説明

がんの治療および診断用の標的遺伝子としてのC12ORF48

膵臓癌および前立腺癌、特に、膵管腺癌(PDAC)および去勢抵抗性前立腺癌を発症する素因を診断するための客観的方法を、本明細書において説明する。一態様において、診断法は、C12ORF48遺伝子を標的とするsiRNAを使用してC12ORF48の発現レベルを決定する工程を含む。本発明は、siRNAなどの生成物、およびそれらを含有している組成物も特徴とする。本発明は、がん、例えば、膵臓癌および前立腺癌などのC12ORF48関連疾患の治療において有効な治療剤をスクリーニングする方法、ならびに細胞増殖を阻害して、1つまたは複数の疾患の症状を治療または軽減する方法をさらに提供する。本発明はまた、二本鎖分子などの生成物、ならびにそれらを含有しているベクターおよび組成物も特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本願は、2008年8月28日付で出願された米国特許仮出願第61/190,529号の恩典を主張するものである。その内容全体は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
技術分野
本発明は、がん、特に、膵臓癌および前立腺癌、例えば、膵管腺癌および去勢抵抗性前立腺癌を検出する方法、ならびにそれらを発症する素因を診断する方法に関する。本発明は、C12ORF48の過剰発現に関連したがん、特に、膵臓癌および前立腺癌、例えば、膵管腺癌および去勢抵抗性前立腺癌の治療および予防のための候補化合物をスクリーニングする方法にも関する。さらに、本発明は、C12ORF48遺伝子発現を低下させる二本鎖分子およびその使用に関する。特に、本発明は、C12ORF48に関する。
【背景技術】
【0003】
膵管腺癌(PDAC)は、西洋諸国におけるがんによる死因のうち4番目に多いものであり、一般的な悪性病変の中で最も高い死亡率を示し、5年生存率はわずか5%である(DiMagno EP, et al., Gastroenterogy 1999;117:1464-84(非特許文献1)、Zervos EE, et al., Cancer Control 2004;11:23-31(非特許文献2))。2007年、米国においては、37,170例の新たな膵臓癌例が診断されており、およそ等しい数の死亡が膵臓癌に起因すると推定されている(Jemal A, et al., CA Cancer J Clin 2007;57:43-66(非特許文献3))。PDAC患者の大多数が、現在のところ有効な治療が利用可能でない進行期において診断される。外科的切除術のみが、わずかな治癒の可能性を与えるが、根治手術を受けたPDAC患者の80〜90%が播種性または転移性の疾患により死亡する(DiMagno EP, et al., Gastroenterogy 1999;117:1464-84(非特許文献1)、Zervos EE, et al., Cancer Control 2004;11:23-31(非特許文献2))。放射線を伴うまたは伴わない、手術および5−FUまたはゲムシタビンを含む化学療法の近年の進歩は、患者の生活の質を向上させることはできるが(DiMagno EP, et al., Gastroenterogy 1999;117:1464-84(非特許文献1)、Zervos EE, et al., Cancer Control 2004;11:23-31(非特許文献2))、極めて高い侵襲性および化学療法抵抗性のため、それらの治療は、PDAC患者の長期生存率に対しては極めて限定された効果しか及ぼさない。したがって、ほとんどの患者の管理は、対症療法的な措置に焦点が置かれる(DiMagno EP, et al., Gastroenterogy 1999;117:1464-84(非特許文献1)、Zervos EE, et al., Cancer Control 2004;11:23-31(非特許文献2))。
【0004】
他方、前立腺癌(PC)は、男性における最も一般的な悪性病変であり、米国および欧州におけるがんに関連する死因の第2位である(Jemal A, et al., CA Cancer J Clin 2007;57:43-66(非特許文献3))。PCの発生率は、西洋式の食事の普及および老齢人口の急増により、ほとんどの先進国で顕著に増加している(Gronberg H, Lancet 2003;361:859-64(非特許文献4)、Hsing AW et al., Epidemiol Rev 2001;23:3-13)。血清前立腺特異抗原(PSA)を使用するスクリーニングは、PCの早期検出の劇的な改善をもたらし、外科的療法および/または放射線療法により治癒可能な限局性疾患を有する患者の割合の増加をもたらした(Gronberg H, Lancet 2003;361:859-64(非特許文献4)、Hsing AW et al., Epidemiol Rev 2001;23:3-13)。しかしながら、これらのPC患者の20%〜30%は、依然として疾患の再発を被る(Scher HI, et al., J Clin Oncol 2006;23:8253-61(非特許文献6))。アンドロゲン/アンドロゲン受容体(AR)シグナル伝達経路がPCの発症および進行において中心的な役割を果たしており、PCの増殖は通常アンドロゲン依存性である(Hsing AW, et al., Epidemiol Rev 2001;23:3-13(非特許文献5)、Scher HI, et al., J Clin Oncol 2006;23:8253-61(非特許文献6))。したがって、疾患が再発または進行した患者のほとんどは、外科的または内科的な去勢により精巣のアンドロゲン産生を抑制するアンドロゲン除去療法によく応答する。それにもかかわらず、これらの患者は、最終的には、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)と称される、アンドロゲン除去療法(去勢)に対する耐性、およびより侵襲性の表現型を獲得する。このCRPCに対しては、ドセタキセルとプレドニゾンとの併用などの極めて限定された選択肢しか存在せず(Tannock IF, et al., N Engl J Med 2004;351:1502-12(非特許文献7))、それらもやはりCRPCに対しては最小限の効果しか示さない。したがって、CRPCの分子標的を同定し、これらの分子を標的とするCRPC用の新規療法を開発することが、最も要求されている。
【0005】
両疾患のこの惨憺たる情況を克服するため、優れた分子標的に対する新規な分子療法の開発が、緊急に必要とされている。この方向性で、がん細胞集団を可能な限り濃縮するためのレーザーマイクロビームマイクロダイセクションと組み合わせて、30,000を超える遺伝子からなるゲノムワイドcDNAマイクロアレイを使用して、PDAC細胞(Nakamura T, et al., Oncogene 2004;23:2385-400(非特許文献8))およびCRPC細胞(Tamura K, et al., Cancer Res 2007;67:5117-25(非特許文献9)、WO2008/102906(特許文献1))の詳細な発現プロファイルが、以前に作成された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2008/102906
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】DiMagno EP, et al., Gastroenterogy 1999;117:1464-84
【非特許文献2】Zervos EE, et al., Cancer Control 2004;11:23-31
【非特許文献3】Jemal A, et al., CA Cancer J Clin 2007;57:43-66
【非特許文献4】Gronberg H, Lancet 2003;361:859-64
【非特許文献5】Hsing AW, et al., Epidemiol Rev 2001;23:3-13
【非特許文献6】Scher HI, et al., J Clin Oncol 2006;23:8253-61
【非特許文献7】Tannock IF, et al., N Engl J Med 2004;351:1502-12
【非特許文献8】Nakamura T, et al., Oncogene 2004;23:2385-400
【非特許文献9】Tamura K, et al., Cancer Res 2007;67:5117-25
【発明の概要】
【0008】
本発明は、C12ORF48が幾つかのがん細胞において過剰発現されているという、マイクロアレイ分析およびRT−PCRを通した発見に関する。本明細書において証明されるように、がん細胞株におけるsiRNAによる内在性C12ORF48の機能的ノックダウンは、がん細胞増殖の劇的な抑制をもたらし、このことから、がん細胞の生存能の維持におけるその必須の役割が示唆される。C12ORF48は成人正常器官にはほとんど発現していないため、副作用が最小である新規治療アプローチのための適切かつ有望な分子標的であると考えられる。
【0009】
したがって、生検材料などの対象由来の生物学的試料におけるC12ORF48の発現レベルを決定することにより、対象におけるがん、特に、膵管腺癌(PDAC)および去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)を診断するか、またはそれらの素因を決定する方法を提供することが、本発明の目的である。正常対照レベルと比較したC12ORF48の発現のレベルの増加は、対象が、がん、特に、膵管腺癌(PDAC)および去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)に罹患しているか、またはそれらを発症するリスクを有することを示す。本発明の方法においては、C12ORF48遺伝子を適切なプローブによって検出することが可能であり、あるいは、C12ORF48タンパク質を抗C12ORF48抗体によって検出することが可能である。
【0010】
C12ORF48遺伝子の発現またはその遺伝子産物の活性を阻害する剤を同定する方法を提供することが、本発明のさらなる目的である。さらに、本発明は、がん、例えば、膵臓癌および前立腺癌、特に、膵管腺癌(PDAC)および去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)などのC12ORF48関連疾患を治療および/もしくは予防するための候補剤、またはこれらの細胞の増殖を阻害するための候補剤を同定するための方法を提供する。本発明の方法はインビトロまたはインビボで実施され得る。C12ORF48遺伝子の発現レベルおよび/またはその遺伝子産物の生物学的活性の、試験剤の非存在下のものと比較した減少は、その試験剤が、C12ORF48遺伝子の阻害剤であり、したがって、がん性細胞、例えば、膵臓癌細胞または前立腺癌細胞、特に、PDACおよびCRPCの細胞などのC12ORF48遺伝子を過剰発現している細胞の増殖を阻害するために使用され得ることを示す。候補剤は、膵臓癌または前立腺癌、特に、膵管腺癌(PDAC)または去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)の症状を低下させるために使用され得る。
【0011】
さらに、C12ORF48遺伝子の発現および/またはC12ORF48タンパク質の機能を阻害する作用物質を投与することにより、C12ORF48遺伝子を過剰発現しているがん性細胞の増殖を阻害する方法を提供することが、本発明のさらなる目的である。好ましくは、作用物質は阻害性核酸(例えば、アンチセンス、リボザイム、二本鎖分子)である。作用物質は、二本鎖分子を提供するための核酸分子またはベクターであってもよい。二本鎖分子を、C12ORF48遺伝子の発現を阻害するのに十分な量で標的細胞へ導入することによって、遺伝子の発現を阻害することができる。本発明は、例えば、膵臓癌または前立腺癌、特に、膵管腺癌(PDAC)または去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)に罹患した患者のための治療的または予防的な方法に関連して、対象におけるC12ORF48遺伝子を過剰発現しているがん性細胞の増殖を阻害する方法も提供する。
【0012】
さらに、膵臓癌または前立腺癌、特に、膵管腺癌(PDAC)または去勢抵抗性前立腺癌の治療および/または予防のために好適な薬学的組成物を提供することが、本発明のさらなる目的であり、そのような組成物は、薬学的に許容可能な担体と、本発明の二本鎖分子またはそれらをコードするベクターのうちの1つまたは複数を含む活性作用物質とを含む。本発明の二本鎖分子は、細胞へ導入された場合に、C12ORF48遺伝子の発現を阻害することができ、かつC12ORF48遺伝子を過剰発現しているがん性細胞の増殖を阻害することができる。そのような分子の例には、SEQ ID NO:10の595〜613位のヌクレオチド(SEQ ID NO:5)、1133〜1151位のヌクレオチド(SEQ ID NO:7)、または1310〜1328位のヌクレオチド(SEQ ID NO:8)に対応する配列を標的とするものが含まれる。本発明のそのような分子はセンス鎖とアンチセンス鎖とを含み、該センス鎖は標的配列を含む配列を含み、該アンチセンス鎖はセンス鎖に相補的な配列を含む。分子のセンス鎖およびアンチセンス鎖は、互いにハイブリダイズして二本鎖分子を形成する。
【0013】
さらに、膵臓癌または前立腺癌、特に、膵管腺癌(PDAC)または去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)を診断するための検出試薬および/または検出キットを提供することが、本発明のさらなる目的であり、そのような検出試薬および/または検出キットは、抗C12ORF48抗体を含む。
【0014】
本発明の1つまたは複数の局面が、ある特定の目的を満たすことができ、その他の1つまたは複数の局面が、その他のある特定の目的を満たすことができることが、当業者によって理解されるだろう。各目的は、本発明の全ての局面に、そのすべての点で、同等に当てはまるとは限らない。そのため、先の目的は、本発明のいずれか1つの局面に関して、別の選択肢において考慮され得る。以下の詳細な説明を添付の図面および実施例と共に参照することにより、本発明のこれらおよびその他の目的および特色が、より完全に明白になるだろう。しかしながら、上記の発明の概要および以下の詳細な説明は、いずれも、好ましい態様のものであって、本発明または本発明のその他の別の態様を限定するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
以下の図面の簡単な説明、ならびに本発明およびその好ましい態様の詳細な説明を考慮することにより、本発明の様々な局面および用途が、熟練した当業者には明白になるだろう。
【0016】
【図1】PDAC細胞およびCRPC細胞におけるC12ORF48の過剰発現を示す図である。パート(A)は、同様に顕微解剖された正常膵管細胞(「N.P.」)、完全正常膵組織(「膵臓」)、ならびに生命維持に不可欠な器官(「心臓」、「肺」、「肝臓」、および「腎臓」)と比較して、顕微解剖されたPDAC細胞(左から右へレーン1〜9)においてC12ORF48が過剰発現されていることを実証している、半定量的RT−PCRの結果を示す。ACTBの発現を定量対照とした。パート(B)は、同様に顕微解剖された正常前立腺上皮細胞(「NPro」)、完全正常前立腺組織、脳、ならびに生命維持に不可欠な器官(「心臓」、「肺」、「肝臓」、および「腎臓」)と比較して、顕微解剖されたCRPC細胞(左から右へレーン2〜6)においてC12ORF48が過剰発現されていることを実証している、半定量的RT−PCRの結果を示す。ACTBの発現を定量対照とした。パート(C)は、C12ORF48がヒト成人器官のうち精巣において発現を示したことを証明している、C12ORF48発現に関する多組織ノーザンブロット分析の結果を示す。パート(D)は、幾つかのPDAC細胞株(KLM−1、PK−59、PK−45P、およびSUIT2)はC12ORF48を強く発現しているが、その他の正常成体器官はC12ORF48を発現していないことを証明している、C12ORF48発現に関するノーザンブロット分析の結果を示す。パート(E)は、ほとんどの前立腺癌細胞株がC12ORF48を強く発現したことを示している、C12ORF48発現に関するノーザンブロット分析の結果を示す。
【図2】がん細胞の増殖に対するC12ORF48−siRNAの効果を示す図である。パート(A)は、PDAC細胞株MiaPaCa2(左)およびPK−59(右)における、si#595、si#1133、およびsi#1310によるC12ORF48発現に対するノックダウン効果を裏付けたが、si#851または陰性対照siEGFPではそうではない、RT−PCRの結果を示す。ACTBをRNAを定量化するために使用した。パート(B)は、C12ORF48に対する示されたsiRNA発現ベクター(si#595、si#1133、si#851、si#1310、または陰性対照siEGFP)によりトランスフェクトされたMiaPaCa2細胞(左)およびPK−59細胞(右)の各々のMTTアッセイの結果を示す。ジェネテシンと共に6日間インキュベートした後の各平均値がSD(標準偏差)を示すエラーバーと共にプロットされている。Y軸は、マイクロプレートリーダにより測定された、490nm、および参照としての630nmにおける吸光度を意味する。これらの実験は三連で実施した。パート(C)は、C12ORF48に対する示されたsiRNA発現ベクター(si#595、si#1133、si#851、si#1310、または陰性対照siEGFP)の各々によりトランスフェクトされたMiaPaCa2細胞(左)およびPK−59細胞(右)のコロニー形成アッセイの結果を示す。細胞を、ジェネテシンと共に2週間インキュベートした後、0.1%クリスタルバイオレット染色により可視化した。
【図3】C12ORF48タンパク質が核に局在することを示す図である。パート(A)は、外来性C12ORF48がCOS7細胞において過剰発現されていることを裏付ける、抗HAタグ付き抗体を使用したウェスタンブロット分析の結果を示す。パート(B)は、外来性C12ORF48タンパク質が核に局在することを示している、免疫細胞化学分析の結果を示す。緑色シグナルは、抗HAにより染色されたC12ORF48タンパク質を示し、DAPI染色(青色)は細胞内の核を表した。パート(C)は、PDAC細胞株の内在性C12ORF48を検出する抗C12ORF48抗体を使用したウェスタンブロット分析の結果を示す。C12ORF48は、PDAC細胞株KLM1、SUIT2、およびPK−1に高度に発現しているが、非がん性細胞株(HEK−293およびCOS7)ではほとんど検出不可能であった。βアクチンを負荷対照とした。パート(D)は、抗C12ORF48抗体を使用した免疫組織化学研究の結果を示す。PDAC細胞の核において、C12ORF48の強い陽性の染色が観察された(C1 40倍、C2 40倍)。正常膵組織の腺房細胞および正常管上皮細胞は、染色を全くまたはほとんど示さなかった(N 40倍)。全部で、33/62(53%)のPDAC組織が、C12ORF48について陽性の染色を示した。
【図4】C12ORF48のPARP1との相互作用を示す図である。パート(A)は、HECK293細胞において、110kDaのバンドが、異なって、C12ORF48−Flagと免疫共沈降したことを示している、SDS−PAGEゲルの銀染色の結果を示す。LC−MS/MS分析によって、この110kDaのバンドに対応するタンパク質としてPARP1タンパク質が同定された。パート(B)は、HECK293細胞においてPARP1タンパク質がC12ORF48−Flagと免疫共沈降することを裏付ける、抗PARP1抗体を使用したウェスタンブロット分析の結果を示す。パート(C)は、Flag−C12ORF48発現ベクターおよび/またはPARP1−Myc発現ベクターをHEK293細胞へコトランスフェクトした結果を示す。Flag−C12ORF48および/またはPARP1−Mycを含有しているタンパク質複合体を、c−Myc抗体によって免疫沈降させた。抗Flag抗体を使用したウェスタンブロッティングは、両方の発現ベクターをコトランスフェクトした場合に、Flag−C12ORF48がPARP1−Mycと免疫共沈降することを示した。
【図5】C12ORF48またはPARP1をノックダウンするためのsiRNA二重鎖によるアポトーシスの誘導を示す図である。パート(A)は、C12ORF48−siRNAによりトランスフェクトしたKLM−1細胞におけるsubG1集団の割合(65%)が、対照siRNAによりトランスフェクトした細胞(27%)と比較して増加していることを検出している、FACS分析の結果を示す。パート(B)は、PARP1−siRNAによりトランスフェクトしたKLM−1細胞におけるsubG1集団の割合(79%)が、対照siRNAによりトランスフェクトした細胞(40%)と比較して増加していることを検出している、検出FACS分析の結果を示す。
【図6】C12ORF48がインビトロのPARP1自己修飾を正に調節することを示す図である。精製した組換えC12ORF48タンパク質の非存在下または存在下で、[32P]NADの取り込みによってPARP1自己修飾を測定し、SDS−PAGEによって可視化した。レーン1、精製組換えHisタグ付きC12ORF48タンパク質単独;レーン2、Hisタグ付きC12ORF48タンパク質およびPARP1タンパク質の両方;レーン3、PARP1タンパク質単独。[32P]NADの取り込みによって反映されたPARP1自己修飾は、C12ORF48タンパク質の非存在下と比較して、C12ORF48タンパク質の存在下で強く増強された。
【図7】C12ORF48ノックダウンが、がん細胞抽出物中のPARP1活性を低下させ得ることを示す図である。パート(A)は、KLM−1細胞におけるC12ORF48/PARP1 siRNAのノックダウン効果を裏付ける、抗C12ORF48抗体(上)および抗PARP1抗体(下)を使用したウェスタンブロット分析の結果を示す。パート(B)は、C12ORF48−siRNAまたはPARP1−siRNAによりトランスフェクトされたKLM−1細胞の抽出物においてヒストンH1をポリ(ADP−リボシル)化するPARP1活性が、対照siRNAと比較して、それぞれ59.2%および55.5%減少したことを示している、ビオチン化ADP−リボースのヒストンH1タンパク質への取り込みに基づく比色定量PARPアッセイの結果を示す。パート(C)は、SUIT−2細胞におけるC12ORF48/PARP1 siRNAのノックダウン効果を裏付ける、抗C12ORF48抗体(上)および抗PARP1抗体(下)を使用したウェスタンブロット分析の結果を示す。パート(D)は、C12ORF48−siRNAまたはPARP1−siRNAによりトランスフェクトされたSUIT2細胞の抽出物においてヒストンH1をポリ(ADP−リボシル)化するPARP1活性が、対照siRNAと比較して、それぞれ65.2%および47.1%減少したことを示している、比色定量PARPアッセイの結果を示す。パート(E)は、抗pADPr抗体を使用したウェスタンブロット上でのPAGEの後、PARと示されるPARP1酵素反応生成物が検出されたことを示す。C12ORF48またはPARP1のノックダウンで、細胞抽出物中のPARP1活性は劇的に減少した。
【図8】C12ORF48の過剰発現が細胞抽出物中のPARP1の活性を増強し得ることを示す図である。パート(A)は、C12ORF48発現ベクターのトランスフェクションから12時間後、24時間後、および48時間後にそれぞれ細胞を収集し、抗C12ORF48ポリクローナル抗体を使用してC12ORF48タンパク質の発現を検出したことを示す。パート(B)は、細胞抽出物中のPARP1活性を比色定量PARPアッセイを使用することにより測定したことを示す。C12ORF48発現と調和して、HEK293細胞抽出物中のPARP1活性も増強された(P<0.0001、モックトランスフェクションと対比)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
態様の説明
本明細書に記載されたものと類似しているかまたは等価である任意の方法および材料を、本発明の態様の実施または試行において使用することができるが、好ましい方法、装置、および材料を以下に記載する。しかしながら、本材料および本方法を記載する前に、本発明が、本明細書に記載された特定のサイズ、形、寸法、材料、方法論、プロトコル等に限定されず、これらがルーチンの実験法および最適化に従い変動し得ることを理解されたい。また、明細書中で使用される用語は、特定の形式または態様を記載するためのものに過ぎず、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図していないことも理解されたい。
【0018】
本明細書中で言及された各々の公開、特許、または特許出願の開示は、参照によりその全体が具体的に本明細書に組み入れられる。しかしながら、本明細書中のいかなる記載も、先行発明のため、本発明がそのような開示に先行している資格を有しないことの承認として解釈されるべきではない。
【0019】
矛盾が生じた場合には、定義を含む本明細書が優先される。さらに、材料、方法、および例は、例示的なものに過ぎず、限定することを意図していない。
【0020】
定義
「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という単語は、本明細書で使用される場合、特に指定のない限り、「少なくとも1つの」を意味する。
【0021】
「単離された」および「精製された」という用語は、物質(例えば、ポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド等)に関して本明細書で使用される場合、その物質が、天然起源では通常含まれ得る物質を少なくとも1つ実質的に含まないことを示す。したがって、単離されたまたは精製された抗体とは、タンパク質(抗体)が由来する細胞もしくは組織起源に由来する、炭水化物、脂質、もしくはその他の混入タンパク質などの細胞物質を実質的に含まないか、または、化学合成された場合には、前駆化学物質もしくはその他の化学物質を実質的に含まない抗体をさす。「細胞物質を実質的に含まない」という用語には、ポリペプチドが単離されたまたはポリペプチドが組換えにより作製された細胞の細胞成分からポリペプチドが分離されている、ポリペプチドの調製物が含まれる。したがって、細胞物質を実質的に含まないポリペプチドには、(乾燥重量で)約30%、20%、10%、または5%未満の異種タンパク質(本明細書中、「混入タンパク質」とも呼ばれる)を有するポリペプチドの調製物が含まれる。ポリペプチドが組換えにより作製される場合には、それは、好ましくは、培養培地も実質的に含まず、そのようなポリペプチドには、タンパク質調製物の容積の約20%、10%、または5%未満の培養培地を含むポリペプチド調製物が含まれる。ポリペプチドが化学合成によって作製される場合には、それは、好ましくは、前駆化学物質またはその他の化学物質を実質的に含まず、そのようなポリペプチドには、タンパク質調製物の容積の(乾燥重量で)約30%、20%、10%、5%未満の、タンパク質の合成に関与する前駆化学物質またはその他の化学物質を含むポリペプチド調製物が含まれる。特定のタンパク質調製物が、単離または精製されたポリペプチドを含有していることは、例えば、タンパク質調製物のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−ポリアクリルアミドゲル電気泳動およびゲルのクーマシーブリリアントブルー染色等の後の単一バンドの出現によって示され得る。好ましい態様において、本発明の抗体は、単離または精製されている。
【0022】
cDNA分子などの「単離された」または「精製された」核酸分子は、組換え技術によって作製された場合には、他の細胞物質もしくは培養培地を実質的に含まない可能性があり、または、化学合成された場合には、前駆化学物質もしくはその他の化学物質を実質的に含まない可能性がある。好ましい態様において、本発明の抗体をコードする核酸分子は、単離または精製されている。
【0023】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーをさすために、交換可能に本明細書中で使用される。これらの用語は、天然に存在するアミノ酸ポリマーのみならず、1つまたは複数のアミノ酸残基が修飾された残基であるか、または対応する天然に存在するアミノ酸の人工化学的模倣体などの天然には存在しない残基である、アミノ酸ポリマーにも当てはまる。
【0024】
「アミノ酸」という用語は、天然に存在するアミノ酸および合成アミノ酸をさし、かつ、天然に存在するアミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体をさす。天然に存在するアミノ酸とは、遺伝暗号によってコードされたもの、ならびに細胞内で翻訳後に修飾されたもの(例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸、およびO−ホスホセリン)である。「アミノ酸類似体」という語句は、天然に存在するアミノ酸と同一の基本化学構造(水素に結合したα炭素、カルボキシ基、アミノ基、およびR基)を有するが、修飾されたR基または修飾された骨格を有する化合物(例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニン、スルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム)をさす。「アミノ酸模倣体」という語句は、一般的なアミノ酸と異なる構造を有するが、類似した機能を有する化学物質をさす。
【0025】
アミノ酸は、本明細書中、IUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨された、それらの一般的に公知の3文字記号または1文字記号により言及される場合もある。
【0026】
「遺伝子」、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、「核酸」、および「核酸分子」という用語は、特に指定のない限り、交換可能に使用され、アミノ酸と同様に、それらの一般的に認められている1文字表記により言及される。アミノ酸と同様に、それらには、天然に存在する核酸ポリマーおよび天然には存在しない核酸ポリマーの両方が包含される。ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸、または核酸分子は、DNA、RNA、またはそれらの組み合わせから構成され得る。
【0027】
他に定義されない限り、「がん」という用語は、C12ORF48遺伝子を過剰発現しているがんをさす。C12ORF48を過剰発現しているがんの例には、膵臓癌および前立腺癌、より具体的には、膵管腺癌および去勢抵抗性前立腺癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0028】
C12ORF48遺伝子またはC12ORF48タンパク質
本発明は、C12ORF48をコードする遺伝子が、非がん性組織と比較して、膵管腺癌(PDAC)において過剰発現されているという発見に一部基づく。C12ORF48のcDNAは3,189ヌクレオチド長である。C12ORF48の核酸配列およびポリペプチド配列は、SEQ ID NO:10および11にそれぞれ示される。付加的な配列データも、以下のアクセッション番号を介して入手可能である。
C12ORF48:NM_017915
【0029】
本発明の一局面によると、機能的等価物も「C12ORF48ポリペプチド」であると見なされる。本明細書において、タンパク質の「機能的等価物」とは、そのタンパク質と等価な生物学的活性を有するポリペプチドである。すなわち、C12ORF48タンパク質の生物学的能力を保持している任意のポリペプチドが、本発明において、そのような機能的等価物として使用され得る。そのような機能的等価物には、C12ORF48タンパク質の天然に存在するアミノ酸配列と比べて、1つまたは複数のアミノ酸が置換されているか、欠失しているか、付加されているか、または挿入されているものが含まれる。あるいは、ポリペプチドは、それぞれのタンパク質の配列に対して少なくとも約80%の相同性(配列同一性とも呼ばれる)、より好ましくは少なくとも約90%〜95%の相同性、さらに好ましくは96%〜99%の相同性を有するアミノ酸配列から構成されていてもよい。他の態様において、ポリペプチドは、C12ORF48遺伝子の天然に存在するヌクレオチド配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされていてもよい。
【0030】
本発明のポリペプチドは、それを作製するために使用された細胞もしくは宿主、または利用された精製法に依って、アミノ酸配列、分子量、等電点、糖鎖の有無、または形態における変動を有していてもよい。にもかかわらず、本発明のヒトC12ORF48タンパク質のものと等価な機能を有する限り、それは本発明の範囲内である。
【0031】
「ストリンジェントな(ハイブリダイゼーション)条件」という語句は、核酸分子が、その標的配列、典型的には核酸の複雑な混合物中にある標的配列とハイブリダイズするが、他の配列とは検出可能にハイブリダイズしない条件をさす。ストリンジェントな条件は、配列依存性であり、異なる状況下で変動する。より長い配列は、より高い温度で特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションに関する広範囲の案内は、Tijssen, Techniques in Biochemistry and Molecular Biology--Hybridization with Nucleic Probes, "Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays" (1993)に見出される。一般的に、ストリンジェントな条件は、規定のイオン強度およびpHにおける特定の配列の熱融解点(Tm)よりも約5〜10℃低く選択される。Tmとは、平衡状態で、標的に相補的なプローブの50%が、標的配列とハイブリダイズする(規定のイオン強度、pH、核濃度での)温度である(標的配列が過剰に存在するので、Tmでは、平衡時に、プローブの50%が占有される)。ホルムアミドなどの脱安定化剤の添加によっても、ストリンジェントな条件を達成することができる。選択的または特異的なハイブリダイゼーションのため、陽性シグナルは、バックグラウンドの少なくとも2倍、好ましくは、バックグラウンドハイブリダイゼーションの10倍である。例示的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件には、以下のものが含まれる:50%ホルムアミド、5×SSC、および1%SDS、42℃でのインキュベーション、または5×SSC、0.1%SDS、65℃でのインキュベーションと、50℃での0.2×SSCおよび1%SDSによる洗浄。
【0032】
本発明との関連において、ヒトC12ORF48タンパク質と機能的に等価なポリペプチドをコードするDNAを単離するためのハイブリダイゼーションの条件を、当業者はルーチンに選択することができる。例えば、「Rapid−hyb buffer」(Amersham LIFE SCIENCE)を使用して、68℃で30分以上プレハイブリダイゼーションを実施し、標識されたプローブを添加し、68℃で1時間以上加熱することにより、ハイブリダイゼーションを実施することができる。例えば、低ストリンジェントな条件においては、以下の洗浄工程を実施することができる。例示的な低ストリンジェントな条件には、42℃、2×SSC、0.1%SDS、好ましくは、50℃、2×SSC、0.1%SDSが含まれ得る。多くの場合、高ストリンジェンシー条件が好んで使用される。例示的な高ストリンジェンシー条件には、2×SSC、0.01%SDSで20分間、室温での3回の洗浄、次いで1×SSC、0.1%SDSで20分間、37℃での3回の洗浄、および1×SSC、0.1%SDSで20分間、50℃での2回の洗浄が含まれ得る。しかしながら、温度および塩濃度などの幾つかの因子が、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響を及ぼす場合があり、当業者は、必要なストリンジェンシーを達成するために適切に因子を選択することができる。
【0033】
一般的に、タンパク質内の1つ、2つ、または複数のアミノ酸の改変は、タンパク質の機能に影響を与えない。実際に、変異したタンパク質または改変されたタンパク質(すなわち、1つ、2つ、または幾つかのアミノ酸残基が、置換、欠失、挿入、および/または付加により改変されているアミノ酸配列から構成されたペプチド)は、元の生物学的活性を保持することが公知である(Mark et al., Proc Natl Acad Sci USA 81: 5662-6 (1984);Zoller and Smith, Nucleic Acids Res 10:6487-500 (1982);Dalbadie-McFarland et al., Proc Natl Acad Sci USA 79: 6409-13 (1982))。したがって、タンパク質の変化が類似の機能を有するタンパク質をもたらす場合、単一のアミノ酸、もしくは少ない比率のアミノ酸を変えるアミノ酸配列に対する個々の付加、欠失、挿入、もしくは置換、または「保存的改変」であるとみなされるものが、本発明との関連において許容可能であることを、当業者は認識するであろう。したがって、一態様において、本発明のペプチドは、C12ORF48配列内の1つ、2つ、またはそれ以上のアミノ酸が付加、挿入、欠失、および/または置換されているアミノ酸配列を有しうる。
【0034】
タンパク質の活性が維持される限り、アミノ酸変異の数は特に限定されない。しかしながら、アミノ酸配列の5%以下を変えることが一般的に好ましい。したがって、好ましい一態様において、そのような変異体において変異させるべきアミノ酸の数は、一般的には、30アミノ酸以下、好ましくは20アミノ酸以下、より好ましくは10アミノ酸以下、より好ましくは5または6アミノ酸以下、さらに好ましくは3または4アミノ酸以下である。
【0035】
変異させられるアミノ酸残基は、好ましくは、アミノ酸側鎖の特性が保存される異なるアミノ酸に変異させられる(保存的アミノ酸置換として公知のプロセス)。アミノ酸側鎖の特性の例は、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、および以下の官能基または特徴を共通に有する側鎖である:脂肪族側鎖(G、A、V、L、I、P);ヒドロキシル基を含有している側鎖(S、T、Y);硫黄原子を含有している側鎖(C、M);カルボン酸およびアミドを含有している側鎖(D、N、E、Q);塩基を含有している側鎖(R、K、H);ならびに芳香族を含有している側鎖(H、F、Y、W)。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換の表は、当技術分野で周知である。例えば、以下の8つの群は、各々、互いに保存的置換であるアミノ酸を含有している:
1)アラニン(A)、グリシン(G);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リシン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
7)セリン(S)、スレオニン(T);および
8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton, Proteins 1984を参照されたい)。
【0036】
そのような保存的に改変されたポリペプチドは、本C12ORF48タンパク質に含まれる。しかしながら、本発明は、これらに限定されず、C12ORF48タンパク質は、C12ORF48タンパク質の生物学的活性が少なくとも1つ保持される限り、非保存的改変を含む。さらに、改変されたタンパク質は、多型バリアント、種間相同体、およびこれらのタンパク質の対立遺伝子によってコードされるものを除外しない。
【0037】
さらに、本発明のC12ORF48遺伝子には、C12ORF48タンパク質のそのような機能的等価物をコードするポリヌクレオチドが包含される。C12ORF48タンパク質と機能的に等価なポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを単離するためには、ハイブリダイゼーションに加えて、タンパク質をコードするDNAの配列情報(SEQ ID NO:10)に基づき合成されたプライマーを使用した、遺伝子増幅法、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を利用することができる。ヒトC12ORF48遺伝子およびヒトC12ORF48タンパク質と機能的に等価なポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、それぞれ、通常、元のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列に対して高い相同性を有する。「高い相同性」とは、典型的には40%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%〜95%以上、さらに好ましくは96%〜99%以上の相同性をさす。特定のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの相同性は、「Wilbur and Lipman, Proc Natl Acad Sci USA 80: 726-30 (1983)」のアルゴリズムに従い、決定され得る。
【0038】
がんを診断する方法
C12ORF48の発現は、膵臓癌および前立腺癌、特に、膵管腺癌(PDAC)および去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)において特異的に上昇することが見出された(図1)。したがって、本明細書中で同定されるC12ORF48遺伝子、ならびにその転写産物および翻訳産物は、膵臓癌および前立腺癌、特に、膵管腺癌(PDAC)および去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)などのがんのマーカーとして診断的に利用可能であり、試料中のC12ORF48の発現を測定することにより、それらのがんを診断することが可能である。より具体的には、本発明は、対象におけるC12ORF48の発現レベルを決定することにより、がん、より具体的には、PDACまたはCRPCの存在、またはそれらを発症する素因を検出、診断、および/または決定する方法を提供する。本発明との関連において、「がん」という用語は、PDACおよびCRPCを含む、本発明の方法によって診断可能な膵臓癌および前立腺癌を示す。
【0039】
本発明によれば、対象の状態を検査するための中間結果を提供することができる。そのような中間結果は、医師、看護師、またはその他の実務者が、対象が疾患に罹患していることを決定するのを補助するため、付加的な情報と組み合わせられてもよい。すなわち、本発明は、がんを検査するための診断マーカーC12ORF48を提供する。
【0040】
あるいは、本発明は、対象由来の膵組織試料または前立腺組織試料におけるがん細胞を検出または同定する方法を提供し、該方法は、遺伝子の正常対照レベルと比較した発現レベルの増加が、該組織におけるがん細胞の存在または疑いを示す、対象由来の生物学的試料におけるC12ORF48遺伝子の発現レベルを決定する工程を含む。
【0041】
そのような結果は、対象が疾患に罹患していると診断する上で、医師、看護師、またはその他の医療実務者を補助するため、付加的な情報と組み合わせられてもよい。換言すると、本発明は、対象が疾患に罹患していると診断するために有用な情報を、医師に提供することができる。例えば、本発明によれば、対象から入手された組織におけるがん細胞の存在に関して疑いがある場合、組織病理学、公知の血中腫瘍マーカーのレベル、および対象の臨床経過等を含む、疾患の異なる局面に加えて、C12ORF48遺伝子の発現レベルを考慮することにより、臨床的な決定に到達することができる。例えば、幾つかの周知の血中診断用膵臓腫瘍マーカーは、BFP、CA19−9、CA72−4、CA125、CA130、CEA、DUPAN−2、IAP、KMO−1、NCC−ST−439、NSE、sICAM−1、SLX、Span−1、STN、TPA、YH−206、およびエラスターゼ1である。あるいは、BFP、IAP、αマクログロブリン、PAP、PIPC、PSAγ−Sm、およびTPAなどの血中診断用前立腺腫瘍マーカーも、周知である。すなわち、本発明のこの特定の態様において、遺伝子発現分析の結果は、対象の疾患状態のさらなる診断のための中間結果として役立つ。
【0042】
本発明にとって特に関心対象であるのは、以下の[1]〜[10]の方法である:
[1]対象由来の生物学的試料におけるC12ORF48の発現レベルを決定する工程を含む、対象におけるがんを検出または診断する方法であって、遺伝子の正常対照レベルと比較したレベルの増加が、対象ががんに罹患しているか、またはがんを発症するリスクを有することを示す、方法;
[2]発現レベルが正常対照レベルよりも少なくとも10%大きい、[1]に記載の方法;
[3]発現レベルが、
(a)C12ORF48の配列を含むmRNAを検出する方法、
(b)C12ORF48のアミノ酸配列を含むタンパク質を検出する方法、および
(c)C12ORF48のアミノ酸配列を含むタンパク質の生物学的活性を検出する方法
の中から選択される方法によって検出される、[1]に記載の方法;
[4]がんが膵臓癌または前立腺癌である、[1]に記載の方法;
[5]膵臓癌が膵管腺癌(PDAC)である、[4]に記載の方法;
[6]前立腺癌が去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)である、[4]に記載の方法;
[7]発現レベルが、遺伝子の遺伝子転写物に対するプローブのハイブリダイゼーションを検出することにより決定される、[3]に記載の方法;
[8]発現レベルが、遺伝子によってコードされるタンパク質に対する抗体の結合を、該遺伝子の発現レベルとして検出することにより決定される、[3]に記載の方法;
[9]生物学的試料が生検材料、痰、または血液を含む、[1]に記載の方法;
[10]対象由来の生物学的試料が上皮細胞を含む、[1]に記載の方法;
[11]対象由来の生物学的試料ががん細胞を含む、[1]に記載の方法;ならびに
[12]対象由来の生物学的試料ががん性上皮細胞を含む、[1]に記載の方法。
【0043】
がんを診断する本発明の方法を、以下に、より詳細に説明する。
【0044】
本方法によって診断される対象は、好ましくは、哺乳動物である。例示的な哺乳動物には、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、およびウシが含まれるが、これらに限定されない。
【0045】
診断を実施するためには、診断すべき対象から生物学的試料を収集することが好ましい。C12ORF48の目的の転写産物または翻訳産物を含む限り、任意の生物学的材料を、決定のための生物学的試料として使用することができる。生物学的試料には、がんを診断することが望まれるかまたはがんに罹患していることが疑われる体組織、ならびに生検材料、血液、痰、および尿などの体液が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、生物学的試料は、上皮細胞、より好ましくは、がん性上皮細胞、またはがん性であることが疑われる組織に由来する上皮細胞を含む細胞集団を含有している。さらに、必要であれば、得られた体組織および体液から細胞を精製し、次いで、それを生物学的試料として使用してもよい。
【0046】
本発明によると、対象由来の生物学的試料におけるC12ORF48の発現レベルが決定される。当技術分野で公知の方法を使用して、転写(核酸)産物レベルで、発現レベルを決定することができる。例えば、C12ORF48のmRNAを、ハイブリダイゼーション法(例えば、ノーザンハイブリダイゼーション)によってプローブを使用して定量することができる。検出は、チップ上またはアレイ上で実施されてもよい。アレイの使用は、C12ORF48を含む複数の遺伝子(例えば、様々ながんに特異的な遺伝子)の発現レベルを検出するために好ましい。当業者は、C12ORF48の配列情報を利用して、そのようなプローブを調製することができる。例えば、C12ORF48のcDNAをプローブとして使用することができる。必要であれば、色素、蛍光、および同位体などの好適な標識によりプローブを標識し、ハイブリダイズした標識の強度として、遺伝子の発現レベルを検出してもよい。
【0047】
さらに、増幅に基づく検出法(例えば、RT−PCR)により、プライマーを使用して、C12ORF48の転写産物を定量することもできる。そのようなプライマーも、利用可能な遺伝子の配列情報に基づき調製され得る。例えば、実施例で使用されるプライマー(SEQ ID NO:3および4)が、RT−PCRまたはノーザンブロットによる検出のために利用され得るが、本発明はそれらに限定されない。
【0048】
特に、本発明の方法のために使用されるプローブまたはプライマーは、ストリンジェントな条件、中程度にストリンジェントな条件、または低ストリンジェントな条件の下で、C12ORF48のmRNAとハイブリダイズする。本明細書で使用される場合、「ストリンジェントな(ハイブリダイゼーション)条件」という語句は、プローブまたはプライマーが、その標的配列とハイブリダイズするが、他の配列とはハイブリダイズしない条件をさす。ストリンジェントな条件は、配列依存性であり、異なる状況下では異なる。より長い配列の特異的なハイブリダイゼーションは、より短い配列よりも高い温度で観察される。一般的に、ストリンジェントな条件の温度は、規定のイオン強度およびpHでの特定の配列の熱融解点(Tm)よりも約5℃低く選択される。Tmとは、平衡時に、標的配列に相補的なプローブの50%が標的配列とハイブリダイズする(規定のイオン強度、pH、および核酸濃度における)温度である。概して標的配列が過剰に存在するので、Tmでは、平衡時に、プローブの50%が占有される。典型的には、ストリンジェントな条件は、塩濃度が、pH7.0〜8.3で、約1.0M未満のナトリウムイオン、典型的には、約0.01〜1.0Mのナトリウムイオン(またはその他の塩)であり、温度が、短いプローブまたはプライマー(例えば、10〜50ヌクレオチド)の場合には少なくとも約30℃であり、より長いプローブまたはプライマーの場合には少なくとも約60℃であるものである。ホルムアミドなどの脱安定化剤の添加によっても、ストリンジェントな条件を達成することができる。
【0049】
あるいは、本発明の診断のために、翻訳産物を検出することもできる。例えば、C12ORF48タンパク質の量を決定することができる。翻訳産物として該タンパク質の量を決定する方法には、該タンパク質を特異的に認識する抗体を使用するイムノアッセイ法が含まれる。抗体はモノクローナルであってもよいしまたはポリクローナルであってもよい。さらに、断片がC12ORF48タンパク質との結合能を保持している限り、抗体の任意の断片または改変(例えば、キメラ抗体、scFv、Fab、F(ab’)2、Fv等)を、検出のために使用することができる。タンパク質の検出のためのこれらの種類の抗体を調製する方法は、当技術分野で周知であり、本発明においては、そのような抗体およびそれらの等価物を調製するために、任意の方法を利用することができる。
【0050】
翻訳産物に基づきC12ORF48遺伝子の発現レベルを検出する別の方法として、C12ORF48タンパク質に対する抗体を使用した免疫組織化学分析を介して染色の強度を観察することができる。すなわち、強い染色の観察は、増加したタンパク質の存在を示し、同時に、C12ORF48遺伝子の高い発現レベルを示す。
【0051】
さらに、診断の正確性を改善するために、C12ORF48遺伝子の発現レベルに加えて、他のがん関連遺伝子、例えば、がんにおいて異なって発現されることが公知の遺伝子の発現レベルも決定することができる。
【0052】
生物学的試料におけるC12ORF48遺伝子を含むがんマーカー遺伝子の発現レベルは、対応するがんマーカー遺伝子の対照レベルから、例えば、10%、25%、もしくは50%増加している場合;または1.1倍超、1.5倍超、2.0倍超、5.0倍超、10.0倍超、もしくはそれ以上に増加している場合、増加していると見なされ得る。
【0053】
疾患状態(がん性であるか非がん性であるか)が既知である対象から以前に収集され保管されていた試料を使用することによって、試験生物学的試料と同時に対照レベルを決定することができる。あるいは、疾患状態が既知である対象由来の試料において、以前に決定されたC12ORF48遺伝子の発現レベルを分析することによって得られた結果に基づき、統計的方法によって対照レベルを決定してもよい。さらに、対照レベルは、以前に試験された細胞からの発現パターンのデータベースであってもよい。さらに、本発明の一局面によると、複数の参照試料から決定された複数の対照レベルと、生物学的試料におけるC12ORF48遺伝子の発現レベルを比較してもよい。患者由来の生物学的試料のものと類似した組織型に由来する参照試料から決定された対照レベルを使用することが好ましい。さらに、疾患状態が既知である集団におけるC12ORF48遺伝子の発現レベルの標準値を使用することが好ましい。標準値は、当技術分野で公知の任意の方法によって入手され得る。例えば、平均値±2S.D.または平均値±3S.D.の範囲を、標準値として使用することができる。
【0054】
本発明との関連において、非がん性であることが既知の生物学的試料から決定された対照レベルは、「正常対照レベル」と呼ばれる。他方、対照レベルががん性生物学的試料から決定される場合、それは「がん性対照レベル」と呼ばれる。
【0055】
C12ORF48遺伝子の発現レベルが正常対照レベルと比較して増加しているか、またはがん性対照レベルと類似している場合、対象は、がんに罹患しているかまたはがんを発症するリスクを有すると診断され得る。さらに、複数のがん関連遺伝子の発現レベルが比較される場合、試料とがん性である参照との間の遺伝子発現パターンの類似性は、対象が、がんに罹患しているかまたはがんを発症するリスクを有することを示す。
【0056】
試験生物学的試料の発現レベルと対照レベルとの間の差は、細胞のがん性状態または非がん性状態によって発現レベルが異ならないことが既知の対照核酸、例えば、ハウスキーピング遺伝子の発現レベルに対して標準化され得る。例示的な対照遺伝子には、β−アクチン、グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ、およびリボソームタンパク質P1が含まれるが、これらに限定されない。
【0057】
がんを診断するためのキット
本発明は、がんの予後の評価および/またはがん治療の効力のモニタリングにおいても有用であり得る、がんを診断するためのキットを提供する。好ましくは、がんは膵臓癌または前立腺癌である。より具体的には、キットは、好ましくは、以下の群から選択され得る、対象由来の生物学的試料におけるC12ORF48遺伝子の発現を検出するための試薬を少なくとも1つ含む:
(a)C12ORF48遺伝子のmRNAを検出するための試薬;
(b)C12ORF48タンパク質を検出するための試薬;および
(c)C12ORF48タンパク質の生物学的活性を検出するための試薬。
【0058】
C12ORF48遺伝子のmRNAを検出するための好適な試薬には、C12ORF48のmRNAの一部に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドなどの、C12ORF48のmRNAに特異的に結合するかまたはC12ORF48のmRNAを特異的に同定する核酸が含まれる。これらの種類のオリゴヌクレオチドの例は、C12ORF48のmRNAに特異的なプライマーおよびプローブである。当技術分野で周知の方法に基づき、これらの種類のオリゴヌクレオチドを調製することができる。必要であれば、C12ORF48のmRNAを検出するための試薬を、固体マトリックス上に固定化してもよい。さらに、C12ORF48のmRNAを検出するための複数の試薬が、キットに含まれていてもよい。
【0059】
他方、C12ORF48タンパク質を検出するための好適な試薬には、C12ORF48タンパク質に対する抗体が含まれる。抗体はモノクローナルであってもよいしまたはポリクローナルであってもよい。さらに、断片がC12ORF48タンパク質との結合能を保持している限り、抗体の任意の断片または改変(例えば、キメラ抗体、scFv、Fab、F(ab’)2、Fv等)を、試薬として使用することができる。タンパク質の検出のためのこれらの種類の抗体を調製する方法は、当技術分野で周知であり、本発明においては、そのような抗体およびそれらの等価物を調製するために、任意の方法を利用することができる。さらに、直接結合または間接標識技術を介して、シグナル生成分子によって抗体を標識してもよい。標識、および抗体を標識して抗体とその標的との結合を検出する方法は、当技術分野で周知であり、任意の標識および方法を本発明のために利用することができる。さらに、C12ORF48タンパク質を検出するための複数の試薬が、キットに含まれていてもよい。
【0060】
さらに、生物学的試料において、例えば、発現されたC12ORF48タンパク質による細胞増殖活性を測定することによって、生物学的活性を決定してもよい。例えば、細胞を、対象由来の生物学的試料の存在下で培養し、次いで、増殖のスピードを検出するか、または細胞周期もしくはコロニー形成能を測定することによって、生物学的試料の細胞増殖活性を決定することができる。必要であれば、C12ORF48のmRNAを検出するための試薬を、固体マトリックス上に固定化してもよい。さらに、C12ORF48タンパク質の生物学的活性を検出するための複数の試薬が、キットに含まれていてもよい。
【0061】
キットは、前記試薬を複数含有していてもよい。さらに、キットは、C12ORF48遺伝子に対するプローブまたはC12ORF48タンパク質に対する抗体を結合させるための固体マトリックスおよび試薬、細胞を培養するための培地および容器、陽性および陰性の対照試薬、ならびにC12ORF48タンパク質に対する抗体を検出するための二次抗体を含んでいてもよい。例えば、がんに罹患しているかまたは罹患していない対象から入手された組織試料が、有用な対照試薬として役立ち得る。本発明のキットは、緩衝液、希釈剤、フィルター、針、注射器、および使用のための説明を含む添付文書(例えば、文書、テープ、CD−ROM等)を含む、商業的見地および使用者の見地から望ましいその他の材料をさらに含んでいてもよい。これらの試薬等は、ラベルを有する容器に保持され得る。好適な容器には、ボトル、バイアル、および試験管が含まれる。容器は、ガラス、またはプラスチックなどの多様な材料から形成されていてよい。
【0062】
本発明の一態様として、試薬がC12ORF48のmRNAに対するプローブである場合、少なくとも1つの検出部位が形成されるよう、該試薬を多孔質ストリップなどの固体マトリックスの上に固定化することができる。多孔質ストリップの測定領域または検出領域は、核酸(プローブ)を各々が含有している複数の部位を含んでいてもよい。テストストリップは、陰性対照および/または陽性対照のための部位も含有していてもよい。あるいは、対照部位は、テストストリップから分離されたストリップの上に位置していてもよい。任意で、異なる検出部位は、固定化された核酸を、異なる量、含有していてもよい。すなわち、第1の検出部位に、より高い量を含有し、その後の部位に、より少ない量を含有していてもよい。試験試料の添加時、検出可能シグナルを示す部位の数が、試料中に存在するC12ORF48のmRNAの量の定量的な指標を提供する。検出部位は、任意の適切に検出可能な形で配置され得、典型的には、テストストリップ幅にわたるバーまたはドットの形である。
【0063】
本発明のキットは、さらに、陽性対照試料またはC12ORF48標準試料を含んでいてもよい。C12ORF48陽性試料を収集することにより本発明の陽性対照試料を調製してもよく、次いで、これらのC12ORF48レベルをアッセイする。あるいは、陽性試料またはC12ORF48標準物が形成されるよう、精製されたC12ORF48タンパク質またはC12ORF48ポリヌクレオチドを、C12ORF48を発現していない細胞に添加することもできる。本発明において、精製されたC12ORF48は、組換えタンパク質であり得る。陽性対照試料のC12ORF48レベルは、例えば、カットオフ値より大きい。
【0064】
抗がん化合物のスクリーニング
本発明との関連において、本スクリーニング方法により同定される剤には、任意の化合物、または幾つかの化合物を含む組成物が含まれる。さらに、本発明のスクリーニング方法によって細胞またはタンパク質に曝露される試験剤は、単一の化合物であっても、または化合物の組み合わせであってもよい。化合物の組み合わせを前記方法において使用する場合には、化合物を逐次的に接触させてもよいし、または同時に接触させてもよい。
【0065】
任意の試験剤、例えば、細胞抽出物、細胞培養上清、発酵微生物産物、海洋生物抽出物、植物抽出物、精製されたタンパク質または粗タンパク質、ペプチド、非ペプチド化合物、合成微小分子化合物(アンチセンスRNA、siRNA、リボザイム、アプタマー等などの核酸構築物を含む)、および天然化合物を、本発明のスクリーニング方法において使用することができる。本発明の試験剤は、(1)生物学的ライブラリ、(2)空間的にアドレス可能なパラレルな固相または液相のライブラリ、(3)デコンボリューションを必要とする合成ライブラリ法、(4)「一ビーズ一化合物」ライブラリ法、および(5)アフィニティクロマトグラフィ選択を使用する合成ライブラリ法を含む、当技術分野で公知のコンビナトリアルライブラリ法の多数のアプローチのいずれかを使用して入手され得る。アフィニティクロマトグラフィ選択を使用する生物学的ライブラリ法はペプチドライブラリに限定されるが、他の4つのアプローチは化合物のペプチドライブラリ、非ペプチドオリゴマーライブラリ、または低分子ライブラリに適用可能である(Lam, Anticancer Drug Des 1997, 12: 145-67)。分子ライブラリの合成法の例は、当技術分野で見い出され得る(DeWitt et al., Proc Natl Acad Sci USA 1993, 90: 6909-13;Erb et al., Proc Natl Acad Sci USA 1994, 91: 11422-6;Zuckermann et al., J Med Chem 37: 2678-85, 1994;Cho et al., Science 1993, 261: 1303-5;Carell et al., Angew Chem Int Ed Engl 1994, 33: 2059;Carell et al., Angew Chem Int Ed Engl 1994, 33: 2061;Gallop et al., J Med Chem 1994, 37: 1233-51)。化合物のライブラリは、溶液中(Houghten, Bio/Techniques 1992, 13: 412-21を参照されたい)、またはビーズ上(Lam, Nature 1991, 354: 82-4)、チップ上(Fodor, Nature 1993, 364: 555-6)、細菌上(米国特許第5,223,409号)、胞子上(米国特許第5,571,698号;第5,403,484号、および第5,223,409号)、プラスミド上(Cull et al., Proc Natl Acad Sci USA 1992, 89: 1865-9)、もしくはファージ上(Scott and Smith, Science 1990, 249: 386-90;Devlin, Science 1990, 249: 404-6;Cwirla et al., Proc Natl Acad Sci USA 1990, 87: 6378-82;Felici, J Mol Biol 1991, 222: 301-10;米国特許出願第2002103360号)に提示され得る。
【0066】
本スクリーニング方法のいずれかによってスクリーニングされた化合物の構造の一部が、付加、欠失、および/または置換により変換された化合物は、本発明のスクリーニング方法によって入手される剤に含まれる。
【0067】
さらに、スクリーニングされた試験剤がタンパク質である場合、タンパク質をコードするDNAを入手するためには、タンパク質の全アミノ酸配列を決定して、タンパク質をコードする核酸配列を推定することもできるし、または入手されたタンパク質の部分アミノ酸配列を分析して、その配列に基づきオリゴDNAをプローブとして調製し、そのプローブを用いてcDNAライブラリをスクリーニングして、タンパク質をコードするDNAを入手することもできる。入手されたDNAは、がんを治療または予防するための候補である試験剤の調製における有用性に関して確認される。
【0068】
本明細書に記載されるスクリーニングにおいて有用な試験剤は、C12ORF48タンパク質に特異的に結合する抗体であってもよく、またはインビボで元のタンパク質の生物学的活性を欠くその部分ペプチドに特異的に結合する抗体であってもよい。
【0069】
試験剤ライブラリの構築は当技術分野で周知であるが、本スクリーニング方法のための試験剤の同定およびそのような剤のライブラリの構築に関するさらなる指針を以下に提供する。
【0070】
(i)分子モデリング
試験剤ライブラリの構築は、求められる特性を有することが既知の化合物の分子構造、および/またはC12ORF48の分子構造の知識により容易になる。さらなる評価のために好適な試験剤を予備スクリーニングするための1つのアプローチは、試験剤とその標的との間の相互作用のコンピュータモデリングを利用する。
【0071】
コンピュータモデリング技術により、選択された分子の三次元原子構造の可視化、およびその分子と相互作用する新たな化合物の合理的設計が可能になる。三次元構築物は、典型的には、選択された分子のX線結晶学的分析またはNMRイメージングからのデータに依存する。分子動力学は力場データを必要とする。コンピュータグラフィックスシステムは、新たな化合物が標的分子にどのように結合するかを予測可能にし、結合特異性を完全にするための化合物および標的分子の構造の実験的操作を可能にする。一方または両方に軽微な変化が加えられた場合に、分子−化合物相互作用がどのようになるかを予測するには、分子力学ソフトウェアおよび計算集約型コンピュータが必要とされ、それらは、通常、分子設計プログラムと使用者との間のユーザーフレンドリーなメニュー方式のインターフェースと連結される。
【0072】
上記に概説された分子モデリングシステムの例には、CHARMmプログラムおよびQUANTAプログラム、Polygen Corporation,Waltham,Massが含まれる。CHARMmは、エネルギー最小化および分子動力学の機能を実行する。QUANTAは、分子構造の構築、グラフィックモデリング、および分析を実行する。QUANTAは、相互作用的構築、改変、可視化、および分子の互いの挙動の分析を可能にする。
【0073】
特定のタンパク質と相互作用する薬物のコンピュータモデリングを主題として、多数の論文が発表されており、その例には、Rotivinen et al. Acta Pharmaceutica Fennica 1988, 97: 159-66;Ripka, New Scientist 1988, 54-8;McKinlay & Rossmann, Annu Rev Pharmacol Toxiciol 1989, 29: 111-22;Perry & Davies, Prog Clin Biol Res 1989, 291: 189-93;Lewis & Dean, Proc R Soc Lond 1989, 236: 125-40, 141-62;および核酸成分のモデル受容体に関するAskew et al., J Am Chem Soc 1989, 111: 1082-90が含まれる。
【0074】
化学物質をスクリーニングし図示するその他のコンピュータプログラムは、BioDesign, Inc.(Pasadena,Calif.)、Allelix, Inc.(Mississauga,Ontario,Canada)、およびHypercube, Inc.(Cambridge,Ontario)などの会社から入手可能である。例えば、DesJarlais et al., J Med Chem 1988, 31: 722-9;Meng et al., J Computer Chem 1992, 13: 505-24;Meng et al., Proteins 1993, 17: 266-78;Shoichet et al., Science 1993, 259: 1445-50を参照されたい。
【0075】
推定上の阻害剤が同定されたならば、以下に詳述されるように、同定された推定上の阻害剤の化学構造に基づき、多数のバリアントを構築するため、コンビナトリアルケミストリー技術を利用することができる。その結果得られた推定上の阻害剤または「試験剤」のライブラリは、がん、特に膵臓癌および前立腺癌などの治療および/もしくは予防、ならびに/またはそれらの術後再発の予防に適した試験剤を同定するため、本発明の方法を使用してスクリーニングされ得る。
【0076】
(ii)コンビナトリアル化学合成
試験剤のコンビナトリアルライブラリは、既知の阻害剤に存在しているコア構造の知識を含む、合理的薬物設計プログラムの一部として作製され得る。このアプローチにより、ハイスループットスクリーニングを容易にする適度のサイズにライブラリを維持することが可能になる。あるいは、ライブラリを構成する分子ファミリーの全順列を簡便に合成することにより、単純な、特に短い、重合体分子ライブラリを構築することもできる。この後者のアプローチの一例は、6アミノ酸長の全ペプチドのライブラリである。そのようなペプチドライブラリは、6アミノ酸配列のあらゆる順列を含み得る。この種類のライブラリは、線形コンビナトリアルケミカルライブラリと称される。
【0077】
コンビナトリアルケミカルライブラリの調製は、当業者に周知であり、化学合成または生物学的合成のいずれかにより作製され得る。コンビナトリアルケミカルライブラリには、ペプチドライブラリ(例えば、米国特許第5,010,175号;Furka, Int J Pept Prot Res 1991, 37: 487-93;Houghten et al., Nature 1991, 354: 84-6を参照されたい)が含まれるが、これらに限定されない。化学的多様性ライブラリを作製するためのその他の化学を使用することもできる。そのような化学には、ペプチド(例えば、PCT公報WO91/19735)、コードされたペプチド(例えば、WO93/20242)、ランダムバイオオリゴマー(例えば、WO92/00091)、ベンゾジアゼピン(例えば、米国特許第5,288,514号)、ヒダントイン、ベンゾジアゼピン、およびジペプチドなどのダイバーソマー(diversomers)(DeWitt et al., Proc Natl Acad Sci USA 1993, 90: 6909-13)、ビニロガス(vinylogous)ポリペプチド(Hagihara et al., J Amer Chem Soc 1992, 114: 6568)、グルコース足場を有する非ペプチド性ペプチド模倣体(Hirschmann et al., J Amer Chem Soc 1992, 114: 9217-8)、低分子化合物ライブラリの類似有機合成(Chen et al., J. Amer Chem Soc 1994, 116: 2661)、オリゴカルバメート(Cho et al., Science 1993, 261: 1303)、および/またはペプチジルホスホネート(Campbell et al., J Org Chem 1994, 59: 658)、核酸ライブラリ(Ausubel, Current Protocols in Molecular Biology 1995 supplement;Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 1989, Cold Spring Harbor Laboratory, New York, USAを参照されたい)、ペプチド核酸ライブラリ(例えば、米国特許第5,539,083号を参照されたい)、抗体ライブラリ(例えば、Vaughan et al., Nature Biotechnology 1996, 14(3): 309-14およびPCT/US96/10287を参照されたい)、炭水化物ライブラリ(例えば、Liang et al., Science 1996, 274: 1520-22;米国特許第5,593,853号を参照されたい)、ならびに有機低分子ライブラリ(例えば、ベンゾジアゼピン、Gordon EM. Curr Opin Biotechnol. 1995 Dec 1; 6(6): 624-31.;イソプレノイド、米国特許第5,569,588号;チアゾリジノンおよびメタチアザノン、米国特許第5,549,974号;ピロリジン、米国特許第5,525,735号および第5,519,134号;モルホリノ化合物、米国特許第5,506,337号;ベンゾジアゼピン、米国特許第5,288,514号等を参照されたい)が含まれるが、これらに限定されない。
【0078】
コンビナトリアルライブラリの調製のための装置は市販されている(例えば、357 MPS、390 MPS(Advanced Chem Tech, Louisville KY)、Symphony(Rainin, Woburn, MA)、433A(Applied Biosystems, Foster City, CA)、9050 Plus(Millipore, Bedford, MA)を参照されたい)。さらに、コンビナトリアルライブラリ自体も多数市販されている(例えば、ComGenex, Princeton, N.J.、Tripos, Inc., St. Louis, MO、3D Pharmaceuticals, Exton, PA、Martek Biosciences, Columbia, MD等を参照されたい)。
【0079】
(iii)その他の候補
もう1つのアプローチは、ライブラリを作製するために組換えバクテリオファージを使用する。「ファージ法」(Scott & Smith, Science 1990, 249: 386-90;Cwirla et al., Proc Natl Acad Sci USA 1990, 87: 6378-82;Devlin et al., Science 1990, 249: 404-6)を使用すれば、極めて大きいライブラリを構築することができる(例えば、106〜108個の化学物質)。第2のアプローチは、主として化学的な方法を使用し、Geysenの方法(Geysen et al., Molecular Immunology 1986, 23: 709-15;Geysen et al., J Immunologic Method 1987, 102: 259-74);およびFodorらの方法(Science 1991, 251: 767-73)がその例である。Furkaら(14th International Congress of Biochemistry 1988, Volume #5, Abstract FR: 013; Furka, Int J Peptide Protein Res 1991, 37: 487-93)、Houghten(米国特許第4,631,211号)、およびRutterら(米国特許第5,010,175号)は、アゴニストまたはアンタゴニストとして試験され得るペプチドの混合物を作製する方法を記載している。
【0080】
アプタマーは、特定の分子標的に強固に結合する核酸から構成された巨大分子である。TuerkおよびGold(Science. 249:505-510 (1990))は、アプタマーの選択のためのSELEX(Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment)法を開示している。SELEX法においては、核酸分子の大きなライブラリ(例えば、1015個の異なる分子)をスクリーニングに使用することができる。
【0081】
C12ORF48と結合する化合物のスクリーニング
本発明との関連において、正常器官では発現が見られないにもかかわらず、膵臓癌および前立腺癌においてC12ORF48の過剰発現が検出された(図1)。したがって、C12ORF48遺伝子、およびその遺伝子によりコードされるタンパク質を使用して、C12ORF48と結合する化合物をスクリーニングする方法を、本発明は提供する。がんにおけるC12ORF48の発現のため、C12ORF48と結合する化合物は、がん細胞の増殖を抑制することが期待され、したがって、がんを治療または予防するのに有用である。したがって、本発明は、C12ORF48ポリペプチドを使用して、がん細胞の増殖を抑制する化合物をスクリーニングする方法、およびがんを治療または予防するための化合物をスクリーニングする方法を提供し、ここで、該がんは膵臓癌細胞または前立腺癌細胞である。このスクリーニング方法の1つの特定の態様は、以下の工程を含む:
(a)試験化合物を、C12ORF48のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドと接触させる工程;
(b)前記ポリペプチドと試験化合物との間の結合活性を検出する工程;および
(c)前記ポリペプチドと結合する試験化合物を選択する工程。
【0082】
本発明との関連において、治療効果は、試験剤または試験化合物とC12ORF48タンパク質との結合レベルと相関し得る。例えば、試験剤または試験化合物がC12ORF48タンパク質と結合する場合には、その試験剤または試験化合物を、必要な治療効果を有する候補剤または候補化合物として同定または選択することができる。あるいは、試験剤または試験化合物がC12ORF48タンパク質と結合しない場合には、その試験剤または試験化合物を、有意な治療効果を有しない剤または化合物として同定することができる。
【0083】
本発明の方法を、以下に、より詳細に説明する。
【0084】
スクリーニングに使用されるC12ORF48ポリペプチドは、組換えポリペプチドもしくは自然界由来のタンパク質、またはそれらの部分ペプチドであり得る。試験化合物と接触させられるポリペプチドは、例えば、精製されたポリペプチド、可溶性タンパク質、担体と結合した形態、または他のポリペプチドと融合した融合タンパク質であり得る。
【0085】
タンパク質、例えば、C12ORF48ポリペプチドに結合するタンパク質を、C12ORF48ポリペプチドを使用してスクリーニングする方法として、当業者に周知の多くの方法を使用することができる。そのようなスクリーニングは、例えば、免疫沈降法により、特に、以下のように実施され得る。C12ORF48ポリペプチドをコードする遺伝子を、pSV2neo、pcDNA I、pcDNA3.1、pCAGGS、およびpCD8などの外来遺伝子の発現ベクターに挿入することにより、宿主(例えば、動物)細胞等において発現させる。
【0086】
発現に使用されるプロモーターは、一般に使用され得る任意のプロモーターであってよく、例えば、SV40初期プロモーター(Rigby in Williamson (ed.), Genetic Engineering, vol. 3. Academic Press, London, 83-141 (1982))、EF−αプロモーター(Kim et al., Gene 91: 217-23 (1990))、CAGプロモーター(Niwa et al., Gene 108: 193 (1991))、RSV LTRプロモーター(Cullen, Methods in Enzymology 152: 684-704 (1987))、SRαプロモーター(Takebe et al., Mol Cell Biol 8: 466 (1988))、CMV前初期プロモーター(Seed and Aruffo, Proc Natl Acad Sci USA 84: 3365-9 (1987))、SV40後期プロモーター(Gheysen and Fiers, J Mol Appl Genet 1: 385-94 (1982))、アデノウイルス後期プロモーター(Kaufman et al., Mol Cell Biol 9: 946 (1989))、HSV TKプロモーター等を含み得る。
【0087】
外来遺伝子を発現させるための宿主細胞への遺伝子の導入は、任意の方法、例えば、エレクトロポレーション法(Chu et al., Nucleic Acids Res 15: 1311-26 (1987))、リン酸カルシウム法(Chen and Okayama, Mol Cell Biol 7: 2745-52 (1987))、DEAEデキストラン法(Lopata et al., Nucleic Acids Res 12: 5707-17 (1984);Sussman and Milman, Mol Cell Biol 4: 1641-3 (1984))、リポフェクチン法(Derijard B., Cell 76: 1025-37 (1994);Lamb et al., Nature Genetics 5: 22-30 (1993):Rabindran et al., Science 259: 230-4 (1993))等に従い実施され得る。
【0088】
ポリペプチドのN末端またはC末端に、特異性が明らかなモノクローナル抗体のエピトープを導入することにより、モノクローナル抗体の認識部位(エピトープ)を含む融合タンパク質として、C12ORF48遺伝子によりコードされるポリペプチドを発現させることができる。市販のエピトープ−抗体システムを使用することができる(Experimental Medicine 13: 85-90 (1995))。マルチクローニング部位の使用により、例えば、β−ガラクトシダーゼ、マルトース結合タンパク質、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)等との融合タンパク質を発現し得るベクターが、市販されている。また、融合によりC12ORF48ポリペプチドの特性が変化しないよう、数個〜十数個のアミノ酸からなる小さなエピトープのみを導入することにより調製された融合タンパク質も報告されている。ポリヒスチジン(His−タグ)、インフルエンザ凝集HA、ヒトc−myc、FLAG、水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質(VSV−GP)、T7遺伝子10タンパク質(T7−タグ)、ヒト単純ヘルペスウイルス糖タンパク質(HSV−タグ)、E−タグ(モノクローナルファージ上のエピトープ)などのエピトープと、これらを認識するモノクローナル抗体とを、C12ORF48ポリペプチドに結合するタンパク質をスクリーニングするためのエピトープ−抗体システムとして使用することができる(Experimental Medicine 13: 85-90 (1995))。
【0089】
免疫沈降においては、適切な界面活性剤を使用して調製された細胞溶解物に、これらの抗体を添加することにより、免疫複合体が形成される。免疫複合体は、C12ORF48ポリペプチド、該ポリペプチドとの結合能を有するポリペプチド、および抗体からなる。免疫沈降は、上記エピトープに対する抗体を使用する以外に、C12ORF48ポリペプチドに対する、上記のように調製され得る抗体を使用して実施されてもよい。抗体がマウスIgG抗体である場合、例えば、プロテインAセファロースまたはプロテインGセファロースにより、免疫複合体を沈降させることができる。C12ORF48遺伝子によりコードされるポリペプチドが、GSTなどのエピトープとの融合タンパク質として調製される場合には、グルタチオン−セファロース4Bなどのこれらのエピトープと特異的に結合する物質を使用して、C12ORF48ポリペプチドに対する抗体を使用する場合と同様に免疫複合体を形成させることができる。
【0090】
免疫沈降は、例えば、文献中の方法に従ってまたは準じて実施され得る(Harlow and Lane, Antibodies, 511-52, Cold Spring Harbor Laboratory publications, New York (1988))。
【0091】
免疫沈降したタンパク質の分析には、SDS−PAGEが一般に使用され、結合したタンパク質は、適切な濃度を有するゲルを使用して、タンパク質の分子量により分析され得る。C12ORF48ポリペプチドに結合したタンパク質は、クーマシー染色または銀染色などの一般の染色法によって検出することが困難であるため、細胞を、放射性同位体35S−メチオニンまたは35S−システインを含有している培養培地中で培養し、細胞内のタンパク質を標識し、タンパク質を検出することにより、タンパク質の検出感度を改善することができる。タンパク質の分子量が明らかである場合には、標的タンパク質をSDS−ポリアクリルアミドゲルから直接精製し、その配列を決定することができる。
【0092】
C12ORF48ポリペプチドに結合するタンパク質を、該ポリペプチドを使用してスクリーニングする方法として、ウエストウエスタンブロット分析(Skolnik et al., Cell 65: 83-90 (1991))を使用することができる。特に、C12ORF48ポリペプチドに結合するタンパク質を発現すると予想される培養細胞から、cDNAライブラリを、ファージベクター(例えば、ZAP)を使用して調製し、LB−アガロース上でタンパク質を発現させ、発現されたタンパク質をフィルタ上に固定し、精製され標識されたC12ORF48ポリペプチドを上記フィルタと反応させ、C12ORF48ポリペプチドに結合したタンパク質を発現しているプラークを標識によって検出することにより、C12ORF48ポリペプチドに結合するタンパク質を入手することができる。本発明のポリペプチドは、ビオチンとアビジンとの間の結合を利用するか、またはC12ORF48と特異的に結合する抗体、もしくはC12ORF48ポリペプチドと融合させられるペプチドもしくはポリペプチド(例えば、GST)を利用することにより、標識され得る。放射性同位体または蛍光等を使用する方法も、使用することができる。
【0093】
あるいは、本発明のスクリーニング方法の別の態様において、細胞を利用するツーハイブリッドシステムを使用してもよい(「MATCHMAKER Two−Hybrid system」、「Mammalian MATCHMAKER Two−Hybrid Assay Kit」、「MATCHMAKER one−Hybrid system」(Clontech);「HybriZAP Two−Hybrid Vector System」(Stratagene);参考文献「Dalton and Treisman, Cell 68: 597-612 (1992)」、「Fields and Sternglanz, Trends Genet 10: 286-92 (1994)」)。
【0094】
ツーハイブリッドシステムにおいては、本発明のポリペプチドをSRF結合領域またはGAL4結合領域に融合させ、酵母細胞において発現させる。本発明のポリペプチドに結合するタンパク質を発現すると予想される細胞からのcDNAライブラリを、ライブラリが、発現された場合にVP16またはGAL4の転写活性化領域に融合するよう、調製する。次いで、cDNAライブラリを上記酵母細胞に導入し、ライブラリに由来するcDNAを、検出された陽性クローンから単離する(本発明のポリペプチドに結合するタンパク質が酵母細胞において発現される場合、その2つの結合がレポーター遺伝子を活性化し、陽性クローンを検出可能にする)。上記の単離されたcDNAを大腸菌に導入し、タンパク質を発現させることにより、cDNAによりコードされるタンパク質を調製することができる。レポーター遺伝子としては、HIS3遺伝子に加えて、例えば、Ade2遺伝子、lacZ遺伝子、CAT遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子等も使用することができる。
【0095】
アフィニティクロマトグラフィを使用して、C12ORF48遺伝子によりコードされるポリペプチドに結合する化合物をスクリーニングすることもできる。例えば、本発明のポリペプチドをアフィニティカラムの担体上に固定化し、本発明のポリペプチドに結合可能なタンパク質を含有している試験化合物をカラムに適用することができる。本明細書中の試験化合物は、例えば、細胞抽出物、細胞溶解物等であり得る。試験化合物を負荷した後、カラムを洗浄し、本発明のポリペプチドに結合した化合物を調製することができる。試験化合物がタンパク質である場合には、入手されたタンパク質のアミノ酸配列を分析し、配列に基づきオリゴDNAを合成し、オリゴDNAをプローブとして使用してcDNAライブラリをスクリーニングして、タンパク質をコードするDNAを入手する。
【0096】
本発明においては、結合した化合物を検出または定量化する手段として、表面プラズモン共鳴現象を使用するバイオセンサーを使用してもよい。そのようなバイオセンサーを使用した場合、極微量のポリペプチドのみを使用して、標識することなく、本発明のポリペプチドと試験化合物との間の相互作用を、表面プラズモン共鳴シグナルとしてリアルタイムで観察することができる(例えば、BIAcore、Pharmacia)。したがって、BIAcoreなどのバイオセンサーを使用して、本発明のポリペプチドと試験化合物との間の結合を評価することが可能である。
【0097】
タンパク質だけでなくC12ORF48タンパク質に結合する化学化合物(アゴニストおよびアンタゴニストを含む)も単離するための、固定化されたC12ORF48ポリペプチドを合成化学化合物または天然物質バンクまたはランダムファージペプチドディスプレイライブラリに曝露した場合に結合する分子をスクリーニングする方法、およびコンビナトリアルケミストリー技術に基づくハイスループットを使用したスクリーニング方法(Wrighton et al., Science 273: 458-64 (1996);Verdine, Nature 384: 11-13 (1996);Hogan, Nature 384: 17-9 (1996))が当業者に周知である。
【0098】
C12ORF48の生物学的活性を抑制する化合物のスクリーニング
本発明との関連において、C12ORF48タンパク質は、がん細胞の細胞増殖を促進する活性を有すると特徴づけされる(図2)。この生物学的活性を指標として使用して、本発明は、C12ORF48を発現しているがん細胞の増殖を抑制する化合物をスクリーニングする方法、ならびに、がん、特に、膵臓癌および前立腺癌を含むがんを治療または予防するための化合物をスクリーニングする方法を提供する。したがって、本発明は、以下のような工程を含む、C12ORF48遺伝子によりコードされるポリペプチドを使用して、がんを治療または予防するための化合物をスクリーニングする方法を提供する:
(a)試験化合物を、C12ORF48のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドと接触させる工程;
(b)工程(a)のポリペプチドの生物学的活性を検出する工程;および
(c)試験化合物の非存在下で検出されるポリペプチドの生物学的活性と比較して、C12ORF48のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの生物学的活性を抑制する該試験化合物を選択する工程。
【0099】
本発明によると、細胞増殖を促進する活性の抑制に関する試験化合物、またはC12ORF48に関連したがん(例えば、膵臓癌および前立腺癌)を治療もしくは予防するための候補化合物の治療効果を、評価することができる。したがって、本発明は、以下のような工程を含む、C12ORF48ポリペプチドまたはその断片を使用して、細胞増殖を抑制するための候補化合物、またはC12ORF48に関連したがんを治療もしくは予防するための候補化合物をスクリーニングする方法も提供する:
(a)試験化合物を、C12ORF48ポリペプチドまたはその機能的断片と接触させる工程;
(b)工程(a)のポリペプチドまたは断片の生物学的活性を検出する工程;および
(c)(b)の生物学的活性を試験剤または試験化合物の治療効果と相関させる工程。
【0100】
本発明との関連において、治療効果は、C12ORF48ポリペプチドまたはその機能的断片の生物学的活性と相関し得る。例えば、試験剤または試験化合物が、試験剤または試験化合物の非存在下で検出されるレベルと比較して、C12ORF48ポリペプチドまたはその機能的断片の生物学的活性を抑制または阻害する場合には、その試験剤または試験化合物を、治療効果を有する候補剤または候補化合物として同定または選択することができる。あるいは、試験剤または試験化合物が、試験剤または試験化合物の非存在下で検出されるレベルと比較して、C12ORF48ポリペプチドまたはその機能的断片の生物学的活性を抑制または阻害しない場合には、その試験剤または試験化合物を、有意な治療効果を有しない剤または化合物として同定することができる。
【0101】
本発明の方法を、以下に、より詳細に説明する。C12ORF48タンパク質の生物学的活性を抑制する限り、任意のポリペプチドをスクリーニングに使用することができる。そのような生物学的活性には、C12ORF48タンパク質の細胞増殖活性が含まれる。例えば、C12ORF48タンパク質を使用することができ、これらのタンパク質と機能的に等価なポリペプチドも使用することができる。そのようなポリペプチドは、細胞により内因的にまたは外因的に発現され得る。
【0102】
このスクリーニングにより単離される化合物は、C12ORF48遺伝子によりコードされるポリペプチドのアンタゴニストの候補である。「アンタゴニスト」という用語は、ポリペプチドに結合することにより、その機能を阻害する分子をさす。この用語は、C12ORF48をコードする遺伝子の発現を低下させるかまたは阻害する分子もさす。さらに、このスクリーニングにより単離される化合物は、C12ORF48ポリペプチドと分子(DNAおよびタンパク質を含む)とのインビボ相互作用を阻害する化合物の候補である。
【0103】
本方法において検出される生物学的活性が細胞増殖である場合、それは、例えば、C12ORF48ポリペプチドを発現している細胞を調製し、試験化合物の存在下で細胞を培養し、細胞周期等を測定する、細胞増殖のスピードを決定することにより、および、例えば図2に示される生存細胞またはコロニー形成活性を測定することにより、検出され得る。C12ORF48を発現している細胞の増殖のスピードを低下させる化合物を、膵臓癌および前立腺癌を治療または予防するための候補化合物として選択する。より具体的には、方法は、以下の工程を含む:
(a)試験化合物を、C12ORF48を過剰発現している細胞と接触させる工程;
(b)細胞増殖活性を測定する工程;および
(c)試験化合物の非存在下での細胞増殖活性と比較して、細胞増殖活性を低下させる試験化合物を選択する工程。
好ましい態様において、本発明の方法は、以下の工程をさらに含みうる:
(d)C12ORF48を全くまたはほとんど発現していない細胞に対して効果を及ぼさない試験化合物を選択する工程。
【0104】
本明細書中で定義される「生物学的活性を抑制するかまたは低下させる」という語句は、化合物の非存在下と比較した、C12ORF48の生物学的活性の、好ましくは少なくとも10%の抑制、より好ましくは少なくとも25%、50%、または75%の抑制、および最も好ましくは90%の抑制である。
【0105】
C12ORF48とPARP1との結合を指標として使用するスクリーニング
本発明において、C12ORF48タンパク質がPARP1タンパク質と相互作用することが確認された(図4)。したがって、C12ORF48タンパク質とPARP1タンパク質との結合を指標として使用して、そのようなC12ORF48タンパク質とPARP1タンパク質との間の結合を阻害する化合物をスクリーニングすることができる。したがって、本発明は、C12ORF48タンパク質とPARP1タンパク質との結合を指標として使用して、そのようなC12ORF48タンパク質とPARP1タンパク質との間の結合を阻害するための化合物をスクリーニングするための方法を提供する。さらに、本発明は、C12ORF48を発現しているがん細胞、例えば、膵臓癌細胞および前立腺癌細胞の増殖を阻害するかまたは低下させるための化合物、ならびに、がん、例えば、膵臓癌または前立腺癌を治療または予防するための化合物をスクリーニングするための方法も提供する。具体的には、本発明は、以下の[1]〜[5]の方法を提供する:
[1]以下の工程を含む、C12ORF48ポリペプチドとPARP1ポリペプチドとの間の結合を妨害する剤または化合物をスクリーニングする方法:
(a)試験剤または試験化合物の存在下で、C12ORF48ポリペプチドまたはその機能的等価物を、PARP1ポリペプチドまたはその機能的等価物と接触させる工程;
(b)ポリペプチド間の結合を検出する工程;
(c)工程(b)で検出された結合レベルを、試験剤または試験化合物の非存在下で検出されたレベルと比較する工程;および
(d)結合レベルを低下させるかまたは阻害する試験剤または試験化合物を選択する工程。
[2]以下の工程を含む、がんの治療または予防において有用な剤または化合物をスクリーニングする方法:
(a)試験剤または試験化合物の存在下で、C12ORF48ポリペプチドまたはその機能的等価物を、PARP1ポリペプチドまたはその機能的等価物と接触させる工程;
(b)ポリペプチド間の結合を検出する工程;
(c)工程(b)で検出された結合レベルを、試験剤または試験化合物の非存在下で検出されたレベルと比較する工程;および
(d)結合レベルを低下させるかまたは阻害する試験剤または試験化合物を選択する工程。
[3]C12ORF48の機能的等価物がPARP1結合ドメインを含む、[1]または[2]に記載の方法。
[4]PARP1の機能的等価物がC12ORF48結合ドメインを含む、[1]または[2]に記載の方法。
[5]がんが膵臓癌および前立腺癌からなる群より選択される、[1]に記載の方法。
【0106】
本発明によると、細胞増殖を阻害するための試験剤もしくは試験化合物、またはC12ORF48関連疾患を治療もしくは予防するための候補剤もしくは候補化合物の治療効果を評価することができる。したがって、本発明は、がん細胞の増殖を抑制する候補剤または候補化合物をスクリーニングする方法、およびがんを治療または予防するための候補剤または候補化合物をスクリーニングする方法も提供する。より具体的には、方法は、以下の工程を含む:
(a)試験剤または試験化合物の存在下で、C12ORF48ポリペプチドまたはその機能的等価物を、PARP1ポリペプチドまたはその機能的等価物と接触させる工程;
(b)ポリペプチド間の結合のレベルを検出する工程;および
(c)C12ORF48タンパク質とPARP1タンパク質との結合レベルを、試験剤または試験化合物の非存在下で検出されたレベルと比較する工程;および
(d)(c)の結合レベルを試験剤または試験化合物の治療効果と相関させる工程。
【0107】
本発明との関連において、C12ORF48ポリペプチドまたはPARP1ポリペプチドの機能的等価物とは、それぞれ、C12ORF48ポリペプチド(SEQ ID NO:11)またはPARP1ポリペプチド(SEQ ID NO:13)と等価な生物学的活性を有するポリペプチドである。
【0108】
C12ORF48のPARP1との結合をモジュレートする、例えば、阻害する化合物をスクリーニングする方法として、当業者に周知の多くの方法を使用することができる。
【0109】
スクリーニングに使用されるポリペプチドは、組換えポリペプチドもしくは自然界由来のタンパク質、またはそれらの部分ペプチドであり得る。上記の任意の試験化合物がスクリーニングに使用され得る。
【0110】
タンパク質、例えば、ポリペプチドに結合するタンパク質を、C12ORF48ポリペプチドもしくはPARP1ポリペプチドまたはそれらの機能的等価物を使用してスクリーニングする方法として、当業者に周知の多くの方法を使用することができる。そのようなスクリーニングは、例えば、免疫沈降、ウエストウエスタンブロッティング分析(Skolnik et al., Cell 65: 83-90 (1991))、細胞を利用するツーハイブリッドシステム(「MATCHMAKER Two−Hybrid system」、「Mammalian MATCHMAKER Two−Hybrid Assay Kit」、「MATCHMAKER one−Hybrid system」(Clontech);「HybriZAP Two−Hybrid Vector System」(Stratagene);参考文献「Dalton and Treisman, Cell 68: 597-612 (1992)」、「Fields and Sternglanz, Trends Genet 10: 286-92 (1994)」)、アフィニティクロマトグラフィ、および表面プラズモン共鳴現象を使用したバイオセンサーを使用して実施され得る。上記の任意の試験化合物を使用することができる。幾つかの態様において、この方法は、候補化合物のC12ORF48タンパク質もしくはPARP1タンパク質との結合を検出する工程、またはC12ORF48タンパク質のPARP1タンパク質との結合のレベルを検出する工程をさらに含む。C12ORF48タンパク質および/またはPARP1タンパク質を発現している細胞には、例えば、がん、例えば、肺癌から樹立された細胞株が含まれ、そのような細胞は、これらの2つの遺伝子を発現している限り、本発明の上記スクリーニングのため使用され得る。あるいは、細胞を、C12ORF48タンパク質およびPARP1タンパク質の発現ベクターの両方または一方によりトランスフェクトして、これらの2つの遺伝子を発現させてもよい。C12ORF48タンパク質のPARP1タンパク質との結合は、抗C12ORF48抗体および抗PARP1抗体を使用した免疫沈降アッセイにより検出され得る(図4)。
【0111】
PARP1の生物学的活性を抑制する化合物のスクリーニング
本発明との関連において、PARP1活性がC12ORF48ノックダウンにおいて劇的に減少することが確認された(図7E)。この活性を指標として使用して、C12ORF48およびPARP1を発現しているがん細胞の増殖を抑制する化合物をスクリーニングする方法、ならびに、がん、特に、膵臓癌および前立腺癌を含むがんを治療または予防するための化合物をスクリーニングする方法を、本発明は提供する。したがって、本発明は、以下の工程を含む、C12ORF48遺伝子によりコードされるポリペプチドを使用して、がんを治療または予防するための化合物をスクリーニングする方法を提供する:
(a)試験化合物を、PARP1のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの存在下で、C12ORF48のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドと接触させる工程;
(b)PARP1のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの生物学的活性を検出する工程;および
(c)試験化合物の非存在下で検出されるポリペプチドの生物学的活性と比較して、PARP1のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの生物学的活性を抑制する試験化合物を選択する工程。
【0112】
本発明によると、PARP1の自己修飾活性の抑制に関する試験化合物、またはC12ORF48に関連したがん(例えば、膵臓癌および前立腺癌)を治療もしくは予防するための候補化合物の治療効果を評価することができる。したがって、本発明は、以下のような工程を含む、C12ORF48ポリペプチドまたはその断片およびPARP1ポリペプチドまたはその断片を使用して、自己修飾活性を抑制するための候補化合物、またはC12ORF48に関連したがんを治療もしくは予防するための候補化合物をスクリーニングする方法も提供する:
(a)試験化合物を、PARP1ポリペプチドまたはその機能的断片の存在下で、C12ORF48ポリペプチドまたはその機能的断片と接触させる工程;
(b)工程(a)のPARP1ポリペプチドまたは断片の生物学的活性を検出する工程;および
(c)(b)の生物学的活性を試験剤または試験化合物の治療効果と相関させる工程。
【0113】
本発明との関連において、治療効果は、C12ORF48により増強されるPARP1ポリペプチドまたはその機能的断片の自己調整活性と相関し得る。例えば、試験剤または試験化合物が、試験剤または試験化合物の非存在下で検出されるレベルと比較して、PARP1ポリペプチドまたはその機能的断片の自己調整活性を抑制または阻害する場合には、その試験剤または試験化合物を、治療効果を有する候補剤または候補化合物として同定または選択することができる。あるいは、試験剤または試験化合物が、試験剤または試験化合物の非存在下で検出されるレベルと比較して、PARP1ポリペプチドまたはその機能的断片の自己調整活性を抑制または阻害しない場合には、その試験剤または試験化合物を、有意な治療効果を有しない剤または化合物として同定することができる。
【0114】
本発明の方法を、以下に、より詳細に説明する。PARP1タンパク質の自己調整活性を抑制する限り、任意のポリペプチドをスクリーニングに使用することができる。例えば、C12ORF48タンパク質およびPARP1タンパク質を使用することができ、これらのタンパク質と機能的に等価なポリペプチドも使用することができる。そのようなポリペプチドは、細胞により内因的にまたは外因的に発現され得る。
【0115】
このスクリーニングにより単離される化合物は、C12ORF48遺伝子によりコードされるポリペプチドのアンタゴニストの候補である。「アンタゴニスト」という用語は、ポリペプチドに結合することにより、その機能を阻害する分子をさす。この用語は、C12ORF48をコードする遺伝子の発現を低下させるかまたは阻害する分子もさす。さらに、このスクリーニングにより単離される化合物は、C12ORF48ポリペプチドとPARP1とのインビボ相互作用を阻害する化合物の候補である。
【0116】
本方法において検出される生物学的活性が自己調整である場合、それは、例えば、C12ORF48ポリペプチドおよびPARP1ポリペプチドを発現している細胞を調製し、試験化合物の存在下で細胞を培養し、細胞周期等の測定する、PARP1の自己調整を決定することにより、および生存細胞またはコロニー形成活性を測定することにより、検出され得る。C12ORF48を発現している細胞のPARP1の自己調整を低下させる化合物を、膵臓癌および前立腺癌を治療または予防するための候補化合物として選択する。
【0117】
より具体的には、方法は、以下の工程を含む:
(a)試験化合物を、C12ORF48およびPARP1を過剰発現している細胞と接触させる工程;
(b)PARP1の自己調整活性を測定する工程;ならびに
(c)試験化合物の非存在下での細胞増殖活性と比較して、自己調整活性を低下させる試験化合物を選択する工程。
好ましい態様において、本発明の方法は、以下の工程をさらに含む:
(d)C12ORF48を全くまたはほとんど発現していない細胞に対して効果を及ぼさない試験化合物を選択する工程。
【0118】
本明細書中で定義される「自己調整を抑制するかまたは低下させる」という語句は、化合物の非存在下と比較した、C12ORF48の生物学的活性の、好ましくは少なくとも10%の抑制、より好ましくは少なくとも25%、50%、または75%の抑制、および最も好ましくは90%の抑制である。
【0119】
C12ORF48の発現を変える化合物のスクリーニング
本発明において、siRNAによるC12ORF48の発現の減少は、がん細胞増殖の阻害をもたらす(図2)。したがって、本発明は、C12ORF48の発現を阻害する化合物をスクリーニングする方法を提供する。C12ORF48の発現を阻害する化合物は、がん細胞の増殖を抑制すると予想され、したがって、がん、特に、膵臓癌および前立腺癌などのがんを治療または予防するのに有用である。したがって、本発明は、がん細胞の増殖を抑制する化合物をスクリーニングするための方法、およびがんを治療または予防するための化合物をスクリーニングするための方法も提供する。本発明との関連において、そのようなスクリーニングは、例えば、以下の工程を含み得る:
(a)候補化合物を、C12ORF48を発現している細胞と接触させる工程;および
(b)対照と比較して、C12ORF48の発現レベルを低下させる候補化合物を選択する工程。
【0120】
本発明によると、細胞増殖の阻害に関する試験剤もしくは試験化合物、またはC12ORF48関連疾患を治療もしくは予防するための候補剤もしくは候補化合物の治療効果を評価することができる。したがって、本発明は、がん細胞の増殖を抑制する候補剤または候補化合物をスクリーニングする方法、およびC12ORF48関連疾患を治療または予防するための候補剤または候補化合物をスクリーニングする方法も提供する。
【0121】
本発明との関連において、そのようなスクリーニングは、例えば、以下の工程を含み得る:
(a)試験剤または試験化合物を、C12ORF48遺伝子を発現している細胞と接触させる工程;
(b)C12ORF48遺伝子の発現レベルを検出する工程;および
(c)(b)の発現レベルを試験剤または試験化合物の治療効果と相関させる工程。
【0122】
本発明との関連において、治療効果は、C12ORF48遺伝子の発現レベルと相関し得る。例えば、試験剤または試験化合物が、試験剤または試験化合物の非存在下で検出されるレベルと比較して、C12ORF48遺伝子の発現レベルを低下させる場合には、その試験剤または試験化合物を、治療効果を有する候補剤または候補化合物として同定または選択することができる。あるいは、試験剤または試験化合物が、試験剤または試験化合物の非存在下で検出されるレベルと比較して、C12ORF48遺伝子の発現レベルを低下させない場合には、その試験剤または試験化合物を、有意な治療効果を有しない剤または化合物として同定することができる。
【0123】
本発明の方法を、以下に、より詳細に説明する。C12ORF48を発現している細胞には、例えば、膵臓癌および前立腺癌から樹立された細胞株、またはC12ORF48発現ベクターによりトランスフェクトされた細胞株が含まれ;そのような細胞のいずれかを、本発明の上記スクリーニングのために使用することができる。発現レベルは、当業者に周知の方法、例えば、RT−PCR、ノーザンブロットアッセイ、ウェスタンブロットアッセイ、免疫染色、およびフローサイトメトリー分析により推定され得る。本明細書中で定義される「発現レベルを低下させる」とは、C12ORF48の発現レベルの、化合物の非存在下での発現レベルと比較した、好ましくは少なくとも10%の低下、より好ましくは少なくとも25%、50%、または75%低下したレベル、および最も好ましくは95%低下したレベルである。本明細書中の化合物には、化学化合物、二本鎖ヌクレオチド等が含まれる。二本鎖ヌクレオチドの調製は前記説明にある。スクリーニング方法において、C12ORF48の発現レベルを低下させる化合物を、膵臓癌および前立腺癌の治療または予防に使用される候補化合物として選択することができる。
【0124】
あるいは、本発明のスクリーニング方法は、以下の工程を含み得る:
(a)C12ORF48の転写調節領域と、該転写調節領域の制御下で発現されるレポーター遺伝子とを含むベクターが導入された細胞に、候補化合物を接触させる工程;
(b)レポーター遺伝子の発現または活性を測定する工程;および
(c)レポーター遺伝子の発現または活性を低下させる候補化合物を選択する工程。
【0125】
本発明によると、細胞増殖の阻害に関する試験剤もしくは試験化合物、またはC12ORF48関連疾患を治療もしくは予防するための候補剤もしくは候補化合物の治療効果を評価することができる。したがって、本発明は、がん細胞の増殖を抑制する候補剤または候補化合物をスクリーニングするための方法、およびC12ORF48関連疾患を治療または予防するための候補剤または候補化合物をスクリーニングするための方法も提供する。本発明との関連において、そのようなスクリーニングは、例えば、以下の工程を含み得る:
(a)C12ORF48遺伝子の転写調節領域と、該転写調節領域の制御下で発現されるレポーター遺伝子とから構成されたベクターが導入された細胞に、試験剤または試験化合物を接触させる工程;
(b)レポーター遺伝子の発現または活性を検出する工程;および
(c)(b)の発現レベルを試験剤または試験化合物の治療効果と相関させる工程。
【0126】
本発明との関連において、治療効果は、レポーター遺伝子の発現または活性と相関し得る。例えば、試験剤または試験化合物が、試験剤または試験化合物の非存在下で検出されるレベルと比較して、レポーター遺伝子の発現または活性を低下させる場合には、その試験剤または試験化合物を、治療効果を有する候補剤または候補化合物として同定または選択することができる。あるいは、試験剤または試験化合物が、試験剤または試験化合物の非存在下で検出されるレベルと比較して、レポーター遺伝子の発現または活性を低下させない場合には、その試験剤または試験化合物を、有意な治療効果を有しない剤または化合物として同定することができる。
【0127】
好適なレポーター遺伝子および宿主細胞は、当技術分野で周知である。例示的なレポーター遺伝子には、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、Discosoma sp.赤色蛍光タンパク質(DsRed)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、lacZ、およびβグルクロニダーゼ(GUS)が含まれるがこれらに限定されず、宿主細胞はCOS7、HEK293、HeLa等である。スクリーニングに必要とされるレポーター構築物は、レポーター遺伝子配列をC12ORF48の転写調節領域と接続することにより調製され得る。本明細書中のC12ORF48の転写調節領域は、転写開始部位から少なくとも500bp上流、好ましくは1,000bp、より好ましくは5,000bpまたは10,000bp上流までの領域である。転写調節領域を含有しているヌクレオチドセグメントは、ゲノムライブラリから単離されてもよいし、またはPCRによって増幅させられてもよい。スクリーニングに必要とされるレポーター構築物は、レポーター遺伝子配列をこれらの遺伝子のいずれか1つの転写調節領域と接続することにより調製され得る。転写調節領域を同定するための方法、およびアッセイプロトコルも周知である(Molecular Cloning third edition chapter 17, 2001, Cold Springs Harbor Laboratory Press)。
【0128】
レポーター構築物を含有しているベクターを、宿主細胞に感染させ、レポーター遺伝子の発現または活性を、当技術分野で周知の方法により(例えば、ルミノメーター、吸光度計、フローサイトメーター等を使用して)検出する。本明細書中で定義される「発現または活性を低下させる」とは、レポーター遺伝子の発現または活性の、化合物の非存在下と比較した、好ましくは少なくとも10%の低下、より好ましくは少なくとも25%、50%、または75%の低下、および最も好ましくは95%の低下である。
【0129】
本発明との関連において、がんを治療または予防する可能性を有する候補化合物を同定することができる。これらの候補化合物の治療的可能性は、がんの治療剤を同定するための二次スクリーニングおよび/またはさらなるスクリーニングにより評価され得る。例えば、C12ORF48タンパク質と結合する化合物が、上記のがんの活性を阻害する場合、そのような化合物はC12ORF48特異的な治療効果を有していると結論付けることができる。
【0130】
二本鎖分子
本明細書で使用される場合、「単離二本鎖分子」という用語は標的遺伝子の発現を阻害する核酸分子を意味し、例えば短鎖干渉RNA(siRNA、例えば二本鎖リボ核酸(dsRNA)または低分子ヘアピン型RNA(shRNA))および短鎖干渉DNA/RNA(siD/R−NA、例えばDNAとRNAとの二本鎖キメラ(dsD/R−NA)またはDNAとRNAとの低分子ヘアピンキメラ(shD/R−NA))を含む。
【0131】
本明細書で使用される場合、「siRNA」という用語は、標的mRNAの翻訳を防ぐ二本鎖RNA分子をさす。DNAが、RNAが転写される鋳型である技術を含む、siRNAを細胞に導入する標準的な技術が用いられる。siRNAは、C12ORF48のセンス核酸配列(「センス鎖」とも称される)、C12ORF48のアンチセンス核酸配列(「アンチセンス鎖」とも称される)、またはその両方を含む。単一の転写産物が、標的遺伝子のセンス核酸配列および相補的なアンチセンス核酸配列の両方を有するように(例えばヘアピン)、siRNAを構築してもよい。siRNAはdsRNAまたはshRNAのいずれであってもよい。
【0132】
本明細書で使用される場合、「dsRNA」という用語は、互いに相補的な配列から構成され、かつその相補的な配列を介して共にアニーリングして二本鎖RNA分子を形成している、2つのRNA分子の構築物をさす。2つの鎖のヌクレオチド配列は、標的遺伝子配列のタンパク質コード配列から選択される「センス」または「アンチセンス」RNAだけでなく、標的遺伝子の非コード領域から選択されるヌクレオチド配列を有するRNA分子も含み得る。
【0133】
本明細書で使用される場合、「shRNA」という用語は、互いに相補的である第1および第2の領域、すなわちセンス鎖およびアンチセンス鎖から構成される、ステム−ループ構造を有するsiRNAをさす。該領域の相補性および配向性の程度は、塩基の対合が領域間で起こるのに十分であり、第1および第2の領域はループ領域によって連結し、該ループは、ループ領域内のヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)間の塩基対合の欠如によって生じる。shRNAのループ領域は、センス鎖とアンチセンス鎖との間に介在する一本鎖領域であり、「介在一本鎖」とも称され得る。
【0134】
本明細書で使用される場合、「siD/R−NA」という用語は、RNAおよびDNAの両方から構成される二本鎖ポリヌクレオチド分子を意味し、RNAおよびDNAのハイブリッドおよびキメラを含み、標的mRNAの翻訳を防ぐ。本明細書において、ハイブリッドは、DNAから構成されるポリヌクレオチドとRNAから構成されるポリヌクレオチドとが互いにハイブリダイズして二本鎖分子を形成する分子を示し、キメラは、二本鎖分子を含む鎖の一方または両方がRNAおよびDNAを含有し得ることを示す。siD/R−NAを細胞に導入する標準的な技術が用いられる。siD/R−NAは、C12ORF48のセンス核酸配列(「センス鎖」とも称される)、C12ORF48のアンチセンス核酸配列(「アンチセンス鎖」とも称される)、またはその両方を含む。単一の転写産物が、標的遺伝子由来のセンス核酸配列および相補的なアンチセンス核酸配列の両方を有するように(例えばヘアピン)、siD/R−NAを構築してもよい。siD/R−NAはdsD/R−NAまたはshD/R−NAのいずれであってもよい。
【0135】
本明細書で使用される場合、「dsD/R−NA」という用語は、互いに相補的な配列から構成され、かつ該相補的な配列を介して共にアニーリングして二本鎖ポリヌクレオチド分子を形成している、2つの分子の構築物をさす。2つの鎖のヌクレオチド配列は、標的遺伝子配列のタンパク質コード配列から選択される「センス」または「アンチセンス」ポリヌクレオチド配列だけでなく、標的遺伝子の非コード領域から選択されるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドも含み得る。dsD/R−NAを構築する2つの分子の一方または両方が、RNAおよびDNAの両方から構成されるか(キメラ分子)、またはもう一つの選択肢として分子の一方がRNAから構成され、もう一方がDNAから構成される(ハイブリッド二本鎖)。
【0136】
本明細書で使用される場合、「shD/R−NA」という用語は、互いに相補的である第1および第2の領域、すなわちセンス鎖およびアンチセンス鎖から構成される、ステム−ループ構造を有するsiD/R−NAをさす。該領域の相補性および配向性の程度は、塩基の対合が領域間で起こるのに十分であり、第1および第2の領域はループ領域によって連結し、該ループは、ループ領域内のヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)間の塩基対合の欠如によって生じる。shD/R−NAのループ領域は、センス鎖とアンチセンス鎖との間に介在する一本鎖領域であり、「介在一本鎖」とも称され得る。
【0137】
本明細書で使用される場合、「単離核酸」は、その元の環境(例えば、天然物の場合は自然環境)から取り出した核酸であり、したがって、その自然状態から合成的に変化させた核酸である。本発明との関連において、単離核酸の例としてはDNA、RNA、およびその誘導体が挙げられる。
【0138】
標的mRNAにハイブリダイズする、C12ORF48に対する二本鎖分子は、遺伝子の通常一本鎖であるmRNA転写物と結合し、それにより、翻訳に干渉し、したがって、タンパク質の発現を阻害することにより、C12ORF48遺伝子によってコードされるC12ORF48タンパク質の産生を減少させるかまたは阻害する。本明細書中で証明される通り、膵臓癌細胞株におけるC12ORF48の発現はdsRNAによって阻害された(図2)。したがって、本発明は、C12ORF48遺伝子を発現している細胞へ導入された場合に、C12ORF48遺伝子の発現を阻害することができる単離された二本鎖分子を提供する。二本鎖分子の標的配列は、後述されるものなどのsiRNA設計アルゴリズムによって設計され得る。C12ORF48標的配列の例には、例えば、以下のようなヌクレオチドが含まれる。
SEQ ID NO:5(SEQ ID NO:10の595〜613位)
SEQ ID NO:7(SEQ ID NO:10の1133〜1151位)
SEQ ID NO:8(SEQ ID NO:10の1310〜1328位)
SEQ ID NO:14(SEQ ID NO:10の606〜624位)
【0139】
同様に、標的mRNAにハイブリダイズする、PARP1に対する二本鎖分子は、遺伝子の通常一本鎖であるmRNA転写物と結合し、それにより、翻訳に干渉し、したがって、タンパク質の発現を阻害することにより、PARP1遺伝子によってコードされるPARP1タンパク質の産生を減少させるかまたは阻害する。本明細書中で証明される通り、膵臓癌細胞株におけるPARP1の発現は、dsRNAによって阻害された(図7)。したがって、本発明は、PARP1遺伝子を発現している細胞へ導入された場合に、PARP1遺伝子の発現を阻害することができる単離された二本鎖分子を提供する。二本鎖分子の標的配列は、後述のものなどのsiRNA設計アルゴリズムによって設計され得る。PARP1標的配列の例には、例えば、以下のようなヌクレオチドが含まれる。
SEQ ID NO:15(SEQ ID NO:12の2685〜2703位)
【0140】
本発明において特に関心対象であるのは、以下の[1]〜[18]の二本鎖分子である:
[1]互いにハイブリダイズすることで二本鎖分子を形成するセンス鎖とこれに相補的なアンチセンス鎖とから構成され、細胞に導入された場合にC12ORF48またはPARP1のインビボ発現および細胞増殖を阻害する、単離された二本鎖分子;
[2]SEQ ID NO:5(SEQ ID NO:10の595〜613位)、SEQ ID NO:7(SEQ ID NO:10の1133〜1151位)、SEQ ID NO:8(SEQ ID NO:10の1310〜1328位)、SEQ ID NO:14(SEQ ID NO:10の606〜624位)、およびSEQ ID NO:15(SEQ ID NO:12の2685〜2703位)の中から選択される標的配列に一致するmRNAに対して作用する、[1]に記載の二本鎖分子;
[3]センス鎖が、SEQ ID NO:5、7、8、14、および15の中から選択される標的配列に対応する配列を含有している、[2]に記載の二本鎖分子;
[4]約100ヌクレオチド未満の長さを有する、[3]に記載の二本鎖分子;
[5]約75ヌクレオチド未満の長さを有する、[4]に記載の二本鎖分子;
[6]約50ヌクレオチド未満の長さを有する、[5]に記載の二本鎖分子;
[7]約25ヌクレオチド未満の長さを有する、[6]に記載の二本鎖分子;
[8]約19〜約25ヌクレオチドの長さを有する、[7]に記載の二本鎖分子;
[9]介在一本鎖により連結されたセンス鎖およびアンチセンス鎖の両方を有する単一ポリヌクレオチドから構成される、[1]に記載の二本鎖分子;
[10]一般式:5’−[A]−[B]−[A’]−3’(式中、[A]はSEQ ID NO:5、7、8、14、および15の中から選択される標的配列に対応する配列を含むセンス鎖であり、[B]は3個〜23個のヌクレオチドから構成される介在一本鎖であり、[A’]は[A]と相補的な配列を含むアンチセンス鎖である)を有する、[9]に記載の二本鎖分子;
[11]RNAから構成される、[1]に記載の二本鎖分子;
[12]DNAおよびRNAの両方から構成される、[1]に記載の二本鎖分子;
[13]DNAポリヌクレオチドとRNAポリヌクレオチドとのハイブリッドである、[12]に記載の二本鎖分子;
[14]センス鎖およびアンチセンス鎖がそれぞれDNAおよびRNAから構成される、[13]に記載の二本鎖分子;
[15]DNAとRNAとのキメラである、[12]に記載の二本鎖分子;
[16]アンチセンス鎖の3’末端に隣接する領域、またはセンス鎖の5'末端に隣接する領域およびアンチセンス鎖の3’末端に隣接する領域の両方がRNAである、[15]に記載の二本鎖分子;
[17]隣接領域が9個〜13個のヌクレオチドから構成される、[16]に記載の二本鎖分子;ならびに
[18]3’オーバーハングを含有する、[2]に記載の二本鎖分子。
【0141】
本発明の二本鎖分子は以下でより詳細に説明される。
【0142】
細胞において標的遺伝子の発現を阻害する能力がある二本鎖分子を設計する方法が知られている(例えば米国特許第6,506,559号(その全体が参照により本明細書に組み入れられる)を参照されたい)。例えば、siRNAを設計するためのコンピュータプログラムは、Ambionのウェブサイトから入手可能である(www.ambion.com/techlib/misc/siRNA_finder.html)。
【0143】
コンピュータプログラムは、以下のプロトコルに基づき、二本鎖分子に対する標的ヌクレオチド配列を選択する。
【0144】
標的部位の選択
1. 転写産物のAUG開始コドンから始めて、AAジヌクレオチド配列について下流を探索する。潜在的なsiRNA標的部位として、それぞれのAAの存在とその3’側に隣接した19個のヌクレオチドとを記録する。Tuschl et al.は、5’および3’非翻訳領域(UTR)および開始コドン近くの領域(75塩基以内)に対してsiRNAを設計することを避けることを推奨している。これは、これらの領域に調節タンパク質結合部位がより多く存在する可能性があり、UTR結合タンパク質および/または翻訳開始複合体が、siRNAエンドヌクレアーゼ複合体の結合に干渉する可能性があるためである。
2. 潜在的な標的部位と、適当なゲノムデータベース(ヒト、マウス、ラット等)とを比較し、他のコード配列との相同性が大きい任意の標的配列を考慮から外す。基本的には、www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/でのNCBIサーバーにあるBLASTを用いる(Altschul SF et al., Nucleic Acids Res 1997 Sep 1, 25(17):3389-402)。
3. 合成のために適格である標的配列を選択する。評価するために、遺伝子の長さに沿って標的配列を幾つか選択するのが一般的である。
【0145】
上記のプロトコルを使用して、本発明の単離二本鎖分子の標的配列を、以下のように設計した。
C12ORF48遺伝子に関して、SEQ ID NO:5、7、8、および14、ならびに
PARP1に関して、SEQ ID NO:15。
【0146】
上述の標的配列を標的とする二本鎖分子をそれぞれ、標的遺伝子を発現する細胞の増殖を抑制する能力について調査した。したがって、本発明は以下の群から選択される配列のいずれかを標的とする二本鎖分子を提供する:
C12ORF48遺伝子に関して、SEQ ID NO:5(SEQ ID NO:10の595〜613位)、SEQ ID NO:7(SEQ ID NO:10の1133〜1151位)、SEQ ID NO:8(SEQ ID NO:10の1310〜1328位)、およびSEQ ID NO:14(SEQ ID NO:10の606〜624位)、ならびに
PARP1に関して、SEQ ID NO:15(SEQ ID NO:12の2685〜2703位)。
【0147】
本発明の二本鎖分子は単一の標的C12ORF48もしくはPARP1遺伝子配列を対象としてもよく、または複数の標的C12ORF48もしくはPARP1遺伝子配列を対象としてもよい。
【0148】
上述のC12ORF48またはPARP1遺伝子の標的配列を標的とする本発明の二本鎖分子は、標的配列の核酸配列および/または該標的配列に相補的な配列のいずれかを含有する単離ポリヌクレオチドを含む。C12ORF48またはPARP1遺伝子を標的とするポリヌクレオチドの例としては、SEQ ID NO:5、7、8、14、および15の配列、ならびに/またはこれらのヌクレオチドに相補的な配列を含有するポリヌクレオチドが挙げられる。しかしながら、本発明はこれらの例に限定されず、上述の核酸配列における軽微な改変は、改変された分子がC12ORF48またはPARP1遺伝子の発現を抑制する能力を保持する限りは許容可能である。本明細書において、核酸配列と関連して使用される「軽微な改変」という句は、配列に対する核酸の1つ、2つ、または幾つかの置換、欠失、付加、または挿入を示す。
【0149】
本発明との関連において、核酸の置換、欠失、付加、および/または挿入に対し適用される「幾つか」という用語は、3〜7個、好ましくは3〜5個、さらに好ましくは3〜4個、さらに好ましくは3個の核酸残基を意味しうる。
【0150】
本発明によれば、本発明の二本鎖分子は、実施例で利用される方法を用いて、その能力に関して試験することができる。本明細書の以下の実施例では、C12ORF48もしくはPARP1遺伝子のmRNAの様々な部分のセンス鎖、またはそれに対して相補的なアンチセンス鎖から構成される二本鎖分子を、標準的な方法に従って、膵臓癌細胞株(例えば、MiaPaCa2、PK59、KLM1、およびSUIT2を用いる)におけるC12ORF48またはPARP1遺伝子産物の産生を低減させる能力に関して、インビトロで試験した。さらに、例えば、候補分子の非存在下で培養した細胞に比べた、候補二本鎖分子と接触させた細胞におけるC12ORF48またはPARP1遺伝子産物の低減は、例えば、実施例1における「半定量RT−PCR」の項で述べられたC12ORF48またはPARP1のmRNAに対するプライマーを用いて、RT−PCRにより検出することができる。インビトロでの細胞ベースのアッセイにおいてC12ORF48またはPARP1遺伝子産物の産生を低減する配列は、続いて、細胞増殖に及ぼすこれらの阻害効果に関して試験することができる。インビトロでの細胞ベースのアッセイにおいて細胞増殖を阻害する配列は、続いて、C12ORF48またはPARP1遺伝子産物の産生の低減およびがん細胞増殖の低減を確認するために、がんを有する動物、例えばヌードマウス異種移植片モデルを用いて、これらのインビボ能力に関して試験することができる。
【0151】
単離ポリヌクレオチドがRNAまたはそれらの誘導体である場合、ヌクレオチド配列において塩基「t」は「u」に置き換えるものとする。本明細書で使用される場合、「相補性」という用語は、ポリヌクレオチドのヌクレオチドユニット間のワトソンクリック型またはフーグスティーン型の塩基対合を表し、「結合」という用語は、2つのポリヌクレオチド間の物理的なまたは化学的な相互作用を意味する。ポリヌクレオチドが改変ヌクレオチドおよび/または非ホスホジエステル結合を含む場合、これらのポリヌクレオチドもまた同じように互いに結合することができる。一般的に、相補的なポリヌクレオチド配列は、適当な条件下でハイブリダイズして、ほとんどまたは全くミスマッチを含有しない安定二本鎖を形成する。さらに、本発明の単離ポリヌクレオチドのセンス鎖およびアンチセンス鎖は、ハイブリダイゼーションによって二本鎖分子またはヘアピンループ構造を形成することができる。好ましい態様において、このような二本鎖は10個のマッチ毎にわずか1個のミスマッチしか含有していない。特に好ましい態様では、二本鎖の鎖が完全に相補的である場合、このような二本鎖はミスマッチを含有しない。
【0152】
ポリヌクレオチドは好ましくは、C12ORF48では3,189ヌクレオチド長未満、およびPARP1では4,001ヌクレオチド長未満である。例えば、ポリヌクレオチドは、全ての遺伝子に関して、500ヌクレオチド長未満、200ヌクレオチド長未満、100ヌクレオチド長未満、75ヌクレオチド長未満、50ヌクレオチド長未満、または25ヌクレオチド長未満である。本発明の単離ポリヌクレオチドは、C12ORF48もしくはPARP1遺伝子に対する二本鎖分子を形成するのに、または該二本鎖分子をコードする鋳型DNAを調製するのに有用である。ポリヌクレオチドが二本鎖分子の形成に使用される場合、ポリヌクレオチドは19ヌクレオチドより長く、好ましくは21ヌクレオチドより長くてもよく、およびより好ましくは、約19〜25ヌクレオチドの長さを有する。したがって、本発明は、センス鎖とアンチセンス鎖とを含む二本鎖分子を提供し、該センス鎖は標的配列に対応するヌクレオチド配列を含む。好ましい態様において、センス鎖は、標的配列においてアンチセンス鎖とハイブリダイズすることで、ヌクレオチド対19〜25個の長さを有する二本鎖分子を形成する。
【0153】
本発明の二本鎖分子は、1つまたは複数の修飾ヌクレオチドおよび/または非ホスホジエステル結合を含有し得る。当技術分野において公知の化学修飾は、二本鎖分子の安定性、利用可能性、および/または細胞取り込みを増大させることができる。当業者は、本発明の分子に取り込むことができる他の種類の化学修飾にも気づくであろう(WO03/070744、WO2005/045037)。一態様では、分解耐性の改善または取り込みの改善を与えるために、修飾を用いることができる。このような修飾の例としては、非限定的に、ホスホロチオエート結合、2’−O−メチルリボヌクレオチド(特に二本鎖分子のセンス鎖上)、2’−デオキシ−フルオロリボヌクレオチド、2’−デオキシリボヌクレオチド、「ユニバーサル塩基」ヌクレオチド、5’−C−メチルヌクレオチド、および逆方向デオキシ塩基残基の組み込みが挙げられる(米国特許出願第20060122137号)。
【0154】
別の態様では、二本鎖分子の安定性を向上させるために、または標的指向化効率を増大させるために、修飾を用いることができる。このような修飾の例としては、非限定的に、二本鎖分子の2つの相補鎖間の化学架橋結合、二本鎖分子の鎖の3’または5’末端の化学修飾、糖修飾、核酸塩基修飾および/または骨格修飾、2−フルオロ修飾リボヌクレオチド、ならびに2’−デオキシリボヌクレオチドが挙げられる(WO2004/029212)。別の態様では、標的mRNAにおける、および/または相補的二本鎖分子鎖における相補的ヌクレオチドに対する親和性の増減に修飾を用いることができる(WO2005/044976)。例えば、非修飾ピリミジンヌクレオチドを2−チオピリミジン、5−アルキニルピリミジン、5−メチルピリミジン、または5−プロピルピリミジンに置換することができる。さらに、非修飾プリンを7−デザプリン、7−アルキルプリン、または7−アルケニルプリンに置換することができる。別の態様では、二本鎖分子が3’オーバーハングを有する二本鎖分子である場合、3’末端のヌクレオチドオーバーハングヌクレオチドをデオキシリボヌクレオチドに置き換えることができる(Elbashir SM et al., Genes Dev 2001 Jan 15, 15(2): 188-200)。さらに詳細には、公開文献、例えば米国特許出願第20060234970号が利用可能である。本発明は、これらの例には限定されず、得られた分子が標的遺伝子の発現を阻害する能力を保持していれば、任意の公知の化学修飾を本発明の二本鎖分子に利用することができる。
【0155】
さらに、本発明の二本鎖分子はDNAおよびRNAの両方を含み得る(例えばdsD/R−NAまたはshD/R−NA)。特に、DNA鎖とRNA鎖とのハイブリッドポリヌクレオチドまたはDNA−RNAキメラポリヌクレオチドは安定性の増大を示す。DNAとRNAとの混合物、すなわちDNA鎖(ポリヌクレオチド)およびRNA鎖(ポリヌクレオチド)から構成されるハイブリッド型二本鎖分子、一本鎖(ポリヌクレオチド)の一方または両方上でDNAおよびRNAの両方を含むキメラ型二本鎖分子等を、二本鎖分子の安定性を向上させるために形成することができる。
【0156】
DNA鎖とRNA鎖とのハイブリッドは、標的遺伝子を発現する細胞に導入した場合に該標的遺伝子の発現を阻害することが可能であれば、センス鎖がDNAであり、アンチセンス鎖がRNAであるか、またはその反対のいずれであってもよい。好ましくは、センス鎖のポリヌクレオチドがDNAであり、アンチセンス鎖のポリヌクレオチドがRNAである。また、キメラ型二本鎖分子は、標的遺伝子を発現する細胞に導入した場合に該標的遺伝子の発現を阻害する活性があれば、センス鎖およびアンチセンス鎖の両方がDNAおよびRNAから構成されるか、またはセンス鎖およびアンチセンス鎖のいずれか一方がDNAおよびRNAから構成されるか、のいずれであってもよい。二本鎖分子の安定性を向上するためには、分子は可能な限り多くのDNAを含有する事が好ましいが、標的遺伝子発現の阻害を誘導するためには、分子は発現の十分な阻害を誘導する範囲内でRNAである事が必要である。
【0157】
キメラ型二本鎖分子の好ましい例では、二本鎖分子の上流部分領域(すなわちセンス鎖またはアンチセンス鎖内の標的配列またはその相補配列に隣接する領域)はRNAである。好ましくは、上流部分領域は、センス鎖の5’側(5’末端)およびアンチセンス鎖の3’側(3’末端)を示す。あるいは、センス鎖の5’末端および/またはアンチセンス鎖の3’末端に隣接する領域が、上流部分領域と称される。すなわち、好ましい態様では、アンチセンス鎖の3’末端に隣接する領域、またはセンス鎖の5’末端に隣接する領域およびアンチセンス鎖の3’末端に隣接する領域の両方がRNAから構成される。例えば、本発明のキメラまたはハイブリッド型の二本鎖分子は以下の組み合わせを含む。
センス鎖:5’−[−−−DNA−−−]−3’
3’−(RNA)−[DNA]−5’:アンチセンス鎖、
センス鎖:5’−(RNA)−[DNA]−3’
3’−(RNA)−[DNA]−5’:アンチセンス鎖、および
センス鎖:5’−(RNA)−[DNA]−3’
3’−(−−−RNA−−−)−5’:アンチセンス鎖。
【0158】
上流部分領域は、好ましくは、二本鎖分子のセンス鎖またはアンチセンス鎖内で、標的配列またはこれに対する相補配列の末端から数えて9個〜13個のヌクレオチドから構成されるドメインである。さらに、そのようなキメラ型二本鎖分子の好ましい例としては、ポリヌクレオチドの少なくとも上流半分の領域(センス鎖では5’側領域およびアンチセンス鎖では3’側領域)がRNAであり、もう半分がDNAである、19個〜21個のヌクレオチド鎖長を有するものが挙げられる。そのようなキメラ型二本鎖分子では、アンチセンス鎖全体がRNAである場合、標的遺伝子の発現阻害効果が非常に高くなる(米国特許出願第20050004064号)。
【0159】
本発明との関連において、二本鎖分子は、ヘアピン、例えば低分子ヘアピン型RNA(shRNA)およびDNAおよびRNAからなる低分子のヘアピン(shD/R−NA)を形成することができる。shRNAまたはshD/R−NAは、RNA干渉を介して遺伝子発現をサイレンシングするのに使用することができる、タイトなヘアピンターン(tight hairpin turn)を作る、RNAまたはRNAとDNAとの混合物の配列である。shRNAまたはshD/R−NAは、一本鎖上にセンス標的配列とアンチセンス標的配列とを含み、これらの配列はループ配列によって分けられる。一般的に、ヘアピン構造は、細胞機構によってdsRNAまたはdsD/R−NAに切断され、続いてRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)と結合する。この複合体は、dsRNAまたはdsD/R−NAの標的配列に適合するmRNAと結合してこれを切断する。
【0160】
任意のヌクレオチド配列から構成されるループ配列は、ヘアピンループ構造を形成するために、センス配列とアンチセンス配列との間に位置し得る。したがって、本発明は、一般式5’−[A]−[B]−[A’]−3’(式中、[A]は標的配列に対応する配列を含むセンス鎖であり、[B]は介在一本鎖であり、かつ[A’]は[A]に対する相補配列を含むアンチセンス鎖である)を有する二本鎖分子も提供する。標的配列は、例えば、
C12ORF48に関して、SEQ ID NO:5、7、8、および14のヌクレオチド、および
PARP1に関して、SEQ ID NO:15のヌクレオチド
の中から選択され得る。
【0161】
本発明はこれらの例には限定されず、[A]における標的配列は、二本鎖分子が標的となるC12ORF48またはPARP1遺伝子の発現を抑制する能力を保持していれば、これらの例から改変された配列であってもよい。[A]領域は[A’]領域とハイブリダイズし、[B]領域から構成されるループを形成する。介在一本鎖部分[B]、すなわちループ配列は、好ましくは3〜23ヌクレオチド長であり得る。例えばループ配列は以下の配列の中から選択することができる(www.ambion.com/techlib/tb/tb_506.html)。さらに、23個のヌクレオチドからなるループ配列は活性siRNAも提供する(Jacque JM et al., Nature 2002 Jul 25, 418(6896): 435-8, Epub 2002 Jun 26):
CCC、CCACC、またはCCACACC:Jacque JM et al., Nature 2002 Jul 25, 418(6896): 435- 8, Epub 2002 Jun 26;
UUCG:Lee NS et al., Nat Biotechnol 2002 May, 20(5): 500-5、Fruscoloni P et al., Proc Natl Acad Sci USA 2003 Feb 18, 100(4): 1639-44, Epub 2003 Feb 10;および
UUCAAGAGA:Dykxhoorn DM et al., Nat Rev Mol Cell Biol 2003 Jun, 4(6): 457-67。
【0162】
ヘアピンループ構造を有する本発明の好ましい二本鎖分子の例は以下に示される。以下の構造では、ループ配列は、AUG、CCC、UUCG、CCACC、CTCGAG、AAGCUU、CCACACC、およびUUCAAGAGAの中から選択することができるが、本発明はこれらに限定されない:
5’−CACAGUAUCUCCUAGUCAA−[B]−UUGACUAGGAGAUACUGUG−3’(標的配列SEQ ID NO:5に関する);
5’−GUUGCUCAGGAUUUGGAUU−[B]−AAUCCAAAUCCUGAGCAAC−3’(標的配列SEQ ID NO:7に関する);
5’−CUAGUCAACUACUGGAUUU−[B]−AAAUCCAGUAGUUGACUAG−3’(標的配列SEQ ID NO:14に関する);および
5’−GAUAGAGCGUGAAGGCGAA−[B]−UUCGCCUUCACGCUCUAUC−3’(標的配列SEQ ID NO:15に関する)。
【0163】
さらに、二本鎖分子の阻害活性を高めるために、ヌクレオチド「u」を3’オーバーハングとして標的配列のアンチセンス鎖の3’末端に付加することができる。付加される「u」の数は少なくとも2、概して2〜10、好ましくは2〜5である。付加される「u」は二本鎖分子のアンチセンス鎖の3’末端で一本鎖を形成する。
【0164】
二本鎖分子を調製するための方法は特に限定されないが、当技術分野で公知の化学合成方法を使用するのが好ましい。化学合成方法に従って、センスおよびアンチセンスの一本鎖ポリヌクレオチドを別々に合成した後、それらを適当な方法により共にアニーリングして二本鎖分子を得る。アニーリングの具体的な例では、合成一本鎖ポリヌクレオチドは好ましくは少なくとも約3:7、より好ましくは約4:6、最も好ましくは実質的に等モル量(すなわち約5:5のモル比)のモル比で混合される。次に、混合物を二本鎖分子が解離する温度まで加熱した後、徐々に冷ます。アニーリングした二本鎖ポリヌクレオチドは、当技術分野で公知の通常利用される方法によって精製することができる。精製方法の例としては、アガロースゲル電気泳動を利用するか、または残存一本鎖ポリヌクレオチドが、例えば適当な酵素による分解によって任意で取り除かれる方法が挙げられる。
【0165】
C12ORF48またはPARP1配列に隣接する調節配列は同一であってもまたは異なっていてもよく、このためこれらの発現は独立に、または時間的もしくは空間的様式で調節することができる。二本鎖分子は、C12ORF48またはPARP1遺伝子の鋳型を、例えば低分子核RNA(snRNA)U6由来のRNAポリIII転写ユニットまたはヒトH1 RNAプロモーターを含有するベクターにクローニングすることによって細胞内で転写することができる。
【0166】
本発明の二本鎖分子を含有するベクター
本明細書に記載の二本鎖分子を1つまたは複数含有するベクター、および該ベクターを含有する細胞も本発明に包含される。
【0167】
本発明にとって特に関心対象であるのは、以下の[1]〜[10]のベクターである:
[1]互いにハイブリダイズすることで二本鎖分子を形成するセンス鎖とセンス鎖に相補的なアンチセンス鎖とから構成され、細胞に導入された場合にC12ORF48またはPARP1のインビボ発現および細胞増殖を阻害する二本鎖分子をコードするベクター;
[2]SEQ ID NO:5(SEQ ID NO:10の595〜613位)、SEQ ID NO:7(SEQ ID NO:10の1133〜1151位)、SEQ ID NO:8(SEQ ID NO:10の1310〜1328位)、SEQ ID NO:14(SEQ ID NO:10の606〜624位)、およびSEQ ID NO:15(SEQ ID NO:12の2685〜2703位)の中から選択される標的配列に一致するmRNAに対して作用する二本鎖分子をコードする、[1]に記載のベクター;
[3]センス鎖が、SEQ ID NO:5、7、8、14、および15の中から選択される標的配列に対応する配列を含有している、[1]に記載のベクター;
[4]約100ヌクレオチド長未満である二本鎖分子をコードする[3]に記載のベクター;
[5]約75ヌクレオチド長未満である二本鎖分子をコードする[4]に記載のベクター;
[6]約50ヌクレオチド長未満である二本鎖分子をコードする[5]に記載のベクター;
[7]約25ヌクレオチド長未満である二本鎖分子をコードする[6]に記載のベクター;
[8]約19〜約25ヌクレオチド長である二本鎖分子をコードする[7]に記載のベクター;
[9]二本鎖分子が、介在一本鎖により連結されたセンス鎖およびアンチセンス鎖の両方を有する単一のポリヌクレオチドから構成される、[1]に記載のベクター;ならびに
[10]一般式5’−[A]−[B]−[A’]−3’を有する二本鎖分子をコードするベクターであって、式中、[A]はSEQ ID NO:5、7、および8の中から選択される標的配列に対応する配列を含有しているセンス鎖であり、[B]は3〜23個のヌクレオチドから構成される介在一本鎖であり、かつ[A’]は[A]に相補的な配列を含有しているアンチセンス鎖である、[9]に記載のベクター。
【0168】
本発明のベクターは、好ましくは、発現可能な形態で本発明の二本鎖分子をコードする。本明細書において、「発現可能な形態で」という語句は、細胞に導入された場合に、ベクターが前記分子を発現するであろうことを示す。好ましい態様では、ベクターは、二本鎖分子の発現に必要な調節要素を含む。そのような本発明のベクターは、本発明の二本鎖分子を生成するのに使用でき、またはがんを治療するための活性成分として直接使用することができる。
【0169】
本発明のベクターは、例えば、両方の鎖が(DNA分子の転写によって)発現されるような方法で制御配列がC12ORF48配列と機能的に連結するように、C12ORF48配列を発現ベクターにクローニングすることによって生成することができる(Lee NS et al., Nat Biotechnol 2002 May, 20(5): 500-5)。例えば、mRNAに対するアンチセンスであるRNA分子が第1のプロモーター(例えばクローニングされたDNAの3’末端と隣接するプロモーター配列)によって転写され、mRNAに対するセンス鎖であるRNA分子が第2のプロモーター(例えばクローニングされたDNAの5’末端に隣接するプロモーター配列)によって転写される。センス鎖とアンチセンス鎖とがインビボでハイブリダイズし、遺伝子をサイレンシングするための二本鎖分子構築物を生成する。あるいは、二本鎖分子のセンス鎖およびアンチセンス鎖をそれぞれコードする2つのベクター構築物は、センス鎖およびアンチセンス鎖をそれぞれ発現した後、二本鎖分子構築物を形成するために利用する。さらに、クローニングされた配列は二次構造(例えばヘアピン)を有する構築物、すなわち標的遺伝子のセンス配列および相補的なアンチセンス配列の両方を含有するベクターの単一転写産物をコードすることができる。
【0170】
本発明のベクターは、標的細胞のゲノムへの安定した挿入を達成するためにそのようなものを具備することもできる(例えば相同的な組換えカセットベクターの説明に関しては、Thomas KR & Capecchi MR, Cell 1987, 51: 503-12を参照されたい)。例えば、Wolff et al., Science 1990, 247: 1465-8、米国特許第5,580,859号、同第5,589,466号、同第5,804,566号、同第5,739,118号、同第5,736,524号、同第5,679,647号、およびWO98/04720を参照されたい。DNAベースの送達技術の例としては、「ネイキッドDNA」、促進性(ブピバカイン、ポリマー、ペプチド媒介性)送達、カチオン性脂質複合体、および粒子媒介性(「遺伝子銃」)または圧力媒介性の送達が挙げられる(例えば米国特許第5,922,687号を参照されたい)。
【0171】
本発明のベクターは例えば、ウイルスベクターまたは細菌ベクターを含む。発現ベクターの例としては、弱毒化ウイルス宿主、例えばワクシニアまたは鶏痘が挙げられる(例えば米国特許第4,722,848号を参照されたい)。このアプローチは、例えば二本鎖分子をコードするヌクレオチド配列を発現するためのベクターとしてのワクシニアウイルスの使用を含む。標的遺伝子を発現する細胞に導入すると、組換えワクシニアウイルスは前記分子を発現し、それにより細胞の増殖を抑制する。使用することのできるベクターの別の例としてはカルメット・ゲラン桿菌(Bacille Calmette Guerin)(BCG)が挙げられる。BCGベクターはStover et al., Nature 1991, 351: 456-60に記載されている。広範な他のベクターが、二本鎖分子の治療的投与および生成に有用である。例としては、アデノウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、チフス菌(Salmonella typhi)ベクター、無毒化炭疽毒素ベクター等が挙げられる。例えば、Shata et al., Mol Med Today 2000, 6: 66-71、Shedlock et al., J Leukoc Biol 2000, 68: 793-806、およびHipp et al., In Vivo 2000, 14: 571-85を参照されたい。
【0172】
本発明の二本鎖分子を使用して、がん細胞の増殖を阻害するかまたは低下させ、がんを治療する方法
本発明において、C12ORF48についての4つの異なるdsRNAおよびPARP1についての1つのdsRNAを、細胞増殖を阻害する能力について試験した。膵臓癌細胞株における遺伝子の発現を効果的にノックダウンした、C12ORF48についての4つのdsRNA(図2および7)ならびにPARP1についてのdsRNA(図7)は、細胞増殖の抑制と一致した。
【0173】
したがって、本発明は、C12ORF48またはPARP1の発現の阻害を介して、それぞれ、C12ORF48遺伝子またはPARP1遺伝子の機能障害を誘導することにより、細胞増殖、すなわち、膵臓癌および前立腺癌の細胞増殖を阻害する方法を提供する。C12ORF48遺伝子またはPARP1遺伝子の発現は、C12ORF48遺伝子もしくはPARP1遺伝子を特異的に標的とする本発明の前記二本鎖分子のいずれか、または該二本鎖分子のいずれかを発現し得る本発明のベクターによって阻害され得る。
【0174】
本二本鎖分子および本ベクターの、がん性細胞の細胞増殖を阻害するそのような能力は、それらが、がんを治療するための方法に使用され得ることを示す。したがって、12ORF48遺伝子またはPARP1遺伝子は正常器官ではほとんど検出されなかったため(図1)、本発明は、有害作用なしに、C12ORF48もしくはPARP1遺伝子に対する二本鎖分子、または該分子を発現するベクターを投与することによって膵臓癌および前立腺癌を有する患者を治療する方法を提供する。
【0175】
本発明にとって特に関心対象であるのは、以下の[1]〜[36]の方法である:
[1]互いにハイブリダイズすることで二本鎖分子を形成するセンス鎖とこれに相補的なアンチセンス鎖とから構成され、かつC12ORF48遺伝子を過剰発現している細胞におけるC12ORF48の発現および細胞増殖を阻害する単離された二本鎖分子を、少なくとも1つ、投与する工程を含む、がん細胞の増殖を阻害してがんを治療するための方法であって、該がん細胞またはがんが少なくとも1つのC12ORF48遺伝子を発現している、方法;
[2]二本鎖分子が、C12ORF48遺伝子についてのSEQ ID NO:5(SEQ ID NO:10の595〜613位)、SEQ ID NO:7(SEQ ID NO:10の1133〜1151位)、SEQ ID NO:8(SEQ ID NO:10の1310〜1328位)、およびSEQ ID NO:14(SEQ ID NO:10の606〜624位)、ならびにPARP1遺伝子についてのSEQ ID NO:15(SEQ ID NO:12の2685〜2703位)の中から選択される標的配列に一致するmRNAにおいて作用する、[1]に記載の方法;
[3]前記センス鎖が、SEQ ID NO:5、7、8、14、および15の中から選択される標的配列に対応する配列を含有している、[2]に記載の方法;
[4]治療されるがんが膵臓癌および/または前立腺癌である、[1]に記載の方法;
[5]膵臓癌が膵管腺癌(PDAC)であり、前立腺癌が去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)である、[4]に記載の方法;
[6]複数種の二本鎖分子が投与される、[1]に記載の方法;
[7]二本鎖分子が約100ヌクレオチド長未満である、[3]に記載の方法;
[8]二本鎖分子が約75ヌクレオチド長未満である、[7]に記載の方法;
[9]二本鎖分子が約50ヌクレオチド長未満である、[8]に記載の方法;
[10]二本鎖分子が約25ヌクレオチド長未満である、[9]に記載の方法;
[11]二本鎖分子が約19〜約25ヌクレオチド長である、[10]に記載の方法;
[12]二本鎖分子が、介在一本鎖により連結されたセンス鎖およびアンチセンス鎖の両方を含有している単一のポリヌクレオチドから構成される、[1]に記載の方法;
[13]二本鎖分子が、一般式5’−[A]−[B]−[A’]−3’を有する方法であって、式中、[A]はSEQ ID NO:5、7、8、14、および15の中から選択される標的配列に対応する配列を含有しているセンス鎖であり、[B]は3〜23個のヌクレオチドから構成される介在一本鎖であり、かつ[A’]は[A]に相補的な配列を含有しているアンチセンス鎖である、[12]に記載の方法;
[14]二本鎖分子がRNAである、[1]に記載の方法;
[15]二本鎖分子がDNAおよびRNAの両方を含有している、[1]に記載の方法;
[16]二本鎖分子がDNAポリヌクレオチドとRNAポリヌクレオチドとのハイブリッドである、[15]に記載の方法;
[17]センス鎖ポリヌクレオチドおよびアンチセンス鎖ポリヌクレオチドが、それぞれDNAおよびRNAから構成される、[16]に記載の方法;
[18]二本鎖分子がDNAおよびRNAのキメラである、[15]に記載の方法;
[19]アンチセンス鎖の3’末端に隣接する領域、またはセンス鎖の5’末端に隣接する領域およびアンチセンス鎖の3’末端に隣接する領域の両方が、RNAから構成される、[18]に記載の方法;
[20]隣接領域が9〜13個のヌクレオチドから構成される、[19]に記載の方法;
[21]二本鎖分子が3’オーバーハングを含有している、[1]に記載の方法;
[22]二本鎖分子が、該分子に加えて、トランスフェクション増強剤および薬学的に許容可能な担体を含む組成物に含有されている、[1]に記載の方法;
[23]二本鎖分子がベクターによりコードされる、[1]に記載の方法;
[24]ベクターによりコードされる二本鎖分子が、C12ORF48遺伝子についてのSEQ ID NO:5(SEQ ID NO:10の595〜613位)、SEQ ID NO:7(SEQ ID NO:10の1133〜1151位)、SEQ ID NO:8(SEQ ID NO:10の1310〜1328位)、およびSEQ ID NO:14(SEQ ID NO:10の606〜624位)、ならびにPARP1についてのSEQ ID NO:15(SEQ ID NO:12の2685〜2703位)の中から選択される標的配列に一致するmRNAにおいて作用する、[23]に記載の方法;
[25]ベクターによりコードされる二本鎖分子のセンス鎖が、SEQ ID NO:5、7、8、14、および15の中から選択される標的配列に対応する配列を含有している、[24]に記載の方法;
[26]治療されるがんが膵臓癌および/または前立腺癌である、[23]に記載の方法;
[27]膵臓癌が膵管腺癌(PDAC)であり、前立腺癌が去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)である、[26]に記載の方法;
[28]複数種の二本鎖分子が投与される、[23]に記載の方法;
[29]ベクターによりコードされる二本鎖分子が約100ヌクレオチド長未満である、[25]に記載の方法;
[30]ベクターによりコードされる二本鎖分子が約75ヌクレオチド長未満である、[29]に記載の方法;
[31]ベクターによりコードされる二本鎖分子が約50ヌクレオチド長未満である、[30]に記載の方法;
[32]ベクターによりコードされる二本鎖分子が約25ヌクレオチド長未満である、[31]に記載の方法;
[33]ベクターによりコードされる二本鎖分子が約19〜約25ヌクレオチド長である、[32]に記載の方法;
[34]ベクターによりコードされる二本鎖分子が、介在一本鎖により連結されたセンス鎖およびアンチセンス鎖の両方を含有している単一のポリヌクレオチドから構成される、[23]に記載の方法;
[35]ベクターによりコードされる二本鎖分子が、一般式5’−[A]−[B]−[A’]−3’を有する方法であって、式中、[A]はSEQ ID NO:5、7、8、14、および15の中から選択される標的配列に対応する配列を含有しているセンス鎖であり、[B]は3〜23個のヌクレオチドから構成される介在一本鎖であり、かつ[A’]は[A]に相補的な配列を含有しているアンチセンス鎖である、[34]に記載の方法;ならびに
[36]ベクターによりコードされる二本鎖分子が、該分子に加えて、トランスフェクション増強剤および薬学的に許容可能な担体を含む組成物に含有されている、[23]に記載の方法。
【0176】
本発明の方法を、以下に、より詳細に説明する。C12ORF48遺伝子を発現している細胞の増殖は、C12ORF48遺伝子に対する二本鎖分子、該分子を発現するベクター、またはそれらを含有している組成物と、細胞を接触させることにより阻害され得る。さらに、細胞をトランスフェクション剤と接触させることもできる。好適なトランスフェクション剤は当技術分野で公知である。「細胞増殖の阻害」という語句は、その細胞が、分子に曝露されていない細胞と比較して、より低い速度で増殖するか、または減少した生存能を有することを示す。細胞増殖は、当技術分野で公知の方法によって、例えば、MTT細胞増殖アッセイを使用して、測定され得る。
【0177】
細胞が本発明の二本鎖分子の標的遺伝子を発現または過剰発現している限り、任意の種類の細胞の増殖を、本方法によって抑制することができる。例示的な細胞には、膵臓癌細胞または前立腺癌細胞、特に、膵管腺癌(PDAC)または去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)が含まれる。
【0178】
したがって、C12ORF48に関連した疾患に罹患しているかまたはそれを発症するリスクを有する患者を、本二本鎖分子の少なくとも1つ、該分子の少なくとも1つを発現している少なくとも1つのベクター、または該分子の少なくとも1つを含有している少なくとも1つの組成物の投与によって治療することができる。例えば、膵臓癌または前立腺癌に罹患している患者が、本方法によって治療され得る。がんの種類は、診断される腫瘍の特定の種類によって、標準的な方法によって同定され得る。好ましくは、本発明の方法によって治療される患者は、RT−PCRまたはイムノアッセイによって、患者由来の生検材料におけるC12ORF48の発現を検出することにより選択される。好ましくは、本発明の治療の前に、対象由来の生検試料を、当技術分野で公知の方法、例えば、免疫組織化学分析またはRT−PCRによって、C12ORF48遺伝子の過剰発現について確認する。
【0179】
複数種の二本鎖分子(またはそれを発現するベクターまたはそれを含有している組成物)の投与を通して、細胞増殖を阻害し、それによりがんを治療する本方法によると、分子は各々、異なる構造を有するが、C12ORF48またはPARP1の同一の標的配列に一致するmRNAにおいて作用しうる。あるいは、複数種の二本鎖分子は、同一の遺伝子の異なる標的配列に一致するmRNAにおいて作用しうる。あるいは、例えば、この方法は、C12ORF48またはPARP1の1つ、2つ、またはそれ以上の標的配列に対する指向性を有する二本鎖分子を利用してもよい。
【0180】
細胞増殖を阻害するために、本発明の二本鎖分子は、該分子と対応するmRNA転写産物との結合を達成する形態で、細胞に直接導入することができる。あるいは、上記のように、二本鎖分子をコードするDNAは、ベクターとして細胞に導入することができる。二本鎖分子およびベクターを細胞に導入するために、トランスフェクション増強剤、例えばFuGENE(Roche diagnostices)、Lipofectamine 2000(Invitrogen)、Oligofectamine(Invitrogen)、およびNucleofector(Wako pure Chemical)を利用することができる。
【0181】
治療は、臨床的利点、例えばC12ORF48遺伝子の発現の低減、または対象におけるがんのサイズ、有病率、もしくは転移能の減少をもたらす場合に、「有効」とみなされる。治療を予防的に適用する場合、「有効」とは、治療ががんの形成を遅らせるもしくは防ぐか、またはがんの臨床症状を防ぐかもしくは緩和するという意味である。有効性(Efficaciousness)は、特定の腫瘍の種類を診断または治療するための任意の公知の方法に関連して求められる。
【0182】
本発明の方法および組成物が予防(Preventionおよびprophylaxis)の文脈で有用であるという点で、そのような用語は、疾患による死亡または罹患の負担を低減する任意の活性を意味するよう本明細書において互換的に用いられる。予防は、「一次的、二次的、および三次的な予防レベルで」行うことができる。一次的な予防は疾患の発症を回避するのに対して、二次的および三次的なレベルの予防は、機能を回復することおよび疾患に関連する合併症を低減することにより、疾患の進行および症状の出現の予防、ならびに既に確立された疾患の悪影響の低減を目的とする活動を包含する。あるいは、予防は、特定の障害の重症度を軽減すること、例えば、腫瘍の増殖および転移を低減することを目的とする広範な予防的療法を含み得る。
【0183】
がんの治療および/もしくは予防、ならびに/または手術後のその再発の予防は、以下の工程のいずれかを含む:がん細胞の外科的除去、がん細胞の増殖阻害、腫瘍の退縮または退行、がんの発生の寛解および抑制の誘導、腫瘍退行、ならびに転移の低減または阻害等。がんの効果的な治療および/または予防は、死亡率を減少させ、がんを有する個体の予後を改善し、血中の腫瘍マーカーのレベルを減少させ、およびがんに付随する検出可能な症状を緩和する。例えば、症状の低減または改善は、10%、20%、30%、またはそれ以上の低減を含む効果的な治療および/または予防、または安定している疾患を構成する。
【0184】
本発明の二本鎖分子は、準化学量論的な量でC12ORF48またはPARP1のmRNAを分解することが理解される。いかなる理論にも束縛されることを望まないが、本発明の二本鎖分子によって、触媒的様式で標的mRNAの分解が起こると考えられている。したがって、標準的ながん治療に比べて、本発明は治療効果を発揮するためにがん部位またはその近くで必要とされる二本鎖分子の有意に少ない送達を必要とする。
【0185】
当業者は、例えば対象の体重、年齢、性別、疾患の種類、症状、および他の状態;投与経路;ならびに投与が局所的または全身的のいずれであるかなどの因子を考慮して、所定の対象に投与されるべき本発明の二本鎖分子の有効量を容易に求めることができる。概して、本発明の二本鎖分子の有効量は、がん部位またはその近くにおいて約1ナノモル(nM)〜約100nM、好ましくは約2nM〜約50nM、より好ましくは約2.5nM〜約10nMである細胞内濃度である。より多くのまたはより少ない量の二本鎖分子を投与することができることが意図される。特定の状況において必要とされる正確な用量は、当業者により容易にかつルーチン的に決定されうる。
【0186】
がんを治療するために、本発明の二本鎖分子は、該二本鎖分子とは異なる薬剤と併用して対象に投与することもできる。あるいは、本発明の二本鎖分子は、がんを治療するために設計された別の治療法と併用して対象に投与することができる。例えば、本発明の二本鎖分子は、がんを治療するまたはがん転移を予防するのに現在利用されている治療法(例えば放射線療法、外科的手術、および化学療法剤、例えばシスプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、5−フルオロウラシル、アドリアマイシン、ダウノルビシン、またはタモキシフェンを用いた治療)と併用して投与することができる。
【0187】
本方法において、二本鎖分子は、送達試薬と共にネイキッド二本鎖分子として、または該二本鎖分子を発現する組換えプラスミドもしくはウイルスベクターとしてのいずれかで対象に投与することができる。
【0188】
本発明の二本鎖分子と共に投与するのに好適な送達試薬としては、Mirus Transit TKO脂溶性試薬、リポフェクチン、リポフェクタミン、セルフェクチン、またはポリカチオン(例えばポリリシン)、またはリポソームが挙げられる。好ましい送達試薬はリポソームである。
【0189】
リポソームは、特定の組織、例えば膵臓または前立腺の腫瘍組織への二本鎖分子の送達に役立ち、二本鎖分子の血液半減期も増大させ得る。本発明の文脈における使用に好適なリポソームは、標準的な小胞形成脂質から形成してもよく、概してこれには、中性または負に帯電したリン脂質およびステロール、例えばコレステロールが含まれる。一般的には、所望のリポソームサイズおよび血流中におけるリポソームの半減期などの因子を考慮して、脂質の選択が導かれる。リポソームを調製するのに、例えばSzoka et al., Ann Rev Biophys Bioeng 1980, 9: 467、ならびに米国特許第4,235,871号、同第4,501,728号、同第4,837,028号、および同第5,019,369号(その開示全体が参照により本明細書に引用される)で記載されるような様々な方法が知られている。
【0190】
好ましくは、本発明の二本鎖分子を封入するリポソームは、リポソームをがん部位に送達することができるリガンド分子を含む。腫瘍または血管内皮細胞に広まった受容体に結合するリガンド、例えば腫瘍抗原または内皮細胞表面抗原と結合するモノクローナル抗体が好ましい。
【0191】
特に好ましくは、本発明の二本鎖分子を封入するリポソームは、例えばその構造の表面に結合したオプソニン化阻害部分を有することによって、単核マクロファージおよび網内系によるクリアランスを避けるように改変される。一態様では、本発明のリポソームは、オプソニン化阻害部分およびリガンドの両方を含み得る。
【0192】
本発明のリポソームを調製するのに用いるオプソニン化阻害部分は典型的に、リポソーム膜と結合する巨大な親水性ポリマーである。本明細書で使用される場合、オプソニン化阻害部分は、例えば脂質−可溶性アンカーの膜自体へのインターカレーションによって、または膜脂質の活性基への直接結合によって、膜と化学的にまたは物理的に接着する場合に、リポソーム膜と「結合」する。これらのオプソニン化阻害親水性ポリマーは、例えば米国特許第4,920,016号(その開示全体は参照により本明細書に組み入れられる)に記載されるように、マクロファージ−単球系(「MMS」)および網内系(「RES」)によるリポソームの取り込みを有意に低減する保護表面層を形成する。したがって、オプソニン化阻害部分を用いて改変されたリポソームは、非改変リポソームよりも非常に長く循環中に留まる。この理由から、そのようなリポソームは「ステルス」リポソームと呼ばれることもある。
【0193】
ステルスリポソームは、多孔性または「漏出性(leaky)」微小血管系によって送り込まれる組織中で集積することが知られている。したがって、そのような微小血管系の欠陥を特徴とする標的組織、例えば固形腫瘍は、効率的にこれらのリポソームを集積する。Gabizon et al., Proc Natl Acad Sci USA 1988, 18: 6949-53を参照されたい。さらに、RESによる取り込みの低減が、肝臓および脾臓における有意な集積を防ぐことによって、ステルスリポソームの毒性を低下させる。したがって、オプソニン化阻害部分を用いて改変された本発明のリポソームは、本発明の二本鎖分子を腫瘍細胞に送達することができる。
【0194】
リポソームを改変するのに好適なオプソニン化阻害部分は、好ましくは、分子量が約500ダルトン〜約40,000ダルトン、より好ましくは約2,000ダルトン〜約20,000ダルトンの水溶性ポリマーであり得る。そのようなポリマーとしては、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール(PPG)誘導体;例えばメトキシPEGまたはPPG、およびPEGまたはPPGステアレート;合成ポリマー、例えばポリアクリルアミドまたはポリN−ビニルピロリドン;直鎖、分岐、または樹状のポリアミドアミン;ポリアクリル酸;多価アルコール、例えばカルボン酸基またはアミノ基が化学結合したポリビニルアルコールおよびポリキシリトール、ならびにガングリオシド、例えばガングリオシドGMが挙げられる。PEG、メトキシPEG、もしくはメトキシPPGのコポリマー、またはそれらの誘導体も好適である。さらに、オプソニン化阻害ポリマーは、PEGと、ポリアミノ酸、多糖、ポリアミドアミン、ポリエチレンアミン、またはポリヌクレオチドのいずれかとのブロックコポリマーであり得る。オプソニン化阻害ポリマーは、アミノ酸またはカルボン酸を含有する天然多糖例えばガラクツロン酸、グルクロン酸、マンヌロン酸、ヒアルロン酸、ペクチン酸、ノイラミン酸、アルギン酸、カラゲナン;アミノ化多糖またはオリゴ糖(直鎖状または分岐状);または、例えばカルボン酸基の結果として生じた連結を有するカルボン酸の誘導体と反応させた、カルボキシル化多糖またはカルボキシル化オリゴ糖でもあり得る。
【0195】
好ましくは、オプソニン化阻害部分はPEG、PPG、またはその誘導体である。PEGまたはPEG誘導体を用いて改変したリポソームは「PEG化リポソーム」と呼ばれることもある。
【0196】
オプソニン化阻害部分は、多くの公知の技術のいずれか1つによってリポソーム膜と結合することができる。例えば、PEGのN−ヒドロキシスクシンイミドエステルは、ホスファチジル−エタノールアミン脂質可溶性アンカーと結合し、続いて膜と結合することができる。同様に、デキストランポリマーは、60℃でNa(CN)BHおよび溶媒混合物、例えば30:12の比のテトラヒドロフランおよび水を用いて、還元アミノ化によってステアリルアミン脂質可溶性アンカーで誘導体化することができる。
【0197】
本発明の二本鎖分子を発現するベクターが上記で検討されている。少なくとも1つの本発明の二本鎖分子を発現するそのようなベクターもまた、直接、またはMirus Transit LT1脂溶性試薬、リポフェクチン、リポフェクタミン、セルフェクチン、ポリカチオン(例えばポリリシン)、またはリポソームを含む好適な送達試薬と共に、投与することができる。本発明の二本鎖分子を発現する組換えウイルスベクターを患者のがん領域に送達する方法は当技術分野の技術範囲内である。
【0198】
本発明の二本鎖分子は、二本鎖分子をがん部位に送達するのに好適な任意の手段によって、対象に投与することができる。例えば、二本鎖分子は、遺伝子銃、電気穿孔法、または他の好適な非経口投与経路もしくは腸内投与経路によって投与することができる。
【0199】
好適な腸内投与経路としては、経口、直腸、または鼻腔内送達が挙げられる。
【0200】
好適な非経口投与経路としては、膀胱内および血管内投与(例えば静脈ボーラス注射、静脈注入、動脈内ボーラス注射、動脈内注入、および血管系へのカテーテル点滴注入);周囲組織および組織内への注射(例えば腫瘍周囲および腫瘍内注射);皮下注入を含む皮下注射または皮下沈着(例えば浸透圧ポンプによって);例えばカテーテルもしくは他の留置装置(例えば、多孔性、非孔性、またはゼラチン様の材料を含む、坐剤またはインプラント)による、がん部位の領域またはその近くの領域への直接適用;ならびに吸入が挙げられる。二本鎖分子またはベクターの注射または注入は、がんの部位でまたはその近くで行われることが好ましい。
【0201】
本発明の二本鎖分子は、単回投与または複数回の投与で投与することができる。本発明の二本鎖分子の投与が注入によるものである場合、注入は、単回の持続投与で行うか、または複数回の注入によって送達することができる。薬剤の注射は、がん部位の組織、またはがん部位の近くの組織に直接行うことが好ましい。がん部位の組織にまたはがん部位の近くの組織に剤を複数回注射することが特に好ましい。
【0202】
当業者は容易に、本発明の二本鎖分子を所定の対象に投与するのに適当な投与計画を決定することもできる。例えば、二本鎖分子は、例えばがん部位でのまたはその近くでの単回注射または沈着として、対象に1回で投与することができる。あるいは、二本鎖分子は、約3日〜約28日、より好ましくは約7日〜約10日の間、1日1回または2回、対象に投与することができる。好ましい投与計画では、二本鎖分子は1日1回7日間、がん部位にまたはその近くに注射される。投与計画に複数回の投与が含まれる場合、対象に投与される二本鎖分子の有効量は、投与計画全体を通して投与される二本鎖分子の総量を含むことが理解される。
【0203】
本発明の二本鎖分子を含有している組成物
上記に加えて、本発明は、本二本鎖分子または該分子をコードするベクターのうちの少なくとも1つを含む薬学的組成物も提供する。本発明にとって特に関心対象であるのは、以下の[1]〜[36]の組成物である:
[1]C12ORF48またはPARP1の発現および細胞増殖を阻害する少なくとも1つの単離された二本鎖分子を含む、がん細胞の増殖を阻害してがんを治療するための組成物であって、該がんおよびがん細胞が少なくとも1つのC12ORF48遺伝子またはPARP1遺伝子を発現し、さらに該分子が、互いにハイブリダイズすることで二本鎖分子を形成するセンス鎖とこれに相補的なアンチセンス鎖とから構成される、組成物;
[2]二本鎖分子が、C12ORF48遺伝子についてのSEQ ID NO:5(SEQ ID NO:10の595〜613位)、SEQ ID NO:7(SEQ ID NO:10の1133〜1151位)、SEQ ID NO:8(SEQ ID NO:10の1310〜1328位)、およびSEQ ID NO:14(SEQ ID NO:10の606〜624位)、ならびにPARP1についてのSEQ ID NO:15(SEQ ID NO:12の2685〜2703位)の中から選択される標的配列に一致するmRNAにおいて作用する、[1]に記載の組成物;
[3]二本鎖分子、センス鎖が、SEQ ID NO:5、7、8、14、および15の中から選択される標的配列に対応する配列を含有している、[2]に記載の組成物;
[4]治療されるがんが膵臓癌および/または前立腺癌である、[1]に記載の組成物;
[5]膵臓癌が膵管腺癌(PDAC)であり、前立腺癌が去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)である、[4]に記載の組成物;
[6]複数種の二本鎖分子を含有している、[1]に記載の組成物;
[7]二本鎖分子が約100ヌクレオチド長未満である、[3]に記載の組成物;
[8]二本鎖分子が約75ヌクレオチド長未満である、[7]に記載の組成物;
[9]二本鎖分子が約50ヌクレオチド長未満である、[8]に記載の組成物;
[10]二本鎖分子が約25ヌクレオチド長未満である、[9]に記載の組成物;
[11]二本鎖分子が約19〜約25ヌクレオチド長である、[10]に記載の組成物;
[12]二本鎖分子が、介在一本鎖により連結されたセンス鎖およびアンチセンス鎖を含有している単一のポリヌクレオチドから構成される、[1]に記載の組成物;
[13]二本鎖分子が、一般式5’−[A]−[B]−[A’]−3’を有する組成物であって、式中、[A]はSEQ ID NO:5、7、8、14、および15の中から選択される標的配列に対応する配列を含有しているセンス鎖配列であり、[B]は3〜23個のヌクレオチドからなる介在一本鎖であり、かつ[A’]は[A]に相補的な配列を含有しているアンチセンス鎖である、[12]に記載の組成物;
[14]二本鎖分子がRNAである、[1]に記載の組成物;
[15]二本鎖分子がDNAおよび/またはRNAである、[1]に記載の組成物;
[16]二本鎖分子がDNAポリヌクレオチドとRNAポリヌクレオチドとのハイブリッドである、[15]に記載の組成物;
[17]センス鎖ポリヌクレオチドおよびアンチセンス鎖ポリヌクレオチドが、それぞれDNAおよびRNAから構成される、[16]に記載の組成物;
[18]二本鎖分子がDNAおよびRNAのキメラである、[15]に記載の組成物;
[19]アンチセンス鎖の3’末端に隣接する領域、またはセンス鎖の5’末端に隣接する領域およびアンチセンス鎖の3’末端に隣接する領域の両方が、RNAから構成される、[18]に記載の組成物;
[20]隣接領域が9〜13個のヌクレオチドから構成される、[19]に記載の組成物;
[21]二本鎖分子が3’オーバーハングを含有している、[1]に記載の組成物;
[22]トランスフェクション増強剤および薬学的に許容可能な担体を含む、[1]に記載の組成物;
[23]二本鎖分子がベクターによりコードされ、かつ組成物に含有されている、[1]に記載の組成物;
[24]ベクターによりコードされる二本鎖分子が、C12ORF48遺伝子についてのSEQ ID NO:5(SEQ ID NO:10の595〜613位)、SEQ ID NO:7(SEQ ID NO:10の1133〜1151位)、SEQ ID NO:8(SEQ ID NO:10の1310〜1328位)、およびSEQ ID NO:14(SEQ ID NO:10の606〜624位)、ならびにPARP1についてのSEQ ID NO:15(SEQ ID NO:12の2685〜2703位)の中から選択される標的配列に一致するmRNAにおいて作用する、[23]に記載の組成物;
[25]ベクターによりコードされる二本鎖分子のセンス鎖が、SEQ ID NO:5、7、8、14、および15の中から選択される標的配列に対応する配列を含有している、[24]に記載の組成物;
[26]治療されるがんが膵臓癌および/または前立腺癌である、[23]に記載の組成物;
[27]膵臓癌が膵管腺癌(PDAC)であり、前立腺癌が去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)である、[26]に記載の組成物;
[28]複数種の二本鎖分子が投与される、[23]に記載の組成物;
[29]ベクターによりコードされる二本鎖分子が約100ヌクレオチド長未満である、[25]に記載の組成物;
[30]ベクターによりコードされる二本鎖分子が約75ヌクレオチド長未満である、[29]に記載の組成物;
[31]ベクターによりコードされる二本鎖分子が約50ヌクレオチド長未満である、[30]に記載の組成物;
[32]ベクターによりコードされる二本鎖分子が約25ヌクレオチド長未満である、[31]に記載の組成物;
[33]ベクターによりコードされる二本鎖分子が約19〜約25ヌクレオチド長である、[32]に記載の組成物;
[34]ベクターによりコードされる二本鎖分子が、介在一本鎖により連結されたセンス鎖およびアンチセンス鎖の両方を含有している単一のポリヌクレオチドから構成される、[23]に記載の組成物;
[35]二本鎖分子が、一般式5’−[A]−[B]−[A’]−3’を有する組成物であって、式中、[A]はSEQ ID NO:5、7、8、14、および15の中から選択される標的配列に対応する配列を含有しているセンス鎖であり、[B]は3〜23個のヌクレオチドから構成される介在一本鎖であり、かつ[A’]は[A]に相補的な配列を含有しているアンチセンス鎖である、[23]に記載の組成物;ならびに
[36]トランスフェクション増強剤および薬学的に許容可能な担体を含む、[23]に記載の組成物。
【0204】
本発明の好適な組成物は以下でより詳細に説明される。
【0205】
本発明の二本鎖分子は、好ましくは、当技術分野で公知の技術に従って、対象に投与する前に薬学的組成物として調合することができる。本発明の薬学的組成物は、少なくとも無菌でありかつパイロジェンを含まないことを特徴とする。本明細書で使用される場合、「薬学的製剤」は、ヒトおよび獣医学的使用のための製剤を含む。本発明の薬学的組成物を調製する方法は、例えばRemington's Pharmaceutical Science, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa.(1985)(その開示全体が参照により本明細書に組み入れられる)に記載のように当技術分野の技術範囲内である。
【0206】
本発明の薬学的製剤は、生理学的に許容可能な担体媒体と混合して、本発明の二本鎖分子もしくはこれをコードするベクターの少なくとも1つ(例えば0.1重量%〜90重量%)、または該分子の生理学的に許容可能な塩を含有する。好ましい生理学的に許容可能な担体媒体は、水、緩衝水、通常の生理食塩水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシン、ヒアルロン酸等である。
【0207】
本発明によれば、組成物は、複数種類の二本鎖分子を含有することができ、それらの分子のそれぞれが、C12ORF48またはPARP1の同じ標的配列または異なる標的配列に対する指向性を有し得る。例えば、組成物は、C12ORF48またはPARP1に対する指向性を有する二本鎖分子を含有することができる。あるいは、例えば組成物は、C12ORF48またはPARP1から選択される、1つ、2つ、またはそれ以上の標的配列に対する指向性を有する二本鎖分子を含有することができる。
【0208】
さらに本発明の組成物は、1つまたは複数の二本鎖分子をコードするベクターを含有することができる。例えばベクターは、1つ、2つ、または幾つかの種類の本発明の二本鎖分子をコードすることができる。あるいは、本発明の組成物は、複数種類のベクターを含有することができ、それらのベクターのそれぞれは異なる二本鎖分子をコードする。
【0209】
さらに、本発明の二本鎖分子は、本発明の組成物中にリポソームとして含有され得る。リポソームの詳細に関しては、「二本鎖分子を使用してがんを治療する方法」の項を参照されたい。
【0210】
本発明の薬学的組成物は、従来の薬学的賦形剤および/または添加剤も含み得る。好適な薬学的賦形剤としては、安定剤、抗酸化剤、浸透圧調整剤、緩衝剤、およびpH調整剤が挙げられる。好適な添加剤としては、生理学的に生体適合性がある緩衝剤(例えば塩酸トロメタミン)、キレート剤(chelant)の添加物(例えばDTPAもしくはDTPA−ビスアミド)もしくはカルシウムキレート錯体(例えばカルシウムDTPA、CaNaDTPA−ビスアミド)、または任意でカルシウム塩もしくはナトリウム塩の添加物(例えば塩化カルシウム、アスコルビン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、もしくは乳酸カルシウム)が挙げられる。本発明の薬学的組成物は、液体形態での使用のために包装されていても、または凍結乾燥されていてもよい。
【0211】
固体組成物には、従来の非毒性固体担体、例えば医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカム、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウム等を使用することができる。
【0212】
例えば、経口投与用の固体薬学的組成物は、上記で列挙された担体および賦形剤のいずれかと、10%〜95%、好ましくは25%〜75%の1つまたは複数の本発明の二本鎖分子とを含み得る。エアロゾル(吸入)投与用の薬学的組成物は、上記のようにリポソームに封入された0.01重量%〜20重量%、好ましくは1重量%〜10重量%の1つまたは複数の本発明の二本鎖分子と、噴霧剤とを含み得る。所望に応じて、担体、例えば鼻腔内送達ではレシチンが含まれ得る。
【0213】
上記に加えて、本発明の組成物は、本発明の二本鎖分子のインビボ機能を阻害しない限り、他の薬学的に活性のある成分を含有することができる。例えば組成物は、がんを治療するのに従来使用される化学療法剤を含有することができる。
【0214】
別の態様において、本発明は、C12ORF48の発現を特徴とする膵臓癌および前立腺癌の治療用の薬学的組成物の製造における、本発明の二本鎖核酸分子の使用を提供する。例えば、本発明は、C12ORF48を発現している膵臓癌および前立腺癌の治療用の薬学的組成物の製造のための、細胞におけるC12ORF48遺伝子またはPARP1遺伝子の発現を阻害する二本鎖核酸分子の使用に関し、該分子は、互いにハイブリダイズすることで二本鎖核酸分子を形成するセンス鎖とこれに相補的なアンチセンス鎖とを含み、かつSEQ ID NO:5、7、8、14、および15の中から選択される配列を標的とする。
【0215】
本発明は、C12ORF48遺伝子またはPARP1遺伝子を過剰発現している細胞におけるC12ORF48またはPARP1の発現を阻害する二本鎖核酸分子と共に薬学的または生理学的に許容可能な担体を調合する工程を含む、C12ORF48の発現を特徴とする膵臓癌または前立腺癌の治療用の薬学的組成物を製造するための方法またはプロセスをさらに提供し、該分子は、活性成分として、互いにハイブリダイズすることで二本鎖核酸分子を形成するセンス鎖とこれに相補的なアンチセンス鎖とを含み、かつSEQ ID NO:5、7、8、14、および15の中から選択される配列を標的とする。
【0216】
別の態様において、本発明は、活性成分を薬学的または生理学的に許容可能な担体と混和する工程を含む、C12ORF48の発現を特徴とする膵臓癌または前立腺癌の治療用の薬学的組成物を製造するための方法またはプロセスを提供し、該活性成分は、C12ORF48遺伝子またはPARP1遺伝子を過剰発現している細胞におけるC12ORF48またはPARP1の発現を阻害する二本鎖核酸分子であり、該分子は、互いにハイブリダイズすることで二本鎖核酸分子を形成するセンス鎖とこれに相補的なアンチセンス鎖とを含み、かつSEQ ID NO:5、7、8、14、および15の中から選択される配列を標的とする。
【0217】
本発明の局面を以下の実施例で説明するが、これらは特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定する意図はない。
【0218】
他に規定のない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様または同等の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、好適な方法および材料を以下で説明する。
【実施例】
【0219】
本発明を以下の実施例でさらに説明するが、これは特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定しない。
【0220】
一般的方法
1.細胞株
PDAC細胞株KLM−1、SUIT−2、KP−1N、PK−1、PK−45P、およびPK−59は、東北大学医用細胞資源センター(Cell Resource Center for Biomedical Research, Tohoku University)(仙台、日本)から提供された。MIAPaCa−2およびPanc−1は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection(ATCC),Rockville, MD)から購入した。COS7細胞およびPC細胞株LNCaP、22Rv1、PC−3、およびDU−145も、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC,Rockville, MD)から購入し、LNCaP由来CRPC細胞株C4−2Bは、ViroMed Laboratories(Minnetonka, MN)から購入した。KLM−1、SUIT−2、PK−1、PK−45P、PK−59、およびPanc−1は、RPMI1640(Sigma−Aldrich, St. Louis, MO)で培養し、COS7、MIAPaCa−2、LNCaP、C4−2B、22Rv1、PC−3、およびDU−145は、ダルベッコ変法イーグル培地(Sigma−Aldrich)で培養した。培地は、全て、10%ウシ胎仔血清および1%抗生物質/抗真菌剤溶液(Sigma−Aldrich)を含んでいた。細胞は、5%COを含む加湿空気の雰囲気で37℃で維持した。
【0221】
2.半定量的RT−PCR
凍結したPDAC組織またはCAPC組織由来のがん細胞および正常上皮細胞の精製は、以前に記載されている(Nakamura T, et al., Oncogene 2004;23:2385-400;Tamura K, et al., Cancer Res 2007;67:5117-25)。精製されたがん細胞および正常上皮細胞に由来するRNAを、2回の、T7に基づくインビトロ転写を使用したRNA増幅(Epicentre Technologies, Madison, WI)に供した。ヒトがん細胞株由来の全RNAは、製造業者の推奨に従い、Trizol試薬(Invitrogen)を使用して抽出した。抽出されたRNAを、DNase I(Roche Diagnostic, Mannheim, Germany)で処理し、Superscript II逆転写酵素(Invitrogen)と共にオリゴ(dT)プライマーを使用して、一本鎖cDNAへ逆転写した。定量対照としてβアクチン(ACTB)をモニタリングすることにより、その後のPCR増幅のための、各一本鎖cDNAの適切な希釈物を調製した。プライマー配列のセットは、
ACTBについては、
5’−TTGGCTTGACTCAGGATTTA−3’(SEQ ID NO:1)および
逆方向5’−ATGCTATCACCTCCCCTGTG−3’(SEQ ID NO:2)、
C12ORF48については、
5’−CTCAGCTGGGAAAGCTACAGAT−3’(SEQ ID NO:3)および
5’−CATGCCAGGTAGTTCTTCCATC−3’(SEQ ID NO:4)
であった。全ての反応が、GeneAmp PCR system 9700(PE Applied Biosystems, Foster, CA)上での、94℃で2分間の初期変性、その後の94℃で30秒間、58℃で30秒間、および72℃で1分間の23サイクル(ACTBについて)、28サイクル(C12ORF48について)を含んでいた。
【0222】
3.ノーザンブロッティング分析
7種類のPDAC細胞株(KLM−1、PK−59、PK−45P、MIAPaCa−2、Panc−1、PK−1、およびSUIT−2)ならびに7種類の成人正常組織(BD Bioscience, Palo Alto, CAから入手した心臓、肺、肝臓、腎臓、脳、精巣、および膵臓)に由来するポリA+RNA 1μgを膜にブロットした。前立腺癌については、5種類のPC細胞株(22Rv1、LNCaP、C4−2B、DU145、およびPC−3)ならびに6種類の成人正常組織(BD Bioscience, Palo Alto, CAから入手した心臓、肺、肝臓、腎臓、脳、および前立腺)に由来するポリA+RNA 1μgを膜にブロットした。これらのノーザンブロット膜およびヒトMTNブロット膜(Multiple Tissue Northern blot,BD Bioscience)を、Mega Labelキット(GE Healthcare, Piscataway, NJ)を使用して標識された32P標識GABRPプローブと、16時間ハイブリダイズさせた。上記のC12ORF48用のプライマーを使用することにより、C12ORF48のプローブcDNAを、305塩基対のPCR産物として調製した。プレハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーション、および洗浄を、製造業者の指示に従って実施した。ブロットを、−80℃、10日間のオートラジオグラフィーに供した。
【0223】
4.C12ORF48に特異的な低分子干渉RNA(siRNA)発現ベクター
PDAC細胞における内在性C12ORF48の発現をノックダウンするために、psiU6BX3.0ベクターを、以前に記載したように(Tamura K, et al., Cancer Res 2007; 67: 5117-25)、標的遺伝子に対する低分子ヘアピン型RNAの発現のために使用した。U6プロモーターを、終結シグナルとしての5個のチミジンおよびジェネテシンによる選択のためのneoカセット(Sigma−Aldrich)と共に、遺伝子特異的な配列(短いスペーサーTTCAAGAGAによって同配列の逆相補配列から分離された、標的転写物由来の19nt配列)の上流にクローニングした。C12ORF48についての標的配列は、
5’−CACAGTATCTCCTAGTCAA−3’(#595)(SEQ ID NO:5)、
5’−CATGCTGCTCGAGAGAAAC−3’(#851)(SEQ ID NO:6)、
5’−GTTGCTCAGGATTTGGATT−3’(#1133)(SEQ ID NO:7)、
5’−GCAGCTAATGCTCCTACCA−3’(#1310)(SEQ ID NO:8)、および
陰性対照としての5’−GAAGCAGCACGACTTCTTC−3’(siEGFP)(SEQ ID NO:9)
であった。ヒトPDAC細胞株PK−59およびMiaPaCa2を、10cmディッシュ上にプレーティングし、製造業者の指示に従ってFuGENE6(Roche)を使用して、これらのsiRNA発現ベクターによりトランスフェクトし、その後、150μg/ml(PK−59用)または800μg/ml(MiaPaCa2用)のジェネテシン(GIBCO)による選択を行った。7日後、上記プライマーを使用したRT−PCRによってC12ORF48に対するノックダウン効果を分析するため、10cmディッシュから細胞を採集した。ジェネテシンを含有している適切な培地で2週間培養した後、コロニー形成アッセイのために、細胞を100%メタノールで固定し、0.1%のクリスタルバイオレット−H0で染色した。トランスフェクションの6日後に、Cell counting kit−8(同仁化学研究所、熊本県、日本)を使用して、MTTアッセイにおいて細胞生存能を測定した。490nmにおける吸光度、および参照としての630nmにおける吸光度を、Microplate Reader 550(Bio−Rad, Hercules, CA)で測定した。
【0224】
5.免疫細胞化学
製造業者が推奨する手順に従いFugene6(Roche)を使用することにより、COS7細胞を、HAタグ付きC12ORF48発現ベクターによりトランスフェクトし、処理の72時間後、細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定し、PBS中0.1%Triton X−100により、室温で1分間、透過処理した。非特異的結合を、室温で30分間の、3%BSAを含有しているPBSでの処理によりブロッキングした。細胞を、1%BSAを含有しているPBSで希釈した(1:1000)ウサギ抗HA抗体(3F10,Roche)と共に、室温で60分間、インキュベートした。PBSで洗浄した後、室温で60分間、FITC結合型二次抗体(Santa Cruz)により細胞を染色した。PBSで洗浄した後、検体を、4’,6’−ジアミジン−2’−フェニルインドール二塩酸塩(DAPI)を含有しているVECTASHIELD(VECTOR Laboratories,Inc, Burlingame, CA)を用いてマウントし、Spectral Confocal Scanning Systems(Leica, Bensheim, Germany)で可視化した。
【0225】
6.C12ORF48タンパク質に特異的な抗体の産生および免疫組織化学染色
pET21a(+)ベクターを使用して、それぞれ、N末端のT7タグおよびC末端のヒスチジン(His)タグ(Novagen, Madison, WI, USA)とインフレームで、C12ORF48の二つの断片(コドン1〜150および328〜498)を発現するようプラスミドを設計した。二つの組換えタンパク質を大腸菌BL21 codon−plus株(Stratagene, La Jolla, CA, USA)で発現させ、供給元のプロトコルに従い、Ni−NTA樹脂アガロース(Qiagen, Valencia, CA, USA)を使用して精製した。精製された組換えタンパク質を共に混合し、次いで、ウサギの免疫感作に使用した。その後、供給元の指示に従いAffigel 15ゲル(Bio−Rad Laboratories, Hercules, CA, USA)を使用して、抗原アフィニティカラムで免疫血清を精製した。適切なインフォームドコンセントの下で大阪府立成人病センター(Osaka Medical Center for Cancer and Cardiovascular Diseases)で切除された外科的検体から、PDAC由来の慣例的な組織切片を入手した。切片を脱パラフィン処理し、クエン酸緩衝液pH6.0中で108℃で15分間オートクレーブ処理した。内在性ペルオキシダーゼ活性を、Peroxidase Blocking Reagent(Dako Cytomation, Carpinteria, CA, USA)中での30分間のインキュベーションにより失活させた。ブロッキングのためウシ胎仔血清中でインキュベートした後、切片を、ウサギ抗C12ORF48ポリクローナル抗体(1:2500希釈)と共に、室温で1時間、インキュベートした。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄した後、ペルオキシダーゼ標識抗ウサギ免疫グロブリン(Envision kit;Dako Cytomation)を用いて免疫検出を実施した。最後に、3,3’−ジアミノベンジジンを用いて反応物を発色させた。ヘマトキシリンを使用して対比染色を実施した。
【0226】
7.C12ORF48と相互作用するタンパク質の免疫沈降および質量分析
pCAGGSn3xFlag−C12ORF48−HAまたは空pCAGGSn3FHモックを、FuGENE6(Roche)を使用して、HEK293細胞へトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、細胞を収集し、溶解緩衝液(50mmol/Lトリス−HCl[pH8.0]、0.4%NP−40、150mmol/L NaCl、Protease Inhibitor Cocktail Set III[Calbiochem, San Diego, CA, USA])で溶解させた。細胞抽出物を、60μlのCL−4Bセファロース(Sigma)と共に、4℃で1時間インキュベートすることにより、予備浄化した。遠心分離の後、上清を、30μl抗FLAG M−アガロース(Sigma)と共に、4℃で1時間インキュベートした。次いで、8,000rpmで2分間の遠心分離によってビーズを収集し、1mLの免疫沈降緩衝液で5回洗浄した。5%〜20%SDS−PAGEゲル(Bio−Rad)でタンパク質を分離し、銀染色キットで染色した。C12ORF48を用いてトランスフェクトされた細胞抽出物に特異的に見出されたタンパク質バンドを切り出し、液体クロマトグラフィ−質量分析(LC−MS/MS)によって分析した。
【0227】
切り出されたバンドを、37℃で30分間、50mMの炭酸水素アンモニウム(Sigma)を含む10mMトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(Sigma)で還元し、25℃で暗所で45分間、50mMの炭酸水素アンモニウムを含む50mMのヨードアセトアミド(Sigma)でアルキル化した。ブタトリプシン(Promega, San Luis Obispo, CA)を1:20の最終の酵素対タンパク質比で添加した。37℃で16時間、消化を実施した。得られたペプチド混合物を、300nl/分の全流速で、30分で、0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)中5.4%から29.2%アセトニトリルまでという直線勾配を使用して、100μm×150mm HiQ−Sil C18W−3カラム(KYA Technologies、東京、日本)上で分離した。溶出ペプチドを、マトリックス溶液(70%アセトニトリル、0.1%TFA中の4mg/mlのα−シアノ−4−ヒドロキシ−ケイ皮酸(SIGMA)、0.08mg/mlのクエン酸アンモニウム)と自動的に混合し、MaP(KYA Technologies)によってMALDIターゲットプレートへスポッティングした。質量分析を、4800 Plus MALDI/TOF/TOF Analyzer(Applied Biosystems/MDS Sciex)上で実施した。MS/MSピークリストを、Protein Pilotバージョン2.0.1ソフトウェア(Applied Biosystems/MDS Sciex)によって作成し、タンパク質データベース検索のためローカルMASCOT検索エンジンバージョン2.2.03(Matrix Science)にエクスポートした。
【0228】
C12ORF48タンパク質とPARP1タンパク質との間の相互作用を確認するため、Flag−C12ORF48発現ベクターおよび/またはPARP1−Myc発現ベクターをHEK293細胞へコトランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞を上記のように溶解させ、c−Myc抗体(Santa Cruz)を用いて免疫沈降させた。共沈殿したタンパク質を、抗Flag抗体(Sigma)およびc−Myc抗体を使用してイムノブロットした。
【0229】
8.フローサイトメトリー
KLM−1細胞を、C12ORF48 siRNA二重鎖(5’−CUAGUCAACUACUGGAUUU−3’)(SEQ ID NO:14)、PARP1 siRNA二重鎖(5’−GAUAGAGCGUGAAGGCGAA−3’)(SEQ ID NO:15)、および陰性対照としてのsiEGFP二重鎖(5’−GAAGCAGCACGACUUCUUC−3’)(SEQ ID NO:9)を用いて、それぞれトランスフェクトした。処理の72時間後、細胞をトリプシン処理し、収集し、PBS中70%エタノールを用いて4℃で固定し、PBSで2回すすぎ、0.5mgの煮沸されたRNaseを含有している500μlのPBSと共に、37℃で30分間インキュベートした。細胞を、25μgのヨウ化プロピジウムを含有しているPBS 500μlで染色した。各集団内のsub−G1核(アポトーシス細胞)の比率を、フローサイトメーター(Beckman Coulter)によって、少なくとも2×10個の細胞から決定した。
【0230】
9.インビトロPARP−1自己ポリ(ADP−リボシル)化アッセイ
インビトロPARP1自己修飾アッセイを、以前に記載されたように実施した(10)。簡単に説明すると、精製されたC12ORF48組換えタンパク質200ngおよび組換えヒトPARP1(Alexis)25ngを、10μg/mlの超音波処理されたDNAが添加された結合緩衝液(10mMのトリス−HCl、pH7.5、1mMのMgCl、1mMのDTT)中で、37℃で10分間インキュベートした。5μCi(0.25μM)の32P標識NAD+を添加することにより反応を開始させ、さらに10分間、37℃でインキュベートした。SDS試料緩衝液を用いて反応を終結させた後、タンパク質を8%SDS−PAGEゲルによって分画した。ポリ(ADP−リボシル)化タンパク質を、オートラジオグラフィーによって可視化した。
【0231】
10.細胞抽出物中のPARP活性
KLM−1およびSUIT−2を、C12ORF48−siRNA、PARP1−siRNA、またはsiEGFP(対照として)を用いてトランスフェクトし、トランスフェクションの72時間後に収集した。抗C12ORF48抗体および抗PARP1抗体(TREVIGEN, Gaithersburg, MD)を使用したウェスタンブロット分析により、KLM−1細胞およびSUIT−2細胞における発現に対するノックダウン効果が確認された。細胞抽出物中のPARP1活性を、ヒストンH1タンパク質へのビオチン化ADP−リボースの取り込みに基づくuniversal colorimetric PARP assay kit(TREVIGEN)を使用してアッセイした。細胞抽出物を、ヒストンおよびビオチン化ポリADP−リボースでコーティングされた96穴プレートに入れ、1時間インキュベートし、ストレプトアビジン−HRPにより処理し、分光計で450nmで読み取った。PARP1酵素活性は、アフィニティ精製された抗ポリ(ADP−リボース)(PAR)マウスモノクローナル抗体(TREVIGEN)を使用することによっても確認された。25μgの細胞抽出物または5ngの組換えヒトPARP1(TREVIGEN)を、10μg/mlの超音波処理されたDNAおよび200μMのNAD+(Sigma)が添加された結合緩衝液(10mMのトリス−HCl、pH7.5、1mMのMgCl、1mMのDTT)中で、37℃で20分間インキュベートした。
【0232】
結果
PDAC細胞およびPC細胞におけるC12ORF48の過剰発現
PDAC細胞(Nakamura T, et al., Oncogene 2004;23:2385-400)およびCRPC細胞(Tamura K, et al., Cancer Res 2007;67:5117-25)の、本発明者らのゲノムワイドcDNAマイクロアレイ分析によってスクリーニングされた多数のトランス活性化された遺伝子のうち、C12ORF48に本発明者らは焦点を当てた。顕微解剖されたPDAC細胞集団9集団のうち5集団(図1A)および顕微解剖されたCRPC細胞集団5集団のうち2集団(図1B)において、C12ORF48過剰発現がRT−PCRによって確認された。プローブとしてC12ORF48 cDNA断片を使用したノーザンブロット分析によって、精巣にのみ約4kbの転写物が同定され、肺、心臓、肝臓、腎臓、および脳を含むその他の器官には発現が観察されなかった(図1C)。幾つかのPDCA細胞株(図1D)および前立腺癌細胞株(図1E)におけるC12ORF48発現も調査したところ、調査された多くのPDAC細胞株または前立腺癌細胞株において、明らかに発現が見出された。
【0233】
がん細胞の増殖に対するC12ORF48−siRNAの効果
がん細胞におけるC12ORF48発現の生物学的意義を調査するために、C12ORF48転写物に特異的な4つのsiRNA発現ベクターを構築し、高レベルのC12ORF48を内因的に発現しているPDAC細胞株MiaPaCa2細胞またはPK−59細胞へトランスフェクトした。si#595(標的配列:SEQ ID NO:5)、si#1133(標的配列:SEQ ID NO:7)、およびsi#1310(標的配列:SEQ ID NO:8)をトランスフェクトした場合、RT−PCRによってノックダウン効果が観察されたが、si#851(標的配列:SEQ ID NO:6)または陰性対照siEGFP(標的配列:SEQ ID NO:9)の場合には観察されなかった(図2A、左)。MiaPaCa2を使用したコロニー形成アッセイおよびMTTアッセイ(図2B、2C、左)は、si#595、si#1133、およびsi#1310を用いてトランスフェクトされた細胞の数の劇的な低下を明らかにしたが、それと比較して、si#851およびsiEGFPにはノックダウン効果が観察されなかった。これらのsiRNA発現ベクターをPK−59細胞へトランスフェクトした場合にも、類似した結果が得られた(図2A、B、およびC、右)。
【0234】
C12ORF48タンパク質は核に局在している
C12ORF48タンパク質は、何らかの予測された有意なモチーフまたはドメインを有していたが、in silico分析により核に局在していることが予測された。細胞内局在を確認するために、C12ORF48発現ベクターをCOS7細胞へトランスフェクトし(図3A)、抗HAタグ抗体を使用した免疫細胞化学分析を実施した。図3Bに示されるように、免疫細胞化学分析は、外来性C12ORF48タンパク質が核に局在していることを明白に示し、そのことから、クロマチンまたはDNA構造との関連が示唆された。タンパク質レベルでのその発現を調査するために、本発明者らがC12ORF48タンパク質に特異的なポリクローナル抗体を作製し、ウエスタンブロット分析を実施したところ、本発明者らが調査した全PDAC細胞株のほとんどで内在性C12ORF48が検出された(図3C)。PDAC細胞株におけるC12ORF48発現は、非がん性細胞株(HEK−293およびCOS7)における発現より高かった。臨床的なPDAC組織切片を使用した免疫組織化学分析も実施したところ、PDAC細胞の核に強力な陽性の染色が見出されたが(図3D中のパネルC1〜C2)、正常膵組織には染色が検出されないかまたは極めて限定された染色が検出された(図3D中のN)。まとめると、PDAC組織62のうち33(53%)が、C12ORF48について陽性の染色を示した。
【0235】
C12ORF48の相互作用タンパク質としてのPARP1の同定
C12ORF48の生物学的機能が全体として未知であるので、C12ORF48と相互作用するタンパク質を、免疫沈降および質量分析によって検索した。C12ORF48−Flag発現ベクターまたは空ベクター(モック対照)によりトランスフェクトされたHEK293細胞の溶解物を抽出し、抗Flag M−アガロースを用いて免疫沈降させた。免疫沈降したタンパク質複合体を、SDS−PAGEゲル上で銀染色した。およそ110kDのタンパク質が、Flagタグ付きC12ORF48プラスミドを用いてトランスフェクトされた細胞溶解物の免疫共沈降物の中に観察されたが、モック対照プラスミドによりトランスフェクトされたものには観察されず(図4A)、本発明者らは、LC−MS/MSの分析のため、この110kDのバンドを抽出した。質量分析によって、C12ORF48と相互作用する候補タンパク質としてPARP1が同定された。この結果は、抗PARP1抗体を使用したウエスタンブロット分析によって確認された(図4B)。さらに、物理的相互作用を確認するために、Mycタグ付きPARP1発現ベクターおよび/またはFlagタグ付きC12ORF48発現ベクターをHECK293に入れ、反対に、抗Myc抗体を使用して免疫沈降を実施し、次いで、抗Flag抗体を使用して沈降物をイムノブロットした。結果は、C12ORF48がPARP1と共沈降することを示した(図4C)。
【0236】
オリゴC12ORF48−siRNA二重鎖またはオリゴPARP1−siRNA二重鎖によるアポトーシスの誘導
FACS分析により、対照siRNAによりトランスフェクトされた細胞と比較して、より大きな割合のsubG1集団が、C12ORF48−siRNA(図5A)またはPARP1−siRNA(図5B)を用いてそれぞれトランスフェクトされたKLM−1細胞において検出された。他のPDAC SUIT−2細胞においてノックダウンした場合にも、類似した結果が観察された(データ非提示)。
【0237】
C12ORF48はインビトロでPARP1自己修飾を正に調節することができる
PARP1がポリ(ADP−リボシル)化することができる主要なタンパク質は、PARP1自体である。PARP1とC12ORF48との間の相互作用の機能的な結果を調査するために、[32P]NADの取り込みによってPARP1自己修飾を測定し、精製されたC12ORF48タンパク質の非存在下または存在下でのSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって可視化した。図6に示されるように、PARP1自己修飾は、C12ORF48タンパク質の非存在下と比較して、C12ORF48タンパク質の存在下で強力に増強された。
【0238】
C12ORF48はがん細胞抽出物中のPARP1活性を調節することができる
がん細胞におけるPARP1活性に対するC12ORF48の機能的意義について調査するために、C12ORF48−siRNA、PARP1−siRNA、および対照siRNAを用いてトランスフェクトされた細胞抽出物において、ヒストンH1タンパク質に対するビオチン化ADP−リボースの取り込みに基づく比色定量PARPアッセイを使用することにより、PARP1活性を調査した。まず、C12ORF48またはPARP1に対するsiRNA二重鎖のKLM−1細胞へのトランスフェクションが、それらのタンパク質発現を減少させることを確認した(図7A)。比色定量PARPアッセイにより、C12ORF48−siRNAまたはPARP1−siRNAを用いてトランスフェクトされたKLM−1細胞抽出物において、ヒストンH1をポリ(ADP−リボシル)化するPARP1活性が、対照siRNAと比較して、それぞれ59.2%および55.5%減少することが見出された(図7B)。他のPDAC細胞株SUIT−2細胞においては、C12ORF48またはPARP1のノックダウンで、それぞれ65.2%および47.1%、PARP1活性が減少することも観察された(図7C、D)。さらに、抗ポリ(ADP−リボース)(PAR)抗体を使用したウエスタンブロット分析によっても、C12ORF48またはPARP1のノックダウンで、細胞抽出物中のPARP1活性が劇的に減少することが確認された(図7E)。これらの所見から、ヒストンH1、およびPARP1自体を含むその他の標的タンパク質に対するPARP1のポリ(ADP−リボシル)化活性をC12ORF48が調節し得ることが示された。次に、C12ORF48をHEK293細胞において過剰発現させ、PARP活性を比色定量PARPアッセイによって同様に調査した。外来性C12ORF48発現は時間依存的に(図8A)、かつC12ORF48発現と一致して誘導され、HECK293細胞抽出物におけるPARP1活性も時間依存的に増強された(図7B、P<0.0001、モックトランスフェクションと対比)。総合すると、本発明者らの所見は、C12ORF48がインビボおよびインビトロの両方でPARP1酵素活性を正に調節し得ることを示唆している。
【0239】
考察
本発明においては、マイクロアレイ分析を通して、PDAC細胞およびCRPC細胞において過剰発現されるとして、1つの新規な標的遺伝子であるC12ORF48が同定され、その過剰発現が、RT−PCRによって、PDAC細胞およびCRPC細胞において確認された。成人正常器官の中では精巣に限定的に発現していたことから、C12ORF48は、有害作用が最小限である、新規治療アプローチのための適切かつ有望な分子標的であると考えられる。さらに、膵臓癌細胞株におけるsiRNAによる内在性C12ORF48の機能的ノックダウンは、膵臓癌細胞増殖の劇的な抑制をもたらし、このことから、がん細胞の生存能の維持におけるその必須の役割が示唆された。
【0240】
本発明者らは、C12ORF48がポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ−1(PARP1)と相互作用し得ることを見出した。ヒストンの次に豊富な核タンパク質であるPARP1は、ADP−リボース単位の、ADP−リボースのモノマー、オリゴマー、またはポリマーとしての、ドナーNAD分子から標的タンパク質への転移を触媒する固有の酵素活性を保有している。PARP1はクロマチン弛緩を媒介し、誘導可能遺伝子の転写を活性化する。現在までのところ、PARP1は、DNA修復、細胞死経路、クロマチンリモデリング等において重大な役割を果たすことが周知である。しかしながら、ゲノムの完全性が維持される生理的条件の下でのPARP1のクロマチン依存性遺伝子調節活性に関する知識は顕著に不足している。
【0241】
これらの結果は、まとまりとして、C12ORF48およびPARP1の両方が核タンパク質であることも示唆した。C12ORF48はインビトロでPARP1自己修飾を正に調節することができた。さらに、C12ORF48タンパク質の抑制は、ヒストンH1をポリ(ADP−リボシル)化する活性のみならず、PARP1自体を含むその他の標的に対する活性である、がん細胞抽出物中のPARP1の活性も低下させることができた。さらに、本発明者らは、C12ORF48の過剰発現が、細胞抽出物中のPARP1活性を増強し得ることも調査した。これらのデータは、全て、C12ORF48が、DNA修復、転写調節、クロマチン修飾、およびPARP1活性の調節を通した細胞シグナル伝達に関与している可能性を暗示した。
【0242】
産業上の利用可能性
レーザーキャプチャーダイセクションとゲノムワイドcDNAマイクロアレイとの組み合わせを使用した、本明細書に記載されたがんの遺伝子発現分析により、C12ORF48が、がんの予防および治療のための標的遺伝子として同定された。異なる発現に基づき、本発明は、がん、特に、膵臓癌および前立腺癌の同定および検出のための分子診断マーカーとしてのC12ORF48の有用性を確認する。
【0243】
本明細書に提供されたデータは、がんの包括的な理解を増し、新規診断戦略の開発を容易にし、治療薬および予防剤用の分子標的の同定のための手掛かりを提供する。そのような情報は、腫瘍形成のより深い理解に寄与し、がんの診断、治療、および最終的には予防のための新規戦略を開発するための指標を提供する。
【0244】
本明細書中に引用された全ての特許、特許出願、および公開は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0245】
さらに、詳細にかつ具体的な態様を参照しながら本発明を説明したが、上記の説明は本質的に例示的かつ説明的なものであって、本発明およびその好ましい態様を例示するためのものであることを理解されたい。ルーチンな実験を通して、本発明の本旨および範囲から逸脱することなく、様々な変更および修正がなされ得ることを、当業者は容易に認識するだろう。したがって、本発明は、上記の説明によって定義されるのではなく、以下の特許請求の範囲およびそれらの等価物によって定義されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象由来の生物学的試料におけるC12ORF48遺伝子の発現レベルを決定する工程を含む、対象におけるがんを検出または診断する方法であって、前記遺伝子の正常対照レベルと比較した前記レベルの増加が、対象ががんに罹患しているかまたはがんを発症するリスクを有することを示し、前記発現レベルが、以下からなる群より選択される任意の1つの方法によって決定される、方法:
(a)C12ORF48遺伝子のmRNAを検出する方法、
(b)C12ORF48遺伝子によってコードされるタンパク質を検出する方法、および
(c)C12ORF48遺伝子によってコードされるタンパク質の生物学的活性を検出する方法。
【請求項2】
前記増加が前記正常対照レベルより少なくとも10%大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
患者由来の生物学的試料が生検材料である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
がんが膵臓癌および前立腺癌の群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
膵臓癌が膵管腺癌であり、前立腺癌が去勢抵抗性前立腺癌である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
以下からなる群より選択される試薬を含む、がんを診断するためのキット:
(a)C12ORF48遺伝子のmRNAを検出するための試薬;
(b)C12ORF48遺伝子によってコードされるタンパク質を検出するための試薬;および
(c)C12ORF48遺伝子によってコードされるタンパク質の生物学的活性を検出するための試薬。
【請求項7】
試薬が前記遺伝子の遺伝子転写物に対するプローブである、請求項6に記載のキット。
【請求項8】
試薬が前記遺伝子によってコードされるタンパク質に対する抗体である、請求項6に記載のキット。
【請求項9】
以下の工程を含む、C12ORF48遺伝子の過剰発現に関連したがんを治療もしくは予防するか、またはがん細胞増殖を阻害するための候補化合物をスクリーニングする方法:
(a)試験化合物を、C12ORF48遺伝子によってコードされるポリペプチドと接触させる工程;
(b)ポリペプチドと試験化合物との間の結合活性を検出する工程;および
(c)ポリペプチドに結合する化合物を選択する工程。
【請求項10】
以下の工程を含む、C12ORF48遺伝子もしくはPARP1遺伝子の過剰発現に関連したがんを治療もしくは予防するか、またはがん細胞増殖を阻害するための候補化合物をスクリーニングする方法:
(a)試験化合物を、C12ORF48遺伝子を発現している細胞と接触させる工程;および
(b)C12ORF48遺伝子の発現レベルを低下させる化合物を選択する工程。
【請求項11】
以下の工程を含む、がんを治療もしくは予防するか、またはがん細胞増殖を阻害するための候補化合物をスクリーニングする方法:
(a)試験化合物を、C12ORF48によってコードされるポリペプチドと接触させる工程;
(b)工程(a)のポリペプチドの生物学的活性を検出する工程;および
(c)試験化合物の非存在下で検出された生物学的活性と比較して、ポリペプチドの生物学的活性を抑制する化合物を選択する工程。
【請求項12】
生物学的活性が細胞増殖活性である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
以下の工程を含む、C12ORF48遺伝子の過剰発現に関連したがんを治療もしくは予防するか、またはがん細胞増殖を阻害するための候補化合物をスクリーニングする方法:
(a)C12ORF48遺伝子の転写調節領域と、該転写調節領域の制御下で発現されるレポーター遺伝子とを含むベクターが導入されている細胞に、試験化合物を接触させる工程;
(b)前記レポーター遺伝子の発現または活性を測定する工程;および
(c)試験化合物の非存在下でのレベルと比較して、前記レポーター遺伝子の発現または活性のレベルを低下させる化合物を選択する工程。
【請求項14】
がんが膵臓癌および前立腺癌の群より選択される、請求項9、10、11、および13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
膵臓癌が膵管腺癌であり、前立腺癌が去勢抵抗性前立腺癌である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
センス鎖とアンチセンス鎖とを含み、かつC12ORF48遺伝子を発現している細胞に導入された場合に該遺伝子の発現を阻害する二本鎖分子であって、該センス鎖がSEQ ID NO:5、7、8、14、または15からなる標的配列に対応するヌクレオチド配列を含み、該アンチセンス鎖が該センス鎖に相補的なヌクレオチド配列を含み、該センス鎖と該アンチセンス鎖が互いにハイブリダイズして二本鎖分子を形成する、二本鎖分子。
【請求項17】
約19〜約25ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドである、請求項16に記載の二本鎖分子。
【請求項18】
一本鎖ヌクレオチド配列を介して連結されたセンス鎖およびアンチセンス鎖を含む単一のヌクレオチド転写物である、請求項17に記載の二本鎖分子。
【請求項19】
ポリヌクレオチドが下記一般式を有する、請求項18に記載の二本鎖分子:
5’−[A]−[B]−[A’]−3’
式中、[A]はSEQ ID NO:5、7、8、14、または15を含むヌクレオチド配列であり;[B]は約3〜約23個のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列であり;かつ[A’]は[A]に相補的なヌクレオチド配列である。
【請求項20】
センス鎖核酸とアンチセンス鎖核酸とを含むポリヌクレオチドの組み合わせの各々または両方を含み、かつC12ORF48遺伝子を発現している細胞に導入された場合に該遺伝子の発現を阻害するベクターであって、該センス鎖核酸がSEQ ID NO:5、7、8、14、または15のヌクレオチド配列を含み、該アンチセンス鎖が該センス鎖に相補的なヌクレオチド配列を含み、センス鎖およびアンチセンス鎖の転写物が互いにハイブリダイズして二本鎖分子を形成する、ベクター。
【請求項21】
ポリヌクレオチドが、約19〜約25ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドである、請求項20に記載のベクター。
【請求項22】
二本鎖分子が、一本鎖ヌクレオチド配列を介して連結されたセンス鎖およびアンチセンス鎖を含む単一のヌクレオチド転写物である、請求項20に記載のベクター。
【請求項23】
ポリヌクレオチドが、下記一般式を有する、請求項22に記載のベクター:
5’−[A]−[B]−[A’]−3’
式中、[A]はSEQ ID NO:5、7、8、14、または15を含むヌクレオチド配列であり;[B]は約3〜約23個のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列であり;かつ[A’]は[A]に相補的なヌクレオチド配列である。
【請求項24】
C12ORF48遺伝子を発現している細胞と接触して細胞増殖を阻害する、薬学的に有効な量の、C12ORF48に対する二本鎖分子、または該二本鎖分子を含むベクターと、薬学的に許容可能な担体とを対象に投与する工程を含む、対象におけるC12ORF48遺伝子の過剰発現に関連したがんを治療または予防する方法。
【請求項25】
二本鎖分子が請求項16に記載の二本鎖分子であり、ベクターが請求項20に記載のベクターである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
がんが膵臓癌および前立腺癌の群より選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
膵臓癌が膵管腺癌であり、前立腺癌が去勢抵抗性前立腺癌である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
C12ORF48遺伝子を発現している細胞と接触して細胞増殖を阻害する、薬学的に有効な量の、C12ORF48に対する二本鎖分子、または該二本鎖分子を含むベクターと、薬学的に許容可能な担体とを含む、C12ORF48遺伝子の過剰発現に関連したがんを治療または予防するための組成物。
【請求項29】
二本鎖分子が請求項16に記載の二本鎖分子であり、ベクターが請求項20に記載のベクターである、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
がんが膵臓癌および前立腺癌の群より選択される、請求項28に記載の組成物。
【請求項31】
膵臓癌が膵管腺癌であり、前立腺癌が去勢抵抗性前立腺癌である、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
C12ORF48ポリペプチドとPARP1ポリペプチドとの間の結合を阻害する候補化合物をスクリーニングする方法であって、以下の工程を含む方法:
(a)試験剤の存在下で、C12ORF48ポリペプチドまたはその機能的等価物を、PARP1ポリペプチドまたはその機能的等価物と接触させる工程;
(b)ポリペプチド間の結合を検出する工程;
(c)工程(b)で検出された結合レベルを、試験剤の非存在下で検出された結合レベルと比較する工程;および
(d)工程(c)で試験剤の非存在下で検出された結合レベルと比較して、結合レベルを低下させるかまたは阻害する試験剤を選択する工程。
【請求項33】
C12ORF48の機能的等価物がPARP1結合ドメインを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
C12ORF48遺伝子によってコードされるポリペプチドを使用してがんを治療または予防するための化合物をスクリーニングする方法であって、以下の工程を含む方法:
(a)PARP1のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの存在下で、試験化合物を、C12ORF48のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドと接触させる工程;
(b)PARP1のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの生物学的活性を検出する工程;および
(c)試験化合物の非存在下で検出されたポリペプチドの生物学的活性と比較して、PARP1のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの生物学的活性を抑制する試験化合物を選択する工程。
【請求項35】
生物学的活性が自己修飾活性である、請求項34に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2012−501163(P2012−501163A)
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509328(P2011−509328)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【国際出願番号】PCT/JP2009/004020
【国際公開番号】WO2010/023855
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(502240113)オンコセラピー・サイエンス株式会社 (142)
【Fターム(参考)】