される。
【0214】
実施例8
CB6F1マウスにおける低減した免疫原性BLA変異体、pCD1.1の試験
この実施例では、in vivoにおけるpCD1.1の低減した免疫原性を試験するために実施される実験が記述される。これらの実験では、当該技術分野でしられているように、マウスごとにアラム(alum)中の20μgの野生型BLAまたはCD1.1蛋白を用いてCB6F1マウスが腹腔内投与で免疫感作された。マウスは1、7、および15日目(すなわち、d=1、d=7、およびd=15)に免疫感作された。脾臓細胞は、19日目にBLAペプチドを用いて反応性が試験された。図14は、BLAペプチドに対してBLAまたはCD1.1免疫感作されたマウスからのマウス脾臓細胞の増殖応答を示している。これらのデータにより示されるように、BLAで免疫感作されたマウスからの脾臓細胞はペプチド107の周りの領域に強く応答する。この応答はヒトの定義されたエピトープの1つと相関する。また、応答はペプチド114領域について言及される。CD1.1蛋白で免疫感作されたマウスからの脾臓細胞はもはやペプチド107領域にも、114領域にも応答しなかった。これらの結果は107ペプチドにおけるS324突然変異が増殖を誘導するペプチドの能力に影響することを示している。
【0215】
全タンパク質BLAまたはCD1.1への増殖応答について、免疫感作されたマウスからの脾臓細胞がin vivoで試験された。その結果は図15に示される。BLAが増加するにつれて、BLA感作マウス脾臓細胞による増殖応答は増加することがわかった。CD1.1蛋白で免疫感作したマウスからの脾臓細胞は、エピトープがそのままの親タンパク質、BLA、またはエピトープ修飾CD1.1蛋白に対してin vitroで有意に応答できなかった。これらの結果は、ペプチド107におけるS324A修飾がタンパク質の免疫原性を激しく減弱させたことを示している。この実験におけるCD1.1への低いレベルの応答が、S324A修飾により現れた新しいT細胞エピトープであるペプチド#75に向けられた増殖を表したと考えられる。しかしながら、本発明は任意の特定の機序に限定されることを意図していない。
【0216】
さらに、血清サンプルが3回感作されたマウスから採取され、抗原特異的ELISAが行われた(図16)。BLAで免疫感作されたマウスは強力なレベルの抗BLA IgG抗体を産生した。しかしながら、CD1.1蛋白で免疫感作されたマウスは、このアッセイ系で検出されるように、有意なレベルのBLA特異的IgG抗体を産生しなかった。ELISAアッセイはプレートの被覆試薬としてBLAおよびCD1.1の両方を用いて行われ、同一の結果が得られた。
【0217】
これらの結果は、マウスにおける免疫優勢エピトープへの増殖応答を減弱することにより、T細胞増殖および抗体産生レベルの両方で全タンパク質の免疫原性の消失をもたらすことを示している。新しいエピトープ応答を示唆するCD1.1蛋白に見られる増殖レベルは、この免疫プロトコルにおける抗体応答を誘導するのに十分ではなかった。標的エピトープはヒト母集団で同定された免疫優勢エピトープと同一であった。
【0218】
上記明細書において言及された全ての公報および特許は、参照により本発明に取り込まれる。本発明で記述された方法およびシステムの種々の修飾および変更は、本発明の範囲と精神から逸脱しない範囲で当業者にとって明らかになることである。本発明は特定の好ましい態様に関連して記述されたでいるが、本発明はそのような特定の態様に過度に限定するべきでないと理解すべきである。実際に、分子生物学、免疫学、製剤、および/または関連した分野における当業者にとって明白である発明を実施するための記述様式の種々の修飾は本発明の範囲内にあるものと意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0219】
【図1】β−ラクタマーゼのアミノ酸配列を記述するペプチドセットに対する69の群ドナーの応答を示すグラフである。
【図2】ペプチド#6(配列番号2)および2つの変異体(配列番号10および11)への応答を示すグラフである。
【図3】ペプチド#36(配列番号3)および3つの変異体(配列番号20、21および25)への応答を示すグラフである。
【図4】ペプチド#49(配列番号4)および1つの変異体(配列番号40)への応答を示すグラフである。
【図5】ペプチド#107(配列番号5)および5つの変異体(配列番号48、49、50、52および53)への応答を示すグラフである。
【図6】ペプチド#49(配列番号4)および一連の修飾エピトープへの応答を示すグラフである。
【図7】置換I155Fを含むペプチド#49(配列番号59)およびこの配列に基づくペプセットへの応答を示すグラフである。
【図8】置換I155Vを含むペプチド#49(配列番号63)およびこの配列に基づくペプセットへの応答を示すグラフである。
【図9】置換I155Lを含むペプチド#49(配列番号69)およびこの配列に基づくペプセットへの応答を示すグラフである。
【図10】置換T147Qを含むペプチド#49(配列番号75)およびこの配列に基づくペプセットへの応答を示すグラフである。
【図11】置換L149Sを含むペプチド#49(配列番号82)およびこの配列に基づくペプセットへの応答を示すグラフである。
【図12】置換L149Rを含むペプチド#49(配列番号87)およびこの配列に基づくペプセットへの応答を示すグラフである。
【図13】β−ラクタマーゼ(配列番号1)および2つのエピトープ修飾β−ラクタマーゼを試験するために用いたアッセイから得られた結果を示すグラフである。
【図14】BLAペプチドに対するBLA(パネルA)またはCD1.1(パネルB)感作マウス由来のマウス脾臓細胞の増殖応答を示すグラフである。
【図15】総蛋白BLA(パネルA)またはCD1.1(パネルB)に対する増殖応答に関してin vitroで試験した感作マウス由来の脾臓細胞についての結果を示すグラフである。
【図16】3回感作したマウスについてのELISAの結果を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
β−ラクタマーゼの少なくとも1つのT細胞エピトープを同定する方法であって、
(a)単一のヒト血液源から、樹状細胞の溶液と未処理CD4+および/またはCD8+T細胞の溶液とを取得し、
(b)前記樹状細胞を分化して分化した樹状細胞を産生し、
(c)前記分化した樹状細胞および前記未処理CD4+および/またはCD8+T細胞の溶液をβ−ラクタマーゼのペプチド断片と混合し、および
(d)工程(c)におけるT細胞の増殖を測定する
工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記β−ラクタマーゼが微生物β−ラクタマーゼであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記微生物β−ラクタマーゼが、グラム陽性微生物およびグラム陰性微生物からなる群から選択される生物体から取得されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記β−ラクタマーゼが配列番号1で示される配列の少なくとも一部分を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法を用いて同定された少なくとも1つのβ−ラクタマーゼのエピトープ。
【請求項6】
β−ラクタマーゼの免疫原性を低減させる方法であって、
(a)β−ラクタマーゼにおける少なくとも1つのT細胞エピトープを、
(i)in vitroで少なくとも1つのサイトカインに曝露させることにより分化した接着性単球由来の樹状細胞を、前記T細胞エピトープを含む少なくとも1つのペプチドに接触させ、および
(ii)前記樹状細胞および前記ペプチドを未処理T細胞に接触させる、ここで前記未処理T細胞が前記接着性単球由来の樹状細胞と同一の血液源から取得され、これにより前記ペプチドに応答して前記T細胞が増殖することを特徴とする
ことにより同定し、および
(b)前記変異体β−ラクタマーゼが実質的に前記未処理T細胞のベースライン増殖以下の増殖を誘導するように、変異体β−ラクタマーゼを産生する前記T細胞を中和するために前記β−ラクタマーゼを修飾する
工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
前記β−ラクタマーゼが微生物β−ラクタマーゼであることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記微生物β−ラクタマーゼが、グラム陽性微生物およびグラム陰性微生物からなる群から選択される生物体から取得されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記β−ラクタマーゼが配列番号1で示される配列の少なくとも一部分を含むことを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか1項に記載の方法を用いて産生された低減した免疫原性を有する少なくとも1つのβ−ラクタマーゼのエピトープ。
【請求項11】
前記β−ラクタマーゼのエピトープが、前記T細胞エピトープのアミノ酸配列を前記β−ラクタマーゼのホモログからの類似の配列で置換することにより修飾され、ここで前記置換が実質的に前記T細胞エピトープの主要な三次元構造特性を擬態していることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記β−ラクタマーゼが、配列番号2、3、4、および5からなる群から選択される少なくとも1つのエピトープで変化することにより修飾されたことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記β−ラクタマーゼが、前記T細胞エピトープの少なくとも1つのアミノ酸残基における欠失により修飾されたことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項14】
前記β−ラクタマーゼが、前記T細胞エピトープの少なくとも1つのアミノ酸残基における付加により修飾されたことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項15】
配列番号1で示される配列を含む単離微生物β−ラクタマーゼ。
【請求項16】
請求項15に記載されるβ−ラクタマーゼをコードするポリヌクレオチド配列を含む発現ベクター。
【請求項17】
請求項16に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項18】
請求項17に記載の宿主細胞により産生されたβ−ラクタマーゼ。
【請求項19】
請求項15に記載のβ−ラクタマーゼをコードする単離核酸。
【請求項20】
配列番号2で示されるアミノ酸配列を含むE.クロアカエ(cloacae)の位置に同等な位置でなされる少なくとも1つのアミノ酸修飾を含むアミノ酸配列を有する単離微生物β−ラクタマーゼ変異体。
【請求項21】
請求項20に記載のβ−ラクタマーゼをコードするポリヌクレオチド配列を含む発現ベクター。
【請求項22】
請求項21に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項23】
請求項22に記載の宿主細胞により産生されたβ−ラクタマーゼ。
【請求項24】
少なくとも1つのエピトープにおける少なくとも1つの変化を含む単離変異体β−ラクタマーゼ。
【請求項25】
前記β−ラクタマーゼが、配列番号10、11、20、21、25、40、48、49、50、52、53、59、69、および84からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む少なくとも1つのエピトープを含むことを特徴とする請求項24に記載の単離変異体β−ラクタマーゼ。
【請求項26】
前記β−ラクタマーゼが、配列番号55〜90からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む少なくとも1つのエピトープを含むことを特徴とする請求項24に記載の単離変異体β−ラクタマーゼ。
【請求項27】
野生型β−ラクタマーゼにより産生された免疫原性応答よりも大きい免疫原性応答を産生する単離変異体β−ラクタマーゼ。
【請求項28】
野生型β−ラクタマーゼにより産生された免疫原性応答よりも小さい免疫原性応答を産生する単離変異体β−ラクタマーゼ。
【請求項29】
配列番号2、3、4、5、10、11、20、21、25、40、48、49、50、52、53、59、69、および84からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチド。
【請求項30】
配列番号55〜90からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチド。
【請求項31】
請求項15に記載のβ−ラクタマーゼを含む組成物。
【請求項32】
請求項20に記載のβ−ラクタマーゼを含む組成物。
【請求項33】
請求項15に記載のβ−ラクタマーゼに対する抗体。
【請求項34】
請求項20に記載のβ−ラクタマーゼに対する抗体。
【請求項1】
β−ラクタマーゼの少なくとも1つのT細胞エピトープを同定する方法であって、
(a)単一のヒト血液源から、樹状細胞の溶液と未処理CD4+および/またはCD8+T細胞の溶液とを取得し、
(b)前記樹状細胞を分化して分化した樹状細胞を産生し、
(c)前記分化した樹状細胞および前記未処理CD4+および/またはCD8+T細胞の溶液をβ−ラクタマーゼのペプチド断片と混合し、および
(d)工程(c)におけるT細胞の増殖を測定する
工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記β−ラクタマーゼが微生物β−ラクタマーゼであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記微生物β−ラクタマーゼが、グラム陽性微生物およびグラム陰性微生物からなる群から選択される生物体から取得されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記β−ラクタマーゼが配列番号1で示される配列の少なくとも一部分を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法を用いて同定された少なくとも1つのβ−ラクタマーゼのエピトープ。
【請求項6】
β−ラクタマーゼの免疫原性を低減させる方法であって、
(a)β−ラクタマーゼにおける少なくとも1つのT細胞エピトープを、
(i)in vitroで少なくとも1つのサイトカインに曝露させることにより分化した接着性単球由来の樹状細胞を、前記T細胞エピトープを含む少なくとも1つのペプチドに接触させ、および
(ii)前記樹状細胞および前記ペプチドを未処理T細胞に接触させる、ここで前記未処理T細胞が前記接着性単球由来の樹状細胞と同一の血液源から取得され、これにより前記ペプチドに応答して前記T細胞が増殖することを特徴とする
ことにより同定し、および
(b)前記変異体β−ラクタマーゼが実質的に前記未処理T細胞のベースライン増殖以下の増殖を誘導するように、変異体β−ラクタマーゼを産生する前記T細胞を中和するために前記β−ラクタマーゼを修飾する
工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
前記β−ラクタマーゼが微生物β−ラクタマーゼであることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記微生物β−ラクタマーゼが、グラム陽性微生物およびグラム陰性微生物からなる群から選択される生物体から取得されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記β−ラクタマーゼが配列番号1で示される配列の少なくとも一部分を含むことを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか1項に記載の方法を用いて産生された低減した免疫原性を有する少なくとも1つのβ−ラクタマーゼのエピトープ。
【請求項11】
前記β−ラクタマーゼのエピトープが、前記T細胞エピトープのアミノ酸配列を前記β−ラクタマーゼのホモログからの類似の配列で置換することにより修飾され、ここで前記置換が実質的に前記T細胞エピトープの主要な三次元構造特性を擬態していることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記β−ラクタマーゼが、配列番号2、3、4、および5からなる群から選択される少なくとも1つのエピトープで変化することにより修飾されたことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記β−ラクタマーゼが、前記T細胞エピトープの少なくとも1つのアミノ酸残基における欠失により修飾されたことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項14】
前記β−ラクタマーゼが、前記T細胞エピトープの少なくとも1つのアミノ酸残基における付加により修飾されたことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項15】
配列番号1で示される配列を含む単離微生物β−ラクタマーゼ。
【請求項16】
請求項15に記載されるβ−ラクタマーゼをコードするポリヌクレオチド配列を含む発現ベクター。
【請求項17】
請求項16に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項18】
請求項17に記載の宿主細胞により産生されたβ−ラクタマーゼ。
【請求項19】
請求項15に記載のβ−ラクタマーゼをコードする単離核酸。
【請求項20】
配列番号2で示されるアミノ酸配列を含むE.クロアカエ(cloacae)の位置に同等な位置でなされる少なくとも1つのアミノ酸修飾を含むアミノ酸配列を有する単離微生物β−ラクタマーゼ変異体。
【請求項21】
請求項20に記載のβ−ラクタマーゼをコードするポリヌクレオチド配列を含む発現ベクター。
【請求項22】
請求項21に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項23】
請求項22に記載の宿主細胞により産生されたβ−ラクタマーゼ。
【請求項24】
少なくとも1つのエピトープにおける少なくとも1つの変化を含む単離変異体β−ラクタマーゼ。
【請求項25】
前記β−ラクタマーゼが、配列番号10、11、20、21、25、40、48、49、50、52、53、59、69、および84からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む少なくとも1つのエピトープを含むことを特徴とする請求項24に記載の単離変異体β−ラクタマーゼ。
【請求項26】
前記β−ラクタマーゼが、配列番号55〜90からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む少なくとも1つのエピトープを含むことを特徴とする請求項24に記載の単離変異体β−ラクタマーゼ。
【請求項27】
野生型β−ラクタマーゼにより産生された免疫原性応答よりも大きい免疫原性応答を産生する単離変異体β−ラクタマーゼ。
【請求項28】
野生型β−ラクタマーゼにより産生された免疫原性応答よりも小さい免疫原性応答を産生する単離変異体β−ラクタマーゼ。
【請求項29】
配列番号2、3、4、5、10、11、20、21、25、40、48、49、50、52、53、59、69、および84からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチド。
【請求項30】
配列番号55〜90からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチド。
【請求項31】
請求項15に記載のβ−ラクタマーゼを含む組成物。
【請求項32】
請求項20に記載のβ−ラクタマーゼを含む組成物。
【請求項33】
請求項15に記載のβ−ラクタマーゼに対する抗体。
【請求項34】
請求項20に記載のβ−ラクタマーゼに対する抗体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2007−519400(P2007−519400A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545782(P2006−545782)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/041736
【国際公開番号】WO2005/062042
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(500284580)ジェネンコー・インターナショナル・インク (67)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/041736
【国際公開番号】WO2005/062042
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(500284580)ジェネンコー・インターナショナル・インク (67)
【Fターム(参考)】
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