説明

がんを処置するためのトール様受容体およびトール様受容体アゴニストの使用

本発明は、フラジェリンなどのトール様受容体作動物質の供給と組み合わせて、トール様受容体5(TLR−5)などのトール様受容体を供給して、自然(シス効果)と獲得(トランス効果)の両方の免疫応答に関与する細胞を動員する、シス及びイントランス効果を生起し、がん細胞及び病原体に感染した細胞をNF−κBアポトーシス経路を介して特異的に死滅させる、がん又は感染症の処置のために使用される方法及び薬剤を対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がん及び感染症を処置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トール様受容体は、細菌及びウイルス病原体の最も一般的なパターンの認識を担う。その活性化は、自然免疫応答とそれに続く獲得免疫応答を誘発する。抗原が存在する部位に対する免疫系の受容体細胞は、有効な免疫応答における重要なステップである。そのため、免疫化は、異なるタイプのアジュバントの使用を含む。腫瘍の大多数は腫瘍特異抗原を発現するが、それらは、幾つかの機序によって免疫認識を逃れることができる。最近、リガンドと作動物質の細菌フラジェリンによるTLR5の活性化が、機能性TLR5を発現する腫瘍に対して抗腫瘍効果を誘導することがマウスモデルで実証された。これは、がん免疫療法に対してTLR5作動物質を考慮する一般的な機会をもたらした。この考えを実行に移す上で2つの主要な障壁かある。第1に、機能性TLR5を発現する腫瘍の発生率が極めて低く、この手法の適用がほんの少数の腫瘍に限られる。第2に、TLR5作動物質の全身投与は、機能的受容体を有するすべての細胞におけるTRL5シグナル伝達を活性化して、応答が集中せず、腫瘍特異的でない。したがって、全身作用を最小にし、したがって感染細胞又は腫瘍に特異的に自然免疫応答を誘発することができる、感染又は腫瘍細胞におけるTLR受容体シグナル伝達のオートクリン活性化機序又は方法が当該技術分野で必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、第1及び第2の核酸を含むベクターであって、第1の核酸がトール様受容体をコードし、第2の核酸がトール様受容体作動物質をコードする、ベクターを対象とすることができる。第1の核酸は、分泌型のトール様受容体をコードすることができる。第2の核酸は、分泌型のフラジェリンとすることができる。トール様受容体作動物質は、フラジェリンとすることができる。ベクターは、ほ乳動物の発現ベクターとすることができる。ベクターは、アデノウイルス、レンチウイルス又はリポソームから発現することができる。分泌型のフラジェリンはCBLB502Sとすることができる。トール様受容体はTLR−5とすることができる。
【0004】
本発明は、ほ乳動物におけるがんを処置する方法であって、それを必要とするほ乳動物に第1及び第2の核酸を含むベクターを含む薬剤を投与することを含む、方法を対象とすることができる。第1の核酸はトール様受容体をコードし、第2の核酸はトール様受容体作動物質をコードする。がんは腫瘍であり得る。腫瘍は、前立腺、乳房、結腸、食道、胃、肺、すい臓、腎臓、甲状腺、卵巣、咽頭又は頚部からなる群に由来し得る。腫瘍は、肉腫、黒色腫、白血病及びリンパ腫からなる群に由来し得る。薬剤は、ほ乳動物の腫瘍からトランスで(in trans)、または外部から投与することができる。薬剤は、ほ乳動物の腫瘍に直接投与することができる。薬剤は、免疫賦活薬と組み合わせて投与することができる。免疫賦活薬は、成長ホルモン、プロラクチン及びビタミンDからなる群から選択することができる。成長ホルモンはソマトトロピンとすることができる。薬剤は、サイトカインと組み合わせて投与することができる。サイトカインは幹細胞因子とすることができる。
【0005】
本発明は、ほ乳動物における感染症を処置する方法であって、それを必要とするほ乳動物に第1及び第2の核酸を含むベクターを含む薬剤の薬剤を投与することを含む、方法も対象とする。第1の核酸はトール様受容体をコードし、第2の核酸はトール様受容体作動物質をコードする。がんは腫瘍であり得る。感染症は、ウイルス、細菌、寄生原虫及び真菌からなる群に由来し得る。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1A】図1A〜1Cは、TLR5、CBLB502S及びその組合せ(TLR5+CBLB502S)を発現するアデノウイルスベクターの模式図である。
【図1B】図1A〜1Cは、TLR5、CBLB502S及びその組合せ(TLR5+CBLB502S)を発現するアデノウイルスベクターの模式図である。
【図1C】図1A〜1Cは、TLR5、CBLB502S及びその組合せ(TLR5+CBLB502S)を発現するアデノウイルスベクターの模式図である。
【図2】図2は、マウスにおいて(TLR5のない)対照ベクター又はTLR5を発現するベクターを導入した腫瘍細胞(A549)における数日間の腫瘍体積の比の結果を示す。マウスは、CBLB502又はPBSで3日間処理される。
【図3】図3は、CBLB502Sとトール様受容体を同時発現するベクターを含むアデノウイルスの注射による腫瘍増殖の抑制を示す。アデノウイルスは、同系マウスのCT26結腸癌腫瘍に注射され、アデノウイルスベクター構築物のインシス及びイントランス効果を試験する。
【図4】図4は、細菌フラジェリンのドメイン構造を示す。F41のCa骨格トレース、疎水性コア分布及び構造情報。ドメインD1、D2a、D2b及びD3を定義する4個の異なる疎水性コア。すべての疎水性側鎖原子は、Ca骨格で示される。側鎖原子は色分けされている:Ala、黄色;Leu、Ile又はVal、オレンジ色;Phe及びTyr、紫(炭素原子)及び赤(酸素原子)。c、フラジェリンのアミノ酸配列における種々の構造的特徴の位置及び領域。上から下に、青色のF41断片;褐色の3個のb薄層折り畳み;黄色のaヘリックス、緑色のb構造、及び紫色のb折り返しを含む二次構造分布;青色の50残基ごとの目盛り(tic marc);ドメインD0、D1、D2及びD3;青緑色のプロトエレメント内の軸方向のサブユニット接触領域;赤色の良好に保存されたアミノ酸配列及び紫色の可変領域;異なるスーパーコイルのエレメントを生成するF41中の点変異を示す。最下部の文字は、変異エレメント:L(D107E、R124A、R124S、G426A)、Lタイプ直鎖;R(A449V)、Rタイプ直鎖;C(D313Y、A414V、A427V、N433D)、curly33の形態を示す。
【図5】図5は、Salmonellaフラジェリンドメイン、その断片、及びTLR5とのその相互作用の模式図である。黒い棒は、A、B、C、A’及びB’を含む断片の構築に使用されるフラジェリン遺伝子の領域を表す。
【図6】図6は、フラジェリン誘導体を示す。(右側に列挙された)選択されたフラジェリン誘導体のドメイン構造及び近似境界(アミノ酸配位)。Salmonella dublinのFliCフラジェリンは、505個のアミノ酸(aa)内にコードされる。
【図7−1】図7は、以下のフラジェリン改変体のヌクレオチド及びアミノ酸配列を示す:AA’(配列番号7〜8)、AB’(配列番号9〜10)、BA’(配列番号11〜12)、BB’(配列番号13〜14)、CA’(配列番号15〜16)、CB’(配列番号17〜18)、A(配列番号19〜20)、B(配列番号21〜22)、C(配列番号23〜24)、GST−A’(配列番号25〜26)、GST−B’(配列番号27〜28)、AA’n1〜170(配列番号29〜30)、AA’n1〜163(配列番号33〜34)、AA’n54〜170(配列番号31〜32)、AA’n54〜163(配列番号335〜36)、AB’n1〜170(配列番号37〜38)、AB’n1〜163(配列番号39〜40)、AA’n1〜129(配列番号41〜42)、AA’n54〜129(配列番号43〜44)、AB’n1〜129(配列番号45〜46)、AB’n54〜129(配列番号47〜48)、AA’n1〜100(配列番号49〜50)、AB’n1〜100(配列番号51〜52)、AA’n1〜70(配列番号53〜54)及びAB’n1〜70(配列番号55〜56)。pRSETbリーダー配列はイタリック体で示される(リーダーはMetを含み、MetはFliCのアミノ酸1でもある)。N末端定常領域には下線が引かれている。アミノ酸リンカー配列はボールド体である。C末端定常領域には下線が引かれている。GSTは、存在する場合、強調表示される。
【図7−2】図7は、以下のフラジェリン改変体のヌクレオチド及びアミノ酸配列を示す:AA’(配列番号7〜8)、AB’(配列番号9〜10)、BA’(配列番号11〜12)、BB’(配列番号13〜14)、CA’(配列番号15〜16)、CB’(配列番号17〜18)、A(配列番号19〜20)、B(配列番号21〜22)、C(配列番号23〜24)、GST−A’(配列番号25〜26)、GST−B’(配列番号27〜28)、AA’n1〜170(配列番号29〜30)、AA’n1〜163(配列番号33〜34)、AA’n54〜170(配列番号31〜32)、AA’n54〜163(配列番号335〜36)、AB’n1〜170(配列番号37〜38)、AB’n1〜163(配列番号39〜40)、AA’n1〜129(配列番号41〜42)、AA’n54〜129(配列番号43〜44)、AB’n1〜129(配列番号45〜46)、AB’n54〜129(配列番号47〜48)、AA’n1〜100(配列番号49〜50)、AB’n1〜100(配列番号51〜52)、AA’n1〜70(配列番号53〜54)及びAB’n1〜70(配列番号55〜56)。pRSETbリーダー配列はイタリック体で示される(リーダーはMetを含み、MetはFliCのアミノ酸1でもある)。N末端定常領域には下線が引かれている。アミノ酸リンカー配列はボールド体である。C末端定常領域には下線が引かれている。GSTは、存在する場合、強調表示される。
【図7−3】図7は、以下のフラジェリン改変体のヌクレオチド及びアミノ酸配列を示す:AA’(配列番号7〜8)、AB’(配列番号9〜10)、BA’(配列番号11〜12)、BB’(配列番号13〜14)、CA’(配列番号15〜16)、CB’(配列番号17〜18)、A(配列番号19〜20)、B(配列番号21〜22)、C(配列番号23〜24)、GST−A’(配列番号25〜26)、GST−B’(配列番号27〜28)、AA’n1〜170(配列番号29〜30)、AA’n1〜163(配列番号33〜34)、AA’n54〜170(配列番号31〜32)、AA’n54〜163(配列番号335〜36)、AB’n1〜170(配列番号37〜38)、AB’n1〜163(配列番号39〜40)、AA’n1〜129(配列番号41〜42)、AA’n54〜129(配列番号43〜44)、AB’n1〜129(配列番号45〜46)、AB’n54〜129(配列番号47〜48)、AA’n1〜100(配列番号49〜50)、AB’n1〜100(配列番号51〜52)、AA’n1〜70(配列番号53〜54)及びAB’n1〜70(配列番号55〜56)。pRSETbリーダー配列はイタリック体で示される(リーダーはMetを含み、MetはFliCのアミノ酸1でもある)。N末端定常領域には下線が引かれている。アミノ酸リンカー配列はボールド体である。C末端定常領域には下線が引かれている。GSTは、存在する場合、強調表示される。
【図7−4】図7は、以下のフラジェリン改変体のヌクレオチド及びアミノ酸配列を示す:AA’(配列番号7〜8)、AB’(配列番号9〜10)、BA’(配列番号11〜12)、BB’(配列番号13〜14)、CA’(配列番号15〜16)、CB’(配列番号17〜18)、A(配列番号19〜20)、B(配列番号21〜22)、C(配列番号23〜24)、GST−A’(配列番号25〜26)、GST−B’(配列番号27〜28)、AA’n1〜170(配列番号29〜30)、AA’n1〜163(配列番号33〜34)、AA’n54〜170(配列番号31〜32)、AA’n54〜163(配列番号335〜36)、AB’n1〜170(配列番号37〜38)、AB’n1〜163(配列番号39〜40)、AA’n1〜129(配列番号41〜42)、AA’n54〜129(配列番号43〜44)、AB’n1〜129(配列番号45〜46)、AB’n54〜129(配列番号47〜48)、AA’n1〜100(配列番号49〜50)、AB’n1〜100(配列番号51〜52)、AA’n1〜70(配列番号53〜54)及びAB’n1〜70(配列番号55〜56)。pRSETbリーダー配列はイタリック体で示される(リーダーはMetを含み、MetはFliCのアミノ酸1でもある)。N末端定常領域には下線が引かれている。アミノ酸リンカー配列はボールド体である。C末端定常領域には下線が引かれている。GSTは、存在する場合、強調表示される。
【図7−5】図7は、以下のフラジェリン改変体のヌクレオチド及びアミノ酸配列を示す:AA’(配列番号7〜8)、AB’(配列番号9〜10)、BA’(配列番号11〜12)、BB’(配列番号13〜14)、CA’(配列番号15〜16)、CB’(配列番号17〜18)、A(配列番号19〜20)、B(配列番号21〜22)、C(配列番号23〜24)、GST−A’(配列番号25〜26)、GST−B’(配列番号27〜28)、AA’n1〜170(配列番号29〜30)、AA’n1〜163(配列番号33〜34)、AA’n54〜170(配列番号31〜32)、AA’n54〜163(配列番号335〜36)、AB’n1〜170(配列番号37〜38)、AB’n1〜163(配列番号39〜40)、AA’n1〜129(配列番号41〜42)、AA’n54〜129(配列番号43〜44)、AB’n1〜129(配列番号45〜46)、AB’n54〜129(配列番号47〜48)、AA’n1〜100(配列番号49〜50)、AB’n1〜100(配列番号51〜52)、AA’n1〜70(配列番号53〜54)及びAB’n1〜70(配列番号55〜56)。pRSETbリーダー配列はイタリック体で示される(リーダーはMetを含み、MetはFliCのアミノ酸1でもある)。N末端定常領域には下線が引かれている。アミノ酸リンカー配列はボールド体である。C末端定常領域には下線が引かれている。GSTは、存在する場合、強調表示される。
【図7−6】図7は、以下のフラジェリン改変体のヌクレオチド及びアミノ酸配列を示す:AA’(配列番号7〜8)、AB’(配列番号9〜10)、BA’(配列番号11〜12)、BB’(配列番号13〜14)、CA’(配列番号15〜16)、CB’(配列番号17〜18)、A(配列番号19〜20)、B(配列番号21〜22)、C(配列番号23〜24)、GST−A’(配列番号25〜26)、GST−B’(配列番号27〜28)、AA’n1〜170(配列番号29〜30)、AA’n1〜163(配列番号33〜34)、AA’n54〜170(配列番号31〜32)、AA’n54〜163(配列番号335〜36)、AB’n1〜170(配列番号37〜38)、AB’n1〜163(配列番号39〜40)、AA’n1〜129(配列番号41〜42)、AA’n54〜129(配列番号43〜44)、AB’n1〜129(配列番号45〜46)、AB’n54〜129(配列番号47〜48)、AA’n1〜100(配列番号49〜50)、AB’n1〜100(配列番号51〜52)、AA’n1〜70(配列番号53〜54)及びAB’n1〜70(配列番号55〜56)。pRSETbリーダー配列はイタリック体で示される(リーダーはMetを含み、MetはFliCのアミノ酸1でもある)。N末端定常領域には下線が引かれている。アミノ酸リンカー配列はボールド体である。C末端定常領域には下線が引かれている。GSTは、存在する場合、強調表示される。
【図7−7】図7は、以下のフラジェリン改変体のヌクレオチド及びアミノ酸配列を示す:AA’(配列番号7〜8)、AB’(配列番号9〜10)、BA’(配列番号11〜12)、BB’(配列番号13〜14)、CA’(配列番号15〜16)、CB’(配列番号17〜18)、A(配列番号19〜20)、B(配列番号21〜22)、C(配列番号23〜24)、GST−A’(配列番号25〜26)、GST−B’(配列番号27〜28)、AA’n1〜170(配列番号29〜30)、AA’n1〜163(配列番号33〜34)、AA’n54〜170(配列番号31〜32)、AA’n54〜163(配列番号335〜36)、AB’n1〜170(配列番号37〜38)、AB’n1〜163(配列番号39〜40)、AA’n1〜129(配列番号41〜42)、AA’n54〜129(配列番号43〜44)、AB’n1〜129(配列番号45〜46)、AB’n54〜129(配列番号47〜48)、AA’n1〜100(配列番号49〜50)、AB’n1〜100(配列番号51〜52)、AA’n1〜70(配列番号53〜54)及びAB’n1〜70(配列番号55〜56)。pRSETbリーダー配列はイタリック体で示される(リーダーはMetを含み、MetはFliCのアミノ酸1でもある)。N末端定常領域には下線が引かれている。アミノ酸リンカー配列はボールド体である。C末端定常領域には下線が引かれている。GSTは、存在する場合、強調表示される。
【図7−8】図7は、以下のフラジェリン改変体のヌクレオチド及びアミノ酸配列を示す:AA’(配列番号7〜8)、AB’(配列番号9〜10)、BA’(配列番号11〜12)、BB’(配列番号13〜14)、CA’(配列番号15〜16)、CB’(配列番号17〜18)、A(配列番号19〜20)、B(配列番号21〜22)、C(配列番号23〜24)、GST−A’(配列番号25〜26)、GST−B’(配列番号27〜28)、AA’n1〜170(配列番号29〜30)、AA’n1〜163(配列番号33〜34)、AA’n54〜170(配列番号31〜32)、AA’n54〜163(配列番号335〜36)、AB’n1〜170(配列番号37〜38)、AB’n1〜163(配列番号39〜40)、AA’n1〜129(配列番号41〜42)、AA’n54〜129(配列番号43〜44)、AB’n1〜129(配列番号45〜46)、AB’n54〜129(配列番号47〜48)、AA’n1〜100(配列番号49〜50)、AB’n1〜100(配列番号51〜52)、AA’n1〜70(配列番号53〜54)及びAB’n1〜70(配列番号55〜56)。pRSETbリーダー配列はイタリック体で示される(リーダーはMetを含み、MetはFliCのアミノ酸1でもある)。N末端定常領域には下線が引かれている。アミノ酸リンカー配列はボールド体である。C末端定常領域には下線が引かれている。GSTは、存在する場合、強調表示される。
【図7−9】図7は、以下のフラジェリン改変体のヌクレオチド及びアミノ酸配列を示す:AA’(配列番号7〜8)、AB’(配列番号9〜10)、BA’(配列番号11〜12)、BB’(配列番号13〜14)、CA’(配列番号15〜16)、CB’(配列番号17〜18)、A(配列番号19〜20)、B(配列番号21〜22)、C(配列番号23〜24)、GST−A’(配列番号25〜26)、GST−B’(配列番号27〜28)、AA’n1〜170(配列番号29〜30)、AA’n1〜163(配列番号33〜34)、AA’n54〜170(配列番号31〜32)、AA’n54〜163(配列番号335〜36)、AB’n1〜170(配列番号37〜38)、AB’n1〜163(配列番号39〜40)、AA’n1〜129(配列番号41〜42)、AA’n54〜129(配列番号43〜44)、AB’n1〜129(配列番号45〜46)、AB’n54〜129(配列番号47〜48)、AA’n1〜100(配列番号49〜50)、AB’n1〜100(配列番号51〜52)、AA’n1〜70(配列番号53〜54)及びAB’n1〜70(配列番号55〜56)。pRSETbリーダー配列はイタリック体で示される(リーダーはMetを含み、MetはFliCのアミノ酸1でもある)。N末端定常領域には下線が引かれている。アミノ酸リンカー配列はボールド体である。C末端定常領域には下線が引かれている。GSTは、存在する場合、強調表示される。
【図7−10】図7は、以下のフラジェリン改変体のヌクレオチド及びアミノ酸配列を示す:AA’(配列番号7〜8)、AB’(配列番号9〜10)、BA’(配列番号11〜12)、BB’(配列番号13〜14)、CA’(配列番号15〜16)、CB’(配列番号17〜18)、A(配列番号19〜20)、B(配列番号21〜22)、C(配列番号23〜24)、GST−A’(配列番号25〜26)、GST−B’(配列番号27〜28)、AA’n1〜170(配列番号29〜30)、AA’n1〜163(配列番号33〜34)、AA’n54〜170(配列番号31〜32)、AA’n54〜163(配列番号335〜36)、AB’n1〜170(配列番号37〜38)、AB’n1〜163(配列番号39〜40)、AA’n1〜129(配列番号41〜42)、AA’n54〜129(配列番号43〜44)、AB’n1〜129(配列番号45〜46)、AB’n54〜129(配列番号47〜48)、AA’n1〜100(配列番号49〜50)、AB’n1〜100(配列番号51〜52)、AA’n1〜70(配列番号53〜54)及びAB’n1〜70(配列番号55〜56)。pRSETbリーダー配列はイタリック体で示される(リーダーはMetを含み、MetはFliCのアミノ酸1でもある)。N末端定常領域には下線が引かれている。アミノ酸リンカー配列はボールド体である。C末端定常領域には下線が引かれている。GSTは、存在する場合、強調表示される。
【図7−11】図7は、以下のフラジェリン改変体のヌクレオチド及びアミノ酸配列を示す:AA’(配列番号7〜8)、AB’(配列番号9〜10)、BA’(配列番号11〜12)、BB’(配列番号13〜14)、CA’(配列番号15〜16)、CB’(配列番号17〜18)、A(配列番号19〜20)、B(配列番号21〜22)、C(配列番号23〜24)、GST−A’(配列番号25〜26)、GST−B’(配列番号27〜28)、AA’n1〜170(配列番号29〜30)、AA’n1〜163(配列番号33〜34)、AA’n54〜170(配列番号31〜32)、AA’n54〜163(配列番号335〜36)、AB’n1〜170(配列番号37〜38)、AB’n1〜163(配列番号39〜40)、AA’n1〜129(配列番号41〜42)、AA’n54〜129(配列番号43〜44)、AB’n1〜129(配列番号45〜46)、AB’n54〜129(配列番号47〜48)、AA’n1〜100(配列番号49〜50)、AB’n1〜100(配列番号51〜52)、AA’n1〜70(配列番号53〜54)及びAB’n1〜70(配列番号55〜56)。pRSETbリーダー配列はイタリック体で示される(リーダーはMetを含み、MetはFliCのアミノ酸1でもある)。N末端定常領域には下線が引かれている。アミノ酸リンカー配列はボールド体である。C末端定常領域には下線が引かれている。GSTは、存在する場合、強調表示される。
【図8】図8は、21種の細菌由来の保存されたアミノ(図8A)及びカルボキシ(図8B)末端のアミノ酸配列の比較を示す。TLR5活性に重要な13種類の保存されたアミノ酸は、陰影を付けて示される。アミノ酸配列は、TrEMBL(最初の文字=Q)又はSwiss−Prot(最初の文字=P)の受託番号によって識別される。
【図9】図9は、ヒトトール様受容体5タンパク質の核酸及びアミノ酸配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明者らは、フラジェリンなどのトール様受容体作動物質と組み合わせたトール様受容体5(TLR−5)などのトール様受容体の供給が、自然(シス効果)と獲得(トランス効果)の両方の免疫応答に関与する細胞を補充するシス及びイントランス効果をもたらして、がん細胞及び病原体感染細胞をNF−κBアポトーシス経路を介して特異的に死滅させるという驚くべき発見をした。理論に拘泥するものではないが、本発明において実施される概念は、(i)腫瘍における既存のTLR発現に対するTLRによって媒介される免疫化戦略の依存を、TLRの発現を駆動する構築物を腫瘍に導入することによって克服すること、及び(ii)TLR作動物質の局所的プールを作製することによって腫瘍に対する免疫応答を導くことであった。例えば、TLRを含む製剤は、発現を誘導し、同時にTLRを活性化して、腸壁を通した多量の細菌侵入の状況を模倣した宿主免疫系に腫瘍細胞を曝露させる。
【0008】
TLR5などのTLRとフラジェリンなどのTLR作動物質を供給して、自然と獲得の両方の免疫系を相互作用させ、活性化することによって、この方法は、前立腺、乳房、結腸、食道、胃、肺、すい臓、腎臓、甲状腺、卵巣、咽頭又は頚部のがんに由来する腫瘍の処置、並びに肉腫、黒色腫、白血病及びリンパ腫の処置に使用することができる。この方法の適用例はがんの処置に限定されず、この方法は、ウイルス、細菌、寄生原虫及び真菌に由来する感染症の処置に使用することもできる。
【0009】
TLRとTLR作動物質を供給することの変形としては、TLR受容体と、同じ易感染性ほ乳動物細胞においてTLR活性を活性化する分泌型フラジェリンとを同時発現するベクターが挙げられる。本発明の方法は、ほ乳動物細胞中のTLR受容体と細胞にトランスで投与されるTLR作動物質とを発現するベクター構築物を含むこともできる。例えば、アデノウイルスベクターは、ほ乳動物細胞によるその効果的な合成及び分泌を達成するのにフラジェリンの改変を必要とし得る。
【0010】
1.定義
本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を記述する目的のためにすぎず、限定的であることを意図するものではない。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される単数形「a」、「an」及び「the」は、特段の明示がない限り、複数の指示対象を含む。
【0011】
本明細書で数値範囲を列挙する場合、その間にある各数値も同じ精度で明示的に企図される。例えば、6〜9の範囲では6と9に加えて数7と8も企図され、範囲6.0〜7.0では、数6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9及び7.0も明示的に企図される。
【0012】
「投与する」は、薬剤又は薬剤の単回投与又は複数回投与を意味し得る。
【0013】
ペプチド又はポリペプチドに関連した「類似体」は、1種類以上の非標準アミノ酸、又は従来のアミノ酸セットとは別の構造変化を含む、ペプチド又はポリペプチドを意味し得る。
【0014】
「抗体」は、Fab、F(ab’)2、Fd並びに単鎖抗体、二特異性抗体、二重特異性抗体、二機能性抗体及びその誘導体を含めて、IgG、IgM、IgA、IgD若しくはIgEクラス、又は断片、又はその誘導体の抗体を意味し得る。抗体は、所望のエピトープ又はそれに由来する配列に対して十分な結合特異性を示すモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、親和性精製抗体又はその混合物とすることができる。抗体はキメラ抗体とすることもできる。抗体は、当該技術分野で公知の1種類以上の化学、ペプチド又はポリペプチド成分の付加によって誘導体化することができる。抗体は、化学成分と複合化することができる。
【0015】
「誘導体」は、一次構造(アミノ酸及びアミノ酸類似体)を除いて異なるペプチド又はポリペプチドを意味し得る。誘導体は、翻訳後修飾の一形態であるグリコシル化によって異なり得る。例えば、ペプチド又はポリペプチドは、異種の系における発現に帰因するグリコシル化パターンを示し得る。少なくとも1つの生物活性が保持される場合、これらのペプチド又はポリペプチドは本発明による誘導体である。別の誘導体としては、共有結合的に修飾されたN又はC末端を有する融合ペプチド又は融合ポリペプチド、PEG化ペプチド又はポリペプチド、脂質部分と結合したペプチド又はポリペプチド、アルキル化ペプチド又はポリペプチド、アミノ酸側鎖官能基を介して別のペプチド、ポリペプチド又は化学物質と結合したペプチド又はポリペプチド、及び当該技術分野において知られている別の改変が挙げられる。
【0016】
「断片」は、基準ペプチド又はポリペプチドの一部を意味し得る。
【0017】
「ホモログ」は、共通の進化の祖先を持つペプチド又はポリペプチドを意味し得る。
【0018】
「リーダー配列」は、対象ペプチド又はポリペプチドが、細胞膜からの細胞外分泌の目的で真核細胞の小胞体及びゴルジ複合体を経由して適切に移動することができるように、対象ペプチド又はポリペプチドに関連し、翻訳される任意のペプチド配列をコードする核酸であり得る。リーダーペプチド配列は、アルカリホスファターゼに由来することができる。リーダー配列は、
【0019】
【化1】

を含むDNA配列を有することができる。
【0020】
「リポソーム」は、細胞膜と同じ材料でできた小さい泡(小胞)を意味し得る。リポソームは、薬物で満たされ、がん及び他の疾患の薬物を送達するのに使用される。リポソームにはベクターを充填することができる。リポソーム膜は、頭部グループと尾部グループを有する分子であるリン脂質でできていてもよい。リポソームの頭部は、水に誘引され得る。尾部は、長い炭化水素鎖でできており、水によってはじかれる。尾部は、水によってはじかれ、整列して、水から離れた表面を形成することができる。原形質膜の脂質は、主に、ホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジルコリンのようなリン脂質とすることができる。リポソームは、(卵のホスファチジルエタノールアミンのような)混合脂質鎖を有する天然由来のリン脂質で構成することができ、又はDOPE(ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン)のような純粋な界面活性剤成分で構成することができる。
【0021】
「ペプチド」又は「ポリペプチド」は、アミノ酸の連結配列を意味することができ、天然、合成、又は天然と合成の変形若しくは組合せとすることができる。
【0022】
「実質的に同一」とは、第1及び第2のアミノ酸配列が、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100個のアミノ酸の領域にわたって少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%であることを意味し得る。
【0023】
「処置すること」、「処置」又は「処置する」は各々、症状又は障害の症候、臨床徴候、又は根底にある病理を、一時的又は恒久的に、軽減、抑制、抑止、除去若しくは防止する、又はその出現を遅延させることを意味し得る。症状又は障害の防止は、発症前に本発明の薬剤を対象に投与することを含む。症状又は障害の抑制は、症状又は障害の誘発後かつその臨床的出現前に本発明の薬剤を対象に投与することを含む。症状又は障害の抑止は、臨床的発症後に本発明の薬剤を対象に投与することを含む。
【0024】
「改変体」は、アミノ酸の挿入、欠失又は保存的置換によってアミノ酸配列が異なるが、少なくとも1つの生物活性を保持する、ペプチド又はポリペプチドを意味し得る。「生物活性」の代表例としては、トール様受容体に結合する能力、及び特異抗体によって結合される能力が挙げられる。改変体は、少なくとも1つの生物活性を保持するアミノ酸配列を有する参照タンパク質と実質的に同一であるアミノ酸配列を有するタンパク質を意味することもできる。アミノ酸の保存的置換、すなわち、アミノ酸を性質(例えば、荷電領域の親水性、程度及び分布)の類似した異なるアミノ酸で置換することは、当該技術分野では典型的には軽微な変化を含むと認識される。これらの軽微な変化は、当該技術分野において理解されるように、部分的には、アミノ酸のハイドロパシー指数を考慮することによって確認することができる。Kyte et al.,J.Mol.Biol.157:105−132(1982)。アミノ酸のハイドロパシー指数は、その疎水性及び電荷の考察に基づく。ハイドロパシー指数の類似したアミノ酸は、置換してもタンパク質機能を保持できることが当該技術分野で知られている。一態様においては、±2のハイドロパシー指数を有するアミノ酸を置換する。アミノ酸の親水性も、生物学的機能を保持するタンパク質をもたらす置換を明らかにするのに使用することができる。ペプチドに関連してアミノ酸の親水性を考慮すると、該ペプチドの最大局所平均親水性を計算することができる。最大局所平均親水性は、抗原性及び免疫原性と良く相関することが報告された有用な尺度である。米国特許第4,554,101号を参照によりその全体を本明細書に援用する。親水性値の類似したアミノ酸の置換は、当該技術分野において理解されるように、生物活性、例えば免疫原性を保持したペプチドを生成することができる。置換は、互いに±2以内の親水性値を有するアミノ酸を使用して実施することができる。アミノ酸の疎水性指数と親水性値の両方は、該アミノ酸の特定の側鎖による影響を受ける。その観察と一致して、生物学的機能に適合したアミノ酸置換は、疎水性、親水性、電荷、サイズ及び他の諸性質によって示されるように、アミノ酸、特に該アミノ酸の側鎖の相対的類似度に依存すると理解される。
【0025】
「ベクター」は、複製開始点を含む核酸配列を意味し得る。ベクターは、プラスミド、酵母又はほ乳動物人工染色体とすることができる。ベクターは、RNA又はDNAベクターとすることができる。ベクターは、自己複製染色体外ベクター、又は宿主ゲノムに組み込まれたベクターとすることができる。
【0026】
2.トール様受容体
パターン認識受容体(PRR)の一タイプであり得るトール様受容体(TLR)を本明細書に記載する。TLRは、病原体関連分子パターン(PAMP)と総称される、グラム陽性、グラム陰性菌、真菌及びウイルスを含めた病原体に由来する保存された分子生成物であるが宿主分子とは識別可能である分子を認識することができる。TLRは、損傷関連分子パターン(DAMP)と総称される、損傷した又は瀕死の細胞から放出される内因性分子を認識することもできる。PAMP又はDAMPは、以下に更に記述されるTLR作動物質とすることができる。TLRは、シグナルを伝達するために細胞質内でアダプター分子を補充する断片、改変体、類似体、ホモログ又は誘導体とすることができる。TLRは、ヒト、又はアカゲザル、マウス、ラットなどの他のほ乳動物種に由来することができる。TLRは、シグナルを伝達するために細胞質内でアダプター分子を補充するTLRと少なくとも30〜99%同一とすることができる。
【0027】
TLRは、大部分のほ乳動物種に存在すると推定される10から15タイプのTLRの一つとすることができる。TLRは、ヒトとマウスにおいて一緒に同定された(単にTLR1からTLR13と命名された)13種類のTLRの一つとすることができ、又は別のほ乳動物種に存在する同等の形態とすることができる。TLRは、ヒトにおいて同定された11メンバー(TLR1〜TLR11)の一つとすることができる。
【0028】
TLRは、異なるタイプの免疫細胞によって発現することができ、細胞表面上又は細胞質中に位置することができる。TLRは、がん細胞上で発現され得る。TLRは、消化器系の正常な上皮細胞、皮膚の正常な角化細胞、肺胞及び気管支上皮細胞、並びに雌の生殖管の上皮細胞によって発現され得る。器官に沿って並ぶこれらの細胞は、微生物侵入に対する最前線の防御であり得る。上皮細胞で発現されるTLRは、増殖及びアポトーシスの調節に極めて重要な役割を果たすことができる。
【0029】
TLRを発現するがん細胞は、以下の表から選択することができる。
【0030】
表1 ヒトがん細胞におけるTLR発現
【0031】
【表1】

がん細胞上で発現されるTLRは、NF−κBカスケードを上方制御し、発がん及びがん細胞増殖の一因になる抗アポトーシス性タンパク質を産生し得る。
【0032】
TLRの4種類のアダプター分子がシグナル伝達に関与することが知られている。これらのタンパク質は、骨髄分化因子88(MyD88)、(Malとも称される)Tirap、Trif及びTramとして知られる。アダプターは、シグナルを増幅するある種のプロテインキナーゼ(IRAK1、IRAK4、TBK1及びIKKi)を含めて、細胞内の別の分子を活性化し、最終的に、炎症反応を調整する遺伝子を誘導又は抑制する。病原体認識中のTLRシグナル伝達経路は、MyD88、活性化B細胞の核因子カッパ軽鎖エンハンサー(NF−κB)、及び分裂促進因子関連タンパク質キナーゼ(MAPK)によって媒介される細胞外及び細胞内経路を介して、免疫反応を誘発することができる。全体として、数千の遺伝子がTLRシグナル伝達によって活性化される。まとめると、TLRは、遺伝子調節の最も多面的な、それでいて緻密に調節されたゲートウェイの一つを構成する。
【0033】
TLRはインターロイキン−1受容体と一緒に、「インターロイキン−1受容体/トール様受容体スーパーファミリー」として知られる受容体スーパーファミリーを形成する。このファミリーのすべてのメンバーは共通していわゆるTIR(Toll−IL−1受容体)ドメインを有する。TIRドメインの3つのサブグループが存在し得る。サブグループI TIRドメインを含むタンパク質は、マクロファージ、単球及び樹状細胞によって産生されるインターロイキンの受容体であり、すべてが細胞外免疫グロブリン(Ig)ドメインを有する。サブグループII TIRドメインを含むタンパク質は、古典的なTLRであり、微生物起源の分子に直接又は間接的に結合する。TIRドメインを含むタンパク質の第3のサブグループ(III)は、すべてサイトゾルであるアダプタータンパク質からなり、サブグループ1及び2のタンパク質からのシグナル伝達を媒介する。TLRは、サブグループI TIRドメイン、サブグループII TIRドメイン又はサブグループIII TIRドメインを保持する断片、改変体、類似体、ホモログ又は誘導体とすることができる。
【0034】
TLRは、二量体として機能することができる。例えば、大部分のTLRはホモ二量体として機能するように見えるが、TLR2は、TLR1又はTLR6とヘテロ二量体を形成し、各二量体は異なるリガンド特異性を有する。TLRは、MD−2を必要とするTLR4によるLPSの認識の場合など、完全なリガンド感受性については別の補助受容体にも依存し得る。CD14及びLPS結合タンパク質(LBP)は、MD−2に対するLPSの提示を促進することが知られている。
【0035】
a.TLR1
TLRは、グラム陽性菌に特異的にPAMPを認識するTLR1とすることができる。TLR1は、CD281とも称される。
【0036】
b.TLR5
TLRは、トール様受容体5とすることができる。TLR−5によってコードされるタンパク質は、病原体認識及び自然免疫の活性化において基礎的な役割を果たすことができる。TLR−5は、感染病原体上で発現されるPAMPを認識することができ、有効な免疫の発生に必要なサイトカインの産生を媒介することができる。TLR−5は、細菌鞭毛の主成分である細菌フラジェリン及びビルレンス因子を認識することができる。TLRの活性化は、核因子NF−κBを動員し、腫瘍壊死因子アルファの産生を刺激することができる。
【0037】
3.トール様受容体作動物質
本明細書ではTLR作動物質も記載する。TLR作動物質は、病原体に由来する保存された分子産物であり得るPAMPとすることができる。病原体は、グラム陽性菌、グラム陰性菌、真菌又はウイルスとすることができる。TLR作動物質は、損傷した又は瀕死の細胞から放出される内因性分子であり得る、損傷関連分子パターン(DAMP)リガンドとすることができる。DAMP又はPAMPは、TLRシグナルを介して免疫応答を惹起することができ、シグナルを伝達するために、細胞質内でアダプター分子を補充する。TLR作動物質は、以下の表2のリガンドであり得るTLRの作動物質とすることができる。
【0038】
表2 TLR及びリガンド
【0039】
【表2】

TLR作動物質は、TLRに結合してNF−κB活性の活性化などのTLR媒介性活性を誘導するPAMP又はDAMPの断片、改変体、類似体、相同性又は誘導体とすることができる。TLR作動物質の断片、改変体、類似体、ホモログ又は誘導体は、TLR作動物質のアミノ酸と少なくとも30〜99%同一とすることができ、TLR媒介性活性を誘導することができる。
【0040】
TLR作動物質は、TLR−5などのTLRを標的にすることができる。TLR作動物質は、TLR−5の作動物質とすることができ、TLR−5活性を刺激することができる。TLR作動物質は、抗TLR5抗体又は別の小分子とすることができる。TLR作動物質はフラジェリンとすることができる。
【0041】
フラジェリンは、フラジェリン又はフラジェリン関連ポリペプチドとすることもできる。フラジェリンは、種々のグラム陽性及びグラム陰性菌種を含めて、任意の起源とすることができる。フラジェリンは、その内容全体を参照により本明細書に援用する米国特許出願公開第2003/000044429号に開示されたフラジェリンポリペプチドを含めて、ただしそれだけに限定されない任意のグラム陽性又はグラム陰性菌種に由来するフラジェリンポリペプチドとすることができる。例えば、フラジェリンは、米国特許出願公開第2003/0044429号の図7に示された細菌種由来のアミノ酸配列を有することができる。U.S.2003/0044429の図7に列挙されたフラジェリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、NCBI Genbankデータベースを含めた情報源で公的に利用可能である。フラジェリンは、米国特許出願公開第2003/000044429号の図25に示されたBLASTの結果に列挙された受託番号に対応するフラジェリンペプチド又はその改変体とすることもできる。フラジェリンは、その内容全体を本明細書に援用する米国特許出願公開第2009/0011982号に開示されたフラジェリンポリペプチドとすることもできる。フラジェリンは、本明細書の図6及び7に開示されたフラジェリンポリペプチドのいずれか一つとすることができる。
【0042】
フラジェリンは、TLR5に結合してNF−κB活性の活性化などのTLR5媒介性活性を誘導するフラジェリンの断片、改変体、類似体、相同性又は誘導体とすることができる。フラジェリンの断片、改変体、類似体、ホモログ又は誘導体は、TLR5に結合してTLR5媒介性活性を誘導するフラジェリンのアミノ酸と少なくとも30〜99%同一とすることができる。
【0043】
フラジェリンは、Salmonellaの一種に由来することができ、その代表例は(GenBankアクセッション番号M84972によってコードされる)S.dublinである。フラジェリン関連ポリペプチドは、TLR5に結合してNF−kB活性の活性化などのTLR5媒介性活性を誘導するM84972の断片、改変体、類似体、ホモログ若しくは誘導体又はその組合せとすることができる。フラジェリンの断片、改変体、類似体、ホモログ又は誘導体は、フラジェリンのドメイン構造及びTLR5によって認識される保存された構造に基づく合理的設計によって得ることができる。
【0044】
フラジェリンは、図5に示す13種類の保存されたアミノ酸(位置89、90、91、95、98、101、115、422、423、426、431、436及び452)のうち少なくとも10、11、12又は13種類を含むことができる。フラジェリンは、M84972のアミノ酸1 174及び418 505と少なくとも30〜99%同一とすることができる。その内容全体を本明細書に援用する米国特許出願公開第2009/0011982号の図26は、M84972と比較した、公知のTLR−5刺激活性を有するフラジェリンのアミノ及びカルボキシ末端の一致率を示す。
【0045】
フラジェリンは、細菌鞭毛の主成分であり得る。フラジェリンは3個のドメインで構成され得る(図4)。ドメイン1(D1)とドメイン2(D2)は不連続であり得、アミノ末端とカルボキシ末端の残基がヘアピン構造の形成によって並列するときに形成され得る。D1及びD2ドメインを含むアミノ及びカルボキシ末端が最も保存され得る。一方、中間の超可変領域(D3)は大きく変わり得る。Escherichia coliヒンジによって分離されたアミノD1及びD2とカルボキシルD1及びD2(ND1−2/ECH/CD2)を含む組換えタンパク質を使用した試験によれば、D1及びD2はECHエレメントに結合すると生理活性になり得る。このキメラは、2つの腸管上皮細胞系において、IkBaの分解、NF−kBの活性化、及びNOとIL−8の産生を誘発し得るが、ヒンジ単独では誘発しない。非保存D3ドメインは、鞭毛繊維の表面に存在することができ、主要な抗原エピトープを含み得る。フラジェリンの強力な炎症誘発活性は、高度に保存されたN及びC D1及びD2領域に存在し得る(図4参照)。
【0046】
フラジェリンは、トール様受容体5(TLR5)に結合することによってNF−kB活性を誘導することができる。TLRは、フラジェリンに特有な保存構造を認識することができる。保存構造は、アミノ酸含有量の変化をある程度許容した残基の大きいグループで構成され得る。その内容を参照により本明細書に援用するSmith et al.,Nat Immunol.4:1247−53(2003)は、TLR5によって認識される保存構造の一部であるフラジェリン中の13種類の保存されたアミノ酸を特定した。TLR5活性に重要であり得るフラジェリンの13種類の保存されたアミノ酸を図5に示す。
【0047】
少なくとも幾らかのTLR5刺激活性を保持するフラジェリンの多数の欠失変異体が作製された。フラジェリンは、かかる欠失変異体とすることができ、本明細書の実施例に開示する欠失変異体とすることができる。フラジェリンは、アミノ酸185〜306若しくは444〜492を欠損したGenBankアクセッション番号D13689から、又はアミノ酸179〜415を欠損したGenBankアクセッション番号M84973から翻訳された配列、又はその改変体を含むことができる。
【0048】
フラジェリンは、トランスポゾンの挿入及び変化を可変D3ドメインに含むことができる。D3ドメインは、ヒンジ又はリンカーポリペプチドで部分的又は全体的に置換して、D1及びD2ドメインを適切に折り畳み、その改変体がTLR5活性を刺激するようにすることができる。改変体のヒンジエレメントは、E.coli MukBタンパク質中に見いだすことができ、配列番号3及び4の配列又はその改変体を有することができる。
【0049】
上述したフラジェリンは、更にリーダー配列を含むことができる。リーダー配列を更に含むフラジェリンはCBLB502Sとすることができる。
【0050】
4.薬剤
本発明は、治療有効量のTLR及びTLR作動物質を含む薬剤にも関する。薬剤は、TLRをTLR作動物質とは別に送達することができる。薬剤はベクターとすることができる。ベクターは、TLRをコードする第1の核酸、及びTLR作動物質を含む第2の核酸を含むことができる。ベクターは、ほ乳動物細胞に形質導入を生じさせることができる。ベクターは、強力なプロモーターを使用してTLR及び/又はTLR作動物質のバイシストロニック性発現を可能にすることができる。ベクターは、強力なプロモーターによって制御することができる、TLRをコードする遺伝子のみを含むことができる。ベクターは、ウイルス又はリポソーム関連ベクター系によってほ乳動物細胞に送達することができる。ウイルスベクター系は、アデノウイルス又はサイトメガロウイルスとすることができる。
【0051】
薬剤は、ベクターを収容するリポソームとすることができる。リポソームは、ほ乳動物細胞に形質導入を生じさせることができ、発現のためにベクターを送達することができる。
【0052】
薬剤は、発現を誘導し、同時にTLRを活性化して、腸壁を通した多量の侵入の状況を模倣した宿主免疫系に腫瘍又は感染細胞を曝露させる、製剤とすることができる。薬剤は、TLR作動物質と組み合わせてTLRを発現する製剤とすることができ、筋肉内などの投与のために溶液で系統的に送達することができる。薬剤は、アデノウイルス又はサイトメガロウイルスベクター系などの同じベクターから発現することができるTLR作動物質と組み合わせてTLRを発現する製剤とすることができる。薬剤は、ほ乳動物細胞の細胞表面に機能的作動物質を輸送することができるナノ粒子の形で発現されるTLR作動物質と組み合わせてTLRを発現する製剤とすることができる。
【0053】
薬剤は、当該技術分野で周知である方法を使用して製造することができる上記製剤を含む薬剤とすることができる。薬剤は、共薬剤(coagent)を含むこともできる。
【0054】
ベクターは、TLR5をコードする第1の核酸、及びフラジェリンを含む第2の核酸を含むことができる。ベクターは、強力なプロモーターを使用して、TLR5及び/又はフラジェリンを発現することができる。発現ベクターは、さらに、TLR若しくはTLR5及び/又はフラジェリンをコードする遺伝子の上流にクローン化されたリーダー配列を含むことができる。発現ベクターは、pCD515に基づくベクター系とすることができる。発現ベクターは、図1Aに記載のpCD515−CMV−hTLR5−EF1−502とすることができる。発現ベクターは、図1Bに記載のpCD515−CMV−hTLR5とすることができる。発現ベクターは、図1Cに記載のpCD515−CMV−Sseap−502とすることができる。
【0055】
薬剤は、発現を誘導し、同時にTLRを活性化して、腸壁を通した多量の侵入の状況を模倣した宿主免疫系に腫瘍又は感染細胞を曝露させる、製剤とすることができる。製剤は、ベクターを収容するウイルス発現系の形とすることができる。製剤は、
筋肉内などの投与のために溶液で系統的に送達されるTLR作動物質、
TLRと同じアデノウイルスベクターから発現されるTLR作動物質、又は
CBLB502に由来し得るフラジェリンなどの機能性TLR作動物質をその表面に有するナノ粒子の形で発現されるTLR作動物質と組み合わせた、アデノウイルス発現機能性ヒトTLR5とすることができる。ナノ粒子は、バクテリオファージT7に基づくことができ、又はその生物活性を保持するように全体的に形成することができる。ナノ処方は、用量依存的にNF−κB応答性レポーターを活性化することができ、有効な免疫化手法のためにエンドサイトーシスによって細胞内に取り込むことができる(Mobian AP−A)。
【0056】
a.投与
本明細書に記載の方法を使用した薬剤の投与は、経口、非経口、舌下、経皮、経直腸、経粘膜、局所、吸入、口腔投与又はその組合せとすることができる。非経口投与としては、静脈内、動脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、髄腔内及び関節内が挙げられるが、それだけに限定されない。獣医学用途の場合、薬剤は、正常な獣医学診療に従って適切に許容される処方として投与することができる。獣医師は、特定の動物に最も適切な投与計画及び投与経路を容易に決定することができる。薬剤は、ヒト患者、ネコ、イヌ、大型動物又はトリに投与することができる。
【0057】
薬剤は、別の処置と同時に又は規則正しく投与することができる。本明細書では「同時の」又は「同時に」という用語は、薬剤と別の処置が、互いに48時間以内、好ましくは24時間以内、より好ましくは12時間以内、更により好ましくは6時間以内、最も好ましくは3時間以下で投与されることを意味する。本明細書では「規則正しく」という用語は、他方の処置とは異なるときに、繰り返し投与に対してある頻度で、薬剤を投与することを意味する。
【0058】
薬剤は、約120時間、118時間、116時間、114時間、112時間、110時間、108時間、106時間、104時間、102時間、100時間、98時間、96時間、94時間、92時間、90時間、88時間、86時間、84時間、82時間、80時間、78時間、76時間、74時間、72時間、70時間、68時間、66時間、64時間、62時間、60時間、58時間、56時間、54時間、52時間、50hr、48時間、46時間、44時間、42時間、40時間、38時間、36時間、34時間、32時間、30時間、28時間、26時間、24時間、22時間、20時間、18時間、16時間、14時間、12時間、10時間、8時間、6時間、4時間、3時間、2時間、1時間、55分、50分、45分、40分、35分、30分、25分、20分、15分、10分、9分、8分、7分、6分、5分、4分、3分、2分及び1分を含めて、別の処置の前に任意の時点で投与することができる。薬剤は、約120時間、118時間、116時間、114時間、112時間、110時間、108時間、106時間、104時間、102時間、100時間、98時間、96時間、94時間、92時間、90時間、88時間、86時間、84時間、82時間、80時間、78時間、76時間、74時間、72時間、70時間、68時間、66時間、64時間、62時間、60時間、58時間、56時間、54時間、52時間、50hr、48時間、46時間、44時間、42時間、40時間、38時間、36時間、34時間、32時間、30時間、28時間、26時間、24時間、22時間、20時間、18時間、16時間、14時間、12時間、10時間、8時間、6時間、4時間、3時間、2時間、1時間、55分、50分、45分、40分、35分、30分、25分、20分、15分、10分、9分、8分、7分、6分、5分、4分、3分、2分及び1分を含めて、薬剤の第2の処置の前に任意の時点で投与することができる。
【0059】
薬剤は、約1分、2分、3分、4分、5分、6分、7分、8分、9分、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分、1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、14時間、16時間、18時間、20時間、22時間、24時間、26時間、28時間、30時間、32時間、34時間、36時間、38時間、40時間、42時間、44時間、46時間、48時間、50時間、52時間、54時間、56時間、58時間、60時間、62時間、64時間、66時間、68時間、70時間、72時間、74時間、76時間、78時間、80時間、82時間、84時間、86時間、88時間、90時間、92時間、94時間、96時間、98時間、100時間、102時間、104時間、106時間、108時間、110時間、112時間、114時間、116時間、118時間及び120時間を含めて、別の処置の後に任意の時点で投与することができる。薬剤は、約120時間、118時間、116時間、114時間、112時間、110時間、108時間、106時間、104時間、102時間、100時間、98時間、96時間、94時間、92時間、90時間、88時間、86時間、84時間、82時間、80時間、78時間、76時間、74時間、72時間、70時間、68時間、66時間、64時間、62時間、60時間、58時間、56時間、54時間、52時間、50hr、48時間、46時間、44時間、42時間、40時間、38時間、36時間、34時間、32時間、30時間、28時間、26時間、24時間、22時間、20時間、18時間、16時間、14時間、12時間、10時間、8時間、6時間、4時間、3時間、2時間、1時間、55分、50分、45分、40分、35分、30分、25分、20分、15分、10分、9分、8分、7分、6分、5分、4分、3分、2分及び1分を含めて、薬剤の第2の処置の後に任意の時点で投与することができる。
【0060】
b.処方
方法は、薬剤の投与を含むことができる。本明細書に記載の薬剤は、従来の様式で処方された錠剤又はロゼンジの形とすることができる。例えば、経口投与用錠剤及びカプセル剤は、従来の賦形剤を含むことができ、結合剤、充填剤、潤滑剤、崩壊剤及び湿潤剤とすることができる。結合剤としては、シロップ、アラビアゴム(accasia)、ゼラチン、ソルビトール、トラガカント、デンプン粘漿剤及びポリビニルピロリドンが挙げられるが、それだけに限定されない。充填剤は、ラクトース、糖、微結晶セルロース、トウモロコシデンプン、リン酸カルシウム及びソルビトールとすることができる。潤滑剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ポリエチレングリコール及びシリカが挙げられるが、それだけに限定されない。崩壊剤は、ジャガイモデンプン及びナトリウムデンプングリコラートとすることができる。湿潤剤はラウリル硫酸ナトリウムとすることができる。錠剤は、当該技術分野で周知である方法によって被覆することができる。
【0061】
本明細書に記載の薬剤は、水性又は油性懸濁液剤、溶液剤、乳濁液剤、シロップ剤、エリキシル剤などの液剤とすることもできる。薬剤は、使用前に水又は他の適切な媒体で構成するための乾燥品として処方することもできる。かかる液体調製物は、懸濁化剤、乳化剤、非水性媒体、防腐剤などの添加剤を含むことができる。懸濁化剤は、ソルビトールシロップ、メチルセルロース、グルコース/糖シロップ、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル及び水素化食用脂とすることができる。乳化剤は、レシチン、ソルビタンモノオレアート及びアラビアゴムとすることができる。非水性媒体は、食用油、アーモンド油、分画ヤシ油、油性エステル、プロピレングリコール及びエチルアルコールとすることができる。防腐剤は、メチル又はプロピルp−ヒドロキシベンゾアート及びソルビン酸とすることができる。
【0062】
本明細書に記載の薬剤は、カカオ脂、グリセリドなどの坐剤基剤を含むことができる坐剤として処方することもできる。本明細書に記載の薬剤は、吸入用に処方することもでき、乾燥粉末として投与することができる、又はジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタンなどの噴霧剤を使用してエアロゾルの形で投与することができる、溶液、懸濁液、乳濁液などの形とすることができる。本明細書に記載の薬剤は、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、ペースト剤、薬用硬膏剤、貼付剤、膜剤などの水性又は非水性媒体を含む経皮製剤として処方することもできる。
【0063】
本明細書に記載の薬剤は、注射、腫瘍内注射、持続注入などの非経口投与用に処方することもできる。注射用製剤は、油性又は水性媒体中の懸濁液、溶液又は乳濁液の形とすることができ、懸濁化剤、安定化剤及び分散剤を含めて、ただしそれだけに限定されない処方薬剤を含むことができる。薬剤は、発熱物質を含まない滅菌水を含めて、ただしそれだけに限定されない適切な媒体で戻すための散剤として提供することもできる。
【0064】
本明細書に記載の薬剤は、デポ製剤として処方することもでき、移植又は筋肉内注射によって投与することができる。薬剤は、適切なポリマー若しくは疎水性材料(例えば、許容される油中の乳濁液として)、イオン交換樹脂を用いて、又はやや難溶性の誘導体として(例えば、やや難溶性の塩として)、処方することができる。
【0065】
c.投与量
方法は、治療有効量の薬剤をそれを必要とする患者に投与することを含むことができる。療法に使用するのに必要な治療有効量は、処置する症状の性質、TLR活性を活性化するのに要求される時間、及び患者の年齢/症状に応じて変わる。しかし、一般には、成人の処置に使用される用量は、典型的には0.001mg/kgから約200mg/kg/日の範囲である。この用量は、約1mg/kgから約100mg/kg/日とすることができる。所望の用量は、好都合には、単回投与で投与することができ、又は例えば1日に2、3、4回又はそれ以上、適切な間隔で投与する複数回投与として投与することができる。複数回投与が望ましい、又は必要である場合がある。
【0066】
投与量は、約0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1mg/kg、25mg/kg、50mg/kg、75mg/kg、100mg/kg、125mg/kg、150mg/kg、175mg/kg、200mg/kg、225mg/kg、250mg/kg、275mg/kg、300mg/kg、325mg/kg、350mg/kg、375mg/kg、400mg/kg、425mg/kg、450mg/kg、475mg/kg、500mg/kg、525mg/kg、550mg/kg、575mg/kg、600mg/kg、625mg/kg、650mg/kg、675mg/kg、700mg/kg、725mg/kg、750mg/kg、775mg/kg、800mg/kg、825mg/kg、850mg/kg、875mg/kg、900mg/kg、925mg/kg、950mg/kg、975mg/kg、1mg/kgなどの任意の投与量とすることができる。
【0067】
5.がんの処置方法
それを必要とするほ乳動物に薬剤を投与することによってがんを処置する方法を本明細書に記載する。この方法は、TLRの腫瘍内刺激を標的にし、それによって免疫応答を腫瘍に集中させて、腫瘍細胞をTLR作動物質応答状態に転化することによって、がんに対する免疫療法を提供する。この方法は、転移発生のリスクを低下させるために外科的除去前の原発腫瘍の処置、及び他の腫瘍小結節の処置に使用することができる。この方法は、腫瘍内注射を含むことができる。この方法は、外科的除去前に薬剤を原発腫瘍に注射して、転移発生のリスクを低下させる、さらに他の腫瘍小結節を処置するステップを含むことができる。この方法は、アデノウイルス腫瘍内注射を利用できる任意の腫瘍の処置に使用することができる。
【0068】
(進行性及び転移性ぼうこうがんを含めた)ぼうこう癌、乳癌、(結腸直腸がんを含めた)結腸癌、腎臓癌、肝臓癌、(小及び非小細胞肺がん並びに肺腺癌を含めた)肺癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、尿生殖路癌、リンパ系癌、直腸癌、喉頭癌、(すい外分泌癌を含めた)すい臓癌、食道癌、胃癌、胆嚢癌、頚部癌、甲状腺癌及び(へん平上皮癌を含めた)皮膚癌;白血病、急性リンパ球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、有毛細胞リンパ腫、組織球性リンパ腫及びBurkettリンパ腫を含めたリンパ球系列の造血器腫瘍;急性及び慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、骨髄性白血病並びに前骨髄球性白血病を含めたミエロイド系列の造血器腫瘍;星細胞腫、神経芽細胞腫、神経こう腫及びシュワン腫を含めた中枢及び末梢神経系の腫瘍;線維肉腫、横紋筋肉腫及び骨肉腫を含めた間充織起源の腫瘍;並びに黒色腫、色素性乾皮症、角化きょく細胞腫、精上皮腫、甲状腺ろ胞がん、奇形癌、及び胃腸管又は腹骨盤腔のがんを含めた他の腫瘍を含めて、種々のがんを本発明によって処置することができる。
【0069】
この方法は、免疫賦活薬、サイトカイン又は化学療法の使用を含めた別のがん処置法と組み合わせることができる。免疫賦活薬は、成長ホルモン、プロラクチン又はビタミンDとすることができる。
【0070】
6.感染細胞の処置
薬剤による導入細胞の同時送達によって感染症を処置する方法を本明細書に記載する。この方法は、ウイルス、細菌、寄生原虫又は真菌感染症の処置に使用することができる。この方法は、細胞内注射を用いることによって任意の感染症の処置に使用することができ、全身作用を最小限にしつつ感染細胞のTLRシグナル伝達のオートクリン活性化をもたらし、それによって感染細胞に特異的な自然免疫応答を誘発することができる。この方法は、ウイルス、細菌、寄生原虫又は真菌感染症を処置する別の療法と組み合わせることができる。
【0071】
この方法は、薬剤の投与を含むことができる。この方法は、薬剤を含むワクチンの投与を含むことができ、最適な抗原を発現する構築物を含むことができる任意の他のワクチン接種と併用することができる。
【実施例】
【0072】
(実施例1)
バイシストロニック性発現TLR5/フラジェリンベクターの合成、及び腫瘍細胞の処理
トール様受容体5(TLR−5)及びフラジェリンCBLB502を発現するベクター構築物を作製した。ベクターpCD515をこれらの構築物の骨格として使用した。ヒトTLR−5のcDNA配列、及びトール様受容体作動物質のCBLB502をコードするDNAを、アルカリホスファターゼから誘導されたリーダーペプチドと個々に融合させて、発現されるタンパク質を小胞体(ER)及びゴルジを経由して細胞外分泌されるように導くことができる。
【0073】
pCD515−CMV−hTLR5−EF1−502sベクター構築物は、細胞表面で分泌型のCBLB502フラジェリン(CBLB502S)及びトール様受容体5(TLR5)を発現した。このアデノウイルスベクターは、その有効な合成及びほ乳動物細胞による分泌のために、CBLB502の改変を必要とした。アデノウイルス構築物は、アルカリホスファターゼから誘導されるリーダー核酸配列
【0074】
【化2】

を含み、切断型Salmonellaフラジェリン(fliC)遺伝子の上流にクローン化された(分泌型のフラジェリン(すなわち、CBLB502S)のコード化については、Burdelya et al.,Science 320:226−230(2008)を参照されたい)。EF1(伸長因子1α)プロモーターは、CBLB502Sをコードするこのカセットの上流にクローン化された。TLR5遺伝子は、ヒトに由来し、図9に示すアミノ酸配列を有する。CMVプロモーターは、TLR5遺伝子の上流にクローン化された。この構築物は、TLR5とCBLB502Sを同時発現する。この構築物を図1Aに示す。
【0075】
pCD515−CMV−hTLR5発現ベクターは、ヒトTLR−5の形態を発現するように構築された(図9参照)。アデノウイルス構築物は、hTLR5カセットの上流にクローン化された強力なCMVプロモーターを含む。この構築物を図1Bに示す。
【0076】
pCD515−CMV−Sseap−502発現ベクターは、分泌型フラジェリンCBLB502及びトール様を発現するように構築された。アデノウイルス構築物は、リーダー配列SEAP502フラジェリン(fliC)遺伝子の上流にクローン化された強力なCMVプロモーターを含む。この構築物を図1Cに示す。[クローニング情報を必要とする]。
【0077】
(実施例2)
バイシストロニック性発現TLR5/フラジェリンベクターの合成、及び腫瘍細胞の処理
どちらもNF−kB応答性GFPを発現するがそのTLR5状態が異なる2種類のレポーターほ乳動物細胞系に、ベクター構築物pCD515、pCD515−CMV−hTLR5−EF1−502s、pCD515−CMV−hTLR5−502、pCD515−CMV−hTLR5及びpCD515−CMV−Sseap−502を導入した(下記表3参照)。
【0078】
表3 TLR5シグナル伝達活性化因子としてのアデノウイルス構築物の活性
【0079】
【表3】

TLR5とTLR5作動物質CBLB502Sを同時発現するベクターは、公知TLRのどれをも発現せずTLR5作動物質単独で活性化することができない293ヌル細胞において、NF−kBレポーターの発現を誘導するのに十分であった。この実験は、TLR5及びフラジェリンCBLB502Sがトランス又はシスで作用してTLR5シグナル伝達を活性化することを実証するものである。
【0080】
(実施例3)
(pCD515−CMV−hTLR5−EF1−502s)を有するバイシストロン性アデノウイルスの抗腫瘍効果を試験するために、アデノウイルス懸濁液10ml(1012〜1011 IU/ml)を、CT26マウス結腸癌細胞から生ずるBALB/cマウスの2個の皮下増殖同系腫瘍の一つに、腫瘍が直径3〜5mmに達したときに注射し、注射しなかった対照の腫瘍が実験終了の必要なサイズ限界に達するまで腫瘍サイズをモニターした。対照マウスに、赤色蛍光タンパク質(RFP)を発現するアデノウイルスベクターを注射した(やはり、マウス1匹当たり2個の腫瘍のうち1個)。代表的実験の結果を図4に示す。(pCD515−CMV−hTLR5−EF1−502s)を注射した腫瘍の成長はほぼ完全になくなり、同じ動物の注射しなかった腫瘍の成長も、RFPを発現するアデノウイルスを注射した対照動物の腫瘍に比べて低下した。この結果は、pCD515−CMV−hTLR5−EF1−502sの(i)強力なインシス及び(ii)目に見えるイントランス効果を示し、自然(シス効果)と獲得(トランス効果)の両方の免疫応答の動員を示すものである。単独で注射した表1に示した他方の対照ウイルス(すなわち、AD5(対照)及びAd5(TLR5))はどれも腫瘍の成長抑制効果がなかった。
【0081】
したがって、TLR5の強制的な異所性発現は、本来はTLR5がない腫瘍細胞タイプをTLR5刺激に対して高度に応答性とし、腫瘍の免疫寛容を破壊し、自然免疫応答を強力に誘発して、獲得免疫応答とそれに続く全般的な抗腫瘍効果の効果的な発生を促進する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の核酸及び第2の核酸を含むベクターであって、該第1の核酸がトール様受容体をコードし、該第2の核酸がトール様受容体作動物質をコードする、ベクター。
【請求項2】
前記トール様受容体作動物質がフラジェリンである、請求項1に記載のベクター。
【請求項3】
前記ベクターが発現ベクターである、請求項1に記載のベクター。
【請求項4】
前記ベクターがほ乳動物発現ベクターである、請求項3に記載のベクター。
【請求項5】
前記ベクターがアデノウイルス、レンチウイルス又はリポソームから発現される、請求項3に記載のベクター。
【請求項6】
前記第1の核酸が分泌型のトール様受容体である、請求項1に記載のベクター。
【請求項7】
前記フラジェリンが分泌型のフラジェリンである、請求項2に記載のベクター。
【請求項8】
前記分泌型のフラジェリンが、図5に示されるTLR5活性に重要であり得るフラジェリンの13種類の保存されたアミノ酸を含む、請求項7に記載のベクター。
【請求項9】
前記トール様受容体がTLR−5である、請求項1に記載のベクター。
【請求項10】
前記第1の核酸が図7に示す配列を含み、前記第2の核酸が図9に示す配列を含む、請求項1に記載のベクター。
【請求項11】
ほ乳動物におけるがんを処置する方法であって、がんの処置を必要とするほ乳動物に請求項1に記載のベクターを含む薬剤を投与する工程を含む、方法。
【請求項12】
前記がんが腫瘍である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記腫瘍が、前立腺、乳房、結腸、食道、胃、肺、すい臓、腎臓、甲状腺、卵巣、咽頭又は頚部からなる群に由来する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記腫瘍が肉腫、黒色腫、白血病及びリンパ腫からなる群に由来する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記薬剤が前記ほ乳動物の前記腫瘍からトランスで(in trans)投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記薬剤が前記ほ乳動物の腫瘍に直接投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記薬剤が免疫賦活薬と組み合わせて投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記免疫賦活薬が、成長ホルモン、プロラクチン及びビタミンDからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記成長ホルモンがソマトトロピンである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記薬剤がサイトカインと組み合わせて投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
前記サイトカインが幹細胞因子である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ほ乳動物における感染症を処置する方法であって、感染症の処置を必要とするほ乳動物に請求項1に記載のベクターを含む薬剤を投与する工程を含む、方法。
【請求項23】
前記感染症がウイルス、細菌、寄生原虫及び真菌からなる群から選択される生物体によるものである、請求項22に記載の方法。

【図1B】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図7−6】
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【図7−7】
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【図7−8】
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【図7−9】
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【図7−10】
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【図7−11】
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【図8A−1】
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【図8A−2】
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【図8B】
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【図9】
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【図1A】
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【図1C】
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【図3】
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【図5】
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【図7−4】
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【図7−5】
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【公表番号】特表2013−506437(P2013−506437A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533282(P2012−533282)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【国際出願番号】PCT/US2010/051646
【国際公開番号】WO2011/044246
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(512088707)パナセラ ラブス, インコーポレイテッド (1)
【出願人】(504159877)ロズウェル パーク キャンサー インスティテュート (2)
【Fターム(参考)】