説明

ω−ヒドロキシ長鎖脂肪酸誘導体の製造方法

【課題】 安価で入手し易く、安全な原料を用い、さらには、カラムクロマトグラフィーを用いることなくω−ヒドロキシ長鎖カルボン酸誘導体を高純度に収率良く得られる工業的製造方法を提供する。
【解決手段】 ω−ハロ脂肪酸エステル誘導体と、ω−ヒドロキシ−α−ハロアルカン誘導体とマグネシウムより調製されるグリニヤール試薬とを銅触媒存在下に反応させた後、必要に応じて保護基を脱保護し、続いて晶析精製を行うことにより、ω−ヒドロキシ長鎖脂肪酸誘導体を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はω−ヒドロキシ長鎖脂肪酸誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ω−ヒドロキシ長鎖カルボン酸は化粧品、香料分野において界面活性剤等の製造に有用な原料であり、また近年保湿剤として注目を集めているI型天然セラミドのN−アシル基部位を構成する物質である(非特許文献1)。このような炭素鎖が20以上で構成される長鎖ω−ヒドロキシカルボン酸誘導体の製造法としては、下記1)〜3)に示す製造方法が知られている。
【0003】
1)ペンタデカノリドの加水分解により合成した炭素数15のω−ヒドロキシ長鎖脂肪酸誘導体とシクロドデカノンより誘導したエナミンとの結合反応、続く開環反応およびケトン還元により合成する方法(特許文献1)。
【0004】
2)ペンタデカノリドの加水分解により合成した炭素数15のω−ヒドロキシ長鎖脂肪酸エステル誘導体と、同じくペンタデカノリドより合成したω−ヒドロキシ−α−ハロアルカン誘導体より調製したグリニヤール試薬とを銅触媒存在下においてカップリングさせ合成する方法(特許文献2)。
【0005】
3)炭素数15もしくは17のω−ホルミル長鎖脂肪酸エステル誘導体と、炭素数15もしくは13のω−ヒドロキシ−α−ハロアルカン誘導体とのウィティッヒ反応より炭素数30のオレフィン骨格を形成させた後、二重結合を還元することにより合成する方法(特許文献2、非特許文献2,3)。
【0006】
しかし、1)の方法においては、ケトンの還元に、爆発性があり、且つ毒性の高いヒドラジンを使用しなければならず、工業的製法として好ましくない。また、本方法においては、炭素数27のω−ヒドロキシ長鎖カルボン酸は合成できるものの、長鎖脂肪酸骨格を形成後、カラムクロマトグラフィーを用いて精製を実施するなど、この点においても工業的製法として好ましくない。
【0007】
2)の方法においては、カップリング反応の際の収率が極めて低く、目的物の単離・精製にはカラムクロマトグラフィーを使用せざるを得ないため、工業的製造方法として好ましくない。
【0008】
また、3)の方法は、高価なn−ブチルリチウムを使用したり、アルコールのアルデヒドへの酸化方法としてクロロクロム酸ピリジニウムと用いる等、経済性の点で好ましくない。また目的物の単離・精製にカラムクロマトグラフィーを使用しているため、工業的製造方法としても好ましくない。
【0009】
このように、ω−ヒドロキシ長鎖脂肪酸誘導体の合成方法は、効率的ではなく、またいずれも長鎖脂肪酸骨格形成後にカラムクロマトグラフィー精製を必要としていた。
【特許文献1】特許第3782102号
【特許文献2】特許第2618283号
【非特許文献1】Fragrance Journal 2002,6,60
【非特許文献2】Liebigs Ann.Chem. 1991,529
【非特許文献3】J.Prakt.Chem.2000,342,779
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、安価で入手し易く、安全な原料を用い、さらには、カラムクロマトグラフィーを用いることなくω−ヒドロキシ長鎖カルボン酸誘導体を高純度に収率良く得る工業的製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題について鋭意検討した結果、カラムクロマトグラフィーを用いることなく、高純度のω−ヒドロキシ長鎖脂肪酸誘導体を取得可能である方法を見出した。
【0012】
すなわち本発明は、一般式(2);
【0013】
【化7】

(式中、R1は炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数7〜20の置換もしくは無置換のアラルキル基、又は水素を表す。mは9〜19の整数を表す。Xはハロゲンを表す。)で表されるω−ハロ脂肪酸誘導体と、一般式(4);
【0014】
【化8】

(式中、R2は水酸基の保護基または水素を表す。Xはハロゲンを表す。nは10〜20の整数を表す。)で表されるグリニヤール試薬とを銅触媒存在下に反応させた後、必要に応じて保護基を脱保護し、晶析精製を行うことを特徴とする一般式(1);
【0015】
【化9】

(式中、R1、R2、m、nは前記に同じ。)で表されるω−ヒドロキシ長鎖脂肪酸誘導体の製造方法に関する。
【0016】
また、本発明は製造した一般式(1)’;
【0017】
【化10】

(式中、R1,m,nは前記に同じ。)で表されるω−ヒドロキシ長鎖脂肪酸誘導体と一般式(5);
【0018】
【化11】

[式中、R3は炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数7〜20の置換もしくは無置換のアラルキル基を表す。Aはハロゲン原子、−OCOR4、−OCOOR5、−SOOR6、−OR7、イミダゾイル基、ピラゾイル基から選ばれる基より選択される脱離基(式中、R4、R5、R6、R7はそれぞれ炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数7〜20の置換もしくは無置換のアラルキル基、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリール基を表す。)を表す。]で表されるアシル化剤とを反応させ、続いて必要に応じて末端エステルを脱保護し、一般式(6);
【0019】
【化12】

(式中R1,R3,m,nは前記に同じ。)で表されるω−アシルオキシ長鎖脂肪酸誘導体を製造する方法に関するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかる方法によれば、高純度のω−ヒドロキシ長鎖脂肪酸誘導体を容易に収率良く得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0022】
まず、一般式(1)で表されるω−ヒドロキシ長鎖脂肪酸誘導体の製造方法について述べる。
【0023】
本方法においては、まず、一般式(2);
【0024】
【化13】

で表されるω−ハロ脂肪酸誘導体と、一般式(4);
【0025】
【化14】

で表されるグリニヤール試薬とを銅触媒存在下に反応させて、一般式(1);
【0026】
【化15】

で表されるω−ヒドロキシ長鎖脂肪酸誘導体を得る。ここで、上記一般式(4)で表されるグリニヤール試薬は、例えば、一般式(3);
【0027】
【化16】

で表されるω−ヒドロキシ−α−ハロアルカン誘導体から調製される。
【0028】
反応の際、一般式(7);
【0029】
【化17】

(式中、R2,n前記に同じ。)で表されるα,ω−長鎖アルカンジオール誘導体および、一般式(8);
【0030】
【化18】

(式中、R1,mは前記に同じ。)で表されるα,ω−長鎖アルカンジ脂肪酸誘導体が副生するところ、以下に記載の晶析方法により副生物の除去を行うことにより、高純度のω−ヒドロキシ長鎖脂肪酸誘導体を効率よく取得することができる。
【0031】
一般式(1)中、R1は炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数7〜20の置換もしくは無置換のアラルキル基、又は水素を表す。置換基としては、例えばアルキル基、アリール基、アラルキル基、アミノ基、ニトロ基、スルホニル基、ハロゲン原子、水酸基、アシルオキシ基、アルコキシ基等が挙げられる。
【0032】
置換されていてもよい炭素数1〜18のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ペンタデシル基、1−ヒドロキシペンタデシル基、ドデシル基等があげられる。置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基としてはフェニル基、p−メトキシフェニル基、p−クロロフェニル基、p−ニトロフェニル基、p−トリフルオロメチルフェニル基、p−トリル基、ナフチル基等が挙げられる。置換されていてもよい炭素数7〜20のアラルキル基の例としては、ベンジル基、p−メトキシベンジル基等があげられる。中でも好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、フェニル基、p−ニトロフェニル基、p−トリフルオロメチルフェニル基、ベンジル基であり、さらに好ましくはベンジル基である。
【0033】
一般式(1)中、R2は水酸基の保護基または水素を表す。水酸基の保護基としては、例えばTheodora W.Greene,Peter G.M.Wuts著 Protectve Groups in Organic Chemistry(第3版)JOHN WILEY & SONS,INC社出版に記載の保護基が挙げられる。中でも好ましくはテトラヒドロピラニル基、メトキシメチル基等のメチルエーテル保護基、ベンジル基、p−メトキシベンジル基等のベンジルエーテル保護基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基等のシリルエーテル保護基が挙げられる。さらに好ましくはシリルエーテル保護基であり、この中でも安価であり且つ保護基としての安定性に優れるt−ブチルジメチルシリル基がより好ましい。
【0034】
一般式(1)中、mは9〜19の整数を表す。中でも好ましくはmが9〜14の範囲内であり且つnが10〜15の範囲内である。さらに好ましくはmが14で且つnが15である。
【0035】
一般式(2)中、R1,mは一般式(1)の場合と同様である。
【0036】
一般式(2)中、Xはハロゲンを表す。中でも合成の容易な塩素、臭素、ヨウ素が好ましく、さらに好ましくは臭素、ヨウ素である。
【0037】
一般式(3)中、R2は一般式(1)と同様である。
【0038】
一般式(3)中、Xはハロゲンを表す。中でも合成の容易な塩素、臭素、ヨウ素が好ましい。
【0039】
一般式(4)中、R2は一般式(1)の場合と同様である。
【0040】
一般式(4)中、Xは一般式(3)の場合と同様である。
【0041】
一般式(7)中、R2、nは一般式(3)の場合と様である。
【0042】
一般式(8)中、R1、mは一般式(2)の場合と同様である。
【0043】
一般式(4)で表されるグリニヤール試薬は一般的なグリニヤール試薬の調製法に従い合成することができる。具体的には、例えば、THFやジエチルエーテル等のエーテル溶媒に金属マグネシウムを分散させ、一般式(3)で表されるω−ヒドロキシ−α−ハロアルカン誘導体をゆっくりと添加することで調製できる。
【0044】
本反応に用いる銅触媒としては特に限定されず、銅塩であれば良い。
【0045】
銅塩としては例えば塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅、ヨウ化第一銅、シアン化銅、ジリチウムテトラクロロ銅(Li2CuCl4)等が挙げられる。また、銅塩は適当なルイス塩基と錯体を形成していても良く、例えば臭化第一銅・ジメチルスルフィド錯体、塩化第二銅・トリフェニルホスフィン錯体等が挙げられる。
【0046】
また、銅塩にその他の塩を共存させても良く、共存させる塩としては例えば塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム等が挙げられる。
【0047】
これら銅塩の中で好ましくは、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅、ヨウ化第一銅、ジリチウムテトラクロロ銅(Li2CuCl4)であり、さらに好ましくはヨウ化第一銅、ジリチウムテトラクロロ銅(Li2CuCl4)である。ジリチウムテトラクロロ銅(Li2CuCl4)は1当量の塩化第二銅と2当量の塩化リチウムより系中にて調製しても良い。
【0048】
銅塩は、通常、ω−ハロ脂肪酸誘導体(2)に対して0.00001当量以上使用すればよく、好ましくは0.0001〜1当量であり、さらに好ましくは0.0001〜0.5当量である。
【0049】
ω−ヒドロキシ−α−ハロアルカン誘導体(3)もしくは一般式(3)で表される化合物より調製したグリニヤール試薬(4)は、通常、ω−ハロ脂肪酸誘導体(2)に対して1当量以上使用すればよく、好ましくは1〜10当量であり、経済性の観点からさらに好ましくは1〜3当量である。
【0050】
反応温度は、通常−80〜110℃の範囲内であり、好ましくは−40〜50℃である。さらに好ましくは−30〜10℃である。
【0051】
用いられる溶媒は特に限定されず、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF),ジメチルスルホキシド(DMSO),N−メチルピロリドン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒、ヘキサメチルベンゼン、トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF),ジイソプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、クロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタン等のハロゲン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール、水などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用しても良い。なかでもエーテル系溶媒、炭化水素系溶媒が好ましく、さらに好ましくはエーテル系溶媒であり、最も好ましくはTHFである。
【0052】
反応終了後、反応液から粗生成物を取得するためには、一般的な後処理を行えばよい。例えば、反応終了後の反応液に水等を加え、一般的な抽出溶媒、例えば、酢酸エチル、ジエチルエーテル、塩化メチレン、トルエン、ヘキサン等を用いて抽出操作を行う。得られた抽出液から、減圧加熱等の操作により反応溶媒および抽出溶媒を留去すると、目的化合物が得られる。また、反応終了後、減圧加熱等の操作により反応溶媒を留去してから同様の操作を行っても良い。
【0053】
このようにして得られる一般式(1)で表される化合物を含む粗生成物は、一般式(7)および(8)で表される副生物を含有しているが、これらの副生物は副生量が多く、また一般式(1)で表される目的化合物と構造が類似し、且つ極性も同程度であるため晶析精製の実施は困難であった。しかし、鋭意検討の結果、以下のように所定の条件で晶析精製を行うことで、従来から用いられてきたカラムクロマトグラフィー精製を用いることなく、高純度の一般式(1)で表される化合物を取得可能となることを見出した。
【0054】
反応生成物中、R2が水酸基の保護基である場合、晶析を行う前に脱保護を行っても良い。水酸基の脱保護の方法としては、例えばTheodora W.Greene, Peter G.M.Wuts著 Protectve Groups in Organic Chemistry(第3版)JOHN WILEY & SONS,INC社出版に記載の脱保護法が挙げられる。
【0055】
晶析に用いる反応溶媒としては、ヘキサメチルベンゼン、トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール系溶媒が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用しても良い。中でも好ましくはエタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、トルエンであり、さらに最も好ましくはイソプロパノール、酢酸エチル、トルエンであり、最も好ましくはイソプロパノールである。
【0056】
晶析に用いる溶媒の量は、一般式(1)で表される化合物に対して1〜200倍重量であり、好ましくは1〜50倍重量である。
【0057】
晶析時の温度は−10℃〜120℃の範囲内であり、特に副生物である一般式(7)および(8)で表される化合物を高い割合で除去するためには、下限温度を20℃以上で行うのが好ましく、さらに好ましくは30℃以上である。
【0058】
晶析時の単位容積当たりの攪拌所要動力として、通常約0.01kW/m3以上、好ましくは0.1kW/m3以上、より好ましくは0.2kW/m3以上の流動が好ましい。上記流動性が得られれば必ずしも攪拌翼を用いる必要はなく、例えば、液の循環による方法などを利用しても良い。
【0059】
晶析の方法としては特に限定されず、どのような方法をとっても良い。例えば、一般式(1)で表される化合物を含む粗生成物に晶析溶媒を添加し、均一溶液となるまで加熱したのち、冷却し結晶化させる方法でも良いし、粗生成物を適量の良溶媒にて溶解した後、貧溶媒を添加することで結晶化させても良い。また、一般式(1)で表される化合物を含む粗生成物を良溶媒と貧溶媒の混合液に溶解した後、濃縮留去等により良溶媒を除去する方法で結晶化させても良い。さらに上述した方法に種晶添加等の操作を適宜組み合わせることができる。
【0060】
このようにして得られる一般式(1)で表される化合物の結晶は、例えば、遠心分離、加圧ろ過、減圧ろ過等により固液分離、更に、必要に応じてケーキ洗浄を行い、湿体として取得することができる。また、さらに減圧乾燥を行うことで、乾燥晶を取得することができる。
【0061】
取得した結晶を次工程の反応に用いる場合、乾燥晶として使用しても良いし、湿体のまま用いても良い。
【0062】
次に一般式(1)’で表されるω−ヒドロキシ長鎖脂肪酸誘導体から一般式(6)で表されるω−アシルオキシ長鎖脂肪酸誘導体を合成する方法について述べる。
【0063】
本方法においては、上記のようにして得られた一般式(1)’;
【0064】
【化19】

で表されるω−ヒドロキシ長鎖脂肪酸誘導体と一般式(5);
【0065】
【化20】

で表されるアシル化剤とを反応させ、必要に応じて末端エステルを脱保護することにより、一般式(6);
【0066】
【化21】

で表されるω−アシルオキシ長鎖脂肪酸誘導体を得ることができる。
【0067】
一般式(1)’,(6)中、R1は一般式(1)の場合と同様である。
【0068】
一般式(5),(6)中、R3は炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数7〜20の置換もしくは無置換のアラルキル基を表す。置換基としては、R1と同様のものが挙げられる。
【0069】
置換されていてもよい炭素数1〜30のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−ヒドロキシペンタデシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデカノイル基、オレイノイル基、リノーレイル基、リノレイル基等があげられる。置換されていてもよい炭素数7〜20のアラルキル基の例としては、ベンジル基等があげられる。中でも好ましくは無置換のアルキル基であり、さらに好ましくはオクタデカノイル基、オレイノイル基、リノーレイル基、リノレイル基である。
【0070】
一般式(5)中、Aは脱離基を表す。脱離基としては例えば、ハロゲン原子、化学式−OCOR4の基、化学式−OCOOR5の基、化学式−SOOR6の基、化学式−OR7の基、イミダゾイル基、ピラゾイル基等が挙げられる。
【0071】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられるが、中でも好ましくは塩素、臭素である。
【0072】
−OCOR4中、R4は炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数7〜20の置換もしくは無置換のアラルキル基、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリール基を表す。置換基としては、R1と同様のものが挙げられる。
【0073】
置換されていてもよい炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ペンタデシル基、1−ヒドロキシペンタデシル基、ドデシル基等があげられる。置換されていてもよい炭素数7〜20のアラルキル基としては、ベンジル基等があげられる。置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基としてはフェニル基、p−メトキシフェニル基、p−クロロフェニル基、p−ニトロフェニル基、p−トリル基、ナフチル基等が挙げられる。中でも好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基であり、さらに好ましくはイソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基である。
【0074】
−OCOOR5中、R5はR4の場合と同様であるが、中でも好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基である。
【0075】
−SOOR6中、R6はR4の場合と同様であるが、中でも好ましくは、メチル基、エチル基、フェニル基、p−トリル基であり、さらに好ましくは、メチル基、フェニル基、p−トリル基である。
【0076】
−OR7中、R6はR4の場合と同様であるが、中でも好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、p−ニトロフェニル基であり、さらに好ましくはメチル基、エチル基、p−ニトロフェニル基であり、最も好ましくはメチル基、エチル基である。
【0077】
一般式(5)で表されるアシル化剤は、通常、ω−ヒドロキシ長鎖脂肪酸誘導体(1)に対して1当量以上使用すればよく、好ましくは1〜10当量であり、さらに好ましくは1〜3当量である。
【0078】
本反応においては、塩基を共存させると、反応が促進するため好ましい。用いる塩基としては無機塩基であっても良いし、有機塩基であっても良い。
【0079】
無機塩基としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム等の金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩等が挙げられる。
【0080】
有機塩基としては特に限定しないが、第三級アミンが好ましい。第三級アミンとしては例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミンなど炭素数1〜12のトリアルキルアミンや、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N.N−ジメチルアミノピリジンなどの炭素数1〜4のアルキル基とフェニル基からなる第三級アミン、ピリジン、ピコリン、ルチジンなどの含窒素有機塩基、N,N,N,N−テトラメチル−1,2−エチレンジアミン、N,N,N,N−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N,N−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミンなど炭素数1〜10のN,N,N,N−テトラメチルα,ω−アルキルジアミンなどが挙げられ、これらのアミンは単独で用いても良いし、複数を同時に使用しても良い。中でも特に、経済性の観点からトリエチルアミン、ピリジンが好ましい。
【0081】
塩基としては、通常、ω−ヒドロキシ長鎖脂肪酸誘導体(1)に対して1当量以上使用すればよく、反応溶媒として用いても良い。
【0082】
反応に用いる反応溶媒としては、特に限定されず、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF),ジメチルスルホキシド(DMSO),N−メチルピロリドン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒、ヘキサメチルベンゼン、トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF),ジイソプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、クロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタン等のハロゲン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール系溶媒、水などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用しても良い。中でも原料であるω−ヒドロキシ長鎖脂肪酸誘導体(1)に対する溶解が高いハロゲン系溶媒が好ましく、さらに好ましくはクロロベンゼンである。
【0083】
反応温度は、通常−20〜120℃の範囲内であり、好ましくは−10〜60℃である。さらに好ましくは0〜60℃である。
【0084】
反応終了後、反応液から粗生成物を取得するためには、一般的な後処理を行えばよい。例えば、反応終了後の反応液に水等を加え、一般的な抽出溶媒、例えば、酢酸エチル、ジエチルエーテル、塩化メチレン、トルエン、ヘキサン等を用いて抽出操作を行う。得られた抽出液から、減圧加熱等の操作により反応溶媒および抽出溶媒を留去すると、目的化合物が得られる。また、反応終了後、減圧加熱等の操作により反応溶媒を留去してから同様の操作を行っても良い。このようにして得られる目的物は、ほぼ純粋なものであるが、晶析精製、分別蒸留、カラムクロマトグラフィー等、一般的な手法により精製を加え、さらに純度を高めても良い。
【0085】
反応生成物中、R1が水素以外である場合、脱保護を行っても良い。水酸基の脱保護の方法としては、例えばTheodora W.Greene, Peter G.M.Wuts著 Protectve Groups in Organic Chemistry(第3版)JOHN WILEY & SONS,INC社出版に記載の脱保護法に従い、実施することができる。
【0086】
1が例えばメチルエーテル保護基の場合、例えば、適当な溶媒中、適当な酸を作用させることで脱保護することができる。ベンジルエーテル保護基の場合、例えば、適当な溶媒中、水素雰囲気下、パラジウム炭素などの金属触媒を共存させることで脱保護することができる。またシリルエーテル保護基の場合、例えば、適当な溶媒中、フッ素イオン又は酸を共存させることで脱保護することができる。
【0087】
脱保護は、上記後処理を実施することなく行っても良いし、後処理後に実施しても良い。
【0088】
以上のようにして、前記式(6)で表されるω−アシルオキシ長鎖脂肪酸誘導体を製造することができる。ω−アシルオキシ長鎖脂肪酸誘導体は、I型天然セラミドの構成成分であり、例えば、I型天然セラミドの合成に用いることが可能である。
【実施例】
【0089】
以下に例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0090】
(実施例1)15−t−ブチルジメチルシリルペンタデカニルマグネシウムブロミドの調製
Mg(13.1mmol)、I2(一かけら)をTHF(4mL)中に懸濁させ、これに15−ブロモペンタデカノール(9.8mmol)のTHF(8mL)溶液をバス温50℃下、約1/3量添加した。系内の色が赤褐色から透明となり、グリニヤール反応の開始が確認された後、残りの15−ブロモペンタデカノールのTHF溶液を1.5時間かけて滴下した。同温でさらに1.5時間の攪拌を行ったのち、THF(8mL)を添加し、表題化合物を調製した。
【0091】
(実施例2)ベンジル 30−(t−ブチルジメチルシリルオキシ)トリアコンタノエートの製造
ベンジル 15−ヨードペンタデカノエート(3.3mmol)のTHF(15mL)溶液をバス温−20℃下に冷却し、Li2CuCl4(0.1M−THF溶液、0.16mmol)を添加した。同温下、実施例1で調製したグリニヤール試薬(9.8mmol)を1時間かけて滴下した。同温にて1時間攪拌を行ったのち、飽和塩化アンモニウム水溶液(10mL)、水(10mL)、AcOEt(10mL)を添加し、抽出操作により有機層を取得した。有機層を5wt%飽和塩化ナトリウム水溶液(23mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥を行ったのち、濃縮を行い、粗生成物を得た(有姿重量:521.7mg)。HPLCで標準品と比較分析した結果、表題化合物が208.9mg、収率:79.6%で含有されていることが確認された。このとき、表題化合物とα,ω−長鎖アルカンジオール誘導体とのHPLC分析による面積比は43:57であった。また、目的生成物とα,ω−長鎖アルカンジエステル誘導体とのHPLC分析による面積比は80:20であった。
1H NMR(400MHz,CDCl3/ppm):δ0.21(s,6H),0.84(s,9H),1.16−1.66(m,50H),1.42−1.61(m,4H),2.30(t,2H),3.54(t,2H),5.06(s,2H)、7.24−7.33(m,5H)
【0092】
(実施例3)ベンジル 30−(t−ブチルジメチルシリルオキシ)トリアコンタノエートの晶析精製
実施例2で取得したベンジル 30−(t−ブチルジメチルシリルオキシ)トリアコンタノエートを含有する粗生成物にイソプロパノール(5mL)を加え、バス温50℃下、加熱を行い均一溶液とした。バスをはずし、室温で放置して、内温が21℃になるまでゆっくり冷却した。析出した固体をろ過操作により取得した(有姿重量:205.1mg)。このとき、目的生成物とα,ω−長鎖アルカンジオール誘導体とのHPLC分析による面積比は73:27であった。また、目的生成物とα,ω−長鎖アルカンジエステル誘導体とのHPLC分析による面積比は80:20であった。
【0093】
(実施例4)ベンジル 30−(t−ブチルジメチルシリルオキシ)トリアコンタノエートの晶析精製
実施例3で取得したベンジル 30−(t−ブチルジメチルシリルオキシ)トリアコンタノエートを含有する晶析生成物にイソプロパノール(5mL)を加え、バス温50℃下、加熱を行い均一溶液とした。バスをはずし、室温で放置して、内温が21℃になるまでゆっくり冷却した。析出した固体をろ過操作により取得した(有姿重量:152.3mg)。このとき、目的生成物とα,ω−長鎖アルカンジオール誘導体とのHPLC分析による面積比は76:24であった。また、目的生成物とα,ω−長鎖アルカンジエステル誘導体とのHPLC分析による面積比は80:20であった。
【0094】
(実施例5)ベンジル 30−(t−ブチルジメチルシリルオキシ)トリアコンタノエートの製造
実施例2における、グリニヤール試薬の使用当量を15−ヨードペンタデカノエートに対して2.2当量とした以外は、実施例2と同様の方法で実施し、表題化合物を含む粗生成物を得た。HPLCで標準品と比較分析した結果、表題化合物が1.74g含有されていることが確認された(収率:79.0%)。このとき、目的生成物とα,ω−長鎖アルカンジオール誘導体とのHPLC分析による面積比は83:17であった。また、目的生成物とα,ω−長鎖アルカンジエステル誘導体とのHPLC分析による面積比は80:20であった。
【0095】
(実施例6)ベンジル 30−(t−ブチルジメチルシリルオキシ)トリアコンタノエートの晶析精製
実施例5で取得したベンジル 30−(t−ブチルジメチルシリルオキシ)トリアコンタノエートを含有する粗生成物にイソプロパノール(40mL)を加え、バス温50℃下、加熱を行い均一溶液とした。バスをはずし、室温で放置して、内温が20℃になるまでゆっくり冷却した。析出した固体をろ過操作により取得した(有姿重量:1.74g)。このとき、目的生成物とα,ω−長鎖アルカンジオール誘導体とのHPLC分析による面積比は88:12であった。また、目的生成物とα,ω−長鎖アルカンジエステル誘導体とのHPLC分析による面積比は80:20であった。
【0096】
(実施例7)ベンジル 30−(t−ブチルジメチルシリルオキシ)トリアコンタノエートの晶析精製
実施例5で取得したベンジル 30−(t−ブチルジメチルシリルオキシ)トリアコンタノエート(150mg)を含有する晶析生成物にイソプロパノール(3mL)を加え、バス温70℃下、10分間加熱攪拌した。バスをはずし、室温で放置して、内温が30℃になるまでゆっくり冷却した。析出した固体をろ過操作により取得した(有姿重量:152.3mg)。このとき、目的生成物とα,ω−長鎖アルカンジオール誘導体とのHPLC分析による面積比は97:3であった。また、目的生成物とα,ω−長鎖アルカンジエステル誘導体とのHPLC分析による面積比は80:20であった。
【0097】
(実施例8)ベンジル 30−(t−ブチルジメチルシリルオキシ)トリアコンタノエートの晶析精製
実施例5で取得したベンジル 30−(t−ブチルジメチルシリルオキシ)トリアコンタノエート(150mg)を含有する晶析生成物にn−ブタノール(3mL)を加え、バス温70℃下、10分間加熱攪拌した。バスをはずし、室温で放置して、内温が30℃になるまでゆっくり冷却した。析出した固体をろ過操作により取得した(有姿重量:49.7mg)。このとき、目的生成物とα,ω−長鎖アルカンジオール誘導体とのHPLC分析による面積比は99:1であった。また、目的生成物とα,ω−長鎖アルカンジエステル誘導体とのHPLC分析による面積比は80:20であった。
【0098】
(実施例9)ベンジル 30−(t−ブチルジメチルシリルオキシ)トリアコンタノエートの晶析精製
実施例5で取得したベンジル 30−(t−ブチルジメチルシリルオキシ)トリアコンタノエート(150mg)を含有する晶析生成物にn−ブタノール(3mL)を加え、バス温70℃下、10分間加熱攪拌した。バスをはずし、室温で放置して、内温が20℃になるまでゆっくり冷却した。析出した固体をろ過操作により取得した(有姿重量:103.1mg)。このとき、目的生成物とα,ω−長鎖アルカンジオール誘導体とのHPLC分析による面積比は95:5であった。また、目的生成物とα,ω−長鎖アルカンジエステル誘導体とのHPLC分析による面積比は80:20であった。
【0099】
(実施例10)ベンジル 30−(t−ブチルジメチルシリルオキシ)トリアコンタノエートの晶析精製
実施例5で取得したベンジル 30−(t−ブチルジメチルシリルオキシ)トリアコンタノエート(150mg)を含有する晶析生成物にn−プロパノール(3mL)を加え、バス温70℃下、10分間加熱攪拌した。バスをはずし、室温で放置して、内温が30℃になるまでゆっくり冷却した。析出した固体をろ過操作により取得した(有姿重量:80.3mg)。このとき、目的生成物とα,ω−長鎖アルカンジオール誘導体とのHPLC分析による面積比は98:2であった。また、目的生成物とα,ω−長鎖アルカンジエステル誘導体とのHPLC分析による面積比は80:20であった。
【0100】
(実施例11)ベンジル 30−ヒドロキシトリアコンタノエートの製造および晶析精製
実施例7と同様の手法で取得したベンジル 30−(t−ブチルジメチルシリルオキシ)トリアコンタノエート(1.93mmol)の酢酸エチル(26mL)溶液を、室温下、1M−テトラブチルアンモニウムフロリドのTHF溶液(2.90mmol)を添加した。滴下終了後、同温にて19時間の攪拌を行ったのち、バス温60℃下、20分間加熱攪拌し、続いて室温で放置して、内温が40℃になるまでゆっくり冷却した。析出した固体をろ過操作により取得し、表題化合物を得た(有姿重量:719.6mg)。このとき、目的生成物とα,ω−長鎖アルカンジエステル誘導体とのHPLC分析による面積比は99:1であった。
【0101】
(実施例12)ベンジル 30−ヒドロキシトリアコンタノエートの製造および晶析精製
実施例7と同様の手法で取得したベンジル 30−(t−ブチルジメチルシリルオキシ)トリアコンタノエート(1.93mmol)のTHF(26mL)溶液を、室温下、1M−テトラブチルアンモニウムフロリドのTHF溶液(2.90mmol)を添加した。滴下終了後、同温にて19時間の攪拌を行ったのち、トルエンに溶媒置換を行い、全量が30gとなるように濃度調整した。バス温60℃下、20分間加熱攪拌し、続いて室温で放置して、内温が20℃になるまでゆっくり冷却した。析出した固体をろ過操作により取得し、表題化合物を得た(有姿重量:880.0mg)。このとき、目的生成物とα,ω−長鎖アルカンジエステル誘導体とのHPLC分析による面積比は96:4であった。
1H NMR(400MHz,CDCl3/ppm):δ1.17−1.37(m,50H),1.53−1.68(m,4H),2.34(t,2H),3.61−3.65(m,2H),5.11(s,2H)、7.28−7.34(m,5H)
【0102】
(実施例13)ベンジル 30−ステアロイルオキシトリアコンタノエートの製造
実施例11で取得したベンジル 30−ヒドロキシトリアコンタノエート(0.90mmol)、ステアロイルクロリド(1.34mmol)、ピリジン(1mL)、クロロベンゼン(5mL)かなる懸濁溶液を、バス温30℃下、10時間の攪拌を行った。反応溶液に水(5mL)、MeOH(1.6mL)を加え、バス温50℃下、抽出操作を実施し、有機層を取得した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥を行ったのち、濃縮を行い、表題化合物を含む粗生成物を得た。粗生成物にヘキサン(8mL)を添加した後、バス温60℃下、20分の攪拌を行い、続いて室温で放置して、内温が30℃になるまでゆっくり冷却した。析出した固体をろ過操作により取得し、表題化合物を得た(有姿重量:659.5mg)。
1H NMR(400MHz,CDCl3/ppm):δ0.88(t,3H),1.22−1.30(m,78H),1.57−1.66(m,6H),2.29(t,2H),2.35(t,2H),4.05(t,2H),5.12(s,2H)、7.31−7.36(m,5H)
【0103】
(実施例14)30−ステアロイルオキシトリアコンタン酸の製造
実施例13で取得したベンジル 30−ステアロイルオキシトリアコンタノエート(0.6mmol)、10wt%Pd/C(ナカライ社より購入、50mg)からなるn−ブタノール(10mL)溶液を水素雰囲気下、バス温80℃下、20時間の加熱攪拌を行った。同温にてろ過操作を実施し、Pd/Cを除去した後、母液を室温で放置して、内温40℃になるまでゆっくり冷却した。析出した固体をろ過操作により取得し、表題化合物を得た(有姿重量:401.4mg)。
1H NMR(400MHz,CDCl3/ppm):δ0.88(t,3H),1.23−1.30(m,78H),1.57−1.66(m,6H),2.28(t,2H),2.34(t,2H),4.05(t,2H)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(2);
【化1】

(式中、R1は炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数7〜20の置換もしくは無置換のアラルキル基、又は水素を表す。mは9〜19の整数を表す。Xはハロゲンを表す。)で表されるω−ハロ脂肪酸誘導体と一般式(4);
【化2】

(式中、R2は水酸基の保護基または水素を表す。Xはハロゲンを表す。nは10〜20の整数を表す。)で表されるグリニヤール試薬とを銅触媒存在下に反応させた後、必要に応じて保護基を脱保護し、続いて晶析精製を行うことを特徴とする一般式(1);
【化3】

(式中、R1、R2、m、nは前記に同じ。)で表されるω−ヒドロキシ長鎖脂肪酸誘導体の製造方法。
【請求項2】
晶析精製を行う際の温度が20℃以上である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
晶析精製を行う際の温度が30℃以上である請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
2がシリル基または水素である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
シリル基がt−ブチルジメチルシリル基である請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
1がベンジル基である請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
晶析精製を行う際の溶媒が、アルコール系溶媒、エステル系溶媒もしくは炭化水素系溶媒、またはこれらの2以上を組合せたものである請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
晶析精製を行う際の溶媒が、イソプロパノール、酢酸エチルもしくはトルエン、またはこれらの2以上を組合せたものである請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
晶析を行う際の溶媒がイソプロパノールである請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
mが9〜14であり、且つnが10〜15である請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
mが14であり、且つnが15である請求項10記載の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかの方法にて合成した一般式(1)’;
【化4】

(式中、R1,m,nは前記に同じ。)で表されるω−ヒドロキシ長鎖脂肪酸誘導体と一般式(5);
【化5】

[式中、R3は炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数7〜20の置換もしくは無置換のアラルキル基を表す。Aはハロゲン原子、−OCOR4、−OCOOR5、−SOOR6、−OR7、イミダゾイル基、ピラゾイル基から選ばれる基より選択される脱離基(式中、R4、R5、R6、R7はそれぞれ炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数7〜20の置換もしくは無置換のアラルキル基、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリール基を表す。)を表す。]で表されるアシル化剤とを反応させ、続いて必要に応じて末端エステルを脱保護し、一般式(6);
【化6】

(式中R1,R3,m,nは前記に同じ。)で表されるω−アシルオキシ長鎖脂肪酸誘導体を製造する方法。

【公開番号】特開2010−83798(P2010−83798A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254126(P2008−254126)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】