説明

し渣脱水機における搬送管の構造

【課題】簡単な構造であって、し渣の性状に合わせて搬送管の屈曲部の曲げ角度を容易に設定できるし渣脱水機における搬送管の構造を提供する。
【解決手段】し渣を搬送する搬送管4が設けられ、該搬送管4にはし渣に抵抗を付与するための屈曲部7が形成されたし渣脱水機1において、屈曲部7の搬送方向断面形状を一定に維持しつつ屈曲部7の曲げ角度θを可変とする角度可変手段11としての可撓管13と、角度可変手段11により角度設定された屈曲部7を位置決めする位置決め手段12としてのターンバックル14とを備えた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理施設等で使用されるし渣脱水機に関する。
【背景技術】
【0002】
し渣脱水機の従来技術として特許文献1、2に記載のものが挙げられる。同文献には、し渣を搬送管により搬送しながら脱水処理し、特に屈曲部(特許文献1に記載の屈曲管5、特許文献2に記載の背圧管エルボ7、エルボ19)によってし渣に背圧をかけて圧搾する技術が記載されている。
【0003】
屈曲部の曲げ角度はし渣の圧搾の度合いに影響し、また、し渣の性状は各地域の下水毎に異なることが多いため、前記曲げ角度は各地域のし渣の性状に合わせてそれぞれ好適な値に設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−181400号公報
【特許文献2】特開2004−216288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記屈曲部の曲げ角度を設定する段取りとしては、現場でし渣を試験的に流し、幾通りかの曲げ角度を試してそれぞれし渣の脱水具合や固形化具合を調べ、その中から最適な曲げ角度を決定するという方法が一般的である。そして、通常、屈曲部も含め搬送管としては鋼管が使用されることから、前記方法によれば、最適な曲げ角度を決定するにあたり曲げ角度の異なる複数の鋼管を用意する必要があり、鋼管の曲げ加工等の作業回数が増えるのは勿論のこと、各試験毎に屈曲部の鋼管の付け替え作業を要するために手間と労力がかかるという問題がある。
【0006】
なお、特許文献1には、シリンダを駆動源とする可動式の背圧板を屈曲部の外側部に設け、し渣の性状の変化に応じて背圧板の位置を調節することで一定の脱水機能を得る技術が記載されており、背圧板をせり上げれば屈曲部の一部の曲げ角度が変わるために、し渣の圧搾の度合いも変わるものと考えられる。しかしながら、この技術はシリンダやその駆動伝達機構等を要するために高価な構造となりやすい。また、背圧板のせり上がりによって搬送管の搬送方向断面形状はその部分だけが小さく変化することとなり、し渣の所定の圧搾機能を設定するにあたり、曲げ角度の他に搬送路の断面形状の変化という別の因子が増えることは望ましいことではない。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するために創作されたものであり、簡単な構造であって、し渣の性状に合わせて搬送管の屈曲部の曲げ角度を容易に設定できるし渣脱水機における搬送管の構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するため、し渣を搬送する搬送管が設けられ、該搬送管にはし渣に抵抗を付与するための屈曲部が形成されたし渣脱水機において、前記屈曲部の搬送方向断面形状を一定に維持しつつ該屈曲部の曲げ角度を可変とする角度可変手段と、該角度可変手段により角度設定された屈曲部を位置決めする位置決め手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、角度可変手段および位置決め手段を備えることにより、し渣の性状に合わせて搬送管の屈曲部の曲げ角度を容易に設定できる。屈曲部の搬送方向断面形状は曲げ角度の値に拘わらず一定となるため、し渣の圧搾の度合いに関わる因子として曲げ角度のみを考慮すればよく、圧搾作用の解析も容易となる。
【0010】
また、本発明は、前記角度可変手段は、前記屈曲部を構成する可撓管からなることを特徴とする。
【0011】
角度可変手段として屈曲部を可撓管から構成することにより、構造が簡単となって組み付け性に優れた搬送管となる。
【0012】
また、本発明は、前記角度可変手段は、前記屈曲部周りに設けられるボールジョイント管からなることを特徴とする。
【0013】
角度可変手段として屈曲部周りにボールジョイント管を設ける構成とすることにより、構造が簡単となって組み付け性に優れた搬送管となる。
【0014】
また、本発明は、前記位置決め手段は、前記搬送管に取り付けられるターンバックルからなることを特徴とする。
【0015】
当該構成によれば、ターンバックルの胴部を回転させると、ターンバックルのロッドの変位により角度可変手段が作動して屈曲部の曲げ角度が変わり、所定の曲げ角度に角度設定された屈曲部はそのままターンバックルによって位置決めされる。これにより、屈曲部に関する簡単な位置決め構造が実現される。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る搬送管の構造によれば、し渣の性状に合わせて搬送管の屈曲部の曲げ角度を容易に設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施例に係る搬送管の構造を示す側面図である。
【図2】本発明の第1実施例に係る搬送管の構造の作用図である。
【図3】本発明の第2実施例に係る搬送管の構造の作用図である。
【図4】搬送管の形状およびレイアウトの変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1において、本発明に係るし渣脱水機1は、上部開口からし渣が投入されるし渣処理槽2と、し渣処理槽2内に水平状に設けられるスクリュコンベア3と、スクリュコンベア3の先端側に臨むようにし渣処理槽2に取り付けられる搬送管4とを備える。スクリュコンベア3の基端はし渣処理槽2の外部に延設されて回転駆動源であるモータ5に連結しており、し渣はスクリュコンベア3の回転力を受けてし渣処理槽2内で圧搾(一次圧搾)を受け、スクリュコンベア3の並進作用によって搬送管4に送られた後は搬送管4内で圧搾(二次圧搾)を受ける。図示はしないが、し渣処理槽2の上部には適宜に散水管等が設けられ、し渣処理槽2内のし渣の洗浄が行われる。
【0019】
搬送管4は、スクリュコンベア3と同軸状となるようにし渣処理槽2と連通する第1直線部6と、第1直線部6の下流端に形成される屈曲部7と、屈曲部7の下流端から斜め上方に延設される第2直線部8とから構成されており、これらは互いにフランジ部でのボルトおよびナットの結合により連結される。第1直線部6、第2直線部8は例えば通常の鋼管から構成される。し渣は搬送管4の内面との間で生じる摩擦抵抗により圧搾され、特に摩擦抵抗が大きくなる屈曲部7において大きな圧搾作用が生じ、脱水して固形化したし渣は第2直線部8の下流側の排出口から搬送車9等に排出される。
【0020】
第1直線部6の下端には複数の小孔からなる水抜き部10が設けられ、搬送中のし渣から搾り出される水分はこの水抜き部10から排水される。屈曲部7内や第2直線部8内で搾り出された水分も管内面を伝わって水抜き部10から排水される。
【0021】
本発明は、搬送管4に、屈曲部7の搬送方向断面形状を一定に維持しつつ屈曲部7の曲げ角度θを可変とする角度可変手段11と、この角度可変手段11により角度設定された屈曲部7を位置決めする位置決め手段12とを備えたことを主な特徴とする。曲げ角度θとは、屈曲部7の曲げ起端におけるし渣の搬送方向と曲げ終端におけるし渣の搬送方向との交差角度であり、図1の場合は第1直線部6の軸線と第2直線部8の軸線との交差角度となる。
【0022】
「第1実施例」
本実施例は、角度可変手段11として、屈曲部7を可撓管13から構成した例である。可撓管13としては、図1に示すように外側に鋼線をスパイラル状に巻いたスパイラルチューブやベローズチューブ等、公知の可撓管を使用できる。
【0023】
位置決め手段12は、屈曲部7よりも下流側の搬送管4、つまり第2直線部8にその一端が取り付けられるターンバックル14からなる。ターンバックル14の他端は所定の固定物に取り付けられる。図1では、ターンバックル14を第1直線部6、第2直線部8の各上部に固設したブラケット15間に掛け渡した場合を示している。ターンバックル14の他端は例えばし渣処理槽2に取り付けてもよい。
【0024】
この第1実施例によれば、図2に示すようにターンバックル14の胴部を回転させると、ターンバックル14のロッドの変位を受けて可撓管13の曲げ角度θが変わり、角度設定された可撓管13はそのままターンバックル14によって位置決めされる。したがって、この第1実施例によれば、構造が簡単であって、し渣の性状に合わせて可撓管13の曲げ角度θを容易に設定可能な搬送管4の構造となる。
【0025】
また、可撓管13の搬送方向断面形状は曲げ角度θの値に拘わらず常に一定である。したがって、可撓管13におけるし渣の圧搾の度合いに関わる因子として曲げ角度θのみを考慮すればよく、圧搾作用の解析も容易となる。
【0026】
「第2実施例」
本実施例は、図3に示すように、角度可変手段11を、屈曲部7周りに設けられるボールジョイント管(ユニバーサルジョイント管)16とした例であり、第1直線部6と屈曲部7との間に介設している。ボールジョイント管16としては、インナ管16Aとアウタ管16Bとが球面で重なり合って互いに3次元に相対移動可能な公知のボールジョイント管を使用できる。屈曲部7は、例えば所定の曲率半径を有した曲げ鋼管等から構成されている。
【0027】
位置決め手段12は、第1実施例と同様、屈曲部7よりも下流側の搬送管4、つまり第2直線部8にその一端が取り付けられるターンバックル14からなる。ターンバックル14の他端は所定の固定物に取り付けられ、図3では、ターンバックル14を第1直線部6、第2直線部8の各上部に固設したブラケット15間に掛け渡した場合を示している。ターンバックル14の他端はし渣処理槽2に取り付けてもよいし、アウタ管16Bに取り付けてもよい。
【0028】
この第2実施例によれば、図3に示すようにターンバックル14の胴部を回転させると、ターンバックル14のロッドの変位を受けることによりボールジョイント管16が作動して屈曲部7(厳密にはインナ管16Aを含めた屈曲エリア)の曲げ角度θが変わり、角度設定された屈曲部7はそのままターンバックル14によって位置決めされる。したがって、この第2実施例によれば、構造が簡単であって、し渣の性状に合わせて屈曲部7の曲げ角度θを容易に設定可能な搬送管4の構造となる。なお、この第2実施例においても曲げ角度θとは、第1直線部6の軸線と第2直線部8の軸線との交差角度である。
【0029】
また、屈曲部7の搬送方向断面形状は曲げ角度θの値に拘わらず常に一定である。したがって、屈曲部7におけるし渣の圧搾の度合いに関わる因子として曲げ角度θのみを考慮すればよく、圧搾作用の解析も容易となる。
【0030】
以上、本発明の好適な実施形態を説明した。本発明は、屈曲部7の搬送方向断面形状を一定に維持しつつ屈曲部7の曲げ角度θを可変とする角度可変手段11と、角度可変手段11により角度設定された屈曲部7を位置決めする位置決め手段12とを備えたものであれば、搬送管4の形状やレイアウトについて特に限定されるものではない。
【0031】
例えば、図4は、搬送管4を1つの可撓管13から構成した例を示しており、可撓管13の一端がし渣処理槽2に水平状に連結され、可撓管13の中程は屈曲部7として下方に概ね90度程度曲がって他端の排出口が搬送車9に臨むレイアウトとなっている。ターンバックル14は例えば可撓管13の排出口周りに一対取り付けられ、一方のターンバックル14はし渣処理槽2に掛け渡され、他方のターンバックル14は下水処理施設の構造壁等に掛け渡される。
【0032】
この図4に示す搬送管4の構造においても、ターンバックル14の胴部を回転させることで可撓管13の他端が仮想線で示すように変位し、屈曲部7の曲げ角度θを所望の値に容易に設定できる。
【0033】
また、し渣処理槽2の内部に設けられ、搬送管4にし渣を送る機能を有した一次圧搾手段として図1等ではスクリュコンベア3を示したが、これに限定されず、例えば特許文献1に示されるように油圧シリンダ等でもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 し渣脱水機
2 し渣処理槽
4 搬送管
7 屈曲部
11 角度可変手段
12 位置決め手段
13 可撓管
14 ターンバックル
16 ボールジョイント管
θ 曲げ角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
し渣を搬送する搬送管が設けられ、該搬送管にはし渣に抵抗を付与するための屈曲部が形成されたし渣脱水機において、
前記屈曲部の搬送方向断面形状を一定に維持しつつ該屈曲部の曲げ角度を可変とする角度可変手段と、
該角度可変手段により角度設定された屈曲部を位置決めする位置決め手段と、
を備えることを特徴とするし渣脱水機における搬送管の構造。
【請求項2】
前記角度可変手段は、前記屈曲部を構成する可撓管からなることを特徴とする請求項1に記載のし渣脱水機における搬送管の構造。
【請求項3】
前記角度可変手段は、前記屈曲部周りに設けられるボールジョイント管からなることを特徴とする請求項1に記載のし渣脱水機における搬送管の構造。
【請求項4】
前記位置決め手段は、前記搬送管に取り付けられるターンバックルからなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のし渣脱水機における搬送管の構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−546(P2011−546A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146128(P2009−146128)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(390014074)前澤工業株式会社 (134)
【Fターム(参考)】