説明

きのこ廃培地の乾燥装置

【課題】単純な処理内容でありながらも確実かつ低コストできのこ廃培地を乾燥させることが可能なきのこ廃培地の乾燥装置を提供すること。
【解決手段】きのこ栽培後に発生した廃培地を投入する投入口14および投入された廃培地を加熱する加熱手段16を有する本体部12と、投入された廃培地を一旦本体部12の外部に排出させた後に本体部12に戻す循環路18と、を備える加熱炉10と、循環路18に接続され、上下方向に複数回往復する波型形状に形成されると共に、上り経路21の少なくとも一部における流路断面積が、下り経路22における流路断面積よりも大きく形成された搬送路20と、搬送路20の終端部に配設され、加熱炉10から廃培地と熱風を吸引させる吸引機30と、吸引機30により吸引された熱風および乾燥廃培地が投入され、熱風と乾燥処理された廃培地とを分離する分離機40を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、きのこ廃培地の乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
きのこの人工栽培には培地としてコーンコブやおが粉等を主成分とした培地材料が用いられる。このような培地材料からなるきのこ栽培用培地は、きのこ栽培の都度新しい培地材料が用いられ、使用後に発生するきのこ廃培地(以下、単に廃培地という)は、一部が堆肥として用いられているものの、ほとんどの廃培地は廃棄処分されているのが現状である。
【0003】
きのこの人工栽培は、きわめて高い湿度環境において行われているため、廃培地は含水率が非常に高く、廃培地を処分する際においては水分の除去が極めて重要になる。このような廃培地中の水分を除去するための対策としては、例えば、特許文献1に開示されているような処理方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−119928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている廃培地の処理方法によれば、廃培地を簡単に無駄なく処理することが可能であるとしている。
しかしながら、特許文献1に開示されている廃培地からの水分除去処理方法においては、廃培地を乾燥処理した後に、乾燥させた廃培地に油またはグリセリンを混合し、攪拌、加熱、減圧した後に、油またはグリセリンを分離させる処理が必要になる。すなわち、一旦廃培地に加えた油またはグリセリンを再度分離させなければならず、処理が煩雑であり、油またはグリセリンと廃培地の混合物の取り扱いには複雑な制御が必要になり、処理コストが高騰してしまうといった課題の所在が明らかになった。
【0006】
そこで本願発明は、単純な処理内容でありながらも確実かつ低コストできのこ廃培地を乾燥させることが可能なきのこ廃培地の乾燥装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明者は鋭意研究を行った結果、以下の構成に想到した。
すなわち、きのこ栽培後に発生した廃培地を投入する投入口および投入された廃培地を加熱する加熱手段を有する本体部と、前記投入口から投入された廃培地を一旦本体部の外部に排出させた後に本体部に戻す循環路と、を備える加熱炉と、前記循環路に接続され、上下方向に複数回往復する波型形状に形成されると共に、上り経路の少なくとも一部における流路断面積が、下り経路における流路断面積よりも大きく形成された搬送路と、該搬送路の終端部に配設され、前記加熱炉から廃培地と熱風を吸引させる吸引機と、該吸引機により吸引された熱風および乾燥廃培地が投入され、熱風と乾燥処理された廃培地とを分離する分離機と、を具備していることを特徴とするきのこ廃培地の乾燥装置である。
【0008】
また、前記分離機により分離された熱風を捕捉すると共に、捕捉した熱風を前記廃培地の乾燥処理の熱源として用いるための熱還流路が配設されていることを特徴とする。これにより、分離機から排出される余剰熱風の熱エネルギーを有効利用した状態できのこ廃培地の乾燥処理をすることができ、低ランニングコストでの運転が可能になる。
【0009】
また、前記搬送路の各底部には、開閉自在な底蓋が配設されていることを特徴とする。これにより、搬送路の底部に残存した異物の除去を確実かつ容易に行なうことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかるきのこ廃培地の乾燥装置によれば、単純な処理内容でありながらも確実に廃培地を乾燥させることが可能になる。また、きのこ廃培地の乾燥装置が簡易な構造であるから、きのこ廃培地の乾燥装置の製造コストおよびランニングコストも低コストであり、運転の制御もまた単純であるから故障の発生が少なく稼働率を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態におけるきのこ廃培地の乾燥装置の概略構造を示す構成説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明にかかるきのこ廃培地の乾燥装置について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態にかかるきのこ廃培地の乾燥装置100は、きのこ廃培地(以下、廃培地という)を投入し、廃培地を加熱する加熱炉10と、乾燥処理された廃培地と熱風とを分離する分離機であるサイクロン乾燥分離機40との間を連結する搬送路20と、搬送路20内の廃培地と熱風を搬送させるためのエア吸引機30を有している。エア吸引機30は、搬送路20の終端部分でありサイクロン乾燥分離機40の直前位置に配設されている。また、サイクロン乾燥分離機40には、サイクロン乾燥分離機40から排出される廃熱である排出熱風を加熱炉10に戻すための熱還流路50が配設されている。
【0013】
加熱炉10は、本体部12と、本体部12に廃培地を投入する投入口14と、本体部12の下部に加熱手段である灯油バーナー16が配設されている。本実施形態においては、投入口14への単位時間当たりにおける廃培地投入量が所定量となるように廃培地フィーダーであるベルトコンベア13が配設されている。ベルトコンベア13による廃培地の単位時間当たりの搬送量は図示しない運転制御部により制御されている。また、ベルトコンベア13による廃培地の短時間当たりの搬送量を任意の値に調整可能な運転制御部としてもよい。
【0014】
本体部12の内部には、投入口14から本体部12に投入された廃培地を灯油バーナー16の火炎に直接接触させずに乾燥させるための循環路18が配設されている。循環路18は、投入口14の直下位置における上面を開口させることで投入口14の内底部を形成している。循環路18は投入口14から投入された廃培地を本体部12の外部に誘導した後、再び本体部12の内部に戻らせる経路に形成されている。循環路18は、投入口14の内底部高さ位置よりも、本体部12への戻り高さ位置の方が下方側位置となる経路に形成されている。このように形成された循環路18は搬送路20に接続されている。
【0015】
搬送路20は加熱炉10の下方側位置で循環路18に接続されている。搬送路20は、図1に示すように、上下方向に複数回往復する波形形状のパイプラインに形成されている。搬送路20のうち下方から上方に搬送物(廃培地と熱風)が搬送される上り経路21においては、上下両端部分を除いた中途部分の径寸法が、上方から下方に搬送物が搬送される下り経路22における径寸法よりも大径寸法に形成されている。すなわち、上り経路21の大部分における流路断面積は、下り経路22における流路断面積よりも大きく形成されている。搬送路20の底部23には、搬送路20を支持するための支柱24と、開閉自在な底蓋25が配設されている。
搬送路20の上下方向における往復回数は特に限定されるものではないが、乾燥処理後における廃培地の設定含水率等に応じて往復回数を適宜回数に設定することができる。
【0016】
搬送路20の終端部は、エア吸引機30を介してサイクロン乾燥分離機40に接続されている。エア吸引機30は、加熱炉10に投入された廃培地を搬送路20内の熱風と共に吸引することで搬送路20内を搬送させた後に、廃培地をサイクロン乾燥分離機40に投入させるための動力源である。
サイクロン乾燥分離機40は、材料投入部である搬送路20から投入された廃培地および熱風を分離すると共に廃培地を最終乾燥処理するためのものである。サイクロン乾燥分離機40は公知のものを用いることができる。本実施形態のサイクロン乾燥分離機40の上面には、サイクロン乾燥分離機40から排出された熱風を捕捉すると共に、加熱炉10に供給する熱還流路50が配設されている。熱還流路50は、サイクロン乾燥分離機40と加熱炉10の本体部12との間を結ぶパイプラインにより形成することができる。熱還流路50を構成するパイプラインは、断熱性を有する材料により形成されているか、断熱材により外表面が被覆されていることが好ましい。
【0017】
また、加熱炉10には、隣接する焼却炉200からの廃熱を供給する廃熱供給部60が接続されている。廃熱供給部60は、焼却炉200の外周面の一部または全てを覆い、焼却炉200の外表面から排出される廃熱を収集する廃熱収集部62と廃熱収集部62と本体部12とを連通する連通パイプ64とを有している。このように廃熱収集部62は焼却炉200の外周面からの廃熱を収集しているため、焼却炉200内の燃焼ガス成分を含まないクリーンな廃熱エネルギーを加熱炉10の本体部12に供給することができる点において好都合である。廃熱収集部62が焼却炉200の外表面の一部のみに配設される場合には、焼却炉200の頂部位置に取り付ければよい。このように廃培地の乾燥処理を行う敷地内に可燃物の焼却処分施設である焼却炉200を併設することで、流通経路を単純化させることができる点においても好都合である。
【0018】
加熱炉10に接続される補助熱源供給部である熱還流路50および廃熱供給部60は、本体部12に対して同じ高さ位置であって、循環路18の投入口14の内底部の高さ位置よりも下方側位置に接続されている。熱還流路50および廃熱供給部60から供給される補助熱源は、灯油バーナー16により供給される熱源に比較して低温であるが、灯油バーナー16により供給された熱源と混合させた後に投入口14から投入された廃培地を加熱することができ、従来では未使用であった廃熱を有効利用することができ、熱源供給のための投入エネルギーを削減し、低ランニングコストで廃培地の乾燥処理をすることが可能である。
【0019】
次に、本実施形態にかかるきのこ廃培地の乾燥装置100を用いてきのこの廃培地の乾燥処理方法について説明する。
まず、ベルトコンベア13によりきのこの廃培地(以下、廃培地という)を投入口14から加熱炉10の本体部12に投入する。ベルトコンベア13は単位時間当たりの廃培地の供給量が一定量となるように図示しない制御部により制御されている。加熱炉10に投入された廃培地は、循環路18により本体部12の内部から一旦本体部12の外部に誘導され、再び本体部12の内部に供給され、2度にわたって加熱処理が施されることになる。2回目の加熱処理は、1回目の加熱処理時間よりも長時間となるように循環路18の経路が投入口14から本体部12の外部までの経路長よりも長くなるように設定されている。
【0020】
加熱炉10において2回にわたって加熱処理された廃培地は、熱風と共に搬送路20に供給される。搬送路20は上下方向に複数回往復する波形のパイプラインを通過させることにより、徐々に廃培地の含水率を低くさせながら搬送路20内を搬送させることができる。搬送路20のうち、下側から上側に向かう上り経路21においては、上側から下側に向かう下り経路22に比較して流路断面積が大きく形成されている。搬送路20内において熱風と廃培地を搬送するための動力はエア吸引機30のみであるから、搬送路20における吸引力(廃培地と熱風からなる被搬送体の流量)は一定である。したがって、搬送路20の一部である上り経路21の流路断面積を大きくすることで、上り経路21における熱風および廃培地の被搬送体の流速を低下させることができる。このように熱風および廃培地からなる被搬送体の流速が低下することで、含水率が高い廃培地については、重力の作用により上り経路21の底部に落下し、十分に乾燥処理されていない廃培地が搬送路20の下流側に搬送されることが防止できる。
【0021】
搬送路20内には熱風が常時流通しているから、上り経路21内の底部付近にとどまっている廃培地は加熱乾燥処理が施されることになる。このようにして加熱乾燥処理が進み所定の含水率以下になって軽量化されると、上り経路21における低い流速であっても廃培地が重力に抗して上り切り、廃培地が搬送路20に流通している熱風と共に搬送路20の下流側(下り経路22)に搬送されることになる。上り経路21を通過すると、下り経路22に沿って次の上り経路21に供給される。ここで、搬送中の廃培地がフロック状になっている場合には、下り経路22の底部に廃培地が衝突することで、衝突の衝撃によりフロック状の廃培地を細分化することができる。このようにフロック状の廃培地は細分化処理されることになるので、廃培地の表面積が増加し、廃培地の乾燥処理が促進させることができる点において好都合である。
【0022】
2つ目以降の上り経路21および下り経路22においても最初の上り経路21および下り経路22と同様に加熱乾燥処理および細分化処理がなされることになる。これらの処理を複数回繰り返し廃培地に施すことにより、廃培地を所定の含水率まで乾燥処理すると共に廃培地を細分化することができる。
ベルトコンベア13から供給される含水率の高い廃培地は投入量が適宜調整されているので、搬送路20の底部23に廃培地が滞ってしまうことはないが、不純物が混ざっていることがある。本実施形態の搬送路20には底部23に開閉自在な底蓋25が配設されているので、底蓋25を開くことにより、異物の除去や廃培地の停滞状態を把握することができる。
【0023】
搬送路20により所定の含水率まで乾燥処理された廃培地と熱風は搬送路20の下流に接続されたサイクロン乾燥分離機40に投入され、廃培地の仕上げ乾燥処理を行うと共に熱風と廃培地との分離処理が行われる。このようにして分離された廃培地は、木質ペレットの原料として用いられる。また、廃培地と分離された熱風は、熱還流路50により捕捉され、加熱炉10の本体部12に戻され、補助熱源としてリサイクルされることになる。
【0024】
以上に、本願発明にかかるきのこの廃培地の乾燥装置について実施形態に基づいて説明をしたが、本願発明の技術的範囲は、以上に示した実施形態に限定されるものではない。例えば、図1においては、上り経路21の流路断面積は、上り流路21の全体にわたって下り経路22における流路断面積よりも大きく形成した形態を示しているが、上り経路21の所要範囲のみにおける流路断面積を下り経路22における流路断面積より大きくなるように形成するだけであってもよい。
【0025】
また、本実施形態においては、複数配設された上り経路21の径寸法はいずれも同じ径寸法に形成されている形態について説明しているが、搬送路20の上流側から下流側に進むにつれて上り経路21の径寸法を徐々に大径寸法に形成した形態を採用することもできる。この形態を採用することで、搬送路20の下流側に近づくにつれてそれぞれの上り径路21における流路断面積を徐々に増やすことができ、各々の上り径路21内を上昇する際の流速を徐々に低下させることができる。すなわち、上り径路21を通過させる毎に含水率を徐々に低下させることができ、より効率的かつ確実に廃培地の乾燥処理を施すことができる点で好都合である。
【0026】
また、本実施形態においては、熱還流路50と廃熱供給部60で収集した廃熱エネルギーを燃焼炉10に供給しているが、ベルトコンベア13により搬送される廃培地の事前乾燥用の熱源として利用する形態としてもよい。具体的には、ベルトコンベア13の循環軌道の下方位置において、ベルトコンベア13の搬送方向に沿って熱還流路50および廃熱供給部60のうちの少なくとも一方のパイプラインを敷設すればよい。
さらに、本実施形態においては、加熱炉10の加熱手段として灯油バーナー16を配設した形態について説明しているが、ガスバーナーや電気ヒーター等を採用してもよい。
さらにまた、サイクロン乾燥分離機40により乾燥処理された廃培地を用いて製造した木質ペレットを補助燃料またはメイン燃料として加熱炉10に投入し、灯油バーナー16等の加熱手段により燃焼させることも可能である。
【符号の説明】
【0027】
10 加熱炉
12 本体部
13 ベルトコンベア
14 投入口
16 灯油バーナー
18 循環路
20 搬送路
21 上り経路
22 下り経路
23 底部
24 支柱
25 底蓋
30 エア吸引機
40 サイクロン乾燥分離機
50 熱還流路
60 廃熱供給部
62 廃熱収集部
64 連通パイプ
100 きのこの廃培地乾燥装置
200 焼却炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
きのこ栽培後に発生した廃培地を投入する投入口および投入された廃培地を加熱する加熱手段を有する本体部と、前記投入口から投入された廃培地を一旦本体部の外部に排出させた後に本体部に戻す循環路と、を備える加熱炉と、
前記循環路に接続され、上下方向に複数回往復する波型形状に形成されると共に、上り経路の少なくとも一部における流路断面積が、下り経路における流路断面積よりも大きく形成された搬送路と、
該搬送路の終端部に配設され、前記加熱炉から廃培地と熱風を吸引させる吸引機と、
該吸引機により吸引された熱風および乾燥廃培地が投入され、熱風と乾燥処理された廃培地とを分離する分離機と、
を具備していることを特徴とするきのこ廃培地の乾燥装置。
【請求項2】
前記分離機により分離された熱風を捕捉すると共に、捕捉した熱風を前記廃培地の乾燥処理の熱源として用いるための熱還流路が配設されていることを特徴とする請求項1記載のきのこ廃培地の乾燥装置。
【請求項3】
前記搬送路の各底部には、開閉自在な底蓋が配設されていることを特徴とする請求項1または2記載のきのこ廃培地の乾燥装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−132619(P2012−132619A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284915(P2010−284915)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(504376289)豊田興産株式会社 (10)
【Fターム(参考)】