説明

さし穂用輸送容器

【課題】本発明はさし穂を入れた入れ物が収容できる底と垂直側壁を有するさし穂輸送容器に関する。
【解決手段】側壁の高さは側壁の上端がさし穂の上端を越える高さとし、容器には閉鎖できる蓋を設け、容器は形状を保持し、耐湿性があり、かつ湿分を通さない材料で製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はさし穂を輸送する容器に関する。
【背景技術】
【0002】
特別の植物を繁殖させる一般的な方法は、さし穂用植物を栽培して、続いてこれらのさし穂を根付かせ、次に根付いたさし穂を生長培地に移植して植物に生長させることである。
【0003】
さし穂を生産する地域とさし穂を根付かせる地域とはしばしば異なる。例えば、菊のさし穂はアフリカおよび南米諸国における植物生長で得られるが、その後、さし穂はオランダに空輸されて、そこでさし穂を根付かせる。
【0004】
通常の方法によると、これらのさし穂を入れ物に挿入し、これを互いに結合して特定の長さの細片に形成する。次に、これらの細片を互いに隣接させてボール紙製の箱に入れる。これらの箱に入れたさし穂はその後、根付かせる場所に主として空輸する。ここでさし穂は入れ物とともに箱から取り出し、ボール紙製の箱は廃棄物として捨てる。箱は一度しか使用しないようになっているので、購入や廃棄に必要なコストとは別に、これにより環境に負荷を与えることになるのが欠点となる。さらに、環境によってはボール紙製の箱は湿分を吸収するので、箱の剛性が、結果として箱の形状が失われることになる。これによりさし穂に対する直接の損傷や、断熱を損ない、またさし穂に対して有害となる箱の裂け破損など、好ましくない結果が頻繁に生じる。また箱に湿分が吸収されると、キノコが生長し、さし穂に病気を感染させる可能性がでてくる。さらに、さし穂は乾燥を避けるためにプラスチックで包装する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
数回再使用ができ、かつさし穂に関する保護特性が保持できるさし穂用の輸送容器を提供することが発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明によると、発明の目的は請求項1に記載された輸送容器によって達成される。容器は形状を保持し、耐湿性がありかつ湿分を通さない材料で製造しているので、容器は使用後においてもその形状と使用可能性を保持し、再使用に適している。また、容器は湿分を吸収しないので、病気の発生に確実に影響するキノコの生長が促進されることがない。さらに、容器は湿分不浸透性であるので、さし穂をプラスチックで包装する必要もなくなる。
【0007】
輸送容器の好ましい実施の形態においては、底、蓋および垂直側壁はプレートを取り付けたフレームで構成される。この方法においては、フレームで構造強度が付与され、プレートで非常に軽くなることから、頑丈でしかも軽量の構造が実現できる。これにより、取扱い容易性が改善されるばかりでなく、航空輸送の観点においても特に有利となる。
【0008】
フレームおよびプレートの両方に対してプラスチックは要求を満足する適当な材料である。さらに、特に大量生産の場合、プラスチックは有利なコストで製造することができる。しかし、フレームに対しては、異なる耐湿性材料、例えば耐湿性金属を使用することも可能である。
【0009】
プレートをセル構造にすると、軽量と良好な強度を両立させる良好な組合せが達成でき、しかも断熱特性もかなり改善される。温度の過度のバラツキは避ける必要があるので、このことはさし穂に対して特に重要となる。さらに、セル構造によって容器の強度およびそれにともなうその他の保護特性も改善される。
【0010】
容器の頑丈性をさらに改善するため、蓋の縁の少なくとも一部に溝を設け、そこに隆起縁のそれぞれの部分を密着させる。このような容器に蓋をすると、蓋は容器全体の剛性増加にかなり貢献する。当然のことであるが、側壁の方に溝を設け、蓋の方に密着突出部を設けても、同じ効果が達成できる。
【0011】
好ましい実施の形態では、輸送容器の蓋の上面の周囲近辺に、別の輸送容器の底面を受ける隆起縁を設ける。これで容器は確実な方法で積み重ねられる。これは特に容器を自動で取り扱うときに重要となる。
【0012】
蓋および少なくとも1つの垂直側壁に、蓋を垂直側壁にロックするロック手段を設けることによって、蓋を垂直壁に取り付けるときの信頼性が高まる。
容器にさし穂を入れるとき、またそれを再度取り出すとき、蓋が取り外し式であると便利である。このことで作業がかなり簡単になる。
【0013】
輸送中にさし穂は特有のガスを発生する。蓋、底または壁の少なくともいずれか1つ、またはこれらの組合せたものに、蒸気とガスは通すが液滴は通さない寸法の細孔を設けることによって、液滴が容器を介して出入りすることなしに、これらのガスは排出されて新鮮な空気が取り入れられる。
【0014】
垂直側壁と底とは90°を超える角度が形成されているので、帰路の輸送では有利となる。これにより容器は入れ子が可能となり、帰路の輸送では相当量のスペースが節約でき、この種の輸送のコストに特に有利な影響を与える。
【0015】
特に容器の自動取扱いに関して、例えば機械装置への充填前または充填時に、容器の底間が相互に完全にまたはほとんど接触せずに、ある程度のスペースを残すように容器を入れ子にすることが好ましい。これは垂直壁の特定の高さにおいて下面が平坦で、垂直面を超えて少なくとも上枠を超えるところまで突出する突出部を設けることで達成できる。節約したスペースはこのように再度放棄されるけれども、容器のおろし作業が非常に容易になる。
【0016】
大型容器の場合、輸送容器の内部に少なくとも1つの垂直仕切壁を設けると有利となる。この仕切壁で容器内のスペースは数区画に分割されるので、さし穂を入れた入れ物を安全確実に輸送できることが保証される。帰路輸送中の入れ子に関して、仕切壁を折りたたみ式および/または取り外し式にすると有利となる。また、これによって容器内の入れ物のなくなった細片を返送する十分なスペースが確保される。
【発明の効果】
【0017】
輸送容器は形状を保持し、耐湿性があり、かつ湿分を通さない材料で製造されているので、使用後においてもその形状と使用可能性を保持し、再使用に適している。また、容器は湿分を吸収しないので、病気の発生に確実に影響するキノコの生長が促進されることがない。さらに、容器は湿分不浸透性であるので、さし穂をプラスチックで包装する必要もなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図面を参照して発明の好ましい実施の形態の以下の説明によって本発明をさらに詳細に説明する。
図1に全体を符号1を付した輸送容器の概略透視図を示すが、発明の実施の形態によるとこの輸送容器1は底2と側壁3と分離した蓋4とを備える。本実施の形態によると、容器全体は形状を保持し、耐湿性があり、かつ湿分を通さないプラスチックで作られる。底と蓋と全側壁はそれぞれプラスチックプレートが取り付けられたフレームで構成される。
【0019】
容器のトレイフレームは図2で透視面として示す。このフレームにセル構造のプラスチックプレートを取り付ける。この実施の形態では、図3に示すように、プレートは一定の間隔で結合仕切材7で結合した等距離間隔の2枚の薄板6で構成される。これにより、プレート構造は強度を十分に保ちながら非常に軽量となる。このような構成でフレームも強度に関する要求を満足する。すべてが一緒になって構造が特に軽量でかつ頑丈になる。さらに、プレートがセル構造になっているので容器の断熱特性が特に良好となる。
【0020】
発明の以上の実施の形態では図4に示すように、全縁に沿って溝8を有する蓋4を備え、この溝8内に側壁3の上縁が密着して取り付けられる。防湿を有効にするため容器を遮断することとは別に、この蓋4は容器の剛性、すなわち形状保持に大きく貢献する。
【0021】
図5に積み重ねた2つの容器を示すが、上方に積み重ねた容器が適合するよう矩形で形成された隆起縁9を蓋に設ける。隆起縁9によって前記容器が下方容器に対して移動することが防止される。このことは積み重ねた容器を取扱い輸送するのに自動取扱い装置が使用できるので、特に有利となる。
【0022】
蓋4を側壁3に強固に取り付けるようにするため、蓋の各縁には少なくとも1つの開口付き蓋10を備え、図6でわかるようにこの開口はロックを形成する側壁3の補足突出部とスナップ結合をする。
【0023】
また図5は垂直の壁と底とが90°よりわずかに大きい角度を形成することを示す。このことで、輸送帰路時に積み重ねられた容器は入れ子になるので、空の容器はほとんど場所をとることがない。このため、蓋は取り外される。この蓋は別個に積み重ねて輸送する。
【0024】
入れ子にした容器を簡単に取り外すために、側壁3の外側に突出部11を設ける。容器を入れ子にしたとき、下方容器の上縁上に前記突出部11が当接して容器が置かれるような方法で前記突出部11は突出する。この突出部は図2に示す。突出部11の位置は、積み重ねた容器の側壁と底とが互いに接触しない位置とし、また機械的な処理において相当に不都合な原因となりうる吸着によって互いに付着するようなことのない位置とする。置かれた容器の底間のスペースは入れ物のなくなった細片を返送するのに十分である。
【0025】
輸送するさし穂をさらに保護するために、容器の底2に仕切壁12を設ける。図1には1つの仕切壁12を示す。また図1に示すように、底と蓋には一定の間隔で細孔13が開けられる。これらの細孔はガスと蒸気が通過できるが水分が通過できない大きさである。この方法で容器は水分不透過特性を失うことなく自然の方法で通気できる。
【0026】
図7に示すように、容器の底面において、発明のこの実施の形態の仕切壁12には一定の間隔で突起15が設けられ、底12の一対の突起14とスナップ結合を形成する。突起
14と15とによって、仕切壁を使用時には折り上げ、輸送帰路では折りたたむか取り外すことのできるヒンジが形成される。この垂直の状態で仕切壁12は側壁にロックされるので、入れ物やそこに含まれたさし穂を有する細片から加わる圧力に曝されたときでも仕切壁12は垂直に保たれる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
さし穂の生産地域とさし穂を根付かせる地域との間でさし穂を輸送する輸送容器として使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】発明の実施の形態による輸送容器の概略斜視図を示す。
【図2】発明の実施の形態による輸送容器のトレイフレームの上面を示す。
【図3】発明の実施の形態によるセル構造のプレートの断面を示す。
【図4】発明の実施の形態による側壁の1つに蓋を取り付ける方法の詳細を示す。
【図5】発明の実施の形態による積み重ねた2つの容器を示す。
【図6】発明の実施の形態による容器の蓋と側壁の間のロック機構の一例を示す。
【図7】底に仕切壁を取り付けるヒンジ式および取り外し式機構を示す。
【符号の説明】
【0029】
1 輸送容器
2 底
3 側壁
4 蓋
5 フレーム
6 板
7 結合仕切材
8 溝
9 隆起縁
10 ロック
11 突出部
12 仕切壁
13 細孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
さし穂を入れた入れ物が収納できる底(2)と垂直側壁(3)を有するさし穂輸送容器であって、側壁(3)の高さは側壁(3)の上端がさし穂の上端を超える高さであり、容器(1)には閉鎖できる蓋(4)を設けた輸送容器において、
容器(1)は形状を保持し、耐湿性があり、かつ湿分を通さない材料で製造することを特徴とする輸送容器。
【請求項2】
底(2)、蓋(4)および垂直側壁(3)の少なくとも1つはプレートを取り付けたフレームで構成することを特徴とする請求項1に記載の輸送容器。
【請求項3】
プレートはプラスチック製プレートであることを特徴とする請求項2に記載の輸送容器。
【請求項4】
プレートはセル構造で構成することを特徴とする請求項2または3に記載の輸送容器。
【請求項5】
フレーム(5)はプラスチック製であることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載の輸送容器。
【請求項6】
フレーム(5)は金属製であることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載の輸送容器。
【請求項7】
蓋(4)の縁の少なくとも一部には、垂直壁(3)の少なくとも一部と密着連結する溝(8)を設けることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の輸送容器。
【請求項8】
蓋(4)および少なくとも1つの側壁(3)には、蓋を側壁(3)にロックするロック手段(10)を設けることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の輸送容器。
【請求項9】
蓋の上面の周囲近辺に別の輸送容器(1)の底面を受ける隆起縁(9)を設けることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の輸送容器。
【請求項10】
蓋(4)は取り外し式であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の輸送容器。
【請求項11】
蓋(4)、底(2)および側壁(3)の少なくとも1つには、蒸気とガスは通すが液滴は通さない寸法の細孔(13)を設けることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の輸送容器。
【請求項12】
側壁(3)と底(2)とは90°を超える角度を形成することを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の輸送容器。
【請求項13】
特定の高さにおいて側壁(3)に、下面が平坦で、少なくとも上枠の内側を超えて垂直面で突出する突出部(11)を設けることを特徴とする請求項12に記載の輸送容器。
【請求項14】
輸送容器(1)の内部には少なくとも1つの垂直仕切壁(12)を設けることを特徴とする請求項13に記載の輸送容器。
【請求項15】
少なくとも1つの垂直仕切壁(12)は折りたたみ可能に底(2)に取り付けることを特徴とする請求項14に記載の輸送容器。
【請求項16】
少なくとも1つの垂直仕切壁(12)は取り外し可能に底(2)に取り付けることを特徴とする請求項14または15に記載の輸送容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−124036(P2006−124036A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−312074(P2005−312074)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(505401160)
【Fターム(参考)】