説明

しごき型ポンプ及びその可撓性チューブの取り外し方法

【課題】取付凹部からの可撓性チューブの取り外し作業性を向上させることができるとともに、取り外し作業時に可撓性チューブやガイドピンの破損を防止することができるしごき型ポンプ及びその可撓性チューブの取り外し方法を提供する。
【解決手段】可撓性チューブDが取り付けられる取付凹部Rを具備したステータ6と、当該可撓性チューブDの上流側を挟持する挟持部材9が固定された揺動部材10と、取付凹部R内で回転駆動可能とされたロータと、取付凹部Rに取り付けられた可撓性チューブDを径方向に圧縮しつつ当該ロータの回転に伴い長手方向にしごくローラと、ロータから内周壁面に向かって突出形成されたガイドピンとを具備したしごき型血液ポンプにおいて、揺動部材10が可撓性チューブDの上流側を挟持しつつガイドピンより上方まで上昇動作可能とされたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液を体外循環させるための血液回路の一部を構成する可撓性チューブを径方向に圧縮しつつしごくことにより、当該血液回路内で血液を流動させるためのしごき型ポンプ及びその可撓性チューブの取り外し方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、透析治療においては、患者の血液を体外循環させるべく可撓性チューブから成る血液回路が使用されている。この血液回路は、患者から血液を採取する動脈側穿刺針が先端に取り付けられた動脈側血液回路と、患者に血液を戻す静脈側穿刺針が先端に取り付けられた静脈側血液回路とから主に成り、これら動脈側血液回路と静脈側血液回路との間にダイアライザを介在させ、体外循環する血液の浄化を行っている。
【0003】
動脈側血液回路の一部には、他より軟質且つ太径な可撓性チューブが接続されており、かかる部位が、透析装置に配設されたしごき型血液ポンプに取り付けられるよう構成されている。このしごき型血液ポンプは、通常、可撓性チューブを取付可能な取付凹部を有したステータと、取付凹部に取り付けられた可撓性チューブを固く挟持し得る挟持手段と、当該取付凹部内で回転駆動可能とされたロータと、該ローラに形成されて可撓性チューブを圧縮しつつしごくローラと、ロータから取付凹部の内周壁面に向かって突出形成されて取付凹部内の可撓性チューブを所定位置に保持するガイドピンとから主に構成されている。
【0004】
しごき型血液ポンプから可撓性チューブを取り外すには、従来、医療従事者等の作業者が手でロータを少しずつ回転させつつ可撓性チューブを取付凹部から取り外す必要があった。即ち、ロータから取付凹部の内周壁面に向かってガイドピンが突出形成されているため、可撓性チューブを取付凹部から取り外すとき、ガイドピンが干渉してしまうことから、ロータを少しずつ手で回転させ、ガイドピンとの干渉を避ける必要があったのである。尚、かかる先行技術は、文献公知発明に係るものでないため、記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のしごき型ポンプにおいては、手でロータを少しずつ回転させつつ取付凹部から可撓性チューブを取り外す必要があったので、取り外し作業が煩わしく手間がかかってしまうという問題があった。また、取り外し時、誤ってガイドピンにて可撓性チューブを噛み込んでしまうと、当該可撓性チューブやガイドピンが破損してしまう虞があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、取付凹部からの可撓性チューブの取り外し作業性を向上させることができるとともに、取り外し作業時に可撓性チューブやガイドピンの破損を防止することができるしごき型ポンプ及びその可撓性チューブの取り外し方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、血液等の流体を流動させ得る可撓性チューブが取り付けられる取付凹部を具備したステータと、前記取付凹部に前記可撓性チューブを取り付けた状態で、当該可撓性チューブの上流側及び下流側を挟持する挟持手段と、前記取付凹部内で回転駆動可能とされたロータと、該ロータに形成され、当該取付凹部に取り付けられた可撓性チューブを径方向に圧縮しつつ当該ロータの回転に伴い長手方向にしごくことにより、当該可撓性チューブ内で流体を流動させるためのローラと、前記ロータから前記取付凹部の内周壁面に向かって突出形成され、前記取付凹部内の可撓性チューブを所定位置に保持するガイドピンとを具備したしごき型ポンプにおいて、前記挟持手段は、少なくとも当該可撓性チューブの上流側を挟持しつつ前記ガイドピンより上方まで上昇動作可能とされ、当該上昇動作により前記取付凹部から可撓性チューブを取り外し可能とされたことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のしごき型ポンプにおいて、前記挟持手段は、挟持した可撓性チューブをその長手方向に引っ張りつつ上昇動作することを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載のしごき型ポンプにおいて、前記挟持手段は、可撓性チューブの上流側を挟持する上流部挟持溝と下流側を挟持する下流部挟持溝とを有するとともに当該下流部挟持溝側を軸として前記ステータに対して上下方向に揺動自在とされた揺動部材を有することを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項3記載のしごき型ポンプにおいて、前記揺動部材は、挟持した可撓性チューブを引っ張る方向に揺動可能とされたことを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1〜請求項4の何れか1つに記載のしごき型ポンプにおいて、前記挟持手段は、前記可撓性チューブの上流側を固定して長手方向の移動を規制するとともに、前記可撓性チューブの下流側の長手方向の移動を許容しつつ挟持することを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項1〜請求項5の何れか1つに記載のしごき型ポンプにおいて、前記ガイドピンの突端と内周壁面との間のクリアランスは、可撓性チューブが径方向に弾性変形した状態で挿通可能に設定されたことを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の発明は、請求項1〜請求項6の何れか1つに記載のしごき型ポンプにおいて、前記ロータの回転位置を検出する検出手段を具備するとともに、該検出手段の検出に基づき当該ロータを所定位置にて停止させることを特徴とする。
【0014】
請求項8記載の発明は、血液等の流体を流動させ得る可撓性チューブが取り付けられる取付凹部を具備したステータと、前記取付凹部内で回転駆動可能とされたロータと、該ロータに形成され、当該取付凹部に取り付けられた可撓性チューブを径方向に圧縮しつつ当該ロータの回転に伴い長手方向にしごくことにより、当該可撓性チューブ内で流体を流動させるためのローラと、前記ロータから前記取付凹部の内周壁面に向かって突出形成され、前記取付凹部内の可撓性チューブを所定位置に保持するガイドピンとを具備したしごき型ポンプの可撓性チューブ取り外し方法において、前記ロータを回転駆動させた状態で、少なくとも前記可撓性チューブの上流側を挟持しつつ前記ガイドピンより上方まで上昇させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1及び請求項8の発明によれば、挟持手段が、少なくとも可撓性チューブの上流側を挟持しつつガイドピンより上方まで上昇動作可能とされ、当該上昇動作により取付凹部から可撓性チューブを取り外し可能とされたので、ロータを回転駆動させれば自動的に取付凹部から可撓性チューブを取り外すことができる。従って、取付凹部に対する可撓性チューブの取り外し作業性を向上させることができるとともに、取り外し作業時に可撓性チューブやガイドピンの破損を防止することができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、挟持手段は、挟持した可撓性チューブをその長手方向に引っ張りつつ上昇動作するので、よりスムーズに取付凹部からの可撓性チューブの取り外し作業を行わせることができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、挟持手段が下流部挟持溝側を軸としてステータに対して上下方向に揺動自在とされた揺動部材を有するので、挟持された可撓性チューブの上流側が下流側よりも高い位置とされ、ロータの回転動作を有効的に利用しつつ取付凹部から可撓性チューブを取り外すことができる。
【0018】
請求項4の発明によれば、揺動部材が、挟持した可撓性チューブを引っ張る方向に揺動可能とされたので、当該揺動部材をステータに対して上向きに揺動させる過程で挟持した可撓性チューブをその長手方向に引っ張ることができる。従って、取付凹部に対する可撓性チューブの取り外し作業性をより向上させることができる。
【0019】
請求項5の発明によれば、挟持手段は、可撓性チューブの上流側を固定して長手方向の移動を規制するとともに、可撓性チューブの下流側の長手方向の移動を許容しつつ挟持するので、可撓性チューブの上流側を上昇動作させる際、下流側が長手方向に移動して過度な張力が付与されるのを回避することができる。また、取付凹部に可撓性チューブを取り回しした後、ロータを回転駆動させれば、噛み込みを回避しつつ自動的に可撓性チューブを取付凹部に取り付けることができる。
【0020】
請求項6の発明によれば、ガイドピンの突端と内周壁面との間のクリアランスは、可撓性チューブが径方向に弾性変形した状態で挿通可能に設定されているので、可撓性チューブの上流側を上昇動作させる際、可撓性チューブがガイドピンに噛み込まれてしまうのを回避することができる。また、取付凹部に可撓性チューブを取り回しした後、ロータを回転駆動させれば、噛み込みを回避しつつ自動的に可撓性チューブを取付凹部に取り付けることができる。
【0021】
請求項7の発明によれば、ロータの回転位置を検出する検出手段を具備するとともに、該検出手段の検出に基づき当該ロータを所定位置にて停止させるので、次に取付凹部に対して可撓性チューブを取り付ける際、取付が容易な所望位置とすることができ、取付作業性をより向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
第1の実施形態に係るしごき型ポンプは、血液を体外循環させるための血液回路の一部を構成する可撓性チューブを径方向に圧縮しつつしごくことにより、当該血液回路内で血液を流動させるしごき型血液ポンプから成る。以下、本しごき型血液ポンプが適用される血液透析装置(血液回路含む)について説明する。
【0023】
血液透析装置は、図1に示すように、ダイアライザ2が接続された血液回路1、及びダイアライザ2に透析液を供給しつつ除水する透析装置本体5から主に構成されている。血液回路1は、同図に示すように、可撓性チューブから成る動脈側血液回路1a及び静脈側血液回路1bから主に構成されており、これら動脈側血液回路1aと静脈側血液回路1bの間にダイアライザ2が接続されている。
【0024】
ダイアライザ2は、微小孔(ポア)が形成された複数の中空糸を筐体部に収容して成るものであり、その筐体部に、血液導入ポート2a、血液導出ポート2b、透析液導入ポート2c及び透析液導出ポート2dが形成されており、このうち血液導入ポート2aには動脈側血液回路1aの基端が、血液導出ポート2bには静脈側血液回路1bの基端がそれぞれ接続されている。また、透析液導入ポート2c及び透析液導出ポート2dは、透析装置本体6から延設された透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2とそれぞれ接続されている。
【0025】
動脈側血液回路1aには、その先端に動脈側穿刺針aが接続されているとともに、途中にしごき型血液ポンプ3が配設される一方、静脈側血液回路1bには、その先端に静脈側穿刺針bが接続されているとともに、途中に除泡用のドリップチャンバ4が接続されている。そして、動脈側穿刺針a及び静脈側穿刺針bを患者に穿刺した状態で、血液ポンプ3を駆動させると、患者の血液は、動脈側血液回路1aを通ってダイアライザ2に至り、該ダイアライザ2によって血液浄化が施された後、ドリップチャンバ4で除泡がなされつつ静脈側血液回路1bを通って患者の体内に戻る。即ち、患者の血液を血液回路1にて体外循環させつつダイアライザ2にて浄化するのである。
【0026】
一方、動脈側血液回路1aの一部には、図2に示すように、他より軟質且つ太径な可撓性チューブDが接続されており、かかる部位(可撓性チューブD)が、透析装置本体5に配設されたしごき型血液ポンプ3に取り付けられるよう構成されている。かかるしごき型血液ポンプ3は、図3及び図4に示すように、ステータ6と、ステータ6内で回転駆動可能なロータ7と、該ロータ7に形成されたローラ8と、上下一対のガイドピン15a、15bと、カバー14と、挟持手段としての挟持部材9及び揺動部材10とから主に構成されている。
【0027】
ステータ6は、可撓性チューブDが取り付けられる取付凹部Rが形成されたもので、当該取付凹部Rを形成する内周壁面6aに沿って可撓性チューブDが取り付けられるよう構成されている。取付凹部Rの略中央には、モータ(不図示)により回転軸L1を中心として回転駆動可能なロータ7が配設されている。かかるロータ7の側面(内周壁面6aと対向する面)には、一対のローラ8と、ガイドピン15a、15bとが配設されている。
【0028】
ローラ8は、ロータ7の外縁側に形成された回転軸L2を中心として回転可能とされたもので、取付凹部Rに取り付けられた可撓性チューブDを径方向に圧縮しつつ当該ロータ7の回転に伴い長手方向(血液の流動方向)にしごくことにより、血液回路1内で血液を流動させ得るものである。即ち、取付凹部R内に可撓性チューブDを取り付けてロータ7を回転駆動させると、ローラ8と内周壁面6aとの間で当該可撓性チューブDが圧縮されるとともに、ロータ7の回転駆動に伴ってその回転方向(長手方向)にしごき得るのである。かかるしごき作用により、血液回路1内の血液がロータ7の回転方向に流動することとなるので、当該血液回路1内で体外循環させることが可能とされている。
【0029】
ガイドピン15a、15bは、図8に示すように、ロータ7の上端側及び下端側から内周壁面6aに向かってそれぞれ突出形成されたピン状部材から成るものであり、これらの間に可撓性チューブDが保持されることとなる。即ち、ロータ7の駆動時、上下のガイドピン15a、15bにより可撓性チューブDを正規の位置に保持させるとともに、上側のガイドピン15aにより取付凹部Rから離脱しないようになっているのである。
【0030】
本実施形態においては、同図に示すように、上側のガイドピン15aの突端と内周壁面6aとの間のクリアランスt1が、下側のガイドピン15bの突端と内周壁面6aとの間のクリアランスt2より大きく設定されており、特にクリアランスt1は、取り付けられる可撓性チューブDが径方向に弾性変形した状態で挿通可能に設定されている。即ち、クリアランスt1に可撓性チューブDが至ると、従来であれば当該可撓性チューブDが噛み込まれてしまうのに対し、本実施形態によれば、径方向に弾性変形した状態で挿通可能な寸法とされているため、噛み込みが抑制されるのである。挿通可能な寸法t1は、可撓性チューブDがガイドピン15aにて径方向に圧縮され、且つ、弾性変形した状態で挿通し、取付凹部Rに対して上側又は下側に逃げ得るよう構成すれば足りる。
【0031】
尚、下側のガイドピン15bについては、可撓性チューブDの取り付け及び取り外しが行われない側(取付凹部Rの底面側)であるため、その突出寸法を考慮することはないが、例えばガイドピン15aと略同一の突出寸法としてもよい。また、ガイドピン15a、15bに代えて、弾力を持って屈曲自在な突出部材とすれば、ガイドピンの突出寸法をあまり考慮することなく、可撓性チューブDの取付凹部Rへの取付及び取り外し時における可撓性チューブDの噛み込みを防止することができる。
【0032】
揺動部材10は、可撓性チューブDの上流側(これを上流側取付部位D1とする)を挟持する上流部挟持溝9aと下流側(これを下流側取付部位D2とする)を挟持する下流部挟持溝9bとが形成された挟持板材9が固定されて成り、揺動軸Laを中心に上下方向(図6中a1方向)と挟持した可撓性チューブDを引っ張る方向(図5中a2方向)とに揺動自在とされたものである。
【0033】
即ち、ステータ6には、固定ベース11がボルトBにて固定されており、当該固定ベース11から突出させた揺動軸Laを中心として揺動部材10が揺動することにより挟持部材9も上下方向(a1方向)に揺動するよう構成されているのである。また、揺動軸Laには、スプリング12が介装されており、当該スプリング12の付勢力に抗して揺動部材10がa2方向に揺動することにより挟持部材9も同方向に揺動するよう構成されている。
【0034】
上流部挟持溝9aは、その溝幅が上流側挟持部位D1の外径より若干小さく形成されており、当該上流側挟持部位D1を固く挟持し得るよう構成されている一方、下流部挟持溝9bは、その溝幅が下流側挟持部位D2と略同一又は若干大きく形成されており、当該下流側挟持部位D2を緩く挟持し得るよう構成されている。これにより、可撓性チューブDの上流側を固定して長手方向の移動を規制するとともに、下流側の長手方向の移動を許容しつつ挟持することができる。
【0035】
また、固定ベース11には、揺動部材10に向かって突起部材13が配設されている。かかる突起部材13は、図示しないスプリング等の弾性部材により揺動部材10側に付勢されており、当該揺動部材10がa1方向に揺動して所定位置(図6の状態)に達すると、揺動部材10に形成された図示しない穴部と嵌合するよう構成されている。これにより、揺動部材10が所定位置で保持され、可撓性チューブDの取り外し作業をより容易に行い得るようになっている。
【0036】
そして、取付凹部Rからの可撓性チューブDの取り外し時、上流部挟持溝9a及び下流側挟持溝9bにて上流側取付部位D1及び下流側取付部位D2をそれぞれ挟持した状態で挟持部材9がa1方向に揺動することにより、少なくとも上流側取付部位D1をガイドピン15a(具体的には、可撓性チューブの取付凹部Rからの脱落を防止するための上側のガイドピン)より上方まで上昇動作し得るよう構成されている。しかして、ロータ7を回転駆動させておけば、自動的に取付凹部Rから可撓性チューブDを取り外すことができるので、可撓性チューブDの取り外し作業性を向上させることができるとともに、取り外し作業時に可撓性チューブDやガイドピン15aの破損を防止することができる。
【0037】
一方、挟持部材9をa1方向に揺動させつつa2方向にも揺動させれば、ステータ6に対して上向き(a1)に揺動させる過程で挟持した可撓性チューブDをその長手方向に引っ張ることができる。従って、取付凹部Rに対する可撓性チューブDの取り外し作業性をより向上させることができる。
【0038】
更に、図7に示すように、揺動部材10における突起部材13との当接部位には、傾斜面10aが形成されており、挟持部材9をa1方向に揺動させる過程で上流部挟持溝9a及び下流部挟持溝9bがステータ6から離間する如く当該挟持部材9及び揺動部材10を傾斜させ、上流側取付部位D1及び下流側取付部位D2を引っ張ることができる。これにより、揺動部材10のa2方向への揺動角度を抑えつつ可撓性チューブDの長手方向に対する引っ張り力を向上させることができる。
【0039】
カバー14は、ステータ6に開閉自在に取り付けられ、閉じた状態で取付凹部Rを覆うものであり、ロータ7の回転駆動時において取付凹部R内への異物等の侵入等を防止し得るものである。かかるカバー14には、図4に示すように、当該カバー14が閉じた状態で上流部挟持溝9a及び下流部挟持溝9bにて挟持された可撓性チューブD(具体的には、上流側取付部位D1及び下流側取付部位D2の近傍)を上方から押圧し得る押圧凸部14aが形成されている。尚、カバー14の揺動軸(即ち開閉方向を決定する軸)は、取付凹部Rへの可撓性チューブDの取付に支障がなければステータ6の何れの位置であってもよい。
【0040】
然るに、本しごき型血液ポンプ3には、ロータ7を回転駆動させるためのモータ(不図示)と、ロータ7の回転位置を検出するとともにモータと電気的に接続された検出手段としてのセンサ(不図示)が配設されており、該センサの検出に基づき当該ロータ6を所定位置にて停止させるよう構成されている。従って、センサの検出に基づきロータ6を所定位置にて停止させるので、次に取付凹部Rに対して可撓性チューブDを取り付ける際、取付が容易な所望位置(例えば、図3で示す如きローラ8が同図中上下に位置する状態)とすることができ、取付作業性をより向上させることができる。
【0041】
次に、上記しごき型血液ポンプにおける可撓性チューブDの取り外し作業について説明する。
血液透析治療後(血液回収がされた後)において、ロータ7の回転駆動を維持させておく(一旦停止させた後、再び回転駆動させるようにしてもよい)とともに、揺動部材10をa2方向(揺動部材10をステータ6から離間させる方向)へ揺動させつつa1方向(上方向)にも揺動させる。これにより、可撓性チューブDをその長手方向に引っ張って張力を付与しつつ上流側挟持部位D1及び下流側挟持部位D2を上方へ持ち上げることができる。
【0042】
そして、上流側挟持部位D1がガイドピン15aより上方まで上昇動作すると、取付凹部Rに取り付けられた可撓性チューブDがロータ7の回転駆動に伴い上流側から順次外れることとなる。即ち、本実施形態によれば、挟持部材9が下流部挟持溝9a側を軸(揺動軸La)としてステータ6に対して上下方向に揺動自在とされた揺動部材10に取り付けられているので、挟持された可撓性チューブDの上流側が下流側よりも高い位置とされ、ロータ7の回転動作を有効的に利用しつつ取付凹部Rから可撓性チューブDを取り外すことができる。
【0043】
また、可撓性チューブDの上流側が固定されて長手方向の移動が規制されるとともに、下流側の長手方向の移動を許容しつつ挟持しているので、可撓性チューブDの上流側(上流側挟持部位D1)を上昇動作させる際、下流側が長手方向に移動して過度な張力が付与されるのを回避することができる。即ち、取り外し時、可撓性チューブDに付与される張力は主に上流側に及ぼされ、取り外し作用をスムーズに行わせているのである。尚、かかる構成により、取付凹部Rに対する可撓性チューブDの取付時においても、取付凹部Rに可撓性チューブDを取り回しした後、ロータ7を回転駆動させれば、噛み込みを回避しつつ自動的に可撓性チューブDを取付凹部Rに取り付けることができる。
【0044】
上述の如く取付凹部Rから可撓性チューブDが取り外された後、上流部挟持溝9a及び下流部挟持溝9bにおける上流側挟持部位D1及び下流側挟持部位D2の挟持を解くことにより、しごき型血液ポンプ3から可撓性チューブDを取り外すことができる。尚、可撓性チューブDの取り外しが完了した後は、センサ14の検出に基づき所望位置にてロータ7が停止することとなる。
【0045】
本実施形態によれば、ガイドピン15aの突端と内周壁面6aとの間のクリアランスt1は、可撓性チューブDが径方向に弾性変形した状態で挿通可能に設定されているので、可撓性チューブDの上流側を上昇動作させる際、可撓性チューブDがガイドピン15aに噛み込まれてしまうのを回避することができる。尚、取付凹部Rに可撓性チューブDを取り回しした後、ロータ7を回転駆動させれば、噛み込みを回避しつつ自動的に可撓性チューブDを取付凹部Rに取り付けることができる。更に、ロータ7の回転位置を検出するセンサ(検出手段)を具備するとともに、該検出手段の検出に基づき当該ロータ7を所定位置にて停止させるので、取り外し作業が完了した後、次に取付凹部Rに対して可撓性チューブDを取り付ける際、取付が容易な所望位置とすることができ、取付作業性をより向上させることができる。
【0046】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
本実施形態に係るしごき型ポンプは、第1の実施形態と同様、血液を体外循環させるための血液回路の一部を構成する可撓性チューブを径方向に圧縮しつつしごくことにより、当該血液回路内で血液を流動させるしごき型血液ポンプに適用されたもので、図9〜図12に示すように、ステータ6と、ステータ6内で回転駆動可能なロータ7と、該ロータ7に形成されたローラ8と、上下一対のガイドピン15a、15bと、カバー14と、挟持手段としての揺動フレーム16とから主に構成されている。尚、先の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0047】
揺動フレーム16は、図9に示すように、ステータ7の側面(正面、右側面及び左側面)を囲みつつ左右一対の揺動軸Lbにて揺動可能とされるとともに、可撓性チューブDの上流側挟持部位D1及び下流側挟持部位D2をそれぞれ挟持し得る上流部挟持溝16a及び下流部挟持溝16b(図10参照)が形成されたものである。各揺動軸Lbにはねじりバネ17が介装されており、揺動フレーム16を上方に揺動させる方向に付勢している。また、揺動フレーム16の所定部位からは、ステータ7に形成された係合穴6bに挿通して係合し得るピン状の突起部材Pが突出形成されている。
【0048】
然るに、取付凹部Rに取り付けられた可撓性チューブDを取り外すには、揺動フレーム16を図9中右方向にスライドさせ、突起部材Pを係合穴6bから離間させて係合を解けば、ねじりバネ17の付勢力で揺動フレーム16が揺動軸Lbを中心として上方へ揺動することとなる(図11及び図12)。これにより、可撓性チューブDの上流側(上流側挟持部位D1)と共に下流側(下流側挟持部位D2)をガイドピン15aより上方へ上昇動作することができる。
【0049】
しかして、取り外し作業時、第1の実施形態と同様、ロータ7を回転駆動させておけば、その回転作用によって取付凹部R内の可撓性チューブDが上流側から下流側に順次自動的に外れることとなり、取付凹部Rに対する可撓性チューブDの取り外し作業性を向上させることができるとともに、取り外し作業時に可撓性チューブDやガイドピン15aの破損を防止することができる。
【0050】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
本実施形態に係るしごき型ポンプは、第1及び第2の実施形態と同様、血液を体外循環させるための血液回路の一部を構成する可撓性チューブを径方向に圧縮しつつしごくことにより、当該血液回路内で血液を流動させるしごき型血液ポンプに適用されたもので、図13及び図14に示すように、ステータ6と、ステータ6内で回転駆動可能なロータ7と、該ロータ7に形成されたローラ8と、上下一対のガイドピン15a、15bと、カバー14と、挟持手段としての揺動フレーム19とから主に構成されている。尚、先の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、ロータ7、ガイドピン15a、15b、カバー14等については、先の実施形態と同様なため図示を省略した。
【0051】
揺動フレーム19は、図13に示すように、ベース18に形成された一対の揺動軸Lcを中心に揺動自在とされるとともに、可撓性チューブDの上流側挟持部位D1及び下流側挟持部位D2をそれぞれ挟持し得る上流部挟持溝19a及び下流部挟持溝19bが形成されたものである。各揺動軸Lcにはねじりバネ21が介装されており、揺動フレーム19を上方に揺動させる方向(図13の矢印方向)に付勢している。
【0052】
また、揺動フレーム19の所定部位には、ピン状の突起部材22が突出形成されており、かかる突起部材22がストッパ部材20の切欠き20aに嵌合することにより当該揺動フレーム19が係止された状態とされている。このストッパ部材20は、揺動軸Ldを中心に揺動自在とされており、図14で示すように、切欠き20aが突起部材22と嵌合する位置(同図実線の嵌合状態)から退避位置(同図二点鎖線の退避状態)まで揺動し得るようになっている。
【0053】
然るに、取付凹部Rに取り付けられた可撓性チューブDを取り外すには、ストッパ部材20を揺動して嵌合状態から退避位置とすると、切欠き20aと突起部材22との嵌合が解かれるので、ねじりバネ21の付勢力で揺動フレーム10が揺動軸Lcを中心として上方(図14中矢印方向)に揺動することとなる。これにより、可撓性チューブDの上流側(上流側挟持部位D1)と共に下流側(下流側挟持部位D2)がガイドピン15aより上方へ上昇動作することとなる。
【0054】
しかして、第1及び第2の実施形態と同様、ロータ7を回転駆動させておけば、その回転作用によって取付凹部R内の可撓性チューブDが上流側から下流側に順次自動的に外れることとなり、取付凹部Rに対する可撓性チューブDの取り外し作業性を向上させることができるとともに、取り外し作業時に可撓性チューブDやガイドピン15aの破損を防止することができる。
【0055】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されず、例えば可撓性チューブDを挟持する挟持手段において、上流側取付部位D1を挟持する部位と下流側取付部位D2を挟持する部位とを別個形成するようにし、可撓性チューブDの取り外し時、少なくとも上流側がガイドピンより上方へ上昇動作するよう構成してもよい。また、本実施形態(特に第1の実施形態)においては、上流側の可撓性チューブをガイドピンより上方へ上昇動作させる際、挟持した可撓性チューブDを引っ張っているが、少なくとも取付凹部内の可撓性チューブが弛まなければ引っ張り動作を行わない構成としてもよい。
【0056】
更に、本実施形態においては、挟持手段が、可撓性チューブDの上流側を固定して長手方向の移動を規制するとともに、下流側の長手方向の移動を許容しつつ挟持するよう構成されているが、上流側及び下流側の両者を固く挟持して可撓性チューブの長手方向の移動を規制するものとしてもよい。尚、本実施形態においては、センサにてモータの回転位置を検出し、ロータ7を所定位置に停止させるようにしているが、かかるセンサを具備せず、ロータ7の停止位置が一定でないものにも適用することができる。更に、本実施形態においては、血液透析治療を行う透析装置に適用されているが、患者の血液を体外させ得るための血液回路におけるしごき型ポンプを具備したものであれば、他の治療のものにも適用することができる。また更に、本実施形態においては、血液回路内において血液を流動させ得る血液ポンプに適用されているが、他のしごき型ポンプ(例えば補液を流動させ得る補液ポンプや患者に定量の薬剤等を注入するための輸液ポンプ等)に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
少なくとも可撓性チューブの上流側を挟持しつつガイドピンより上方まで上昇動作可能とされ、当該上昇動作により取付凹部から可撓性チューブを取り外し可能とされたしごき型ポンプ及びその可撓性チューブの取り外し方法であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明のしごき型ポンプが適用される透析装置を示す模式図
【図2】同しごき型ポンプに取り付けられる血液回路の可撓性チューブを示す拡大模式図
【図3】本発明の第1の実施形態に係るしごき型ポンプを示す平面図
【図4】同しごき型ポンプを示す正面図
【図5】同しごき型ポンプを示す平面図であって挟持手段のa2方向への揺動動作を示す模式図
【図6】同しごき型ポンプを示す正面図であって挟持手段のa1方向への揺動動作を示す模式図
【図7】図5におけるVII矢視図
【図8】同しごき型ポンプにおけるロータと、該ロータに形成されたローラ及びガイドピンを示す断面模式図
【図9】本発明の第2の実施形態に係るしごき型ポンプを示す平面図
【図10】同しごき型ポンプを示す正面図
【図11】同しごき型ポンプを示す正面図であってカバー及び挟持手段を揺動させた状態を示す模式図
【図12】同しごき型ポンプを示す右側面図であってカバー及び挟持手段を揺動させた状態を示す模式図
【図13】本発明の第3の実施形態に係るしごき型ポンプを示す平面図
【図14】同しごき型ポンプを示す側面図
【符号の説明】
【0059】
1 血液回路
1a 動脈側血液回路
1b 静脈側血液回路
2 ダイアライザ
3 血液ポンプ
4 ドリップチャンバ
5 透析装置本体
6 ステータ
7 ロータ
8 ローラ
9 挟持部材(挟持手段)
9a 上流部挟持溝
9b 下流部挟持溝
10 揺動部材(挟持手段)
11 固定ベース
12 スプリング
13 突起部材
14 カバー
15a、15b ガイドピン
16 揺動フレーム(挟持手段)
16a 上流部挟持溝
16b 下流部挟持溝
17 ねじりバネ
18 ベース
19 揺動フレーム(挟持手段)
19a 上流部挟持溝
19b 下流部挟持溝
20 ストッパ
21 ねじりバネ
22 突起部材
R 取付凹部
D 可撓性チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液等の流体を流動させ得る可撓性チューブが取り付けられる取付凹部を具備したステータと、
前記取付凹部に前記可撓性チューブを取り付けた状態で、当該可撓性チューブの上流側及び下流側を挟持する挟持手段と、
前記取付凹部内で回転駆動可能とされたロータと、
該ロータに形成され、当該取付凹部に取り付けられた可撓性チューブを径方向に圧縮しつつ当該ロータの回転に伴い長手方向にしごくことにより、当該可撓性チューブ内で流体を流動させるためのローラと、
前記ロータから前記取付凹部の内周壁面に向かって突出形成され、前記取付凹部内の可撓性チューブを所定位置に保持するガイドピンと、
を具備したしごき型ポンプにおいて、
前記挟持手段は、少なくとも当該可撓性チューブの上流側を挟持しつつ前記ガイドピンより上方まで上昇動作可能とされ、当該上昇動作により前記取付凹部から可撓性チューブを取り外し可能とされたことを特徴とするしごき型ポンプ。
【請求項2】
前記挟持手段は、挟持した可撓性チューブをその長手方向に引っ張りつつ上昇動作することを特徴とする請求項1記載のしごき型ポンプ。
【請求項3】
前記挟持手段は、可撓性チューブの上流側を挟持する上流部挟持溝と下流側を挟持する下流部挟持溝とを有するとともに当該下流部挟持溝側を軸として前記ステータに対して上下方向に揺動自在とされた揺動部材を有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のしごき型ポンプ。
【請求項4】
前記揺動部材は、挟持した可撓性チューブを引っ張る方向に揺動可能とされたことを特徴とする請求項3記載のしごき型ポンプ。
【請求項5】
前記挟持手段は、前記可撓性チューブの上流側を固定して長手方向の移動を規制するとともに、前記可撓性チューブの下流側の長手方向の移動を許容しつつ挟持することを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1つに記載のしごき型ポンプ。
【請求項6】
前記ガイドピンの突端と内周壁面との間のクリアランスは、可撓性チューブが径方向に弾性変形した状態で挿通可能に設定されたことを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1つに記載のしごき型ポンプ。
【請求項7】
前記ロータの回転位置を検出する検出手段を具備するとともに、該検出手段の検出に基づき当該ロータを所定位置にて停止させることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか1つに記載のしごき型ポンプ。
【請求項8】
血液等の流体を流動させ得る可撓性チューブが取り付けられる取付凹部を具備したステータと、
前記取付凹部内で回転駆動可能とされたロータと、
該ロータに形成され、当該取付凹部に取り付けられた可撓性チューブを径方向に圧縮しつつ当該ロータの回転に伴い長手方向にしごくことにより、当該可撓性チューブ内で流体を流動させるためのローラと、
前記ロータから前記取付凹部の内周壁面に向かって突出形成され、前記取付凹部内の可撓性チューブを所定位置に保持するガイドピンと、
を具備したしごき型ポンプの可撓性チューブ取り外し方法において、
前記ロータを回転駆動させた状態で、少なくとも前記可撓性チューブの上流側を挟持しつつ前記ガイドピンより上方まで上昇させることを特徴とするしごき型ポンプの可撓性チューブ取り外し方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−425(P2008−425A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−173727(P2006−173727)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(000226242)日機装株式会社 (383)
【Fターム(参考)】