説明

かば焼き用ウナギの加工法。

【課題】加工され、保存流通されるウナギのかば焼きにおいて、かば焼き加工直後の品質を保持できる加工方法の提供。
【解決手段】ウナギは一般生鮮魚と違う鮮度保持のメカニズムを持つものであるから、そのかば焼きの加工工程においては先ず、当該ウナギを冷凍処理を施し、次に加工処理のために一旦解凍冷却処置を施し、それに塗布されるタレが当該ウナギ本体の芯部に浸透することを防ぐのを目的とした焼被膜処置を施し、然る後にかば焼きとしてのタレ浸け焼き工程、叉は加熱されたタレの中をくぐらせてたれを附着させることにより、かば焼きウナギとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ウナギの流通は、かば焼きと言う形態がその主流であり、一般である。 そしてそのウナギと云う魚体が一般生鮮魚類とは異なる鮮度保持のメカニズムを持っているものであるにも関わらず、その加熱加工手段は一般生鮮魚類同等の手法でしか処理をされていないために市場において様々な不都合を醸し出している。 それはこの加工の手段においてウナギの鮮度保持のための手段である冷凍食品処理を施すことをせずに一般生鮮魚類扱いでの処理をされているために生じるトラブルなのであるから本発明は先ず、かば焼き加工処理をされる前に当該ウナギの鮮度保持処置を施して鮮度を保持せしめて現在のウナギ流通の不都合を排除しようとするものである。
【0002】
ウナギには一般生鮮魚とは異なる鮮度保持のメカニズムを持つものであるから本発明はその第1段階として先ず当該ウナギ本体の鮮度保持のための加熱処理である冷凍食品処理を施し、そのウナギ本体の食品としての鮮度を保持せしめてその後にそれを一旦冷却処理をしてそのウナギ本体の温度を下げ、次に第2段階としてかば焼きとしてのタレ浸け調理加熱加工を行うものでそのかば焼きタレ浸け加熱において当該ウナギが不必要な過加熱を与えられるのを防ぐ為の手段をとり、その加工時に於ける不要な加熱での品質劣化を避けるもので、この手法によれば塗布したタレの肉芯部位への浸透する不都合も防止することが出来るものである。 更に本発明のタレの塗布は完全なるかば焼きになるまでのタレの塗布はしないものである。
【0003】
従来のウナギかば焼きの加工手段は生のウナギを割きそれをガス又は電気等を熱源としたベルトコンベァーに乗せて、又はガス、電気等を熱源とした手動の焼器でその両面を焼き、その一連作業の中でそれが完全なるかば焼きとして通用するまでにタレ浸け加熱処理をするものが一般である。
しかし、この手段ではタレ浸けされてそれを完全なるかば焼きになるまでに加熱したのではそのタレが芯部に迄浸透してしまい、それは凍結保存中に佃煮状態となることを誘発してしまい、それはお惣菜であるウナギかば焼きとはほど遠い佃煮となってしまう。 そして更にこの状態でのタレ浸けの加熱手段では当該ウナギのその芯部位にまでそれが鮮度保持の可能となるまでの必要加熱を与えることは出来ないから含有する旨味成分である不飽和脂肪酸等は残留する酵素の分解作用により長期保存、流通に耐えてのウナギの旨味の保持をすることが出来ずその旨味は本来のウナギそのものとは程遠いものとなってしまう。 この従来の加熱法ではそれをその場で即食することに提供するのであればそれで何らの不都合のないかば焼きの処理方法であるが、それを凍結保存、流通に供しようという形態においてはこの手段ではそのものをただ佃煮状にしてしまうだけの結果を招くものであり、これでは本来消費者の期待するウナギかば焼きにはならない。
本発明はその不都合を排除し、割き立てそのままの鮮度のウナギを提供しようとする手段である。
【背景技術】
【0004】
ウナギはその食品としての鮮度保持が一般生鮮魚とは異なる特異なメカニズムを持つものであるから従来の生鮮魚類同等の処理での扱いではその鮮度の保持が不可能であることは特許第2670577号により立証されている。 この様にウナギの冷凍食品処理が可能となり、本発明はそれを保存流通に供しても当該ウナギ本体がその食品としての鮮度保持の出来る冷凍食品処理を施してあるから保存、流通という過酷な状態に置かれてもそのウナギとしての価値を損なうことなくそれをかば焼き用の加熱加工ウナギとして保存、流通に供せるものである。
【特許文献1】特許2670577号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ウナギが一般生鮮魚類とその鮮度保持のメカニズムを異にしているにも関わらず食品衛生法においてはそのウナギを一般生鮮魚類同等に位置つけているためにその扱い、その処置の仕方は一般生鮮魚と同等の処理の仕方でその処置が行われている。 その上、当該ウナギを即食状態にまでかば焼き調理処理をしてしまい、それを凍結保存し、流通に供することはお惣菜としてのかば焼きと言うには当て嵌まらない。 これは佃煮以外の何ものでもない。 本発明はその佃煮を提供するものではなく、ウナギをかば焼きにしょうとする素材のウナギを提供しようとするものである。
ウナギが一般生鮮魚類同等の性質の魚体ならばその従来法での処置で十分に食品として安全、完全な市場流通が可能であろうが、ウナギは食品としてのその鮮度保持のメカニズムがそれら一般生鮮魚とは全く違うメカニズムを持つためにそれでは保存、流通においては食品としての鮮度が完全に保持出来ず、その流通は様々な問題を醸し出していてとても安全なる食品とは云えないのが現状ウナギ流通の実態である。 これは元々ウナギと一般生鮮魚を食品の鮮度保持の角度から見て全く別項目食材として区別されなければならないものであるにも関わらず、現在ではその扱いが一般生鮮魚と同等の扱いでありこれでは本当の食品としてのウナギの提供は出来ないということである。 それに加え、佃煮処理であるウナギをかば焼きと称しての間違った流通をしている。 そこで本発明はウナギのその特性を加味した鮮度保持処理方法により完全なるウナギかば焼きを市場流通をさせるべく、そのかば焼き用のウナギの提供をしようとするものである。
【0006】
従来、ウナギの加工は活きたものを割き、それをベルト・コンベァーによる連続加熱加工手段によって行われるというのが一般である。 しかし、この方法は一般生鮮魚扱いにおいての加熱手法であってこれではウナギの芯部にまでその鮮度保持の可能な条件の熱を与えることが出来ず、ウナギを食品としての鮮度の保持の出来る加工手段とはならない。 そこで本発明は当該ウナギの食品としての鮮度を保持させるために初めに鮮度保持加熱を施し、それを次の段階の処理としてかば焼き調理とするもので、その第1段階はウナギの鮮度保持専用加熱処置とし、その加熱の終了後に第2段階の処理としてかば焼き加熱とするものである。 そのかば焼き加熱とは塗布するタレを1回叉は2回の塗布とし、それはかば焼き調理としてのではなく、このタレを薄く塗布することで当該のウナギ表面の酸化防止の役目を果たし、更にそれが芯部に浸透することを防ぐものである。 この本発明の手段で処理されたウナギがスーパー・デパートの厨房に運ばれてそこでかば焼き調理をされて初めてウナギかば焼きが一般生鮮魚同等の市場にウナギ商品として流通が出来る食品となるのである
【課題を解決するための手段】
【0007】
ウナギは一般生鮮魚とその鮮度保持のメカニズムを異にするものであるから本発明はその鮮度保持のメカニズムを加味しての処理をするものである。
加工して保存、流通するウナギが、長期に亘る保存、流通に耐える鮮度、その味を保持させることがその目的であるから、流通されるウナギがかば焼き調理される前に鮮度保持の出来る加熱処理がされているからそのかば焼き調理加熱工程とは一連とせず、その鮮度保持加熱処理の終わったものを一旦凍結、又は冷蔵等の冷却処置の方法を取り、それをかば焼き調理加工工程に供するものである。 そして更にその鮮度保持処理をされた当該ウナギの表裏面に塗布されるタレの付着を確実とするための焼被膜をタレ浸けかば焼き工程の前に構成するものである。 そして本発明は当該ウナギの表面を加熱してタレを塗布する場合とタレそのものを予め加熱しおき、その中にタレ附着被膜を設けた冷却されたウナギ本体をくぐらせてタレ附着をさせる手段も取るものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明はウナギを従来の如く一般生鮮魚扱いでの加熱処理ではなく、ウナギの持つ鮮度保持の特異性を加味しての加熱処理をすることを前提としてのかば焼き用ウナギの加工法であるからウナギ本来の味をそのまま提供することが出来る。 本発明により出来るかば焼きは
・ ウナギ本体が冷凍食品処理をされていてウナギとしての鮮度保持がされていることが前提条件であるから含有するウナギの旨味成分である不飽和脂肪酸が酵素分解による変質をされずにそのまま本来のウナギの美味さを保持されているので消費者の期待を裏切らないウナギかば焼きの提供が出来る。
・ 本発明によるかば焼き製法は塗布したタレがウナギ芯部に浸透することを防止しているから凍結保存、流通の後に解凍して食に供するにしてもその肉内部位はそのタレの浸透による変質及び化学反応を起こしていない故に解凍後にタレ浸け焼きをすればその全体は割き立て同等の旨味を呈する。
・ 本発明によるウナギかば焼きはウナギ本体が冷凍食品処理をされていてその食品としての鮮度の保持がされているためにその凍結保存の実用可能保存期間は長く15ヶ月を経過してもその味は割き立てに比べて何らの遜色は無いものである。
・ 本発明によるかば焼き加工工程は鮮度保持の加熱工程と、そのかば焼き調理加工工程とを分離させての工程である為にそれぞれのその加熱目的を確実に履行出来るからその双方の加熱処理は極めて目的的に出来、その製品はウナギとして納得し期待されるものとなる。
・ 本発明によるかば焼きはその塗布されるタレの量に限界があるからそれをかば焼きとして用いるのであれば追加のタレで焼くことを要求されるが、もし、そのままの状態でかば焼き以外の調理用として使用する場合はそれをそのまま多目的に使うことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のウナギかば焼き加工工程は先ず活きたウナギを特許第2670577号の如き蒸気加圧加熱による冷凍食品処理をする工程を第1工程とし、それを一旦冷却した後にタレ浸けかば焼き調理加熱工程をその次の第2工程とするものであり、その第2工程であるタレ浸け加熱の前にそれに塗布しようとするタレがウナギ本体に絡み付き易い様にその表裏面に表面焼被膜を設ける工程である特願2007−228735号の被膜加工法を付加することを最善とするものである。 この表面焼被膜を構成することで塗布したタレが肉芯部位に浸透するのを防ぎ、凍結されて保存、流通されるにおいての当該かば焼き用ウナギが佃煮化するのを防止することが出来、またその表面酸化を防止することが出来るのである。
【0010】
本発明の工程によって処理されたウナギかば焼き用ウナギはそれに塗布されるタレの量に限界があるからそれの流通に於いては解凍後の再加熱用としてのタレを別途に添付することが要求される。 その流通にはタレがセットであることが必要であり、このタレとウナギ本体が別途独立であることはこのかば焼き処理をされたウナギが塗布されたタレにより佃煮化されていないから他の調理に多目的に使用出来る得点も有する。
【産業上の利用可能性】
【0011】
本発明によるかば焼き用ウナギはその加工の工程に示す如くウナギ本来の特性を加味した手段である冷凍食品処理が施されその鮮度保持を完全にしたものであるから食品としてその本来の本質を長期に亘って保持することが出来、年間を通しての安定した計画的流通を可能となる。 そしてそのかねつは従来の如き放熱加熱を行うことが無いから加熱費の大幅な削減となり、更にそれは養殖の生産体制とそれにより加工されたウナギのその流通の計画体制を確立させるに最適であるということである。
今までウナギはその扱い方の難しさから夏型のシーズンものとしての流通体制が取られて来てその陰に多々不都合が生じていたが本発明による処置のウナギの流通によればそれは年間を通して統一された上品質のウナギかば焼きが商品として常時安定して市場展開されることになり、従来の季節的商品という不便さとその不都合を解消出来るものである。
【0012】
ウナギの流通は丑の日を支点として毎年の流通態勢が取られて来た。 それはウナギがその特異性のためにそれを食品とする扱いに限界があったからであり、消費者もそれをやむを得ぬものとしての現在のウナギ商品に対する認識があるようだ。 しかし、本発明により処理されたウナギかば焼きが市場流通となればその商品としての形態は一般生鮮魚同等の扱いとして扱われるから現在全くの空白となっているデパート・スーパーの冷凍食品ケースにもウナギかば焼きの商品の販売が出来、その需要の拡大は大きなものとなる。 過去においてレトルトパウチのウナギかば焼きなるものが市場に出回ったことがある。 しかし、それは数年をしてその姿を消した。 それはそのウナギがかば焼きではなく佃煮でしかなかったためであり、その加工段階においても本発明の如きウナギ本来の特性を加味した処理をしなかったが故にウナギ本来の価値を流通させることが出来なかったということである。
【0013】
ウナギの流通は年間15〜16万トンとも云われ、その80%が加工されて流通されているものと云われる。 その加工されて流通されるかば焼きウナギが本発明の手段により完全なる食品として国内産となれば兎角その安全に危惧を持たれている外国産ウナギの駆逐に一石を投じることが出来るのは間違いない。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工され、保存流通されるウナギにおいて、それがタレ付けかば焼き調理加工をされてかば焼きとされるウナギ本体が鮮度保持可能であるための冷凍食品処理をされてその鮮度保持処理の完了の後、当該ウナギを一旦冷却し、しかる後に塗布するタレの付着を完全ならしめるための焼被膜を設けて後にかば焼き工程としての調味加熱処理を施す方法であるかば焼き用のウナギ加工法。
【請求項2】
「請求項1」の蒲焼用に供されるウナギが鮮度保持されて冷却処理されるにおいてその冷却手段が凍結又は冷蔵であることのかば焼き用ウナギの加工法。
【請求項3】
「請求項1」のタレ浸けの工程に於いて、そのタレ浸けが加熱されたタレの中に冷却された当該ウナギをくぐらしてタレを附着させる手段を取るかば焼き用ウナギの加工法。


【公開番号】特開2009−77685(P2009−77685A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−251051(P2007−251051)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(399050471)
【Fターム(参考)】