説明

ころ軸受の寿命予測方法および寿命予測装置

【課題】 エッジロードを考慮した寿命予測が可能でかつ、実験により得られた軸受寿命と略一致する精度良い寿命予測を行うことができるころ軸受の寿命予測方法および寿命予測装置を提供する。
【解決手段】 接触領域より広い平面メッシュ領域を設定し、平面メッシュ要素のメッシュ内部を均一または線形な面圧分布と仮定して、接触面の接触面圧分布を計算する。表面下に立体メッシュ設定して、接触面圧分布から接触領域の表面下に設定した各立体メッシュ要素の剪断応力を求め、さらに応力振幅およびその深さを求める。立体メッシュ要素を平面メッシュ要素のころ軸方向幅毎に分割した分割体積であるスライス片の寿命を計算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ころ軸受の寿命予測方法および寿命予測装置に関し、詳しくは、表面下剪断応力振幅から、ころ軸受の寿命予測等を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ころ軸受の寿命を予測する方法として、ころを輪切りにして、その分割片が受けている荷重から寿命を予測する手法が提案され(非特許文献1)、現在でも広く利用されている。しかしこの手法では、ころの端部集中荷重いわゆるエッジロードを考慮できない。
ころエッジロードを計算する手法として、半無限体に集中荷重が作用したときの変位理論解を重ね合わせて数値的に解く手法(非特許文献2)が一般的である。この手法により算出した面圧分布から分割片の受けている荷重を算出し、これに上記Harrisの手法を適用するという手法等が考えられる。
【特許文献1】特開昭59−69519号公報
【非特許文献1】ハリス(Harris Tedric A.)著, "TheEffect of Misalignment on the Fatigue Life of Cylindrical Roller Bearings" Transaction of the ASME, Journal of Lubrication Technology, Vol. 91, Series F, No.2, (1969), p294-300.
【非特許文献2】ハーネット(Hartnett, M. J. )著, 「転がり要素軸受の接触応力解析」(“The Analysis of Contact Stresses in Rolling Element Beasrings ”) Transaction of the ASME, Journal of Lubrication Technology, Vol.101, January 1979, 105-109.
【非特許文献3】伊藤、杉浦著 「線接触型転動疲れ試験における最適クラウニング量の検討」 NTNベアリングエンジニア No.48 (1982)
【非特許文献4】藤原、川瀬著 「ころ軸受の対数クラウニングとその最適化手法」 機械学会論文集,C編 72 巻, 第721 号, (2006-9), p3022.
【非特許文献5】原田、鎌本、藤原著 「内部応力を考慮した軸受のクラウニング形状」 (社) 日本トライボロジー学会トライボロジ会議予稿集(東京 2000-5, C6, p171-172)
【非特許文献6】ルンドベルグ(Lundberg, G.), and パルムグレン(Palmgren, A.)著 "Dynamic Capacity of Rolling Bearing" Acta Polytechnica, No.196 (1947)
【非特許文献7】Ioannides, E., and Harris, T., A. 著 "A New Fatigue Life Model for Rolling Bearings",Transaction of the ASME, Journal of Tribology, Vol. 107, July, (1985), P367-378.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記面圧分布から分割片の受けている荷重を算出し、これに上記Harrisの手法を適用する手法により求めた軸受寿命と、実験により得られた軸受寿命とは一致せず、精度良い寿命予測ができない。これについて説明する。
【0004】
図13は、非特許文献3に掲載されている転がり疲労試験のサンプルとその試験結果である。図14は、Harrisの手法による寿命計算結果と、異なるメッシュにより面圧計算結果とを用いて寿命を計算した結果を示す。図13、図14に表記したL10は、信頼度90%の基本定格寿命と同義である。前記異なるメッシュは、図4に示すように、等間隔メッシュであるメッシュAと、図5に示すように、エッジロード部を細かくし、エッジロードをより正確に表現したメッシュであるメッシュBである。
【0005】
試験サンプルNo. V1からV5に向かうにつれクラウニング半径が大きくなり、エッジロードが増加するが、実験ではNo. V1からV5の間で寿命が最大となる最適値が存在するのに対し、Harrisの手法では最適値が存在していない。これは、前述のように、エッジロードを考慮できないことによるものである。
面圧からの寿命についてメッシュAでは、No. V1からV5まで殆んど同じ寿命結果となっている。メッシュBでは、Harrisの手法とは逆にエッジロードの考慮がきいてNo. V3からV5へ向かうにつれ寿命は低下しているが、No. V1,V2の寿命差がでていない。また、No. V6からV8の寿命差があまりでていない。なお、Harrisの手法では、ころ有効長さを20分割した。
【0006】
その他に、面圧分布を均一化するクラウニング形状の提案もいくつかなされているが(特許文献1、非特許文献4)、これは最適クラウニングは均一な面圧分布のとき得られるという前提でクラウニングを決定しているもので、寿命について検討したものではない。その他、表面下のMises 応力を均一化するというクラウニング形状についても提案があるが(非特許文献5)、剪断応力に関するものはない。
【0007】
このように、従来手法ではころの分割荷重または接触面圧からクラウニングを決定していたが、これら手法では軸受寿命の精度良い予測ができない。その対策として、剪断応力振幅からの寿命予測方法を、先に提案した(特願2007−242451号)。この予測寿命をベースに最適なクラウニング形状を決定することができる。
しかし、この手法は実験計画法により寿命理論を決定しており、理論としては納得性が得られ難いものであった。そのため、これを改善し、理論的にも納得できるものとした手法が望まれる。
【0008】
この発明の目的は、エッジロードを考慮した寿命予測が可能で、加工上最適なクラウニングが設定できなくても、要求寿命を満足できるか否かの検討が可能で、かつ、実験により得られた軸受寿命と略一致する精度良い寿命予測を行うことができ、理論的にも納得し易い、ころ軸受の寿命予測方法および寿命予測装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のころ軸受の寿命予測方法は、ころ軸受の寿命を、コンピュータを用いて予測する方法であって、ころおよび軌道輪の転走面の、接触面付近の形状および作用する外力を入力して記憶手段に記憶させる入力過程と、前記入力された値を用いて、前記転走面における前記接触面の接触面圧分布を計算し、この接触面圧分布から剪断応力を求め、この剪断応力を用いて応力振幅を求め、この応力振幅を用いて軸受寿命を計算する演算過程と、前記計算した軸受寿命を出力する出力過程とを有する。
前記演算過程として、
前記軌道輪の転走面に前記接触領域より広い平面メッシュ領域を設定し、この平面メッシュ領域を、ころ軸方向およびころ転動方向にそれぞれ複数並ぶ四角形の平面メッシュ要素にメッシュ切りし、かつ前記転走面の全周の表面下における、前記平面メッシュ領域と同じころ軸方向幅で設定深さの領域となる立体メッシュ領域を、前記各平面メッシュ要素と同じころ軸方向幅毎に、設定深さ幅および設定ころ転動方向幅に分割した立体メッシュ要素にメッシュ切りする過程と、
前記各平面メッシュ要素につき要素内部を均一または線形な面圧分布と仮定して、前記接触面の接触面圧分布を計算する過程と、
前記接触面圧分布から前記表面下に設定した各立体メッシュ要素の剪断応力を求める過程と、
この求められた前記各立体メッシュ要素の剪断応力を用いて、応力振幅およびその深さを求める過程と、
前記応力振幅およびその深さを求める過程において求めた応力振幅τ0iおよびその深さz0iを用いて寿命を計算する寿命計算過程とを含み、
この寿命計算過程では、次式(I)に前記応力振幅τ0iおよびその深さz0iを代入することにより、
前記立体メッシュ領域を、前記平面メッシュ要素のころ軸方向幅毎に分割した分割体積であるスライス片の寿命Lを計算する。
【0010】
【数4】

ただし、
1 :比例定数、
c:軸受寿命理論による係数(ころ軸受の場合は31/3)、
e: 同 上 (ころ軸受の場合は9/8)、
h: 同 上 (ころ軸受の場合は7/3)、
i :下記のスライス片の幅、
添字i :スライス片の番号
【0011】
この構成によると、入力過程において、ころおよび軌道輪の転走面の、接触面付近の形状および作用外力を入力して記憶手段に記憶させる。演算過程において、平面メッシュ要素の内部を均一または線形な面圧分布と仮定して、接触面の接触面圧分布を計算する。また、この接触面圧分布から表面下に設定したメッシュ各点、つまり各立体メッシュ要素の剪断応力を求める。これら各立体メッシュ要素の剪断応力を用いて応力振幅およびその深さを求め、ころ軸受の寿命を計算する。これにより、エッジロードを考慮し、精度良い寿命予測を行うことができる。この計算した軸受寿命を、出力過程において出力する。また、この寿命予測結果に基づいて、最適なクラウニング形状を決定することができる。
【0012】
なお、もともと軸受寿命理論(非特許文献6)は転動体が通過することによる、表面下剪断応力の変動=応力振幅をベースに作られている。このため、表面下剪断応力をベースに寿命計算をするということは至極当たり前である。ただ、このような考え方でエッジロードが生じたときの寿命理論を検討した文献はあまりない。非特許文献7では、本願発明と類似の考え方で新しい寿命理論を発表しているが、従来の寿命理論との乖離が大きく、従来理論の延長としての寿命計算はできない。一方、本願発明では従来理論での寿命予測を目的としている。
【0013】
また、この発明は、上記の式(I)を用いることで、各スライス片の寿命Li を、精度良くかつ簡単に計算することができる。
【0014】
この場合に、各スライス片の寿命を合成して、ころ軸受の全体寿命を次式(II)により計算しても良い。これにより、ころ軸受の全体寿命を精度良くかつ簡単に計算することができる。
【0015】
【数5】

【0016】
この発明方法において、前記平面メッシュ領域をメッシュ切りする過程では、前記ころ軸方向およびころ転動方向にそれぞれ均等に分割し、ころ軸方向については、均等分割された四角形の平面メッシュ要素を、複数の細分化四角形要素である細分化平面メッシュ要素に細分化する。この細分化は、任意の細分化指定位置における前記ころ軸方向に沿う両側に、任意の細分化幅Δaを設定して、細分化指定位置からΔa離れた点から細分化指定位置に近づく毎に2分の1ずつ幅が狭くなる等比級数的な幅を持つ複数の細分化平面メッシュ要素を設定する処理としても良い。前記細分化する箇所は何箇所でも良く、例えば、エッジロードが発生する箇所や、面圧分布が急激に変化する箇所に設定する。
このように、任意の平面メッシュを細分化した場合、必要部分のみにつき、より正確な接触面圧分布を求め、この正確な接触面圧分布から必要部分の剪断応力を求めることができる。したがって、エッジロード等を考慮した精度良い寿命予測を行うことができる。また全体のメッシュ切りを細かくする場合と異なり、計算時間の増加が抑えられる。
【0017】
この発明のころ軸受の寿命予測装置は、ころ軸受の寿命を、コンピュータ1を用いて予測する装置であって、ころおよび軌道輪の転走面の、接触面付近の形状および作用する外力を入力して記憶手段に記憶させる入力処理手段4と、前記入力された値を用いて、前記転走面における前記接触面の接触面圧分布を計算し、この接触面圧分布から剪断応力を求め、この剪断応力を用いて応力振幅を求め、この応力振幅を用いて軸受寿命を計算する演算手段7と、前記計算した軸受寿命を出力する出力処理手段5とを有する。
前記演算手段7は、前記軌道輪の転走面に前記接触領域より広い平面メッシュ領域Rを設定し、この平面メッシュ領域Rを、ころ軸方向xおよびころ転動方向yにそれぞれ複数並ぶ四角形の平面メッシュ要素eにメッシュ切りし、かつ前記転走面の全周の表面下における、前記平面メッシュ領域Rと同じころ軸方向幅で設定深さの領域となる立体メッシュ領域Vを、各平面メッシュ要素eと同じころ軸方向幅毎に、設定深さ幅dzおよび設定ころ転動方向幅dy(図9)に分割した立体メッシュ要素vにメッシュ切りするメッシュ分割手段8と、
前記各平面メッシュ要素eにつき要素内部を均一または線形な面圧分布と仮定して、前記接触面の接触面圧分布を計算する接触面圧分布計算手段9と、
前記接触面圧分布から前記表面下に設定した各立体メッシュ要素vの剪断応力を求める剪断応力計算手段10と、
この求められた前記各立体メッシュ要素vの剪断応力を用いて、応力振幅およびその深さを求める応力振幅計算手段11と、
前記応力振幅およびその深さを求める過程において求めた応力振幅τ0iおよびその深さz0iを用いて寿命を計算する寿命計算手段12とを備える。
この寿命計算手段では、次式(I)に前記応力振幅τ0iおよびその深さz0iを代入することにより、
前記立体メッシュ領域を、前記平面メッシュ要素のころ軸方向幅毎に分割した分割体積であるスライス片の寿命Li を計算する。
【0018】
【数6】

ただし、
i :比例定数、
c:軸受寿命理論による係数(ころ軸受の場合は31/3)、
e: 同 上 (ころ軸受の場合は9/8)、
h: 同 上 (ころ軸受の場合は7/3)、
i :下記のスライス片の幅、
添字i :スライス片の番号
【0019】
この構成によると、平面メッシュ要素の内部を均一または線形な面圧分布と仮定して、接触面の接触面圧分布を計算し、特に、この接触面圧分布から接触領域の表面下に設定したメッシュ各点、つまり各立体メッシュ要素の剪断応力を求める。これら各立体メッシュ要素の剪断応力を用いて応力振幅およびその深さを求め、ころ軸受の寿命を計算する。その他、この発明の方法と同様の作用、効果を奏する。
【発明の効果】
【0020】
この発明のころ軸受の寿命予測方法は、ころ軸受の寿命を、コンピュータを用いて予測する方法であって、前記軌道輪の転走面に前記接触領域より広い平面メッシュ領域を設定し、この平面メッシュ領域を、ころ軸方向およびころ転動方向にそれぞれ複数並ぶ四角形の平面メッシュ要素にメッシュ切りし、かつ前記転走面の全周の表面下における、前記平面メッシュ領域と同じころ軸方向幅で設定深さの領域となる立体メッシュ領域を、前記各平面メッシュ要素と同じころ軸方向幅毎に、設定深さ幅および設定ころ転動方向幅に分割した立体メッシュ要素にメッシュ切りする過程と、前記各平面メッシュ要素につき要素内部を均一または線形な面圧分布と仮定して、前記接触面の接触面圧分布を計算する過程と、前記接触面圧分布から前記表面下に設定した各立体メッシュ要素の剪断応力を求める過程と、この求められた前記各立体メッシュ要素の剪断応力を用いて、応力振幅およびその深さを求める過程と、前記応力振幅およびその深さを求める過程において求めた応力振幅τ0iおよびその深さz0iを用いて寿命を計算する寿命計算過程とを含み、この寿命計算過程では、所定の式に前記応力振幅τ0iおよびその深さz0iを代入することにより、前記立体メッシュ領域のころ軸方向幅毎の分割体積であるスライス片の寿命Lを計算する。このため、エッジロードを考慮した寿命予測が可能で、加工上最適なクラウニングが設定できなくても、要求寿命を満足できるか否かの検討が可能で、かつ、実験により得られた軸受寿命と略一致する精度良い寿命予測を行うことができ、理論的にも納得し易い方法となる。
【0021】
この発明のころ軸受の寿命予測装置は、ころ軸受の寿命を、コンピュータを用いて予測する装置であって、前記軌道輪の転走面に前記接触領域より広い平面メッシュ領域を設定し、この平面メッシュ領域を、ころ軸方向およびころ転動方向にそれぞれ複数並ぶ四角形の平面メッシュ要素にメッシュ切りし、かつ前記転走面の全周の表面下における、前記平面メッシュ領域と同じころ軸方向幅で設定深さの領域となる立体メッシュ領域を、前記各平面メッシュ要素と同じころ軸方向幅毎に、設定深さ幅および設定ころ転動方向幅に分割した立体メッシュ要素にメッシュ切りするメッシュ分割手段と、前記各平面メッシュ要素につき要素内部を均一または線形な面圧分布と仮定して、前記接触面の接触面圧分布を計算する接触面圧分布計算手段と、前記接触面圧分布から前記表面下に設定した各立体メッシュ要素の剪断応力を求める剪断応力計算手段と、この求められた前記各立体メッシュ要素の剪断応力を用いて、応力振幅およびその深さを求める応力振幅計算手段と、前記応力振幅およびその深さを求める過程において求めた応力振幅τ0iおよびその深さz0iを用いて寿命を計算する寿命計算手段とを備え、この寿命計算手段では、所定の式に前記応力振幅τ0iおよびその深さz0iを代入することにより、立体メッシュ領域のころ軸方向幅毎の分割体積であるスライス片の寿命Lを計算する。このため、エッジロードを考慮した寿命予測が可能で、加工上最適なクラウニングが設定できなくても、要求寿命を満足できるか否かの検討が可能で、かつ、実験により得られた軸受寿命と略一致する精度良い寿命予測を行うことができ、理論的にも納得し易いものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
この発明の一実施形態を図1ないし図12と共に説明する。このころ軸受の寿命予測方法は、コンピュータを用いて、図3に示す2つの接触物体M1,M2の接触面における表面下剪断応力振幅からころ軸受の寿命予測等を行う方法である。接触物体M1は、ころ軸受におけるころであり、接触物体M2は、ころ軸受における内輪(または外輪)等の軌道輪である。
図1は、この発明方法の各過程の流れ図を、図2はこの発明方法を実施する装置の概念構成のブロック図をそれぞれ示す。このころ軸受の寿命予測方法は、計算に必要な各種のデータを入力する入力過程(S1)と、入力された値を用いて前記接触面における接触面圧分布を計算し、この接触面圧分布から剪断応力を用いて応力振幅を求め、この応力振幅を用いて軸受寿命を計算する演算過程(S2)と、計算した結果を出力する出力過程(S3)とを有する。
【0023】
前記演算過程(S2)として、順次行われる次のメッシュ分割過程(T1)、面圧分布計算過程(T2)、剪断応力計算過程(T3)、応力振幅計算過程(T4)、および寿命計算過程(T5)を含む。前記メッシュ分割過程(T1)は、細分化過程(T1a)を含む。
計算装置となるコンピュータ1は、図示外の中央処理装置(略称CPU)およびメモリ等の記憶手段を有し、このコンピュータ1のハードウェア(オペレーションシステムを含む)、およびこのコンピュータ1に実行させる剪断応力振幅計算等プログラムにより、図2に概念構成で示す各手段が構成される。
【0024】
入力処理手段4は、入力装置2から、計算に必要な各種のデータ入力して入力情報記憶手段6に記憶させる手段である。この入力装置2から入力して入力処理手段4により入力情報記憶手段6に記憶させる過程が、図1(A)の入力過程(S1)である。
入力するデータは、接触物体M1,M2の接触面付近の形状、弾性係数(ここでは、ヤング率Eと、ポアソン比ν)、および作用する外力F等である。ここで言う「形状」は、大きさを含む概念である。入力処理手段4は、上記の形状等の情報の他に、後述の演算手段7でメッシュ分割する枡目の各軸方向の大きさや四角形要素の個数(na,nb)、
図5および図6に示す細分化指定位置Aや細分化幅ΔA等を、入力装置2から入力して入力情報記憶手段6に記憶させる機能を備えるものとしても良い。入力処理手段4は、入力装置2から入力された情報に対して、演算手段7で演算するための前処理を行う機能を有するものとしても良い。
【0025】
入力装置2は、キーボード、ポインティングデバイス等であっても、また通信手段や記憶素子等であっても良い。入力情報記憶手段6は、コンピュータ1の上記記憶手段における所定の記憶領域である。出力処理手段5は、演算手段7で計算した結果を、ディスプレイ,プリンタ,あるいは通信機器等からなる出力装置3に出力する手段である。
【0026】
演算手段7は、入力処理手段4で入力されて入力情報記憶手段6に記憶されたデータを用いて前記接触面における接触面圧分布を計算し、この接触面圧分布から剪断応力を用いて応力振幅を求め、この応力振幅を用いて軸受寿命を計算する手段である。この演算手段7は、メッシュ分割手段8、面圧分布計算手段9、剪断応力計算手段10、応力振幅計算手段11、および寿命計算手段12を備える。前記メッシュ分割手段8は、細分化部8aを有する。演算手段7に備えられた上記各手段8〜12、および細分化部8aは、それぞれ図1(B)の流れ図におけるメッシュ分割過程(T1)、面圧分布計算過程(T2)、剪断応力計算過程(T3)、応力振幅計算過程(T4)、寿命計算過程(T5)、およびメッシュ分割過程(T1)における細分化過程(T1a)を実行する手段であり、その実行に必要な計算式や設定値等を記憶している。
【0027】
図1(A)の演算過程(S2)を、同図(B)および図3〜図11と共に説明する。
メッシュ分割過程(T1)では、寿命計算モデルとして、次のようにメッシュ分割したモデルを作成する。すなわち、図4または図5に示すように、2つの接触物体M1,M2の接触領域よりやや大きめの四角形の平面メッシュ領域Rを設定し、この平面メッシュ領域Rを、直交する2辺の方向x,yに並ぶ複数の四角形の平面メッシュ要素e(eij:i=1〜na,j=1〜nb)にメッシュ切りする。
この場合に、2つの接触物体M1,M2が、図3のように、ころ軸受におけるころと内輪(または外輪)等の軌道輪である場合、ころ軸方向をx方向、ころ転動方向をy方向にとる。平面メッシュ領域Rは、軌道輪である接触物体M2の転走面となる表面に取る。ついで、図4のように、前記平面メッシュ領域Rのx方向、y方向を、それぞれ幅Δa,Δbの四角形の平面メッシュ要素eに、na,nb個に均等分割する。
【0028】
さらに、細分化過程(T1a)として、図5,図6に示すように、ころ軸方向xの任意の位置(図ではA点)で、四角形の平面メッシュ要素eを軸方向に細分化する。細分化の方法は、細分化する指定位置Aの両側に任意の細分化幅Δaを初期値として設定し、Δa離れた点から指定位置Aに近づく毎に二分の一ずつ幅が狭くなる等比級数的方法をとる。最小の細分化幅をどの程度とするかは、適宜設定しておく。
【0029】
前記指定位置Aと細分化幅Δaは、軸方向xの任意の位置に何個でも設定でき、一般的には、ころの端部集中荷重いわゆるエッジロードが発生する箇所や、面圧分布が急激に変化する箇所に設定する。ころ軸受の場合、例えば、接触物体M1であるころの端部を細分化指定位置Aとする。前記平面メッシュ要素eは、その内部を均一な面圧分布と仮定したものでも良いし、線形な面圧分布と仮定したものでも良い。
【0030】
メッシュ分割過程(T1)における上記の説明は、面圧分布の計算のための平面メッシュ領域Rのメッシュ分割についての説明であるが、このメッシュ分割過程(T1)では、表面下応力の計算のための立体メッシュ領域V(図8)のメッシュ分割も行う。立体メッシュ領域Vのメッシュ分割は、面圧分布計算過程(T2)よりも前に行っても、また後に行っても良い。なお、立体メッシュ領域V(図8)のメッシュ分割については、面圧分布計算過程(T2)の後に説明する。
【0031】
この実施形態において、面圧分布計算過程(T2)は、例えば、各平面メッシュ要素eの内部に形状関数に従う線形な接触面圧分布が生じると仮定し、平面メッシュ要素eが各節点Tの接触面法線方向zの変位に及ぼす影響を、全平面メッシュ要素eについて重ね合わせた値が、前記各節点Tの前記接触面法線方向の変位と等しいとする等式(9)を求める過程である。
すなわち、平面メッシュ要素eの内部に、以下のような線形な面圧分布を仮定する。
【数7】

【0032】
平面メッシュ要素eijが節点Tk1(xk,yL)のz方向(法線方向:接触面に垂直方向)変位に及ぼす影響は次式で表される。
【数8】

これを全要素について重ね合わせることにより、節点Tk1(xk,yL)のz方向変位が、初期すきまDijと釣合うように、次式(9)で示されるように得られる。
【0033】
【数9】

【0034】
さらに、各平面メッシュ要素eが支持する荷重の和が、接触物体間に作用する外力に等しいとする等式(14)を求める。すなわち、外力Fとの釣合から次式が成り立つ。
【数10】

面圧分布計算過程(T2)は、上記の2つの等式(9),(14)を満足するように、未知数である各平面メッシュ要素eの接触面圧Pijと、二物体間の接近量αを求める。例えば、接触面圧Pijの解法には逐次反復法、接近量αの解法にはニュートン法を用い、以下に示す方法で解けば、解が得られる。
【0035】
まず、接近量αの初期値を設定する(ステップH1)。そのα値に応じて各平面メッシュ要素eijの接触面圧Pijを設定する(ステップH2)。この場合に、i=1〜naの範囲、およびj=1〜nbの範囲で全ての平面メッシュ要素eijの接触面圧Pijを設定する。その設定した各平面メッシュ要素eijの接触面圧Pijで(9)式が成り立つか否かを判定し、成り立たない場合は、平面メッシュ要素eijの接触面圧の設定過程(ステップH2)に戻る(H3)。
ステップH2では、各平面メッシュ要素eijの接触面圧Pijを再度設定し直し、その設定した平面メッシュ要素eijの接触面圧Pijで(9)式が成り立つか否かを判定し、成り立たない場合は平面メッシュ要素eijの接触面圧Pijの設定過程(H2)に戻る。このような処理を(9)式が成り立つまで繰替し、(9)式が成り立つと、ステップH4に進む。
【0036】
ステップH4では、(14)式が成り立つか否かを判定し、成り立たない場合は、ステップH1に戻ってα値を、再度設定し直す。この後、前記と同様にしてステップH2〜H4,H1の処理を繰り返し、(14)式が成り立つと、処理を終了する。
このようにして求めた、式(9)、(14)が成り立つときの、ステップH2で設定した各平面メッシュ要素eijの接触面圧Pijが、面圧分布計算手段9の出力となる接触面圧の値である。なお、平面メッシュ要素eijの接触面圧の最初の値は何でもよいが、できるだけ実際の面圧に近い値を設定した方が早く収束する。
【0037】
剪断応力計算過程(T3)では、図8に示す立体メッシュ要素vを用いて行う。すなわち、転走面の全周の表面下における、平面メッシュ領域Rと同じころ軸方向幅で設定深さの領域Zとなる立体メッシュ領域Vを、各平面メッシュ要素eと同じころ軸方向幅毎に、升目寸法となる設定深さ幅および設定ころ転動方向幅に分割した立体メッシュ要素vにメッシュ切りする。同図の立体メッシュは、ころ転動方向(図8の紙面に垂直なY方向)にも同じメッシュが何枚もある立体メッシュ(3次元メッシュ)である。
同立体メッシュ領域Vにおいて、深さZはメッシュ領域Vの中に最大の剪断応力τzyが含まれるように、z方向に少し深めにとる。また、このメッシュは、応力集中部を細かくするため、上記細分化平面メッシュ要素と同様にx方向に細かくする箇所を設ける。
上記接触面圧分布から図8に示すような表面下の、一つの垂直断面におけるメッシュ全点(すなわち、一つの垂直断面における全立体メッシュ要素z)について剪断応力τzyを算出する。なお、転走面円周方向については、基本的にτzyの最大値が得られてτ0が得られれば良いわけであるが、通常は面圧計算から得られた円周方向接触領域程度の領域を計算すればよく、これにより最大値が得られる。
ここで、図9は9個の応力成分を表す斜視図であり、図10は、ころの転がり方向とτzyとの関係を表す説明図である。前記剪断応力τzyは、ころの転がり方向に平行な方向に作用し、図8では、紙面に垂直な方向に作用する。
【0038】
一つの平面メッシュ要素eに(1)式のような線形接触面圧分布を仮定したとき、表面下の任意の点Qk1(xk ,y1 ,z)に働く剪断応力τzyijk1は次式のようになる。
【数11】

【0039】
点Qk1(xk ,y1 ,z)に働く剪断応力τzyijk1は、すべての平面メッシュ要素eijについて重ね合わせて次式で与えられる。
【数12】

【0040】
前記算出した剪断応力τzyから、図11に示すように、y方向の最大値τmax.、最小値τmin.を求める。この剪断応力の最大値τmaxから最小値τmin.を減じた剪断応力振幅τ0iを求める。以下、メッシュ全点について、前記と同様に、算出した剪断応力τzyから、y方向の最大値τmax.および最小値τmin.を求め、さらに剪断応力振幅τ0iを求める。ただし、|τmin |=τmax である。次に、これら全ての剪断応力振幅τ0iのうちの最大の剪断応力振幅τ0iを求め、その深さz0iを求める。
【0041】
寿命計算過程(T5)では、次式に基づいて次のスライス片からなる分割体積の寿命を計算する。この式において、添字iはスライス片の番号を表す。このスライス片は、立体メッシュ領域Vを、平面メッシュ要素eのころ軸方向幅(すなわち、ころ軸方向のメッシュ切り幅)で分割した分割体積であって、図8のハッチング部分SVである。このため、各スライス片は、矩形断面の円環となる。換言すれば、前記分割体積となるスライス片SVは、図8に示すX軸に平行な軸線まわりの円環状であって、任意の円周方向位置の断面形状が、平面メッシュ要素eのx軸方向の幅と同じ幅aiを有し、接触面から立体メッシュ領域Vの最深部までの深さを持つ矩形断面形状となる。
【0042】
この寿命計算仮定(T5)では、分割体積であるスライス片SVの寿命を、各スライス片SVの最大剪断応力振幅τ0iと位置z0i,スライス片SVの幅ai を用いて次式(18)にて計算する。添字iはスライス片の番号を表す。
【0043】
【数13】

【0044】
分割体積である各スライス片SVの寿命Li は、比例定数A1 を用いて次式(19)で与えられる。
【数14】

【0045】
この式(19)は、整理すると、上記の式(I)となる。
【数15】

【0046】
上記のように求めた分割体積である各スライス片SVの寿命を合成して、全体寿命は次式(II) で与えられる。
【数16】

【0047】
次に、同実施形態にかかる計算例につき説明する。計算領域となる平面メッシュ領域Rは、例えば図4のメッシュA、図5のメッシュBとも、x軸方向に12mm、y方向に0.7mmとする。メッシュAの場合、x方向の分割数naは128、y方向の分割数naは64であり、チャンファ部近傍の幅FMとその分割数DIVは、FM=DIV=0である。メッシュBの場合、x方向の分割数naは128、y方向の分割数naは64であり、チャンファ部近傍の幅FMは0.1mm、その分割数DIVは5である。
図12は、同実施形態(図5のメッシュB)に係る計算結果と実験結果とを比較する図である。
同図によると、試験サンプルNo. V1からV8にわたって、前述の計算による計算寿命と、実験による実験寿命とは略一致している。
このように、この実施形態に係る寿命予測方法および寿命予測装置によれば、従来ではできなかったエッジロードを考慮した寿命予測を行うことができ、精度良く寿命予測を行うことが確認できた。また、加工上最適なクラウニングが設定できなくても、要求寿命を満足できるか否か検討が可能である。
【0048】
以上説明したころ軸受の寿命予測方法および寿命予測装置によると、接触領域より広い平面メッシュ領域を設定し、この平面メッシュ領域をメッシュ切りし、メッシュ内部を均一または線形な面圧分布と仮定して、接触面の接触面圧分布を計算する。この接触面圧分布から剪断応力を求め、この剪断応力を用いて応力振幅を求め、この応力振幅を用いて軸受寿命を計算する。このため、コンピュータの負荷の増大を抑えながら、エッジロードを考慮し、精度良い寿命予測を行うことができる。この寿命予測結果に基づいて、最適なクラウニング形状を決定することができる。
特に、面圧分布から軸受寿命を計算する過程では、転走面下に設定した立体メッシュ領域を、平面メッシュ要素のころ軸方向幅毎に分割した分割体積であるスライス片の寿命Lを計算ため、理論的にも納得できる手法となる。
【0049】
また、メッシュ切り過程T1において、エッジロードが発生する箇所や、面圧分布が急激に変化する箇所を細分化するため、必要部分のみにつき、より正確な接触面圧分布を求め、この正確な接触面圧分布から必要部分の剪断応力を求めることができる。したがって、エッジロード等を考慮した精度良い寿命予測を行うことができる。また、全体のメッシュ切りを細かくする場合と異なり、計算時間の増加が抑えられ、CPUの処理負荷の軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】(A)はこの発明の一実施形態に係るころ軸受の寿命予測方法を示す流れ図、(B)はその演算過程の流れ図である。
【図2】この発明の一実施形態に係るころ軸受の寿命予測装置の概念構成を示すブロック図である。
【図3】同寿命予測方法の計算対象とする接触物体の一例を示す破断斜視図である。
【図4】同実施形態における面圧計算用のメッシュを表す図である。
【図5】同実施形態における、等比級数的にメッシュ間隔が小さくなるメッシュを表す図である。
【図6】図5の要部を拡大して表す図である。
【図7】同寿命予測方法における要素内局所座標の説明図である。
【図8】同実施形態における剪断応力計算用のメッシュを表す図である。
【図9】9個の応力成分を表す斜視図である。
【図10】ころの転がり方向とτzyとの関係を表す説明図である。
【図11】応力振幅を求める方法を説明する図である。
【図12】同実施形態に係る計算結果と実験結果とを比較する図である。
【図13】従来の転がり疲労試験のサンプルとその試験結果を表す図である。
【図14】従来のハリスの手法による寿命計算結果と、メッシュA,Bによる面圧計算結果を用いて寿命計算した結果と、実験結果とを比較する図である。
【符号の説明】
【0051】
1…コンピュータ
2…入力装置
3…出力装置
7…演算手段
8…メッシュ分割手段
8a…細分化部
9…面圧分布計算手段
10…剪断応力計算手段
11…応力振幅計算手段
12…寿命計算手段
R…四角形領域
e…四角形要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ころ軸受の寿命を、コンピュータを用いて予測する方法であって、
ころおよび軌道輪の転走面の、接触面付近の形状および作用する外力を入力して記憶手段に記憶させる入力過程と、
前記入力された値を用いて、前記転走面における前記接触面の接触面圧分布を計算し、この接触面圧分布から剪断応力を求め、この剪断応力を用いて応力振幅を求め、この応力振幅を用いて軸受寿命を計算する演算過程と、
前記計算した軸受寿命を出力する出力過程とを有し、
前記演算過程として、
前記軌道輪の転走面に前記接触領域より広い平面メッシュ領域を設定し、この平面メッシュ領域を、ころ軸方向およびころ転動方向にそれぞれ複数並ぶ四角形の平面メッシュ要素にメッシュ切りし、かつ前記転走面の全周の表面下における、前記平面メッシュ領域と同じころ軸方向幅で設定深さの領域となる立体メッシュ領域を、前記各平面メッシュ要素と同じころ軸方向幅毎に、設定深さ幅および設定ころ転動方向幅に分割した立体メッシュ要素にメッシュ切りする過程と、
前記各平面メッシュ要素につき要素内部を均一または線形な面圧分布と仮定して、前記接触面の接触面圧分布を計算する過程と、
前記接触面圧分布から前記表面下に設定した各立体メッシュ要素の剪断応力を求める過程と、
この求められた前記各立体メッシュ要素の剪断応力を用いて、応力振幅およびその深さを求める過程と、
前記応力振幅およびその深さを求める過程において求めた応力振幅τ0i およびその深さz0iを用いて寿命を計算する寿命計算過程とを含み、
この寿命計算過程では、次式(I)に前記応力振幅τ0iおよびその深さz0iを代入することにより、
前記立体メッシュ領域を、前記平面メッシュ要素のころ軸方向幅毎に分割した分割体積であるスライス片の寿命Lを計算する、
【数1】

ただし、
A1 :比例定数、
c:軸受寿命理論による係数(ころ軸受の場合は31/3)、
e: 同 上 (ころ軸受の場合は9/8)、
h: 同 上 (ころ軸受の場合は7/3)、
ai :下記のスライス片の幅、
添字i :スライス片の番号、
ことを特徴とするころ軸受の寿命予測方法。
【請求項2】
請求項1において、各スライス片の寿命を合成して、ころ軸受の全体寿命を次式(II)により計算するころ軸受の寿命予測方法。
【数2】

【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記平面メッシュ領域をメッシュ切りする過程において、前記ころ軸方向およびころ転動方向にそれぞれ均等に分割し、ころ軸方向については、均等分割された四角形の平面メッシュ要素を複数の細分化平面メッシュ要素に細分化し、この細分化は、任意の細分化指定位置における前記ころ軸方向に沿う両側に、任意の細分化幅Δaを設定して、細分化指定位置からΔa離れた点から細分化指定位置に近づく毎に2分の1ずつ幅が狭くなる等比級数的な幅を持つ複数の細分化平面メッシュ要素を設定する処理とするころ軸受の寿命予測方法。
【請求項4】
ころ軸受の寿命を、コンピュータを用いて予測する装置であって、
ころおよび軌道輪の転走面の、接触面付近の形状および作用する外力を入力して記憶手段に記憶させる入力処理手段と、
前記入力された値を用いて、前記転走面における前記接触面の接触面圧分布を計算し、この接触面圧分布から剪断応力を求め、この剪断応力を用いて応力振幅を求め、この応力振幅を用いて軸受寿命を計算する演算手段と、
前記計算した軸受寿命を出力する出力処理手段とを有し、
前記演算手段として、
前記軌道輪の転走面に前記接触領域より広い平面メッシュ領域を設定し、この平面メッシュ領域を、ころ軸方向およびころ転動方向にそれぞれ複数並ぶ四角形の平面メッシュ要素にメッシュ切りし、かつ前記転走面の全周の表面下における、前記平面メッシュ領域と同じころ軸方向幅で設定深さの領域となる立体メッシュ領域を、前記各平面メッシュ要素と同じころ軸方向幅毎に、設定深さ幅および設定ころ転動方向幅に分割した立体メッシュ要素にメッシュ切りするメッシュ分割手段と、
前記各平面メッシュ要素につき要素内部を均一または線形な面圧分布と仮定して、前記接触面の接触面圧分布を計算する接触面圧分布計算手段と、
前記接触面圧分布から前記表面下に設定した各立体メッシュ要素の剪断応力を求める剪断応力計算手段と、
この求められた前記各立体メッシュ要素の剪断応力を用いて、応力振幅およびその深さを求める応力振幅計算手段と、
前記応力振幅およびその深さを求める過程において求めた応力振幅τ0iおよびその深さz0iを用いて寿命を計算する寿命計算手段とを備え、
この寿命計算手段では、次式(I)に前記応力振幅τ0iおよびその深さz0iを代入することにより、
前記立体メッシュ領域を、前記平面メッシュ要素のころ軸方向幅毎に分割した分割体積であるスライス片の寿命Li を計算する、
【数3】

ただし、
1 :比例定数、
c:軸受寿命理論による係数(ころ軸受の場合は31/3)、
e: 同 上 (ころ軸受の場合は9/8)、
h: 同 上 (ころ軸受の場合は7/3)、
i :下記のスライス片の幅、
添字i :スライス片の番号、
ことを特徴とするころ軸受の寿命予測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−250878(P2009−250878A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−101548(P2008−101548)
【出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】