説明

からみ織物並びにからみ織物の製織法および機械織機

本発明は、少なくとも地たて糸(1)と、からみたて糸(3)と、よこ糸(2)とを含むからみ織物であって、よこ糸(2)および地たて糸(1)が実質的に稠密に固定される方式で配列される織物に関する。よこ糸は、地たて糸(1)よりも遥かに低いタイターを有するからみたて糸(3)によって、地たて糸の張力よりも低い張力で結び合わされる。この低い張力は、結び合わせから生じるからみたて糸(3)と地たて糸(1)との交差が、よこ糸の最大太さの平面に平行な平面に配列されるような張力である。からみたて糸(3)は、地たて糸(1)よりも深く織物の中に織り込まれる。本発明の別の態様は、からみ織物の製織法と、このからみ織物の製織法を実施するための機械織機に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、からみ織物と、その製織法および織機とに関する。
【背景技術】
【0002】
地たて糸、からみたて糸およびよこ糸から製織されるからみ織物は公知であり、その製織法および織機についても同様に知られている。
【0003】
独国特許出願公開第100 04 376 A1号明細書は、からみ組織の織物の製織法とこれを実施するための織機を開示している。この方法は、ハーフヘルドを開口装置として用いる織機によって実現されるが、このハーフヘルドは、少なくとも2つのヘルドフレームと組み合わされる独国特許発明第197 50 804 C1号明細書による吊り上げヘルドを備えたハーフヘルドであって、それ自体公知である。この場合、からみ組織の織物の製織は、少なくとも2つのヘルドフレームにハーフヘルド用の多数の第1吊り上げヘルドを装着し、別のヘルドフレームにハーフヘルド用の同数の吊り上げヘルドを装着することによって行われる。このタイプのからみ組織の織物の製織においては、いわゆる定置たて糸とからみたて糸との両者のたて糸張力が重要な役割を果たす。この既知の方法においては、定置たて糸の設定張力を、からみたて糸の設定張力のほぼ2倍に設定する。これによって、比較的高い糸ずれ安定性を有するからみ織物が得られる。但し、この既知の方法またはこの方法を実施する織機の場合、吊り上げヘルドを備えたハーフヘルドの耐用時間が十分でないことが短所として判明した。さらに、ハーフヘルドと吊り上げヘルドとを備えた2つのヘルドフレームが、従来のように開口機を必要とすることも短所である。織機における開口機の複雑さは、ヘルドシャフトの数には比較的無関係であるので、これはコスト高の要因となる。
【0004】
さらに、独国特許出願公開第101 28 538 A1号明細書が、からみ織物製織用の織機を開示している。この織機においては、定置たて糸およびからみたて糸が通されて導かれる開口装置の駆動が織機そのものの駆動装置から導き出される。この既知の織機においては、いわゆるからみ針リードおよび定置針リードが開口装置として用いられる。各針リードは多数の針を有しており、その針の自由端に、各からみたて糸または各定置たて糸を通すための少なくとも1つの糸穴が設けられる。からみ織物を製織する際に、それぞれ1本のからみたて糸が定置リードのただ1つの針だけを確実に飛び越し得るように、各針リードの針は薄板の棒によって分離されている。この既知の織機においては、からみたて糸および定置たて糸は、少なくとも1つの下部ワープビームから供給され、少なくとも1つのバックビームを経て開口装置に送られる。従って、からみたて糸および定置たて糸は同じ1つのたて糸張力を有する。からみたて糸と定置たて糸との間の質的な差異、特にたて糸のヤーンカウントに関する差異が大幅に排除される限り、このタイプのからみ織物における模様付けの多様性は制限される。
【0005】
別の観点から、本発明は、新しい機能的な特性を備えたからみ織物、特に床の被覆材として使用するためのからみ織物に関する。
【0006】
床被覆材用としては、特に、ベロア織物、ループ状の織物または平滑な織物が用いられる。この床被覆材の製造用として種々の製織法が知られており、例えば、ベロアカーペットおよびループ状カーペットを複雑かつ精巧なパイルカーペット織機および二重カーペット織機で製織することが知られている。この他に知られているいわゆるタフティングカーペットとその製織法の場合には、支持層、例えば不織布またはパイル層の形の織物が、特に通常は糸のループを織り込むことによって導入される。その場合、表面は、ベロアとしてまたはループの形に構成できる。織り込まれたループを強化するため、続いてこれを結合手段によって支持材と結合する。これは、タフティングカーペットの製造にはいくつかの加工ステップが必要であることを意味している。床被覆材は、その上面と下面とに異なる機能的な特性を有する必要があるので、上記のような製造法はとりわけ複雑なものになっている。特に表面の組織と、歩行の快適さと、表面の強靭さとには、特別な要請が課せられる。床被覆材の下面には、その都度の支持基礎面と共同して有効作用するような基本的特性が特に重要である。この特性には、例えば滑り抵抗および付着性が含まれる。さらに、床被覆材には、全体として、例えば特定の剛性および糸ずれ安定性並びに所要の面積当たり重量のような特定の要求が課せられる。
【0007】
上面に下面とは異なる特性を有する織物、特にここで問題にしているからみ織物は、いわゆる「両面(double−face)」織物とも呼称される。この異なる特性は、一方では床被覆材の場合のように物理的な特性に関係するが、織物の前面および/または背面における模様および色の強さに関する美的な面に関することがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上から、本発明の基本的な目的は、異なる機能的および/または美的な特性をもつ上面および下面を有すると共に、製織容易で、多様な用途分野に使用し得る稠密なからみ織物を創出することにある。さらに、本発明に関わるからみ織物の製織法を実現するための方法と織機とを創出することも、本発明のまた別の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、本発明によれば、請求項1の特徴を備えたからみ織物と、請求項15の特徴を有する方法と、請求項17の特徴を備えた織機とによって達成される。好適な改良形態がそれぞれの従属請求項に規定される。
【0010】
本発明によるからみ織物は、少なくとも、地たて糸とからみたて糸とよこ糸とを含んでおり、よこ糸は地たて糸の上に実質的に中間隙間なく配列される。「中間隙間なく」という用語は、よこ糸が少なくとも僅かに互いに接触するように互いに並んで稠密に配列され、その結果、よこ糸によって形成されるからみ織物の面が、実質的にそのよこ糸の組織および色彩によって構成されることを意味するものと理解する。よこ糸は、地たて糸よりも遥かに低いタイターを有するからみたて糸によって結び合わされる。その際、前記よこ糸は、結び合わせから生じるからみたて糸と地たて糸との交差が、よこ糸の最大太さを貫通してその長さ方向に延びる平面とは異なる平面内に配列されるような低い張力で、地たて糸に対して結び合わされる。これは、その交差が、地たて糸に向いているか、あるいはよこ糸によって形成される上面の上に配列されるが、よこ糸の中間には存在しないことを意味している。この場合、からみたて糸は、地たて糸よりも深く織物の中に織り込まれる。これは、よこ糸が、実質上、その長さ方向の延長範囲に撚られることなくそのままである一方、からみたて糸は、そのたて糸張力が大幅に低いことから、よこ糸を地たて糸に対して結び合わせるために強い織り込みにおいてよこ糸の周りにループを形成していることを意味している。
【0011】
もし、からみたて糸が、その張力のために、地たて糸とよこ糸との間、すなわちよこ糸の最大太さの下部に配置されていると、交差は、実質上、互いに接触するよこ糸によってカバーされるので、前記からみ糸は、よこ糸によって形成されるからみ織物の上面においては実質上見えなくなる。交差を、張力条件によってよこ糸の下側すなわち地たて糸の方向に移すことによって、地たて糸およびからみたて糸を色彩的もしくは組織的に相互に適合させた場合、からみ織物のいわゆる両面特性を得ることが可能である。すなわち、地たて糸の側の面では、地たて糸およびからみたて糸の色彩もしくは組織が支配的になり、他方、これと反対側のからみ織物の面、つまりその上面においては、よこ糸の色彩もしくは組織が優勢になる。
【0012】
従って、製織のために、からみたて糸を第1ワープビームから供給し、地たて糸を第2ワープビームから供給して、からみたて糸を第1開口装置に、地たて糸を第2開口装置に通す。2つのたて糸は、製織されるからみ織物の結び目点において集合する。地たて糸およびからみたて糸を、それぞれ別個の電気モータ駆動装置を有するワープビーム、すなわち電気モータ式たて糸送り出し機から供給する結果として、地たて糸およびからみたて糸の両者の張力を個別に設定して制御できる。これによって、設定張力に応じて、結び合わせ条件によって生じるからみたて糸と地たて糸との交差を、よこ糸の最大厚さの位置を通って広がる平面の下側に配置するか、あるいはこの平面の上側に配置することが可能になる。従って、例えば、地たて糸をからみたて糸よりも遥かに太いたて糸材料から構成することによって、特徴のあるからみ織物を製織できる。この場合は、地たて糸の張力をからみたて糸の張力の何倍にもすることが可能であり、そうする方がよい。
【0013】
本発明によるからみ織物の場合、よこ糸を互いに稠密に配列して結び合わせ、織物が糸ずれ安定性の高い組織を有するようにすることが好ましい。この場合、「糸ずれ安定性の高い」組織という用語は、著しく稠密な織物を意味するものと理解する。このような織物はこれ以外にはおそらく平織で実現可能である。上記のようなタイプのからみ織物の重要な利点は、何よりもまず、からみ織物の少なくとも片面の組織もしくは模様もしくは色彩がよこ糸によって決定されるという点にある。このよこ糸は、必要に応じてそれぞれの位置においてそれぞれの開口に簡単によこ入れできる。これに対して従来の織物の場合は、異なる形もしくは模様を地たて糸によって実現しており、その場合、異なる色彩に対しては、異なる糸または異なる色彩をワープビーム上に巻き付けることに関する比較的高い経費が生じる。従って、本発明によるからみ織物は、従来のからみ織物に比較して、模様と組織とに関して際立って大きな柔軟性を有する。
【0014】
からみたて糸の張力は地たて糸の張力よりも大幅に低いので、地たて糸は僅かに弱く織り込まれるだけであって、地たて糸は、実質的に直線状に延びており、強く織り込まれるからみたて糸によって結び合わされる。よこ糸は、からみたて糸、従って地たて糸をもほとんど完全に覆い尽くす。これによって、からみ織物の色彩、組織もしくは表面は、一方の面においてはよこ糸によって、もう一方の面においては地たて糸とからみたて糸とによって決定され、その結果、それによっていわゆる両面織物を作り出すことができる。
【0015】
からみ織物を、地たて糸の上面側に、少なくとも1種類の太くて特に柔軟なよこ糸と、少なくとも1種類の細くて特に硬いよこ糸とを交互に配列して構成すると有利である。この交互の配列は、太いよこ糸が、細いよこ糸を実質的に覆い隠し、特に太いよこ糸の色彩および組織によって規定される実質的に閉じられた表面を形成するように行う。太いよこ糸と細いよこ糸とは交互に配列できるが、それぞれ2本の太いよこ糸に1本の細いよこ糸を続けること、あるいはその逆、あるいは太いよこ糸および細いよこ糸の他の組み合わせで行うことも可能である。太いよこ糸と細くて硬いよこ糸とのこの配列順序は、地たて糸によって生じるたて糸方向の剛性と共に、織物のよこ糸方向の剛性にも大きく寄与する。容積のある太いよこ糸が、細くて硬いよこ糸を表面に向けてカバーするので、上記のような実質上閉じられた稠密な表面が形成される。従って、この太いよこ糸によって、織物全体としての剛性が高められるにも拘らず、特に床被覆材の表面特性は変化しないという結果が得られる。
【0016】
よこ糸および地たて糸にはからみたて糸が巻き付く。すなわち、からみたて糸は、多くの平面において水平方向にも垂直方向にも延びて、よこ糸と地たて糸とを結束して堅固な織物を形成する。個々の糸の材料選択を適切に行うことによって、織物の上面または下面に異なる所要の機能的特性が得られる。例えば、摩耗しにくい太いよこ糸を用いると、それによって織物の上面は頑丈な摩耗に強い表面として構成される。特に床被覆財の場合は、地たて糸として、滑り難くて硬い織物の下側の層を形成するような材料が用いられる。
【0017】
本発明による織物の地たて糸が織物の下面に配列されて、平面内にほぼ直線状に延伸する結果、地たて糸を同等に稠密に配列した場合、地たて糸がよこ糸に対する当てがい面を形成する。
【0018】
本発明によるからみ織物の重要な利点は、特に適切に材料を選定すれば、本発明による織物でもって、任意の用途に対して、対応するよこ糸を用いることによってそれぞれの組織と物理的な特性と美的な形態とを簡単に実現し得る点にある。織物のそれぞれの面において機能的な特性が異なることは、例えば日除けテント材料の場合にも特に有利である。機能的な特性としては、特に、量感、表面のトポグラフィー、最終的外観、色彩、歩行の快適性、および表面の耐久性、さらに模様がある。
【0019】
これに対して、織物の下面に配列される地たて糸は、織物の剛性と、例えば床被覆材の場合には、その床被覆材が布設されるべき基礎面との関連におけるその織物の特性のような所要の特性との機能を担う。地たて糸は、床被覆材の下面においてほぼ直線状に延在し、また対応する稠密度において特定の面を形成するので、この地たて糸を、完全にあるいは部分的に金属繊維から構成することが可能であり、これによって電導度が実現され、例えば、特に静電気の蓄積容量および/または放電の監視のような検知用途に使用し得る。
【0020】
からみたて糸は、結束糸として用いられ、表面を形成するよこ糸と地たて糸との間の結束材を構成する。これによって、稠密であって糸ずれ安定性が高く、特に床被覆材としてきわめて効果的に使用し得るからみ織物が、1つの作業工程において比較的に僅かな生産コストで製織される。
【0021】
本発明によるからみ織物のさらに別の利点は、特に、よこ糸および/またはよこ糸の稠密度だけを容易かつ簡単に変更できるので、製品の変更を簡易に実現し得る点にある。例えば、あるグリッパ織機においては、よこ入れ用として最大16色までのよこ糸を用意することができる。本発明の1つの好ましい実施形態によれば、例えば天然繊維製および合成繊維製のよこ糸のヤーンカウントを20,000dtex(0.5Nm)〜500dtex(20Nm)の範囲内で変えることによって、織物の厚さを変化させて、それぞれの用途に適合させる。同様に、特定のよこ糸を特別に選定することによって、あるいはそのようなよこ糸を使用することによって、織物の下面の輪郭形状を変えることなく、織物の上面に階段状の輪郭形状を簡単に生じさせることができる。これは、下面の形態が専ら地たて糸によって決定されるからである。これは、例えば繊維製の床被覆材の場合、特定の美的効果を得るために望まれるところである。本発明によるからみ織物の場合には、よこ糸の稠密度も設定できるので、よこ糸の繊維を、特に所要の使用特性に応じて多少に拘わらず圧縮することができる。結束糸の特性は、製織時に対応調整可能な糸張力と共に、よこ糸と地たて糸との間に生じる締め付けによって床被覆材の強靭さに影響する。結束糸によるよこ糸と地たて糸への巻き付きはそれぞれ180°に及ぶので、きわめて高い糸ずれ安定性を有する非常に強靭な織物を生成する効果が得られる。従って、例えばタフティングカーペットの場合に必要であるような織物の下面に対する付加的な強化処理は、本発明によるからみ織物においてはもはや必要でない。
【0022】
結束糸として作用するからみたて糸は、必要な強靭さと耐摩耗性とに従って、22〜5,000dtexのヤーンカウントの天然もしくは合成繊維製のものとすることができる。
【0023】
例として、例えばポリエステルの22dtexのからみたて糸と、例えばポリエステルの1,100dtexの地たて糸と、例えばポリエステルの任意の所望のヤーンカウントを有するよこ糸とのヤーンカウントの場合、織物の一方の面に地たて糸が視覚的に優勢に出現し、織物のもう一方の面によこ糸が視覚的に優勢に出現するからみ織の織物が得られる。この結果は、特に、からみたて糸のヤーンカウントが22dtexであるために、肉眼ではからみたて糸を織物の中にほとんどまたは全く認めることができないという理由によるものである。これは、この織物の前記の両面特性の1つの例である。
【0024】
本発明の別の実施形態によれば、少なくとも2種類の地たて糸がからみ糸によって一緒に結び合わされる。この場合、2種類の地糸は地たて糸の1つの群を形成し、さらに、少なくとも2種類のよこ糸を、からみ糸によって一緒に結び合わせることができる。しかし、例えば個々のよこ糸、あるいはよこ糸の群を、少なくとも2種類のからみたて糸によって結束することも可能である。
【0025】
からみ織物の表面に階段状の構造を形成することを可能にするためには、よこ糸を、そのタイターに関してグループ化して変えることが望ましい。その場合、階段状の構造を実現するためのよこ糸の数は、織物の表面におけるその構造の厚さとその大きさとによって変化する。
【0026】
従って、このからみ織物の特性は、地たて糸の群がからみたて糸の開口装置の中に引き入れられ、それに対応して逆に、からみたて糸の群が地たて糸用の開口装置の中に引き入れられることによって生じる。たて糸およびよこ糸に対して前記のヤーンカウントを用いると、よこ糸の変動に応じて、織物の全表面またはその一部分を、そのよこ糸が視覚的に優勢であるか、あるいは織物の他の一部分に比べて地たて糸が視覚的に優勢であるように構成できる。この方法で、例えば長さ方向のストライプを有するからみ織物を製織できる。糸ずれ安定性が高い構造の特に稠密な織物は、例えば、多色のよこ糸材料と単色のたて糸材料とによって織物を製織する可能性を提供する。この織物においては、よこ糸の色彩が織物の片面にのみくっきりと浮かび出る一方、織物の下面である他方の面においては、地たて糸が明白に見られるので、よこ糸の色彩は、視覚的にぼやけて、または不明瞭にもしくは弱く出現するだけである。
【0027】
この特性を有する織物は、これまでは、大量の材料を必要とする朱子織または綾織によってのみ製織できた。よこ糸およびたて糸に対してヤーンカウントを相応に選定することによって、かつまた、からみたて糸および地たて糸の張力を適切に設定乃至は選定した場合、本発明によるからみ織物において、すでに述べた両面特性を、非常に薄くかつ軽いからみ織物においても実現できる。地たて糸としては、引き裂き抵抗力の高いあらゆるタイプの糸を有利に使用できる。高い糸の稠密度とからみたて糸の深い織り込みとに関する本発明のからみ織物の重要な利点は、品質的に高品質のホームテキスタイル並びに技術織物を製造する有利な可能性を提供する。
【0028】
よこ糸は500dtex〜20,000dtexのタイターを有し、地たて糸は硬いことが望ましい。地たて糸は、少なくとも部分的には金属材料から形成されるか、あるいは金属化されることが望ましく、また、500dtex〜2,000dtexのタイターを有することが望ましい。この場合、からみたて糸は15tex〜5,000dtexのタイターを有することが望ましい。からみたて糸が視覚的によこ糸の陰に隠れるようにするために、しかしその場合でも確実な結び合わせを実現するために、からみたて糸は、地たて糸の1/30〜1/60、特に1/50のヤーンカウントを有するようにする。ポリエステル製のからみたて糸のヤーンカウントは15dtex〜30dtexの範囲内にあり、地たて糸のヤーンカウントは1,100dtexの程度の大きさであることが望ましい。
【0029】
よこ糸としては多様な材料が使用可能であるので、本発明の1つの好ましい形態においては、よこ糸としていわゆる意匠糸を使用することを想定している。この意匠糸によって、特殊な表面構造と効果とを実現できる。
【0030】
本発明の第2の態様によれば、上記のようなからみ織物の製織法が提供される。この方法においては、第1たて糸としてのからみたて糸と、第2たて糸としての地たて糸とがそれぞれのワープビームから織物に供給される。からみたて糸は、地たて糸の上によこ入れされたよこ糸を、少なくともそのよこ糸ごとに、地たて糸と共に結び合わせるが、その場合、からみたて糸は地たて糸に比べて遥かに低いたて糸張力に設定され、からみたて糸は織物の中により強く織り込まれる。
【0031】
好ましくは、からみたて糸は、個別にまたはグループ化して第1開口装置の中に引き入れられ、地たて糸は、個別にまたはグループ化して第2開口装置の中に引き入れられる。からみたて糸の張力を地たて糸に対して制御もしくは設定もしくは調整することによって、結び合わせの際の交差点が、張力比に応じて、よこ糸の最大太さを貫通してその長さ方向に延びる平面とは異なる平面内に移動することが実現される。これは、交差が、よこ糸の最大厚さに関係する前記平面の下側または上側のいずれかにあることを意味する。交差が前記平面の下側にあれば、よこ糸の厚さが相応の厚さである場合、交差は、状況によっては完全によこ糸によって覆われる。しかし、交差をよこ糸の上側に配列して、それによって完全に異なる表面組織、すなわち完全に異なる表面の外観を得ることも可能である。この場合は、表面の組織は、よこ糸によって、もしくは、よこ糸とからみたて糸によって形成される交差とによって規定される。
【0032】
本発明のさらに別の態様によれば、上記の織物の製織法を実施するための織機が提供される。本発明による織機は、第1駆動装置を備えたからみたて糸ワープビームと、第2駆動装置を備えた地たて糸ワープビームとを有する。第1開口を形成するためにからみたて糸を導く揺動リードと、第2開口を形成するために地たて糸を導く定置リードとが設けられ、揺動リードはスレーと、定置リードは歯車を介して駆動軸と駆動連結される。さらに、よこ糸のよこ入れ装置が設けられ、それによって、からみたて糸と地たて糸とから形成される開口によこ糸をよこ入れできる。からみたて糸および地たて糸のたて糸張力を測定するためのセンサが設けられる。このセンサは、信号(実際値)を制御装置乃至設定装置に送り、その装置の側では、対応する信号をワープビームの駆動装置に送り、その信号に基づいて、からみたて糸の張力が地たて糸の張力よりも大幅に低くなるようにたて糸の張力が調整され、それによって、からみたて糸が、地たて糸よりも深く、特に顕著に深く、織物の中に織り込まれる。
【0033】
本発明による織機を用いて製織し得るからみ織物に応じてからみたて糸および地たて糸の張力を設定かつ制御することによって、結び合わせから生じるからみたて糸と地たて糸との間の交差が位置する平面が―最大直径を通ってよこ糸の縦軸内に延びる平面に関して―決定される。これによって、実質上よこ糸によって形成される織物の上面に、からみたて糸がどの程度まで見えるか、あるいはからみたて糸を些かでも見ることが可能かどうか、しかも、特にからみたて糸がいずれにせよ肉眼で識別し難いほどすでに細いかどうかには関係なく、どの程度まで見えるか、あるいは見ることが可能かどうかが決められることになる。従って、交差は、織物の中心から上向きにあるいは下向きに移動する。この場合、「下向きへの移動」という用語によって、交差が、よこ糸の最大直径領域を通ってよこ糸の縦軸の方向にかつ地たて糸に平行に延びる考慮平面の下側に位置すると理解する。また、「上向きへの移動」という用語によって、交差がこの平面の上側に配列されると理解する。
【0034】
好ましくは、スレーがおさを担持し、そのおさによって、開口の中によこ入れされるよこ糸を、それ自体周知の方法で織物の結び目点に打ち込むことができる。
【0035】
織機には、完成した織物を引き取って巻き付けるための巻き取り装置を備えることが望ましく、この巻き取り装置には、完成した織物の引き取り速度または巻き取り速度、従ってたて糸の張力をも変えることができる独立の駆動装置を取り付けることができる。
【0036】
本発明の織機の場合、好ましくは、多数のからみたて糸からなる第1のたて糸群が、第1開口装置に引き入れられ、続いて第2開口装置を通り、その後おさを通って導かれる。この場合、各たて糸は、製織される織物のいわゆる結び目点において第2のたて糸群と集合する。
【0037】
多数の地たて糸からなる第2のたて糸群は、第1開口装置を通って続いて第2開口装置に引き入れられ、その後おさを通って結び目点において第1のたて糸群と集合する。
【0038】
場合によって生じるたて糸の切断を検出し得るようにするため、第1および第2たて糸群は、開口装置とバックビームとの間に配置されるたて糸監視器を通過する。からみたて糸群および地たて糸群の両者には、そのたて糸張力を別個に測定しかつ別個に変化させもしくは制御するために、測定された実際の張力を信号伝送の方式で織機の制御装置に送る張力センサが装備される。これによって、からみたて糸よりも高い張力が地たて糸に付与されるように、張力が設定乃至制御される。これを実現するため、結び目点後に完成した織物は、回転駆動される織物引き込みロールにほとんど完全に巻き付けられ、それに続いて適切な反転ロールを介して、回転駆動されるクロスビームに導かれ、これに巻き取られる。回転駆動される織物引き込みロールは、第1および第2ワープビームと同様に、別個の電気モータ駆動装置と作動連結されており、このモータ駆動装置は、対応する信号伝達のために、同様に織機の制御装置と接続される。従って、張力センサによって、それぞれのたて糸群の張力の実際値が測定され、電気信号として織機の制御装置に伝送される。織機の制御装置においては、設定値−実際値の比較に基づいて、所定の設定張力からの偏差が確定される。設定張力値からの偏差が確定されると、当該ワープビームの当該電気モータ駆動装置が、たて糸張力を増大および低下させるように操作される。前記の第1および第2開口装置はいわゆる針リードであり、これは、その駆動装置をも含めて、特に独国特許出願公開第101 28 538 A1号明細書から知られるところである。この文献に記載されている基本的な構造および作動態様がここで参照される。同様に、よこ糸を、からみたて糸および地たて糸から形成される開口によこ入れする装置も既知である。この装置としては、例えばバンドガイドまたはロッドガイドのよこ糸グリッパのような機械駆動の装置、あるいは、例えばノズルから噴出する空気または水のような空気式またはウォーター方式の装置が対象になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
次に、本発明のさらなる利点および実施形態を、添付の図面を参照して、実施例に基づいて詳しく説明する。
【0040】
図1に、伝統的な平織の糸ずれ安定性を、従来のからみ織物に対する比較として示す。図1aは、たて糸1およびよこ糸2を有する伝統的な平織を示し、その断面図に、たて糸の周りによこ糸に沿って生じる力が表現されている。図1aによる従来の平織における糸ずれ安定性を100%と仮定すると、図1bにおいて、従来のからみ織の糸ずれ安定性は約170%になる。平面図には、地たて糸1と、よこ糸2およびからみたて糸3とが示されている。この場合、よこ糸およびからみたて糸の巻き付き角度のために、地たて糸に作用する力の間により鋭角の角度が生じることが分かる。これが側面の断面図に表現されている。この場合、Fが織物内における糸の張力を表し、αと、αおよびαとがそれぞれの力の間の角度を表している。
【0041】
従って、からみ織による織物の面形態は、平織、綾織、朱子織のような織り型による織物よりも遥かに糸ずれ安定性が高いことが示されている。織物の糸ずれ安定性を左右するのは、糸の相互の交差によって生じる摩擦力である。平織L1/1によって製織される織物(図1a参照)の糸ずれ安定性は、織りの1単位内の交差の数と、織物内における糸の張力Fと、糸間の摩擦係数μと、糸の交差における巻き付き角度αとの関数である。
【0042】
この場合、図1bは、織りの1単位内の交差の数が多いことおよび糸の交差における巻き付き角度が大きいことによって、からみ織物の糸ずれ安定性が高いことを示している。
【0043】
糸の稠密度と、糸の張力と、摩擦係数とがいずれも等しいと仮定すると、からみ織物の糸ずれ安定性は平織物のそれよりも係数1.7だけ高くなるという結果が得られる。本発明によるからみ織物は、特にこの事実を利用している。すなわち、平織物からからみ織物に変えることによって、特に、材料の使用量を、最大30%低減し、織機の生産性を40%高めることが特別に可能になる。糸ずれ安定性そのものも、従来のからみ織物に対して、同様に高めることができる。
【0044】
図2は、従来の代表的なからみ織物のよこ糸稠密度を、本発明の方法によって製織したからみ織物の場合と、よこ糸のヤーンカウントに関して比較している。本発明によるからみ織物に対しては、Easy Leno(登録商標)2Tの名称も用いる。図2から、本発明によるからみ織物によって、従来の代表的なからみ織物に比べて遥かに高いよこ糸稠密度を実現し得ることが分かる。これは、特に、よこ糸がほとんど直線状で地たて糸の上に配列され、からみたて糸のヤーンカウントが大幅に低いことに加えて、からみたて糸が非常に深い織り込みを有しており、その結果、よこ糸の直線状配列に基づいて、よこ糸を地たて糸の上に一層稠密に配列できるからである。この結果、よこ糸が互いに稠密に並べて詰め込まれることから、さらに美的もしくは色彩的もしくは組織的な特性も改善されたきわめて稠密なからみ織物が得られる。従来の代表的なからみ織物の場合には、たて糸は互いに対角線的に交差する。この交差は、特にたて糸方向に相対的に大きな容積を占めるので、よこ糸の組み込み可能な最大稠密度を制限する。従って、従来の代表的なからみ織物は、軽い格子状もしくは透明な生地面形態用としてのみ用いられた。
【0045】
本発明によるからみ織物およびその製織法は、形状係合によって確実作用してからみ織を生成する。技術的な観点からは、これは、たて糸の張力が、従来知られているよりも遥かに高い程度に変えられていることを意味している。
【0046】
本発明によるからみ織物においては、たて糸は2つのシステムに分割されており、たて糸の張力を違えて設定することによって本発明のからみ織物が生成される。たて糸の交差は、もはや―従来のからみ織の場合のように―対角線状には生起せず、遥かに高いよこ糸稠密度によって大きく影響される新しい外観を備えたからみ織物が製織される。さらに、両たて糸システムのいずれかに対して弾性糸を用いることによって、いわゆるストレッチ−ストップ効果を再現可能に生じさせることができる。機能繊維の製造において、この効果は特に有利である。特に、結束糸を、使用よこ糸に比べて細い糸に置き換えることによって、完全に新しいタイプの織物構造を製織できる。本発明によるからみ織物によって、大幅に高いよこ糸稠密度を実現し得ることが図2に明白に示されている。この場合、よこ糸は、100%の稠密度が達成される程、非常に稠密に相互によこ打ちされる。このように製織されたからみ織物は、上面にいわゆる「平織外観」を呈する。
【0047】
本発明によるからみ織物の場合、平織物と異なってよこ糸が直線状に配列されているという事実によって、織物の収縮および重いテンプル伸張装置の使用を避けることができる。さらに、よこ糸を介して織物におけるいわゆる多色効果を持ち込み得るようになる。例えば、日除けテント織物の場合、製織が、製織予備工程において著しく簡単化される。これは、また、撚糸工程、整経工程およびサイジング工程についても高い程度において当てはまる。その理由は、色彩または糸の種類をよこ糸によって変更することは、模様またはストライプに関係する色彩の違いがそれ自体の上に巻き付けられたワープビームとしてそれらを作り出すよりも、製織の点で簡単だからである。特に日除けテント織物製織の場合は、本発明のからみ織物によって、柔軟性の大幅な向上が実現される。
【0048】
平織の場合には最大約80%の色彩輝度に達することができるが、本発明のからみ織物によれば、約95%の色彩輝度が実現される。よこ糸による色彩効果はきわめて明確であり、織物の表面には精緻な特性が付与される。さらに、このような精緻な表面組織は、撥水加工および防汚加工の改善の実現にきわめてよく適している。また、このような精緻な表面組織は、デジタルプリント用の基礎織物に関して、さらにデカタイジング施工布地並びに毛羽立たせた毛布地として、このように製織された織物を使用する場合の利点を提供する。
【0049】
図3には、高稠密度の平織物の織り込みを高稠密度のからみ織物のそれと比較している。この図から、本発明によるからみ織物は、織機において織り込みによる収縮の可能性を全く有していないことが分かる。これは、織物の全幅にわたってたて糸の稠密度を正確に一定に保持し得ることを意味している。これは、複合物用および半製品用の技術繊維製品の製造において特に有利である。
【0050】
被覆織物を製織する場合には、本発明によるからみ織物によって、例えばヤーンカウント1,100dtexのPESフィラメント糸を使用してセンチメートル当たり4本の糸のメッシュ状の構成、および、センチメートル当たり22本までの糸の著しく精緻な表面組織を有する稠密に打ち込まれた織物を実現できる。さらに別の用途分野は、アラミドフィラメント糸を用いた防弾繊維製品の製造である。この場合、異なる太さの糸を使用して、非常に多様な稠密度等級を製造できる。アラミドフィラメント糸の高い引張強度と低い弾性とを実現するために、製造において分子鎖をほぼ100%引張方向に向ける。よこ糸をほとんど直線状に地たて糸の上に載せることができるので、本発明によるからみ織物においては、アラミドフィラメント糸も、100%負荷の方向に向けることができる。従って、高価なアラミド糸の特性を、織物において100%まで利用できる。本発明によるからみ織物の場合、織物のよこ糸が一方の側でたて糸の上に載せられ、織物の下側の面では地たて糸が境界を形成するという事実のために、異なるヤーンカウントのよこ糸によって、レリーフ状の織物表面組織が生成する。この場合、地たて糸に弾性糸を使用すると、からみ織物の変形可能性が決定的に確保される。このような特性は、とりわけ自動車シートの表面材において、空気の循環と座り心地のための、変形性およびレリーフ構造のような所要の要請を実現するために重要な役割を演じる。
【0051】
図3は、織物が、50%のよこ糸比率と50%のたて糸比率とを有する時に、よこ糸方向の織り込みによる収縮が最大になることを示している。その収縮量は例えば25%であり、織物を広げるために織機にロッドテンプル伸張器を設ける必要がある。製織時の収縮を低減するために、よこ糸の比率を減少させ、対応してたて糸の比率を増大させる。これによって、織機における収縮が低減し、伸張用として、織物の耳領域または補助耳領域に2つの針ホイールを設けるだけで十分である。
【0052】
しかし、ストライプ状の、稠密度が変化する織物を製織しなければならない場合は、平織、綾織、朱子織では、織機においては、よこ糸方向の織り込みによる収縮が連続的に変化するであろう。しかし、これは織物におけるひだを生じる結果になり、原理的に恒常的な欠点となる。
【0053】
これに対して、本発明によるからみ織物は、糸の稠密度には関係なく、よこ糸方向の織り込みによる収縮の可能性を有しない。稠密度の全設定範囲に対して、織物を導くために、織物の耳領域または補助耳領域において使用される2つの針ホイールを備えたテンプル伸張シリンダを設けることで十分であり、これによって、よこ糸稠密度の変化によるひだは原理的に一切現れない。
【0054】
図4は、本発明による別の実施例を示す。このからみ織物においては、相対的に太くて膨らんだよこ糸2が、相対的に細くて硬い地たて糸1の上に配列されている。各よこ糸2の間には、それぞれ1本の細くて硬いよこ糸が配置される。よこ糸は、それぞれ、からみたて糸3によって地たて糸1に結束される。太いよこ糸が相対的に膨らんでいる結果として、細いよこ糸は、太くて膨らんだよこ糸によってほとんど覆われる。からみたて糸は、太くて膨らんだよこ糸よりもその糸の太さが遥かに小さいので、織物の上面においては、実質的によこ糸2の色彩および組織のみが支配的になる。細くて硬いよこ糸2bは、地たて糸1と共に、からみ織物の下面における織物の剛性に寄与している。このような構造は、床被覆材の場合に特に有利である。それは、この方式によって、所要の強さに補強された柔らかい表面組織を最も効率的に生成し得るからである。このようなベロアタイプの織物表面の安定性は手織りのものに匹敵する。細くて硬いよこ糸2bが、地たて糸1と結束されて前記の付加的な強さをもたらすので、下面における付加的な強化処理はもはや必要ないであろう。これによって、軽くて、しかも環境親和性のある床被覆材を構想することが可能になる。
【0055】
図5aに、からみ織物の側面図を、図5bに対応するその平面図を示す。地たて糸1は製織方向に直線状に延びており、それに垂直に配列されたよこ糸2が同様に直線状に延びている。その間において、からみたて糸3が、地たて糸1およびよこ糸2に交互に巻き付いていく。図は縮尺通りではない。すなわち、特にからみたて糸3乃至結束糸のヤーンカウントは、図5における太さ表現よりも遥かに小さくできる。からみたて糸3が細ければ細いほどそれだけ、よこ糸を中間隙間なしに互いに並べて配列することが可能になり、結果的に、稠密な、ほとんど閉じられた表面が得られる。
【0056】
また、個々の地たて糸1間の間隔を大きく減少させるか、あるいは実質的に完全に消滅させることもできる。これによって、布設面となる織物の稠密な下面が得られる。この場合、個々のよこ糸2は互いに非常に近づけて配列できるので、織物の上面においては、よこ糸が完全に稠密な層を形成し、それによって、よこ糸2の特性だけで、完成した織物の表面特性が決定されることになる。
【0057】
これは、地たて糸1の場合にも同様に当てはまる。からみたて糸3または結束糸の太さを対応して細くすることによって、地たて糸1は互いに非常に近接して配列されるので、地たて糸は、織物の下面5に稠密な層を形成する。従って、地たて糸1のヤーンカウントおよび材料の選択によって、床被覆材の下面5の特性を有利に変えることができる。
【0058】
図6aは図4に示す本発明のからみ織物の断面図であり、図6bは対応する平面図を示す。この図も縮尺通りではないので、糸の太さと中間隙間の大きさに関しては、図5との関連における説明もしくは記述が等しく当てはまる。図6に示す中間隙間は、単によき理解のための表現である。すなわち、本発明によるからみ織物の場合、よこ糸を互いに非常に近づけて配列できるのでこの中間隙間は存在しない。少なくとも、太くて膨らんだよこ糸2aを使用する場合は、これが互いに稠密に並ぶように配列する。図5のからみ織物と違って、図6のからみ織物の場合は、異なる種類のよこ糸が交互に地たて糸1の上に用いられている。この場合、太いよこ糸2aには常に細いよこ糸2bが続いている。細いよこ糸2bは、ヤーンカウントおよび形態と同時に、材料においても太いよこ糸2aとは異なるものにすることができる。繊維製品としての床被覆材の場合は、細いよこ糸2bは例えば非常に硬い材料製のものとし、それによって、からみ織物によこ糸方向における高い剛性を付与する。他方、細いよこ糸2bの硬い材料が、繊維製品としての床被覆材の歩行の快適さにマイナスに作用しないようにするため、太いよこ糸2aを柔らかい材料製として、細いよこ糸2bと非常に詰めて織り合わせ、太いよこ糸2aが細いよこ糸2bを完全にカバーするようにする。この方法で、硬くて細いよこ糸2bは織物の上面4においては見えなくなり、あるいは感知できなくなる。
【0059】
図7は、図7aの断面図および図7bの平面図の両者において、稠密なからみ織物を示しているが、このからみ織物においては、よこ糸が、からみたて糸の太さが許容する程度に互いに稠密に配列される。非常に細いからみたて糸3を選定すると、よこ糸2を互いに詰めて配列することができる。しかし、からみたて糸の太さが相応の太さであっても、これは中間隙間を埋めることに寄与し得るので、同様に稠密なからみ織物が形成される。
【0060】
図8には、図7と同様に構成されるからみ織物を示しているが、この場合は、からみ糸の結び合わせの方向がグループ化ごとに変化しており、その結果、よこ糸および/または地たて糸とのからみたて糸3の結び合わせの方向によって、ストライプ状の模様を生じさせることもができる。
【0061】
図9に概略的に示す織機6は、からみたて糸3を有する第1ワープビーム7aと、地たて糸1を有する第2ワープビーム7bとを含む。第1ワープビーム7aは電気モータ式のたて糸送り出し機8aを備え、第2ワープビーム7bは電気モータ式のたて糸送り出し機8bを備えている。両たて糸送り出し機のモータ7a、7bは、それぞれ、制御ライン9aまたは9bを介して、織機の制御装置10と信号伝送するように接続される。からみたて糸3は、第1ワープビーム7aに軸平行に配置されるバックビーム11を経由して開口装置12の方向に延びており、一方、地たて糸1は、第2ワープビーム7bに軸平行に配置される別のバックビーム13を経由して開口装置12の方向に導かれる。開口装置12は、独国特許出願公開第101 28 538 A1号明細書に記載されているように、第1針リード12aと第2針リード12bとを有しており、第1針リード12aの針にからみたて糸3が引き入れられ、第2針リード12bの針に地たて糸1が引き入れられる。
【0062】
からみたて糸3および地たて糸1は、引き続いて、スレー15に固定されたおさ14を通過する。からみたて糸3および地たて糸1は、最終的に、からみ織物16の結び目点16aにおいて集合し、よこ糸(図9には表現されていない)と共に、仕上げられたからみ織物16を形成していく。よこ糸は、結び目点16aにおいておさ14と係合し、からみたて糸および地たて糸と結び合わされる。
【0063】
仕上げられたからみ織物16は、位置固定されたクロステーブル17と、反転ロール18と、別個の電気モータ駆動装置19を備えた引き込みロール20とを順に経由して導かれる。からみ織物16は、引き込みロール20から、引き込みロール20と押圧ロール21との間のニップを通って別の反転ロール22を経てクロスビーム23に達し、その上に巻き取られる。上記のロールは、クロステーブル17をも支持する機械フレーム(図9には表現されていない)に支承される。
【0064】
バックビーム11、13と開口装置12との間の範囲において、からみたて糸3および地たて糸1はたて糸監視器24を通過する。たて糸3、1の上に載っているこのたて糸監視器24の薄板24aによってたて糸の切断を検知できる。当該バックビーム11、13とたて糸監視器24との間には、からみたて糸3および地たて糸1のそれぞれに、たて糸張力センサ25、26が配置される。この両たて糸張力センサ25、26は、それぞれ対応する信号ライン25aまたは26aを介して、織機の制御装置10と信号伝送するように接続される。引き込みロール20も同様に別個の電気モータ駆動装置19を有しており、この電気モータ駆動装置19も同様に信号ライン19aおよび19bを介して織機の制御装置10と信号伝送するように接続される。引き込みロール20がワープビーム7a、7bと同様に別個の駆動装置を有しているという点、および、これらの駆動装置によって各ビームもしくはロールの回転速度を制御できるという点から、からみたて糸の張力を、地たて糸の張力と同様に、たて糸張力の制御乃至調整用として設けられるシステムによって調節できる。これは、対応する設定値−実際値比較によって行われるが、この比較によって、からみたて糸3および地たて糸1の所定の設定張力が維持され、あるいは、その都度の条件に適合するように制御乃至設定される。
【0065】
開口装置の基本的な構造および作動態様については、その駆動装置を含めて、独国特許出願公開第101 28 538 A1号明細書に記載されており、この明細書の内容がここで参照される。図9とは異なって、図10においては、図9の製織面27を垂直に移動させる場合、開口装置12の単に1つの針リードを用いることを可能にする方法を示している。図10は、開口装置12と、スレー15を含むおさ14と、クロステーブル17との、当初の製織面27から製織面27aへのこの垂直方向の移動を示している。この場合、単に、下開口形成用として、地たて糸1に対する1つの定置針リード12bを設けるだけで十分である。また、上開口を形成するためにからみたて糸3を持ち上げるには、からみ針リード12aが従来型の薄板リードであれば十分である。それは、上開口から下開口へのからみたて糸3の動きを、薄板リード24aの上部リード連結部12a’によってもたらすことができるからである。これに対して、下開口から上開口へのからみたて糸3の戻りは、からみたて糸3に存在するたて糸張力によって行われる。
【0066】
図11は、開口装置12と、スレー15を含むおさ14と、クロステーブル17との、当初の製織面27から製織面27bへの垂直方向の移動を表現している。たて糸監視器24には、開口装置12の方向に、からみたて糸3および地たて糸1を、ほぼたて糸監視器24の配置平面に保持する押し下げ装置28が設けられる。このため、からみたて糸3に対してのみ、上開口形成用のからみ針リード12aを設けるだけで十分である。また、下開口を形成するためにからみたて糸3を沈下させるには、定置リード12bが従来型の薄板リードであれば十分である。それは、からみたて糸3の開口交換後に、上開口形成のために、地たて糸1を定置リード12bの下部リード連結部12b’において支持できるからである。
【0067】
図9、10および11に概略的に示す織機は、電気モータ駆動装置29と作動連結される主軸を有しており、おさ14、針もしくは薄板リード12aおよび針もしくは薄板リード12bの駆動が、相応の伝達装置を介在させて、この主軸から導き出されることを付言する。駆動モータ29とおさ軸30との間の駆動連結は、二重矢印31によって記号化されている。駆動装置29は、対応する信号ライン29a、29bを介して織機の制御装置10と信号伝送するように接続されることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1a】100%の糸ずれ安定性を有する従来の平織の織物を示す。
【図1b】糸ずれ安定性を70%高めた従来のからみ織の織物を示す。
【図2】よこ糸のヤーンカウントに対してよこ糸稠密度を対比したグラフを示す。
【図3】従来の高稠密度平織物および高稠密度からみ織物における織り込みによる収縮の比較を示す。
【図4】異なるよこ糸材料を交互に配列した本発明によるからみ織物を示す。
【図5a】からみ織物の概略的表現を断面図で示す。
【図5b】図5aの概略的表現を平面図で示す。
【図6a】図4の本発明によるからみ織物の概略的表現を断面図で示す。
【図6b】図6aの本発明によるからみ織物の概略的表現を平面図で示す。
【図7a】稠密に配列されたよこ糸を有する本発明によるからみ織物の別の実施例の概略的表現を断面図で示す。
【図7b】高いよこ糸稠密度とからみたて糸の深い織り込みとを有する図7aの本発明によるからみ織物の概略的表現を平面図で示す。
【図8】地たて糸方向並びによこ糸方向によこ糸をグループ化して結び合わせた本発明によるからみ織物の別の実施例の概略的表現を平面図で示す。
【図9】本方法を実施するための織機の概略的表現を側面図として示す。
【図10】地たて糸用の開口装置としての針リードを備えた、本方法を実施するための織機の概略的表現を側面図で示す。
【図11】からみたて糸用の開口装置としての針リードを備えた、本方法を実施するための織機の概略的表現を側面図で示す。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも地たて糸(1)と、からみたて糸(3)と、よこ糸(2)とを含むからみ織物であり、
前記よこ糸が、前記地たて糸(1)の上に実質的に中間隙間なく配列されるとともに、前記地たて糸(1)よりも遥かに低いタイターを有する前記からみたて糸(3)によって、前記地たて糸(1)に対して結び合わされるからみ織物であって、
前記結び合わせが、前記結び合わせから生じる前記からみたて糸(3)と前記地たて糸(1)との交差が前記よこ糸(2)の最大太さの平面に平行な平面内に配列され、
前記からみたて糸(3)が前記地たて糸(1)よりも深く織物の中に織り込まれるような低い張力で行われるからみ織物。
【請求項2】
前記織物が糸ずれ安定性の高い構造を形成するように、前記よこ糸(2)が稠密に互いに並べて配列されかつ結び合わされる、請求項1に記載のからみ織物。
【請求項3】
前記地たて糸(1)が、強く織り込まれた前記からみたて糸(3)によってほぼ直線状に結び合わされかつ前記よこ糸(2)によってほとんど完全に覆われるような僅かな程度にしか織り込まれない、請求項1または2に記載のからみ織物。
【請求項4】
前記よこ糸(2)が、特にその色彩および組織でもって、前記地たて糸(1)と反対側の織物の面を規定する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のからみ織物。
【請求項5】
前記地たて糸(1)の上面に、少なくとも1本の太くて特に柔らかいよこ糸(2a)と少なくとも1本の細くて特に硬いよこ糸(2b)とを交互に配列し、
前記配列を、前記太いよこ糸(2a)が前記細いよこ糸(2b)を実質的に覆うように、かつ、特に前記太いよこ糸の色彩および組織によって規定される実質的に閉じられた表面(4)を形成するように行う、請求項1〜4のいずれか1項に記載のからみ織物。
【請求項6】
少なくとも2本の地たて糸(1)が前記からみ糸(3)によって一緒に結び合わされる、請求項1〜5のいずれか1項に記載のからみ織物。
【請求項7】
少なくとも2本のよこ糸(2)がからみ糸(3)によって一緒に結び合わされる、請求項1〜6のいずれか1項に記載のからみ織物。
【請求項8】
前記よこ糸(2)が少なくとも2本のからみたて糸(3)によって一緒に結び合わされる、請求項1〜7のいずれか1項に記載のからみ織物。
【請求項9】
前記織物の表面(4)上に段階的な構造が形成されるように、前記よこ糸(2)が、そのタイターに関してグループ化されて変化する、請求項1〜8のいずれか1項に記載のからみ織物。
【請求項10】
前記よこ糸(2)が500dtex〜20,000dtexのタイターを有し、
前記地たて糸(1)が、硬く、特に少なくとも部分的には金属材料製であるかあるいは金属化されており、かつ500dtex〜2,000dtexのタイターを有し、
前記からみたて糸(3)が15dtex〜5,000dtexのタイターを有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載のからみ織物。
【請求項11】
前記からみたて糸(3)が、前記地たて糸(1)の1/30〜1/60のヤーンカウント、特に1/50のヤーンカウントを有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載のからみ織物。
【請求項12】
前記からみたて糸(3)が15〜30dtexのポリエステルのヤーンカウントを有し、
前記地たて糸(1)が1,100dtexのポリエステルのヤーンカウントを有する、請求項11に記載のからみ織物。
【請求項13】
前記地たて糸(1)が、前記地たて糸(1)によって形成される織物の下面/織物の裏面(5)が第1の組織を呈するようなタイターを有すると共に、その組織を呈するように稠密に配列され、
前記よこ糸(2)が、前記よこ糸(2)によって形成される織物の上面/織物の前面(4)が第2の組織を呈するようなタイターを有し、
前記第1および前記第2の組織が両面織物としての織物を構成する、請求項1〜12のいずれか1項に記載のからみ織物。
【請求項14】
よこ糸(2)として意匠糸を用いることができる、請求項1〜13のいずれか1項に記載のからみ織物。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の特徴を備えたからみ織物の製織法であって、
第1たて糸としてのからみたて糸(3)と、第2たて糸としての地たて糸とを、それぞれのワープビーム(7a、7b)から織物に供給し、その場合、前記からみたて糸(3)が、前記地たて糸(1)の上によこ入れされた少なくともそれぞれ1本のよこ糸(2)を前記地たて糸(1)と一緒に結び合わせ、かつ、前記からみたて糸(3)を、前記地たて糸(1)よりも遥かに低いたて糸張力で、前記地たて糸(1)よりも強く織物の中に織り込む方法。
【請求項16】
前記からみたて糸(3)を個別にまたはグループ化して第1の開口装置に引き込み、前記地たて糸を個別にまたはグループ化して第2の開口装置に引き込む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1〜14に記載の織物を製織するために請求項15または16に記載の方法を実施する織機(1)であって、
a)第1駆動装置(8a)を備えたからみたて糸ワープビーム(7a)および第2駆動装置(8b)を備えた地たて糸ワープビーム(7b)と、
b)第1の開口を形成するために前記からみたて糸(3)を導く揺動リード(12a)および第2の開口を形成するために前記地たて糸(1)を導く定置リード(12b)であって、
c)前記揺動リード(12a)はスレー(15)と駆動連結され、前記定置リード(12b)は歯車を介して駆動軸と駆動連結される、揺動リード(12a)および定置リード(12b)と、
d)前記からみたて糸(3)および前記地たて糸(1)から形成し得る開口によこ糸をよこ入れすることができるよこ入れ装置と、
e)前記からみたて糸(3)および前記地たて糸(1)のたて糸張力を測定するためのセンサ(25、26)と、
f)前記からみたて糸張力が前記地たて糸張力よりも大幅に低くなるように、かつ、前記からみたて糸が前記地たて糸(1)よりも深く前記織物(16)の中に織り込まれるように、前記たて糸張力を設定および調整する装置と、
を含む織機。
【請求項18】
前記センサ(25、26)が、前記第1駆動装置(8a)および前記第2駆動装置(8b)と織機の制御装置(10)を介して信号伝送するように接続される、請求項17に記載の織機。
【請求項19】
前記からみたて糸(3)のたて糸張力を、前記からみたて糸(3)の前記地たて糸(1)との交差が織物の中心から下向きまたは上向きに移動するように設定することができる、請求項17または18に記載の織機。
【請求項20】
前記スレー(15)がおさ(14)を担持し、
前記おさ(14)によって、前記開口の中によこ入れされたよこ糸を織物(16)の結び目点(16a)に打ち込むことができる、請求項17〜19のいずれか1項に記載の織機。
【請求項21】
完成した織物(16)を引き取りかつ巻き取るための巻き取り装置が設けられる、請求項17〜20のいずれか1項に記載の織機。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2008−525658(P2008−525658A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548684(P2007−548684)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【国際出願番号】PCT/DE2005/002306
【国際公開番号】WO2006/069562
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(591021578)リンダウェル、ドルニエ、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング (28)
【氏名又は名称原語表記】LINDAUER DORNIER GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
【Fターム(参考)】