説明

あばた防止型枠

【課題】 コンクリート表面のあばたの発生を防ぎ、鉄筋へのかぶり厚さが十分に確保された表面が美麗な品質の良いコンクリートを得ること。
【解決手段】 あばた防止コンクリート型枠10であって、コンクリートを形状保持する型枠本体11と、型枠本体11のコンクリート側に設置した通気スペーサ兼シート支持材12と、通気スペーサ兼シート支持材12のコンクリート側に張った通気防水シート13を有してなるもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はあばた防止型枠に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の型枠は、特許文献1に記載される如く、鋼製、木製、樹脂製等からなり、まだ固まらないコンクリートの形状保持を担っている。
【特許文献1】特開平7-317313号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の型枠を用いたコンクリート打設では、コンクリート練り混ぜ時や打設時にコンクリートに入った気泡が型枠側のコンクリート表面に空気溜りとなって残り、十分にモルタル成分がまわりきらずに、空隙が残るあばた(じゃんか、豆板、す等ともいう)という不都合を生じ易い。あばたがあると、鉄筋へのコンクリートかぶり厚さが必要な寸法確保できず、鉄筋の腐食を早めてコンクリートの耐久性を損なう。また外観も醜くなる。
【0004】
尚、コンクリート表面のあばたを少なくするために、打設直後のコンクリートにバイブレーターをかけて気泡を抜くようにはしているがなくしきれず、型枠撤去後の補修であばた発生部にモルタルを詰め込む等しているのが実情である。
【0005】
本発明の課題は、コンクリート表面のあばたの発生を防ぎ、鉄筋へのかぶり厚さが十分に確保された表面が美麗な品質の良いコンクリートを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、コンクリートを形状保持する型枠本体と、型枠本体のコンクリート側に設置した通気スペーサ兼シート支持材と、通気スペーサ兼シート支持材のコンクリート側に張った通気防水シートを有してなるあばた防止型枠である。
【0007】
通気防水シートとしては、空気や水蒸気等は通すが水は通さないものが使用できる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明において更に、前記通気スペーサ兼シート支持材で形成される通気スペースが外気に開放されてなるようにしたものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において更に、前記通気スペーサ兼シート支持材が金網からなるようにしたものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3記載のあばた防止型枠を使用した、基礎、梁、柱の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
(請求項1)
(a)型枠内に打設されたコンクリートの通気防水シート側の空気溜りの空気圧が、コンクリートの圧力により大気圧より高くなり、空気溜りの空気は通気防水シートを通過して通気スペーサ兼シート支持材が形成している通気スペースに排出される。その結果、空気溜りの圧力抵抗がなくなり、周辺のモルタル成分が空気溜りに流入し、あばたの発生を防止する。これにより、コンクリート表面のあばたの発生を防ぎ、鉄筋へのかぶり厚さが十分に確保された表面が美麗な品質の良いコンクリートを得ることができる。
【0012】
(請求項2)
(b)通気スペーサ兼シート支持材で形成される通気スペースが外気に開放される。従って、空気溜りの空気はスムースに通気防水シートを通過して通気スペーサ兼シート支持材が形成している通気スペースに排出される。
【0013】
(請求項3)
(c)通気スペーサ兼シート支持材が金網からなるものとすることにより、通気防水シートを支持するのに十分な強度を得易い、また金網の網目状部分を空気が移動できるため、通気スペースを確実に形成することができる。
【0014】
(請求項4)
(d)請求項1乃至請求項3記載のあばた防止型枠を使用することにより、容易な構成により鉄筋へのかぶり厚さが十分に確保されて、表面が美麗なものとなり、品質の良い基礎、梁、柱となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1はあばた防止コンクリート型枠による空気溜り排出状態を示す断面図、図2はあばた防止コンクリート型枠による空気溜り解消状態を示す断面図である。
【実施例】
【0016】
あばた防止コンクリート型枠10は、コンクリート1を形状保持して基礎、梁、柱等の製造に使用され、図1、図2に示す如く、型枠本体11と通気スペーサ兼シート支持材12と通気防水シート13とから構成される。
【0017】
型枠本体11は、鋼製、木製、樹脂製等からなり、打設されたコンクリート(モルタル)1の圧力に耐えてコンクリート1を形状保持するのに十分な強度をもつ。
【0018】
通気スペーサ兼シート支持材12は、金網、樹脂ネット、ロックウールボード、樹脂製等の波板等からなり、型枠本体11のコンクリート1の側に設置される。通気スペーサ兼シート支持材12は、打設されたコンクリート1の圧力で変形しない強度があり、形状的に通気防水シート13をほぼ面上に支持することができ、かつ型枠本体11と通気防水シート13の間で外気に開放された通気スペース12Aを形成できるものであれば何でも良い。通気スペース12Aは外気に通じていて、常に大気圧になる。
【0019】
通気防水シート13は、通気スペーサ兼シート支持材12のコンクリート1の側に張られ、コンクリート成分は通さずに空気だけを通気スペース12Aへ排出する。通気防水シート13は、打設されたコンクリート1の圧力に耐える強度があり、また脱型の際にコンクリート離れの良いものが好ましく、例えばデュポン社のタイベック(登録商標)(ハードタイプ)が好ましい。
【0020】
以下、あばた防止コンクリート型枠10の使用状況について説明する。
(1)型枠10内に打設されたコンクリート1の通気防水シート13側の空気溜り1Aは、コンクリート(モルタル)1の圧力PCにより大気圧より高くなる(図1)。
【0021】
(2)上述(1)により、通気防水シート13のコンクリート1の側の空気溜り1Aの空気圧PAと、通気防水シート13の通気スペーサ兼シート支持材12の側の空気圧P0(大気圧)を比較すると、PA>P0となり、空気溜り1Aの空気は通気防水シート13を通過して通気スペース12Aへ排出される(図1)。
【0022】
(3)上述(2)の結果、コンクリート1の中で、空気溜り1Aの圧力抵抗がなくなり、空気溜り1Aの周辺のモルタル成分が空気溜り1Aに流入して空気溜り1Aを解消し、あばたの発生を防止する(図2)。
【0023】
本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)型枠10内に打設されたコンクリート1の通気防水シート13側の空気溜り1Aの空気圧PAが、コンクリート1の圧力により大気圧P0より高くなり、空気溜り1Aの空気は通気防水シート13を通過して通気スペーサ兼シート支持材12が形成している通気スペース12Aに排出される。その結果、空気溜り1Aの圧力抵抗がなくなり、周辺のモルタル成分が空気溜り1Aに流入し、あばたの発生を防止する。これにより、コンクリート1表面のあばたの発生を防ぎ、鉄筋へのかぶり厚さが十分に確保された表面が美麗な品質の良いコンクリート1を得ることができる。
【0024】
(b)通気スペーサ兼シート支持材12で形成される通気スペース12Aが外気に開放される。従って、空気溜り1Aの空気はスムースに通気防水シート13を通過して通気スペーサ兼シート支持材12が形成している通気スペース12Aに排出される。
【0025】
(c)通気スペーサ兼シート支持材12が金網からなるものとすることにより、通気スペース12Aを確実に形成できる。
【0026】
(d)通気防水シート13のコンクリート離れが良く繰り返し使用ができるので、後でモルタル補修をするよりも安価なコストで、あばたのない表面美麗な高品質のコンクリート1が得られる。
【0027】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1はあばた防止コンクリート型枠による空気溜り排出状態を示す断面図である。
【図2】図2はあばた防止コンクリート型枠による空気溜り解消状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 コンクリート
1A 空気溜り
10 あばた防止コンクリート型枠
11 型枠本体
12 通気スペーサ兼シート支持材
12A 通気スペース
13 通気防水シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートを形状保持する型枠本体と、型枠本体のコンクリート側に設置した通気スペーサ兼シート支持材と、通気スペーサ兼シート支持材のコンクリート側に張った通気防水シートを有してなるあばた防止型枠。
【請求項2】
前記通気スペーサ兼シート支持材で形成される通気スペースが外気に開放されてなる請求項1に記載のあばた防止型枠。
【請求項3】
前記通気スペーサ兼シート支持材が金網からなる請求項1又は2に記載のあばた防止型枠。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3記載のあばた防止型枠を使用した、基礎、梁、柱の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−179047(P2008−179047A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−13876(P2007−13876)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】