説明

かぶり厚測定装置

【課題】かぶり厚を容易に測定することができるかぶり厚測定装置を提供する。
【解決手段】支柱2と、支柱2の下端部に、上端部を回動自在に取り付けられた第1リンク6と、支柱2に対して軸方向に移動可能な操作棒4と、操作棒4の下端部に、下端部を回動自在に取り付けられた第2リンク8と、第1リンク6の下端部及び第2リンク8の上端部が回動自在に取り付けられた当接部材7と、支柱2から当接部材7までの幅を支柱2に対する操作棒4の変位量に基づいて表示する表示部2aと、を備えるかぶり厚測定装置1Aである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かぶり厚測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート造の構造物における鉄筋のかぶり厚は、外部劣化因子(例えば、飛来塩分など)の浸入による鉄筋の腐食発生を防止または抑制する目的がある。このため、必要かぶり厚を確保することは、コンクリート構造物の耐久性を得るために重要である。
コンクリート打設後にコンクリート中の鉄筋かぶり厚を確認する方法には、電磁波レーダー法や電磁誘導法といった非破壊検査技術を用いて簡易に調査するのが一般的である。しかし、かぶり厚をコンクリート打設後に修正することは困難であるため、かぶり厚を事前に確認しておくことは重要である。
【0003】
また、コンクリート打設前に、かぶり厚に対応する径の球体を鉄筋と型枠との間に挿入することで、かぶり厚を確認する方法がある(例えば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−308941号公報
【特許文献2】特開2009−13649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、かぶり厚に対応する径の球体を鉄筋と型枠との間に挿入する方法では、かぶり厚が充分であることを確認できても、かぶり厚の具体的な数値を測定することはできない。
【0006】
本発明の課題は、かぶり厚を容易に測定することができるかぶり厚測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、支柱と、前記支柱の下端部に、上端部を回動自在に取り付けられた第1リンクと、前記支柱に対して軸方向に移動可能な操作棒と、前記操作棒の下端部に、下端部を回動自在に取り付けられた第2リンクと、前記第1リンクの下端部及び前記第2リンクの上端部が回動自在に取り付けられた当接部材と、前記支柱から前記当接部材までの幅を前記支柱に対する前記操作棒の変位量に基づいて表示する表示部と、を備えることを特徴とするかぶり厚測定装置である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、支柱と、前記支柱の下端部に、上端部を回動自在に取り付けられた第1リンクと、前記支柱の下端部に、上端部を回動自在に取り付けられ前記第1リンクと反対方向に回動する第3リンクと、前記支柱に対して軸方向に移動可能な操作棒と、前記操作棒の下端部に、下端部を回動自在に取り付けられた第2リンクと、前記操作棒の下端部に、下端部を回動自在に取り付けられ、前記第2リンクと反対方向に回動する第4リンクと、前記第1リンクの下端部及び前記第2リンクの上端部が回動自在に取り付けられた第1当接部材と、前記第3リンクの下端部及び前記第4リンクの上端部が回動自在に取り付けられ、前記第1当接部材と反対方向に移動する第2当接部材と、前記第1当接部材から前記第2当接部材までの幅を前記支柱に対する前記操作棒の変位量に基づいて表示する表示部と、を備えることを特徴とするかぶり厚測定装置である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のかぶり厚測定装置であって、前記第1リンク及び前記第2リンクの回動面と交差する方向に延在し、かつ前記当接部材と当接面を面一にする補助当接部材をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、鉄筋と型枠との間にかぶり厚測定装置を挿入し、支柱に対して操作棒を引き上げることで当接部材を鉄筋または型枠に当接させ、当接部材の変位量を支柱に対する操作棒の変位量を求めることで、かぶり厚を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係るかぶり厚測定装置1Aを示す図である。
【図2】かぶり厚測定装置1Aの使用方法の説明図である。
【図3】かぶり厚測定装置1Aの使用方法の説明図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るかぶり厚測定装置1Bを鉄筋10と型枠20との間に挿入した状態を示す図である
【図5】第3実施形態に係るかぶり厚測定装置1Cのかぶり厚測定部分を示す斜視図である。
【図6】図5のVI矢視図である。
【図7】図5のVII矢視図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係るかぶり厚測定装置1Cを鉄筋10と型枠20との間に挿入した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1は本発明の第1実施形態に係るかぶり厚測定装置1Aを示す図である。図1に示すように、かぶり厚測定装置1Aは、支柱2と、把持部3と、操作棒4と、ハンドル5と、リンク6と、当接部材7と、リンク8と、等から概略構成される。
【0013】
支柱2は中空の筒状であり、内部に操作棒4が挿入されている。支柱2の上端部には、把持部3が取り付けられているまた、支柱2の上端部には、内部の操作棒4に設けられた目盛りを見るための窓2aが設けられている。
【0014】
操作棒4の両端は支柱2の上端及び下端から飛び出している。操作棒4の上端にはハンドル5が設けられている。また、操作棒4には、かぶり厚を示す目盛りが設けられている。操作棒4の下端にはリンク8の下端が回動自在に取り付けられている。
【0015】
支柱2の下部には、複数のリンク6の上端が回動自在に取り付けられている。リンク6の下端は当接部材7に回動自在に取り付けられている。複数のリンク6は同じ長さであり、平行となるように取り付けられている。このため、当接部材7は常に支柱2と平行である。
【0016】
当接部材7の下部には、リンク8の上端が回動自在に取り付けられている。リンク8の下端が操作棒4により上下に移動すると、連動してリンク6が回動し当接部材7が支柱2と平行に移動する。
【0017】
なお、操作棒4には、支柱2の当接部材7とは反対側の面から、当接部材7の支柱2とは反対側の面までの距離Dが窓2aに表示されるように、あらかじめ目盛りが設けられている。この目盛りがかぶり厚を示す目盛りとなる。
【0018】
以下、かぶり厚測定装置1Aの使用方法について説明する。
まず、図2に示すように、かぶり厚測定装置1Aのハンドル5及び操作棒4を下げた状態にしておく。このとき、リンク8が操作棒4により引き下げられ、当接部材7、リンク6が支柱2と近接し、かぶり厚測定装置1Aは折り畳まれた状態となっている。
【0019】
次に、折り畳まれた状態のかぶり厚測定装置1Aを鉄筋10(主鉄筋11及び配力筋12)と型枠20との間に挿入する。なお、図2では鉄筋10側に支柱2を、型枠20側に当接部材7を配置した状態でかぶり厚測定装置1Aを挿入しているが、鉄筋10側に当接部材7を、型枠20側に支柱2を配置してもよい。
【0020】
次に、把持部3を持ってハンドル5を引き上げる。すると、図3に示すように、操作棒4によりリンク8の下端が引き上げられるため、リンク6が回動し当接部材7が支柱2から遠ざかる方向に平行移動する。
【0021】
支柱2が鉄筋10(配力筋12)に当接した状態で当接部材7が型枠20に当接すると、これ以上ハンドル5は引き上げられない。このとき、支柱2の窓2aから操作棒4の目盛りを見ると、支柱2の鉄筋10との当接面から当接部材7の型枠20との当接面までの距離Dが表示される。この距離Dがかぶり厚となる。
【0022】
このように、本実施形態によれば、鉄筋10から型枠20までの距離を支柱2の上部で目盛りを目視することにより確認することができる。また、支柱2と当接部材7とが平行であるため、鉄筋10と型枠20とが平行でない場合等の異常を検出することもできる。
【0023】
〔第2実施形態〕
図4は本発明の第2実施形態に係るかぶり厚測定装置1Bを鉄筋10と型枠20との間に挿入した状態を示す図である。なお、第1実施形態に係るかぶり厚測定装置1Aと同様の構成については、同符号を付して説明を割愛する。
【0024】
かぶり厚測定装置1Bには、支柱2を挟むように2つの当接部材7A、7Bが設けられている。当接部材7A、7Bはそれぞれリンク6A、6Bにより支柱と、リンク8A、8Bにより操作棒4と接続されている。
【0025】
なお、当接部材7Aの支柱2とは反対側の面から、当接部材7Bの支柱2とは反対側の面までの距離Dが窓2aに表示されるように、あらかじめ目盛りが設けられている。この目盛りがかぶり厚を示す目盛りとなる。
【0026】
かぶり厚測定装置1Bを折り畳んだ状態で鉄筋10と型枠20との間に挿入し、把持部3を持ってハンドル5を引き上げると、図4に示すように、操作棒4によりリンク8A、8Bの下端が引き上げられるため、連動してリンク6A、6Bが回動し当接部材7A、7Bが支柱2から遠ざかる方向に平行移動する。
【0027】
当接部材7A、7Bが鉄筋10、型枠20に当接するまで移動すると、これ以上ハンドル5は引き上げられない。このとき、支柱2の窓2aから操作棒4の目盛りを見ると、鉄筋10から型枠20までの距離Dが表示される。この距離Dがかぶり厚となる。
【0028】
このように、本実施形態においても、鉄筋10から型枠20までの距離を支柱2の上部で目盛りを目視することにより確認することができる。また、当接部材7A、7Bが平行であるため、鉄筋10と型枠20とが平行でない場合等の異常を検出することもできる。さらに、本実施形態では、支柱2を鉄筋10や型枠20に当接させたくないような場合においても用いることができる。
【0029】
〔第3実施形態〕
図5は本発明の第3実施形態に係るかぶり厚測定装置1Cのかぶり厚測定部分を示す斜視図であり、図6は図5のVI矢視図(かぶり厚測定部分を当接部材7の当接面側から見た図)であり、図7は図5のVII矢視図(かぶり厚測定部分の側面図)である。なお、第1実施形態に係るかぶり厚測定装置1Aと同様の構成については、同符号を付して説明を割愛する。
【0030】
本実施形態においては、当接部材7に、補助当接部材7Cが取り付けられている。補助当接部材7Cは図6に示すように、リンク6及びリンク8の回動面と交差する方向に延在し、図7に示すように当接面を当接部材7と面一としている。
【0031】
本実施形態にかかるかぶり厚測定装置1Cは、主鉄筋11が型枠20側にある場合でも、主鉄筋11から型枠20までの距離を測定することができる。すなわち、主鉄筋11が型枠20側にある場合、主鉄筋11に沿ってかぶり厚測定装置1Cを鉄筋10と型枠20との間に挿入した後、把持部3を持ってハンドル5を引き上げたときに、当接部材7が隣接する主鉄筋11の間に配置されることがある。この場合、補助当接部材7Cがないと、当接部材7が主鉄筋11に当接しないため、かぶり厚を正確に測定することができない。
【0032】
しかし、当接部材7と交差する方向に延在する補助当接部材7Cを設けることで、図8に示すように、補助当接部材7Cが主鉄筋11と当接する。補助当接部材7Cの当接面は当接部材7と面一であるため、支柱2の窓2aから操作棒4の目盛りを見ると、主鉄筋11から型枠20までの距離Dが表示される。この距離Dがかぶり厚となる。
このように、本実施形態に係るかぶり厚測定装置1Cでは、型枠20に対する主鉄筋11、配力筋12の位置関係にかかわらず、かぶり厚を測定することができる。
【0033】
なお、かぶり厚測定装置の材質、形状及び寸法等は、使用場所や用途に応じて適宜変更可能である。また、以上の実施形態においては、操作棒4に設けられた目盛りを窓2aより目視で読み取ることとしたが、本発明はこれに限らず、光や電気を用いた測定装置を用いることで支柱2と操作棒4との変位量を測定し、かぶり厚を算出してもよい。さらに、算出したかぶり厚をデジタルデータとして記録、活用してもよい。
【符号の説明】
【0034】
1A、1B かぶり厚測定装置
2 支柱
2a 窓(表示部)
3 把持部
4 操作棒
5 ハンドル
6、6A、6B、8、8A、8B リンク
7、7A、7B 当接部材
10 鉄筋
11 主鉄筋
12 配力筋
20 型枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱と、
前記支柱の下端部に、上端部を回動自在に取り付けられた第1リンクと、
前記支柱に対して軸方向に移動可能な操作棒と、
前記操作棒の下端部に、下端部を回動自在に取り付けられた第2リンクと、
前記第1リンクの下端部及び前記第2リンクの上端部が回動自在に取り付けられた当接部材と、
前記支柱から前記当接部材までの幅を前記支柱に対する前記操作棒の変位量に基づいて表示する表示部と、を備えることを特徴とするかぶり厚測定装置。
【請求項2】
支柱と、
前記支柱の下端部に、上端部を回動自在に取り付けられた第1リンクと、
前記支柱の下端部に、上端部を回動自在に取り付けられ前記第1リンクと反対方向に回動する第3リンクと、
前記支柱に対して軸方向に移動可能な操作棒と、
前記操作棒の下端部に、下端部を回動自在に取り付けられた第2リンクと、
前記操作棒の下端部に、下端部を回動自在に取り付けられ、前記第2リンクと反対方向に回動する第4リンクと、
前記第1リンクの下端部及び前記第2リンクの上端部が回動自在に取り付けられた第1当接部材と、
前記第3リンクの下端部及び前記第4リンクの上端部が回動自在に取り付けられ、前記第1当接部材と反対方向に移動する第2当接部材と、
前記第1当接部材から前記第2当接部材までの幅を前記支柱に対する前記操作棒の変位量に基づいて表示する表示部と、を備えることを特徴とするかぶり厚測定装置。
【請求項3】
前記第1リンク及び前記第2リンクの回動面と交差する方向に延在し、かつ前記当接部材と当接面を面一にする補助当接部材をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載のかぶり厚測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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