説明

さらさらとした使用感、洗浄性に優れた親油化表面処理微粒子粉体およびそれを配合した化粧料

【課題】
さらさらとした使用感、洗浄性に優れた親油化表面処理微粒子粉体を提供する。
【解決手段】
本発明の親油化表面処理微粒子粉体は、一次粒子径が5nm〜150nmの微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛の無機粉体を、表面処理剤として、N−アシルアミノ酸又はその塩で、無機粉体100重量部に対して、0.5〜30.0重量部で、表面処理したものである。N−アシルアミノ酸はC12〜C20の飽和脂肪酸とアスパラギン酸、グルタミン酸から選んだアミノ酸とのアシルアミノ酸であり、該塩はFe、Zn、Ca、Mg、Al、Zr、Tiから選んだ金属の塩である。表面処理工程は、表面処理温度を60℃以上で水の沸点未満とし水中または含水状態で行う。該親油化表面処理微粒子粉体を配合して、さらさらした使用感、洗浄性、化粧効果及び化粧持続性に優れた化粧料が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、さらさらとした使用感、洗浄性に優れた親油化表面処理微粒子粉体、及びその製造方法に関し、または該表面処理微粒子粉体を分散体化して配合することによってさらさらとした使用感、洗浄性に優れ、また化粧効果および化粧持続性に優れた化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料においては、太陽光の紫外線による肌への悪影響を防御するために、有機紫外線吸収剤や微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛等の金属酸化物を配合しているものがある。
【0003】
地表に達する太陽光は、280nm〜3000nmの波長の範囲にあり、紫外線、可視光線、赤外線が含まれている。紫外線には皮膚への黒化・老化促進をもたらすUVA320nm〜380nm、皮膚の紅斑、即時型色素沈着・遅延型色素沈着をもたらし皮膚発ガン性のあるUVB290nm〜320nm、並びにオゾン層にはばまれて地上に到達しないUVC200〜290nmがあることが知られている。したがって、上記紫外線のうち皮膚に悪影響及ぼすUVAとUVBとを除去する必要がある。
【0004】
化粧料に配合される微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛等の金属酸化物粉体は、光散乱に及ぼす粒子径と波長の関係を考慮して、理想的には、可視光散乱の最適粒子径約200nmから大きくはずれ紫外線光散乱の最適粒子径5〜100nmに設定して、可視領域では透明性を示すが、紫外線は遮蔽するようにすることが好ましい。一方、粉体の一次粒子径が小さくなるほど、ぎしぎし感が強く使用感触は悪くなり、またその粒子同士の凝集力は強くなり、凝集した2次粒子をほぐすためには、より大きな分散力が必要となる。
【0005】
また、この微粒子酸化チタンや微粒子酸化亜鉛等の金属酸化物の表面は、親水性であるので、そのまま使用した場合は、肌への付着の悪さ、汗等で流れ落ちる問題点があり、これら粉体表面に疎水性を付与させるために、粒子表面に対して表面処理剤で親油化処理を施して使用している。しかしながら、その粒子表面を覆っている表面処理剤は、化粧料の塗布時の使用感、洗浄性、肌への密着性、化粧効果及び化粧持続性の性能に大きく影響する。化粧効果及び化粧持続性を向上させるために親油化表面処理した微粒子粉体は、その使用感は油感が強くなりべた付き感が生じ、洗浄性を悪くする傾向がある。
【0006】
また、親油化処理を施した粒子の凝集状態は、表面処理剤の種類、量及びその処理方法によって多大な影響を受け、凝集体粒子が大きく、また凝集粒子が硬く結合すると、紫外線防御効果を発揮する粒子径までに凝集粒子をほぐすことは容易にはできなくなる。これまでの親油化表面処理を施した微粒子酸化チタン、及び微粒子酸化亜鉛粉体では、これらの性能を充分に満足しているとは言えない。
【0007】
従来、親油化表面処理剤として多くが知られており、例えば、表面処理剤としてシリコーンオイル(例えば、メチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサンあるいはアルキル部分の炭素数が10以下であるアルキルシラン)を溶剤に溶かし、粉体に添加混合して乾燥した後に、これを加熱することにより焼き付けて処理する方法(特許文献1)、粉体をオクチルトリエトキシシラン等の有機溶媒中にメディアグラインダーを用いて分散させながらオクチルトリエトキシシラン等の有機珪素化合物により表面処理する方法(特許文献2)、表面処理剤としてアシルアミノ酸またはその塩を用いてメイクアップ化粧料で用いられる無機粉体を水中で処理する方法(特許文献3)、粉体の分散性向上のために、表面処理剤としてA層及びB層の表面処理剤をジェット法で被覆処理する方法(特許文献4)、アクリル系誘導体またはアクリルアミド誘導体を構成モノマーとして含有し、リビングラジカル重合によって重合されたポリマーを表面処理剤として用いる方法(特許文献5)等の種々の表面処理方法が提案されている。
【0008】
しかしながら、特許文献1、特許文献2のような、表面処理剤であるシリコーンオイルやオクチルトリエトキシシラン等の有機珪素化合物では、塗布時の使用感は油感が強く、撥水性が高いために水での洗浄性が悪い。また表面処理時に微粒子粉体が造粒し、硬い凝集を形成して分散が容易ではない。また、さらに、特許文献3のような、表面処理剤にN-アシルアミノ酸またはその塩を用いた場合でも、その処理方法を考慮しないと、メイクアップ化粧料用顔料のような比表面積が小さい顔料を処理する場合には問題にはならないが、微粒子酸化チタンや微粒子酸化亜鉛のように比表面積の大きい顔料を処理する場合は、顔料表面を親油化するため処理量が多くなってしまい、使用感触が重く、また顔料粒子間の凝集力が非常に強くなり分散しにくくなる点の考慮がなされていない。また特許文献4においては、塗布時の使用感は油感が強く、撥水性が高いために洗浄性が悪くなる。特許文献5においては、洗浄性には優れるが、塗布時の使用感は油感が強く、肌への付着性は充分とは言えない。これら従来の方法では、微粒子粉体の表面処理剤による、塗布時のさらさらとした使用感、洗浄性、肌への付着性、化粧効果、化粧持続性のための方策に欠けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−104606
【特許文献2】特開2000−264824
【特許文献3】特公平1−50202
【特許文献4】特開2002−80748
【特許文献5】特開2007−210903
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、さらさらとした使用感、洗浄性に優れた親油化表面処理微粒子粉体、及びその製造方法に関し、また該表面処理微粒子粉体を分散体化して配合することによって、さらさらとした使用感、優れた洗浄性、化粧効果、化粧持続性に優れた化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、一次粒子径が5nm〜150nmである微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛の無機粉体を、表面処理剤として、N−アシルアミノ酸又はその塩で、無機粉体100重量部に対して、0.5〜30.0重量部で、表面処理した紫外線遮蔽効果を有する親油化表面処理微粒子粉体であって、N−アシルアミノ酸は炭素数12以上20以下である飽和脂肪酸とアスパラギン酸、グルタミン酸より選ばれるアミノ酸とのアシルアミノ酸化合物であり、該塩はFe、Zn、Ca、Mg、Al、Zr、Tiからなる群から選ばれる金属の塩であり、表面処理工程において、表面処理温度を60℃以上で水の沸点未満とし水中または含水状態で表面処理がされていることを特徴とする、さらさらとした使用感、洗浄性に優れた親油化表面処理微粒子粉体に関する。
本発明に係るさらさらとした使用感、洗浄性に優れた親油化表面処理微粒子粉体の好適な態様としては、以下のものを挙げることができる。それらの任意の組合せも特に矛盾がない限り、本発明の親油化表面処理微粒子粉体の好適な態様である。
(1)前記無機粉体100重量部に対して、1〜12.0重量部のN−アシルアミノ酸又はその塩で表面処理をする。
(2)前記表面処理工程において、表面処理温度を60℃以上で95℃以下の水中もしくは含水状態で行う。
(3)前記表面処理工程において、予め60℃以上に加熱した前記N−アシルアミノ酸又はその塩を溶解した水溶液に対して、酸又はFe,Zn,Ca、Mg,Al,Zr,Tiからなる群から選ばれた金属の水可溶性塩の水溶液を添加・反応させることによって、表面処理剤である前記N−アシルアミノ酸又はその塩により表面処理をしている。
(4)前記酸または前記可溶性金属塩の添加量は、使用したN−アシルアミノ酸に含まれるカルボキシル基の当量の60〜120%とする。
さらに、本発明は、上記の紫外線遮蔽効果を有する親油化表面処理微粒子粉体と分散媒として油剤とを少なくとも含有する分散体に関する。
本発明の分散体の好ましい態様としては、前記分散体が、前記表面処理微粒子粉体と分散媒として油剤と界面活性剤とを少なくとも含有する。
さらに、本発明は、前記表面処理微粒子粉体または表面処理微粒子粉体を含有する分散体を配合した化粧料に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、一次粒子径が5nm〜150nmの微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛の無機粉体を、表面処理剤として、前記N−アシルアミノ酸又はその塩で、無機粉体100重量部に対して、0.5〜30.0重量部で、表面処理工程の表面処理温度を60℃以上で水の沸点未満とし水中または含水状態で表面処理された親油化表面処理微粒子粉体を化粧料に配合することによって、また該表面処理微粒子粉体を分散体化して配合することによって、さらさらとした使用感、洗浄性に優れ、化粧効果、化粧持続性に優れた化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の好ましい態様について記載するが、その任意の組み合わせも特に矛盾がない限り、本発明の好ましい態様である。
(1)粉体
本発明に使用する無機粉体は、紫外線遮蔽効果を有する微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛、またはそれらの複合系あるいは混合系として使用できる。微粒子酸化チタンとしては、様々な粒子形状があるが、例えば紡錘状、バタフライ状、棒状、蝶ネクタイ状、繭状、不定形等あり、どの形状であってもよいし、結晶構造として、ルチル型、アナターゼ型、ルチル/アナターゼ型とあるが、どの結晶構造でもよいし、また表面活性を抑制するために、粒子表面を無機処理として、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、ジルコニア等の1種またはその2種以上で処理されているものが好ましい。また微粒子酸化亜鉛も、様々な形状があるが、例えば六方晶系、不定形、花びら状等あり、その他の形状であってもよいし、また粒子表面を無機処理として、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム等の1種またはその2種以上で処理されているものでもよい。また、一次粒子径については、微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛ともに、電子顕微鏡観察計測にて5−150nmが紫外線遮蔽効果の観点から好ましい。
【0014】
(2)表面処理剤
本発明に用いられるN−アシルアミノ酸としては、炭素数12以上20以下である飽和脂肪酸とアスパラギン酸、グルタミン酸より選ばれるアミノ酸とのアシルアミノ酸化合物であり、アミノ酸のカルボキシル基は遊離体か、又はFe、Zn、Ca、Mg、Al、Zr、Ti等の不溶化塩としたものがある。
【0015】
具体的には、味の素社より市販されているアミソフトHS−11P、アミソフトHAP、アミソフトMK−11、アミソフトCA等、旭化成社より市販されているペリセア、アミノフォーマー、アミノサーファクタント等を挙げることができる。
【0016】
表面処理剤量は、無機粉体100重量部に対して、0.5〜30.0重量部であり、より好ましくは、1.0−12.0重量部である。表面処理剤量が少ないと親油性が弱く、化粧持続性が悪くなり、化粧料の安定性を悪くする場合があり、また処理剤が多いと使用感が重くなり、また分散性や分散安定性が悪くなる。使用する無機粉体の一次粒子径や比表面積によるが、親油性を付与できる最少量の表面処理剤量にて処理することにより、よりさらさらした使用感触、より高い洗浄性、化粧効果、化粧持続性を得られる。
【0017】
(3)表面処理方法
本発明の表面処理とは、微粒子粉体表面に表面処理剤が化学吸着、物理吸着のどちらでもよく、その表面処理方法としては、従来から用いられている方法を使用することができ、特に限定されるものではないが、表面処理工程の処理温度については、60℃以上で水の沸点未満、好ましくは95℃以下の水中もしくは含水状態で行う。例えば、加熱・冷却できるニーダに無機粉体を投入して攪拌しながら60℃以上に加温し、予め60℃以上で溶解したN−アシルアミノ酸、またはNa,K等の塩を溶解した水溶液、又はアルカリ水でN−アシルアミノ酸またはその塩を60℃以上で溶解した水溶液を投入して攪拌し、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸等の無機酸又はそれらのFe、Zn、Ca、Mg、Al、Zr、Ti等の金属可溶性塩をゆっくりと添加することによって、本発明の表面処理剤であるアシルアミノ酸遊離体、又はそのFe、Zn、Ca、Mg、Al、Zr、Ti塩を形成し表面処理を行う。この際、処理温度が低い場合は、表面処理剤量が多く必要となり、使用感触が重くなり、洗浄性が悪くなる。また金属可溶性塩の添加量は、使用したN−アシルアミノ酸に含まれるカルボキシル基当量の60−120%が好ましい。これより少ない場合は、充分な親油性を発揮できない可能性があり、また多すぎると表面処理微粒子粉体中にこれらの塩が残存し、化粧料の安定性を悪くするので、多量の水で洗浄する必要がある。表面処理工程において、少なくとも無機酸又はそれらの金属可溶性塩を添加終了までは、60℃以上で水の沸点未満に維持する。
【0018】
また別の表面処理方法としては、攪拌できるタンクの中に水またはアルカリ水を60℃以上に加熱して、そこに表面処理剤であるN−アシルアミノ酸、またはその塩を攪拌溶解した後、その中で無機粉体を分散する。分散は公知の方法を採用すればよく、特に限定されるものではない。例えば、分散は、タンクの中での攪拌でもいいが、好ましくはディスパーミキサー、ホモミキサー、インラインミキサー、メディアグラインダー、3本ロール、アトライター、コロイドミル、超音波分散機等の液体中で顔料を分散するのに使用できる分散機を用いて顔料を分散する。この際のアルカリ水又は水と顔料の比率は、重量で3倍〜10倍量のアルカリ水または水を使用する。この比率は分散しやすい粘度になるように、その比率で調整すればいい。次に顔料を分散した後、攪拌しながら、酸又はMg、Ca、Zn、Zr、Al、Ti等の金属可溶性塩の1−30重量%水溶液をゆっくりと添加することによって、本発明の表面処理剤であるアシルアミノ酸遊離体、又はそのFe、Zn、Ca、Mg、Al、Zr、Ti塩を形成する。アシルアミノ酸遊離体またはその塩を形成し表面処理・熟成後に、フィルタープレスや遠心脱水機にてろ過する。この際、含水顔料ケーキ中に含まれる水溶性塩を取り除くために水で洗浄してもよい。次に含水顔料ケーキを取り出し、乾燥機にて水分を取り除く。乾燥後、粉砕には、公知の方法を採用すればよく、特に限定されるものではないが、アトマイザー、ピンミル、JETミル等で粉砕する。より好ましくは、JETミルにて粗大粒子がない状態まで粉砕する方法が好ましい。
【0019】
(4)分散体
本発明の油性分散体で用いられる分散媒としては、化粧料に使用可能な油剤であれは良く、大別するとシリコーン系油剤、炭化水素系油剤、エステル系油剤あるいはこれらの混合油剤である。具体的には、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロテトラシロキサン、メチルトリメチコン、カプリリルメチコン等のシリコーン類、流動パラフィン、流動イソパラフィン、水添ポリイソブテン、スクワラン、スクワレン、ワセリン、パラフィン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、C18−C12アルカン、C13−C15アルカン等、またベジタブルハイドロカーボン、具体的にはBIOSYNTHIS社のVEGELIGHT1214、VEGELIGHT1214LC、VEGELIGHT12、VEGELIGHT14、VEGELIGHT16、VEGELIGHT18、VEGELIGHT22等の炭化水素類、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、オクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリカプリル酸グリセリル、カプリル・カプリン酸グリセリル、2-エチルヘキサン酸グリセリル、C12−15アルキルベンゾエート、等のエステル類が挙げられる。その他としては、サフラワー油、大豆油、月見草油、ブドウ種子油、ローズヒップ油、ククイナッツ油、アルモンド油、ゴマ油、コムギ胚芽油、トウモロコシ油、綿実油、アボガド油、オリーブ油、ツバキ油、パーシック油、ヒマシ油、ラッカセイ油、ヘーゼルナッツ油、マカデミアナッツ油、メドフォーム油、カカオ脂、シア脂、木ロウ、ヤシ油、パーム油、パーム核油、牛脂、馬脂、ミンク油、乳脂、卵黄油、タートル油等の油脂類、ミツロウ、鯨ロウ、ラノリン、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ホホバ油等のロウ類、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、ウンデシレン酸、ヒドロキシステアリン酸、ラノリン脂肪酸等の脂肪酸、パーフルオロポリエーテルオイル、パーフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル等のフッ素系油剤、油溶性紫外線吸収剤等が例示される。
【0020】
(5)界面活性剤
本発明の油性分散体は、できるだけ単純な組成で表面処理微粒子粉体の含有量が多い程より好ましいが、表面処理微粒子粉体をより含有量を高く、より分散性を高めるためには、第三成分として分散効果のある界面活性剤を含めたほうがより好ましい。使用する界面活性剤は、配合する化粧料で用いるのが好ましい。例えば、直鎖、分岐タイプまたアルキル変性したポリエーテル変性シリコーン、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、POEグリセリン脂肪酸エステル、POE・POPアルキルエーテル、硬化ひまし油脂肪酸エステル等を挙げることができる。
【0021】
(6)分散方法
本発明による表面処理微粒子粉体を分散媒に混練又は分散させる方法は、公知の方法を採用すればよく、特に限定されるものではない。例えば、ニーダ、3本ロール、エクストルーダー、ディスパーミキサー、ホモミキサー、インラインミキサー、メディアグラインダー、アトライター、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機等を用いればよい。
【0022】
(7)化粧料
本発明の親油化表面処理微粒子粉体を配合する化粧料としては、特に限定は無い。化粧料の剤型として、例えば、乳液状、クリーム状、固形状、ペースト状、ゲル状、粉末状、多層状、ムース状、及びスプレー状等の従来公知の剤型を選択することができる。具体的には、メイクアップ化粧料として、化粧下地、パウダーファンデーション、リキッドファンデーション、油性ファンデーション、スティックファンデーション、プレストパウダー、フェイスパウダー、白粉、口紅、口紅オーバーコート、リップグロス、コンシーラー、頬紅、アイシャドー、アイブロウ、アイライナー、マスカラ、水性ネイルエナメル、油性ネイルエナメル、乳化型ネイルエナメル、エナメルトップコート、エナメルベースコート等、スキンケア化粧料としてはエモリエントクリーム、コールドクリーム、美白クリーム、乳液、化粧水、美容液、パック、カーマインローション、液状洗顔料、洗顔フォーム、洗顔クリーム、洗顔パウダー、メイククレンジング、ボディグロス、日焼け止め又は日焼け用クリーム等の紫外線防御化粧料やローション等、頭髪化粧料としては、ヘアーグロス、ヘアクリーム、ヘアーシャンプー、ヘアリンス、ヘアカラー、ヘアブラッシング剤等、制汗化粧料としてはクリームやローション、パウダー、スプレータイプのデオドラント製品を挙げることができる。
【0023】
また本発明の親油化表面処理微粒子粉体を配合する化粧料には、発明の効果を損なわない範囲で、通常化粧料等に用いられる顔料分散剤、油剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、防腐剤、酸化防止剤、皮膜形成剤、保湿剤、増粘剤、染料、防腐剤、顔料、香料等を適宜配合することができる。
【0024】
更に、このようにして得られる表面処理無機粉体は、化粧料のみならずプラスチックの添加剤、インク、塗料、トナー(磁性粉)、化学繊維、包装材料、電子材料等の各種分野で広く使用される粉体としても適用可能である。
【実施例】
【0025】
以下に、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0026】
(実施例1)
イオン交換水10、000ccを80℃に加熱し、N-ステアロイル−L−グルタミン酸ジナトリウム60gを加える。そこに微粒子酸化チタンMT−100SA(テイカ社製)を1kg投入し攪拌する。その顔料スラリー液をメディア分散機(DYNO−MILL)にて3Pass分散したのちに、攪拌しながら1N塩酸水溶液をカルボキシ基当量100%になるまでゆっくりと添加した。この間温度は60℃以上で水の沸点未満に維持した。添加後に冷却した後、脱水ろ過し、熱風乾燥機115℃で18時間乾燥し、次にジェットミルにて粉砕して親油化表面処理微粒子粉体を得た。
【0027】
(実施例2)
トリミックス(井上試作所社製3軸縦型ニーダ)に、微粒子酸化チタンTTO−V−3(石原産業社製)を200g投入し、予めイオン交換水200ccを70℃に加熱し、N-ラウロイル−L−アスパラギン酸ナトリウム22gを溶解した溶液を加え、70℃まで加熱攪拌する。その後1N硫酸アルミニウム水溶液をカルボキシ基当量100%になるまでゆっくりと添加した。この間温度は60℃以上で水の沸点未満に維持した。添加後に冷却した後、熱風乾燥機115℃で18時間乾燥し、次にピンミルにて粉砕して親油化表面処理微粒子粉体を得た。
【0028】
(実施例3)
四塩化チタン水溶液の加水分解により得られた含水酸化チタンを酸化チタン換算で100g/Lのスラリーとし、このスラリー2Lに48%水酸化ナトリウム水溶液1.4kgを加えて95℃で120分間加熱後、ろ過し、十分に洗浄してケーキを得た。次にその洗浄ケーキを水にて酸化チタン換算で100g/Lになるようにスラリー化し、そのスラリー2Lに35%塩酸水溶液760gを加えて95℃まで加熱し、90分間熟成し、ルチル型結晶の平均長径0.1μm、平均短径0.01μmの紡錘状微粒子酸化チタンスラリーを得た。次に得られた微粒子酸化チタンスラリーに対してAl2O3として8重量%のアルミン酸ナトリウム水溶液を添加し、硫酸水溶液でpHを7.0にして水酸化Alを被覆し、微粒子酸化チタン5%のスラリーを得た。次に、そのスラリーをろ過し、十分に洗浄して、微粒子酸化チタン固形分36%含水湿潤ケーキを得た。
次に、得られた含水湿潤ケーキ(固形分36%)556gとイオン交換水3444gを混合し、ホモミキサーで、9000rpmで3分間分散し、80℃に加熱した後、N-ラウロイル−L−アスパラギン酸ナトリウム24gを加えて、30分間攪拌する。その後1N硫酸アルミニウム水溶液をカルボキシ基当量100%になるまでゆっくりと添加した。この間温度は60℃以上で水の沸点未満に維持した。添加後に冷却した後、脱水ろ過し、熱風乾燥機115℃で18時間乾燥し、次にピンミルにて粉砕して親油化表面処理微粒子粉体を得た。
(実施例4)
イオン交換水5000ccを90℃に加熱し、N-ミリストイル−L−グルタミン酸カリウム20gを加える。そこに微粒子酸化亜鉛MZ−500を1000g投入し攪拌する。ホモミキサーで30分間分散後に、1N塩化アルミニウム水溶液をカルボキシ基当量120%になるまでゆっくりと添加した。この間温度は60℃以上で水の沸点未満に維持した。添加後に冷却した後、ろ過し、熱風乾燥機115℃で18時間乾燥し、次にアトマイザーにて粉砕して親油化表面処理微粒子粉体を得た。
【0029】
(比較例1)
実施例1の温度を室温50℃で実施した。
【0030】
(比較例2)
実施例1の1N塩酸水溶液をカルボキシ基当量30%で実施した。
【0031】
(比較例3)
イオン交換水10000ccを80℃に加熱し、N-ステアロイル−L−グルタミン酸ジナトリウム350gを溶解する。そこに微粒子酸化チタンMT−100SAを1000g投入し攪拌する。ホモミキサーで30分間分散後に、1N塩酸をカルボキシ基当量100%になるまでゆっくりと添加した。この間温度は60℃以上で水の沸点未満に維持した。添加後に冷却した後、脱水ろ過し、熱風乾燥機115℃で18時間乾燥し、次にジェットミルにて粉砕して親油化表面処理微粒子粉体を得た。
【0032】
(比較例4)
ヘンシルミキサーに微粒子酸化チタンMT−100SA(テイカ社製)2kg投入して攪拌混合しながら、予め調整した表面処理剤の反応性オルガノシリコーン(信越化学製:KF−99P)80gと反応性オルガノシリコーン(信越化学製:X−24−9171)120gの混合液を添加し30分間攪拌した。上記工程は50℃にて行った。次にジェットミルにて粉砕した後、熱風乾燥機にて110℃で9時間乾燥し、親油化表面処理微粒子粉体を得た。
【0033】
(比較例5)
微粒子酸化チタンTTO−S−3(石原産業社製)2kgを脱イオン水/IPA=50/50の混合液5000mlに投入し、表面処理剤として反応性オルガノシリコーン(信越化学製:X24−9171)160gとイソパルミチン酸40gを加え、サンドグラインダー(DYNO-Mill)にて30分間循環により分散させた。上記工程は40度以下にて行った。この分散液を真空乾燥機にて減圧下100℃で7時間乾燥した後、ピンミルにて粉砕して親油化表面処理微粒子粉体を得た。
【0034】
(比較例6)
ヘンシルミキサーに微粒子酸化亜鉛(MZ−500 テイカ社製)2kg投入して攪拌混合しながら、表面処理剤の反応性オルガノシリコーン(信越化学製:KF−99P)100gを添加し、ヘンシルミキサー内温度を80℃に維持して30分間攪拌した。次にジェットミルにて粉砕した後、熱風乾燥機にて110℃で9時間乾燥し、親油化表面処理微粒子粉体を得た。
【0035】
(分散体製造例)
(1)酸化チタン系
親油化表面処理した微粒子酸化チタン40部とシクロペンタシロキサン(KF−995 信越化学工業社製)50部とPEG−10ジメチコン(KF−6017 信越化学工業社製)10部をディスパーにて攪拌混合後、バッチ式メディア分散機(RMB−04 アイメックス社製)を用いて2時間分散し、各親油化表面処理微粒子粉体の分散体を得た。
(2)酸化亜鉛系
親油化表面処理した微粒子酸化亜鉛粉体50部とシクロペンタシロキサン(KF−995 信越化学工業社製)45部とPEG−10ジメチコン(KF−6017 信越化学工業社製)5部をディスパーにて攪拌混合後、バッチ式メディア分散機(RMB−04 アイメックス社製)を用いて3時間分散し、各親油化表面処理微粒子粉体の分散体を得た。
【0036】
(試験・評価方法)
以下に実施例および比較例で製造した表面処理微粒子粉体及び分散体について評価した。試験方法を以下に示す。
【0037】
(1)親油化表面処理微粒子粉体の親油性評価
100ccビーカーにイオン交換水を80g入れ、表面処理微粒子粉体を約1g投入し、スパチラで50回攪拌して、水の濁り度合いを目視判定する。これを3回繰り返し、下記の評価基準で50回攪拌後の状態/100回攪拌後の状態/150回攪拌後の状態と表記した。
(評価基準)
5:粉はすべて水の表面に浮き、濁りなし
4:粉は水の表面に浮いているが、水が僅かに濁る
3:粉は水の表面に浮いているが、水がやや濁る
2:一部の粉は水の表面に浮いているが、大半は水中に移行する
1:粉はすべて水中に入る
【0038】
(2)化粧料で使用可能な油剤に対する分散性評価
作製した分散体をバーコータ#3にてTAC透明フィルムに塗布し、室温下3時間乾燥後、分光光度計(島津製作所製 UV−3150)にて560nm透過率を測定した。
【0039】
(3)使用感の評価
パネラー10名に作製した分散体を腕に塗布し、そのときの使用感を評価した。
(評価基準)
パネラーに、各分散体の使用感を(A)さらさら感が強い、(B)べた付き感が強い、のどちらかで回答してもらい、(A)回答の場合は+1、(B)回答の場合は−1として、10名の合計数をスコアーとした。
【0040】
【表1】

【0041】
親油性:本発明の表面処理時の温度が60℃以上で水の沸点未満のプロセ
スでは、少ない処理剤で親油性を付与させることができた。
分散性:本発明範囲のN−アシルアミノ酸あるいはその塩の処理剤量だと
分散性がよいが、処理量が多くなると分散性が悪くなった。
使用感:本発明品は、非常にさらさら感があり良好であったが、処理量を
多く使用した、また他の処理剤を使用した比較品は、べたつき感
があった。
以上の結果より、本発明品を化粧料に配合することにより、さらさらとした使用感、化粧効果に優れ、化粧持続性を向上させた紫外線遮蔽効果を付与した化粧料を提供できることが期待できる。
【0042】
製造例1:2層タイプW/Oサンスクリーンの製造
表2に示す組成の乳化物(2層タイプW/Oサンスクリーン)を製造した。評価は、紫外線遮蔽効果については、下記に示したin−vitroSPFを測定し、使用感及び洗浄性の評価試験は、パネラー10名に、作製した乳化物を腕に塗布しもらい、使用感触を評価し、また塗布5時間後に石鹸を用いて洗浄し、洗浄性について評価した。
(in−VitroSPF)
製造した乳化物をバーコータ#3にてTAC透明フィルムに塗布し、室温下3時間乾燥後、SPFアナライザー(オプトメトリック社製SPF−290)にてin―vitroSPF値を測定した。
(使用感の評価基準)
◎:8人以上がさらさら感があると回答
○:5人〜7人がさらさら感があると回答
△:2人〜4人がさらさら感があると回答
×:2人以下がさらさら感があると回答
(洗浄性の評価基準)
◎:洗浄性に非常に優れると回答
○:洗浄性に優れると回答
×:洗浄性に劣ると回答
【0043】
【表2】

【0044】
(製法)
成分(1)〜(12)の油相成分を混合し、成分(13)〜(16)を70℃で加熱溶解して均一化して、これを先に製造した油相成分に添加し、ホモミキサーにて乳化させ、35℃まで冷却して乳化物を得た。
【0045】
これらの結果よりわかるように、本発明品は、さらさらとした使用感、すなわちべとつき感がなく非常に塗布感触が良好であり、また使用後の洗浄性にも優れていることが分かる。
【0046】
製造例2:乳化型ファンデーションの製造
表3に示す組成のW/O型リキッドファンデーションを下記の方法により製造した。
【0047】
【表3】

【0048】
製法:
上記成分(7)〜(11)を予め混合し粉砕した。70℃にて成分(1)〜(6)を均一に溶解混合した油相に予め粉砕した成分(7)〜(11)の混合物を加えホモディスパーで均一に分散した。成分(12)〜(16)を70℃で均一に混合溶解した水相を前記油相に徐添し、ホモミキサーで均一分散後、冷却し成分(17)を加え乳化粒子を整えリキッドファンデーションを製造した。
【0049】
本発明の親油化表面処理微粒子粉体を配合した化粧料は、従来のものと比較して、さらさらとした使用感、洗浄性、化粧効果、化粧持続性に優れていた。
【0050】
製造例3:UVカットパウダーファンデーションの製造
表10に示す組成のパウダーファンデーションを下記の方法により製造した。
【0051】
【表4】

【0052】
(製法)
上記成分(1)〜(6)を混合し粉砕機を通して粉砕した。これを高速ブレンダーに移し、成分(7)〜(11)を加熱混合し均一にしたものを加えて更に混合し均一にした。これを粉砕機に通し、フルイをかけ粒度を揃えた後、アルミ皿に表面プレス圧3MPaで圧縮成形してUVカットパウダーファンデーションを製造した。
【0053】
本発明の親油化表面処理微粒子粉体を配合した化粧料のIn-vitro SPF値は18で、従来品は13であった。また、本発明の親油化表面処理微粒子粉体を配合した化粧料はさらさらとした使用感、洗浄性、化粧効果、化粧持続性も優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次粒子径が5nm〜150nmの微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛の無機粉体を、表面処理剤として、N−アシルアミノ酸又はその塩で、無機粉体100重量部に対して、0.5〜30.0重量部で、表面処理したさらさらとした使用感、洗浄性に優れた親油化表面処理微粒子粉体であって、N−アシルアミノ酸は炭素数12以上20以下である飽和脂肪酸とアスパラギン酸、グルタミン酸から選ばれるアミノ酸とのアシルアミノ酸化合物であり、該塩はFe、Zn、Ca、Mg、Al、Zr、Tiからなる群から選ばれる金属の塩であり、表面処理工程において、表面処理温度を60℃以上で水の沸点未満とし水中または含水状態で表面処理がされていることを特徴とする、さらさらとした使用感、洗浄性に優れた親油化表面処理微粒子粉体。
【請求項2】
前記無機粉体100重量部に対して、1.0〜12.0重量部のN−アシルアミノ酸又はその塩で表面処理をしたことを特徴とする、請求項1に記載の親油化表面処理微粒子粉体。
【請求項3】
前記表面処理工程において、表面処理温度を60℃以上で95℃以下の水中もしくは含水状態で行うことを特徴とする、請求項1乃至2のいずれかに記載の親油化表面処理微粒子粉体。
【請求項4】
前記表面処理工程において、予め60℃以上に加熱した前記N−アシルアミノ酸又はそのNaあるいはK塩を溶解した水溶液に対して、酸又はFe、Zn、Ca、Mg、Al、Zr、Tiからなる群から選ばれた金属の水可溶性塩の水溶液を添加・反応させることによって、表面処理剤である前記N−アシルアミノ酸又はその塩により表面処理をしていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の親油化表面処理微粒子粉体。
【請求項5】
前記酸または前記可溶性金属塩の添加量は、使用したN−アシルアミノ酸に含まれるカルボキシル基の当量の60〜120%とすることを特徴とする、請求項4に記載の親油化表面処理微粒子粉体。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の親油化表面処理微粒子粉体と分散媒として油剤とを少なくとも含有する分散体。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載の表面処理微粒子粉体と分散媒として油剤と界面活性剤とを少なくとも含有する分散体。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の表面処理微粒子粉体または表面処理微粒子粉体を含有する分散体を配合した化粧料。


【公開番号】特開2012−121835(P2012−121835A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273439(P2010−273439)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(391024700)三好化成株式会社 (17)
【Fターム(参考)】