説明

つまみ装置

【課題】ガタを抑制して意匠品位を向上させたつまみ装置を提供する。
【解決手段】 本発明のつまみ装置は、操作つまみの内側に設けられエンコーダに連結される軸受け補強部と、前記軸受け補強部の内側に設け操作つまみのスライド位置を規制する桟部と、前記軸受け補強部の軸と同方向に嵌合爪を備え、操作つまみに所定の荷重が加わったときに前記軸受け部が前記桟部を破断し、操作つまみのスライド規制が解除され陥没することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるメディアのプレーヤーやカーナビゲーションシステム等を含む車載におけるつまみ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に搭載される車載用電子装置は、これを操作するスイッチやボリュームのつまみがパネルから突出されるのを通例としている。
【0003】
このようなつまみは、交通事故時の安全のために、パネル面から一定高さ以上突出されないこと、すなわち、現行では車室内の突出量が9.5mm以下であることが法規で決められており、この結果として、掴み代が少なくなるために操作性に難点があった。
【0004】
この操作性を向上させるべくつまみの突出量を9.5mm以上とする場合、自動車の衝突時に搭乗者によって一定の荷重(37.8daN)を加えられたときに、つまみの突出量を9.5mm以下にする必要がある。この条件を満たすためのつまみ装置が、特許文献に1に開示されている。
【0005】
特許文献2に記載されたつまみ装置は、図8の断面図に示される。図8に示されるように、つまみ11には、不図示のプリント基板上の可変抵抗器の軸12aを挿入する貫通軸穴11aを有する内側つまみ部11と、この内側つまみ部11の外側に嵌合する外側つまみ部10とで構成されている。また、貫通軸穴11aの内部には可変抵抗器の軸12aに設けられた係合溝12bと嵌合する軸抜け止め突起11dと、車両の衝突などにより乗員の身体の一部がぶつかり、その衝撃荷重Fがつまみ10に加わると、軸12aの先端部との衝突によって破壊可能な衝撃吸収突起11cが設けられている。このように樹脂成形された外側つまみ部10と内側つまみ部11とを組み立てるだけの安価で簡単な構成により、衝撃吸収可能なつまみ装置を実現する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−266704号公報
【特許文献2】特開2010−153058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の車載用のつまみ装置は、図7及び図8に示すように、一定の荷重以下にて規制値高さ以下になるようにつまみとエンコーダの間に陥没機能を有した陥没インナー(内部つまみ)11と呼ばれる部品を用いている。しかし、内側つまみ部11及びつまみ10の構造は嵌合部を左右ガタ規制に設けているため以下の問題があった。一つ目は、エンコーダ12と内側つまみ部11、内側つまみ部11とつまみ10を組み付け時に嵌合部が開くためのスリット10a及びスリット11bが必要であり、SWノブ使用時の力によってスリット10a及びスリット11bが開いてしまい、左右方向でのガタが発生してしまう。二つ目は、上記ガタを抑えるために貫通軸穴11aの強度を上げた場合、エンコーダ12と内側つまみ部11の嵌合力が変化し、軸方向(陥没方向)の保持力が変化してしまうため陥没部強度のチューニングが必要となってしまい、車両安全法規を満足し、ガタを抑制して意匠品位を向上することが課題となる。
【0008】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、その目的は、ガタを抑制して
意匠品位を向上させたつまみ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のつまみ装置は、操作つまみの内側に設けられエンコーダに連結される軸受け補強部と、前記軸受け補強部の内側に設け操作つまみのスライド位置を規制する桟部と、前記軸受け補強部の軸と同方向に嵌合爪を備え、操作つまみに所定の荷重が加わったときに前記軸受け部が前記桟部を破断し、操作つまみのスライド規制が解除され陥没することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る車載用のつまみ装置によれば、ガタを少なくし、品位向上を図ることができる。
【0011】
本発明に係る車載用のつまみ装置によれば、従来技術で使用したI型軸付きエンコーダ12より、単価の安いD型軸付きエンコーダ9を使用することができ、コスト面で有利にできるという効果を奏する。ここで、「I型軸付きエンコーダ」とは軸部の側面の2箇所を平面(カット)にしたエンコーダを指しており、「D型軸付きエンコーダ」とは側面の1箇所を平面(カット)にしたエンコーダを指している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の車載装置の外観斜視図
【図2】本発明の車載装置の外観正面図
【図3】本発明の車載用のつまみ装置の外観斜視図
【図4】本発明の車載用のつまみ装置のZ−Y平面断面図
【図5】本発明の車載用のつまみ装置のY−X平面断面図
【図6】本発明の車載用のつまみ装置の断面図
【図7】従来の車載用のつまみ装置の外観斜視図
【図8】従来の車載用のつまみ装置の断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の車載用のつまみ装置詳細について図面を参照して説明する。
本発明の実施の形態の車載用電子装置としてのAVナビゲーション装置1を図1に示す。なお、以下の説明において、図1に記載のX方向を幅方向、Y方向を奥行き方向、Z方向を高さ方向として説明する。
【0014】
図1に示すように、筐体2とディスプレイ6と操作パネル3から成り立ち、操作パネル3には操作つまみ5a、操作つまみ5bと操作釦4を備える。
【0015】
図1において、AVナビゲーション装置1(車載用電子装置)は、図示しないCDデッキやラジオチューナ、あるいは、それらを電気的に制御するためのICを実装したプリント基板などを内部に収容した筐体2を有し、筐体2の前面部に操作パネル3が嵌合できるように構成されている。操作パネル3より奥側の筐体部分は自動車のセンターコンソール内部に組み込まれ、車両に取り付けられた際は、外観上、操作パネル3が使用者に対して露出されて、車室内のエアコンパネルなど他のパネルと一体感を出すように装着される。
【0016】
図3と図4に示すように、外部つまみ部7は陥没インナー8とエンコーダ9との外部つまみ部7を備えている。
【0017】
図4と図5はつまみ装置の断面図(軸方向の断面)を表しているがとなり、図3は本発明の車載用のつまみ装置の外観斜視図である。なお、図4は本発明の車載用のつまみ装置
のZ−Y平面断面図となる。図5は本発明の車載用のつまみ装置のY−X平面断面図である。図6は、本発明の車載用のつまみ装置の断面図(輪切り状断面)である。
【0018】
図3から図6に示すように、外部つまみ7と陥没インナー8は外部つまみ部7の爪嵌合部7bと陥没インナー8eの穴形状で嵌合を行い、陥没インナー8と軸部9aの嵌合は陥没インナーの爪部とエンコーダの掛溝部9bで実施される。この2つの嵌合は別箇所で行われることで、ガタの原因となっていたスリット10a、11bを廃止する構造を可能とした。
【0019】
陥没インナー8と軸部9aの嵌合時に爪嵌合部8aが外側(図3下方向)へ変形するため、外部つまみ部7には爪逃げ部7aを備えている。このとき、爪逃げ部7aは図6に示すような円筒形状の一箇所のみを削除した壁部8c(C型のような形状)のため、ラジアル方向へ荷重を受けた際の変形が少ない特長を持っている。
【0020】
エンコーダの平面部9cと陥没インナーの平面部8bで接触を行っている。ユーザがつまみ7を回転操作した場合、この平面同士の接触により、つまみ装置全体が回転する。
【0021】
軸部9aを陥没インナー8に挿入する際、エンコーダのエッジ部9dが陥没インナー8の壁部8cにひっかかってしまうため、組立作業性を改善するためにエッジ逃げ形状8gを備えている。
【0022】
図6に示すように、爪嵌合部8aとエッジ逃げ部8g以外は軸部9aと壁部8cが接触している構造となり、エンコーダ軸部と陥没インナーの接触面積を最大限に増やすことで外部つまみ部7のガタつきを極力防止することが可能となっている。
【0023】
以上のように構成されたつまみ装置について、外部つまみ部7が衝撃を受けて陥没する際の動作を説明する。
【0024】
外部つまみ部7が、図4下方向に向かって衝撃を受けた場合、つまみ7は陥没インナー8に対し爪嵌合を行っているため、陥没インナー8はそのまま下方向に荷重を受ける。軸方向において、陥没インナー8と軸部9aは陥没インナー8の陥没桟8dでのみ接触しているため、つまみに加わる荷重は全て陥没桟8dに加わる。図6下方向へつまみ7と陥没インナー8が沈み、陥没桟8dに荷重が加わると、陥没桟8fに上方向への集中荷重が発生し、陥没桟8dは破断し、エンコーダ9の先端はエンコーダ逃げ部7cまで移動することになる。
【0025】
上記の結果、外部つまみ部7のスライド量を規制していた爪嵌合部8aとの陥没桟8dがつまみ7の位置を規制することができなくなり、外部つまみ部7は陥没することになる。
【0026】
したがって、一定の荷重を受けた際に陥没することが可能であり、ガタを抑える構造を有したつまみであり、単価の安いエンコーダを使用することができ、組立作業を簡易にすることで、コスト面でも有利である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上述べたように、本発明の車載用のつまみ装置によれば、ガタを抑え、品位向上に有利なものである。以上の結果として、コスト面でも有利であることから本発明の産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0028】
1 AVナビゲーション装置
2 筐体
3 操作パネル
4 操作釦
5 操作つまみ
5a 操作つまみ(左)
5b 操作つまみ(右)
6 ディスプレイ
7 外部つまみ部
7a 爪逃げ部
7b 爪嵌合部
7c エンコーダ逃げ部
8 陥没インナー
8a 爪嵌合部
8b 平面部
8c 壁部
8d 陥没桟
8e 陥没インナー
8f 陥没桟
8g エッジ逃げ形状
9 エンコーダ
9a 軸部
9b 掛溝部
9c 平面部
9d エッジ部
10 外側つまみ部(従来構造)
10a スリット
11 内側つまみ部(従来構造)
11a 貫通軸穴
11b スリット
11c 衝撃吸収突起
11d 軸抜け止め突起
12 エンコーダ(従来構造)
12a 軸
12b 係合溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作つまみの内側に設けられエンコーダに連結される軸受け補強部と、
前記軸受け補強部の内側に設け操作つまみのスライド位置を規制する桟部と、
前記軸受け補強部の軸と同方向に嵌合爪を備え、
操作つまみに所定の荷重が加わったときに前記軸受け部が前記桟部を破断し、操作つまみのスライド規制が解除され陥没することを特徴とするつまみ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−208821(P2012−208821A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75050(P2011−75050)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】