すべり軸受
【課題】 すべり軸受の摺動面に異物が混入することを防止するため、この異物の排出を効果的に行うことができるすべり軸受を提供する。
【解決手段】 すべり軸受1には、油溝4を形成した上半割軸受2に対してクランク軸10の相対回転方向の前方側にあたる組合せ面5aにおいて、下半割軸受3の周方向端面3b内に異物捕捉空間7及び軸線方向溝6が形成されているため、上半割軸受2における油溝4の溝底面を転動しながらクランク軸10の相対回転方向の前方側にあたる周方向端部に到達した異物が、その周方向端部の溝底面と連通する異物捕捉空間7に捕捉されやすく、この異物捕捉空間7に捕捉された異物を、異物捕捉空間7と連通する軸線方向溝6を介して下半割軸受3の幅方向端面3c側にスムーズに排出することができる。
【解決手段】 すべり軸受1には、油溝4を形成した上半割軸受2に対してクランク軸10の相対回転方向の前方側にあたる組合せ面5aにおいて、下半割軸受3の周方向端面3b内に異物捕捉空間7及び軸線方向溝6が形成されているため、上半割軸受2における油溝4の溝底面を転動しながらクランク軸10の相対回転方向の前方側にあたる周方向端部に到達した異物が、その周方向端部の溝底面と連通する異物捕捉空間7に捕捉されやすく、この異物捕捉空間7に捕捉された異物を、異物捕捉空間7と連通する軸線方向溝6を介して下半割軸受3の幅方向端面3c側にスムーズに排出することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のクランク軸を支持するように一対の半割軸受を組み合わせて円筒形となり、前記一対の半割軸受のうち、少なくとも内周面に周方向に沿った油溝が形成された第1の半割軸受に対して前記クランク軸の相対回転方向の前方側にあたる周方向端面に前記油溝が開口するように形成されたすべり軸受に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関のクランク軸用すべり軸受は、一対の半割軸受を組み合わせて円筒形にしたものを使用している。一対の半割軸受のうちの少なくとも一方の半割軸受の内周面の半割軸受の幅方向中央には、円周方向に沿った油溝が形成されることにより、この油溝を経てすべり軸受の摺動面に対する給油が行なわれていた(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、すべり軸受に供給される潤滑油中に混入する異物がすべり軸受の摺動面へ混入することを防止するため、軸受内周面の油溝と連通するように軸受内周面の周方向端部にリリーフ部を形成し、そのリリーフ部とクランク軸との隙間を異物排出路とするすべり軸受が提案されている(例えば、特許文献2)。
【0004】
特許文献2に開示される技術においては、図14(A),(B)に示すように、内燃機関のクランク軸用すべり軸受21への潤滑油の供給が、まず、クランク軸用すべり軸受21の外部から上半割軸受22に形成される供給穴22aを介して内周面に形成された油溝24内に供給され、その潤滑油がクランク軸用すべり軸受21の摺動面及びクランクピン用すべり軸受(図示しない)の摺動面に供給される。この場合、内燃機関の最初の運転時には、上半割軸受22の油溝24に供給される潤滑油に対して潤滑油路内に残留した異物が混入する場合が多いことが知られている。この異物は、潤滑油路の切削加工時の金属加工屑や鋳造時の鋳砂などであり、クランク軸20の回転による潤滑油の流れに付随し、油溝24内をクランク軸20の相対回転方向の前方側へ流れるが、半割軸受22,23の組合せ面25付近に到達すると、油溝24を形成しない下半割軸受23の周方向端面が障壁となる影響により潤滑油とともに内周面側に浮上する(図15(A)参照)。そこで、従来のクランク軸用すべり軸受21では、半割軸受22,23の内周面の周方向端部にクラッシュリリーフや面取等の隙間26を形成することにより、この隙間26から半割軸受22,23の幅方向端部へ潤滑油と一緒に異物を排出させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−277831号公報
【特許文献2】特開2005−69283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年の内燃機関はクランク軸の高回転化により、潤滑油より比重の大きい異物の周方向へ直進しようとする慣性力が大きくなっている。図15(B)には、このような比重の大きい異物のすべり軸受21における排出メカニズムを説明するための拡大図を示す。クランク軸20を高回転化させた場合、図15(B)の矢印Aに示すように、上半割軸受22における油溝24の溝底面を転動してきた異物が油溝24の端部に到達しても、この周方向端部に形成された隙間26から排出されず、油溝24を形成していない側の下半割軸受23の摺動面に混入しやすくなっていた。また、図15(B)の矢印Bに示すように、クランク軸20の回転による潤滑油の周方向への流れにより、油溝24の端部に到達した異物がクラッシュリリーフや面取等により形成される隙間26に入ったとしても、再び隙間26から押し出されて下半割軸受23の摺動面に混入するものも多かった。すなわち、油溝24の溝底面を転動してきた異物が油溝24の端部に到達しても、図15(B)の矢印Cに示すように、その全ての異物が半割軸受22,23の幅方向端部に排出されることはなく、図15(B)の矢印A,Bに示すように、油溝24が形成されない下半割軸受23の摺動面(内周面)に混入する場合も多かった。
【0007】
本発明は、上記した事情に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、すべり軸受の摺動面に異物が混入することを防止するため、この異物の排出を効果的に行うことができるすべり軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、請求項1に係る発明においては、内燃機関のクランク軸を支持するように一対の半割軸受を組み合わせて円筒形となり、前記一対の半割軸受のうち、少なくとも内周面に周方向に沿った油溝が形成された第1の半割軸受に対して前記クランク軸の相対回転方向の前方側にあたる周方向端面に前記油溝が開口するように形成されたすべり軸受において、前記一対の半割軸受の組合せ面のうち、前記第1の半割軸受に対して前記クランク軸の相対回転方向の前方側にあたる組合せ面において、前記油溝が形成されない第2の半割軸受の周方向端面には、前記油溝内を流れる異物を捕捉可能な異物捕捉空間が、前記一対の半割軸受の内周面には開口することなく、前記油溝の開口の少なくとも溝底面側の幅方向の両端部と連通するように形成され、前記第1の半割軸受および/または前記第2の半割軸受の周方向端面には、前記周方向に直交する軸線方向に沿った軸線方向溝が、前記一対の半割軸受の内周面には開口することなく、前記一対の半割軸受の幅方向端面に開口すると共に、前記異物捕捉空間と連通するように形成されることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明においては、請求項1記載のすべり軸受において、前記第2の半割軸受の周方向端面には、前記油溝の開口の溝底面側の幅方向の両端部と各々連通する前記異物捕捉空間が2個形成されることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明においては、請求項1又は請求項2に記載のすべり軸受において、前記異物捕捉空間は、前記油溝の開口の溝底面よりも前記第2の半割軸受の外周面側に向かって空間が広がるように形成されることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明においては、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のすべり軸受において、前記第1の半割軸受に対して前記クランク軸の相対回転方向の前方側にあたる周方向端面に近い領域において、前記油溝は、幅方向の中央部側に対して幅方向の両端部の溝深さが深く形成されることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明においては、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のすべり軸受において、前記軸線方向溝は、前記第1の半割軸受および/または前記第2の半割軸受の周方向端面の外周面側に沿って形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明においては、一対の半割軸受の組合せ面のうち、第1の半割軸受に対してクランク軸の相対回転方向の前方側にあたる組合せ面において、油溝が形成されない第2の半割軸受の周方向端面には、油溝内を流れる異物を捕捉可能な異物捕捉空間が、一対の半割軸受の内周面には開口することなく、油溝の開口の少なくとも溝底面側の幅方向の両端部と連通するように形成され、第1の半割軸受および/または第2の半割軸受の周方向端面には、周方向に直交する軸線方向に沿った軸線方向溝が、一対の半割軸受の内周面には開口することなく、一対の半割軸受の幅方向端面に開口すると共に、異物捕捉空間と連通するように形成されることにより、クランク軸の相対回転方向の前方側にあたる周方向端部に到達した異物が、その周方向端部の溝底面の幅方向の両端部と連通する異物捕捉空間に捕捉されやすく、この異物捕捉空間に捕捉された異物を、異物捕捉空間と連通する軸線方向溝を介して半割軸受の幅方向端面側にスムーズに排出することができる。
【0014】
請求項2に係る発明においては、第2の半割軸受の周方向端面には、油溝の開口の溝底面側の幅方向の両端部と各々連通する異物捕捉空間が2個形成されることにより、各々の異物捕捉空間に捕捉された異物を、その異物捕捉空間と連通する軸線方向溝を介して半割軸受の幅方向端面側にさらにスムーズに排出することができる。
【0015】
請求項3に係る発明においては、異物捕捉空間は、油溝の開口の溝底面よりも第2の半割軸受の外周面側に向かって空間が広がるように形成されることにより、異物捕捉空間が、異物に対する周方向への慣性力、及びすべり軸受の半径方向への遠心力の作用方向に空間が広がっており、異物が異物捕捉空間に捕捉されやすくなる。
【0016】
請求項4に係る発明においては、第1の半割軸受に対してクランク軸の相対回転方向の前方側にあたる周方向端面に近い領域において、油溝は、幅方向の中央部側に対して幅方向の両端部の溝深さが深く形成されることにより、油溝内に進入した異物が、油溝の溝底面の幅方向の両端部から逸脱しがたくなり、異物が異物捕捉空間に捕捉されやすくなる。
【0017】
請求項5に係る発明においては、軸線方向溝は、第1の半割軸受および/または第2の半割軸受の周方向端面の外周面側に沿って形成されることにより、内燃機関の仕様により半割軸受の肉厚(壁厚)が薄く設定される場合でも、下半割軸受の周方向端面内に異物捕捉空間を形成するスペースを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】クランク軸を支持する2つの上半割軸受と下半割軸受からなるすべり軸受の側面図である。
【図2】上半割軸受の平面図である。
【図3】下半割軸受の平面図である。
【図4】図3のA−Aにおける異物捕捉空間の断面図である。
【図5】上半割軸受の周方向端面に開口した油溝の横断面図である。
【図6】軸線方向溝の断面図である。
【図7】第2実施形態に係る下半割軸受の平面図である。
【図8】第2実施形態に係るすべり軸受における異物の排出メカニズムを説明するための拡大図である。
【図9】第3実施形態に係る上半割軸受の平面図である。
【図10】第3実施形態に係る上半割軸受2の周方向端面に開口した油溝の横断面図である。
【図11】第3実施形態に係る上半割軸受における油溝の幅方向の両端部の溝深さを深く形成する範囲を説明するための上半割軸受の側面図である。
【図12】第4実施形態に係るすべり軸受1の側面図である。
【図13】第4実施形態に係る下半割軸受3の平面図である。
【図14】従来例を示す図1相当図である。
【図15】従来のすべり軸受における異物の排出メカニズムを説明するための拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図1乃至図6を参照して説明する。図1は、クランク軸10を支持する2つの上半割軸受2と下半割軸受3からなるすべり軸受1の側面図であり、図2は、上半割軸受2の平面図であり、図3は、下半割軸受3の平面図であり、図4は、図3のA−Aにおける異物捕捉空間7の断面図であり、図5は、上半割軸受2の周方向端面2bに開口した油溝4の横断面図であり、図6は、軸線方向溝6の断面図である。なお、上記した図は、実施形態に係るすべり軸受1の概略図であり、構成,構造等を理解し易くするために各箇所が誇張あるいは省略して描かれている。
【0020】
まず、請求項1に係る発明に対応する第1実施形態について、図1を参照して説明する。図1に示すように、内燃機関のクランク軸10を回転可能に支持するすべり軸受1は、半割形状に形成された一対の半割軸受2,3が周方向端面2b,3bの両端面で当接する組合せ面5a,5bで上下2個組み合わせて円筒形状となるように形成されている。
【0021】
また、図2に示すように、半割軸受2,3のうち上半割軸受2の内周面2aの幅方向ほぼ中央には、半割軸受2,3と該半割軸受2,3に支持されるクランク軸10との間に潤滑油を供給するための油溝4が、円周方向の全体に沿って形成されている。この油溝4は、内燃機関の仕様により溝深さや溝底面の幅は異なるが、本発明において制約はない。例えば、産業機械用の内燃機関のクランク軸10用のすべり軸受1では、半割軸受2,3の厚さが5〜6mmの範囲の仕様のものでは溝深さが3mm程度、溝底面の幅が15mm程度で形成されると共に、その両端部が上半割軸受2の周方向端面2bで開口するように形成されるのが一般的である。また、油溝4には、外部から油の供給を受けるための供給穴4aが、上半割軸受2の半径方向に貫通して形成されている。
【0022】
ところで、第1実施形態におけるすべり軸受1を構成する上半割軸受2の周方向端面2bと下半割軸受3の周方向端面3bの当接面である両組合せ面5a,5bのうち、油溝4を形成した上半割軸受2に対してクランク軸10の相対回転方向の前方側にあたる組合せ面5aにおいて、上半割軸受2の周方向端面2bと当接する下半割軸受3の周方向端面3b内には、図1及び図3に示すように、油溝4内を周方向に流れてきた異物を捕捉するための異物捕捉空間7、及び異物捕捉空間7が捕捉した異物を潤滑油と一緒にすべり軸受1の外部へ排出するための軸線方向溝6が形成されている。
【0023】
図4に示すように、異物捕捉空間7は、下半割軸受3の周方向端面3bの内周面3a側に異物捕捉空間7の非形成領域Tを設けることにより、下半割軸受3の内周面3aには開口させない。このため、異物捕捉空間7が捕捉した異物は、半割軸受2,3の内周面2a,3a側に浮上することを防ぐことができる。なお、異物捕捉空間7の非形成領域Tは、軸受材料の強度の点から1mm以上とすることが好ましい。また、異物捕捉空間7の深さD1は、1mm以上とすることが好ましい。
【0024】
また、図1に示すように、異物捕捉空間7は、上半割軸受2の周方向端面2bで開口する油溝4の溝底面と連通するように形成されている。なお、潤滑油とともに上半割軸受2の油溝4内に進入した異物は、主に油溝4の溝底面側を転動しながらクランク軸10の相対回転方向の前方側に進むこと、さらに、少なくともクランク軸10の相対回転方向の前方側にあたる周方向端面2bに近い領域では、油溝4の溝底面の幅方向の両端側を流れることが確認されている。このため、図5に示すように、異物捕捉空間7は、上半割軸受2の周方向端面2bで開口する油溝4の少なくとも溝底面の幅方向の両端部と連通するように形成されることが好ましい。この異物捕捉空間7と連通する領域は、油溝4の溝底面から溝深さD2の10%以上、油溝4の溝底面の幅方向の各端部から溝底面の溝幅W2の10%以上の領域(図5に示す斜線ハッチングした領域8)とすることが好ましい。
【0025】
また、図1に示すように、異物捕捉空間7は、上半割軸受2の周方向端面2bで開口する油溝4の溝底面よりも下半割軸受3の外周面3d側に向かって空間が広がるように形成されている。なお、上半割軸受2における油溝4の溝底面を転動しながらクランク軸10の相対回転方向の前方側にあたる周方向端部に到達した異物には、周方向への慣性力とともに、すべり軸受1の半径方向への遠心力が作用している。このため、異物捕捉空間7は、異物に対する周方向への慣性力、及びすべり軸受1の半径方向への遠心力の作用方向に空間が広がっており、異物が異物捕捉空間7に捕捉されやすい。
【0026】
図3に示すように、軸線方向溝6は、すべり軸受1の円周方向や半径方向に直交する軸線方向に沿って形成されている。この軸線方向溝6は、下半割軸受3の周方向端面3bに一定の深さで切欠形成されると共に、その一方の端部が異物捕捉空間7と連通し、他方の端部が下半割軸受3の幅方向端面3cで開口するように形成されている。また、図6に示すように、軸線方向溝6の横断面形状は、R断面形状に形成されている。軸線方向溝6の横断面積が大きすぎると、すべり軸受1の外部へ漏れ出る潤滑油の量が多くなってしまうため、異物が通過可能な程度まで横断面積を小さくすることが好ましい。このため、軸線方向溝6の溝深さD3は、0.5mm以上2mm以下とし、軸線方向溝6の溝幅W3は、0.5mm以上2mm以下とすることが好ましい。
【0027】
なお、第1実施形態における軸線方向溝6は、下半割軸受3の周方向端面3bのみに形成した例を示したが、軸線方向溝6と同じ溝を、上半割軸受2の周方向端面2bのみに、あるいは上半割軸受2及び下半割軸受3の両方の周方向端面2b,3bに形成されてもよい。
【0028】
上記のように構成されるすべり軸受1は、油溝4を形成した上半割軸受2に対してクランク軸10の相対回転方向の前方側にあたる組合せ面5aにおいて、下半割軸受3の周方向端面3b内に異物捕捉空間7及び軸線方向溝6が形成されているため、上半割軸受2における油溝4の溝底面を転動しながらクランク軸10の相対回転方向の前方側にあたる周方向端部に到達した異物が、その周方向端部の溝底面と連通する異物捕捉空間7に捕捉されやすく、この異物捕捉空間7に捕捉された異物を、異物捕捉空間7と連通する軸線方向溝6を介して下半割軸受3の幅方向端面3c側にスムーズに排出することができる。
【0029】
また、異物捕捉空間7及び軸線方向溝6は、半割軸受2,3の内周面2a,3a側には開口させないので、クランク軸10の回転によるすべり軸受1の摺動面とクランク軸10の表面間での潤滑油の周方向への流れの影響を全く受けることがなく、異物捕捉空間7に捕捉された異物を、異物捕捉空間7と連通する軸線方向溝6を介して下半割軸受3の幅方向端面3c側までスムーズに排出することができる。このように、第1実施形態に係るすべり軸受1においては、潤滑油に混入し油溝4に進入した異物を下半割軸受3の内周面3a側に巻き込むことがなく、すべり軸受1の摺動面に異物が混入することを防止することができる。
【0030】
以上、第1実施形態に係るすべり軸受1を構成する下半割軸受3に1個の異物捕捉空間7が形成されるものについて説明したが、次に、請求項2に係る発明に対応する実施形態であって、下半割軸受3に2個の異物捕捉空間7が形成される第2実施形態について図7及び図8を参照して説明する。図7は、第2実施形態に係る下半割軸受3の平面図であり、図8は、第2実施形態に係るすべり軸受1における異物の排出メカニズムを説明するための拡大図である。なお、第1実施形態と同じ機能を奏する部材については、第1実施形態と同じ符号が付してある。
【0031】
図7に示すように、第2実施形態におけるすべり軸受1を構成する上半割軸受2の周方向端面2bと下半割軸受3の周方向端面3bの当接面である両組合せ面5a,5bのうち、油溝4を形成した上半割軸受2に対してクランク軸10の相対回転方向の前方側にあたる組合せ面5aにおいて、上半割軸受2の周方向端面2bと当接する下半割軸受3の周方向端面3b内には、異物捕捉空間7が2個形成されている。
【0032】
また、図8に示すように、2個の異物捕捉空間7は、上半割軸受2の周方向端面2bで開口する油溝4の溝底面の幅方向の両端部と各々連通するように形成されている。すなわち、上半割軸受2の周方向端面2bで開口する油溝4の溝底面の幅方向の各端部には、異物捕捉空間7及び軸線方向溝6からなる独立した異物の排出路が連通するように形成されている。このため、各々の異物捕捉空間7に捕捉された異物は、その異物捕捉空間7と連通する軸線方向溝6を介して下半割軸受3の幅方向端面3c側にさらにスムーズに排出することができる。
【0033】
上記した第1実施形態においては、上半割軸受2における油溝4の溝深さを一定とするものについて説明したが、次に、請求項3に係る発明に対応する実施形態であって、上半割軸受2における油溝4の幅方向の中央部に対して幅方向の両端部の溝深さが深く形成される第3実施形態について図9乃至図11を参照して説明する。図9は、第3実施形態に係る上半割軸受2の平面図であり、図10は、第3実施形態に係る上半割軸受2の周方向端面2bに開口した油溝4の横断面図であり、図11は、第3実施形態に係る上半割軸受2における油溝4の幅方向の両端部の溝深さを深く形成する範囲を説明するための上半割軸受2の側面図である。なお、第1実施形態及び第2実施形態と同じ機能を奏する部材については、これらの実施形態と同じ符号が付してある。
【0034】
図9及び図10に示すように、上半割軸受2に形成された油溝4は、円周方向の全体にわたって幅方向の中央部に対して幅方向の両端部の溝深さが深くなるように形成されている。上記したように、潤滑油とともに上半割軸受2の油溝4内に進入した異物は、少なくともクランク軸10の相対回転方向の前方側にあたる周方向端面2bに近い領域において、油溝4の溝底面の幅方向の両端側を流れることが確認されている。このため、油溝4の幅方向の中央部に対して幅方向の両端部の溝深さを深くすると、油溝4内に進入した異物は、油溝4の溝底面の幅方向の両端部から逸脱しがたくなり、異物が異物捕捉空間7に捕捉されやすい。
【0035】
また、図11に示すように、上半割軸受2における幅方向の両端部の溝深さを深く形成する範囲については、円周方向の全体でなくてもよいが、クランク軸10の相対回転方向の前方側にあたる上半割軸受2の周方向端面2bを基準とし、上半割軸受2の周方向の中央部側へ向かって少なくとも円周角度約20°の範囲とすることが好ましい。この場合、油溝4は、クランク軸10の相対回転方向の前方側にあたる上半割軸受2の周方向端面2bへ向かうほど、幅方向の中央部に対して幅方向の両端部の溝深さが徐々に深くなるように形成されており、異物が異物捕捉空間7に捕捉されやすい。
【0036】
上記した第1実施形態においては、下半割軸受3の周方向端面3b内に異物捕捉空間7及び軸線方向溝6が形成されるものについて説明したが、次に、請求項4に係る発明に対応する実施形態であって、下半割軸受3の周方向端面3bの外周面3d側に軸線方向溝6が形成されるとともに異物捕捉空間7が開口する第4実施形態について図12及び図13を参照して説明する。図12は、第4実施形態に係るすべり軸受1の側面図であり、図13は、第4実施形態に係る下半割軸受3の平面図である。なお、第1実施形態乃至第3実施形態と同じ機能を奏する部材については、これらの実施形態と同じ符号が付してある。
【0037】
図12及び図13に示すように、第4実施形態に係る軸線方向溝6は、下半割軸受3の周方向端面3bの外周面3d側に形成されている。また、第4実施形態に係る異物捕捉空間7は、下半割軸受3の周方向端面3bの外周面3d側に開口することにより、軸線方向溝6と連通するように形成されている。このような構成では、内燃機関の仕様により半割軸受2,3の肉厚(壁厚)が薄く設定される場合でも、下半割軸受3の周方向端面3b内に異物捕捉空間7を形成するスペースを確保することができる。
【0038】
なお、第4実施形態に係る軸線方向溝6は、下半割軸受3の周方向端面3bの外周面3d側のみに形成した例を示したが、軸線方向溝6と同じ溝を、上半割軸受2の周方向端面2bの外周面2d側のみに、あるいは上半割軸受2及び下半割軸受3の両方の周方向端面2b,3bの外周面2d,3d側に形成されてもよい。
【0039】
また、第4実施形態に係る異物捕捉空間7は、第1実施形態と同じく下半割軸受3に1個の異物捕捉空間7を形成した例を示したが、第2実施形態と同じく下半割軸受3に2個の異物捕捉空間7が形成されてもよい。
【0040】
なお、以上説明した全ての実施形態においては、異物捕捉空間7や軸線方向溝6が、油溝4を形成する上半割軸受2に対してクランク軸10の相対回転方向の前方側にあたる上半割軸受2と下半割軸受3の組合せ面5aのみに形成されたが、油溝4を形成する上半割軸受2に対してクランク軸10の相対回転方向の後方側にあたる組合せ面5bにも、軸受中心線に対し線対称的に形成されてもよい。これによれば、異物捕捉空間7及び軸線方向溝6が、油溝4を形成した上半割軸受2に対してクランク軸10の相対回転方向の後方側にあたる上半割軸受2と下半割軸受3の組合せ面5bのみに位置するように誤って組み付けられることを防ぐことができる。
【0041】
また、全ての実施形態においては、油溝4の溝深さや溝幅について、上半割軸受2の周方向の全体にわたって一定としたが、上半割軸受2の周方向で変化するように形成してもよい。また、油溝4は、上半割軸受2の周方向端面2bの両端面に開口させているが、クランク軸10の相対回転方向の後方側にあたる周方向端面2bには必ずしも開口させなくてもよい。また、異物捕捉空間7及び軸線方向溝6の断面形状は、それぞれ断面矩形状、断面R形状に形成されているが、潤滑油中の異物の捕捉や排出が可能な限りにおいて制約はない。
【0042】
さらに、本発明のすべり軸受1においては、従来の内燃機関用のすべり軸受1と同じく、半割形状軸受2,3の内周面2a.3a側の周方向端部にはクラッシュリリーフ(SAE J506(項目3.26、項目6.4参照)、DIN1497(セクション3.2)、JIS D3102(項目2.4)で規定されている)や面取り等を形成してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 すべり軸受
2 上半割軸受
3 下半割軸受
4 油溝
4a 供給穴
5a,5b 組合せ面
6 軸線方向溝
7 異物捕捉空間
8 連通領域
10 クランク軸
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のクランク軸を支持するように一対の半割軸受を組み合わせて円筒形となり、前記一対の半割軸受のうち、少なくとも内周面に周方向に沿った油溝が形成された第1の半割軸受に対して前記クランク軸の相対回転方向の前方側にあたる周方向端面に前記油溝が開口するように形成されたすべり軸受に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関のクランク軸用すべり軸受は、一対の半割軸受を組み合わせて円筒形にしたものを使用している。一対の半割軸受のうちの少なくとも一方の半割軸受の内周面の半割軸受の幅方向中央には、円周方向に沿った油溝が形成されることにより、この油溝を経てすべり軸受の摺動面に対する給油が行なわれていた(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、すべり軸受に供給される潤滑油中に混入する異物がすべり軸受の摺動面へ混入することを防止するため、軸受内周面の油溝と連通するように軸受内周面の周方向端部にリリーフ部を形成し、そのリリーフ部とクランク軸との隙間を異物排出路とするすべり軸受が提案されている(例えば、特許文献2)。
【0004】
特許文献2に開示される技術においては、図14(A),(B)に示すように、内燃機関のクランク軸用すべり軸受21への潤滑油の供給が、まず、クランク軸用すべり軸受21の外部から上半割軸受22に形成される供給穴22aを介して内周面に形成された油溝24内に供給され、その潤滑油がクランク軸用すべり軸受21の摺動面及びクランクピン用すべり軸受(図示しない)の摺動面に供給される。この場合、内燃機関の最初の運転時には、上半割軸受22の油溝24に供給される潤滑油に対して潤滑油路内に残留した異物が混入する場合が多いことが知られている。この異物は、潤滑油路の切削加工時の金属加工屑や鋳造時の鋳砂などであり、クランク軸20の回転による潤滑油の流れに付随し、油溝24内をクランク軸20の相対回転方向の前方側へ流れるが、半割軸受22,23の組合せ面25付近に到達すると、油溝24を形成しない下半割軸受23の周方向端面が障壁となる影響により潤滑油とともに内周面側に浮上する(図15(A)参照)。そこで、従来のクランク軸用すべり軸受21では、半割軸受22,23の内周面の周方向端部にクラッシュリリーフや面取等の隙間26を形成することにより、この隙間26から半割軸受22,23の幅方向端部へ潤滑油と一緒に異物を排出させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−277831号公報
【特許文献2】特開2005−69283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年の内燃機関はクランク軸の高回転化により、潤滑油より比重の大きい異物の周方向へ直進しようとする慣性力が大きくなっている。図15(B)には、このような比重の大きい異物のすべり軸受21における排出メカニズムを説明するための拡大図を示す。クランク軸20を高回転化させた場合、図15(B)の矢印Aに示すように、上半割軸受22における油溝24の溝底面を転動してきた異物が油溝24の端部に到達しても、この周方向端部に形成された隙間26から排出されず、油溝24を形成していない側の下半割軸受23の摺動面に混入しやすくなっていた。また、図15(B)の矢印Bに示すように、クランク軸20の回転による潤滑油の周方向への流れにより、油溝24の端部に到達した異物がクラッシュリリーフや面取等により形成される隙間26に入ったとしても、再び隙間26から押し出されて下半割軸受23の摺動面に混入するものも多かった。すなわち、油溝24の溝底面を転動してきた異物が油溝24の端部に到達しても、図15(B)の矢印Cに示すように、その全ての異物が半割軸受22,23の幅方向端部に排出されることはなく、図15(B)の矢印A,Bに示すように、油溝24が形成されない下半割軸受23の摺動面(内周面)に混入する場合も多かった。
【0007】
本発明は、上記した事情に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、すべり軸受の摺動面に異物が混入することを防止するため、この異物の排出を効果的に行うことができるすべり軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、請求項1に係る発明においては、内燃機関のクランク軸を支持するように一対の半割軸受を組み合わせて円筒形となり、前記一対の半割軸受のうち、少なくとも内周面に周方向に沿った油溝が形成された第1の半割軸受に対して前記クランク軸の相対回転方向の前方側にあたる周方向端面に前記油溝が開口するように形成されたすべり軸受において、前記一対の半割軸受の組合せ面のうち、前記第1の半割軸受に対して前記クランク軸の相対回転方向の前方側にあたる組合せ面において、前記油溝が形成されない第2の半割軸受の周方向端面には、前記油溝内を流れる異物を捕捉可能な異物捕捉空間が、前記一対の半割軸受の内周面には開口することなく、前記油溝の開口の少なくとも溝底面側の幅方向の両端部と連通するように形成され、前記第1の半割軸受および/または前記第2の半割軸受の周方向端面には、前記周方向に直交する軸線方向に沿った軸線方向溝が、前記一対の半割軸受の内周面には開口することなく、前記一対の半割軸受の幅方向端面に開口すると共に、前記異物捕捉空間と連通するように形成されることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明においては、請求項1記載のすべり軸受において、前記第2の半割軸受の周方向端面には、前記油溝の開口の溝底面側の幅方向の両端部と各々連通する前記異物捕捉空間が2個形成されることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明においては、請求項1又は請求項2に記載のすべり軸受において、前記異物捕捉空間は、前記油溝の開口の溝底面よりも前記第2の半割軸受の外周面側に向かって空間が広がるように形成されることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明においては、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のすべり軸受において、前記第1の半割軸受に対して前記クランク軸の相対回転方向の前方側にあたる周方向端面に近い領域において、前記油溝は、幅方向の中央部側に対して幅方向の両端部の溝深さが深く形成されることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明においては、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のすべり軸受において、前記軸線方向溝は、前記第1の半割軸受および/または前記第2の半割軸受の周方向端面の外周面側に沿って形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明においては、一対の半割軸受の組合せ面のうち、第1の半割軸受に対してクランク軸の相対回転方向の前方側にあたる組合せ面において、油溝が形成されない第2の半割軸受の周方向端面には、油溝内を流れる異物を捕捉可能な異物捕捉空間が、一対の半割軸受の内周面には開口することなく、油溝の開口の少なくとも溝底面側の幅方向の両端部と連通するように形成され、第1の半割軸受および/または第2の半割軸受の周方向端面には、周方向に直交する軸線方向に沿った軸線方向溝が、一対の半割軸受の内周面には開口することなく、一対の半割軸受の幅方向端面に開口すると共に、異物捕捉空間と連通するように形成されることにより、クランク軸の相対回転方向の前方側にあたる周方向端部に到達した異物が、その周方向端部の溝底面の幅方向の両端部と連通する異物捕捉空間に捕捉されやすく、この異物捕捉空間に捕捉された異物を、異物捕捉空間と連通する軸線方向溝を介して半割軸受の幅方向端面側にスムーズに排出することができる。
【0014】
請求項2に係る発明においては、第2の半割軸受の周方向端面には、油溝の開口の溝底面側の幅方向の両端部と各々連通する異物捕捉空間が2個形成されることにより、各々の異物捕捉空間に捕捉された異物を、その異物捕捉空間と連通する軸線方向溝を介して半割軸受の幅方向端面側にさらにスムーズに排出することができる。
【0015】
請求項3に係る発明においては、異物捕捉空間は、油溝の開口の溝底面よりも第2の半割軸受の外周面側に向かって空間が広がるように形成されることにより、異物捕捉空間が、異物に対する周方向への慣性力、及びすべり軸受の半径方向への遠心力の作用方向に空間が広がっており、異物が異物捕捉空間に捕捉されやすくなる。
【0016】
請求項4に係る発明においては、第1の半割軸受に対してクランク軸の相対回転方向の前方側にあたる周方向端面に近い領域において、油溝は、幅方向の中央部側に対して幅方向の両端部の溝深さが深く形成されることにより、油溝内に進入した異物が、油溝の溝底面の幅方向の両端部から逸脱しがたくなり、異物が異物捕捉空間に捕捉されやすくなる。
【0017】
請求項5に係る発明においては、軸線方向溝は、第1の半割軸受および/または第2の半割軸受の周方向端面の外周面側に沿って形成されることにより、内燃機関の仕様により半割軸受の肉厚(壁厚)が薄く設定される場合でも、下半割軸受の周方向端面内に異物捕捉空間を形成するスペースを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】クランク軸を支持する2つの上半割軸受と下半割軸受からなるすべり軸受の側面図である。
【図2】上半割軸受の平面図である。
【図3】下半割軸受の平面図である。
【図4】図3のA−Aにおける異物捕捉空間の断面図である。
【図5】上半割軸受の周方向端面に開口した油溝の横断面図である。
【図6】軸線方向溝の断面図である。
【図7】第2実施形態に係る下半割軸受の平面図である。
【図8】第2実施形態に係るすべり軸受における異物の排出メカニズムを説明するための拡大図である。
【図9】第3実施形態に係る上半割軸受の平面図である。
【図10】第3実施形態に係る上半割軸受2の周方向端面に開口した油溝の横断面図である。
【図11】第3実施形態に係る上半割軸受における油溝の幅方向の両端部の溝深さを深く形成する範囲を説明するための上半割軸受の側面図である。
【図12】第4実施形態に係るすべり軸受1の側面図である。
【図13】第4実施形態に係る下半割軸受3の平面図である。
【図14】従来例を示す図1相当図である。
【図15】従来のすべり軸受における異物の排出メカニズムを説明するための拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図1乃至図6を参照して説明する。図1は、クランク軸10を支持する2つの上半割軸受2と下半割軸受3からなるすべり軸受1の側面図であり、図2は、上半割軸受2の平面図であり、図3は、下半割軸受3の平面図であり、図4は、図3のA−Aにおける異物捕捉空間7の断面図であり、図5は、上半割軸受2の周方向端面2bに開口した油溝4の横断面図であり、図6は、軸線方向溝6の断面図である。なお、上記した図は、実施形態に係るすべり軸受1の概略図であり、構成,構造等を理解し易くするために各箇所が誇張あるいは省略して描かれている。
【0020】
まず、請求項1に係る発明に対応する第1実施形態について、図1を参照して説明する。図1に示すように、内燃機関のクランク軸10を回転可能に支持するすべり軸受1は、半割形状に形成された一対の半割軸受2,3が周方向端面2b,3bの両端面で当接する組合せ面5a,5bで上下2個組み合わせて円筒形状となるように形成されている。
【0021】
また、図2に示すように、半割軸受2,3のうち上半割軸受2の内周面2aの幅方向ほぼ中央には、半割軸受2,3と該半割軸受2,3に支持されるクランク軸10との間に潤滑油を供給するための油溝4が、円周方向の全体に沿って形成されている。この油溝4は、内燃機関の仕様により溝深さや溝底面の幅は異なるが、本発明において制約はない。例えば、産業機械用の内燃機関のクランク軸10用のすべり軸受1では、半割軸受2,3の厚さが5〜6mmの範囲の仕様のものでは溝深さが3mm程度、溝底面の幅が15mm程度で形成されると共に、その両端部が上半割軸受2の周方向端面2bで開口するように形成されるのが一般的である。また、油溝4には、外部から油の供給を受けるための供給穴4aが、上半割軸受2の半径方向に貫通して形成されている。
【0022】
ところで、第1実施形態におけるすべり軸受1を構成する上半割軸受2の周方向端面2bと下半割軸受3の周方向端面3bの当接面である両組合せ面5a,5bのうち、油溝4を形成した上半割軸受2に対してクランク軸10の相対回転方向の前方側にあたる組合せ面5aにおいて、上半割軸受2の周方向端面2bと当接する下半割軸受3の周方向端面3b内には、図1及び図3に示すように、油溝4内を周方向に流れてきた異物を捕捉するための異物捕捉空間7、及び異物捕捉空間7が捕捉した異物を潤滑油と一緒にすべり軸受1の外部へ排出するための軸線方向溝6が形成されている。
【0023】
図4に示すように、異物捕捉空間7は、下半割軸受3の周方向端面3bの内周面3a側に異物捕捉空間7の非形成領域Tを設けることにより、下半割軸受3の内周面3aには開口させない。このため、異物捕捉空間7が捕捉した異物は、半割軸受2,3の内周面2a,3a側に浮上することを防ぐことができる。なお、異物捕捉空間7の非形成領域Tは、軸受材料の強度の点から1mm以上とすることが好ましい。また、異物捕捉空間7の深さD1は、1mm以上とすることが好ましい。
【0024】
また、図1に示すように、異物捕捉空間7は、上半割軸受2の周方向端面2bで開口する油溝4の溝底面と連通するように形成されている。なお、潤滑油とともに上半割軸受2の油溝4内に進入した異物は、主に油溝4の溝底面側を転動しながらクランク軸10の相対回転方向の前方側に進むこと、さらに、少なくともクランク軸10の相対回転方向の前方側にあたる周方向端面2bに近い領域では、油溝4の溝底面の幅方向の両端側を流れることが確認されている。このため、図5に示すように、異物捕捉空間7は、上半割軸受2の周方向端面2bで開口する油溝4の少なくとも溝底面の幅方向の両端部と連通するように形成されることが好ましい。この異物捕捉空間7と連通する領域は、油溝4の溝底面から溝深さD2の10%以上、油溝4の溝底面の幅方向の各端部から溝底面の溝幅W2の10%以上の領域(図5に示す斜線ハッチングした領域8)とすることが好ましい。
【0025】
また、図1に示すように、異物捕捉空間7は、上半割軸受2の周方向端面2bで開口する油溝4の溝底面よりも下半割軸受3の外周面3d側に向かって空間が広がるように形成されている。なお、上半割軸受2における油溝4の溝底面を転動しながらクランク軸10の相対回転方向の前方側にあたる周方向端部に到達した異物には、周方向への慣性力とともに、すべり軸受1の半径方向への遠心力が作用している。このため、異物捕捉空間7は、異物に対する周方向への慣性力、及びすべり軸受1の半径方向への遠心力の作用方向に空間が広がっており、異物が異物捕捉空間7に捕捉されやすい。
【0026】
図3に示すように、軸線方向溝6は、すべり軸受1の円周方向や半径方向に直交する軸線方向に沿って形成されている。この軸線方向溝6は、下半割軸受3の周方向端面3bに一定の深さで切欠形成されると共に、その一方の端部が異物捕捉空間7と連通し、他方の端部が下半割軸受3の幅方向端面3cで開口するように形成されている。また、図6に示すように、軸線方向溝6の横断面形状は、R断面形状に形成されている。軸線方向溝6の横断面積が大きすぎると、すべり軸受1の外部へ漏れ出る潤滑油の量が多くなってしまうため、異物が通過可能な程度まで横断面積を小さくすることが好ましい。このため、軸線方向溝6の溝深さD3は、0.5mm以上2mm以下とし、軸線方向溝6の溝幅W3は、0.5mm以上2mm以下とすることが好ましい。
【0027】
なお、第1実施形態における軸線方向溝6は、下半割軸受3の周方向端面3bのみに形成した例を示したが、軸線方向溝6と同じ溝を、上半割軸受2の周方向端面2bのみに、あるいは上半割軸受2及び下半割軸受3の両方の周方向端面2b,3bに形成されてもよい。
【0028】
上記のように構成されるすべり軸受1は、油溝4を形成した上半割軸受2に対してクランク軸10の相対回転方向の前方側にあたる組合せ面5aにおいて、下半割軸受3の周方向端面3b内に異物捕捉空間7及び軸線方向溝6が形成されているため、上半割軸受2における油溝4の溝底面を転動しながらクランク軸10の相対回転方向の前方側にあたる周方向端部に到達した異物が、その周方向端部の溝底面と連通する異物捕捉空間7に捕捉されやすく、この異物捕捉空間7に捕捉された異物を、異物捕捉空間7と連通する軸線方向溝6を介して下半割軸受3の幅方向端面3c側にスムーズに排出することができる。
【0029】
また、異物捕捉空間7及び軸線方向溝6は、半割軸受2,3の内周面2a,3a側には開口させないので、クランク軸10の回転によるすべり軸受1の摺動面とクランク軸10の表面間での潤滑油の周方向への流れの影響を全く受けることがなく、異物捕捉空間7に捕捉された異物を、異物捕捉空間7と連通する軸線方向溝6を介して下半割軸受3の幅方向端面3c側までスムーズに排出することができる。このように、第1実施形態に係るすべり軸受1においては、潤滑油に混入し油溝4に進入した異物を下半割軸受3の内周面3a側に巻き込むことがなく、すべり軸受1の摺動面に異物が混入することを防止することができる。
【0030】
以上、第1実施形態に係るすべり軸受1を構成する下半割軸受3に1個の異物捕捉空間7が形成されるものについて説明したが、次に、請求項2に係る発明に対応する実施形態であって、下半割軸受3に2個の異物捕捉空間7が形成される第2実施形態について図7及び図8を参照して説明する。図7は、第2実施形態に係る下半割軸受3の平面図であり、図8は、第2実施形態に係るすべり軸受1における異物の排出メカニズムを説明するための拡大図である。なお、第1実施形態と同じ機能を奏する部材については、第1実施形態と同じ符号が付してある。
【0031】
図7に示すように、第2実施形態におけるすべり軸受1を構成する上半割軸受2の周方向端面2bと下半割軸受3の周方向端面3bの当接面である両組合せ面5a,5bのうち、油溝4を形成した上半割軸受2に対してクランク軸10の相対回転方向の前方側にあたる組合せ面5aにおいて、上半割軸受2の周方向端面2bと当接する下半割軸受3の周方向端面3b内には、異物捕捉空間7が2個形成されている。
【0032】
また、図8に示すように、2個の異物捕捉空間7は、上半割軸受2の周方向端面2bで開口する油溝4の溝底面の幅方向の両端部と各々連通するように形成されている。すなわち、上半割軸受2の周方向端面2bで開口する油溝4の溝底面の幅方向の各端部には、異物捕捉空間7及び軸線方向溝6からなる独立した異物の排出路が連通するように形成されている。このため、各々の異物捕捉空間7に捕捉された異物は、その異物捕捉空間7と連通する軸線方向溝6を介して下半割軸受3の幅方向端面3c側にさらにスムーズに排出することができる。
【0033】
上記した第1実施形態においては、上半割軸受2における油溝4の溝深さを一定とするものについて説明したが、次に、請求項3に係る発明に対応する実施形態であって、上半割軸受2における油溝4の幅方向の中央部に対して幅方向の両端部の溝深さが深く形成される第3実施形態について図9乃至図11を参照して説明する。図9は、第3実施形態に係る上半割軸受2の平面図であり、図10は、第3実施形態に係る上半割軸受2の周方向端面2bに開口した油溝4の横断面図であり、図11は、第3実施形態に係る上半割軸受2における油溝4の幅方向の両端部の溝深さを深く形成する範囲を説明するための上半割軸受2の側面図である。なお、第1実施形態及び第2実施形態と同じ機能を奏する部材については、これらの実施形態と同じ符号が付してある。
【0034】
図9及び図10に示すように、上半割軸受2に形成された油溝4は、円周方向の全体にわたって幅方向の中央部に対して幅方向の両端部の溝深さが深くなるように形成されている。上記したように、潤滑油とともに上半割軸受2の油溝4内に進入した異物は、少なくともクランク軸10の相対回転方向の前方側にあたる周方向端面2bに近い領域において、油溝4の溝底面の幅方向の両端側を流れることが確認されている。このため、油溝4の幅方向の中央部に対して幅方向の両端部の溝深さを深くすると、油溝4内に進入した異物は、油溝4の溝底面の幅方向の両端部から逸脱しがたくなり、異物が異物捕捉空間7に捕捉されやすい。
【0035】
また、図11に示すように、上半割軸受2における幅方向の両端部の溝深さを深く形成する範囲については、円周方向の全体でなくてもよいが、クランク軸10の相対回転方向の前方側にあたる上半割軸受2の周方向端面2bを基準とし、上半割軸受2の周方向の中央部側へ向かって少なくとも円周角度約20°の範囲とすることが好ましい。この場合、油溝4は、クランク軸10の相対回転方向の前方側にあたる上半割軸受2の周方向端面2bへ向かうほど、幅方向の中央部に対して幅方向の両端部の溝深さが徐々に深くなるように形成されており、異物が異物捕捉空間7に捕捉されやすい。
【0036】
上記した第1実施形態においては、下半割軸受3の周方向端面3b内に異物捕捉空間7及び軸線方向溝6が形成されるものについて説明したが、次に、請求項4に係る発明に対応する実施形態であって、下半割軸受3の周方向端面3bの外周面3d側に軸線方向溝6が形成されるとともに異物捕捉空間7が開口する第4実施形態について図12及び図13を参照して説明する。図12は、第4実施形態に係るすべり軸受1の側面図であり、図13は、第4実施形態に係る下半割軸受3の平面図である。なお、第1実施形態乃至第3実施形態と同じ機能を奏する部材については、これらの実施形態と同じ符号が付してある。
【0037】
図12及び図13に示すように、第4実施形態に係る軸線方向溝6は、下半割軸受3の周方向端面3bの外周面3d側に形成されている。また、第4実施形態に係る異物捕捉空間7は、下半割軸受3の周方向端面3bの外周面3d側に開口することにより、軸線方向溝6と連通するように形成されている。このような構成では、内燃機関の仕様により半割軸受2,3の肉厚(壁厚)が薄く設定される場合でも、下半割軸受3の周方向端面3b内に異物捕捉空間7を形成するスペースを確保することができる。
【0038】
なお、第4実施形態に係る軸線方向溝6は、下半割軸受3の周方向端面3bの外周面3d側のみに形成した例を示したが、軸線方向溝6と同じ溝を、上半割軸受2の周方向端面2bの外周面2d側のみに、あるいは上半割軸受2及び下半割軸受3の両方の周方向端面2b,3bの外周面2d,3d側に形成されてもよい。
【0039】
また、第4実施形態に係る異物捕捉空間7は、第1実施形態と同じく下半割軸受3に1個の異物捕捉空間7を形成した例を示したが、第2実施形態と同じく下半割軸受3に2個の異物捕捉空間7が形成されてもよい。
【0040】
なお、以上説明した全ての実施形態においては、異物捕捉空間7や軸線方向溝6が、油溝4を形成する上半割軸受2に対してクランク軸10の相対回転方向の前方側にあたる上半割軸受2と下半割軸受3の組合せ面5aのみに形成されたが、油溝4を形成する上半割軸受2に対してクランク軸10の相対回転方向の後方側にあたる組合せ面5bにも、軸受中心線に対し線対称的に形成されてもよい。これによれば、異物捕捉空間7及び軸線方向溝6が、油溝4を形成した上半割軸受2に対してクランク軸10の相対回転方向の後方側にあたる上半割軸受2と下半割軸受3の組合せ面5bのみに位置するように誤って組み付けられることを防ぐことができる。
【0041】
また、全ての実施形態においては、油溝4の溝深さや溝幅について、上半割軸受2の周方向の全体にわたって一定としたが、上半割軸受2の周方向で変化するように形成してもよい。また、油溝4は、上半割軸受2の周方向端面2bの両端面に開口させているが、クランク軸10の相対回転方向の後方側にあたる周方向端面2bには必ずしも開口させなくてもよい。また、異物捕捉空間7及び軸線方向溝6の断面形状は、それぞれ断面矩形状、断面R形状に形成されているが、潤滑油中の異物の捕捉や排出が可能な限りにおいて制約はない。
【0042】
さらに、本発明のすべり軸受1においては、従来の内燃機関用のすべり軸受1と同じく、半割形状軸受2,3の内周面2a.3a側の周方向端部にはクラッシュリリーフ(SAE J506(項目3.26、項目6.4参照)、DIN1497(セクション3.2)、JIS D3102(項目2.4)で規定されている)や面取り等を形成してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 すべり軸受
2 上半割軸受
3 下半割軸受
4 油溝
4a 供給穴
5a,5b 組合せ面
6 軸線方向溝
7 異物捕捉空間
8 連通領域
10 クランク軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のクランク軸を支持するように一対の半割軸受を組み合わせて円筒形となり、前記一対の半割軸受のうち、少なくとも内周面に周方向に沿った油溝が形成された第1の半割軸受に対して前記クランク軸の相対回転方向の前方側にあたる周方向端面に前記油溝が開口するように形成されたすべり軸受において、
前記一対の半割軸受の組合せ面のうち、前記第1の半割軸受に対して前記クランク軸の相対回転方向の前方側にあたる組合せ面において、前記油溝が形成されない第2の半割軸受の周方向端面には、前記油溝内を流れる異物を捕捉可能な異物捕捉空間が、前記一対の半割軸受の内周面には開口することなく、前記油溝の開口の少なくとも溝底面側の幅方向の両端部と連通するように形成され、
前記第1の半割軸受および/または前記第2の半割軸受の周方向端面には、前記周方向に直交する軸線方向に沿った軸線方向溝が、前記一対の半割軸受の内周面には開口することなく、前記一対の半割軸受の幅方向端面に開口すると共に、前記異物捕捉空間と連通するように形成されることを特徴とするすべり軸受。
【請求項2】
前記第2の半割軸受の周方向端面には、前記油溝の開口の溝底面側の幅方向の両端部と各々連通する前記異物捕捉空間が2個形成されることを特徴とする請求項1記載のすべり軸受。
【請求項3】
前記異物捕捉空間は、前記油溝の開口の溝底面よりも前記第2の半割軸受の外周面側に向かって空間が広がるように形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のすべり軸受。
【請求項4】
前記第1の半割軸受に対して前記クランク軸の相対回転方向の前方側にあたる周方向端面に近い領域において、前記油溝は、幅方向の中央部側に対して幅方向の両端部の溝深さが深く形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のすべり軸受。
【請求項5】
前記軸線方向溝は、前記第1の半割軸受および/または前記第2の半割軸受の周方向端面の外周面側に沿って形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のすべり軸受。
【請求項1】
内燃機関のクランク軸を支持するように一対の半割軸受を組み合わせて円筒形となり、前記一対の半割軸受のうち、少なくとも内周面に周方向に沿った油溝が形成された第1の半割軸受に対して前記クランク軸の相対回転方向の前方側にあたる周方向端面に前記油溝が開口するように形成されたすべり軸受において、
前記一対の半割軸受の組合せ面のうち、前記第1の半割軸受に対して前記クランク軸の相対回転方向の前方側にあたる組合せ面において、前記油溝が形成されない第2の半割軸受の周方向端面には、前記油溝内を流れる異物を捕捉可能な異物捕捉空間が、前記一対の半割軸受の内周面には開口することなく、前記油溝の開口の少なくとも溝底面側の幅方向の両端部と連通するように形成され、
前記第1の半割軸受および/または前記第2の半割軸受の周方向端面には、前記周方向に直交する軸線方向に沿った軸線方向溝が、前記一対の半割軸受の内周面には開口することなく、前記一対の半割軸受の幅方向端面に開口すると共に、前記異物捕捉空間と連通するように形成されることを特徴とするすべり軸受。
【請求項2】
前記第2の半割軸受の周方向端面には、前記油溝の開口の溝底面側の幅方向の両端部と各々連通する前記異物捕捉空間が2個形成されることを特徴とする請求項1記載のすべり軸受。
【請求項3】
前記異物捕捉空間は、前記油溝の開口の溝底面よりも前記第2の半割軸受の外周面側に向かって空間が広がるように形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のすべり軸受。
【請求項4】
前記第1の半割軸受に対して前記クランク軸の相対回転方向の前方側にあたる周方向端面に近い領域において、前記油溝は、幅方向の中央部側に対して幅方向の両端部の溝深さが深く形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のすべり軸受。
【請求項5】
前記軸線方向溝は、前記第1の半割軸受および/または前記第2の半割軸受の周方向端面の外周面側に沿って形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のすべり軸受。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−208740(P2011−208740A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77675(P2010−77675)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(591001282)大同メタル工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(591001282)大同メタル工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】
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